JP6770601B2 - プラスチックレンズの再生方法 - Google Patents

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Description

本発明は、変形したプラスチックレンズを再生する方法に関する。
熱硬化性樹脂を用いたプラスチックレンズは、注型重合により原料を硬化させた後、レンズ注型用鋳型からプラスチックレンズ成形体を離型する工程を含む製造方法により得られる。熱可塑性樹脂を用いたプラスチックレンズは、加熱溶融した原料プラスチックを射出(圧縮)成型により金型へ押出した後、金型からプラスチックレンズ成形体を離型する工程を含む製造方法により得られる。
プラスチックレンズ成形体は、レンズ内の未反応モノマーの硬化、樹脂の重合度の向上、重合中に生じたレンズ内部の歪の除去などの目的でアニ−ルと呼ばれる加熱処理工程を行った上で眼鏡用レンズ等として供される。
アニール工程において、プラスチックレンズ成形体に高温で加熱処理を行うと、レンズは自重により変形してしまう。一方、加熱処理の温度が低いと前述のレンズ内の未反応モノマーの硬化、樹脂の重合度の向上、重合中に生じたレンズ内部の歪の除去、などの加熱処理本来の目的を達成できないことが多い。このため、一般的には、加熱処理本来の目的を達成でき、かつ、レンズの変形が実質的に無視できるような条件を探して、この条件下でアニール工程を行っている。
しかしながら、プラスチックレンズ成形体の種類や形状によっては、加熱処理本来の目的を達成でき、かつ、レンズの変形が実質的に無視できるような条件を見つけることができなかったり、条件が見つかっても範囲が狭いためにレンズの歩留りが低くなってしまうことがあった。
特に、プラスチックレンズ成形体内部や表層部に一軸延伸フィルムを組みこんだ構造を備える偏光レンズを加熱処理する場合、レンズの自重に加え一軸延伸フィルムが収縮する力が働くため、レンズの変形が大きくなることが多い。このため、偏光レンズの場合は、加熱処理本来の目的を達成でき、かつ、レンズの変形が実質的に無視できるような条件を見つけることは容易なことではなかった。
また、プラスチックレンズは、耐擦傷性向上のために、通常、その表面にハードコート処理を施す。ハードコート処理は、一般的に、プラスチックレンズ表面の塗布膜を加熱硬化して、ハードコート膜を形成することにより行われる。アニール工程の加熱によるレンズの変形を抑制することができても、その後の、ハードコート膜形成工程の加熱によりレンズが変形した場合、不良品となってしまっていた。
特許文献1には、レンズを構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度雰囲気内に、規格外となったレンズを所定の時間放置することにより、レンズの自重によってレンズを整形する方法が記載されている。
特許文献2および3には、プラスチックレンズ成形体の凸面を下向きにしてレンズ最外周部の水平面を点あるいは線あるいは面によって支持して加熱処理することで、変形を抑制する方法が記載されている。また、この方法は変形したプラスチックレンズの再生方法としても有用であることも記載されている。なお、特許文献2および3に記載の技術は、特に乱視度数のついた眼鏡用のプラスチックレンズ成形体をアニールする方法として検討されてきたものである。
特許文献4には、プラスチックレンズ成形体を特殊な形状のレンズ保持装置に載置して、アニールを行う方法が記載されている。この技術も、特に乱視度数のついた眼鏡用のプラスチックレンズ成形体をアニールする方法として検討されてきたものである。
特許文献5には、トレイ上に不均一な微細凹凸部を有する紙片を敷き、プラスチックレンズ成形体の凹面側を下側に向けて同紙片上に載置した状態でアニールを行う方法が記載されている。
特開平5−303001号公報 特開平6−300993号公報 特開平8−309872号公報 特開平7−108622号公報 特開2008−268618号公報
近年、レンズを薄くすることが可能となるように、眼鏡レンズ材料としてのプラスチックに高屈折率が求められ、さらには低分散、衝撃強度、加工性(切削研磨、ハードコート処理や染色)などの性能も重要となってきている。そのため、必ずしも耐熱性が高いとは言えないレンズ材料を用いることが増えてきている。レンズ材料の種類やレンズ形状によっては、レンズの変形が実質的に無視できるような条件での加熱処理に十分な効果が得られない場合も多くなってきている。
加えて、特許文献1〜5に記載の技術では、プラスチックレンズの製造における、レンズ変形の抑制や非点収差(アスティグマ)の抑制に改善の余地があった。さらに、規格外と判断された、変形したレンズや非点収差(アスティグマ)が生じたレンズの整形にも改善の余地があった。特に、プラスチックレンズ内部や表層部に一軸延伸フィルムを組みこんだ構造の偏光レンズにおいては、そのような傾向が顕著であった。
本発明者らは、種々検討した結果、驚くべきことに、プラスチックレンズ成形体に荷重をかけてアニール工程を行うことで、加熱によるレンズの変形が抑制され非点収差(アスティグマ)が改善されることを見出した。また、規格外と判断されたプラスチックレンズに荷重をかけて再度アニール処理を行うことは、変形したプラスチックレンズの再生方法としても有用であることも見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下に示すことができる。
[1] 凸面を備えるプラスチックレンズ成形体の非点収差(アスティグマ)を測定する工程と、
該工程の後、非点収差が0.05D以上のプラスチックレンズ成形体の前記凸面側および/または該凸面の裏面側から荷重をかけながら、該プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度以上、ガラス転移温度+30℃以下の温度下で加熱し、非点収差を0.04D以下とする工程を含む、プラスチックレンズの再生方法。
[2] 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、
非点収差が0.05D以上のプラスチックレンズ成形体の前記凸面側および/または該凸面の裏面側から荷重をかけながら、該プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度以上、ガラス転移温度+30℃以下の温度下で加熱すると共に、その加熱時間を0.1〜30時間とする加熱工程と、
前記加熱工程の後に、前記加熱工程を経たプラスチックレンズ成形体を0.5〜20時間かけて空冷する冷却工程とを含む、
[1]に記載のプラスチックレンズの再生方法。
] 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、
該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を支持部材で支持しながら、該凸面が前記支持部材と非接触の状態で行う、[1]または[2]に記載のプラスチックレンズの再生方法。
] 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、
該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を、上端部により下方から支持する支持部材を備える治具を用い、
該プラスチックレンズ成形体を、前記支持部材の前記上端部に載置し、該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を支持しながら、該凸面が前記支持部材および前記治具と非接触の状態で行う、[]に記載のプラスチックレンズの再生方法。
] 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、前記凸面側および/または前記裏面側から、前記プラスチックレンズ成形体に対し成形体重量の1〜50倍の荷重をかけながら行う、[1]〜[]のいずれかに記載のプラスチックレンズの再生方法。
] 前記プラスチックレンズ成形体がハードコートされていないレンズである[1]〜[]のいずれかに記載のプラスチックレンズの再生方法。
] 前記プラスチックレンズ成形体がハードコートされたレンズである[1]〜[]に記載のプラスチックレンズの再生方法。
] [1]〜[]のいずれかに記載のプラスチックレンズがプラスチック偏光レンズである、プラスチック偏光レンズの再生方法。
なお、本発明におけるプラスチックレンズ成形体とは、注型重合あるいは射出(圧縮)成型の型から離型した直後のプラスチックレンズを意味する。プラスチックレンズ成形体は、生地プラスチックレンズと呼ぶこともできる。
本発明のプラスチックレンズの再生方法によれば、アニール工程やハードコート膜形成工程の加熱等による変形や非点収差(アスティグマ)の発生により、規格外となったプラスチックレンズを簡便な方法で再生することができる。これにより、レンズ製品の歩留りを劇的に改善することができる。
特に、プラスチックレンズ内部や表層部に一軸延伸フィルムを組みこんだ構造の偏光レンズの製造方法あるいは再生方法として極めて有用である。
実施の形態において用いられる、プラスチックレンズを製造するための注型用鋳型を模式的に示した断面図である。 実施の形態において用いられる、プラスチック偏光レンズを製造するための注型用鋳型を模式的に示した断面図である。 第1の実施形態の、プラスチックレンズまたはプラスチック偏光レンズの製造方法または再生方法におけるアニール工程を模式的に示した断面図である。 第2の実施形態の、プラスチックレンズまたはプラスチック偏光レンズの製造方法または再生方法におけるアニール工程を模式的に示した断面図である。 第3の実施形態の、プラスチックレンズまたはプラスチック偏光レンズの製造方法または再生方法におけるアニール工程を模式的に示した断面図である。
<プラスチックレンズの製造方法>
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、凸面を備えるプラスチックレンズ成形体の該凸面側および/または該凸面の裏面側から荷重をかけながら、該プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する工程を含む。
ガラス転移温度とは、Tg点とも呼ばれる樹脂の耐熱性の指標であり、TMAペネトレーション法等で測定される。
プラスチックレンズ成形体の製造方法は特に限定されず、当該成形体が熱可塑性樹脂からなる場合は、射出成型、圧縮成型、押出成型、射出圧縮成型等の公知の各種成型方法を挙げることができる。プラスチックレンズ成形体が熱硬化性樹脂からなる場合は、重合性組成物を用いた注型成形等を挙げることができる。
以下の本実施形態においては、重合性組成物を用いた注型成形により説明する。
以下、本発明のプラスチックレンズの製造方法の実施の形態を、適宜図面を参照しながら説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
[第1の実施形態]
本実施形態のプラスチックレンズの製造方法は、以下の工程を備える。
工程a:プラスチックレンズ成形体の凸状の対物面を形成するための凹面を有する第1モールド基板と、対向して配置される第2モールド基板と、前記第1モールド基板および前記第2モールド基板の外縁を覆い、これらを所定距離離間して固定する固定部材と、からなるレンズ注型用鋳型内に、重合性組成物を注入する。
工程b:レンズ注型用鋳型内で前記重合性組成物を硬化する。
工程c:硬化した樹脂をレンズ注型用鋳型から離型し、凸面を備えるプラスチックレンズ成形体を得る。
工程d:プラスチックレンズ成形体の凸面の裏面側から荷重をかけながら、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する。
[工程a]
工程aで用いられる重合性組成物は、モノマー等の成分を含む。まず、各成分について説明する。
モノマーとしては、注型重合可能なものであれば特に制限を受けないが、(チオ)ウレタン系モノマー、アリル系モノマー、エピスルフィド系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、ウレタンウレア系モノマー、エポキシ系モノマーなどが挙げられる。これらを混合して用いてもよい。
(チオ)ウレタン系モノマーは、イソ(チオ)シアネート化合物と活性水素化合物の混合物である。
イソ(チオ)シアネート化合物としては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、α,α,α′,α′−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、メシチリレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン等の脂肪族ポリイソシアネート化合物;
イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソシアネート化合物;
1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'− ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルスルフィド−4,4−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物;
2,5−ジイソシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)チオフェン、2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン等の複素環ポリイソシアネート化合物;等を挙げることができる。
また、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。
イソチオシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、リジンジイソチオシアネートメチルエステル、リジントリイソチオシアネート、m−キシリレンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソチオシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソチオシアナトエチル)ジスルフィド等の脂肪族ポリイソチオシアネート化合物;
イソホロンジイソチオシアネート、ビス(イソチオシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、メチルシクロヘキサンジイソチオシアネート、2,5−ビス(イソチオシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソチオシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、3,8−ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(イソチオシアナトメチル)トリシクロデカン等の脂環族ポリイソチオシアネート化合物;
トリレンジイソチオシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソチオシアネート、ジフェニルジスルフィド−4,4−ジイソチオシアネート等の芳香族ポリイソチオシアネート化合物;
2,5−ジイソチオシアナトチオフェン、2,5−ビス(イソチオシアナトメチル)チオフェン、2,5−イソチオシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ビス(イソチオシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4−ビス(イソチオシアナトメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソチオシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ビス(イソチオシアナトメチル)−1,4−ジチアン、4,5−ジイソチオシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソチオシアナトメチル)−1,3−ジチオラン等の含硫複素環ポリイソチオシアネート化合物;等を挙げることができる。
また、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。
活性水素化合物としては、ポリオール化合物、ポリチオール化合物などが挙げられる。ポリオール化合物は、1種以上の脂肪族または脂環族アルコールであり、具体的には、直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコール、脂環族アルコール、これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンを付加させたアルコール等が挙げられる。
直鎖または分枝鎖の脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)等が挙げられる。
脂環族アルコールとしては、例えば、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、4,4'−ビシクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
これらアルコールとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンを付加させた化合物でもよい。例えば、グリセロールのエチレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加体、グリセロールのプロピレンオキサイド付加体、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加体、ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加体、カプロラクトン変性グリセロール、カプロラクトン変性トリメチロールプロパン、カプロラクトン変性ペンタエリスリトール等が挙げられる。
ポリチオール化合物としては、例えば、メタンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等の脂肪族ポリチオール化合物;
1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール等の芳香族ポリチオール化合物;
2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、3,4−チオフェンジチオール、ビスムチオール、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタン等の複素環ポリチオール化合物;等が挙げられる。
アリル系モノマーとしては、例えば、アリルジグリコールカーボネート(ジエチレングリコールジアリルカーボネート)、ネオペンチルグリコールジアリルカーボネート、ペンタエリスリトールのアリルカーボネート体やジアリルフタレート等が挙げられる。
エピスルフィド系モノマーとしては、例えば、ビス(1,2−エピチオエチル)スルフィド、ビス(1,2−エピチオエチル)ジスルフィド、ビス(エピチオエチルチオ)メタン、ビス(エピチオエチルチオ)ベンゼン、ビス[4−(エピチオエチルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(エピチオエチルチオ)フェニル]メタン等のエピチオエチルチオ化合物;
ビス(2,3−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4−(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(2,3−エピチオプロピルチオ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルチオ)フェニル]スルホン、4,4'−ビス(2,3−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族の2,3−エピチオプロピルチオ化合物;
ビス(2,3−エピチオプロピル)エーテル、ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)メタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)エタン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−メチルヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−1−(2,3−エピチオプロピルオキシ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアペンタン、1−(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4−(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−2,4,5−トリス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,1,1−トリス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]−2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エタン、1,1,2,2−テトラキス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]エタン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,8−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−4,7−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)−5,7−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等の鎖状脂肪族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物;
1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[[2−(2,3−エピチオプロピルオキシ)エチル]チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等の環状脂肪族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物;および、
1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシメチル)ベンゼン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2,3−エピチオプロピルオキシ)フェニル]スルホン、4,4'−ビス(2,3−エピチオプロピルオキシ)ビフェニル等の芳香族の2,3−エピチオプロピルオキシ化合物;等が挙げられる。
エピスルフィド系モノマーは、ポリチオールなどの活性水素化合物と一緒に使用されることもある。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルカンポリオールポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
(メタ)アクリル系モノマーは、ポリチオールなどの活性水素化合物やアリル系モノマーと一緒に使用されることもある。
ウレタンウレア系モノマーは、イソ(チオ)シアネート化合物とアミン化合物と活性水素化合物との混合物であり、イソ(チオ)シアネート化合物と活性水素化合物としては、例えば前述の化合物が、アミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペラジン、モルホリン、置換モルホリン、ピペリジン、置換ピペリジン、ジエチレンジアミン、2−アミノ−1−エチルピペラジン、2,4−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン、2,6−ジアミノ−3,5−ジエチルトルエン、ジイソプロピルトルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4'−メチレンビス(2−クロロアニリン)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4,4'−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4'−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)などを挙げることができる。
エポキシ系モノマーとしては、例えば、ビスフェノールAグリシジルエーテル、ビスフェノールFグリシジルエーテル等の多価フェノール化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合反応により得られるフェノール系エポキシ化合物;水添ビスフェノールAグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノール等の多価アルコール化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるアルコール系エポキシ化合物;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートや1,2−ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の多価有機酸化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるグリシジルエステル系エポキシ化合物;一級および二級アミン化合物とエピハロヒドリン化合物との縮合により得られるアミン系エポキシ化合物等が挙げられる。また、その他、4−ビニル−1−シクロヘキサンジエポキシドなどのビニルシクロヘキセンジエポキシド等脂肪族多価エポキシ化合物等を挙げることができる。
エポキシ系モノマーは、ポリチオールやポリアミンなどの活性水素化合物と一緒に使用されることもある。
その他のモノマーとしては、例えば、ポリチエタン化合物などが挙げられる。
また、これらのモノマーを複数含んでいてもよい。
触媒としては、モノマーの種別によって使用する触媒が異なるが、公知公用の触媒を使用することができる。
例えば、(チオ)ウレタン系モノマーの場合、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート等の錫系化合物、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のアミン系化合物等が好んで用いられる。
アリル系モノマーや(メタ)アクリル系モノマーの場合は、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド等の光重合開始剤等が用いられる。
エピスルフィド系モノマーの場合は、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリフェニルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−イソプロピルモルホリン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、β−ピコリン、N,N'−ジメチルピペラジン、N−メチルピペリジン、2,2'−ビピリジル、ヘキサメチレンテトラミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の3級アミン類、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリn−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリn−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン等のホスフィン類、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラクロロ錫、ジブチル錫オキサイド、ジアセトキシテトラブチルジスタノキサン、塩化亜鉛、アセチルアセトン亜鉛、塩化アルミ、フッ化アルミ、トリフェニルアルミ、テトラクロロチタン、酢酸カルシウム等のルイス酸類、2,2'−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、n−ブチル−4,4'−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のラジカル重合触媒、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ燐酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロ砒酸、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロ硼酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ燐酸、トリフェニルスルフォニウムヘキサフルオロ砒酸等のカチオン重合触媒やこれらの混合物が挙げられる。
触媒の添加量は、通常は、1ppm〜5%の範囲である。
その他の添加剤としては、例えば、内部離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、油溶染料、調光色素、特定波長カット色素、ブルーイング剤、鎖延長剤、架橋剤、充填剤などが挙げられる。
内部離型剤は、例えば酸性リン酸エステルが挙げられる。リン酸モノエステル、リン酸ジエステルを挙げることができ、それぞれ単独または2種類以上混合して使用することできる。三井化学社製のMR用内部離型剤、STEPAN社製のZelecUN、城北化学工業社製のJPシリーズ、東邦化学工業社製のフォスファノールシリーズ、大八化学工業社製のAP、DPシリーズ等が好ましく、三井化学社製のMR用内部離型剤、STEPAN社製のZelecUNがより好ましい。その添加量は、重合性組成物100重量部に対して、通常は0.001重量部〜3重量部、好ましくは0.01重量部〜0.5重量部の範囲である。
紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物が好ましく、ベンゾトリアゾール系化合物がより好ましい。その添加量は、重合性組成物100重量部に対して通常は0.01重量部〜5重量部、好ましくは0.05重量部〜2重量部の範囲である。
重合性組成物は、モノマーと触媒等の添加剤を混合し、通常は0.1〜100Torr程度の減圧下で0.1〜5時間程度脱気し、通常は0.1〜10μm程度のフィルターにより濾過したうえで、図示しない所定の注入手段によりレンズ注型用鋳型内18に注入する。
工程aにおいては、図1に示されるような、プラスチックレンズ成形体の凸状の対物面を形成するための凹面12aを有する第1モールド基板12と、対向して配置される第2モールド基板14と、第1モールド基板12および第2モールド基板14の外縁を覆い、これらを所定距離離間して固定する固定部材16と、からなるレンズ注型用鋳型10を用い、このレンズ注型用鋳型内18に、重合性組成物を注入する。
光学材料用重合性組成物の鋳型内への注入は、従来公知の方法により行うことができ、例えば手動で注入を行うことも、または混合・注入機を用いて行うこともできる。
レンズ注型用鋳型10は、鏡面研磨した第1モールド基板12および第2モールド基板14を、テープやガスケット等の固定部材16にて固定化したものが一般的である。
第1モールド基板12および第2モールド基板14の材料としては、ガラス、プラスチック、金属等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。第1モールド基板12および第2モールド基板14には、得られたレンズの離型性を向上させるために予め離型剤を塗付してもよい。また、レンズ材料にハードコート性能を付与するためのコート液を予めモールドに塗付してもよい。
テープは、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、テフロン(登録商標)、ポリシロキサン樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース等、及びそれらの混合/共重合物等のベース基材にシロキサン系、(メタ)アクリル系、エポキシ系、ゴム系等の粘着剤を塗工したものが用いられる。テープの水蒸気透過度を下げることを目的として、例えば、珪素酸化物等を蒸着させて石英膜等を形成させたり、有機系コート剤、無機系コート剤、又はそれらの混合物をコートをしたり、水蒸気透過度の低い別の基材を貼り合わせたりすることも行われる。テープの厚みは、操作性、成型物の寸法安定性、重ね部分境界線付近の気密性、及び強度の面等から、通常は10〜200μmの範囲のものが良く用いられる。
ガスケットは、通常、熱可塑性樹脂を用いて得られた成型品を好適に用いることができ、成形性、柔軟性、耐熱性、耐モノマー安定性及び価格等の観点から、オレフィン系エラストマーを用いることが多い。オレフィン系エラストマーの具体例としては、低密度ポリエチレンからなるポリエチレン系エラストマー、ポリプロピレンホモポリマーにゴム成分を微分散させたポリプロピレン系エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アルキルアクリレート共重合体などが挙げられる。
[工程b]
次いで、レンズ注型用鋳型内18に注入された重合性組成物を硬化する。
具体的には、まず、重合性組成物が注入された注型用鋳型をオーブンや温水中等の加熱可能装置内で、加熱、あるいは活性エネルギー線を照射して重合を行うことで重合硬化し、樹脂化する。
加熱による重合を行う場合、重合温度はモノマーや触媒(重合開始剤)の種類や量などの条件により影響されるので、限定されるものではないが、通常は−50〜200℃の範囲であり、好ましくは、−20〜170℃の範囲であり、より好ましくは、0〜150℃の範囲である。低温から高温へ徐々に加熱して重合することが好ましい。
通常、0℃から40℃の範囲の温度で開始し、その後徐々に80℃から150℃の範囲にまで昇温させ、その温度で1時間から6時間加熱したのち徐冷するのが一般的である。
重合時間は、重合温度により影響されるが、通常は0.01〜200時間であり、好ましくは、0.05〜100時間である。また必要に応じて、低温や昇温、降温などを行っていくつかの温度を組み合わせて重合を行うことも可能である。
電子線、紫外線や可視光線などの活性エネルギー線を照射することによっても重合を行うことができ、この際必要に応じ、活性エネルギー線によって重合開始するラジカル重合触媒やカチオン重合触媒が用いられる。
[工程c]
硬化した樹脂をレンズ注型用鋳型10から離型し、凸面を備えるプラスチックレンズ成形体を得ることができる。なお、プラスチックレンズ成形体の厚みは通常0.1〜150mm程度である。
プラスチックレンズ成形体は、必要に応じ丸めあるいはエッジダウンと呼ばれる外周切削加工や、洗浄を行うことで、本実施形態のプラスチックレンズ成形体を得ることができる。レンズ注型用鋳型の形状によって、フィニッシュトレンズ、セミフィニッシュトレンズ、球面レンズ、非球面レンズ、多重焦点レンズ、累進焦点レンズなど種々のプラスチックレンズ成形体を得ることができる。
[工程d]
離型されたプラスチックレンズ成形体は、レンズ内の未反応モノマーの硬化、樹脂の重合度の向上、重合中に生じたレンズ内部の歪の除去などの目的でアニ−ルと呼ばれる加熱処理が施される。加熱処理は、プラスチックレンズ成形体に凸面の裏面側から荷重をかけた状態で実施される。
例えば、図3に示されるような、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの外周縁端部34cを、上端部32aにより下方から支持する支持部材32を備える治具30を用いることができる。なお、治具30としては、プラスチックレンズ成形体34の外周縁端部34cの少なくとも3点を支持し、さらに凸面34aに接触することがなければ、種々の形状を採用することができる。
例えば、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、かつプラスチックレンズ成形体34の直径より大きい直径を有する凹形状の台座を用いることができる。同様の形状の凹面を上部に持つモールド基板も台座として好ましく用いることができる。台座の材質はアニールの際の加熱に耐えられるものであれば制限はないが、ガラスや金属が好ましい。
プラスチックレンズ成形体34を、凸面34aを下にして支持部材32の上端部32aに載置する。その際、レンズ面保護のため、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの外周部あるいは外周部近傍(外周縁端部34c)のみを支持しながら、外周縁端部34cを除く凸面34aが支持部材32および治具30と接触しないようにすることが好ましい。
次いで、プラスチックレンズ成形体34の裏面34bに重り36を乗せて荷重をかける。重りは、プラスチックレンズ成形体34の外周部全体に平均して荷重がかかるような形状が好ましい。レンズ面保護のため、重り36はレンズ凹面(裏面34b)の外周部あるいは外周部近傍以外はプラスチックレンズ成形体に接触させないようにするのが好ましい。
重り36は、例えば、図3に示すようなプラスチックレンズ成形体34より外径の大きいドーナッツ状のものを用いることができるが、プラスチックレンズ成形体36より径の大きい円盤や、プラスチックレンズ成形体34より面積の広い平板なども用いることができる。これらの上に、更に重りを載せることも可能である。
重りの材質は、アニールの際の加熱に耐えられるものであれば制限はないが、金属やガラスが好ましい。
重りの重さは、処理するプラスチックレンズ成形体の種類や形状、処理温度、処理時間などによって異なるが、通常は処理するレンズの重量の1〜50倍の範囲、好ましくは処理するレンズの重量の2〜30倍の範囲、更に好ましくは処理するレンズの重量の3〜20倍の範囲である。
加熱処理の温度は、通常は、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂の「ガラス転移温度−20℃」以上、好ましくはプラスチックレンズ成形体のガラス転移温度以上で実施される。加熱処理の温度の上限値は、レンズの着色防止や面異常発生防止の観点から、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度+50℃以下、好ましくはプラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度+30℃以下とすることができる。
具体的な温度は、プラスチックレンズ成形体の種類や形状により異なるが、通常は60〜180℃の範囲、好ましくは80〜150℃の範囲である。処理時間は、本発明の効果の観点から、通常は0.1〜30時間の範囲、好ましくは0.5〜20時間の範囲である。
処理は、プラスチックレンズ成形体を台座と重りをセットしたまま、オーブンに入れて実施するのが好ましい。ベルトコンベアに載せて流すことでも構わない。
アニール終了後、レンズを冷却してプラスチックレンズを得ることができる。レンズを冷却する方法に制限はないが、0.5〜20時間かけてゆっくりと空冷することが好ましい。レンズは重りと台座にセットされた状態で空冷しても、冷却の最初からあるいは冷却の途中で、重りを外してあるいは台座から外してあるいはその両方を行って冷却しても構わない。
このような方法で加熱処理を行うことで、レンズ内の未反応モノマーの硬化、熱硬化性樹脂の重合度の向上、重合中に生じたレンズ内部の歪の除去などのアニールの目的を達成でき、かつ、得られるプラスチックレンズの変形は実質的に無視できるレベルとすることができる。
本実施形態において、眼鏡用のプラスチックレンズの変形は、非点収差(アスティグマ)によって管理することができる。非点収差(アスティグマ)は、例えば、FOCOVISION SR−2(Automation&Robotics社製)を使用して25℃にて測定することができる。
球面レンズでは、通常、非点収差0.06D以下が求められ、0.04D以下が好ましいとされている。非点収差が0.07D以上の球面レンズは、規格外とされることが多い。本実施形態の方法で加熱処理を行うことで、非点収差が改善される。
工程dの後、プラスチックレンズ成形体に対して以下の処理を施すことができる。
本実施形態で得られるプラスチックレンズは、必要に応じ、片面又は両面にコーティング層を施して用いられる。コーティング層としては、プライマー層、ハードコート層、反射防止膜層、防曇コート層、防汚染層、撥水層等が挙げられる。これらのコーティング層は、それぞれ単独で使用しても複数のコーティング層を多層化して使用してもよい。両面にコーティング層を施す場合、それぞれの面に同様なコーティング層を施しても異なるコーティング層を施してもよい。
例えば、プラスチックレンズ成形体上にハードコート層を形成する場合、通常、仮硬化(予備硬化)工程と本硬化工程により実施することができる。仮硬化工程とは、例えば、溶媒に溶解させたハードコート剤をレンズに塗布した後、溶媒を除去するために一旦、熱を掛ける工程である。一方、本硬化工程とは、例えば、仮硬化工程において溶媒除去後、コート剤が塗布されたレンズ基材を加熱してコート剤を硬化させる工程である。仮硬化工程においてレンズの変形や非点収差(アスティグマ)により規格外と判断された場合は、本硬化工程において、プラスチックレンズ成形体の加熱処理(上記工程d)を行うことにより、変形やアスティグマ値を改善することができる。なお、レンズの変形や非点収差(アスティグマ)により規格内と判断された場合であっても、本硬化工程において、プラスチックレンズ成形体の加熱処理(上記工程d)を行ってもよい。
これらのコーティング層には、それぞれ、紫外線からレンズや目を守る目的で紫外線吸収剤、赤外線から目を守る目的で赤外線吸収剤、レンズの耐候性を向上させる目的で光安定剤や酸化防止剤、レンズのファッション性を高める目的で染料や顔料、さらにフォトクロミック染料やフォトクロミック顔料、帯電防止剤、その他、レンズの性能を高める目的で公知の添加剤を併用してもよい。塗布性の改善を目的として各種レベリング剤を使用してもよい。
プライマー層は、一般的には、ハードコート層の密着性やレンズの耐衝撃性の向上を目的に、レンズ基材とハードコート層との間に形成され、その膜厚は、通常、0.1〜10μm程度である。
プライマー層は、例えば、塗布法や乾式法にて形成される。塗布法では、プライマー組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、固化させることによりプライマー層が形成される。乾式法では、CVD法や真空蒸着法などの公知の乾式法で形成される。プライマー層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じて、レンズの表面をアルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行ってもよい。
プライマー組成物としては、固化したプライマー層がレンズ基材と密着性の高い素材が好ましく、通常、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラニン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。プライマー組成物は、無溶剤での使用も可能であるが、組成物の粘度を調整する等の目的でレンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。
ハードコート層は、レンズ表面に耐擦傷性、耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等の機能を与えることを目的としたコーティング層であり、その膜厚は、通常、0.3〜30μm程度である。
ハードコート層は、通常、ハードコート組成物をスピンコート、ディップコートなど公知の塗布方法で塗布した後、硬化して形成される。硬化方法としては、熱硬化、紫外線や可視光線などのエネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。ハードコート層を形成するに際し、密着性の向上を目的として、必要に応じて、被覆表面(レンズ基材あるいはプライマー層)に、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行ってもよい。
ハードコート組成物としては、一般的には、硬化性を有する有機ケイ素化合物とSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,InおよびTi等の酸化物微粒子(複合酸化物微粒子を含む)の混合物が使用されることが多い。更にこれらの他に、アミン類、アミノ酸類、金属アセチルアセトネート錯体、有機酸金属塩、過塩素酸類、過塩素酸類の塩、酸類、金属塩化物および多官能性エポキシ化合物等を使用してもよい。ハードコート組成物は、無溶剤での使用も可能であるが、レンズに影響を及ぼさない適当な溶剤を用いてもよい。
反射防止層は、必要に応じて、通常、ハードコート層の上に形成される。反射防止層には無機系と有機系があり、無機系の場合は、一般的には、SiO、TiO等の無機酸化物を用いて真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、CVD法等の乾式法により形成されることが多い。有機系の場合は、一般的には、有機ケイ素化合物と、内部空洞を有するシリカ系微粒子とを含む組成物を用いて湿式により形成されることが多い。
反射防止層は単層であっても多層であってもよいが、単層で用いる場合はハードコート層の屈折率よりも屈折率が少なくとも0.1以上低くなることが好ましい。効果的に反射防止機能を発現するには多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、通常は、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。この場合も低屈折率膜と高屈折率膜との屈折率差は0.1以上であることが好ましい。高屈折率膜としては、例えば、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、ZrO、Ta等の膜が、低屈折率膜としては、SiO膜等が挙げられる。膜厚は、通常、50〜150nm程度である。
さらに、本実施形態で得られるプラスチックレンズは、必要に応じ、外周研磨、裏面研磨、帯電防止処理、染色処理、調光処理等を施してもよい。
このようなプラスチックレンズは、メガネ用のレンズ、特に視力補正用レンズとして有用である。
[第2の実施形態]
本実施形態のプラスチックレンズの製造方法は、以下の工程を備える。
工程a:プラスチックレンズ成形体の凸状の対物面を形成するための凹面を有する第1モールド基板と、対向して配置される第2モールド基板と、前記第1モールド基板および前記第2モールド基板の外縁を覆い、これらを所定距離離間して固定する固定部材と、からなるレンズ注型用鋳型内に、重合性組成物を注入する。
工程b:レンズ注型用鋳型内で前記重合性組成物を硬化する。
工程c:硬化した樹脂をレンズ注型用鋳型から離型し、凸面を備えるプラスチックレンズ成形体を得る。
工程d:プラスチックレンズ成形体の凸面側から荷重をかけながら、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する。
なお、工程a〜工程cは第1の実施形態と同様に実施することができ、説明を省略する。
[工程d]
離型されたプラスチックレンズ成形体は、レンズ内の未反応モノマーの硬化、樹脂の重合度の向上、重合中に生じたレンズ内部の歪の除去などの目的でアニ−ルと呼ばれる加熱処理が施される。加熱処理は、プラスチックレンズ成形体に凸面側から荷重をかけた状態で実施される。
例えば、図4に示されるような、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの外周縁端部34cを、上端部32aにより下方から支持する支持部材32を備える治具30を用いることができる。なお、治具30としては、プラスチックレンズ成形体34の外周縁端部34cの少なくとも3点を支持し、さらに凸面34aに接触することがなければ、種々の形状を採用することができる。
例えば、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、かつプラスチックレンズ成形体34の直径より大きい直径を有する凹形状の台座を用いることができる。同様の形状の凹面を上部に持つモールド基板も台座として好ましく用いることができる。台座の材質はアニールの際の加熱に耐えられるものであれば制限はないが、ガラスや金属が好ましい。
治具30は図示しない昇降手段を備えており、プラスチックレンズ成形体34が配設された状態で、静止部材38の方向へ、静止部材38の下面と平行を保ちながら上昇(移動)させることができる。昇降手段としては、油圧式昇降システムや電動昇降システム等を挙げることができる。
プラスチックレンズ成形体34を、凸面34aを下にして治具30の支持部材32の上端部32aに載置する。その際、レンズ面保護のため、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの外周部あるいは外周部近傍(外周縁端部34c)のみを支持しながら、外周縁端部34cを除く凸面34aが支持部材32および治具30と接触しないようにすることが好ましい。
次いで、昇降手段により、プラスチックレンズ成形体34が配設された治具30を、静止部材38の方向へ、静止部材38の下面と平行を保ちながら上昇(移動)させる。そして、静止部材38にプラスチックレンズ成形体34の裏面の一部を接触させて押圧し、プラスチックレンズ成形体34に荷重をかける。静止部材38の裏面34bとの接触面は、プラスチックレンズ成形体34の外周部全体に平均して荷重がかかるような形状が好ましい。レンズ面保護のため、静止部材38の接触面(下面)はレンズ凹面(裏面34b)の外周部あるいは外周部近傍以外はプラスチックレンズ成形体に接触させない形状とするのが好ましい。
静止部材38としては、治具30とプラスチックレンズ成形体34を囲繞する函体の上壁面等を挙げることができる。
荷重は、処理するプラスチックレンズ成形体の種類や形状、処理温度、処理時間などによって異なるが、通常は処理するレンズの重量の1〜50倍の範囲、好ましくは処理するレンズの重量の2〜30倍の範囲、更に好ましくは処理するレンズの重量の3〜20倍の範囲である。
なお、プラスチックレンズ成形体への荷重は、例えば、油圧、圧縮空気圧力、ネジ締め付けトルク、バネ圧力によって制御することができる。
加熱処理の温度は、通常は、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂の「ガラス転移温度−20℃」以上、好ましくはプラスチックレンズ成形体のガラス転移温度以上で実施される。加熱処理の温度の上限値は、レンズの着色防止や面異常発生防止の観点から、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度+50℃以下、好ましくはプラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度+30℃以下とすることができる。
具体的な温度は、プラスチックレンズ成形体の種類や形状により異なるが、通常は60〜180℃の範囲、好ましくは80〜150℃の範囲である。処理時間は、本発明の効果の観点から、通常は0.1〜30時間の範囲、好ましくは0.5〜20時間の範囲である。
処理は、プラスチックレンズ成形体34が治具30により函体の上壁面に押圧された状態で、この函体を、オーブンに入れて実施するのが好ましい。ベルトコンベアに載せて流すことでも構わない。
アニール終了後、レンズを冷却してプラスチックレンズを得ることができる。レンズを冷却する方法に制限はないが、0.5〜20時間かけてゆっくりと空冷することが好ましい。レンズは重りと台座にセットされた状態で空冷しても、冷却の最初からあるいは冷却の途中で、重りを外してあるいは台座から外してあるいはその両方を行って冷却しても構わない。
このような方法で加熱処理を行うことで、レンズ内の未反応モノマーの硬化、熱硬化性樹脂の重合度の向上、重合中に生じたレンズ内部の歪の除去などのアニールの目的を達成でき、かつ、得られるプラスチックレンズの変形は実質的に無視できるレベルとすることができる。
本実施形態において、眼鏡用のプラスチックレンズの変形は、非点収差(アスティグマ)によって管理することができる。非点収差(アスティグマ)は、例えば、FOCOVISION SR−2(Automation&Robotics社製)を使用して25℃にて測定することができる。
球面レンズでは、通常、非点収差0.06D以下が求められ、0.04D以下が好ましいとされている。非点収差が0.07D以上の球面レンズは、規格外とされることが多い。本実施形態の方法で加熱処理を行うことで、非点収差が改善される。
工程dの後、第1の実施形態と同様な処理を行い、プラスチックレンズを得ることができる。
[第3の実施形態]
本実施形態のプラスチックレンズの製造方法は、以下の工程を備える。
工程a:プラスチックレンズ成形体の凸状の対物面を形成するための凹面を有する第1モールド基板と、対向して配置される第2モールド基板と、前記第1モールド基板および前記第2モールド基板の外縁を覆い、これらを所定距離離間して固定する固定部材と、からなるレンズ注型用鋳型内に、重合性組成物を注入する。
工程b:レンズ注型用鋳型内で前記重合性組成物を硬化する。
工程c:硬化した樹脂をレンズ注型用鋳型から離型し、凸面を備えるプラスチックレンズ成形体を得る。
工程d:プラスチックレンズ成形体の凸面側および該凸面の裏面側から荷重をかけながら、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する。
なお、工程a〜工程cは第1の実施形態と同様に実施することができ、説明を省略する。
[工程d]
離型されたプラスチックレンズ成形体は、レンズ内の未反応モノマーの硬化、樹脂の重合度の向上、重合中に生じたレンズ内部の歪の除去などの目的でアニ−ルと呼ばれる加熱処理が施される。加熱処理は、プラスチックレンズ成形体に凸面側および該凸面の裏面側から荷重をかけた状態で実施される。
例えば、図5に示されるような、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの外周縁端部34cを、上端部32aにより下方から支持する支持部材32を備える治具30を用いることができる。なお、治具30としては、プラスチックレンズ成形体34の外周縁端部34cの少なくとも3点を支持し、さらに凸面34aに接触することがなければ、種々の形状を採用することができる。
例えば、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの曲率半径よりも小さい曲率半径を有し、かつプラスチックレンズ成形体34の直径より大きい直径を有する凹形状の台座を用いることができる。同様の形状の凹面を上部に持つモールド基板も台座として好ましく用いることができる。台座の材質はアニールの際の加熱に耐えられるものであれば制限はないが、ガラスや金属が好ましい。
さらに、プラスチックレンズ成形体34の裏面34bの外周縁端部上に板状部材42を載置し、治具30と板状部材42を挟み込む狭持部材44を用いることができる。板状部材42を載置することにより、プラスチックレンズ成形体34に均一に荷重を掛けることができる。板状部材42の裏面34bとの接触面は、プラスチックレンズ成形体34の外周部全体に平均して荷重がかかるような形状が好ましい。レンズ面保護のため、板状部材42の接触面(下面)はレンズ凹面(裏面34b)の外周部あるいは外周部近傍以外はプラスチックレンズ成形体に接触させない形状とするのが好ましい。
狭持部材44は断面略コ字形状を有しており、2つの横設部分が治具30の下面または板状部材42の上面に各々当接する。2つの横設部分は独立して上下動可能に構成されていてもよく、一方のみが上下動可能に構成されていてもよい。これにより、狭持部材44がプラスチックレンズ成形体34を両面から押圧し、プラスチックレンズ成形体34に荷重をかけることができる。横設部分は、油圧、圧縮空気圧、電気等により、上下動することができる。治具30または板状部材42の材質はアニールの際の加熱に耐えられるものであれば制限はないが、金属が好ましい。
本工程においては、プラスチックレンズ成形体34を、凸面34aを下にして治具30の支持部材32の上端部32aに載置する。その際、レンズ面保護のため、プラスチックレンズ成形体34の凸面34aの外周部あるいは外周部近傍(外周縁端部34c)のみを支持しながら、外周縁端部34cを除く凸面34aが支持部材32および治具30と接触しないようにすることが好ましい。
次いで、プラスチックレンズ成形体34の裏面34bの外周縁端部上に板状部材42を載置し、プラスチックレンズ成形体34および板状部材42が配設された治具30を狭持部材44に挟み込む。狭持部材44の横設部分の少なくとも一方を、プラスチックレンズ成形体34の厚さ方向に移動させる。そして、狭持部材44の2つの横設部分間の圧力でプラスチックレンズ成形体34を押圧し、プラスチックレンズ成形体34に荷重をかける。
荷重は、処理するプラスチックレンズ成形体の種類や形状、処理温度、処理時間などによって異なるが、通常は処理するレンズの重量の1〜50倍の範囲、好ましくは処理するレンズの重量の2〜30倍の範囲、更に好ましくは処理するレンズの重量の3〜20倍の範囲である。
なお、プラスチックレンズ成形体への荷重は、例えば、油圧、圧縮空気圧力、ネジ締め付けトルク、バネ圧力によって制御することができる。なお、板状部材42の重量を考慮する必要がある。
加熱処理の温度は、通常は、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂の「ガラス転移温度−20℃」以上、好ましくはプラスチックレンズ成形体のガラス転移温度以上で実施される。加熱処理の温度の上限値は、レンズの着色防止や面異常発生防止の観点から、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度+50℃以下、好ましくはプラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度+30℃以下とすることができる。
具体的な温度は、プラスチックレンズ成形体の種類や形状により異なるが、通常は60〜180℃の範囲、好ましくは80〜150℃の範囲である。処理時間は、本発明の効果の観点から、通常は0.1〜30時間の範囲、好ましくは0.5〜20時間の範囲である。
処理は、プラスチックレンズ成形体34および板状部材42が配設された治具30が狭持部材44で挟み込まれた状態で、オーブンに入れて実施するのが好ましい。ベルトコンベアに載せて流すことでも構わない。
アニール終了後、レンズを冷却してプラスチックレンズを得ることができる。レンズを冷却する方法に制限はないが、0.5〜20時間かけてゆっくりと空冷することが好ましい。レンズは狭持部材44に挟み込まれた状態で空冷しても、冷却の最初からあるいは冷却の途中で、狭持部材44から外して冷却しても構わない。
このような方法で加熱処理を行うことで、レンズ内の未反応モノマーの硬化、熱硬化性樹脂の重合度の向上、重合中に生じたレンズ内部の歪の除去などのアニールの目的を達成でき、かつ、得られるプラスチックレンズの変形は実質的に無視できるレベルとすることができる。
本実施形態において、眼鏡用のプラスチックレンズの変形は、非点収差(アスティグマ)によって管理することができる。非点収差(アスティグマ)は、例えば、FOCOVISION SR−2(Automation&Robotics社製)を使用して25℃にて測定することができる。
球面レンズでは、通常、非点収差0.06D以下が求められ、0.04D以下が好ましいとされている。非点収差が0.07D以上の球面レンズは、規格外とされることが多い。本実施形態の方法で加熱処理を行うことで、非点収差が改善される。
工程dの後、第1の実施形態と同様な処理を行い、プラスチックレンズを得ることができる。
<プラスチック偏光レンズの製造方法>
本発明が特に効果を発揮するのは、レンズ内部や表層部に一軸延伸フィルムを組みこんだ構造のプラスチック偏光レンズの場合である。一軸延伸フィルムは、偏光機能を発現させるために使用する光学フィルムで、通称、偏光フィルムと呼称される。
本発明のプラスチック偏光レンズの製造方法は、凸面を備えるプラスチック偏光レンズ成形体の該凸面側および/または該凸面の裏面側から荷重をかけながら、該プラスチック偏光レンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する工程を含む。
プラスチック偏光レンズ成形体の製造方法は特に限定されず、当該成形体が熱可塑性樹脂からなる場合は、射出成型、圧縮成型、押出成型、射出圧縮成型、トランスファ成形や張り合わせ等を挙げることができる。
プラスチック偏光レンズ成形体が熱硬化性樹脂からなる場合は、重合性組成物を用いた注型成形等を挙げることができる。
本実施形態においては、重合性組成物を用いた注型成形により説明する。
以下、本発明のプラスチック偏光レンズの製造方法の実施の形態を、適宜図面を参照しながら説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
[第1の実施形態]
本実施形態のプラスチック偏光レンズの製造方法は、以下の工程を備える。
工程i:プラスチックレンズ成形体の凸状の対物面を形成するための凹面を有する第1モールド基板と、対向して配置される第2モールド基板と、前記第1モールド基板および前記第2モールド基板の外縁を覆い、これらを所定距離離間して固定する固定部材と、からなるレンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面が前記第1モールド基板または前記第2モールド基板から離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する。
工程ii:前記偏光フィルムと前記モールド基板との間の空隙に、前記重合性組成物を注入する。
工程iii:レンズ注型用鋳型内で前記重合性組成物を硬化する。
工程iv:硬化した樹脂をレンズ注型用鋳型から離型し、凸面を備えるプラスチック偏光レンズ成形体を得る。
工程v:プラスチック偏光レンズ成形体の凸面の裏面側から荷重をかけながら、プラスチック偏光レンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する。
[工程i]
図2に示すように、レンズ注型用鋳型20の空間内に、偏光フィルム22を、フィルム面が対向するフロント側の第1モールド基板12の内面12aと並行となるように設置する。偏光フィルム22と第1モールド基板12または第2モールド基板14との間には、各々空隙部24a,24bが形成される。空隙部24a,24bの最も間隙の狭い離間距離aは、0.1〜3.0mm程度である。偏光フィルム22が固定された注型用鋳型20に、重合性組成物を注入したのち重合硬化させて得られる。なお、本実施形態においては空隙部24a、24bに重合性組成物を注入する例によって説明するが、偏光フィルム22の少なくとも一方の面に樹脂層が積層されるように、空隙24aを備えない注型用鋳型20を用いることもできる。
偏光フィルム22としては、公知のものが使用でき、例えば、ヨウ素含有ポリビニルアルコール偏光フィルム、二色性染料含有ポリビニルアルコール偏光フィルム、二色性染料含有熱可塑性ポリエステル偏光フィルム等など種々のものを用いることができる。偏光フィルムの厚さは通常1〜500μm、好ましくは10〜300μmの範囲である。
偏光フィルム22は、単層構造であってもよいが、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアミド等のシートを一軸延伸フィルムの両面あるいは片面に積層させた積層構造とすることもできる。
偏光フィルム22は乾燥、安定化のため加熱処理を施したうえで使用してもよい。
さらに、偏光フィルム22は、プラスチックレンズ基材樹脂との密着性を向上させるために、プライマーコーティング処理、薬品処理(ガス又はアルカリ等の薬液処理)、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、粗面化処理、火炎処理などから選ばれる1種又は2種以上の前処理を行った上で使用してもよい。このような前処理のなかでも、プライマーコーティング処理、薬品処理、コロナ放電処理、プラズマ処理から選ばれる1種又は2種以上が特に好ましい。
偏光フィルム22は通常は所定の形状に曲げ加工したのち、成型用モールド20内にセットされる。第一モールド基板12の内面12aと同一あるいは12aよりも曲率半径の小さい形状に曲げ加工することが一般的である。その後、成型用モールド内の空隙部に重合性組成物を注入し、重合硬化して離型することでレンズ内部や表層部に一軸延伸フィルム(偏光フィルム)を組みこんだ構造の偏光レンズのプラスチックレンズ成形体を得ることができる。
工程ii〜工程vは、第1の実施形態におけるプラスチックレンズの製造方法における工程a〜工程dと各々同様に行うことができ、さらに加熱処理(工程d)後の工程も同様に行うことができる。
なお、工程vの後、プラスチック偏光レンズ成形体上にハードコート層を形成する場合、通常、仮硬化(予備硬化)工程と本硬化工程により実施することができる。仮硬化工程とは、例えば、溶媒に溶解させたハードコート剤をレンズに塗布した後、溶媒を除去するために一旦、熱を掛ける工程である。一方、本硬化工程とは、例えば、仮硬化工程において溶媒除去後、コート剤が塗布されたレンズ基材を加熱してコート剤を硬化させる工程である。仮硬化工程においてレンズの変形や非点収差(アスティグマ)により規格外と判断された場合は、本硬化工程において、プラスチック偏光レンズ成形体の加熱処理(第1の実施形態における工程d)を行うことにより、変形やアスティグマ値を改善することができる。
プラスチック偏光レンズ成形体は、ハードコート処理の本硬化工程によって、変形やアスティグマ値により規格外のプラスチック偏光レンズが製造される場合が多い。したがって、仮硬化工程においてレンズの変形や非点収差(アスティグマ)が規格内と判断された場合であっても、本硬化工程において、プラスチック偏光レンズ成形体の加熱処理(第1の実施形態における工程d)を行うことにより、変形やアスティグマ値における規格外製品の発生を抑制することができる。
[第2の実施形態]
本実施形態のプラスチック偏光レンズの製造方法は、以下の工程を備える。
工程i:プラスチックレンズ成形体の凸状の対物面を形成するための凹面を有する第1モールド基板と、対向して配置される第2モールド基板と、前記第1モールド基板および前記第2モールド基板の外縁を覆い、これらを所定距離離間して固定する固定部材と、からなるレンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面が前記第1モールド基板または前記第2モールド基板から離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する。
工程ii:前記偏光フィルムと前記モールド基板との間の空隙に、前記重合性組成物を注入する。
工程iii:レンズ注型用鋳型内で前記重合性組成物を硬化する。
工程iv:硬化した樹脂をレンズ注型用鋳型から離型し、凸面を備えるプラスチックレンズ成形体を得る。
工程v:プラスチックレンズ成形体の凸面側から荷重をかけながら、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する。
本実施形態における工程iは、第1の実施形態のプラスチック偏光レンズの製造方法における工程iと同様に行うことができる。さらに、本実施形態における工程ii〜工程vは、第2の実施形態のプラスチックレンズの製造方法における工程a〜工程dと各々同様に行うことができ、さらに加熱処理(工程d)後の工程も同様に行うことができる。
[第3の実施形態]
本実施形態のプラスチック偏光レンズの製造方法は、以下の工程を備える。
工程i:プラスチックレンズ成形体の凸状の対物面を形成するための凹面を有する第1モールド基板と、対向して配置される第2モールド基板と、前記第1モールド基板および前記第2モールド基板の外縁を覆い、これらを所定距離離間して固定する固定部材と、からなるレンズ注型用鋳型内に、偏光フィルムの少なくとも一方の面が前記第1モールド基板または前記第2モールド基板から離隔した状態で、該偏光フィルムを固定する。
工程ii:前記偏光フィルムと前記モールド基板との間の空隙に、前記重合性組成物を注入する。
工程iii:レンズ注型用鋳型内で前記重合性組成物を硬化する。
工程iv:硬化した樹脂をレンズ注型用鋳型から離型し、凸面を備えるプラスチックレンズ成形体を得る。
工程v:プラスチックレンズ成形体の凸面側および該凸面の裏面側から荷重をかけながら、プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する。
本実施形態における工程iは、第1の実施形態のプラスチック偏光レンズの製造方法における工程iと同様に行うことができる。さらに、本実施形態における工程ii〜工程vは、第3の実施形態のプラスチックレンズの製造方法における工程a〜工程dと各々同様に行うことができ、さらに加熱処理(工程d)後の工程も同様に行うことができる。
<プラスチックレンズ(プラスチック偏光レンズ)の再生方法>
公知のアニール方法、例えば、オーブンの中にレンズ成形体を並べて加熱する方法などで製造されたプラスチックレンズは、時に変形を起こし、非点収差が規格外となるため製品の歩留まりが低下することがある。
また、プラスチックレンズは耐擦傷性向上のため、通常はハードコート処理を施すが、ハードコート膜を硬化するために加熱を行うのが一般的である。アニールによる加熱においてレンズの変形を防止できても、その後の、ハードコート膜硬化の際の加熱においてレンズが変形して不良品になることもある。
特に、プラスチックレンズ内部や表層部に一軸延伸フィルムを組みこんだ構造の偏光レンズではその傾向が強く、変形による不良率は一般に高い。
本発明のもう一つの実施の形態は、非点収差(アスティグマ)が規格外と判断されたノンコートプラスチックレンズ(ノンコートプラスチック偏光レンズ)あるいはハードコートプラスチックレンズ(ハードコートプラスチック偏光レンズ)を本発明の方法によって再生する方法である。通常、球面レンズでは、非点収差0.06D以下が求められ、0.04D以下が好ましいとされている。非点収差が0.07D以上の球面レンズは、規格外とされることが多い。
本実施形態における再生方法(加熱処理)は、プラスチックレンズの製造方法において記載された、プラスチックレンズ成形体の加熱処理(第1、第2または第3の実施形態における工程d)あるいは、プラスチック偏光レンズの製造方法において記載された、プラスチック偏光レンズ成形体の加熱処理(第1、第2または第3の実施形態における工程v)と同様に行うことができる。
このような方法で加熱処理を行うことで、規格外であった非点収差は好ましい範囲に変わり、良品(規格を満たす製品)として再生させることができる。
本発明の加熱処理方法は、全てのプラスチックレンズ(プラスチック偏光レンズ)の製造方法におけるアニール工程として採用することができる。または、アニール工程は公知の方法で実施して、非点収差が規格外のレンズに対して、本発明の加熱処理方法をレンズに再生方法として採用することができる。この選択は、公知のアニール方法での非点収差の不良率、生産性、その他の品質項目(色など)などを総合的に勘案して決定される。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
例えば、プラスチックレンズ成形体やプラスチック偏光レンズ成形体が熱可塑性樹脂からなる場合は、射出成型、圧縮成型、押出成型、射出圧縮成型、トランスファ成形や張り合わせ等により得ることができる。
プラスチックレンズ成形体を製造する場合、一般的には加熱溶融した熱可塑性の原料プラスチックを射出(圧縮)成型により金型へ押出したのち離型して得ることができる。さらに、必要に応じ丸めあるいはエッジダウンと呼ばれる外周切削加工や洗浄を行うことができる。
プラスチック偏光レンズ成形体を製造する場合、偏光フィルムは通常は所定の形状に曲げ加工したのち、射出(圧縮)成型金型内にセットされる。そして、加熱溶融した原料プラスチックを射出(圧縮)成型により金型内へ押出したのち離型することでレンズ内部や表層部に一軸延伸フィルム(偏光フィルム)を組みこんだ構造のプラスチック偏光レンズ成形体を得ることができる。
原料プラスチックとしては、熱可塑性樹脂であれば特に制限を受けないが、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。これらを混合したアロイとして用いてもよい。
メガネレンズとしての性能から、特に、ポリカーボネートやポリアミドが好ましい。
これら熱可塑性樹脂には、各種の機能付与剤を添加することができる。機能付与剤としては、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、顔料、染料、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、防曇剤、抗菌剤などが挙げられる。
特に、混練工程や製品製造工程での溶融混練時に異物が発生するのを防止する目的で、リン系熱安定剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤を添加するのが好ましい。
必要に応じて離型剤を配合することもできる。離型剤としては脂肪酸エステルが好適に用いられる。例えばステアリン酸モノグリセライド類、ステアリン酸ステアレート等の低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネート等の高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のエリスリトールエステル類が使用される。
熱可塑性樹脂は、溶融押出ししたペレットを作成し、これを射出成型、圧縮成型、押出成型、射出圧縮成型等公知の各種成型方法によって成型されるが、プラスチックレンズの光学歪みの観点から射出圧縮成型が好ましい。射出圧縮成型の温度は、熱可塑性樹脂の種類によって異なるが、ポリカーボネートの場合は、シリンダー温度200〜330℃、金型温度40〜150℃程度である。
成型された樹脂を金型から離型し、必要に応じ丸めあるいはエッジダウンと呼ばれる外周切削加工や洗浄を行うことで、本実施形態のプラスチックレンズ成形体を得ることができる。熱硬化性樹脂の場合と同様に、成型用金型の形状によって、フィニッシュトレンズ、セミフィニッシュトレンズ、球面レンズ、非球面レンズ、多重焦点レンズ、累進焦点レンズなど種々のプラスチックレンズ成形体を得ることができる。
熱可塑性樹脂からなるプラスチックレンズ成形体は、上述の工程d等を行うことで、本発明のプラスチックレンズを得ることができる。また、熱可塑性樹脂からなるプラスチック偏光レンズ成形体は、上述の工程v等を行うことで、本発明のプラスチック偏光レンズを得ることができる。
さらに、熱可塑性樹脂からなる、プラスチックレンズ成形体またはプラスチック偏光レンズ成形体は、上述の熱硬化性樹脂からなる場合と同様に、規格外であっても本実施形態の再生方法により製品として再生させることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 凸面を備えるプラスチックレンズ成形体の非点収差(アスティグマ)を測定する工程と、
非点収差が0.05D以上のプラスチックレンズ成形体の前記凸面側および/または該凸面の裏面側から荷重をかけながら、該プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度−20℃以上の温度下で加熱する工程を含む、プラスチックレンズの再生方法。
2. 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、
該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を支持部材で支持しながら、該凸面が前記支持部材と非接触の状態で行う、1.に記載のプラスチックレンズの再生方法。
3. 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、
該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を、上端部により下方から支持する支持部材を備える治具を用い、
該プラスチックレンズ成形体を、前記支持部材の前記上端部に載置し、該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を支持しながら、該凸面が前記支持部材および前記治具と非接触の状態で行う、2.に記載のプラスチックレンズの再生方法。
4. 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、前記凸面側および/または前記裏面側から成形体重量の1〜50倍の荷重をかけながら行う、1.〜3.のいずれかに記載のプラスチックレンズの再生方法。
5. 前記プラスチックレンズ成形体がハードコートされていないレンズである1.〜4.のいずれかに記載のプラスチックレンズの再生方法。
6. 前記プラスチックレンズ成形体がハードコートされたレンズである1.〜4.に記載のプラスチックレンズの再生方法。
7. 1.〜6.のいずれかに記載のプラスチックレンズがプラスチック偏光レンズである、プラスチック偏光レンズの再生方法。
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、樹脂のガラス転移温度は、THERMOMECHANICAL ANALYZER TMA−60(島津社製)を用いTMAペネトレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ、昇温速度10℃/分)にて測定し、接線の交点をガラス転移温度とした。
アスティグマ値の測定は、FOCOVISION SR−2(Automation&Robotics社製)を使用して25℃にて行った。
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(PET)製偏光フィルム(厚み140ミクロン)を予めオーブン中140℃で15分熱処理を行い、次いで、熱プレス法にて附形温度160℃で4C(カーブ)の湾曲形状に附形した。偏光フィルムをモールドの大きさに合わせて切断した後、プラズマ照射表面改質装置(PS−601SW型:ウエッジ株式会社製)を用いて偏光膜の表面と裏面を各20秒間プラズマ照射し、メタノールで洗浄後風乾した。
このポリエチレンテレフタレート製偏光フィルムの両面にファウンデーション#123LLR−2コート剤(ソテック社製)をコートし、およそ50〜60℃で乾燥させた。これを、偏光レンズ成型用の鋳型(前面4C/後面5.5Cガラスモールドセット。口径78mm、中心厚12mm)内に挟み込んで設置した。
次に、m−キシリレンジイソシアネート50.6重量部、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物49.4重量部、硬化促進剤としてジブチル錫ジクロライド0.01重量部、離型剤としてZelec UN(登録商標、Stepan社製)0.1重量部、および紫外線吸収剤としてSeesorb 709(シプロ化成社製)0.05重量部を攪拌して溶解させた後、減圧下で脱泡処理して、注入用モノマー混合物とした。
この注入用モノマー混合物を偏光フィルムを設置したレンズ成形用の鋳型に注入し、オーブン中16時間かけて25℃から110℃まで昇温し、その後110℃で5時間維持し、除冷の後、オーブンからレンズ注型用鋳型を取り出した。レンズ注型用鋳型からレンズを離型し、コバ削り機にて外周切削したのち洗浄して、口径75mmのプラスチック偏光レンズ成形体を得た。プラスチック偏光レンズ成形体の重量は72.2gであり、成形体を構成する樹脂のガラス転移温度は99℃であった。
上部に外径90mm、7.00Dの凹面を持った金属製台座の上にプラスチック偏光レンズ成形体を、凸面を下にして設置した。その上に500gの円盤型の金属製の重りを乗せ、アニール用乾燥炉内に収納した。
乾燥炉の温度を120℃まで1時間かけて上昇し、120℃で2時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出し、重りと台座を取り除いてプラスチック偏光レンズを得た。
プラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.02Dであった。
[実施例2]
注入用モノマー混合物を、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン混合物50.6重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)23.9重量部、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン25.5重量部、硬化促進剤としてジブチル錫ジクロライド0.02重量部、離型剤としてZelec UN(登録商標、Stepan社製)0.13重量部、および紫外線吸収剤としてSeesorb 709(シプロ化成社製)0.05重量部を攪拌して溶解させた後減圧下で脱泡処理したものに、成型用の鋳型の後面を6Cガラスモールドに変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、プラスチック偏光レンズ成形体を得た。
プラスチック偏光レンズ成形体の重量は70.7gであり、成形体を構成する樹脂のガラス転移温度は109℃、アニール後のプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.02Dであった。
[実施例3]
偏光レンズ成型用の鋳型内に設置する曲げ加工された偏光フィルムを、ポリビニルアルコール(PVA)製偏光フィルムを附形温度50℃で4C(カーブ)の湾曲形状に附形したものに変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、プラスチック偏光レンズ成形体を得た。
プラスチック偏光レンズ成形体の重量は72.1gであり、成形体を構成する樹脂のガラス転移温度は99℃、アニール後のプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.01Dであった。
[実施例4]
注入用モノマー混合物を、2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンと2,6−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン混合物50.6重量部、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)23.9重量部、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン25.5重量部、硬化促進剤としてジブチル錫ジクロライド0.02重量部、離型剤としてZelec UN(登録商標、Stepan社製)0.13重量部、および紫外線吸収剤としてSeesorb 709(シプロ化成社製)0.05重量部を攪拌して溶解させた後減圧下で脱泡処理したものに変えた以外は、実施例3と同様の操作を行って、プラスチック偏光レンズを得た。
プラスチック偏光レンズ成形体の重量は68.7gであり、成形体を構成する樹脂のガラス転移温度は109℃、アニール後のプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.02Dであった。
[実施例5]
偏光レンズ成型用の鋳型に使用するガラスモールドセットを前面2C/後面4.5Cのものに変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、プラスチック偏光レンズを得た。
プラスチック偏光レンズ成形体の重量は75.8gであり、成形体を構成する樹脂のガラス転移温度は99℃、アニール後のプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.02Dであった。
[実施例6]
偏光レンズ成型用の鋳型に使用するガラスモールドセットを前面6C/後面6Cのものに変えた以外は、実施例1と同様の操作を行って、プラスチック偏光レンズを得た。
プラスチック偏光レンズ成形体の重量は66.4gであり、成形体を構成する樹脂のガラス転移温度は99℃、アニール後のプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.03Dであった。
[実施例7]
m−キシリレンジイソシアネート50.6重量部、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンと4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンの混合物49.4重量部、硬化促進剤としてジブチル錫ジクロライド0.01重量部、離型剤としてZelec UN(登録商標、Stepan社製)0.1重量部、および紫外線吸収剤としてSeesorb 709(シプロ化成社製)0.05重量部を攪拌して溶解させた後、減圧下で脱泡処理して、注入用モノマー混合物とした。
この注入用モノマー混合物をレンズ成形用の鋳型(前面4C/後面6Cガラスモールドセット。口径78mm、中心厚12mm)に注入し、オーブン中16時間かけて25℃から110℃まで昇温し、その後110℃で5時間維持し、除冷の後、オーブンからレンズ注型用鋳型を取り出した。レンズ注型用鋳型からレンズを離型し、コバ削り機にて外周切削したのち洗浄して、口径75mmのプラスチックレンズ成形体を得た。プラスチックレンズ成形体の重量は74.1gであり、成形体を構成する樹脂のガラス転移温度は99℃であった。
上部に外径90mm、7.00Dの凹面を持った金属製台座の上にプラスチックレンズ成形体を凸面を下にして設置した。その上に500gの円盤型の金属製の重りを乗せ、アニール用乾燥炉内に収納した。
乾燥炉の温度を120℃まで1時間かけて上昇し、120℃で2時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出し、重りと台座を取り除いてプラスチックレンズを得た。
プラスチックレンズのアスティグマ値は0.02Dであった。
[実施例8]
FOCOVISION SR−2(Automation&Robotics社製)にて測定したアスティグマ値が0.07Dのノンコートセミフィニッシュト偏光レンズ(口径75mm、フロントカーブ4.00D、PET偏光フィルム含有、屈折率1.67、チオウレタン系素材、重量76.0g)を上部に外径90mm、7.00Dの凹面を持った金属製台座の上に凸面を下にして設置した。その上に500gの円盤型の金属製の重りを乗せ、アニール用乾燥炉内に収納した。なお、偏光レンズを構成する樹脂のガラス転移温度は100℃であった。
乾燥炉の温度を105℃まで1時間かけて上昇し、105℃で1時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出し、重りと台座を取り除いてプラスチック偏光レンズを得た。
得られたプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.02Dであった。
[実施例9]
アスティグマ値が0.13Dのハードコートセミフィニッシュト偏光レンズ(口径75mm、フロントカーブ4.00D、PET偏光フィルム含有、屈折率1.67、チオウレタン系素材、重量76.0g、シリコン系ハードコート塗工)を上部に外径90mm、7.00Dの凹面を持った金属製台座の上に凸面を下にして設置した。その上に500gの円盤型の金属製の重りを乗せ、アニール用乾燥炉内に収納した。なお、偏光レンズを構成する樹脂のガラス転移温度は100℃であった。
乾燥炉の温度を105℃まで1時間かけて上昇し、105℃で1時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出し、重りと台座を取り除いてプラスチック偏光レンズを得た。
得られたプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.04Dであった。
[実施例10]
アスティグマ値が0.07Dのハードコートフィニッシュト偏光レンズ(口径75mm、フロントカーブ2.00D、度数S:−2.00D、PET偏光フィルム含有、屈折率1.67、チオウレタン系素材、重量17.3g、シリコン系ハードコート塗工)を上部に外径90mm、7.00Dの凹面を持った金属製台座の上に凸面を下にして設置した。その上に200gの円盤型の金属製の重りを乗せ、アニール用乾燥炉内に収納した。なお、偏光レンズを構成する樹脂のガラス転移温度は100℃であった。
乾燥炉の温度を105℃まで1時間かけて上昇し、105℃で1時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出し、重りと台座を取り除いてプラスチック偏光レンズを得た。
得られたプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.04Dであった。
[実施例11]
アスティグマ値が0.10Dのハードコートセミフィニッシュト偏光レンズ(口径75mm、フロントカーブ4.00D、PVA偏光フィルム含有、屈折率1.67、チオウレタン系素材、重量76.0g、シリコン系ハードコート塗工)を上部に外径90mm、7.00Dの凹面を持った金属製台座の上に凸面を下にして設置した。その上に500gの円盤型の金属製の重りを乗せ、アニール用乾燥炉内に収納した。なお、偏光レンズを構成する樹脂のガラス転移温度は100℃であった。
乾燥炉の温度を105℃まで1時間かけて上昇し、105℃で1時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出し、重りと台座を取り除いてプラスチック偏光レンズを得た。
得られたプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.02Dであった。
[実施例12]
アスティグマ値が0.17Dのハードコートフィニッシュト偏光レンズ(口径75mm、フロントカーブ4.00D、度数S:−2.00D、PVA偏光フィルム含有、屈折率1.60、チオウレタン系素材、重量16.8g、シリコン系ハードコート塗工)を上部に外径90mm、7.00Dの凹面を持った金属製台座の上に凸面を下にして設置した。その上に200gの円盤型の金属製の重りを乗せ、アニール用乾燥炉内に収納した。なお、偏光レンズを構成する樹脂のガラス転移温度は114℃であった。
乾燥炉の温度を115℃まで1時間かけて上昇し、115℃で1時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出し、重りと台座を取り除いてプラスチック偏光レンズを得た。
得られたプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.03Dであった。
[実施例13]
アスティグマ値が0.08Dのノンコートセミフィニッシュトレンズ(口径75mm、フロントカーブ4.00D、バックカーブ6.00D、屈折率1.67、チオウレタン系素材、重量78.2g)を上部に外径90mm、7.00Dの凹面を持った金属製台座の上に凸面を下にして設置した。その上に500gの円盤型の金属製の重りを乗せ、アニール用乾燥炉内に収納した。なお、レンズを構成する樹脂のガラス転移温度は100℃であった。
乾燥炉の温度を105℃まで1時間かけて上昇し、105℃で1時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出し、重りと台座を取り除いてプラスチックレンズを得た。
得られたプラスチックレンズのアスティグマ値は0.02Dであった。
[比較例1]
実施例1と同様の方法で得たプラスチック偏光レンズ成形体をトレイ上に凹面が下になるように置き、トレイをアニール用乾燥炉内に収納した。
乾燥炉の温度を120℃まで1時間かけて上昇し、120℃で2時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出しプラスチック偏光レンズを得た。
プラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.15Dであった。
[比較例2]
実施例2と同様の方法で得たプラスチック偏光レンズ成形体をトレイ上に凹面が下になるように置き、トレイをアニール用乾燥炉内に収納した。
乾燥炉の温度を120℃まで1時間かけて上昇し、120℃で2時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出しプラスチック偏光レンズを得た。
プラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.12Dであった。
[比較例3]
実施例3と同様の方法で得たプラスチック偏光レンズ成形体をトレイ上に凹面が下になるように置き、トレイをアニール用乾燥炉内に収納した。
乾燥炉の温度を120℃まで1時間かけて上昇し、120℃で2時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出しプラスチック偏光レンズを得た。
プラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.08Dであった。
[比較例4]
実施例7と同様の方法で得たプラスチックレンズ成形体をトレイ上に凹面が下になるように置き、トレイをアニール用乾燥炉内に収納した。
乾燥炉の温度を120℃まで1時間かけて上昇し、120℃で2時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出しプラスチックレンズを得た。
プラスチックレンズのアスティグマ値は0.09Dであった。
[比較例5]
アスティグマ値が0.07Dのノンコートセミフィニッシュト偏光レンズ(口径75mm、フロントカーブ4.00D、PET偏光フィルム含有、屈折率1.67、チオウレタン系素材、重量76.0g)をトレイ上に凹面が下になるように置き、トレイをアニール用乾燥炉内に収納した。なお、偏光レンズを構成する樹脂のガラス転移温度は100℃であった。
乾燥炉の温度を105℃まで1時間かけて上昇し、105℃で1時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出しプラスチック偏光レンズを得た。
得られたプラスチック偏光レンズのアスティグマ値は0.10Dであった。
[比較例6]
アスティグマ値が0.08Dのノンコートセミフィニッシュトレンズ(口径75mm、フロントカーブ4.00D、バックカーブ6.00D、屈折率1.67、チオウレタン系素材、重量78.2g)をトレイ上に凹面が下になるように置き、トレイをアニール用乾燥炉内に収納した。なお、レンズを構成する樹脂のガラス転移温度は100℃であった。
乾燥炉の温度を105℃まで1時間かけて上昇し、105℃で1時間保持したのち、3時間かけて冷却した。冷却後乾燥炉から取出しプラスチックレンズを得た。
得られたプラスチックレンズのアスティグマ値は0.06Dであった。
なお、プラスチックレンズ成形体の凸面側から荷重をかけた場合、プラスチックレンズ成形体の凸面側および凹面側の両面から荷重をかけた場合においても同様の効果が得られた。
10 レンズ注型用鋳型
12 第1モールド基板
12a 凹面
14 第2モールド基板
16 固定部材
18 レンズ注型用鋳型内
20 レンズ注型用鋳型
22 偏光フィルム
24a,24b 空隙部
a 最も間隙の狭い離間距離
30 治具
32 支持部材
32a 上端部
34 プラスチックレンズ成形体
34a 凸面
34b 裏面
34c 外周縁端部
36 重り
38 静止部材
42 板状部材
44 狭持部材

Claims (8)

  1. 凸面を備えるプラスチックレンズ成形体の非点収差(アスティグマ)を測定する工程と、
    該工程の後、非点収差が0.05D以上のプラスチックレンズ成形体の前記凸面側および/または該凸面の裏面側から荷重をかけながら、該プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度以上、ガラス転移温度+30℃以下の温度下で加熱し、非点収差を0.04D以下とする工程を含む、プラスチックレンズの再生方法。
  2. 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、
    非点収差が0.05D以上のプラスチックレンズ成形体の前記凸面側および/または該凸面の裏面側から荷重をかけながら、該プラスチックレンズ成形体を構成する樹脂のガラス転移温度以上、ガラス転移温度+30℃以下の温度下で加熱すると共に、その加熱時間を0.1〜30時間とする加熱工程と、
    前記加熱工程の後に、前記加熱工程を経たプラスチックレンズ成形体を0.5〜20時間かけて空冷する冷却工程とを含む、
    請求項1に記載のプラスチックレンズの再生方法。
  3. 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、
    該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を支持部材で支持しながら、該凸面が前記支持部材と非接触の状態で行う、請求項1または2に記載のプラスチックレンズの再生方法。
  4. 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、
    該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を、上端部により下方から支持する支持部材を備える治具を用い、
    該プラスチックレンズ成形体を、前記支持部材の前記上端部に載置し、該プラスチックレンズ成形体の前記凸面の外周縁端部を支持しながら、該凸面が前記支持部材および前記治具と非接触の状態で行う、請求項に記載のプラスチックレンズの再生方法。
  5. 前記プラスチックレンズ成形体を加熱する前記工程は、前記凸面側および/または前記裏面側から、前記プラスチックレンズ成形体に対し成形体重量の1〜50倍の荷重をかけながら行う、請求項1〜のいずれかに記載のプラスチックレンズの再生方法。
  6. 前記プラスチックレンズ成形体がハードコートされていないレンズである請求項1〜のいずれかに記載のプラスチックレンズの再生方法。
  7. 前記プラスチックレンズ成形体がハードコートされたレンズである請求項1〜に記載のプラスチックレンズの再生方法。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載のプラスチックレンズがプラスチック偏光レンズである、プラスチック偏光レンズの再生方法。
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