JP2004201771A - 差動送りミシン及びその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】縫製区間の切換部において、いせ込み量を徐々に変化させながら縫製することにより、しわ、タック、等が縫製物に発生するのを防止して、縫製品質を向上させると共に、作業性の大幅な改善を図った差動送りミシンを提供する。
【解決手段】隣合う区間Uの前の区間U1の上送り量から後の区間U2の上送り量への移行時に、上送り量を単位値設定手段15により設定された所定の単位長さAごとに所定の単位差動量Bずつ増減させることによって、上送り量を徐々に変化させて縫製するようにした構成を特徴とする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、差動送りミシンに係り、例えばいせ込み縫い時に、いせ込み量を徐々に変化させる制御をして、製品の縫製品質を向上させることができる差動送りミシン及びその制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の差動送りミシンは、いせ込み量データの作成において、各縫製区間に対応していせ込み量データを配分する第1の工程と、隣接する区間のいせ込み量データの段差が解消に向かう中間的いせ込み量データを演算する第2の工程とを備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、他の差動送りミシンは、第1の送り量及び第2の送り量が設定された2つの区間の間に中間区間を設け、中間区間を縫製する時の送り量を演算により求めて、第1の送り量から第2の送り量に次第に変化させるようにしたものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特公昭63−12637号公報(第9−12頁、第3図、第10図)
【特許文献2】
特公平2−18110号公報(第2−5頁、第2図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図14に示すように、例えば袖1と身頃2との縫付けは、縫製部位3,4をいせ込み量によって複数の区間3a,3b,3c,3d,3e及び4a,4b,4c,4d,4eに分割し、多くの区間において、下布である身頃2の送り量に対して、上布である袖1の送り量を大きくして縫い付けられる(いせ込み縫い)。
【0006】
従来のいせ込み縫いは、いせ込み量の変化量に対して十分な制御を加えておらず、いせ込み量の大きさによって分割された夫々の区間を、区間ごとに設定されたいせ込み量でいせ込んで縫製していた。
即ち、区間が切換わると、直ちに後の区間に設定されているいせ込み量で袖1及び見頃2を送って縫製していた。
このため、前の区間のいせ込み量と、後の区間のいせ込み量との変化量が大きいと、いせ込みが急激に変わることによって、区間の切換部にしわができたり、タックが発生したりして、縫製品の品質を低下させる問題があった。
【0007】
上記した問題は、例えば区間切換り時のいせ込み量の変化量を少なくするために、縫製部位を多数の区間に分割することによって対処することも可能である。
しかし、これによると、いせ込みの設定作業量が増加して準備作業が大変であり、また縫製作業者は、縫製時に頻繁に区間切換作業(切換スイッチの操作等)を行わなければならず、作業者の負担が増大し、また作業性が悪く縫製効率が低下する問題点があった。
【0008】
特許文献1に開示された従来の装置は、夫々の区間に設定されたいせ込み量の段差を解消させるため、隣接する2つの区間の後の区間の縫製開始時に、3針ごとに所定のいせ込み量ずつ送り量を増減させて縫製するようになっている。
しかし、いせ込み量の変化量は、固定的な演算手順に基づいて自動的に算出されるので、いせ込み量の変化量を自由に設定することができなかった。
従って、縫製部位に応じた最適ないせ込み変化量を自由に設定することができず、作業者の意図する縫製を行うことが難しく、いせ込み縫い部位を綺麗に縫製できない場合があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された従来の装置は、連続する2つの区間の間に中間区間を設けると共に、中間区間を縫製する針数を設定し、その針数で第1の送り量から第2の送り量に次第に変化するように送り量を制御するようになっている。
これによると、中間区間を設ける分、区間数が増加していせ込み量の設定作業が煩雑となる。
また、中間区間の縫製は、針数だけで設定されるので設定の自由度が小さい。
従って、より高品質の縫製を行う上で改善の余地があった。
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、縫製区間の切換部において、いせ込み量を自由に設定できるようにすると共に、設定に基づいていせ込み量を徐々に変化させる制御により、縫製品にしわ、タック、等が発生するのを防止して、縫製品質を向上させ、且つ大幅な作業性の改善を図った差動送りミシンを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載したように、上下に重ねられた被加工布の下布を送る下送り手段と、前記被加工布の上布を送る上送り手段と、前記被加工布の縫製区間を複数の縫製区間に分割して、各縫製区間ごとの縫製長さを設定すると共に、連続する前記縫製区間毎に、下送り量と、上送り量又は前記下送り量との差である差動量を設定する送り量設定手段と、前記送り量設定手段により設定された送り量に基づいて前記下送り手段及び前記上送り手段を制御すると共に、連続する前記縫製区間の前の縫製区間の設定された差動量から後の縫製区間の設定された差動量へ変化させる制御手段と備える差動送りミシンにおいて、
前記差動量の設定において、単位長さ及び/又は単位差動量を設定する単位値設定手段を設け、連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行を、前記単位値設定手段で設定された単位長さごとに所定の単位差動量だけ増減させることを特徴としている。
【0012】
ここで、下送り手段としては、例えばパルスモータ等によって駆動されて間欠的に走行する下送り無端ベルトを、上送り手段としては、例えばパルスモータ等によって駆動されて間欠的に走行し、下送り無端ベルトに当接するように配置された上送り無端ベルトが例示できる。
また、送り量設定手段としては、例えば制御手段に電気的に接続された操作パネルを、制御手段としては、例えばコンピュータ装置を、単位値設定手段としては、例えば制御手段に電気的に接続された操作パネルを、検出手段としては、例えばコンピュータ装置の制御プログラム内の針数カウンタを例示できる。
【0013】
このように構成された差動送りミシンにおいては、隣合う区間の前の区間の上送り量から後の区間の上送り量への移行時に、上送り量を所定の単位長さごとに所定の単位差動量だけ増減させることによって、上送り量を徐々に変化させることができることになる。
【0014】
従って、この差動送りミシンにおいては、例えば縫製区間の切換部等における急激な上送り量の変化を無くして、従来のような切換部にしわ、タック、等が発生するという問題を解消できることになる。また、これによって、製品等の縫製品質を向上させて製品等の価値を高めることができる。
【0015】
また、上送り量の変化は、単位値設定手段により設定された所定の単位長さごとに所定の単位差動量だけ自動的に増減させて行われるので、従来のような上送り量の変化を少なくするために縫製部位等を多数の区間に分割して、区間が切換わるごとに頻繁に区間切換作業等を行い、作業性が悪いという問題を解消できることになり、これによって、作業性等を改善して縫製効率を向上させることができる。
【0016】
更に、上送り量を変化させる時の単位長さ及び単位差動量は、単位値設定手段によって任意の値に設定することができるので、いせ込み量設定の自由度が大きくなる。これによって、差動量の変化を縫製品等に最適の変化量に設定することができるので、縫製品質等を向上できることになる。
【0017】
前述した目的を達成するために、本発明は、請求項2に記載したように、前記連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行開始時点を、前記縫製区間ごとの縫製長さが設定された値の前後に設定可能であることを特徴としている。
この構成により、2つの区間の境界位置に対して、上送り量の増減制御は境界位置を跨いで対称に設定することもできるし、また、境界位置のどちらか一方片寄せて設定することもできる。
【0018】
前述した目的を達成するために、本発明は、請求項3に記載したように、前記連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への設定された移行の開始時点前に、作業者の操作時点から後の縫製区間の差動量へ移行させる手段を備えたことを特徴としている。
この構成により、作業者の意志で、縫製作業が予め設定された各縫製区間ごとの縫製長さに到達する前でも、後の縫製区間の差動量に移行させることが可能である。
【0019】
また、前述した目的を達成するために、本発明は、請求項4に記載したように、
上下に重ねられた被加工布の下布を送る下送り手段と、前記被加工布の上布を送る上送り手段と、前記被加工布の縫製区間を複数の縫製区間に分割して、連続する前記縫製区間毎の、下送り量と、上送り量又は前記下送り量との差である差動量を順序と共に設定する送り量設定手段と、前記連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行を、作業者の操作した時点から実行するステップ切換手段と、前記送り量設定手段により設定された送り量に基づいて前記下送り手段及び前記上送り手段を制御すると共に、連続する前記縫製区間の前の縫製区間の設定された差動量から後の縫製区間の設定された差動量へ変化させる制御手段と備える差動送りミシンにおいて、
前記差動量の設定において、単位長さ及び/又は単位差動量を設定する単位値設定手段を設け、連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行を、前記単位値設定手段で設定された単位長さごとに所定の単位差動量だけ増減させることを特徴とする。
【0020】
この構成により、縫製区間毎の、下送り量と、上送り量又は前記下送り量との差である差動量をその順序と共に設定するのみでよいので、設定作業が容易で、且つ、前記連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行を、作業者の操作した時点から実行することができるので、縫製作業者の能力や実情に合わせた制御ができる。
【0021】
ここで、ステップ切替手段としては、例えば作業者が膝等で操作するステップ切替スイッチ34を例示できる。
このように構成された差動送りミシンにおいては、ステップ切換スイッチの操作に基づいて差動量の移行時点を選択できるので、縫製品や作業者の熟練度、等に応じて、縫製モード等を任意に選択して縫製することができることになる。従って、仕上がりの綺麗な縫製を行うことができることになる。
【0022】
また本発明は、請求項5に記載したように、請求項1〜4のいずれかに記載した差動送りミシンであって、前記連続する縫製区間における差動量の移行時に、単位長さごとに所定の単位差動量だけ増減させる制御の実行の有無を選択する実行選択手段を備えたことを特徴としている。
【0023】
ここで、実行選択手段しては、例えば制御手段に電気的に接続された操作パネル上の選択操作スイッチ27を例示できる。
このように構成された差動送りミシンにおいては、上送り量を徐々に変化させる制御の実行の有無を実行選択手段によって選択可能としたので、本発明に係る縫製モード、又は従来の縫製モード等に容易に切換えて縫製できることになる。従って、この差動送りミシンにおいては、縫製部位等に応じて最適の縫製モード等を選択して縫製することができ、縫製品質等を向上させることができる。
【0024】
上述の如く、請求項1から請求項3のいずれかに記載した差動送りミシンでは、連続する2つ以上の夫々の前記区間に対して予め設定された縫製長さ又は針数に基づき、連続する2つの前記区間の境界位置を求めると共に、前記単位値設定手段の設定に基づいて前記上送り量の前記移行に要する縫製長さ又は針数を求め、前記上送り量の前記増減制御の前記開始位置及び前記終了位置を連続する2つの前記区間の前記境界を跨ぐように自動的に設定することもできる。
このように構成された差動送りミシンにおいては、上送り量の増減制御の開始位置及び終了位置を、連続する2つの区間の境界を跨ぐように自動的に設定するようにしたので、前の区間の途中等から後の区間にかけて差動量を徐々に変化させていせ込み縫いできることになる。
【0025】
従って、この差動送りミシンにおいては、前の区間の後半部等から後の区間の前半部等にかけて、自動的に差動量を変化させて縫製することができ、従来のような区間が切換わると差動量が急激に変化して、切換部にしわやタック等が発生するという問題を解消できることになる。また、区間の切換は自動的に行われるので、作業者等は区間の切換ごとに操作スイッチ等の操作を行わずにいせ込み縫いすることができ、これによって作業者の負担等を軽減させると共に、作業効率を大幅に向上させることができることになる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1から図4に示すように、本発明に係る差動送りミシン10は、下送り手段11と、上送り手段12と、送り量設定手段13と、制御手段14と、単位値設定手段15と、検出手段(図示せず)と、実行選択手段27と、制御選択手段20とを備えている。
【0027】
図1及び図2に示すように、下送り手段である下送り無端ベルト11は、差動送りミシン10のポストベッド16に固定された針板19から出没して間欠的に走行し、針板19から突出した上面が被加工布(図示せず)の送り方向に移動可能とされている。
下送り無端ベルト11は、ポストベッド16に内蔵されたプーリ(図示せず)に巻き掛けられており、プーリはステッピングモータ等の下送りモータ17の回転軸(図示せず)に固定されている。
下送りモータ17は、駆動回路18を介して制御手段であるコンピュータ装置14に電気的に接続されており、コンピュータ装置14からの指令に基づいて間欠的に回転して下送り無端ベルト11を間欠的に走行させるようになっている。
【0028】
上送り手段である上送り無端ベルト12は、支持アーム21の先端に回動自在に配置されたローラ22と、ステッピングモータ等の上送りモータ24の駆動プーリ25とに巻き掛けられて配置されている。
上送りモータ24はミシンアーム23の後側に固定して配置され、支持アーム21はミシンアーム23のアーム顎部23aからポストベッド16に向けて垂下するように配設されている。
【0029】
上送り無端ベルト12の一端は、針板19から突出する下送り無端ベルト11の上面に当接するように配置されている。
被加工布は、上送り無端ベルト12と下送り無端ベルト11の間に挟持され、上送りモータ24及び下送りモータ17を間欠回転させて上送り無端ベルト12及び下送り無端ベルト11を間欠的に走行させることにより送られるようになっている。
上送りモータ24は、駆動回路26を介して制御手段であるコンピュータ装置14に電気的に接続されている。
【0030】
図2に示すように、制御手段であるコンピュータ装置14は、差動送りミシン10の各装置の動作を制御して縫製するためのものであって、CPU(Central Processing Unit)28と、制御プログラムが記憶されているROM(Read OnlyMemory)29と、データを保存するためのRAM(Radom Access Memory)30と、バックアップデータを格納するEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)56とを備えている。
【0031】
コンピュータ装置14は、入力回路31,32を介して夫々ミシン起動ペダル33及び操作スイッチであるステップ切換えスイッチ34と電気的に接続されている。
作業者がミシン起動ペダル33又はステップ切換えスイッチ34を操作すると、操作信号が入力回路31,32を介してコンピュータ装置14に入力されるようになっている。
また、コンピュータ装置14は、駆動回路26,18,35,36を介して夫々上送りモータ24、下送りモータ17、糸張力ソレノイド37及びミシンモータ39と電気的に接続されており、状況に応じて上送りモータ24、下送りモータ17、糸張力ソレノイド37及びミシンモータ39の作動を制御するようになっている。
更に、コンピュータ装置14は、操作パネル38と電気的に接続されており、差動送りミシン10の運転状況に応じた表示を行うと共に、操作パネル38から各種の指令信号を入力できるようになっている。
【0032】
図3及び図4に示すように、操作パネル38は、例えばタッチパネル付液晶表示装置であり、差動送りミシン10の状況に応じて表示内容を変えて表示すると共に、操作パネル38上に表示されたスイッチ等の操作部を操作することによりコンピュータ装置14に指令信号を入力して各種の設定を行えるようになっている。
即ち、操作パネル38は、表示画面を切換えることによって、送り量設定手段13、単位値設定手段15、実行選択手段27及び制御選択手段20として機能するようになっている。
【0033】
図3に示す送り量設定手段として機能する送り量設定画面13は、被加工布に設定された連続する2つ以上の夫々の区間U(U1,U2,U3,U4,U5,U6,U7)に対して下送り量との差である差動量を設定するためのものである。 送り量設定画面13上には、差動量を設定するための複数の操作ボタン40が表示されている。
所望の差動量が表示されている操作ボタン40を適宜操作することによって、区間Uごとに任意の差動量をコンピュータ装置14のEEPROM56に記憶させて設定できるようになっている。
設定された差動量は、図3に示す如く、送り量設定画面13に表示された各区間U(U1〜U7)ごとに数値で表示される。
【0034】
送り量設定画面13には、制御選択手段としてのモード切換ボタン(MODO)20が設けられていて、該モード切換ボタン20を操作することによって縫製モードをセミオートモード又はフルオートモードに交互に切換可能となっている。
なお、セミオートモードとは、所定の順序で予め設定されている複数の設定差動量のうちの1つの設定差動量でいせ込み縫い中に、作業者が操作するステップ切換スイッチ34の操作された時点から次の差動量に変更を開始する第1の制御形態のことである。
また、フルオートモードとは、連続する2つ以上の夫々の区間Uに大して予め設定された縫製長さL又は針数と差動量とに基づき、所定位置に達したときに前の縫製区間の差動量を後の縫製区間の差動量へと自動的に切換える第2の制御形態である。
セミオートモード及びフルオートモードの詳細については、後述する。
【0035】
図3の送り量設定画面13の中央には、左右、どちらの袖付けを行っているかを表示するための表示部55が配置されている。
例えば、右袖を縫製しているときには、表示部55の右半分が点灯して、コンピュータ装置14が右袖用の制御中であることを作業者に知らせる。
右袖の縫製が終了して糸切り操作すると、コンピュータ装置14は、制御を左袖用制御に切換ると共に、点灯していた表示部55の右半分を消灯し、左半分を点灯して制御が左袖用に切り換わったことを作業者に知らせるようになっている。
【0036】
図4に示すように、単位値設定手段である単位値設定画面15は、単位長さA及び/又は単位差動量Bを設定するためのものであって、針数表示部42、針数アップボタン43、針数ダウンボタン44、及びいせ込み単位量表示部45、単位量アップボタン46、単位量ダウンボタン48とが表示されている。
上送り量は、設定された単位長さAごとに、設定された単位差動量Bだけ増減させることができ、単位長さAは、例えば針数で設定され、単位差動量Bは、例えは0.1mm単位の送り量で設定することができる。
【0037】
単位長さAは、針数アップボタン43又は針数ダウンボタン44を操作して針数表示部42に所望の針数を表示することにより設定することができる。
また、単位差動量Bは、単位量アップボタン46又は単位量ダウンボタン48を操作していせ込み単位量表示部45に所望のいせ込み単位差動量を表示することにより設定することができる。
【0038】
実行選択手段である選択操作スイッチ27は、スムージングONスイッチ49及びスムージングOFFスイッチ50として単位値設定画面15上に表示されている。
スムージングONスイッチ49又はスムージングOFFスイッチ50を操作することによって、いせ込み縫い時に差動量が変化した際にその変化を滑らかにする本願発明の制御(以後スムージング処理と言う)を実行するか否かを選択できるようになっている。
即ち、スムージングONスイッチ49を操作することによってスムージング処理を実行し、スムージングOFFスイッチ50を操作することによってスムージング処理の実行を停止するように設定することができる。
【0039】
本実施形態の作用を説明する。
いせ込み縫いの差動量は、図3及び図4に示す送り量設定画面13及び単位値設定画面15により、例えば単位長さAとして針数を、また単位差動量Bとして0.1mmを単位として設定される。
いせ込み量の変化は、単位針数A及び単位差動量Bを適宜の値に設定することによって任意に変更することができる。
【0040】
例えば、図5(A)は、単位針数Aを1、単位差動量Bを2として差動量を急に変化させる(1針縫製ごとに差動量が0.2mm増加)設定例であり、また図5(B)は単位針数Aを1、単位差動量Bを1として差動量を緩やかに変化させる(1針縫製ごとに差動量が0.1mm増加)設定例である。
この例では、単位針数Aは一定とし、単位差動量Bのみを変更することによって差動量の変化の勾配を任意の勾配に設定することができる。
【0041】
また、図6(A)は単位針数Aを1、単位差動量Bを1として差動量を細かに変化させる(1針縫製ごとに差動量が0.1mm増加)設定例であり、また図6(B)は単位針数Aを2、単位差動量Bも2として差動量を粗く変化させる(2針縫製ごとに差動量が0.2mm増加)設定例である。
この例では、単位針数Aと単位差動量Bの比率を同じに保ったまま変更することによって、差動量の変化の勾配を変えることなく、差動量の変化粗さを任意の粗さに設定することができる。
尚、上述した設定例では、単位針数で設定するようにしたが、縫製長さで設定するようにしてもよい。
【0042】
図3及び図4において上述したように各種設定条件を入力した後、ミシン起動ペダル33を操作すると、ミシンモータ39が回転して被加工布が送られながら縫製される。
このとき、設定された条件に従って上送りモータ24及び下送りモータ17が作動し、例えば図14に示す見頃2に袖1を縫い付ける縫製においては、下布である見頃2の送り量に対して、上布である袖1の送り量を大きくして、いせ込み縫いが行われる。
【0043】
いせ込み縫いの手順を図7〜図12のフローチャートを参照して説明する。尚フローチャートに示すS1,S2,・・・・は、手順を示すステップ番号であって、本文に添記する番号と一致する。
【0044】
先ず、図7に示すフローチャートにより、設定の手順を説明する。
ステップS1において、操作パネル38を操作して図3に示す送り量設定画面13を表示させる。
次いで、ステップS2でモード切換ボタン20を操作してスムージング制御設定を選択すると、操作パネル38の表示は切り換わって、図4に示す単位値設定画面15が表示される。
ステップS3でスムージングONスイッチ49又はスムージングOFFスイッチ50を操作してスムージング処理の使用又は不使用を選択する。
【0045】
ステップS4で針数表示部42に表示される針数を確認しながら針数アップボタン43又は針数ダウンボタン44を操作して、いせ込み量を変化させる際の単位針数Aを設定する。
ステップS5で単位量表示部45に表示される単位変化量量を確認しながら単位量アップボタン46又は単位量ダウンボタン48を操作していせ込み量を変化させる際の単位変化量Bを設定し、ステップS6で登録ボタン51が押されたかどうかを判別する。
登録ボタン51が押されていれば、ステップS7で設定値をRAM30に記憶して設定を確定し、終了する。
登録ボタン51が押されていなければ、ステップS8でキャンセルボタン52が押されたかどうかを判別し、押されていれば設定値をRAM30に記憶することなく終了する。
キャンセルボタン52が押されていなければ、ステップS3に戻って以後同様のステップを繰り返し実行する。
【0046】
上述したようにして単位針数A、単位変化量B及びスムージング処理の使用、不使用が設定されるが、その他に、図示しない設定画面を表示させて下送り量であるベースピッチP及び各区間U(U1,U2,U3,U4,U5,U6,U7)ごとの縫製長さL(L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7)、等が、mm単位の長さで設定される。
【0047】
また、前述した実施形態では、単位針数A及び単位差動量Bを数値で入力するようにしたが、例えば表1や表2に示すような数種類の単位針数A及び単位差動量Bの組合せデータをROM30に予め記憶させておき、差動量変化の度合いを示す用語、例えば緩やか、普通、急速、或いは差動量変化の細かさを示す用語、例えば粗い、普通、細かい、等から選択パネル38により選択するようにして、単位針数A及び単位差動量Bを一回の操作で容易に設定できるようにすることもできる。
【0048】
【表1】
Figure 2004201771
【0049】
【表2】
Figure 2004201771
【0050】
次に、図8に示すフローチャートにより、いせ込み制御の概要を説明する。
ステップS10で各設定値が確定し縫製画面(送り量設定画面)に切換られて縫製準備が完了しているか否か判別される。
縫製準備が完了していないときには、再びステップS10に戻る。
縫製準備が完了していると、ステップS11に進み、スムージング処理の設定有無を判別する。
ステップS11でスムージング処理の設置がなされていない(N)の場合には、
図9に示す処理▲1▼に移行する。また、スムージング処理の設定がされている場合(Y)には、ステップS12に進む。
そして、ステップS12で設定がフルオートモードか否かが判別される。 フルオートモードに設定されていると、ステップS13で後述する切換変数の算出処理が行われる。
フルオートモードに設定されていないと、ステップS13をスキップしてステップS14に進み、ミシンが回転中か否かを判別する。
【0051】
ミシンが回転中であれば、ステップS15で再びフルオートモードか否かが判別され、フルオートモードに設定されているとステップS16でフルオートモード・スムージング処理が行われ、フルオートモードに設定されていないとステップS17でセミオートモード・スムージング処理が行われる。
なお、フルオートモード・スムージング処理及びセミオートモード・スムージング処理の詳細は、後述する。
ステップS14でミシンが回転中でないと判別されると、ステップS15〜ステップS17がスキップされてステップS18に進む。
【0052】
ステップS18で作業者によるステップ切換スイッチ34操作の有無が判別され、ステップ切換スイッチ34が操作されていると、ステップS20に進み、現在の縫製区間が最終区間であるか否かが判別される。
また、ステップS20の現在の縫製区間が最終区間であるかの判別には後記の図12のステップS51の処理結果も▲2▼として戻される。
最終区間を縫製している場合は、再びステップS12に戻り、以後同様制御が繰り返し行われる。
最終区間でないと判別されると、ステップS21でステップカウンタが1だけインクリメントされ、ステップS22でフルオートモードか否かの判別がなされ、
フルオートモードであれば、ステップS23でスムージング制御開始フラグをセットした後、また、フルオートモードでなければ直接、再びステップS12に戻る。
【0053】
ステップS18でステップ切換スイッチ34が操作されていないと判別されると、ステップS19で糸切りされたか否かが判別され、糸切りされていると、縫製が終了していると判断されて制御を終了する。
糸切りされていないと、再びステップS14に戻り、以後同様制御が繰り返し行われる。
【0054】
次に、ステップS11でスムージング処理の設定がなされていない(N)と判別された際の処理▲1▼について説明する。
この処理は、基本的には図8の処理におけるステップS16の「フルオート・スムージング処理」及びステップS17の「セミオート・スムージング処理」を除外したものと同等である。
先ず、ミシンが回転中か否かを判別するステップS14’で判別する。
ミシンが回転中であれば、ステップS15’で再びフルオートモードか否かが判別され、フルオートモードであれば、ステップS16’で現在の縫製区間長さに達したか否かが判別される。
ステップS16’の判別で達した場合(Y)にはステップS20’で最終区間であるかが判別されて、最終区間でなければ(N)、ステップS21’次の区間のいせ込み量を現在のいせ込み量にして、ステップS22’でステップカウンタに+1をしてステップS14’に戻る。
ステップS16’の判別で達しない場合(N)及びステップS15’でフルオートモードでない(N)と判別された場合には、ステップS18’でステップ切換SWが押されたか否かの判別がなされて、ステップ切換スイッチSWが押された場合には、前記ステップS20’に移行する。
ステップS18’でステップ切換SWが押されていない(N)場合には、ステップS19’で糸切りされたか否かの判別がされて、糸切りされた場合(Y)には縫製が終了していると判断されて制御を終了する。
また、糸切りされていない(N)場合にはステップS14’に戻り、以後同様制御が繰り返し行われる。
【0055】
次に、図10に示すフローチャートにより、ステップS13(図8)で示す切換変数の算出処理について詳述する。
ステップS24において、いせ込み変化量aを、いせ込み変化量a=現在区間のいせ込み量b−次の区間のいせ込み量cの式により求める。
ステップS25で、いせ込み変化量aを設定された単位変化量Bで除し、商d及び余りeを求め、余りeがあるときには余りe=1とする(余りeがないときには余りe=0)。
次にステップS26で、上送り量の移行区間針数fを、移行区間針数f=(商d+余りe)×単位針数Aの式により演算して求める。
【0056】
ステップS27に進み、作業者によるステップ切換スイッチ34操作の有無が判別され、ステップ切換スイッチ34が操作されていないと、ステップS28に進み、スムージング開始位置針数gを、スムージング開始位置針数g=(現在区間の縫製長さL1/ベースピッチP)−(移行区間針数f/2)の式により演算して求めた後、図8のメインルーチンに戻る。
これによって、スムージングによるいせ込み縫いは、前の区間と後の区間に均等に跨がって行われることになる。
【0057】
ステップS27において、ステップ切換スイッチ34が操作されていると判別されると、ステップS29でスムージング開始位置針数g=0とした後、図8のメインルーチンに戻る。
これによって、スムージング制御処理が中断されて直ちに(ステップ切換スイッチ34が操作された時点)後の区間に設定されている差動量が適用されて縫製される(割り込み制御)。
【0058】
図11に示すフローチャートにより、ステップS17(図8)で示すセミオートモード・スムージング処理の詳細を説明する。
ステップS30において、スムージング制御開始フラグがセットされているか否かが判別され、セットされていないと図8のメインルーチンに戻り、セットされているとステップS31に進み、ミシンが1回転したか否かが判別される。
1回転していないと判別されると、図8のメインルーチンに戻る。
1回転したと判別されると、ステップS32に進み、針数カウンタの内容(CNT)が1だけインクリメントされる。
【0059】
次いで、ステップS33において針数カウンタの内容(CNT)が設定された単位針数Aに達したか否かが判別され、単位針数Aに達していない(CNT≠単位針数A)と、図8のメインルーチンに戻る。
単位針数Aに達している(CNT=単位針数A)と、ステップS34で針数カウンタの内容をクリア(CNT=0)し、ステップS35に進む。
【0060】
ステップS35において、現在のいせ込み量に単位変化量Bが加算され、ステップS36で加算後のいせ込み量が次の区間に設定されているいせ込み量を超えたか否かが判別される。
次の区間のいせ込み量に達していないときは、図8のメインルーチンに戻り、次の区間のいせ込み量に達しているときには、ステップS37で次の縫製のいせ込み量を加算後のいせ込み量に設定した後、ステップS38でスムージング制御開始フラグをリセットし、図8のメインルーチンに戻る。
【0061】
次に、図12に示すフローチャートにより、ステップS16(図8)で示すフルオートモード・スムージング処理の詳細を説明する。
先ず、ステップS40で、ミシンが1回転したか否かが判別される。
【0062】
ミシンが1回転していないと判別されると、図8のメインルーチンに戻り、1回転したと判別されると、ステップS41に進み、スムージング開始位置針数gが0、即ちスムージング処理の開始位置に達したか否かが判別される。
スムージング開始位置針数gが0でないと、ステップS42でスムージング開始位置針数gが1だけデクリメントされた後、図8のメインルーチンに戻る。スムージング開始位置針数gが0(g=0)であるとステップS43に進み、移行区間針数fが0となったか否かが判別され、移行区間針数f=0であると、いせ込み移行区間の縫製が終了したと判断され、ステップS44でいせ込み量を現在のいせ込み量として、▲2▼として図8のメインルーチンに戻る。
【0063】
ステップS43で移行区間針数f≠0であると判別されると、ステップS45に進み、移行区間針数fを1だけデクリメントしてステップS46に進み、針数カウンタの内容(CNT)が1だけインクリメントされる。次いで、ステップS47において針数カウンタの内容(CNT)が設定された単位針数Aに達したか、即ち差動量を増減させるタイミングであるか否かが判別され、単位針数Aに達していない(CNT≠単位針数A)と、図8のメインルーチンに戻る。
単位針数Aに達している(CNT=単位針数A)と、ステップS48で針数カウンタの内容をクリア(CNT=0)し、ステップS49に進む。
【0064】
ステップS49において、現在のいせ込み量に単位変化量Bが加算され、ステップS50で加算後のいせ込み量が次の区間に設定されているいせ込み量を超えたか否かが判別される。
即ち、ステップS50は、上送り量の移行時に上送り量が後の区間に対して設定された上送り量に到達したことを検出する検出手段として機能する。
次の区間のいせ込み量に達していないときは、図8のメインルーチンに戻る。次の区間のいせ込み量に達しているときには、ステップS51で次の縫製のいせ込み量を加算後のいせ込み量に設定して、▲2▼として図8のメインルーチンに戻る。
尚、ステップS46からステップS51の制御内容は、図11のステップS32からステップS38と同一制御内容である。
【0065】
【実施例】
本発明に係るいせ込み縫いの実施例を、フルオートモード、セミオートモード及び夫々のモードでスムージング制御を使用した場合、スムージング制御を使用しなかった場合の1例につき説明する。
【0066】
設定条件は、単位針数A=2、単位変化量B=1、ベースピッチP=2.0とし、図3に示す第1区間U1から第2区間U2を縫製する場合について説明する。 この場合、第1区間U1のいせ込み量は、2(具体的には0.2mm)であり、第2区間U2のいせ込み量は、8(具体的には0.8mm)に設定されている。また第1区間U1の縫製長さはL1=30mm、第2区間U2の縫製長さはL2=50mmに設定されているものとする。
【0067】
図12にセミオートモード時のいせ込み量の移行状態を示す。
図12(A)に示すように、セミオートモードでスムージング制御を使用しない場合は、作業者が図14に示す袖1の第1区間3aと見頃2の第1区間4aとを合わせていせ込み量2で縫い合わせる。
そして、作業者が第1区間U1の縫製が終了したと判断した時点で、差動送りミシン10を一旦停止させた後、ステップ切換スイッチ34を作業者が膝等で操作すると、第2区間U2の各種条件が読み出され、以後いせ込み量が8に変更されて袖1の第2区間3bと見頃2の第2区間4bとが縫い合わされる。
第1区間U1及び第2区間U2のいせ込み量は、ステップ切換スイッチ34が操作された時点SSWで、2(0.2mm)から8(0.8mm)に急激に変更されているのが分かる。
【0068】
図12(B)に示すように、セミオートモードでスムージング制御を使用する場合は、袖1の第1区間3aと見頃2の第1区間4aとの縫い合わせは、図12(A)と同様にいせ込み量2で縫い合わされる。
そして、作業者が第1区間U1の縫製が終了したと判断した時点で、差動送りミシン10を一旦停止させた後、ステップ切換スイッチ34を作業者が膝等で操作すると、第2区間U2の各種条件が読み出され、操作時点SSW以降、上送り量が設定された単位針数Aごとに単位変化量Bずつ増加(2針ごとに0.1mmずつ増加)するように変化し、12針でいせ込み量が2から8まで徐々に増加するように制御される。
【0069】
上述したように、セミオートモード時のいせ込み量の切換は、ステップ切換スイッチ34の操作に基づいて行われ、作業者区間毎にその縫製の終了を判断して、ステップ切換スイッチ34の操作のために差動送りミシン10を一旦停止させる必要がある。
【0070】
図13にフルオートモード時のいせ込み量の移行状態を示す。
図13(A)に示すように、フルオートモードでスムージング制御を使用しない場合は、30mmの長さに設定された第1区間U1は、ベースピッチP2.0mm、いせ込み量2(0.2mm)で15針縫製される。
15針縫製すると、第1区間U1の縫製が終了したことを制御プログラムによって自動的に検知(針数カウンタによって検知)し、第2区間U2に設定されている縫製条件(いせ込み量8等)が読み出され、第2区間U2がベースピッチP2.0mm、いせ込み量8で25針縫製される。
【0071】
第1区間U1から第2区間U2への区間切換えは、自動的に切り換えられ、差動送りミシン10を区間ごとに停止することなく実行可能である。
また、夫々の区間U1,U2は、設定されたいせ込み量で自動的に縫製され、いせ込み量は、区間Uの切換に伴なって2(0.2mm)から8(0.8mm)に急激に変更される。
【0072】
図13(B)に示すように、フルオートモードでスムージング制御を使用する場合は、図9に示す切換変数の算出処理の手順に従って、いせ込み変化量a=6、移行区間針数f=12、スムージング開始位置針数g=9が演算により求められる。
従って、第1区間U1の縫製開始後、9針目からいせ込み量の増加制御が開始され、以後2針ごとにいせ込み量が1単位(0.1mm)ずつ増加され、21針目でいせ込み量が8に達する。
以後、第2区間U2の縫製は、25針目(縫製開始から合計で40針)まで、いせ込み量8(0.8mm)で縫製される。
【0073】
即ち、実施例の場合、上送り量の増減制御の開始位置STは、縫製開始後9針目であり、終了位置EDは21針目である。
また、2つの区間U1、U2の境界位置BDは、15針目であり、上送り量の増減制御は境界位置BDを跨いで対称に設定されているが、境界位置BDのどちらか一方に設定しても良い。
具体的には、図9のステップS28において、(移行区間針数f/2)で表される箇所を0にして、境界位置BDからスムージングが開始されるようにしたり、(移行区間針数f)にして、境界位置BDでスムージングが終了するようにしてもよい。
また、操作パネル38により、ステップ28における(移行区間針数f/2)を0から移行区間針数fの間で種々の値に設定することによって、上送り量増減制御が跨ぐ境界位置BDに対する左右の割合を自由に変更することができる。
また、上送り量は、単位針数Aごとに単位変化量Bずつ増加(2針ごとに0.1mmずつ増加)し、徐々に変化して縫製されるので、2つの区間U1、U2の境界を滑らかに繋いで縫製することができる。
【0074】
第2区間U2以後の縫製も、同様に制御されて行われる。
また、上述した実施例では、各区間の縫製長さLを、mm単位の長さで設定したが、針数で設定することも可能である。
【0075】
なお、本発明の差動送りミシンは、前述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
例えば、本実施の形態では、縫製長さとして距離(mm)を入力し、単位長さとして針数を入力するようにしたが、縫製長さとして針数を入力するようにしてもよいし、また、単位長さとして距離(mm)を入力するようにしてもよい。
さらに、例えば、前述した実施形態及び実施例では、送り量を制御するようにしたが、例えばいせ込み縫に連動させ、いせ込み量に応じて糸張力の強さを同様に制御することにより、糸切れを防止し、縫製効率を向上させることも可能である。
【0076】
その他、前述した実施形態及び実施例において例示した、被加工布、下布、下送り手段、上布、上送り手段、区間、下送り量、上送り量、差動量、送り量設定手段、制御手段、差動送りミシン、単位長さ、単位差動量、単位値設定手段、検出手段、実行選択手段、操作スイッチ、縫製長さ、針数、区間の境界、制御選択手段、等の材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0077】
【発明の効果】
以上、説明したように、請求項1に記載発明では、隣合う区間の前の区間の上送り量から後の区間の上送り量への移行時に、上送り量を所定の単位長さごとに所定の単位差動量だけ増減させることによって、上送り量を徐々に変化させることができる。
【0078】
従って、例えば縫製区間の切換部における急激な上送り量の変化を無くして、従来のような切換部にしわ、タック、等が発生するという問題を解消でき、また、これによって、例えば製品の縫製品質を向上させて製品等の価値を高めることができる。
【0079】
また、上送り量の変化は、制御手段によって所定の単位長さごとに所定の単位差動量だけ自動的に増減させて行われるので、従来のような縫製部位を多数の区間に分割して、区間が切り換わるごとに頻繁に区間切換え作業等を行い、作業性が悪いという問題を解消できる。また、これによって、作業性等を改善して縫製効率を向上させることができる。
【0080】
更に、上送り量を変化させる時の単位長さ及び単位差動量は、単位値設定手段によって任意の値に設定することができるので、差動量の変化を縫製品等に最適の変化量に設定することができ、縫製品質等を向上させることができる。
【0081】
また、請求項2に記載の発明では、2つの区間の境界位置に対して、上送り量の増減制御は境界位置を跨いで対称に設定することもできるし、また、境界位置のどちらか一方片寄せて設定することもできる。
この構成により、上送り量の増減制御の開始位置及び終了位置を連続する2つの区間の境界を跨ぐように自動的に設定する場合には、差動量を前の区間の途中から後の区間にかけて徐々に変化させることができる。
従って、この差動送りミシンにおいては、前の区間の後半部から後の区間の前半部にかけて、自動的に差動量を変化させて縫製することができ、従来のような区間が切り換わると差動量が急激に変化して、切換部にしわやタック等が発生するという問題を解消できる。
また、区間の切換は自動的に行われるので、作業者は区間の切換ごとに操作スイッチの操作を行うことなく、いせ込み縫いすることができる。これによって作業者への負担が軽減されると共に、作業効率が大幅に向上する。
【0082】
また、請求項3に記載の発明では、連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への設定された移行の開始時点前に、作業者の操作によって、後の縫製区間の差動量へ移行させる手段を備えているので、区間の切換を自動的に設定した場合でも、作業者の意志によって、任意の時点切換が可能である。
【0083】
また、請求項4に記載の発明では、被加工布の縫製区間を複数の縫製区間に分割して、連続する前記縫製区間毎の、下送り量と、上送り量又は前記下送り量との差である差動量を順序を設定するのみであるので、操作スイッチの操作に基づいて任意の時点で隣合う区間の前の区間の上送り量から後の区間の上送り量への移行できるので、縫製部位や作業者の熟練度、等に応じて、任意の縫製モードを選択することができる。
従って、仕上がりの綺麗な縫製を行うことができる。
【0084】
また、請求項5に記載の発明では、上送り量を徐々に変化させる制御の実行の有無を実行選択手段によって選択可能としたので、従来の縫製モード等にも容易に切換えて縫製できる。
従って、この差動送りミシンにおいては、例えばデニム等のように厚く、こしのある被加工布の縫製はスムージング処理せずに縫製し、ブラウス等のように薄い被加工布の縫製はスムージング処理して縫製する等、縫製品や縫製部位等に応じて最適の縫製モードを選択して縫製することができ、縫製品質等を向上させることができる。
【0085】
また、上送り量の増減制御の開始位置及び終了位置を連続する2つの区間の境界を跨ぐように自動的に設定する場合には、差動量を前の区間の途中から後の区間にかけて徐々に変化させることができる。
従って、この差動送りミシンにおいては、前の区間の後半部から後の区間の前半部にかけて、自動的に差動量を変化させて縫製することができ、従来のような区間が切り換わると差動量が急激に変化して、切換部にしわやタック等が発生するという問題を解消できる。
また、区間の切換は自動的に行われるので、作業者は区間の切換ごとに操作スイッチの操作を行うことなく、いせ込み縫いすることができる。これによって作業者への負担が軽減されると共に、作業効率が大幅に向上する。
【0086】
また、上記した効果に加えて、制御に関する設定内容を1画面内で表示し、また設定できるようにしたので、設定内容を容易に確認することができ、かつ容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は差動送りミシンの斜視図である。
【図2】本発明の差動送りミシンの主な構成を示すブロック図である。
【図3】操作パネルに表示された送り量設定画面を示す正面図である。
【図4】操作パネルに表示された単位値設定画面を示す正面図である。
【図5】差動量の変化勾配を変えて設定する1例を示し、(A)は差動量を急に変化させる設定を示すグラフであり、(B)は差動量を緩やかに変化させる設定を示すグラフである。
【図6】差動量の変化勾配を一定とし、変化の粗さを変えて設定する1例を示し、(A)は差動量を細かく変化させる設定を示すグラフであり、(B)は差動量を粗く変化させる設定を示すグラフである。
【図7】図7は縫製条件を設定するための制御プログラムのフローチャート図である。
【図8】差動量を変化させて縫製する縫製プログラムの概要を示すフローチャート図である。
【図9】スムージング無の場合の処理手順を示すフローチャート図である。
【図10】切換変数の算出処理手順を示す制御プログラムのフローチャート図である。
【図11】セミオート・スムージング処理の処理手順を示す制御プログラムのフローチャート図である。
【図12】フルオート・スムージング処理の処理手順を示す制御プログラムのフローチャート図である。
【図13】セミオート時のいせ込み量の変化状態を示し、(A)はスムージング処理を使用しない場合のいせ込み量の変化状態を示すグラフ、(B)はスムージング処理を使用した場合のいせ込み量の変化状態を示すグラフである。
【図14】フルオート時のいせ込み量の変化状態を示し、(A)はスムージング処理を使用しない場合のいせ込み量の変化状態を示すグラフ、(B)はスムージング処理を使用した場合のいせ込み量の変化状態を示すグラフである。
【図15】いせ込み量によって縫製部位が複数の区間に分割された袖及び見頃の平面図である。
【符号の説明】
10 差動送りミシン
11 下送り無端ベルト(下送り手段)
12 上送り無端ベルト(上送り手段)
13 送り量設定画面(送り量設定手段)
14 コンピュータ装置(制御手段)
15 単位値設定画面(単位値設定手段)
20 モード切換ボタン(制御選択手段)
27 選択操作スイッチ(実行選択手段)
34 ステップ切換スイッチ(操作スイッチ)
A 単位針数(単位長さ)
B 単位変化量(単位差動量)
BD 2つの区間の境界位置
ED 上送り量増減制御の終了位置
L(L1〜L7) 縫製長さ
ST 上送り量増減制御の開始位置
U(U1〜U7) 区間

Claims (5)

  1. 上下に重ねられた被加工布の下布を送る下送り手段と、
    前記被加工布の上布を送る上送り手段と、
    前記被加工布の縫製区間を複数の縫製区間に分割して、各縫製区間ごとの縫製長さを設定すると共に、連続する前記縫製区間毎に、下送り量と、上送り量又は前記下送り量との差である差動量を設定する送り量設定手段と、
    前記送り量設定手段により設定された送り量に基づいて前記下送り手段及び前記上送り手段を制御すると共に、連続する前記縫製区間の前の縫製区間の設定された差動量から後の縫製区間の設定された差動量へ変化させる制御手段と備える差動送りミシンにおいて、
    前記差動量の設定において、単位長さ及び/又は単位差動量を設定する単位値設定手段を設け、
    連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行を、前記単位値設定手段で設定された単位長さごとに所定の単位差動量だけ増減させることを特徴とする差動送りミシン。
  2. 前記連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行開始時点を、前記縫製区間ごとの縫製長さが設定された値の前後に設定可能であることを特徴とする請求項1に記載の差動送りミシン。
  3. 前記連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への設定された移行の開始時点前に、作業者の操作時点から後の縫製区間の差動量へ移行させる手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の差動送りミシン。
  4. 上下に重ねられた被加工布の下布を送る下送り手段と、
    前記被加工布の上布を送る上送り手段と、
    前記被加工布の縫製区間を複数の縫製区間に分割して、連続する前記縫製区間毎の、下送り量と、上送り量又は前記下送り量との差である差動量を順序と共に設定する送り量設定手段と、
    前記連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行を、作業者の操作した時点から実行するステップ切換手段と、
    前記送り量設定手段により設定された送り量に基づいて前記下送り手段及び前記上送り手段を制御すると共に、連続する前記縫製区間の前の縫製区間の設定された差動量から後の縫製区間の設定された差動量へ変化させる制御手段と備える差動送りミシンにおいて、
    前記差動量の設定において、単位長さ及び/又は単位差動量を設定する単位値設定手段を設け、
    連続する前の縫製区間の差動量から後の縫製区間の差動量への移行を、前記単位値設定手段で設定された単位長さごとに所定の単位差動量だけ増減させることを特徴とする差動送りミシン。
  5. 前記連続する縫製区間における差動量の移行時に、単位長さごとに所定の単位差動量だけ増減させる制御の実行の有無を選択する実行選択手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した差動送りミシン。
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