JP2004198909A - 画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】静電荷像が形成される感光体と、この感光体を帯電させる帯電器12と、感光体上に形成された静電荷像を顕像化してトナー像を形成する現像器と、トナー像を被転写材に転写させる転写電極と、被転写材にトナー像を定着させる定着器とを備えた画像形成装置であって、帯電器12は、多数の孔が形成された板状グリッド123を有し、かつ、この板状グリッド123は、グリッド基材の表面に導電材料としてカーボン及びグラファイトの少なくとも一方を含む導電層を形成してなる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真方式に基づいて画像を形成するプリンタ、複写機等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式を採用した画像形成装置にあっては、像担持体である感光体の表面を帯電させる場合にコロナ放電器(帯電器)が広く用いられている。この種の画像形成装置では、コロナ放電器の支持筐体となるシールドケースの開放面を、像担持体である感光体ドラム等の被帯電部材に近接状態で対向させ、上記シールドケース内に張設した帯電ワイヤに放電電流を供給してコロナ放電を発生させることにより、被帯電部材の被帯電面に電荷を付与する。
【0003】
このようなコロナ放電器には、帯電ワイヤによって付与される電荷量を規制することにより、感光体の表面の帯電電位を制御する制御グリッドが用いられている。コロナ放電器の制御グリッドとしては、主にSUS(サス)等の板金にエッチング等によって多数の孔(細孔)を形成した板状グリッドを用いたものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−40316号公報
【特許文献2】
特開2001−166569号公報
【0005】
一方、像担持体である感光体については、安価で製造性及び廃棄性の点で優れた利点を有する有機光導電材料を用いた電子写真感光体の研究が活発化している。なかでも、露光により電荷を発生する電荷発生層と、この電荷発生層で発生した電荷を輸送する電荷輸送層とを積層してなる機能分離型の有機積層感光体は、感度、帯電性及びその繰り返し安定性等、電子写真特性の点で優れており種々の提案がなされ、実用化されている。特に、電荷輸送層に含有される電荷輸送材料に関しては、例えば、ベンジジン系化合物とトリアリールアミン系化合物を混合して用いることが提案されている(例えばね特許文献3、4参照)。
【0006】
【特許文献3】
特開平6−75408号公報
【特許文献4】
特開平6−95405号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の画像形成装置には次のような欠点があった。すなわち、板状グリッドを用いたコロナ放電器(帯電器)を低湿度環境下で長時間使用すると、帯電器の長手方向で帯電ムラが生じ、それにより濃度ムラ等の画像不良が発生する場合があった。これらの原因を調べたところでは、コロナ放電によって発生する放電生成物との化学反応により、板状グリッドの表面に部分的にFe2 O3 等の絶縁性の金属酸化物(以下、錆)が発生し、この錆による板状グリッドの絶縁化によって当該板状グリッドへの電荷の流入量が低下したために、像担持体となる感光体方向への電荷が増し、結果として帯電電位にムラが発生していることが判明している。
【0008】
SUSは一般的に腐食性が強いものの、活性酸素であるオゾン等がコロナ放電によって発生すると、SUSに含まれる鉄(Fe)等がオゾンと反応し、錆の発生に至ったものと推定される。こうした錆の発生に関して具体的に実験を行ったところ、コロナ放電電流を−700μA、グリッド電圧を−720Vとしたときに、新品の板状グリッドを用いた場合は感光体が−700V程度に帯電されるのに対し、錆の発生している部分では感光体の帯電電位が−730〜−740Vとなり、その結果、プリントによって得られた画質、特にハーフトーンに画像斑(画像の濃度ムラ)が発生した。
【0009】
この対策として従来においては、主に防錆の目的で、板状グリッドのグリッド基材の表面(素地面)に金めっきを施すことが提案されているが、その場合は、金めっきによって板状グリッドの部品単価が大幅に上昇する、ピンホールが発生しやすい、などの別の問題を招いてしまう。
【0010】
したがって本発明の第1の目的は、板状グリッドを用いたコロナ放電器(帯電器)を搭載した場合に、グリッド表面での錆の発生を有効に防止して、帯電ムラによる画像斑の発生を抑えることができる画像形成装置を安価に提供することにある。
【0011】
一方、感光体の電荷輸送層にベンジジン系化合物、トリアリールアミン系化合物、またそれらの混合物を含有させたものでは、光感度、印刷特性、耐久性等の点で十分な特性を示しており、通常の複写機やレーザープリンターに用いて数千枚程度のプリント(印刷)を行う範囲では全く問題がないものの、プリント枚数が数万枚を越えると感光体の劣化によって画像流れやカブリなどが発生し、印刷の画質が低下するという問題があった。また、感光体の劣化による画質の低下は、特に高温高湿の環境下で顕著になる傾向にあった。
【0012】
こうした印刷不良の発生原因の詳細は不明であるが、コロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(NOx)等やその窒素酸化物に基づく硝酸塩等の放電生成物が影響しているものと考えられている。
【0013】
この対策として、例えば、特開昭61−144670号公報には、窒素酸化物を吸着する反応性金属粒子(Ni、Ag、Cu、Zn、Pb)を含む導電性塗料をコロナ放電器の板状グリッドの表面に塗布して導電層を形成することにより、コロナ放電によって生じた窒素酸化物を板状グリッドで吸着し、これによっって窒素酸化物による感光体の劣化を防止する技術が提案されている。しかしながら、この技術ではプリント枚数が数万枚を越えた辺りで反応性金属の吸着機能が使い尽くされて消失し、さらには絶縁物である硝酸塩が蓄積されることにより、上記グリッド表面の錆と同様に画質、特に低湿環境下でハーフトーンに画像斑が発生する問題があった。
【0014】
したがって、本発明の第2の目的は、数十万枚程度のプリントを繰り返し行った場合でも、感光体の劣化による画像流れやカブリ、さらには帯電ムラによる画像斑などが発生せず、安定した画質を維持することができる画像形成装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る画像形成装置は、静電荷像が形成される感光体と、この感光体を帯電させる帯電手段と、前記感光体上に形成された静電荷像を顕像化してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写材に転写させる転写手段と、前記被転写材に前記トナー像を定着させる定着手段とを備えた画像形成装置であって、前記帯電手段は、多数の孔が形成された板状グリッドを有し、かつ、前記板状グリッドは、グリッド基材の表面に導電材料としてカーボン及びグラファイトの少なくとも一方を含む導電層を形成してなるものである。
【0016】
上記構成の画像形成装置においては、帯電手段の板状グリッドの表面が導電層で覆われることにより、低湿環境下でのグリッド基材の錆の発生が防止されるとともに、導電層中の導電材料が、放電生成物の一種であるNOxに対して化学的に反応性の低い(化学的に不活性な)カーボン、グラファイト等であるため、コロナ放電によって発生するNOxに長期間晒されても、NOxとの化学反応によって板状グリッドが絶縁化されることがなくなる。
【0017】
また、上記構成の画像形成装置に適用される感光体は、電荷発生層と電荷輸送層を含む少なくとも2層の感光層を有し、かつ、前記電荷輸送層は、少なくとも上記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物、上記一般式(II)で示されるベンジジン系化合物及び酸化防止剤を含有するものであることが好ましい。
【0018】
上記感光体を適用した画像形成装置においては、感光体の感光層を電荷発生層と電荷輸送層を含む少なくとも2層の構成とし、さらに電荷輸送層を、上記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物、上記一般式(II)で示されるベンジジン系化合物及び酸化防止剤を含有するものとしたことにより、コロナ放電によって放電生成物(オゾン、NOx等)が発生しても、この放電生成物による感光体の特性劣化(印刷特性、光感度、帯電性、繰り返し安定性などの諸特性の劣化)が有効に抑えられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置10は、感光体11と、帯電器12と、レーザー書き込み装置(レーザーROS;Laser Raster Output Scanner)13と、現像器14と、転写電極15と、分離電極16と、搬送機構17と、定着器18と、クリーナー19とを備えて構成されている。
【0021】
感光体11は、全体的にドラム状に形成され、画像形成時に所定の速度で回転駆動される。帯電器12は、画像形成時に感光体11を帯電させるもので、コロナ放電器を用いて構成されている。レーザー書き込み装置13は、帯電器12によって帯電された感光体11の表面をレーザー光(レーザービーム)によって露光走査することにより、感光体11の表面に静電荷像を形成するものである。
【0022】
現像器14は、レーザー書き込み装置13によって感光体11に形成された静電荷像を顕像化してトナー像(可視像)を形成するものである。転写電極15は、現像器14によって感光体11に形成されたトナー像を用紙等の被転写材に転写するものである。分離電極16は、感光体11に密着した被転写材を、当該感光体11から分離するものである。
【0023】
搬送機構17は、分離電極16によって感光体11から分離した被転写材を搬送するものである。定着器18は、搬送機構17によって搬送された被転写材を加熱、加圧することにより、転写電極15によって被転写材に転写されたトナー像を定着させるものである。クリーナー19は、転写後に感光体11に残留している残留トナーを除去するものである。
【0024】
図2は上記画像形成装置10に適用される帯電器12の構成例を示す組立斜視図であり、図3は当該帯電器12の構成例を示す分解斜視図である。図示した帯電器12は、支持筐体121と、帯電ワイヤ122と、板状グリッド123と、バネ124とを用いて構成されている。
【0025】
支持筐体121は、電気的なシールド作用をなすもので、一面を開放した細長い箱形に形成されている。この支持筐体121は、開放面を上記感光体11の外周面に対向させた状態で配置される。帯電ワイヤ122は、コロナ放電を行うもので、支持筐体121の内部に当該支持筐体121の長手方向と略平行に張設されている。帯電ワイヤ122としては、例えば線径が0.03mm(30μm)のタングステンワイヤに金メッキ処理を施して耐久性を高めたものを用いることが好ましい。
【0026】
板状グリッド123は、感光体11の表面の帯電電位を制御するもので、支持筐体121の開放面に取り付けられている。この板状グリッド123は、上記感光体11の外周面に近接して配置される。また板状グリッド123には図示しない電圧印加手段によってグリッド電圧が印加される。板状グリッド123に印加されるグリッド電圧は、感光体11の表面の電位を検出する電位検出器(電位センサー等)の検出信号に基づいて制御(フィードバック制御等)される。
【0027】
バネ124は、引っ張りコイルバネからなるもので、支持筐体121の開放面で板状グリッド123を張設するために用いられる。すなわち、支持筐体121の開放面では、板状グリッド123の長手方向の一端側が支持筐体121の一端部に係止されるとともに、板状グリッド123の長手方向の他端側が2つのバネ124を介して支持筐体121の他端部に係止される。
【0028】
ここで、上記板状グリッド123は、ステンレス鋼等からなる薄板状の板金にエッチング等によって多数の貫通孔を形成したグリッド基材を有し、このグリッド基材の表面に導電材料を含む導電層を形成したものが用いられている。また、導電層形成のための導電材料には、帯電ワイヤ122からのコロナ放電によって発生する放電生成物に対して化学的に不活性な材料、すなわちカーボン及びグラファイトのうちの少なくとも一方が含まれている。
【0029】
板状グリッド123を被覆する導電層は、例えば、上記導電材料を含む導電性塗料をグリッド基材の表面(全面)に塗布することにより得られる。その際、導電性塗料には、予め粒状又は粉末状にした上記導電材料に、バインダ(結着剤)となる樹脂を混合したものが用いられる。また、バインダとなる樹脂材料には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が用いられる。
【0030】
このように帯電器12が備える板状グリッド123の構成として、グリッド基材の表面(素地面)に導電材料としてカーボン及びグラファイトの少なくとも一方を含む導電層を形成することにより、グリッド基材の表面(全面)が導電層で覆われるため、低湿環境下でのグリッド基材の錆(金属酸化物)の発生を防止することができる。さらに、導電層に含まれる導電材料として、NOxと化学的に反応性が低い(化学的に不活性な)カーボン、グラファイト等を用いているため、コロナ放電によって生成されるNOxに晒されても、このNOxとの化学反応による導電性の劣化(絶縁化)を防止することができる。したがって、長期にわたって帯電ムラのない安定した帯電特性を維持することができる。
【0031】
次に、帯電器12に用いられる板状グリッド123の具体的な実施例と比較例について説明する。
【0032】
[実施例]
まず、本発明を適用した板状グリッドを以下の方法によって製造した。すなわち、予めエッチング等により多数の孔を形成したステンレス鋼等のグリッド基材に導電塗装を施す。このとき使用する導電性塗料には、導電材料としてグラファイトを含むDag213(日本アチソン株式会社製)を用い、このDag213をスプレー法によってグリッド基材の表面(全面)に均一に塗布した。その際、グリッド基材と導電性塗料との密着性を高める目的で、予めグリッド基材を脱脂処理し、この脱脂処理後のグリッド基材に導電性塗料を塗布した。この場合、塗布の前処理として、脱脂処理の他に、例えばパーカー処理(リン酸亜鉛被膜処理)などを行って、さらなる密着性の向上を図るようにしてもよい。
【0033】
グリッド基材の表面に導電性塗料を塗布した後は、この塗布によって形成された導電層を常温で乾燥させてもよいが、本実施例では、より強固な導電層を実現するために、上記Dag213で推奨されている熱処理(180℃、60分で焼成)を施して導電層を乾燥させた。その結果、グリッド基材の表面に、厚さが25μmで、表面抵抗率(シート抵抗)が700Ω/□の導電層が形成された板状グリッドを得た。
【0034】
[比較例]
上記実施例とは、導電層の形成に用いられる導電性塗料に含まれる導電材料を上記グラファイトに代えてニッケルを採用し、このニッケルを導電材料として含む導電性塗料を上記実施例と同様の手法(スプレー法)でグリッド基材に塗布し、乾燥させることにより、グリッド基材の表面に、厚さが25μmで、表面抵抗率(シート抵抗)が700Ω/□の導電層が形成された板状グリッドを得た。
【0035】
このようにして作成した実施例の板状グリッドと比較例の板状グリッドをそれぞれ帯電器12に装着するとともに、この帯電器12をデジタル複合機(DCC500、富士ゼロックス株式会社製)に装着し、錆やその他の析出物が発生しやすい低温低湿環境(10℃、15%RH)で、10万枚プリント相当、30万枚プリント相当、50万枚プリント相当の放電実験を行って、感光体の初期の帯電電位と所定枚数プリント相当後の帯電電位との差を調べた。そうしたところ、以下の表1に示すような結果が得られた。
【0036】
【表1】
【0037】
上記表1から分かるように、実施例の板状グリッドを用いた場合と比較例の板状グリッドを用いた場合では、10万枚プリント相当後の電位差はあまり変わらないものの、30万枚プリント相当後では、実施例のものが電位差5Vであるのに対し、比較例のものでは電位差30Vと非常に大きくなり、50万枚プリント相当後では、実施例のものが電位差15Vに抑えられているものの、比較例のものは電位差75Vと非常に大きくなっている。
【0038】
また、実際に画像の形成を行って画質を評価してみた結果、実施例のものでは、50万枚プリント相当後でも錆や析出物などの発生がなく、画質も何ら問題なかった。これに対して、比較例のものでは、10万枚プリント相当後までは特に問題なかったものの、30万枚プリント相当後ではハーフトーン画質に斑が発生し始め、50万枚プリント相当後では錆状の析出物が発生した箇所で画像の白抜けが認められた。以上の結果からも、本発明の実施形態に係る板状グリッド123を用いた帯電器12を画像形成装置に搭載することにより、帯電特性を長期にわたって良好に維持できることが確認された。
【0039】
続いて、本発明の実施形態に係る画像形成装置に適用して好適な感光体の構成について説明する。図4は本発明の実施形態に係る画像形成装置に適用される感光体の構成例を示す断面図である。図示した感光体11の構成においては、導電性支持体111上に下引き層112を介して形成される感光層113が、少なくとも電荷発生層114と電荷輸送層115とを含む2層以上の層(多層)に機能分離された層構成としている。
【0040】
導電性支持体111としては、アルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、ITO等の薄膜を設けたプラスチックフィルム等、あるいは導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙及びプラスチックフィルム等があげられる。これらの導電性支持体111は、ドラム状、シート状、プレート状等適宜の形状のものとして使用されるが、これらに限定されるものではない。さらに必要に応じて導電性支持体111の表面は、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができる。例えば、表面の酸化処理や薬品処理、及び着色処理等又は、砂目立て等の乱反射処理等を行うことができる。
【0041】
下引き層112は、必用に応じて導電性支持体111と電荷発生層114との間に設けられるものである。この下引き層112は、感光層113を帯電器12で帯電させるときに、導電性支持体111から感光層113への電荷の注入を阻止すると共に、感光層113を導電性支持体111に対して一体的に接着保持させる接着層としての作用、或いは場合によっては導電性支持体111の光の反射光防止作用等を示す。下引き層112を構成する樹脂及びその他の材料としては、ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ジルコニウムキレート化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物その他の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知の材料を用いることができる。下引き層112の膜厚は0.01〜10μm、好ましくは0.05〜2μmが適当である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティイング法、エアーナイフコーティイング法、カーテンコーティング法等の通常の方法を用いることができる。
【0042】
電荷発生層114は、電荷発生材料を結着樹脂中に分散して構成される。電荷発生材料としては、非晶質セレン、結晶性セレン−テルル合金、その他セレン化合物及びセレン合金、酸化亜鉛、酸化チタン等の無機系光導電性材料、フタロシアニン系、スクアリウム系、アントアントロン系、ペリレン系、アゾ系、アントラキノン系、ピレン系、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等の有機顔料及び染料が用いられる。電荷発生層における結着樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、シリコン樹脂、フェノール樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等を使用できるが、これらに限定されるものではない。これらの結着樹脂は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0043】
電荷発生材料と結着樹脂との配合比(質量比)は、10:1〜1:10の範囲が好ましい。また、本発明で用いる電荷発生層の厚みは、一般的には、0.1〜5μm、好ましくは0.2〜2.0μmが適当である。塗布方法としては、ブレードコーティング法、マイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコティング法等の方法を用いることができる。電荷発生層を設ける際に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸n−ブチル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム等の有機溶剤があげられ、これらを単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0044】
電荷輸送層115は、少なくとも上記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物、上記一般式(II)で示されるベンジジン系化合物及び酸化防止剤を必須成分として結着樹脂中に含有し、必要に応じて他の膜質改良剤などを添加して構成される。
【0045】
トリアリールアミン系化合物とベンジジン系化合物との混合割合は、質量比で10:90ないし90:10の範囲であるが、トリアリールアミン系化合物の比が30未満の場合は、耐摩耗性、クリーニング性、クリーニング部材との摺動音が問題となることがあるので、30:70ないし90:10の範囲とすることが望ましい。トリアリールアミン系化合物とベンジジン系化合物との総和と、結着樹脂との混合割合は、質量比で30:70ないし60:40の範囲が採用できるが、電気特性、耐摩耗性、クリーニング性、クリーニング部材との摺動性等を良好に保つためには、35:65ないし50:50の範囲で使用することが好ましい。
【0046】
酸化防止剤としては、一次酸化防止剤であるヒンダードアミン系酸化防止剤又はヒンダードフェノール系酸化防止剤が特に望ましく、それらは単体で、又は2種以上の混合物として用いられる。酸化防止剤の総添加量は、添加される層全体の1質量%以上、15質量%以下であるが、層の機械的特性を損なわないためには、トリアリールアミン系化合物とベンジジン系化合物と酸化防止剤との総和が、それを含む層全体の60質量%を越えないように添加することが望ましい。
【0047】
電荷輸送層115に用いる結着樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシランなどの公知の樹脂を用いることができる。また、電荷輸送層115の上には、必要に応じて保護層(不図示)を設けてもよい。保護層は、感光層113の帯電時における電荷輸送層115の化学的変質を防止すると共に、感光層113の機械的強度を改善するために有用である。この保護層は、導電材料を適当な結着樹脂中に含有させることにより形成される。
【0048】
かかる構成の感光体11を有する画像形成装置では、感光体11の感光層113を電荷発生層114と電荷輸送層115の2層構成とし、さらに電荷輸送層115を、上記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物、上記一般式(II)で示されるベンジジン系化合物及び酸化防止剤を含有するものとしたことにより、コロナ放電によって放電生成物(オゾン、NOx等)が発生しても、この放電生成物による感光体11の特性劣化を有効に抑えることができる。これにより、複写操作の繰り返しによって数万枚〜数十万枚のプリントを行った後でも、画像流れやカブリなどの印刷品位の低下を防止し、優れた繰り返し安定性を実現することができる。
【0049】
続いて、本発明の実施形態に係る画像形成装置で適用される感光体の具体的な実施例と比較例について説明する。
【0050】
[実施例]
先ず、アルミニウムドラムからなる導電性支持体111上に、下記組成の塗布液を浸漬コーティング法により塗布した後、150℃で10分間加熱乾燥することにより、膜厚0.1μmの下引き層112を形成した。
ジルコニウム化合物 10部
(オルガチックスZC540、マツモト製薬社製)
シラン化合物(A1110、日本ユニカー社製) 5部
I-プロパノール 40部
【0051】
次に、下記組成の混合物をガラスビーズと共にサンドミルで1時間分散処理し、得られた塗布液を上記下引き層112上に浸漬コーティング法で塗布した後、100℃で10分間加熱乾燥して、膜厚20μmの電荷発生層114を形成した。
X型無金属フタロシアニン 5部
ポリビニルブチラール樹脂 5部
(エスレックBM−S、積水化学社製)
シクロヘキサノン 90部
【0052】
次いで、下記組成の塗布液を、上記電荷発生層114上に浸漬コーティング法で塗布した後、120℃で60分間加熱乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層115を形成した。
トリアリールアミン化合物(I−19) 40部
ベンジジン化合物(II−58) 10部
ヒンダードフェノール系酸化防止剤 3部
(SumilizerMDP−S、住友化学社製)
下記一般式(III)で示されるポリカーボネート 47部
(粘度平均分子量:MV =30,000)
ジメチルポリシロキサン 0.1部
クロロベンゼン 400部
以上のようにして感光体ドラムを作製した。
【0053】
【化3】
(n′は上記分子量の範囲の重合度を意味する。)
【0054】
[比較例1]
上記実施例において、電荷輸送層115の形成時に酸化防止剤であるヒンダードフェノール系酸化防止剤:SumilizerMDP−Sを添加しない以外は、全く同様にして感光体ドラムを作製した。
【0055】
[比較例2]
上記実施例において、酸化防止剤として、SumilizerMDP−Sの代わりに、有機硫黄系酸化防止剤であるSumilizerTPM(住友化学社製)を用いた以外は、全く同様にして感光体ドラムを作製した。
【0056】
[比較例3]
上記実施例において、電荷輸送材料であるトリアリールアミン化合物及びベンジジン化合物の代わりに、下記一般式(IV)で示されるヒドラゾン系化合物を用いた以外は、全く同様にして電子写真感光体ドラムを作製した。なお、ヒドラゾン化合物の添加量は、トリアリールアミン化合物とベンジジン化合物を合計した量と等しい量にした。
【0057】
【化4】
【0058】
上記実施例及び比較例1〜3で作製した感光体ドラムを、本発明の実施形態に係る導電層付き(導電材料にカーボン、グラファイト等を採用)の板状グリッド123を用いた帯電器12を備えるデジタル複合機(DCC500、富士ゼロックス社製)にそれぞれ搭載し、初期においてレーザー非露光時の表面電位VH が−700V、レーザー露光時の表面電位VL が−300Vになるように、スコロトロン及びレーザー露光条件を設定し、除電後の表面電位VR を記録した。その条件で、複写操作を繰り返し行って、それぞれ30万枚、50万枚プリントした後、非露光時の表面電位VH 、露光時の表面電位VL 、及び除電後の表面電位VR を測定し、プリント前後における変化量を調べた。また、ハーフトーンプリントにより、10万枚、30万枚、50万枚プリント後の画像流れを評価した。画像流れの評価結果を下記表2に示すとともに、プリント前後の電位変化量の測定結果を下記表3に示す。画像流れの評価は、「○;未発生」、「×;発生し100枚以上プリントしても消えない」、「△;発生し100枚程度のプリントで消える」の3段階で行った。また、この評価実験は、感光体の劣化が激しいとされる高温高湿(28℃、85%RH)の環境条件で行った。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
これらの表から明らかなように、実施例の感光体を用いた場合は、高温高湿の環境下で30万枚、50万枚とプリントしたときでも、カブリや黒点の発生、画像流れの発生などの感光体の劣化に起因する大きな印刷欠陥はなく、さらに帯電器に起因する斑もなく、感光体表面についた機械的傷による若干の筋が発生する程度であった。これらの評価結果は、本発明の画像形成装置で採用する感光体が優れた繰り返し安定性を有していることを示している。
【0062】
一方、酸化防止剤を添加しなかった比較例1の感光体を使用した場合は、30万枚のプリント後において、VL 及びVR が大幅に上昇しており、印刷にも全面カブリが大量に発生し、画像流れも発生したため、30万枚プリントした時点で評価実験を中止した。比較例2の感光体を使用した場合は、比較例1の場合に比較して酸化防止剤の効果が認められるものの、ヒンダーフェノール系酸化防止剤を用いた実施例のものに比較すると、その効果は小さく、50万枚プリント時で印刷にも全面カブリと画像流れが発生した。ヒドラゾン系化合物を電荷輸送材料に用いた比較例3の感光体を使用した場合は、VH が低下し、VL 及びVR が大幅に上昇し、30万枚プリント後は、印刷にかなりのカブリと画像流れが発生したため、その時点で評価実験を中止した。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の画像形成装置によれば、感光体を帯電させる帯電手段に板状グリッドを設けるとともに、この板状グリッドのグリッド基材の表面に導電材料としてカーボン及びグラファイトの少なくとも一方を含む導電層を形成したので、グリッド表面での錆の発生やこれに伴う絶縁化を有効に防止することができる。これにより、長期にわたって帯電ムラのない安定した帯電特性を維持し、画像斑の発生を抑えることができる。また、グリッド基材の表面に高価な金メッキを施す必要がないため、画像形成装置を安価に提供することができる。
【0064】
さらに、上記帯電手段によって帯電される感光体の構成として、電荷発生層と電荷輸送層を含む少なくとも2層の感光層を有し、かつ、電荷輸送層は、少なくとも上記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物、上記一般式(II)で示されるベンジジン系化合物及び酸化防止剤を含有するものとすることにより、コロナ放電によって発生する放電生成物によって感光体の特性が劣化することを有効に抑えることができる。これにより、画像流れやカブリなどの印刷品位の低下を防止し、優れた繰り返し安定性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置に適用される帯電器の構成例を示す組立斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る画像形成装置に適用される帯電器の構成例を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る画像形成装置に適用される感光体の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
10…画像形成装置、11…感光体、12…帯電器、13…レーザー書き込み装置、14…現像器、15…転写電極、16…分離電極、17…搬送機構、18…定着器、19…クリーナー、111…導電性支持体、112…下引き層、113…感光層、114…電荷発生層、115…電荷輸送層、121…支持筐体、122…帯電ワイヤ、123…板状グリッド、124…バネ
Claims (3)
- 静電荷像が形成される感光体と、この感光体を帯電させる帯電手段と、前記感光体上に形成された静電荷像を顕像化してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を被転写材に転写させる転写手段と、前記被転写材に前記トナー像を定着させる定着手段とを備えた画像形成装置であって、
前記帯電手段は、多数の孔が形成された板状グリッドを有し、かつ、前記板状グリッドは、グリッド基材の表面に導電材料としてカーボン及びグラファイトの少なくとも一方を含む導電層を形成してなることを特徴とする画像形成装置。 - 前記感光体は、電荷発生層と電荷輸送層を含む少なくとも2層の感光層を有し、かつ、前記電荷輸送層は、少なくとも下記一般式(I)で示されるトリアリールアミン系化合物、下記一般式(II)で示されるベンジジン系化合物及び酸化防止剤を含有する
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
- 前記酸化防止剤がヒンダードアミン系化合物及びヒンダードフェノール系化合物から選択された少なくとも一種である
ことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
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