JP2004198660A - 光ファイバ素線およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光ファイバ素線が水中に長期間浸漬されると、裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離し、該光ファイバ素線は長手方向に不均一なマイクロベンドを受け、伝送損失が大きく増加しやすくなるという課題があった。
【解決手段】裸光ファイバーの外周に硬化されたプライマリ層とセカンダリ層とが被覆されて構成された光ファイバ素線において、プライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tpが厚さ35μmで0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、更にセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tsが厚さ25μmで0.1〜0.9、であることを特徴とする。これにより上記課題が解決される。
【選択図】図1
【解決手段】裸光ファイバーの外周に硬化されたプライマリ層とセカンダリ層とが被覆されて構成された光ファイバ素線において、プライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tpが厚さ35μmで0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、更にセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tsが厚さ25μmで0.1〜0.9、であることを特徴とする。これにより上記課題が解決される。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信等に用いられる光ファイバ素線およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の光ファイバ素線は、一般に光ファイバが石英系のガラスで構成されており、光ファイバ母材をその一端から他端に向かって徐々に加熱紡糸することによって裸光ファイバが製造され、直ちにその上に樹脂が被覆されて製造される。裸光ファイバは紡糸直後には強い機械強度を有するものであるが、時間の経過とともにその表面が酸化したり、他の固形物と接触して傷が付き強度が劣化する。このため、光ファイバの表面に紡糸直後に樹脂を被覆して上記劣化を防ぐことが行われる。
また光ファイバ素線は、光の伝搬する部分がポリメタルメタアクリレート(PMMA)系などの透過度の高いプラスチック材で構成されることもある。このような材料で構成された場合であっても、紡糸直後に機械的補強を図る目的でその上に樹脂が施される。
【0003】
裸光ファイバの表面に被覆される樹脂は、柔軟な樹脂組成物からなるプライマリ層と、その外側に剛性の高い樹脂組成物からなるセカンダリ層により構成されるのが一般的である。またその被覆方法は、溶融紡糸直後のガラスファイバ外周に液状のプライマリ樹脂組成物を塗布後、熱あるいは光、特に紫外線照射により硬化させ、引き続き更にその外周に液状のセカンダリ樹脂組成物を塗布後、熱あるいは光、特に紫外線照射により硬化させるいわゆるタンデム法によるか、又は熱溶融紡糸直後のガラスファイバ外周に液状のプライマリ樹脂組成物を塗布後、引き続き液状のセカンダリ樹脂組成物を塗布後、熱あるいは光、特に紫外線照射により硬化させるいわゆる二層一括法によって製造される。
【0004】
二層一括法は、プライマリ層とセカンダリ層とを同時に硬化させることから、工程が短縮され生産性の高い方法であるが、プライマリ層はセカンダリ層を透過した減衰された紫外線で硬化されるため、プライマリ層を紫外線で直接硬化させるタンデム法に比較して、プライマリ層の硬化が不十分になる。
このようなことを改善するため、従来、セカンダリ層の吸光度を低くしてプライマリ層に届く紫外線を強めるように工夫したものが公知である(例えば特許文献1)
【0005】
【特許文献1】再公表特許WO98/31641
【特許文献2】特開2001-328851
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、プライマリ層の硬化度を上げるためにセカンダリ層の吸光度を低く(透過度を高く)した光ファイバ素線においては、特にタンデム法で顕著であるが、水中に長期間浸漬されると、裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離し、該光ファイバ素線は長手方向に不均一なマイクロベンドを受け、伝送損失が大きく増加しやすくなるという課題があった。
【0007】
本発明は、水中に長期間浸漬されても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、伝送損失の増加の小さい、優れた耐水特性を有する光ファイバ素線、及びその製造方法を提供することが主目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特にタンデム法で吸光度の低いセカンダリを用いると、水中浸漬された裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離する現象は、硬化前のプライマリ層、及びセカンダリ層の透過度平均値と、硬化後プライマリ層の吸水率が関係していること、そしてこれらを特定の関係に特定することにより、前記の問題が解決し得ることを見い出し、本発明に至った。
【0009】
これは、タンデム法では、プライマリ層が直接的に減衰のない紫外線で一度硬化された後に、セカンダリ層を透過した紫外線で再度硬化されるため、一度紫外線硬化されてある程度の架橋構造が完成したプライマリ層のマトリクスが、再度の紫外線照射により未反応の残留物が再度架橋することとなり、マトリクス内部により大きい歪が生じることが関与していると考えられる。
【0010】
本請求項1の発明は、裸光ファイバーの外周に硬化されたプライマリ層とセカンダリ層とが被覆されて構成された光ファイバ素線において、プライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、更にセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tsが0.1〜0.9、であることに特徴がある。
【0011】
本請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記セカンダリ層の透過平均値Tsとプライマリ層の透過平均値Tpと差TS-Pが-0.3<TS-P<0.5であることを特徴とする。
【0012】
本請求項3の発明は、裸光ファイバの外周に液状のプライマリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させ、その後そのプライマリ層の上に液状のセカンダリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させて光ファイバ素線を製造する光ファイバ素線の製造方法において、液状のプライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、硬化前のセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tsが0.1〜0.9であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の光ファイバ素線に用いられる裸光ファイバの種類は特に限定されないが、石英系シングルモード、石英系マルチモード、石英系ステップインデックス、石英系分散シフト、多成分系、プラスティック系、プラスティッククラッド系等の裸光ファイバーを用いることができる。
【0014】
本発明に用いられる被覆材の樹脂組成物は、紫外線硬化型の樹脂組成物(以下、単にUV樹脂という)であり、硬化速度の観点からウレタン−アクリレート系やエポキシ−アクリレート系のオリゴマーを主成分としたものが最適である。
【0015】
UV樹脂は、一般的に、不飽和基(例えばアクリロイル基)を含有するラジカル重合性オリゴマー(I)、反応性希釈剤としての反応性モノマー(II)、光エネルギーを吸収してラジカル等の活性種を発生する重合開始剤(III)を基本的構成成分として含有しており、更に各種添加剤(IV)等が必要量配合されたものである。UV樹脂は、主にラジカル重合性オリゴマー(I)と反応性モノマー(II)と重合開始剤(III)の種類の選定、及び配合量の調整によって、光ファイバ素線のプライマリ層用途、またはセカンダリ層用途として求められる各々の特性(透過度、吸水率、硬化後のヤング率、硬化速度等)のものが得られる。
【0016】
ラジカル重合性オリゴマー(I)は、両末端にビニル基、(メタ)アクリル基等の重合性不飽和基を有する化合物が挙げられ、その中でもポリオール(IA)とポリイソシアネート(IB)と末端に重合性不飽和基と水酸基とを含有する化合物(IC)から合成される樹脂であるウレタンアクリレートやグリシジルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和基を有するカルボン酸類の反応生成物としての樹脂、エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0017】
ウレタンアクリレートの製造に用いられる上記ポリオール(IA)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン等の環状エーテルの重合体またはこれらの2種以上の共重合体であるポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、多塩基酸と多価アルコールの重縮合化合物であるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0018】
また、上記ポリイソシアネート(IB)としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、水添1,3-キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトレメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。
【0019】
更に、上記ウレタンアクリレートの製造に用いられる末端に重合性不飽和基と水酸基とを有する化合物(IC)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
前記エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等のビスフェノール類およびフェノール樹脂等の芳香環を含むポリオールのグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の反応生成物が挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマー(I)としては、上記ラジカル重合性オリゴマーを単独で用いても、複数を混合して用いても良い。
【0021】
次に反応性モノマー(II)としては、水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がエステル化反応で結合した構造の化合物等が挙げられ、例えばメトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンサクシネート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]アッシドホスフェート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4,−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキル(メタ)アクリート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、モルホリン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム等の単官能希釈剤;同様に、例えば2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートのジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、2,2´−ジ(ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、2,2´−ジ(ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールのジ(メタ)アクリレート等の2官能希釈剤;同様に、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリメタアクリレート、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレート等の多官能希釈剤が挙げられる。
【0022】
単官能性モノマーの希釈機能以外の重要な機能として、例えばノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート類は、プライマリ層に用いて、硬化後のガラス転移温度(Tg)を低くする作用が有り、イソボルニルアクリレートなどリジッドな骨格を有するモノマーは前記の低Tgモノマーと併用することで粘着機構により裸光ファイバとプライマリ層の密着性を向上させる作用が有り、N−ビニルピロリドンなどN−ビニルアミド系のモノマーは、アクリレートの反応系に配合されることにより、アクリレートの重合速度を速める作用が有る。
【0023】
二(多)官能性モノマーの希釈機能以外の重要な機能は、架橋点間分子量の調整に使用し、具体的には架橋点間分子量を低下させ、硬化後のヤング率を高める作用が有る。
【0024】
重合開始剤(III)としては、例えば4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾイン誘導体、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられる。市販品としてはIrgacure184(チバスペシャルティーケミカルズ社)、Irgacure907(チバスペシャルティーケミカルズ社)、Irgacure651(チバスペシャルティーケミカルズ社)、Irgacure819(チバスペシャルティーケミカルズ社)、Lucirine TPO(BASF社製)等が有る。
【0025】
各種添加剤(IV)の例としては顔料、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、レべリング剤、滑剤、酸化安定剤、老化防止剤、耐侯剤、保存安定剤、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられるUV樹脂は、プライマリ層用としては硬化後のヤング率が2.5MPa以下であることが好ましく、より好ましくは1.5MPa以下である。そのようなプライマリ層用UV樹脂に用いられるラジカル重合性オリゴマー(I)の好ましい分子量は1000〜10000であり、より好ましくは3000〜6000である。また、硬化後の吸水率を2%以下に規定する必要があり、また硬化後の裸光ファイバとプライマリ層間の密着性は高いほうが好ましいことから、反応性モノマー(II)としては疎水性が高く、密着力も高い、前記のうちノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ビニルモノマー等が好ましい。
【0027】
本発明に用いられるUV樹脂は、セカンダリ層用UV樹脂としては硬化後のヤング率は100〜2000MPaであることが好ましく、より好ましくは400〜1000MPaである。そのようなセカンダリ用UV樹脂に用いられるラジカル重合性オリゴマー(I)の好ましい分子量は800〜4000であり、より好ましくは1000〜3000である。また、剛性を高める上で、反応性モノマー(II)として好ましいのは前記のうちトリシクロデカンジメチロールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等である
【0028】
本発明にかかるUV樹脂100重量%(ラジカル重合性オリゴマー(I)、反応性モノマー(II)、重合開始剤(III)、及び各種添加剤(IV)の合計100重量%)中、前記ラジカル重合性オリゴマー(I)の含有量は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%であり、前記反応性モノマー(II)の含有量は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜45重量%であり、前記重合開始剤(III)の含有量は、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0029】
本発明の光ファイバー素線において、波長領域300〜450nmの光に対する硬化前のプライマリ層の透過度平均値TPが0.2〜0.9で、且つ波長領域300〜450nmの光に対する硬化前のセカンダリ層の透過度平均値TSが0.1〜0.9であることを必要とする。好ましくは、プライマリ層の透過度平均値TPが0.3〜0.9で、セカンダリ層の透過度平均値TSが0.2〜0.9である。
【0030】
プライマリ層の透過度平均値TPが0.2未満になるとファイバ素線を水中に浸漬したとき、裸光ファイバとプライマリ層との界面で部分的な剥離が起こりやすく、伝送損失の増加が大きくなりやすいからであり、プライマリ層の透過度平均値TPが0.9を超えると、プライマリ層の硬化が不十分になり、プライマリ層とセカンダリ層との界面に皺が生じ、商品価値を低下させるからである。セカンダリ層の透過度平均値TSが0.1未満になるとプライマリ層の硬化が不十分になり、プライマリ層とセカンダリ層との界面に皺が生じ、商品価値を低下させるからであり、セカンダリ層の透過度平均値TSが0.9を超えると、ファイバ素線を水中に浸漬したとき、裸光ファイバとプライマリ層との界面で部分的な剥離が起こりやすく、伝送損失の増加が大きくなりやすいからである。
【0031】
本発明でいう透過度は以下の式によって表される。
T=I/I0=1/10A=1/10ε cl
T:透過度、I:透過光強度、I0:入射光強度、A:吸光度、
ε:分子吸光係数、c:吸収物質の濃度、l:光が透過する媒体の距離
【0032】
また、各層を構成する硬化前の液状UV樹脂の透過度は以下のようにして測定される。
図2において、1、2はそれぞれ石英ガラス板、3はPET(ポリエチレンテレフタレート)シート、4は被測定体である液状のUV樹脂である。石英ガラス板1は例えば40×30×2mm(厚さ)で構成され、石英ガラス板2は例えば40×20×2mm(厚さ)で構成されている。PETシート3は例えば0.05mm厚のものが図2に示されるように枠状に配置される。被測定体である液状のUV樹脂4は、PETシート3で構成された前記枠内に配置されて石英ガラス板2で被われる。これによって、2枚の石英ガラス板1・2間には、PETシート3の厚さで定められた厚さの液状のUV樹脂4が配置される。
【0033】
この状態で2枚の各石英ガラス板1・2の表裏にそれぞれ紫外線光源及び分光光度計を配置して、液状のUV樹脂の透光度Aを測定する。測定は300nmから450nmまでの紫外線を0.2nm間隔で行った。このようにして硬化前の液状UV樹脂の各波長での吸光度Aを測定し、その値から前記式より光ファイバ素線の一例である、プライマリ層厚35μm、セカンダリ層厚25μm時の値に換算した。更に、前記式により各波長の透過度を算出した。その際、300nmから450nmまでの紫外線を0.2nm間隔で測定された透過度を単純に算術平均したものを透過度平均値とした(但し、透過度が1.0となる波長の光は除いた)。このようにしてプライマリ層及びセカンダリ層を構成する各種樹脂をそれぞれ測定した。
なお、上記換算は製造される光ファイバ素線の一例であるプライマリ層厚35μm、セカンダリ層厚25μmを想定して行ったが、これらの厚さが異なる場合であっても、求められた透過度Aはそのまま適用可能である。即ち、作成されるプライマリ層、セカンダリ層の厚さが異なる場合であっても、上記透過度Aはそのまま適用可能である。
【0034】
図3はこれにより測定された未硬化のプライマリ層(P1)の35μm厚に換算された透過度特性、未硬化のセカンダリ層(S1)の25μm厚に変換された透過度特性、プライマリ層の透過度平均値TP、及びセカンダリ層の透過度平均値TSの一例を示す特性図である。図においてセカンダリ層(S1)の透過度平均値TPは0.64であり、セカンダリ層(S1)の透過度平均値TSは0.41である例が示されている。
【0035】
プライマリ層の透過度平均値TP、セカンダリ層(S1)の透過度平均値TSは選択される前記ラジカル重合性オリゴマー(I)の骨格及び使用する重合開始剤(III)により決定され、前記透過度の式からも分かるように、重合開始剤(III)の分子吸光係数、プライマリ層厚やセカンダリ層厚、重合開始剤(III)濃度によって決定される。
【0036】
更に、UV樹脂は硬化後に各透過度平均値TP、TSが0.05程度大きくなるのが一般的であるため、この向上を想定して材料選定することが好ましい。
すなわち、本発明の光ファイバー素線としては、裸光ファイバーの外周に紫外線硬化されたプライマリ層とセカンダリ層を備えた光ファイバ素線において、前記プライマリ層の波長領域300〜450nmの光における透過度平均値TPが0.25〜0.95で、且つ前記セカンダリ層の波長領域300〜450nmの光における透過度平均値TSが0.15〜0.95となる。
【0037】
本発明の光ファイバ素線おけるプライマリ層及びセカンダリ層の厚み(硬化後)は特に制限されないが、それぞれ約10〜約50μmが好ましい。例えば直径約125μmの裸光ファイバを使用する場合は、セカンダリ層の外径が240〜250μm程度となるように構成されることが一般的である。なお、上記の層の厚みは硬化中に5〜50%程度縮小する場合があるため、そのような場合は厚みの縮小を想定して硬化前の樹脂層の厚みを設定することが好ましい。
【0038】
更に、本発明の光ファイバー素線において、硬化後のプライマリ層の吸水率を2%以下にすると、ファイバ素線を水中に浸漬したとき、裸光ファイバとプライマリ層との界面で部分的な剥離がなく、伝送損失の増加がほとんどなくなる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明を、実施例及び比較例に基づきさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図1において、11は裸光ファイバ、12は裸光ファイバの上に被覆されたプライマリ層、13はプライマリ層12の外側に更に被覆されたセカンダリ層であり、これにより光ファイバ素線14が形成されている。裸光ファイバ11は、従来と同様に気相軸付法(VAD)法や内付化学気相堆積法(MCVD法)等によって光ファイバ用母材が形成され、これを図示しない光ファイバ紡糸装置により加熱溶融紡糸することによって作成される。プライマリ層12及びセカンダリ層13は、それを構成する前記各種組成を調整することにより、種々の透過度平均値、吸水率、ヤング率を有する樹脂を準備した。表1には、本実施例及び比較例を説明するために、プライマリ層用のUV樹脂P1〜P7及びセカンダリ層用のUV樹脂S1〜S6を掲載してある。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に記載した硬化前のプライマリ層の波長領域300〜450nmにおける透過度平均値TPと、硬化前のセカンダリ層の波長領域300〜450nmにおける透過度平均値TSは、図2に示すように光ファイバ素線のプライマリ層、セカンダリ層用の硬化前の液状UV樹脂を0.05mm厚PET(ポリエチレンテレフタレート)シート(商品名マイラー、富士実業製)をスペーサーとして二枚の石英ガラス板に挟み込んだ薄層UV樹脂試料を作製し、分光光度計(HITACHI U-3410)を用いて、その試料に300nmから0.2nm間隔で450nmまでの波長の光を照射して、各波長の吸光度Aを測定し、その値から前記式より光ファイバ素線と同じ厚み、プライマリ35μm、セカンダリ25μmの値に換算し、更に前記式により各波長の透過度を算出し、300〜450nm内の0.2nmでの各波長の光の透過度を単純に算術平均して求めた。(但し、透過度が1.0となる波長の光は除いた)
【0042】
表1に記載した吸水率は、大気中、UV照度200mW/cm2、UV照射量200mJ/cm2の条件で硬化させた0.2mm厚シートを作成し、JIS K7209プラスチィックの吸水率の求め方のC法に準じて測定した。
【0043】
表1に記載したヤング率は、大気中、UV照度200mW/cm2、UV照射量200mJ/cm2の条件で硬化させた0.2mm厚シートを作成し、23℃、引張り速度1mm/minの条件で引張り試験を行い、2.5%歪時の引張り強さから算出されたものである。
【0044】
[光ファイバ素線の作成]
表2に示すようにプライマリ層12、セカンダリ層13用のUV樹脂の組み合わせで、外径125μmの石英系シングルモード裸光ファイバ11上に、液状のプライマリ層12用のUV樹脂を塗布し、引き続き紫外線を照射して硬化させ、外径約195μmのプライマリ層12を形成した。更にその上に、液状のセカンダリ層13用のUV樹脂を塗布し、引き続き紫外線を照射して硬化させ、外径約245μmのセカンダリ層13を形成し、表2に示す実施例1〜8、比較例1〜6の光ファイバ素線14を得た。また、そのときの光ファイバ素線14の線引き速度は1000m/minであり、光ファイバ素線14の温水浸漬後における剥離の有無、温水浸漬後のロス増、プライマリ層の硬化度の指標として皺の有無(プライマリ層の硬化が不十分のときセカンダリ層との界面に皺が生じ、硬化が十分であれば皺がない)を併せて表2にまとめた。
【0045】
表2に記載した光ファイバのプライマリヤング率は前記特許文献2に記載された方法により得られた値である。その方法とはプライマリ剛性率を算出し、ヤング率と剛性式の下記の関係式においてポアソン比を0.45として求めた。
E=2G(1+μ)
E:ヤング率、G:剛性率、μ:ポアソン比
【0046】
表2に記載した光ファイバ素線14のセカンダリ層13のヤング率は、以下により求めた。
始めに、図4に示すように、光ファイバ素線14を裸光ファイバ11とプライマリ層12との界面に沿ったスライス線15に沿ってスライスし、同図(b)に示すスライス片16を作成した。
次ぎに、このスライス片16を把持間隔25mmで把持し、23℃の雰囲気状態において、引張り速度1mm/minの条件で把持間隔を広げてスライス片16に2.5%の歪を与え、このときの引張り強さを求めた、
【0047】
次ぎにセカンダリ層13の断面積を考慮して、上記引張強さからヤング率を算出した。
尚、プライマリ層12のヤング率はセカンダリ層13に比較して桁違いに小さいので、上記ヤング率はこの分の引張強さを無視して求めた。またセカンダリ層13の断面積はマイクロスコープを用いた求めた。
【0048】
【表2】
【0049】
光ファイバ素線14の温水浸漬後における剥離の有無は、約1mの光ファイバ素線14を60℃のイオン交換水中に30日間浸漬後、光学顕微鏡を用いて透過光で100倍程度の倍率で裸光ファイバ11とプライマリ層12との界面を観察することによって判定した。表2中の記号の意味は以下のとおり。◎:剥離が全く無い、○:極微小剥離(問題ないレベル)が存在、×:剥離有り。
【0050】
光ファイバ素線14の温水浸漬後のロス増は、1km束取りして光ファイバ素線14を60℃のイオン交換水中に30日間浸漬させた後にOTDR(Optical Time DomainReflectometry)を用いて測定した。測定の際の波長は1550nmであった。ロス増は小さいほうが良く、0.05db/km以下が実用レベルである。
【0051】
光ファイバ素線14の皺の有無は、製造後の約1mの光ファイバ素線14につき、光学顕微鏡を用いて透過光で100倍程度の倍率でプライマリ層12とセカンダリ層13との界面付近を観察することによって判定した。表2中の記号の意味は以下のとおりである。
◎:皺が全く無い、○:極微小皺(問題ないレベル)が存在、×:皺有り。
【0052】
表2から明らかなように、本発明の光ファイバ素線である実施例1〜8はプライマリ層とセカンダリ層との界面に皺が発生せず、プライマリ層の硬化が十分であり、60℃のイオン交換水中に30日間浸漬後でも、裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、ロス増が小さい。特に、プライマリ層の吸水率が2%以下である場合、光ファイバ素線のロス増が極めて小さい。
【0053】
上記1〜8の実施例における、セカンダリ層の透過平均値Tsとプライマリ層の透過平均値Tpと差TS-Pを求めてみると、-0.3から0.5の範囲内であり、この範囲内に量透過度平均値を選定すればより良好な特性のものを得ることができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、裸光ファイバーの外周に硬化されたプライマリ層とセカンダリ層とが被覆されて構成された光ファイバ素線において、プライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、更にセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tsが0.1〜0.9、であることを特徴とする。このため、プライマリ層の硬化が十分で、水中に長期間浸漬されても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、長期信頼性の高い耐水特性を有するものが得られる効果を有する。
【0055】
また、前記セカンダリ層の透過平均値Tsとプライマリ層の透過平均値Tpと差TS-Pを-0.3から0.5の範囲内に設定することにより、より長期信頼性の高い耐水特性の有するものとなる効果を有する。
【0056】
また、裸光ファイバの外周に液状のプライマリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させ、その後そのプライマリ層の上に液状のセカンダリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させて光ファイバ素線を製造する光ファイバ素線の製造方法において、液状のプライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、硬化前のセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tsが0.1〜0.9であることを特徴とする。これにより、プライマリ層の硬化が十分で、水中に長期間浸漬されても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがない耐水特性が優れた長期安定性の高い光ファイバが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す光ファイバ素線の断面図。
【図2】液状樹脂の透過度を測定するための装置の一例を示す斜視図。
【図3】透過度平均値の一例を示す特性図。
【図4】スライス片の切り出し例を示す斜視図。
【符号の説明】
11・・・裸光ファイバ
12・・・プライマリ層
13・・・セカンダリ層
14・・・光ファイバ素線
15・・・スライス面
16・・・スライス片
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信等に用いられる光ファイバ素線およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の光ファイバ素線は、一般に光ファイバが石英系のガラスで構成されており、光ファイバ母材をその一端から他端に向かって徐々に加熱紡糸することによって裸光ファイバが製造され、直ちにその上に樹脂が被覆されて製造される。裸光ファイバは紡糸直後には強い機械強度を有するものであるが、時間の経過とともにその表面が酸化したり、他の固形物と接触して傷が付き強度が劣化する。このため、光ファイバの表面に紡糸直後に樹脂を被覆して上記劣化を防ぐことが行われる。
また光ファイバ素線は、光の伝搬する部分がポリメタルメタアクリレート(PMMA)系などの透過度の高いプラスチック材で構成されることもある。このような材料で構成された場合であっても、紡糸直後に機械的補強を図る目的でその上に樹脂が施される。
【0003】
裸光ファイバの表面に被覆される樹脂は、柔軟な樹脂組成物からなるプライマリ層と、その外側に剛性の高い樹脂組成物からなるセカンダリ層により構成されるのが一般的である。またその被覆方法は、溶融紡糸直後のガラスファイバ外周に液状のプライマリ樹脂組成物を塗布後、熱あるいは光、特に紫外線照射により硬化させ、引き続き更にその外周に液状のセカンダリ樹脂組成物を塗布後、熱あるいは光、特に紫外線照射により硬化させるいわゆるタンデム法によるか、又は熱溶融紡糸直後のガラスファイバ外周に液状のプライマリ樹脂組成物を塗布後、引き続き液状のセカンダリ樹脂組成物を塗布後、熱あるいは光、特に紫外線照射により硬化させるいわゆる二層一括法によって製造される。
【0004】
二層一括法は、プライマリ層とセカンダリ層とを同時に硬化させることから、工程が短縮され生産性の高い方法であるが、プライマリ層はセカンダリ層を透過した減衰された紫外線で硬化されるため、プライマリ層を紫外線で直接硬化させるタンデム法に比較して、プライマリ層の硬化が不十分になる。
このようなことを改善するため、従来、セカンダリ層の吸光度を低くしてプライマリ層に届く紫外線を強めるように工夫したものが公知である(例えば特許文献1)
【0005】
【特許文献1】再公表特許WO98/31641
【特許文献2】特開2001-328851
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、プライマリ層の硬化度を上げるためにセカンダリ層の吸光度を低く(透過度を高く)した光ファイバ素線においては、特にタンデム法で顕著であるが、水中に長期間浸漬されると、裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離し、該光ファイバ素線は長手方向に不均一なマイクロベンドを受け、伝送損失が大きく増加しやすくなるという課題があった。
【0007】
本発明は、水中に長期間浸漬されても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、伝送損失の増加の小さい、優れた耐水特性を有する光ファイバ素線、及びその製造方法を提供することが主目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特にタンデム法で吸光度の低いセカンダリを用いると、水中浸漬された裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離する現象は、硬化前のプライマリ層、及びセカンダリ層の透過度平均値と、硬化後プライマリ層の吸水率が関係していること、そしてこれらを特定の関係に特定することにより、前記の問題が解決し得ることを見い出し、本発明に至った。
【0009】
これは、タンデム法では、プライマリ層が直接的に減衰のない紫外線で一度硬化された後に、セカンダリ層を透過した紫外線で再度硬化されるため、一度紫外線硬化されてある程度の架橋構造が完成したプライマリ層のマトリクスが、再度の紫外線照射により未反応の残留物が再度架橋することとなり、マトリクス内部により大きい歪が生じることが関与していると考えられる。
【0010】
本請求項1の発明は、裸光ファイバーの外周に硬化されたプライマリ層とセカンダリ層とが被覆されて構成された光ファイバ素線において、プライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、更にセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tsが0.1〜0.9、であることに特徴がある。
【0011】
本請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記セカンダリ層の透過平均値Tsとプライマリ層の透過平均値Tpと差TS-Pが-0.3<TS-P<0.5であることを特徴とする。
【0012】
本請求項3の発明は、裸光ファイバの外周に液状のプライマリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させ、その後そのプライマリ層の上に液状のセカンダリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させて光ファイバ素線を製造する光ファイバ素線の製造方法において、液状のプライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、硬化前のセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tsが0.1〜0.9であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の光ファイバ素線に用いられる裸光ファイバの種類は特に限定されないが、石英系シングルモード、石英系マルチモード、石英系ステップインデックス、石英系分散シフト、多成分系、プラスティック系、プラスティッククラッド系等の裸光ファイバーを用いることができる。
【0014】
本発明に用いられる被覆材の樹脂組成物は、紫外線硬化型の樹脂組成物(以下、単にUV樹脂という)であり、硬化速度の観点からウレタン−アクリレート系やエポキシ−アクリレート系のオリゴマーを主成分としたものが最適である。
【0015】
UV樹脂は、一般的に、不飽和基(例えばアクリロイル基)を含有するラジカル重合性オリゴマー(I)、反応性希釈剤としての反応性モノマー(II)、光エネルギーを吸収してラジカル等の活性種を発生する重合開始剤(III)を基本的構成成分として含有しており、更に各種添加剤(IV)等が必要量配合されたものである。UV樹脂は、主にラジカル重合性オリゴマー(I)と反応性モノマー(II)と重合開始剤(III)の種類の選定、及び配合量の調整によって、光ファイバ素線のプライマリ層用途、またはセカンダリ層用途として求められる各々の特性(透過度、吸水率、硬化後のヤング率、硬化速度等)のものが得られる。
【0016】
ラジカル重合性オリゴマー(I)は、両末端にビニル基、(メタ)アクリル基等の重合性不飽和基を有する化合物が挙げられ、その中でもポリオール(IA)とポリイソシアネート(IB)と末端に重合性不飽和基と水酸基とを含有する化合物(IC)から合成される樹脂であるウレタンアクリレートやグリシジルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸等の重合性不飽和基を有するカルボン酸類の反応生成物としての樹脂、エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0017】
ウレタンアクリレートの製造に用いられる上記ポリオール(IA)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン等の環状エーテルの重合体またはこれらの2種以上の共重合体であるポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、多塩基酸と多価アルコールの重縮合化合物であるポリエステルポリオール、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0018】
また、上記ポリイソシアネート(IB)としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、水添1,3-キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトレメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。
【0019】
更に、上記ウレタンアクリレートの製造に用いられる末端に重合性不飽和基と水酸基とを有する化合物(IC)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
前記エポキシアクリレートとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等のビスフェノール類およびフェノール樹脂等の芳香環を含むポリオールのグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の反応生成物が挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマー(I)としては、上記ラジカル重合性オリゴマーを単独で用いても、複数を混合して用いても良い。
【0021】
次に反応性モノマー(II)としては、水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がエステル化反応で結合した構造の化合物等が挙げられ、例えばメトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンサクシネート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、3−アクリロイルオキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリε−カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、モノ[2−(メタ)アクリロイルオキシエチル]アッシドホスフェート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,−テトラフロロプロピル(メタ)アクリレート、2,2,3,4,4,4,−ヘキサフロロブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキル(メタ)アクリート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、モルホリン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム等の単官能希釈剤;同様に、例えば2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネートのジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、2,2´−ジ(ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、2,2´−ジ(ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンのジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールのジ(メタ)アクリレート等の2官能希釈剤;同様に、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリメタアクリレート、トリス(ヒドロキシプロピル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリット酸、トリアリルイソシアヌレート等の多官能希釈剤が挙げられる。
【0022】
単官能性モノマーの希釈機能以外の重要な機能として、例えばノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート類は、プライマリ層に用いて、硬化後のガラス転移温度(Tg)を低くする作用が有り、イソボルニルアクリレートなどリジッドな骨格を有するモノマーは前記の低Tgモノマーと併用することで粘着機構により裸光ファイバとプライマリ層の密着性を向上させる作用が有り、N−ビニルピロリドンなどN−ビニルアミド系のモノマーは、アクリレートの反応系に配合されることにより、アクリレートの重合速度を速める作用が有る。
【0023】
二(多)官能性モノマーの希釈機能以外の重要な機能は、架橋点間分子量の調整に使用し、具体的には架橋点間分子量を低下させ、硬化後のヤング率を高める作用が有る。
【0024】
重合開始剤(III)としては、例えば4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾイン誘導体、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられる。市販品としてはIrgacure184(チバスペシャルティーケミカルズ社)、Irgacure907(チバスペシャルティーケミカルズ社)、Irgacure651(チバスペシャルティーケミカルズ社)、Irgacure819(チバスペシャルティーケミカルズ社)、Lucirine TPO(BASF社製)等が有る。
【0025】
各種添加剤(IV)の例としては顔料、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増感剤、連鎖移動剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、レべリング剤、滑剤、酸化安定剤、老化防止剤、耐侯剤、保存安定剤、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いられるUV樹脂は、プライマリ層用としては硬化後のヤング率が2.5MPa以下であることが好ましく、より好ましくは1.5MPa以下である。そのようなプライマリ層用UV樹脂に用いられるラジカル重合性オリゴマー(I)の好ましい分子量は1000〜10000であり、より好ましくは3000〜6000である。また、硬化後の吸水率を2%以下に規定する必要があり、また硬化後の裸光ファイバとプライマリ層間の密着性は高いほうが好ましいことから、反応性モノマー(II)としては疎水性が高く、密着力も高い、前記のうちノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ビニルモノマー等が好ましい。
【0027】
本発明に用いられるUV樹脂は、セカンダリ層用UV樹脂としては硬化後のヤング率は100〜2000MPaであることが好ましく、より好ましくは400〜1000MPaである。そのようなセカンダリ用UV樹脂に用いられるラジカル重合性オリゴマー(I)の好ましい分子量は800〜4000であり、より好ましくは1000〜3000である。また、剛性を高める上で、反応性モノマー(II)として好ましいのは前記のうちトリシクロデカンジメチロールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等である
【0028】
本発明にかかるUV樹脂100重量%(ラジカル重合性オリゴマー(I)、反応性モノマー(II)、重合開始剤(III)、及び各種添加剤(IV)の合計100重量%)中、前記ラジカル重合性オリゴマー(I)の含有量は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは20〜80重量%であり、前記反応性モノマー(II)の含有量は、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜45重量%であり、前記重合開始剤(III)の含有量は、好ましくは0.2〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。
【0029】
本発明の光ファイバー素線において、波長領域300〜450nmの光に対する硬化前のプライマリ層の透過度平均値TPが0.2〜0.9で、且つ波長領域300〜450nmの光に対する硬化前のセカンダリ層の透過度平均値TSが0.1〜0.9であることを必要とする。好ましくは、プライマリ層の透過度平均値TPが0.3〜0.9で、セカンダリ層の透過度平均値TSが0.2〜0.9である。
【0030】
プライマリ層の透過度平均値TPが0.2未満になるとファイバ素線を水中に浸漬したとき、裸光ファイバとプライマリ層との界面で部分的な剥離が起こりやすく、伝送損失の増加が大きくなりやすいからであり、プライマリ層の透過度平均値TPが0.9を超えると、プライマリ層の硬化が不十分になり、プライマリ層とセカンダリ層との界面に皺が生じ、商品価値を低下させるからである。セカンダリ層の透過度平均値TSが0.1未満になるとプライマリ層の硬化が不十分になり、プライマリ層とセカンダリ層との界面に皺が生じ、商品価値を低下させるからであり、セカンダリ層の透過度平均値TSが0.9を超えると、ファイバ素線を水中に浸漬したとき、裸光ファイバとプライマリ層との界面で部分的な剥離が起こりやすく、伝送損失の増加が大きくなりやすいからである。
【0031】
本発明でいう透過度は以下の式によって表される。
T=I/I0=1/10A=1/10ε cl
T:透過度、I:透過光強度、I0:入射光強度、A:吸光度、
ε:分子吸光係数、c:吸収物質の濃度、l:光が透過する媒体の距離
【0032】
また、各層を構成する硬化前の液状UV樹脂の透過度は以下のようにして測定される。
図2において、1、2はそれぞれ石英ガラス板、3はPET(ポリエチレンテレフタレート)シート、4は被測定体である液状のUV樹脂である。石英ガラス板1は例えば40×30×2mm(厚さ)で構成され、石英ガラス板2は例えば40×20×2mm(厚さ)で構成されている。PETシート3は例えば0.05mm厚のものが図2に示されるように枠状に配置される。被測定体である液状のUV樹脂4は、PETシート3で構成された前記枠内に配置されて石英ガラス板2で被われる。これによって、2枚の石英ガラス板1・2間には、PETシート3の厚さで定められた厚さの液状のUV樹脂4が配置される。
【0033】
この状態で2枚の各石英ガラス板1・2の表裏にそれぞれ紫外線光源及び分光光度計を配置して、液状のUV樹脂の透光度Aを測定する。測定は300nmから450nmまでの紫外線を0.2nm間隔で行った。このようにして硬化前の液状UV樹脂の各波長での吸光度Aを測定し、その値から前記式より光ファイバ素線の一例である、プライマリ層厚35μm、セカンダリ層厚25μm時の値に換算した。更に、前記式により各波長の透過度を算出した。その際、300nmから450nmまでの紫外線を0.2nm間隔で測定された透過度を単純に算術平均したものを透過度平均値とした(但し、透過度が1.0となる波長の光は除いた)。このようにしてプライマリ層及びセカンダリ層を構成する各種樹脂をそれぞれ測定した。
なお、上記換算は製造される光ファイバ素線の一例であるプライマリ層厚35μm、セカンダリ層厚25μmを想定して行ったが、これらの厚さが異なる場合であっても、求められた透過度Aはそのまま適用可能である。即ち、作成されるプライマリ層、セカンダリ層の厚さが異なる場合であっても、上記透過度Aはそのまま適用可能である。
【0034】
図3はこれにより測定された未硬化のプライマリ層(P1)の35μm厚に換算された透過度特性、未硬化のセカンダリ層(S1)の25μm厚に変換された透過度特性、プライマリ層の透過度平均値TP、及びセカンダリ層の透過度平均値TSの一例を示す特性図である。図においてセカンダリ層(S1)の透過度平均値TPは0.64であり、セカンダリ層(S1)の透過度平均値TSは0.41である例が示されている。
【0035】
プライマリ層の透過度平均値TP、セカンダリ層(S1)の透過度平均値TSは選択される前記ラジカル重合性オリゴマー(I)の骨格及び使用する重合開始剤(III)により決定され、前記透過度の式からも分かるように、重合開始剤(III)の分子吸光係数、プライマリ層厚やセカンダリ層厚、重合開始剤(III)濃度によって決定される。
【0036】
更に、UV樹脂は硬化後に各透過度平均値TP、TSが0.05程度大きくなるのが一般的であるため、この向上を想定して材料選定することが好ましい。
すなわち、本発明の光ファイバー素線としては、裸光ファイバーの外周に紫外線硬化されたプライマリ層とセカンダリ層を備えた光ファイバ素線において、前記プライマリ層の波長領域300〜450nmの光における透過度平均値TPが0.25〜0.95で、且つ前記セカンダリ層の波長領域300〜450nmの光における透過度平均値TSが0.15〜0.95となる。
【0037】
本発明の光ファイバ素線おけるプライマリ層及びセカンダリ層の厚み(硬化後)は特に制限されないが、それぞれ約10〜約50μmが好ましい。例えば直径約125μmの裸光ファイバを使用する場合は、セカンダリ層の外径が240〜250μm程度となるように構成されることが一般的である。なお、上記の層の厚みは硬化中に5〜50%程度縮小する場合があるため、そのような場合は厚みの縮小を想定して硬化前の樹脂層の厚みを設定することが好ましい。
【0038】
更に、本発明の光ファイバー素線において、硬化後のプライマリ層の吸水率を2%以下にすると、ファイバ素線を水中に浸漬したとき、裸光ファイバとプライマリ層との界面で部分的な剥離がなく、伝送損失の増加がほとんどなくなる。
【0039】
【実施例】
次に、本発明を、実施例及び比較例に基づきさらに詳細に説明する。
(実施例1)
図1において、11は裸光ファイバ、12は裸光ファイバの上に被覆されたプライマリ層、13はプライマリ層12の外側に更に被覆されたセカンダリ層であり、これにより光ファイバ素線14が形成されている。裸光ファイバ11は、従来と同様に気相軸付法(VAD)法や内付化学気相堆積法(MCVD法)等によって光ファイバ用母材が形成され、これを図示しない光ファイバ紡糸装置により加熱溶融紡糸することによって作成される。プライマリ層12及びセカンダリ層13は、それを構成する前記各種組成を調整することにより、種々の透過度平均値、吸水率、ヤング率を有する樹脂を準備した。表1には、本実施例及び比較例を説明するために、プライマリ層用のUV樹脂P1〜P7及びセカンダリ層用のUV樹脂S1〜S6を掲載してある。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に記載した硬化前のプライマリ層の波長領域300〜450nmにおける透過度平均値TPと、硬化前のセカンダリ層の波長領域300〜450nmにおける透過度平均値TSは、図2に示すように光ファイバ素線のプライマリ層、セカンダリ層用の硬化前の液状UV樹脂を0.05mm厚PET(ポリエチレンテレフタレート)シート(商品名マイラー、富士実業製)をスペーサーとして二枚の石英ガラス板に挟み込んだ薄層UV樹脂試料を作製し、分光光度計(HITACHI U-3410)を用いて、その試料に300nmから0.2nm間隔で450nmまでの波長の光を照射して、各波長の吸光度Aを測定し、その値から前記式より光ファイバ素線と同じ厚み、プライマリ35μm、セカンダリ25μmの値に換算し、更に前記式により各波長の透過度を算出し、300〜450nm内の0.2nmでの各波長の光の透過度を単純に算術平均して求めた。(但し、透過度が1.0となる波長の光は除いた)
【0042】
表1に記載した吸水率は、大気中、UV照度200mW/cm2、UV照射量200mJ/cm2の条件で硬化させた0.2mm厚シートを作成し、JIS K7209プラスチィックの吸水率の求め方のC法に準じて測定した。
【0043】
表1に記載したヤング率は、大気中、UV照度200mW/cm2、UV照射量200mJ/cm2の条件で硬化させた0.2mm厚シートを作成し、23℃、引張り速度1mm/minの条件で引張り試験を行い、2.5%歪時の引張り強さから算出されたものである。
【0044】
[光ファイバ素線の作成]
表2に示すようにプライマリ層12、セカンダリ層13用のUV樹脂の組み合わせで、外径125μmの石英系シングルモード裸光ファイバ11上に、液状のプライマリ層12用のUV樹脂を塗布し、引き続き紫外線を照射して硬化させ、外径約195μmのプライマリ層12を形成した。更にその上に、液状のセカンダリ層13用のUV樹脂を塗布し、引き続き紫外線を照射して硬化させ、外径約245μmのセカンダリ層13を形成し、表2に示す実施例1〜8、比較例1〜6の光ファイバ素線14を得た。また、そのときの光ファイバ素線14の線引き速度は1000m/minであり、光ファイバ素線14の温水浸漬後における剥離の有無、温水浸漬後のロス増、プライマリ層の硬化度の指標として皺の有無(プライマリ層の硬化が不十分のときセカンダリ層との界面に皺が生じ、硬化が十分であれば皺がない)を併せて表2にまとめた。
【0045】
表2に記載した光ファイバのプライマリヤング率は前記特許文献2に記載された方法により得られた値である。その方法とはプライマリ剛性率を算出し、ヤング率と剛性式の下記の関係式においてポアソン比を0.45として求めた。
E=2G(1+μ)
E:ヤング率、G:剛性率、μ:ポアソン比
【0046】
表2に記載した光ファイバ素線14のセカンダリ層13のヤング率は、以下により求めた。
始めに、図4に示すように、光ファイバ素線14を裸光ファイバ11とプライマリ層12との界面に沿ったスライス線15に沿ってスライスし、同図(b)に示すスライス片16を作成した。
次ぎに、このスライス片16を把持間隔25mmで把持し、23℃の雰囲気状態において、引張り速度1mm/minの条件で把持間隔を広げてスライス片16に2.5%の歪を与え、このときの引張り強さを求めた、
【0047】
次ぎにセカンダリ層13の断面積を考慮して、上記引張強さからヤング率を算出した。
尚、プライマリ層12のヤング率はセカンダリ層13に比較して桁違いに小さいので、上記ヤング率はこの分の引張強さを無視して求めた。またセカンダリ層13の断面積はマイクロスコープを用いた求めた。
【0048】
【表2】
【0049】
光ファイバ素線14の温水浸漬後における剥離の有無は、約1mの光ファイバ素線14を60℃のイオン交換水中に30日間浸漬後、光学顕微鏡を用いて透過光で100倍程度の倍率で裸光ファイバ11とプライマリ層12との界面を観察することによって判定した。表2中の記号の意味は以下のとおり。◎:剥離が全く無い、○:極微小剥離(問題ないレベル)が存在、×:剥離有り。
【0050】
光ファイバ素線14の温水浸漬後のロス増は、1km束取りして光ファイバ素線14を60℃のイオン交換水中に30日間浸漬させた後にOTDR(Optical Time DomainReflectometry)を用いて測定した。測定の際の波長は1550nmであった。ロス増は小さいほうが良く、0.05db/km以下が実用レベルである。
【0051】
光ファイバ素線14の皺の有無は、製造後の約1mの光ファイバ素線14につき、光学顕微鏡を用いて透過光で100倍程度の倍率でプライマリ層12とセカンダリ層13との界面付近を観察することによって判定した。表2中の記号の意味は以下のとおりである。
◎:皺が全く無い、○:極微小皺(問題ないレベル)が存在、×:皺有り。
【0052】
表2から明らかなように、本発明の光ファイバ素線である実施例1〜8はプライマリ層とセカンダリ層との界面に皺が発生せず、プライマリ層の硬化が十分であり、60℃のイオン交換水中に30日間浸漬後でも、裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、ロス増が小さい。特に、プライマリ層の吸水率が2%以下である場合、光ファイバ素線のロス増が極めて小さい。
【0053】
上記1〜8の実施例における、セカンダリ層の透過平均値Tsとプライマリ層の透過平均値Tpと差TS-Pを求めてみると、-0.3から0.5の範囲内であり、この範囲内に量透過度平均値を選定すればより良好な特性のものを得ることができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明は、裸光ファイバーの外周に硬化されたプライマリ層とセカンダリ層とが被覆されて構成された光ファイバ素線において、プライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、更にセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tsが0.1〜0.9、であることを特徴とする。このため、プライマリ層の硬化が十分で、水中に長期間浸漬されても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがなく、長期信頼性の高い耐水特性を有するものが得られる効果を有する。
【0055】
また、前記セカンダリ層の透過平均値Tsとプライマリ層の透過平均値Tpと差TS-Pを-0.3から0.5の範囲内に設定することにより、より長期信頼性の高い耐水特性の有するものとなる効果を有する。
【0056】
また、裸光ファイバの外周に液状のプライマリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させ、その後そのプライマリ層の上に液状のセカンダリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させて光ファイバ素線を製造する光ファイバ素線の製造方法において、液状のプライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、硬化前のセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tsが0.1〜0.9であることを特徴とする。これにより、プライマリ層の硬化が十分で、水中に長期間浸漬されても裸光ファイバとプライマリ層との界面が部分的に剥離することがない耐水特性が優れた長期安定性の高い光ファイバが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す光ファイバ素線の断面図。
【図2】液状樹脂の透過度を測定するための装置の一例を示す斜視図。
【図3】透過度平均値の一例を示す特性図。
【図4】スライス片の切り出し例を示す斜視図。
【符号の説明】
11・・・裸光ファイバ
12・・・プライマリ層
13・・・セカンダリ層
14・・・光ファイバ素線
15・・・スライス面
16・・・スライス片
Claims (3)
- 裸光ファイバーの外周に硬化されたプライマリ層とセカンダリ層とが被覆されて構成された光ファイバ素線において、プライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、更にセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における硬化前の透過平均値Tsが0.1〜0.9、であることを特徴とする光ファイバ素線。
- セカンダリ層の透過平均値Tsとプライマリ層の透過平均値Tpとの差TS-Pが-0.3<TS-P<0.5であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ素線。
- 裸光ファイバの外周に液状のプライマリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させ、その後そのプライマリ層の上に液状のセカンダリ層を塗布して紫外線の照射により硬化させて光ファイバ素線を製造する光ファイバ素線の製造方法において、液状のプライマリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tpが0.2〜0.9であって硬化後の吸水率が2%以下であり、硬化前のセカンダリ層は300〜450nmの波長領域の測定光における透過平均値Tsが0.1〜0.9であることを特徴とする光ファイバ素線の製造方法。
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- 2002-12-17 JP JP2002365816A patent/JP2004198660A/ja active Pending
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