JP2004197909A - 駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】プーリ等の張架部材の偏心による伝達誤差を除去し、高精度な回転伝達を可能とする。
【解決手段】一若しくは複数の無端状平ベルト1を複数の張架部材2(例えば2a〜2d)に掛け渡す態様において、平ベルト1の少なくとも一つには平ベルト1の進行方向に沿って複数の貫通孔3を設け、当該貫通孔3が開設された平ベルト1を駆動させる駆動用張架部材2(例えば2a)及び当該平ベルト1が掛け渡される従動用張架部材(例えば2b〜2d)の少なくとも一つ(図1では2b,2c)に前記平ベルト1の貫通孔3が嵌合する突起4を回転方向に沿って複数設け、この突起4を有する駆動用張架部材2(2a)及び突起4を有する従動用張架部材2(2b,2c)を同一径にて構成し、かつ、同一径である各張架部材2(2a〜2c)には回転方向基準位置として示される基準マーク5を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】一若しくは複数の無端状平ベルト1を複数の張架部材2(例えば2a〜2d)に掛け渡す態様において、平ベルト1の少なくとも一つには平ベルト1の進行方向に沿って複数の貫通孔3を設け、当該貫通孔3が開設された平ベルト1を駆動させる駆動用張架部材2(例えば2a)及び当該平ベルト1が掛け渡される従動用張架部材(例えば2b〜2d)の少なくとも一つ(図1では2b,2c)に前記平ベルト1の貫通孔3が嵌合する突起4を回転方向に沿って複数設け、この突起4を有する駆動用張架部材2(2a)及び突起4を有する従動用張架部材2(2b,2c)を同一径にて構成し、かつ、同一径である各張架部材2(2a〜2c)には回転方向基準位置として示される基準マーク5を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ若しくはこれらの複合機のような画像形成装置などに用いられる駆動力伝達装置に係り、特に、無端状平ベルトを複数の張架部材に掛け渡すことで駆動力を伝達する駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタや複写機等の画像形成装置に利用される駆動力伝達装置には、その不良が直ちに画像欠陥へと繋がるという性質上、高噛み合い率、高伝達性、回転ムラの抑制など、様々かつ高度な要求を満たすことが求められている。
従来における画像形成装置の駆動力伝達装置として、高噛み合い率と高伝達率の実現、あるいは良好な低回転ムラ性能を得るために、はす歯歯車を用いて像担持体ドラムへ駆動力を伝達する技術が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
また、はす歯歯車を用いるよりも低回転ムラ性能が実現できる駆動力伝達部材として、歯付きベルトを用いる技術も提案されている。
更に、歯付きベルトより低回転ムラを実現するために、はす歯ベルトを用いる技術も提案されている(例えば特許文献3,4参照)。
【0003】
一般に、駆動力伝達部材として、はす歯歯車を用いた場合は、すぐ歯歯車を用いた場合と比較して噛み合い率を大きく取り易く、駆動歯車と従動歯車との噛み合いがゆっくりと行われるため、従動歯車に伝達される噛み合い振動をかなり低減することが可能であることが分かっている。しかし、歯車を駆動力伝達部材として用いた場合には、バックラッシュ、歯のたわみ、歯車のねじれ等による回転ムラの発生という技術的課題は避けられない。
すなわち、駆動歯車が従動歯車と噛み合って従動歯車を回転駆動する際に、駆動歯車の歯と従動歯車の歯とは所定の時間だけ互いに接触しているが、その時間が過ぎ、次の歯同士が噛み合うまでの間にお互いの歯同士が非接触状態になり、これがバックラッシュ(がた)にある。このため、バックラッシュは、次の歯同士が噛み合う時に振動を発生させ、従動歯車には周期的(歯車の歯同士が噛み合う繰り返し)な回転ムラが発生する要因になってしまう。また、はす歯歯車のようにかみあい率を高めバックラッシュの影響を低減した場合にも、負荷の大きさによって歯の変形、歯車のねじれが生じ、正規の噛み合いと異なり、噛み合い周期の振動を発生させ、回転ムラが発生する。
バックラッシュは、歯車を用いる場合には原理的に避けられないものであり、画像形成装置の駆動力伝達部材として歯車を用いた場合には、従動歯車が噛み合いによって加振され、非拘束状態となるバックラッシュ分だけ容易に動かされてしまうため、噛み合い振動による小さな加振力でも出力画像に周期的な濃度ムラを発生させてしまうことになる。
【0004】
また、はす歯歯車を用いたとしても、すぐ歯歯車を用いた場合と比較して、噛み合い歯数を増やすことは可能であるが、歯の変形問題を考慮すると、特に噛み合い接触部においてある程度の硬度を有する材料で歯車を製作する必要がある。しかし、硬度の高い材料で形成された駆動歯車と従動歯車とが噛み合う場合には、噛み合いによって生じる振動を吸収する部分が駆動力伝達経路内(歯車列により幾つかの回転体を駆動する場合の伝達経路内)に存在しなくなるため、駆動歯車と従動歯車とが噛み合うことにより発生する噛み合い振動は減衰されずにそのまま従動歯車へ伝達され、その結果、出力画像に周期的な濃度ムラが発生するという技術的課題もある。
【0005】
一方、歯付きベルトを用いた駆動力伝達装置では、プーリと噛み合う歯付きベルトの歯が柔軟性に富んだゴム径の材料で製作されているため、プーリと歯付きベルトとの噛み合い振動は歯車よりも少ないと期待される。しかし、実測を行った結果は、次に示すように歯車とほとんど変わらない結果であった。
すなわち、図15は、駆動力伝達部材としてすぐ歯ベルト及びすぐ歯歯車を用いた場合の回転ムラを示す図である。
図15から分かるように、すぐ歯ベルトを用いても、すぐ歯歯車の回転ムラとほとんど変わらない結果しか得られていない。
確かに、回転ムラは歯のピッチを細かくすることにより改善されるが、あまり細かくすると負荷増加による歯飛び現象が生じ駆動不可能となるため、大きな改善は望めない。従って、すぐ歯ベルトを用いても、出力画像の濃度ムラ発生を防止することはできないことになる。
【0006】
図16は、カラープリンタなどの画像形成装置において濃度ムラ許容値と像担持体ドラムの回転ムラとの関係を示す。
同図において、出力画像の濃度ムラが認知可能となる像担持体ドラムの回転ムラレベルは、回転ムラの指標となる速度変動率△V0-p(%)において約0.3%であり、これ以上の速度変動率が発生すると出力画像の濃度ムラが問題となってしまう。そのため、歯車や歯付きベルトにおける噛み合い振動レベルは、この濃度ムラという観点からは非常に大きな問題となる。
すなわち、画像形成装置としての回転ムラ要求は非常に高度なレベルが要求され、はす歯ベルトを用いた場合でも歯飛び現象などすぐ歯ベルト同様に生じるため、図15に示すすぐ歯ベルトの回転ムラレベルを許容値以下に改善するのは困難である。
【0007】
そこで、このような技術的課題を解決するための先行技術としては、例えば複数の像担持体ドラムの外周面を夫々同量移動させる駆動力伝達装置として、駆動プーリと従動プーリとの間に無端状の平ベルトを掛け渡すことで駆動力を伝達するものが既に提案されている(例えば特許文献5参照)。
このタイプによれば、平ベルトとプーリ(駆動プーリ及び従動プーリ)との間は摩擦力で駆動伝達されるため、平ベルトとプーリとの間で、歯車や歯付きベルトのような噛み合いにより発生する噛み合い振動は原理的に生じない。このため、歯車や歯付きベルトを用いた場合のように、周期的な濃度ムラが出力画像に発生することは有効に防止される。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−80840号公報(感光体ドラムへの駆動伝達,図7)
【特許文献2】
特開平5-72862号公報(実施例,図1)
【特許文献3】
特開平9-160332号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献4】
特開平10-26903号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献5】
特開平7-319254号公報(第1実施例,図2)
【特許文献6】
特開平10-111586号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献7】
特開平10-161384号公報(課題を解決するための手段,図1)
【特許文献8】
特開2002−132090号公報(発明の実施の形態,図1,図2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来この種の平ベルトを用いた駆動力伝達装置にあっては、平ベルトとプーリとの間の駆動力伝達が摩擦伝達になるため、平ベルトとプーリとの間で滑りという新たな技術的課題が生ずる。
ここで、図17は平ベルトを用いた駆動力伝達装置における従動プーリの平均回転速度と負荷トルクとの関係を示すグラフである。
図17に示すように、従動プーリの平均回転速度は、負荷トルクがある限界値を超えると急激に低下する。これは、従動プーリ軸(従動軸)負荷の増加に伴い定常滑り量も増加していき、負荷がある限界値以上になると平ベルトと駆動プーリあるいは従動プーリ間の滑りが急激に大きくなり、従動プーリ平均回転速度が大きく低下するためである。
【0010】
このような状態になる従動プーリ軸の負荷量近傍で駆動を行っていると、従動プーリの速度は時間とともに不安定な状態となり、その結果、出力画像に色ずれや転写ムラが発生して正常な画像形成動作を行うことはできなくなる。最悪の場合には、画像形成装置が停止あるいは故障を引き起こすことになる。
また、負荷トルクの限界値を向上するためには、ベルト初期張力を増やすことが効果的である。すなわち、ベルト初期張力を増やすことによりベルトをプーリに押し付ける力が大きくなり、その結果、摩擦駆動力が増加することから、負荷トルクの限界値は増加していく。
しかし、ゴムベルトや樹脂ベルトを用いた場合には、ベルト自体の剛性が低く、大きな張力を付与することは不可能である。そのため、駆動力伝達系の剛性を確保し安定した駆動力を得る目的で金属ベルトを利用することが考えられているが、金属ベルトとプーリ間の摩擦係数は、ゴムベルトや樹脂ベルトとプーリ間の摩擦係数と比較して極端に小さいため、図17に示すように、従動プーリ軸負荷の限界値が大きく改善されることはなく、倍の張力を与えても、目標とする画像形成装置の負荷量で駆動することはできなかった。
【0011】
また、金属ベルトを用いて負荷トルクの限界値を向上させるために、非常に大きなベルト初期張力を付与した場合には、プーリを支持する軸が撓み、各プーリ軸のアライメントがずれ、ベルトに大きな蛇行が発生した。これにより、平ベルトがプーリに設けたベルトエッジガイドに対し大きな力で擦られるため、ベルト端部に歪みが生じ不安定な駆動となってしまった。
従って、現実の画像形成装置において想定されるような従動負荷条件の下では安定した画像形成動作が不可能になるという致命的な欠陥があり、これもまた満足すべき解決策とはなり得ない。
【0012】
更に、プーリへのベルト巻き付け角度を大きくすることで張力によるプーリへのベルト押し付け力を大きくすることが可能になるため、プーリへのベルト巻き付け角度を増やすこともベルトの滑りに対し効果がある。
例えば図18に示すように、複数の感光体ドラムの駆動力伝達装置として、感光体ドラム500(500Y,500M,500C,500K)と同軸に駆動用プーリ(図示せず)を設け、この駆動用プーリに平ベルト510を巻き付ける構成において、駆動及び従動用の張架プーリ501,502の他に、いくつかの補助張架プーリ511〜515を設けることにより、感光体ドラム500の駆動用プーリへの平ベルト510の巻き付け角度を大きく確保する技術が既に提案されている(例えば特許文献5〜7参照)。尚、図18中、符号505は中間転写用あるいは用紙搬送用のベルトユニットである。
ところが、このタイプにあっては、ベルト(平ベルト510)を張架するためにスペースを大きくとる必要が生じたり、補助張架プーリ511〜515用支持部材を設ける必要が生じ、小型・低コストの観点からすれば、このような構成は好ましいものとは言えない。
【0013】
そこで、本発明者は、例えばカラー画像形成装置の像担持体ドラムの駆動力伝達装置として、所謂パーフォレーションベルトを使用する態様について検討した。
図19(a)(b)はパーフォレーションベルトを使用した駆動力伝達装置の概要を示すものであり、パーフォレーションベルト600(具体的には循環移動方向に沿って所定ピッチ間隔で貫通孔602が配列された平ベルト601[孔付き平ベルト])を駆動あるいは従動プーリ603に掛け渡し、このプーリ603の外周面には前記貫通孔602に対応する突起604を設け、平ベルト601の貫通孔602にプーリ603の突起604を嵌合させ、パーフォレーションベルト600を循環移動させるものである。
【0014】
このようなタイプにあっては、従来の歯車や歯付きベルトを利用して駆動力を伝達する態様に比べて、貫通孔602と突起604との噛み合い時のバックラッシュがなく(貫通孔602と突起604にクリアランスが存在していてもパーフォレーションベルト600自体がプーリ603に巻き付けられているため非拘束状態とはならない)、噛み合い時の振動が低減でき、出力画像に周期的な濃度ムラなどの画像欠陥が発生するのを防止することができる。
また、各プーリ603の突起604と平ベルト601の貫通孔602とが互いに嵌合することにより駆動力を伝達するため、従来の平ベルトとプーリとの摩擦により駆動力を伝達する場合に比べて、大きな負荷が加わる場合であっても平ベルト601とプーリ603とが滑ることがなく、出力画像に色ずれや転写ムラなどの画像欠陥が発生するのを防止することができる。
図20はパーフォレーションベルト600を用いた駆動力伝達装置における従動プーリ軸の負荷トルクと従動プーリ平均回転速度との関係を示す。
同図によれば、パーフォレーションベルト(孔付き平ベルト)600による駆動力伝達を行うことにより、通常の平ベルトと比べ高い負荷が加わった状態においても、滑りによる平均速度の低下を招くことはないことが理解される。
【0015】
また、このようなパーフォレーションベルト600を使用した駆動力伝達装置を用いれば、平ベルト601やプーリ603として使用する材質の幅を広げることができる。つまり、従来の平ベルト601とプーリ603との摩擦により駆動力を伝達する場合には、必然的に摩擦係数の高い材質(例えば、樹脂)を使用する必要があり、摩擦係数の低い材質(例えば、金属)などを使用することは実質的に不可能であった。
しかし、このようなパーフォレーションベルト600を使用する態様では、各プーリ603の突起604と平ベルト601の貫通孔602とが互いに嵌合することにより駆動力を伝達するため、摩擦係数の高低に関係なく、より適切な材質を選択することができる。
【0016】
しかし、パーフォレーションベルト600等のベルトを用いた駆動力伝達装置では、駆動プーリ603等の張架部材から平ベルト601へ駆動伝達し、平ベルト601から他の張架部材へ回転伝達を行うため、駆動プーリ603に偏心がある場合には、平ベルト601へ伝達する速度が駆動プーリ603の径変化による速度変動をもたらし、他の張架部材であるプーリ603の回転に駆動プーリ回転周期の回転ムラを生じさせてしまい、高精度な回転伝達が行われなくなる。
【0017】
図21(a)(b)は駆動プーリに偏心がある場合の従動プーリの回転ムラを示し、同図(a)は駆動プーリ偏心量(駆動プーリ偏心周期)に対し発生する従動プーリの回転速度変動を示し、同図(b)は駆動プーリ偏心量に対し発生する従動プーリの回転位置変動を示す。
このとき、駆動プーリの偏心量と従動プーリの回転位置変動との関係を調べたところ、図22に示すように、両者の関係は比例関係にあることが分かり、駆動プーリの偏心量と同等の回転変動が生じる。
【0018】
また、図23(a)(b)は、従動プーリに偏心がある場合の従動プーリ自身の回転ムラを示し、同図(a)は従動プーリ偏心量に対し発生する従動プーリの回転速度変動を示し、同図(b)は従動プーリ偏心量に対し発生する従動プーリの回転位置変動を示す。
このとき、従動プーリの偏心量と従動プーリの回転位置変動との関係を調べたところ、図24に示すように、両者の関係は比例関係にあることが分かり、従動プーリの偏心量と同等の回転変動が生じる。
【0019】
このため、カラー複写機やカラープリンタの場合、他の張架部材によって画像形成に関わる像担持体や中間転写体が回転していると、上記駆動プーリまたは他の張架部材(従動プーリ)の偏心により、像担持体や中間転写体の回転ムラが生じ、これらの画像形成体(像担持体や中間転写体)に作像される画像位置が正確な位置とならず、出力画像に色ずれが発生し画質劣化を起こしてしまう。
【0020】
ところで、例えば特許文献8には、感光体ドラムの両端ギア部の偏心誤差を無くすために、両端ギア部が設けられているフランジ部材の嵌合位置を位置決め凸部を介して位置決めし、感光体ドラムの両端ギア部の回転ムラの位相合わせを行うようにした技術が提案されている。
確かに感光体ドラム自体の回転ムラは抑制されるかも知れないが、このような技術を適用したとしても、感光体ドラムに至る駆動力伝達装置側からの駆動プーリ等の偏心誤差に起因する回転ムラを回避することはできず、上述した技術的課題を解決するには至っていない。
【0021】
本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、複数の張架部材に無端状平ベルトを掛け渡す態様において、プーリ等の張架部材と平ベルトとの間の滑りによる駆動力の伝達誤差をなくし、しかも、プーリ等の張架部材の偏心による伝達誤差を除去し、高精度な回転伝達を可能とした駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置を提供するものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、図1に示すように、一若しくは複数の無端状平ベルト1を複数の張架部材2(例えば2a〜2d)に掛け渡すことで駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、平ベルト1の少なくとも一つには平ベルト1の進行方向に沿って複数の貫通孔3を設け、当該貫通孔3が開設された平ベルト1を駆動させる駆動用張架部材2(例えば2a)及び当該平ベルト1が掛け渡される従動用張架部材(例えば2b〜2d)の少なくとも一つ(図1では2b,2c)に前記平ベルト1の貫通孔3が嵌合する突起4を回転方向に沿って複数設け、この突起4を有する駆動用張架部材2(2a)及び突起4を有する従動用張架部材2(2b,2c)を同一径にて構成し、かつ、同一径である各張架部材2(2a〜2c)には回転方向基準位置として示される基準マーク5を設けたことを特徴とするものである。
【0023】
このような技術的手段において、無端状平ベルト1としては単一のものに限られず、複数のものを用いる態様であってもよい。
また、張架部材2は平ベルト1を張架するものであればよく、プーリ、ロールなど広く含む。
更に、安定的に駆動力を伝達する観点からは、駆動力伝達装置を構成する各部材の剛性は高いことが好ましい。従って、上記平ベルト1、張架部材2が剛性の高い材質、例えば金属により構成されることが好ましく、金属の種類としては耐久性などの観点からステンレスが好ましい。
更にまた、平ベルト1は進行方向に沿って貫通孔3を配列したものであり、各貫通孔3は、回転する張架部材2に設けられた突起4に嵌合するものであるため、平ベルト1の進行方向に沿って所定ピッチ間隔に設けられる。
【0024】
また、貫通孔3は、平ベルト1の進行方向に複数設けられていればよく、平ベルト1の幅方向に対して一列でもよいし、平ベルト1の幅方向に対して複数列に設けるようにしてもよい。
そしてまた、貫通孔3の形状については円形状は勿論のこと、平ベルト1の幅方向に沿って長孔状でもよい。
特に、平ベルト1の幅方向に対して貫通孔3を複数列設ける態様や、貫通孔3として平ベルト1の幅方向に沿って長孔状に延びる態様にあっては、例えば被駆動体が連結される張架部材2(例えば従動用張架部材2b,2c)に大きな負荷トルクがかかったとしても、複数列の貫通孔部や長孔状の貫通孔部で力を分散して受け止めることができ、貫通孔部での破壊を有効に防止できる点で好ましい。尚、貫通孔3が嵌合する突起4については、貫通孔3の形状に合わせてその形状を適宜選定するようにすればよい。但し、両者の嵌合性を考慮すると、例えば貫通孔3が円形であれば突起4の形状は略半球状であることが好ましい。
【0025】
また、本発明にあっては、駆動用張架部材2(2a)と従動用張架部材2の少なくとも一つ(例えば2b,2c)とが同一径であることを要する。
なぜならば、駆動用張架部材2(2a)の偏心誤差を解消するには、下流側の従動用張架部材2(2b,2c)に同じ偏心誤差があり、これの位相関係を利用することで前記偏心誤差を打ち消すことが可能であるが、同じ偏心誤差を具備するには同一径の張架部材2であることが少なくとも必要だからである。
【0026】
更に、基準マーク5については、目視可能であれば任意の態様でよく、例えば張架部材2にマーク体を付加したり、基準孔や切欠を形成したり、基準凹部や基準凸部などのマーク部を形成する等各種態様が挙げられる。
ここで、基準マーク5の設け方については適宜選定して差し支えないが、基準マーク5が付された張架部材2の代表的な製造例については、同じ金型などの成形型にて基準マーク5と共に各張架部材2を成形することが好ましい。
【0027】
更にまた、基準マーク5の代表的な設け方については、各張架部材2に付された基準マーク5は、各々の張架部材2の偏心位置が認識可能な位置に設けられることが好ましい。
このように、偏心位置が認識可能な位置、例えば最大偏心位置に基準マーク5を設けることにより、張架部材2の速度変動位相と張架部材2の偏心位置との関係を把握することができ、この点で、張架部材2の偏心誤差合わせを行い易い。
【0028】
また、基準マーク5の付された各張架部材2のレイアウトについては、前記各張架部材2の偏心誤差による速度変動をキャンセルするようにすればよい。
この代表的な態様としては、基準マーク5が付された各張架部材2は、駆動用張架部材2(2a)の基準マーク5位置に対し、従動用張架部材2(2b,2c)の基準マーク5位置が所定の位相関係を満たすように配置され、各張架部材2の偏心誤差による速度変動をキャンセル可能とする態様であればよい。
【0029】
例えば駆動用張架部材2(2a)の基準マーク5が平ベルト1を繰り出す位置若しくは引き込む位置近傍に位置するときに、下流側の従動用張架部材2(2b又は2c)の基準マーク5が平ベルト1を受け入れる位置若しくは引き出す位置近傍に位置するようにすればよい。
このように、駆動用張架部材2(2a)の平ベルト1の繰出位置若しくは引込位置と、従動用張架部材2(2b又は2c)の平ベルト1の受入位置若しくは引出位置とに夫々基準マーク5がある態様では、例えば基準位置が最大偏心位置であれば、駆動用張架部材2(2a)から平ベルト1が最も偏心誤差の大きい状態で繰り出される若しくは引き込まれると、従動用張架部材2(2b又は2c)では平ベルト1が最も偏心誤差の大きい箇所で受け入れられ若しくは引き出され、偏心誤差による回転位置変動はほとんど影響しない。
【0030】
このように、上述した駆動力伝達装置によれば、以下のような作用を奏する。すなわち、例えば各々の張架部材2(例えば2a〜2c)の回転方向基準位置を例えば張架部材2の偏心最大位置として基準マーク5することにより、駆動用張架部材2(2a)の偏心によって引き起こされる平ベルト(パーフォレーションベルト)1の速度変動位相と張架部材2の偏心位置との関係を掴むことができる。
更に、他の張架部材2の基準マーク5位置を、駆動用張架部材2(2a)の偏心によって引き起こされた平ベルト(パーフォレーションベルト)1の速度変動位相に合せて調整(配置)することにより、張架部材2の回転軸は、各々の偏心によって引き起こされる速度変動がキャンセルされ、正確な回転伝達が行われることとなる。
【0031】
また、各々の張架部材2(2a〜2c)は、同一径であるため、一度、駆動用張架部材2(2a)の基準位置と他の張架部材2(2b又は2c)の基準位置の関係を調整(配置)すれば、両者の位相関係は常に同一となるため、安定して偏心による速度変動をキャンセルし正確な回転伝達を行うことができる。
【0032】
次に、図2及び図3にて、張架部材2の偏心による速度変動をキャンセルする作用について説明する。
今、図1に示す駆動系構成にて、駆動用張架部材2(2a)としての駆動用プーリ、従動用張架部材2(2b,2c)としての従動プーリの各々に偏心最大位置のマーク(基準マーク5)を設けた。
そして、両者のマーク位置関係を360度分ずらし、従動プーリの回転変動の大きさがどのように変化するかを確認するため、駆動用プーリのマーク位置に対し従動プーリのマーク位置を少しづつ変えて配置させ、その時の従動プーリ回転変動(プーリ径上の位置変動)量を測定した結果を図2に示す。
【0033】
図2は、両者のマーク位置関係を360度分ずらしていった時の従動プーリの回転変動量の変化、及び、後述する理論的計算値変化を示している。
尚、同図において、駆動プーリ、従動プーリの偏心量(本例では略300μm前後)のほか、駆動プーリ自体の回転変動量も示されている。
同図に示される現象は、例えば図3に示すように、駆動プーリの偏心によって引き起こされる速度変動が従動プーリの偏心によってキャンセル可能であることを意味する。
【0034】
また、従動プーリの回転変動については、以下に示すような簡単な数式で表すことができ、これに基づく計算値を図2中に示した。
数式:従動プーリの回転に表れる変動は、(1)式で表され、その大きさは、(2)式となる。
ε1×Sin(ωt)+ε2×Sin(ωt+θ2)=A×Sin(ωt+θ) …(1)
A=Sprt[ε12+2×ε1×ε2×Sin(θ2)+ε22] …(2)
但し、
ε1:駆動プーリ偏心によって生じる回転変動量(≒偏心量)、
ε2:従動プーリ偏心によって生じる回転変動量(≒偏心量)、
θ2:従動プーリの位相
(駆動プーリの偏心最大位置と従動プーリ偏心最大位置との関係)、
ω:プーリの回転角速度、
A:従動プーリ回転変動の大きさ、
である。
【0035】
図2のグラフは、ほぼ理論通りの結果であり、両者のプーリに設けたマーク位置関係(ここではθ2)を調整することにより、従動プーリの回転変動を十分に低減できることが分かる。
一方、通常の平ベルトを使用した場合には、図17に示すようにベルトと張架部材間に滑りが生じ、負荷トルクによって滑り量が異なるため、本発明の作用である駆動用張架部材と他の張架部材の偏心によって引き起こされる速度変動・回転変動をキャンセルさせる位相関係を安定に維持することは困難である。
【0036】
更に、上述した駆動力伝達装置に係る発明を画像形成装置に適用すると、以下のようになる。
すなわち、本発明に係る画像形成装置は、駆動力を発生する駆動源と、駆動源からの駆動力によって回転駆動せしめられる像担持体と、駆動源からの駆動力を像担持体に伝達する駆動力伝達装置とを備えた画像形成装置において、駆動力伝達装置が、図1に示すように、一若しくは複数の無端状平ベルト1を複数の張架部材2(例えば2a〜2d)に掛け渡すことで駆動力を伝達するものであって、平ベルト1の少なくとも一つには平ベルト1の進行方向に沿って複数の貫通孔3を設け、当該貫通孔3が開設された平ベルト1を駆動させる駆動用張架部材2(例えば2a)及び当該平ベルト1が掛け渡される従動用張架部材2の少なくとも一つ(例えば2b,2c)に前記平ベルト1の貫通孔3が嵌合する突起4を回転方向に沿って複数設け、この突起4を有する駆動用張架部材2(2a)及び突起4を有する従動用張架部材2(2b,2c)を同一径にて構成し、かつ、同一径である各張架部材2(例えば2a〜2c)には回転方向基準位置として目視可能な基準マーク5を設けたものである。
【0037】
ここで、像担持体としては、感光体の他、中間転写体や用紙等のシート搬送体も含まれ、これらの形態としては、ドラム状(円筒状)のものの他、無端ベルト状のものも含まれる。
このような画像形成装置によれば、上述の駆動力伝達装置を画像形成装置として適用する場合には、従来の歯車や歯付きベルトを利用して駆動力を伝達する態様に比べて、噛み合いの振動がなく、出力画像に周期的な濃度ムラなどの画像欠陥が発生するのを防止することができる。
【0038】
また、各張架部材2の突起4と平ベルト1の貫通孔3とが互いに嵌合することにより駆動力を伝達するため、従来の平ベルトとプーリとの摩擦により駆動力を伝達する場合に比べて、大きな負荷が加わる場合であっても平ベルト1と各張架部材2とが滑ることがなく、かつ、像担持体の回転には、平ベルト1を駆動する駆動用張架部材2(2a)の偏心および像担持体を回転させる従動用張架部材2(2b,2c)の偏心によって引き起こされる回転変動がなく、出力画像に色ずれや転写ムラなどの画像欠陥が発生するのを防止することができ、安定した画像形成動作を行わせることが可能となる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図4は、本発明を適用した複写機(画像形成装置)80の実施の形態1を示す断面概略図である。
同図において、この複写機80の構成を、画像入力系、画像形成系、シート搬送系に分けてそれぞれ説明する。
画像入力系は、原稿が載置される原稿載置台70、この原稿載置台70上の原稿を読み取る原稿読取装置71、この原稿読取装置71にて読み取られた画像情報を処理する画像処理装置72を備えている。
画像形成系は、ブラック(K)、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色に対応する画像形成ステーション10(具体的には10K,10Y,10M,10C:図中点線で囲む部分)、この画像形成ステーション10に画像処理装置72からの画像データに基づいて露光する露光装置13(具体的には13K〜13C)、各画像形成ステーション10にて形成された画像が順次転写保持せしめられる二つの第一中間転写ドラム31(具体的には31a,31b)、及び、一つの第二中間転写ドラム32を備えている。
【0040】
ここで、各画像形成ステーション10には、感光体ドラム11(具体的には11K〜11C)、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12(具体的には12K〜12C)、帯電された感光体ドラム11上に露光装置13により書き込まれた静電潜像を各色トナーにて現像する現像装置14(具体的には14K〜14C)などの電子写真用デバイスが具備されている。
尚、各感光体ドラム11(11K〜11C)と第一中間転写ドラム31a,31bとが対峙する部分には図示しない(一次)転写装置が、第一中間転写ドラム31a,31bと第二中間転写ドラム32とが対峙する部分には図示しない(二次)転写装置が夫々設けられている。
【0041】
更に、シート搬送系は、用紙等の記録シートSが積載されるシートトレイ40、シートトレイ40内の記録シートSを一枚ずつ繰り出すピックアップロール41、繰り出された記録シートSを位置決めするレジストロール42、第二中間転写ドラム32上の画像を記録シートSに転写する(三次)転写ロール43、記録シートS上に転写された画像を定着する定着ロール44、排出された記録シートSを収容する排出トレイ45などを備えている。
【0042】
次に、このような複写機80の基本的なフルカラー複写動作について説明する。
まず、ユーザが原稿載置台70の上に読取原稿を載せ、図示しないユーザインターフェイスにより複写指示を行うと、画像読取装置71が走査しつつ原稿を光学的に読み取り、電気信号(画像データI)に変換する。その画像データIは、画像処理装置72において、ブラック、イエロ、マゼンタ、シアンの各色に色分解され、それら各色の画像データI(IK,IY,IM,IC)に、マーキングデバイス/プロセスの特性を考慮した所定の重み係数を付与する等の画像処理が施される。
【0043】
一方、各画像形成ステーション10内の感光体ドラム11は、後述するベルト駆動装置100(図5参照)により図中矢印の方向へ回転駆動されている。この感光体ドラム11の表面は、帯電装置12により一様な所定電位に帯電される。そして、各露光装置13(13K〜13C)がそれぞれ画像データI(IK〜IC)に対応した露光光を所定タイミングで各感光体ドラム11(11K〜11C)表面に照射することにより、各感光体ドラム11(11K〜11C)表面には電位差による静電潜像が形成される。その静電潜像は、各現像装置14(14K〜14C)によりトナーが静電的に付着され、トナー画像T(K,Y,M,C)となる。
【0044】
他方、第一中間転写ドラム31a,31b及び第二中間転写ドラム32は、後述するベルト駆動装置100(図5参照)により図中矢印の方向へ回転駆動されている。そして、このトナー画像T(K,Y)は、図示しない一次転写装置により感光体ドラム11(11K,11Y)から第一中間転写ドラム31aへ、トナー画像T(M,C)は、感光体ドラム11(11M,11C)から第一中間転写体ドラム31bへと静電的に(一次)転写される。この際、トナー画像T(K,Y)は第一中間転写ドラム31a表面で重ね合わされ、トナー画像T(M,C)は第一中間転写ドラム31b表面で重ね合わされる。
【0045】
更に、第一中間転写ドラム31a上で重ね合わされたトナー画像T(KY)は、図示しない二次転写装置により第二中間転写ドラム32へ、同じく第一中間転写ドラム31b上で重ね合わされたトナー画像T(MC)も第二中間転写ドラム32へと静電的に(二次)転写される。この際、トナー画像T(KY)とトナー画像T(MC)とは第二中間転写ドラム32表面で重ね合わされ、フルカラーのトナー画像T(KYMC)が形成される。
このように、トナー画像T(KYMC)が形成される間、シート搬送系においては、シートトレイ40内の記録シートSがピックアップロール41により一枚取り出され、レジストロール42へと搬送される。例えばレジストロール42が停止状態から所定タイミングまで回転を開始することにより、第二中間転写ドラム32上のフルカラートナー画像T(KYMC)が転写ロール43とのニップ部に達するタイミングと、記録シートSがそのニップ部に達するタイミングとを一致させ、転写ロール43により第二中間転写ドラム32上のフルカラートナー画像T(KYMC)が記録シートSに静電的に転写される。
その後、表面にフルカラートナー画像T(KYMC)を静電的に保持する記録シートSは、定着ロール44のニップ部を通過する際に、各定着ロール44からの熱と圧力とその作用によりそのフルカラートナー画像T(KYMC)を表面に定着させ、複写機80外部の排出トレイ45へと排出される。
このような複写工程を一サイクルとし、これを連続的に行うことにより、次々にフルカラー画像を複写することができる。
【0046】
図5は、この複写機80を駆動するベルト駆動装置100を示す模式図であり、図4の正面側から眺めた構成を示すものである。
同図において、ベルト駆動装置100は、各感光体ドラム11(11K〜11C)、第一中間転写ドラム31a,31b、及び、第二中間転写ドラム32を駆動するものであり、三つの平ベルトBT(101〜103)と、これらの平ベルトBT(101〜103)が張架せしめられる各種張架部材とを備えている。
【0047】
本実施の形態において、平ベルト101の張架部材としては、図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ111と、感光体ドラム11(11K,11Y)の夫々軸方向一端に取り付けられた従動プーリ112,113と、平ベルト101の取り回しを行うための張架プーリ114とがあり、これらの張架部材111〜114に平ベルト101が掛け渡されている。
また、平ベルト102の張架部材としては、図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ121と、感光体ドラム11(11M,11C)の夫々軸方向一端に取り付けられた従動プーリ122,123と、平ベルト102の取り回しを行うための張架プーリ124とがあり、これらの張架部材121〜124に平ベルト102が掛け渡されている。
更に、平ベルト103の張架部材としては、第二中間転写ドラム32の軸方向一端に取り付けられ且つ図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ131と、二つの第一中間転写ドラム31(31a,31b)の軸方向一端に取り付けられる従動プーリ132,133と、平ベルト103の取り回しを行うための張架プーリ134とがあり、これらの張架部材131〜134に平ベルト103が掛け渡されている。
【0048】
ここで、図示外の駆動モータ(駆動源)からの出力をどの軸に与えるかであるが、平ベルトとプーリの巻き付け角度が大きいプーリ軸に駆動モータからの駆動を入力させる構成をとることが望ましい。
本実施の形態においては、例えば第二中間転写ドラム32の軸へ駆動モータからの駆動力を入力するように設定することができるが、他のプーリ軸へ駆動モータからの駆動力を入力する構成としてもよい。
また、平ベルトBT(101〜103)の材質としては樹脂製のものを採用することもできるが、耐久性や加工精度等の面からステンレス、ニッケル、チタン等の金属を使用することが好ましく、価格、耐久性、機械的強度の観点からステンレスを使用することが特に好ましい。
同様に、各プーリの材質としては樹脂製のものを採用することもできるが、耐久性や加工精度等の面からステンレス、アルミニウム、炭素鋼等の金属を使用することが好ましい。特に、金属製のプーリは樹脂製のプーリに比べて一般的に慣性モーメントが大きくなるため、画像形成装置において出力画像の画像欠陥を招くとして問題視されている噛み合い振動などの高周波振動の減衰効果が期待でき、その観点からもプーリの材質としては金属が好ましい。また、金属のうちでは価格、耐久性、機械的強度の観点からステンレスを使用することが特に好ましい。
【0049】
また、本実施の形態において、ベルト駆動装置100で用いられる平ベルトBT(101〜103)はいずれもパーフォレーションベルトであり、回転方向に沿って少なくとも一列の貫通孔(図示せず)が開設されていればよく、また、本実施の形態では、駆動プーリ111,121,131及びその下流側の従動プーリ112,113,122,123,132,133には平ベルトBT(101〜103)に開設された貫通孔が嵌合する突起(図示せず)が設けられている(図19参照)。
特に、本実施の形態では、例えば第一中間転写ドラム31a,31bには図示外のクリーナが当接しており、他のドラムと比較して大きな負荷が与えられる。尚、感光体ドラム11に図示外のクリーナが設けられる態様にあっても、大きな負荷が与えられることになる。
【0050】
このように、第一中間転写ドラム31a,31b等の被駆動体に大きな負荷がかかる態様にあっては、例えば図6(a)〜(c)に示すように、平ベルトBTには、進行方向に沿って複数列(本例では3列)の貫通孔140が設けられ、また、プーリPLの全部若しくは一部には平ベルトBTの貫通孔140に対応して複数列(本例では3列)の突起150が設けられており、平ベルトBTの貫通孔140にプーリPLの突起150を嵌合させることで、平ベルトBTの安定な駆動が実現されるようになっている。
本実施の形態では、貫通孔140としては例えば円形孔が用いられ、一方、突起150としては半球状突起が用いられる。
【0051】
図6(a)〜(c)に示す本実施の形態において、平ベルトBTの全ての列の貫通孔140ピッチpは同一間隔に設定されているが、特に合わせる必要はなく、各列にて間隔を変更することも可能である。また、3列の貫通孔140のうち、中央列の貫通孔140bピッチpは、両側列の貫通孔140a,140cピッチpと同一間隔であるが、位相θを180度ずらして設定されている。
これは、後述するように、ベルト蛇行による貫通孔部の破壊を防止する目的で故意に変えているものである。
また、本実施の形態において、平ベルトBTには複数列の貫通孔140が設けられ、プーリPLに設ける突起150は前記貫通孔140に対応して複数列設けられているが、必ずしも全ての貫通孔140に対応させて設ける必要はなく、少なくとも負荷の最も大きいプーリPLに設けるようにすればよい。
このため、負荷が小さいプーリPLには、複数列全てに嵌合させる必要はなく、3列中の1列を嵌合するようにすることも可能であるし、突起150のピッチを貫通孔ピッチの整数倍とすることも可能である。よって、複数列の貫通孔140を設けた平ベルトBTと、この平ベルトBTが巻き付く幾つかのプーリPLの各々の嵌合仕様は、使用するケース毎に自由に設計することができる。
【0052】
図7(a)(b)は、本実施の形態における構成の負荷に対する効果の概要を、図7(c)(d)はベルト蛇行に対する効果の概要をそれぞれより詳細に説明するものである。
図7は矢印A方向に循環移動するパーフォレーションベルト(貫通孔付き平ベルト)と、このベルトに設けた貫通孔と嵌合するプーリに設けた突起とを表している。
図7(a)は、貫通孔140’が1列孔タイプの比較の態様(平ベルトBT’)における駆動状態を示しており、高負荷の場合には、図示するように貫通孔140’部の循環方向と反対側で駆動を行うことになり、突起150’と噛み合う部分に歪みが生じる。この歪みがある大きさ以上になると平ベルトBT’の貫通孔140’部は破壊され、駆動が不安定になる。
この歪みの影響を低減し、安定な駆動を行わせるため、本実施の形態では、図7(b)に示すような循環方向に対し、平ベルトBTに複数列の貫通孔140を設けた構成としている。これにより、高負荷のプーリPL(図6参照)を駆動する際に生じる1個あたりの貫通孔140部の歪みを低減し、安定な駆動伝達を行うことが可能となる。
【0053】
図7(c)は、本実施の形態において、平ベルトBTの複数列の貫通孔140を同位相で配列した比較の形態を示す。
この場合、負荷に対する効果は、図7(b)と同様で、貫通孔140部の1個当たりの歪みを低減することが可能である。しかし、ベルト蛇行が発生するような状況では、蛇行方向に対する貫通孔140部のピッチが細かくなりすぎるため、歪みを吸収する領域がなくなり、貫通孔140部の破壊を招きやすい。
そのため、ベルト蛇行方向を考える場合には、本実施の形態のように、図7(d)のような構成とすることが望ましい。
このため、ベルト幅が十分広く取れる場合では、複数列設けた蛇行方向の貫通孔140部のピッチも大きくとれるため、図7(c)の構成でも問題はないが、画像形成装置などの小型化が要求される場合には、図7(d)の構成を取る方が望ましい。よって、本実施の形態では、図7(b)(d)の構成をとることにより、安定な駆動を実現することが可能となる。
【0054】
従って、本実施の形態によれば、平ベルトBTの貫通孔140部で破壊が起こる懸念はなく、駆動モータからの駆動力が感光体ドラム11(11K〜11C)、第一中間転写ドラム31a,31b、及び、第二中間転写ドラム32に確実に伝達される。
【0055】
尚、平ベルトBTの貫通孔及びプーリPLの突起については、実施の形態で示したものに限られるものではなく、例えば図8(a)〜(c)で示した変形態様であっても差し支えない。
例えば図8(a)に示すように、平ベルトBTには、平ベルトBTの進行方向に直交する幅方向に延びる長孔状貫通孔301が図示のように開設され、プーリPLの全部若しくは一部には前記長孔状貫通孔301に対応して略半円柱形状の柱状突起302が設けられ、平ベルトBTの長孔状貫通孔301に各プーリPLの柱状突起302を嵌合させることで、プーリPLに大きな負荷が作用するとしても、平ベルトBTの長孔状貫通孔301部への作用力を直線部301aで受けながら被駆動体へ確実に駆動力を伝達することができる。
それゆえ、本態様においても、平ベルトBTの安定な駆動が実現される。
【0056】
また、別の変形態様としては、図8(b)に示すように、平ベルトBTには、平ベルトBTの進行方向に直交する方向に延びる長孔状貫通孔321及び円形貫通孔322が図示のように交互に所定ピッチ間隔で開設され、プーリPLの全部若しくは一部には前記貫通孔321,322に対応して略半円柱形状の柱状突起323及び略半球状突起324が設けられ、平ベルトBTの各貫通孔321,322にプーリPLの各突起323,324を嵌合させることで、平ベルトBTの安定な駆動が実現されるようになっている。
ここで、本態様では、図8(b)に示すように、柱状突起323と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの進行方向における縁部との隙間をd1、柱状突起323と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの幅方向における縁部との隙間をd2、略半球状突起324と円形貫通孔322の平ベルトBTの幅方向における縁部との隙間をd3とすれば、d1 ≦ d3 ≦ d2の関係を満たすように設定することが好ましい。
このような寸法関係に設定すれば、略半球状突起324と平ベルトBTの円形貫通孔322とで平ベルトBTの蛇行を規制し、負荷トルクによる作用力に対しては、半円柱形状の柱状突起323と平ベルトBTの長孔状貫通孔321とで作用力を分散させた状態で駆動搬送する、機能分離型のベルト駆動装置が実現できる。
【0057】
更に、別の変形形態としては、図8(c)に示すように、平ベルトBTには、平ベルトBTの進行方向に直交する方向に延びる長孔状貫通孔321が図示のように所定ピッチ間隔で開設され、プーリPLの全部若しくは一部には前記長孔状貫通孔321に対応して略半円柱形状の柱状突起323及び対構成の略半球状突起325が交互に所定ピッチ間隔(本例では長孔状貫通孔321のピッチ間隔の2倍に設定)で設けられ、平ベルトBTの各貫通孔321にプーリPLの各突起323,325を嵌合させることで、平ベルトBTの安定な駆動が実現されるようになっている。
本実施の形態では、図8(c)に示すように、柱状突起323と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの進行方向における縁部との隙間をd1、柱状突起323と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの幅方向における縁部との隙間をd2、略半球状突起325と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの幅方向における縁部との隙間をd3とすれば、d1 ≦ d3 ≦ d2の関係を満たすように設定することが好ましい。
このような寸法関係に設定すれば、図8(c)に示すように、略半球状突起325と平ベルトBTの長孔状貫通孔321とで平ベルトBTの蛇行を規制し、負荷トルクによる作用力に対しては、半円柱形状の柱状突起323と平ベルトBTの長孔状貫通孔321とで作用力を分散させた状態で駆動搬送する、機能分離型のベルト駆動装置が実現できる。
【0058】
特に、本実施の形態においては、図5に示すように、感光体ドラム11の駆動伝達系における駆動プーリ111,121とその従動プーリ112,113,122,123とは同一径であり、一方、中間転写ドラム31a,31b,32の駆動伝達系における駆動プーリ131とその従動プーリ132,133とが同一径に構成されている。
但し、感光体ドラム11の駆動伝達系と中間転写ドラム31a,31b,32の駆動伝達系とでは夫々のプーリ径は同じでも勿論よいが、本実施の形態では異なっている。
【0059】
そして、各駆動プーリ111,121,131とその下流側の従動プーリ112,113,122,123,132,133には回転方向基準位置となる基準マーク350が付されている。
この基準マーク350は対応するプーリPL(図6参照)の偏心位置が認識可能なものであれば、必ずしも最大偏心位置や最小偏心位置に対応させて設ける必要はなく、また、基準マーク350の具体的形態についても、マーク体を付したり、基準孔や切欠を形成したり、基準凸部や基準凹部を形成する等適宜選定して差し支えない。
ここで、基準マーク350の代表的形成例としては、例えばプーリPLを同じ成形型にて成形する際に基準マーク350も併せて形成する手法が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0060】
この基準マーク350が付されたプーリPLのレイアウトについては、例えば図5に示すように、駆動プーリ111(121,131)の基準マーク350が平ベルト101(102,103)を繰り出す位置P1近傍に位置するとき、下流側の従動プーリ112(122,132)の基準マーク350が平ベルト101(102,103)を受け入れる位置P2近傍に位置するように設定すればよい。
【0061】
このとき、例えば図9(a)に示すように、中間転写ドラム31a,31b,32の駆動伝達系を例に挙げて説明すると、駆動プーリ131の平ベルト103の繰出位置P1と、従動プーリ132の平ベルト103の受入位置P2とに夫々基準マーク350がある場合、例えば基準マーク350位置が最大偏心位置であれば、駆動プーリ131から平ベルト103が最も偏心誤差の大きい状態で繰り出されることになるが、従動プーリ132では平ベルト103が最も偏心誤差の大きい箇所で受け入れられることになり、駆動プーリ131と従動プーリ132との間で偏心誤差による回転位置変動はほとんど影響しない。
【0062】
更に、駆動プーリ131が回転し、駆動プーリ131の基準マーク350が図9(b)に示す位置に到達すると、駆動プーリ131の基準マーク350は平ベルト103を引き込む位置Q1に位置することになり、このとき、従動プーリ133の基準マーク350は平ベルト103を引き出す位置Q2に到達する。
このとき、例えば基準マーク350位置が最大偏心位置であれば、駆動プーリ131では平ベルト103が最も偏心誤差の大きい状態で引き込まれることになるが、従動プーリ133では平ベルト103が最も偏心誤差の大きい箇所から引き出されることになるため、駆動プーリ131と従動プーリ133との間で偏心誤差による回転位置変動はほとんど影響しない。
このように、本実施の形態に係るベルト駆動装置100では、駆動プーリや従動プーリの偏心による従動プーリの回転位置変動がほとんど生じないため、安定したベルト駆動を実現することができる。
このような性能については後述する実施例にて裏付けられる。
【0063】
◎実施の形態2
図10は、本発明を適用した実施の形態2に係る複写機(画像形成装置)の断面概略図であり、記録紙に各色のトナー像を順次転写してカラー画像を得る画像形成装置の概略構成図である。
図10に示す画像形成装置400には、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)のカラーデータを処理して得られたイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像データに基づいて変調されたレーザ光を出射するレーザ光源(図示せず)からの出射光を偏向する回転多面鏡等を有する露光器411(411Y,411M,411C,411K)が備えられている。
【0064】
また、この画像形成装置400には、図示しない帯電器によって帯電され上記露光器411Y,411M,411C,411Kからレーザ光の露光を受けながら回転することにより表面に静電潜像を形成する感光体ドラム412(412Y,412M,412C,412K)と、それら感光体ドラム412に形成された静電潜像をそれぞれY,M,C,Kのトナーで現像する現像器413(413Y,413M,413C,413K)とが備えられている。
さらに、この画像形成装置400には、駆動ロール421および従動ロール422,423,424と、それら駆動ロール421、従動ロール422,423,424間に張架された転写ベルト430と、シート供給トレイ440内の記録シート450を所定のタイミングで送り出すレジストロール460と、感光体ドラム412(412Y,412M,412C,412K)上の残留トナーを除去するクリーナ414(414Y,414M,414C,414K)と、記録シート450上に転写されたトナー像を定着する定着器470とが備えられている。
【0065】
このように構成された画像形成装置400では、先ず、イエロ用の感光体ドラム412Yが一様に帯電された後、露光器411Yからイエロの画像データに基づいて変調されたレーザ光が出射されて感光体ドラム412Yが露光し、これにより感光体ドラム412Yの表面にイエロ用の静電潜像が形成される。
この静電潜像は現像器413Yにより現像されてイエロのトナー像が形成され、レジストロール460によって所定のタイミングで送り出され転写ベルト430に担持されて矢印A方向に搬送される記録シート450上に転写される。
記録シート450上に転写されたイエローのトナー像の上には、次の感光体ドラム412M上に形成されたマゼンタのトナー像が重ね合わせるように転写され、さらに、その上に、シアン、およびブラックのトナー像が重ね合わせるように転写される。こうして四色のトナー像が重ね合わされて形成されたカラートナー像は定着器470によって定着されてカラー画像が完成する。
【0066】
各色の感光体ドラム412は、例えば図11に示すようなベルト駆動装置100にて回転駆動されるようになっている。
このベルト駆動装置100は、各感光体ドラム412(412Y〜412K)を駆動するものであり、二つのパーフォレーションベルトからなる平ベルトBT(151,152)と、これらの平ベルトBT(151,152)が張架せしめられる各種張架部材とを備えている。
本実施の形態において、平ベルト151の張架部材としては、図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ161と、感光体ドラム412(412Y,412M)の夫々軸方向一端に取り付けられた従動プーリ162,163と、平ベルト151の取り回しを行うための張架プーリ164とがあり、これらの張架部材161〜164に平ベルト151が掛け渡されている。
また、平ベルト152の張架部材としては、図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ171と、感光体ドラム412(412C,412K)の夫々軸方向一端に取り付けられた従動プーリ172,173と、平ベルト152の取り回しを行うための張架プーリ174とがあり、これらの張架部材171〜174に平ベルト152が掛け渡されている。
【0067】
これらの駆動プーリ161,171及び従動プーリ162,163,172,173には平ベルト151,152の貫通孔(図示せず)に対応する突起(図示せず)が形成されるほか、各従動プーリ162,163,172,173は、駆動プーリ151,152と同一径であり、かつ、実施の形態1で述べたような基準マーク350が設けられており、実施の形態1と略同様に、駆動プーリ及び従動プーリは、その偏心誤差による回転位置変動をキャンセルするように基準マーク350を用いて位置合わせされている。
【0068】
◎実施の形態3
図12は、本発明を適用した実施の形態3に係る複写機(画像形成装置)の断面概略図であり、中間転写ベルト上に各色のトナー像を順次転写してカラー画像を得る画像形成装置の概略構成図である。
尚、図10に示す画像形成装置400と同じ構成要素には同一の符号を付して説明する。
図12に示す画像形成装置400は、図10に示す画像形成装置400と比較し、転写ベルト430が中間転写ベルト480に置き換えられている点と、中間転写ベルト480を挟んで感光体ドラム412Y,412M,412C,412Kに対向する位置に一次転写ロール481(481Y,481M,481C,481K)が配置されている点と、二次転写ロール482が追加されている点とが異なっている。
【0069】
この画像形成装置400では、中間転写ベルト480を駆動ロール421の回転によって矢印B方向に移動して、中間転写ベルト480上に各感光体ドラム412(412Y,412M,412C,412K)上の各色トナー像を順次転写していくことにより中間転写ベルト480上に4色のトナー像が重ね合わせるように転写され、さらに二次転写ロール482で記録シート450上に一括転写される。
このようにして4色のトナー像が重ね合わされて形成されたカラートナー像が定着器470によって定着されてカラー画像が完成する。
尚、図12における各色の感光体ドラムを回転させるベルト駆動装置100については実施の形態2(図11参照)と同様に構成されている。
【0070】
【実施例】
◎実施例1
実施の形態1に係る画像形成装置を実施例モデルとし、出力画像の濃度ムラや画像位置ずれについて実際に調べたところ、本発明者らの実験によれば、出力画像の濃度ムラを認知限界以下に低減することができ、かつ、プーリ偏心による色ずれも従来の半分以下に低減することができた。
その一例を図13(a)(b)に示す。
同図では、ベルトの貫通孔部とプーリ突起との噛み合い変動を目標レベルとする△V0-p<0.3%とすることができ、画像濃度ムラの認知限界以下にすることができた。
また、同図の実験条件は、駆動プーリ、従動プーリに各々約150μmの偏心量を与えており、最悪300μm程度(平均150μm程度)の回転位置変動が発生するが、本実施例を適用することにより、色ずれの原因となる像担持体の回転位置変動量も1/3〜1/5程度まで低減することができた。
【0071】
◎実施例2
実施の形態1に係る画像形成装置を実施例モデルとし、出力画像の濃度ムラや画像位置ずれについて実際に調べたところ、本発明者らの実験によれば、孔無し平ベルトでは滑りが生じ駆動不可能な従動プーリ軸トルクが作用する条件下であっても出力画像の濃度ムラを認知限界以下に低減することができ、かつ、プーリ偏心による色ずれも従来の半減以下に低減することができた。
その一例を図14(a)(b)に示す。偏心量は図13と同量である。
同図では、ベルトの貫通孔部とプーリ突起との噛み合い変動を目標レベルとする△V0-p<0.3%とすることができ、画像濃度ムラの認知限界以下にすることができ、色ずれの原因となる像担持体の回転位置変動量も負荷の大きさと関係なく、従来の1/3〜1/5程度まで低減することができた。
【0072】
実施例1,2より、本発明の導入により、出力画像の濃度ムラ認知限界である△V0-pを0.3%以下とすることができ、かつ、色ずれに対しても従来の半分以下と高度な性能で安定な駆動力伝達方式を提供することができた。
【0073】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る駆動力伝達装置によれば、複数の張架部材に無端状の平ベルトを掛け渡す態様において、平ベルトの進行方向に沿って配列する貫通孔構造と張架部材の偏心基準位置を認識できるマークを設けることにより、プーリ等の張架部材と平ベルトとの間の滑りによる駆動力の伝達誤差をなくし、かつ、プーリ等の張架部材の偏心による伝達誤差を除去し高精度な回転伝達を可能とした駆動力伝達装置を提供することができる。
このため、このような駆動力伝達装置を用いた画像形成装置にあっては、張架部材の回転変動を抑え、被駆動体である像担持体に対し安定的に高精度な駆動を伝達することができるので、濃度むらや色ずれ等画像欠陥のない出力画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る駆動力伝達装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明に係る駆動力伝達装置モデルの作用を示す説明図である。
【図3】本発明に係る駆動力伝達装置モデルの従動プーリの回転位置変動がキャンセル可能であることを示したグラフ図である。
【図4】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図5】実施の形態1で用いられる駆動力伝達装置の詳細を示す斜視説明図である。
【図6】(a)は実施の形態1で用いられる駆動力伝達装置の張架部材周辺部を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)中C方向から見た矢視図である。
【図7】(a)は比較の形態(一列孔)における平ベルトの貫通孔とプーリの突起との噛み合い状態を示す説明図、(b)は本実施の形態における平ベルトの貫通孔とプーリの突起との噛み合い状態を示す説明図、(c)は比較の形態(3列孔)における平ベルトの貫通孔とプーリの突起とのベルト蛇行時の噛み合い状態を示す説明図、(d)は本実施の形態における平ベルトの貫通孔とプーリの突起とのベルト蛇行時の噛み合い状態を示す説明図である。
【図8】(a)〜(c)は平ベルトの貫通孔とプーリの突起との噛合構造の他の変形形態を示す説明図である。
【図9】(a)(b)は実施の形態1に係る駆動力伝達装置の作用を示す説明図である。
【図10】実施の形態2に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図11】実施の形態2で用いられる駆動力伝達装置の詳細を示す斜視説明図である。
【図12】実施の形態3に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図13】(a)は実施例1に係る駆動力伝達装置における従動プーリの回転ムラを示すグラフ図、(b)は従動プーリの回転位置変動を示すグラフ図である。
【図14】(a)は実施例2に係る駆動力伝達装置における従動プーリの回転ムラを示すグラフ図、(b)は従動プーリの回転位置変動を示すグラフ図である。
【図15】従来の駆動力伝達装置の不具合を示す説明図である。
【図16】従来の駆動力伝達装置を用いた画像形成装置において濃度ムラ許容値と像担持体の回転ムラとの関係を示す説明図である。
【図17】従来の平ベルトを用いた駆動力伝達装置における従動プーリの平均回転速度と負荷トルクとの関係を示す説明図である。
【図18】従来の平ベルトを用いた駆動力伝達装置の一例を示す説明図である。
【図19】(a)は従来の平ベルトを用いた駆動力伝達装置の他の例を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
【図20】図19に係る駆動力伝達装置における従動軸負荷と従動プーリ回転平均速度との関係を示す説明図である。
【図21】(a)は従来の駆動力伝達装置における駆動プーリの偏心によって引き起こされる従動プーリの回転速度変動を示すグラフ図、(b)はその回転位置変動を示すグラフ図である。
【図22】従来の駆動力伝達装置における駆動プーリの偏心量と従動プーリの回転位置変動との関係を示すグラフ図である。
【図23】(a)は従来の駆動力伝達装置における従動プーリの偏心によって引き起こされる従動プーリの回転速度変動を示すグラフ図、(b)はその回転位置変動を示すグラフ図である。
【図24】従来の駆動力伝達装置における従動プーリの偏心量と従動プーリの回転位置変動との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1…平ベルト,2(2a〜2d)…張架部材,3…貫通孔,4…突起,5…基準マーク
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ若しくはこれらの複合機のような画像形成装置などに用いられる駆動力伝達装置に係り、特に、無端状平ベルトを複数の張架部材に掛け渡すことで駆動力を伝達する駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタや複写機等の画像形成装置に利用される駆動力伝達装置には、その不良が直ちに画像欠陥へと繋がるという性質上、高噛み合い率、高伝達性、回転ムラの抑制など、様々かつ高度な要求を満たすことが求められている。
従来における画像形成装置の駆動力伝達装置として、高噛み合い率と高伝達率の実現、あるいは良好な低回転ムラ性能を得るために、はす歯歯車を用いて像担持体ドラムへ駆動力を伝達する技術が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
また、はす歯歯車を用いるよりも低回転ムラ性能が実現できる駆動力伝達部材として、歯付きベルトを用いる技術も提案されている。
更に、歯付きベルトより低回転ムラを実現するために、はす歯ベルトを用いる技術も提案されている(例えば特許文献3,4参照)。
【0003】
一般に、駆動力伝達部材として、はす歯歯車を用いた場合は、すぐ歯歯車を用いた場合と比較して噛み合い率を大きく取り易く、駆動歯車と従動歯車との噛み合いがゆっくりと行われるため、従動歯車に伝達される噛み合い振動をかなり低減することが可能であることが分かっている。しかし、歯車を駆動力伝達部材として用いた場合には、バックラッシュ、歯のたわみ、歯車のねじれ等による回転ムラの発生という技術的課題は避けられない。
すなわち、駆動歯車が従動歯車と噛み合って従動歯車を回転駆動する際に、駆動歯車の歯と従動歯車の歯とは所定の時間だけ互いに接触しているが、その時間が過ぎ、次の歯同士が噛み合うまでの間にお互いの歯同士が非接触状態になり、これがバックラッシュ(がた)にある。このため、バックラッシュは、次の歯同士が噛み合う時に振動を発生させ、従動歯車には周期的(歯車の歯同士が噛み合う繰り返し)な回転ムラが発生する要因になってしまう。また、はす歯歯車のようにかみあい率を高めバックラッシュの影響を低減した場合にも、負荷の大きさによって歯の変形、歯車のねじれが生じ、正規の噛み合いと異なり、噛み合い周期の振動を発生させ、回転ムラが発生する。
バックラッシュは、歯車を用いる場合には原理的に避けられないものであり、画像形成装置の駆動力伝達部材として歯車を用いた場合には、従動歯車が噛み合いによって加振され、非拘束状態となるバックラッシュ分だけ容易に動かされてしまうため、噛み合い振動による小さな加振力でも出力画像に周期的な濃度ムラを発生させてしまうことになる。
【0004】
また、はす歯歯車を用いたとしても、すぐ歯歯車を用いた場合と比較して、噛み合い歯数を増やすことは可能であるが、歯の変形問題を考慮すると、特に噛み合い接触部においてある程度の硬度を有する材料で歯車を製作する必要がある。しかし、硬度の高い材料で形成された駆動歯車と従動歯車とが噛み合う場合には、噛み合いによって生じる振動を吸収する部分が駆動力伝達経路内(歯車列により幾つかの回転体を駆動する場合の伝達経路内)に存在しなくなるため、駆動歯車と従動歯車とが噛み合うことにより発生する噛み合い振動は減衰されずにそのまま従動歯車へ伝達され、その結果、出力画像に周期的な濃度ムラが発生するという技術的課題もある。
【0005】
一方、歯付きベルトを用いた駆動力伝達装置では、プーリと噛み合う歯付きベルトの歯が柔軟性に富んだゴム径の材料で製作されているため、プーリと歯付きベルトとの噛み合い振動は歯車よりも少ないと期待される。しかし、実測を行った結果は、次に示すように歯車とほとんど変わらない結果であった。
すなわち、図15は、駆動力伝達部材としてすぐ歯ベルト及びすぐ歯歯車を用いた場合の回転ムラを示す図である。
図15から分かるように、すぐ歯ベルトを用いても、すぐ歯歯車の回転ムラとほとんど変わらない結果しか得られていない。
確かに、回転ムラは歯のピッチを細かくすることにより改善されるが、あまり細かくすると負荷増加による歯飛び現象が生じ駆動不可能となるため、大きな改善は望めない。従って、すぐ歯ベルトを用いても、出力画像の濃度ムラ発生を防止することはできないことになる。
【0006】
図16は、カラープリンタなどの画像形成装置において濃度ムラ許容値と像担持体ドラムの回転ムラとの関係を示す。
同図において、出力画像の濃度ムラが認知可能となる像担持体ドラムの回転ムラレベルは、回転ムラの指標となる速度変動率△V0-p(%)において約0.3%であり、これ以上の速度変動率が発生すると出力画像の濃度ムラが問題となってしまう。そのため、歯車や歯付きベルトにおける噛み合い振動レベルは、この濃度ムラという観点からは非常に大きな問題となる。
すなわち、画像形成装置としての回転ムラ要求は非常に高度なレベルが要求され、はす歯ベルトを用いた場合でも歯飛び現象などすぐ歯ベルト同様に生じるため、図15に示すすぐ歯ベルトの回転ムラレベルを許容値以下に改善するのは困難である。
【0007】
そこで、このような技術的課題を解決するための先行技術としては、例えば複数の像担持体ドラムの外周面を夫々同量移動させる駆動力伝達装置として、駆動プーリと従動プーリとの間に無端状の平ベルトを掛け渡すことで駆動力を伝達するものが既に提案されている(例えば特許文献5参照)。
このタイプによれば、平ベルトとプーリ(駆動プーリ及び従動プーリ)との間は摩擦力で駆動伝達されるため、平ベルトとプーリとの間で、歯車や歯付きベルトのような噛み合いにより発生する噛み合い振動は原理的に生じない。このため、歯車や歯付きベルトを用いた場合のように、周期的な濃度ムラが出力画像に発生することは有効に防止される。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−80840号公報(感光体ドラムへの駆動伝達,図7)
【特許文献2】
特開平5-72862号公報(実施例,図1)
【特許文献3】
特開平9-160332号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献4】
特開平10-26903号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献5】
特開平7-319254号公報(第1実施例,図2)
【特許文献6】
特開平10-111586号公報(発明の実施の形態,図1)
【特許文献7】
特開平10-161384号公報(課題を解決するための手段,図1)
【特許文献8】
特開2002−132090号公報(発明の実施の形態,図1,図2)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来この種の平ベルトを用いた駆動力伝達装置にあっては、平ベルトとプーリとの間の駆動力伝達が摩擦伝達になるため、平ベルトとプーリとの間で滑りという新たな技術的課題が生ずる。
ここで、図17は平ベルトを用いた駆動力伝達装置における従動プーリの平均回転速度と負荷トルクとの関係を示すグラフである。
図17に示すように、従動プーリの平均回転速度は、負荷トルクがある限界値を超えると急激に低下する。これは、従動プーリ軸(従動軸)負荷の増加に伴い定常滑り量も増加していき、負荷がある限界値以上になると平ベルトと駆動プーリあるいは従動プーリ間の滑りが急激に大きくなり、従動プーリ平均回転速度が大きく低下するためである。
【0010】
このような状態になる従動プーリ軸の負荷量近傍で駆動を行っていると、従動プーリの速度は時間とともに不安定な状態となり、その結果、出力画像に色ずれや転写ムラが発生して正常な画像形成動作を行うことはできなくなる。最悪の場合には、画像形成装置が停止あるいは故障を引き起こすことになる。
また、負荷トルクの限界値を向上するためには、ベルト初期張力を増やすことが効果的である。すなわち、ベルト初期張力を増やすことによりベルトをプーリに押し付ける力が大きくなり、その結果、摩擦駆動力が増加することから、負荷トルクの限界値は増加していく。
しかし、ゴムベルトや樹脂ベルトを用いた場合には、ベルト自体の剛性が低く、大きな張力を付与することは不可能である。そのため、駆動力伝達系の剛性を確保し安定した駆動力を得る目的で金属ベルトを利用することが考えられているが、金属ベルトとプーリ間の摩擦係数は、ゴムベルトや樹脂ベルトとプーリ間の摩擦係数と比較して極端に小さいため、図17に示すように、従動プーリ軸負荷の限界値が大きく改善されることはなく、倍の張力を与えても、目標とする画像形成装置の負荷量で駆動することはできなかった。
【0011】
また、金属ベルトを用いて負荷トルクの限界値を向上させるために、非常に大きなベルト初期張力を付与した場合には、プーリを支持する軸が撓み、各プーリ軸のアライメントがずれ、ベルトに大きな蛇行が発生した。これにより、平ベルトがプーリに設けたベルトエッジガイドに対し大きな力で擦られるため、ベルト端部に歪みが生じ不安定な駆動となってしまった。
従って、現実の画像形成装置において想定されるような従動負荷条件の下では安定した画像形成動作が不可能になるという致命的な欠陥があり、これもまた満足すべき解決策とはなり得ない。
【0012】
更に、プーリへのベルト巻き付け角度を大きくすることで張力によるプーリへのベルト押し付け力を大きくすることが可能になるため、プーリへのベルト巻き付け角度を増やすこともベルトの滑りに対し効果がある。
例えば図18に示すように、複数の感光体ドラムの駆動力伝達装置として、感光体ドラム500(500Y,500M,500C,500K)と同軸に駆動用プーリ(図示せず)を設け、この駆動用プーリに平ベルト510を巻き付ける構成において、駆動及び従動用の張架プーリ501,502の他に、いくつかの補助張架プーリ511〜515を設けることにより、感光体ドラム500の駆動用プーリへの平ベルト510の巻き付け角度を大きく確保する技術が既に提案されている(例えば特許文献5〜7参照)。尚、図18中、符号505は中間転写用あるいは用紙搬送用のベルトユニットである。
ところが、このタイプにあっては、ベルト(平ベルト510)を張架するためにスペースを大きくとる必要が生じたり、補助張架プーリ511〜515用支持部材を設ける必要が生じ、小型・低コストの観点からすれば、このような構成は好ましいものとは言えない。
【0013】
そこで、本発明者は、例えばカラー画像形成装置の像担持体ドラムの駆動力伝達装置として、所謂パーフォレーションベルトを使用する態様について検討した。
図19(a)(b)はパーフォレーションベルトを使用した駆動力伝達装置の概要を示すものであり、パーフォレーションベルト600(具体的には循環移動方向に沿って所定ピッチ間隔で貫通孔602が配列された平ベルト601[孔付き平ベルト])を駆動あるいは従動プーリ603に掛け渡し、このプーリ603の外周面には前記貫通孔602に対応する突起604を設け、平ベルト601の貫通孔602にプーリ603の突起604を嵌合させ、パーフォレーションベルト600を循環移動させるものである。
【0014】
このようなタイプにあっては、従来の歯車や歯付きベルトを利用して駆動力を伝達する態様に比べて、貫通孔602と突起604との噛み合い時のバックラッシュがなく(貫通孔602と突起604にクリアランスが存在していてもパーフォレーションベルト600自体がプーリ603に巻き付けられているため非拘束状態とはならない)、噛み合い時の振動が低減でき、出力画像に周期的な濃度ムラなどの画像欠陥が発生するのを防止することができる。
また、各プーリ603の突起604と平ベルト601の貫通孔602とが互いに嵌合することにより駆動力を伝達するため、従来の平ベルトとプーリとの摩擦により駆動力を伝達する場合に比べて、大きな負荷が加わる場合であっても平ベルト601とプーリ603とが滑ることがなく、出力画像に色ずれや転写ムラなどの画像欠陥が発生するのを防止することができる。
図20はパーフォレーションベルト600を用いた駆動力伝達装置における従動プーリ軸の負荷トルクと従動プーリ平均回転速度との関係を示す。
同図によれば、パーフォレーションベルト(孔付き平ベルト)600による駆動力伝達を行うことにより、通常の平ベルトと比べ高い負荷が加わった状態においても、滑りによる平均速度の低下を招くことはないことが理解される。
【0015】
また、このようなパーフォレーションベルト600を使用した駆動力伝達装置を用いれば、平ベルト601やプーリ603として使用する材質の幅を広げることができる。つまり、従来の平ベルト601とプーリ603との摩擦により駆動力を伝達する場合には、必然的に摩擦係数の高い材質(例えば、樹脂)を使用する必要があり、摩擦係数の低い材質(例えば、金属)などを使用することは実質的に不可能であった。
しかし、このようなパーフォレーションベルト600を使用する態様では、各プーリ603の突起604と平ベルト601の貫通孔602とが互いに嵌合することにより駆動力を伝達するため、摩擦係数の高低に関係なく、より適切な材質を選択することができる。
【0016】
しかし、パーフォレーションベルト600等のベルトを用いた駆動力伝達装置では、駆動プーリ603等の張架部材から平ベルト601へ駆動伝達し、平ベルト601から他の張架部材へ回転伝達を行うため、駆動プーリ603に偏心がある場合には、平ベルト601へ伝達する速度が駆動プーリ603の径変化による速度変動をもたらし、他の張架部材であるプーリ603の回転に駆動プーリ回転周期の回転ムラを生じさせてしまい、高精度な回転伝達が行われなくなる。
【0017】
図21(a)(b)は駆動プーリに偏心がある場合の従動プーリの回転ムラを示し、同図(a)は駆動プーリ偏心量(駆動プーリ偏心周期)に対し発生する従動プーリの回転速度変動を示し、同図(b)は駆動プーリ偏心量に対し発生する従動プーリの回転位置変動を示す。
このとき、駆動プーリの偏心量と従動プーリの回転位置変動との関係を調べたところ、図22に示すように、両者の関係は比例関係にあることが分かり、駆動プーリの偏心量と同等の回転変動が生じる。
【0018】
また、図23(a)(b)は、従動プーリに偏心がある場合の従動プーリ自身の回転ムラを示し、同図(a)は従動プーリ偏心量に対し発生する従動プーリの回転速度変動を示し、同図(b)は従動プーリ偏心量に対し発生する従動プーリの回転位置変動を示す。
このとき、従動プーリの偏心量と従動プーリの回転位置変動との関係を調べたところ、図24に示すように、両者の関係は比例関係にあることが分かり、従動プーリの偏心量と同等の回転変動が生じる。
【0019】
このため、カラー複写機やカラープリンタの場合、他の張架部材によって画像形成に関わる像担持体や中間転写体が回転していると、上記駆動プーリまたは他の張架部材(従動プーリ)の偏心により、像担持体や中間転写体の回転ムラが生じ、これらの画像形成体(像担持体や中間転写体)に作像される画像位置が正確な位置とならず、出力画像に色ずれが発生し画質劣化を起こしてしまう。
【0020】
ところで、例えば特許文献8には、感光体ドラムの両端ギア部の偏心誤差を無くすために、両端ギア部が設けられているフランジ部材の嵌合位置を位置決め凸部を介して位置決めし、感光体ドラムの両端ギア部の回転ムラの位相合わせを行うようにした技術が提案されている。
確かに感光体ドラム自体の回転ムラは抑制されるかも知れないが、このような技術を適用したとしても、感光体ドラムに至る駆動力伝達装置側からの駆動プーリ等の偏心誤差に起因する回転ムラを回避することはできず、上述した技術的課題を解決するには至っていない。
【0021】
本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、複数の張架部材に無端状平ベルトを掛け渡す態様において、プーリ等の張架部材と平ベルトとの間の滑りによる駆動力の伝達誤差をなくし、しかも、プーリ等の張架部材の偏心による伝達誤差を除去し、高精度な回転伝達を可能とした駆動力伝達装置及びこれを用いた画像形成装置を提供するものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、図1に示すように、一若しくは複数の無端状平ベルト1を複数の張架部材2(例えば2a〜2d)に掛け渡すことで駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、平ベルト1の少なくとも一つには平ベルト1の進行方向に沿って複数の貫通孔3を設け、当該貫通孔3が開設された平ベルト1を駆動させる駆動用張架部材2(例えば2a)及び当該平ベルト1が掛け渡される従動用張架部材(例えば2b〜2d)の少なくとも一つ(図1では2b,2c)に前記平ベルト1の貫通孔3が嵌合する突起4を回転方向に沿って複数設け、この突起4を有する駆動用張架部材2(2a)及び突起4を有する従動用張架部材2(2b,2c)を同一径にて構成し、かつ、同一径である各張架部材2(2a〜2c)には回転方向基準位置として示される基準マーク5を設けたことを特徴とするものである。
【0023】
このような技術的手段において、無端状平ベルト1としては単一のものに限られず、複数のものを用いる態様であってもよい。
また、張架部材2は平ベルト1を張架するものであればよく、プーリ、ロールなど広く含む。
更に、安定的に駆動力を伝達する観点からは、駆動力伝達装置を構成する各部材の剛性は高いことが好ましい。従って、上記平ベルト1、張架部材2が剛性の高い材質、例えば金属により構成されることが好ましく、金属の種類としては耐久性などの観点からステンレスが好ましい。
更にまた、平ベルト1は進行方向に沿って貫通孔3を配列したものであり、各貫通孔3は、回転する張架部材2に設けられた突起4に嵌合するものであるため、平ベルト1の進行方向に沿って所定ピッチ間隔に設けられる。
【0024】
また、貫通孔3は、平ベルト1の進行方向に複数設けられていればよく、平ベルト1の幅方向に対して一列でもよいし、平ベルト1の幅方向に対して複数列に設けるようにしてもよい。
そしてまた、貫通孔3の形状については円形状は勿論のこと、平ベルト1の幅方向に沿って長孔状でもよい。
特に、平ベルト1の幅方向に対して貫通孔3を複数列設ける態様や、貫通孔3として平ベルト1の幅方向に沿って長孔状に延びる態様にあっては、例えば被駆動体が連結される張架部材2(例えば従動用張架部材2b,2c)に大きな負荷トルクがかかったとしても、複数列の貫通孔部や長孔状の貫通孔部で力を分散して受け止めることができ、貫通孔部での破壊を有効に防止できる点で好ましい。尚、貫通孔3が嵌合する突起4については、貫通孔3の形状に合わせてその形状を適宜選定するようにすればよい。但し、両者の嵌合性を考慮すると、例えば貫通孔3が円形であれば突起4の形状は略半球状であることが好ましい。
【0025】
また、本発明にあっては、駆動用張架部材2(2a)と従動用張架部材2の少なくとも一つ(例えば2b,2c)とが同一径であることを要する。
なぜならば、駆動用張架部材2(2a)の偏心誤差を解消するには、下流側の従動用張架部材2(2b,2c)に同じ偏心誤差があり、これの位相関係を利用することで前記偏心誤差を打ち消すことが可能であるが、同じ偏心誤差を具備するには同一径の張架部材2であることが少なくとも必要だからである。
【0026】
更に、基準マーク5については、目視可能であれば任意の態様でよく、例えば張架部材2にマーク体を付加したり、基準孔や切欠を形成したり、基準凹部や基準凸部などのマーク部を形成する等各種態様が挙げられる。
ここで、基準マーク5の設け方については適宜選定して差し支えないが、基準マーク5が付された張架部材2の代表的な製造例については、同じ金型などの成形型にて基準マーク5と共に各張架部材2を成形することが好ましい。
【0027】
更にまた、基準マーク5の代表的な設け方については、各張架部材2に付された基準マーク5は、各々の張架部材2の偏心位置が認識可能な位置に設けられることが好ましい。
このように、偏心位置が認識可能な位置、例えば最大偏心位置に基準マーク5を設けることにより、張架部材2の速度変動位相と張架部材2の偏心位置との関係を把握することができ、この点で、張架部材2の偏心誤差合わせを行い易い。
【0028】
また、基準マーク5の付された各張架部材2のレイアウトについては、前記各張架部材2の偏心誤差による速度変動をキャンセルするようにすればよい。
この代表的な態様としては、基準マーク5が付された各張架部材2は、駆動用張架部材2(2a)の基準マーク5位置に対し、従動用張架部材2(2b,2c)の基準マーク5位置が所定の位相関係を満たすように配置され、各張架部材2の偏心誤差による速度変動をキャンセル可能とする態様であればよい。
【0029】
例えば駆動用張架部材2(2a)の基準マーク5が平ベルト1を繰り出す位置若しくは引き込む位置近傍に位置するときに、下流側の従動用張架部材2(2b又は2c)の基準マーク5が平ベルト1を受け入れる位置若しくは引き出す位置近傍に位置するようにすればよい。
このように、駆動用張架部材2(2a)の平ベルト1の繰出位置若しくは引込位置と、従動用張架部材2(2b又は2c)の平ベルト1の受入位置若しくは引出位置とに夫々基準マーク5がある態様では、例えば基準位置が最大偏心位置であれば、駆動用張架部材2(2a)から平ベルト1が最も偏心誤差の大きい状態で繰り出される若しくは引き込まれると、従動用張架部材2(2b又は2c)では平ベルト1が最も偏心誤差の大きい箇所で受け入れられ若しくは引き出され、偏心誤差による回転位置変動はほとんど影響しない。
【0030】
このように、上述した駆動力伝達装置によれば、以下のような作用を奏する。すなわち、例えば各々の張架部材2(例えば2a〜2c)の回転方向基準位置を例えば張架部材2の偏心最大位置として基準マーク5することにより、駆動用張架部材2(2a)の偏心によって引き起こされる平ベルト(パーフォレーションベルト)1の速度変動位相と張架部材2の偏心位置との関係を掴むことができる。
更に、他の張架部材2の基準マーク5位置を、駆動用張架部材2(2a)の偏心によって引き起こされた平ベルト(パーフォレーションベルト)1の速度変動位相に合せて調整(配置)することにより、張架部材2の回転軸は、各々の偏心によって引き起こされる速度変動がキャンセルされ、正確な回転伝達が行われることとなる。
【0031】
また、各々の張架部材2(2a〜2c)は、同一径であるため、一度、駆動用張架部材2(2a)の基準位置と他の張架部材2(2b又は2c)の基準位置の関係を調整(配置)すれば、両者の位相関係は常に同一となるため、安定して偏心による速度変動をキャンセルし正確な回転伝達を行うことができる。
【0032】
次に、図2及び図3にて、張架部材2の偏心による速度変動をキャンセルする作用について説明する。
今、図1に示す駆動系構成にて、駆動用張架部材2(2a)としての駆動用プーリ、従動用張架部材2(2b,2c)としての従動プーリの各々に偏心最大位置のマーク(基準マーク5)を設けた。
そして、両者のマーク位置関係を360度分ずらし、従動プーリの回転変動の大きさがどのように変化するかを確認するため、駆動用プーリのマーク位置に対し従動プーリのマーク位置を少しづつ変えて配置させ、その時の従動プーリ回転変動(プーリ径上の位置変動)量を測定した結果を図2に示す。
【0033】
図2は、両者のマーク位置関係を360度分ずらしていった時の従動プーリの回転変動量の変化、及び、後述する理論的計算値変化を示している。
尚、同図において、駆動プーリ、従動プーリの偏心量(本例では略300μm前後)のほか、駆動プーリ自体の回転変動量も示されている。
同図に示される現象は、例えば図3に示すように、駆動プーリの偏心によって引き起こされる速度変動が従動プーリの偏心によってキャンセル可能であることを意味する。
【0034】
また、従動プーリの回転変動については、以下に示すような簡単な数式で表すことができ、これに基づく計算値を図2中に示した。
数式:従動プーリの回転に表れる変動は、(1)式で表され、その大きさは、(2)式となる。
ε1×Sin(ωt)+ε2×Sin(ωt+θ2)=A×Sin(ωt+θ) …(1)
A=Sprt[ε12+2×ε1×ε2×Sin(θ2)+ε22] …(2)
但し、
ε1:駆動プーリ偏心によって生じる回転変動量(≒偏心量)、
ε2:従動プーリ偏心によって生じる回転変動量(≒偏心量)、
θ2:従動プーリの位相
(駆動プーリの偏心最大位置と従動プーリ偏心最大位置との関係)、
ω:プーリの回転角速度、
A:従動プーリ回転変動の大きさ、
である。
【0035】
図2のグラフは、ほぼ理論通りの結果であり、両者のプーリに設けたマーク位置関係(ここではθ2)を調整することにより、従動プーリの回転変動を十分に低減できることが分かる。
一方、通常の平ベルトを使用した場合には、図17に示すようにベルトと張架部材間に滑りが生じ、負荷トルクによって滑り量が異なるため、本発明の作用である駆動用張架部材と他の張架部材の偏心によって引き起こされる速度変動・回転変動をキャンセルさせる位相関係を安定に維持することは困難である。
【0036】
更に、上述した駆動力伝達装置に係る発明を画像形成装置に適用すると、以下のようになる。
すなわち、本発明に係る画像形成装置は、駆動力を発生する駆動源と、駆動源からの駆動力によって回転駆動せしめられる像担持体と、駆動源からの駆動力を像担持体に伝達する駆動力伝達装置とを備えた画像形成装置において、駆動力伝達装置が、図1に示すように、一若しくは複数の無端状平ベルト1を複数の張架部材2(例えば2a〜2d)に掛け渡すことで駆動力を伝達するものであって、平ベルト1の少なくとも一つには平ベルト1の進行方向に沿って複数の貫通孔3を設け、当該貫通孔3が開設された平ベルト1を駆動させる駆動用張架部材2(例えば2a)及び当該平ベルト1が掛け渡される従動用張架部材2の少なくとも一つ(例えば2b,2c)に前記平ベルト1の貫通孔3が嵌合する突起4を回転方向に沿って複数設け、この突起4を有する駆動用張架部材2(2a)及び突起4を有する従動用張架部材2(2b,2c)を同一径にて構成し、かつ、同一径である各張架部材2(例えば2a〜2c)には回転方向基準位置として目視可能な基準マーク5を設けたものである。
【0037】
ここで、像担持体としては、感光体の他、中間転写体や用紙等のシート搬送体も含まれ、これらの形態としては、ドラム状(円筒状)のものの他、無端ベルト状のものも含まれる。
このような画像形成装置によれば、上述の駆動力伝達装置を画像形成装置として適用する場合には、従来の歯車や歯付きベルトを利用して駆動力を伝達する態様に比べて、噛み合いの振動がなく、出力画像に周期的な濃度ムラなどの画像欠陥が発生するのを防止することができる。
【0038】
また、各張架部材2の突起4と平ベルト1の貫通孔3とが互いに嵌合することにより駆動力を伝達するため、従来の平ベルトとプーリとの摩擦により駆動力を伝達する場合に比べて、大きな負荷が加わる場合であっても平ベルト1と各張架部材2とが滑ることがなく、かつ、像担持体の回転には、平ベルト1を駆動する駆動用張架部材2(2a)の偏心および像担持体を回転させる従動用張架部材2(2b,2c)の偏心によって引き起こされる回転変動がなく、出力画像に色ずれや転写ムラなどの画像欠陥が発生するのを防止することができ、安定した画像形成動作を行わせることが可能となる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図4は、本発明を適用した複写機(画像形成装置)80の実施の形態1を示す断面概略図である。
同図において、この複写機80の構成を、画像入力系、画像形成系、シート搬送系に分けてそれぞれ説明する。
画像入力系は、原稿が載置される原稿載置台70、この原稿載置台70上の原稿を読み取る原稿読取装置71、この原稿読取装置71にて読み取られた画像情報を処理する画像処理装置72を備えている。
画像形成系は、ブラック(K)、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色に対応する画像形成ステーション10(具体的には10K,10Y,10M,10C:図中点線で囲む部分)、この画像形成ステーション10に画像処理装置72からの画像データに基づいて露光する露光装置13(具体的には13K〜13C)、各画像形成ステーション10にて形成された画像が順次転写保持せしめられる二つの第一中間転写ドラム31(具体的には31a,31b)、及び、一つの第二中間転写ドラム32を備えている。
【0040】
ここで、各画像形成ステーション10には、感光体ドラム11(具体的には11K〜11C)、感光体ドラム11を帯電する帯電装置12(具体的には12K〜12C)、帯電された感光体ドラム11上に露光装置13により書き込まれた静電潜像を各色トナーにて現像する現像装置14(具体的には14K〜14C)などの電子写真用デバイスが具備されている。
尚、各感光体ドラム11(11K〜11C)と第一中間転写ドラム31a,31bとが対峙する部分には図示しない(一次)転写装置が、第一中間転写ドラム31a,31bと第二中間転写ドラム32とが対峙する部分には図示しない(二次)転写装置が夫々設けられている。
【0041】
更に、シート搬送系は、用紙等の記録シートSが積載されるシートトレイ40、シートトレイ40内の記録シートSを一枚ずつ繰り出すピックアップロール41、繰り出された記録シートSを位置決めするレジストロール42、第二中間転写ドラム32上の画像を記録シートSに転写する(三次)転写ロール43、記録シートS上に転写された画像を定着する定着ロール44、排出された記録シートSを収容する排出トレイ45などを備えている。
【0042】
次に、このような複写機80の基本的なフルカラー複写動作について説明する。
まず、ユーザが原稿載置台70の上に読取原稿を載せ、図示しないユーザインターフェイスにより複写指示を行うと、画像読取装置71が走査しつつ原稿を光学的に読み取り、電気信号(画像データI)に変換する。その画像データIは、画像処理装置72において、ブラック、イエロ、マゼンタ、シアンの各色に色分解され、それら各色の画像データI(IK,IY,IM,IC)に、マーキングデバイス/プロセスの特性を考慮した所定の重み係数を付与する等の画像処理が施される。
【0043】
一方、各画像形成ステーション10内の感光体ドラム11は、後述するベルト駆動装置100(図5参照)により図中矢印の方向へ回転駆動されている。この感光体ドラム11の表面は、帯電装置12により一様な所定電位に帯電される。そして、各露光装置13(13K〜13C)がそれぞれ画像データI(IK〜IC)に対応した露光光を所定タイミングで各感光体ドラム11(11K〜11C)表面に照射することにより、各感光体ドラム11(11K〜11C)表面には電位差による静電潜像が形成される。その静電潜像は、各現像装置14(14K〜14C)によりトナーが静電的に付着され、トナー画像T(K,Y,M,C)となる。
【0044】
他方、第一中間転写ドラム31a,31b及び第二中間転写ドラム32は、後述するベルト駆動装置100(図5参照)により図中矢印の方向へ回転駆動されている。そして、このトナー画像T(K,Y)は、図示しない一次転写装置により感光体ドラム11(11K,11Y)から第一中間転写ドラム31aへ、トナー画像T(M,C)は、感光体ドラム11(11M,11C)から第一中間転写体ドラム31bへと静電的に(一次)転写される。この際、トナー画像T(K,Y)は第一中間転写ドラム31a表面で重ね合わされ、トナー画像T(M,C)は第一中間転写ドラム31b表面で重ね合わされる。
【0045】
更に、第一中間転写ドラム31a上で重ね合わされたトナー画像T(KY)は、図示しない二次転写装置により第二中間転写ドラム32へ、同じく第一中間転写ドラム31b上で重ね合わされたトナー画像T(MC)も第二中間転写ドラム32へと静電的に(二次)転写される。この際、トナー画像T(KY)とトナー画像T(MC)とは第二中間転写ドラム32表面で重ね合わされ、フルカラーのトナー画像T(KYMC)が形成される。
このように、トナー画像T(KYMC)が形成される間、シート搬送系においては、シートトレイ40内の記録シートSがピックアップロール41により一枚取り出され、レジストロール42へと搬送される。例えばレジストロール42が停止状態から所定タイミングまで回転を開始することにより、第二中間転写ドラム32上のフルカラートナー画像T(KYMC)が転写ロール43とのニップ部に達するタイミングと、記録シートSがそのニップ部に達するタイミングとを一致させ、転写ロール43により第二中間転写ドラム32上のフルカラートナー画像T(KYMC)が記録シートSに静電的に転写される。
その後、表面にフルカラートナー画像T(KYMC)を静電的に保持する記録シートSは、定着ロール44のニップ部を通過する際に、各定着ロール44からの熱と圧力とその作用によりそのフルカラートナー画像T(KYMC)を表面に定着させ、複写機80外部の排出トレイ45へと排出される。
このような複写工程を一サイクルとし、これを連続的に行うことにより、次々にフルカラー画像を複写することができる。
【0046】
図5は、この複写機80を駆動するベルト駆動装置100を示す模式図であり、図4の正面側から眺めた構成を示すものである。
同図において、ベルト駆動装置100は、各感光体ドラム11(11K〜11C)、第一中間転写ドラム31a,31b、及び、第二中間転写ドラム32を駆動するものであり、三つの平ベルトBT(101〜103)と、これらの平ベルトBT(101〜103)が張架せしめられる各種張架部材とを備えている。
【0047】
本実施の形態において、平ベルト101の張架部材としては、図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ111と、感光体ドラム11(11K,11Y)の夫々軸方向一端に取り付けられた従動プーリ112,113と、平ベルト101の取り回しを行うための張架プーリ114とがあり、これらの張架部材111〜114に平ベルト101が掛け渡されている。
また、平ベルト102の張架部材としては、図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ121と、感光体ドラム11(11M,11C)の夫々軸方向一端に取り付けられた従動プーリ122,123と、平ベルト102の取り回しを行うための張架プーリ124とがあり、これらの張架部材121〜124に平ベルト102が掛け渡されている。
更に、平ベルト103の張架部材としては、第二中間転写ドラム32の軸方向一端に取り付けられ且つ図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ131と、二つの第一中間転写ドラム31(31a,31b)の軸方向一端に取り付けられる従動プーリ132,133と、平ベルト103の取り回しを行うための張架プーリ134とがあり、これらの張架部材131〜134に平ベルト103が掛け渡されている。
【0048】
ここで、図示外の駆動モータ(駆動源)からの出力をどの軸に与えるかであるが、平ベルトとプーリの巻き付け角度が大きいプーリ軸に駆動モータからの駆動を入力させる構成をとることが望ましい。
本実施の形態においては、例えば第二中間転写ドラム32の軸へ駆動モータからの駆動力を入力するように設定することができるが、他のプーリ軸へ駆動モータからの駆動力を入力する構成としてもよい。
また、平ベルトBT(101〜103)の材質としては樹脂製のものを採用することもできるが、耐久性や加工精度等の面からステンレス、ニッケル、チタン等の金属を使用することが好ましく、価格、耐久性、機械的強度の観点からステンレスを使用することが特に好ましい。
同様に、各プーリの材質としては樹脂製のものを採用することもできるが、耐久性や加工精度等の面からステンレス、アルミニウム、炭素鋼等の金属を使用することが好ましい。特に、金属製のプーリは樹脂製のプーリに比べて一般的に慣性モーメントが大きくなるため、画像形成装置において出力画像の画像欠陥を招くとして問題視されている噛み合い振動などの高周波振動の減衰効果が期待でき、その観点からもプーリの材質としては金属が好ましい。また、金属のうちでは価格、耐久性、機械的強度の観点からステンレスを使用することが特に好ましい。
【0049】
また、本実施の形態において、ベルト駆動装置100で用いられる平ベルトBT(101〜103)はいずれもパーフォレーションベルトであり、回転方向に沿って少なくとも一列の貫通孔(図示せず)が開設されていればよく、また、本実施の形態では、駆動プーリ111,121,131及びその下流側の従動プーリ112,113,122,123,132,133には平ベルトBT(101〜103)に開設された貫通孔が嵌合する突起(図示せず)が設けられている(図19参照)。
特に、本実施の形態では、例えば第一中間転写ドラム31a,31bには図示外のクリーナが当接しており、他のドラムと比較して大きな負荷が与えられる。尚、感光体ドラム11に図示外のクリーナが設けられる態様にあっても、大きな負荷が与えられることになる。
【0050】
このように、第一中間転写ドラム31a,31b等の被駆動体に大きな負荷がかかる態様にあっては、例えば図6(a)〜(c)に示すように、平ベルトBTには、進行方向に沿って複数列(本例では3列)の貫通孔140が設けられ、また、プーリPLの全部若しくは一部には平ベルトBTの貫通孔140に対応して複数列(本例では3列)の突起150が設けられており、平ベルトBTの貫通孔140にプーリPLの突起150を嵌合させることで、平ベルトBTの安定な駆動が実現されるようになっている。
本実施の形態では、貫通孔140としては例えば円形孔が用いられ、一方、突起150としては半球状突起が用いられる。
【0051】
図6(a)〜(c)に示す本実施の形態において、平ベルトBTの全ての列の貫通孔140ピッチpは同一間隔に設定されているが、特に合わせる必要はなく、各列にて間隔を変更することも可能である。また、3列の貫通孔140のうち、中央列の貫通孔140bピッチpは、両側列の貫通孔140a,140cピッチpと同一間隔であるが、位相θを180度ずらして設定されている。
これは、後述するように、ベルト蛇行による貫通孔部の破壊を防止する目的で故意に変えているものである。
また、本実施の形態において、平ベルトBTには複数列の貫通孔140が設けられ、プーリPLに設ける突起150は前記貫通孔140に対応して複数列設けられているが、必ずしも全ての貫通孔140に対応させて設ける必要はなく、少なくとも負荷の最も大きいプーリPLに設けるようにすればよい。
このため、負荷が小さいプーリPLには、複数列全てに嵌合させる必要はなく、3列中の1列を嵌合するようにすることも可能であるし、突起150のピッチを貫通孔ピッチの整数倍とすることも可能である。よって、複数列の貫通孔140を設けた平ベルトBTと、この平ベルトBTが巻き付く幾つかのプーリPLの各々の嵌合仕様は、使用するケース毎に自由に設計することができる。
【0052】
図7(a)(b)は、本実施の形態における構成の負荷に対する効果の概要を、図7(c)(d)はベルト蛇行に対する効果の概要をそれぞれより詳細に説明するものである。
図7は矢印A方向に循環移動するパーフォレーションベルト(貫通孔付き平ベルト)と、このベルトに設けた貫通孔と嵌合するプーリに設けた突起とを表している。
図7(a)は、貫通孔140’が1列孔タイプの比較の態様(平ベルトBT’)における駆動状態を示しており、高負荷の場合には、図示するように貫通孔140’部の循環方向と反対側で駆動を行うことになり、突起150’と噛み合う部分に歪みが生じる。この歪みがある大きさ以上になると平ベルトBT’の貫通孔140’部は破壊され、駆動が不安定になる。
この歪みの影響を低減し、安定な駆動を行わせるため、本実施の形態では、図7(b)に示すような循環方向に対し、平ベルトBTに複数列の貫通孔140を設けた構成としている。これにより、高負荷のプーリPL(図6参照)を駆動する際に生じる1個あたりの貫通孔140部の歪みを低減し、安定な駆動伝達を行うことが可能となる。
【0053】
図7(c)は、本実施の形態において、平ベルトBTの複数列の貫通孔140を同位相で配列した比較の形態を示す。
この場合、負荷に対する効果は、図7(b)と同様で、貫通孔140部の1個当たりの歪みを低減することが可能である。しかし、ベルト蛇行が発生するような状況では、蛇行方向に対する貫通孔140部のピッチが細かくなりすぎるため、歪みを吸収する領域がなくなり、貫通孔140部の破壊を招きやすい。
そのため、ベルト蛇行方向を考える場合には、本実施の形態のように、図7(d)のような構成とすることが望ましい。
このため、ベルト幅が十分広く取れる場合では、複数列設けた蛇行方向の貫通孔140部のピッチも大きくとれるため、図7(c)の構成でも問題はないが、画像形成装置などの小型化が要求される場合には、図7(d)の構成を取る方が望ましい。よって、本実施の形態では、図7(b)(d)の構成をとることにより、安定な駆動を実現することが可能となる。
【0054】
従って、本実施の形態によれば、平ベルトBTの貫通孔140部で破壊が起こる懸念はなく、駆動モータからの駆動力が感光体ドラム11(11K〜11C)、第一中間転写ドラム31a,31b、及び、第二中間転写ドラム32に確実に伝達される。
【0055】
尚、平ベルトBTの貫通孔及びプーリPLの突起については、実施の形態で示したものに限られるものではなく、例えば図8(a)〜(c)で示した変形態様であっても差し支えない。
例えば図8(a)に示すように、平ベルトBTには、平ベルトBTの進行方向に直交する幅方向に延びる長孔状貫通孔301が図示のように開設され、プーリPLの全部若しくは一部には前記長孔状貫通孔301に対応して略半円柱形状の柱状突起302が設けられ、平ベルトBTの長孔状貫通孔301に各プーリPLの柱状突起302を嵌合させることで、プーリPLに大きな負荷が作用するとしても、平ベルトBTの長孔状貫通孔301部への作用力を直線部301aで受けながら被駆動体へ確実に駆動力を伝達することができる。
それゆえ、本態様においても、平ベルトBTの安定な駆動が実現される。
【0056】
また、別の変形態様としては、図8(b)に示すように、平ベルトBTには、平ベルトBTの進行方向に直交する方向に延びる長孔状貫通孔321及び円形貫通孔322が図示のように交互に所定ピッチ間隔で開設され、プーリPLの全部若しくは一部には前記貫通孔321,322に対応して略半円柱形状の柱状突起323及び略半球状突起324が設けられ、平ベルトBTの各貫通孔321,322にプーリPLの各突起323,324を嵌合させることで、平ベルトBTの安定な駆動が実現されるようになっている。
ここで、本態様では、図8(b)に示すように、柱状突起323と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの進行方向における縁部との隙間をd1、柱状突起323と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの幅方向における縁部との隙間をd2、略半球状突起324と円形貫通孔322の平ベルトBTの幅方向における縁部との隙間をd3とすれば、d1 ≦ d3 ≦ d2の関係を満たすように設定することが好ましい。
このような寸法関係に設定すれば、略半球状突起324と平ベルトBTの円形貫通孔322とで平ベルトBTの蛇行を規制し、負荷トルクによる作用力に対しては、半円柱形状の柱状突起323と平ベルトBTの長孔状貫通孔321とで作用力を分散させた状態で駆動搬送する、機能分離型のベルト駆動装置が実現できる。
【0057】
更に、別の変形形態としては、図8(c)に示すように、平ベルトBTには、平ベルトBTの進行方向に直交する方向に延びる長孔状貫通孔321が図示のように所定ピッチ間隔で開設され、プーリPLの全部若しくは一部には前記長孔状貫通孔321に対応して略半円柱形状の柱状突起323及び対構成の略半球状突起325が交互に所定ピッチ間隔(本例では長孔状貫通孔321のピッチ間隔の2倍に設定)で設けられ、平ベルトBTの各貫通孔321にプーリPLの各突起323,325を嵌合させることで、平ベルトBTの安定な駆動が実現されるようになっている。
本実施の形態では、図8(c)に示すように、柱状突起323と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの進行方向における縁部との隙間をd1、柱状突起323と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの幅方向における縁部との隙間をd2、略半球状突起325と長孔状貫通孔321の平ベルトBTの幅方向における縁部との隙間をd3とすれば、d1 ≦ d3 ≦ d2の関係を満たすように設定することが好ましい。
このような寸法関係に設定すれば、図8(c)に示すように、略半球状突起325と平ベルトBTの長孔状貫通孔321とで平ベルトBTの蛇行を規制し、負荷トルクによる作用力に対しては、半円柱形状の柱状突起323と平ベルトBTの長孔状貫通孔321とで作用力を分散させた状態で駆動搬送する、機能分離型のベルト駆動装置が実現できる。
【0058】
特に、本実施の形態においては、図5に示すように、感光体ドラム11の駆動伝達系における駆動プーリ111,121とその従動プーリ112,113,122,123とは同一径であり、一方、中間転写ドラム31a,31b,32の駆動伝達系における駆動プーリ131とその従動プーリ132,133とが同一径に構成されている。
但し、感光体ドラム11の駆動伝達系と中間転写ドラム31a,31b,32の駆動伝達系とでは夫々のプーリ径は同じでも勿論よいが、本実施の形態では異なっている。
【0059】
そして、各駆動プーリ111,121,131とその下流側の従動プーリ112,113,122,123,132,133には回転方向基準位置となる基準マーク350が付されている。
この基準マーク350は対応するプーリPL(図6参照)の偏心位置が認識可能なものであれば、必ずしも最大偏心位置や最小偏心位置に対応させて設ける必要はなく、また、基準マーク350の具体的形態についても、マーク体を付したり、基準孔や切欠を形成したり、基準凸部や基準凹部を形成する等適宜選定して差し支えない。
ここで、基準マーク350の代表的形成例としては、例えばプーリPLを同じ成形型にて成形する際に基準マーク350も併せて形成する手法が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0060】
この基準マーク350が付されたプーリPLのレイアウトについては、例えば図5に示すように、駆動プーリ111(121,131)の基準マーク350が平ベルト101(102,103)を繰り出す位置P1近傍に位置するとき、下流側の従動プーリ112(122,132)の基準マーク350が平ベルト101(102,103)を受け入れる位置P2近傍に位置するように設定すればよい。
【0061】
このとき、例えば図9(a)に示すように、中間転写ドラム31a,31b,32の駆動伝達系を例に挙げて説明すると、駆動プーリ131の平ベルト103の繰出位置P1と、従動プーリ132の平ベルト103の受入位置P2とに夫々基準マーク350がある場合、例えば基準マーク350位置が最大偏心位置であれば、駆動プーリ131から平ベルト103が最も偏心誤差の大きい状態で繰り出されることになるが、従動プーリ132では平ベルト103が最も偏心誤差の大きい箇所で受け入れられることになり、駆動プーリ131と従動プーリ132との間で偏心誤差による回転位置変動はほとんど影響しない。
【0062】
更に、駆動プーリ131が回転し、駆動プーリ131の基準マーク350が図9(b)に示す位置に到達すると、駆動プーリ131の基準マーク350は平ベルト103を引き込む位置Q1に位置することになり、このとき、従動プーリ133の基準マーク350は平ベルト103を引き出す位置Q2に到達する。
このとき、例えば基準マーク350位置が最大偏心位置であれば、駆動プーリ131では平ベルト103が最も偏心誤差の大きい状態で引き込まれることになるが、従動プーリ133では平ベルト103が最も偏心誤差の大きい箇所から引き出されることになるため、駆動プーリ131と従動プーリ133との間で偏心誤差による回転位置変動はほとんど影響しない。
このように、本実施の形態に係るベルト駆動装置100では、駆動プーリや従動プーリの偏心による従動プーリの回転位置変動がほとんど生じないため、安定したベルト駆動を実現することができる。
このような性能については後述する実施例にて裏付けられる。
【0063】
◎実施の形態2
図10は、本発明を適用した実施の形態2に係る複写機(画像形成装置)の断面概略図であり、記録紙に各色のトナー像を順次転写してカラー画像を得る画像形成装置の概略構成図である。
図10に示す画像形成装置400には、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)のカラーデータを処理して得られたイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像データに基づいて変調されたレーザ光を出射するレーザ光源(図示せず)からの出射光を偏向する回転多面鏡等を有する露光器411(411Y,411M,411C,411K)が備えられている。
【0064】
また、この画像形成装置400には、図示しない帯電器によって帯電され上記露光器411Y,411M,411C,411Kからレーザ光の露光を受けながら回転することにより表面に静電潜像を形成する感光体ドラム412(412Y,412M,412C,412K)と、それら感光体ドラム412に形成された静電潜像をそれぞれY,M,C,Kのトナーで現像する現像器413(413Y,413M,413C,413K)とが備えられている。
さらに、この画像形成装置400には、駆動ロール421および従動ロール422,423,424と、それら駆動ロール421、従動ロール422,423,424間に張架された転写ベルト430と、シート供給トレイ440内の記録シート450を所定のタイミングで送り出すレジストロール460と、感光体ドラム412(412Y,412M,412C,412K)上の残留トナーを除去するクリーナ414(414Y,414M,414C,414K)と、記録シート450上に転写されたトナー像を定着する定着器470とが備えられている。
【0065】
このように構成された画像形成装置400では、先ず、イエロ用の感光体ドラム412Yが一様に帯電された後、露光器411Yからイエロの画像データに基づいて変調されたレーザ光が出射されて感光体ドラム412Yが露光し、これにより感光体ドラム412Yの表面にイエロ用の静電潜像が形成される。
この静電潜像は現像器413Yにより現像されてイエロのトナー像が形成され、レジストロール460によって所定のタイミングで送り出され転写ベルト430に担持されて矢印A方向に搬送される記録シート450上に転写される。
記録シート450上に転写されたイエローのトナー像の上には、次の感光体ドラム412M上に形成されたマゼンタのトナー像が重ね合わせるように転写され、さらに、その上に、シアン、およびブラックのトナー像が重ね合わせるように転写される。こうして四色のトナー像が重ね合わされて形成されたカラートナー像は定着器470によって定着されてカラー画像が完成する。
【0066】
各色の感光体ドラム412は、例えば図11に示すようなベルト駆動装置100にて回転駆動されるようになっている。
このベルト駆動装置100は、各感光体ドラム412(412Y〜412K)を駆動するものであり、二つのパーフォレーションベルトからなる平ベルトBT(151,152)と、これらの平ベルトBT(151,152)が張架せしめられる各種張架部材とを備えている。
本実施の形態において、平ベルト151の張架部材としては、図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ161と、感光体ドラム412(412Y,412M)の夫々軸方向一端に取り付けられた従動プーリ162,163と、平ベルト151の取り回しを行うための張架プーリ164とがあり、これらの張架部材161〜164に平ベルト151が掛け渡されている。
また、平ベルト152の張架部材としては、図示外の駆動モータ(駆動源)からの駆動力にて回転駆動される駆動プーリ171と、感光体ドラム412(412C,412K)の夫々軸方向一端に取り付けられた従動プーリ172,173と、平ベルト152の取り回しを行うための張架プーリ174とがあり、これらの張架部材171〜174に平ベルト152が掛け渡されている。
【0067】
これらの駆動プーリ161,171及び従動プーリ162,163,172,173には平ベルト151,152の貫通孔(図示せず)に対応する突起(図示せず)が形成されるほか、各従動プーリ162,163,172,173は、駆動プーリ151,152と同一径であり、かつ、実施の形態1で述べたような基準マーク350が設けられており、実施の形態1と略同様に、駆動プーリ及び従動プーリは、その偏心誤差による回転位置変動をキャンセルするように基準マーク350を用いて位置合わせされている。
【0068】
◎実施の形態3
図12は、本発明を適用した実施の形態3に係る複写機(画像形成装置)の断面概略図であり、中間転写ベルト上に各色のトナー像を順次転写してカラー画像を得る画像形成装置の概略構成図である。
尚、図10に示す画像形成装置400と同じ構成要素には同一の符号を付して説明する。
図12に示す画像形成装置400は、図10に示す画像形成装置400と比較し、転写ベルト430が中間転写ベルト480に置き換えられている点と、中間転写ベルト480を挟んで感光体ドラム412Y,412M,412C,412Kに対向する位置に一次転写ロール481(481Y,481M,481C,481K)が配置されている点と、二次転写ロール482が追加されている点とが異なっている。
【0069】
この画像形成装置400では、中間転写ベルト480を駆動ロール421の回転によって矢印B方向に移動して、中間転写ベルト480上に各感光体ドラム412(412Y,412M,412C,412K)上の各色トナー像を順次転写していくことにより中間転写ベルト480上に4色のトナー像が重ね合わせるように転写され、さらに二次転写ロール482で記録シート450上に一括転写される。
このようにして4色のトナー像が重ね合わされて形成されたカラートナー像が定着器470によって定着されてカラー画像が完成する。
尚、図12における各色の感光体ドラムを回転させるベルト駆動装置100については実施の形態2(図11参照)と同様に構成されている。
【0070】
【実施例】
◎実施例1
実施の形態1に係る画像形成装置を実施例モデルとし、出力画像の濃度ムラや画像位置ずれについて実際に調べたところ、本発明者らの実験によれば、出力画像の濃度ムラを認知限界以下に低減することができ、かつ、プーリ偏心による色ずれも従来の半分以下に低減することができた。
その一例を図13(a)(b)に示す。
同図では、ベルトの貫通孔部とプーリ突起との噛み合い変動を目標レベルとする△V0-p<0.3%とすることができ、画像濃度ムラの認知限界以下にすることができた。
また、同図の実験条件は、駆動プーリ、従動プーリに各々約150μmの偏心量を与えており、最悪300μm程度(平均150μm程度)の回転位置変動が発生するが、本実施例を適用することにより、色ずれの原因となる像担持体の回転位置変動量も1/3〜1/5程度まで低減することができた。
【0071】
◎実施例2
実施の形態1に係る画像形成装置を実施例モデルとし、出力画像の濃度ムラや画像位置ずれについて実際に調べたところ、本発明者らの実験によれば、孔無し平ベルトでは滑りが生じ駆動不可能な従動プーリ軸トルクが作用する条件下であっても出力画像の濃度ムラを認知限界以下に低減することができ、かつ、プーリ偏心による色ずれも従来の半減以下に低減することができた。
その一例を図14(a)(b)に示す。偏心量は図13と同量である。
同図では、ベルトの貫通孔部とプーリ突起との噛み合い変動を目標レベルとする△V0-p<0.3%とすることができ、画像濃度ムラの認知限界以下にすることができ、色ずれの原因となる像担持体の回転位置変動量も負荷の大きさと関係なく、従来の1/3〜1/5程度まで低減することができた。
【0072】
実施例1,2より、本発明の導入により、出力画像の濃度ムラ認知限界である△V0-pを0.3%以下とすることができ、かつ、色ずれに対しても従来の半分以下と高度な性能で安定な駆動力伝達方式を提供することができた。
【0073】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る駆動力伝達装置によれば、複数の張架部材に無端状の平ベルトを掛け渡す態様において、平ベルトの進行方向に沿って配列する貫通孔構造と張架部材の偏心基準位置を認識できるマークを設けることにより、プーリ等の張架部材と平ベルトとの間の滑りによる駆動力の伝達誤差をなくし、かつ、プーリ等の張架部材の偏心による伝達誤差を除去し高精度な回転伝達を可能とした駆動力伝達装置を提供することができる。
このため、このような駆動力伝達装置を用いた画像形成装置にあっては、張架部材の回転変動を抑え、被駆動体である像担持体に対し安定的に高精度な駆動を伝達することができるので、濃度むらや色ずれ等画像欠陥のない出力画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る駆動力伝達装置の概要を示す説明図である。
【図2】本発明に係る駆動力伝達装置モデルの作用を示す説明図である。
【図3】本発明に係る駆動力伝達装置モデルの従動プーリの回転位置変動がキャンセル可能であることを示したグラフ図である。
【図4】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図5】実施の形態1で用いられる駆動力伝達装置の詳細を示す斜視説明図である。
【図6】(a)は実施の形態1で用いられる駆動力伝達装置の張架部材周辺部を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図、(c)は(a)中C方向から見た矢視図である。
【図7】(a)は比較の形態(一列孔)における平ベルトの貫通孔とプーリの突起との噛み合い状態を示す説明図、(b)は本実施の形態における平ベルトの貫通孔とプーリの突起との噛み合い状態を示す説明図、(c)は比較の形態(3列孔)における平ベルトの貫通孔とプーリの突起とのベルト蛇行時の噛み合い状態を示す説明図、(d)は本実施の形態における平ベルトの貫通孔とプーリの突起とのベルト蛇行時の噛み合い状態を示す説明図である。
【図8】(a)〜(c)は平ベルトの貫通孔とプーリの突起との噛合構造の他の変形形態を示す説明図である。
【図9】(a)(b)は実施の形態1に係る駆動力伝達装置の作用を示す説明図である。
【図10】実施の形態2に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図11】実施の形態2で用いられる駆動力伝達装置の詳細を示す斜視説明図である。
【図12】実施の形態3に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図13】(a)は実施例1に係る駆動力伝達装置における従動プーリの回転ムラを示すグラフ図、(b)は従動プーリの回転位置変動を示すグラフ図である。
【図14】(a)は実施例2に係る駆動力伝達装置における従動プーリの回転ムラを示すグラフ図、(b)は従動プーリの回転位置変動を示すグラフ図である。
【図15】従来の駆動力伝達装置の不具合を示す説明図である。
【図16】従来の駆動力伝達装置を用いた画像形成装置において濃度ムラ許容値と像担持体の回転ムラとの関係を示す説明図である。
【図17】従来の平ベルトを用いた駆動力伝達装置における従動プーリの平均回転速度と負荷トルクとの関係を示す説明図である。
【図18】従来の平ベルトを用いた駆動力伝達装置の一例を示す説明図である。
【図19】(a)は従来の平ベルトを用いた駆動力伝達装置の他の例を示す説明図、(b)は(a)中B方向から見た矢視図である。
【図20】図19に係る駆動力伝達装置における従動軸負荷と従動プーリ回転平均速度との関係を示す説明図である。
【図21】(a)は従来の駆動力伝達装置における駆動プーリの偏心によって引き起こされる従動プーリの回転速度変動を示すグラフ図、(b)はその回転位置変動を示すグラフ図である。
【図22】従来の駆動力伝達装置における駆動プーリの偏心量と従動プーリの回転位置変動との関係を示すグラフ図である。
【図23】(a)は従来の駆動力伝達装置における従動プーリの偏心によって引き起こされる従動プーリの回転速度変動を示すグラフ図、(b)はその回転位置変動を示すグラフ図である。
【図24】従来の駆動力伝達装置における従動プーリの偏心量と従動プーリの回転位置変動との関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1…平ベルト,2(2a〜2d)…張架部材,3…貫通孔,4…突起,5…基準マーク
Claims (6)
- 一若しくは複数の無端状平ベルトを複数の張架部材に掛け渡すことで駆動力を伝達する駆動力伝達装置において、
平ベルトの少なくとも一つには平ベルトの進行方向に沿って複数の貫通孔を設け、
当該貫通孔が開設された平ベルトを駆動させる駆動用張架部材及び当該平ベルトが掛け渡される従動用張架部材の少なくとも一つに前記平ベルトの貫通孔が嵌合する突起を回転方向に沿って複数設け、
この突起を有する駆動用張架部材及び突起を有する従動用張架部材を同一径にて構成し、かつ、同一径である各張架部材には回転方向基準位置として目視可能な基準マークを設けたことを特徴とする駆動力伝達装置。 - 請求項1記載の駆動力伝達装置において、
基準マークが付された各張架部材は、駆動用張架部材の基準マーク位置に対し、従動用張架部材の基準マーク位置が所定の位相関係を満たすように配置され、各張架部材の偏心誤差による速度変動をキャンセルすることを特徴とする駆動力伝達装置。 - 請求項2記載の駆動力伝達装置において、
駆動用張架部材の基準マークが平ベルトを繰り出す位置若しくは引き込む位置近傍に位置するときに、下流側の従動用張架部材の基準マークが平ベルトを受け入れる位置若しくは引き出す位置近傍に位置することを特徴とする駆動力伝達装置。 - 請求項1記載の駆動力伝達装置において、
各張架部材に付された基準マークは、各々の張架部材の偏心位置が認識可能な位置に設けられることを特徴とする駆動力伝達装置。 - 請求項1記載の駆動力伝達装置において、
基準マークが付された各張架部材は、同じ成形型にて基準マークと共に成形されることを特徴とする駆動力伝達装置。 - 駆動力を発生する駆動源と、駆動源からの駆動力によって回転駆動せしめられる像担持体と、駆動源からの駆動力を像担持体に伝達する駆動力伝達装置とを備えた画像形成装置において、
駆動力伝達装置は、一若しくは複数の無端状平ベルトを複数の張架部材に掛け渡すことで駆動力を伝達するものであって、
平ベルトの少なくとも一つには平ベルトの進行方向に沿って複数の貫通孔を設け、
当該貫通孔が開設された平ベルトを駆動させる駆動用張架部材及び当該平ベルトが掛け渡される従動用張架部材の少なくとも一つに前記平ベルトの貫通孔が嵌合する突起を回転方向に沿って複数設け、
この突起を有する駆動用張架部材及び突起を有する従動用張架部材を同一径にて構成し、かつ、同一径である各張架部材には回転方向基準位置として目視可能な基準マークを設けたことを特徴とする画像形成装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2012180927A (ja) * | 2011-02-08 | 2012-09-20 | Ricoh Co Ltd | 同期駆動装置、及び、それを有する画像形成装置 |
JP2012185471A (ja) * | 2011-02-15 | 2012-09-27 | Ricoh Co Ltd | 回転機構駆動装置、画像形成装置、回転機構制御プログラム、回転機構駆動システム、画像形成システム |
CN107975599A (zh) * | 2017-11-30 | 2018-05-01 | 南京理工大学 | 一种反馈控制同步旋转密封装置 |
-
2002
- 2002-12-20 JP JP2002370233A patent/JP2004197909A/ja active Pending
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