JP2004197238A - パイル布帛およびその製造方法 - Google Patents

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Masakatsu Umeda
正勝 梅田
Jinroku Miyamoto
仁六 宮本
Akihiro Kato
明宏 加藤
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Abstract

【課題】スェード調の内装材として好適に用いることができ、梨地調効果の発揮とソフトな手触りおよび風合いと独特な粒感を呈するとともに、パイル面の外観、耐白ボケ性、耐光堅牢度などの特性をもクリアした高級感のあるパイル布帛を提供する。
【解決手段】収縮率差を有するポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸を含むパイル布帛において、上記合成繊維マルチフィラメント糸は糸の長さ方向に交絡部と非交絡部とをランダムに有し、上記非交絡部において、収縮率の高いフィラメント糸の外側に収縮率の低いフィラメント糸がループ状に形成されているとともに、上記ループ状に形成されたマルチフィラメント糸の比較的外層側のフィラメント糸がカットされたカットパイルを形成し、比較的内層側のフィラメント糸がカットされないループパイルを形成しており、かつ前記交絡部と非交絡部とで凹凸差を有してなることを特徴とするパイル布帛。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パイル布帛に関し、パイルを形成するポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸が収縮率差を有するとともに、糸の長さ方向に長い交絡部と非交絡部とをランダムに有し、上記非交絡部において、収縮率の高いフィラメント糸の外側に収縮率の低いフィラメント糸がループ状に形成されているとともに、上記ループ状に形成されたマルチフィラメント糸の比較的外層側のフィラメント糸がカットされたカットパイルを形成し、比較的内層側のフィラメント糸がカットされないループパイルを形成しており、かつ前記交絡部と非交絡部とで凹凸差を有してなるスェード調の内装材として好適なパイル布帛ならびにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、表面に立毛を有したパイル布帛は、外観や触感、風合いに優れたものであり、衣料用途を始め家具用椅子張材、自動車、電車などの車輛内装材など、多用途に用いられている。
【0003】
特に、近年は内装材および自動車内装材分野においては、ファッション性が求められ、パイル製品の多様化と見栄えのする外観を付与することが商品価値を高める上で重要な要素となっており、高級感を与える試みとして表面に凹凸模様を付加したり、毛玉調の粒感を表現するなど様々な形態を有したものが提案されている。
【0004】
ポリエステル系繊維よりなるパイル布帛に凹凸感のある模様を付与する方法として、従来から加熱エンボスローラーにより立体模様を与えるエンボス法や、アルカリ成分を含む抜触液を柄状に印捺してポリエステル系繊維の起毛部を加水分解除去する方法が幅広く利用されている。
【0005】
例えば、前者のエンボス法は、表面に凹凸を有するエンボスローラーを加熱してパイル布帛に圧着させ、パイル形成繊維を部分的に熱溶着、または熱収縮せしめて布帛に凹凸模様を付与する方法であるが(例えば、引用文献1参照)、繊維を高温で熱処理するためパイル形成繊維が加工の際に熱劣化を生じ、布帛の風合いが硬化したり、強度を低下させるといった問題があるといわれている。
【0006】
一方、後者のアルカリ成分を含む抜触液を柄状に印捺してポリエステル系繊維の起毛部を加水分解除去する方法は、例えば、単糸繊度0.56テックス以下の極細繊維からなるポリエステル系繊維よりなる人工スエード調布帛の起毛面にアルカリ性抜触液を印捺し、印捺部分の繊維を除去する方法が提案されている(例えば、引用文献2、引用文献3参照)。しかしながら、いずれも前述の化学処理によるものであり、わずかな加工条件の変化でも影響を受けるために染料が変色したり、凹凸模様が乱れたりして得られる加工品の再現性不良の問題点を残している。
【0007】
他方、物理的手法による凹凸感の有る模様を得る方法としては、乾熱収縮率が異なるマルチフィラメント糸を複合してパイル糸に使用し、2種類以上のパイル高さを変化させる立毛パイルを得る方法が利用されている。
【0008】
例えば、乾熱収縮率差が20%以上ある2種類以上の合成繊維マルチフィラメントからなる複合糸を用いて布帛とし、次いでパイルシャーリングおよび後加工を施し、パイル部を上下の2層構造を形成するものがある(例えば、引用文献4参照)。
【0009】
また、捲縮と非捲縮マルチフィラメント糸との混合糸によってカットパイルを形成し、そのパイル面では捲縮マルチフィラメントの先端部分を絡まり合わせて毛玉様の外観を形成し、他方、非捲縮マルチフィラメントはパイル面より沈んだ立毛状態にもたらす方法が提案されている(例えば、引用文献5参照)。
【0010】
なお、捲縮糸と非捲縮糸とを混繊させ、両方の特徴を生かす方法で外観や杢感を特徴とする技術も提案されている(例えば、引用文献6参照)。
【0011】
しかしながら、上記いずれの従来技術においても、ソフトで耐毛倒れ性を有し、やや特徴的な外観や風合を有しているとは云うものの、ポリエステルマルチフィラメント繊維によるパイル布帛の特性、機能を程よく兼ね備えたスェード調感覚でソフト風合、かつ独特な粒感のある内装材としてのパイル布帛は得られていない。
【0012】
【引用文献1】
特開平11−200185号公報
【0013】
【引用文献2】
特開昭57−71485号公報
【0014】
【引用文献3】
特開2000−64182号公報
【0015】
【引用文献4】
特開平10−212646号公報
【0016】
【引用文献5】
特開平10−168704号公報
【0017】
【引用文献6】
特許第3179352号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、スェード調の内装材として好適に用いることができ、梨地調効果の発揮とソフトな手触りおよび風合いと独特な粒感を呈するとともに、パイル面の外観、耐白ボケ性、耐光堅牢度などの特性をもクリアした高級感のあるパイル布帛を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するために、以下の構成を有する。すなわち、
(1)収縮率差を有するポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸を含むパイル布帛において、上記合成繊維マルチフィラメント糸は糸の長さ方向に交絡部と非交絡部とをランダムに有し、上記非交絡部において、収縮率の高いフィラメント糸の外側に収縮率の低いフィラメント糸がループ状に形成されているとともに、上記ループ状に形成されたマルチフィラメント糸の比較的外層側のフィラメント糸がカットされたカットパイルを形成し、比較的内層側のフィラメント糸がカットされないループパイルを形成しており、かつ前記交絡部と非交絡部とで凹凸差を有してなることを特徴とするパイル布帛。
【0020】
(2)前記収縮率差を有するポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸の乾熱収縮率差が10%以上、低収縮フィラメント糸の乾熱収縮率が20%以下でかつ単繊維繊度が1.3デシテックス以下からなることを特徴とする前記(1)に記載のパイル布帛。
【0021】
(3)前記ポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸は、糸の長さ方向に0.1g/1.1デシテックスの荷重を加えた時の交絡部、非交絡部の各部の個数が1インチ当たり1個以上存在することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のパイル布帛。
【0022】
(4)前記ポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸の交絡部の長さが1〜5mmであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のパイル布帛。
【0023】
(5)内装材用であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のパイル布帛。
【0024】
(6)低収縮マルチフィラメント糸と高収縮マルチフィラメント糸とを同時に混繊交絡させて糸の長さ方向に交絡部と非交絡部とをランダムに形成せしめたポリエステル系合成繊維マルチフイラメント糸を用いて布帛となし、次いで、該布帛を熱処理して収縮率の高いフィラメント糸の外側に収縮率の低いフィラメント糸をループ状に形成させた後、前記ループ状に形成されたフィラメント糸の一部を起毛カットすることを特徴とするパイル布帛の製造方法。
【0025】
【発明の実施の形態】
近年、ポリエステル系繊維は、性能と機能性、取り扱い易さ、コスト性から衣料用を始めインテリア分野にも幅広く利用され、今後も活用の範囲は計り知れないものである。よって、今後の活用面、加工性、コストダウンとVA化、さらにはファッション感覚追求のためにも内装材としてのパイル糸がポリエステル系繊維であることは商品展開に非常に有利であるといえる。
【0026】
本発明は、ポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸でループパイルおよびカットパイルが混合形成された布帛において、該ポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸は収縮差のある少なくとも2種類のマルチフィラメント糸からなり、糸の長さ方向に拘束力の強弱のある交絡部と拘束力の非常に弱い非交絡部をランダムに形成し、上記マルチフィラメント糸は拘束力差やマイグレーション効果で、布帛が熱処理されて糸に収縮応力が発現した際、糸条自身の拘束力差による応力変化ならびに組織内の拘束による応力変化などが生じて凹凸構造を呈して梨地調形態へと形成せしめられる。
【0027】
さらに、非交絡部分は、高収縮マルチフィラメント糸が糸の比較的内層側に位置するためより布帛の内部方向に沈み込み、低収縮マルチフィラメント糸は交絡部でマイグレーションしているため糸長差が生じており、かつ非交絡部では拘束力が弱いため比較的自由に布帛表面にループ状に突き出て、図1に示すように、糸の内層から外層に向かってループ形態が徐々に大きくなる多段差ループ(あるいは位相ループ)を形成する。
【0028】
この多段差ループのマルチフィラメント糸を部分的にカット起毛することにより、上記ループ状に形成されたマルチフィラメント糸の比較的外層側のフィラメント糸がカットされたカットパイルを形成し、比較的内層側のフィラメント糸がカットされないループパイルを形成して多段差ループパイルが混在したものとなるのである。
【0029】
上記両者の効果と梨地調の外観を呈した上に起毛量を意匠的に変化させることによって独特な粒感を有するスェード調パイル布帛が得られる。
【0030】
”粒感”とは、切断された繊維の起毛パイルの固まりが部分、部分に集中して構成させることにより、タッチならびに視覚を癒す感覚表現を云う。
【0031】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0032】
本発明のパイル布帛に用いるパイル糸は、収縮率差を有する少なくとも2種のポリエステルマルチフィラメント糸を長さ方向に拘束性が強弱なる交絡部および非交絡部をランダムに形成したものである。該拘束力差がパイル内部では収縮応力が発現した際、応力変化を起こして凹凸構造を持った梨地調形態を形成しうる。さらに、非交絡部は、高収縮繊維がパイル布帛内部に入り込み、低収縮繊維であるマルチフィラメントがループを発現しパイル表面に突き出して多段差ループパイルを形成する。このような構造と特徴を保有した長い交絡部と非交絡部を形成した混繊交絡複合糸からなることが重要な要件である。
【0033】
糸条形態での大よその交絡部と非交絡部の長さは熱処理後、定荷重下にて最大で交絡部が1〜4mm、非交絡部で1〜5mm程度の形態のものであることが好ましい。
【0034】
また、その多段ループの高さは0よりも長く2mm以下程度の範囲にあることが好ましい。
【0035】
この混繊交絡複合糸を用いてパイル布帛形成後に反染加工を施す。
【0036】
その反染加工時におけるパイル布帛内外部では熱処理加工の影響により、特に低収縮マルチフィラメント糸Aと高収縮マルチフィラメント糸Bとが長く交絡している拘束力の弱〜強部分では、布帛内部に沈み込み、かつ交絡のマイグレーションや拘束力に強弱があるためパイル内部では複雑な変化が与えられ凹凸構造をもった梨地調形態を形成しうる。
【0037】
このことは強撚効果の縮緬形態に見られるような構造を形成し、梨地調の風合いと触感を発現させる重要な要件となる。
【0038】
さらに、長い非交絡部分は高収縮マルチフィラメント糸Bが比較的自由に収縮し、パイル内部に入り込み、かつ交絡していない低収縮マルチフィラメント糸Aはループ高さの異なる多段ループを形成して布帛表面に集中して発現してくる。
【0039】
上記2つの特徴が相まって内部、表面に凹凸変化を構成し、布帛全体にボリューム感を付与し梨地調効果を強調できるという大きな特徴がある。
【0040】
本形態を呈した布帛においても当然梨地調の効果を発揮し、布帛表面には低収縮マルチフイラメント糸Aであるファインマルチフィラメント糸による多段差ループが非常にソフトな触感と風合いを呈するのでパイル布帛としても特徴があり、衣料関係に置いてはかなり活用・展開は多いものである。
【0041】
しかしながら、さらに創意工夫を重ね狙いとするこれまでのパイル布帛では得られなかったソフト風合いや粒感を求め、その方法や高級感を高めるためにさらなる技法を見つけ低収縮マルチフィラメント糸Aのパイル表面に近いパイルの一部のみを任意に切断起毛させることがスェード調感覚と独特の粒感をより特徴付けるのに有効であるという手段・技術に到達し、商品価値を高めるのに非常に役立つこととなったのである。
【0042】
本発明においては、ポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸からなるループパイルとカットパイルが混合形成されたパイル布帛において、上記合成繊維マルチフィラメント糸は収縮率差を有する低収縮マルチフィラメント糸Aと高収縮マルチフイラメント糸Bを含む少なくとも2種類のポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸からなる。
【0043】
本発明では低収縮マルチフィラメント糸Aとしてポリエステル系繊維のマルチフィラメント数が70〜150本のハイカウントマルチフィラメントで高配向未延伸糸条にてインドロウー−二次セット仮撚加工を施す。さらに高収縮マルチフィラメント糸とを機上一括加工にて混繊交絡加工を施すものである。
【0044】
該仮撚インドロウーと混繊交絡加工は、ともに機上で一括加工・製造することにより経済性を考慮することができる。
【0045】
さらに、仮撚機上で送り出しされた低捲縮糸条はマルチフィラメント繊維が並列し開繊された状態であるから高収縮マルチフィラメント糸Bと均一に安定して交絡せしめられるという技術上の効果も生かされる。
【0046】
本発明における低収縮マルチフィラメント糸Aは、低捲縮の仮撚加工された繊維からなるものが好ましく適用されるのでその構成について詳しく述べる。
【0047】
低収縮化されるマルチフィラメント糸Aは、一般的な高配向未延伸糸条を活用し、インドロー−二次セット仮撚加工により伸縮復元率が20%以下の低捲縮加工糸を得ることが可能であるが、 本発明では、
1)低収縮マルチフィラメント糸Aの仮撚低捲縮加工後の乾熱収縮率が20%以下であって、かつ高収縮マルチフィラメントBとの乾熱収縮率差が10%以上あることが好ましい。
【0048】
なお、乾熱収縮率、伸縮復元率の測定法は後述する。
【0049】
低収縮マルチフィラメント糸Aの乾熱収縮率が20%以下であることは、本発明に利用する高収縮マルチフィラメント糸Bよりも乾熱収縮率が低いことが前提であり、さらに高収縮マルチフィラメント糸Bとの乾熱収縮率差が10%以上有することによって、高収縮マルチフィラメント糸Bが収縮した後に低収縮マルチフィラメント糸Aを高収縮マルチフィラメント糸Bの軸から充分に浮き上がらせる効果、すなわち、多段差ループを生み出させることができるのである。
【0050】
低収縮マルチフィラメント糸Aの乾熱収縮率が20%を越えると、高収縮マルチフィラメント糸Bの特性に近づきすぎて低収縮マルチフィラメント糸Aに充分な糸長差を付与できず、高ループや多相性が形成されない。すなわち、布帛の表面に高さの十分な多段差ループが形成されにくいこととなり、相関する起毛長・量も短く、少なくなることから、ソフト風合い及び粒感・杢感を特徴とするスェード調感覚が損なわれてしまう心配がある。
【0051】
なお、乾熱収縮率差の上限としては20%以下であることが好ましいが、低収縮マルチフィラメント糸Aは一般的に衣料や内装材として使用する捲縮を保持した加工糸と同様に低収縮マルチフィラメント糸Aは単独で乾熱収縮率は6%以下であることが望ましい。さらに好ましくは4%以下であり、乾熱収縮率がゼロパーセントでも差し支えない。
【0052】
2)本発明のソフト風合いの特徴を発揮し得るために、低収縮マルチフィラメント糸Aの単繊維繊度は1.3デシテックス以下であることが好ましい。
【0053】
今日ポリエステルマルチフィラメント繊維やそれを用いたパイル布帛内装材はソフト化の要求が高まり、それに対する細繊維化紡糸技術が急速に発達し市場に提供されるようになった。
【0054】
本発明においては、単繊維繊度が1.3デシテックス以下であるポリエステルマルチフィラメント繊維を低収縮マルチフィラメント糸Aとして活用することが好ましく、ソフトな手触りおよびソフトな風合いを発揮するための大きなファクターとなるため、1.3デシテックスを超えるマルチフィラメント糸を用いることは好ましくない。逆に単繊維が0デシテックスにより近いものは、ミクロファイバーの紡糸−製糸技術が必要であり、コストを追求する通常のパイル布帛内装材及び本発明には適用しにくい。通常の紡糸−製糸技術範囲内における生産品であって、当然仮撚加工性の面で毛羽発生、糸切れなどが起こりにくいものが好ましく適用でき、品質上からもより好ましくは低収縮マルチフィラメント糸Aの単繊維繊度は0.3〜1.1デシテックスである。
【0055】
さらに、仮撚加工条件を夫々検討して低収縮マルチフィラメント糸A単独糸条の低捲縮化を計ることが重要であるが、ストレートヤーンに近い形態の捲縮特性が非常に小さい場合、折角捲縮付与した繊維糸条にボリューム感がなく、非捲縮繊維活用の商品と差別化が出来にくく、無駄となる。逆に伸縮復元率の大きい高捲縮形態になると、起毛後、単繊維が縮んだチリチリなパイル形態になると起毛品としての表面感と粒感が顕著に表現できず、立毛品位としても劣ったものとなってしまうことがある。
【0056】
次に、本発明における高収縮マルチフィラメント糸Bの特徴について詳しく述べる。
【0057】
3)高収縮マルチフィラメント糸Bは、例えば共重合体ポリエステル繊維からなり、乾熱収縮率が低収縮化したマルチフィラメント糸Aより10%以上高い特性を保有するものであることが好ましい。
【0058】
本発明においては、パイル布帛に織編成後、続いて、染色工程にて生地に充分な収縮を与えることが重要である。染色時の熱効果を利用することにより、特に非交絡部における高収縮マルチフィラメント糸Bはパイルの内層部へ縮み込ませ、立毛パイルを形成する低収縮繊維マルチフィラメント糸Aは単繊維が布帛の表層にループ形態を程良く浮き出させ、この低収縮マルチフィラメント糸Aを織編布帛表面に多段差ループ形態に形成させることが本発明の最も重要な点である。
【0059】
低収縮マルチフィラメント糸Aと高収縮マルチフィラメント糸Bとの乾熱収縮率差が10%未満の場合、低収縮マルチフィラメント糸Aのループの浮き上がりが低く、短長となり十分な起毛量が得られないことにつながる。あるいは高収縮マルチフィラメント糸Bがチラチラと表面に透けて現れると染着差から起こるイラツキなどを発生させ、高級なスェード調のパイル外観・風合い更には粒感を表現できなくなることも懸念される。
【0060】
なお、本発明の場合、低収縮マルチフィラメント糸Aの単繊維繊度は、1.3デシテックス以下の細いものを用いるに際しては、低収縮マルチフィラメント糸Aの単繊維繊度よりも高収縮マルチフィラメント糸Bの単繊維繊度を太くすることも生地自体の弾力性や強さ・厚みに富んだ構成とするために大切である。
【0061】
ただし、高収縮マルチフィラメント糸Bが太過ぎると低収縮マルチフィラメント糸Aとの混繊交絡状態が悪くなったり、布帛全体が粗硬になってソフトな感触・風合いを表現できにくくなることもある。高収縮マルチフィラメント糸Bについても適度な単繊維繊度を選定することが望ましく2〜10デシテックスのものが好ましい。
【0062】
さらに特徴付ける製糸技術として、高収縮マルチフィラメント糸Aとして高収縮特性を発揮する上に、バイメタル型複合繊維や異形断面でかつ捲縮を保有した合成繊維も活用ができる。
【0063】
以上、様々な特徴を発揮できる低収縮マルチフィラメント糸Aと高収縮マルチフィラメント糸Bにより混繊・交絡加工された構成・形態が次の特徴を有するパイル用複合糸となる。
【0064】
4)混繊交絡処理された複合糸は、交絡部と非交絡部が繊維軸方向に互いにランダムに配列され、交絡部は良くマイグレーションしていることが望ましく、非交絡部は低収縮マルチフィラメント糸が高収縮糸から離れ充分に多段差化されることである。
【0065】
5)かつ交絡部Cと非交絡部Dの長さがともに1〜5mmと長いものであることを特徴とする。
【0066】
6)繊維軸方向に0.1g/1.1デシテックスの荷重を加えた時の交絡部Cと非交絡部D各部の個数が1インチ当たり1個以上存在する。
【0067】
交絡部C、非交絡部D各部の個数が1インチ当たり1個未満では、交絡部も少なくなることから梨地調効果が弱く、加工糸調の単調な風合いとなってしまうことがある。
【0068】
逆に、交絡部C、非交絡部D各部の個数が共に多すぎた場合は、交絡部のザラツキが顕著になりシャリ感が強調されたり粗硬な風合いとなってしまう。またループの発現量と位相の高さも低くなることから、当然起毛量が減り、任意な立毛量が得られないため起毛感覚が発揮できず、高級なスェード調のパイル布帛は得がたいこととなる。なお、交絡部、非交絡部の個数の上限は、各2.5以下が好ましい。さらに好ましくは各2以下である。
【0069】
交絡部および非交絡部の個数の測定法については後述する。
【0070】
表面に凹凸感のある梨地調の外観を有するスェード調の内装材として好適な本発明のパイル布帛に用いるパイル糸は、混繊交絡後の形態において、特に交絡部では各糸の繊維が軸方向にもランダムにマイグレーションしていることが、生地収縮後、梨地効果を発揮する大きな要因となり好ましい。かつ、目標とする起毛、ループを得るために、非交絡部が長く形成され混在させることが布帛表面に多段差ループを発現せしめるさらなる重要な点である。
【0071】
図1は、本発明のパイル布帛に用いるパイル糸の一例を示す概略図である。
【0072】
図1の(1)図は、上記パイル糸を乾熱170℃において3分間処理した後の定荷重下におけるパイル糸の繊維の形状を示すSEM写真である。
【0073】
図1の(1)に示すように交絡部と非交絡部が糸の長さ方向にランダムに存在している。Aは仮撚捲縮糸からなる低収縮マルチフィラメント糸であり、熱効果により布帛表面に突き出てきて多段差ループとなるものである。この布帛表面に出たループを任意に起毛し、カットパイルおよび多段差ループパイルとして残存するものである。
【0074】
Bは収縮後の高収縮マルチフィラメント糸であり、布帛内部に入り込み低収縮繊維に覆われる。
【0075】
一般にインターレース交絡糸は、交絡部−非交絡部が短く、交絡部を多く付与することを目的とした技術である。
【0076】
本発明複合糸との相違は、本発明においては、梨地感覚でスェード調風合い、独特の粒感を発揮しうる起毛パイル布帛に用いるパイル用複合糸を得るために、交絡部−非交絡部を共に長く形成せしめるように、交絡ノズル径などが大きい空気流量の多いノズルを選定することが重要である。
【0077】
拘束された長い交絡部が存在することは、繊維間の拘束力にも強弱があるのでパイル内部、表面共に交絡マイグレーション効果と収縮応力が発現した際に繊維それぞれに応力変化を起してイレギュラーな方向に応力が発現するため凹凸構造を構成することが可能となる。この結果、布帛内部には空隙と厚みや反発性を与え、表面には凹凸感のある梨地調構造の形態が構成される。
【0078】
また、既に交絡部ではマイグレーション効果で糸長差が起こっており、この差の影響で非交絡部の低収縮マルチフィラメント糸もループ高さの異なるループを布帛表面に多段的に多数発現せしめられ、しかもパイルとしても程良く長いものが形成されるためパイルの一部をサンドペーパーなどでカット起毛させるとスェード調としての適度な起毛長が得られる。
【0079】
さらに起毛工程では質・量が任意にコントロール出来る技術があるので粒感の変わったバラエティある商品を展開することが出来る。
【0080】
このようなスェード調適応パイル用複合加工糸と機能性の高い後加工技術によって梨地構造、カットパイルと多段差ループパイルとの混在する形態が構成され、梨地感覚にさらにソフトな感触・風合いと独特な粒感・杢感が生まれるのである。
【0081】
本発明における仮撚加工技術は、通常のポリエステルマルチフィラメント加工技術の応用で充分であるが、高収縮マルチフィラメント糸B0を混繊交絡させるには前記特殊な交絡ノズルとシビァなフィード率条件が要求され張力管理など、重要な点が多々必要なので、さらにパイル用複合加工糸の製造方法ならびに布帛の構成例を詳しく述べる。
【0082】
本発明のパイル布帛の製造方法は、低収縮マルチフィラメント糸と高収縮マルチフィラメント糸とを同時に混繊交絡させて糸の長さ方向に交絡部と非交絡部とをランダムに形成せしめたポリエステル系合成繊維マルチフイラメント糸を用いて布帛となし、次いで、該布帛を熱処理して収縮率の高いフィラメント糸の外側に収縮率の低いフィラメント糸をループ状に形成させた後、前記ループ状に形成されたフィラメント糸の一部を起毛カットすることを特徴とする。
【0083】
また、高配向未延伸糸A0をインドロー−2次セット仮撚加工法で低捲縮化した後に連続して高収縮マルチフィラメント糸Bを混繊交絡させるものであることが好ましい。
【0084】
続いて織編編成後、染色加工によって熱処理されると繊維長さ方向に拘束力が強弱な交絡部および非交絡部をランダムに形成したものであるため、該拘束力差がパイル内部では収縮応力が発現した際、応力変化を生じて凹凸構造をもった梨地調形態を形成する。また布帛表面には低収縮マルチフィラメント糸だけの多段差ループを形成させ、該パイル繊維の多段差ループを表面に近いものだけ任意にカット起毛させてスェード調パイル布帛を得るものである。
【0085】
本発明のスェード調パイル布帛の付加価値を高める要素は、梨地外観と起毛効果によるソフト感と粒感の表現にある。梨地調外観の表面に多段差ループ形成したものをサンドペーパーなどを用いたエメリー加工法などによりその多段ループの一部を任意にカット起毛させて部分的に少〜多量をコントロールしてなお意匠的に粒感を表現するのである。
【0086】
なお、図1の(2)図は、染色加工により熱の影響を受けた後の布帛を分解し、採集したパイル糸の繊維の形状の一例を示すSEM写真である。
【0087】
非交絡部のループの高さが(1)図より低いと見られるのはその部分が組織に拘束されたためであって、形態は(1)と変わりないものである。
【0088】
また、図1の(3)図は、起毛後の布帛から分解し、採集したパイル糸の繊維の形状の一例を示すSEM写真である。低収縮化した仮撚捲縮繊維Aは、部分的にループが切断(繊維A’)されており、これがスェード感と粒感効果を一層高めてくれるのである。
【0089】
また切断された間々に未カットで残存しているのが見られ、この繊維が以前として多段差ループとして存在し布帛表面を覆いかつ層を構成しているため布帛のソフト感に大いに寄与していることが考察される。
【0090】
なお、図において、Cは交絡部の長さを示し、Dは非交絡部の長さを示す。 本発明における仮撚加工技術は、通常のポリエステルフィラメント加工技術の応用で充分であるが、高収縮繊維B0を他ローラから供給して混繊交絡させるには特殊な交絡ノズルとシビァなフィード率条件が要求されるので張力管理など重要な点が多いので、更にパイル用複合加工糸の製造方法ならびに布帛の構成例を詳しく述べる。
【0091】
図2は、仮撚加工およびエアー混繊処理加工を直結させた製造方法の一例を示す工程図である。
【0092】
高配向未延伸糸A0は、供給ローラ1および第1送り出しローラ4間においてインドローされながら仮ヨリ具3で加ネンされつつ一次ヒーター2で熱固定される。 次に、第1送り出しローラ4および第2送り出しローラ6間においてヒーター5でリラックス熱固定して、さらに低収縮化し安定した低捲縮糸条となす。
【0093】
続いて、第2送り出しローラ6および第3送り出しローラ9間で交絡ノズル8により混繊交絡加工されるが、これに先行して高収縮マルチフィラメント糸B0を供給ローラ11により供給する。同じように供給ローラ11と第3送り出しローラ9間でフィード率規制されながらガイド7を介し交絡ノズル8に同時に供給させて混繊交絡処理が施される。上記のようにして複合糸とされた糸条は巻き取りローラ10によりパッケージ12に巻き上げられる。
【0094】
なお、混繊交絡処理にエアー処理法を利用すれば空気圧により交絡状態が変化させられるので好ましい方法である。低圧処理の場合は交絡状態を粗く、かつ拘束力も弱くできる。また、高圧処理の場合は交絡拘束状態を強く、また交絡部も多量に変化させられるとの各種の特徴が出せるものである。なお、本複合糸の製造における交絡処理の空気圧は、3〜5kg/cm2程度が良い。
【0095】
パイル布帛形成には、例えば、トリコット機28ゲージ、グランド糸をポリエステル84dtex−36fil、本発明パイル糸を4振組織により経編編成することによって得る。程良いループ形態、長さをコントロールするために4振組織も効果があるので好ましい。
【0096】
染色工程は、生地収縮と多段差ループ形態を発現させる目的と製品価値を高めるためのものであるので一般的なポリエステル繊維の染色処方で充分である。
【0097】
続いて、起毛工程はエメリー加工によるカッテング起毛法である。
【0098】
パイル面にループ状に突き出した低収縮マルチフィラメント糸Aのパイル表面の比較的外層側のループをだけを切断して、部分的にカット起毛されたカットパイルを形成さす。布帛表面だけ薄起毛すればカット面より内層側では低い多段ループがカットされずループとして残存する。よって、部分的にカット起毛されたカットパイルとカットパイル面より沈んだカット起毛されないループパイルが混在するようにする。その後異常長パイルを排除するために煎毛工程を経て、起毛経編パイル布帛とする。
【0099】
図3は、本発明パイル布帛の表面の繊維の形状の一例を示すSEM写真であり、図3の(1)は染色加工後の布帛の表面形態を示し、(2)は起毛加工後の布帛の表面形態を示す。
【0100】
図3の(1)図に見られるように、トリコット組織のループ形成が不均一でイレギュラーに変化して凹凸感を作り出しているのが読みとれる。この構造変化がパイル内部でも発現しており梨地調凹凸感を呈するのである。
【0101】
図3の(2)図では、トリコット組織の表面をエメリー加工法によってカット起毛させた表面形態を示した一例である。カット起毛されたカットパイルA’が部分、部分に集中して発現している(白の強い部分A’)のが見られる。
【0102】
なお、交絡部Cは布帛内部に沈んでいるのが読み取れる(陰影の強い部分C)。
【0103】
このように交絡部は起毛パイルがなく、カットされた起毛パイルの固まりが部分、部分に集中して構成されるため”粒感”と表現する感覚が生まれるのである。
【0104】
さらには無捲縮パイル糸、高捲縮パイル糸においても自在に起毛量をコントロール出来ることや起毛パイルに絡みを与える加工技術により更に”粒感”表現に変化を持たせて特異な品位と特徴を一層拡大できるのである。
【0105】
更に、図4は、本発明パイル布帛の横断面における繊維の形状の一例を示すSEM写真であり、図4の(1)は染色加工後の布帛の断面形態を示し、(2)は起毛加工後の布帛の断面形態を示す。
【0106】
図4の(1)図は染色加工後の多段差ループの形態Aを示したものであり、高収縮糸Bの上層に 多段差ループが構成されているのが読みとれる。また、高収縮糸条が凹凸感を構成しているのも読みとれる。
【0107】
図4の(2)図は同じくカット起毛した後の布帛の横断面を示した一例である。
【0108】
A’はカットされたカット起毛パイルである。その下層には切断されずに残存した多段差ループAの構成・層が読み取れる。
【0109】
この多段差ループ形態およびカット起毛パイルが布帛が表面タッチをソフトにさせ、スェード調効果を発揮するのである。
【0110】
この本発明の複合加工糸の特徴と粒感を発揮するための布帛としは編物形態が良い。取り分けトリコット布帛で3〜5振り組織の構造が最も起毛構成、ソフト感、粒感を発揮してくれるのでより好ましい。
【0111】
【実施例】
次に本発明を実施例、比較例によりさらに詳細に説明する。
【0112】
なお、本発明に記述する諸特性の測定法、官能評価を次に示す。
[乾熱収縮率]
各繊維糸条の単独および複合糸共に同様の評価法で行う。
【0113】
単独糸、複合糸共に10回巻きのカセを5本採集する。数時間放置後、0.1g/1.1デシテックス当たりの定荷重により30秒後の長さを測定しl1とする。
【0114】
次に乾熱温度170℃×3分の処理を施し、充分放置した後に0.1g/1.1デシテックス当たりの定荷重により30秒後の長さを測定しl2とする。
【0115】
乾熱収縮率=[(l1 −l2 )/l1 ]×100(%)の式で計算し、カセ5本の平均値で示す。
[伸縮復元率]
捲縮加工糸単独および複合糸共に同様の評価法で行う。
【0116】
単独糸、複合糸共に10回巻きのカセを5本採集する。
【0117】
次いで熱水温度98℃×20分の処理を施こす。
【0118】
水中にて0.1g/1.1デシテックス当たりの定荷重下により2分後の長さを測定しl1とする。次に、2mg/1.1デシテックス当たりの初荷重下により2分間後の復元した長さを測定しl2とする。
【0119】
伸縮復元率=[(l1 −l2 )/l1 ]×100(%)の式で計算し、、カセ5本の平均値で示す。
[交絡部および非交絡部の個数]
複合糸をフリー状にて170℃×3分の処理を施す。
【0120】
その後、0.1g/1.1デシテックス当たりの定荷重下により25.4cm間にマークをする。この25.4cm間の交絡数及び非交絡数を目視でカウント、それを5回繰り返し、インチ間に換算して交絡部および非交絡部の個数とする。
【0121】
[交絡部長]
複合糸をフリー状にて170℃×3分の処理を施す。
【0122】
その後、0.1g/1.1デシテックス当たりの定荷重下にて5本採集する。
【0123】
これを10倍に投影した40cm間(実長4cm)の交絡部の長さを測定する。 それを5本とも測定し、その5回の平均値で示す。
[表面品位・粒感]
パイル布帛の表面感について起毛状態と杢感を視覚にて”粒感良好〜粒感不良”を熟練者が4段階評価(◎;粒感優、○;粒感良、△;粒感やや不足、×;粒感不良)で10名による官能判定を行う。
[ソフト風合い]
パイル布帛のスェード調表面触感について”ソフト感〜さらさら感〜粗硬感”を熟練者が4段階評価(◎;非常にソフト、○;ソフト、△;さらさら感、×;やや粗硬)で10名にて官能判定を行う。
[梨地調感覚]
パイル布帛の表面および全体の梨地調視覚やボリューム感を”梨地調良好〜シャリ味・粗硬感”までを熟練者が4段階評価(◎;感覚優、○;感覚良、△;やや梨地調不足、×;シャリ味強く粗硬)で10名による官能判定を行う。
【0124】
[実施例1]
固有粘度0.66でTiO2を0.10重量%含有したポリエチレンテレフタレートチップを用いて溶融紡糸し、2500m/分の速度で引き取って高配向未延伸糸134dtex−144fil(フィラメント)の繊維A0を製造した。
【0125】
また、TiO2を0.10重量%含有した共重合体ポリエチレンテレフタレートチップを用いて溶融紡糸し、2000m/分の速度で引き取る。
【0126】
次いでその未延伸糸を2倍の延伸加工を施して高収縮糸84dtex−12filの繊維B0を製造した。
【0127】
この時の繊維B0単独の乾熱収縮率は、25%であった。
【0128】
前記、繊維A0を1.65倍程度のインドロー−2次セット仮撚加工により低捲縮加工糸とせしめる。
【0129】
連続して仮撚機上で高収縮マルチフィラメント糸B0を別給糸ローラにて供給、ガイドを介し交絡ノズルに供給して混繊交絡形態の複合加工糸を製造した。
【0130】
この時の低捲縮加工糸は、マルチフィラメント糸A単独での乾熱収縮率が4.1%であった。
【0131】
得られた複合加工糸は、ランダムに混繊交絡形態を示し、交絡部−非交絡部:3.5−4mm程度の共に長い交絡形態、ループ高さは最大2mm程度であった。
【0132】
複合加工糸の交絡数及び非交絡数は、1.4個及び1.5個/インチ。乾熱収縮率は、12.4%であった。
【0133】
上記複合加工糸をパイル糸としてトリコット機28ゲージ、グランド糸をテトロン84dtex−36fil、パイル糸を4振り組織により経編編成する。
【0134】
次に、染色工程を施して地染めと生地収縮させることによって該マルチフィラメント糸Aの仮撚低捲縮マルチフィラメント糸の多段差のあるルーピング形態を発現・形成させる。
【0135】
次いで起毛するエメリー加工工程に入り、多段差ルーピング形態のパイル表面の一部分のループのみを任意に切断し、カットパイルを起毛形成させる。カット面を揃えるために異常長なパイルをカットする煎毛工程を経て、起毛経編パイル布帛を製造した。
【0136】
得られた布帛は、梨地基調な外観と感触および非常にソフトな風合いを呈し、粒感と杢調の優れた高級なスェード調パイル布帛を得た。
【0137】
[実施例2]
実施例1の繊維A0、また、実施例1の繊維B0のポリエチレンテレフタレートチップを用いて溶融紡糸し、延伸倍率を高めに変更させた高収縮マルチフィラメント糸84dtex−12filのマルチフィラメント糸B0を製造した。
【0138】
この時の繊維B0単独の乾熱収縮率は、16.3%であった。
【0139】
以後の工程も実施例1の手法により複合加工糸を製造した。
【0140】
得られた複合糸は、ランダムに混繊交絡形態を示し、交絡部−非交絡部が共に長い交絡混合形態の複合糸となり、その特性は交絡数及び非交絡数が、1.3個及び1.2個/インチ。乾熱収縮率は、8.9%であった。
【0141】
布帛製造も実施例1同様の経編編成−染色−起毛−煎毛工程を経て起毛経編パイル布帛を製造した。
【0142】
得られた布帛は、梨地基調な外観と感触およびソフトな風合いを呈し、粒感と杢調の優れた高級なスェード調パイル布帛を得た。
【0143】
[実施例3]
実施例1のポリエチレンテレフタレートチップを用いて溶融紡糸、半延伸加工を施し、高配向未延伸糸141dtex−72filの繊維A0を製造した。
【0144】
同様に高収縮糸には、実施例1の84dtex−12filの繊維B0を用いる。
【0145】
繊維A0は実施例1同様にインドロー−2次セット仮撚加工により低捲縮加工糸を製造した。この時の繊維A単独での乾熱収縮率は、3.4%であった。
【0146】
複合加工糸の交絡数及び非交絡数は、1.2個及び1.4個/インチ。乾熱収縮率は、10.7%であった。
【0147】
繊維A単独の単糸繊度がやや太くなり、起毛量も当然少なくなると想定されるがソフト感や起毛タッチも遜色ない風合いであった。
【0148】
当実施例からファインマルチフィラメントに単繊維繊度が1.3デシテックスでも充分にスェード調パイル布帛として好まれるものが得られた。
【0149】
[比較例1]
実施例1の製造方法で得た複合糸、布帛を用いて染色加工後だけに止めてループパイルだけの状態でスェード調パイル布帛としての製品品位、風合いを評価した。ファインマルチフィラメントのソフトタッチな感触は得られはするものの起毛パイルの固まりが形成出来ないために粒感や杢感が発揮できずスェード調感覚なパイル布帛としては満足できるものではなかった。
【0150】
[比較例2]
実施例1の仮撚加工で得た低捲縮加工糸と同様な高収縮糸を用いて100T/Mの撚り数にて合撚加工を施した。これをパイル糸として実施例1同様の工程を経てパイル布帛を製造した。
【0151】
得られた複合糸は変化のない、すなわちランダム感の全くない構造を形成するものであった。更に工程を進め布帛の表面に起毛加工を施してパイル布帛を製造した。
【0152】
得られた複合糸は交絡部−非交絡部がないためにランダム感のないものであり、当然布帛化しても布帛の表面、内部にイレギュラーな収縮変化がないために梨地調な構造を得られなかった。さらに起毛パイルを発現させても表面全体を覆うだけでイレギュラーな起毛のランダムな粒−粒が構成されず単調な風合いとなってしまった。高級なスェード調感覚のパイル布帛を得るためには長い交絡部−非交絡部をランダムに形成する本発明の交絡処理法が重要であることが解る。
【0153】
本発明に用いた構成原糸及びパイル糸の物性結果を表1に示した。
【0154】
【表1】
Figure 2004197238
【0155】
本発明のパイル布帛の官能評価結果を表2に示した。
【0156】
【表2】
Figure 2004197238
【0157】
【発明の効果】
パイル布帛に収縮差のある合成繊維マルチフィラメント混繊交絡糸をパイル糸に用いて、該パイル糸は繊維長さ方向に拘束力差のある交絡部と非交絡部からなるランダムな構造を形成したもので、収縮応力の発現の際、交絡部と非交絡部
の高収縮糸は布帛内部に沈み込み、かつ交絡の強弱が拘束力にも差を生じさせるため、パイル内部ではイレギュラーな凹凸構造をもった梨地調形態を形成しうる。
【0158】
布帛パイル表面においては梨地調表面感とマルチフィラメント糸の多段差ループを形成し、その多段差ループパイルを部分的にカット起毛したカットパイルとカットパイル面より沈んだカットされない多段差ループパイルとを混在させたパイル構造を形成せしめることにより、梨地調外観およびソフトな風合いと粒感を発揮できるスェード調パイル布帛を得ることが可能となる。
【0159】
本発明のパイル布帛は、衣料用途を始め家具用椅子張材、自動車、電車などの車輛内装材など、多用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるパイル糸の側面における繊維の形状の一例を示すSEM写真であり、(1)は、パイル糸を乾熱170℃において3分間処理した後の定荷重下における形態を示したものであり、(2)は染色加工後の生地から採集したパイル糸の形態を示したものであり、(3)は起毛加工後の生地から採集したパイル糸の形態を示したものである。
【図2】本発明に適用するのパイル糸の製造工程の一例を示す工程図である。
【図3】本発明パイル布帛の表面の繊維の形状の一例を示すSEM写真であり、(1)は染色加工後の布帛の表面形態を示し、(2)は起毛加工後の布帛の表面形態を示す。
【図4】本発明パイル布帛の横断面における繊維の形状の一例を示すSEM写真であり、(1)は染色加工後の布帛の断面形態を示し、(2)は起毛加工後の布帛の断面形態を示す。
【符号の説明】
0:高配向未延伸糸
A:高配向未延伸糸の仮撚加工後の低収縮捲縮糸
A’:低収縮捲縮糸の起毛繊維
0:高収縮原糸
B:収縮後の高収糸
C:交絡部
D:非交絡部
1:高配向半延伸糸の供給ローラ
2:一次ヒーター
3:仮ヨリ具
4:第1送り出しローラ
5:二次ヒーター
6:第2送り出しローラ
7:ガイド
8:交絡ノズル
9:第3送り出しローラ
10:巻取ローラ
11:高収縮糸の給糸ローラ
12:チーズパッケージ

Claims (6)

  1. 収縮率差を有するポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸を含むパイル布帛において、上記合成繊維マルチフィラメント糸は糸の長さ方向に交絡部と非交絡部とをランダムに有し、上記非交絡部において、収縮率の高いフィラメント糸の外側に収縮率の低いフィラメント糸がループ状に形成されているとともに、上記ループ状に形成されたマルチフィラメント糸の比較的外層側のフィラメント糸がカットされたカットパイルを形成し、比較的内層側のフィラメント糸がカットされないループパイルを形成しており、かつ前記交絡部と非交絡部とで凹凸差を有してなることを特徴とするパイル布帛。
  2. 前記収縮率差を有するポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸の乾熱収縮率差が10%以上、低収縮フィラメント糸の乾熱収縮率が20%以下でかつ単繊維繊度が1.3デシテックス以下からなることを特徴とする請求項1に記載のパイル布帛。
  3. 前記ポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸は、糸の長さ方向に0.1g/1.1デシテックスの荷重を加えた時の交絡部、非交絡部の各部の個数が1インチ当たり1個以上存在することを特徴とする請求項1または2に記載のパイル布帛。
  4. 前記ポリエステル系合成繊維マルチフィラメント糸の交絡部の長さが1〜5mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパイル布帛。
  5. 内装材用であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のパイル布帛。
  6. 低収縮マルチフィラメント糸と高収縮マルチフィラメント糸とを同時に混繊交絡させて糸の長さ方向に交絡部と非交絡部とをランダムに形成せしめたポリエステル系合成繊維マルチフイラメント糸を用いて布帛となし、次いで、該布帛を熱処理して収縮率の高いフィラメント糸の外側に収縮率の低いフィラメント糸をループ状に形成させた後、前記ループ状に形成されたフィラメン糸の一部を起毛カットすることを特徴とするパイル布帛の製造方法。
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CN105506851A (zh) * 2014-09-24 2016-04-20 东丽纤维研究所(中国)有限公司 一种低弹经编面料及其用途
US20200087853A1 (en) * 2018-08-21 2020-03-19 Auria Solutions Uk I Ltd. Warp-Knit Structure Suitable For Vehicular Accessory Mat Or Cargo Management System

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