JP2004197142A - 成形性および強度に優れるアルミニウム合金材とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性および強度に優れ、低コストのAl合金材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】Mgを 5.3〜5.7% (質量%)、Cuを0.10〜0.25% 、Znを0.05%超え0.10%以下、Mnを0.05%以下、Feを0.15%以下、Siを0.10%以下、Crを0.01%以下含有するAl合金材であって、平均結晶粒径が30〜50μm、耐力が130MPa以上、伸びが30%以上、エリクセン値が10.0mm以上の成形性および強度に優れるAl合金材。
【効果】成形性および保形性を向上させる固溶Mg量を、Znを添加して増加させたものであり、従って本発明では成形性に有害な不純物元素の多い地金が使用でき原料費を安くできる。また本発明のAl合金材は、その平均結晶粒径を30〜50μm、伸びを30%以上に規定するのでエリクセン値10.0mm以上の成形性が得られ、さらに耐力を130MPa以上に規定するので保形性に優れる。従ってパソコン本体カバーなどの筐体類に好適である。
【選択図】 なし
【解決手段】Mgを 5.3〜5.7% (質量%)、Cuを0.10〜0.25% 、Znを0.05%超え0.10%以下、Mnを0.05%以下、Feを0.15%以下、Siを0.10%以下、Crを0.01%以下含有するAl合金材であって、平均結晶粒径が30〜50μm、耐力が130MPa以上、伸びが30%以上、エリクセン値が10.0mm以上の成形性および強度に優れるAl合金材。
【効果】成形性および保形性を向上させる固溶Mg量を、Znを添加して増加させたものであり、従って本発明では成形性に有害な不純物元素の多い地金が使用でき原料費を安くできる。また本発明のAl合金材は、その平均結晶粒径を30〜50μm、伸びを30%以上に規定するのでエリクセン値10.0mm以上の成形性が得られ、さらに耐力を130MPa以上に規定するので保形性に優れる。従ってパソコン本体カバーなどの筐体類に好適である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性および強度に優れ、低コストのアルミニウム(以下、適宜Alと記載する)合金材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気部品用筐体、パソコン本体のカバー、パソコン内蔵ケースなどの筐体類には鉄やステンレス材が使用されてきたが、近年、ノート型パソコンなどの普及に伴って軽量で携帯に便利なように、Al合金材が注目されるようになった。
【0003】
前記筐体類には、高度な成形性(張出成形性など)が要求されるため、前記Al合金材には、成形性に悪影響を及ぼす不純物元素(Fe、Siなど)の少ない純度が99.9%以上の高純度Al地金にMgを添加した5000系Al合金が提案されている。
しかし、高純度Al地金を用いたのでは十分な強度が得られず、アセンブリ時や使用時に変形し易く、保形性(形状保持性)に劣るという問題があった。また原料費が高くついた。
このようなことから、本発明者等は、成形性および強度に優れるAl合金材を種々探索し、Al−Mg−Cu−Zn系合金によれば、Al地金の純度を落としても、良好な成形性および強度が得られることを知見し、さらに検討を進めて本発明を完成させるに至った。
本発明の目的は、成形性および強度に優れ、低コストのAl合金材およびその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載発明は、Mgを5.3〜5.7質量%(以下%と略記する)、Cuを0.10〜0.25%、Znを0.05%超え0.10%以下、Mnを0.05%以下、Feを0.15%以下、Siを0.10%以下、Crを0.01%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金材であって、平均結晶粒径が30〜50μm、耐力が130MPa以上、伸びが30%以上、エリクセン値が10.0mm以上であることを特徴とする成形性および強度に優れるアルミニウム合金材である。
【0005】
請求項2記載発明は、Mgを5.3〜5.7%、Cuを0.10〜0.25%、Znを0.05%超え0.10%以下、Mnを0.05%以下、Feを0.15%以下、Siを0.10%以下、Crを0.01%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金素材に均質化処理、熱間圧延、冷間圧延をこの順に施し、冷間圧延後、500〜550℃の温度に10〜20秒間保持する連続焼鈍を施し、連続焼鈍後、100℃以下の温度まで100℃/分以上の冷却速度で冷却することを特徴とする成形性および強度に優れるアルミニウム合金材の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
請求項1発明は、Mg、Cu、Znを適量含有し、Fe、Si、Mn、Crの含有量を抑えたAl合金材で、純度が99.7%レベルの比較的安価なAl地金が使用でき、また平均結晶粒径を30〜50μm、伸びを30%以上に規定して、エリクセン値10.0mm以上の成形性を確保し、さらに耐力(0.2%耐力)を130MPa以上に規定して保形性を高めた、パソコン本体カバーなどの筐体類に適したAl合金材である。
【0007】
本発明において、Mgは主にAlマトリックスに固溶した分が、成形性および強度(耐力)の向上に寄与する。その含有量を5.3〜5.7%に規定する理由は、5.3%未満では、変形防止に必要な強度が十分に得られず、5.7%を超えると伸びが低下して十分な成形性が得られなくなるためである。
【0008】
Cuは固溶および析出して強度向上に寄与する。その含有量を0.10〜0.25%に規定する理由は、0.10%未満ではその効果が十分に得られず、0.25%を超えると耐食性が低下するためである。
【0009】
Znは、Mgの固溶量を増加させて、Mgの成形性および強度向上効果を助長する。その含有量を0.05%を超え0.10%以下に規定する理由は、0.05%以下ではその効果が十分に得られず、0.10%を超えると鋳造性が低下するためである。
【0010】
Mnは、固溶して強度向上に寄与するとともに、焼鈍工程で析出して結晶粒を適度に微細化して成形性を高める。その含有量を0.05%以下に規定する理由は、0.05%を超えると結晶粒が微細になり過ぎて成形性が低下するためである。
【0011】
Fe、Si、Crは固溶および析出して強度向上に寄与する。その量をそれぞれ0.15%以下、0.10%以下、0.01%以下に規定する理由は、前記上限値を超えると、FeおよびSiは伸びが低下して十分な成形性が得られなくなり、また鋳造性、圧延性および耐食性も低下するため、Crは鋳造性が低下するためである。
【0012】
この他、鋳塊組織微細化のために添加するTiおよびBはそれぞれ0.2%以下、0.04%以下であれば、特に支障はない。
【0013】
請求項1記載発明において、前記組成のAl合金材の平均結晶粒径を30〜50μmの範囲内に規定し、また伸びを30%以上に規定する理由は、結晶粒径が前記範囲外でも、また伸びが30%未満でもエリクセン値10.0mm以上の良好な成形性が得られないためである。また耐力(0.2%耐力)を130MPa以上に規定する理由は、耐力が130MPa未満ではアセンブリ時や使用時に筐体類が変形する恐れがあるためである。
【0014】
請求項2記載発明は、請求項1記載発明のAl合金材の製造方法である。
即ち、前記規定組成のAl合金の溶湯を常法により鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍をこの順に施す際、前記連続焼鈍条件を規定した製造方法である。
【0015】
請求項2記載発明において、前記Al合金は半連続鋳造法などの常法により鋳造することができる。前記鋳塊の均質化処理条件は、処理温度が450℃未満でも、処理時間が1時間未満でも十分に均質化されない場合があり、また600℃を超えると共晶組織部分が溶融する場合があり、いずれの場合も熱間圧延性が低下し、圧延材に割れが発生する恐れがある。また15時間を超えて均質化処理してもその効果が飽和し生産性が悪化するだけとなる。このため均質化処理は450〜600℃の温度で1〜15時間保持する条件で施すのが望ましい。
【0016】
請求項2記載発明において、熱間圧延および冷間圧延は常法により施すことができる。
また、請求項2記載発明では、前記冷間圧延後に連続焼鈍を施して、組織を適度な結晶粒径の再結晶組織とし、伸びを回復させ、またMgの固溶量を増加させて、エリクセン値10.0mm以上の成形性が確保される。前記Mgの固溶量増加により、耐力が高まり保形性も向上する。
【0017】
本発明において、前記連続焼鈍で、温度を500〜550℃、時間を10〜20秒に規定する理由は、温度が500℃未満でも、時間が10秒未満でも、結晶粒径および伸びが規定値を下回り、またMgの固溶量が不足して、エリクセン値10.0mm以上の十分な成形性が得られず、さらにMgの固溶量が不足して耐力が低下して十分な保形性が得られなくなるためである。
一方、温度が550℃を超えても、また時間が20秒を超えても、結晶粒径が50μmを超えるため十分な成形性が得られず、また耐力が130MPa未満となって保形性が低下するためである。なお保持時間を長くするのは、線速の低下または炉の大型化を要し不利である。
【0018】
本発明において、連続焼鈍後100℃までの冷却速度を100℃/分以上に規定する理由は、100℃/分未満では平均結晶粒径が50μmを超え、またβ相が生成して伸びが低下し、十分な成形性が得られなくなるためである。β相は強度も低下させる。前記連続焼鈍後の冷却には、空冷、水冷など任意の冷却方法が適用できる。
【0019】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
表1に示す本発明規定組成のAl合金を半連続鋳造法により鋳造して厚さ500mm、巾1200mm、長さ4000mmの鋳塊とし、前記鋳塊を550℃で4時間均質化処理し、その後、厚さ30mmまで熱間粗圧延し、次いで厚さ2.7mmまで熱間仕上圧延し、次いで厚さ0.6mmまで冷間圧延し、次いで連続焼鈍を施し、その後冷却(空冷)してAl合金材を製造した。
地金には、純度が99.7%レベルのものを用いた。前記連続焼鈍およびその後の冷却は本発明の規定条件で行った。
得られたAl合金材について、結晶粒径(再結晶粒径)、耐力、伸び、エリクセン値を下記方法により測定し評価した。
この他、鋳造性、圧延性、耐食性についても、常法により調査した。
【0020】
(1)結晶粒径はバーカー法により調べた。
即ち、各サンプルの表面を研削加工→電解研磨→エッチング処理(HBF4 液使用)し、偏光式画像処理装置により結晶組織を観察し、5mm×5mmの視野面積における結晶粒径を測定した。平均結晶粒径(n=5)が30〜50μmの範囲内のものを良好(○)、前記範囲を外れたものを不良(×)と評価した。
(2)耐力(0.2%耐力)および伸びは、Al合金材から5号試験片を切出し、JIS H 4000に準じて測定した。
耐力は、その平均値(n=3)が130MPa以上のものを良好(○)、130MPa未満のものを不良(×)と評価した。伸びは、その平均値(n=3)が30%以上のものを良好(○)、30%未満のものを不良(×)と評価した。
(3)エリクセン値はJIS B 7729 A法に準じて測定した。
即ち、Al合金材から切出した巾90mm、長さ300mmの試験片に20mmφの球頭張出治具を押込み、割れが発生したときの押込み深さを測定した。
エリクセン値は、その平均値(n=3)が10.0mm以上のものを良好(○)、10.0mm未満のものを不良(×)と評価した。
【0021】
(実施例2)
均質化処理を430℃または620℃で行った他は、実施例2と同じ方法により厚さ0.6mmのAl合金材を製造し、それらの特性を実施例1と同じ方法により測定し評価した。
【0022】
(比較例1)
表1に示す本発明規定外組成のAl合金を用いて、実施例1と同じ方法により厚さ0.6mmのAl合金材を製造し、その特性を実施例1と同じ方法により測定し評価した。
【0023】
(比較例2)
連続焼鈍を本発明規定外条件で施した他は、実施例1と同じ方法により厚さ0.6mmのAl合金材を製造し、その特性を実施例1と同じ方法により測定し評価した。
実施例1、2および比較例1、2の結果を、それぞれ表2、3に示す。表2、3には製造条件を併記した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
表2から明らかなように、実施例1のNo.1〜12は、いずれも、耐力、伸び、結晶粒径、エリクセン値が本発明規定値を満足し、筐体類に要求される張出成形性および保形性を十分満足するものであった。
また、実施例2のNo.1は均質化処理温度が低かったため均質化が若干不十分となり、No.2は均質化処理温度が高かったため共晶組織部分が局部的に溶融して、いずれも熱間圧延材に微細な圧延割れが発生した。しかし、これらの割れは冷間圧延前に手作業により容易に除去することができた。
【0028】
一方、表3から明らかなように、比較例1のNo.1はMgが少なかったため耐力が低下し、また結晶粒径が本発明規定値外となり保形性および張出成形性(エリクセン値)が劣った。またNo.2はMgが多かったため伸びが低下し張出成形性が劣った。
No.3はCuが少なかったため耐力が低下して保形性が劣った。またNo.4はCuが多かったため耐食性が劣った。
No.5はZnが少なかったためMgの固溶量が不足して保形性および張出成形性が劣った。またNo.6はZnが多かったため鋳造性が劣った。
No.7はMnが多かったため結晶粒径が細かくなり過ぎて張出成形性が劣った。またNo.8はFeが多く、No.9はSiが多かったため、いずれも、張出成形性に加え、鋳造性、圧延性および耐食性が劣った。No.10はCrが多かったため鋳造性が劣った。
【0029】
他方、比較例2のNo.1は連続焼鈍温度が低く、No.2は連続焼鈍時間が短かったため、いずれも結晶粒径が小さくなり、また伸びおよびMgの固溶量が低下して、張出成形性が劣った。No.3は連続焼鈍温度が高く、No.4は連続焼鈍時間が長く、No.5は冷却速度が遅かったため、いずれも結晶粒が大きくなり、また耐力が低下して、張出成形性および保形性が劣った。
【0030】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明のAl合金材はMg、Cu、Znを適量含有し、Mn、Fe、Si、Crの含有量を微量に抑えたAl合金からなり、成形性および保形性を向上させる固溶Mg量を、Znを添加して増加させたものであり、従って、本発明では成形性に有害な不純物元素の多い地金が使用でき原料費を安くできる。また本発明のAl合金材は、その平均結晶粒径を30〜50μm、伸びを30%以上に規定するのでエリクセン値10.0mm以上の成形性が得られ、さらに耐力を130MPa以上に規定するので保形性に優れる。従ってパソコン本体カバーなどの筐体類に好適である。前記Al合金材は前記Al合金素材に均質化処理、熱間圧延、冷間圧延をこの順に施し、その後、連続焼鈍を、焼鈍条件および焼鈍後の冷却速度を規定して施すことにより容易に製造できる。依って、工業上顕著な効果を奏する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性および強度に優れ、低コストのアルミニウム(以下、適宜Alと記載する)合金材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気部品用筐体、パソコン本体のカバー、パソコン内蔵ケースなどの筐体類には鉄やステンレス材が使用されてきたが、近年、ノート型パソコンなどの普及に伴って軽量で携帯に便利なように、Al合金材が注目されるようになった。
【0003】
前記筐体類には、高度な成形性(張出成形性など)が要求されるため、前記Al合金材には、成形性に悪影響を及ぼす不純物元素(Fe、Siなど)の少ない純度が99.9%以上の高純度Al地金にMgを添加した5000系Al合金が提案されている。
しかし、高純度Al地金を用いたのでは十分な強度が得られず、アセンブリ時や使用時に変形し易く、保形性(形状保持性)に劣るという問題があった。また原料費が高くついた。
このようなことから、本発明者等は、成形性および強度に優れるAl合金材を種々探索し、Al−Mg−Cu−Zn系合金によれば、Al地金の純度を落としても、良好な成形性および強度が得られることを知見し、さらに検討を進めて本発明を完成させるに至った。
本発明の目的は、成形性および強度に優れ、低コストのAl合金材およびその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載発明は、Mgを5.3〜5.7質量%(以下%と略記する)、Cuを0.10〜0.25%、Znを0.05%超え0.10%以下、Mnを0.05%以下、Feを0.15%以下、Siを0.10%以下、Crを0.01%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金材であって、平均結晶粒径が30〜50μm、耐力が130MPa以上、伸びが30%以上、エリクセン値が10.0mm以上であることを特徴とする成形性および強度に優れるアルミニウム合金材である。
【0005】
請求項2記載発明は、Mgを5.3〜5.7%、Cuを0.10〜0.25%、Znを0.05%超え0.10%以下、Mnを0.05%以下、Feを0.15%以下、Siを0.10%以下、Crを0.01%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金素材に均質化処理、熱間圧延、冷間圧延をこの順に施し、冷間圧延後、500〜550℃の温度に10〜20秒間保持する連続焼鈍を施し、連続焼鈍後、100℃以下の温度まで100℃/分以上の冷却速度で冷却することを特徴とする成形性および強度に優れるアルミニウム合金材の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
請求項1発明は、Mg、Cu、Znを適量含有し、Fe、Si、Mn、Crの含有量を抑えたAl合金材で、純度が99.7%レベルの比較的安価なAl地金が使用でき、また平均結晶粒径を30〜50μm、伸びを30%以上に規定して、エリクセン値10.0mm以上の成形性を確保し、さらに耐力(0.2%耐力)を130MPa以上に規定して保形性を高めた、パソコン本体カバーなどの筐体類に適したAl合金材である。
【0007】
本発明において、Mgは主にAlマトリックスに固溶した分が、成形性および強度(耐力)の向上に寄与する。その含有量を5.3〜5.7%に規定する理由は、5.3%未満では、変形防止に必要な強度が十分に得られず、5.7%を超えると伸びが低下して十分な成形性が得られなくなるためである。
【0008】
Cuは固溶および析出して強度向上に寄与する。その含有量を0.10〜0.25%に規定する理由は、0.10%未満ではその効果が十分に得られず、0.25%を超えると耐食性が低下するためである。
【0009】
Znは、Mgの固溶量を増加させて、Mgの成形性および強度向上効果を助長する。その含有量を0.05%を超え0.10%以下に規定する理由は、0.05%以下ではその効果が十分に得られず、0.10%を超えると鋳造性が低下するためである。
【0010】
Mnは、固溶して強度向上に寄与するとともに、焼鈍工程で析出して結晶粒を適度に微細化して成形性を高める。その含有量を0.05%以下に規定する理由は、0.05%を超えると結晶粒が微細になり過ぎて成形性が低下するためである。
【0011】
Fe、Si、Crは固溶および析出して強度向上に寄与する。その量をそれぞれ0.15%以下、0.10%以下、0.01%以下に規定する理由は、前記上限値を超えると、FeおよびSiは伸びが低下して十分な成形性が得られなくなり、また鋳造性、圧延性および耐食性も低下するため、Crは鋳造性が低下するためである。
【0012】
この他、鋳塊組織微細化のために添加するTiおよびBはそれぞれ0.2%以下、0.04%以下であれば、特に支障はない。
【0013】
請求項1記載発明において、前記組成のAl合金材の平均結晶粒径を30〜50μmの範囲内に規定し、また伸びを30%以上に規定する理由は、結晶粒径が前記範囲外でも、また伸びが30%未満でもエリクセン値10.0mm以上の良好な成形性が得られないためである。また耐力(0.2%耐力)を130MPa以上に規定する理由は、耐力が130MPa未満ではアセンブリ時や使用時に筐体類が変形する恐れがあるためである。
【0014】
請求項2記載発明は、請求項1記載発明のAl合金材の製造方法である。
即ち、前記規定組成のAl合金の溶湯を常法により鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍をこの順に施す際、前記連続焼鈍条件を規定した製造方法である。
【0015】
請求項2記載発明において、前記Al合金は半連続鋳造法などの常法により鋳造することができる。前記鋳塊の均質化処理条件は、処理温度が450℃未満でも、処理時間が1時間未満でも十分に均質化されない場合があり、また600℃を超えると共晶組織部分が溶融する場合があり、いずれの場合も熱間圧延性が低下し、圧延材に割れが発生する恐れがある。また15時間を超えて均質化処理してもその効果が飽和し生産性が悪化するだけとなる。このため均質化処理は450〜600℃の温度で1〜15時間保持する条件で施すのが望ましい。
【0016】
請求項2記載発明において、熱間圧延および冷間圧延は常法により施すことができる。
また、請求項2記載発明では、前記冷間圧延後に連続焼鈍を施して、組織を適度な結晶粒径の再結晶組織とし、伸びを回復させ、またMgの固溶量を増加させて、エリクセン値10.0mm以上の成形性が確保される。前記Mgの固溶量増加により、耐力が高まり保形性も向上する。
【0017】
本発明において、前記連続焼鈍で、温度を500〜550℃、時間を10〜20秒に規定する理由は、温度が500℃未満でも、時間が10秒未満でも、結晶粒径および伸びが規定値を下回り、またMgの固溶量が不足して、エリクセン値10.0mm以上の十分な成形性が得られず、さらにMgの固溶量が不足して耐力が低下して十分な保形性が得られなくなるためである。
一方、温度が550℃を超えても、また時間が20秒を超えても、結晶粒径が50μmを超えるため十分な成形性が得られず、また耐力が130MPa未満となって保形性が低下するためである。なお保持時間を長くするのは、線速の低下または炉の大型化を要し不利である。
【0018】
本発明において、連続焼鈍後100℃までの冷却速度を100℃/分以上に規定する理由は、100℃/分未満では平均結晶粒径が50μmを超え、またβ相が生成して伸びが低下し、十分な成形性が得られなくなるためである。β相は強度も低下させる。前記連続焼鈍後の冷却には、空冷、水冷など任意の冷却方法が適用できる。
【0019】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明する。
(実施例1)
表1に示す本発明規定組成のAl合金を半連続鋳造法により鋳造して厚さ500mm、巾1200mm、長さ4000mmの鋳塊とし、前記鋳塊を550℃で4時間均質化処理し、その後、厚さ30mmまで熱間粗圧延し、次いで厚さ2.7mmまで熱間仕上圧延し、次いで厚さ0.6mmまで冷間圧延し、次いで連続焼鈍を施し、その後冷却(空冷)してAl合金材を製造した。
地金には、純度が99.7%レベルのものを用いた。前記連続焼鈍およびその後の冷却は本発明の規定条件で行った。
得られたAl合金材について、結晶粒径(再結晶粒径)、耐力、伸び、エリクセン値を下記方法により測定し評価した。
この他、鋳造性、圧延性、耐食性についても、常法により調査した。
【0020】
(1)結晶粒径はバーカー法により調べた。
即ち、各サンプルの表面を研削加工→電解研磨→エッチング処理(HBF4 液使用)し、偏光式画像処理装置により結晶組織を観察し、5mm×5mmの視野面積における結晶粒径を測定した。平均結晶粒径(n=5)が30〜50μmの範囲内のものを良好(○)、前記範囲を外れたものを不良(×)と評価した。
(2)耐力(0.2%耐力)および伸びは、Al合金材から5号試験片を切出し、JIS H 4000に準じて測定した。
耐力は、その平均値(n=3)が130MPa以上のものを良好(○)、130MPa未満のものを不良(×)と評価した。伸びは、その平均値(n=3)が30%以上のものを良好(○)、30%未満のものを不良(×)と評価した。
(3)エリクセン値はJIS B 7729 A法に準じて測定した。
即ち、Al合金材から切出した巾90mm、長さ300mmの試験片に20mmφの球頭張出治具を押込み、割れが発生したときの押込み深さを測定した。
エリクセン値は、その平均値(n=3)が10.0mm以上のものを良好(○)、10.0mm未満のものを不良(×)と評価した。
【0021】
(実施例2)
均質化処理を430℃または620℃で行った他は、実施例2と同じ方法により厚さ0.6mmのAl合金材を製造し、それらの特性を実施例1と同じ方法により測定し評価した。
【0022】
(比較例1)
表1に示す本発明規定外組成のAl合金を用いて、実施例1と同じ方法により厚さ0.6mmのAl合金材を製造し、その特性を実施例1と同じ方法により測定し評価した。
【0023】
(比較例2)
連続焼鈍を本発明規定外条件で施した他は、実施例1と同じ方法により厚さ0.6mmのAl合金材を製造し、その特性を実施例1と同じ方法により測定し評価した。
実施例1、2および比較例1、2の結果を、それぞれ表2、3に示す。表2、3には製造条件を併記した。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
表2から明らかなように、実施例1のNo.1〜12は、いずれも、耐力、伸び、結晶粒径、エリクセン値が本発明規定値を満足し、筐体類に要求される張出成形性および保形性を十分満足するものであった。
また、実施例2のNo.1は均質化処理温度が低かったため均質化が若干不十分となり、No.2は均質化処理温度が高かったため共晶組織部分が局部的に溶融して、いずれも熱間圧延材に微細な圧延割れが発生した。しかし、これらの割れは冷間圧延前に手作業により容易に除去することができた。
【0028】
一方、表3から明らかなように、比較例1のNo.1はMgが少なかったため耐力が低下し、また結晶粒径が本発明規定値外となり保形性および張出成形性(エリクセン値)が劣った。またNo.2はMgが多かったため伸びが低下し張出成形性が劣った。
No.3はCuが少なかったため耐力が低下して保形性が劣った。またNo.4はCuが多かったため耐食性が劣った。
No.5はZnが少なかったためMgの固溶量が不足して保形性および張出成形性が劣った。またNo.6はZnが多かったため鋳造性が劣った。
No.7はMnが多かったため結晶粒径が細かくなり過ぎて張出成形性が劣った。またNo.8はFeが多く、No.9はSiが多かったため、いずれも、張出成形性に加え、鋳造性、圧延性および耐食性が劣った。No.10はCrが多かったため鋳造性が劣った。
【0029】
他方、比較例2のNo.1は連続焼鈍温度が低く、No.2は連続焼鈍時間が短かったため、いずれも結晶粒径が小さくなり、また伸びおよびMgの固溶量が低下して、張出成形性が劣った。No.3は連続焼鈍温度が高く、No.4は連続焼鈍時間が長く、No.5は冷却速度が遅かったため、いずれも結晶粒が大きくなり、また耐力が低下して、張出成形性および保形性が劣った。
【0030】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明のAl合金材はMg、Cu、Znを適量含有し、Mn、Fe、Si、Crの含有量を微量に抑えたAl合金からなり、成形性および保形性を向上させる固溶Mg量を、Znを添加して増加させたものであり、従って、本発明では成形性に有害な不純物元素の多い地金が使用でき原料費を安くできる。また本発明のAl合金材は、その平均結晶粒径を30〜50μm、伸びを30%以上に規定するのでエリクセン値10.0mm以上の成形性が得られ、さらに耐力を130MPa以上に規定するので保形性に優れる。従ってパソコン本体カバーなどの筐体類に好適である。前記Al合金材は前記Al合金素材に均質化処理、熱間圧延、冷間圧延をこの順に施し、その後、連続焼鈍を、焼鈍条件および焼鈍後の冷却速度を規定して施すことにより容易に製造できる。依って、工業上顕著な効果を奏する。
Claims (2)
- Mgを5.3〜5.7質量%(以下%と略記する)、Cuを0.10〜0.25%、Znを0.05%超え0.10%以下、Mnを0.05%以下、Feを0.15%以下、Siを0.10%以下、Crを0.01%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金材であって、平均結晶粒径が30〜50μm、耐力が130MPa以上、伸びが30%以上、エリクセン値が10.0mm以上であることを特徴とする成形性および強度に優れるアルミニウム合金材。
- Mgを5.3〜5.7%、Cuを0.10〜0.25%、Znを0.05%超え0.10%以下、Mnを0.05%以下、Feを0.15%以下、Siを0.10%以下、Crを0.01%以下含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金素材に均質化処理、熱間圧延、冷間圧延をこの順に施し、冷間圧延後、500〜550℃の温度に10〜20秒間保持する連続焼鈍を施し、連続焼鈍後、100℃以下の温度まで100℃/分以上の冷却速度で冷却することを特徴とする成形性および強度に優れるアルミニウム合金材の製造方法。
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CN103572119A (zh) * | 2013-11-05 | 2014-02-12 | 吴高峰 | 一种耐高温包装罐用铝合金板 |
CN106466947A (zh) * | 2015-08-21 | 2017-03-01 | 华为技术有限公司 | 一种复合材料及其制备方法 |
-
2002
- 2002-12-17 JP JP2002365244A patent/JP2004197142A/ja active Pending
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