JP2004197041A - 高分子感温体およびそれを用いた感温素子 - Google Patents
高分子感温体およびそれを用いた感温素子 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】電気的特性、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、耐湿性を満たす高分子感温体を提供することを目的としている。
【解決手段】ポリアミド樹脂と、粉砕化したポリアミドおよびポリエーテルの共重合体と、導電性付与材とを混錬配合したポリアミド組成物を有する高分子感温体とすることで、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を均一に分散させることが出来、すべての特性を満たすことが出来る。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリアミド樹脂と、粉砕化したポリアミドおよびポリエーテルの共重合体と、導電性付与材とを混錬配合したポリアミド組成物を有する高分子感温体とすることで、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を均一に分散させることが出来、すべての特性を満たすことが出来る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気採暖具などの可撓性温度センサや感温ヒータに用いる高分子感温体およびそれを用いた感温素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、高分子材料の電気的特性の温度依存性を利用して電気毛布や電気カーペットなどの電気採暖具の温度制御を行うことはよく知られており、高分子材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミド変性オレフィン樹脂混合物を用い、電気特性の温度依存性を改善するために導電性付与材を添加する方法がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、ポリエステル樹脂に、ポリオレフィンオキサイドに過塩素酸リチウムを添加したイオン導電性固体電解質を高分子材料として用いる方法も知られている(例えば、特許文献3参照))。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−45507号公報
【特許文献2】
特開平10−140004号公報
【特許文献3】
特開平8−78137号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、温度制御を行うための高分子材料には、(1)電気的特性の高い温度依存性、(2)電気的特性および機械的強度の耐熱安定性、(3)温度ヒューズすなわち高温低粘度溶融性、(4)低吸湿性もしくは吸湿時に電気的特性が変化しない、などの特性が要求される。
【0006】
しかしながら、前記従来のポリアミドおよびポリアミド混合物を高分子材料として用いた場合、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性は他の高分子材料より優れているが、ポリアミドは吸湿性が高く、ナイロン11やナイロン12などの吸湿性の少ないものでも1%程度の吸湿率を示すため、吸湿時の電気的特性の変化が大きく、周辺環境の湿度に影響されず正確に温度制御を行うことが難しいという課題があった。
【0007】
この吸湿の課題を解決するために、ポリエステル樹脂の高温低粘度溶融性を改善した方法でも、ポリエステル樹脂が1%程度の吸湿率を示すため、正確な温度制御を行うことは難しいという課題があり、またポリアミド以外の樹脂を用いた場合には、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性などの要求が満たされないという課題があった。
【0008】
また、ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基は導電性付与材を作用させるサイトも兼ねているため、吸湿の課題を解決するためにアミド基を減らすと、導電性付与材との作用が弱くなり、通電特性が悪くなるという課題もあった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、吸湿による影響が少なく、高感度で安定性のよい高分子感温体とそれを用いた感温素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の高分子感温体とそれを用いた感温素子は、ポリアミド樹脂と、粉砕したポリアミドおよびポリエーテルの共重合体と、導電性付与材とを混錬配合したポリアミド組成物を用いたものである。
【0011】
これにより、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を粉砕化することで、海島構造としてポリアミドの海にポリアミドおよびポリエーテル共重合体の島を均一に分散させることが出来、ポリアミドと導電性付与材で電気的特性および耐熱安定性の要求を満たし、吸湿量の少ないポリアミドおよびポリエーテルの共重合体で高分子感温体の吸湿量を低下させることで、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たす高分子感温体とそれを用いた感温素子を得るものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、ポリアミド樹脂と、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体樹脂と、導電性付与材とを配合したポリアミド組成物を有し、前記ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は粉砕した紛体状でポリアミド樹脂と混錬した高分子感温体としたことにより、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を粉砕化することで、海島構造としてポリアミドの海にポリアミドおよびポリエーテル共重合体の島を均一に分散させることが出来、ポリアミドと導電性付与材で電気的特性および耐熱安定性の要求を満たし、吸湿量の少ないポリアミドおよびポリエーテルの共重合体で高分子感温体の吸湿量を低下させることで、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たすものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ポリアミド樹脂に導電性付与材を配合し、これにポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を混錬した請求項1に記載の高分子感温体としたことにより、ポリアミド樹脂のアミド基と導電性付与材を作用させることで、ポリアミド樹脂と導電性付与材の結合を強固にすることができ、通電特性を向上させることが出来る。
【0014】
請求項3に記載の発明は、ポリアミドは、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン12−ナイロン40共重合体、N−アルキル置換アミドの少なくとも1種以上とする請求項1または2に記載の高分子感温体としたことにより、ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基の少ない吸湿性の低い高分子材料を用いて、さらに吸湿量の少ない高分子感温体を得、より耐湿性を高めることが出来る。
【0015】
請求項4に記載の発明は、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は、ポリアミド12もしくはポリアミド11からなるポリアミドと、ポリエチレングルコールもしくはポリテトラメチレングルコールからなるポリエーテルの共重合体とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、さらに吸湿量の少ない高分子感温体を得ることが出来、より一層、耐湿性を高めることが出来る。
【0016】
請求項5に記載の発明は、導電性付与材は、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステル−ホルムアルデヒド重縮合体とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、アルキルフェノールーホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステルーホルムアルデヒド重縮合体が、ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基に水分子の代わりに配位して吸湿性を低減させるとともに、アミド基に作用して感温性を増大することが出来る。
【0017】
請求項6に記載の発明は、導電性付与材は、よう化亜鉛および酸化亜鉛とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、よう化亜鉛の持つイオンキャリア性によりインピーダンスの温度依存性を高めるとともに、ポリアミドのアミド基に亜鉛錯体を形成し通電安定性を高め、熱的に安定化する。ところで、高温で長時間使用した場合には、よう化亜鉛により生じたよう素がよう素イオンとして電極に作用し、電気絶縁体であるよう化金属を生成し、電極間インピーダンス経時安定性が得にくくなるが、酸化亜鉛を配合することで、酸化亜鉛がよう素イオンの受容体となりよう化金属の生成を防止することが出来る。
【0018】
請求項7に記載の発明は、ポリアミド組成物は、ナフチルアミンもしくはヒンダードフェノールを含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、ナフチルアミン、ヒンダードフェノールの抗酸化性により耐熱安定性を高めることが出来る。
【0019】
請求項8に記載の発明は、ポリアミド組成物が、亜リン酸エステル系化合物を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、亜リン酸エステル系化合物のもつ酸化防止性と還元防錆作用により熱劣化性が抑制され、耐熱安定性を高めることが出来る。
【0020】
請求項9に記載の発明は、ポリアミド組成物に親水性イオンの移動を阻害するイオン移動障害剤を配合した請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、高分子感温体内部に分散したイオン移動阻害剤により親水性である水分子の高分子感温体への進入を阻害し、吸湿による影響を小さくするとともに、イオン移動阻害剤は通電時の導電性付与剤の移動も阻害するため、通電特性が安定する。
【0021】
請求項10に記載の発明は、イオン移動障害剤は、極性基を持たない撥水剤とする請求項9に記載の高分子感温体としたことにより、水分子の高分子感温体への進入を阻害し、吸湿による影響を小さくすることが出来る。
【0022】
請求項11に記載の発明は、同芯状に設けた一対の電極と、前記電極間に設けた請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子感温体と、前記電極の外側に設けた遮湿性絶縁外被層からなる感温素子としたことにより、電極間に通電し高分子感温体のインピーダンスを測定することで、温度を制御することが出来る。また、周辺環境中の水分子は遮湿性絶縁外被層で通過を阻止され、高分子感温体の吸湿を防止することが出来る。
【0023】
請求項12に記載の発明は、遮湿性絶縁外被層は、少なくともポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、共重合フッ素樹脂、ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデンなどの遮湿性の高い絶縁材料からなる請求項11に記載の感温素子としたことにより、1つの層で高分子感温体の吸湿防止と感温素子の絶縁を行うことが出来、製造工程を大幅に変更する必要がなくなる。
【0024】
請求項13に記載の発明は、遮湿性絶縁外被層は、絶縁材の表面に撥水剤を被覆した構成とした請求項11に記載の感温素子としたことにより、絶縁材表面の撥水剤が水分子の進入を防止し、高分子感温体の吸湿を防止することが出来るとともに、従来の感温素子の絶縁材を用いることもでき、製造工程を大幅に変更する必要がなくなる。
【0025】
請求項14に記載の発明は、遮湿性絶縁外被層は、絶縁材に撥水剤を練り込んだ請求項11に記載の感温素子としたことにより、絶縁材に練り込んだ撥水剤が水分子の進入を防止し、高分子感温体の吸湿を防止することが出来るとともに、耐湿安定性を高めることが出来る。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0027】
(実施例1)
本実施例における高分子感温体のポリアミド組成物は、ポリアミド樹脂と、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体の混合物100重量部に、ポリアミドを50ないし80重量%、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を50ないし20重量%配合し、導電性付与材を5ないし30重量部配合したものである。そして、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は、混錬前に粉砕化し粉体としてポリアミド樹脂と混錬するものである。
【0028】
ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は、50重量%より多いと組成物の温度ヒューズ機能および通電安定性を損ない、20重量%より少ないと湿度に対する耐湿性の効果が低くなる。導電性付与材は、5重量部より少ないと効果が低く、30重量部より多いと組成物の性質を著しく損なう。
【0029】
ポリアミドのアミド基に導電性付与材が作用して、静電容量、電気抵抗値、インピーダンスなどの電気的特性の温度依存性が増加し、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を配合することで、ポリアミド組成物中のポリアミドの水素結合サイトであるアミド基を減らすことが出来るため、吸湿による影響が少なく高感度で安定性のよい温度検知を行うことが出来、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たす高分子感温体を得ることが出来る。
【0030】
また、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を粉砕化して混錬することで、ポリアミドの海に対してポリアミドおよびポリエーテル共重合体を島として均一に分散することが出来、均一分散した海島構造を得ることが出来る。これは、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体をペレットの状態で混錬した時の組成物とを比較して、透過型電子顕微鏡により観察した結果、明らかである。
【0031】
(実施例2)
次に実施例2について説明する。実施例2において実施例1と異なる点は、ポリアミド樹脂に導電性付与材を配合した後に、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を混合することである。
【0032】
ポリアミド樹脂に導電性付与材を配合し、ポリアミド樹脂のアミド基と導電性付与材を作用させてからポリアミドおよびポリエーテル共重合体を混合することで、導電性付与材のアミド基との結合作用を強固にすることができ、通電安定性性を向上させることが出来る。
【0033】
(実施例3)
次に実施例3について説明する。実施例3において実施例1および2と異なる点はポリアミドに吸湿性の低いナイロンを用いた点である。
【0034】
ポリアミドとして、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン12−ナイロン40共重合体、N−アルキル置換アミドなどの少なくとも1種以上とするものである。ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基の少ない吸湿性の低い高分子材料を用いることで、さらに吸湿量の少ない高分子感温体を得ることが出来、より耐湿性を高めることが出来る。
【0035】
(実施例4)
次に実施例4について説明する。実施例4において実施例1〜3と異なる点は、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体のポリアミドに、ポリアミド12もしくはポリアミド11などの吸湿性の低い高分子材料を用い、ポリエーテルにポリエチレングルコールもしくはポリテトラメチレングルコールを用いることで、さらに吸湿量の少ない高分子感温体を得ることが出来、より耐湿性を高めることが出来る。
【0036】
(実施例5)
次に実施例5について説明する。実施例5において実施例1〜4と異なる点は、導電性付与材にアルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステルーホルムアルデヒド重縮合体を用いた点である。
【0037】
導電性付与材としては、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステル−ホルムアルデヒド重縮合体として、p−オキシ安息香酸オクチルエステルーアルデヒド重縮合体、p−オキシ安息香酸イソステアリルエステル−ホルムアルデヒド重縮合体、p−オキシ安息香酸アルキルエステル、p−ドデシルフェノール−アルデヒド重縮合体、p−クロロフェノール−アルデヒド重縮合体、p−ヒドロキシ安息香酸アルキルエステルのホルムアルデヒド重縮合体を用いることが出来る。導電性付与材は、ポリアミドと、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体の混合物100重量部に対して、5ないし30重量部配合されるもので、5重量部より少ないと効果が低く、30重量部より多いと組成物の性質を著しく損なう。
【0038】
アルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステル−ホルムアルデヒド重縮合体はポリアミドと相溶性がよく、ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基に水分子の代わりに配位して吸湿性を低減させるととも、アミド基に作用して感温性を増大することが出来る。
【0039】
(実施例6)
次に実施例6について説明する。実施例6において実施例1〜5と異なる点は、導電性付与材によう化亜鉛および酸化亜鉛を用いたことである。
【0040】
導電性付与材として、熱安定性の高いよう化亜鉛を、ポリアミド樹脂とポリアミドおよびポリエーテルの共重合体混合物100重量部に対し、0.01ないし30重量部配合した。よう化亜鉛は0.01重量部より少ないと増感性および通電安定効果が低く、30重量部より多いと組成物の物理的性質を著しく損なう。
【0041】
また、高温度で長時間使用した場合によう化亜鉛より生じるよう素イオンの受容体として粒子径が0.1ないし0.5μmの酸化亜鉛粉末を、ポリアミド樹脂とポリアミドおよびポリエーテルの共重合体混合物100重量部に対し、0.01ないし30重量部配合した。酸化亜鉛は0.01重量部より少ないと増感性および通電安定効果が低く、30重量部より多いと組成物の物理的性質を著しく損なう。
【0042】
さらに、電極とポリアミド組成物の界面安定化剤としての金属不活性化剤として、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイドヒドラジンやN,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンや1,2,3ベンゾトリアゾールまたはその誘導体として1ーヒドロキシメチルベンゾトリアゾールや1,2−ジカルボキシエチルベンゾトリアゾールを用いた。
【0043】
よう化亜鉛はよう化亜鉛の持つイオンキャリア性によりインピーダンスの温度依存性を高めるとともに、ポリアミドのアミド基に亜鉛錯体を形成し通電安定性を高め、熱的に安定化する。ところで、高温で長時間使用した場合には、よう化亜鉛により生じたよう素がよう素イオンとして電極に作用し、電気絶縁体であるよう化金属を生成し、電極間インピーダンス経時安定性が得にくくなる。酸化亜鉛を配合することで、酸化亜鉛がよう素イオンの受容体となり、よう化金属の生成を防止することができ、さらに酸化亜鉛はよう化亜鉛を生成し通電安定性を向上させる。また、金属不活性化剤を配合することで、電極とポリアミド組成物との界面の電気抵抗値を安定化させることが出来る。
【0044】
(実施例7)
次に実施例7について説明する。実施例7において実施例1〜6と異なる点は、ポリアミド組成物にナフチルアミンもしくはヒンダードフェノールを配合したことである。
【0045】
ヒンダードフェノールとしてトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]またはペンタエリスリチルーテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などとナフチルアミンが用いられ、ヒンダードフェノールやナフチルアミンの恒酸化性により耐熱安定性を高めることが出来る。
【0046】
(実施例8)
次に実施例8について説明する。実施例8において実施例1〜7と異なる点は、ポリアミド組成物に亜リン酸エステル系化合物を配合したことである。
【0047】
亜リン酸エステル系化合物としては、分子量が高く不揮発性に優れ、リン酸濃度が適当なテトラフェニルジプロピレングリコールホスファイトやテトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、および水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマーが用いられる。亜リン酸エステル系化合物のもつ酸化防止性と還元防錆作用により熱劣化性が抑制され、耐熱安定性を高めることが出来る。
【0048】
(実施例9)
次に実施例9について説明する。実施例9において実施例1〜8と異なる点は、ポリアミド組成物に親水性イオンの移動を阻害するイオン移動障害剤を配合した点である。
【0049】
ポリアミド組成物100重量部に対して、イオン移動障害剤を1から10重量部配合したポリアミド組成物を用いる。イオン移動障害剤は1重量部より少ないとイオン移動障害効果が低く、10重量部より多く配合すると、ポリアミドとの混合が不均一になり高分子感温体の強度物性が低下してしまう。
【0050】
次に作用について説明する。ポリアミド樹脂のアミド基に導電性付与剤が作用して、静電容量、電気抵抗値、インピーダンスなどの電気的特性の温度依存性が増加する。親水性のイオン移動を阻害するイオン移動障害剤を配合することで、ポリアミドおよびポリアミド組成物中のポリアミドの水素結合サイトであるアミド基への水分子の進入を阻害することが出来る。よって吸湿による影響が少なく高感度で安定性のよい温度検知を行うことが出来る。
【0051】
また、イオン移動障害剤は、通電時の導電性付与剤の移動も阻害するため通電安定性が高まり、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たす高分子感温体を得ることが出来る。
【0052】
(実施例10)
実施例10について説明する。実施例10では、イオン移動障害剤に4ふっ化エチレン樹脂または、熱可塑性シリコーンなどの極性基をもたない撥水剤を用いた。
【0053】
4ふっ化エチレン樹脂は、ポリアミド組成物の中で優れた潤滑性、撥水性を示すので、高分子感温体全体として水分子の吸着を防止することが出来る。4ふっ化エチレンは、単独で−200℃から+250℃の広い範囲で潤滑作用を示すので、長期安定性に優れる。
【0054】
熱可塑性シリコーンは、室温では固体状を示し、軟化温度85〜105℃を有する。室温では固形状であるためにポリアミド粉末と機械的に混合した後、2軸押し出し機等の溶融混練り機で、ポリアミド樹脂に練り込ませながら均一に配合させることが出来る。このため、高分子感温体内にイオン移動障害物質を分散させることが出来る。
【0055】
イオン移動障害剤は、親水性である水分子の高分子感温体への進入を阻害することで、高分子感温体全体内部から吸湿量を低減して、長期的且つ安定的に耐湿性能を保持させることが出来る。また、通電時には、イオン移動障害剤は通電の影響を受けないため、導電性付与剤の移動を阻害するバリヤとして働き、通電特性を安定化することが出来る。
【0056】
4ふっ化エチレン樹脂粉体や熱可塑性シリコーンは、ポリアミド組成物100重量部に対して、1重量部から10重量部の範囲で配合される。1重量部未満ではイオン移動障害効果が低く、10重量部より多く配合すると、ポリアミド樹脂との混合が不均一になり高分子感温体の強度物性が低下してしまう。
【0057】
高分子感温体評価のため、実施例1から10のポリアミド組成物を配合し、押し出し機により混練した後、加熱プレスで70mm×70mm、厚さ0.8mmのシートに成形し、その両面に銀塗布電極を設けて作成した試料を用いて、インピーダンスの温度依存性、耐湿性、半波通電安定性を測定した結果を(表1)に示す。
【0058】
インピーダンスの温度依存性は40℃ないし80℃のサーミスタB定数で、半波通電安定性は100℃における初期のインピーダンスと80℃で50vの半波通電を200時間行った後のインピーダンスの温度差ΔTzで表した。耐湿性は45℃における初期インピーダンスと45℃、95RH%で72時間放置後のインピーダンスの温度差ΔTwで表した。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例11)
図1は本発明の実施例11における感温素子の構成を示す。
【0061】
図において、1は1500デニールのポリエステル芯線、2、4は銅、アルミニウム、金、白金、パラジウム、銀、錫、半田、ニッケル、ステンレス、チタン、インジウムなどの巻き線による電極線、3は電極線2と4の間に配設された高分子感温体であり、上記実施例1〜10のいずれか1項に記載の構成のものである。5は遮湿性絶縁外被層である。
【0062】
次に動作、作用について説明する。高分子感温体3は温度によって静電容量、電気抵抗値、インピーダンスなどの電気的特性が変化するため、電極線2、4間に通電し高分子感温体3の電気的特性を測定することで温度を検知し、電気毛布、電気カーペットなどの電気採暖具の温度制御を行うことが出来る。周辺環境中の水分子は遮湿性絶縁外被層5によって通過を阻止され、高分子感温体3の吸湿を防止することが出来るため、高分子感温体3には電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性の要求が満たされるナイロン6、ナイロン11、ナイロン12などの高分子材料を用いることが出来、周辺環境の影響を受けず高感度で安定性の良い温度制御を行うことが出来る。
【0063】
(実施例12)
次に実施例12について説明する。実施例12において実施例11と異なる点は、遮湿性絶縁外被層2を遮湿性の高い絶縁材料で構成したことである。
【0064】
遮湿性絶縁外被層5は、少なくともポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、共重合フッ素樹脂、ふつ化ビニル、ふつ化ビニリデンなどの遮湿性の高い絶縁材料で構成されている。
【0065】
従来から絶縁層として用いられている塩化ビニル絶縁材の水蒸気透過量は、ASTME96〜66(37.8℃)による測定によると、2g・m−2・24h−1・mm−1(厚さ)以上であるのに対し、ポリ塩化ビニリデン絶縁材の水蒸気透過量は0.1〜0.3g・m−2・24h−1・mm−1、ポリプロピレン絶縁材で0.14g・m−2・24h−1・mm−1、ふつ化ビニル絶縁材は0.01〜0.02g・m−2・24h−1・mm−1と非常に小さく、遮湿性絶縁外被層5をポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、共重合フッ素樹脂、ふつ化ビニル、ふつ化ビニリデンなどの遮湿性の高い絶縁材料で構成することで、1つの層で高分子感温体の吸湿防止と感温素子の絶縁を行うことが出来、従来の製造工程を大幅に変更することなく、高感度で安定性の良い温度制御が行える感温素子を得ることが出来る。
【0066】
(実施例13)
次に実施例13について説明する。実施例12において実施例10、11と異なる点は、遮湿性絶縁外被層5は絶縁材の表面に撥水剤を被覆した構成としたことである。
【0067】
遮湿性絶縁外被層5は、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁材の表面に高級脂肪酸誘導体やシリコーン樹脂などの撥水剤で被覆した構成とすることで、絶縁材表面の撥水剤が水分子の進入を防止し、高分子感温体の吸湿を防止することが出来るとともに、従来の感温素子の絶縁材を用いることもでき、製造工程を大幅に変更する必要がなくなる。
【0068】
(実施例14)
次に実施例14について説明する。実施例14において実施例10〜13と異なる点は、遮湿性絶縁外被層5は絶縁材に撥水剤を練り込んだ構成としたことである。
【0069】
遮湿性絶縁外被層5は、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁材に高級脂肪酸誘導体やシリコーン樹脂などの撥水剤を練り込んだ構成とすることで、絶縁材に練り込んだ撥水剤が水分子の進入を防止し、高分子感温体の吸湿を防止することが出来るとともに、耐湿安定性を高めることが出来る。
【0070】
感温素子の評価のために、高分子感温体3としてナイロン12(70重量部)、ポリアミドポリエーテル共重合物(30重量部)、pヒドロキシヒドロキシ安息香酸アルキルエステルのホルムアルデヒド重縮合体(15重量部)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(0.5重量部)、テトラフェニルジプロピレングリコールホスファイト(1重量部)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](1重量部)よりなるポリアミド組成物を用い、図1に示す感温素子を作成した。遮湿性絶縁外被層5にはポリ塩化ビニリデンを用いた。
【0071】
インピーダンスの温度依存性は40℃ないし80℃のサーミスタB定数で、耐熱安定性は100℃における空気加熱老化試験をダンベル試験片で行い降伏点強度半減する時間で評価し、さらに、100℃における初期のインピーダンスと80℃で50vの半波通電を1000時間行った後のインピーダンスの温度差ΔTzで表した。耐湿性は45℃における初期インピーダンスと45℃、95RH%で72時間放置後のインピーダンスの温度差ΔTwで表した。これらの結果を、比較のために遮湿性絶縁外被層5をポリ塩化ビニルで構成したものについても(表2)に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
以上のように本発明によれば、インピーダンスの温度依存性、耐熱安定性を低下させることなく、耐湿性を高めた感温素子を得ることが出来る。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、本発明の高分子感温体およびそれを用いた感温素子は、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を粉砕し粉体状でポリアミド樹脂に混練することにより、海島構造としてポリアミドの海にポリアミドおよびポリエーテル共重合体の島を均一に分散させることが出来、ポリアミドと導電性付与材で電気的特性および耐熱安定性の要求を満たし、吸湿量の少ないポリアミドおよびポリエーテルの共重合体で高分子感温体の吸湿量を低下させることで、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たす高分子感温体とそれを用いた感温素子を得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における感温素子の構成を示す斜視図
【符号の説明】
1 ポリエステル芯線
2、4 電極線
3 高分子感温体
5 遮湿性絶縁外被層
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気採暖具などの可撓性温度センサや感温ヒータに用いる高分子感温体およびそれを用いた感温素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、高分子材料の電気的特性の温度依存性を利用して電気毛布や電気カーペットなどの電気採暖具の温度制御を行うことはよく知られており、高分子材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミド変性オレフィン樹脂混合物を用い、電気特性の温度依存性を改善するために導電性付与材を添加する方法がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、ポリエステル樹脂に、ポリオレフィンオキサイドに過塩素酸リチウムを添加したイオン導電性固体電解質を高分子材料として用いる方法も知られている(例えば、特許文献3参照))。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−45507号公報
【特許文献2】
特開平10−140004号公報
【特許文献3】
特開平8−78137号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、温度制御を行うための高分子材料には、(1)電気的特性の高い温度依存性、(2)電気的特性および機械的強度の耐熱安定性、(3)温度ヒューズすなわち高温低粘度溶融性、(4)低吸湿性もしくは吸湿時に電気的特性が変化しない、などの特性が要求される。
【0006】
しかしながら、前記従来のポリアミドおよびポリアミド混合物を高分子材料として用いた場合、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性は他の高分子材料より優れているが、ポリアミドは吸湿性が高く、ナイロン11やナイロン12などの吸湿性の少ないものでも1%程度の吸湿率を示すため、吸湿時の電気的特性の変化が大きく、周辺環境の湿度に影響されず正確に温度制御を行うことが難しいという課題があった。
【0007】
この吸湿の課題を解決するために、ポリエステル樹脂の高温低粘度溶融性を改善した方法でも、ポリエステル樹脂が1%程度の吸湿率を示すため、正確な温度制御を行うことは難しいという課題があり、またポリアミド以外の樹脂を用いた場合には、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性などの要求が満たされないという課題があった。
【0008】
また、ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基は導電性付与材を作用させるサイトも兼ねているため、吸湿の課題を解決するためにアミド基を減らすと、導電性付与材との作用が弱くなり、通電特性が悪くなるという課題もあった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、吸湿による影響が少なく、高感度で安定性のよい高分子感温体とそれを用いた感温素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の高分子感温体とそれを用いた感温素子は、ポリアミド樹脂と、粉砕したポリアミドおよびポリエーテルの共重合体と、導電性付与材とを混錬配合したポリアミド組成物を用いたものである。
【0011】
これにより、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を粉砕化することで、海島構造としてポリアミドの海にポリアミドおよびポリエーテル共重合体の島を均一に分散させることが出来、ポリアミドと導電性付与材で電気的特性および耐熱安定性の要求を満たし、吸湿量の少ないポリアミドおよびポリエーテルの共重合体で高分子感温体の吸湿量を低下させることで、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たす高分子感温体とそれを用いた感温素子を得るものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、ポリアミド樹脂と、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体樹脂と、導電性付与材とを配合したポリアミド組成物を有し、前記ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は粉砕した紛体状でポリアミド樹脂と混錬した高分子感温体としたことにより、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を粉砕化することで、海島構造としてポリアミドの海にポリアミドおよびポリエーテル共重合体の島を均一に分散させることが出来、ポリアミドと導電性付与材で電気的特性および耐熱安定性の要求を満たし、吸湿量の少ないポリアミドおよびポリエーテルの共重合体で高分子感温体の吸湿量を低下させることで、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たすものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ポリアミド樹脂に導電性付与材を配合し、これにポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を混錬した請求項1に記載の高分子感温体としたことにより、ポリアミド樹脂のアミド基と導電性付与材を作用させることで、ポリアミド樹脂と導電性付与材の結合を強固にすることができ、通電特性を向上させることが出来る。
【0014】
請求項3に記載の発明は、ポリアミドは、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン12−ナイロン40共重合体、N−アルキル置換アミドの少なくとも1種以上とする請求項1または2に記載の高分子感温体としたことにより、ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基の少ない吸湿性の低い高分子材料を用いて、さらに吸湿量の少ない高分子感温体を得、より耐湿性を高めることが出来る。
【0015】
請求項4に記載の発明は、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は、ポリアミド12もしくはポリアミド11からなるポリアミドと、ポリエチレングルコールもしくはポリテトラメチレングルコールからなるポリエーテルの共重合体とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、さらに吸湿量の少ない高分子感温体を得ることが出来、より一層、耐湿性を高めることが出来る。
【0016】
請求項5に記載の発明は、導電性付与材は、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステル−ホルムアルデヒド重縮合体とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、アルキルフェノールーホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステルーホルムアルデヒド重縮合体が、ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基に水分子の代わりに配位して吸湿性を低減させるとともに、アミド基に作用して感温性を増大することが出来る。
【0017】
請求項6に記載の発明は、導電性付与材は、よう化亜鉛および酸化亜鉛とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、よう化亜鉛の持つイオンキャリア性によりインピーダンスの温度依存性を高めるとともに、ポリアミドのアミド基に亜鉛錯体を形成し通電安定性を高め、熱的に安定化する。ところで、高温で長時間使用した場合には、よう化亜鉛により生じたよう素がよう素イオンとして電極に作用し、電気絶縁体であるよう化金属を生成し、電極間インピーダンス経時安定性が得にくくなるが、酸化亜鉛を配合することで、酸化亜鉛がよう素イオンの受容体となりよう化金属の生成を防止することが出来る。
【0018】
請求項7に記載の発明は、ポリアミド組成物は、ナフチルアミンもしくはヒンダードフェノールを含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、ナフチルアミン、ヒンダードフェノールの抗酸化性により耐熱安定性を高めることが出来る。
【0019】
請求項8に記載の発明は、ポリアミド組成物が、亜リン酸エステル系化合物を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、亜リン酸エステル系化合物のもつ酸化防止性と還元防錆作用により熱劣化性が抑制され、耐熱安定性を高めることが出来る。
【0020】
請求項9に記載の発明は、ポリアミド組成物に親水性イオンの移動を阻害するイオン移動障害剤を配合した請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子感温体としたことにより、高分子感温体内部に分散したイオン移動阻害剤により親水性である水分子の高分子感温体への進入を阻害し、吸湿による影響を小さくするとともに、イオン移動阻害剤は通電時の導電性付与剤の移動も阻害するため、通電特性が安定する。
【0021】
請求項10に記載の発明は、イオン移動障害剤は、極性基を持たない撥水剤とする請求項9に記載の高分子感温体としたことにより、水分子の高分子感温体への進入を阻害し、吸湿による影響を小さくすることが出来る。
【0022】
請求項11に記載の発明は、同芯状に設けた一対の電極と、前記電極間に設けた請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子感温体と、前記電極の外側に設けた遮湿性絶縁外被層からなる感温素子としたことにより、電極間に通電し高分子感温体のインピーダンスを測定することで、温度を制御することが出来る。また、周辺環境中の水分子は遮湿性絶縁外被層で通過を阻止され、高分子感温体の吸湿を防止することが出来る。
【0023】
請求項12に記載の発明は、遮湿性絶縁外被層は、少なくともポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、共重合フッ素樹脂、ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデンなどの遮湿性の高い絶縁材料からなる請求項11に記載の感温素子としたことにより、1つの層で高分子感温体の吸湿防止と感温素子の絶縁を行うことが出来、製造工程を大幅に変更する必要がなくなる。
【0024】
請求項13に記載の発明は、遮湿性絶縁外被層は、絶縁材の表面に撥水剤を被覆した構成とした請求項11に記載の感温素子としたことにより、絶縁材表面の撥水剤が水分子の進入を防止し、高分子感温体の吸湿を防止することが出来るとともに、従来の感温素子の絶縁材を用いることもでき、製造工程を大幅に変更する必要がなくなる。
【0025】
請求項14に記載の発明は、遮湿性絶縁外被層は、絶縁材に撥水剤を練り込んだ請求項11に記載の感温素子としたことにより、絶縁材に練り込んだ撥水剤が水分子の進入を防止し、高分子感温体の吸湿を防止することが出来るとともに、耐湿安定性を高めることが出来る。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0027】
(実施例1)
本実施例における高分子感温体のポリアミド組成物は、ポリアミド樹脂と、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体の混合物100重量部に、ポリアミドを50ないし80重量%、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を50ないし20重量%配合し、導電性付与材を5ないし30重量部配合したものである。そして、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は、混錬前に粉砕化し粉体としてポリアミド樹脂と混錬するものである。
【0028】
ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は、50重量%より多いと組成物の温度ヒューズ機能および通電安定性を損ない、20重量%より少ないと湿度に対する耐湿性の効果が低くなる。導電性付与材は、5重量部より少ないと効果が低く、30重量部より多いと組成物の性質を著しく損なう。
【0029】
ポリアミドのアミド基に導電性付与材が作用して、静電容量、電気抵抗値、インピーダンスなどの電気的特性の温度依存性が増加し、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を配合することで、ポリアミド組成物中のポリアミドの水素結合サイトであるアミド基を減らすことが出来るため、吸湿による影響が少なく高感度で安定性のよい温度検知を行うことが出来、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たす高分子感温体を得ることが出来る。
【0030】
また、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を粉砕化して混錬することで、ポリアミドの海に対してポリアミドおよびポリエーテル共重合体を島として均一に分散することが出来、均一分散した海島構造を得ることが出来る。これは、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体をペレットの状態で混錬した時の組成物とを比較して、透過型電子顕微鏡により観察した結果、明らかである。
【0031】
(実施例2)
次に実施例2について説明する。実施例2において実施例1と異なる点は、ポリアミド樹脂に導電性付与材を配合した後に、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を混合することである。
【0032】
ポリアミド樹脂に導電性付与材を配合し、ポリアミド樹脂のアミド基と導電性付与材を作用させてからポリアミドおよびポリエーテル共重合体を混合することで、導電性付与材のアミド基との結合作用を強固にすることができ、通電安定性性を向上させることが出来る。
【0033】
(実施例3)
次に実施例3について説明する。実施例3において実施例1および2と異なる点はポリアミドに吸湿性の低いナイロンを用いた点である。
【0034】
ポリアミドとして、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン12−ナイロン40共重合体、N−アルキル置換アミドなどの少なくとも1種以上とするものである。ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基の少ない吸湿性の低い高分子材料を用いることで、さらに吸湿量の少ない高分子感温体を得ることが出来、より耐湿性を高めることが出来る。
【0035】
(実施例4)
次に実施例4について説明する。実施例4において実施例1〜3と異なる点は、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体のポリアミドに、ポリアミド12もしくはポリアミド11などの吸湿性の低い高分子材料を用い、ポリエーテルにポリエチレングルコールもしくはポリテトラメチレングルコールを用いることで、さらに吸湿量の少ない高分子感温体を得ることが出来、より耐湿性を高めることが出来る。
【0036】
(実施例5)
次に実施例5について説明する。実施例5において実施例1〜4と異なる点は、導電性付与材にアルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステルーホルムアルデヒド重縮合体を用いた点である。
【0037】
導電性付与材としては、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステル−ホルムアルデヒド重縮合体として、p−オキシ安息香酸オクチルエステルーアルデヒド重縮合体、p−オキシ安息香酸イソステアリルエステル−ホルムアルデヒド重縮合体、p−オキシ安息香酸アルキルエステル、p−ドデシルフェノール−アルデヒド重縮合体、p−クロロフェノール−アルデヒド重縮合体、p−ヒドロキシ安息香酸アルキルエステルのホルムアルデヒド重縮合体を用いることが出来る。導電性付与材は、ポリアミドと、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体の混合物100重量部に対して、5ないし30重量部配合されるもので、5重量部より少ないと効果が低く、30重量部より多いと組成物の性質を著しく損なう。
【0038】
アルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステル−ホルムアルデヒド重縮合体はポリアミドと相溶性がよく、ポリアミドの水素結合サイトであるアミド基に水分子の代わりに配位して吸湿性を低減させるととも、アミド基に作用して感温性を増大することが出来る。
【0039】
(実施例6)
次に実施例6について説明する。実施例6において実施例1〜5と異なる点は、導電性付与材によう化亜鉛および酸化亜鉛を用いたことである。
【0040】
導電性付与材として、熱安定性の高いよう化亜鉛を、ポリアミド樹脂とポリアミドおよびポリエーテルの共重合体混合物100重量部に対し、0.01ないし30重量部配合した。よう化亜鉛は0.01重量部より少ないと増感性および通電安定効果が低く、30重量部より多いと組成物の物理的性質を著しく損なう。
【0041】
また、高温度で長時間使用した場合によう化亜鉛より生じるよう素イオンの受容体として粒子径が0.1ないし0.5μmの酸化亜鉛粉末を、ポリアミド樹脂とポリアミドおよびポリエーテルの共重合体混合物100重量部に対し、0.01ないし30重量部配合した。酸化亜鉛は0.01重量部より少ないと増感性および通電安定効果が低く、30重量部より多いと組成物の物理的性質を著しく損なう。
【0042】
さらに、電極とポリアミド組成物の界面安定化剤としての金属不活性化剤として、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイドヒドラジンやN,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンや1,2,3ベンゾトリアゾールまたはその誘導体として1ーヒドロキシメチルベンゾトリアゾールや1,2−ジカルボキシエチルベンゾトリアゾールを用いた。
【0043】
よう化亜鉛はよう化亜鉛の持つイオンキャリア性によりインピーダンスの温度依存性を高めるとともに、ポリアミドのアミド基に亜鉛錯体を形成し通電安定性を高め、熱的に安定化する。ところで、高温で長時間使用した場合には、よう化亜鉛により生じたよう素がよう素イオンとして電極に作用し、電気絶縁体であるよう化金属を生成し、電極間インピーダンス経時安定性が得にくくなる。酸化亜鉛を配合することで、酸化亜鉛がよう素イオンの受容体となり、よう化金属の生成を防止することができ、さらに酸化亜鉛はよう化亜鉛を生成し通電安定性を向上させる。また、金属不活性化剤を配合することで、電極とポリアミド組成物との界面の電気抵抗値を安定化させることが出来る。
【0044】
(実施例7)
次に実施例7について説明する。実施例7において実施例1〜6と異なる点は、ポリアミド組成物にナフチルアミンもしくはヒンダードフェノールを配合したことである。
【0045】
ヒンダードフェノールとしてトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチルー5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]またはペンタエリスリチルーテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などとナフチルアミンが用いられ、ヒンダードフェノールやナフチルアミンの恒酸化性により耐熱安定性を高めることが出来る。
【0046】
(実施例8)
次に実施例8について説明する。実施例8において実施例1〜7と異なる点は、ポリアミド組成物に亜リン酸エステル系化合物を配合したことである。
【0047】
亜リン酸エステル系化合物としては、分子量が高く不揮発性に優れ、リン酸濃度が適当なテトラフェニルジプロピレングリコールホスファイトやテトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、および水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイトポリマーが用いられる。亜リン酸エステル系化合物のもつ酸化防止性と還元防錆作用により熱劣化性が抑制され、耐熱安定性を高めることが出来る。
【0048】
(実施例9)
次に実施例9について説明する。実施例9において実施例1〜8と異なる点は、ポリアミド組成物に親水性イオンの移動を阻害するイオン移動障害剤を配合した点である。
【0049】
ポリアミド組成物100重量部に対して、イオン移動障害剤を1から10重量部配合したポリアミド組成物を用いる。イオン移動障害剤は1重量部より少ないとイオン移動障害効果が低く、10重量部より多く配合すると、ポリアミドとの混合が不均一になり高分子感温体の強度物性が低下してしまう。
【0050】
次に作用について説明する。ポリアミド樹脂のアミド基に導電性付与剤が作用して、静電容量、電気抵抗値、インピーダンスなどの電気的特性の温度依存性が増加する。親水性のイオン移動を阻害するイオン移動障害剤を配合することで、ポリアミドおよびポリアミド組成物中のポリアミドの水素結合サイトであるアミド基への水分子の進入を阻害することが出来る。よって吸湿による影響が少なく高感度で安定性のよい温度検知を行うことが出来る。
【0051】
また、イオン移動障害剤は、通電時の導電性付与剤の移動も阻害するため通電安定性が高まり、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たす高分子感温体を得ることが出来る。
【0052】
(実施例10)
実施例10について説明する。実施例10では、イオン移動障害剤に4ふっ化エチレン樹脂または、熱可塑性シリコーンなどの極性基をもたない撥水剤を用いた。
【0053】
4ふっ化エチレン樹脂は、ポリアミド組成物の中で優れた潤滑性、撥水性を示すので、高分子感温体全体として水分子の吸着を防止することが出来る。4ふっ化エチレンは、単独で−200℃から+250℃の広い範囲で潤滑作用を示すので、長期安定性に優れる。
【0054】
熱可塑性シリコーンは、室温では固体状を示し、軟化温度85〜105℃を有する。室温では固形状であるためにポリアミド粉末と機械的に混合した後、2軸押し出し機等の溶融混練り機で、ポリアミド樹脂に練り込ませながら均一に配合させることが出来る。このため、高分子感温体内にイオン移動障害物質を分散させることが出来る。
【0055】
イオン移動障害剤は、親水性である水分子の高分子感温体への進入を阻害することで、高分子感温体全体内部から吸湿量を低減して、長期的且つ安定的に耐湿性能を保持させることが出来る。また、通電時には、イオン移動障害剤は通電の影響を受けないため、導電性付与剤の移動を阻害するバリヤとして働き、通電特性を安定化することが出来る。
【0056】
4ふっ化エチレン樹脂粉体や熱可塑性シリコーンは、ポリアミド組成物100重量部に対して、1重量部から10重量部の範囲で配合される。1重量部未満ではイオン移動障害効果が低く、10重量部より多く配合すると、ポリアミド樹脂との混合が不均一になり高分子感温体の強度物性が低下してしまう。
【0057】
高分子感温体評価のため、実施例1から10のポリアミド組成物を配合し、押し出し機により混練した後、加熱プレスで70mm×70mm、厚さ0.8mmのシートに成形し、その両面に銀塗布電極を設けて作成した試料を用いて、インピーダンスの温度依存性、耐湿性、半波通電安定性を測定した結果を(表1)に示す。
【0058】
インピーダンスの温度依存性は40℃ないし80℃のサーミスタB定数で、半波通電安定性は100℃における初期のインピーダンスと80℃で50vの半波通電を200時間行った後のインピーダンスの温度差ΔTzで表した。耐湿性は45℃における初期インピーダンスと45℃、95RH%で72時間放置後のインピーダンスの温度差ΔTwで表した。
【0059】
【表1】
【0060】
(実施例11)
図1は本発明の実施例11における感温素子の構成を示す。
【0061】
図において、1は1500デニールのポリエステル芯線、2、4は銅、アルミニウム、金、白金、パラジウム、銀、錫、半田、ニッケル、ステンレス、チタン、インジウムなどの巻き線による電極線、3は電極線2と4の間に配設された高分子感温体であり、上記実施例1〜10のいずれか1項に記載の構成のものである。5は遮湿性絶縁外被層である。
【0062】
次に動作、作用について説明する。高分子感温体3は温度によって静電容量、電気抵抗値、インピーダンスなどの電気的特性が変化するため、電極線2、4間に通電し高分子感温体3の電気的特性を測定することで温度を検知し、電気毛布、電気カーペットなどの電気採暖具の温度制御を行うことが出来る。周辺環境中の水分子は遮湿性絶縁外被層5によって通過を阻止され、高分子感温体3の吸湿を防止することが出来るため、高分子感温体3には電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性の要求が満たされるナイロン6、ナイロン11、ナイロン12などの高分子材料を用いることが出来、周辺環境の影響を受けず高感度で安定性の良い温度制御を行うことが出来る。
【0063】
(実施例12)
次に実施例12について説明する。実施例12において実施例11と異なる点は、遮湿性絶縁外被層2を遮湿性の高い絶縁材料で構成したことである。
【0064】
遮湿性絶縁外被層5は、少なくともポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、共重合フッ素樹脂、ふつ化ビニル、ふつ化ビニリデンなどの遮湿性の高い絶縁材料で構成されている。
【0065】
従来から絶縁層として用いられている塩化ビニル絶縁材の水蒸気透過量は、ASTME96〜66(37.8℃)による測定によると、2g・m−2・24h−1・mm−1(厚さ)以上であるのに対し、ポリ塩化ビニリデン絶縁材の水蒸気透過量は0.1〜0.3g・m−2・24h−1・mm−1、ポリプロピレン絶縁材で0.14g・m−2・24h−1・mm−1、ふつ化ビニル絶縁材は0.01〜0.02g・m−2・24h−1・mm−1と非常に小さく、遮湿性絶縁外被層5をポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、共重合フッ素樹脂、ふつ化ビニル、ふつ化ビニリデンなどの遮湿性の高い絶縁材料で構成することで、1つの層で高分子感温体の吸湿防止と感温素子の絶縁を行うことが出来、従来の製造工程を大幅に変更することなく、高感度で安定性の良い温度制御が行える感温素子を得ることが出来る。
【0066】
(実施例13)
次に実施例13について説明する。実施例12において実施例10、11と異なる点は、遮湿性絶縁外被層5は絶縁材の表面に撥水剤を被覆した構成としたことである。
【0067】
遮湿性絶縁外被層5は、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁材の表面に高級脂肪酸誘導体やシリコーン樹脂などの撥水剤で被覆した構成とすることで、絶縁材表面の撥水剤が水分子の進入を防止し、高分子感温体の吸湿を防止することが出来るとともに、従来の感温素子の絶縁材を用いることもでき、製造工程を大幅に変更する必要がなくなる。
【0068】
(実施例14)
次に実施例14について説明する。実施例14において実施例10〜13と異なる点は、遮湿性絶縁外被層5は絶縁材に撥水剤を練り込んだ構成としたことである。
【0069】
遮湿性絶縁外被層5は、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの絶縁材に高級脂肪酸誘導体やシリコーン樹脂などの撥水剤を練り込んだ構成とすることで、絶縁材に練り込んだ撥水剤が水分子の進入を防止し、高分子感温体の吸湿を防止することが出来るとともに、耐湿安定性を高めることが出来る。
【0070】
感温素子の評価のために、高分子感温体3としてナイロン12(70重量部)、ポリアミドポリエーテル共重合物(30重量部)、pヒドロキシヒドロキシ安息香酸アルキルエステルのホルムアルデヒド重縮合体(15重量部)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(0.5重量部)、テトラフェニルジプロピレングリコールホスファイト(1重量部)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](1重量部)よりなるポリアミド組成物を用い、図1に示す感温素子を作成した。遮湿性絶縁外被層5にはポリ塩化ビニリデンを用いた。
【0071】
インピーダンスの温度依存性は40℃ないし80℃のサーミスタB定数で、耐熱安定性は100℃における空気加熱老化試験をダンベル試験片で行い降伏点強度半減する時間で評価し、さらに、100℃における初期のインピーダンスと80℃で50vの半波通電を1000時間行った後のインピーダンスの温度差ΔTzで表した。耐湿性は45℃における初期インピーダンスと45℃、95RH%で72時間放置後のインピーダンスの温度差ΔTwで表した。これらの結果を、比較のために遮湿性絶縁外被層5をポリ塩化ビニルで構成したものについても(表2)に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
以上のように本発明によれば、インピーダンスの温度依存性、耐熱安定性を低下させることなく、耐湿性を高めた感温素子を得ることが出来る。
【0074】
【発明の効果】
以上のように、本発明の高分子感温体およびそれを用いた感温素子は、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を粉砕し粉体状でポリアミド樹脂に混練することにより、海島構造としてポリアミドの海にポリアミドおよびポリエーテル共重合体の島を均一に分散させることが出来、ポリアミドと導電性付与材で電気的特性および耐熱安定性の要求を満たし、吸湿量の少ないポリアミドおよびポリエーテルの共重合体で高分子感温体の吸湿量を低下させることで、耐湿特性、電気的特性、機械的強度、耐熱安定性、温度ヒューズ機能、成形加工性を満たす高分子感温体とそれを用いた感温素子を得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における感温素子の構成を示す斜視図
【符号の説明】
1 ポリエステル芯線
2、4 電極線
3 高分子感温体
5 遮湿性絶縁外被層
Claims (14)
- ポリアミド樹脂と、ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体樹脂と、導電性付与材とを配合したポリアミド組成物を有し、前記ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は粉砕した紛体状でポリアミド樹脂と混錬した高分子感温体。
- ポリアミド樹脂に導電性付与材を配合し、これにポリアミドおよびポリエーテルの共重合体を混錬した請求項1に記載の高分子感温体。
- ポリアミドは、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン12−ナイロン40共重合体、N−アルキル置換アミドの少なくとも1種以上とする請求項1または2に記載の高分子感温体。
- ポリアミドおよびポリエーテルの共重合体は、ポリアミド12もしくはポリアミド11からなるポリアミドと、ポリエチレングルコールもしくはポリテトラメチレングルコールからなるポリエーテルの共重合体とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子感温体。
- 導電性付与材は、アルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合体もしくはオキシ安息香酸エステル−ホルムアルデヒド重縮合体とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子感温体。
- 導電性付与材は、よう化亜鉛および酸化亜鉛とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子感温体。
- ポリアミド組成物は、ナフチルアミンもしくはヒンダードフェノールを含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の高分子感温体。
- ポリアミド組成物が、亜リン酸エステル系化合物を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子感温体。
- ポリアミド組成物に親水性イオンの移動を阻害するイオン移動障害剤を配合した請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子感温体。
- イオン移動障害剤は、極性基を持たない撥水剤とする請求項9に記載の高分子感温体。
- 同芯状に設けた一対の電極と、前記電極間に設けた請求項1〜10のいずれか1項に記載の高分子感温体と、前記電極の外側に設けた遮湿性絶縁外被層からなる感温素子。
- 遮湿性絶縁外被層は、少なくともポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、共重合フッ素樹脂、ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデンなどの遮湿性の高い絶縁材料からなる請求項11に記載の感温素子。
- 遮湿性絶縁外被層は、絶縁材の表面に撥水剤を被覆した構成とした請求項11に記載の感温素子。
- 遮湿性絶縁外被層は、絶縁材に撥水剤を練り込んだ請求項11に記載の感温素子。
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-
2002
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