JP3000422B2 - 高分子感温体およびそれを用いた感温素子 - Google Patents

高分子感温体およびそれを用いた感温素子

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JP3000422B2 JP6255914A JP25591494A JP3000422B2 JP 3000422 B2 JP3000422 B2 JP 3000422B2 JP 6255914 A JP6255914 A JP 6255914A JP 25591494 A JP25591494 A JP 25591494A JP 3000422 B2 JP3000422 B2 JP 3000422B2
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雅彦 伊藤
和幸 小原
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気採暖具などの可撓
性の温度センサや感温ヒータに用いる高分子感温体およ
びそれを用いた感温素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、高分子感温体は、一般に1対の巻
き線電極間に配設され、可撓性線状の温度センサや感熱
ヒータとして用いられている。この高分子感温体として
は、ナイロン12や特開昭55−100693号公報に
開示されている変性ポリアミド11(ATO−CHIM
IE社製、商品名「リルサンNナイロン」)などのポリ
アミド組成物が用いられ、その静電容量や電気抵抗値あ
るいはインピーダンスなどの温度変化が利用され、温度
センサの機能を果たしている。
【0003】さらに、特公昭60−48081号公報で
は亜りん酸エステルを熱劣化改良剤として添加したポリ
アミド組成物や、特開昭64−30203号公報ではト
リアゾール系銅不活性化剤とフェノール系酸化防止剤を
添加したイオン伝導性感熱組成物の例が開示されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ナイロン12は吸湿率
が低い点では優れているが、温度センサとしては湿度に
よる感温特性の変動が大きいため、実用に供し難い。ま
た特開昭55−100693号公報の変性ポリアミドに
おいては、インピーダンスの温度依存性が小さいため温
度検出感度が低く、耐熱安定性に劣る。このため耐湿度
性、感温性の改善のため、特公平3−50401号公報
に開示されている様にフェノール系化合物のアルデヒド
重縮合体を配合した組成物が提案されている。しかしこ
れらはいずれもインピーダンスの温度依存性が低く、ま
た長期間にわたる熱安定性が不十分であるなどの問題点
があった。
【0005】本発明は、インピーダンスの温度依存性が
大きく、かつ熱安定性と通電安定性に優れた高分子感温
体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の高分子感温体
は、ポリアミドによう化亜鉛および酸化亜鉛と、さらに
りん濃度が3ないし20重量%で分子量が200ないし
5,000の亜りん酸エステル系化合物とを配合した組
成物を有するものであり、また本発明の感温素子は前記
組成の高分子感温体を1対の電極間に配設して構成した
ものである。
【0007】
【作用】一般に、高分子感温体は、1対の銅あるいは銅
合金の巻き線電極間に配設されて、可撓性線状の温度セ
ンサや感熱ヒータとして用いられる。これら温度センサ
や感熱ヒータとしての耐熱安定性は、高分子感温体自体
の安定性と巻き線電極の表面状態により決まる。
【0008】本発明のポリアミド組成物を用いた場合、
高分子感温体中のよう化亜鉛のもつイオンキャリア性に
より著しくインピーダンスの温度依存性を高めると共
に、アミド基に亜鉛錯体を形成し、通電安定性を高め、
熱的にも安定なものとなる。しかし、高温度で長期間使
用した場合によう化亜鉛より生じたよう素はアミド基周
辺に局在する一方、よう素イオンとして金属電極に作用
し電気絶縁体であるよう化金属を生成し、電極間のイン
ピーダンスの安定性を損ねる。たとえば、電極に銅を用
いた場合、よう化銅を生成し、電極間インピーダンスの
経時安定性が得にくい。そこで、酸化亜鉛を併用すると
酸化亜鉛が、よう素イオンの受容体として働き、金属電
極表面のよう化金属の生成を防止することができる。さ
らに、酸化亜鉛はよう化亜鉛を生成し、通電安定性を向
上させる作用が働くという連環サイクルが機能するもの
と考えられる。従って、高分子感温体の熱安定性を向上
させ、温度センサや感熱ヒータとして耐熱安定性を著し
く増すことができる。しかもテトラフェニル・ジプロピ
レングリコールジホスファイトやテトラフェニルテトラ
(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイ
トや水添フェノールA・ペンタエリスリトールホスファ
イトポリマーの様に高分子量でかつりん濃度の高いジホ
スファイトまたはテトラホスファイトあるいはホスファ
イト系ポリマーがもつ酸化防止性と還元防錆作用による
効果により熱劣化性が著しく相乗的に抑制される。りん
濃度が低いとこの効果は低く、また高すぎても実用的で
ない。りん濃度は3ないし20重量%で効果があるが、
望ましくは5ないし15重量%で最も良い値を示す。ま
た分子量が低いと高温で揮発しやすく、効果の持続性に
乏しい。また分子量が5,000を越えると分散が難し
くなるので、望ましくは分子量は300ないし3,50
0が実用的である。本発明におけるよう化亜鉛および酸
化亜鉛と亜りん酸エステル系化合物との組み合わせは作
用が重複してもお互いに疎外されるものでなく、加算さ
れて相乗作用を持つ。
【0009】従って、高分子感温体の熱安定性を向上さ
せ、温度センサや感熱ヒータとして耐熱安定性を著しく
増す。さらにヒンダードフェノールまたはナフチルアミ
ンの添加はこれらの薬品のもつ抗酸化性により、熱的に
もさらに安定なものとなる。本発明におけるよう化亜鉛
および酸化亜鉛とホスファイトとヒンダードフェノール
またはナフチルアミンとの組み合わせは、作用が重複し
てもお互いに疎外されるものでなく、加算されて相乗作
用を持つ。従って、高分子感温体の熱安定性を向上さ
せ、温度センサや感熱ヒータとして耐熱安定性を著しく
増す。さらにフェノール化合物のアルデヒド重縮合体の
配合により強力な吸湿防止作用を付与することができ
る。フェノール系化合物はポリアミドと相溶性がよく、
ポリアミド中で水素結合サイトに水分子の代わりに配位
して吸湿性を低減させ、湿度による感温特性の変動を低
減させる。またそのアミド基への作用により感温性を増
大する効果もある。また、電極材料が例えば金、白金、
パラジュウムなどの貴金属を用いたり、またよう化金属
の生成は見られにくいが、銀、錫、半田、ニッケル、ス
テンレス、チタン、インジュウムなどを用いた場合に
は、これらの金属のよう化物は導電度が比較的高いの
で、電極間インピーダンスの経時安定性を高めることが
できる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例について述べる。本発
明の実施例では、ポリアミドとしては、吸湿性の少ない
ナイロン12、ナイロン12−ナイロン40共重合体、
N−アルキル置換ポリアミド11、ポリエーテルアミ
ド、ダイマー酸含有アミドを選んだ。これらのポリマー
のインピーダンスの温度依存性を高める導電付与剤とし
て、熱安定性の高いよう化亜鉛を用いた。よう素受容体
としては粒子径が0.1ないし0.5μmの酸化亜鉛粉
末を用いた。また、上記酸化亜鉛と相乗作用をして酸化
防止性と還元防錆作用を高める構成として、亜りん酸エ
ステルとしてテトラフェニル・ジプロピレングリコール
ジホスファイト(分子量が566、りん濃度が10.9
重量%)、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタ
エリスリトールテトラホスファイト(分子量が1,42
4、りん濃度が8.7重量%)、水添ビスフェノールA
・ペンタエリスリトールホスファイト(分子量が2,5
00ないし3,100、りん濃度が13.8重量%)を
選んだ。組成比は、ナイロン100重量部に対して添加
剤は1重量部とした。また、さらに酸化防止性と熱安定
性を高めるためにヒンダードフェノールとして、トリエ
チレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−
メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分
子量が586.8)を選び、またナフチルアミンとして
フェニール−α−ナフチルアミン(分子量が404)を
選んだ。さらにフェノール化合物のアルデヒド重縮合体
を添加した例では、ポリアミドと相溶性の良いオキシ安
息香酸オクチルエステル−ホルムアルデヒド重縮合体を
選び、15重量部とした。試料はこれらを配合し、押し
出し機により混練した後、加熱プレスで約70×70m
m、厚さ1mmのシートに成形し、その両面に銅電極を
設けて作成した。また、電極材料依存性は銀板、金板、
および銅板に銅メッキ、錫メッキ、半田メッキを施した
ものを用いた。インピーダンスの温度依存性は、40な
いし80℃におけるサーミスタB定数で表した。また耐
熱安定性は120℃における空気加熱老化試験をダンベ
ル試験片でおこない降伏点強度の半減する時間で評価し
た。さらに、100℃における初期のインピーダンスと
100℃で100Vの半波通電を1,000時間行った
後のインピーダンスとの温度差(ΔTZ)で表した。な
お40ないし80℃におけるサーミスタB定数は40℃
におけるインピーダンスZ40および80℃におけるイン
ピーダンスZ80を測定した結果をもとに算出した。これ
らの結果を表1及び表2に示す。
【0011】
【表1】
【0012】
【表2】
【0013】本発明の増感剤としてはよう化亜鉛無水物
またはよう化亜鉛2水和物が用いられ、サーミスタB定
数の向上に寄与している。
【0014】これらは、ポリアミドに対し0.01ない
し30重量部配合される0.01重量部より少ないと増
感性および半波通電安定効果が低く、30重量部より多
いと組成物の物理的性質を著しく損なう。また、高温度
で長期間使用した場合に、よう化亜鉛より生じたよう素
イオンの受容体としては酸化亜鉛が用いられ、金属電極
表面のよう化金属の生成の防止に寄与している。さら
に、酸化亜鉛はよう化亜鉛を生成し通電安定性を向上さ
せる作用が働くという連環サイクルが機能する。
【0015】従って、高分子感温体の熱安定性を向上さ
せ、温度センサや感熱ヒータとして耐熱安定性を著しく
増すことができる。これらは、ポリアミドに対し0.0
1ないし30重量部配合される。0.01重量部より少
ないと効果が低く、30重量部より多いと組成物の物理
的性質を著しく損なう。また、亜りん酸エステルとして
は、分子量が高く不揮発性に優れ、かつりん濃度が適当
なテトラフェニルジプロピレングリコールホスファイト
やテトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリ
トールテトラホスファイトや水添ビスフェノールA・ペ
ンタエリスリトールホスファイトポリマーが用いられ、
耐熱安定性と防錆作用の向上に寄与している。また抗酸
化剤としてはヒンダードフェノールとしてトリエチレン
グリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル
−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]またはペ
ンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t
−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
またはN,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t
−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)ま
たは3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−
ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキ
シ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−
テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ナフチルア
ミンが用いられ、耐熱性の向上に寄与している。これら
の組み合わせが、さらに相乗的効果を発揮している。
【0016】また、フェノール系化合物のアルデヒド重
縮合体には、p−オキシ安息香酸オクチルエステル−ア
ルデヒド重縮合体およびp−オキシ安息香酸イソステア
リルエステル−ホルムアルデヒド重縮合体が相溶性およ
び耐湿性の点で優れているが、p−オキシ安息香酸アル
キルエステル以外にp−ドデシルフェノール、p−クロ
ロフェノール、p−オキシ安息香酸ノニルエステルなど
のアルデヒド重縮合体であってもよい。これらは、ポリ
アミドに対し、5ないし30重量部配合される。5重量
部より少ないと効果が低く、30重量部より多いと組成
物の性質を著しく損なう。
【0017】感熱素子の評価のためナイロン12(10
0重量部)、よう化亜鉛(5.5重量部)、よう化亜鉛
(4重量部)、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペ
ンタエリスリトールテトラホスファイト(1重量部)、
トリエチレングリコール−ブチル−5−メチル−4−ヒ
ドロキシフェニル)プロピオネート](1重量部)より
なるナイロン配合物のペレットを作成し、このペレット
を用いて図1に示すような感熱素子、すなわち温度検知
線を作成した。ここで、各構成要素について説明する
と、1は1,500デニールのポリエステル芯糸、2,
4は半田メッキ銅電極線、3はナイロン感温層、5はポ
リエステル分離層、6は耐熱ポリ塩化ビニル外被であ
る。比較のためにナイロン12のみで感温層を形成した
試作物に対して、サーミスタB定数は約3倍の11,0
00(K)を示し、120℃における連続100V通電
に対して2,000時間以外の耐久性を示した。
【0018】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、よう化亜
鉛および酸化亜鉛とさらに分子量とりん濃度が適度な値
をもつ亜りん酸エステルとの併用は、サーミスタB定数
の向上と高温度においても、長期に亘る機械的強度と電
気特性を安定なものとして、多くの実用的な用途の信頼
性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における感温体を用いた温度
検知ヒータ線の一部破断側面図
【符号の説明】
1 ポリエステル芯糸 2,4 半田メッキ銅電極線 3 ナイロン感温層 5 ポリエステル分離層 6 ポリ塩化ビニル外被
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅越 賢純 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電 器産業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭58−215449(JP,A) 特開 平6−151114(JP,A) 特開 平4−103659(JP,A) 特開 昭61−260607(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01C 7/02 - 7/22

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアミドに、少なくとも、よう化亜鉛
    および酸化亜鉛と、りん濃度が3ないし20重量%で分
    子量が200ないし5,000の亜りん酸エステル系化
    合物とを配合したポリアミド組成物を有する高分子感温
    体。
  2. 【請求項2】 よう化亜鉛が、よう化亜鉛無水物と、よ
    う化亜鉛水和物のうちより選ばれた少なくとも1種であ
    る請求項1記載の高分子感温体。
  3. 【請求項3】 亜りん酸エステル系化合物がテトラフェ
    ニル・ジプロピレングリコールジホスファイトとテトラ
    フェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテ
    トラホスファイトと水添フェノールA・ペンタエリスリ
    トールホスファイトポリマーとよりなる群から選ばれた
    少なくとも1種である請求項1記載の高分子感温体。
  4. 【請求項4】 ポリアミド組成物がオキシ安息香酸エス
    テル・ホルムアルデヒド重縮合体を含有する請求項1記
    載の高分子感温体。
  5. 【請求項5】 ポリアミドが、下記(a)ないし(f)
    よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含有する請求
    項1記載の高分子感温体。 (a)ポリウンデカンアミド (b)ポリドデカンアミド (c)炭素数が12以上の直鎖飽和炭化水素を含むポリ
    アミドまたはその共重合体 (d)ポリウンデカンアミドあるいはポリドデカンアミ
    ドのN−アルキル置換アミド共重合体 (e)ポリウンデカンアミドあるいはポリドデカンアミ
    ドのN−アルキル置換アミド共重合体 (f)ダイマー酸含有ポリアミド
  6. 【請求項6】 ポリアミド組成物が少なくとも、ナフチ
    ルアミンまたはヒンダードフェノールのいずれかを含有
    する請求項1記載の高分子感温体。
  7. 【請求項7】 ヒンダードフェノールがトリエチレング
    リコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−
    4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]とペンタエ
    リスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチ
    ル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]とN,
    N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−
    4−ヒドロキシ−ヒドロキシンナマミド)と3,9−ビ
    ス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5
    −メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジ
    メチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピ
    ロ[5,5]ウンデカンとよりなる群から選ばれた少な
    くとも1種である請求項1記載の高分子感温体。
  8. 【請求項8】 ナフチルアミンがフェニール−α−ナフ
    チルアミンとN′,N−ジ−β−ナフチル−p−フェニ
    レンジアミンのうちより選ばれた少なくとも1種である
    請求項1記載の高分子感温体。
  9. 【請求項9】 請求項1ないし請求項8のいずれかに記
    載の高分子感温体を1対の電極間に配設した感温素子。
  10. 【請求項10】 請求項9の電極のうちのいずれか一方
    の電極または両電極の材料として銅、アルミニウム、
    金、白金、パラジュウム、銀、錫、半田、ニッケル、ス
    テンレス、チタン、インジュウムよりなる群から選ばれ
    た金属を用いた感温素子。
  11. 【請求項11】 請求項9の電極のうちのいずれか一方
    の電極または両電極の材料の表面層が金、白金、パラジ
    ュウム、銀、錫、半田、ニッケル、チタン、インジュウ
    ムよりなる群から選ばれた金属を含む内部層とは異なる
    他金属を有する電極を用いた感温素子。
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