JP3028451B2 - 高分子感温体およびそれを用いた感温素子 - Google Patents

高分子感温体およびそれを用いた感温素子

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気採暖具などの可撓
性の温度センサや感温ヒータに用いる高分子感温体およ
びそれを用いた感温素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、高分子感温体は、一般に一対の巻
き線電極間に配設され、可撓性線状の温度センサや感熱
ヒータとして用いられている。この高分子感温体として
は、ナイロン12や、特開昭55−100693号公報
に開示されている変性ポリアミド11(ATO−CHI
MIE社製、商品名「リルサンNナイロン」)などのポ
リアミド組成物が用いられ、その静電容量や抵抗値また
はインピーダンスなどの温度変化が利用され、温度セン
サの機能を果たしている。
【0003】さらに特公昭60−48081号公報では
亜りん酸エステルを熱劣化改良剤として添加したポリア
ミド組成物や、特開昭64−30203号公報では銅不
活性化剤とフェノール系酸化防止剤を添加したイオン伝
導性感熱組成物の例が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ナイロン12は吸湿性
が低い点では優れているが、温度センサとしては湿度に
よる感温特性の変動が大きいため、実用に供し難い。ま
た特開昭55−100693号公報記載の変性ポリアミ
ド11においては、インピーダンスの温度依存性が小さ
いため温度検出感度が低く、耐熱安定性に劣る。このた
め耐湿度性、感温性の改善のため、特公平3−5040
1号公報に開示されているようにフェノール系化合物の
アルデヒド重縮合体を配合した組成物が提案されてい
る。
【0005】しかしこれらはいずれもインピーダンスの
温度依存性が低く、また長期間にわたる熱安定性が不十
分であるなどの問題点があった。
【0006】本発明は、上記従来の問題点を解決するも
ので、インピーダンスの温度依存性が大きく、かつ熱安
定性に優れた高分子感温体とそれを用いた感温素子を提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の高分子感温体は、ポリアミドに少なくともよう
化亜鉛と、さらにナフチルアミンを配合してなるポリア
ミド組成物を有するものであり、また本発明の感温素子
は上記高分子感温体を一対の電極間に配設して構成する
ものである。
【0008】
【作用】一般に、高分子感温体は、一対の銅または銅合
金の巻き線電極間に配設されて、可撓性線状の温度セン
サや感熱ヒータとして用いられる。これら温度センサや
感熱ヒータとしての耐熱安定性は、高分子感温体自体の
安定性と巻き線電極の表面状態により決まる。
【0009】本発明のポリアミド組成物を用いた場合、
高分子感温体中のよう化亜鉛のもつイオンキャリア性に
より著しくインピーダンスの温度依存性を高めるととも
に、アミド基に亜鉛錯体を形成し、通電安全性を高め
る。しかもナフチルアミンのもつ抗酸化性により、熱的
にも安定なものとなる。
【0010】本発明におけるよう化亜鉛とナフチルアミ
ンとの配合にさらにヒンダードフェノールを加えたポリ
アミドはお互いに疎外されるものでなく、加算されて相
乗作用を持つ。従って、高分子感温体の熱安定性を向上
させ、温度センサや感熱ヒータとして耐熱安定性を著し
く増すものである。
【0011】さらにフェノール化合物のアルデヒド重縮
合体の配合により強力な吸湿防止作用を付与することが
できる。フェノール系化合物はポリアミドと相溶性がよ
く、ポリアミド中で水素結合サイトに水分子の代わりに
配位して吸湿性を低減させ、湿度による感温特性の変動
を低減させる。またそのアミド基への作用により感温性
を増大する効果もある。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例の高分子感温体および
それを用いた感温素子について図面を参照して説明す
る。本実施例では、ポリアミドとしては、吸湿性の少な
いナイロン12、ナイロン12−ナイロン40共重合
体、N−アルキル置換ポリアミド11、ポリエーテルア
ミド、またはダイマー酸含有ポリアミドを選び、これら
を単独または一定の割合で組合せて用いた。
【0013】これらのポリマーのインピーダンスの温度
依存性を高める導電付与剤(増感剤)として、熱安定性
の高いよう化亜鉛を用いた。
【0014】また酸化防止性と熱安定性を高める抗酸化
剤としてのヒンダードフェノールとして、トリエチレン
グリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル
−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(分子量
586.8)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート〕(分子量1177.7)、N,N′−
ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシ−ヒドロキシンナマミド)(分子量637.
0)、または3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチ
ル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニ
ルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,
10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(分子
量741)を選び、またナフチルアミンとしてフェニル
−α−ナフチルアミン(分子量404)などを選んだ。
【0015】さらにフェノール化合物のアルデヒド重縮
合体を添加した例では、ポリアミドと相溶性の良いオキ
シ安息香酸オクチルエステル−ホルムアルデヒド重縮合
体を選んだ。
【0016】試料はこれらを配合し、押し出し機により
混練した後、加熱プレスで約70mm×70mm、厚さ1mm
のシートに成形し、その両面に銀塗布面電極を設けて作
成した。インピーダンスの温度依存性は、40℃ないし
80℃におけるサーミスタB定数で表した。
【0017】また耐熱安定性は100℃における初期の
インピーダンスと、100℃で100Vの半波通電を
1,000時間行った後のインピーダンスとの温度差
(ΔTz)で表した。なお40℃ないし80℃における
サーミスタB定数は40℃におけるインピーダンスZ40
および80℃におけるインピーダンスZ80を測定した結
果をもとに算出した。
【0018】上記これらの高分子感温体の組成と特性を
示す実施例1ないし8および比較例1と2の内容と結果
を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】本実施例の増感剤として用いられたよう化
亜鉛無水物またはよう化亜鉛2水和物は、サーミスタB
定数の向上に寄与している。
【0021】これらよう化亜鉛は、ポリアミド100重
量部に対し0.01ないし30重量部配合され、0.0
1重量部より少ないと増感性および半波通電安定効果が
低く、30重量部より多いと組成物の物理的性質を著し
く損なう。
【0022】また抗酸化剤として用いられたヒンダード
フェノールとしての、トリエチレングリコール−ビス
[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシ
フェニル)プロピオネート]またはペンタエリスリチル
−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシフェニル)プロピオネート]またはN,N′−
ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシ−ヒドロキシンナマミド)または3,9−ビス
{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−
メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメ
チルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ
[5,5]ウンデカン、そしてナフチルアミンは耐熱性
の向上に寄与している。
【0023】これら抗酸化剤の組み合わせが、さらに相
乗的効果を発揮している。また、フェノール系化合物の
アルデヒド重縮合体には、p−オキシ安息香酸オクチル
エステル−アルデヒド重縮合体およびp−オキシ安息香
酸イソステアリルエステル−ホルムアルデヒド重縮合体
が相溶性および耐湿性の点で優れているが、p−オキシ
安息香酸アルキルエステル以外にp−ドデシルフェノー
ル、p−クロロフェノール、p−オキシ安息香酸ノニル
エステルなどのアルデヒド重縮合体であってもよい。
【0024】これらは、ポリアミド100重量部に対
し、5ないし30重量部配合される。5重量部より少な
いと効果が低く、30重量部より多いと組成物の性質を
著しく損なう。
【0025】感温素子の評価のためナイロン12(10
0重量部)、よう化亜鉛(1.0重量部)、N,N′−
ヘキサメチレンビス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロ
キシ−ヒドロキシンナマミド)(0.5重量部)よりな
るポリアミド組成物のペレットを作成し、このペレット
を用いて図1に示すような感温素子、すなわち温度検知
線を作成した。
【0026】この感温素子の構成は、0.5%銀入り銅
電極線1を巻き付けた1,500デニールのポリエステ
ル芯糸2を、0.5%銀入り銅電極線3を巻き付けたポ
リアミド感温層4で被覆し、さらにその周囲をポリエス
テル分離層5と、塩化ビニル外被6で被覆したものであ
る。
【0027】すなわち、高分子感温体を一対の電極間に
配設して感温素子を構成したものである。この感温素子
のサーミスタB定数は、比較のためにナイロン12のみ
でポリアミド感温層4を形成した表1に示す比較例1の
試作品のサーミスタB定数3,500(K)に対して約
3倍の10,400(K)を示し、耐熱寿命試験として
行った120℃における連続100V半波通電に対して
は2,000時間以上の耐久性を示した。
【0028】
【発明の効果】以上の説明により明らかなように本発明
の高分子感温体およびそれを用いた感温素子によれば、
ポリアミドに少なくともよう化亜鉛とさらにナフチルア
ミンとの併用によって、サーミスタB定数の向上と、高
温度においても、長期にわたる機械的強度と電気特性を
相乗的に安定なものとして、多くの実用的な用途におけ
る信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の高分子感温体を用いた感温
素子の一部破断側面図
【符号の説明】
1,3 電極線 2 ポリエステル芯糸 4 ポリアミド感温層(高分子感温体) 5 ポリエステル分離層 6 塩化ビニル外被
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭58−215449(JP,A) 特開 昭61−181106(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01C 7/02 - 7/22

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアミドに、少なくともよう化亜鉛
    と、さらにナフチルアミンとを配合したポリアミド組成
    物を有する高分子感温体。
  2. 【請求項2】 よう化亜鉛がよう化亜鉛無水物、または
    よう化亜鉛水和物より選ばれた少なくとも1種である請
    求項1記載の高分子感温体。
  3. 【請求項3】 ナフチルアミンが、フェニル−α−ナフ
    チルアミンまたはN’N−ジ−β−ナフチル−p−フェ
    ニレンジアミンより選ばれた少なくとも1種である請求
    項1または2のいずれかに記載の高分子感温体。
  4. 【請求項4】 ポリアミド組成物がオキシ安息香酸エス
    テル・ホルムアルデヒド重縮合体を含む請求項1ないし
    3のいずれかに記載の高分子感温体。
  5. 【請求項5】 ポリアミドが、下記(a)ないし(f)
    よりなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1
    ないし4のいずれかに記載の高分子感温体。 (a)ポリウンデカンアミド (b)ポリドデカンアミド (c)直鎖飽和炭化水素C 12 以上を含むポリアミドおよ
    びその共重合 (d)ポリウンデカンアミドまたはポリドデカンアミド
    のN−アルキ ル置換ポリアミド共重合体 (e)ポリウンデカンアミドまたはポリドデカンアミド
    のポリエーテ ルアミド共重合体 (f)ダイマー酸含有ポリアミド
  6. 【請求項6】 ポリアミドに、少なくともよう化亜鉛
    と、ナフチルアミンとを配合したポリアミド組成物を有
    する高分子感温体を、一対の電極間に配設した感温素
    子。
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