JP2004197038A - 変性フェノール樹脂の製造方法 - Google Patents

変性フェノール樹脂の製造方法 Download PDF

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Mitsunori Takeda
田 充 範 竹
Tatsufumi Ishizuka
塚 達 史 石
Tsutomu Nakamura
村 励 中
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Abstract

【課題】溶融粘度が低く、実質的に酸を含まない変性フェノール樹脂が1工程で製造可能であり、かつエポキシ樹脂と組み合わせた場合、優れた耐熱性および耐湿性を有するとともに、金属に対する腐食性がなく、優れた電気絶縁性を有する変性フェノール樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】石油系重質油類またはピッチ類と、平均分子量から算出した前記石油系重質油類またはピッチ類1モルに対して、2〜10モルのフェノールおよびホルムアルデヒド換算で0.3〜3.0モルのホルムアルデヒド化合物とを混合し、触媒を添加しない状態にて、160〜200℃で加熱攪拌を行うことにより重縮合反応させる変性フェノール樹脂の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変性フェノール樹脂の製造方法に関し、さらに詳しくは、エポキシ樹脂と組み合わせることにより耐熱性、耐湿性、耐腐食性、接着性および寸法安定性、強度などの機械的特性、特に耐湿性および耐熱性に優れた成形品となり得る低粘度の変性フェノール樹脂を1工程で製造することが可能であり、安定供給が可能で、かつコスト的に有利な重縮合原料を用いることができる変性フェノール樹脂の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フェノール樹脂系成形体は、機械的特性に優れており、古くから単独またはエポキシ樹脂などの他の樹脂と混合して広く用いられているが、耐光性、耐アルカリ性がやや低く、水分あるいはアルコールを吸収して寸法および電気抵抗が変化し易く、耐熱性、特に高温時の耐酸化性が低いという問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決する方法として、フェノール樹脂の様々な変性が検討されている。たとえば、油脂、ロジンあるいは中性の芳香族化合物を用いた変性により、光、化学薬品などによる劣化または酸化などに対する耐性を向上させた変性フェノール樹脂が数多く提案されている。
たとえば、特開昭61−235413号公報(特許文献1)には、フェノール変性芳香族炭化水素樹脂の反応成分を選択することによって、耐熱性に優れたフェノール系樹脂が得られることが開示されている。しかしながら、この方法で得られたフェノール系樹脂は、成形体を製造した場合、樹脂を高温下にて長時間維持しなければ硬化しないという欠点があった。
【0004】
また、特開平2−274714号公報(特許文献2)には、安価な原料である石油系重質油類またはピッチ類を変性剤として用い、特殊な反応条件を選択することにより、従来のフェノール樹脂では得られない耐熱性、耐酸化性および機械的強度を有し、成形材料として有用な変性フェノール樹脂を提供し得ることが開示されている。
【0005】
さらに、特開平4−145116号公報(特許文献3)には、上記のような変性フェノール樹脂を製造する場合、原料化合物を重縮合させて得た粗製変性フェノール樹脂に、中和処理、水洗処理および/または抽出処理を施して、粗製変性フェノール樹脂中に残存する酸触媒を中和・除去することにより、この樹脂に接触する金属製部材を腐食させることのない変性フェノール樹脂を提供し得ることが開示されている。
【0006】
上記の変性フェノール樹脂の製造方法では、粗製変性フェノール樹脂中に残存する酸触媒は、具体的には、アミン類を用いた中和処理および水洗処理によって中和・除去される。しかし、このような中和処理および水洗処理からなる精製工程を経て得られる変性フェノール樹脂は、樹脂中に中和物が残存し易く、厳しい耐熱性、耐腐食性を要求される製品に用いられる成形材料、たとえば電気・電子部品用成形材料および半導体封止材料としては、未だその性能が不十分であった。
【0007】
また、特開平6−228257号公報(特許文献4)には、粗製変性フェノール樹脂を、特殊な抽出処理を含む精製工程にて精製することにより、実質的に酸を含まない変性フェノール樹脂を提供でき得ることが教示されている。このような精製工程で得られた実質的に酸を含まない変性フェノール樹脂は、エポキシ樹脂と組み合わせることにより、優れた耐熱性および耐湿性を有するとともに、金属に対する腐食性が無い成形材料を提供できる。
【0008】
しかしながら、上記の変性フェノール樹脂は、樹脂溶融粘度が高く、複雑な形状を有する成形品を迅速かつ大量に生産するのに適さないという問題がある他、エポキシ樹脂と組み合わせた場合、耐熱性および寸法安定性、強度などの機械的特性のさらなる向上が望まれていた。
そこで、本発明者らは、石油系重質油類またはピッチ類、フェノール類およびホルムアルデヒド重合物を重縮合して得られた変性フェノール樹脂を、酸触媒の存在下でフェノール類と反応させて低分子量化することによって、樹脂溶融粘度が低く、かつエポキシ樹脂との反応性が向上した変性フェノール樹脂の製造方法を提案した(特開平7−252339号公報(特許文献5)、特開平9−216927号公報(特許文献6)参照)。
【0009】
このようにして得られた変性フェノール樹脂は、エポキシ樹脂との反応性が高く、樹脂溶融粘度が低く成形性が良好であり、エポキシ樹脂と組み合わせることで、耐熱性および成形性が良好で、かつ寸法安定性などの機械的特性にも優れた成形材料を提供することが可能である。
しかしながら、このような変性フェノール樹脂の製造方法では、重縮合工程および低分子量化工程の2工程を必要とするため、製造工程が複雑になるという問題点があった。
【0010】
【特許文献1】
特開昭61−235413号公報
【特許文献2】
特開平2−274714号公報
【特許文献3】
特開平4−145116号公報
【特許文献4】
特開平6−228257号公報
【特許文献5】
特開平7−252339号公報
【特許文献6】
特開平9−216927号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来技術の欠点を解消し、実質的に酸を含まない変性フェノール樹脂が1工程で製造可能であり、かつエポキシ樹脂と組み合わせた場合、優れた耐熱性および耐湿性を有するとともに、金属に対する腐食性がなく、優れた電気絶縁性を有する変性フェノール樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の研究を重ねた結果、石油系重質油類またはピッチ類と、フェノールおよびホルムアルデヒド化合物とを特定の割合にて混合し、触媒を添加しない状態で160〜200℃にて加熱攪拌を行うことにより、実質的に酸を含まない変性フェノール樹脂が製造可能であり、かつエポキシ樹脂と組み合わせた場合、優れた耐熱性および耐湿性を有するとともに、金属に対する腐食性がなく、優れた電気絶縁性を有する変性フェノール樹脂が製造でき得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、石油系重質油類またはピッチ類と、平均分子量から算出した前記石油系重質油類またはピッチ類1モルに対して、2〜10モルのフェノールおよびホルムアルデヒド換算で0.3〜3.0モルのホルムアルデヒド化合物とを混合し、触媒を添加しない状態にて、160〜200℃で加熱攪拌を行うことにより重縮合反応させる変性フェノール樹脂の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記重縮合反応で得られた変性フェノール樹脂が、下記(i)および/または(ii)の工程にて精製される変性フェノール樹脂の製造方法が提供される。
(i)炭素数10以下の脂肪族炭化水素、炭素数10以下の脂環式炭化水素および脂肪族系石油留分からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む溶媒で処理し、前記溶媒に可溶な未反応成分と、得られた変性フェノール樹脂との分離操作を行う工程。
【0015】
(ii)水蒸気蒸留、窒素ガスの吹き込みおよび減圧蒸留から選択されるいずれかの操作により、残留するフェノールを除去する工程。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1または第2の発明において、前記石油系重質油類またはピッチ類が、石油精製過程の接触分解工程または熱分解工程にて得られ、真沸点が180℃以上550℃以下であり、芳香族炭化水素分率fa値が0.40〜0.95であり、かつ芳香環水素量Ha値が20〜80重量%である留出油または残渣油である変性フェノール樹脂の製造方法が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明に係る変性フェノール樹脂の製造方法では、石油系重質油類またはピッチ類、フェノールおよびホルムアルデヒド化合物を特定割合で含む混合物を特定温度にて加熱撹拌して重縮合反応を行うことにより変性フェノール樹脂を製造する。
【0017】
石油系重質油類またはピッチ類
本発明の重縮合反応において、原料として用いられる石油系重質油類またはピッチ類としては、原油の蒸留残油、水添分解残油、接触分解残油、接触改質残油、ナフサまたはLPGの熱分解残油およびこれら残油の減圧蒸留物、溶剤抽出によるエキストラクトあるいは熱処理物、石油精製過程における熱分解および接触分解などの分解工程で得られる特定の留出油または残渣油並びにナフサなどの接触改質における残渣油およびこれら残油の減圧蒸留物などが例示される。
【0018】
石油系重質油類またはピッチ類では、芳香族炭化水素分率fa値および芳香環水素量Ha値を選んで使用することが好ましい。
たとえば、石油系重質油類またはピッチ類は、fa値が0.40〜0.95、より好ましくは0.50〜0.80、さらに好ましくは0.55〜0.75、かつHa値が20〜80%、より好ましくは25〜60%、さらに好ましくは25〜50%を有することが望ましい。
【0019】
なお、fa値およびHa値は、石油系重質油類またはピッチ類の13C−NMR測定によるデータおよび1H−NMR測定によるデータから、下記式に基づいて算出される。
【0020】
【数1】
Figure 2004197038
【0021】
原料として使用する石油系重質油類またはピッチ類のfa値が、0.40より小さいと、芳香族留分が少なくなるため、得られる変性フェノール樹脂の性能の改質効果、特に耐熱性、耐酸化性の改質効果が小さくなる傾向がある。
一方、fa値が0.95より大きい石油系重質油類またはピッチ類を使用する場合には、芳香族炭素とホルムアルデヒド化合物との反応性が低くなる傾向がある。
【0022】
また、原料として使用する石油系重質油類またはピッチ類のHa値が、20%より小さくなると、ホルムアルデヒド化合物と反応する芳香環水素が少なくなり反応性が低下するため、変性フェノール樹脂の性能の改質効果が低下する傾向がある。
一方、Ha値が80%より大きい石油系重質油類またはピッチ類を使用する場合には、変性フェノール樹脂の強度が低下する傾向を示す。
【0023】
このような石油系重質油類またはピッチ類としては、石油精製過程における熱分解、接触分解および接触改質などの分解または改質工程で得られる留出油または残渣油を用いることが、原料の安定供給などの観点から、特に好ましい。
石油精製過程において、このような分解または改質工程に用いられる原料としては、たとえばタールサンド、あるいは蒸留工程で得られる直留ナフサ、直留重質軽油、常圧蒸留残渣油および減圧蒸留残油など、並びに脱硫工程で得られる脱硫減圧重質軽油および脱硫重油などの残渣油、精製油または中間精製油などを例示することができる。このような残渣油、精製油および中間精製油の中、通常、熱分解ではタールサンド、常圧蒸留残渣油および減圧蒸留残油などが用いられており、接触分解では直留重質軽油、常圧蒸留残渣油、脱硫減圧重質軽油および脱硫重油などが用いられており、接触改質では直留ナフサなどが用いられている。
【0024】
このような留出油および残渣油の製造に適用される接触分解法、熱分解法および接触改質法は、所望の上記物性を有する留出油および残渣油が得られれば、特に限定されるものではなく、従来、石油精製の分野で適用されている如何なる方法であってもよい。したがって、たとえば、接触分解法としては、移動床式接触分解法、エアリフト・サーモフォア接触分解法、フードリフロー接触分解法、流動床式接触分解(FCC) 法、UOP 接触分解法、シェル接触分解法、エッソIV型接触分解法、オルソフロー接触分解法などを挙げることができる。また、熱分解法としては、ディレードコーキング法、フルードコーキング法、フレキシコーキング法、ビスブレーク法、ユリカ法、CHERY-P 法、ACTIV 法、KKI 法、コーク流動床式コーキング法およびACR 法などを挙げることができる。さらに、接触改質法としては、プラットフォーミング法、パワーフォーミング法、キャットフォーミング法 、フードリフォーミング法、レニフォーミング法、ハイドロフォーミング法およびハイパーフォーミング法などを挙げることができる。
【0025】
分解または改質工程において、このような方法で得られた接触分解物、熱分解物および接触改質物は、様々な沸点を有するとともに、種々の化合物組成を有する留分に分かれるが、この中、本発明で好適に用いられる留出油または残渣油は、上述の芳香族炭化水素分率fa値および芳香環水素量Ha値を有するとともに、
真沸点が180℃以上、550℃以下、より好ましくは190℃以上、550℃以下、さらに好ましくは200℃以上、540℃以下であることが望ましい。
【0026】
真沸点が180℃未満の留出油または残渣油を用いた場合、原料油中に含まれる縮合多環芳香族成分の量が少なく、反応性が低下する。
一方、真沸点が550℃を超える留出油または残渣油を用いた場合、重縮合反応において、重縮合物(変性フェノール樹脂)が高分子量化し易くなり、分子量の制御が困難である。
【0027】
以上説明した石油系重質油類またはピッチ類は、これを構成する芳香族炭化水素の縮合環数に関して特に限定されないが、2環〜5環の縮合多環芳香族炭化水素にて主に構成されていることが好ましい。重質油類またはピッチ類が、主に単環芳香族炭化水素で構成される場合には、ホルムアルデヒド化合物との反応性が低いため、得られるフェノール樹脂の改質効果が小さくなる傾向がある。
【0028】
また、これら重質油類またはピッチ類は、そのまま重縮合反応に供してもよいが、低反応性のパラフィン留分、すなわち、ノルマルパラフィン、イソパラフィンおよびシクロパラフィンなどを含む炭素数15〜40の飽和炭化水素留分の除去処理を行った後に重縮合反応に供してもよい。
このようなパラフィン留分の除去処理は、たとえば、常法に従いカラムクロマトグラフィーにより行うことができる。
【0029】
このようなカラムクロマトグラフィーで用いる充填剤としては、たとえば、活性アルミナゲル、シリカゲルなどを挙げることができる。これらの充填剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、このようなカラムクロマトグラフィーにおいて、使用される展開剤としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの炭素数5〜8の脂肪族飽和炭化水素化合物、ジエチルエーテルなどのエーテル、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素およびメチルアルコール、エチルアルコールなどのアルコールなどを例示することができる。これら展開剤は、適宜、2種以上を組み合わせて使用することが望ましい。
【0030】
このようなパラフィン留分除去処理を行うことにより、変性フェノール樹脂の性能の改質効果を向上させることができる他、重縮合反応後の反応混合物に含まれる未反応成分の量を減少させ、精製処理を容易にすることが可能である。
フェノール
本発明で上記石油系重質油類またはピッチ類とともに、原料として用いられるフェノールとしては、ヒドロキシベンゼン化合物およびヒドロキシナフタレン化合物などを例示できる。ヒドロキシベンゼン化合物としては、たとえば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、ヒドロキノン、カテコール、フェニルフェノール、ビニルフェノール、ノニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどを挙げることができる。ヒドロキシナフタレン化合物としては、たとえば、α−ナフトールおよびβ−ナフトールなどのモノヒドロキシナフタレン化合物、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレンおよび2,3-ジヒドロキシナフタレン、3,6-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレンなどのジヒドロキシナフタレン化合物およびアルキル基、芳香族基、ハロゲン原子などの置換基を有する上記モノまたはジヒドロキシナフタレン化合物、たとえば2-メチル-1-ナフトール、4-フェニル-1-ナフトール、1-ブロム-2-ナフトール、6-ブロム-2-ナフトールなどを例示することができる。これらフェノールは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明に係る変性フェノール樹脂の製造方法では、上記フェノールは 、平均分子量から算出した石油系重質油類またはピッチ類1モルに対して2〜10モル、好ましくは2〜9モル、さらに好ましくは2.5〜8モルで用いられる。
上記フェノールが、2モル未満となる量で用いられる場合には、樹脂収率が向上せず、コスト的に不利となる。
【0032】
一方、フェノールの量が10モルを超える場合には、フェノール樹脂の変性による改質効果が小さくなる傾向がある。
ホルムアルデヒド化合物
本発明の重縮合反応で用いられるホルムアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒドに加えて、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン(特に、オリゴマー)などの線状重合物、トリオキサンなどの環状重合物などが例示できる。
【0033】
このようなホルムアルデヒド化合物は、架橋剤として作用し、特にパラホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒドを用いることが好ましい。ホルムアルデヒド化合物は、水などの溶媒に溶解して用いてもよい。すなわち、ホルムアルデヒドは、適当な濃度の水溶液として用いてもよく、特にホルマリン(濃度35重量%以上)として用いることが好ましい。
【0034】
本発明に係る変性フェノール樹脂の製造方法では、このようなホルムアルデヒド化合物は、平均分子量から算出した石油系重質油類またはピッチ類1モルに対して、ホルムアルデヒド換算値で、0.3〜3.0モル、好ましくは0.5〜2.8モル、さらに好ましくは0.7〜2.6モルとなる量で用いられる。
石油系重質油類またはピッチ類1モルに対するホルムアルデヒド化合物の量が0.3モル未満の場合には、樹脂の収率が低下し、得られる変性フェノール樹脂の強度が低下する。
【0035】
一方、ホルムアルデヒド化合物の量が3.0モルを超える場合には、得られる変性フェノール樹脂が高分子量化し、所望の粘度が得られない。
重縮合反応
本発明の重縮合反応においては、特定割合の石油系重質油類またはピッチ類、フェノールおよびホルムアルデヒド化合物を加熱攪拌することにより重縮合反応を行い、通常、変性フェノール樹脂を製造する際に用いられる酸触媒を使用しない。
【0036】
このような重縮合反応は、たとえば、以下の方法で行うことが可能である。
すなわち、先ず、上記の特定量の石油系重質油類またはピッチ類、フェノールおよびホルムアルデヒド化合物を重縮合反応が進行しない温度、たとえば50℃以下、好ましくは40〜50℃の温度下にて撹拌して均一に混合する。
次いで、得られた混合物を、高圧反応器内で160〜200℃、好ましくは160〜190℃、さらに好ましくは165〜190℃の温度まで徐々に昇温し、15分間〜6時間、好ましくは30分間〜3時間重縮合反応を行う。
【0037】
なお、重縮合反応時の圧力は、通常、0.3〜1.0MPa(ゲージ圧)程度である。
また、本発明に係る変性フェノール樹脂の製造方法では、石油系重質油類またはピッチ類、フェノールおよびホルムアルデヒド化合物の重縮合反応は、溶媒を用いなくても行うことができるが、適当な溶媒を用いて反応混合物(反応系)の粘度を低下させ、均一な反応が起こるようにしてもよい。
【0038】
このような溶媒としては、たとえば、ニトロベンゼンのようなニトロ化芳香族炭化水素;ニトロエタン、ニトロプロパンのようなニトロ化脂肪族炭化水素;パークレン、トリクレン、四塩化炭素のようなハロゲン化脂肪族炭化水素などを挙げることができる。
以上説明した本発明の変性フェノール樹脂の製造方法は、特開平7−252339号公報などで開示される変性フェノール樹脂の製造方法と比較して、低分子量化工程を必要とせず、著しく工程が削減される。
【0039】
また、本発明の製造方法で製造された変性フェノール樹脂は、溶融粘度が低いために成形性に優れ 、エポキシ樹脂との反応性が高いことが特徴である。
さらに、本発明の変性フェノール樹脂は、酸触媒を使用せずに製造されるため樹脂中に残存する酸化合物を除去するための工程が不要であり、製造工程が簡素化するのみならず、残存イオン性化合物が少ないため、エポキシ樹脂と組み合わせた成形材料は、寸法安定性、強度などの機械的特性および耐熱性、耐湿性のみならず電気絶縁性に優れた成形品を提供することができる。
【0040】
精製工程
このようにして製造された変性フェノール樹脂は種々の用途に供することができるが、該樹脂中には未反応成分などが残存する可能性があるので、適宜、精製処理して、未反応成分、低分子量成分および反応溶媒などを除去することが望ましい。
【0041】
本発明に係る変性フェノール樹脂の精製処理は、上記で得られた変性フェノール樹脂を、下記(i)および/または(ii)の工程にて行う。
すなわち、(i)炭素数10以下の脂肪族炭化水素、炭素数10以下の脂環式炭化水素および脂肪族系石油留分からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む溶媒で処理し、前記溶媒に可溶な未反応成分と、得られた変性フェノール樹脂との分離操作を行う工程および/または(ii)水蒸気蒸留、窒素ガスの吹き込みおよび減圧蒸留から選択されるいずれかの操作により、残留するフェノールを除去する工程である。
【0042】
上記の精製工程(i)では、原料として用いられる石油系重質油類またはピッチ類に含まれる成分の中、反応性が低く、反応生成物中に未反応の状態あるいは反応が不充分な状態で残存する成分および反応時に適宜用いられた反応溶媒などが除去される。
反応混合物から未反応成分を除去する精製工程(i)では、重縮合反応生成物と、炭素数10以下の脂肪族炭化水素、炭素数10以下の脂環式炭化水素および脂肪族系石油留分からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む溶媒とを、この反応混合物が流動状態となる温度で接触させて、反応混合物に含まれる未反応物、たとえば、石油系重質油類またはピッチ類に含まれる低反応性物、あるいはこれに加えて反応が不充分な状態で残存する低分子量成分などを抽出する。また、上記抽出前に、重縮合反応生成物を静置して室温まで冷却して常圧とし、上層に分離した未反応原料油をデカンテーションにて除去した後に抽出操作を行うことが好ましい。
【0043】
ここで、反応混合物が流動状態となる温度とは、反応混合物が抽出溶媒と液−液2相を形成して液状状態を維持し得る温度または反応混合物が抽出溶媒に溶解して液状状態を維持し得る温度である。反応混合物を、流動状態を維持し得る温度に加熱して抽出溶媒と接触させることにより、反応混合物に含まれる未反応物の抽出溶媒への溶出速度および溶出効率を増加させることができる。
【0044】
また、反応混合物と抽出溶媒との接触時に、両者を撹拌・混合することにより、未反応物の抽出効率を向上させることができる。特に、反応混合物および抽出溶媒が液−液2層を形成する場合には、撹拌による両者の接触面積の増大が、迅速かつ効率的な未反応物の抽出を促進する。
このような抽出処理は、蒸発による抽出溶媒量の低減を防止するため、還流しながら行ってもよく、あるいは還流を行わず密閉系にて行ってもよい。
【0045】
上記の抽出処理において、反応混合物と抽出溶媒との接触は、たとえば50〜200℃、好ましくは70〜130℃、さらに好ましくは80〜120℃で行われることが望ましい。
また、処理で用いられる抽出溶媒は、反応混合物に含まれる未反応物の量、1回の精製処理により除去しようとする未反応物の量などによってその量を適宜選択できるが、たとえば反応混合物の重量1gに対して、0.5〜4ml、好ましくは1〜2mlの量で用いることが望ましい。また、接触時間は特に限定されないが、通常、10〜60分、特に20〜30分で迅速に行うことができる。
【0046】
以上説明した抽出操作の終了後、反応混合物および抽出溶媒を、放冷または冷却しながら静置することにより、液−液2相系または液−固2相系が形成される。そして、抽出溶媒をデカンテーションなどによって分離することにより、この溶媒に溶解した未反応物が反応混合物から容易に除去できる。
さらに、精製工程(i)の別の処理方法として、以下の方法を用いることもできる。
【0047】
すなわち、先ず、重縮合反応で得られた反応混合物すなわち粗製変性フェノール樹脂を、反応混合物可溶性の溶媒に溶解する。
このような可溶性溶媒としては、たとえば、トルエン;トルエンとエチルアルコールなどのアルコール類との混合溶媒;トルエンと、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類との混合溶媒;トルエンとテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテルなどのエーテル類との混合溶媒などを挙げることができる。
【0048】
これら可溶性溶媒に粗製変性フェノール樹脂を溶解して得られた溶液は、粘度が低く操作性が良好であるため、精製作業が容易となる。
次に、このようにして得られた溶液を、炭素数10以下の脂肪族炭化水素、炭素数10以下の脂環式炭化水素および脂肪族系石油留分からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む溶媒に投入する。その結果、樹脂成分が析出し、該溶媒に可溶な成分、すなわち、未反応および低反応で残存する成分および重縮合反応時の反応溶媒などが除去されることとなる。
【0049】
上記の炭化水素溶媒としては、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素およびナフサなどの脂肪族系石油留分などが挙げられ、特にn−ヘキサンおよびナフサを用いることが好ましい。この精製工程(i)の処理で得られる変性フェノール樹脂は、粉末状である。
このようにして高度に未反応物を除去された変性フェノール樹脂は、加熱した際の重量減少が見られず、エポキシ樹脂との反応性が向上するという利点を有する。
【0050】
さらに、精製工程(ii)では、反応混合物をそのまま、または精製工程(i)で未反応成分などを除去した後、水蒸気蒸留、窒素ガスの吹き込みおよび減圧蒸留から選択されるいずれかの操作を行うことにより、残留する未反応フェノールを除去する。
未反応フェノールの除去は、これら方法のいずれか1つで、またはこれらの方法を組み合わせて行ってもよい。
【0051】
また、精製工程(i)および(ii)は、必要に応じて、いずれか一方を行っても、両者を組み合わせて行ってもよい。
このような精製処理を施して、樹脂中に残存する未反応物および反応溶媒などを除去することにより、エポキシ樹脂との反応性が向上し、耐熱性および寸法安定性が向上した変性フェノール樹脂とすることができる。
【0052】
エポキシ樹脂とのコンパウンドおよび成形体
本発明に係る変性フェノール樹脂の製造方法により得られた変性フェノール樹脂は、エポキシ樹脂と混合され各種の成形体材料として供される。エポキシ樹脂は、成形収縮率が小さく、耐熱性、耐磨耗性、耐薬品性、電気絶縁性に優れており、必要に応じて硬化剤および/または硬化促進剤と組み合わせて用いられる。
【0053】
上記のようなエポキシ樹脂としては、たとえば、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、混合型および脂環式型などのエポキシ樹脂を挙げることができる。
さらに具体的には、グリシジルエーテル型(フェノール系)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などが;
グリシジルエーテル型(アルコール系)としては、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などが;
グリシジルエステル型としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸型エポキシ樹脂、ダイマー酸型エポキシ樹脂などが;
グリシジルアミン型としては、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸型エポキシ樹脂、ヒダントイン酸型エポキシ樹脂などが;
混合型としては、p−アミノフェノール型エポキシ樹脂、p−オキシ安息香酸型エポキシ樹脂などが挙げられる。上記エポキシ樹脂の中、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の使用が好ましい。上記エポキシ樹脂を2種以上組み合わせたものも用いることができる。
【0054】
本発明の変性フェノール樹脂とエポキシ樹脂との混合割合は特に制限されないが、変性フェノール樹脂とエポキシ樹脂の合計を100重量部として、10/90〜90/10(重量部)であることが好ましく、より好ましくは20/80〜80/20(重量部)である。
変性フェノール樹脂の重量割合が10重量部未満では、得られる成形体の耐熱性、耐湿性の向上効果が十分でなく、90重量部を超えると、成形温度が高くなる傾向がある。
【0055】
また、エポキシ樹脂と混合して変性フェノール樹脂成形材料に用いられる硬化剤および/または硬化促進剤としては、エポキシ樹脂の硬化に用いられる種々の硬化剤および硬化促進剤を用いることができる。硬化剤としては、たとえば、環状アミン類、脂肪族アミン類、ポリアミド類、芳香族ポリアミン類および酸無水物などを挙げることができる。
【0056】
具体的には、たとえば、環状アミン類としては、ヘキサメチレンテトラミンなど;脂肪族アミン類としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラミン、イソホロンジアミン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンタンジアミンなどを挙げることができる。
【0057】
ポリアミド類としては、植物油脂肪酸(ダイマーまたはトリマー酸)ポリアミド、脂肪族ポリアミン縮合物など;
芳香族ポリアミン類としては、m−フェニレンジアミン、4,4'- ジアミノジフェニルメタン、4,4'- ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミンなどを挙げることができる。
【0058】
また、酸無水物類としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノン無水テトラカルボン酸、無水クロレンド酸、ドデシニル無水コハク酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などを挙げることができる。
【0059】
硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7などのジアザビシクロアルケンおよびその誘導体、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩、3フッ化ホウ素−アミン錯体などのルイス酸、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジドなどのルイス塩基、その他ポリメルカプタン、ポリサルファイドなどを挙げることができる。これら硬化剤および硬化促進剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
上記の変性フェノール樹脂成形材料は、上記変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂および必要に応じて用いる硬化剤および/または硬化促進剤に加えて、さらに無機フィラーを含んでいてもよい。
樹脂成形材料に無機フィラーを加えることにより、得られた成形体の強度、寸法安定性などをさらに向上させることができる。
【0061】
このような無機フィラーとしては、プラスチック材料に無機充填材あるいは補強材として使用し得る種々の無機フィラーを用いることができ、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維、ホスファー繊維、ホウ素繊維などの補強性繊維;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水和金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩;硼酸マグネシウムなどの金属硼酸塩;シリカ、雲母、熔融シリカなどの無機充填材などを挙げることができる。
【0062】
このような無機フィラーの配合量は、特に限定されないが、たとえば、変性フェノール樹脂にエポキシ樹脂を加えた樹脂成分100重量部に対して、通常20〜2000重量部、好ましくは20〜800重量部、さらに好ましくは50〜600重量部の量で用いられる。
また、上記の変性フェノール樹脂成形材料は、必要に応じて、さらに添加剤を含んでいてもよく、このような添加剤としては、たとえば、シリコーン、ワックス類などの内部離型剤、カップリング剤、難燃剤、光安定剤、酸化防止剤、顔料、増量剤などを挙げることができる。
【0063】
以上説明した本発明に係る変性フェノール樹脂成形材料は、変性フェノール樹脂およびエポキシ樹脂と、必要に応じて硬化剤および/または硬化促進剤、無機フィラーおよび各種添加剤とを混合して調製され、成形体の製造に供される。
変性フェノール樹脂およびエポキシ樹脂と、硬化剤などとの混合順序は、特に制限されないが、たとえば、変性フェノール樹脂と、エポキシ樹脂とを混練し、硬化剤(硬化促進剤)を加えて、さらによく混合した後、必要に応じて無機フィラーおよび他の添加剤などを加えて混合し、微粉状の成形粉(コンパウンド)とすることができる。
【0064】
具体的には、このようなコンパウンドは、以下の手順にて調製することができる。
(1) 変性フェノール樹脂とエポキシ樹脂とを自動乳鉢を用いて室温で混合撹拌する。
(2) 撹拌混合物に硬化剤および/または硬化促進剤、ワックスなどの他の添加剤を添加混合する。
【0065】
(3) 無機充填材を添加混合する。
(4) さらに、75〜95℃に調整された熱ロール機で3〜15分混合した後、室温に戻して粉砕し、コンパウンドとする。
なお、上記の場合、無機フィラーおよび他の添加剤などの添加は、変性フェノール樹脂とエポキシ樹脂との混合後に行われているが、任意の時期に行うこともできる。
【0066】
このような変性フェノール樹脂成形材料は、従来公知の様々な樹脂成形手段によって成形体とすることができ、成形手段としては、たとえば、圧縮成形、射出成形、押出成形、トランスファー成形および注型成形などを挙げることができる。
さらに具体的には、上記変性フェノール樹脂成形材料を用い、トランスファー成形によって成形体を製造する場合には、成形温度120〜200℃、射出圧5〜300kgf/cm2、好ましくは20〜300mkgf/cm2、型締圧50〜250kgf/cm2および成形時間1〜10分の成形条件を用いることが望ましい。
【0067】
また、成形体は、150〜300℃の温度で、0.5〜24時間加熱することにより、ポストキュアを行うことが望ましい。
ポストキュアを成形体に施すことにより、成形体の耐熱性をさらに向上させることができる。
本発明に係る変性フェノール樹脂成形材料においては、溶融粘度が低く、エポキシ樹脂との反応性が高く、特に耐熱性、接着性および吸湿性において改善された変性フェノール樹脂を用いているため、成形性が良好であり、得られる成形体の寸法安定性などの機械的特性、耐熱性、接着性および吸湿性が改善される。また、本発明に係る変性フェノール樹脂成形材料は、酸化合物を含まない変性フェノール樹脂を用いるので金属部材に対する腐食性を低減できる他、無機フィラーを加えることにより、成形体の機械的強度、電気絶縁性などをさらに向上させることもできる。さらに、上記樹脂成形材料は、変性フェノール樹脂中のイオン性不純物が少ないため電気絶縁性、特に耐湿性に優れた成形品を提供し得る。
【0068】
したがって、本発明の製造方法で製造された変性フェノール樹脂を材料として用いた成形体は、寸法安定性、耐熱性、成形性などに極めて厳しい規格を要求されるプリント基板、絶縁材、シール材などの電気・電子部品用材料として有用であり、また、耐熱性、高集積化による応力損傷対策としての寸法安定性および吸湿性などの向上が要求される半導体封止材としても有用である。
【0069】
【発明の効果】
本発明の変性フェノール樹脂の製造方法によれば、溶融粘度が低く、耐熱性に優れ、かつエポキシ樹脂との反応性が高い変性フェノール樹脂を1工程にて得ることができる。さらに、本発明の変性フェノール樹脂の製造方法によれば、酸触媒を用いないため、酸化合物除去の工程を省略できるとともに、得られた変性フェノール樹脂とエポキシ樹脂とを組み合わせた成形材料は、イオン性不純物含有量が少なく、電気絶縁性、特に耐湿性に優れ、電気・電子部品用材料および半導体封止材として好適である。
【0070】
【実施例】
以下に実施例を例示するが、これら実施例は本発明の範囲を制限するものではない。
以下の実施例において、部およびパーセントは、特に断りのない限り全て重量基準である。なお、反応原料として使用する原料油の性状を表1に示す。これらの原料油は、減圧軽油の流動接触分解(FCC)で得た塔底油を蒸留して得たものである。
【0071】
【表1】
Figure 2004197038
【0072】
また、実施例において測定された数平均分子量、抽出水電気伝導度、樹脂溶融粘度、水酸基当量およびエポキシ樹脂との反応性(ゲル化時間で判断;短いほど反応性が高い)などは、以下の装置または測定方法にて測定した。
<数平均分子量>
東ソー(株)製GPC装置 HLC-8020(カラム:TSK ゲル3000HXL+TSK ゲル2500HXL ×3、標準物質: ポリスチレン)を用いて分子量分布の測定を行い、得られたデータから、ポリスチレンを標準物質として分子量を換算して算出した。
<抽出水電気伝導度>
固形樹脂10gを粉砕したものと、純水100mlとをプレッシャークッカー用容器に入れ密閉し、95℃、20時間熱処理後の抽出水の電気伝導度を電気伝導度計(東亜電波工業(株)製CM-30V)により測定した。
<ICI粘度>
ICI社製,ICIコーンプレート粘度計を用いて測定した。
<水酸基当量>
塩化アセチル化法により測定した。
<ゲル化時間>
JIS K 6910に準拠して170℃で測定した。
<成形直後のショアー硬度>
ショアー硬度計を用いて測定した。
<ガラス転移温度>
ティー・エイ・インスツルメント(株)製 2940型熱機械分析装置を用いて、昇温速度5℃/minの条件にて測定した。線膨張曲線の屈曲点からガラス転移温度(Tg)を求めた。
<曲げ強度、弾性率>
JIS K 6911に準拠し、島津製作所(株)製オートグラフ AG-10TDを用いて3点支持型の曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。
<吸湿率>
JIS K 6911に準拠して、85℃、85%RHの条件で処理する前後の成形体の重量を測定し、その増加率を吸湿率とした。
【0073】
【実施例1】
表1に示す原料油X239g、フェノール414gおよびパラホルムアルデヒド62gを1リットルのオートクレーブに仕込み、窒素置換後、300〜400rpmの速度で撹拌しながら、60分で170℃まで昇温した。170℃まで昇温後、同温度で100分間保持して反応生成物を得た。
【0074】
次に、上記反応生成物を静置して室温まで冷却し、常圧まで減圧した後、上層に分離した未反応原料油をデカンテーションにより除去した。さらに、上記粗変性フェノール樹脂を300〜400rpmの速度で撹拌しながら、175℃に昇温し、フェノールの留出がほとんど無くなるまで40mmHgにて減圧蒸留を行い、未反応フェノールを除去した。
【0075】
このようにして得られた樹脂にヘビーナフサ400mlを加え、100℃にて30分間還流撹拌を行い、樹脂中に残存する未反応原料油を抽出し、デカンテーションにより未反応原料油を含むヘビーナフサを除去した。同じ操作をもう一度行った後、300〜400rpmの速度で撹拌しながら155℃に昇温し、減圧蒸留および窒素吹き込み蒸留を行うことでヘビーナフサを除き、247gの変性フェノール樹脂を得た。
【0076】
得られた変性フェノール樹脂の数平均分子量、抽出水電気伝導度、150℃での溶融粘度および水酸基当量を測定し、その結果を反応条件とともに表2に示した。
【0077】
【比較例1】
表1に示す原料油X239g、フェノール414g、パラホルムアルデヒド62gおよびシュウ酸4gをガラス製の1リットル四つ口フラスコに仕込み、250〜300rpmの速度で撹拌しながら、30分で100℃まで昇温した。100℃まで昇温後、同温度で100分間保持して反応生成物を得た。
【0078】
次に、上記反応生成物を静置して室温まで冷却し、上層に分離した未反応原料油をデカンテーションにより除去した。さらに、上記粗変性フェノール樹脂を撹拌しながら175℃に昇温して、フェノールの留出がほとんど無くなるまで40mmHgにて減圧蒸留を行い、未反応フェノールを除去した。引き続き、190℃まで昇温し、窒素を吹き込みながら蒸留を行うことにより、触媒残渣の除去を行った。
【0079】
このようにして得られた樹脂にヘビーナフサ400mlを加え、実施例1と同様の抽出操作を2回繰り返した後、ヘビーナフサの除去処理を行い、293gの変性フェノール樹脂を得た。
得られた変性フェノール樹脂の数平均分子量、抽出水電気伝導度、150℃での溶融粘度、軟化点および水酸基当量を測定し、その結果を反応条件とともに表2に示した。
【0080】
【表2】
Figure 2004197038
【0081】
【実施例2】
実施例1で得られた変性フェノール樹脂9.37重量部と、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名 YX−4000H)14.06重量部とを自動乳鉢を用いて室温にて混合撹拌した後、撹拌混合物に硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(TPP)1.12重量部を添加混合して、硬化促進剤含有樹脂混合物を得た。
【0082】
また、得られた硬化促進剤含有混合物に、さらにカルナバワックス0.25重量部を添加して混合した後、カーボンブラック0.20重量部および無機充填剤として粒状溶融シリカ((株)龍森製、RD−120)75重量部を添加混合した。得られた混合物を、85℃に調整された熱ロール機で約3分間さらに混合した後、室温まで冷却し、粉砕してコンパウンド(成形材料)を得た。このコンパウンドの配合組成を表3に示す。
【0083】
得られたコンパウンドを、175℃、90秒の条件でトランスファー成形し、さらに175℃、6時間ポストキュアすることにより成形体を得た。得られた成形体の成形直後のショアー硬度、ガラス転移点、曲げ特性および吸湿率を測定し、その結果を表3に示した。
【0084】
【比較例2】
実施例1で得られた変性フェノール樹脂に代えて、比較例1で得られた変性フェノール樹脂を用い、かつ変性フェノール樹脂およびエポキシ樹脂の配合割合を表3に示す値としたこと以外は、実施例2と同様にして硬化促進剤含有樹脂混合物、コンパウンドおよび成形体を製造した。得られた成形体の成形直後のショアー硬度、ガラス転移点、曲げ特性および吸湿率を測定し、その結果を表3に示した。
【0085】
【比較例3】
比較例2で用いた変性フェノールに代えて、フェノール樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名 フェノライトTD−2131)8.62重量部を用い、かつフェノール樹脂およびエポキシ樹脂の配合割合を表3に示す値としたこと以外は、比較例2と同様にして硬化促進剤含有樹脂混合物、コンパウンドおよび成形体を製造した。得られた成形体の成形直後のショアー硬度、ガラス転移点、曲げ特性および吸湿率を測定し、その結果を表3に示した。
【0086】
【表3】
Figure 2004197038

Claims (3)

  1. 石油系重質油類またはピッチ類と、平均分子量から算出した前記石油系重質油類またはピッチ類1モルに対して、2〜10モルのフェノールおよびホルムアルデヒド換算で0.3〜3.0モルのホルムアルデヒド化合物とを混合し、触媒を添加しない状態にて、160〜200℃で加熱攪拌を行うことにより重縮合反応させることを特徴とする変性フェノール樹脂の製造方法。
  2. 前記重縮合反応で得られた変性フェノール樹脂が、下記(i)および/または(ii)の工程にて精製されることを特徴とする請求項1に記載の変性フェノール樹脂の製造方法。
    (i)炭素数10以下の脂肪族炭化水素、炭素数10以下の脂環式炭化水素および脂肪族系石油留分からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む溶媒で処理し、前記溶媒に可溶な未反応成分と、得られた変性フェノール樹脂との分離操作を行う工程。
    (ii)水蒸気蒸留、窒素ガスの吹き込みおよび減圧蒸留から選択されるいずれかの操作により、残留するフェノールを除去する工程。
  3. 前記石油系重質油類またはピッチ類が、石油精製過程の接触分解工程または熱分解工程にて得られ、真沸点が180℃以上550℃以下であり、芳香族炭化水素分率fa値が0.40〜0.95であり、かつ芳香環水素量Ha値が20〜80重量%である留出油または残渣油であることを特徴とする請求項1または2に記載の変性フェノール樹脂の製造方法。
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