JP2004196572A - 層状酸化ランタン、その製造方法、酸化ランタン層間化合物、及びガス吸着剤 - Google Patents
層状酸化ランタン、その製造方法、酸化ランタン層間化合物、及びガス吸着剤 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】層状酸化ランタンを創製し、この創製に基づく新規な物質である層状酸化ランタン、その製造方法、新規な物質である酸化ランタン層間化合物、及び前記層状酸化ランタンを含有して成るガス吸着剤を提供すること。
【解決手段】酸化ランタンを含有し、X線回折において、少なくとも3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに回折パターンが存在することを特徴とする層状酸化ランタンであり、この層状酸化ランタンは、ゾルゲル法により製造された酸化ランタンゲルを100〜500℃に焼成することにより製造される。また、この層状酸化ランタンの層間に特定の金属等を含有する酸化ランタン層間化合物である。前記層状酸化ランタンは、層間に種々の化合物をインターカーレートすることができ、特に、層間にガスを吸収するので、ガス吸着剤という用途を有する。
【選択図】 図2
【解決手段】酸化ランタンを含有し、X線回折において、少なくとも3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに回折パターンが存在することを特徴とする層状酸化ランタンであり、この層状酸化ランタンは、ゾルゲル法により製造された酸化ランタンゲルを100〜500℃に焼成することにより製造される。また、この層状酸化ランタンの層間に特定の金属等を含有する酸化ランタン層間化合物である。前記層状酸化ランタンは、層間に種々の化合物をインターカーレートすることができ、特に、層間にガスを吸収するので、ガス吸着剤という用途を有する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、層状酸化ランタン、その製造方法、酸化ランタン層間化合物、及びガス吸着剤に関し、さらに詳しくは、層状構造を有するところの新規な物質である層状酸化ランタン、その製造方法、新規な物質である酸化ランタン層間化合物、及び前記層状酸化ランタンを含有して成るガス吸着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化ランタン(La2O3)は、六方晶(ヘキサゴナル)の結晶構造を有する。酸化ランタンは、モナズ石又はバストネサイトから分離された硝酸ランタンを原料として、その水溶液にアルカリ、炭酸アルカリ酸又はシュウ酸などを添加して沈澱を得、この沈澱を乾燥し、700℃以上で焼成して製造される。この酸化ランタンは、空気中の炭酸ガスを吸収して保存中に炭酸ランタンに変わりやすい性質を有する。そのために保存中に灼熱減量が増加したり、肉桂色が炭酸塩の白色に変化する。従来の酸化ランタンは、高屈折率で低分散のレンズを製造するためのレンズ添加剤、セラミックコンデンサ添加剤、石油分離精製触媒、NOx分解触媒等としての用途が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
化学工業日報社、2001年1月23日発行、「13901の化学商品」P217
一方、従来から層状化合物として酸化バナジウム、酸化ニオブ、モンモリロナイト等の粘土等が知られている。これら層状化合物は、その層間に原子、分子又は物質をインターカーレートすることにより種々の機能性材料として期待される。同様に、酸化ランタン自体も活性な化合物であるから、もしも層状酸化ランタンが創製されると、その層状酸化ランタンは表面積が増大し、かつ層間に種々の原子、分子又は物質をインターカーレートすることにより種々の新たな機能を有する新規な複合材料を期待することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような状況の下に完成された。すなわち、この発明は、新規物質である層状酸化ランタンを提供し、その製造方法を提供し、新規物質である酸化ランタン層間化合物を提供し、層状酸化ランタンが有する特有の機能に基づく新規な用途を提供することをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明の前記課題を解決するための第1の手段は、酸化ランタンを含有し、X線回折において、少なくとも3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに回折パターンが存在することを特徴とする層状酸化ランタンである。
【0006】
この発明の前記課題を解決するための第2の手段は、ゾルゲル法により調製された酸化ランタンゲルの粉末を100〜500℃に焼成することを特徴とする前記第1の手段である層状酸化ランタンの製造方法である。
【0007】
この発明の前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段である層状酸化ランタンの層間に、周期表1〜14族に属する金属、前記金属のイオン、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物及び前記金属または前記金属のイオンを有する金属錯体もしくは有機化合物の中から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする酸化ランタン層間化合物である。
【0008】
この発明の前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段である層状酸化ランタンを含有して成ることを特徴とするガス吸着剤であり、そのガス吸着剤の好適な態様は、A=O(但し、Aは炭素原子、窒素原子又は硫黄原子を示す。)の構造を有するガスを吸着する吸着剤であり、特に炭酸ガス吸着剤、窒素酸化物ガス吸着剤又は硫黄酸化物ガス吸着剤である。
【0009】
【発明の実施の形態】
(層状酸化ランタン)
この発明に係る層状酸化ランタンは、酸化ランタンの結晶格子が層状に積層してなる層状構造を有する新規な物質である。この層状構造は、X線回折において、少なくとも3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに回折パターンが存在し、しかもこのピークを与える2θ(°)がインターカーレートする物質により規則的に変化することによって特徴付けられる。また、この層状酸化ランタンのSEM写真によると、鱗片状の層が何重にも重なっていることが観察されることによっても裏付けられる。この層状酸化ランタンの層間距離は、5〜18Åである。
【0010】
また、この層状酸化ランタンは実質的にLa原子と酸素原子とを有して形成されてなることが、元素分析結果から、層を構成するLaとインターカーレートした物質に対応する元素が検出されることにより裏付けられる。この発明に係る層状酸化ランタンが層状であることは、この層状酸化ランタンを熱分析すると、六方晶結晶に変化することを示すTG曲線及びDTA曲線の変化が500〜800℃で観測され、また、800℃で焼成した試料のX線回折パターンは、六方晶結晶に対応していることからも示される。
【0011】
この発明に係る層状酸化ランタンは、薄膜に形成することができる。形成された層状酸化ランタンの薄膜は、高い撥水性を示す。薄膜は、浸漬法、ロールコータ法等の塗布法、刷毛塗り法等により、形成することができる。
【0012】
(層状酸化ランタンの製造方法)
この発明に係る層状酸化ランタンは、この発明に係る製造方法により製造することができる。すなわち、この発明に係る層状酸化ランタンは、ゾルゲル法により調製された酸化ランタンゲルの粉末を100〜500℃に焼成することにより得ることができる。
【0013】
酸化ランタンゲルは酸化ランタンゾルを調製し、次いで乾燥することにより得ることができる。
【0014】
酸化ランタンゾルは、水と反応して酸化ランタンのゾルを形成するランタン化合物、溶媒及び酸又は塩基を混合して所定時間所定の温度に加熱することにより得ることができる。
【0015】
前記ランタン化合物としては、具体的には、ランタンハロゲン化物、ランタンハロゲン酸塩、ランタン過ハロゲン酸塩、ランタン無機酸塩、ランタン有機酸塩、ランタンの水酸化物、ランタンアルコキシド、及びランタン錯体からなる群から選択されたランタン化合物を挙げることができる。
【0016】
ランタンハロゲン化物としては、例えば、三フッ化ランタン、三塩化ランタン、三臭化ランタン、及び三沃化ランタンを挙げることができる。
【0017】
ランタンハロゲン酸塩としては、塩素酸ランタン、臭素酸ランタン、及び沃素酸ランタン等を挙げることができる。
【0018】
ランタン過ハロゲン酸塩としては、過塩素酸ランタン、過臭素酸ランタン、及び過沃素酸ランタン等を挙げることができる。
【0019】
ランタン無機酸塩としては、例えば、硝酸ランタン、塩化ランタン、硫酸ランタン及び炭酸ランタン等を挙げることができる。
【0020】
前記ランタンの有機酸塩としては、La(OCOR1)4で示されるモノカルボン酸塩、La(OCOR2COO)2(R1、R2は、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、及び環状アルキレン基、並びに炭素数6〜20の芳香族基)で示されるジカルボン酸塩、並びにLa(OH)2(OCOR3)2、LaO(OH)(OCOR3)2、La2O(OH)(OCOR3)5、及びLa4O3(OCOR3)10の何れかの一般式で示されるカルボン酸ランタニル(以上の化学式において、R3は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)を挙げることができる。
【0021】
モノカルボン酸塩としては、酢酸ランタン、プロピオン酸ランタン、酪酸ランタン、吉草酸ランタン、カプロン酸ランタン、ヘプタン酸ランタン、オクタン酸ランタン、ノナン酸ランタン、デカン酸ランタン、ミリスチン酸ランタン、パルミチン酸ランタン、及びステアリン酸ランタン等を挙げることができる。
【0022】
ジカルボン酸塩としては、蓚酸ランタン、及び琥珀酸ランタン等を挙げることができる。
【0023】
カルボン酸ランタニルとしては、酢酸ランタニル、プロピオン酸ランタニル、酪酸ランタニル、吉草酸ランタニル、カプロン酸ランタニル、ヘプタン酸ランタニル、オクタン酸ランタニル、ノナン酸ランタニル、デカン酸ランタニル、ミリスチン酸ランタニル、パルミチン酸ランタニル、及びステアリン酸ランタニル等を挙げることができる。
【0024】
ランタンのアルコキシドとしては、La(OR4)4(R4は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)で示される化合物を挙げることができる。
【0025】
ランタン錯体としては、例えばジケトン錯体、ジケトン錯体ハロゲン化物、及びジケトン錯体無機酸塩等を挙げることができる。
【0026】
ジケトン錯体としては、例えば、アセチルアセトナトランタン、アセト酢酸ランタン、1,3−プロパンジオナトランタン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトランタン、1−フェニルプロパンジオナトランタン、及びトロポロナトランタン等を挙げることができる。
【0027】
ジケトン錯体ハロゲン化物としては、アセチルアセトナトランタン塩化物、アセト酢酸ランタン塩化物、1,3−プロパンジオナトランタン塩化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトランタン塩化物、1−フェニルプロパンジオナトランタン塩化物、及びトロポロナトランタン塩化物等のジケトン錯体塩化物、アセチルアセトナトランタン臭化物、アセト酢酸ランタン臭化物、1,3−プロパンジオナトランタン臭化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトランタン臭化物、1−フェニルプロパンジオナトランタン臭化物、及びトロポロナトランタン臭化物等のジケトン錯体臭化物、アセチルアセトナトランタン沃化物、アセト酢酸ランタン沃化物、1,3−プロパンジオナトランタン沃化物、1,3ージフェニル−1,3−プロパンジオナトランタン沃化物、1−フェニルプロパンジオナトランタン沃化物、及びトロポロナトランタン沃化物等のジケトン錯体沃化物、並びに、アセチルアセトナトランタンフッ化物、アセト酢酸ランタンフッ化物、1,3−プロパンジオナトランタンフッ化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトランタンフッ化物、1−フェニルプロパンジオナトランタンフッ化物、及びトロポロナトランタンフッ化物等のジケトン錯体フッ化物等を挙げることができる。
【0028】
前記各種のランタン化合物の中でも、ランタン無機酸塩、ランタン有機酸塩、ランタンの水酸化物が好ましく、特にランタンの硝酸塩、ランタンの塩化物塩、ランタンの硫酸塩、ランタンの炭酸塩、La(OCOR1)4で示されるランタンモノカルボン酸塩、ランタンの水酸化物等が好ましい。
【0029】
ランタンの無機塩若しくは有機塩又は水酸化物と混合される溶媒としては、水、並びに、水に溶解乃至混和するアルコール類、及びエステル類よりなる群から選択される少なくとも一種の水性有機溶媒と水との混合溶媒を挙げることができる。
【0030】
前記アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられ、エステル類としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル等の低級アルキル低級カルボン酸エステルを挙げることができる。これら各種の溶媒の中でも水及びアルコール類が好ましい。また前記各種の溶媒は単独で使用することも、複数種類の溶媒を組み合わせて使用することができる。複数種類の溶媒を組み合わせる場合、混合溶媒として使用してもよく、また、ランタン化合物と特定の溶媒とを混合し、得られる混合物に他の溶媒をさらに混合するというようにランタン化合物に対して別々に使用しても良い。
【0031】
ランタン化合物と溶媒との配合割合は、溶媒100重量部に対しランタン化合物0.1〜50重量部、好ましくはランタン化合物1〜30重量部である。
【0032】
ゾル形成に際しては、ランタン化合物及び溶媒の混合物と酸又は塩基とを混合するのが好ましい。混合物と混合される酸としては、無機酸及び有機酸を挙げることができる。
【0033】
前記無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硝酸、及び硫酸等を挙げることができる。有機酸としては、例えば低級のモノカルボン酸を挙げることができ、具体的には酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、及びイソ酪酸等を挙げることができる。
【0034】
前記塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等の苛性アルカリ類、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミン等のアミン類、及びエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチル−N−エタノールアミン等のアルカノールアミン類、及びアンモニア水、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の第四級アンモニウム化合物等を挙げることができる。
【0035】
溶媒と酸又は塩基との割合は、通常、酸又は塩基/水の重量比が0.01〜1、好ましくは0.01〜0.5になるように決定される。
【0036】
前記ランタン化合物、溶媒及び酸又は塩基との混合物が加熱される温度は、通常0〜100℃、好ましくは15〜95℃である。加熱温度が前記範囲から外れるとゾルが好適に形成されないことがある。
【0037】
加熱時間は、通常0.1〜50時間、好ましくは0.1〜10時間である。
【0038】
かくして酸化ランタンゾルは、そのまま濃縮、乾固することにより酸化ランタンゲル粉末という態様に調製され、又は用途に応じて適宜の基板上に塗布され、次いで乾燥されて酸化ランタンゲル被膜という態様等に調製される。
【0039】
前記基材には特に制限はなく、用途に応じて適宜に選択することができ、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、及び鉛ガラス等のガラス系材料から形成された基材、普通鋼、構造用定合金鋼、高張力鋼、耐熱鋼、高クロム系耐熱鋼、及び高ニッケル−クロム系耐熱鋼等の合金鋼、並びにステンレス鋼等の鉄鋼材料、工業用純アルミニウム、5000系Al−Mg系アルミニウム合金及び6000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金、銀入銅、錫入銅、クロム銅、クロム・ジルコニウム銅、及びジルコニウム銅等の各種銅合金、並びに純チタン、抗力チタン合金、及び耐食性チタン合金等のチタン合金等の金属系材料から形成された基材、ムライト磁器、アルミナ磁器、ジルコン磁器、コーディエライト磁器、及びステアタイト磁器等のセラミックス系材料から形成された基材、前記金属系材料から形成された基材の表面を琺瑯、グラスライニング、及びセラミックスコーティング等の何れかによって被覆した被覆金属基材等を挙げることができる。
【0040】
この発明の方法においては、いずれの態様になっているにせよ、酸化ランタンゲルが100〜500℃に加熱される。加熱温度が100℃未満であると、層状酸化ランタンが形成されない。また、加熱温度が500℃を越えると温度の上昇に連れて六方晶の酸化ランタンが形成されていく。
【0041】
前記温度範囲にて加熱する時間としては、通常0.1〜10時間、好ましくは0.1〜5時間である。加熱雰囲気としては、通常、空気である。
(酸化ランタン層間化合物)
前記第1の手段である層状酸化ランタンは、積層構造を有し、その層間距離は、5〜18Åであることから、その層間には、金属または金属イオン等を容易にインターカーレートすることができ、層間化合物を生成させることができる。この発明の酸化ランタン層間化合物は、その層間に、周期表1〜14族に属する金属、前記金属のイオン、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物及び前記金属または前記金属のイオンを有する金属錯体もしくは有機化合物の中から選ばれた少なくとも一種を含有している。
【0042】
前記金属としては、1族のアルカリ金属、2族のアルカリ土類金属、3〜12族の遷移金属、13族及び14族から任意に選択することができる。例えば、アルカリ金属として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムが、アルカリ土類金属として、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムが挙げられる。また、遷移金属としては、タンタル、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、銅、金、アルミニウム、ガリウム等を挙げることができる。
【0043】
また、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物としては、光触媒や触媒として有用なTiO2、CeO2等を挙げることができる。また、前記金属または前記金属のイオンを有する金属錯体または有機化合物としては、各種金属のジケトン錯体、金属セッケン等を挙げることができる。
【0044】
この発明の酸化ランタン層間化合物は、前記層状酸化ランタンと周期表1〜14族に属する金属、前記金属のイオン、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物及び前記金属または前記金属のイオンを有する有機化合物とを単に接触させるのみで、生成させることができる。より具体的には、例えば、層状酸化ランタンを前記無機化合物又は有機化合物の溶液に含浸することによって、生成させることができる。また、酸化ランタンゾルに前記金属のイオンまたは金属のイオンを有する無機化合物もしくは有機化合物を加え、この混合ゾルから溶媒を除去し、ゲル化した後、適切な温度で過熱、焼成することによって形成することもできる。この発明の酸化ランタン層間化合物は、各種の化学反応を生起させ、また促進する触媒として有用である。
【0045】
この触媒としては、酸化反応触媒、還元反応触媒、有機化合物の置換反応触媒、有機化合物の脱離反応触媒、重合反応触媒、縮合反応触媒、加水分解反応触媒、重質油の部分酸化反応触媒、炭化水素の脱水素反応触媒またはアルコールの脱水反応触媒等を挙げることができる。
【0046】
また、この発明の層状酸化ランタンは、層状構造を有しているが故に、以下のような用途を有する。
【0047】
(層状酸化ランタンの用途)
層状酸化ランタンは、その層間に種々の物質をインターカーレートする。インターカーレートされる物質がガスであると、この層状酸化ランタンは、ガス吸着剤としての用途を有する。
【0048】
インターカーレートされるガスとしては、A=Oの構造を分子中に有するガスが好ましい。前記構造において、Aとして炭素、硫黄及び窒素等を挙げることができる。A=Oの構造を分子中に有するガスとして、二酸化炭素、SOX及びNOX等を挙げることができる。前記A=Oの構造を有する分子の中には、A−O−イオンとなって層状酸化ランタンに吸着または結合されるものもあると、推察される。例えば、二酸化炭素は、炭酸イオンやカルボキシレートイオンとなって層状酸化ランタンに結合しているものもある。
【0049】
A=Oの構造を分子中に有するガスを層状酸化ランタンの層間に吸着可能なガス吸着剤は、二酸化炭素、SOX及びNOX等を含有する排ガス処理装置に組み込んで使用されることができる。したがって、この発明のガス吸着剤は、各種燃焼装置から排出されるガスの処理、排煙脱硝処理、排煙脱硫処理等に有効に用いることができ、環境保全に貢献するところの大きいガス吸着剤となる。
【0050】
この発明のガス吸着剤は、この発明に係る前記層状酸化ランタンを含有している限り、例えば、活性炭、シリカゲル等の他のガス吸着剤と共に用い、複合的なガス吸着剤とすることができる。また、使用態様に対応して、特定の形状の成形体として用いてもよく、支持体に取り付け、さらには開放容器に収容して用いることもできる。
【0051】
一方、この発明に係る層状酸化ランタンは、優れた撥水性を有するので、層間に種々の化合物をインターカーレートするにせよ、しないにせよ、撥水被膜を形成することのできる撥水剤として好適に使用されることができる。
【0052】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明をさらに詳細に説明するが、この実施例によってこの発明はなんら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
(酸化ランタンゾルNo.1の調製)
La(CH3COO)3・1.5H2O 3.43g(0.01mol)を99.5%エタノール60.0gに添加し、次いで、60%HNO36.32g(0.060mol)とH2O27.043g(1.5mol)との混合溶液を添加した。このようにして得た混合物を80℃で3時間、加熱撹拌し、加熱撹拌による容積減少を補充するために減少容積に相当する容積の99.5%エタノールを加え、酸化ランタンゾルNo.1を調製した。
【0054】
〔層状酸化ランタンAの製造(その1)〕
前記のとおりに調製して得た酸化ランタンゾルNo.1を、オイルバスで初めに70℃で40分間、次いで90℃で20分間、続いて120℃で90分間加熱しながら、ロータリーエバポレータで濃縮、乾固した。このようにして得た酸化ランタンゲル粉末を、400℃に保持した電気炉で30分間焼成して、層状酸化ランタンAを製造した。
【0055】
この層状酸化ランタンAのX線回析パターンを測定した。測定に使用された装置は、X線回折(XRD)装置(RAD−2B、リガク製)であった。粉末X線分析結果としてX線回折図を図1に示した。図1に示されるように、X線回折図において、2θ(°)のピーク(●を付したピーク)が、3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに存在していた。電界放射形走査電子顕微鏡(FM−SEM、JSM−6700F)により、層状酸化ランタンAの結晶形態を観察した。観察結果として、その電子顕微鏡写真を図2に示した。図1及び図2に示す結果から、この例で製造された層状酸化ランタンは、層状構造を有することが確認された。また、この層状酸化ランタンAの層間距離は、9.2Åであった。
【0056】
〔層状酸化ランタンAの製造(その2)〕
前記のようにして得られた酸化ランタンゾルNo.1 5.0gに2−(2−メトキシエトキシ)エタノールをランタンに対して1当量(0.13g)添加し、得られる混合物ゾルを、硝酸で充分に洗浄してなる石英ガラスの表面に、スピナー法(500rpmで5秒、次いで2000rpmで30秒)により塗布した。石英ガラスの表面に形成されたゲル膜を、電気炉を用いて400℃で焼成した。得られた焼成薄膜に水滴を落としてその水滴の接触角を、接触角計(CA−D、協和界面科学製)で測定した。接触角は、焼成してから時間の経過と共に変化した。焼成後1日経過した時点での接触角は45°、2日経過した時点での接触角は67°、5日経過した時点での接触角は87°、7日経過した時点での接触角は92°であった。接触角が80°以上である薄膜の表面は充分に撥水性があると、評価できる。
【0057】
(実施例2)
(酸化ランタンゾルNo.2の調製)
La(NO3)3・6H2O 4.33g(0.01mol)を99.5%エタノール60.0gに溶解し、次いで、60%HNO36.32g(0.060mol)とH2O27.0g(1.5mol)との混合溶液を添加した。このようにして得た溶液を80℃で3時間、加熱撹拌し、加熱撹拌による容積減少を補充するために減少容積に相当する容積の99.5%エタノールを加え、酸化ランタンゾルNo.2を調製した。
【0058】
〔層状酸化ランタンBの製造〕
前記のとおり調製して得た酸化ランタンゾルNo.2を用い、前記〔層状酸化ランタンAの製造〕と同様にして、層状酸化ランタンBを製造した。前記〔層状酸化ランタンAの製造〕におけるのと同様にして、この層状酸化ランタンBのX線回析パターンを測定し、その回析結果としてX線回折図を図3に示す。この層状酸化ランタンBの層間距離は、9.1Åであった。
【0059】
(実施例3)
(酸化ランタンゾルNo.3の調製)
La(NO3)3・6H2O 4.33g(0.01mol)を蒸留水60gに溶解し、次いで、60%HNO36.3g(0.060mol)を添加した。このようにして得た溶液を80℃で3時間、加熱撹拌し、加熱撹拌による容積減少を補充するために減少容積に相当する容積の蒸留水を加え、酸化ランタンゾルNo.3を調製した。
【0060】
〔層状酸化ランタンCの製造〕
前記のとおり調製して得た酸化ランタンゾルNo.3を、80℃で60分間、次いで90℃で20分間、続いて120℃で30分間、濃縮、乾固した以外は、前記〔層状酸化ランタンAの製造〕と同様にして、層状酸化ランタンCを製造した。この層状酸化ランタンCのX線回折パターンには、2θが9.63°、29.1°及び39.0°に回折ピークが観測された。この層状酸化ランタンCの層間距離は、9.2Åであった。
【0061】
(実施例4)
(酸化ランタンゾルNo.4の調製)
La(NO3)3・6H2O 4.33g(0.01mol)をH2O60gに溶解し、次いで、29%アンモニア水をpH9になるまでを添加し、水酸化ランタンの沈殿物を得た。この沈殿物を濾過し、濾液がpH7になるまで蒸留水で洗浄した。洗浄した沈殿物をデシケーター内に一日放置した後、蒸留水60gに溶解し、60%HNO3 6.3g(0.060mol)を添加した。このようにして得た溶液を80℃で3時間、加熱撹拌し、加熱撹拌による容積減少を補充するために減少容積に相当する容積の蒸留水を加え、酸化ランタンゾルNo.4を調製した。
【0062】
〔層状酸化ランタンDの製造〕
前記のとおり調製して得た酸化ランタンゾルNo.4を用い、前記〔層状酸化ランタンCの製造〕と同様にして、層状酸化ランタンDを製造した。この層状酸化ランタンDのX線回折パターンには、2θが9.66°、29.1°及び39.1°に回折ピークが観測された。この層状酸化ランタンDの層間距離は、9.2Åであった。
【0063】
(実施例5)
実施例3と同様にして酸化ランタンゾル液を調整した。このゾル液に、硝酸銅(II)・3水和物 2.4g(0.01モル)を蒸留水5gに溶解した溶液を加えた。混合ゾル液をロータリーエバポレーターで90℃で20分間、続いて120℃で30分間、濃縮、乾固した。このようにして得られた銅イオンを含む複合酸化ランタンゲル粉末を170℃に保持したオーブンで2時間加熱して、複合層状酸化ランタンEを製造した。
【0064】
この複合層状酸化ランタンEの粉末X線回折パターンには、2θ=12.8°、24.8°、38.6°に回折ピークが観測され、層状構造を有することが確認された。プラズマ発光分析法(セイコーインスツルメント 誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS-1700HVR)による元素分析より銅とランタンの存在を確認した。また、この複合層状酸化ランタンEの層間距離は6.9Åであった。
【0065】
(実施例6)
実施例3と同様にして酸化ランタンゾル液を調整した。このゾル液に、炭酸セシウム 1.3g(0.0004モル)を蒸留水10gに溶解した溶液を加えた。混合ゾル液をロータリーエバポレーターで90℃で20分間、続いて120℃で30分間、濃縮、乾固した。デシケータ内で一夜保存した後、銅イオンを含む複合酸化ランタンゲル粉末を480℃に保持した電気炉で30分間加熱して、複合層状酸化ランタンFを製造した。
【0066】
この複合層状酸化ランタンFの粉末X線回折パターンには、2=6.9°、13.8°、27.4°に回折ピークが観測され、層状構造を有することが確認された。プラズマ発光分析法(セイコーインスツルメント 誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS-1700HVR)による元素分析よりセシウムとランタンの存在を確認した。また、この複合層状酸化ランタンEの層間距離は12.8Åであった。
【0067】
(実施例7)
〔層状酸化ランタンの炭酸ガス吸着性能の評価〕
前記〔層状酸化ランタンAの製造〕で得た層状酸化ランタンAを、炭酸ガスを充填したチャンバー内に保存して、炭酸ガスを吸着させた。この層状酸化ランタンAのフーリエ変換赤外分光分析(パーキンソンエルマーパラゴン一1000PC)を行った。その分析結果として、フーリエ変換赤外分光スペクトルを図4に示す。図4において、1080cm−1及び1435cm−1(→を付した吸収)は、炭酸ガスに起因するカルボキシレートの吸収であり、この層状酸化ランタンAには、炭酸ガスがカルボキシレートイオンとして存在していることが確認された。なお、この炭酸ガスを吸着している層状酸化ランタンAを塩酸洗浄した後、再度、フーリエ変換赤外分光スペクトルにより確認したところ、1080cm−1及び1435cm−1の吸収は消失していた。カルボキシレートイオンが塩酸により除去されたことから、層状酸化ランタンAが炭酸ガスを吸着していることがより明確となった。
【0068】
(実施例8)
〔層状酸化ランタンEの炭酸ガス吸着性能の評価〕
前記層状酸化ランタンEを、炭酸ガスを充填したチャンバー内に保存して、炭酸ガスを吸着させた。この層状酸化ランタンEのフーリエ変換赤外分光分析を実施例7と同様にしてを行った。その結果、1630cm−1、1385cm−1および1045cm−1に吸収が観測された。この吸収は、炭酸イオンによるものであるから、炭酸ガスは層状酸化ランタンEの中に炭酸イオンとして存在していることが分かった。
【0069】
【発明の効果】
この発明によれば、層状酸化ランタンが創製され、この創製に基づく新規な物質である層状酸化ランタン、その製造方法、新規な物質である酸化ランタン層間化合物、及び前記層状酸化ランタンを含有して成るガス吸着剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の層状酸化ランタンAのX線回折図である。
【図2】この発明の層状酸化ランタンAの電子顕微鏡写真である。
【図3】この発明の層状酸化ランタンBのX線回折図である。
【図4】この発明の層状酸化ランタンAのフーリエ変換赤外分光スペクトルである。
【発明の属する技術分野】
この発明は、層状酸化ランタン、その製造方法、酸化ランタン層間化合物、及びガス吸着剤に関し、さらに詳しくは、層状構造を有するところの新規な物質である層状酸化ランタン、その製造方法、新規な物質である酸化ランタン層間化合物、及び前記層状酸化ランタンを含有して成るガス吸着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化ランタン(La2O3)は、六方晶(ヘキサゴナル)の結晶構造を有する。酸化ランタンは、モナズ石又はバストネサイトから分離された硝酸ランタンを原料として、その水溶液にアルカリ、炭酸アルカリ酸又はシュウ酸などを添加して沈澱を得、この沈澱を乾燥し、700℃以上で焼成して製造される。この酸化ランタンは、空気中の炭酸ガスを吸収して保存中に炭酸ランタンに変わりやすい性質を有する。そのために保存中に灼熱減量が増加したり、肉桂色が炭酸塩の白色に変化する。従来の酸化ランタンは、高屈折率で低分散のレンズを製造するためのレンズ添加剤、セラミックコンデンサ添加剤、石油分離精製触媒、NOx分解触媒等としての用途が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
化学工業日報社、2001年1月23日発行、「13901の化学商品」P217
一方、従来から層状化合物として酸化バナジウム、酸化ニオブ、モンモリロナイト等の粘土等が知られている。これら層状化合物は、その層間に原子、分子又は物質をインターカーレートすることにより種々の機能性材料として期待される。同様に、酸化ランタン自体も活性な化合物であるから、もしも層状酸化ランタンが創製されると、その層状酸化ランタンは表面積が増大し、かつ層間に種々の原子、分子又は物質をインターカーレートすることにより種々の新たな機能を有する新規な複合材料を期待することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような状況の下に完成された。すなわち、この発明は、新規物質である層状酸化ランタンを提供し、その製造方法を提供し、新規物質である酸化ランタン層間化合物を提供し、層状酸化ランタンが有する特有の機能に基づく新規な用途を提供することをその課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明の前記課題を解決するための第1の手段は、酸化ランタンを含有し、X線回折において、少なくとも3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに回折パターンが存在することを特徴とする層状酸化ランタンである。
【0006】
この発明の前記課題を解決するための第2の手段は、ゾルゲル法により調製された酸化ランタンゲルの粉末を100〜500℃に焼成することを特徴とする前記第1の手段である層状酸化ランタンの製造方法である。
【0007】
この発明の前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段である層状酸化ランタンの層間に、周期表1〜14族に属する金属、前記金属のイオン、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物及び前記金属または前記金属のイオンを有する金属錯体もしくは有機化合物の中から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする酸化ランタン層間化合物である。
【0008】
この発明の前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段である層状酸化ランタンを含有して成ることを特徴とするガス吸着剤であり、そのガス吸着剤の好適な態様は、A=O(但し、Aは炭素原子、窒素原子又は硫黄原子を示す。)の構造を有するガスを吸着する吸着剤であり、特に炭酸ガス吸着剤、窒素酸化物ガス吸着剤又は硫黄酸化物ガス吸着剤である。
【0009】
【発明の実施の形態】
(層状酸化ランタン)
この発明に係る層状酸化ランタンは、酸化ランタンの結晶格子が層状に積層してなる層状構造を有する新規な物質である。この層状構造は、X線回折において、少なくとも3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに回折パターンが存在し、しかもこのピークを与える2θ(°)がインターカーレートする物質により規則的に変化することによって特徴付けられる。また、この層状酸化ランタンのSEM写真によると、鱗片状の層が何重にも重なっていることが観察されることによっても裏付けられる。この層状酸化ランタンの層間距離は、5〜18Åである。
【0010】
また、この層状酸化ランタンは実質的にLa原子と酸素原子とを有して形成されてなることが、元素分析結果から、層を構成するLaとインターカーレートした物質に対応する元素が検出されることにより裏付けられる。この発明に係る層状酸化ランタンが層状であることは、この層状酸化ランタンを熱分析すると、六方晶結晶に変化することを示すTG曲線及びDTA曲線の変化が500〜800℃で観測され、また、800℃で焼成した試料のX線回折パターンは、六方晶結晶に対応していることからも示される。
【0011】
この発明に係る層状酸化ランタンは、薄膜に形成することができる。形成された層状酸化ランタンの薄膜は、高い撥水性を示す。薄膜は、浸漬法、ロールコータ法等の塗布法、刷毛塗り法等により、形成することができる。
【0012】
(層状酸化ランタンの製造方法)
この発明に係る層状酸化ランタンは、この発明に係る製造方法により製造することができる。すなわち、この発明に係る層状酸化ランタンは、ゾルゲル法により調製された酸化ランタンゲルの粉末を100〜500℃に焼成することにより得ることができる。
【0013】
酸化ランタンゲルは酸化ランタンゾルを調製し、次いで乾燥することにより得ることができる。
【0014】
酸化ランタンゾルは、水と反応して酸化ランタンのゾルを形成するランタン化合物、溶媒及び酸又は塩基を混合して所定時間所定の温度に加熱することにより得ることができる。
【0015】
前記ランタン化合物としては、具体的には、ランタンハロゲン化物、ランタンハロゲン酸塩、ランタン過ハロゲン酸塩、ランタン無機酸塩、ランタン有機酸塩、ランタンの水酸化物、ランタンアルコキシド、及びランタン錯体からなる群から選択されたランタン化合物を挙げることができる。
【0016】
ランタンハロゲン化物としては、例えば、三フッ化ランタン、三塩化ランタン、三臭化ランタン、及び三沃化ランタンを挙げることができる。
【0017】
ランタンハロゲン酸塩としては、塩素酸ランタン、臭素酸ランタン、及び沃素酸ランタン等を挙げることができる。
【0018】
ランタン過ハロゲン酸塩としては、過塩素酸ランタン、過臭素酸ランタン、及び過沃素酸ランタン等を挙げることができる。
【0019】
ランタン無機酸塩としては、例えば、硝酸ランタン、塩化ランタン、硫酸ランタン及び炭酸ランタン等を挙げることができる。
【0020】
前記ランタンの有機酸塩としては、La(OCOR1)4で示されるモノカルボン酸塩、La(OCOR2COO)2(R1、R2は、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基、及び環状アルキレン基、並びに炭素数6〜20の芳香族基)で示されるジカルボン酸塩、並びにLa(OH)2(OCOR3)2、LaO(OH)(OCOR3)2、La2O(OH)(OCOR3)5、及びLa4O3(OCOR3)10の何れかの一般式で示されるカルボン酸ランタニル(以上の化学式において、R3は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)を挙げることができる。
【0021】
モノカルボン酸塩としては、酢酸ランタン、プロピオン酸ランタン、酪酸ランタン、吉草酸ランタン、カプロン酸ランタン、ヘプタン酸ランタン、オクタン酸ランタン、ノナン酸ランタン、デカン酸ランタン、ミリスチン酸ランタン、パルミチン酸ランタン、及びステアリン酸ランタン等を挙げることができる。
【0022】
ジカルボン酸塩としては、蓚酸ランタン、及び琥珀酸ランタン等を挙げることができる。
【0023】
カルボン酸ランタニルとしては、酢酸ランタニル、プロピオン酸ランタニル、酪酸ランタニル、吉草酸ランタニル、カプロン酸ランタニル、ヘプタン酸ランタニル、オクタン酸ランタニル、ノナン酸ランタニル、デカン酸ランタニル、ミリスチン酸ランタニル、パルミチン酸ランタニル、及びステアリン酸ランタニル等を挙げることができる。
【0024】
ランタンのアルコキシドとしては、La(OR4)4(R4は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、シクロアルキル基、及び並びにアラルキル基、並びに炭素数6〜20の芳香族基からなる群から選択される基を示す。)で示される化合物を挙げることができる。
【0025】
ランタン錯体としては、例えばジケトン錯体、ジケトン錯体ハロゲン化物、及びジケトン錯体無機酸塩等を挙げることができる。
【0026】
ジケトン錯体としては、例えば、アセチルアセトナトランタン、アセト酢酸ランタン、1,3−プロパンジオナトランタン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトランタン、1−フェニルプロパンジオナトランタン、及びトロポロナトランタン等を挙げることができる。
【0027】
ジケトン錯体ハロゲン化物としては、アセチルアセトナトランタン塩化物、アセト酢酸ランタン塩化物、1,3−プロパンジオナトランタン塩化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトランタン塩化物、1−フェニルプロパンジオナトランタン塩化物、及びトロポロナトランタン塩化物等のジケトン錯体塩化物、アセチルアセトナトランタン臭化物、アセト酢酸ランタン臭化物、1,3−プロパンジオナトランタン臭化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトランタン臭化物、1−フェニルプロパンジオナトランタン臭化物、及びトロポロナトランタン臭化物等のジケトン錯体臭化物、アセチルアセトナトランタン沃化物、アセト酢酸ランタン沃化物、1,3−プロパンジオナトランタン沃化物、1,3ージフェニル−1,3−プロパンジオナトランタン沃化物、1−フェニルプロパンジオナトランタン沃化物、及びトロポロナトランタン沃化物等のジケトン錯体沃化物、並びに、アセチルアセトナトランタンフッ化物、アセト酢酸ランタンフッ化物、1,3−プロパンジオナトランタンフッ化物、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナトランタンフッ化物、1−フェニルプロパンジオナトランタンフッ化物、及びトロポロナトランタンフッ化物等のジケトン錯体フッ化物等を挙げることができる。
【0028】
前記各種のランタン化合物の中でも、ランタン無機酸塩、ランタン有機酸塩、ランタンの水酸化物が好ましく、特にランタンの硝酸塩、ランタンの塩化物塩、ランタンの硫酸塩、ランタンの炭酸塩、La(OCOR1)4で示されるランタンモノカルボン酸塩、ランタンの水酸化物等が好ましい。
【0029】
ランタンの無機塩若しくは有機塩又は水酸化物と混合される溶媒としては、水、並びに、水に溶解乃至混和するアルコール類、及びエステル類よりなる群から選択される少なくとも一種の水性有機溶媒と水との混合溶媒を挙げることができる。
【0030】
前記アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられ、エステル類としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル等の低級アルキル低級カルボン酸エステルを挙げることができる。これら各種の溶媒の中でも水及びアルコール類が好ましい。また前記各種の溶媒は単独で使用することも、複数種類の溶媒を組み合わせて使用することができる。複数種類の溶媒を組み合わせる場合、混合溶媒として使用してもよく、また、ランタン化合物と特定の溶媒とを混合し、得られる混合物に他の溶媒をさらに混合するというようにランタン化合物に対して別々に使用しても良い。
【0031】
ランタン化合物と溶媒との配合割合は、溶媒100重量部に対しランタン化合物0.1〜50重量部、好ましくはランタン化合物1〜30重量部である。
【0032】
ゾル形成に際しては、ランタン化合物及び溶媒の混合物と酸又は塩基とを混合するのが好ましい。混合物と混合される酸としては、無機酸及び有機酸を挙げることができる。
【0033】
前記無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硝酸、及び硫酸等を挙げることができる。有機酸としては、例えば低級のモノカルボン酸を挙げることができ、具体的には酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、及びイソ酪酸等を挙げることができる。
【0034】
前記塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化リチウム等の苛性アルカリ類、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミン等のアミン類、及びエタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチル−N−エタノールアミン等のアルカノールアミン類、及びアンモニア水、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の第四級アンモニウム化合物等を挙げることができる。
【0035】
溶媒と酸又は塩基との割合は、通常、酸又は塩基/水の重量比が0.01〜1、好ましくは0.01〜0.5になるように決定される。
【0036】
前記ランタン化合物、溶媒及び酸又は塩基との混合物が加熱される温度は、通常0〜100℃、好ましくは15〜95℃である。加熱温度が前記範囲から外れるとゾルが好適に形成されないことがある。
【0037】
加熱時間は、通常0.1〜50時間、好ましくは0.1〜10時間である。
【0038】
かくして酸化ランタンゾルは、そのまま濃縮、乾固することにより酸化ランタンゲル粉末という態様に調製され、又は用途に応じて適宜の基板上に塗布され、次いで乾燥されて酸化ランタンゲル被膜という態様等に調製される。
【0039】
前記基材には特に制限はなく、用途に応じて適宜に選択することができ、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、及び鉛ガラス等のガラス系材料から形成された基材、普通鋼、構造用定合金鋼、高張力鋼、耐熱鋼、高クロム系耐熱鋼、及び高ニッケル−クロム系耐熱鋼等の合金鋼、並びにステンレス鋼等の鉄鋼材料、工業用純アルミニウム、5000系Al−Mg系アルミニウム合金及び6000系アルミニウム合金等のアルミニウム合金、銀入銅、錫入銅、クロム銅、クロム・ジルコニウム銅、及びジルコニウム銅等の各種銅合金、並びに純チタン、抗力チタン合金、及び耐食性チタン合金等のチタン合金等の金属系材料から形成された基材、ムライト磁器、アルミナ磁器、ジルコン磁器、コーディエライト磁器、及びステアタイト磁器等のセラミックス系材料から形成された基材、前記金属系材料から形成された基材の表面を琺瑯、グラスライニング、及びセラミックスコーティング等の何れかによって被覆した被覆金属基材等を挙げることができる。
【0040】
この発明の方法においては、いずれの態様になっているにせよ、酸化ランタンゲルが100〜500℃に加熱される。加熱温度が100℃未満であると、層状酸化ランタンが形成されない。また、加熱温度が500℃を越えると温度の上昇に連れて六方晶の酸化ランタンが形成されていく。
【0041】
前記温度範囲にて加熱する時間としては、通常0.1〜10時間、好ましくは0.1〜5時間である。加熱雰囲気としては、通常、空気である。
(酸化ランタン層間化合物)
前記第1の手段である層状酸化ランタンは、積層構造を有し、その層間距離は、5〜18Åであることから、その層間には、金属または金属イオン等を容易にインターカーレートすることができ、層間化合物を生成させることができる。この発明の酸化ランタン層間化合物は、その層間に、周期表1〜14族に属する金属、前記金属のイオン、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物及び前記金属または前記金属のイオンを有する金属錯体もしくは有機化合物の中から選ばれた少なくとも一種を含有している。
【0042】
前記金属としては、1族のアルカリ金属、2族のアルカリ土類金属、3〜12族の遷移金属、13族及び14族から任意に選択することができる。例えば、アルカリ金属として、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムが、アルカリ土類金属として、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムが挙げられる。また、遷移金属としては、タンタル、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、白金、銅、金、アルミニウム、ガリウム等を挙げることができる。
【0043】
また、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物としては、光触媒や触媒として有用なTiO2、CeO2等を挙げることができる。また、前記金属または前記金属のイオンを有する金属錯体または有機化合物としては、各種金属のジケトン錯体、金属セッケン等を挙げることができる。
【0044】
この発明の酸化ランタン層間化合物は、前記層状酸化ランタンと周期表1〜14族に属する金属、前記金属のイオン、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物及び前記金属または前記金属のイオンを有する有機化合物とを単に接触させるのみで、生成させることができる。より具体的には、例えば、層状酸化ランタンを前記無機化合物又は有機化合物の溶液に含浸することによって、生成させることができる。また、酸化ランタンゾルに前記金属のイオンまたは金属のイオンを有する無機化合物もしくは有機化合物を加え、この混合ゾルから溶媒を除去し、ゲル化した後、適切な温度で過熱、焼成することによって形成することもできる。この発明の酸化ランタン層間化合物は、各種の化学反応を生起させ、また促進する触媒として有用である。
【0045】
この触媒としては、酸化反応触媒、還元反応触媒、有機化合物の置換反応触媒、有機化合物の脱離反応触媒、重合反応触媒、縮合反応触媒、加水分解反応触媒、重質油の部分酸化反応触媒、炭化水素の脱水素反応触媒またはアルコールの脱水反応触媒等を挙げることができる。
【0046】
また、この発明の層状酸化ランタンは、層状構造を有しているが故に、以下のような用途を有する。
【0047】
(層状酸化ランタンの用途)
層状酸化ランタンは、その層間に種々の物質をインターカーレートする。インターカーレートされる物質がガスであると、この層状酸化ランタンは、ガス吸着剤としての用途を有する。
【0048】
インターカーレートされるガスとしては、A=Oの構造を分子中に有するガスが好ましい。前記構造において、Aとして炭素、硫黄及び窒素等を挙げることができる。A=Oの構造を分子中に有するガスとして、二酸化炭素、SOX及びNOX等を挙げることができる。前記A=Oの構造を有する分子の中には、A−O−イオンとなって層状酸化ランタンに吸着または結合されるものもあると、推察される。例えば、二酸化炭素は、炭酸イオンやカルボキシレートイオンとなって層状酸化ランタンに結合しているものもある。
【0049】
A=Oの構造を分子中に有するガスを層状酸化ランタンの層間に吸着可能なガス吸着剤は、二酸化炭素、SOX及びNOX等を含有する排ガス処理装置に組み込んで使用されることができる。したがって、この発明のガス吸着剤は、各種燃焼装置から排出されるガスの処理、排煙脱硝処理、排煙脱硫処理等に有効に用いることができ、環境保全に貢献するところの大きいガス吸着剤となる。
【0050】
この発明のガス吸着剤は、この発明に係る前記層状酸化ランタンを含有している限り、例えば、活性炭、シリカゲル等の他のガス吸着剤と共に用い、複合的なガス吸着剤とすることができる。また、使用態様に対応して、特定の形状の成形体として用いてもよく、支持体に取り付け、さらには開放容器に収容して用いることもできる。
【0051】
一方、この発明に係る層状酸化ランタンは、優れた撥水性を有するので、層間に種々の化合物をインターカーレートするにせよ、しないにせよ、撥水被膜を形成することのできる撥水剤として好適に使用されることができる。
【0052】
【実施例】
以下に、実施例を挙げてこの発明をさらに詳細に説明するが、この実施例によってこの発明はなんら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
(酸化ランタンゾルNo.1の調製)
La(CH3COO)3・1.5H2O 3.43g(0.01mol)を99.5%エタノール60.0gに添加し、次いで、60%HNO36.32g(0.060mol)とH2O27.043g(1.5mol)との混合溶液を添加した。このようにして得た混合物を80℃で3時間、加熱撹拌し、加熱撹拌による容積減少を補充するために減少容積に相当する容積の99.5%エタノールを加え、酸化ランタンゾルNo.1を調製した。
【0054】
〔層状酸化ランタンAの製造(その1)〕
前記のとおりに調製して得た酸化ランタンゾルNo.1を、オイルバスで初めに70℃で40分間、次いで90℃で20分間、続いて120℃で90分間加熱しながら、ロータリーエバポレータで濃縮、乾固した。このようにして得た酸化ランタンゲル粉末を、400℃に保持した電気炉で30分間焼成して、層状酸化ランタンAを製造した。
【0055】
この層状酸化ランタンAのX線回析パターンを測定した。測定に使用された装置は、X線回折(XRD)装置(RAD−2B、リガク製)であった。粉末X線分析結果としてX線回折図を図1に示した。図1に示されるように、X線回折図において、2θ(°)のピーク(●を付したピーク)が、3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに存在していた。電界放射形走査電子顕微鏡(FM−SEM、JSM−6700F)により、層状酸化ランタンAの結晶形態を観察した。観察結果として、その電子顕微鏡写真を図2に示した。図1及び図2に示す結果から、この例で製造された層状酸化ランタンは、層状構造を有することが確認された。また、この層状酸化ランタンAの層間距離は、9.2Åであった。
【0056】
〔層状酸化ランタンAの製造(その2)〕
前記のようにして得られた酸化ランタンゾルNo.1 5.0gに2−(2−メトキシエトキシ)エタノールをランタンに対して1当量(0.13g)添加し、得られる混合物ゾルを、硝酸で充分に洗浄してなる石英ガラスの表面に、スピナー法(500rpmで5秒、次いで2000rpmで30秒)により塗布した。石英ガラスの表面に形成されたゲル膜を、電気炉を用いて400℃で焼成した。得られた焼成薄膜に水滴を落としてその水滴の接触角を、接触角計(CA−D、協和界面科学製)で測定した。接触角は、焼成してから時間の経過と共に変化した。焼成後1日経過した時点での接触角は45°、2日経過した時点での接触角は67°、5日経過した時点での接触角は87°、7日経過した時点での接触角は92°であった。接触角が80°以上である薄膜の表面は充分に撥水性があると、評価できる。
【0057】
(実施例2)
(酸化ランタンゾルNo.2の調製)
La(NO3)3・6H2O 4.33g(0.01mol)を99.5%エタノール60.0gに溶解し、次いで、60%HNO36.32g(0.060mol)とH2O27.0g(1.5mol)との混合溶液を添加した。このようにして得た溶液を80℃で3時間、加熱撹拌し、加熱撹拌による容積減少を補充するために減少容積に相当する容積の99.5%エタノールを加え、酸化ランタンゾルNo.2を調製した。
【0058】
〔層状酸化ランタンBの製造〕
前記のとおり調製して得た酸化ランタンゾルNo.2を用い、前記〔層状酸化ランタンAの製造〕と同様にして、層状酸化ランタンBを製造した。前記〔層状酸化ランタンAの製造〕におけるのと同様にして、この層状酸化ランタンBのX線回析パターンを測定し、その回析結果としてX線回折図を図3に示す。この層状酸化ランタンBの層間距離は、9.1Åであった。
【0059】
(実施例3)
(酸化ランタンゾルNo.3の調製)
La(NO3)3・6H2O 4.33g(0.01mol)を蒸留水60gに溶解し、次いで、60%HNO36.3g(0.060mol)を添加した。このようにして得た溶液を80℃で3時間、加熱撹拌し、加熱撹拌による容積減少を補充するために減少容積に相当する容積の蒸留水を加え、酸化ランタンゾルNo.3を調製した。
【0060】
〔層状酸化ランタンCの製造〕
前記のとおり調製して得た酸化ランタンゾルNo.3を、80℃で60分間、次いで90℃で20分間、続いて120℃で30分間、濃縮、乾固した以外は、前記〔層状酸化ランタンAの製造〕と同様にして、層状酸化ランタンCを製造した。この層状酸化ランタンCのX線回折パターンには、2θが9.63°、29.1°及び39.0°に回折ピークが観測された。この層状酸化ランタンCの層間距離は、9.2Åであった。
【0061】
(実施例4)
(酸化ランタンゾルNo.4の調製)
La(NO3)3・6H2O 4.33g(0.01mol)をH2O60gに溶解し、次いで、29%アンモニア水をpH9になるまでを添加し、水酸化ランタンの沈殿物を得た。この沈殿物を濾過し、濾液がpH7になるまで蒸留水で洗浄した。洗浄した沈殿物をデシケーター内に一日放置した後、蒸留水60gに溶解し、60%HNO3 6.3g(0.060mol)を添加した。このようにして得た溶液を80℃で3時間、加熱撹拌し、加熱撹拌による容積減少を補充するために減少容積に相当する容積の蒸留水を加え、酸化ランタンゾルNo.4を調製した。
【0062】
〔層状酸化ランタンDの製造〕
前記のとおり調製して得た酸化ランタンゾルNo.4を用い、前記〔層状酸化ランタンCの製造〕と同様にして、層状酸化ランタンDを製造した。この層状酸化ランタンDのX線回折パターンには、2θが9.66°、29.1°及び39.1°に回折ピークが観測された。この層状酸化ランタンDの層間距離は、9.2Åであった。
【0063】
(実施例5)
実施例3と同様にして酸化ランタンゾル液を調整した。このゾル液に、硝酸銅(II)・3水和物 2.4g(0.01モル)を蒸留水5gに溶解した溶液を加えた。混合ゾル液をロータリーエバポレーターで90℃で20分間、続いて120℃で30分間、濃縮、乾固した。このようにして得られた銅イオンを含む複合酸化ランタンゲル粉末を170℃に保持したオーブンで2時間加熱して、複合層状酸化ランタンEを製造した。
【0064】
この複合層状酸化ランタンEの粉末X線回折パターンには、2θ=12.8°、24.8°、38.6°に回折ピークが観測され、層状構造を有することが確認された。プラズマ発光分析法(セイコーインスツルメント 誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS-1700HVR)による元素分析より銅とランタンの存在を確認した。また、この複合層状酸化ランタンEの層間距離は6.9Åであった。
【0065】
(実施例6)
実施例3と同様にして酸化ランタンゾル液を調整した。このゾル液に、炭酸セシウム 1.3g(0.0004モル)を蒸留水10gに溶解した溶液を加えた。混合ゾル液をロータリーエバポレーターで90℃で20分間、続いて120℃で30分間、濃縮、乾固した。デシケータ内で一夜保存した後、銅イオンを含む複合酸化ランタンゲル粉末を480℃に保持した電気炉で30分間加熱して、複合層状酸化ランタンFを製造した。
【0066】
この複合層状酸化ランタンFの粉末X線回折パターンには、2=6.9°、13.8°、27.4°に回折ピークが観測され、層状構造を有することが確認された。プラズマ発光分析法(セイコーインスツルメント 誘導結合プラズマ発光分光分析装置SPS-1700HVR)による元素分析よりセシウムとランタンの存在を確認した。また、この複合層状酸化ランタンEの層間距離は12.8Åであった。
【0067】
(実施例7)
〔層状酸化ランタンの炭酸ガス吸着性能の評価〕
前記〔層状酸化ランタンAの製造〕で得た層状酸化ランタンAを、炭酸ガスを充填したチャンバー内に保存して、炭酸ガスを吸着させた。この層状酸化ランタンAのフーリエ変換赤外分光分析(パーキンソンエルマーパラゴン一1000PC)を行った。その分析結果として、フーリエ変換赤外分光スペクトルを図4に示す。図4において、1080cm−1及び1435cm−1(→を付した吸収)は、炭酸ガスに起因するカルボキシレートの吸収であり、この層状酸化ランタンAには、炭酸ガスがカルボキシレートイオンとして存在していることが確認された。なお、この炭酸ガスを吸着している層状酸化ランタンAを塩酸洗浄した後、再度、フーリエ変換赤外分光スペクトルにより確認したところ、1080cm−1及び1435cm−1の吸収は消失していた。カルボキシレートイオンが塩酸により除去されたことから、層状酸化ランタンAが炭酸ガスを吸着していることがより明確となった。
【0068】
(実施例8)
〔層状酸化ランタンEの炭酸ガス吸着性能の評価〕
前記層状酸化ランタンEを、炭酸ガスを充填したチャンバー内に保存して、炭酸ガスを吸着させた。この層状酸化ランタンEのフーリエ変換赤外分光分析を実施例7と同様にしてを行った。その結果、1630cm−1、1385cm−1および1045cm−1に吸収が観測された。この吸収は、炭酸イオンによるものであるから、炭酸ガスは層状酸化ランタンEの中に炭酸イオンとして存在していることが分かった。
【0069】
【発明の効果】
この発明によれば、層状酸化ランタンが創製され、この創製に基づく新規な物質である層状酸化ランタン、その製造方法、新規な物質である酸化ランタン層間化合物、及び前記層状酸化ランタンを含有して成るガス吸着剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の層状酸化ランタンAのX線回折図である。
【図2】この発明の層状酸化ランタンAの電子顕微鏡写真である。
【図3】この発明の層状酸化ランタンBのX線回折図である。
【図4】この発明の層状酸化ランタンAのフーリエ変換赤外分光スペクトルである。
Claims (6)
- 酸化ランタンを含有し、X線回折において、少なくとも3〜15°、7〜35°及び20〜50°のそれぞれに回折パターンが存在することを特徴とする層状酸化ランタン。
- ゾルゲル法により調製された酸化ランタンゲルの粉末を100〜500℃に焼成することを特徴とする請求項1に記載の層状酸化ランタンの製造方法。
- 請求項1に記載の層状酸化ランタンの層間に、周期表1〜14族に属する金属、前記金属のイオン、前記金属または前記金属のイオンを有する無機化合物及び前記金属または前記金属のイオンを有する金属錯体もしくは有機化合物の中から選ばれた少なくとも一種を含有することを特徴とする酸化ランタン層間化合物。
- 請求項1に記載の層状酸化ランタンを含有して成ることを特徴とするガス吸着剤。
- 前記ガス吸着剤が、A=O(但し、Aは炭素原子、窒素原子又は硫黄原子を示す。)の構造を有するガスを吸着する吸着剤である請求項4に記載のガス吸着剤。
- 前記ガス吸着剤が、炭酸ガス吸着剤、窒素酸化物ガス吸着剤又は硫黄酸化物ガス吸着剤である請求項4または5に記載のガス吸着剤。
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-
2002
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