JP2004082088A - 光触媒および光触媒材料 - Google Patents

光触媒および光触媒材料 Download PDF

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Tomoyuki Tawara
田原 知之
Tatsuya Nobusawa
信澤 達也
Shigeru Takano
高野  茂
Hirohiko Murakami
村上 裕彦
Chizuru Koakutsu
小圷 千鶴
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JFE Steel Corp
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Abstract

【課題】可視光照射により触媒活性および親水性のいずれか一方または両方を発現するオキシナイトライドによる光触媒を提供する。
【解決手段】酸化チタンの酸素サイトの一部を窒素元素で置換し、さらにチタンサイトの一部をジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種以上の遷移金属元素で置換する。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光触媒、特に可視光照射により触媒活性および親水性のいずれか一方または両方を発現し、特に環境浄化機能が要求される材料に利用される、可視光応答型光触媒および該光触媒を有する光触媒材料に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、公害対策や、健康、快適並びに清潔志向の高まりから、抗菌、消臭および防汚等の機能を持った環境浄化型製品に対して強いニーズがあり、この種の製品に光触媒を利用する技術が注目されている。この光触媒とは、光エネルギーの吸収により、励起電子が酸素を還元して活性酸素種のスーパーオキサイドアニオン(・O  )を生成し、正孔が水を酸化して活性酸素種の水酸ラジカル(OH・)を生成することにより、光触媒の表面に接触した有機物などを酸化分解する物質のことである。さらに、酸化チタンによる光触媒では、水の接触角が5°以下となる超親水性を発現することができる。
【0003】
これらの特性を利用することにより、屋外用途では、都市型汚染の主成分である油分、無機質塵挨およびカーボン等に対する耐汚染処理や、視認性を確保するための防曇処理、また屋内用途では、抗菌や消臭等の衛生処理を行うことができる。
【0004】
ここで、上記の活性酸素種の生成反応を起こすには、光触媒のバンドギャップエネルギーが活性酸素種の生成エネルギー{2.18×10−19 J(1.36eV)}より大きいだけでは不十分であり、光触媒の伝導帯下端と価電子帯上端とが、活性酸素種を生成するO/O  {−0.21×10−19 J(−0.13eV)}準位とO/HO {1.97×10−19 J(1.23eV)}準位とを共に挟む位置になければならない。さらに、この酸化還元準位は平衡準位であるため、活性酸素種の生成反応が生じるには過電圧が必要となり、価電子帯下端はO/O  順位よりも負側、そして価電子帯上端は0/H0 準位より正側に位置する必要がある。
【0005】
現在、光触媒物質として実用化されているアナターゼ型の酸化チタンは、価電子帯の上端準位がO/HO 準位から十分に離れた正側に位置するため、バンドギャップエネルギーは5.13×10−19 J(3.2eV )と大きく、紫外線の照射に限って光触媒活性および親水性を発現する。ところが、光源となる太陽光や蛍光灯からの光は、紫外線の分光分布スペクトルがせいぜい3〜4%であり、近紫外線の強度は日中の太陽光で1〜2mW/cm 、室内の蛍光灯からの光に至っては1μW/cm 程度にすぎない。このため、光触媒による光エネルギーの利用は極めて限定された範囲で行われているにすぎない。従って、光エネルギーの有効利用をはかり、また蛍光灯環境下でも十分な機能を光触媒に発揮させるには、可視光を利用できる光触媒材料の開発が望まれる。
【0006】
ここに、可視光照射により光触媒機能を発現させるには、光触媒のバンドギャップエネルギーが可視光を吸収できる約4.8 ×10−19 J(3eV )以下であることが必要条件となり、そのための様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、アナターゼ型酸化チタンに、バナジウムやクロムなどの遷移金属をイオン注入した後、大気中で熱処理することにより、可視光活性が発現することが記載されている。しかしながら、この方法では装置が高価である上、大面積に対して処理することが難しい不利がある。
【0007】
また、非特許文献1には、アナターゼ型酸化チタンに水素プラズマ処理による酸素欠損を形成させ、可視光活性が発現することが報告されている。しかしながら、酸素原子を取り除くと不安定な結晶構造となりやすく、光触媒作用を長期に持続させることが難しい。
【0008】
さらに、非特許文献2には、アナターゼ型酸化チタンの価電子帯を構成する酸素2p軌道に窒素2p軌道を混成させることにより、価電子帯の上端を負側にシフトさせると、可視光活性が発現することが報告されている。しかし、酸化チタンを窒化してオキシナイトライドを合成した場合、可視光を吸収できるようになるが、伝導帯の下端準位の変動は僅かであって、伝導帯の下端準位がO/O  準位に近接したままであることから、活性の改善が望まれる。
【0009】
また、−2価の酸素を−3価の窒素で置換することで生じる酸素欠損は、酸化チタンのアナターゼの結晶構造を不安定にし、かつ電子と正孔との再結合センターとしても作用するため、窒素の置換量は1atom%程度でしかない。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−197512号公報
【非特許文献1】
三好正大ら,色材,73(12), 580(2000)
【非特許文献2】
R.Asahi et al.,Science,293,269(2001)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の従来技術が抱える問題を解消し、可視光照射によっても光触媒機能および親水性のいずれか一方または両方が発現し、かつ可視光活性度の高い光触媒を、該光触媒を有する材料に併せて提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、酸化チタンの酸素サイトを窒素で置換して価電子帯の上端を負側にシフトさせて可視光の吸収を可能にするとともに、同チタンサイトをIVa 族のジルコニウムおよびハフニウム、そしてVa族のニオブおよびタンタルから選択される1種以上の遷移金属元素で置換することにより、O/O  準位に近接する酸化チタンの伝導帯の下端が負側にシフトして、還元反応の過電圧が十分に確保する結果、可視光照射時の光触媒活性が向上すること、さらにチタンサイトをIVa族のジルコニウムおよびハフニウムから選択される1種以上の遷移金属元素で置換する場合は、−2価の酸素を−3価の窒素で置換することにて生じる酸素欠損によって結晶構造の安定性が低下するのを抑制し、チタンサイトをVa族のニオブおよびタンタル、そしてVIa 族のモリブデンおよびタングステンから選択される1種以上の遷移金属元素で置換した場合は、電荷補償により上記の酸素欠損の生成を抑制する結果、−3価の窒素が導入され易くなり、置換した窒素が結晶構造中で安定に存在すること、をそれぞれ見出し、この発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、この発明は、可視光照射により触媒活性および親水性のいずれか一方または両方を発現する光触媒であって、下記の一般式にて表されるオキシナイトライドから成ることを特徴とする光触媒である。

Ti1−x M O2−y N
ここで、M:Zr、Hf、Nb,Ta、MoおよびWから選ばれる1種以上
0<x≦0.6
0<y≦0.6
0<z≦0.6
【0014】
また、この発明は、基材上に、可視光照射により触媒活性および親水性のいずれか一方または両方を発現する光触媒層を有する光触媒材料であって、該光触媒層が、上記の一般式にて表されるオキシナイトライドから成ることを特徴とする光触媒材料。
【0015】
ここで、オキシナイトライドの結晶構造が、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型またはバデライト型であることが好ましい。なぜなら、これら結晶構造は、光触媒活性を発現し易いからである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の光触媒について、詳細に説明する。
現在、光触媒として実用化されているアナターゼ型酸化チタンが、紫外線の照射に限って光触媒活性を発現することは既に述べたとおりである。これは、主に酸素の2p軌道で構成される酸化物の価電子帯の上端準位が、水の酸化準位O/HO よりも十分に離れた正側の位置にあることにより、バンドギャップエネルギーが大きくなることが原因である。
【0017】
ここに、可視光照射により光触媒活性を発現させる方法として、酸化物の光触媒に窒素をドープしたオキシナイトライドが注目されている。なぜなら、酸化物の酸素サイトに窒素をドープすると、酸素のO2pよりもエネルギー準位の高いN2pも価電子帯の構成に利用されるようになる結果、価電子帯の上端準位が負側にシフトしてバンドギャップが狭まり、可視光が吸収できるようになると考えられているからである。
【0018】
そこで、この発明の光触媒においても、酸化物の酸素サイトに窒素をドープすることによって、伝導帯の上端準位を負側にシフトしてバンドギャップを狭めて、可視光の吸収を可能にする。
【0019】
なお、オキシナイトライドの光触媒としては、アナターゼ型のTiO2−x や、チタン、ニオブおよびタンタルのペロブスカイトまたは層状ペロブスカイト物質、例えば、LaTaON  、CaTaON 、SrTaON 、BaTaON 、LaTiO N、Ca1−X LaTi03−x N , CaNbON 、SrNbON およびBaNbON などが知られているが、実用的には、コスト、安全性そして安定性などの観点から、光触媒物質はチタンベースであることが有利であり、好ましい。なお、チタンベースとは、伝導帯を形成する遷移金属元素中に含まれるチタン元素の割合が50atom%以上であることを示す。
【0020】
この発明の光触媒では、可視光で発揮させる光触媒反応(親水性を含む)を活性化するため、O/O  (−0.21×10−19 J)準位に近接している酸化チタンの伝導帯の下端電位を負側にシフトさせることにより、還元反応の過電圧を確保し、電荷分離と活性酸素の生成を効率よく促進させることが肝要である。すなわち、酸化チタンの伝導帯の下端電位を負側にシフトさせるには、主に伝導帯を形成するTi3d軌道にIVa 族のジルコニウムおよびハフニウムの4dおよび5d軌道、そしてVa族のニオブおよびタンタルの4dおよび5d軌道のいずれか少なくとも1つを混成させる。
【0021】
さらに、−3価の窒素の置換で、結晶構造の安定性を低下させないように、電荷補償のため酸素欠損が生じても結晶構造の安定性が低下するのを抑制する、遷移金属元素を添加するか、酸素欠損の生成を抑制する、+5価以上の酸化数が安定な遷移金属元素を添加することが肝要である。すなわち、前者の遷移金属元素として、IVa 族のジルコニウムおよびハフニウムのいずれか少なくとも1つを添加し、後者の遷移金属元素として、Va族のニオブおよびタンタル、そしてVIa 族のモリブデンおよびタングステン、のいずれか少なくとも1つを添加する。
【0022】
ここで、添加する遷移金属元素は、上記の6種から選ばれるいずれか1種を単独で、または2種以上を併用することができる。ただし、モリブデンおよびタングステンを単独添加する場合は、伝導帯の下端が過電圧を確保できるように、酸化チタンの結晶系はアナターゼ型またはブルッカイト型とするのがよい。
【0023】
以上で述べた必要条件を満たす光触媒は、下記の一般式にて表すことができる。

Ti1−x M O2−y N
ここで、M:Zr、Hf、Nb,Ta、MoおよびWから選ばれる1種以上
0<x≦0.6
0<y≦0.6
0<z≦0.6
この一般式によるオキシナイトライドは、M:Zr、Hfのとき、およびチタンまたは上記遷移金属元素が還元されて低酸化状態をとるときは、酸素欠損によっても電荷補償される。
【0024】
ここで、上記遷移金属元素の置換量(x)は、少なすぎると伝導帯を構成する寄与率が小さく、不純物準位を形成する場合には、電子と正孔との再結合センターとして働いて触媒作用を阻害することがある。一方、多過ぎると伝導帯の下端電位が負側に過大にシフトしてバンドギャップの増大を招き、また遷移金属元素の固溶量の限界を超えてしまう。従って、上記式におけるxを、0<x≦0.6 、好ましくはx:0.01〜0.50の範囲とする。
【0025】
また、上記遷移金属元素のうち、Va族のニオブおよびタンタルは、酸化数が+5価のとき、そしてVIa 族のモリブデンおよびタングステンは酸化数が+6価のとき、安定なd構造をとるため、−3価の窒素イオンが電荷補償として働いて導入されやすくなり、さらに酸素欠損による不安定な結晶構造の形成も抑制することができる。すなわち、組成としては、酸化チタンTiOの結晶構造にVa族のオキシナイトライドMON (M:ニオブおよびタンタルの1種以上)、またはVIa 族のナイトライドMN (M:モリブデンおよびタングステンの1種以上)が固溶しているとみなすことができる。
【0026】
一方、上述した窒素の置換量(z)については、少なすぎると価電子帯上端の負側へのシフトが不十分となり、可視光を吸収できるバンドギャップが形成できない。一方、多すぎると、特に上記遷移金属元素がジルコニウムまたはハフニウムの場合は、電荷補償のために酸素欠損が増大し過ぎ、結晶構造が不安定になる。したがって、上記式における酸素量(y)を、0<y≦0.6 、好ましくはy:0.01〜0.50の範囲とし、上記式におけるzを、0<z≦0.6 、好ましくはz:0.01〜0.50の範囲とする。なお、上記遷移金属元素がジルコニウムまたはハフニウムの場合や、チタンなどの遷移金属が還元されると、酸素原子が離脱するため、必ずしもyとzとが一致しなくともよい。
【0027】
また、この発明の光触媒は、基材上に薄膜として形成し、各種使途に供することが好ましい。基材としては、セラミックス、タイル、コンクリート、ガラスおよび煉瓦などの無機材料、アルミニウム、ステンレス鋼、各種めっき鋼板、化成処理鋼板および塗装鋼板などの金属材料、アクリルおよびポリカーボネートなどの樹脂、そして木材などの有機材料を用いることができる。
【0028】
次に、上記のオキシナイトライドを合成する手法について、具体的に説明する。
すなわち、オキシナイトライドは、チタンと、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種以上との酸化物またはその前駆体物質を、アンモニアガス、アンモニア含有ガス、窒素ガスまたはN/Hガスなどの雰囲気下において、400 〜1200℃で1〜120 分間、好ましくは500 〜700 ℃で5〜60分間加熱処理することによって合成できるが、特にこの処理に限定する必要はない。なお、アンモニア含有ガスは、アンモニアガスにアルゴンや窒素などの非酸化性ガスを混合したものであり、非酸化性ガスの混合割合は10〜90体積%、好ましくは20〜70体積%である。
【0029】
ちなみに、該オキシナイトライドの色は、合成条件および組成により、淡い黄色〜赤色、濃緑色、茶褐色などを呈し、チタンまたは前記遷移金属が低酸化状態を取るとグレーまたは青黒色が加成する。
【0030】
粉末を合成する場合は、チタンと、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種以上の酸化物、水酸化物、オキシ塩化塩、オキシ硝酸塩、オキシリン酸、オキシ酢酸塩、硝酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、アンモニウム塩および塩化物の無機塩などから選ばれた化合物とを混合し、該混合物または該混合物を加熱処理して複合化した前処理化合物を、前記の条件にて窒化処理に供する。
【0031】
なお、光触媒を基材に薄膜として形成する場合は、基材上に上記した酸化物または酸化物の前駆体からなる薄膜を被覆した後、該被膜に前記の条件にて窒化処理を施す。酸化物または酸化物の前駆体からなる薄膜は、ゾルゲル法により被覆することができるが、特にゾルゲル法に限定する必要はない。ゾルゲル被膜形成に用いるコーティング液は、例えば以下の方法にて製造できる。すなわち、アルコール中でチタンアルコキシド1mol に対して、アセチルアセトン、ジエチレングリコールまたはアセト酢酸エチルなどのキレート剤を1〜2mol 混合し、続いて酸触媒として蓚酸や酢酸などのカルボン酸、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸または燐酸などの無機酸を0.01〜0.1mol添加した後、1〜2mol の水を徐々に添加して部分加水分解溶液を調整する。次いで、該部分加水分解溶液にジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種以上のアルコキシドに前記キレート剤を混合したアルコール溶液や、オキシ塩化塩、オキシ硝酸塩、オキシリン酸塩、オキシ酢酸塩、硝酸塩、塩化物およびアンモニウム塩などの無機塩、そして酢酸塩および蓚酸塩などの有機酸塩のアルコール溶液を所定比で混合し、熟成後コーティング溶液とする。
【0032】
他の方法としては、アナターゼやブルッカイトなどの水性の結晶性酸化チタンゾル、ペルオキソチタン酸およびオルソチタン酸などのアモルファス酸化チタン水溶液、またはこれらの混合水溶液に、上記無機塩または有機塩の水溶液またはアルコール溶液を所定比で混合してコーティング溶液とする。このとき、上記無機塩または有機塩の水溶液の混合によりコーティング溶液がゲル化する場合は、上記酸化チタン水溶液に、予め乳酸、リンゴ酸およびクエン酸などの有機酸を添加してチタン錯体を形成させておくと、ゲル化を防止することができる場合がある。あるいは、上記酸化チタン水溶液の合成時に、出発原料の中に予め上記の無機塩または有機塩を配合してもよい。
【0033】
また、基材への被膜の形成方法は、コーティング溶液を酸化物換算で固形分が0.1 〜10質量%、好ましくは0.5 〜5質量%に調整し、通常スプレー、ディップまたは刷毛などにより基材に塗布して乾燥膜を形成させる。
【0034】
ここに、上記した膜において、さらにシリカまたはシリコンオキシナイトライドを含有することが、特に親水性を長期にわたり維持させるのに有効である。シリカまたはシリコンオキシナイトライドは、光触媒の固形分に対して10〜80質量%、より好ましくは20〜50質量%の範囲で含有させる。なぜなら、10質量%以上80質量以下の範囲で含有させることによって、親水性を長期間にわたり維持でき、かつ光触媒活性の効果を十分に発揮できるからである。
【0035】
【実施例】
次に、この発明の実施例について、具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
発明例1
エタノール100gにチタンイソプロポキシド:0.09mol を溶解させ、アセト酢酸エチル:0.18mol を添加して30分間攪拌した。この溶液に蓚酸を0.001mol添加した後、水0.2molとエタノール10gの混合溶液とを徐々に加え、60分間室温で攪拌して部分加水分解溶液を調整した。次いで、エタノール20gにジルコニウムn−ブトキシド:0.01mol とアセト酢酸エチル0.02mol とを混合した溶液を徐々に添加し、室温で60分間攪拌したのち、酸化物換算で1質量%となるように調整した。
【0036】
次に、かくして得られたコーティング溶液を、シリカが被覆された耐熱ガラスの基板にスプレー塗布し、500 ℃で60分間仮焼成したあと、100ml /min のアンモニア気流中において、600 ℃で10分間の窒化処理を施して、試験体を作製した。なお、得られた光触媒膜はアナターゼ型であり、付着量は0.52g/mであった。光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0037】
発明例2
発明例1において、ジルコニウムn−ブトキシドの代わりにオキシ塩化ハフニウムを用いた以外は、上記発明例1と同じ方法にて、光触媒を基板に被覆した試験体を得た。得られた光触媒膜は、アナターゼ型であり、付着量は0.60g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0038】
発明例3
発明例1において、ジルコニウムn−ブトキシドの代わりにタンタルn−ブトキシドを用いてチタンとタンタルのモル比を7:3にした以外は、発明例1と同じ方法にて、光触媒を基板に被覆した試験体を得た。得られた光触媒膜は、アナターゼ型であり、付着量は0.69g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0039】
発明例4
発明例1において、ジルコニウムn−ブトキシドの代わりに五塩化モリブデンを用いた以外は、発明例1と同じ方法にて、光触媒を基板に被覆した試験体を得た。得られた光触媒膜は、アナターゼ型であり、付着量は0.55g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0040】
発明例5
発明例1において、ジルコニウムn−ブトキシドの代わりに六塩化タングステンを用いた以外は、発明例1と同じ方法にて、光触媒を基板に被覆した試験体を得た。得られた光触媒膜は、アナターゼ型であり、付着量は0.59g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0041】
発明例6
ルチル型酸化チタン粉末:0.09mol と酸化ジルコニウム:0.01mol とを混合し、600 ℃で60分間仮焼成したあと、100ml /min のアンモニア気流中にて600 ℃で60分間の窒化処理を施し、光触媒粉末を得た。得られた光触媒粉末は、ルチル型であった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表2に示す。
【0042】
発明例7
発明例6において、酸化ジルコニウムの代わりに酸化ニオブを用いてチタンとニオブとのモル比を7:3にした以外は、発明例1と同じ方法にて、光触媒粉末を得た。得られた光触媒粉末は、ルチル型であった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表2に示す。
【0043】
発明例8
発明例1と同一のコーティング溶液を、ほうろうが被覆された鋼板の基板に、スプレー塗布し、発明例1と同一の条件で仮焼成および窒化処理を施して、試験体を作製した。なお、得られた光触媒膜はアナターゼ型であり、付着量は0.60g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0044】
発明例9
発明例8において、基板としてシリカを被覆したSUS 304 鋼板を使用した以外は、発明例1と同じ方法にて、光触媒を基板に被覆した試験体を得た。なお、得られた光触媒はアナターゼ型であり、付着量は0.60g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0045】
発明例10
発明例8において、ジルコニウムn−ブトキシドの代わりにタンタルn−ブトキシドを用いてチタンとタンタルのモル比を7:3にした以外は、発明例8と同じ方法にて、光触媒を基板に被覆した試験体を得た。なお、得られた光触媒はアナターゼ型であり、付着量は0.63g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0046】
発明例11
酸化チタンゾルと酸化ニオブゾルとを、チタンとニオブとのモル比が7:3になるように、また固形分含有量が1%になるように混合した。このコーティング液を、ほうろうが被覆された鋼板の基板に、スプレー塗布し、400 ℃で60分間仮焼成したあと、100ml /min のアンモニア気流中において、600 ℃で10分間の窒化処理を施して、試験体を作製した。なお、得られた光触媒膜はアナターゼ型であり、付着量は0.62g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0047】
比較例1
エタノール100gにチタンイソプロポキシド:0.1molを溶解させ、アセト酢酸エチル:0.2molを添加して30分攪拌した。この溶液に蓚酸を0.001mol添加したあと、水0.2molとエタノール10gとの混合溶液を徐々に加え、60分室温で攪拌したのち、酸化物換算で1質量%となるように調整した。
【0048】
次に、かくして得られたコーティング溶液を、シリカが被覆された耐熱ガラスの基板にスプレー塗布し、500 ℃で60分間仮焼成して、試験体を作製した。なお、得られた光触媒膜はアナターゼ型であり、付着量は0.59g/mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0049】
比較例2
比較例1と同様にして作製した試験体を、100ml /min のアンモニア気流中にて600 ℃で10分間の窒化処理を施した。かくして得られた光触媒膜はアナターゼ型であり、付着量は0.61g /mであった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表1に示す。
【0050】
比較例3
ルチル型酸化チタン粉末を、100ml /min のアンモニア気流中にて600 ℃で60分間の窒化処理を施し、光触媒粉体を得た。得られた光触媒粉末は、ルチル型であった。この光触媒の特性について、後述する方法によって、測定並びに評価を行った。その結果を、表2に示す。
【0051】
ここで、上記した各光触媒に介して、以下に示す抗菌試験、水の接触角の測定およびガス分解試験を実施、その特性を評価した。
[抗菌試験]
抗菌製品技術協議会の光照射フィルム密着法に準じて、抗菌力を評価した。
すなわち、5×5cmサイズの試験体上に、菌濃度1.5 ×10 個/mlの菌液を0.1ml 接種したあと、ポリエチレンフィルムを被せて密着させ、これを透明シャーレ内にセットして温度25℃、相対湿度90%以上の条件下で蓋をし、暗所、または白色蛍光灯で1000ルクスの可視光を照射した環境下に置いて、そのまま4時間保持した。その後、生理食塩水で試験体から生残菌を洗い出し、NA培地にて35℃、24時間培養し、生菌数を測定した。
【0052】
ここで、抗菌力は生菌数が試験体1枚当たり10個以下を合格とした。菌は黄色葡萄球菌IFO12732を使用し、白色蛍光灯は紫外線カットフィルム((株)キング製作所:ObjcC )を装着させて紫外線強度を0.1 μW/cm 以下(紫外線強度:365nm の紫外線センサーを用いて測定)とした。なお、抗菌試験は発明例1〜5,8〜11および比較例1および2について実施した。
【0053】
[接触角]
試験体に、可視光照射前の初期状態および前記の白色蛍光灯を用いて1000ルクスの可視光を8時間照射したあとについて、マイクロシリンジを使用してイオン交換水を20μリットル滴下し、試験体上の水滴を画像処理式接触角計(協和界面科学(株)製、CA−X )を用いて、水の接触角を3点法にて測定した。なお、接触角測定は発明例1〜5,8〜11および比較例1および2について実施した。
【0054】
[ガス分解試験]
光触媒粉末1gを入れたシャーレを容積5リットルのガラス容器の底部に置き、ガラス製の蓋をしたガラス容器内に、アセトアルデヒドを注入し吸着平衡を確認したあと、さらにアセトアルデヒドを注入し、約100ppmになるよう調整した。次いで、前掲の白色蛍光灯を用いて1000ルクスの可視光を照射した。
アセトアルデヒド濃度は、ガスクロマトグラフ(島津製作所(株):GC−17A)にて測定した。なお、ガス分解試験は発明例6、7および比較例3について実施した。
【0055】
【表1】
Figure 2004082088
【0056】
【表2】
Figure 2004082088
【0057】
【発明の効果】
この発明の光触媒は、光源の大部分を占める可視光に短時間で応答することにより、光エネルギーを有効に利用でき、これまで効果の小さかった室内などの蛍光灯環境下においても十分に光触媒機能を発揮することができる。従って、この発明の光触媒を有する材料は、内装材や側壁材などの景観材や外壁材など、より具体的には、自動車、ビルの内外装部品、トンネル照明、浴室・トイレ設備部材、キッチン設備部材、建材、入院施設、そして手術室など、幅広い用途に使用することが可能である。

Claims (2)

  1. 可視光照射により触媒活性および親水性のいずれか一方または両方を発現する光触媒であって、下記の一般式にて表されるオキシナイトライドから成ることを特徴とする光触媒。

    Ti1−x M O2−y N
    ここで、M:Zr、Hf、Nb,Ta、MoおよびWから選ばれる1種以上
    0<x≦0.6
    0<y≦0.6
    0<z≦0.6
  2. 基材上に、可視光照射により触媒活性および親水性のいずれか一方または両方を発現する光触媒層を有する光触媒材料であって、該光触媒層が、下記の一般式にて表されるオキシナイトライドから成ることを特徴とする光触媒材料。

    Ti1−x M O2−y N
    ここで、M:Zr、Hf、Nb,Ta、MoおよびWから選ばれる1種以上
    0<x≦0.6
    0<y≦0.6
    0<z≦0.6
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