JP2004195744A - マーキングメディア - Google Patents
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Abstract
【課題】油性インク印刷用マーキングメディアであって、印刷性、貼り付け作業性、耐候性、低温特性に優れ、かつ層間剥離の発生が少ない2層系マーキングメディアを提供すること。
【解決手段】スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)とエチレンと極性モノマーとの共重合体との配合樹脂からなる樹脂層(I)と、 該樹脂層(I)によって被覆され、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)の配合樹脂からなる樹脂層(II)とから構成される2層系のマーキングメディアによって上記課題を解決した。
【解決手段】スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)とエチレンと極性モノマーとの共重合体との配合樹脂からなる樹脂層(I)と、 該樹脂層(I)によって被覆され、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)の配合樹脂からなる樹脂層(II)とから構成される2層系のマーキングメディアによって上記課題を解決した。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は溶剤をベースとした油性インクを用いたプリンターで記号、表示、写真等を印刷し、基材に貼り付けて使用するための溶剤型マ−キングメディアに関するものであって、特に屋外や寒冷地での過酷な使用条件に耐え得る低温施工性に優れた高耐候性溶剤型マ−キングメディアに関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、インクジェットプリンターの普及によって、インクジェットプリンターで記号や表示等をプリントしたフィルムを各種基材に貼り合わせ、表示板、広告看板、シャッター、車両等の表示や装飾に使用することが行われている。
【0003】インクジェットプリンターによるプリントは、小さなノズルからインクを微小流滴で噴射し、メディア上に、インクの粒によるドットを付着させて文字や図柄を形成する方式である。微細なノズルからインクを噴射しなければならないため、ノズルの詰まりが起こりにくい水性染料溶液や親水性顔料を水に分散させた水性インクが用いられることが多く、たとえば、シアン、マジェンタ、イエロー、ブラックの4色の水性インクを重ねて目的の色を得る方法が一般に行われている。
【0004】ところが、例えば、車両の外観装飾用、屋外看板用途等高度の耐候性が必要な用途においては、水性のインクにおける印刷は本来的に親水性の印刷層を形成するので、過酷な条件(特に雨や湿気等)における使用により表面の印刷層が劣化したり、流出、変色したりする不都合が発生した。
【0005】また、水性染料からなるインクジェット用インクを用いて基材上に図柄を印刷し、耐候性・耐水性を向上するために透明塩化ビニルシートや透明ポリエチレンテレフタレートシートをオーバーレイして、表面光沢を保持することも行われているが、オーバーレイフィルムを使用することは、樹脂の組み合わせによっては基材の持つ柔軟性が損なわれ、屋外看板等に用いると耐候性が劣り、特に冬季や寒冷地での低温下の使用、温度差の大きな環境下での長期の使用においては、柔軟性が不十分となり、フィルムが裂けてしまったり、白化したりして、長期間使用される場合はが十分な耐候性を有するものはなかった。
【0006】そこで、印刷層の耐候性に優れた油性インクをインクジェット用インクとして用いるシステが開発されている。このようなシステムに用いられるインクはいずれも、芳香族系、ケトン系、エーテル系、エステル系等の混合有機溶剤に合成樹脂を溶解し、顔料を分散させたも溶剤型のインクである。
【0007】このような溶剤型インクジェットシステムはインクが油性であるため、印刷層のインク自体の耐水性は水性インクと比較して格段に優れるものの、従来の水性インクジェット用のメディアにそのまま印刷すると、メディアの表面が親水性であることから、インクとメディアとの密着性が不十分となり、使用中にインクがメディアから剥がれてしまうという問題が起こった。
【0008】油性インクとの親和性が高い樹脂材料として塩化ビニル等の塩素系樹脂を溶剤型マ−キングメディアとして使用する試みもなされているが、貼り替えることの多い看板等の用途においては、使用後のシートを廃棄する頻度も高く、使用後の廃棄処理が大きな問題となってきた。特に基材に塩化ビニルシートを用いたメディアは、使用後に廃棄する際、焼却すると塩素系ガスが発生するのでそのままでは焼却することができず、焼却炉の塩素ガス除去用の装置を設ける必要があり、また、処理に際して、有害塩素含有有機化合物が副生する可能性があることも社会的な問題となっている。
【0009】基材に塩化ビニルシート等を用い従来のメディアは溶剤型インクに対して侵され易いことも大きな問題となっている。たとえば、インク濃度の高い部分は面積当たりの溶剤量が多いため、シートが膨潤・溶解し、マーキングメディアとしての物性が損なわれる。すなわち、セパレーターから剥離する際、シートが伸びたり破れたりすることがあり、貼り付けの際の作業性が著しく悪くなったり、貼り付け後、溶剤の乾燥につれてシートが収縮し、クラックや剥がれや繋ぎ合わせ部分の目開きの原因となるという不都合が生じた。
【0010】さらに、基材層を通過して接着層にも溶剤が浸透して、接着剤層を劣化させ、インクや基材に損傷を受けなくても、接着剤層の部分から剥がれ落ちてしまうという新たな問題も発生じた。
【0011】溶剤が接着層まで浸透すると、接着層の粘着性(タック)が著しく高くなり貼り付け作業性が損なわれるばかりでなく、接着性そのものが損なわれる。そのために貼りつけられたシートが自然剥離したり、接着層と基材層と層間密着性が悪くなるために、貼り直しや使用後の剥離の際接着層のみが被着体に残留して、貼り替え作業を非常に困難にしてしまうのである。
【0012】印刷後速やかに、熱風オーブン等を用いてシート中に浸透した溶剤を強制的に乾燥することも行われるが、生産性が低下する上、収縮が異なるシートは繋ぎ合わせて貼ることが出来なくなる。また、大量に溶剤が浸透した塩ビシートを強制乾燥するとシートが著しく脆化してしまい、凹凸面に追随して破れずに貼り付けることが困難となってしまった。
【0013】そこで本発明者らは、油性インクを使用して、印刷性、貼り付け作業性、耐候性に優れかつ使用後の焼却によって有害物質を発生することのない、屋外看板や車体貼り付け用のマーキングメディアとして、「溶剤浸透性変成オレフィン系樹脂を含有する樹脂層(I)と、該樹脂層(I)によって被覆されたエラストマー成分含有熱可塑性オレフィン系樹脂層(II)と、該樹脂層(II)に積層された接着剤層とを有することを特徴とする油性インク受容性マーキングメディア」を提案した。(特許文献1参照)
【0014】しかしながらこの提案においては、通常の使用における、印刷性、貼り付け作業性は良好であったが、受容層と基体層との層間密着性が不十分であり、温度差の激しい環境下等では層間剥離したり、外観不良となったりする不都合が発生した。
【0015】
【特許文献1】特願2001−277698
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術が有していた前述の課題を解決しようとするものであり、特に低温環境における貼り付け作業性、耐候性、貼り替え特性に総合的に優れ、かつ使用後の焼却によって有害物質を発生することのない、屋外看板や車体貼り付け用の溶剤型マーキングメディアを提供することを課題とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明は、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)とエチレンと極性モノマーとの共重合体との配合樹脂からなる樹脂層(I)と、 該樹脂層(I)によって被覆され、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)の配合樹脂からなる熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂層(II)とから構成される、溶剤型マーキングメディアを提供するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。
本発明におけるマーキングメディアは、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)とアクリル系樹脂との配合樹脂からなる樹脂層(I)と、 該樹脂層(I)によって被覆され、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)の配合樹脂からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂層(II)とを有する。
【0019】本発明における樹脂層(I)は、溶剤型インクジェットインクを受容する受容層である。溶剤型インクジェットインクは、芳香族系、ケトン系、エーテル系、エステル系等有機溶剤に色素が分散したものであるが、これらの溶剤が樹脂層(I)に浸透し、膨潤あるいは部分溶解することを指す。
【0020】樹脂層(I)に油性インクを滴下した場合の好ましい初期の接触角は10〜50度、より好ましくは12〜40度、さらに好ましくは15〜35度である。
【0021】本発明の樹脂層(I)はスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)を必須成分として含有する。SEPSのスチレンの含量は任意に調整可能であるが、インクの受容性、樹脂層(II)との相容密着性の観点から50〜80重量%、好ましくは60〜80重量%の範囲内であることが好ましい。
【0022】本発明における樹脂層(I)はまたエチレンと極性モノマーとの共重合体を含有する。本発明のエチレンと極性モノマーとの共重合体は、溶剤型インクと樹脂層(I)との密着性、フィルム製膜性を考慮すると、アクリル系樹脂、エチレン酢ビ系樹脂が好ましい。
【0023】アクリル系樹脂としては、アクリル酸(メタアクリル酸)モノマーとオレフィン系モノマーを共重合させた重合体たとえば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体(EGMAMA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体(EGMAVA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(EGMA)、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(EEAMAH)等が好ましい樹脂として挙げられ、溶剤型インクと樹脂層(I)の密着性を考慮すると、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)が特に好ましい。
【0024】中でも溶剤浸透性、基材層との密着性、受容層表面の粘着性(タック)等のバランスより(メタ)アクリル酸エステル含量が10〜50重量%の上記エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)またはエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂が特に好ましい。
【0025】エチレン酢ビ系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられ、溶剤浸透性、基材層との密着性、受容層表面の粘着性(タック)等のバランスより酢酸ビニル含量が10〜20重量%の共重合体が特に好ましい。
【0026】上記SEPSとアクリル系樹脂は30/70〜70/30、好ましくは 35/65〜65/35、特に好ましくは40/60〜60/40の割合で配合するのがよい。SEPS含有量が多すぎるとメルトフローレート(MFR)が小さくなって製膜性がわるくなり、少なすぎると溶剤型インクの吸収・浸透速度が遅くなるためインクの密着性が低下してしまう。
【0027】上記樹脂層(I)は、上記樹脂の他に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の製造時あるいは使用時の劣化を防止する為に各種添加剤や印刷の鮮明性や印刷密着性、あるいは印刷インクの浸透乾燥速度を向上させる為に充填剤や顔料、その他の各種添加剤を含有してもよい。
【0028】紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ベンゾエート系等の有機系紫外線吸収剤、超微粒子酸化チタンや酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤が使用出来る。また合わせて紫外線遮蔽性のある酸化チタン等の無機顔料を使用することもできる。
【0029】光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものが好ましく使用出来る。
【0030】酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、フォスファイト系、ラクトン系、αトコフェロール系のものが好適に使用できる。
【0031】以上の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤は相乗効果が得られる場合が多く、個々のグレードにつき効果の高い組合わせを選定し併用することが出来る。
【0032】充填剤あるいは顔料としては、特に制限はなく、湿式シリカ、乾式シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ゼオライト、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられ、目的に応じ適宜使用出来る。
【0033】また樹脂層(I)に蛍光増白剤を入れることも可能で、ベンゾオキサゾール系、スチルベン系のものが好ましく使用出来る。
【0034】上記樹脂層(I)の膜厚は30〜100μm、好ましくは40〜90μm、より好ましくは50〜80μm である。膜厚が30μm以上であれば溶剤型インクを受容して発色するのに十分な膜厚であり、また100μm未満であれば、低温下でのマーキングメディアとしての曲面貼り適性も良好で好ましい。
【0035】本発明の溶剤型マ−キングメディアは、前記樹脂層(I)(受容層)によって被覆される樹脂層(II)(基材層)を有する。樹脂層(II)はマーキングフィルムとしての物理的特性に寄与する部位であると共に、樹脂層(I)に浸透した溶剤が接着剤層まで浸透してしまうのを阻止する障壁層としても働く。障壁が不十分な場合は、未印刷品と比べて印刷品の接着力が大幅に低下してしまう。
【0036】本発明の樹脂層(II)(基材層)は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)を配合したオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂である。
【0037】本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂は、主成分の熱可塑性オレフィン系樹脂に他の樹脂を共重合またはブレンドしたり、あるいは結晶性や立体規則性の制御によって、ゴム弾性を付与した樹脂であって、耐熱性、加工性、マーキングメディアとしてのフィルム物性バランスに優れたポリプロピレン系樹脂をベースとする樹脂であり、かつインクの溶媒浸透を遮蔽し印刷品の接着力を低下させることがない。
【0038】前記ポリプロピレン系樹脂については、重合の際、立体規則性を制御することにより高分子量のアタクチック体を一定量形成させることができる。この高分子量のアタクチック成分は単一組成のポリプロピレンに、エラストマーを配合したのと同様の効果をもたらし、本発明品の樹脂層(II)(基材層)に好適に使用できる。
【0039】本発明の樹脂層(II)(基材層)に用いる共重合あるいはブレンドする樹脂は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)および水素添加型スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SHBR)であり、これらの共重合あるいはブレンドする樹脂があらかじめ上記熱可塑性オレフィン樹脂に配合され製品化された市販のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂をそのまま用いても良い。
【0040】TPOには製造形態により、▲1▼単純ブレンド型TPO(バンバリーやプラストミル等の分散機で熱可塑性ポリオレフィン樹脂とEPDMのようなエラストマー性付与成分を物理的ブレンドをして、オレフィンマトリクス中にゴム成分を分散したもの)、▲2▼インプラント型TPO(オレフィンを2段階で重合することにより、リアクター中でハードセグメント部分とソフトセグメント部分とを順次形成しエラストマー性を付与したもの)、▲3▼動的架橋型TPO(バンバリーやプラストミル等の分散機で物理的混合するとともに、ゴム成分の架橋反応をさせたもので熱可塑性ポリオレフィンマトリクス中に架橋されたゴム成分が細かく分散している。)等がありいずれも好適に使用できる。
【0041】前記スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)である。SEPSのスチレンの含量は任意に調整可能であるが、樹脂層(I)との相容密着性の観点から50〜80重量%、好ましくは60〜80重量%の範囲内であることが好ましい。
【0042】もう一つのブレンド樹脂成分は、水素添加型スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)である。HSBRのスチレンの含量は任意に調整可能であるが、溶媒浸透阻止性と製膜性を考えれば10〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の範囲内であるのがよい。
【0043】前記SEPSはPP系樹脂に対してSEPS/PP系樹脂が 10/90〜40/60、好ましくは15/85〜35/65、特に好ましくは20/80〜30/70の割合でブレンドするのがよい。SEPSが多すぎると製膜性が低下して(MFRが小さい)フィルム強度が低下し、少なすぎると樹脂層(I)との層間密着性が低下する。
【0044】また前記HSBRはPP系樹脂に対してHSBR/PP系樹脂が3/97〜30/70、好ましくは5/95〜20/80、特に好ましくは10/90〜15/85の割合でブレンドするのがよい。
【0045】本発明に使用する樹脂層(II)はマーキングフィルムの基材としての特性を決定するものであり、貼りつけ作業上、適度の弾性が必要である。しかし過度のゴム的性質は不必要であるばかりか、むしろ有害ですらあり、基材層コンパウンドとして好ましい引張り弾性率は100〜1000MPa、さらに好ましくは150〜800MPaの範囲である。
【0046】本発明の樹脂層(II)(基材層)は使用する油性インクの溶剤に対して侵されないことが必要である。特に濃色印刷部分において大量の溶剤が受容層から移行してきた場合でも基材層自身は溶剤を実質的に浸透させず、膨潤軟化あるいは溶解することなく、かつ接着層への溶剤の移行を阻止するものが好ましい。
【0047】樹脂層(II)の厚さは、20〜200μm、好ましくは30〜150μmである。厚すぎると製膜時に樹脂層(I)との層比バランスがとり難くなり、製膜効率が低下し、薄すぎると溶剤が接着剤層に浸透して接着剤を劣化させる原因となる。
【0048】本発明の樹脂層(II)(基材層)はまた印刷表示の視認性、難燃性、フィルム物性等の向上の目的で無機あるいは有機充填剤を含有してもよい。
本発明のマーキングメディアを内部照明付き表示板に使用する場合には、光拡散性と適度の隠蔽性を有する必要があり、また通常の反射光でのみ見る表示を目的とする場合には隠蔽性があり出来るだけ白色度の高いものにすることが好ましい。
【0049】特に隠蔽性が必要な場合には接着層を積層する前に樹脂層(II)(基材層)の表面にアルミニウム等の金属の薄膜を蒸着やスパッタリングにより形成することが出来る。
【0050】使用できる無機あるいは有機充填剤には無色であること以外には特に制限はなく、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ等が挙げられ、目的に応じ適宜使用出来る。
【0051】本発明の樹脂層(II)(基材層)は、上記充填剤の他に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等の添加剤を含有することができる。
【0052】紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ベンゾエート系のものが使用出来る。
【0053】光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものが使用出来る。
【0054】酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、フォスファイト系、ラクトン系、αトコフェロール系のものが好適に使用できる。
【0055】蛍光増白剤としてはベンゾオキサゾール系、スチルベン系のものが好ましい。
【0056】さらに、本発明の溶剤型マ−キングメディアは、被着体に接着剤を介して貼り付ける場合は、前記のエラストマー成分含有熱可塑性オレフィン系樹脂層(II)に積層され層厚が10〜100μm、好ましくは15〜70μm、特に好ましくは20〜50μmの接着剤層を有することができる。
接着剤層の層厚が10μm以上であれば被着体の表面状態によらず密着し易く、自然に剥離しない。膜厚が100μm以下であれば、端面にはみ出した接着剤層へ汚れが付着することもなく、また経済的にも有利になるのでいずれも好ましい。
【0057】使用される接着剤層を形成する樹脂は、特に制限されるものではないが、前記エラストマー成分含有熱可塑性オレフィン系樹脂層の全面に積層されて接着剤の層を形成するものであり、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂、シリコーン系樹脂等が好ましい例として挙げられる。これらの中でも、耐候性に優れ、比較的安価で加工適性の優れている(メタ)アクリル系樹脂あるいは、熱可塑性エラストマー系樹脂が特に好ましい。
【0058】本発明の接着層は印刷表示の視認性、難燃性、耐熱性、接着性、耐候性等の向上の目的で無機、有機の充填剤や添加剤を含有してもよい。
本発明のマーキングメディアを内部照明付き表示板に使用する場合には、光拡散性と適度の隠蔽性を有する必要があり、また通常の反射光でのみ見る表示を目的とする場合には隠蔽性があり出来るだけ白色度の高いものにすることが好ましい。
【0059】これらの光学特性は接着層のみでなく、受容層および基材層と相俟って実現すべきものである。たとえば基材層あるいは受容層に酸化チタンを配合した場合、接着層に有色あるいは黒の顔料、染料、金属フレーク等と配合することにより白色度を保ちつつ高度の隠蔽性を得ることが出来る。
【0060】使用できる無機あるいは有機充填剤には特に制限はなく、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミフレーク、ステンレスフレーク、カーボンブラック、その他の顔料等が挙げられ、目的に応じ適宜使用出来る。
【0061】接着剤層を基材層(樹脂層II)に積層するため、基材層(樹脂層II)の接着剤層と接触する面に適当な処理を施してもよい。処理方法としては、グロー放電処理、低圧水銀灯照射処理、エキシマレーザー照射処理、電子線照射処理(EB処理)、フレームプラズマ処理、薬品処理、コロナ処理、バリア放電処理などがあり、いずれも効果があるが、コロナ放電処理、バリア放電処理などが容易に実施可能である。
【0062】このような処理をする場合は、該表面のぬれ指数が32〜70、好ましくは 35〜65、特に好ましくは40〜60とするのが良い。
【0063】ぬれ指数が32未満の場合は基材層(樹脂層II)と接着剤層とのぬれが十分でないために、溶剤型マ−キングメディアを貼り直したり、剥がしたりする際、接着剤層のみが被着体に残ってしまうことがある。 またぬれ指数が70を超える場合には基材層表面の樹脂の主鎖が過度に酸化的に切断されることがあり、その場合には表面付近に凝集力の乏しい低分子量成分が多く生成するため、むしろかえって層間密着強度が落ちることもある。
【0064】冬季、寒冷地などの5℃以下の低温条件で使用する場合には、接着剤として(メタ)アクリル酸系樹脂接着剤、熱エラストマー系接着剤が特に好ましい。
【0065】本発明の溶剤型マ−キングメディアを製造する方法は特に制限されるものではなく、各層をTダイ押し出し成形、インフレーション成形、溶液キャスト成形等の公知のフィルム製造方法でそれぞれ成形し、加熱あるいは常温圧着で重ね合わせれば良い。
【0066】生産性の観点からは、接着剤層を樹脂溶液もしくは樹脂分散液より形成する場合には、まず受容層である樹脂層(I)と基材層である樹脂層(II)とをTダイ押出し法、またはインフレーション法によって2層同時成形し、得られたシートに、接着剤層を直接コーティングするか、もしくは一旦、剥離処理したシートにコーティングした接着剤層をラミネートロールを用いて積層することによって製造する方法が好ましい。
【0067】さらには、接着剤層が常温で固体状の樹脂から直接加熱形成可能であり、かつ形成した接着剤層の粘着性が工程上許容できる程度に小さい場合には、生産性の観点から、樹脂層(I)、樹脂層(II)、および接着層をTダイ押出し法、またはインフレーション法によって3層同時成形する製法が特に好ましい。
【0068】このようにして製造された溶剤型マ−キングメディアは屋外や過酷な使用条件に耐え得る高耐候性マーキングメディアとして、油性インクジェット印刷やスクリーン印刷を施した上、自動車車体の装飾や、屋外の看板・表示等に有効に使用できる。
低温条件で、本発明のマーキングメディアは伸びの低下がなくかつ印刷品の接着力が大きいので、寒冷地で曲面を有する被着体に貼りつける用途には特に好適に使用される。
【0069】
【発明の実施の形態】以下実施例により、発明を説明する。
【0070】受容層コンパウンドAの調製
スチレン含量65%のSEPS樹脂セプトン2104(クラレ製)45重量部、軟質アクリル樹脂パラペットSA1000NW201(クラレ製)5重量部、MMA含量30%のEMMA樹脂アクリフトCM5019(住友化学製)100重量部、ルチル型酸化チタンタイペークCR−90(石原産業製)12重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を2軸押出機、PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。ペレットを単層押出機により厚さ50μmの受容層コンパウンドA単体のシートを作成した。
ガラス板の上にこのシートを置き、1μlの油性マジェンタインク PJ−SOINK−MA(武藤工業製)をマイクロシリンジにて滴下し10分後にシートを剥がし、観察したところインクは浸透乾燥しており、シートが侵されて穴が開くことも無かった。
【0071】受容層コンパウンドBの調製
受容層コンパウンドAにMMA含量30%のEMMA樹脂、アクリフトCM5019(住友化学製)100重量部、吸油量 270ml/100g、平均粒径4μmの湿式シリカ、ニップジェルAY−401(日本シリカ工業製)30重量部を追加し、2軸押出し機、TEM−41(東芝機械製) にて混練しペレット化した。ペレットを単層押出機により厚さ50μmの受容層コンパウンドB単体のシートを作成した。
ガラス板の上にこのシートを置き、1μlの油性マジェンタインクPJ−SOINK−MA(武藤工業製)をマイクロシリンジにて滴下し10分後にシートを剥がし、観察したところインクは浸透乾燥しており、シートが侵されて穴が開くことも無かった。
【0072】受容層コンパウンドCの調製
スチレン含量65%のSEPS樹脂セプトン2104(クラレ製)50重量部、EA含量35%のEEA樹脂NUC6940(日本ユニカー製)50重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製1重量部、吸油量 250ml/100g、平均粒径4μmの球状湿式シリカ、サイロスフェアC−1504(富士シリシア製)20重量部、αトコフェロール系酸化防止剤ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押出し機、TEM−41(東芝機械製)にて混練しペレット化した。
ペレットを単層押出機により厚さ50μmの受容層コンパウンドC単体のシートを作成した。
ガラス板の上にこのシートを置き、1μlの油性マジェンタインク PJ−SOINK−MA(武藤工業製)をマイクロシリンジにて滴下し10分後にシートを剥がし、観察したところインクは浸透乾燥しており、シートが侵されて穴が開くことも無かった。
【0073】受容層コンパウンドDの調製
スチレン含量65%のSEPS樹脂、セプトン2104(クラレ製)100重量部、ルチル型酸化チタンCR90(石原産業製)20重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を2軸押出機、PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
熱プレスにより厚さ50μmの受容層コンパウンドD単体のシートを作成した。
ガラス板の上にこのシートを置き、1μlの油性マジェンタインク PJ−SOINK−MA(武藤工業製)をマイクロシリンジにて滴下し10分後にシートを剥がし、観察したところインクは浸透乾燥しており、シートが侵されて穴が開くことは無かった。
【0074】基材層コンパウンドEの調製
高分子アタクティック体を内包するポリプロピレンからなるインプラント型TPO樹脂、IDEMITSU TPO F−3900H(出光石油化学製)、65重量部、スチレン含量65%のSEPS樹脂、セプトン2104(クラレ製)25重量部、スチレン含量16%のHSBR樹脂、ダイナロン1320P(JSR製)10重量部、ルチル型酸化チタン、タイペークCR−90(石原産業製)12重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を2軸押出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
基材層コンパウンドEを単層で押し出した厚さ50μmのシートの引っ張り弾性率を測定したところ、350MPaであった。
【0075】基材層コンパウンドFの調製
高分子アタクティック体を内包するポリプロピレンからなるインプラント型TPO樹脂、IDEMITSU TPO F−3900H(出光石油化学製)、35重量部、IDEMITSU TPO E−2700(出光石油化学製)、30重量部、スチレン含量65%のSEPS樹脂、セプトン2104(クラレ製)25重量部、スチレン含量16%のHSBR樹脂、ダイナロン1320P(JSR製)10重量部、ルチル型酸化チタン、タイペークCR−90(石原産業製)12重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
基材層コンパウンドEを単層で押し出した厚さ70μmのシートの引っ張り弾性率を測定したところ、310MPaであった。
【0076】基材層コンパウンドGの調製
高分子アタクティック体を内包するポリプロピレンからなるインプラント型TPO樹脂、F3900H(出光化学製)60重量部、スチレン含量65%のSEPS樹脂、セプトン(重量クラレ製)2014 20重量部、スチレン含量16%のHSBRダイナロン2324P(JSR製)20重量部、ルチル型酸化チタンタイペークCR−90(石原産業製)20重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
基材層コンパウンドGを単層で押し出した厚さ50μmのシートの引っ張り弾性率を測定したところ、180MPaであった。
【0077】基材層コンパウンドHの調製
ホモPPとEPMから成るインプラント型TPO樹脂、ゼラスZT701(三菱化学製)、100重量部、ルチル型酸化チタン、タイペークCR−90(石原産業製)20重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
基材層コンパウンドHを単層で押し出したシートの引っ張り弾性率を測定したところ、350MPaであった。
【0078】実施例1
受容層コンパウンドAと基材層コンパウンドEとを2種2層用のフィードブロックを用いて溶融状態で積層して単層Tダイ金型に供給し、共押出し成形して実施例1の油性インク受容性マーキングメディアの原反を得た。走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、受容層は50μm、基材層は50μmの厚みであった。
【0079】接着層Iの形成
シリコーン処理したポリエチレンコート剥離紙、SLK110W(カイト化学製)にアクリル系粘着剤溶液 AROSET S301(Ashland Specialty Chmical Company製)100重量部に希釈剤として酢酸エチル10重量部を混合攪拌したものをダイレクトコンマコーターにて流延塗工し、熱風オーブン乾燥(95℃、3分間)後、先に製膜した原反の基材層側と貼り合わせて実施例1の油性インク受容性マーキングメディアを得た。 なお原反の基材層側には貼り合わせ前に濡れ指数が約54となるようコロナ処理を施した。
【0080】実施例2、比較例1、比較例2
同様の手法でそれぞれの原反に粘着剤を積層して、実施例2、比較例1、比較例2のメディアを得た。
【0081】実施例3
接着層コンパウンドJの調製
シリコーン処理したポリエチレンコート剥離紙、SLK110W(カイト化学製)にアクリル系粘着剤溶液 KP−1004(日本カーバイド工業製)100重量部と架橋剤CK−101(日本カーバイド工業製)1重量部、希釈剤として酢酸エチル30重量部を混合攪拌したものをダイレクトコンマコーターにて流延塗工し、熱風オーブン乾燥(95℃、3分間)後、先に製膜した原反の基材層側と貼り合わせて実施例3の油性インク受容性マーキングメディアを得た。 なお原反の基材層側には貼り合わせ前に濡れ指数が約54となるようコロナ処理を施した。
【0082】比較例3
接着層コンパウンドLの調製
シリコーン処理したポリエチレンコート剥離紙、SLK110W(カイト化学製)にアクリル系粘着剤溶液 PE−121(日本カーバイド工業製)100重量部と架橋剤CK−101(日本カーバイド工業製)2重量部、希釈剤として酢酸エチル30重量部を混合攪拌したものをダイレクトコンマコーターにて流延塗工し、熱風オーブン乾燥(95℃、3分間)後、先に製膜した原反の基材層側と貼り合わせて比較例3の油性インク受容性マーキングメディアを得た。なお原反の基材層側には貼り合わせ前に濡れ指数が約45となるようコロナ処理を施した。
【0083】接着層コンパウンドKの調製
スチレン含量10%のHSBR樹脂、ダイナロン1320P(JSR製)100重量部、粘着付与剤、スーパーエステルE−702(荒川化学工業製)5重量部、ルチル型酸化チタンCR−90(石原産業製)20重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押し出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混錬しペレット化した。
【0084】実施例4
受容層コンパウンドA、基材層コンパウンドE、接着層コンパウンドKを口径300mmの3層丸ダイ付の押出し機(プラコー製)を用いてブロー比約3にてインフレーション成形した。接着層が外層になるようにし外層が接するロールはすべてテフロン(登録商標)加工したものを使用した。折りたたみ両端をスリット後、それぞれの接着層がシリコーン処理面に接するよう剥離紙とともに巻取り、実施例4の油性インク受容性メディアを得た。
走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、受容層は60μm、基材層は40μm、接着層は30μmの厚みであった。
【0085】比較例4
実施例4と同様に、受容層コンパウンドA、基材層コンパウンドE、接着層コンパウンドKを口径300mmの3層丸ダイ付の押出し機(プラコー製)を用いてブロー比約 3.5にてインフレーション成形した。接着層が外層になるようにし外層が接するロールはすべてテフロン(登録商標)加工したものを使用した。折りたたみ両端をスリット後、それぞれの接着層がシリコーン処理面に接するよう剥離紙とともに巻取り比較例4の油性インク受容性メディアを得た。走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、受容層は25μm、基材層は50μm、接着層は30μmの厚みであった。
【0086】比較例5
市販の油性インク受容性メディア 東洋インキ製塩化ビニル系単層白色マーキングメディア商品名PJ−501を使用した。
【0087】比較例6
市販の油性インク受容性メディアリンテック社製ラミレス用単層白色マーキングメディアを使用した。
上記実施例、比較例をまとめると以下表1、表2のとおりである。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】得られた各シートの特性を表3及び表4に示す。
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】なお物性評価は以下に述べる方法で行った。
試験片の調整
印刷品は、油性インクジェットプリンター、ラミレスPJ−1304NX(武藤工業製)を用いて出力濃度100%設定にて5cm角のマジェンタ単色ベタ印刷を行い30分所定温度(常温:23℃、低温:5℃)にて放置後以下の試験をした。
なお密着性、耐温水性、耐候性の試験の際には、あらかじめ7cm×15cmのアルミ板に貼り、室温にて一日放置したものを使用した.
【0093】(1)物理特性
* 伸び、降伏力、破断力
印刷、未印刷の各シートを一号ダンベル(10mm巾)でカットし、引張試験機を用いつかみ間隔 50mm、引張測度 200mm/minで引張試験を行い、伸び、降伏力、破断力を各温度(23℃、5℃)で測定した。
尚、降伏力と破断力の測定単位はin巾に換算値です。
* 接着力
未印刷の各シートを25.4mm巾x200mm長にカットし、各温度下(23℃、5℃)でIPA清浄、乾燥されたアルキッドメラミン焼付塗装板(日本テストパネル社製)に貼付、2Kgロールで5往復圧着されたシートを72時間後に引張試験機を用い、引張測度 300mm/min、180°ピールで剥離した時の接着力を測定した。
【0094】(2)曲面貼り適性
12cm角のインクジェットメディアが直径約30cmの半球状をした料理用ステンレスボウルの凸面にシワ、浮きなくきれいに貼れるかどうか試験した.
○:シワ、浮きなく容易にきれいに貼れるもの
△:注意深く行えばシワ、浮きなくきれいに貼ることができるもの
×:シワ、浮きなくきれいに貼ることが困難であるもの。
【0095】(3)インク受容性
インクのハジキ、濃度むらの有無を目視にて判定した.
○:ハジキ、濃度むらが認められないもの
△:ハジキ、濃度むらがわずかに認められるもの
×:ハジキ、濃度むらの著しいもの
【0096】(4)浸透乾燥性
インク層に濾紙を押し当て色の移行の有無を判定した.
○:色の移行が認められないもの
△:色の移行が認められるもの
×:一見して浸透乾燥していないことが明らかであるもの
【0097】(5)インク密着性
インク層にセロハンテープ(ニチバン製)を押し当て急激に剥離してインク層のセロハンテープへの転着の有無を判定した.
○:まったくセロハンテープへの転着が認められないもの
△:一部のみセロハンテープへの転着が認められるもの
×:セロハンテープへの転着が著しいもの
【0098】(6)層間密着性
各シートをIPA清浄、乾燥されたアルキッドメラミン焼付塗装板(日本テストパネル社製)に貼付、固定し 表面の受容層にセロハンテープ(ニチバン製)を押し当て急激に剥離して受容層のセロハンテープへの転着の有無を評価した。
○:まったくセロハンテープへの転着が認められないもの
△:一部のみセロハンテープへの転着が認められるもの
×:セロハンテープへの転着が著しいもの
【0099】(7)耐温水性
40℃の温水に72時間浸漬後、引き上げて表面状態の異状の有無を観察した。
○:原片と比較して明らかな変化の認められないもの。
×:インク層、受容層、基材層のクラック、剥がれ、変色等の異状が認められるもの。
【0100】(8)耐候性
サンシャインウェザオメーター(ブラックパネル温度63℃、降雨18分/180分)に入れ、500時間暴露した後のインク層、受容層、基材層のクラック、剥がれ、変色等の異状の発生を目視にて評価した。
○:原片と比較して明らかな変化の認められないもの。
×:インク層、受容層、基材層のクラック、剥がれ、変色の異状が認められるもの。
【発明の属する技術分野】本発明は溶剤をベースとした油性インクを用いたプリンターで記号、表示、写真等を印刷し、基材に貼り付けて使用するための溶剤型マ−キングメディアに関するものであって、特に屋外や寒冷地での過酷な使用条件に耐え得る低温施工性に優れた高耐候性溶剤型マ−キングメディアに関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、インクジェットプリンターの普及によって、インクジェットプリンターで記号や表示等をプリントしたフィルムを各種基材に貼り合わせ、表示板、広告看板、シャッター、車両等の表示や装飾に使用することが行われている。
【0003】インクジェットプリンターによるプリントは、小さなノズルからインクを微小流滴で噴射し、メディア上に、インクの粒によるドットを付着させて文字や図柄を形成する方式である。微細なノズルからインクを噴射しなければならないため、ノズルの詰まりが起こりにくい水性染料溶液や親水性顔料を水に分散させた水性インクが用いられることが多く、たとえば、シアン、マジェンタ、イエロー、ブラックの4色の水性インクを重ねて目的の色を得る方法が一般に行われている。
【0004】ところが、例えば、車両の外観装飾用、屋外看板用途等高度の耐候性が必要な用途においては、水性のインクにおける印刷は本来的に親水性の印刷層を形成するので、過酷な条件(特に雨や湿気等)における使用により表面の印刷層が劣化したり、流出、変色したりする不都合が発生した。
【0005】また、水性染料からなるインクジェット用インクを用いて基材上に図柄を印刷し、耐候性・耐水性を向上するために透明塩化ビニルシートや透明ポリエチレンテレフタレートシートをオーバーレイして、表面光沢を保持することも行われているが、オーバーレイフィルムを使用することは、樹脂の組み合わせによっては基材の持つ柔軟性が損なわれ、屋外看板等に用いると耐候性が劣り、特に冬季や寒冷地での低温下の使用、温度差の大きな環境下での長期の使用においては、柔軟性が不十分となり、フィルムが裂けてしまったり、白化したりして、長期間使用される場合はが十分な耐候性を有するものはなかった。
【0006】そこで、印刷層の耐候性に優れた油性インクをインクジェット用インクとして用いるシステが開発されている。このようなシステムに用いられるインクはいずれも、芳香族系、ケトン系、エーテル系、エステル系等の混合有機溶剤に合成樹脂を溶解し、顔料を分散させたも溶剤型のインクである。
【0007】このような溶剤型インクジェットシステムはインクが油性であるため、印刷層のインク自体の耐水性は水性インクと比較して格段に優れるものの、従来の水性インクジェット用のメディアにそのまま印刷すると、メディアの表面が親水性であることから、インクとメディアとの密着性が不十分となり、使用中にインクがメディアから剥がれてしまうという問題が起こった。
【0008】油性インクとの親和性が高い樹脂材料として塩化ビニル等の塩素系樹脂を溶剤型マ−キングメディアとして使用する試みもなされているが、貼り替えることの多い看板等の用途においては、使用後のシートを廃棄する頻度も高く、使用後の廃棄処理が大きな問題となってきた。特に基材に塩化ビニルシートを用いたメディアは、使用後に廃棄する際、焼却すると塩素系ガスが発生するのでそのままでは焼却することができず、焼却炉の塩素ガス除去用の装置を設ける必要があり、また、処理に際して、有害塩素含有有機化合物が副生する可能性があることも社会的な問題となっている。
【0009】基材に塩化ビニルシート等を用い従来のメディアは溶剤型インクに対して侵され易いことも大きな問題となっている。たとえば、インク濃度の高い部分は面積当たりの溶剤量が多いため、シートが膨潤・溶解し、マーキングメディアとしての物性が損なわれる。すなわち、セパレーターから剥離する際、シートが伸びたり破れたりすることがあり、貼り付けの際の作業性が著しく悪くなったり、貼り付け後、溶剤の乾燥につれてシートが収縮し、クラックや剥がれや繋ぎ合わせ部分の目開きの原因となるという不都合が生じた。
【0010】さらに、基材層を通過して接着層にも溶剤が浸透して、接着剤層を劣化させ、インクや基材に損傷を受けなくても、接着剤層の部分から剥がれ落ちてしまうという新たな問題も発生じた。
【0011】溶剤が接着層まで浸透すると、接着層の粘着性(タック)が著しく高くなり貼り付け作業性が損なわれるばかりでなく、接着性そのものが損なわれる。そのために貼りつけられたシートが自然剥離したり、接着層と基材層と層間密着性が悪くなるために、貼り直しや使用後の剥離の際接着層のみが被着体に残留して、貼り替え作業を非常に困難にしてしまうのである。
【0012】印刷後速やかに、熱風オーブン等を用いてシート中に浸透した溶剤を強制的に乾燥することも行われるが、生産性が低下する上、収縮が異なるシートは繋ぎ合わせて貼ることが出来なくなる。また、大量に溶剤が浸透した塩ビシートを強制乾燥するとシートが著しく脆化してしまい、凹凸面に追随して破れずに貼り付けることが困難となってしまった。
【0013】そこで本発明者らは、油性インクを使用して、印刷性、貼り付け作業性、耐候性に優れかつ使用後の焼却によって有害物質を発生することのない、屋外看板や車体貼り付け用のマーキングメディアとして、「溶剤浸透性変成オレフィン系樹脂を含有する樹脂層(I)と、該樹脂層(I)によって被覆されたエラストマー成分含有熱可塑性オレフィン系樹脂層(II)と、該樹脂層(II)に積層された接着剤層とを有することを特徴とする油性インク受容性マーキングメディア」を提案した。(特許文献1参照)
【0014】しかしながらこの提案においては、通常の使用における、印刷性、貼り付け作業性は良好であったが、受容層と基体層との層間密着性が不十分であり、温度差の激しい環境下等では層間剥離したり、外観不良となったりする不都合が発生した。
【0015】
【特許文献1】特願2001−277698
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術が有していた前述の課題を解決しようとするものであり、特に低温環境における貼り付け作業性、耐候性、貼り替え特性に総合的に優れ、かつ使用後の焼却によって有害物質を発生することのない、屋外看板や車体貼り付け用の溶剤型マーキングメディアを提供することを課題とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明は、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)とエチレンと極性モノマーとの共重合体との配合樹脂からなる樹脂層(I)と、 該樹脂層(I)によって被覆され、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)の配合樹脂からなる熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂層(II)とから構成される、溶剤型マーキングメディアを提供するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。
本発明におけるマーキングメディアは、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)とアクリル系樹脂との配合樹脂からなる樹脂層(I)と、 該樹脂層(I)によって被覆され、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)の配合樹脂からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂層(II)とを有する。
【0019】本発明における樹脂層(I)は、溶剤型インクジェットインクを受容する受容層である。溶剤型インクジェットインクは、芳香族系、ケトン系、エーテル系、エステル系等有機溶剤に色素が分散したものであるが、これらの溶剤が樹脂層(I)に浸透し、膨潤あるいは部分溶解することを指す。
【0020】樹脂層(I)に油性インクを滴下した場合の好ましい初期の接触角は10〜50度、より好ましくは12〜40度、さらに好ましくは15〜35度である。
【0021】本発明の樹脂層(I)はスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)を必須成分として含有する。SEPSのスチレンの含量は任意に調整可能であるが、インクの受容性、樹脂層(II)との相容密着性の観点から50〜80重量%、好ましくは60〜80重量%の範囲内であることが好ましい。
【0022】本発明における樹脂層(I)はまたエチレンと極性モノマーとの共重合体を含有する。本発明のエチレンと極性モノマーとの共重合体は、溶剤型インクと樹脂層(I)との密着性、フィルム製膜性を考慮すると、アクリル系樹脂、エチレン酢ビ系樹脂が好ましい。
【0023】アクリル系樹脂としては、アクリル酸(メタアクリル酸)モノマーとオレフィン系モノマーを共重合させた重合体たとえば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−アクリル酸メチル共重合体(EGMAMA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル−酢酸ビニル共重合体(EGMAVA)、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(EGMA)、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸共重合体(EEAMAH)等が好ましい樹脂として挙げられ、溶剤型インクと樹脂層(I)の密着性を考慮すると、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)が特に好ましい。
【0024】中でも溶剤浸透性、基材層との密着性、受容層表面の粘着性(タック)等のバランスより(メタ)アクリル酸エステル含量が10〜50重量%の上記エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)またはエチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂が特に好ましい。
【0025】エチレン酢ビ系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられ、溶剤浸透性、基材層との密着性、受容層表面の粘着性(タック)等のバランスより酢酸ビニル含量が10〜20重量%の共重合体が特に好ましい。
【0026】上記SEPSとアクリル系樹脂は30/70〜70/30、好ましくは 35/65〜65/35、特に好ましくは40/60〜60/40の割合で配合するのがよい。SEPS含有量が多すぎるとメルトフローレート(MFR)が小さくなって製膜性がわるくなり、少なすぎると溶剤型インクの吸収・浸透速度が遅くなるためインクの密着性が低下してしまう。
【0027】上記樹脂層(I)は、上記樹脂の他に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の製造時あるいは使用時の劣化を防止する為に各種添加剤や印刷の鮮明性や印刷密着性、あるいは印刷インクの浸透乾燥速度を向上させる為に充填剤や顔料、その他の各種添加剤を含有してもよい。
【0028】紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ベンゾエート系等の有機系紫外線吸収剤、超微粒子酸化チタンや酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤が使用出来る。また合わせて紫外線遮蔽性のある酸化チタン等の無機顔料を使用することもできる。
【0029】光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものが好ましく使用出来る。
【0030】酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、フォスファイト系、ラクトン系、αトコフェロール系のものが好適に使用できる。
【0031】以上の紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤は相乗効果が得られる場合が多く、個々のグレードにつき効果の高い組合わせを選定し併用することが出来る。
【0032】充填剤あるいは顔料としては、特に制限はなく、湿式シリカ、乾式シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ゼオライト、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられ、目的に応じ適宜使用出来る。
【0033】また樹脂層(I)に蛍光増白剤を入れることも可能で、ベンゾオキサゾール系、スチルベン系のものが好ましく使用出来る。
【0034】上記樹脂層(I)の膜厚は30〜100μm、好ましくは40〜90μm、より好ましくは50〜80μm である。膜厚が30μm以上であれば溶剤型インクを受容して発色するのに十分な膜厚であり、また100μm未満であれば、低温下でのマーキングメディアとしての曲面貼り適性も良好で好ましい。
【0035】本発明の溶剤型マ−キングメディアは、前記樹脂層(I)(受容層)によって被覆される樹脂層(II)(基材層)を有する。樹脂層(II)はマーキングフィルムとしての物理的特性に寄与する部位であると共に、樹脂層(I)に浸透した溶剤が接着剤層まで浸透してしまうのを阻止する障壁層としても働く。障壁が不十分な場合は、未印刷品と比べて印刷品の接着力が大幅に低下してしまう。
【0036】本発明の樹脂層(II)(基材層)は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)を配合したオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂である。
【0037】本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂は、主成分の熱可塑性オレフィン系樹脂に他の樹脂を共重合またはブレンドしたり、あるいは結晶性や立体規則性の制御によって、ゴム弾性を付与した樹脂であって、耐熱性、加工性、マーキングメディアとしてのフィルム物性バランスに優れたポリプロピレン系樹脂をベースとする樹脂であり、かつインクの溶媒浸透を遮蔽し印刷品の接着力を低下させることがない。
【0038】前記ポリプロピレン系樹脂については、重合の際、立体規則性を制御することにより高分子量のアタクチック体を一定量形成させることができる。この高分子量のアタクチック成分は単一組成のポリプロピレンに、エラストマーを配合したのと同様の効果をもたらし、本発明品の樹脂層(II)(基材層)に好適に使用できる。
【0039】本発明の樹脂層(II)(基材層)に用いる共重合あるいはブレンドする樹脂は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)および水素添加型スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SHBR)であり、これらの共重合あるいはブレンドする樹脂があらかじめ上記熱可塑性オレフィン樹脂に配合され製品化された市販のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂をそのまま用いても良い。
【0040】TPOには製造形態により、▲1▼単純ブレンド型TPO(バンバリーやプラストミル等の分散機で熱可塑性ポリオレフィン樹脂とEPDMのようなエラストマー性付与成分を物理的ブレンドをして、オレフィンマトリクス中にゴム成分を分散したもの)、▲2▼インプラント型TPO(オレフィンを2段階で重合することにより、リアクター中でハードセグメント部分とソフトセグメント部分とを順次形成しエラストマー性を付与したもの)、▲3▼動的架橋型TPO(バンバリーやプラストミル等の分散機で物理的混合するとともに、ゴム成分の架橋反応をさせたもので熱可塑性ポリオレフィンマトリクス中に架橋されたゴム成分が細かく分散している。)等がありいずれも好適に使用できる。
【0041】前記スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)である。SEPSのスチレンの含量は任意に調整可能であるが、樹脂層(I)との相容密着性の観点から50〜80重量%、好ましくは60〜80重量%の範囲内であることが好ましい。
【0042】もう一つのブレンド樹脂成分は、水素添加型スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)である。HSBRのスチレンの含量は任意に調整可能であるが、溶媒浸透阻止性と製膜性を考えれば10〜30重量%、好ましくは10〜20重量%の範囲内であるのがよい。
【0043】前記SEPSはPP系樹脂に対してSEPS/PP系樹脂が 10/90〜40/60、好ましくは15/85〜35/65、特に好ましくは20/80〜30/70の割合でブレンドするのがよい。SEPSが多すぎると製膜性が低下して(MFRが小さい)フィルム強度が低下し、少なすぎると樹脂層(I)との層間密着性が低下する。
【0044】また前記HSBRはPP系樹脂に対してHSBR/PP系樹脂が3/97〜30/70、好ましくは5/95〜20/80、特に好ましくは10/90〜15/85の割合でブレンドするのがよい。
【0045】本発明に使用する樹脂層(II)はマーキングフィルムの基材としての特性を決定するものであり、貼りつけ作業上、適度の弾性が必要である。しかし過度のゴム的性質は不必要であるばかりか、むしろ有害ですらあり、基材層コンパウンドとして好ましい引張り弾性率は100〜1000MPa、さらに好ましくは150〜800MPaの範囲である。
【0046】本発明の樹脂層(II)(基材層)は使用する油性インクの溶剤に対して侵されないことが必要である。特に濃色印刷部分において大量の溶剤が受容層から移行してきた場合でも基材層自身は溶剤を実質的に浸透させず、膨潤軟化あるいは溶解することなく、かつ接着層への溶剤の移行を阻止するものが好ましい。
【0047】樹脂層(II)の厚さは、20〜200μm、好ましくは30〜150μmである。厚すぎると製膜時に樹脂層(I)との層比バランスがとり難くなり、製膜効率が低下し、薄すぎると溶剤が接着剤層に浸透して接着剤を劣化させる原因となる。
【0048】本発明の樹脂層(II)(基材層)はまた印刷表示の視認性、難燃性、フィルム物性等の向上の目的で無機あるいは有機充填剤を含有してもよい。
本発明のマーキングメディアを内部照明付き表示板に使用する場合には、光拡散性と適度の隠蔽性を有する必要があり、また通常の反射光でのみ見る表示を目的とする場合には隠蔽性があり出来るだけ白色度の高いものにすることが好ましい。
【0049】特に隠蔽性が必要な場合には接着層を積層する前に樹脂層(II)(基材層)の表面にアルミニウム等の金属の薄膜を蒸着やスパッタリングにより形成することが出来る。
【0050】使用できる無機あるいは有機充填剤には無色であること以外には特に制限はなく、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ等が挙げられ、目的に応じ適宜使用出来る。
【0051】本発明の樹脂層(II)(基材層)は、上記充填剤の他に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等の添加剤を含有することができる。
【0052】紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ベンゾエート系のものが使用出来る。
【0053】光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものが使用出来る。
【0054】酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、フォスファイト系、ラクトン系、αトコフェロール系のものが好適に使用できる。
【0055】蛍光増白剤としてはベンゾオキサゾール系、スチルベン系のものが好ましい。
【0056】さらに、本発明の溶剤型マ−キングメディアは、被着体に接着剤を介して貼り付ける場合は、前記のエラストマー成分含有熱可塑性オレフィン系樹脂層(II)に積層され層厚が10〜100μm、好ましくは15〜70μm、特に好ましくは20〜50μmの接着剤層を有することができる。
接着剤層の層厚が10μm以上であれば被着体の表面状態によらず密着し易く、自然に剥離しない。膜厚が100μm以下であれば、端面にはみ出した接着剤層へ汚れが付着することもなく、また経済的にも有利になるのでいずれも好ましい。
【0057】使用される接着剤層を形成する樹脂は、特に制限されるものではないが、前記エラストマー成分含有熱可塑性オレフィン系樹脂層の全面に積層されて接着剤の層を形成するものであり、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、熱可塑性エラストマー系樹脂、シリコーン系樹脂等が好ましい例として挙げられる。これらの中でも、耐候性に優れ、比較的安価で加工適性の優れている(メタ)アクリル系樹脂あるいは、熱可塑性エラストマー系樹脂が特に好ましい。
【0058】本発明の接着層は印刷表示の視認性、難燃性、耐熱性、接着性、耐候性等の向上の目的で無機、有機の充填剤や添加剤を含有してもよい。
本発明のマーキングメディアを内部照明付き表示板に使用する場合には、光拡散性と適度の隠蔽性を有する必要があり、また通常の反射光でのみ見る表示を目的とする場合には隠蔽性があり出来るだけ白色度の高いものにすることが好ましい。
【0059】これらの光学特性は接着層のみでなく、受容層および基材層と相俟って実現すべきものである。たとえば基材層あるいは受容層に酸化チタンを配合した場合、接着層に有色あるいは黒の顔料、染料、金属フレーク等と配合することにより白色度を保ちつつ高度の隠蔽性を得ることが出来る。
【0060】使用できる無機あるいは有機充填剤には特に制限はなく、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、シリカ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、アクリルビーズ、スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ゼオライト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミフレーク、ステンレスフレーク、カーボンブラック、その他の顔料等が挙げられ、目的に応じ適宜使用出来る。
【0061】接着剤層を基材層(樹脂層II)に積層するため、基材層(樹脂層II)の接着剤層と接触する面に適当な処理を施してもよい。処理方法としては、グロー放電処理、低圧水銀灯照射処理、エキシマレーザー照射処理、電子線照射処理(EB処理)、フレームプラズマ処理、薬品処理、コロナ処理、バリア放電処理などがあり、いずれも効果があるが、コロナ放電処理、バリア放電処理などが容易に実施可能である。
【0062】このような処理をする場合は、該表面のぬれ指数が32〜70、好ましくは 35〜65、特に好ましくは40〜60とするのが良い。
【0063】ぬれ指数が32未満の場合は基材層(樹脂層II)と接着剤層とのぬれが十分でないために、溶剤型マ−キングメディアを貼り直したり、剥がしたりする際、接着剤層のみが被着体に残ってしまうことがある。 またぬれ指数が70を超える場合には基材層表面の樹脂の主鎖が過度に酸化的に切断されることがあり、その場合には表面付近に凝集力の乏しい低分子量成分が多く生成するため、むしろかえって層間密着強度が落ちることもある。
【0064】冬季、寒冷地などの5℃以下の低温条件で使用する場合には、接着剤として(メタ)アクリル酸系樹脂接着剤、熱エラストマー系接着剤が特に好ましい。
【0065】本発明の溶剤型マ−キングメディアを製造する方法は特に制限されるものではなく、各層をTダイ押し出し成形、インフレーション成形、溶液キャスト成形等の公知のフィルム製造方法でそれぞれ成形し、加熱あるいは常温圧着で重ね合わせれば良い。
【0066】生産性の観点からは、接着剤層を樹脂溶液もしくは樹脂分散液より形成する場合には、まず受容層である樹脂層(I)と基材層である樹脂層(II)とをTダイ押出し法、またはインフレーション法によって2層同時成形し、得られたシートに、接着剤層を直接コーティングするか、もしくは一旦、剥離処理したシートにコーティングした接着剤層をラミネートロールを用いて積層することによって製造する方法が好ましい。
【0067】さらには、接着剤層が常温で固体状の樹脂から直接加熱形成可能であり、かつ形成した接着剤層の粘着性が工程上許容できる程度に小さい場合には、生産性の観点から、樹脂層(I)、樹脂層(II)、および接着層をTダイ押出し法、またはインフレーション法によって3層同時成形する製法が特に好ましい。
【0068】このようにして製造された溶剤型マ−キングメディアは屋外や過酷な使用条件に耐え得る高耐候性マーキングメディアとして、油性インクジェット印刷やスクリーン印刷を施した上、自動車車体の装飾や、屋外の看板・表示等に有効に使用できる。
低温条件で、本発明のマーキングメディアは伸びの低下がなくかつ印刷品の接着力が大きいので、寒冷地で曲面を有する被着体に貼りつける用途には特に好適に使用される。
【0069】
【発明の実施の形態】以下実施例により、発明を説明する。
【0070】受容層コンパウンドAの調製
スチレン含量65%のSEPS樹脂セプトン2104(クラレ製)45重量部、軟質アクリル樹脂パラペットSA1000NW201(クラレ製)5重量部、MMA含量30%のEMMA樹脂アクリフトCM5019(住友化学製)100重量部、ルチル型酸化チタンタイペークCR−90(石原産業製)12重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を2軸押出機、PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。ペレットを単層押出機により厚さ50μmの受容層コンパウンドA単体のシートを作成した。
ガラス板の上にこのシートを置き、1μlの油性マジェンタインク PJ−SOINK−MA(武藤工業製)をマイクロシリンジにて滴下し10分後にシートを剥がし、観察したところインクは浸透乾燥しており、シートが侵されて穴が開くことも無かった。
【0071】受容層コンパウンドBの調製
受容層コンパウンドAにMMA含量30%のEMMA樹脂、アクリフトCM5019(住友化学製)100重量部、吸油量 270ml/100g、平均粒径4μmの湿式シリカ、ニップジェルAY−401(日本シリカ工業製)30重量部を追加し、2軸押出し機、TEM−41(東芝機械製) にて混練しペレット化した。ペレットを単層押出機により厚さ50μmの受容層コンパウンドB単体のシートを作成した。
ガラス板の上にこのシートを置き、1μlの油性マジェンタインクPJ−SOINK−MA(武藤工業製)をマイクロシリンジにて滴下し10分後にシートを剥がし、観察したところインクは浸透乾燥しており、シートが侵されて穴が開くことも無かった。
【0072】受容層コンパウンドCの調製
スチレン含量65%のSEPS樹脂セプトン2104(クラレ製)50重量部、EA含量35%のEEA樹脂NUC6940(日本ユニカー製)50重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製1重量部、吸油量 250ml/100g、平均粒径4μmの球状湿式シリカ、サイロスフェアC−1504(富士シリシア製)20重量部、αトコフェロール系酸化防止剤ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押出し機、TEM−41(東芝機械製)にて混練しペレット化した。
ペレットを単層押出機により厚さ50μmの受容層コンパウンドC単体のシートを作成した。
ガラス板の上にこのシートを置き、1μlの油性マジェンタインク PJ−SOINK−MA(武藤工業製)をマイクロシリンジにて滴下し10分後にシートを剥がし、観察したところインクは浸透乾燥しており、シートが侵されて穴が開くことも無かった。
【0073】受容層コンパウンドDの調製
スチレン含量65%のSEPS樹脂、セプトン2104(クラレ製)100重量部、ルチル型酸化チタンCR90(石原産業製)20重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を2軸押出機、PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
熱プレスにより厚さ50μmの受容層コンパウンドD単体のシートを作成した。
ガラス板の上にこのシートを置き、1μlの油性マジェンタインク PJ−SOINK−MA(武藤工業製)をマイクロシリンジにて滴下し10分後にシートを剥がし、観察したところインクは浸透乾燥しており、シートが侵されて穴が開くことは無かった。
【0074】基材層コンパウンドEの調製
高分子アタクティック体を内包するポリプロピレンからなるインプラント型TPO樹脂、IDEMITSU TPO F−3900H(出光石油化学製)、65重量部、スチレン含量65%のSEPS樹脂、セプトン2104(クラレ製)25重量部、スチレン含量16%のHSBR樹脂、ダイナロン1320P(JSR製)10重量部、ルチル型酸化チタン、タイペークCR−90(石原産業製)12重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を2軸押出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
基材層コンパウンドEを単層で押し出した厚さ50μmのシートの引っ張り弾性率を測定したところ、350MPaであった。
【0075】基材層コンパウンドFの調製
高分子アタクティック体を内包するポリプロピレンからなるインプラント型TPO樹脂、IDEMITSU TPO F−3900H(出光石油化学製)、35重量部、IDEMITSU TPO E−2700(出光石油化学製)、30重量部、スチレン含量65%のSEPS樹脂、セプトン2104(クラレ製)25重量部、スチレン含量16%のHSBR樹脂、ダイナロン1320P(JSR製)10重量部、ルチル型酸化チタン、タイペークCR−90(石原産業製)12重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
基材層コンパウンドEを単層で押し出した厚さ70μmのシートの引っ張り弾性率を測定したところ、310MPaであった。
【0076】基材層コンパウンドGの調製
高分子アタクティック体を内包するポリプロピレンからなるインプラント型TPO樹脂、F3900H(出光化学製)60重量部、スチレン含量65%のSEPS樹脂、セプトン(重量クラレ製)2014 20重量部、スチレン含量16%のHSBRダイナロン2324P(JSR製)20重量部、ルチル型酸化チタンタイペークCR−90(石原産業製)20重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
基材層コンパウンドGを単層で押し出した厚さ50μmのシートの引っ張り弾性率を測定したところ、180MPaであった。
【0077】基材層コンパウンドHの調製
ホモPPとEPMから成るインプラント型TPO樹脂、ゼラスZT701(三菱化学製)、100重量部、ルチル型酸化チタン、タイペークCR−90(石原産業製)20重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混練しペレット化した。
基材層コンパウンドHを単層で押し出したシートの引っ張り弾性率を測定したところ、350MPaであった。
【0078】実施例1
受容層コンパウンドAと基材層コンパウンドEとを2種2層用のフィードブロックを用いて溶融状態で積層して単層Tダイ金型に供給し、共押出し成形して実施例1の油性インク受容性マーキングメディアの原反を得た。走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、受容層は50μm、基材層は50μmの厚みであった。
【0079】接着層Iの形成
シリコーン処理したポリエチレンコート剥離紙、SLK110W(カイト化学製)にアクリル系粘着剤溶液 AROSET S301(Ashland Specialty Chmical Company製)100重量部に希釈剤として酢酸エチル10重量部を混合攪拌したものをダイレクトコンマコーターにて流延塗工し、熱風オーブン乾燥(95℃、3分間)後、先に製膜した原反の基材層側と貼り合わせて実施例1の油性インク受容性マーキングメディアを得た。 なお原反の基材層側には貼り合わせ前に濡れ指数が約54となるようコロナ処理を施した。
【0080】実施例2、比較例1、比較例2
同様の手法でそれぞれの原反に粘着剤を積層して、実施例2、比較例1、比較例2のメディアを得た。
【0081】実施例3
接着層コンパウンドJの調製
シリコーン処理したポリエチレンコート剥離紙、SLK110W(カイト化学製)にアクリル系粘着剤溶液 KP−1004(日本カーバイド工業製)100重量部と架橋剤CK−101(日本カーバイド工業製)1重量部、希釈剤として酢酸エチル30重量部を混合攪拌したものをダイレクトコンマコーターにて流延塗工し、熱風オーブン乾燥(95℃、3分間)後、先に製膜した原反の基材層側と貼り合わせて実施例3の油性インク受容性マーキングメディアを得た。 なお原反の基材層側には貼り合わせ前に濡れ指数が約54となるようコロナ処理を施した。
【0082】比較例3
接着層コンパウンドLの調製
シリコーン処理したポリエチレンコート剥離紙、SLK110W(カイト化学製)にアクリル系粘着剤溶液 PE−121(日本カーバイド工業製)100重量部と架橋剤CK−101(日本カーバイド工業製)2重量部、希釈剤として酢酸エチル30重量部を混合攪拌したものをダイレクトコンマコーターにて流延塗工し、熱風オーブン乾燥(95℃、3分間)後、先に製膜した原反の基材層側と貼り合わせて比較例3の油性インク受容性マーキングメディアを得た。なお原反の基材層側には貼り合わせ前に濡れ指数が約45となるようコロナ処理を施した。
【0083】接着層コンパウンドKの調製
スチレン含量10%のHSBR樹脂、ダイナロン1320P(JSR製)100重量部、粘着付与剤、スーパーエステルE−702(荒川化学工業製)5重量部、ルチル型酸化チタンCR−90(石原産業製)20重量部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、チヌビン329FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、ヒンダードアミン系光安定剤、キマソーブ119FL(チバスペシャリティーケミカル製)1重量部、αトコフェロール系酸化防止剤、ユビナール2000AO(BASF製)0.3重量部を、2軸押し出し機PCM−30(池貝鉄工製)にて混錬しペレット化した。
【0084】実施例4
受容層コンパウンドA、基材層コンパウンドE、接着層コンパウンドKを口径300mmの3層丸ダイ付の押出し機(プラコー製)を用いてブロー比約3にてインフレーション成形した。接着層が外層になるようにし外層が接するロールはすべてテフロン(登録商標)加工したものを使用した。折りたたみ両端をスリット後、それぞれの接着層がシリコーン処理面に接するよう剥離紙とともに巻取り、実施例4の油性インク受容性メディアを得た。
走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、受容層は60μm、基材層は40μm、接着層は30μmの厚みであった。
【0085】比較例4
実施例4と同様に、受容層コンパウンドA、基材層コンパウンドE、接着層コンパウンドKを口径300mmの3層丸ダイ付の押出し機(プラコー製)を用いてブロー比約 3.5にてインフレーション成形した。接着層が外層になるようにし外層が接するロールはすべてテフロン(登録商標)加工したものを使用した。折りたたみ両端をスリット後、それぞれの接着層がシリコーン処理面に接するよう剥離紙とともに巻取り比較例4の油性インク受容性メディアを得た。走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察の結果、受容層は25μm、基材層は50μm、接着層は30μmの厚みであった。
【0086】比較例5
市販の油性インク受容性メディア 東洋インキ製塩化ビニル系単層白色マーキングメディア商品名PJ−501を使用した。
【0087】比較例6
市販の油性インク受容性メディアリンテック社製ラミレス用単層白色マーキングメディアを使用した。
上記実施例、比較例をまとめると以下表1、表2のとおりである。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】得られた各シートの特性を表3及び表4に示す。
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】なお物性評価は以下に述べる方法で行った。
試験片の調整
印刷品は、油性インクジェットプリンター、ラミレスPJ−1304NX(武藤工業製)を用いて出力濃度100%設定にて5cm角のマジェンタ単色ベタ印刷を行い30分所定温度(常温:23℃、低温:5℃)にて放置後以下の試験をした。
なお密着性、耐温水性、耐候性の試験の際には、あらかじめ7cm×15cmのアルミ板に貼り、室温にて一日放置したものを使用した.
【0093】(1)物理特性
* 伸び、降伏力、破断力
印刷、未印刷の各シートを一号ダンベル(10mm巾)でカットし、引張試験機を用いつかみ間隔 50mm、引張測度 200mm/minで引張試験を行い、伸び、降伏力、破断力を各温度(23℃、5℃)で測定した。
尚、降伏力と破断力の測定単位はin巾に換算値です。
* 接着力
未印刷の各シートを25.4mm巾x200mm長にカットし、各温度下(23℃、5℃)でIPA清浄、乾燥されたアルキッドメラミン焼付塗装板(日本テストパネル社製)に貼付、2Kgロールで5往復圧着されたシートを72時間後に引張試験機を用い、引張測度 300mm/min、180°ピールで剥離した時の接着力を測定した。
【0094】(2)曲面貼り適性
12cm角のインクジェットメディアが直径約30cmの半球状をした料理用ステンレスボウルの凸面にシワ、浮きなくきれいに貼れるかどうか試験した.
○:シワ、浮きなく容易にきれいに貼れるもの
△:注意深く行えばシワ、浮きなくきれいに貼ることができるもの
×:シワ、浮きなくきれいに貼ることが困難であるもの。
【0095】(3)インク受容性
インクのハジキ、濃度むらの有無を目視にて判定した.
○:ハジキ、濃度むらが認められないもの
△:ハジキ、濃度むらがわずかに認められるもの
×:ハジキ、濃度むらの著しいもの
【0096】(4)浸透乾燥性
インク層に濾紙を押し当て色の移行の有無を判定した.
○:色の移行が認められないもの
△:色の移行が認められるもの
×:一見して浸透乾燥していないことが明らかであるもの
【0097】(5)インク密着性
インク層にセロハンテープ(ニチバン製)を押し当て急激に剥離してインク層のセロハンテープへの転着の有無を判定した.
○:まったくセロハンテープへの転着が認められないもの
△:一部のみセロハンテープへの転着が認められるもの
×:セロハンテープへの転着が著しいもの
【0098】(6)層間密着性
各シートをIPA清浄、乾燥されたアルキッドメラミン焼付塗装板(日本テストパネル社製)に貼付、固定し 表面の受容層にセロハンテープ(ニチバン製)を押し当て急激に剥離して受容層のセロハンテープへの転着の有無を評価した。
○:まったくセロハンテープへの転着が認められないもの
△:一部のみセロハンテープへの転着が認められるもの
×:セロハンテープへの転着が著しいもの
【0099】(7)耐温水性
40℃の温水に72時間浸漬後、引き上げて表面状態の異状の有無を観察した。
○:原片と比較して明らかな変化の認められないもの。
×:インク層、受容層、基材層のクラック、剥がれ、変色等の異状が認められるもの。
【0100】(8)耐候性
サンシャインウェザオメーター(ブラックパネル温度63℃、降雨18分/180分)に入れ、500時間暴露した後のインク層、受容層、基材層のクラック、剥がれ、変色等の異状の発生を目視にて評価した。
○:原片と比較して明らかな変化の認められないもの。
×:インク層、受容層、基材層のクラック、剥がれ、変色の異状が認められるもの。
Claims (6)
- スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)とエチレンと極性モノマーとの共重合体との配合樹脂からなる樹脂層(I)と、
該樹脂層(I)によって被覆され、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリプロピレン(PP)系樹脂及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)の配合樹脂からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)樹脂層(II)とから構成される溶剤型マ−キングメディア。 - スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS) 40〜60重量部とアクリル系樹脂 2〜60重量部との配合樹脂からなる厚さ30〜100μmの樹脂層(I)と、
該樹脂層(I)によって被覆され、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)15〜30重量部とポリプロピレン(PP)系樹脂50〜70重量部、及び水添スチレンブタジエンゴム(HSBR)5〜15重量部の配合樹脂からなる厚さ20〜200μmの樹脂層(II)とから構成される溶剤型マ−キングメディア。 - 2層同時成形法によって成形された請求項1〜請求項2いずれかに記載の溶剤型マ−キングメディア。
- 該樹脂層(I)のエチレンと極性モノマーとの共重合体が、架橋型アクリル系樹脂である請求項1〜請求項3いずれかに記載の溶剤型マ−キングメディア。
- 5℃におけるのびが100%以上である請求項1〜請求項4いずれかに記載の溶剤型マ−キングメディア。
- 樹脂層(I)と樹脂層(II)がTダイ押出し法、によって2層同時成形された請求項1〜請求項5いずれかに記載の溶剤型マ−キングメディア。
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