JP2004195689A - インクジェットヘッドユニットおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】インクジェットヘッドユニットは、インクを吐出する機能を有するインクジェットヘッド1とインクジェットヘッド1を固定するベース基板4とを備えるインクジェットヘッドユニット5であって、インクジェットヘッド1とベース基板4とが接するBで示す当接部と、当接部Bとは異なる位置において、インクジェットヘッド1とベース基板4とが接着剤を介して結合されるAで示す接着部とを備える。当接部Bにおいては接着剤を介さずに直接的に接する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタ装置などに用いられるインクジェットヘッドユニットに関するものである。特にインクジェットヘッドをベース基板上の所定の位置に接着固定する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットヘッドは、インクの流路に圧力を加えてノズル孔からインクを吐出させ、紙などの対象物にインクを吹きつけて印刷を行なうプリンタ装置などの主要部品の一つである。インクを吐出する機能を有するインクジェットヘッドは、プリンタ装置などの定められた位置に厳密に配置されることが好ましく、位置のずれは直接印刷物の品質に影響を及ぼす。
【0003】
インクジェットヘッドは、プリンタなどに組み込まれる際にインクジェットヘッドの台座となるベース基板に、1つもしくは複数のインクジェットヘッドを結合してインクジェットヘッドユニットを形成し、このインクジェットヘッドユニットをさらにプリンタ装置などの本体に取り付けるという方法で組み立てられている。以下、インクジェットヘッドユニットを略して「ヘッドユニット」という。
【0004】
従来のインクジェットヘッドをベース基板上に配置する方法を説明する図を図21に示す。図21はヘッドユニット5の斜視図である。インクジェットヘッド1の正面にはノズルプレートが備えられており、ノズルプレートにノズル孔3が穿設されている。インクはインクジェットヘッド1の内部で加圧されて、ノズル孔3から吐出される。ベース基板4の主表面にインクジェットヘッド1が固定されたものがヘッドユニットである。ベース基板4の主表面には突当て基準板40が形成されており、複数の突当て基準板40に挟まれる領域にインクジェットヘッド1が配置される。矢印50に示すように、インクジェットヘッド1をベース基板4の上方から移動して、突当て基準板40の側面にインクジェットヘッド1が当接するように固定される。突当て基準板40やインクジェットヘッド1の固定には、図示しないねじ止めや接着剤によって固定される。この方法は、インクジェットヘッド1の外形を基準として複数個のインクジェットヘッド1をベース基板4の表面に配置する方法である。
【0005】
インクジェットヘッドをベース基板上に厳密に配置する目的は、インクを吐出するノズル孔3を精度よく配置することにある。図21に示す方法においては、インクジェットヘッド1の外形を基準として複数個のインクジェットヘッド1を配置するため、インクジェットヘッド1に備えられたノズルプレートの取付け誤差やインクジェットヘッド1の外形寸法の誤差が累積して、インクジェットヘッド1に形成されたそれぞれのノズル孔3を精度よく所定の位置に配置することは困難であった。
【0006】
さらに、ネジ止めによる固定の場合は、ネジの締め込みによるインクジェットヘッド1の歪みのためにノズル孔3の位置にずれが生じる場合があった。接着剤によって固定する場合にも、突当て基準板40とベース基板4とを接着固定した状態で、インクジェットヘッド1とベース基板4とを接着する必要があり、接着剤を押し広げながら突当て基準板40への突当てを行なうため、接着剤の流動抵抗によって、インクジェットヘッド1が突当て基準板40に対して完全に当接できない場合があった。このため、インクジェットヘッド1の配置精度を低下させることがあった。その結果、ノズル孔3の設計位置に対する十分な精度が確保できず、生産歩留まりが低下するという問題や高品位印刷ができないという問題が生じていた。
【0007】
このような問題を解決するために、特開平7−89185号公報(特許文献1)や特開平10−309801号公報(特許文献2)に、インクジェットヘッドの外形のみによってノズル孔の配置を定めるのではなく、直接的にノズル孔を認識する方法が提案されている。ノズル孔を基準としてインクジェットヘッドの位置を調整したり、個々にインクジェットヘッドの印字データを採取してその結果からインクジェットヘッドを所定の位置に配置する方法が提案されている。
【0008】
特開平7−89185号公報に開示されているヘッドユニットを図22に示す。図22はヘッドユニット5をインクジェットヘッド1が接着固定されている面の側から見た上面図である。インクジェットヘッド1がベース基板に対応する枠体42に固定されていることや、接着剤を用いてインクジェットヘッド1が枠体に固定されていることは上記のヘッドユニットと同様である。このヘッドユニットには、突当て基準板40が備えられておらず、接着剤のみでインクジェットヘッド1の位置が固定されている。
【0009】
インクジェットヘッド1の配置方法について説明すると、枠体42を図示しないX軸可動ステージに保持しておく。それぞれのインクジェットヘッド1は個別にテストパターン印字によって、それぞれのインクジェットの印刷ずれなどの印字データを得る。この印字データを基にXY平面でのインクジェットヘッドの位置調整を行なう。つまり枠体42の主表面に平行な方向に関して位置調整を行なう。この位置調整はヘッド把持治具でインクジェットヘッド1を保持して行ない、印字データを基に補正をかけて接着固定する位置を決定する。ヘッド枠体42の主表面に垂直なZ軸の方向の位置調整に関しては、図示しないヘッド把持治具の送り量を調整することによって、位置決めを行なう。接着固定は、枠体42においてインクジェットヘッド1が接着される場所に予め紫外線硬化型接着剤43を塗布しておき、ヘッド把持治具に保持されたインクジェットヘッド1を紫外線硬化型接着剤43と接触させた状態で、接着固定する位置を定める。この状態で紫外線を照射することによって紫外線硬化型接着剤43を硬化させて固定する。1個のインクジェットヘッドの固定が完了したら、X軸可動ステージをX軸方向に一定量送り、上記のインクジェットヘッドを結合する工程を複数回繰り返し、ヘッドユニットを製造する。
【0010】
特開平10−309801号公報に開示されているヘッドユニットを図23に示す。インクジェットヘッド1が接着剤を用いて枠体42に取り付けられていることは、図22に示されているヘッドユニットと同様である。このヘッドユニットには、突当て基準板が備えられておらず、断面がL字型の中間保持部材41によってインクジェットヘッド1と枠体42とが結合されている。換言すると、インクジェットヘッド1は枠体42に直接固定されずに、中間保持部材41を介して枠体42に接着固定されている。
【0011】
インクジェットヘッド1の配置方法について説明すると、枠体42を図示しないX軸可動ステージに配置して、インクジェットヘッド1のノズル孔3の位置について画像認識と演算処理とを行う。得られた計算値を基にヘッド把持治具でインクジェットヘッド1を保持して微調整を行ないながら所定の位置に配置する。ヘッド把持治具は、X軸方向のほかに、互いに直交するY軸方向およびZ軸方向に移動する。さらに、これら3軸の回転方向にも移動する。接着剤として、枠体42およびインクジェットヘッド1に予め紫外線硬化型接着剤43を塗布しておく。ヘッド把持治具に保持されたインクジェットヘッド1を枠体42内に搬入した後に、中間部材41を挿入する。次いで、中間保持部材41を枠体42とインクジェットヘッド1とに塗布した紫外線硬化型接着剤43に接触させ、紫外線硬化型接着剤43の膜厚をCCDカメラでモニターしながらそれぞれの膜厚が均等になるように位置の微調整を行なう。その後に紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤43を硬化させて固定し、1個のインクジェットヘッド1の接着固定が完了する。他のインクジェットヘッドは、X軸可動ステージをX軸方向に一定量送って同様の工程を必要なインクジェットヘッド数繰り返して、ヘッドユニットを製造する。
【0012】
【特許文献1】
特開平7−89185号公報(0019−0068段落、第1−11図)
【0013】
【特許文献2】
特開平10−309801号公報(0034−0052段落、第1−8図)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のインクジェットヘッドの配置方法では、以下のような問題点があった。
【0015】
特開平7−89185号公報に記載の方法においては、インクジェットヘッドと枠体とが接することがないため、ベースとなる枠体の加工精度によらず、インクジェットヘッドを所望の位置に配置することができる。しかし、インクジェットヘッドの側面および底面に塗布された接着剤(紫外線硬化型接着剤)の厚さが不均等な場合は、接着剤の硬化収縮による応力が不均等に発生して、接着剤が硬化する時にインクジェットヘッドが所定の位置から動いてしまう可能性がある。また、一のインクジェットヘッドについて硬化した接着剤の厚さが不均等である場合やそれぞれのインクジェットヘッドについて硬化した接着剤の厚さが異なる場合には、使用する環境の温度変化およびインクジェットヘッド駆動時におけるインクジェットヘッド自体の発熱による温度変化によって、それぞれのインクジェットヘッドについて硬化した接着剤の熱膨張量や熱収縮量に差異が発生して、ノズル孔の相対的な位置精度が悪化することがあった。よって、高品位印字が行なえないという問題があった。
【0016】
また、インクジェットヘッドは熱抵抗が比較的大きな接着剤のみで結合されているので、インクジェットヘッド駆動による発熱に対しての放熱性能が劣り、安定して印刷が行なえる保証環境温度域を狭めてしまったり、比較的大きな発熱を伴う駆動周波数を上げての高速印字が困難という問題があった。さらに、複数個のインクジェットヘッドを並列配置する場合、X軸可動ステージに固定された枠体を、X軸方向に一定量ずつ送る必要がある。よって、X軸可動ステージの移動軸と可動ステージに配置する枠体の長手方向とを精度よく平行に保つ必要があり、装置が高価なものとなる問題があった。
【0017】
特開平10−309801号公報に記載の方法のように、中間保持部材を介在させて接着剤層の厚さを均一に調整する方法は、接着剤の硬化収縮によってもノズル孔の位置は精度よく配置できる。しかし、この構成は接着剤の膜厚を薄くする必要がある。予めディスペンサーなどにより厚く塗布された接着剤を中間保持部剤で薄く押し広げながら配置する必要があり、接着剤には大きな流動抵抗が発生する。この結果、インクジェットヘッド、中間保持部材および枠体の各部材に大きな力が働いて各部材が動いてしまい、ノズル孔の相対的な位置の精度が悪化して高品位印字が行なえないという問題があった。また、複数個のインクジェットヘッドを並列に配置する場合、X軸可動ステージに枠体を保持してX軸方向に一定量送りながらインクジェットヘッドを配置する必要があるために、X軸可動ステージの移動軸と枠体の長手方向の平行度が精度よく一致するように装置を製造する必要があり、装置が高価になってしまう問題があった。また、ヘッド把持治具は、インクジェットヘッドを枠体に接触させることなく、XYZ軸方向と3軸を回転軸とする回転方向に移動する機構を有する必要性があるために、構造が複雑になって装置がさらに高価なものになってしまう問題があった。
【0018】
本発明の目的は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、容易な方法で精度よく所定の位置にインクジェットヘッドを配置することができ、高品位印字や高速印字が可能なヘッドユニットとその製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の基づくインクジェットヘッドユニットは、インクを吐出する機能を有するインクジェットヘッドと、上記インクジェットヘッドを固定するベース基板とを備えるインクジェットヘッドユニットであって、
上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とが接する当接部と、上記当接部とは異なる位置において、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とが接着剤を介して結合される接着部とを備える。上記当接部を設けて、上記接着部を上記当接部と異なる位置に配置する構成を採用することにより、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に配置する際の接着剤の流動抵抗を低減できる。また、上記当接部において、上記インクジェットヘッドから上記ベース基板への熱伝達が向上して、高速印字や高品位印刷が可能になる。
【0020】
上記発明において好ましくは、上記接着部は、上記ベース基板において、上記インクジェットヘッドと接合する面に形成された凹部を含む。上記接着部を上記ベース基板の主表面に形成するこの構成を採用することにより、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に配置する際の上記接着剤の流動抵抗を低減できるとともに、上記接着剤の膜厚の管理が容易になる。
【0021】
上記発明において好ましくは、上記凹部は、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に対して垂直に投影した領域の一部を含む。この構成を採用することにより、上記凹部が覆われる領域に上記接着剤を配置することで上記インクジェットヘッドは上記接着剤と必ず接触する。よって、上記凹部の位置を考慮して上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に配置することが不要になる。
【0022】
上記発明において好ましくは、2以上の上記凹部が形成される。この構成を採用することにより、複数箇所で上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とを結合することになり、結合力を大きくすることができる。また、2以上の上記凹部を対称に配置することによって、配置された上記接着剤の熱硬化収縮や熱膨張による上記インクジェットヘッドにかかる力を対称にすることができ、上記インクジェットヘッドが上記ベース基板に対して傾くことが防止できる。
【0023】
上記発明において好ましくは、上記接着部は、上記インクジェットヘッドにおいて、上記当接部に隣接して形成された切欠き部を含む。上記接着部に上記切欠き部を含むこの構成を採用することにより、上記接着剤の流動抵抗を抑制できる。また、上記切欠き部に上記接着剤を配置することによって、上記ベース基板に上記凹部を形成して上記接着部を形成する上記ヘッドユニットと同様に、上記接着部の配置位置を調整することが不要になる。
【0024】
上記発明において好ましくは、上記インクジェットヘッドは、上記ベース基板と結合するための側方に突出した張出し部を含み、上記接着部は上記張出し部を含む。上記インクジェットヘッドに上記張出し部を形成するこの構成を採用することにより、上記接着部は上記張出し部で形成するために、上記インクジェットヘッドの大きさには無関係に上記接着部の大きさを調整することができる。また、上記張出し部に熱伝導の良い材料を用いると上記インクジェットヘッドの放熱板としての役割も果たし、放熱性能がさらに向上する。
【0025】
上記発明において好ましくは、上記ベース基板は、上記インクジェットヘッドを保持する保持具を貫通させる保持具貫通穴を含む。上記ベース基板に上記保持具貫通穴を形成するこの構成を採用することにより、上記インクジェットヘッドのノズル孔を有する面の側に配置していた上記インクジェットヘッドの保持具を、上記ノズル孔を有する面とは反対側に配置することができ、上記ノズル孔を撮像する装置の構成を簡略化することができる。
【0026】
上記発明において好ましくは、上記接着部は、上記ベース基板の表面と略平行な上記インクジェットヘッドの表面を含み、上記ベース基板の表面と対向する上記インクジェットヘッドの表面との間の距離が10μm以上である。この構成を採用することにより、上記接着剤の膜厚を10μm以上とすることができて、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板の上に配置する際の上記接着剤の流動抵抗を十分に低減することができる。
【0027】
上記目的を達成するため、本発明に基づくインクジェットヘッドユニットは、インクを吐出する機能を含むインクジェットヘッドと、上記インクジェットヘッドを固定するベース基板とを備えるインクジェットヘッドユニットであって、 上記インクジェットヘッドは、上記ベース基板と結合するための側方に突出した張出し部を含み、上記張出し部は上記ベース基板と接する当接部と接着剤を配置するための窪み部とを有し、上記窪み部と上記ベース基板とが接着剤を介して互いに結合される接着部を備える。上記張出し部に上記窪み部を配置して接着部を形成するこの構成を採用することにより、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に配置する際の接着剤の流動抵抗を低減できる。また、上記当接部において、上記インクジェットヘッドから上記ベース基板への熱伝達が容易になるため放熱性能が向上して、高速印字や高品位印刷が可能になる。
【0028】
上記発明において好ましくは、上記ベース基板は、上記インクジェットヘッドを挿入するためのヘッド挿入穴を含む。この構成を採用することにより、上記インクジェットヘッドのノズル孔を有する面の側に配置していた上記インクジェットヘッドの保持具を、上記ノズル孔を有する面の側と反対側に配置することができ、上記ノズル孔を撮像する装置の構成を簡略化することができる。
【0029】
上記発明において好ましくは、上記接着部は、上記ベース基板の表面と略平行な上記窪み部の表面を含み、上記ベース基板の表面と対向する上記窪み部の表面との間の距離が10μm以上である。この構成を採用することにより、上記接着剤の膜厚を10μm以上とすることができて、上記接着剤の流動抵抗を十分に低減することができる。
【0030】
上記発明において好ましくは、上記接着剤は、嫌気性が付与された紫外線硬化型接着剤を含む。この構成を採用することにより、紫外線が照射されるまでは硬化せずに粘度が低いために、流動抵抗が比較的小さい状態で上記インクジェットの位置を調整することができる。また、上記嫌気性を付与することにより、上記紫外線の照射において上記紫外線が届かない位置に配置された上記紫外線硬化型接着剤も、放置することによって硬化するため接着力が増大する。
【0031】
上記発明において好ましくは、上記接着剤は、粘度が5Pa・s以下である。上記接着剤の粘性が小さいものを選定するこの構成を採用することによって、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に接合する際の流動抵抗を低減することができる。
【0032】
上記発明において好ましくは、上記ベース基板は、位置決めピンに当接させるための位置決め部を含む。この構成を採用することにより、上記インクジェットヘッドのノズル孔と最終製品であるプリンタ装置などとの位置関係を厳密に調整することが可能になり、上記プリンタ装置などにおける上記インクジェットヘッドの配置の精度を向上することができる。
【0033】
上記目的を達成するため、本発明に基づくインクジェットヘッドユニットの製造方法は、インクジェットヘッドと、ベース基板と、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とが接する当接部と、上記当接部とは異なる位置において、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とが接着剤を介して結合される接着部とを備えるインクジェットヘッドユニットの製造方法であって、上記接着部となるべき領域に上記接着剤を配置する接着剤配置工程と、上記インクジェットヘッドの接着位置を調整する位置調整工程と、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とを接着固定する工程とを含む。この方法を採用することにより、上記当接部において、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とが直接接しており、上記接着部において接着固定されているために、上記接着剤の流動抵抗を低減した状態で上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に配置することができ、厳密な位置調整が可能になる。
【0034】
上記発明において好ましくは、上記接着剤配置工程は、上記接着部の一部として上記ベース基板の主表面に形成された凹部に上記接着剤を配置する工程を含む。より好ましくは、上記凹部の深さより厚く上記接着剤を配置する工程を含む。この方法を採用することにより、上記接着剤の流動抵抗を低減した状態で位置調整が可能になる。また、上記凹部に配置された上記接着剤は、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とに確実に接触して、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に確実に接着固定することができる。
【0035】
上記発明において好ましくは、上記接着剤配置工程は、上記接着部の一部として上記インクジェットヘッドに形成された切欠き部に、上記接着剤を配置する工程を含む。より好ましくは、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とが接合される面から突出するように、上記接着剤を配置する工程を含む。この方法を採用することにより、上記接着剤の流動抵抗を低減した状態で位置調整が可能になる。また、上記切欠き部に配置された上記接着剤は、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とに確実に接触して、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に確実に接着固定することができる。
【0036】
上記発明において好ましくは、上記インクジェットヘッドの側方から突出した張出し部となるように張出し部材を上記インクジェットヘッドに取りつける工程を含み、上記接着剤配置工程は、上記張出し部と上記ベース基板とに挟まれるべき空間に接着剤を配置する工程を含む。この方法を採用することにより、上記張出し部を上記インクジェットヘッドに形成して、上記張出し部を用いて上記接着部を形成することができ、上記接着剤の流動抵抗を抑制した状態で、上記インクジェットヘッドの位置調整を行なうことができる。よって、厳密な上記位置調整が可能になる。
【0037】
上記発明において好ましくは、上記ベース基板は保持具貫通穴を含み、上記位置調整工程は、上記保持具貫通穴から保持具を貫通させる保持具貫通工程と、上記保持具を貫通させた状態で、上記インクジェットヘッドを保持して上記接着位置の調整を行なう工程とを含む。この方法を採用することにより、上記インクジェットヘッドのノズル孔が形成されている側には、上記保持具が存在せず、上記ノズル孔などを撮像して画像解析を行なう装置の簡略化を行なうことができる。
【0038】
上記目的を達成するため、本発明に基づくインクジェットヘッドユニットの製造方法は、ベース基板と、接着剤を配置するための窪み部を有する張出し部を含むインクジェットヘッドと、上記ベース基板と上記張出し部とが接する当接部とを備えるインクジェットヘッドユニットの製造方法であって、上記インクジェットヘッドから側方に突出した上記張出し部となるように張出し部材をインクジェットヘッドに取りつける工程と、上記窪み部に接着剤を配置する工程と、上記インクジェットヘッドの接着位置を調整する位置調整工程と、上記インクジェットヘッドと上記ベース基板とを接着固定する工程とを含む。この方法を採用することにより、上記接着剤の流動抵抗を抑制して、上記インクジェットヘッドの接着位置の調整を行なうことができ、厳密な位置調整が可能になる。
【0039】
上記発明において好ましくは、上記ベース基板は、ヘッド挿入穴を含み、上記位置調整工程は、ノズル孔が配置された面と反対側の面から上記インクジェットヘッドを保持して、上記ヘッド挿入穴に上記インクジェットヘッドを挿入するヘッド挿入工程と、上記反対側の面から上記インクジェットヘッドを保持した状態で上記接着位置を調整する工程とを含む。この方法を採用することにより、上記インクジェットヘッドのノズル孔を有する側には、保持具が存在せず、上記ノズル孔などを撮像して画像解析を行なう装置の簡略化を行なうことができる。
【0040】
上記目的を達成するため、本発明に基づくインクジェットヘッドユニットの製造方法は、インクジェットヘッドと、上記インクジェットヘッドを固定するためのベース基板とを備え、プリンタ装置に搭載するためのインクジェットヘッドユニットの製造方法であって、上記ベース基板は、位置決めピンに当接させるための位置決め部を含み、上記プリンタ装置に形成されている位置決めピンと同一の構成の位置決めピンを有するインクジェットヘッド搭載装置を用いて上記ベース基板に対する上記インクジェットヘッドの取付けを行なう。この方法を採用することにより、上記プリンタ装置における上記インクジェットヘッドを容易に正確な位置に配置することができる。
【0041】
上記発明において好ましくは、上記インクジェットヘッドを上記ベース基板に接着する位置を調整する位置調整工程を含み、上記位置調整工程は、上記インクジェットヘッド搭載装置に形成されている位置決めピンと上記インクジェットヘッドに形成されているノズル孔との相対的な位置を合わせる工程を含む。この方法を採用することにより、上記プリンタ装置における上記ノズル孔の位置を容易に正確な位置に配置することができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1および図2を参照して、本発明に基づく実施の形態1に係るヘッドユニットについて説明する。
【0043】
図1(a)は本発明に基づく実施の形態1に係るヘッドユニットの部分断面図である。ヘッドユニット5は、インクを吐出するためのインクジェットヘッド1とベース基板4とを備え、インクジェットヘッド1がベース基板4に結合されている構成を有する。本実施の形態におけるインクジェットヘッド1は圧電材料を利用してインクを加圧する機構を有する型であり、インクジェットヘッド1の一の面にはノズル孔3が穿設されている。インクはインクジェットヘッド1の内部で加圧されてノズル孔3から吐出される。ベース基板4は板状の形状を有しており、主表面に複数のインクジェットヘッド1が結合されている。本実施の形態においては、ベース基板4としてアルミナ基板を使用している。ベース基板4については、金型焼成による方法で製造したSiCを用いた基板としてもよい。SiCの基板は、厚みに対する精度がよくて反りも少ない。また、アルミナで形成されたベース基板よりも熱伝導性がよいために放熱性能がより優れており、印刷を安定して行なえる温度域が拡大して信頼性が向上する。
【0044】
従来技術においては、ベース基板とインクジェットヘッドを結合するには、ベース基板もしくはインクジェットヘッドの表面に接着剤を塗布して、2つの部材を取りつけていた。あるいは、中間保持部材を介して2つの部材を取付けていた。ベース基板とインクジェットヘッドとが直接的に接する部分はなく、接着剤が必ず介在していたために、接着剤の硬化収縮や熱膨張などによってノズル孔の位置ずれが発生していた。中間保持部材を介した場合は、ノズル孔の位置ずれを最小限に抑えるために、接着剤層を薄く形成して、接着剤の膜厚を高精度に管理する必要があった。本実施の形態におけるヘッドユニットでは、図1(a)中のAで示す接着部のほかにBで示す当接部を備えている。ベース基板4とインクジェットヘッド1は接着部Aで接着固定されている。ベース基板4の主表面には、接着剤を配置するための凹部10を有している。当接部Bとは異なる位置に凹部10が配置されている。ベース基板4の表面の一部である凹部10の底面とインクジェットヘッド1の下面を含む面とで挟まれる領域が、接着剤20が充填される空間であり、2つの面の距離は接着剤20の膜厚となる。よって、凹部10の深さを管理することのみで接着剤20の膜厚の管理が行なえ、接着剤20の膜厚のムラを容易に低減することができる。
【0045】
また、環境温度の上昇やインクジェットヘッド1の駆動による発熱に伴って接着剤20の温度も上昇するが、接着剤20の硬化時の硬化収縮による残留内部応力が残っており、弾性域内で接着剤20の温度上昇による膨張しようとする力と残留内部応力とは打ち消し合う。したがって、接着剤20の温度が上昇しても、当接部Bにおいて、インクジェットヘッド1とベース基板4との間に隙間が形成されることはなく、熱伝達特性を維持することができる。環境温度の低下によって熱収縮する場合においては、接着剤20の膜厚がそれぞれの凹部10で均等であるため、接着剤20の収縮によるインクジェットヘッド1とベース基板4との当接力が増すのみであって、インクジェットヘッド1がベース基板4の主表面に対して傾いたり、位置ずれを起こしたりすることはない。
【0046】
従来技術によるヘッドユニットでは、インクジェットヘッド1をベース基板4の主表面に配置する際に、接着剤20の流動抵抗のためにインクジェットヘッド1がヘッド保持具からずれてしまい、所望の位置からずれて接着固定されることがあった。本実施の形態に係るヘッドユニットにおいては、凹部10の内部に接着剤が配置され、接着剤の膜厚を比較的厚くすることができるために流動抵抗を小さくすることができる。接着剤の流動抵抗は小さい方が好ましく、凹部10の深さを10μm以上とすることが好ましい。同様の理由から使用する接着剤は5Pa・s以下の接着剤を選定することが好ましい。流動抵抗を小さくすることができれば、インクジェットヘッドの位置調整の精度が向上して、高品位印刷が行なえるプリンタを提供することができる。接着剤の種類については、嫌気性が付与された紫外線硬化型接着剤を選定することが好ましく、詳細は実施の形態6において説明する。
【0047】
インクジェットヘッド1とベース基板4とは当接部Bで接している。インクジェットヘッド1とベース基板4との間に接着剤が介する従来のヘッドユニットと比較して、インクジェットヘッド1からベース基板4への熱伝達が優れ、インクジェットヘッドの放熱性能が向上する。よって、外気温度の上昇に対する信頼性が向上して保証環境温度域を拡大することができる。また、駆動周波数を上げてインク吐出の時間間隔を短くした高速印字が可能となる。さらに、接着剤20が硬化収縮しても当接部Bが存在するために、インクジェットへッドがベース基板に対して傾くことを防止することができ、高品位印刷を行なうことができる。
【0048】
このとき、インクジェットヘッド1とベース基板4との表面粗さに起因して、点在する図示しない僅かな空隙に接着剤20が入り込んだ構成を有していてもよい。もしくは別の接着剤が新たに注入された構成を有していてもよく、これらの場合には、接着剤の熱伝導率が空気よりも高いため、さらにインクジェットヘッド1の放熱特性を向上させることができる。また、インクジェットヘッド1とベース基板4との接着力も向上させることができる。
【0049】
図1(a)のヘッドユニット5をノズル孔3が形成されている側から見た平面図を図1(b)に示す。インクジェットヘッド1は、ノズル孔3側から見ても長方形に形成されており、4個の頂点が凹部10の領域に含まれるように4個の凹部10が形成されている。インクジェットヘッド1は4点でベース基板4と結合されている。接着剤20は凹部10の内部全体に充満されず、接着剤20の回りに空間が形成される量に調整されている。このように接着剤20の周りに空間を配置する量とすることによって、インクジェットヘッド1をベース基板4に接着固定する際に接着剤20の流動抵抗を低減することができて、厳密な位置調整が容易となる。また、無用な接着剤20の使用量を低減することができる。本実施の形態のベース基板4は図1(b)に示すように、上面から見たときに長方形の形状をしている。ベース基板4については、製造工程において位置決めピンに当接させるための位置決め部を含むことが好ましく、詳細は実施の形態6で説明する。
【0050】
凹部10は、インクジェットヘッド1をベース基板4に対して略垂直な方向から投影した領域の一部を含むように形成されている。図1(a)で説明すると、ノズル孔3が配置されている上側から、ベース基板4に向かってインクジェットヘッド1を投影した場合、影となる領域の一部に凹部の一部が形成されている。この構成を採用することにより、凹部10の加工精度によらず、ノズル孔3が形成されている面と反対側の面の一部が接着剤20と必ず接着される。よって、インクジェットヘッド1をベース基板4に接着する際にも、凹部10の位置を厳密に考慮してインクジェットヘッド1の位置調整を行なう必要性は無く、インクジェット1を移動させる移動手段の移動誤差のみの範囲内で、インクジェットヘッド1を所定の位置に配置することができる。図1における凹部10は、ノズル孔3が形成されている面と反対側の面の4つの頂点を含むように形成されているが、いずれの頂点も含まずに、ノズル孔が形成されている面の側からインクジェットヘッドをベース基板に投影したとき、投影された領域に凹部10が完全に含まれるように形成されてもよい。換言すると、インクジェットヘッドによって完全に凹部10が覆われていてもよい。
【0051】
図2は本実施の形態に係る他のベース基板を例示したものである。凹部10はベース基板の側面を含むように、対向する2つの凹部10が形成されている。図2に示すベース基板4には図1に示すベース基板4と同様に3個のインクジェットヘッドが取付けられる。インクジェットヘッドをノズル孔が形成されている側から見た時のインクジェットヘッドの短い2辺を凹部10が含むように、インクジェットヘッドが取り付けられる。このときの作用や効果については、図1で示したベース基板1と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0052】
図1(a)に例示した凹部の断面は長方形の箱型であるが、特にこの形状に限られず、たとえば台形状であってもよいし、円弧形状であってもよい。凹部はベース基板の主表面に形成され、接着剤を充填できる凹んだ部分であればよい。但し、接着剤の膜厚を管理する観点から、凹部の底面は平面であることが好ましい。本実施の形態において、凹部10は一のインクジェットヘッド1に対して4箇所形成されている。このように、接着強度の向上のために凹部10は2箇所以上形成されることが好ましい。さらに、この場合、対称に形成される凹部10を含むことが好ましい。この構成を採用することにより、接着剤が熱膨張や熱収縮した場合にも、熱膨張や熱収縮によるインクジェットヘッド1を傾けようとする作用を打ち消しあうことができる。この場合、接着剤のそれぞれの凹部10の接着剤の膜厚を均等にする観点からそれぞれの凹部10の深さは全て同一に管理することが好ましい。
【0053】
(実施の形態2)
図3〜図7を参照して、本発明に基づく実施の形態2に係るヘッドユニットについて説明する。実施の形態1においては、ベース基板に凹部を形成して接着剤を充填し、接着部を形成した。本実施の形態においては、インクジェットヘッドに切欠き部を設けて接着部を形成する。
【0054】
図3は本実施の形態にかかる一のインクジェットヘッドの部分断面図である。インクジェットヘッド1は略長方形の形状を有して、一の端面にノズル孔3が形成されていることは、従来技術によるインクジェットヘッドと同様である。従来技術による構成に加えて、本実施の形態のインクジェットヘッドは、ベース基板と接する当接部を有し、当接部を含む平面と垂直なインクジェットヘッドの外周面の一部分を切り欠いた切欠き部を有する。切欠き部は、ノズル孔3が形成されている面とは反対側に2箇所形成されている。図3のインクジェットヘッドにおいては、断面が2つの直線からなるように形成された段付き形状部11が切欠き部に該当する。図3に示すインクジェットヘッドをベース基板4に結合した部分断面図を図4に示す。Aに示す部分が接着部であり、Bに示す部分が当接部である。当接部Bはノズル孔3が形成されている面とは反対側でベース基板4と当接する。段付き形状部11はこの当接部に隣接している。インクジェットヘッド1とベース基板4との固定は段付き形状部11に充填された接着剤20を介して行なわれる。段付き形状部11のうちベース基板に平行な面とベース基板の主表面とが接着剤20によって固定される。段付き形状部11のうちベース基板4の表面に平行な面とベース基板4との距離が接着剤20の膜厚となる。実施の形態1と同様にインクジェットヘッドを接着固定する位置を調整する際に接着剤20の流動抵抗が小さくなるような構成が望ましい。すなわち、ベース基板4の表面に平行な段付き形状部11の一の面とベース基板4の表面との距離は10μm以上であって、接着剤20の粘度は5Pa・s以下であることが好ましい。
【0055】
当接部Bを有する効果については、実施の形態1と同様に、インクジェットヘッド1からベース基板4への熱伝達が向上して、高速印字が可能になる。また、接着部Aをインクジェットヘッド1の外周面に形成することによって、ベース基板4にインクジェットヘッド1を接着固定する際も、当接部Bには接着剤20は介在しないために、接着剤20の流動抵抗を低減することができて、厳密なインクジェットヘッド1の位置調整を行なうことができる。よって、実施の形態1と同様に、高品位印刷の行なえるプリンタを提供することができる。特に、切欠き部とベース基板4とで挟まれる空間は、片側が開口しているために、余分な接着剤は段付き形状部11の外側の方向にはみ出して、接着剤20の大きな流動抵抗の発生を防止することができる。
【0056】
図5および図6に、本実施の形態に係る他のインクジェットヘッドを例示する。図3における切欠き部はインクジェットヘッドの一部を2つの平面で切り取った形状である。このほかにも切欠き部として、図5に示すように断面が円弧である円弧形状部12を有するインクジェットヘッド1や、図6に示すように断面が一の直線である面取り形状部13を有していてもよい。それぞれベース基板に接合される際には切欠き部とベース基板とが接着剤によって接着されて2つの部材が結合される。
【0057】
本実施の形態に係るインクジェットヘッドは箱型であり、ベース基板と垂直な外周面のうち、対向する平行な2面に切欠き部が形成されている。つまり、一のインクジェットヘッドに対して2個の切欠き部を有しているが、ベース基板と接合する面においての4つの角に4つの切欠き部をそれぞれ形成してもよい。また、図7に示すように実施の形態1におけるベース基板4の凹部10とインクジェットヘッド1の段付形状部11(切欠き部)を併用してもよい。
【0058】
上述以外の他の構成や効果については、実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0059】
(実施の形態3)
図8を参照して、本発明に基づく実施の形態3に係るヘッドユニットについて説明する。実施の形態1および2においては、ベース基板もしくはインクジェットヘッドの一部を凹ませる形状を形成することによって接着部を形成した。本実施の形態においては従来のインクジェットヘッドの構成に接着部となるべき部分を付加してヘッドユニットの接着部を形成する。
【0060】
図8は本実施の形態に係るヘッドユニットの部分断面図である。インクジェットヘッド1には、ベース基板と垂直なインクジェットヘッド1の外周面であって、互いに対向する平行な二の面に、突出した張出し部が形成されている。換言すると、従来技術に基づくインクジェットヘッドの側方に張出し部材9が取付けられたインクジェットヘッド1を採用している。張出し部材9が張出し部に該当する。本実施の形態においては、張出し部材9は平板状であり、張出し部材9の主表面がベース基板4の主表面と平行になるように張出し部材9が取りつけられている。インクジェットヘッド1とベース基板4とを結合する接着部Aは、ベース基板4の主表面と張出し部材9の主表面に接着剤20を介在させることにより形成される。この構成を採用することによって、インクジェットヘッド1とベース基板4とが直接接触する当接部Bの面積を大きくすることができる。よって、インクジェットヘッドの放熱性能が向上して、高品位印刷が行なえる保証環境温度域をさらに拡大することができる。同様の理由で、温度が上昇する条件下においての動作の信頼性も向上して、駆動周波数をさらに上げた高速印字が可能になる。張出し部材9に熱伝導の優れた材料を選定すると、張出し部材9はインクジェットヘッドの熱を空気中に効率よく放熱して放熱板としての役割も果たす。さらに好ましくは、接着剤20についても、熱伝導の優れたものを選定すれば、放熱効果をさらに向上させることができる。
【0061】
張出し部材9の主表面とベース基板4の主表面との距離は、インクジェットヘッドが接着固定された際の接着剤20の膜厚となる。よって、実施の形態1および2と同様に、接着剤20の膜厚は10μm以上が好ましく、張出し部材9の主表面とベース基板4の主表面との距離は10μm以上が好ましい。その他の構成や効果については、実施の形態1および2と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0062】
(実施の形態4)
実施の形態4においては、従来のインクジェットヘッドとベース基板との形状を変更せずに接着部を形成したヘッドユニットを例示する。図9に本実施の形態に係るヘッドユニットの部分断面図を示す。インクジェットヘッド1において、ノズル孔3が穿設されている面と反対側の面全体が、ベース基板4と接触して当接部Bとなる。接着剤20は、インクジェットヘッド1において、ベース基板4の主表面と垂直な外周面のうち、互いに対向する2つの面に配置されている。この外周面とベース基板4の主表面とを接着剤20で接着することによりインクジェットヘッド1の固定が行なわれており、接着部Aが形成されている。この構成を採用することにより、インクジェットヘッド1とベース基板4との接触面積を大きくすることができてインクジェットヘッド1の放熱性能が向上する。また、前述の実施の形態1〜3と比較して凹部や切欠き部、張出し部が不要で構成が簡単である。さらに、実施の形態1〜3と同様に、インクジェットヘッド1とベース基板4とを接着固定する際にも、当接部Bには接着剤20が介在しないために、接着剤20を押し広げながらベース基板4上で位置調整を行なう必要はない。接着剤の流動抵抗を抑制した状態でインクジェットヘッドの位置調整を行なうことができる。よって、インクジェットヘッドの位置調整を高精度で行なうことができ、高品位印刷が行なえるプリンタを提供することができる。本実施の形態においては、接着剤20はベース基板4と略垂直になる2つの平行な面に塗布したが、外周全体である4つの面全てに接着剤20が塗布されて結合されていてもよい。その他の構成や効果については実施の形態1〜3と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0063】
上述した実施の形態1から4においては、インクジェットヘッドがベース基板に接合される面は全てノズル孔が穿設されている面と反対側の面であったが、ノズル孔が形成されている面と垂直な外周面がベース基板と接合されていてもよい。
【0064】
(実施の形態5)
実施の形態1〜4については、ノズル孔3が形成される面と反対側の面に当接部を備えていた。本実施の形態に係るインクジェットヘッドは、張出し部によって当接部が形成される構成を有している。本発明に基づく実施の形態5に係るヘッドユニットの部分断面図を図10に示す。インクジェットヘッド1は実施の形態3と同様に張出し部を含む。本実施の形態においては、張出し部材9がインクジェットヘッドに取付けられ張出し部を形成している。すなわち張出し部材9が張出し部に該当する。張出し部材9は板状であるが、主表面に接着剤を配置するための窪み部26を有している。張出し部材9は、箱型のインクジェットヘッドの側面に取付けられ、側方に突出するように形成されている。窪み部26とノズル孔3を有する面とは、同じ向きになるように張出し部が形成されている。ベース基板4は、従来技術による箱型のインクジェットヘッドが貫通でき、さらにインクジェットヘッドの位置調整が行なえる大きさを有するヘッド貫通穴8を含んでいる。インクジェット1とベース基板4との接着固定は、図10に示すように、ノズル孔3がヘッド貫通穴8を通る向きにインクジェットヘッド1が配置され、張出し部の窪み部26に充填された接着剤20によって接着固定される。接着部Aは窪み部26、ベース基板4の表面、および接着剤20によって形成されている。対向する互いに平行なベース基板4の表面と窪み部26の一平面との距離が接着剤26の膜厚となる。インクジェットヘッド1をベース基板上に接合する際の位置調整において、接着剤20の流動抵抗を十分に低減できるように接着剤26の膜厚は10μm以上であることが好ましい。換言すれば、ベース基板4の表面と対向する窪み部26の一表面との距離は10μm以上であることが好ましい。また、粘性についても5Pa・s以下の接着剤が好ましい。
【0065】
当接部Bは張出し部材9の一の面とベース基板4とが接触して形成される。ヘッド貫通穴8の内面とノズル孔3が形成されている面に垂直なインクジェットヘッド1の側面とは非接触であるために、インク吐出により発生した熱は、張出し部材9を通ってベース基板4に伝達される。インクジェットヘッド1の放熱が不十分である場合は、張出し部材9の大きさを大きくすることによって、当接部Bの面積を大きくすることができる。当接部Bの面積が大きくなれば、放熱性能も向上する。このように、張出し部材の形状や大きさを変更することにより、インクジェットヘッド1の放熱性能を調整することができる。
【0066】
その他、当接部Bに接着剤20が介在しないために、厳密なインクジェットヘッドの位置調整が行なえることや、従来の技術のインクジェットヘッドと比較して放熱性能が優れているために保証動作温度域が広いことなどは、前述の実施の形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0067】
上述した実施の形態1から5のインクジェットヘッドは直方体の形状を有していたが、この形に限られるものではなく、任意の形状のインクジェットヘッドに本発明を用いることができる。
【0068】
(実施の形態6)
図11〜図20を参照して、本発明に基づく実施の形態6に係るヘッドユニットの製造方法について説明する。本実施の形態に係るヘッドユニットにはインクジェットヘッド3個が接着固定される。はじめに、実施の形態1に係るベース基板に凹部を含むヘッドユニットの製造方法について詳細に説明する。
【0069】
図11に示すようにインクジェットヘッド搭載装置の接着ステージ21の上にベース基板4を配置する。実施の形態1におけるベース基板の構成に加えて、ベース基板4には位置決め部を有することが好ましい。本実施の形態では、ベース基板4の一辺の両端にはL字型の位置決め部25が2箇所形成されている。ベース基板4の主表面には接着剤が充填される深さ10μmの凹部10が6個形成されている。ベース基板4の位置決めは、接着ステージ21の主表面に形成された第1位置決めピン22と第2位置決めピン23とを用いて行なう。図12(a)に示すように、一の位置決め部25におけるL字型の2面を第1位置決めピン22に当接させた後、一の位置決め部25の2面を当接させたまま矢印52の方向にベース基板4を回転させる。図12(b)に示すように、他の位置決め部25の1面が第2位置決めピンに当接するまで回転させる。他の位置決め部25が第2位置決めピンに当接した状態が接着ステージ21上にベース基板4を固定すべき位置である。本実施の形態においては、接着ステージ21には真空吸着のための穴が穿設されており(図示せず)、ベース基板4は真空吸着によって接着ステージ21上に固定される。
【0070】
このように、第1位置決めピン22と第2位置決めピン23とは、ベース基板4を接着ステージ21に固定する位置を定める。これらの位置決めピンは、プリンタ装置に配置されているヘッドユニットを組み込む際に利用する位置決めピン(図示せず)と同じ構成にしている。ここでいう位置決めピンの「構成」とは、位置決めピンの断面の形状、寸法および複数位置決めピンがある場合の位置関係をいう。インクジェットヘッドの接着位置の調整には画像解析による方法を用いる。この際、第1位置決めピン22と第2位置決めピン23とを基準にして位置調整を行なう。この方法を採用することにより、先にプリンタ装置にベース基板4を配置しておき、正確な位置を調整しながらインクジェットヘッド1を取付けることと同じ方法とすることができて、最も正確な位置にインクジェットヘッドを配置することができる。たとえ、ベース基板4の位置決め部25の寸法精度が悪くても、2つの位置決めピンによってインクジェットヘッドの位置が調整されるため、プリンタ装置に対するインクジェットヘッドの位置は高精度なものとすることができる。この結果、生産歩留まりを向上させると同時に高品位印刷が行なえるプリンタを提供することができる。
【0071】
具体的なインクジェットヘッドの配置方法について以下に説明する。はじめに、図示しないカメラによって第1位置決めピン22および第2位置決めピン23の外形を撮像し、演算処理によってそれぞれのピンの中心点を求め、第1位置決めピン22の中心および第2位置決めピン23の中心を通る直線をX軸として、第1位置決めピン22の中心を原点とするXY座標を画像上で構成する。図12(b)に画像上で定めたX軸とY軸とを示す。インクジェットヘッドはXY座標軸上の指定された座標位置に接着固定される。この際に、位置決めピンの中心軸が接着ステージ21の主表面に対して垂直にならず傾いていても、演算処理によって正規の位置を算出して接着位置を定めることができる。よって、接着ステージ21に形成される位置決めピンは、ミクロンレベルの高精度で接着ステージ21に取付ける必要はなく、ヘッド搭載装置の価格の低減に寄与する。接着ステージ21に位置決めピンをミクロンレベルの高精度で配置した場合であっても、ヘッドユニットの生産を繰返していくと、徐々にプリンタ装置上のX軸と接着ステージ上のX軸と接着ステージの送り軸との間にずれが発生する。このため、生産歩留まりが低下したり、位置決めピンの位置の再調整および接着ステージ上のX軸調整を頻繁に行なう必要が生じたりする。その度に長期間装置を停止してメンテナンスをするため、生産を停止する必要があった。しかし、本実施の形態で用いた画像解析による方法においては個々のヘッドユニットの生産ごとに位置決めピンの位置の確認を行なうため、定期的な位置決めピンの相対位置測定および画像処理演算における補正を行なうのみでよい。よって、メンテナンスのための装置の停止は短時間でよく、生産性に悪影響を及ぼすことはほとんどない。このように本実施の形態では、生産性を悪化させずに正確な位置にインクジェットヘッドを配置することができ、印刷品位が向上したインクジェットヘッドの大量生産を行なうことができる。
【0072】
本実施の形態においては2個の位置決めピンが形成されているが、3個の位置決めピンが形成されて同様に突き当ててベース基板の位置を定める場合にも、生産歩留まりは低下することなく、安定した品質の高い生産を行なうことができる。なお、座標系の設定にあたっては上記の方法の他に、予め位置決めピンの中心との位置関係を正確に計測したアライメントマークをたとえば接着ステージ上に形成しておき、このアライメントマークの測定位置から、原点の位置を定める方法であってもよい。
【0073】
インクジェットヘッドの保持を説明する図を図13(a)および図13(b)に示す。インクジェットヘッドの保持具には、真空吸着穴32を通して矢印51の向きに真空吸引が行なえるヘッド吸着具30を用いている。インクジェットヘッド1の平行姿勢を確保するために、ノズル孔3が形成される側の一の面である平行基準面33と平行基準面に垂直な一の面であるヘッド吸着面34とをヘッド吸着具30に当接させた状態で保持する。よって、ヘッド吸着具30において平行基準面33とヘッド吸着面34とに当接する2つの面は精度良く直角の角度をなすように製造しておくことが望ましい。インクジェットヘッド1はベース基板とヘッド接合面35で接触する。ベース基板上に配置する前に、インクジェットヘッド1をヘッド吸着具30で保持した状態で、図示しないカメラを用いてインクジェットヘッド1のノズル孔3を画像認識して演算処理を行ない、先に求めたXY座標上でのXY軸方向の補正および回転補正を行なって、XY座標軸上でのインクジェットヘッドの位置を算出する。
【0074】
プリンタに組み込んだときに最も位置精度が要求されるのは各ノズル孔の相対的な位置である。インクジェットヘッド位置の算出にはインクジェットヘッドの外形の画像データを用いずに、インクが吐出されるノズル孔の画像データが直接用いられる。すなわち、位置決めピンに対する相対的なノズル孔の位置を合わせることによってインクジェットヘッドの位置を定める。この方法においては、インクジェットヘッドの外形の寸法精度が悪い場合であっても、画像認識データを基にノズル孔をベース基板上の所定の位置に平面座標上で配置することができるため、ノズル孔の相対的な位置は高精度なものとなり、高品位印刷が可能となる。
【0075】
図14に示すように、ベース基板4の凹部10に、接着剤として紫外線硬化型接着剤43を図示しないディスペンサーで配置する。このとき、紫外線硬化型接着剤43の厚さは、凹部10の深さ以上となるように配置する。この構成は、後に行なうインクジェットヘッドをベース基板4に接着する際に、確実にインクジェットヘッドが紫外線硬化型接着剤43に接触する構成である。接着剤の流動抵抗が大きいと、インクジェットヘッドの位置決めの際に、ヘッド吸着具からインクジェットヘッドがすべり、ベース基板上に固定される位置のずれが生じることがある。この配置ずれを防止する観点から、接着剤の粘度は5Pa・s以下であることが好ましい。特にベース基板4に凹部10を形成しない場合は、接着剤の粘度が5Pa・s以下の接着剤を選定することで、流動抵抗を十分小さくすることができる。
【0076】
図15に示すように、インクジェットヘッド1をヘッド吸着具30で保持したまま、ベース基板4上に構成したXY座標系における演算された座標点まで移動する。この後、XY平面に垂直なZ軸方向のうち、矢印50の向きにインクジェットヘッド1を下降させる。インクジェットヘッド1のヘッド接合面がベース基板4と当接したことを図示しない荷重検出センサーで感知して、ヘッド吸着具30の下降を停止する。インクジェットヘッド1は、ベース基板4と紫外線硬化型接着剤43とに接触している状態である。必要に応じて、ベース基板4に当接させたまま、XY平面上で位置の微調整を行なう。この工程において、複数個のインクジェットヘッド1のノズル孔3について、それぞれの相対的な位置も調整するため、ヘッド吸着具30はX軸方向またはY軸方向に1μm以下の単位で精密に移動できることが望ましい。一方で、Z軸方向の移動は、インクジェットヘッド1がベース基板4に当接したことを検出できて停止できればよく、精密な制御は不要である。よって、Z軸方向の移動機構には比較的送り精度の悪いモータを使用することができる。
【0077】
インクジェットヘッドの外形寸法の精度が悪いと、インクジェットヘッド1はベース基板に対して傾いて接着される。接合時におけるインクジェットヘッドの傾きは、インクジェットヘッドの平行基準面とヘッド接合面との平行度およびベース基板の厚みの均一さなどに依存する。しかし、XY座標系におけるノズル孔の相対位置のばらつきに対して、Z軸方向の位置精度および接合時のインクジェットヘッドの傾きは比較的ばらつきが大きくても、インクが着弾する位置の精度には実質的に影響を及ぼさない。本実施の形態に例示しているインクジェットヘッドは、ノズル孔が形成される面および対向する反対側の面はそれぞれ図示しない同一のダイシング装置によって同一の工程で加工しているために平行精度はよい。また、ベース基板の表面についても、研削加工を行なっているため、厚みのバラツキや反りはほとんどなくて平行精度はよい。よって、インクジェットヘッドはベース基板に精度よく接合される。本実施の形態にかかる精度については、ノズル孔の相対位置の精度が±3μm以下で、インクの着弾位置の精度が±5μm以下であり、高精細画質での印刷が実現されている。また、凹部10の深さは10μmとしてあり、紫外線硬化型接着剤43の流動抵抗を抑えた状態で位置調整を行なうことができる。よってインクジェットヘッドの位置調整が容易になり、ヘッド接着位置の精度を向上することができる。
【0078】
インクジェットヘッド1の位置が定まったら、紫外線照射装置の光ファイバ24から紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤43を硬化させる。紫外線は図15に示すように、ベース基板4の側方から照射してインクジェットヘッド1とベース基板4とを固定する。このとき、紫外線硬化型接着剤43は、ベース基板4の主表面よりも盛り上がった状態で供給されている(図13参照)ため、確実にベース基板4とインクジェットヘッド1とに接着する。紫外線硬化型接着剤は、紫外線が照射されるまでは硬化せずに、紫外線が照射されると短時間で硬化するために、インクジェットヘッドの位置調整においては流動抵抗を小さくすることができて、位置調整が容易になり、また、硬化は短時間で行なえるので生産性が向上する。以上の工程を複数個のインクジェットヘッド1について順次行なって、インクジェットヘッド1のベース基板4への接着固定が完了する。
【0079】
接着剤については、インクジェットヘッドとベース基板とを当接させた後に、当接部におけるインクジェットヘッドとベース基板とのわずかな隙間に毛細管現象で進入する接着剤を選定すれば、接着面積が大きくなり強固にインクジェットヘッドを固定することができる。また、インクジェットヘッドとベース基板との間の熱伝達がよくなり放熱特性が向上する。よって、プリンタの機械的強度および使用環境の条件に対する信頼性を向上させることができる。この場合、インクジェットヘッドとベース基板とに接着剤が介在するが、位置調整において接着剤の流動抵抗は発現せず、インクジェットヘッドとベース基板との表面に存在する凹凸にのみ接着剤が介在して膜厚は非常に薄くなるために、流動抵抗は非常に小さい。同様に、膜厚が薄いために、硬化収縮や熱膨張などの影響がほとんどなく、高品位印刷が行なえるプリンタを提供することができる。さらに、接着剤に嫌気硬化性が付与されたものを選定すれば、たとえば、紫外線照射は仮止めを行なう照射でよく、仮止めした後に放置しておけば自然に嫌気硬化するために工程短縮に寄与する。嫌気硬化性を付与した場合、紫外線が十分に届かなかったところも完全に硬化させることができ、接着力をより強力にすることができる。当接部に進入した接着剤も嫌気性付与の作用によって確実に硬化する。よってインクジェットヘッドをより強固に固定することができ、機械的信頼性、環境温度に対する信頼性を向上させることができる。嫌気性の代わりに熱硬化性を付与した接着剤を用いてもよい。この場合、紫外線照射で仮止めした後に熱硬化させて強固に接着させることが可能になり、紫外線照射時間を短縮することができる。嫌気硬化性を付与した接着剤と同様に、接着力を大きくすることができ、機械的信頼性、環境温度に対する信頼性を向上することができる。
【0080】
ベース基板上のインクジェットヘッドの接着位置を定める位置調整の工程においては、図19に示すように、ベース基板4の保持具貫通穴7にヘッド吸着具30を貫通させた状態でインクジェット1を保持して位置調整を行なうことが好ましい。ベース基板4における当接部の領域に保持具貫通穴7を形成しておく。保持具貫通穴7にヘッド吸着具30を通して、インクジェットヘッド1のノズル孔3が形成されている面と反対側の面を矢印51の向きに真空引きすることによって吸着保持する。矢印50の向きにインクジェットヘッド1を移動してインクジェットヘッド1とベース基板4とを当接させる。保持具貫通穴7は当接後にインクジェットヘッド1の位置調整が行なえるように、ヘッド吸着具30の断面の寸法より大きく形成しておく。インクジェットヘッド1の位置調整は、ノズル孔3が形成されている面と反対側の面を吸着したまま行なわれる。この方法を採用することによって、インクジェットヘッド1のノズル孔3が配置される面の側にはヘッド吸着具のアームなどの機器が存在しないために、ノズル孔の画像認識装置の構成を簡略化することができ、装置費用の削減になる。
【0081】
上述のインクジェットヘッドの配置方法ついては、実施の形態1で例示したベース基板に凹部を有するヘッドユニットについて説明したが、実施の形態2に係るインクジェットヘッドに切欠き部を有するヘッドユニット、実施の形態3に係るインクジェットヘッドに張出し部を有するヘッドユニット、実施の形態4に係るインクジェットヘッドの側面に接着剤を配置するヘッドユニットについても同様の方法でインクジェットヘッドの配置が行なえる。以下に、上述の方法とそれぞれ異なる接着剤の配置方法について説明する。
【0082】
実施の形態2に係るインクジェットヘッドについては、接着前に切欠き部に接着剤を配置してベース基板に当接させる。接着剤を配置する工程において、段付き形状部を有するインクジェットヘッドに接着剤を配置した状態を図16に示す。接着剤20はインクジェットヘッド1とベース基板とが接合される面から突出するように配置されることが好ましい。換言すると、当接部となるべき面を含む平面より接着剤が突出するように配置されることが好ましい。実施の形態3に係るインクジェットヘッドについては、接着前に張出し部に接着剤を配置して、ベース基板に当接させる。張出し部に接着剤を配置した状態を図17に示す。張出し部材9の表面に接着剤20が配置されている。接着剤20は、インクジェットヘッド1とベース基板とが当接する面から突出するように配置されることが好ましい。実施の形態4に係るインクジェットヘッドについては、切欠き部や張出し部が形成されておらず、従来技術によるインクジェットヘッドの側面に接着剤20を配置する。接着剤20をインクジェットヘッドに配置した状態を図18に示す。この場合においても、接着剤20は、インクジェットヘッド1とベース基板とが当接される面から突出するように配置されることが好ましい。図16〜図18に示すような接着剤の配置方法を採用することにより、接着剤20は確実にベース基板と接着して、生産の歩留まりが向上する。また、当接部となるべき面には接着剤が存在しないため、接着剤を押し広げて大きな流動抵抗を発生させることなく、インクジェットヘッドの配置を行なうことができる。よって、高い配置精度が確保できて、高品位プリンタを提供することができる。これらの方法については、予め配置する接着剤をインクジェットヘッドに配置する方法を説明したが、接着部となるべきベース基板上の領域に接着剤を配置しておいてインクジェットヘッドを当接させてもよい。また、位置調整前に予め接着剤20を塗布しておくのではなく、インクジェットヘッド1のベース基板4上における位置調整を行なった後に、接着部Aとなるべき位置に接着剤20を注入して接着固定してもよい。
【0083】
実施の形態5に係る張出し部を備えるヘッドユニットの製造方法について、以下に説明する。図20に実施の形態5に係るインクジェットヘッドをベース基板に配置する方法を示す。インクジェットヘッド1の外形寸法より大きなヘッド貫通穴8をベース基板4に予め形成しておく。張出し部材9の形状は図20に示すように窪み部26を有する形状とする。窪み部26が形成される側とノズル孔が形成された側とが同じ向きになるように張出し部材9を接着固定してインクジェットヘッド1を形成する。次に窪み部26に接着剤20を配置する。接合されたときに接着部となるべき隙間の高さより厚くなるように接着剤20を配置しておくことが好ましい。この方法により、接着剤20は確実にベース基板4と接着して生産歩留まりが向上する。インクジェットヘッド1は、ノズル孔3が形成されている面と反対側の面をヘッド吸着具30によって保持する。ノズル孔3が形成されている面からヘッド貫通穴8にインクジェットヘッド1を通してベース基板4に張出し部材9を当接させる。インクジェットヘッド1の位置調整はノズル孔3が形成されている面と反対側の面をヘッド吸着具30によって保持したまま行なう。この後に、紫外線を照射したり放置したりすることにより接着固定を行なう。この方法を採用することにより、ノズル孔3が形成される面の側には、ヘッド吸着具30のアームなどの機器が存在しないために、ノズル孔画像認識装置の構成を簡略化することができ装置費用の低減を行なうことができる。
【0084】
本発明に基づくヘッドユニットとその製造方法は、圧電材料のシェアモード変形を利用したインクジェットヘッドやバブル(泡)を利用したインクジェットヘッドなど、厳密なインクジェットヘッドの位置調整が必要であるヘッドユニットに利用することができる。
【0085】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、接着剤の膜厚を容易に調整でき、さらに接着部を設けることによって、インクジェットヘッドをベース基板上に配置する際の接着剤の流動抵抗を低減することができる。よって、精度よく所定の位置にインクジェットヘッドを配置することができ、高品位印字が可能なインクジェットヘッドユニットを提供することができる。さらに、インクジェットヘッドとベース基板とが接着剤を介さないで接する当接部を備えることにより、熱伝達が容易になるため放熱性能が向上して、保証環境温度域を拡大することができる。加えて、駆動周波数を高めた高速印字も可能なインクジェットヘッドユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に基づく実施の形態1におけるヘッドユニットの部分断面図であり、(b)は平面図である。
【図2】本発明に基づく実施の形態1における一のベース基板の斜視図である。
【図3】本発明に基づく実施の形態2における第1のインクジェットヘッドの正面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態2におけるヘッドユニットの部分断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態2における第2のインクジェットヘッドの正面図である。
【図6】本発明に基づく実施の形態2における第3のインクジェットヘッドの正面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態1および2に係るヘッドユニットの部分断面図である。
【図8】本発明に基づく実施の形態3におけるヘッドユニットの部分断面図である。
【図9】本発明に基づく実施の形態4におけるヘッドユニットの部分断面図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態5におけるヘッドユニットの部分断面図である。
【図11】本発明に基づく実施の形態6におけるヘッドユニットの製造方法における第1の工程を説明する図である。
【図12】(a)および(b)は本発明に基づく実施の形態6におけるヘッドユニットの製造方法における第2の工程を説明する図である。
【図13】(a)および(b)はインクジェットヘッドをヘッド吸着具で保持する方法を説明する図である。
【図14】本発明に基づく実施の形態6におけるヘッドユニットの製造方法における第3の工程を説明する図である。
【図15】本発明に基づく実施の形態6におけるヘッドユニットの製造方法における第4の工程を説明する図である。
【図16】本発明に基づく段付き形状部を有するインクジェットヘッドに接着剤を配置する方法を説明する図である。
【図17】本発明に基づく張出し部を有するインクジェットヘッドに接着剤を配置する方法を説明する図である。
【図18】本発明に基づく従来技術に基づくインクジェットヘッドに接着剤を配置する方法を説明する図である。
【図19】本発明に基づく保持具貫通穴を有するベース基板にインクジェットヘッドを配置する方法を説明する図である。
【図20】本発明に基づくヘッド貫通穴を有するベース基板にインクジェットヘッドを配置する方法を説明する図である。
【図21】従来技術に基づく第1のヘッドユニットの斜視図である。
【図22】従来技術に基づく第2のヘッドユニットの平面図である。
【図23】従来技術に基づく第3のヘッドユニットの部分断面図である。
【符号の説明】
1 インクジェットヘッド、3 ノズル孔、4 ベース基板、5 ヘッドユニット、7 保持具貫通穴、8 ヘッド貫通穴、9 張出し部材、10 凹部、11 段付き形状部、12 円弧形状部、13 面取り形状部、20 接着剤、21 接着ステージ、22 第1位置決めピン、23 第2位置決めピン、24 光ファイバ、25 位置決め部、26 窪み部、30 ヘッド吸着具、32 真空吸着穴、33 平行基準面、34 ヘッド吸着面、35 ヘッド接合面、40突当て基準板、41 中間保持部材、42 枠体、43 紫外線硬化型接着剤、50,51,52 矢印。
Claims (25)
- インクを吐出する機能を有するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを固定するベース基板と
を備えるインクジェットヘッドユニットであって、
前記インクジェットヘッドと前記ベース基板とが接する当接部と、
前記当接部とは異なる位置において、前記インクジェットヘッドと前記ベース基板とが接着剤を介して結合される接着部と
を備えるインクジェットヘッドユニット。 - 前記接着部は、前記ベース基板において、前記インクジェットヘッドと接合する面に形成された凹部を含む、請求項1に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 前記凹部は、前記インクジェットヘッドを前記ベース基板に対して垂直に投影した領域の一部を含む、請求項2に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 2以上の前記凹部が形成された、請求項2に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 前記接着部は、前記インクジェットヘッドにおいて、前記当接部に隣接して形成された切欠き部を含む、請求項1に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 前記インクジェットヘッドは、前記ベース基板と結合するための側方に突出した張出し部を含み、
前記接着部は前記張出し部を含む、請求項1に記載のインクジェットヘッドユニット。 - 前記ベース基板は、前記インクジェットヘッドを保持する保持具を貫通させる保持具貫通穴を含む、請求項1に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 前記接着部は、前記ベース基板の表面と略平行な前記インクジェットヘッドの表面を含み、前記ベース基板の表面と対向する前記インクジェットヘッドの表面との間の距離が10μm以上である、請求項1に記載のインクジェットヘッドユニット。
- インクを吐出する機能を含むインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを固定するベース基板と
を備えるインクジェットヘッドユニットであって、
前記インクジェットヘッドは、前記ベース基板と結合するための側方に突出した張出し部を含み、
前記張出し部は前記ベース基板と接する当接部と接着剤を配置するための窪み部とを有し、
前記窪み部と前記ベース基板とが接着剤を介して互いに結合される接着部を備えるインクジェットヘッドユニット。 - 前記ベース基板は、前記インクジェットヘッドを挿入するためのヘッド挿入穴を含む、請求項9に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 前記接着部は、前記ベース基板の表面と略平行な前記窪み部の表面を含み、前記ベース基板の表面と対向する前記窪み部の表面との間の距離が10μm以上である、請求項9に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 前記接着剤は、嫌気性が付与された紫外線硬化型接着剤を含む、請求項1または9に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 前記接着剤は、粘度が5Pa・s以下である、請求項1または9に記載のインクジェットヘッドユニット。
- 前記ベース基板は、位置決めピンに当接させるための位置決め部を含む、請求項1または9に記載のインクジェットヘッドユニット。
- インクジェットヘッドと、
ベース基板と、
前記インクジェットヘッドと前記ベース基板とが接する当接部と、
前記当接部とは異なる位置において、前記インクジェットヘッドと前記ベース基板とが接着剤を介して結合される接着部と
を備えるインクジェットヘッドユニットの製造方法であって、
前記接着部となるべき領域に前記接着剤を配置する接着剤配置工程と、
前記インクジェットヘッドの接着位置を調整する位置調整工程と、
前記インクジェットヘッドと前記ベース基板とを接着固定する工程と
を含む、インクジェットヘッドユニットの製造方法。 - 前記接着剤配置工程は、前記接着部の一部として前記ベース基板の主表面に形成された凹部に前記接着剤を配置する工程を含む、請求項15に記載のインクジェットヘッドユニットの製造方法。
- 前記凹部の深さより厚く前記接着剤を配置する工程を含む、請求項16に記載のインクジェットヘッドユニットの製造方法。
- 前記接着剤配置工程は、前記接着部の一部として前記インクジェットヘッドに形成された切欠き部に、前記接着剤を配置する工程を含む、請求項15に記載のインクジェットヘッドユニットの製造方法。
- 前記インクジェットヘッドと前記ベース基板とが接合される面から突出するように、前記接着剤を配置する工程を含む、請求項18に記載のインクジェットヘッドユニットの製造方法。
- 前記インクジェットヘッドの側方から突出した張出し部となるように張出し部材を前記インクジェットヘッドに取りつける工程を含み、
前記接着剤配置工程は、前記張出し部と前記ベース基板とに挟まれるべき空間に接着剤を配置する工程を含む、請求項15に記載のインクジェットヘッドユニットの製造方法。 - 前記ベース基板は保持具貫通穴を含み、
前記位置調整工程は、前記保持具貫通穴から保持具を貫通させる保持具貫通工程と、
前記保持具を貫通させた状態で、前記インクジェットヘッドを保持して前記接着位置の調整を行なう工程と
を含む、請求項15に記載のインクジェットヘッドユニットの製造方法。 - ベース基板と、
接着剤を配置するための窪み部を有する張出し部を含むインクジェットヘッドと、
前記ベース基板と前記張出し部とが接する当接部と
を備えるインクジェットヘッドユニットの製造方法であって、
前記インクジェットヘッドから側方に突出した前記張出し部となるように張出し部材をインクジェットヘッドに取りつける工程と、
前記窪み部に接着剤を配置する工程と、
前記インクジェットヘッドの接着位置を調整する位置調整工程と、
前記インクジェットヘッドと前記ベース基板とを接着固定する工程と
を含む、インクジェットヘッドユニットの製造方法。 - 前記ベース基板は、ヘッド挿入穴を含み、
前記位置調整工程は、ノズル孔が配置された面と反対側の面から前記インクジェットヘッドを保持して、前記ヘッド挿入穴に前記インクジェットヘッドを挿入するヘッド挿入工程と、
前記反対側の面から前記インクジェットヘッドを保持した状態で前記接着位置を調整する工程と
を含む、請求項22に記載のインクジェットヘッドユニットの製造方法。 - インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを固定するためのベース基板と
を備え、プリンタ装置に搭載するためのインクジェットヘッドユニットの製造方法であって、
前記ベース基板は、位置決めピンに当接させるための位置決め部を含み、
前記プリンタ装置に形成されている位置決めピンと同一の構成の位置決めピンを有するインクジェットヘッド搭載装置を用いて前記ベース基板に対する前記インクジェットヘッドの取付けを行なう、インクジェットヘッドユニットの製造方法。 - 前記インクジェットヘッドを前記ベース基板に接着する位置を調整する位置調整工程を含み、
前記位置調整工程は、前記インクジェットヘッド搭載装置に形成されている位置決めピンと前記インクジェットヘッドに形成されているノズル孔との相対的な位置を合わせる工程を含む、請求項24に記載のインクジェットヘッドユニットの製造方法。
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