JP2004193264A - 結晶性薄膜の製造方法 - Google Patents

結晶性薄膜の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004193264A
JP2004193264A JP2002358163A JP2002358163A JP2004193264A JP 2004193264 A JP2004193264 A JP 2004193264A JP 2002358163 A JP2002358163 A JP 2002358163A JP 2002358163 A JP2002358163 A JP 2002358163A JP 2004193264 A JP2004193264 A JP 2004193264A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
region
crystalline
crystal grain
crystal grains
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002358163A
Other languages
English (en)
Inventor
Hideya Kumomi
日出也 雲見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2002358163A priority Critical patent/JP2004193264A/ja
Priority to AU2003283833A priority patent/AU2003283833A1/en
Priority to US10/533,091 priority patent/US7473621B2/en
Priority to PCT/JP2003/015072 priority patent/WO2004049412A2/en
Priority to TW092133410A priority patent/TW200421450A/zh
Publication of JP2004193264A publication Critical patent/JP2004193264A/ja
Priority to US12/325,689 priority patent/US20090166626A1/en
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Thin Film Transistor (AREA)
  • Recrystallisation Techniques (AREA)

Abstract

【課題】溶融再固化によって得られる結晶性薄膜において、結晶粒位置を高度に制御する。
【解決手段】出発薄膜として、膜厚が互いに異なる領域を連続して共存させた薄膜を用いることにより、溶融再固化において、一方の領域から優先的に結晶粒を成長させ、結晶性薄膜の結晶粒の位置を制御する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットパネルディスプレイやイメージセンサ、磁気記録装置、情報処理装置など高い空間的均質性を要する大規模集積回路に用いられる結晶性薄膜及びその製造方法、該結晶性薄膜を用いる素子、該素子を用いる回路、該素子もしくは該回路を含む装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイ等に代表されるフラットパネルディスプレイは、画素駆動用の回路のパネルへのモノリシックな実装とその高性能化によって、画像表示の高精細化、高速化、及び多階調化を図ってきた。単純マトリクス駆動のパネルは画素毎にスイッチングトランジスタを備えたアクティヴマトリクス駆動に発展し、さらにそのアクティヴマトリクス駆動に用いるシフトレジスタ回路を同一パネル上周辺に作製することによって、今日、動画像にも対応するフルカラーの高精細液晶ディスプレイが提供されている。
【0003】
このような周辺駆動回路まで含めたモノリシック実装が実用的な製造コストで可能となったのは、電気的特性に優れた多結晶シリコン薄膜の安価なガラス基体上への形成技術に負うところが大きい。即ち、ガラス基体上に堆積した非晶質シリコン薄膜をエキシマレーザーなどの紫外域の短時間パルス光によって、ガラス基体を低温に保ったまま多結晶シリコン薄膜を溶融再固化させる技術である。同じ非晶質シリコン薄膜を出発材料としてこれを固相で結晶化させた多結晶薄膜を構成する結晶粒に比べて、溶融再固化法によって得られる結晶粒は内部の結晶欠陥密度が低く、該薄膜を活性領域として用いて構成した薄膜トランジスタは高いキャリア移動度を示す。そのためサブミクロン程度の平均粒径を持つ多結晶薄膜でも、対角数インチ程のサイズで高々100ppi以下の精細度の液晶ディスプレイには十分な性能を示すアクティヴマトリクス駆動用モノリシック回路を製造することができる。
【0004】
【非特許文献1】
H.Kumomi and T.Yonehara,Jpn.J.Appl.Phys.36,1383(1997)
【非特許文献2】
H.Kumomi and F.G.Shi,”Handbook of Thin Films Materials ”Volume 1,Chapter 6,”Nucleation,Growth,and Crystallization of Thin Films”edited by H.S.Nalwa(Academic Press,New York,2001)
【非特許文献3】
P.Ch.van der Wilt,B.D.van Dijk,G.J.Bertens,R.Ishihara,and C.I.M.Beenakker, Appl.Phys.Lett.,Vol.79,No.12,1819 (2001)
【非特許文献4】
R.Ishihara, P.Ch.van der Wilt,B.D.van Dijk,A.Burtsev,J.W.Metselaar,and C.I.M.Beenakker, Digest of TechnicalPapers, AM−LCD 02, 53(The Japan Society of Applied Physics,2002)
【非特許文献5】
〔Hatano,Moon,Lee,Suzuki,and Grigoropoulos,J.Appl.Phys.87,36(2000)〕
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、次世代に望まれるより大画面或いは高精細な液晶ディスプレイに対して、現行の溶融再固化多結晶シリコン薄膜を用いる薄膜トランジスタは性能が不足していることが明らかとなっている。また、液晶ディスプレイよりも高電圧或いは大電流での駆動を要するプラズマディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイの駆動回路用素子、或いは医療用大画面X線イメージセンサの高速駆動回路用の素子など、今後発展が期待されている用途においても上記多結晶シリコン薄膜は性能不足である。いかに結晶粒内の欠陥密度が低いとは言え、多結晶シリコン薄膜の平均粒径が高々サブミクロン程度ではこれらの高性能素子は得られない。なぜなら、ミクロン程度のサイズを有する素子の活性領域内に、電荷移動の大きな障害となる結晶粒界が多く含まれるからである。
【0006】
このような多結晶薄膜における結晶粒界の密度とその空間分散を同時に小さくするための一般論が存在する。それは結晶粒の形成位置を制御することにより、結晶粒界の位置と粒径分布を制御するというアイデアであり、これまでに多結晶薄膜の化学気相堆積や薄膜の固相結晶化などにおいて実証されてきた〔例えば、非特許文献1、2を参照のこと〕。
【0007】
溶融再固化による結晶性薄膜形成においても、同じアイデアを実現しようとする試みがこれまでいくつか報告されている。それらのうちでこれまでに最も成功しているものは、Wiltら〔非特許文献3、4〕によって初めて報告された方法である。図13にこの方法の概要とその作用を説明するための工程断面図を示した。彼らは先ず、シリコン単結晶基板上のシリコン酸化膜層1の表面から深さ1μmに及ぶ直径0.1μm以下の細孔2を設け、これを埋めるように膜厚90−272nmの非晶質シリコン薄膜3を形成し、この表面から細孔2の内部を除く薄膜3が完全溶融するようにエキシマレーザー4を照射した〔図13(a)〕。細孔2内部に埋め込まれた非晶質シリコンが完全溶融しない場合、ここには溶融前に固相で爆発的に結晶化(explosive crystallization)した粒径20−50nm程度の多数個の結晶粒群5が未溶融で残留する〔図13(b)〕。もし細孔2の内部まで完全溶融したとしても、エキシマレーザー4の照射後は主としてシリコン基板側へ熱が流出するために、細孔2の底部で冷却が先行し、そこに溶融相からの結晶核形成が生じると推測される。いずれの場合も、細孔2の底部から非晶質シリコン薄膜3の表面へ向かって冷却が進行するにつれて、結晶粒群5のうち固液界面に接する結晶粒が細孔2を上方に向かって成長する〔図13(c)〕。その際に成長速度の異方性などの要因によって一部の結晶粒は成長の余地を失い、更に上方へと成長を続けることができる結晶粒が選別(「grain filter(ing)」)される〔図13(c)〕。上方へと成長する結晶粒が細孔2の開口部に達するときまでに、成長を続けることができた結晶粒の数が1個にまで淘汰され、この一個の結晶粒は細孔2を出でて非晶質シリコン薄膜3に成長を拡大し結晶粒6となる〔図13(d)〕。結晶粒6の成長端が非晶質シリコン薄膜3の表面に達した後は、成長が薄膜面内方向に制限されて横方向成長を遂げる〔図13(e)〕。系全体の冷却が進み、非晶質シリコン薄膜3の未固化領域7の過冷却度が大きくなった時、そこには溶融相から高速高密度で結晶核8が生じ〔図13(e)〕、それらと結晶粒6が衝突して結晶粒6の粒界9を形成し固化を完了する〔図13(f)〕。かくして、結晶粒6およびその粒界9の位置は細孔2の位置によって制御される。
【0008】
非特許文献4において、Ishiharaらは、上記の方法で位置制御した結晶粒6の内部にゲート領域が収まるMOS型薄膜トランジスタの素子を作成し、特性とそのばらつきを評価している。上記報告に拠ると、平均値は単結晶シリコン基板上の素子に迫るほど素晴らしい特性を示したものの、複数素子間の特性のばらつきに関しては、単結晶シリコン基板上の素子に遥かに及ばず、期待と予測を大きく下回る結果でしかなかった。
【0009】
上記報告において素子間の特性のばらつきが大きかった理由は、実に結晶粒の位置制御の不完全さである。すなわち、細孔2開口部を種結晶として横方向成長する結晶粒6は必ずしも単一の結晶粒とはならず、複数の結晶粒からなり、その内部に結晶粒界を含むことが少なくないこと、そして、その結晶粒界の数が0から多数個の範囲でばらつくことに起因する。
【0010】
図13にて説明した方法では、細孔2の底部に未溶融で残留する結晶粒群6の固液界面に接する複数の結晶粒の晶癖(habit)とそれぞれのファセットの面積および細孔2に沿った方位(orientation)は原理的にランダムである。優先成長を機構とする選別「grain filter(ing)」が必ず単一の結晶粒への淘汰に収斂するとは限らず、複数の結晶粒が細孔2の開口部まで同時に到達することも多い。
【0011】
細孔2の深さを更に増して「grain filter(ing)」長を延長することによって単一結晶粒の選択収率の向上を図ることも期待できない。図13にて説明した方法では、細孔2の深さ方向に生じる大きな温度分布を利用して、非晶質シリコンの最大溶融時に高温となる細孔2の開口部では完全溶融(complete melt)、一方低温となる細孔2の底部では不溶融になるように設計されている。温度分布は連続であるから、細孔2の開口部と底部の間には完全溶融と不溶融の間の近完全溶融(near complete melt)および部分溶融(partial melt)になる領域が必ず存在する。細孔2の内部に未溶融で残留する結晶粒は、細孔2の底部のみならずその開口部に向かって密度を下げながら広く分布することになる。したがって、細孔2を深くしただけ「grain filter(ing)」長が増すことはない。
【0012】
一方、細孔2における「grain filter(ing)」は細孔2の径に大きく依存する。たとえば径を大きくすると、より多くの結晶粒が細孔の開口部まで達する確率が高くなるため、単一結晶粒の選択収率は下がる。径を小さくすれば選択収率は上がる。原理的には、結晶粒群5を構成する最小の結晶粒の粒径よりも細孔2の径が小さいならば、固液界面に接する結晶粒は初めからひとつとなり、確実に単一の結晶粒を選択できるように思われる。しかし実際には、細孔2がそこまで微細になると、結晶粒群5の平均粒径も同時に減少し、かつ毛細管効果によって実効的な融点が下がるために、結晶粒群5を融け残すことが困難になる。また、近い将来までの微細加工技術では数十nm以下の細孔を1μmの深さで形成することは極めて困難である。その上、仮に斯様な極細孔を形成できたとしてもそこに非晶質シリコンを埋め込むこともこれまた困難である。
【0013】
さらに現実を見るならば、図13を用いて説明した細孔2の寸法であっても、今日の微細加工技術によってこのような高アスペクト比の細孔を広い面積に亙って高精度に多数個形成することは困難である。細孔2の寸法および形状のばらつきは、細孔2の開口部まで到達する結晶粒の数のばらつきに直接反映する。本発明者はこれこそが上記文献の報告例における素子特性のばらつきの主因である可能性が高いと推察する。
【0014】
このように、上述の従来技術は細孔2の深さ方向の温度分布とそこでの「grain filter(ing)」現象を巧みに組み合わせた卓抜なアイデアではあるが、その最適化のみで単一結晶粒の選択収率を向上させて実用に供することは、原理的にも、また製造加工技術の限界からも容易でなかった。本発明の課題は、この従来技術の孕む本質的な問題点を取り除いた新たな方法を実現し、該製造方法によって結晶粒位置を高度に制御した結晶性薄膜を提供し、さらには該薄膜を用いて高性能な素子、回路、並びに装置を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1に、
1. 互いに膜厚の異なる領域が連続して共存する出発薄膜を溶融再固化させることを特徴とする結晶性薄膜の製造方法
である。上記1の製造方法において、
2. 出発薄膜が特定領域を有し、該特定領域の膜厚をその周囲の領域よりも大きくする
ことが好ましい。また、上記1または2の製造方法は、以下の形態を有していてもよい。
3. 薄膜の最大溶融時に、特定領域に単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが未溶融で残留し、一方その周囲の領域は完全溶融する上記2に記載の結晶性薄膜の製造方法。
4. 特定領域の寸法と膜厚差との比が、特定領域に未溶融で残留する単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが再固化の過程で結晶成長する際の、特定領域内における膜面内方向の成長速度と膜厚方向の成長速度との比より大きい上記3に記載の結晶性薄膜の製造方法。
5. 特定領域の寸法と膜厚との比が、特定領域に未溶融で残留する単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが再固化の過程で結晶成長する際の、特定領域内における膜面内方向の成長速度と膜厚方向の成長速度との比より大きい上記4に記載の結晶性薄膜の製造方法。
6. 特定領域の寸法と膜厚差との比が、特定領域に未溶融で残留する単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが再固化の過程で結晶成長する際、膜面内方向の成長端が特定領域周縁に達するより前に、膜厚方向の成長端が特定領域の膜厚差を越える範囲にある上記3に記載の結晶性薄膜の製造方法。
7. 特定領域の寸法と膜厚との比が、特定領域に未溶融で残留する単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが再固化の過程で結晶成長する際、膜面内方向の成長端が特定領域周縁に達するより前に、膜厚方向の成長端が膜表面に達する範囲にある上記6に記載の結晶性薄膜の製造方法。
8. 特定領域の薄膜面内における空間的位置によって少なくとも一部の結晶粒の空間的位置を制御することを特徴とする請求項2に記載の結晶性薄膜の製造方法。
9. 出発薄膜の表面に凹凸を設ける上記1に記載の結晶性薄膜の製造方法。
10. 出発薄膜を設ける基体の表面に凹凸を設ける上記1に記載の結晶性薄膜の製造方法。
【0016】
本発明の第二は、
11. 上記1ないし10のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする結晶性薄膜
である。
【0017】
本発明の第三は、
12. 上記11に記載の結晶性薄膜を用いてなることを特徴とする素子
であり、好ましくは、
13. 上記8に記載の製造方法によって空間的位置を制御された結晶粒を活性領域に用いる素子
であり、さらに好ましくは
14. 素子の活性領域が、単一の結晶粒の内部に形成されている上記13に記載の素子
である。
【0018】
さらに、本発明の第四は、
15. 上記12ないし14のいずれかに記載の素子を用いて構成したことを特徴とする回路
であり、第五は、
16. 上記12ないし14のいずれかに記載の素子もしくは上記15に記載の回路を含むことを特徴とする装置
である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の最も基本的な実施形態を図1及び図2に、そしてそれらの発展形態を図3〜図6に示す。図中、薄膜はその表面もしくはその上下に接する別の層との界面に鉛直な方向に薄膜の一部を切り出した断面によって模式的に表されている。尚、本発明にかかる薄膜はその上下に設けた別の層と接していてもよいが、図1〜図9においては便宜上それらを省略し、薄膜のみを図示する。ちなみに図1〜図6中、1、2は互いに膜厚の異なる領域で、1の膜厚は2のそれよりも厚い。また、3は出発薄膜、4は溶融再固化のための投与エネルギー、5は結晶粒もしくは結晶性クラスター、6は結晶粒、7は未再固化領域、8はランダムな結晶性クラスター群、9は結晶粒界である。
【0020】
Hatanoらが非特許文献5で報告した研究において実証されたとおり、薄膜表面側から溶融再固化のためのエネルギーが投与され、そのエネルギーの大半が薄膜の表面近傍で吸収される場合、薄膜は表面近傍から先に溶融し、その溶融層は未溶融の薄膜深層部へ向けて拡大する。薄膜の膜厚が投与エネルギーに対して十分に薄い場合、溶融層は薄膜と基体の界面にまで達し薄膜全体が完全溶融する。しかし、もし膜厚が厚ければ最大溶融時においても溶融層が薄膜と基体の界面にまで到達せず、その界面近傍に未溶融層を残す不完全溶融のまま冷却され再固化する。その場合、界面近傍に残された未溶融層は必ず結晶粒もしくは結晶性クラスターからなる。なぜなら、出発薄膜が結晶粒もしくは結晶性クラスターを含みそれらが溶け残る場合はもとより、出発薄膜が完全な非晶質であっても溶融層からの熱伝導で薄膜深部の未溶融層は固相で結晶化するからである。
【0021】
したがって、図1(a)及び図2(a)に示すように、膜厚の厚い領域1と薄い領域2が連続して共存する出発薄膜3を設け、これらの表面側から図1(b)及び図2(b)に示すように出発薄膜3を加熱溶融するためのエネルギー4を与えるならば、薄膜の最大溶融時において領域2は完全溶融状態となり、一方領域1では薄膜の基体との界面近傍に未溶融層が溶け残る不完全溶融状態とすることができる。すなわち、図1(c)及び図2(c)に示す最大溶融時には領域1の基体との界面近傍に結晶粒もしくは結晶性クラスター5が溶け残る。
【0022】
このように互いに膜厚の異なる領域1、2が共存する出発薄膜3を溶融させた後、エネルギー4の投与を停止すると〔図1(d)、2(d)〕、薄膜は冷却され再固化する。このとき完全溶融した領域2では過冷却度が十分大きくなるまで溶融状態を保つ。一方、領域1では結晶粒もしくは結晶性クラスター5を種結晶として成長が進行し、周囲の溶融薄膜を固化させて結晶粒6となる〔図1(e)、2(e)〕。
【0023】
その後、結晶粒6は領域1を越えて連続する領域2をも漸次固化させて成長を続ける〔図1(f)、2(f)〕。但し、結晶粒6は無限に大きく成長できるわけではない。未だ結晶粒6の成長によって再固化されていない未再固化領域7では、過冷却度の増大と共に結晶粒もしくは結晶性クラスター群8の爆発的な自発的核形成がランダムに生じる〔図1(g)、2(g)〕。領域2から成長してきた結晶粒6はこれら位置制御されていない結晶粒もしくは結晶性クラスター群8にその成長を阻まれ、両者の間に結晶粒界9が形成される〔図1(h)、2(h)〕。その結果、本実施形態においては、領域1を中心として結晶粒6の位置が制御された溶融再固化による結晶性薄膜を形成することができる。
【0024】
ここで出発薄膜3の最大溶融時、領域1に単一の結晶粒6を溶け残し、これを成長させるためには、領域1の薄膜表面から見た差し渡しの大きさ(以下寸法という)もしくは面積と膜厚、出発薄膜3の状態、及び溶融加熱のために投与されるエネルギー4を適正に整える必要がある。出発薄膜3の状態とは、これが結晶粒もしくは結晶性クラスターを含む場合はそれらのサイズ分布、濃度分布、および固相結晶化速度を決定する因子であり、完全に非晶質である場合は固相結晶核形成頻度および固相結晶化速度を決定する因子である。これら因子が、設定した領域1の寸法または面積と膜厚、およびエネルギー4に対して、最大溶融時領域1に単一の結晶粒6が溶け残るような値を有する必要がある。また、エネルギー4は少なくとも領域2を完全溶融させるに足るエネルギーであることが必要であるが、領域1を完全溶融させるために必要な最小のエネルギーを越えてはならない。
【0025】
本発明では、前記従来技術のようにアスペクト比の高い細孔を設けるのではなく、図1(a)に示すように、出発薄膜3に周囲より僅かに膜厚の厚い領域1を設ける。この特定領域1は、出発薄膜3中に不規則に分布するのではなく、あらかじめ定められた特定の位置に、定められた投影寸法もしくは投影面積で、定められた間隔を置いて配置される。
【0026】
本発明においては、前記従来技術のように融け残った結晶粒の成長が薄膜面内における横方向成長に限定されるまでに長距離に亙って縦方向成長することはない。すなわち、本発明では、最大溶融時に、単一の結晶粒または結晶性クラスターを未溶融で残し、そこから結晶粒を成長させるので、従来技術のように、細孔中を垂直に結晶成長させることによって結晶粒を単一化しようとするものではない。したがって、高いアスペクト比の細孔は必要としない。
【0027】
特定領域1において膜厚を厚くすることは、未溶融で残る結晶粒または結晶性クラスターの位置を定めるために必要ではあるが、その後の再固化の過程においては、特に必要というわけではない。むしろ、膜厚差による成長の不連続や非均一さはないほうが好ましいといえる。本発明は、以下に説明するように、アスペクト比を一定範囲に小さくして、膜厚差のないときの均一かつ連続的な結晶成長の条件にできるだけ近づけようとするものである。
【0028】
さらに、図1(d)−(h)に示すように、溶融後の再固化過程において、結晶粒は、ごく初期の段階では、縦(膜厚)方向と横(膜面内)方向に3次元的に成長していくが、縦方向の成長が膜表面に到達した後は、横方向の2次元的な成長だけになる。縦方向の成長を早く終了して、横方向の2次元的成長だけで結晶粒を大きくしていくことが、結果的に均一な結晶粒を得る上では好ましいので、上記の膜厚の均一さに加えて、結晶粒の成長開始から成長端が膜表面に達するまでの時間は短いほうがよい。
【0029】
本発明においては、特定領域の寸法と膜厚差との比を、特定領域に未溶融で残留する単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが再固化の過程で結晶成長する際の、特定領域内における膜面内方向の成長速度と膜厚方向の成長速度との比より大きくする。これにより、特定領域に未溶融で残留する単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが再固化の過程で結晶成長する際、遅くとも膜面内方向の成長端が特定領域周縁に達するより前に、膜厚方向の成長端が特定領域の膜厚差を越える。それ以降の成長は、膜厚差を越えた成長端を成長の核として、均一な膜厚におけると同じもしくは近い条件で成長がおきると考えてよい。これにより、膜厚による成長の不均一さが抑えられる。また、横方向の2次元的成長の期間を長くすることができ、均一な結晶粒が得られる。
【0030】
好ましくは、特定領域の寸法と特定領域の膜厚との比を、特定領域に未溶融で残留する単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが再固化の過程で結晶成長する際の、特定領域内における膜面内方向の成長速度と膜厚方向の成長速度との比より大きくする。これにより、特定領域に未溶融で残留する単一の結晶粒もしくは単一の結晶性クラスターが再固化の過程で結晶成長する際、遅くとも膜面内方向の成長端が特定領域周縁に達するより前に、膜厚方向の成長端が膜表面に達する。これにより、横方向の2次元的成長の期間は上記条件よりさらに長くなるので、一層均一な結晶粒が得られる。
【0031】
逆に、上記の条件を超えて特定領域のアスペクト比を高くすると、結晶粒の膜厚方向の成長端が特定領域の膜厚差を越える以前に、膜面内方向の成長が進んで特定領域とその周囲の領域の境界に達してしまうので、2次元的な成長の期間が短く、結晶粒の均一さが損なわれる。
【0032】
本発明では、前記従来技術のように細孔の内部まで完全溶融させるのではなく、上記特定小領域1で近完全溶融となるように薄膜を溶融させる。さらに本発明では、前記従来技術のように細孔の底部に複数個の結晶粒を融け残すのではなく、近完全溶融となる領域1に単一の結晶粒が融け残るように薄膜を溶融させる。これにより本発明では、前記従来技術のように「grain filter(ing)」過程が不要となる。また、確実に単一の結晶粒を小領域に成長させることができる。
【0033】
以下、本発明の変形例を説明する。
【0034】
図1および図2においては、領域1と領域2の膜厚の差違が不連続であり、かつ領域1内の膜厚が均一である場合の実施形態を示したが、必ずしもこの限りではない。すなわち、図3および図4に例示するように両領域の境界において膜厚は連続であってもよいし、領域1内において膜厚が連続的に変化してもよい。
【0035】
図1〜図4においては、結晶粒6の形成位置を規定する領域1が、領域2に囲まれた単一のドメインである場合の実施形態を示した。本発明においては、当該形態に限らず、領域1を不連続且つ離散的に複数設けてもよい。
【0036】
図5に、図1の領域1を複数かつ等間隔に配した場合の実施形態を示した。この時、隣接する領域1の間の距離が十分小さければ〔図5(a)〕、それらから成長してきた結晶粒6は、両領域間の未再固化領域7において位置制御されていない結晶粒もしくは結晶性クラスター群8の爆発的な自発的核形成がランダムに生じる前に、それらの成長端を衝突させ結晶粒界9を形成させて、薄膜全域を位置制御された大きさのほぼ等しい結晶粒6によって構成することも可能である〔図5(h)〕。
【0037】
尚、図5には図1に対応する領域1を複数設けた場合の例を示したが、図2〜図4で説明したような形態の領域1を用いる場合でも同様の工程が可能である。
【0038】
図1〜図5に示した実施形態では、出発薄膜3がその面内方向に連続している範囲が、少なくとも領域1もしくは結晶粒6或いは複数の領域1の間隔より遥かに広い場合の例を示した。一方、両者を比較し得る大きさに設定することも可能である。例えば、図6に示すように出発薄膜3の面内方向の大きさが小さければ〔図6(a)〕、未再固化領域7において位置制御されていない結晶粒もしくは結晶性クラスター群8の爆発的な自発的核形成がランダムに生じる前に、結晶粒6の成長が出発薄膜3全域に及び、結晶粒6のみからなる再固化薄膜を得ることも可能である〔図6(h)〕。図6に例示した溶融再固化は、図1の領域1を用いる場合の例であるが、図2〜図4に示したような領域1を用いる場合にも適用可能である。また、図6に示した出発薄膜3は、それら図中では省略されている基体上もしくは基体中に離散的に複数設けられていてもよい。
【0039】
図1〜図6に示した実施形態では、出発薄膜3において互いに膜厚の異なる二種の領域1及び領域2が共存する場合を挙げたが、膜厚の異なる領域は三種以上共存してもよい。あるいは、図1〜図4の領域1の形態が共存してもよい。
【0040】
次に、以上のような溶融再固化工程によって形成された結晶性薄膜を用いた、本発明の素子の実施形態として、図2の形態の領域1を用いる例を図7〜図10に示す。図7〜図10も、図1〜図6までと同様、薄膜はその表面もしくは界面に鉛直な方向の部分断面によって表されている。尚、図7〜図10において、図1〜図4に示したランダムな自発的核形成の結果生じる結晶粒もしくは結晶性クラスター群8は省略し、位置制御された結晶粒6のみを記した。また、必要に応じて薄膜を支持する基体100を付記している。
【0041】
本発明の結晶性薄膜では、結晶粒6の位置が領域1を設ける位置によって決定され、そのサイズもまた既知である。従って、結晶粒6を活性領域とする素子を形成するに際して、結晶粒6を用いる素子の活性領域を結晶粒6の位置と容易に関係させることができる。例えば、図7に示すように、素子の活性領域10を結晶粒6の内部に限定することが可能である。この場合、素子の活性領域10内に結晶粒界は含まれないために、素子特性が向上するばかりでなく、複数の素子間のバラツキを抑制することができる。
【0042】
また、図5に示したような複数の領域1を設ける工程により得られた結晶性薄膜において、図8に示すように所望の数の結晶粒6を含む領域に素子の活性領域10を設けることも可能である。この場合も、複数の領域1の位置が既知であるために、素子の活性領域10に含まれる結晶粒6の数、もしくは結晶粒界9の密度を制御することができる。従って、複数の素子間のバラツキを抑制することが可能である。
【0043】
尚、図7及び図8に示した素子の活性領域10は、しかるべき入出力端子を結晶粒6に対して設けることにより形成される。素子の種類に応じて、入出力端子は結晶粒6からなる薄膜の上面、下面、端面などいずれの場所に設けてもよい。また、入出力端子は素子の活性領域に入出力される信号の形態に応じて、結晶粒6に接していてもよいし、離れていてもよい。
【0044】
本発明の素子の典型的な例の一つとして、MOS型薄膜トランジスタ(TFT)を半導体材料からなる結晶性薄膜に設けた例を図9及び図10に示す。図中、11はゲート絶縁膜、12はゲート電極、13はソース電極、14はドレイン電極、100は基体である。
【0045】
図9に示す素子は、図6に示した工程によって基体100上に孤立して設けた単一の結晶粒6を用いるMOS型TFTである。結晶粒6の表面には、ゲート絶縁膜11を介したゲート電極12、ソース電極13、及びドレイン電極14が設けてあり、各電極下の結晶粒6の領域には伝導型の制御によりそれぞれチャネル領域、ソース領域、及びドレイン領域が形成されている。本素子の場合、素子全体が単一の結晶粒6の内部に形成されており結晶粒界を含まないために、高い素子性能が期待できる。また、図12に示した素子を同一の基体100上に複数形成した場合、それら複数の素子間で性能のバラツキを小さくすることができる。或いは、図10の例に示す通り、図1〜図4に示したような工程で基体100に設けた結晶性薄膜において、領域1を中心として成長した単一の結晶粒6の内部にはゲート領域のみを設け、ソース領域またはドレイン領域は結晶粒6に隣接して成長した位置制御されていない結晶粒もしくは結晶性クラスター群8を含む領域に形成してもよい。このようなMOS型TFTでは素子特性が主として活性領域たるチャネル領域における電荷の移動に支配されるので、図10に示した素子の場合も図9の素子と同様に高い性能と複数素子間の小さい特性ばらつきが得られる。
【0046】
尚、図9及び10では、素子の活性領域が全く結晶粒界を含まない場合を例示したが、図5に示したような工程によって得られる、位置制御された結晶粒界9を有する結晶性薄膜では、図8のように素子活性領域に結晶粒界9を含めることも可能である。この場合、素子特性の絶対値こそは結晶粒界を含まない素子に劣るものの、活性領域に含まれる結晶粒界の密度を制御することができるので、複数素子間のバラツキは小さくすることが可能である。
【0047】
次に、上記に例示したような本発明の素子を用いて構成した、本発明の回路の一例を図11に示す。図中、15は第一のTFTのゲート配線電極、16は第二のTFTのゲート電極、17は絶縁層である。本回路は図9に示したような、領域1を中心として成長した単一の結晶粒6からなる同一基体100上の二つのMOS型TFTをその一部として含んでいる。ゲート電極12により制御される第一のTFTのドレイン電極14は配線を介して第二のTFTのゲート電極16に接続され、それら電極や配線は絶縁層17によって互いに絶縁されている。即ちゲート電極16により制御される第二のTFTは、第一のTFTのドレイン電圧によって制御される。このような回路では、第一及び第二のTFTの素子特性が精密に制御されていることが肝要であり、活性領域に結晶粒界を含まない素子からなる本回路はその条件を満たすことができる。
【0048】
最後に、上記した本発明の回路を含む、本発明の装置の一例として画像表示装置の一部を図12に示す。図中、18は電極、19は発光層もしくは光透過度可変層、20は上部電極である。本装置は図11に示したような、連結された二つのTFTをその一部として含んでいる。第二のTFTのドレイン電極は素子上部の電極18に接続される。電極18上には発光層もしくは光透過度可変層19が設けられ、さらにその上には上部電極20が設けられている。即ち、電極18及び上部電極20によって発光層もしくは光透過度可変層19に印加される電圧もしくは注入される電流は、第一のTFTのドレイン電圧によって制御される第二のTFTのドレイン電圧もしくは電流によって決定される。そして、発光層もしくは光透過度可変層19の発光強度もしくは光透過度はそこに印加される電圧もしくは注入される電流によって制御される。本例の画像表示装置は、このような素子構成を一画素の表示単位とし、これを格子状に複数個配することで構成されている。画像表示装置として均一な光強度及び時間応答を得るためには、各画素間の特性のバラツキを抑制することが肝要であり、活性領域に結晶粒界を含まない素子からなる回路を用いる本装置はその条件を満たすことができる。
【0049】
【実施例】
[実施例1]
本発明第一の実施例として、図1に示した工程によって形成される結晶性シリコン薄膜の第一の例を記す。
【0050】
はじめに、酸化シリコンなどを含む非晶質表面を有する基体上に、気相堆積法により膜厚55nmの非晶質シリコン薄膜を設けた。次に、この非晶質シリコン薄膜面内の直径約1μmの小領域を除いて気相エッチング法で非晶質シリコン薄膜を表面から5nm除去した。これにより、上記直径約1μmの小領域では膜厚が55nmであり、それ以外の領域では50nmとなった。
【0051】
次に、この出発薄膜に対して、KrFエキシマレーザー光を約240mJ/cmのエネルギー密度で30nsec間照射し、出発薄膜を溶融再固化させ、結晶性薄膜を得た。
【0052】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、直径約1μmの小領域を中心として、直径約2μmに達する単一の結晶粒が成長していた。その周囲は平均直径約50nmの様々なサイズの微結晶粒で埋め尽くされており、且つ、それらの位置は全くランダムであった。
【0053】
本実施例の出発薄膜において、直径約1μmの小領域では、それ以外の領域より膜厚が5nm厚い。それ以外の領域では加熱溶融のために投与したエキシマレーザーのエネルギーによって完全溶融したのに対して、直径約1μmの小領域では最大溶融時にひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターが溶け残る近完全溶融状態となっていたことが推測される。本実施例においては、膜厚の厚い直径約1μmの小領域が、図1における「特定領域1」、すなわち、所定の位置に、所定の寸法または面積で、所定の間隔を置いて形成された周囲より膜厚の大きい領域となっている。実際、50nmおよび55nmの均一な膜厚の薄膜に関して溶融再固化過程を実時間観察したところ、上記溶融再固化条件において前者は完全溶融したのに対して、後者では近完全溶融であることが確認された。
【0054】
即ち、本実施例では、膜厚の厚い直径約1μmの小領域に溶け残ったひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターを種結晶としてこれが直径約2μmに成長した結果、空間的位置が制御された結晶粒で構成された結晶性薄膜が得られたのである。
【0055】
[実施例2]
本発明第二の実施例として、図2の工程によって形成される結晶性シリコン薄膜の例を記す。
【0056】
はじめに、酸化シリコンなどを含む非晶質表面を有する基体の表面の直径約0.5μmの小領域を気相エッチング法で10nmエッチングし、ここに円筒形状のクレーターを設けた。次に、この表面上に気相堆積法により膜厚100nmの非晶質シリコン薄膜を設けた。この非晶質シリコン薄膜の断面を詳細に観察したところ、上記直径約0.5μmの小領域以外の領域では膜厚が100nmであったのに対して、直径約0.5μmの小領域中心では105nmの膜厚であった。
【0057】
次に、この出発薄膜に対して、XeClエキシマレーザー光を約310mJ/cmのエネルギー密度で40nsec間照射し、出発薄膜を溶融再固化させ、結晶性薄膜を得た。
【0058】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、直径約0.5μmの小領域を中心として、直径約3μmに達する単一の結晶粒が成長していた。その周囲は平均直径約50nmの様々なサイズの微結晶粒で埋め尽くされており、且つ、それらの位置は全くランダムであった。
【0059】
本実施例の出発薄膜において、直径約0.5μmの小領域では、それ以外の領域より膜厚が5nm厚い。それ以外の領域では加熱溶融のために投与したエキシマレーザーのエネルギーによって完全溶融したのに対して、直径約0.5μmの小領域では最大溶融時にひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターが溶け残る近完全溶融状態となっていたことが推測される。膜厚の厚い直径約0.5μmの小領域が、図2における「特定領域1」、すなわち、所定の位置に、所定の大きさで、所定の間隔を置いて形成された周囲より膜厚の大きい領域となっている。実際、100nmおよび105nmの均一な膜厚の薄膜に関して溶融再固化過程を実時間観察したところ、上記溶融再固化条件において前者は完全溶融したのに対して、後者では近完全溶融であることが確認された。
【0060】
即ち、本実施例では、膜厚の厚い直径約0.5μmの小領域に溶け残ったひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターを種結晶としてこれが直径約3μmに成長した結果、空間的位置が制御された結晶粒で構成された結晶性薄膜が得られたのである。
【0061】
[実施例3]
本発明第三の実施例として、図3の工程によって形成される結晶性シリコン薄膜の例を記す。
【0062】
はじめに、酸化シリコンなどを含む非晶質表面を有する基体上に、気相堆積法により膜厚55nmの非晶質シリコン薄膜を設けた。次に、この非晶質シリコン薄膜面内の直径約1.5μmの小領域の表面にエッチング耐性を有するマスク材を設け、液相エッチング法で非晶質シリコン薄膜を表面から5nm除去した。次いでエッチング耐性を有するマスク材を除去した。この非晶質シリコン薄膜の断面を詳細に観察したところ、上記直径約1.5μmの小領域以外の領域では膜厚が50nmであったのに対して、直径約1.5μmの小領域中心部の直径約0.7μmの領域では55nmの膜厚であり、その外周から外側へ向かって膜厚はなだらかに減少する円錐台形状を有していた。
【0063】
次に、この出発薄膜に対して、KrFエキシマレーザー光を約240mJ/cmのエネルギー密度で30nsec間照射し、出発薄膜を溶融再固化させ、結晶性薄膜を得た。
【0064】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、直径約1μmの小領域を中心として、直径約2μmに達する単一の結晶粒が成長していた。その周囲は平均直径約50nmの様々なサイズの微結晶粒で埋め尽くされており、且つ、それらの位置は全くランダムであった。
【0065】
本実施例の出発薄膜において、直径約1.5μmの小領域では、それ以外の領域より膜厚が最大で5nm厚い。それ以外の領域では加熱溶融のために投与したエキシマレーザーのエネルギーによって完全溶融したのに対して、直径約1.5μmの小領域では最大溶融時にひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターが溶け残る近完全溶融状態となっていたことが推測される。本実施例においては、この膜厚の厚い直径約1.5μmの小領域が、図3における「特定領域1」、すなわち、所定の位置に、所定の大きさで、所定の間隔を置いて形成された周囲より膜厚の大きい領域となっている。実際、50nmおよび55nmの均一な膜厚の薄膜に関して溶融再固化過程を実時間観察したところ、上記溶融再固化条件において前者は完全溶融したのに対して、後者では近完全溶融であることが確認された。
【0066】
即ち、本実施例では、膜厚の厚い直径約1.5μmの小領域に溶け残ったひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターを種結晶としてこれが直径約2μmに成長した結果、空間的位置が制御された結晶粒で構成された結晶性薄膜が得られたのである。
【0067】
[実施例4]
本発明第四の実施例として、図4の工程によって形成される結晶性シリコン薄膜の例を記す。
【0068】
はじめに、酸化シリコンなどを含む非晶質からなる基体の表面の直径約1μmの小領域を除いてエッチング耐性を有するマスク材を設け、液相エッチング法で基体表面を8nmエッチングし、ここに逆ドーム形状のクレーターを設けた。次に、この表面上に気相堆積法により膜厚100nmの非晶質シリコン薄膜を設けた。この非晶質シリコン薄膜の断面を詳細に観察したところ、上記直径約1μmの小領域以外の領域では膜厚が100nmであったのに対して、直径約1μmの小領域中心では105nmの膜厚であった。
【0069】
次に、この出発薄膜に対して、XeClエキシマレーザー光を約310mJ/cmのエネルギー密度で40nsec間照射し、出発薄膜を溶融再固化させ、結晶性薄膜を得た。
【0070】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、直径約1μmの小領域を中心として、直径約3μmに達する単一の結晶粒が成長していた。その周囲は平均直径約50nmの様々なサイズの微結晶粒で埋め尽くされており、且つ、それらの位置は全くランダムであった。
【0071】
本実施例の出発薄膜において、直径約1μmの小領域では、それ以外の領域より膜厚が最大で5nm厚い。それ以外の領域では加熱溶融のために投与したエキシマレーザーのエネルギーによって完全溶融したのに対して、直径約1μmの小領域では最大溶融時にひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターが溶け残る近完全溶融状態となっていたことが推測される。すなわち膜厚の厚い直径約1μmの小領域が図4における「特定領域1」をなしている。実際、100nmおよび105nmの均一な膜厚の薄膜に関して溶融再固化過程を実時間観察したところ、上記溶融再固化条件において前者は完全溶融したのに対して、後者では近完全溶融であることが確認された。
【0072】
即ち、本実施例では、膜厚の厚い直径約1μmの小領域に溶け残ったひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターを種結晶としてこれが直径約3μmに成長した結果、空間的位置が制御された結晶粒で構成された結晶性薄膜が得られたのである。
【0073】
[実施例5]
本発明第五の実施例として、図1の工程によって形成される結晶性シリコンゲルマニウム薄膜の例を記す。
【0074】
はじめに、シリコン無機化合物からなる非晶質表面を有する基体上に、気相堆積法により膜厚120nmの化学量論比の元素組成を有する非晶質シリコンゲルマニウム薄膜を設けた。次に、この非晶質シリコンゲルマニウム薄膜面内の直径約2μmの小領域を残して、気相エッチング法により非晶質シリコンゲルマニウム薄膜を表面から10nm除去し、これを出発薄膜とした。
【0075】
次に、上記出発薄膜に対して、XeClエキシマレーザー光を約280mJ/cmのエネルギー密度で40nsec間照射し、出発薄膜を溶融再固化させ、結晶性薄膜を得た。
【0076】
この溶融再固化薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、直径約2μmの小領域を中心として直径約4μmに達する単一の結晶粒が成長していた。その周囲は平均直径約100nmの様々なサイズの微結晶粒で埋め尽くされており、且つ、それらの位置は全くランダムであった。
【0077】
本実施例の出発薄膜において、直径約2μmの小領域では、それ以外の領域より膜厚が最大で10nm厚い。それ以外の領域では加熱溶融のために投与したエキシマレーザーのエネルギーによって完全溶融したのに対して、直径約2μmの小領域では最大溶融時にひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターが溶け残る近完全溶融状態となっていたことが推測される。すなわち膜厚の厚い直径約1μmの小領域が図4における「特定領域1」をなしている。実際、100nmおよび105nmの均一な膜厚の薄膜に関して溶融再固化過程を実時間観察したところ、上記溶融再固化条件において前者は完全溶融したのに対して、後者では近完全溶融であることが確認された。
【0078】
即ち、本実施例では、膜厚の厚い直径約2μmの小領域に溶け残ったひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターを種結晶としてこれが直径約4μmに成長した結果、空間的位置が制御された結晶粒で構成された結晶性薄膜が得られたのである。
【0079】
[実施例6]
本発明第六の実施例として、図2の工程によって形成される結晶性ゲルマニウム薄膜の例を記す。
【0080】
はじめに、[実施例2]と同じ方法で直径約1μm、深さ10nmの円筒形状のクレーターをその表面に設けた基体上に、気相堆積法により膜厚200nmの非晶質ゲルマニウム薄膜を設けた。この非晶質ゲルマニウム薄膜の断面を詳細に観察したところ、上記直径約1μmの小領域以外の領域では膜厚が200nmであったのに対して、直径約1μmの小領域中心では205nmの膜厚であった。
【0081】
次に、この出発薄膜に対して、XeClエキシマレーザー光を約330mJ/cmのエネルギー密度で40nsec間照射し、出発薄膜を溶融再固化させ、結晶性薄膜を得た。
【0082】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、直径約1μmの小領域を中心として、直径約5μmに達する単一の結晶粒が成長していた。その周囲は平均直径約80nmの様々なサイズの微結晶粒で埋め尽くされており、且つ、それらの位置は全くランダムであった。
【0083】
本実施例の出発薄膜において、直径約1μmの小領域では、それ以外の領域より膜厚が5nm厚い。それ以外の領域では加熱溶融のために投与したエキシマレーザーのエネルギーによって完全溶融したのに対して、直径約1μmの小領域では最大溶融時にひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターが溶け残る近完全溶融状態となっていたことが推測される。すなわち膜厚の厚い直径約1μmの小領域が図2における「特定領域1」をなしている。実際、200nmおよび205nmの均一な膜厚の薄膜に関して溶融再固化過程を実時間観察したところ、上記溶融再固化条件において前者は完全溶融したのに対して、後者では近完全溶融であることが確認された。
【0084】
即ち、本実施例では、膜厚の厚い直径約1μmの小領域に溶け残ったひとつの結晶粒もしくは結晶性クラスターを種結晶としてこれが直径約5μmに成長した結果、空間的位置が制御された結晶粒で構成された結晶性薄膜が得られたのである。
【0085】
[実施例7]
本発明第七の実施例として、図5の工程によって形成される結晶性シリコン薄膜の例を記す。
【0086】
実施例1に記した結晶性シリコン薄膜の例において、図1の「特定領域1」をなす直径約1μmの小領域を2μm間隔の正方格子点に周期的に配し、他は同様にして出発薄膜の溶融再固化を行い、結晶性薄膜を得た。
【0087】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、2μm間隔の正方格子の各格子点にはそれぞれ平均直径約2μmの単一の結晶粒が成長しており、それらは互いに成長端を接して結晶粒界をなしていた。その結果、薄膜はそれら位置制御された結晶粒群で埋め尽くされており、ランダムな微結晶粒領域は観察されなかった。
【0088】
本実施例における、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御の過程は実施例1と同様である。また、本実施例のような複数の「特定領域1」を周期的に設ける溶融再固化は、実施例2〜6の結晶性薄膜にも適用可能である。
【0089】
[実施例8]
本発明第八の実施例として、図6の工程によって形成される結晶性シリコン薄膜の例を記す。
【0090】
実施例1に記した結晶性シリコン薄膜の例において、「特定領域1」をなす直径約1μmの小領域を中心とした4μm角の領域のみを残して、出発薄膜を除去し、他は同様にして出発薄膜の溶融再固化を行い、結晶性薄膜を得た。
【0091】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、4μm角の薄膜全域が単一の結晶粒によって占められており、結晶粒界は存在しなかった。
【0092】
本実施例における、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御の過程は実施例1と同様である。また、本実施例のような単一の結晶粒からなる薄膜を形成する溶融再固化は、実施例2〜7の結晶性薄膜にも適用可能である。
【0093】
[実施例9]
本発明第九の実施例として、図7および図9に示した構造を有するMOS型TFTの例を記す。
【0094】
はじめに、実施例8に記した工程により、表面にシリコン窒化膜及び酸化膜を積層したガラス基板上に、4μm角の単一シリコン結晶粒を設けた。次に、通常のシリコン薄膜トランジスタの低温形成工程に従って、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜とゲート電極膜を堆積し、単一結晶粒中央部の幅1μmの領域を除いてゲート電極膜層を除去した。次に残されたゲート電極膜をマスクとするセルフアライン方式で、それ以外の領域にボロンをドープし、ゲート領域、ソース領域及びドレイン領域を形成した。これにより、ゲート領域は全域単一結晶粒の内部に含まれることとなった。その後、絶縁膜からなるパッシベーション層を堆積し、各領域上のパッシベーション層に開口部を設けた。最後に、アルミ配線層を堆積し、これをパターニングすることによってゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を形成し、MOS型TFTを得た。
【0095】
得られたMOS型TFTの動作特性を計測したところ、本発明における「領域1」を設けないランダムな多結晶薄膜に同一工程、同一形状で形成した素子に比べて、移動度の平均値で2倍以上高速に動作することが確認された。また、素子特性のバラツキの比較では、移動度は約半分、閾値電圧に至っては約1/4に低減した。
【0096】
本実施例における、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御の過程は実施例8と同様であり、本例は、該結晶性薄膜の単一結晶粒内に活性領域を形成して素子を構成した例である。
【0097】
[実施例10]
本発明第十の実施例として、図8に示した素子活性領域と結晶粒の関係を有するMOS型TFTの例を記す。
【0098】
はじめに実施例7に記した結晶性シリコン薄膜を形成した。これにより結晶性シリコン薄膜の2μm間隔の正方格子の各格子点にはそれぞれ平均直径約2μmの単一の結晶粒が成長しており、それらは互いに成長端を接して結晶粒界をなしている。その結果、それら位置制御された結晶粒群で埋め尽くされた結晶性シリコン薄膜を得た。
【0099】
次に、上記結晶性薄膜上に通常のシリコンTFTの低温形成工程に従って、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜とゲート電極膜を堆積し、長手方向約6μmの単一結晶粒中央部の「特定領域1」を含む幅2μmの領域を除いてゲート電極膜層を除去した。次に残されたゲート電極膜をマスクとするセルフアライン方式で、それ以外の領域にボロンをドープし、ゲート領域、ソース領域及びドレイン領域を形成した。これにより、ゲート領域には平均3個の単一結晶粒に跨ることとなった。その後、絶縁膜からなるパッシベーション層を堆積し、各領域上のパッシベーション層に開口部を設けた。但し、ソース領域及びドレイン領域上の開口部は、それぞれ矩形の結晶性薄膜の長手方向端から約3μmまでの開口とした。最後に、アルミ配線層を堆積し、これをパターニングすることによってゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を形成し、MOS型TFTを得た。
【0100】
得られたMOS型TFTの動作特性を計測したところ、実施例9の素子特性には及ばないものの、本発明における「特定領域1」を設けないランダムな多結晶薄膜に同一工程、同一形状で形成した素子に比べて、移動度の平均値で1.5倍以上高速に動作することが確認された。また、多数の素子を調べた結果、移動度のバラツキは約60%、閾値電圧のバラツキは約70%に低減した。素子の活性領域が複数の単一結晶粒に跨り、結晶粒界を含むにも関わらず、本実施例のMOS型TFTの動作特性が実施例9に示した素子に近い向上を示した事実は、素子特性を決定する活性領域たるチャネル領域に含まれる結晶粒界密度が一様であることを支持している。
【0101】
尚、本実施例における、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御の過程は実施例7と同一である。
【0102】
[実施例11]
本発明第十一の実施例として、図10に示した構造を有するMOS型TFTの例を記す。
【0103】
はじめに実施例2に記した工程で結晶性薄膜を得た。「領域1」を中心として約3μmの単一結晶粒が成長し、それ以外の領域は平均直径約50nmの様々なサイズの微結晶粒であるような結晶性薄膜を得た。
【0104】
次に、上記結晶性薄膜上に通常のシリコンTFTの低温形成工程に従って、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜とゲート電極膜を堆積し、長手方向約3μmの単一結晶粒中央部の「特定領域1」を含む幅1μmの領域を除いてゲート電極膜層を除去した。次に残されたゲート電極膜をマスクとするセルフアライン方式で、それ以外の領域にボロンをドープし、ゲート領域、ソース領域及びドレイン領域を形成した。これにより、ゲート領域は全域直径約3μmの単一結晶粒の内部に含まれ、一方ソース領域及びドレイン領域は長手方向約3μmの単一結晶粒の一部と平均直径約50nmの微結晶粒領域に跨ることとなった。その後、絶縁膜からなるパッシベーション層を堆積し、各領域上のパッシベーション層に開口部を設けた。但し、ソース領域及びドレイン領域上の開口部は、それぞれ矩形の結晶性薄膜の長手方向端から約3μmまでの開口とした。最後に、アルミ配線層を堆積し、これをパターニングすることによってゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を形成し、MOS型TFTを得た。これにより、ソース電極及びドレイン電極は専ら平均直径約50nmの微結晶粒領域に接続されることとなった。
【0105】
得られたMOS型TFTの動作特性を計測したところ、本発明における「特定領域1」を設けないランダムな多結晶薄膜に同一工程、同一形状で形成した素子に比べて、移動度の平均値で2倍以上高速に動作することが確認された。また、多数の素子を調べた結果、移動度のバラツキは約半分、閾値電圧のバラツキに至っては約1/4に低減した。素子全域が単一結晶粒に含まれていないのに、本実施例のMOS型TFTの動作特性が実施例9に示した素子に匹敵する向上を示した事実は、素子特性を決定する活性領域たるチャネル領域が単一結晶粒の内部に形成されていることを支持している。
【0106】
尚、本実施例における、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御の過程は実施例2と同様である。
【0107】
[実施例12]
本発明第十二の実施例として、図11に示した構造を有するTFT集積回路の例を記す。
【0108】
はじめに実施例9に記したMOS型TFTを、同一基板の同一平面上に2素子形成し、各電極を次のように接続した。即ち、両素子は中心間距離を6μmとして隣接させ、第一のTFTのドレイン電極は第二のTFTのゲート電極と接続した。また、第二のTFTのゲート電極はコンデンサ素子を介して自らのソース電極に接続した。これにより、TFT2素子及びコンデンサ素子からなる集積回路が構成された。本回路では、第二のTFTのソースに供給された電源電流がそのドレインから出力される量がコンデンサ素子の蓄積容量で制御され、一方、コンデンサ素子の蓄積容量及び蓄積のスイッチングは第一のTFTのゲート電圧によって制御される。本回路は、例えばアクティブマトリクス型表示装置において各画素のスイッチングと電流量制御を担う要素回路などに用いることができる。
【0109】
本実施例にて形成した回路の基本動作特性を計測し、本発明における「特定領域1」を設けないランダムな多結晶薄膜に同一工程、同一形状で形成した回路の特性と比較した。その結果、動作可能なスイッチング周波数に関して3倍以上高速に動作すること、そして第二のTFTのドレイン電極から出力される電流量の制御可能な範囲が2倍ほど拡大することが確認された。また、複数形成した同一回路の特性バラツキの比較では、それぞれ約半分以下に低減した。これは、各回路における第一のTFT間のバラツキ、第二のTFT間のバラツキのみならず、一回路における第一のTFTと第二のTFTの相対特性が比較対照に対してより均一であることを意味する。
【0110】
尚、本実施例における、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御の過程は実施例8と同様である。
【0111】
[実施例13]
本発明第十三の実施例として、図12に示した構造を有するEL画像表示装置の例を記す。
【0112】
はじめに、実施例12に記したTFT集積回路を要素回路として、ガラス基板上100μm間隔の正方格子点の各点に形成し、それら正方格子の単位胞を画像表示装置の画素とすべく、要素回路に接続する配線を次のように設けた。先ず、正方格子の一軸方向を貫く走査線を一格子毎に設け、各要素回路における第一のTFTのゲート電極をこれに接続した。一方、走査線と直交する方向には一格子毎に信号線及び電源線を配線し、それぞれを各要素回路における第一のTFTのソース電極、及び第二のTFTのソース電極に接続した。次に、これら要素回路の集積回路上に絶縁層を積層し、これに各要素回路における第二のTFTのドレイン電極が露出する開口部を設けた。次いで、金属電極を積層し、この金属電極を画素毎に絶縁分離した。最後にエレクトロルミネッセンス(EL)発光層と上部透明電極層を積層した。これにより、実施例24に記したTFT集積回路により各画素のスイッチングと注入電流量制御を行う、アクティブマトリクス型多階調EL画像表示装置が構成された。
【0113】
即ち、本画像表示装置では、走査線の電圧に応じた第一のTFTの起動によって信号線に与える電流値に対応した電荷容量が電源線からコンデンサ素子に蓄積され、この蓄積容量に応じた第二のTFTのゲート電圧に制御された電流が電源線からEL発光層に注入される。
【0114】
本実施例にて形成した画像表示装置の基本動作特性を計測し、本発明における「特定領域1」を設けないランダムな多結晶薄膜に同一工程、同一形状で形成した画像表示装置の特性と比較した。その結果、静的特性として最大輝度及び最大コントラストが2倍程度向上し、階調再現域は約1.5倍拡大していること、そして画素欠損率及び明度ムラがそれぞれ1/3及び1/2まで低減していることが確認された。また、動的特性としては、最大フレームレートが2倍ほど向上した。これら動作特性の向上は全て、実施例24にも記した要素回路特性の向上とバラツキの低減に由来し、さらにそれらは各要素回路を構成する薄膜トランジスタ特性の向上とバラツキの低減に起因し、従って、それら薄膜トランジスタの活性領域が単一の結晶粒内に形成されていることの効果である。
【0115】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明は、溶融再固化によって形成する結晶性薄膜において、出発薄膜に、互いに膜厚の異なる領域を連続して共存させたことにより、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御を容易に実現したものである。
【0116】
即ち、本発明において、出発薄膜の溶融再固化の際に、互いに膜厚の異なる領域を連続して共存させたことにより、薄膜の最大溶融時において、膜厚の薄い領域では完全溶融、膜厚の厚い領域に不完全溶融もしくは近完全溶融状態を実現し、よって膜厚の厚い領域に溶け残った結晶粒もしくは結晶性クラスターを種結晶として再固化させることによって結晶粒の位置を制御することが可能となった。
【0117】
本発明の結晶性薄膜は、これを構成する結晶粒の制御された位置と素子の特定の領域を空間的に関係づけるか、或いは、位置制御された単一結晶粒の内部に素子の特定の領域を形成することにより、従来のランダムな結晶粒のみからなる結晶性薄膜を用いる場合に比べて、当該素子の動作特性を著しく向上させ、そのバラツキを低減することができる。
【0118】
さらに、上記本発明の素子を用いて構成した回路は、従来の、位置制御されないランダムな結晶粒のみからなる結晶性薄膜を用いた素子からなる回路に比べて、その動作特性を著しく向上させ、そのバラツキを低減することができる。
【0119】
さらにまた、本発明の回路を含む本発明の装置においては、当該回路の動作特性の向上及びバラツキの低減によって、動作特性を著しく向上することができる。然して、本発明の装置は、位置制御されないランダムな結晶粒のみからなる結晶性薄膜を用いる場合では実現できない、高性能な装置を提供する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の第一の基本的な実施形態を説明するための製造工程図である。
【図2】本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の第二の基本的な実施形態を説明するための製造工程図である。
【図3】本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の第三の基本的な実施形態を説明するための製造工程図である。
【図4】本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の第四の基本的な実施形態を説明するための製造工程図である。
【図5】本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【図6】本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【図7】本発明の素子の第一の基本的な実施形態を説明する図である。
【図8】本発明の素子の第一の基本的な実施形態を説明する図である。
【図9】本発明の素子の他の実施形態を説明する図である。
【図10】本発明の素子の他の実施形態を説明する図である。
【図11】本発明の回路の一実施形態を説明する図である。
【図12】本発明の装置の一実施形態を説明する図である。
【図13】従来の結晶性薄膜及びその製造方法を説明するための製造工程図である。
【符号の説明】
1 膜厚の厚い特定領域
2 膜厚の薄い周囲の領域
3 出発薄膜
4 溶融再固化のための投与エネルギー
5 結晶性クラスター
6 結晶粒
7 未再固化領域
8 ランダムな結晶性クラスター群
9 結晶粒界
10 素子活性領域
11 ゲート絶縁膜
12 ゲート電極
13 ソース電極
14 ドレイン電極
15 第一のTFTのゲート配線電極
16 第二のTFTのゲート電極
17 絶縁層
18 電極
19 発光層もしくは光透過度可変層
20 上部電極
100 基体

Claims (1)

  1. 互いに膜厚の異なる領域が連続して共存する出発薄膜を溶融再固化させることを特徴とする結晶性薄膜の製造方法。
JP2002358163A 2002-11-27 2002-12-10 結晶性薄膜の製造方法 Withdrawn JP2004193264A (ja)

Priority Applications (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002358163A JP2004193264A (ja) 2002-12-10 2002-12-10 結晶性薄膜の製造方法
AU2003283833A AU2003283833A1 (en) 2002-11-27 2003-11-26 Producing method for crystalline thin film
US10/533,091 US7473621B2 (en) 2002-11-27 2003-11-26 Producing method for crystalline thin film
PCT/JP2003/015072 WO2004049412A2 (en) 2002-11-27 2003-11-26 Producing method for crystalline thin film
TW092133410A TW200421450A (en) 2002-11-27 2003-11-27 Producing method for crystalline thin film
US12/325,689 US20090166626A1 (en) 2002-11-27 2008-12-01 Producing method for crystalline thin film

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002358163A JP2004193264A (ja) 2002-12-10 2002-12-10 結晶性薄膜の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004193264A true JP2004193264A (ja) 2004-07-08

Family

ID=32757964

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002358163A Withdrawn JP2004193264A (ja) 2002-11-27 2002-12-10 結晶性薄膜の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004193264A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016018948A (ja) * 2014-07-10 2016-02-01 セイコーエプソン株式会社 導電パターン形成方法、半導体装置、及び電子機器

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016018948A (ja) * 2014-07-10 2016-02-01 セイコーエプソン株式会社 導電パターン形成方法、半導体装置、及び電子機器

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2004311935A (ja) 単結晶シリコン膜の製造方法
CN103681776B (zh) 低温多晶硅薄膜及其制备方法、薄膜晶体管和显示装置
JP2004087535A (ja) 結晶質半導体材料の製造方法および半導体装置の製造方法
JP2008521247A (ja) 結晶方位制御ポリシリコン膜を生成するためのシステム及び方法
KR100541486B1 (ko) 결정성 박막 및 그 제조방법, 결정박막을 사용하는 소자, 소자를 사용하는 회로 및 소자 또는 회로를 사용하는 디바이스
JP2007027737A (ja) 多結晶シリコン薄膜の製造方法、これに使われるマスクパターン及びこれを用いる平板表示装置の製造方法
CN101038867B (zh) 结晶半导体薄膜的方法
JP2006295117A (ja) 多結晶シリコン薄膜の製造方法、及びこれを有する薄膜トランジスタの製造方法
US7473621B2 (en) Producing method for crystalline thin film
US20060177361A1 (en) Crystallized film and process for production thereof
EP1860699A1 (en) Display having thin fim transistors with channel region of varying crystal state
JPH10173196A (ja) 半導体装置およびその製造方法
JP2004193264A (ja) 結晶性薄膜の製造方法
TWI235420B (en) Process for producing crystalline thin film
TWI294139B (en) Method for forming polycrystalline silicon film of polycrystalline silicon tft
JP4328519B2 (ja) 結晶性薄膜の製造方法
JP2000183357A (ja) 薄膜トランジスタ及びその製造方法
JP2011216665A (ja) 結晶性半導体膜の形成方法、および、半導体デバイスの製造方法
JP4328518B2 (ja) 結晶性薄膜の製造方法
KR100860007B1 (ko) 박막트랜지스터, 박막트랜지스터의 제조방법, 이를 구비한유기전계발광표시장치 및 그의 제조방법
JP2004186198A (ja) 結晶性薄膜の製造方法
JP2005123262A (ja) 半導体デバイスおよびその製造方法
JP2004193263A (ja) 結晶性薄膜の製造方法
JP4481562B2 (ja) 結晶性薄膜の製造方法
JP2005101311A (ja) 半導体デバイスおよびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051128

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20080825