JP2004186198A - 結晶性薄膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の溶融再固化による結晶性薄膜の製造方法では、結晶粒位置を正確に制御することが困難であるという課題があった。
【解決手段】出発薄膜に設けた複数の特定領域から結晶粒を成長させる結晶性薄膜の製造方法であって、Tcをバルク結晶の融点、△Tcを溶融相からの自発的な結晶核形成が生じる過冷却度とそれぞれ定義したときに、該薄膜の再固化の際、未固化領域の過冷却度が△Tcに達する時刻において、所定間隔以内にある2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−△Tc以上となる間隔で特定領域を設ける。
【選択図】 図1
【解決手段】出発薄膜に設けた複数の特定領域から結晶粒を成長させる結晶性薄膜の製造方法であって、Tcをバルク結晶の融点、△Tcを溶融相からの自発的な結晶核形成が生じる過冷却度とそれぞれ定義したときに、該薄膜の再固化の際、未固化領域の過冷却度が△Tcに達する時刻において、所定間隔以内にある2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−△Tc以上となる間隔で特定領域を設ける。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットパネルディスプレイやイメージセンサ、磁気記録装置、情報処理装置など高い空間的均質性を要する大規模集積回路に用いられる結晶性薄膜及びその製造方法、該結晶性薄膜を用いた素子、該素子を用いた回路、該素子もしくは該回路を含む装置に関する。
【0002】
【背景技術】
液晶ディスプレイ等に代表されるフラットパネルディスプレイは、画素駆動用の回路のパネルへのモノリシックな実装とその高性能化によって、画像表示の高精細化、高速化、及び多階調化を図ってきた。単純マトリクス駆動のパネルは画素毎にスイッチングトランジスタを備えたアクティヴマトリクス駆動に発展し、さらにそのアクティヴマトリクス駆動に用いるシフトレジスタ回路を同一パネル上周辺に作製することによって、今日、動画像にも対応するフルカラーの高精細液晶ディスプレイが提供されている。
【0003】
このような周辺駆動回路まで含めたモノリシック実装が実用的な製造コストで可能となったのは、電気的特性に優れた多結晶シリコン薄膜の安価なガラス基体上への形成技術に負うところが大きい。即ち、ガラス基体上に堆積した非晶質シリコン薄膜をエキシマレーザーなどの紫外域の短時間パルス光によって、ガラス基体を低温に保ったままを溶融再固化させて多結晶シリコン薄膜を得る技術である。同じ非晶質シリコン薄膜を出発材料としてこれを固相で結晶化させた多結晶薄膜を構成する結晶粒に比べて、溶融再固化法によって得られる結晶粒は内部の結晶欠陥密度が低く、該薄膜を活性領域として用いて構成した薄膜トランジスタは高いキャリア移動度を示す。そのためサブミクロン程度の平均粒径を持つ多結晶シリコン薄膜でも、対角数インチ程のサイズで高々100ppi以下の精細度の液晶ディスプレイには十分な性能を示すアクティヴマトリクス駆動用モノリシック回路を製造することができる。
【0004】
【非特許文献1】
H.Kumomi and T.Yonehara,Jpn.J.Appl.Phys.36,1383(1997)
【非特許文献2】
H.Kumomi and F.G.Shi,”Handbook of Thin Films Materials”Volume 1,Chapter6,”Nucleation,Growth,and Crystallization of Thin Films”edited by H.S.Nalwa(Academic Press,New York,2001)
【非特許文献3】
P.Ch.van der Wilt,B.D.van Dijk,G.J.Bertens,R.Ishihara,and C.I.M.Beenakker,Appl.Phys.Lett.,Vol.79,No.12,1819(2001)
【非特許文献4】
R.Ishihara, P.Ch.van der Wilt,B.D.van Dijk,A.Burtsev,J.W.Metselaar,and C.I.M.Beenakker,Digest of Technical Papers,AM−LCD 02,53(The Japan Society of Applied Physics,2002)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、次世代に望まれるより大画面或いは高精細な液晶ディスプレイに対して、現行の溶融再固化多結晶シリコン薄膜を用いる薄膜トランジスタは性能が不足していることが明らかとなっている。また、液晶ディスプレイよりも高電圧或いは大電流での駆動を要するプラズマディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイの駆動回路用素子、或いは医療用大画面X線イメージセンサの高速駆動回路用の素子など、今後発展が期待されている用途においても上記多結晶シリコン薄膜は性能不足である。いかに結晶粒内の欠陥密度が低いとは言え、多結晶シリコン薄膜の平均粒径が高々サブミクロン程度ではこれらの高性能素子は得られない。なぜなら、ミクロン程度のサイズを有する素子の活性領域内に、電荷移動の大きな障害となる結晶粒界が多く含まれるからである。
【0006】
このような多結晶薄膜における結晶粒界の密度とその空間分散を同時に小さくするための一般論が存在する。それは結晶粒の形成位置を制御することにより、結晶粒界の位置と粒径分布を制御するというアイデアであり、これまでに多結晶薄膜の化学気相堆積や薄膜の固相結晶化などにおいて実証されてきた〔例えば、非特許文献1、2を参照のこと〕。
【0007】
溶融再固化による結晶性薄膜形成においても、同じアイデアを実現しようとする試みがこれまでいくつか報告されている。それらのうちでこれまでに最も成功しているものは、Wiltら〔非特許文献3、4〕によって初めて報告された方法である。彼らは先ず、シリコン単結晶基板上のシリコン酸化膜層の表面から深さ1μmに及ぶ直径0.1μm以下の細孔を設け、これを埋めるように膜厚90−272nmの非晶質シリコン薄膜を形成し、この表面から細孔の内部を除く薄膜が完全溶融するようにエキシマレーザーを照射した。これにより、細孔の位置を中心として結晶粒の位置が制御されたと報告されている。しかしながら、細孔における単一結晶粒の選択収率が不十分であるために結晶粒界の位置制御という所期の目的を十分には達成していない。また、深さ1μmに及ぶ直径0.1μm以下の細孔を大面積に亙って均一に形成すること、及びそこに非晶質シリコンを埋めることは極めて困難であり、生産工程としての現実性に乏しい。
【0008】
本発明の課題は、上記したように、ガラス基体等へも適用可能な汎用性の高い溶融再固化による結晶性薄膜の製造方法において結晶粒位置を高度に制御する新たな方法を実現し、該製造方法によって結晶粒位置を高度に制御した結晶性薄膜を提供し、さらには該薄膜を用いて高性能な素子、回路、並びに装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の結晶性薄膜の製造方法は、
1.薄膜の溶融再固化過程において、出発薄膜に設けた複数の特定領域から結晶粒を成長させる結晶性薄膜の製造方法であって、Tcをバルク結晶の融点、ΔTcを溶融相からの自発的な結晶核形成が生じる過冷却度とそれぞれ定義したときに、該薄膜の再固化の際、未固化領域の過冷却度がΔTcに達する時刻において、所定間隔以内にある2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−ΔTc以上となる間隔で特定領域を設けることを特徴とする結晶性薄膜の製造方法である。
【0010】
さらに本発明の結晶性薄膜の製造方法は、
2.前記時刻において、特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域が、別の特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域と重畳する部分の温度が、Tc−ΔTc以上となる間隔で、前記特定領域を設ける上記1の結晶性薄膜の製造方法である。
【0011】
さらに本発明の結晶性薄膜の製造方法は、
3.特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの高温領域が、別の特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの高温領域と重畳する部分の温度が、Tc−ΔTc以下となる時刻より前に、該2つの特定領域から成長する結晶粒の成長端が接触する間隔で、前記特定領域を設ける上記2の結晶性薄膜の製造方法である。
【0012】
さらに本発明の結晶性薄膜の製造方法は、出発薄膜において特定領域とその周囲の領域が互いに状態が異なる上記1の結晶性薄膜の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の実施形態を図1に示す。図中、薄膜はその表面もしくは界面に鉛直な方向に薄膜の一部を切り出した断面によって模式的に表されている。尚、本発明にかかる薄膜はその上下に設けた別の層と接していてもよいが、図においては便宜上それらを省略し、薄膜のみを図示する。
図1(a)は、溶融再固化前の薄膜すなわち出発薄膜を示す。
図1(b)は、出発薄膜にエネルギーを投与したようすを示す。
図1(c)は、エネルギー投与の終了直前の薄膜を示す。
図1(d)は、エネルギー投与終了直後の薄膜を示す。
図1(e)は、再固化が開始された初期の薄膜を示す。
図1(f)は、再固化が進行中の薄膜を示す。
図1(g)は、再固化の最終段階の薄膜を示す。
図1(h)は、再固化終了後の薄膜を示す。
【0014】
図1中、1はその周囲の領域とは状態の異なる特定の小領域、2は周囲の領域、3はあらかじめ上記小領域1とその周囲の領域2が設けられた溶融再固化前の薄膜すなわち出発薄膜、4は溶融再固化のための投与エネルギー、5は結晶性クラスター、6は結晶粒、7は未再固化領域、8はランダムな結晶性クラスター群、9は結晶粒界である。
【0015】
図1(a)に示すように、出発薄膜3において、小領域1は、あらかじめ定められた特定の位置に設けられ、その周りに、周囲の領域2が連続して共存する。これに図1(b)に示すように出発薄膜3を加熱溶融するためのエネルギー4を与える。
【0016】
ここで、特定小領域1と周囲の領域2では薄膜の状態が以下のように異なっている。
【0017】
すなわち、出発薄膜における特定領域1とそのまわりの領域2とは、溶融再固化の際に、未溶融で残留する結晶粒もしくは結晶性クラスター濃度のサイズ分布が異なる領域である。もしくは、結晶粒もしくは結晶性クラスターのバルク部分、表面、隣接する結晶粒もしくは結晶性クラスター間の粒界、或いは非晶質領域の融点が異なる領域である。もしくは、非晶質母材中に含まれる結晶粒または結晶性クラスター濃度のサイズ分布が異なる領域、多結晶薄膜を構成する結晶粒濃度のサイズ分布が異なる領域、多結晶領域と非晶質性領域、溶融再固化時に液相からの固化における結晶核形成自由エネルギー障壁の大きさが異なる領域、或いは、非晶質出発薄膜が溶融前に固相結晶化する際の結晶核形成自由エネルギー障壁の大きさが異なる領域、のいずれかであってもよい。上記結晶核形成自由エネルギー障壁の大きさが互いに異なる領域は、元素組成比、含有不純物濃度、表面吸着物質、もしくは該薄膜と接する基体との界面状態が異なる領域を設けることにより形成することができる。
【0018】
出発薄膜における領域1と領域2とを、これらのいずれかの状態の異なる連続した領域とすることによって、以下に説明するように、溶融再固化後の結晶性薄膜中の結晶粒の位置を制御することができる。
【0019】
即ち、薄膜の溶融過程の最終段階〔図1(c)〕からエネルギー4の投与終了後〔図1(d)〕において、特定領域1には1個以上で一定数の結晶粒もしくは結晶性クラスター5が未溶融で残留し、一方周囲の領域2には特定領域1に結晶粒もしくは結晶性クラスターが残留している濃度よりも十分低い濃度で結晶粒もしくは結晶性クラスターが残留するか、或いは全く残留せずに周囲の領域2が完全溶融する。
【0020】
或いは、薄膜の溶融過程の最終段階において特定領域1と周囲の領域2は共に完全溶融するものの、エネルギー4の投与終了後の冷却固化過程において特定領域1内の結晶核形成自由エネルギー障壁W*が周囲の領域2内のそれよりも低く、その結果、溶融薄膜の過冷却度が小さいうちに特定領域1に優先的な結晶粒もしくは結晶性クラスター5の核形成が生じる。
【0021】
このように互いに状態の異なる特定小領域1と周囲の領域2が共存する出発薄膜3を加熱溶融させ、再固化させると、特定領域1から、結晶粒もしくは結晶性クラスター5を種結晶とした結晶成長が進行し、周囲の液相薄膜を固化させて結晶粒6となる〔図1(e)〕。その後、結晶粒6は特定領域1を越えて連続する周囲の領域2をも漸次固化させて成長を続ける〔図1(f)〕。
【0022】
ただし、結晶粒6は無限に大きく成長できるわけではない。未だ結晶粒6の成長によって再固化されていない未再固化領域7では、過冷却度の増大と共に結晶粒もしくは結晶性クラスター群8の爆発的な自発的核形成がランダムに生じる〔図1(g)〕。周囲の領域2から成長してきた結晶粒6はこれら位置制御されていない結晶粒もしくは結晶性クラスター群8にその成長を阻まれ、両者の間に結晶粒界9が形成される〔図1(h)〕。その結果、特定領域1を中心として結晶粒6の位置が制御された溶融再固化による結晶性薄膜を形成することができる。
【0023】
ところで、結晶粒6が成長する際、その成長端では固化に伴う潜熱(凝固熱)が周囲に放出される。図2に図1(e)〜(h)の過程における薄膜の温度分布を、模式的に示す。図2に付した(e)〜(h)の符号は、それぞれ、図1の(e)〜(h)の成長時点における温度分布であることを示す。図1(b)〜(c)の過程において、薄膜にエネルギーが投与されている段階では、薄膜の全領域において温度は一様である。
【0024】
図1(d)のエネルギー投与が終了した直後から、薄膜は、それを挟む上下の層(不図示)への熱放出により冷却され、温度が下降し始める。領域2の溶融状態にある部分は、バルクの凝固点Tcより温度が下がっても、凝固するための核が存在しないので、過冷却状態となって液相のままであるが、特定領域1内では、未溶融の結晶粒もしくは結晶性クラスターがあるので、あるいは、エネルギー投与時に全溶融状態に到達したとしても結晶核形成自由エネルギー障壁W*が低いために優先的に核発生が起きるので、図1(e)に示すように、それを種結晶として周囲の液相薄膜を固化させて結晶粒6が成長する。このときの温度分布を示したのが図2(e)で、液相から固相への相変化により潜熱(凝固熱)が周辺の領域に放出されるため、結晶粒6の成長端近傍では、周囲に比較して温度が高くなる。
【0025】
さらに結晶粒6は、図2(f)に示すように特定領域1を越えて連続する周囲の領域をも固化させながら成長を続ける。すでに結晶化した部分は、周囲への放熱により再び冷却が進むが、結晶粒6の成長端10の近傍は、潜熱が放出されるため周囲に比較して温度が高くなる。
【0026】
成長端から遠く離れた領域11においては、潜熱の放出がないので、エネルギー投与終了後から温度が下降し、T=Tc−△Tc(Tcは結晶バルクの融点、△Tcは自発的核生成が開始される過冷却度をあらわす)になると、自発的核生成がランダムに発生する。このときの温度分布を図2(g)に示す。
【0027】
ところが、隣接した2つの特定領域1に挟まれたところでは、2つの特定領域1の間隔が十分に狭ければ、1つの特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域が、別の特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域と重なる領域ができる。この重畳部分の領域12においては、別々の特定領域1からそれぞれ成長した結晶粒の成長端からの潜熱放出が重なるので、成長端から遠く離れた領域11で温度がTc−△Tcまで下降した時刻においても、領域12では温度がTc−△Tcより高く保たれる。そのため、領域12では自発的核生成は生じず、未固化部分は液相に保たれる。その結果、領域12では、特定領域1からの結晶成長が引き続いて進行し、より粒径が大きい結晶が得られる。
【0028】
さらに時間がたつと、図2(h)に示したように結晶粒6の成長端は、隣接した結晶粒6の成長端と接触することにより結晶粒界9を形成し、成長を終了する。成長方向に他の結晶粒6が存在しない成長端は、自発的核生成によって発生した結晶性クラスター群に成長を阻まれ、そこで停止する。
【0029】
以上のように、本発明においては、特定領域を複数設けた出発薄膜に、エネルギーを与えて溶融再固化させる。そのさい、特定領域間の距離すなわち間隔は、薄膜の再固化の際、成長端から遠く離れた未固化領域の過冷却度が△Tcになる時刻において、2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−△Tc以上となるように設定される。
【0030】
2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−△Tc以上となるのは、前記時刻において、特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域が、別の特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域と重畳され、その部分の温度が、Tc−△Tc以上となるからである。言い換えれば、上記重畳部分の温度がTc−△Tc以上になるように、特定領域の間隔が設定される。
【0031】
このように設定した所定の間隔もしくはそれよりも狭い間隔で複数の特定領域1を配置すると、前記重畳する部分の温度が、Tc−△Tc以下となる時刻より前に、該2つの特定領域から成長する結晶粒の成長端が接触するので、特定領域から成長した結晶粒が互いに接した結晶性薄膜が形成される。言い換えれば、本発明は、出発薄膜に、溶融再固化過程の際、前記重畳する部分の温度が、Tc−△Tc以下となる時刻より前に、該2つの特定領域から成長する結晶粒の成長端が接触する間隔で、前記特定領域を設けるものである。
【0032】
これにより、1つ1つの結晶粒の位置は、出発薄膜で与えた特定領域の位置で決められるので、等間隔で特定領域を設定しておけば、大きさの揃った結晶粒ができる。
【0033】
以上説明したように、本発明においては、特定領域の間隔と位置を制御することにより、結晶粒6および結晶粒界の位置および密度が制御された溶融再固化による結晶性薄膜を形成することができる。
【0034】
【実施例】
本発明の実施例として、図1に示した工程によって形成される結晶性シリコン薄膜の例を示す。
【0035】
はじめに、酸化シリコンなどを含む非晶質表面を有する基体上に、気相堆積法により結晶性シリコンクラスターを含む膜厚100nmの非晶質シリコン薄膜を設けた。次に、この結晶性シリコンクラスターを含む非晶質シリコン薄膜に対して、表面から局所的にシリコンイオンを照射した。このとき、シリコンイオンの照査されない直径約1μmの小領域を、2μm間隔の正方格子点に周期的に配置した。上記のように、被照射領域の薄膜中に含まれる結晶性シリコンクラスターの一部を非晶質化し、出発薄膜とした。
【0036】
次に、この出発薄膜に対して、KrFエキシマレーザー光を約360mJ/cm2のエネルギー密度で30nsec間照射し、出発薄膜を溶融再固化させ、結晶性薄膜を得た。
【0037】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、2μm間隔の正方格子の各格子点にはそれぞれ平均直径約2μmの単一の結晶粒が成長しており、それらは互いに成長端を接して結晶粒界をなしていた。それ以外の領域は平均直径約50nmの様々なサイズの微結晶粒で埋め尽くされており、且つ、それらの位置は全くランダムであった。
【0038】
本実施例の出発薄膜において、エネルギービームを照射されなかった直径約1μmの小領域では、それ以外の領域より結晶性クラスター濃度のサイズ分布の平均値と濃度が高い。この結晶性クラスター濃度のサイズ分布の差が、出発薄膜において連続した領域間の状態の相異をもたらし、直径約1μmの小領域が図1における「特定領域1」をなしている。実際、エネルギービームを照射した薄膜と照射しない薄膜に関して溶融再固化過程を実時間観察したところ、上記溶融再固化条件において前者は完全溶融したのに対して、後者では不完全溶融であることが確認された。
【0039】
さらに本実施例では、複数の「特定領域1」が2μm間隔の正方格子状に配置されている。これにより、隣接した特定領域1から成長した結晶粒6の成長端から発生する潜熱が重畳する領域が発生する。この領域の温度は、潜熱が放出されない領域の温度がTc△T(自発的核生成が発生する温度)となった時刻において、Tc−△Tより高くなっている。さらに、上記重畳領域の温度がTc△Tより低くなる前に、すなわち同領域において自発的核生成が発生する前に、隣接した特定領域1から成長した結晶粒6の成長端どうしが接触して、結晶粒界を生成する。その結果、本実施例においては、結晶粒界の位置と密度が制御された結晶性薄膜が得られた。
【0040】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明は、溶融再固化によって形成する結晶性薄膜において、出発薄膜に特定領域を設けることにより、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御を容易に実現する。
【0041】
さらに、本発明においては、上記特定領域の間隔を制御することにより、結晶性薄膜内の結晶粒界の位置および密度の高度な制御を容易に実現する。
【0042】
本発明の結晶性薄膜は、これを構成する結晶粒および結晶粒界の制御された位置と素子の特定の領域を空間的に関係づけることにより、従来のランダムな結晶粒のみからなる結晶性薄膜を用いる場合に比べて、当該素子の動作特性を著しく向上させ、そのバラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)−(h)は本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の基本的な実施形態を説明するための製造工程図である。
【図2】(e)−(h)は図1の工程(e)−(h)のそれぞれにおける薄膜の温度分布を説明するための図である。図1の工程(a)−(d)における薄膜の温度分布は省略されている。
【符号の説明】
1 特定領域
2 周囲の領域
3 出発薄膜
4 溶融再固化のための投与エネルギー
5 結晶性クラスター
6 結晶粒
7 未再固化領域
8 ランダムな結晶性クラスター群
9 結晶粒界
10 成長端
11 成長端から遠く離れた領域
12 潜熱が重畳する領域
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラットパネルディスプレイやイメージセンサ、磁気記録装置、情報処理装置など高い空間的均質性を要する大規模集積回路に用いられる結晶性薄膜及びその製造方法、該結晶性薄膜を用いた素子、該素子を用いた回路、該素子もしくは該回路を含む装置に関する。
【0002】
【背景技術】
液晶ディスプレイ等に代表されるフラットパネルディスプレイは、画素駆動用の回路のパネルへのモノリシックな実装とその高性能化によって、画像表示の高精細化、高速化、及び多階調化を図ってきた。単純マトリクス駆動のパネルは画素毎にスイッチングトランジスタを備えたアクティヴマトリクス駆動に発展し、さらにそのアクティヴマトリクス駆動に用いるシフトレジスタ回路を同一パネル上周辺に作製することによって、今日、動画像にも対応するフルカラーの高精細液晶ディスプレイが提供されている。
【0003】
このような周辺駆動回路まで含めたモノリシック実装が実用的な製造コストで可能となったのは、電気的特性に優れた多結晶シリコン薄膜の安価なガラス基体上への形成技術に負うところが大きい。即ち、ガラス基体上に堆積した非晶質シリコン薄膜をエキシマレーザーなどの紫外域の短時間パルス光によって、ガラス基体を低温に保ったままを溶融再固化させて多結晶シリコン薄膜を得る技術である。同じ非晶質シリコン薄膜を出発材料としてこれを固相で結晶化させた多結晶薄膜を構成する結晶粒に比べて、溶融再固化法によって得られる結晶粒は内部の結晶欠陥密度が低く、該薄膜を活性領域として用いて構成した薄膜トランジスタは高いキャリア移動度を示す。そのためサブミクロン程度の平均粒径を持つ多結晶シリコン薄膜でも、対角数インチ程のサイズで高々100ppi以下の精細度の液晶ディスプレイには十分な性能を示すアクティヴマトリクス駆動用モノリシック回路を製造することができる。
【0004】
【非特許文献1】
H.Kumomi and T.Yonehara,Jpn.J.Appl.Phys.36,1383(1997)
【非特許文献2】
H.Kumomi and F.G.Shi,”Handbook of Thin Films Materials”Volume 1,Chapter6,”Nucleation,Growth,and Crystallization of Thin Films”edited by H.S.Nalwa(Academic Press,New York,2001)
【非特許文献3】
P.Ch.van der Wilt,B.D.van Dijk,G.J.Bertens,R.Ishihara,and C.I.M.Beenakker,Appl.Phys.Lett.,Vol.79,No.12,1819(2001)
【非特許文献4】
R.Ishihara, P.Ch.van der Wilt,B.D.van Dijk,A.Burtsev,J.W.Metselaar,and C.I.M.Beenakker,Digest of Technical Papers,AM−LCD 02,53(The Japan Society of Applied Physics,2002)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、次世代に望まれるより大画面或いは高精細な液晶ディスプレイに対して、現行の溶融再固化多結晶シリコン薄膜を用いる薄膜トランジスタは性能が不足していることが明らかとなっている。また、液晶ディスプレイよりも高電圧或いは大電流での駆動を要するプラズマディスプレイやエレクトロルミネッセンスディスプレイの駆動回路用素子、或いは医療用大画面X線イメージセンサの高速駆動回路用の素子など、今後発展が期待されている用途においても上記多結晶シリコン薄膜は性能不足である。いかに結晶粒内の欠陥密度が低いとは言え、多結晶シリコン薄膜の平均粒径が高々サブミクロン程度ではこれらの高性能素子は得られない。なぜなら、ミクロン程度のサイズを有する素子の活性領域内に、電荷移動の大きな障害となる結晶粒界が多く含まれるからである。
【0006】
このような多結晶薄膜における結晶粒界の密度とその空間分散を同時に小さくするための一般論が存在する。それは結晶粒の形成位置を制御することにより、結晶粒界の位置と粒径分布を制御するというアイデアであり、これまでに多結晶薄膜の化学気相堆積や薄膜の固相結晶化などにおいて実証されてきた〔例えば、非特許文献1、2を参照のこと〕。
【0007】
溶融再固化による結晶性薄膜形成においても、同じアイデアを実現しようとする試みがこれまでいくつか報告されている。それらのうちでこれまでに最も成功しているものは、Wiltら〔非特許文献3、4〕によって初めて報告された方法である。彼らは先ず、シリコン単結晶基板上のシリコン酸化膜層の表面から深さ1μmに及ぶ直径0.1μm以下の細孔を設け、これを埋めるように膜厚90−272nmの非晶質シリコン薄膜を形成し、この表面から細孔の内部を除く薄膜が完全溶融するようにエキシマレーザーを照射した。これにより、細孔の位置を中心として結晶粒の位置が制御されたと報告されている。しかしながら、細孔における単一結晶粒の選択収率が不十分であるために結晶粒界の位置制御という所期の目的を十分には達成していない。また、深さ1μmに及ぶ直径0.1μm以下の細孔を大面積に亙って均一に形成すること、及びそこに非晶質シリコンを埋めることは極めて困難であり、生産工程としての現実性に乏しい。
【0008】
本発明の課題は、上記したように、ガラス基体等へも適用可能な汎用性の高い溶融再固化による結晶性薄膜の製造方法において結晶粒位置を高度に制御する新たな方法を実現し、該製造方法によって結晶粒位置を高度に制御した結晶性薄膜を提供し、さらには該薄膜を用いて高性能な素子、回路、並びに装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の結晶性薄膜の製造方法は、
1.薄膜の溶融再固化過程において、出発薄膜に設けた複数の特定領域から結晶粒を成長させる結晶性薄膜の製造方法であって、Tcをバルク結晶の融点、ΔTcを溶融相からの自発的な結晶核形成が生じる過冷却度とそれぞれ定義したときに、該薄膜の再固化の際、未固化領域の過冷却度がΔTcに達する時刻において、所定間隔以内にある2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−ΔTc以上となる間隔で特定領域を設けることを特徴とする結晶性薄膜の製造方法である。
【0010】
さらに本発明の結晶性薄膜の製造方法は、
2.前記時刻において、特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域が、別の特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域と重畳する部分の温度が、Tc−ΔTc以上となる間隔で、前記特定領域を設ける上記1の結晶性薄膜の製造方法である。
【0011】
さらに本発明の結晶性薄膜の製造方法は、
3.特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの高温領域が、別の特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの高温領域と重畳する部分の温度が、Tc−ΔTc以下となる時刻より前に、該2つの特定領域から成長する結晶粒の成長端が接触する間隔で、前記特定領域を設ける上記2の結晶性薄膜の製造方法である。
【0012】
さらに本発明の結晶性薄膜の製造方法は、出発薄膜において特定領域とその周囲の領域が互いに状態が異なる上記1の結晶性薄膜の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の実施形態を図1に示す。図中、薄膜はその表面もしくは界面に鉛直な方向に薄膜の一部を切り出した断面によって模式的に表されている。尚、本発明にかかる薄膜はその上下に設けた別の層と接していてもよいが、図においては便宜上それらを省略し、薄膜のみを図示する。
図1(a)は、溶融再固化前の薄膜すなわち出発薄膜を示す。
図1(b)は、出発薄膜にエネルギーを投与したようすを示す。
図1(c)は、エネルギー投与の終了直前の薄膜を示す。
図1(d)は、エネルギー投与終了直後の薄膜を示す。
図1(e)は、再固化が開始された初期の薄膜を示す。
図1(f)は、再固化が進行中の薄膜を示す。
図1(g)は、再固化の最終段階の薄膜を示す。
図1(h)は、再固化終了後の薄膜を示す。
【0014】
図1中、1はその周囲の領域とは状態の異なる特定の小領域、2は周囲の領域、3はあらかじめ上記小領域1とその周囲の領域2が設けられた溶融再固化前の薄膜すなわち出発薄膜、4は溶融再固化のための投与エネルギー、5は結晶性クラスター、6は結晶粒、7は未再固化領域、8はランダムな結晶性クラスター群、9は結晶粒界である。
【0015】
図1(a)に示すように、出発薄膜3において、小領域1は、あらかじめ定められた特定の位置に設けられ、その周りに、周囲の領域2が連続して共存する。これに図1(b)に示すように出発薄膜3を加熱溶融するためのエネルギー4を与える。
【0016】
ここで、特定小領域1と周囲の領域2では薄膜の状態が以下のように異なっている。
【0017】
すなわち、出発薄膜における特定領域1とそのまわりの領域2とは、溶融再固化の際に、未溶融で残留する結晶粒もしくは結晶性クラスター濃度のサイズ分布が異なる領域である。もしくは、結晶粒もしくは結晶性クラスターのバルク部分、表面、隣接する結晶粒もしくは結晶性クラスター間の粒界、或いは非晶質領域の融点が異なる領域である。もしくは、非晶質母材中に含まれる結晶粒または結晶性クラスター濃度のサイズ分布が異なる領域、多結晶薄膜を構成する結晶粒濃度のサイズ分布が異なる領域、多結晶領域と非晶質性領域、溶融再固化時に液相からの固化における結晶核形成自由エネルギー障壁の大きさが異なる領域、或いは、非晶質出発薄膜が溶融前に固相結晶化する際の結晶核形成自由エネルギー障壁の大きさが異なる領域、のいずれかであってもよい。上記結晶核形成自由エネルギー障壁の大きさが互いに異なる領域は、元素組成比、含有不純物濃度、表面吸着物質、もしくは該薄膜と接する基体との界面状態が異なる領域を設けることにより形成することができる。
【0018】
出発薄膜における領域1と領域2とを、これらのいずれかの状態の異なる連続した領域とすることによって、以下に説明するように、溶融再固化後の結晶性薄膜中の結晶粒の位置を制御することができる。
【0019】
即ち、薄膜の溶融過程の最終段階〔図1(c)〕からエネルギー4の投与終了後〔図1(d)〕において、特定領域1には1個以上で一定数の結晶粒もしくは結晶性クラスター5が未溶融で残留し、一方周囲の領域2には特定領域1に結晶粒もしくは結晶性クラスターが残留している濃度よりも十分低い濃度で結晶粒もしくは結晶性クラスターが残留するか、或いは全く残留せずに周囲の領域2が完全溶融する。
【0020】
或いは、薄膜の溶融過程の最終段階において特定領域1と周囲の領域2は共に完全溶融するものの、エネルギー4の投与終了後の冷却固化過程において特定領域1内の結晶核形成自由エネルギー障壁W*が周囲の領域2内のそれよりも低く、その結果、溶融薄膜の過冷却度が小さいうちに特定領域1に優先的な結晶粒もしくは結晶性クラスター5の核形成が生じる。
【0021】
このように互いに状態の異なる特定小領域1と周囲の領域2が共存する出発薄膜3を加熱溶融させ、再固化させると、特定領域1から、結晶粒もしくは結晶性クラスター5を種結晶とした結晶成長が進行し、周囲の液相薄膜を固化させて結晶粒6となる〔図1(e)〕。その後、結晶粒6は特定領域1を越えて連続する周囲の領域2をも漸次固化させて成長を続ける〔図1(f)〕。
【0022】
ただし、結晶粒6は無限に大きく成長できるわけではない。未だ結晶粒6の成長によって再固化されていない未再固化領域7では、過冷却度の増大と共に結晶粒もしくは結晶性クラスター群8の爆発的な自発的核形成がランダムに生じる〔図1(g)〕。周囲の領域2から成長してきた結晶粒6はこれら位置制御されていない結晶粒もしくは結晶性クラスター群8にその成長を阻まれ、両者の間に結晶粒界9が形成される〔図1(h)〕。その結果、特定領域1を中心として結晶粒6の位置が制御された溶融再固化による結晶性薄膜を形成することができる。
【0023】
ところで、結晶粒6が成長する際、その成長端では固化に伴う潜熱(凝固熱)が周囲に放出される。図2に図1(e)〜(h)の過程における薄膜の温度分布を、模式的に示す。図2に付した(e)〜(h)の符号は、それぞれ、図1の(e)〜(h)の成長時点における温度分布であることを示す。図1(b)〜(c)の過程において、薄膜にエネルギーが投与されている段階では、薄膜の全領域において温度は一様である。
【0024】
図1(d)のエネルギー投与が終了した直後から、薄膜は、それを挟む上下の層(不図示)への熱放出により冷却され、温度が下降し始める。領域2の溶融状態にある部分は、バルクの凝固点Tcより温度が下がっても、凝固するための核が存在しないので、過冷却状態となって液相のままであるが、特定領域1内では、未溶融の結晶粒もしくは結晶性クラスターがあるので、あるいは、エネルギー投与時に全溶融状態に到達したとしても結晶核形成自由エネルギー障壁W*が低いために優先的に核発生が起きるので、図1(e)に示すように、それを種結晶として周囲の液相薄膜を固化させて結晶粒6が成長する。このときの温度分布を示したのが図2(e)で、液相から固相への相変化により潜熱(凝固熱)が周辺の領域に放出されるため、結晶粒6の成長端近傍では、周囲に比較して温度が高くなる。
【0025】
さらに結晶粒6は、図2(f)に示すように特定領域1を越えて連続する周囲の領域をも固化させながら成長を続ける。すでに結晶化した部分は、周囲への放熱により再び冷却が進むが、結晶粒6の成長端10の近傍は、潜熱が放出されるため周囲に比較して温度が高くなる。
【0026】
成長端から遠く離れた領域11においては、潜熱の放出がないので、エネルギー投与終了後から温度が下降し、T=Tc−△Tc(Tcは結晶バルクの融点、△Tcは自発的核生成が開始される過冷却度をあらわす)になると、自発的核生成がランダムに発生する。このときの温度分布を図2(g)に示す。
【0027】
ところが、隣接した2つの特定領域1に挟まれたところでは、2つの特定領域1の間隔が十分に狭ければ、1つの特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域が、別の特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域と重なる領域ができる。この重畳部分の領域12においては、別々の特定領域1からそれぞれ成長した結晶粒の成長端からの潜熱放出が重なるので、成長端から遠く離れた領域11で温度がTc−△Tcまで下降した時刻においても、領域12では温度がTc−△Tcより高く保たれる。そのため、領域12では自発的核生成は生じず、未固化部分は液相に保たれる。その結果、領域12では、特定領域1からの結晶成長が引き続いて進行し、より粒径が大きい結晶が得られる。
【0028】
さらに時間がたつと、図2(h)に示したように結晶粒6の成長端は、隣接した結晶粒6の成長端と接触することにより結晶粒界9を形成し、成長を終了する。成長方向に他の結晶粒6が存在しない成長端は、自発的核生成によって発生した結晶性クラスター群に成長を阻まれ、そこで停止する。
【0029】
以上のように、本発明においては、特定領域を複数設けた出発薄膜に、エネルギーを与えて溶融再固化させる。そのさい、特定領域間の距離すなわち間隔は、薄膜の再固化の際、成長端から遠く離れた未固化領域の過冷却度が△Tcになる時刻において、2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−△Tc以上となるように設定される。
【0030】
2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−△Tc以上となるのは、前記時刻において、特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域が、別の特定領域から成長する結晶粒の成長端近くの、周囲に比較して高温の領域と重畳され、その部分の温度が、Tc−△Tc以上となるからである。言い換えれば、上記重畳部分の温度がTc−△Tc以上になるように、特定領域の間隔が設定される。
【0031】
このように設定した所定の間隔もしくはそれよりも狭い間隔で複数の特定領域1を配置すると、前記重畳する部分の温度が、Tc−△Tc以下となる時刻より前に、該2つの特定領域から成長する結晶粒の成長端が接触するので、特定領域から成長した結晶粒が互いに接した結晶性薄膜が形成される。言い換えれば、本発明は、出発薄膜に、溶融再固化過程の際、前記重畳する部分の温度が、Tc−△Tc以下となる時刻より前に、該2つの特定領域から成長する結晶粒の成長端が接触する間隔で、前記特定領域を設けるものである。
【0032】
これにより、1つ1つの結晶粒の位置は、出発薄膜で与えた特定領域の位置で決められるので、等間隔で特定領域を設定しておけば、大きさの揃った結晶粒ができる。
【0033】
以上説明したように、本発明においては、特定領域の間隔と位置を制御することにより、結晶粒6および結晶粒界の位置および密度が制御された溶融再固化による結晶性薄膜を形成することができる。
【0034】
【実施例】
本発明の実施例として、図1に示した工程によって形成される結晶性シリコン薄膜の例を示す。
【0035】
はじめに、酸化シリコンなどを含む非晶質表面を有する基体上に、気相堆積法により結晶性シリコンクラスターを含む膜厚100nmの非晶質シリコン薄膜を設けた。次に、この結晶性シリコンクラスターを含む非晶質シリコン薄膜に対して、表面から局所的にシリコンイオンを照射した。このとき、シリコンイオンの照査されない直径約1μmの小領域を、2μm間隔の正方格子点に周期的に配置した。上記のように、被照射領域の薄膜中に含まれる結晶性シリコンクラスターの一部を非晶質化し、出発薄膜とした。
【0036】
次に、この出発薄膜に対して、KrFエキシマレーザー光を約360mJ/cm2のエネルギー密度で30nsec間照射し、出発薄膜を溶融再固化させ、結晶性薄膜を得た。
【0037】
得られた結晶性薄膜を構成する結晶粒形状を観察したところ、2μm間隔の正方格子の各格子点にはそれぞれ平均直径約2μmの単一の結晶粒が成長しており、それらは互いに成長端を接して結晶粒界をなしていた。それ以外の領域は平均直径約50nmの様々なサイズの微結晶粒で埋め尽くされており、且つ、それらの位置は全くランダムであった。
【0038】
本実施例の出発薄膜において、エネルギービームを照射されなかった直径約1μmの小領域では、それ以外の領域より結晶性クラスター濃度のサイズ分布の平均値と濃度が高い。この結晶性クラスター濃度のサイズ分布の差が、出発薄膜において連続した領域間の状態の相異をもたらし、直径約1μmの小領域が図1における「特定領域1」をなしている。実際、エネルギービームを照射した薄膜と照射しない薄膜に関して溶融再固化過程を実時間観察したところ、上記溶融再固化条件において前者は完全溶融したのに対して、後者では不完全溶融であることが確認された。
【0039】
さらに本実施例では、複数の「特定領域1」が2μm間隔の正方格子状に配置されている。これにより、隣接した特定領域1から成長した結晶粒6の成長端から発生する潜熱が重畳する領域が発生する。この領域の温度は、潜熱が放出されない領域の温度がTc△T(自発的核生成が発生する温度)となった時刻において、Tc−△Tより高くなっている。さらに、上記重畳領域の温度がTc△Tより低くなる前に、すなわち同領域において自発的核生成が発生する前に、隣接した特定領域1から成長した結晶粒6の成長端どうしが接触して、結晶粒界を生成する。その結果、本実施例においては、結晶粒界の位置と密度が制御された結晶性薄膜が得られた。
【0040】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明は、溶融再固化によって形成する結晶性薄膜において、出発薄膜に特定領域を設けることにより、結晶性薄膜を構成する結晶粒の空間的位置制御を容易に実現する。
【0041】
さらに、本発明においては、上記特定領域の間隔を制御することにより、結晶性薄膜内の結晶粒界の位置および密度の高度な制御を容易に実現する。
【0042】
本発明の結晶性薄膜は、これを構成する結晶粒および結晶粒界の制御された位置と素子の特定の領域を空間的に関係づけることにより、従来のランダムな結晶粒のみからなる結晶性薄膜を用いる場合に比べて、当該素子の動作特性を著しく向上させ、そのバラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)−(h)は本発明の結晶性薄膜及びその製造方法の基本的な実施形態を説明するための製造工程図である。
【図2】(e)−(h)は図1の工程(e)−(h)のそれぞれにおける薄膜の温度分布を説明するための図である。図1の工程(a)−(d)における薄膜の温度分布は省略されている。
【符号の説明】
1 特定領域
2 周囲の領域
3 出発薄膜
4 溶融再固化のための投与エネルギー
5 結晶性クラスター
6 結晶粒
7 未再固化領域
8 ランダムな結晶性クラスター群
9 結晶粒界
10 成長端
11 成長端から遠く離れた領域
12 潜熱が重畳する領域
Claims (1)
- 薄膜の溶融再固化過程において、出発薄膜に設けた複数の特定領域から結晶粒を成長させる結晶性薄膜の製造方法であって、Tcをバルク結晶の融点、ΔTcを溶融相からの自発的な結晶核形成が生じる過冷却度とそれぞれ定義したときに、該薄膜の再固化の際、未固化領域の過冷却度がΔTcに達する時刻において、所定間隔以内にある2つの特定領域に挟まれた部分の温度がTc−ΔTc以上となる間隔で特定領域を設けることを特徴とする結晶性薄膜の製造方法。
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