JP2004192959A - 燃料電池の冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオン交換フィルタに効果的なイオン除去機能を発揮させ、かつ熱劣化抑止できる燃料電池の冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却系は、燃料電池本体1と、冷却液の熱をシステム外へ放出する熱交換器2と、冷却液配管3と、冷却液を循環させるポンプ4と、暖機用の加熱手段5と、ポンプ4から送出される冷却液を熱交換器2と加熱手段5とに任意の分流比で分流させる流量調整手段6と、イオン交換樹脂を内蔵し冷却液中の有害なイオンを除去するイオン交換フィルタ7と、制御手段11とを備える。熱交換器2を経由した冷却液と加熱手段5を経由した冷却液とが合流後に、イオン交換フィルタ7へ冷却液が流入するので、流量調整手段6により冷却液の分流比を調節することにより、イオン交換フィルタ7へ流入する冷却液の温度を調整することが可能になる。
【選択図】 図1
【解決手段】冷却系は、燃料電池本体1と、冷却液の熱をシステム外へ放出する熱交換器2と、冷却液配管3と、冷却液を循環させるポンプ4と、暖機用の加熱手段5と、ポンプ4から送出される冷却液を熱交換器2と加熱手段5とに任意の分流比で分流させる流量調整手段6と、イオン交換樹脂を内蔵し冷却液中の有害なイオンを除去するイオン交換フィルタ7と、制御手段11とを備える。熱交換器2を経由した冷却液と加熱手段5を経由した冷却液とが合流後に、イオン交換フィルタ7へ冷却液が流入するので、流量調整手段6により冷却液の分流比を調節することにより、イオン交換フィルタ7へ流入する冷却液の温度を調整することが可能になる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池の冷却装置に係り、特に暖機機能を有する燃料電池の冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質膜を使用し、100℃以下の温度で水素ガスを燃料として発電を行う小型の燃料電池システムが開発され、自動車用や都市ガスを利用した住宅用の発電システムとして応用されている。このような燃料電池は、70〜80℃の運転温度において最も高効率・高出力が得られる特性を有しており、燃料電池自動車においては、運転温度を好適に維持するために冷却装置を備えている。
【0003】
燃料電池は、水素ガスを燃料として酸素と反応させるため、水ないし水蒸気を排出する。従って、運転時には0℃以上の温度環境であることが望ましく、夜間停止時に氷点下の温度環境に保管されることのある自動車に適用するためには、起動時に冷却液を加熱して循環させることにより、燃料電池を0℃以上に暖機させる装置が必要である。
【0004】
このような暖機機能を有する従来の燃料電池用冷却装置としては、特許文献1に開示された図6に示すような例がある。同図において、冷却装置は、燃料電池本体101、1次冷却水の温度を調整する1次熱交換器102、ポンプ103aおよび1次冷却系配管104により構成される1次冷却系と、冷却液の熱を大気中に放出する2次熱交換器105、ポンプ103b、2次冷却系配管106および1次熱交換器102からなる2次冷却系を備えている。
【0005】
1次冷却系には冷却水の絶縁性を維持するため、冷却液中に溶出するイオンを除去するイオン交換フィルタ107が設置されている。また、2次冷却系には流路切替手段108と2次冷却水を昇温させる加熱手段109が備わっている。
【0006】
燃料電池本体101を暖機する場合には、流路切替手段108により2次熱交換器105から流出する冷却液流を遮断して冷却液を加熱手段109と1次熱交換器102の間で循環させ、加熱手段109により2次冷却水を昇温させる。同時に1次冷却系の冷却液もポンプ103aで循環させることにより、1次熱交換器102を経由して1次冷却水を昇温させ、燃料電池本体101を暖機する。
【0007】
また、イオン交換フィルタは、イオン交換樹脂により冷却液中に溶出したイオンを水素イオン[H+ ]あるいは水酸イオン[OH- ]に交換して、中和する機能を果たすものである。しかしイオン交換樹脂が高温の冷却液に接触すると、熱劣化を起こして、寿命が短くなるという性質がある。
【0008】
このようなイオン交換樹脂の熱劣化を防ぐために、特許文献2に開示された図7に示すような例もある。同図においては、燃料電池本体101、1次熱交換器102、ポンプ103a、1次冷却系配管104およびイオン交換フィルタ107により構成される1次冷却系に、熱交換器110と放熱器111が設置されており、イオン交換フィルタへ流入する冷却液の温度を下げてからイオン交換フィルタでイオン交換を行い、その後冷却液の温度を昇温させて冷却系へ戻している。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−117876号公報(第3ページ、図1)
【0010】
【特許文献2】
特開2002−110205号公報(第3ページ、図1)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の燃料電池の冷却装置においては、以下のような問題点があった。
【0012】
すなわち、冷却系を1次側と2次側に分離するため、1次熱交換器と2次熱交換器が必要になり、内燃機関を搭載する自動車の冷却系と比較すると熱交換器が多く、システムが大型で複雑化し、自動車のように搭載場所が限定されるものへ適用するには、不利な構成であるという問題点があった。
【0013】
この問題点を解決するため、1次熱交換器を廃止した冷却装置の構成とすることが好ましいが、起動時の暖機運転に際して、加熱手段により加熱された冷却液が直接イオン交換フィルタに流入することとなる。イオン交換フィルタに用いられるイオン交換樹脂は、前記したように高温の冷却液に接触すると熱劣化を起こすため、流入する冷却液の温度を40〜80℃程度に維持することが望ましい。車載可能な加熱手段としては、電気ヒータ、ヒートポンプ、水素燃焼器等が考えられるが燃料電池が発電を始める前に電力を消費しない点では水素燃焼器が好ましい。
【0014】
しかしながら、加熱手段とイオン交換フィルタの中間に熱交換器が介在しない構成の冷却系では、冷却液の温度調整を加熱手段の発熱量制御で行うしかなく、制御性のよい電気ヒーターは加熱手段として使用できるが、水素燃焼器の使用は制御が複雑化して困難になる。特に氷点下からの起動においては、燃料電池が0℃以上に暖機されるまでは発電が難しいため、電気ヒーターの使用は難しいという問題があった。
【0015】
イオン交換フィルタの上流に熱交換器や放熱器を設置して、冷却液温度を下げてイオン交換フィルタに流入させる従来例を適用し、加熱手段に水素燃焼器を使用する方法も考えられるが、これでは熱交換器が増加し、1次熱交換器を廃止した効果が得られない。
【0016】
また、イオン交換樹脂の熱劣化を防ぐため、イオン交換フィルタを加熱手段の上流側に設置する方法も考えられるが、冷却液の絶縁性を悪化させるイオン種には解離度の低い弱酸性のイオンもあり、こうした解離度の低いイオン種は、低温では解離しにくいため、イオン交換フィルタで除去しにくく、加熱手段で冷却液の温度が上昇すると解離してイオンを発生させて冷却液の絶縁性を悪化させるという問題点があった。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するため、燃料電池に冷却液を循環させて、前記燃料電池を冷却または暖機する燃料電池の冷却装置であって、前記冷却液を循環させるポンプと、前記冷却液を冷却する熱交換器と、前記冷却液を昇温させる加熱手段と、前記冷却液中のイオンを除去するイオン交換フィルタと、前記熱交換器と前記加熱手段への冷却液流量比を調節する流量調節手段と、を備え、前記熱交換器および加熱手段から排出される冷却液が合流後に前記イオン交換フィルタへ流入するように配置したことを要旨とする。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、一次冷却系と二次冷却系とを設けることなく簡素で車両搭載性に有利な構成でありながら、イオン交換フィルタへ流入する冷却液の温度調整が可能となる。従って、イオン交換フィルタを加熱手段の下流に設置して、効果的に冷却液中のイオンを除去する構成を採用しても、イオン交換フィルタを熱劣化から保護することができ、電力消費の少ない水素燃焼器を加熱手段として使用することもできるという効果がある。
【0019】
【発明の作用】
請求項1記載の燃料電池の冷却装置によれば、熱交換器を経由した冷却液と加熱手段を経由した冷却液とが合流後に、イオン交換フィルタへ冷却液が流入するので、流量調整手段により熱交換器と加熱手段への冷却液流量を調節することにより、イオン交換フィルタへ流入する冷却液の温度を調整することが可能になる。従って、イオン交換フィルタを加熱手段の下流に設置して、効果的に冷却液中のイオン除去する構成としてもイオン交換フィルタを熱劣化から保護することができる。また加熱手段として電力消費の少ない水素燃焼器の使用が可能となる。
【0020】
請求項2記載の燃料電池の冷却装置によれば、冷却液温度が氷点下からの暖機運転時に、イオン交換フィルタに80℃以上の冷却液が流れて劣化することはない。
【0021】
請求項3記載の燃料電池の冷却装置によれば、暖機時においても、イオン交換フィルタの温度をイオン交換性能が高まる40℃〜80℃の範囲に保つことができる。
【0022】
請求項4記載の燃料電池の冷却装置によれば、イオン交換フィルタの流入側に温度測定手段を備え、加熱手段による暖機運転中に、熱交換器および加熱手段からイオン交換フィルタへ流入する冷却液流量比を、合流後の冷却液温度が40〜80℃となるよう調整することができるので、暖機運転開始直後の冷却液温度が氷点下の状態から燃料電池の発電を開始できる0℃の状態まで、冷却液温度が徐々に上昇する過程においても、イオン交換フィルタに流入する冷却液温度をイオン交換樹脂の熱劣化を回避し、燃料電池を効果的に暖機できる好適な温度に維持し続けることが可能となる。
【0023】
請求項5記載の燃料電池の冷却装置によれば、イオン交換フィルタは冷却液流路に対して並列に設置され、冷却液をイオン交換フィルタ7に分流させる流量調整手段を備え、この流量調整手段よりも上流に、熱交換器および加熱手段から合流した冷却液の電気伝導率を測定する、電気伝導率測定手段を備え、冷却液の電気伝導率によりイオン交換フィルタ7に分流させる冷却液流量比を調整するので、圧力損失の大きなイオン交換フィルタの影響を軽減し、冷却系全体の圧力損失を減らして、起動時のポンプの消費電力を節約でき、長期保管後の燃料電池の起動において、冷却液の電気伝導率が高くなっていても、速やかに冷却液の電気伝導率を管理値以下に減少させることが可能になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
〔第一実施形態〕
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る燃料電池の冷却装置の第一実施形態を示す構成図である。同図に示される冷却系は、冷却液により温度調整される燃料電池本体1と、冷却液の熱をシステム外へ放出する熱交換器(ラジエター)2と、冷却液配管3と、冷却液を循環させるポンプ4と、暖機用の加熱手段5と、ポンプ4から送出される冷却液を熱交換器2と加熱手段5とに任意の分流比で分流させる流量調整手段6と、イオン交換樹脂を内蔵し冷却液中の有害なイオンを除去するイオン交換フィルタ7と、制御手段11とを備えている。
【0025】
加熱手段5は、燃料電池システムを低温状態から起動する場合、冷却液の温度を運転状態(例えば、70〜80℃)に昇温する暖機のために設けられている。
【0026】
加熱手段5は、電気ヒーター、ヒートポンプ、水素燃焼器、蓄熱装置等の手段が選択できるが、燃料電池の発電が困難な氷点下における暖機のためには、電力消費量が少なく、燃料から直接熱を発生させる水素燃焼器が燃費の点で好ましい。
【0027】
加熱手段5により昇温された冷却液は、A点において熱交換器2を経由した冷却液と合流後、イオン交換フィルタ7によりイオン除去され、燃料電池本体1に入る。冷却液は氷点下での凍結を防ぐため、凝固点が低いことと冷却・暖機のために比熱が大きな液体である必要があり、例えば自動車のエンジン冷却用不凍液の主成分であるエチレングリコール水溶液等を用いることが望ましい。
【0028】
イオン交換フィルタ7は、冷却液中のイオン除去の目的で設置されるが、解離度の低いイオンを除去するためには、使用温度上限付近で液中イオン性化合物がほとんどイオンに解離した状態で、イオン除去処理を行うことが望ましく、そのためには加熱手段5よりも下流側に設置されることが望ましい。
【0029】
流量調整手段6は、冷却液を加熱手段5と熱交換器2の両者に対して切り替え及び分配する流量を調整する機能を有するもので、図示したような三方弁を用いても、加熱手段側と熱交換器2側の2箇所に流量調整弁を設けてもよい。
【0030】
また、氷点下からの暖機運転においては、ポンプ4より送出される冷却液流量Qのうち、後述するように、0〜56%を熱交換器2側に分配する機能を有することが望ましく。さらに、11〜30%を熱交換器2側に分配する機能を有することが特に望ましい。
【0031】
次に図1に示した本発明の燃料電池の冷却装置による、燃料電池の暖機方法について説明する。燃料電池システムが定常稼動状態にあるときは、流量調整手段6は冷却液を熱交換器2側に流し、燃料電池を冷却する。また、0℃以上から燃料電池を起動する場合は、最初から燃料電池に水素燃料を供給して、発電を行わせることが可能なので、燃料電池自体の発熱により燃料電池を最適運転温度である70〜80℃に昇温可能である。
【0032】
この場合、必要に応じて流量調整手段により熱交換器2へ流入する冷却液流を遮断し、加熱手段へ冷却液を循環させることにより暖機中の熱交換器2からの放熱を防ぐことができ、またはより積極的に加熱手段により冷却液を昇温させることでより速やかな暖機が可能である。しかしながら、氷点下から燃料電池を起動する場合には、燃料電池内部の温度が0℃以上となるまで、燃料電池の発電は困難である。この場合、燃料電池の暖機は加熱手段により昇温された冷却液を燃料電池内に循環させることにより行う。燃料電池の固体電解質膜は通常100℃以下で運転するように設計されているので、暖機運転時に燃料電池を昇温させる冷却液の温度は、燃料電池を部分的に過昇温させることないよう90℃以下とすることが望ましく、また加熱手段からの熱量供給は少しでも多い方が速やかに暖機できるので、加熱手段から送出される冷却液の温度は、例えば20℃程度の温度幅を考慮して、70〜90℃の範囲で運転することが望ましい。
【0033】
しかしながら、イオン交換フィルタ7内のイオン交換樹脂は、高温の冷却液と接触すると熱劣化を起こし、寿命が低下するので、イオン交換フィルタ7に挿入する冷却液温度は40〜80℃とすることが望ましい。そこで、流量調整手段6により、加熱手段および熱交換器2へ冷却液を分配し、加熱手段により70〜90℃に昇温された冷却液に熱交換器2を経由した低温の冷却液を合流させ、冷却液の温度を40〜80℃に調整することが望ましい。
【0034】
暖機運転中にポンプから送出される全流量Qに対し、熱交換器2側に分流される冷却液流量QR の分流比(QR /Q)をαとすると、流量QR はαQであり、同様に加熱手段に分流される冷却液流量QH は(1−α)Qとなる。従って、A点で熱交換器2から流量αQ・温度TR の冷却液と加熱手段から流量(1−α)Q・温度TH の冷却液が合流するので、イオン交換フィルタ7に流入する冷却液温度Tは、
【数1】
T=α・TR +(1−α)・TH …(1)
となる。
【0035】
自動車の動力源としては、−30℃以上の氷点下域からでも起動可能なことが望ましく、起動初期条件として熱交換器2の温度TR を−30℃とすると加熱手段により70〜90℃に昇温された冷却液に、種々の分流比αで熱交換器2に分流した冷却液を混合すると、イオン効果フィルタに流入する温度Tは、図2に示すようになる。同図より、70〜90℃に昇温された冷却液を80℃以下に調節するには、熱交換器2側から分流比αを0.08以上とすることが望ましい。
【0036】
また、暖機運転により燃料電池の温度が上昇し、燃料電池が発電を開始して自己昇温が可能になる0℃おける分流比の必要条件を、同様にして、熱交換器2温度TR を0℃として分流比αに対する温度調整後の冷却液温度の関係から検討すると、これらの関係は図3に示すようであり、70〜90℃に昇温された冷却液を80℃以下に調節するには、熱交換器2側から分流比αを0.11以上とすることが望ましい。
【0037】
従って第一実施形態において−30〜0℃の環境から、燃料電池を0℃以上に昇温させるためには、加熱手段で冷却液を暖機運転中、流量調整手段6の分流比αを0〜56%の範囲に設定して運転することが望ましい。
【0038】
さらに、暖機運転中に加熱手段より送出される冷却液温度が70〜90℃の範囲で変動しても、イオン交換フィルタ7へ流入させる冷却液温度をイオン交換フィルタ7の熱劣化の起こりにくい温度範囲である40〜80℃に調整維持するためには、熱交換器2側の冷却液温度TR が−30℃の場合は図2より8〜30%、TR が0℃の場合は図3より11〜43%であればよく、加熱手段で冷却液を暖機運転中、流量調整手段の分流比αを11〜30%の範囲に設定して運転すると、暖機運転中に加熱手段からの冷却液温度が変動してもイオン交換フィルタ7に流入する冷却液温度を40〜80℃に維持できる点で、特に好ましい。
【0039】
このような暖機運転の後、燃料電池が0℃以上に昇温したら、燃料電池の発電運転を開始し、自己発熱により燃料電池内の温度を運転最適温度まで昇温する。
【0040】
〔第二実施形態〕
図4は、本発明に係る燃料電池の冷却装置の第二実施形態を示す構成図である。同図に示される冷却装置は、図1に示した第一実施形態の構成に加えて、冷却液が合流するA点とイオン交換フィルタ7の間に、温度測定手段8が設置されている。
【0041】
氷点下からの暖機運転においては、温度測定手段8によりイオン交換フィルタ7に流入する冷却液温度を監視し、流量調整手段6を制御手段11により制御することにより、前記測定温度を80℃以下に維持するように運転される。
【0042】
この実施形態においても、氷点下からの暖機運転する場合は、前記分流比αを11%の範囲に設定して運転することが望ましく、11〜30%の範囲に設定して運転することがさらに好ましい。
【0043】
しかし、本実施形態においては、暖機運転中に、イオン交換フィルタ7に流入する冷却液温度を40〜80℃の範囲内の特定の温度に維持するように流量調整手段6を制御することが可能なので、燃料電池の暖機が進行し、燃料電池から排出され熱交換器2を経由してくる冷却液の温度TR が−30℃から0℃へ上昇する過程においても、一定の温度に維持された冷却液をイオン交換フィルタ7に供給できる。
【0044】
従って、本実施形態によれば、イオン交換フィルタ7の熱劣化を回避できる範囲で、最も高い温度の冷却液を燃料電池の暖機に使用でき、より速やかな燃料電池の昇温が可能になるという効果がある。
【0045】
〔第三実施形態〕
図5は、本発明に係る燃料電池の冷却装置の第三実施形態を示す構成図である。同図に示される冷却装置は、図1に示した第一実施形態の構成に対して、イオン交換フィルタ7が冷却液配管3’に並列に設置されてあり、冷却液配管3’とイオン交換フィルタ7との冷却液分流比を制御する流量調整手段9が設置されている。また、熱交換器2と加熱手段5からの冷却液が合流するA点と流量調整手段9との間に、冷却液の電気伝導率κを監視する電気伝導率測定手段10が設置されている。
【0046】
本実施形態においては、制御手段11は、流量調整手段6の制御に加えて、電気伝導率測定手段10が測定した電気伝導率κに基づいて流量調整手段9によりイオン交換フィルタ7への分流比βを制御する。
【0047】
この実施形態においても、氷点下からの暖機運転する場合は、前記分流比αを11%以上の範囲に設定して運転することが望ましく、11〜30%の範囲に設定して運転することがさらに好ましい。
【0048】
それに加えて、他の構成要素に対して圧力損失の大きなイオン交換フィルタ7が冷却系に直列に設置されていないため、冷却系全体の圧力損失が小さくなり、ポンプ4の消費電力を節約することができるという効果がある。
【0049】
全流量Qに対するイオン交換フィルタ7への分流量をQF とすると、分流比β(=QF /Q)を0.2以下に設定すると、イオン交換フィルタ7の圧力損失の影響をほとんど受けなくなる。
【0050】
定常時の運転においては、冷却系の構成要素をイオン溶出の低い材料で製造すれば、低い分流比を設定しても冷却液の電気伝導率を管理値以下に維持することは可能である。しかしながら、長期間燃料電池自動車を保管した後に起動させる場合は冷却液の電気伝導率が管理値を上回っている懸念がある。
【0051】
また、氷点下からの起動で、加熱手段により冷却液を70〜90℃に昇温する暖機運転を、冷却液を交換せずに長期的に繰り返し実施すると、加熱手段から冷却液に溶出するイオン量や加熱手段内部の冷却液が局部的に90℃以上に加熱され、エチレングリコール等の冷却液の不凍成分が酸化分解して、酸性イオンを生成する場合があり、冷却液の電気伝導度を確実に維持するためには、分流比を通常運転時より増加させることが望ましい。
【0052】
このような場合の運転法は、A点の電気伝導率κの冷却液が分流比βでイオン交換フィルタ7に流入したとすると、イオン交換フィルタ7の下流ではイオンが除去され、電気伝導率は問題にならないレベルに低下してしまうので、βQの流量の冷却液中のイオンはほぼ無視できる。
【0053】
従って、イオン交換フィルタ7からの冷却液が合流した後のB点における冷却液の電気伝導率は、(1−β)κに低下しており、電気伝導率の管理値をκ0 とすると、
【数2】
(1−β)κ<κ0 …(2)
β>1−(κ0 /κ) (ただしβ>0) …(3)
式(2)を変形した式(3)で示される分流比βとなるように、電気伝導率測定手段10の測定結果に基づいて、制御手段11が流量調整手段9の分流比を調整することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池の冷却装置の第一実施形態を示す構成図である。
【図2】第一実施形態において、燃焼器で昇温後の冷却液に熱交換器側から合流させる−30℃の冷却液の分流比と、合流後の冷却液の温度の関係を、燃焼器から送出される冷却液の温度をパラメーターとして示した説明図である。
【図3】第一実施形態において、燃焼器で昇温後の冷却液に熱交換器側から合流させる0℃の冷却液の分流比と、合流後の冷却液の温度の関係を、燃焼器から送出される冷却液の温度をパラメーターとして示した説明図である。
【図4】本発明に係る燃料電池の冷却装置の第二実施形態を示す構成図である。
【図5】本発明に係る燃料電池の冷却装置の第三実施形態を示す構成図である。
【図6】暖機機能を有する燃料電池の冷却装置の従来例を示す構成図である。
【図7】イオン交換フィルタへ流入する冷却液の温度調節機能を有する燃料電池の冷却装置の従来例の構成図である。
【符号の説明】
1…燃料電池本体
2…熱交換器
3…冷却液配管
4…ポンプ
5…加熱手段
6…流量調整手段
7…イオン交換フィルタ7
8…温度測定手段
9…流量調整手段
10…電気伝導率測定手段
11…制御手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池の冷却装置に係り、特に暖機機能を有する燃料電池の冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質膜を使用し、100℃以下の温度で水素ガスを燃料として発電を行う小型の燃料電池システムが開発され、自動車用や都市ガスを利用した住宅用の発電システムとして応用されている。このような燃料電池は、70〜80℃の運転温度において最も高効率・高出力が得られる特性を有しており、燃料電池自動車においては、運転温度を好適に維持するために冷却装置を備えている。
【0003】
燃料電池は、水素ガスを燃料として酸素と反応させるため、水ないし水蒸気を排出する。従って、運転時には0℃以上の温度環境であることが望ましく、夜間停止時に氷点下の温度環境に保管されることのある自動車に適用するためには、起動時に冷却液を加熱して循環させることにより、燃料電池を0℃以上に暖機させる装置が必要である。
【0004】
このような暖機機能を有する従来の燃料電池用冷却装置としては、特許文献1に開示された図6に示すような例がある。同図において、冷却装置は、燃料電池本体101、1次冷却水の温度を調整する1次熱交換器102、ポンプ103aおよび1次冷却系配管104により構成される1次冷却系と、冷却液の熱を大気中に放出する2次熱交換器105、ポンプ103b、2次冷却系配管106および1次熱交換器102からなる2次冷却系を備えている。
【0005】
1次冷却系には冷却水の絶縁性を維持するため、冷却液中に溶出するイオンを除去するイオン交換フィルタ107が設置されている。また、2次冷却系には流路切替手段108と2次冷却水を昇温させる加熱手段109が備わっている。
【0006】
燃料電池本体101を暖機する場合には、流路切替手段108により2次熱交換器105から流出する冷却液流を遮断して冷却液を加熱手段109と1次熱交換器102の間で循環させ、加熱手段109により2次冷却水を昇温させる。同時に1次冷却系の冷却液もポンプ103aで循環させることにより、1次熱交換器102を経由して1次冷却水を昇温させ、燃料電池本体101を暖機する。
【0007】
また、イオン交換フィルタは、イオン交換樹脂により冷却液中に溶出したイオンを水素イオン[H+ ]あるいは水酸イオン[OH- ]に交換して、中和する機能を果たすものである。しかしイオン交換樹脂が高温の冷却液に接触すると、熱劣化を起こして、寿命が短くなるという性質がある。
【0008】
このようなイオン交換樹脂の熱劣化を防ぐために、特許文献2に開示された図7に示すような例もある。同図においては、燃料電池本体101、1次熱交換器102、ポンプ103a、1次冷却系配管104およびイオン交換フィルタ107により構成される1次冷却系に、熱交換器110と放熱器111が設置されており、イオン交換フィルタへ流入する冷却液の温度を下げてからイオン交換フィルタでイオン交換を行い、その後冷却液の温度を昇温させて冷却系へ戻している。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−117876号公報(第3ページ、図1)
【0010】
【特許文献2】
特開2002−110205号公報(第3ページ、図1)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の燃料電池の冷却装置においては、以下のような問題点があった。
【0012】
すなわち、冷却系を1次側と2次側に分離するため、1次熱交換器と2次熱交換器が必要になり、内燃機関を搭載する自動車の冷却系と比較すると熱交換器が多く、システムが大型で複雑化し、自動車のように搭載場所が限定されるものへ適用するには、不利な構成であるという問題点があった。
【0013】
この問題点を解決するため、1次熱交換器を廃止した冷却装置の構成とすることが好ましいが、起動時の暖機運転に際して、加熱手段により加熱された冷却液が直接イオン交換フィルタに流入することとなる。イオン交換フィルタに用いられるイオン交換樹脂は、前記したように高温の冷却液に接触すると熱劣化を起こすため、流入する冷却液の温度を40〜80℃程度に維持することが望ましい。車載可能な加熱手段としては、電気ヒータ、ヒートポンプ、水素燃焼器等が考えられるが燃料電池が発電を始める前に電力を消費しない点では水素燃焼器が好ましい。
【0014】
しかしながら、加熱手段とイオン交換フィルタの中間に熱交換器が介在しない構成の冷却系では、冷却液の温度調整を加熱手段の発熱量制御で行うしかなく、制御性のよい電気ヒーターは加熱手段として使用できるが、水素燃焼器の使用は制御が複雑化して困難になる。特に氷点下からの起動においては、燃料電池が0℃以上に暖機されるまでは発電が難しいため、電気ヒーターの使用は難しいという問題があった。
【0015】
イオン交換フィルタの上流に熱交換器や放熱器を設置して、冷却液温度を下げてイオン交換フィルタに流入させる従来例を適用し、加熱手段に水素燃焼器を使用する方法も考えられるが、これでは熱交換器が増加し、1次熱交換器を廃止した効果が得られない。
【0016】
また、イオン交換樹脂の熱劣化を防ぐため、イオン交換フィルタを加熱手段の上流側に設置する方法も考えられるが、冷却液の絶縁性を悪化させるイオン種には解離度の低い弱酸性のイオンもあり、こうした解離度の低いイオン種は、低温では解離しにくいため、イオン交換フィルタで除去しにくく、加熱手段で冷却液の温度が上昇すると解離してイオンを発生させて冷却液の絶縁性を悪化させるという問題点があった。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題点を解決するため、燃料電池に冷却液を循環させて、前記燃料電池を冷却または暖機する燃料電池の冷却装置であって、前記冷却液を循環させるポンプと、前記冷却液を冷却する熱交換器と、前記冷却液を昇温させる加熱手段と、前記冷却液中のイオンを除去するイオン交換フィルタと、前記熱交換器と前記加熱手段への冷却液流量比を調節する流量調節手段と、を備え、前記熱交換器および加熱手段から排出される冷却液が合流後に前記イオン交換フィルタへ流入するように配置したことを要旨とする。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、一次冷却系と二次冷却系とを設けることなく簡素で車両搭載性に有利な構成でありながら、イオン交換フィルタへ流入する冷却液の温度調整が可能となる。従って、イオン交換フィルタを加熱手段の下流に設置して、効果的に冷却液中のイオンを除去する構成を採用しても、イオン交換フィルタを熱劣化から保護することができ、電力消費の少ない水素燃焼器を加熱手段として使用することもできるという効果がある。
【0019】
【発明の作用】
請求項1記載の燃料電池の冷却装置によれば、熱交換器を経由した冷却液と加熱手段を経由した冷却液とが合流後に、イオン交換フィルタへ冷却液が流入するので、流量調整手段により熱交換器と加熱手段への冷却液流量を調節することにより、イオン交換フィルタへ流入する冷却液の温度を調整することが可能になる。従って、イオン交換フィルタを加熱手段の下流に設置して、効果的に冷却液中のイオン除去する構成としてもイオン交換フィルタを熱劣化から保護することができる。また加熱手段として電力消費の少ない水素燃焼器の使用が可能となる。
【0020】
請求項2記載の燃料電池の冷却装置によれば、冷却液温度が氷点下からの暖機運転時に、イオン交換フィルタに80℃以上の冷却液が流れて劣化することはない。
【0021】
請求項3記載の燃料電池の冷却装置によれば、暖機時においても、イオン交換フィルタの温度をイオン交換性能が高まる40℃〜80℃の範囲に保つことができる。
【0022】
請求項4記載の燃料電池の冷却装置によれば、イオン交換フィルタの流入側に温度測定手段を備え、加熱手段による暖機運転中に、熱交換器および加熱手段からイオン交換フィルタへ流入する冷却液流量比を、合流後の冷却液温度が40〜80℃となるよう調整することができるので、暖機運転開始直後の冷却液温度が氷点下の状態から燃料電池の発電を開始できる0℃の状態まで、冷却液温度が徐々に上昇する過程においても、イオン交換フィルタに流入する冷却液温度をイオン交換樹脂の熱劣化を回避し、燃料電池を効果的に暖機できる好適な温度に維持し続けることが可能となる。
【0023】
請求項5記載の燃料電池の冷却装置によれば、イオン交換フィルタは冷却液流路に対して並列に設置され、冷却液をイオン交換フィルタ7に分流させる流量調整手段を備え、この流量調整手段よりも上流に、熱交換器および加熱手段から合流した冷却液の電気伝導率を測定する、電気伝導率測定手段を備え、冷却液の電気伝導率によりイオン交換フィルタ7に分流させる冷却液流量比を調整するので、圧力損失の大きなイオン交換フィルタの影響を軽減し、冷却系全体の圧力損失を減らして、起動時のポンプの消費電力を節約でき、長期保管後の燃料電池の起動において、冷却液の電気伝導率が高くなっていても、速やかに冷却液の電気伝導率を管理値以下に減少させることが可能になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
〔第一実施形態〕
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明に係る燃料電池の冷却装置の第一実施形態を示す構成図である。同図に示される冷却系は、冷却液により温度調整される燃料電池本体1と、冷却液の熱をシステム外へ放出する熱交換器(ラジエター)2と、冷却液配管3と、冷却液を循環させるポンプ4と、暖機用の加熱手段5と、ポンプ4から送出される冷却液を熱交換器2と加熱手段5とに任意の分流比で分流させる流量調整手段6と、イオン交換樹脂を内蔵し冷却液中の有害なイオンを除去するイオン交換フィルタ7と、制御手段11とを備えている。
【0025】
加熱手段5は、燃料電池システムを低温状態から起動する場合、冷却液の温度を運転状態(例えば、70〜80℃)に昇温する暖機のために設けられている。
【0026】
加熱手段5は、電気ヒーター、ヒートポンプ、水素燃焼器、蓄熱装置等の手段が選択できるが、燃料電池の発電が困難な氷点下における暖機のためには、電力消費量が少なく、燃料から直接熱を発生させる水素燃焼器が燃費の点で好ましい。
【0027】
加熱手段5により昇温された冷却液は、A点において熱交換器2を経由した冷却液と合流後、イオン交換フィルタ7によりイオン除去され、燃料電池本体1に入る。冷却液は氷点下での凍結を防ぐため、凝固点が低いことと冷却・暖機のために比熱が大きな液体である必要があり、例えば自動車のエンジン冷却用不凍液の主成分であるエチレングリコール水溶液等を用いることが望ましい。
【0028】
イオン交換フィルタ7は、冷却液中のイオン除去の目的で設置されるが、解離度の低いイオンを除去するためには、使用温度上限付近で液中イオン性化合物がほとんどイオンに解離した状態で、イオン除去処理を行うことが望ましく、そのためには加熱手段5よりも下流側に設置されることが望ましい。
【0029】
流量調整手段6は、冷却液を加熱手段5と熱交換器2の両者に対して切り替え及び分配する流量を調整する機能を有するもので、図示したような三方弁を用いても、加熱手段側と熱交換器2側の2箇所に流量調整弁を設けてもよい。
【0030】
また、氷点下からの暖機運転においては、ポンプ4より送出される冷却液流量Qのうち、後述するように、0〜56%を熱交換器2側に分配する機能を有することが望ましく。さらに、11〜30%を熱交換器2側に分配する機能を有することが特に望ましい。
【0031】
次に図1に示した本発明の燃料電池の冷却装置による、燃料電池の暖機方法について説明する。燃料電池システムが定常稼動状態にあるときは、流量調整手段6は冷却液を熱交換器2側に流し、燃料電池を冷却する。また、0℃以上から燃料電池を起動する場合は、最初から燃料電池に水素燃料を供給して、発電を行わせることが可能なので、燃料電池自体の発熱により燃料電池を最適運転温度である70〜80℃に昇温可能である。
【0032】
この場合、必要に応じて流量調整手段により熱交換器2へ流入する冷却液流を遮断し、加熱手段へ冷却液を循環させることにより暖機中の熱交換器2からの放熱を防ぐことができ、またはより積極的に加熱手段により冷却液を昇温させることでより速やかな暖機が可能である。しかしながら、氷点下から燃料電池を起動する場合には、燃料電池内部の温度が0℃以上となるまで、燃料電池の発電は困難である。この場合、燃料電池の暖機は加熱手段により昇温された冷却液を燃料電池内に循環させることにより行う。燃料電池の固体電解質膜は通常100℃以下で運転するように設計されているので、暖機運転時に燃料電池を昇温させる冷却液の温度は、燃料電池を部分的に過昇温させることないよう90℃以下とすることが望ましく、また加熱手段からの熱量供給は少しでも多い方が速やかに暖機できるので、加熱手段から送出される冷却液の温度は、例えば20℃程度の温度幅を考慮して、70〜90℃の範囲で運転することが望ましい。
【0033】
しかしながら、イオン交換フィルタ7内のイオン交換樹脂は、高温の冷却液と接触すると熱劣化を起こし、寿命が低下するので、イオン交換フィルタ7に挿入する冷却液温度は40〜80℃とすることが望ましい。そこで、流量調整手段6により、加熱手段および熱交換器2へ冷却液を分配し、加熱手段により70〜90℃に昇温された冷却液に熱交換器2を経由した低温の冷却液を合流させ、冷却液の温度を40〜80℃に調整することが望ましい。
【0034】
暖機運転中にポンプから送出される全流量Qに対し、熱交換器2側に分流される冷却液流量QR の分流比(QR /Q)をαとすると、流量QR はαQであり、同様に加熱手段に分流される冷却液流量QH は(1−α)Qとなる。従って、A点で熱交換器2から流量αQ・温度TR の冷却液と加熱手段から流量(1−α)Q・温度TH の冷却液が合流するので、イオン交換フィルタ7に流入する冷却液温度Tは、
【数1】
T=α・TR +(1−α)・TH …(1)
となる。
【0035】
自動車の動力源としては、−30℃以上の氷点下域からでも起動可能なことが望ましく、起動初期条件として熱交換器2の温度TR を−30℃とすると加熱手段により70〜90℃に昇温された冷却液に、種々の分流比αで熱交換器2に分流した冷却液を混合すると、イオン効果フィルタに流入する温度Tは、図2に示すようになる。同図より、70〜90℃に昇温された冷却液を80℃以下に調節するには、熱交換器2側から分流比αを0.08以上とすることが望ましい。
【0036】
また、暖機運転により燃料電池の温度が上昇し、燃料電池が発電を開始して自己昇温が可能になる0℃おける分流比の必要条件を、同様にして、熱交換器2温度TR を0℃として分流比αに対する温度調整後の冷却液温度の関係から検討すると、これらの関係は図3に示すようであり、70〜90℃に昇温された冷却液を80℃以下に調節するには、熱交換器2側から分流比αを0.11以上とすることが望ましい。
【0037】
従って第一実施形態において−30〜0℃の環境から、燃料電池を0℃以上に昇温させるためには、加熱手段で冷却液を暖機運転中、流量調整手段6の分流比αを0〜56%の範囲に設定して運転することが望ましい。
【0038】
さらに、暖機運転中に加熱手段より送出される冷却液温度が70〜90℃の範囲で変動しても、イオン交換フィルタ7へ流入させる冷却液温度をイオン交換フィルタ7の熱劣化の起こりにくい温度範囲である40〜80℃に調整維持するためには、熱交換器2側の冷却液温度TR が−30℃の場合は図2より8〜30%、TR が0℃の場合は図3より11〜43%であればよく、加熱手段で冷却液を暖機運転中、流量調整手段の分流比αを11〜30%の範囲に設定して運転すると、暖機運転中に加熱手段からの冷却液温度が変動してもイオン交換フィルタ7に流入する冷却液温度を40〜80℃に維持できる点で、特に好ましい。
【0039】
このような暖機運転の後、燃料電池が0℃以上に昇温したら、燃料電池の発電運転を開始し、自己発熱により燃料電池内の温度を運転最適温度まで昇温する。
【0040】
〔第二実施形態〕
図4は、本発明に係る燃料電池の冷却装置の第二実施形態を示す構成図である。同図に示される冷却装置は、図1に示した第一実施形態の構成に加えて、冷却液が合流するA点とイオン交換フィルタ7の間に、温度測定手段8が設置されている。
【0041】
氷点下からの暖機運転においては、温度測定手段8によりイオン交換フィルタ7に流入する冷却液温度を監視し、流量調整手段6を制御手段11により制御することにより、前記測定温度を80℃以下に維持するように運転される。
【0042】
この実施形態においても、氷点下からの暖機運転する場合は、前記分流比αを11%の範囲に設定して運転することが望ましく、11〜30%の範囲に設定して運転することがさらに好ましい。
【0043】
しかし、本実施形態においては、暖機運転中に、イオン交換フィルタ7に流入する冷却液温度を40〜80℃の範囲内の特定の温度に維持するように流量調整手段6を制御することが可能なので、燃料電池の暖機が進行し、燃料電池から排出され熱交換器2を経由してくる冷却液の温度TR が−30℃から0℃へ上昇する過程においても、一定の温度に維持された冷却液をイオン交換フィルタ7に供給できる。
【0044】
従って、本実施形態によれば、イオン交換フィルタ7の熱劣化を回避できる範囲で、最も高い温度の冷却液を燃料電池の暖機に使用でき、より速やかな燃料電池の昇温が可能になるという効果がある。
【0045】
〔第三実施形態〕
図5は、本発明に係る燃料電池の冷却装置の第三実施形態を示す構成図である。同図に示される冷却装置は、図1に示した第一実施形態の構成に対して、イオン交換フィルタ7が冷却液配管3’に並列に設置されてあり、冷却液配管3’とイオン交換フィルタ7との冷却液分流比を制御する流量調整手段9が設置されている。また、熱交換器2と加熱手段5からの冷却液が合流するA点と流量調整手段9との間に、冷却液の電気伝導率κを監視する電気伝導率測定手段10が設置されている。
【0046】
本実施形態においては、制御手段11は、流量調整手段6の制御に加えて、電気伝導率測定手段10が測定した電気伝導率κに基づいて流量調整手段9によりイオン交換フィルタ7への分流比βを制御する。
【0047】
この実施形態においても、氷点下からの暖機運転する場合は、前記分流比αを11%以上の範囲に設定して運転することが望ましく、11〜30%の範囲に設定して運転することがさらに好ましい。
【0048】
それに加えて、他の構成要素に対して圧力損失の大きなイオン交換フィルタ7が冷却系に直列に設置されていないため、冷却系全体の圧力損失が小さくなり、ポンプ4の消費電力を節約することができるという効果がある。
【0049】
全流量Qに対するイオン交換フィルタ7への分流量をQF とすると、分流比β(=QF /Q)を0.2以下に設定すると、イオン交換フィルタ7の圧力損失の影響をほとんど受けなくなる。
【0050】
定常時の運転においては、冷却系の構成要素をイオン溶出の低い材料で製造すれば、低い分流比を設定しても冷却液の電気伝導率を管理値以下に維持することは可能である。しかしながら、長期間燃料電池自動車を保管した後に起動させる場合は冷却液の電気伝導率が管理値を上回っている懸念がある。
【0051】
また、氷点下からの起動で、加熱手段により冷却液を70〜90℃に昇温する暖機運転を、冷却液を交換せずに長期的に繰り返し実施すると、加熱手段から冷却液に溶出するイオン量や加熱手段内部の冷却液が局部的に90℃以上に加熱され、エチレングリコール等の冷却液の不凍成分が酸化分解して、酸性イオンを生成する場合があり、冷却液の電気伝導度を確実に維持するためには、分流比を通常運転時より増加させることが望ましい。
【0052】
このような場合の運転法は、A点の電気伝導率κの冷却液が分流比βでイオン交換フィルタ7に流入したとすると、イオン交換フィルタ7の下流ではイオンが除去され、電気伝導率は問題にならないレベルに低下してしまうので、βQの流量の冷却液中のイオンはほぼ無視できる。
【0053】
従って、イオン交換フィルタ7からの冷却液が合流した後のB点における冷却液の電気伝導率は、(1−β)κに低下しており、電気伝導率の管理値をκ0 とすると、
【数2】
(1−β)κ<κ0 …(2)
β>1−(κ0 /κ) (ただしβ>0) …(3)
式(2)を変形した式(3)で示される分流比βとなるように、電気伝導率測定手段10の測定結果に基づいて、制御手段11が流量調整手段9の分流比を調整することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池の冷却装置の第一実施形態を示す構成図である。
【図2】第一実施形態において、燃焼器で昇温後の冷却液に熱交換器側から合流させる−30℃の冷却液の分流比と、合流後の冷却液の温度の関係を、燃焼器から送出される冷却液の温度をパラメーターとして示した説明図である。
【図3】第一実施形態において、燃焼器で昇温後の冷却液に熱交換器側から合流させる0℃の冷却液の分流比と、合流後の冷却液の温度の関係を、燃焼器から送出される冷却液の温度をパラメーターとして示した説明図である。
【図4】本発明に係る燃料電池の冷却装置の第二実施形態を示す構成図である。
【図5】本発明に係る燃料電池の冷却装置の第三実施形態を示す構成図である。
【図6】暖機機能を有する燃料電池の冷却装置の従来例を示す構成図である。
【図7】イオン交換フィルタへ流入する冷却液の温度調節機能を有する燃料電池の冷却装置の従来例の構成図である。
【符号の説明】
1…燃料電池本体
2…熱交換器
3…冷却液配管
4…ポンプ
5…加熱手段
6…流量調整手段
7…イオン交換フィルタ7
8…温度測定手段
9…流量調整手段
10…電気伝導率測定手段
11…制御手段
Claims (5)
- 燃料電池に冷却液を循環させて、前記燃料電池を冷却または暖機する燃料電池の冷却装置であって、前記冷却液を循環させるポンプと、前記冷却液を冷却する熱交換器と、前記冷却液を昇温させる加熱手段と、前記冷却液中のイオンを除去するイオン交換フィルタと、前記熱交換器と前記加熱手段への冷却液流量比を調節する流量調節手段と、を備え、
前記熱交換器および加熱手段から排出される冷却液が合流後に前記イオン交換フィルタへ流入するように配置したことを特徴とする燃料電池の冷却装置。 - 氷点下からの暖機運転において、加熱手段の冷却液出口温度が90℃以下でかつ前記冷却液流量比は11%以上であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の冷却装置。
- 氷点下からの暖機運転において、加熱手段の冷却液出口温度が70℃〜90℃でかつ前記冷却液流量比が11%〜30%であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の冷却装置。
- 前記イオン交換フィルタ流入側に温度測定手段を備え、加熱手段による暖機運転中に、前記熱交換器および加熱手段から前記イオン交換フィルタへ流入する、冷却液流量比を、合流後の冷却液温度が40〜80℃となるよう調整することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の燃料電池の冷却装置。
- 前記イオン交換フィルタは冷却液流路に対して並列に設置され、冷却液をイオン交換フィルタに分流させる流量調整手段を備え、前記流量調整手段よりも上流に、前記熱交換器および加熱手段から合流した冷却液の電気伝導率を測定する、電気伝導率測定手段を備え、冷却液の電気伝導率によりイオン交換フィルタに分流させる冷却液流量比を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の燃料電池の冷却装置。
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