JP2004190829A - 動力伝達用チェーンおよび動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の動力伝達用チェーン(無段変速機用チェーン)1は、複数のリンク2と、これらを相互に連結する複数のピン3とを備えている。このチェーン1は、第1および第2のプーリの間に架け渡されて用いられ、前記ピン3の端面と第1および第2のプーリのシーブ面との間で滑り接触をする。このため、チェーン1のピン3の端面3a、3bに、硬化処理により表層部6を形成し、さらにその端面3a、3bの表面粗さRaを0.2〜2.0μmの範囲に設定するようにした。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両などに採用される無段変速機用チェーン等の動力伝達用チェーンおよび無段変速機等の動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)としては、例えば、エンジン側に設けられたドライブプーリと、駆動輪側に設けられたドリブンプーリと、両者間に架け渡された無端状のチェーンとを備えたものがある。この無段変速機では、ドライブプーリやドリブンプーリの円錐面状のシーブ面とチェーンのピン端面とが境界潤滑で接触することにより大きな動力伝達が行われ、またドライブプーリとドリブンプーリのそれぞれの溝幅(シーブ面間距離)を連続的に変えることで無段の変速が可能となっている。
【0003】
このような無段変速機に用いられるチェーンは、無段の変速を可能とし、かつ効率良く動力伝達を行う必要があることから、境界潤滑状態(接触面内の一部が微小突起の直接接触で、残部が潤滑油膜を介して接触する潤滑状態)で、ドライブプーリやドリブンプーリのシーブ面と接触させて組み込まれる。詳細には、変速時にはシーブ面の内外方向に滑り接触をするとともにシーブ面の周方向に若干の滑り接触をすることで動力を伝達し、また一定の伝達比に固定して動力伝達が行われる時にはシーブ面の周方向に若干の滑り接触をすることで動力を伝達する状態で組み込まれる。
ところが、このような境界潤滑状態の接触では金属チェーンのピン端面とシーブ面とが直接金属接触する部分があるので、特に高面圧高トルク条件(高面圧400MPa以上、高トルク300N・m以上)下での使用において、異常摩耗が生じてしまうという問題がある。この問題を解決するために、摩擦係数を小さくあるいは接触面圧を小さくすることが考えられるが、これらが小さいとスリップ(特にマクロスリップ)が生じて、効率良く動力伝達が行われない。このように、耐摩耗性と高摩擦係数(高面圧)とは二律背反の関係にあるので、高面圧高トルク条件下において異常摩耗が生じず、しかも効率良く動力伝達が行えるチェーンの開発が望まれている。
【0004】
このようななか、例えば、特に無段階に調節可能な円錐円板形巻き掛け伝動装置のためのリンクプレートチェーンであって、該リンクプレートチェーンの、プレートによって形成された個別のチェーンリンクを結合するジョイント部材が、プレートの切欠内に挿入された、互いに支え合う転動面を備えたクレードル部材の対として構成されている形式のものにおいて、円錐円板と作用接触するクレードル部材の少なくとも端面が、窒素を含有する縁部層例えば浸炭窒化層を備えているリンクプレートチェーンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−147542号公報(請求項1、図1、図3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したリンクプレートチェーンは、プーリとの接触面を浸炭窒化層にしているので、ある程度耐摩耗性が向上したものとなっているが、高面圧高トルク条件下での使用に充分に耐えられるものではない。特に、上記したような無段変速機では、大型車への適用が重要課題となっており、高面圧高トルク条件下で使用しても長期にわたって安定して所定の伝達比で動力伝達が行える技術の開発が嘱望されていた。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、高面圧高トルク条件下で使用しても異常摩耗が生じない程度の耐摩耗性と効率良く動力伝達が行える程度の高摩擦係数とを兼ね備えた動力伝達用チェーンおよび動力伝達装置の提供をその目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の動力伝達用チェーンは、複数のリンクと、これらを相互に連結する複数のピンとを備え、円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリとの間に架け渡されて用いられ、前記ピンの端面と前記第1および第2のプーリのシーブ面との間で滑り接触をする動力伝達用チェーンであって、前記ピンの端面には、硬化処理により表層部が形成されており、かつ、その端面の表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されていることを特徴としている(請求項1)。
上記の構成によれば、動力伝達装置に組み込んだ場合にシーブ面と接触するピン端面に硬化処理により表層部が形成されているので、耐摩耗性が向上する。しかも、表層部の表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されているので、安定した境界潤滑状態の油膜を形成できるとともに、局部的な接触面圧が増加するために摩擦係数が高くなる。このように、硬化処理と特定の表面粗さとが相俟って、高面圧高トルク条件(高面圧400MPa以上、高トルク300N・m以上)下で使用しても異常摩耗が生じない程度の耐摩耗性と効率良く動力伝達が行える程度の高摩擦係数とを兼ね備えた動力伝達用チェーンを提供できる。
【0009】
上記の動力伝達用チェーンにおいて、前記硬化処理が、ショットピーニング処理である場合(請求項2)には、表面を硬化させると同時に表面に凹凸を形成できることに加えて、残留圧縮応力を付与できるので、疲労寿命がより向上したものになる。
また、上記の動力伝達用チェーンにおいて、前記表層部における最大の残留圧縮応力が、800〜1200MPaの範囲に設定されている場合(請求項3)には、特に内部起点剥離を有効に防止できるので、確実に疲労寿命が向上したものになる。
【0010】
本発明の動力伝達装置は、円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリと、両者の間に架け渡され、前記第1および第2のプーリのシーブ面と滑り接触をする端面を有する複数のピンと、これらピンによって相互に連結された複数のリンクとを有するチェーンとを備えた動力伝達装置であって、前記ピンの端面および、第1および第2のプーリのシーブ面のうちの少なくとも一方の面には、硬化処理により表層部が形成されており、かつ前記ピンの端面および、第1および第2のプーリのシーブ面のうちの少なくとも一方の面の表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されていることを特徴としている(請求項4)。
上記の構成によれば、変速時などに滑り接触するシーブ面およびピン端面のうちのいずれか一方の面に硬化処理が施されているので、耐摩耗性が向上する。しかも、シーブ面およびピン端面のうちの少なくとも一方の面の表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されているので、安定した境界潤滑状態(接触面内の一部が微小突起の直接接触で、残部が潤滑油膜を介して接触する潤滑状態)を保つことができる。また、このとき、接触面内では、局部的に接触面圧が増加(接触部の面圧が増加)するために摩擦係数が高くなる。このように、硬化処理と特定の表面粗さとが相俟って、高面圧高トルク条件(高面圧400MPa以上、高トルク300N・m以上)下であっても、長期にわたって安定して所定の伝達比で動力伝達を行うことができる動力伝達装置を提供できる。
【0011】
上記の動力伝達装置において、前記硬化処理が、ショットピーニング処理である場合には、表面を硬化させると同時に表面に凹凸を形成できることに加えて、残留圧縮応力を付与できるので、疲労寿命が向上したものになる。
また、上記の動力伝達装置において、前記表層部における最大の残留圧縮応力が、800〜1200MPaの範囲に設定されている場合には、特に内部起点剥離を有効に防止できるので、確実に疲労寿命が向上したものになる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の動力伝達用チェーンとしての無段変速機用チェーン(以下、単に「チェーン」ともいう)および動力伝達装置としての無段変速機の実施の形態について説明する。まず、本発明の動力伝達用チェーンとしてのチェーンについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の動力伝達用チェーンとしてのチェーンの一実施形態の要部構成を模式的に示す斜視図であり、図2はそのX−X矢視断面図である。本形態に係るチェーン1は、無端状であって、複数の金属(軸受鋼等)製リンク2と、これらリンク2を交互に連結するための複数の金属(軸受鋼等)製ピン3とから構成される。
リンク2は、直方体状であって、1枚につき貫通孔4が2つずつ設けられており、貫通孔4毎にそれぞれピン3が2つずつ圧入できるようになっている。そして、リンク2は、チェーン1の幅方向に平行に配列され、1列おきに貫通孔4が1つ分ずれるよう、さらにチェーン1の長手方向に屈曲可能なように連結されている。
ピン3は、傾斜した端面3a、3bを有し、かつ貫通孔4内周面に沿う側面を有する棒状体であり、その側面をリンク2の貫通孔4の内周面に沿わせて、周方向に摺動可能に圧入されている。なお、ピン3側面や貫通孔4内周面には、摩耗や摺動抵抗を減少させるために、二硫化モリブデン、フッ素等の固体潤滑材を塗布したり、あるいはショットピーニング処理やバレル処理等の粗面化処理を施して潤滑油溜まりのための凹部を形成してもよい。また、ピン3はリンク2から抜け落ちないように端面3a、3b側が膨らんだ形状等になっていてもよい。
【0013】
そして、ピン3の傾斜した端面3a、3bには、硬化処理が施されて表層部6が形成されている。硬化処理としては、ショットピーニング処理などの各種の表面硬化処理が採用される。ここで、表層部6は、通常、深さ0.15mm程度である。表層部6の硬度は、表面では64HRC以上、内部(深さ0.15mm)では60HRC以上に設定されていることが好ましい。硬度が小さすぎると、高面圧高トルク条件下での使用に耐えうる程度の耐摩耗性を確保できないおそれがあるからである。
【0014】
また、ピン3の傾斜した端面3a、3bに形成された表層部6は、その表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されている。0.2μm未満であると、安定した境界潤滑状態を保ち難くなって、高面圧高トルク条件下での使用において効率良く動力伝達を行える摩擦係数を確保できないおそれがあり、逆に2.0μmを超えると、高面圧高トルク条件下での使用において異常摩耗が生じる、無段変速機のプーリのシーブ面に大きな損傷を与える等の不具合が生じるおそれがあるからである。表面粗さRaの好適な範囲は、0.6〜1.0μmの範囲である。なお、このような表面粗さにするには、平滑な面(例えば、研磨処理後の面)に対し、ショットピーニング処理、バレル処理などの各種の粗面化処理により行うことができる。
【0015】
さらに、表層部6の最大の残留圧縮応力が800〜1200MPaの範囲に設定されていることが好ましい。このような範囲内であれば、特に内部起点剥離をも効果的に防止でき、その結果として確実に疲労寿命も向上したものとなるからである。なお、残留圧縮応力の付与は、ショットピーニング処理、ローラバニシング処理などの各種の残留圧縮応力付与処理により行うことができる。
【0016】
このようなピン3は、例えば、軸受鋼からなる素材に対し、鍛造、旋削、熱処理、研磨等の公知の各種の処理を施した後、上述したような、硬化処理、粗面化処理、残留圧縮応力付与処理などを行うことにより製造できる。ショットピーニング処理であれば、ピンの形状などに応じて適切な条件を選択すれば、硬化、粗面化、残留圧縮応力付与を1回で済ますことができるという利点がある。
【0017】
本形態に係るチェーン1は、ピン端面3a、3bに硬化処理により表層部6が形成され、さらに表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されているので、高面圧高トルク条件下で使用しても異常摩耗が生じない程度の耐摩耗性と効率良く動力伝達が行える程度の高摩擦係数とを兼ね備えたものになる。また、表層部6における最大の残留圧縮応力が800〜1200MPaの範囲に設定されている場合には、特に内部起点剥離が防止され、疲労寿命がより向上したものになる。
【0018】
なお、上記ではピン3の材質として軸受鋼を用いる場合を説明したが、これに限定するものではなく、その他の金属を用いることができる。
また、ピン3は貫通孔4毎に2つずつ圧入した場合を説明したが、これに限定するものではなく、1つずつであっても差し支えない。
また、ピン3の他に、貫通孔4と摺動しないストリップが圧入されたものであっても同様に適用できる。すなわち、ストリップの端面に硬化処理により表層部を形成し、かつその端面の表面粗さRaを0.2〜2.0μmの範囲に設定するようにしてもよい。さらに、ストリップとピン3との間で接触が生じる場合には、両者のうちの少なくとも一方に、摩耗や摺動抵抗を減少させるために、二硫化モリブデン、フッ素等の固体潤滑材を塗布したり、あるいはショットピーニング処理やバレル処理等の粗面化処理を施して潤滑油溜まりのための凹部を形成してもよい。
さらに、ピン3の形状についても、チェーン1の長手方向に屈曲可能にリンク2を連結できる形状であれば特に制限はない。
さらに、リンク2の形状は、上記のような直方体形状に限らず公知の各種の形状を採用することができる。
【0019】
つぎに、本発明の動力伝達装置としての無段変速機の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図3は、本発明の動力伝達装置としての無段変速機の一実施形態の要部構成を示す模式的な斜視図である。本形態に係る無段変速機は、例えば自動車に搭載され、第1のプーリとしての金属(構造用鋼等)製ドライブプーリ10と、第2のプーリとしての金属(構造用鋼等)製ドリブンプーリ20と、その間に架け渡された無端状のチェーン1とを備えている。なお、図3中のチェーン1は理解を容易にするために一部断面を明示している。
図4も参照して、ドライブプーリ10は、エンジン側に接続された入力軸11に一体回転可能に取付けられたものであり、円錐面状の傾斜面12aを有する固定シーブ12と、その傾斜面12aに対向して配置される円錐面状の傾斜面13aを有する可動シーブ13とを備えており、これらシーブの傾斜面12a、13aにより溝を形成し、この溝によってチェーン1を挟んで保持するようになっている。また、可動シーブ13には、溝幅を変更するための油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、図4の左右方向に可動シーブ13を移動させることにより溝幅を変化させ、それにより図4の上下方向にチェーン1を移動させて入力軸11に対するチェーン1の巻掛け半径を変化できるようになっている。
【0020】
一方、ドリブンプーリ20は、駆動輪側に接続された出力軸21に一体回転可能に取り付けられており、ドライブプーリ10と同様に、チェーン1を挟む溝を形成するための傾斜面を有する固定シーブ22と可動シーブ23とを備えている。また、このプーリ20の可動シーブ23には、ドライブプーリ10の可動シーブ13と同様に、油圧アクチュエータ(図示せず)が接続されており、変速時に、可動シーブ13を移動させることにより、溝幅を変化させ、それによりチェーン1を移動させて出力軸21に対するチェーン1の巻掛け半径を変化できるようになっている。
【0021】
上記ドライブプーリ10とドリブンプーリ20との間に架け渡されるチェーン1は、上述した、図1および図2に示すものである。すなわち、チェーン1を構成するピン3は、その端面には硬化処理により表層部6が形成され、しかもその表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されているものである。なお、詳細については、上述したとおりであるので、その説明は省略する。
【0022】
本形態に係る無段変速機は、ピン端面に硬化処理により表層部が形成され、しかもその表面粗さが0.2〜2.0μmの範囲に設定されたチェーンを用いているので、高面圧高トルク条件(高面圧400MPa以上、高トルク300N・m以上)下であっても、長期にわたって安定して所定の伝達比で動力伝達を行うことができる。詳細には、例えば出力軸21の回転を減速する場合、ドライブプーリ10側の溝幅を可動シーブ13の移動によって拡大させ、チェーン1のピン端面を円錐面状のシーブ面の内側方向(図4の下方向)に向けて滑り接触させながらチェーン1の入力軸11に対する巻き掛け径を小さくする一方、ドリブンプーリ20側では可動シーブ23の移動によって溝幅を縮小させ、チェーン1のピン端面を円錐面状のシーブ面の外側方向に向けて滑り接触させながらチェーン1の出力軸21に対する巻き掛け径を大きくする。逆に、例えば出力軸21の回転を増速する場合、ドライブプーリ10側の溝幅を可動シーブ13の移動によって縮小させ、チェーン1のピン端面を円錐面状のシーブ面の外側方向(図4の上方向)に向けて滑り接触させながらチェーン1の入力軸11に対する巻き掛け径を大きくする一方、ドリブンプーリ20側では可動シーブ23の移動によって溝幅を拡大させ、チェーン1のピン端面を円錐面状のシーブ面の内側方向に向けて滑り接触させながらチェーン1の出力軸21に対する巻き掛け径を小さくする。このように、変速時にはピン端面と円錐面状シーブ面とがシーブ面の内外方向に滑り接触するとともにシーブ面の周方向にも若干の滑り接触し、また一定の伝達比に固定して動力伝達を行う時にはシーブ面の周方向に若干の滑り接触を生じながら、動力伝達が行われるが、上記したようなチェーンを用いているので、滑り接触によって異常摩耗が生じるのが長期にわたって防止され、さらにスリップにより動力伝達の効率が悪くなるといったことも防止される。
【0023】
図5は、本発明の動力伝達装置としての無段変速機の他の実施形態を説明するための部分的な拡大断面図である。本形態に係る無段変速機は、図3および図4に示す無段変速機と比べ、ピン3端面には処理を施さず、ドライブプーリ10(およびドリブンプーリ20)のシーブ面12a、13a(22a、23a)に、硬化処理により表層部31、32(41、42)を形成し、かつその表面粗さRaを0.2〜2.0μmの範囲に設定した点で異なる。本形態に係る無段変速機においても、図3および図4に示す無段変速機と同様に、高面圧高トルク条件(高面圧400MPa以上、高トルク300N・m以上)下であっても、長期にわたって安定して所定の伝達比で動力伝達を行うことができる。また、この態様では、面積が大きいシーブ面に対して、硬化処理を施すとともに、表面粗さを規定するようにしているので、製造しやすいという利点がある。また、硬化処理としてショットピーニング処理を用いた場合には、表面を硬化させると同時に表面に凹凸を形成できることに加えて、残留圧縮応力を付与できるので、疲労寿命が向上したものになるという利点がある。さらに、表層部31、32(41、42)における最大の残留圧縮応力が800〜1200MPaの範囲に設定されている場合には、特に内部起点剥離を有効に防止できるので、確実に疲労寿命が向上したものになるといる利点がある。
【0024】
本発明の動力伝達装置は、上記した態様に限定されるものではなく、例えば、(1)ピン端面に硬化処理による表層部を形成するとともに、シーブ面の表面粗さRaを0.2〜2.0μmの範囲に設定する態様、(2)ピン端面の表面粗さRaを0.2〜2.0μmの範囲に設定するとともに、シーブ面に硬化処理による表層部を形成する態様、(3)ピン端面に硬化処理による表層部を形成し、さらにその表層部の表面粗さRaを0.2〜2.0μmの範囲に設定するとともに、シーブ面に硬化処理による表層部を形成し、さらにその表層部の表面粗さRaを0.2〜2.0μmの範囲に設定する態様であってもよい。伝達トルク、接触面状態、潤滑油、要求耐久寿命等により適切な態様を選択すればよい。
また、上記ではドライブプーリとドリブンプーリの両方の溝幅を変更して変速する例を示したが、どちらか一方のみ変動し、他方は固定幅としてもよい。さらに、溝幅が無段階に変動する変速機について説明したが、有段的に変動したり、固定式(無変速)である等他の動力伝達装置に適用してもよい。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、請求項1記載の動力伝達用チェーンによれば、高面圧高トルク条件(高面圧400MPa以上、高トルク300N・m以上)下で使用しても異常摩耗が生じない程度の耐摩耗性と効率良く動力伝達が行える程度の高摩擦係数とを兼ね備えたものを提供できる。
また、請求項4記載の動力伝達装置によれば、高面圧高トルク条件(高面圧400MPa以上、高トルク300N・m以上)下であっても、長期にわたって安定して所定の伝達比で動力伝達を行うことができるものを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の動力伝達用チェーンとしての無段変速機用チェーンの一実施形態の要部構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1のX−X矢視断面図である。
【図3】本発明の動力伝達装置としての無段変速機の一実施形態の要部構成を模式的に示す断面図である。
【図4】図3に示す無段変速機のドライブプーリ、チェーンの部分的な拡大断面図である。
【図5】本発明の動力伝達装置としての無段変速機の他の実施形態を説明するための部分的な拡大断面図である。
【符号の説明】
1 無段変速機用チェーン
2 リンク
3 ピン
3a、3b ピンの端面
4 貫通孔
6 表層部
Claims (4)
- 複数のリンクと、これらを相互に連結する複数のピンとを備え、円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリとの間に架け渡されて用いられ、前記ピンの端面と前記第1および第2のプーリのシーブ面との間で滑り接触をする動力伝達用チェーンであって、
前記ピンの端面には、硬化処理により表層部が形成されており、
かつ、その端面の表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されていることを特徴とする動力伝達用チェーン。 - 前記硬化処理が、ショットピーニング処理である請求項1記載の動力伝達用チェーン。
- 前記表層部における最大の残留圧縮応力が、800〜1200MPaの範囲に設定されている請求項1または2記載の動力伝達用チェーン。
- 円錐面状のシーブ面を有する第1のプーリと、
円錐面状のシーブ面を有する第2のプーリと、
両者の間に架け渡され、前記第1および第2のプーリのシーブ面と滑り接触をする端面を有する複数のピンと、これらピンによって相互に連結された複数のリンクとを有するチェーンとを備えた動力伝達装置であって、
前記ピンの端面および、第1および第2のプーリのシーブ面のうちの少なくとも一方の面には、硬化処理により表層部が形成されており、
かつ前記ピンの端面および、第1および第2のプーリのシーブ面のうちの少なくとも一方の面の表面粗さRaが0.2〜2.0μmの範囲に設定されていることを特徴とする動力伝達装置。
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