JP2004189814A - 熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】熱可塑性樹脂にマスターバッチとして配合することにより、機械的性質、熱的性質、及び機能的性質に優れたポリマー系ナノコンポジットを製造することができる熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を得る。
【解決手段】BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、重量平均分子量3×104以下である熱可塑性樹脂内に、無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕されて微分散していることを特徴としている。
【選択図】 図1
【解決手段】BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、重量平均分子量3×104以下である熱可塑性樹脂内に、無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕されて微分散していることを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、微分散された熱可塑性樹脂組成物とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的にポリマー系ナノコンポジットと言われるものは、一次粒子径が1〜 100nmの無機又は有機の超微粒子が分散相として、合成樹脂(マトリックス)内に一次粒子に近い状態で微分散されている複合材料である。このようなナノコンポジットでは、全表面積は膨大となり、粒子間距離は極端に短くなっているため、粒子間相互作用は著しく増大し、分散相の間にあるマトリックスポリマー分子の運動が大きく拘束され、これにより特殊で優れた性能を発現することになる。
【0003】
例えば弾性、耐摩擦性、耐摩耗性、耐衝撃性等の機械的性質が著しく向上、又耐熱性の向上、熱膨張係数の半減等の熱的性質も向上し、更にガスバリアー性の向上、燃焼性の低減、各種の電気的・磁気的性質の向上、顔料の着色性が向上、透明性が優れる等、機能的性質も向上する。従来この様なポリマー系ナノコンポジットは、特許文献1〜3等にみられる、粘土鉱物を中心とする層状構造物の層の間を各種の方法で有機化し、層の表面とポリマーとの親和性を上げてから、層間にモノマー又はポリマーを挿入させつつ一層づつほぐしていくという、所謂インターカレーション法により製造される。しかしながらこの様な方法では、層状構造をもつ板状粒子に限られ、球状、立方状、柱状、針状、不定形の無機超微粒子を分散層とするポリマー系ナノコンポジットを形成させることは甚だ難しいのが現状である。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−47644号公報
【特許文献2】
特開平11−310643号公報
【特許文献3】
特開2000−239397号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
即ちBET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子は、マトリックス(以下分散媒体と言う)が合成及び天然ゴム等の高粘弾性樹脂の場合は、二本ロール等により強大な剪断応力で混練分散させることができ、一次粒子に近い粒度まで分散させることが可能である。
【0006】
一方ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン等の汎用熱可塑性樹脂内にこれら微細無機粒子を充填する方法としては、一軸又は二軸押出し機、ニーダー、バンバリーミキサー、二本ロール等の混練機による混合分散が行なわれてきた。しかしながらこの様な混練機では、分散媒体がゴム系ほど高粘度ではないために、微細無機粒子を一次粒子にまで分散させるに必要な剪断応力を掛けることはできない。これまでは低剪断応力でも樹脂内で無機粒子が微分散されるように、無機粒子は各種脂肪酸、樹脂酸、界面活性剤やカップリング剤等による表面処理が行なわれてきた。この様な従来の方法で製造される熱可塑性樹脂複合物は、およそポリマー系ナノコンポジットとはほど遠いもので、BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子は粒子径の小さい粒子ほど、分散媒体内分散相の平均粒度は大きくなり、数μmから数10μmで分散しているのが実情である。
【0007】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂にマスターバッチとして配合することにより、機械的特性、熱的特性、及び機能的特性に優れたポリマー系ナノコンポジットとすることができる熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、超微細無機粒子をポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン等の汎用熱可塑性樹脂内に充填する方法として、マスターバッチ法を採用した。しかしながら従来のマスターバッチは、上記汎用熱可塑性樹脂内に無機粒子を二軸押出し機やニーダーを使用して、高濃度の混練を行なうだけである。通常、熱可塑性樹脂の混練に使用される混練機は、ゴムほど高粘度の樹脂を対象にしておらず、ゴムロールほどの動力性能を必要としない。従って通常これらの混練機では無機粒子の粒子径に起因する、粒子間の凝集力に相当する剪断応力での混練分散は行なわれない。
【0009】
そこで本発明者等は鋭意検討の結果、ポリマー系ナノコンポジットを形成させるに必要なマスターバッチ(以下熱可塑性組成物と言う)を、低分子量熱可塑性樹脂を分散媒体として、加熱三本ロールを使用することにより作製した。これにより比較的低動力において高剪断速度と高剪断応力を求めることができ、低融点で超微細無機粒子の分散が可能になるのである。この熱可塑性組成物の製造に際しては、まず分散相である無機粒子の粒子径と粒子間凝集力の相間を明らかにし、次に分散媒体と粒子分散系の粘度比を理論解析した。更に本発明者等は鋭意検討の結果、この粒子間凝集力を粒子の分散に必要な剪断応力として、これと粒子分散系の理論的な粘度値をファクターとした三本ロールの動力理論から、必要動力を計算上で求めることにより、各種粒子分散系の分散相である無機粒子の粒度に相応した剪断応力の下で、混練分散が可能となる熱可塑性樹脂組成物の製造方法を見出し本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、重量平均分子量3×104以下である熱可塑性樹脂内に、これら無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕されて微分散されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。この熱可塑性樹脂組成物には1種類又は2種類以上の無機粒子が1〜75容量%添加微分散されることが好ましく、また1種又は2種類以上の無機粒子のBET比表面積換算径に対して、該熱可塑性樹脂組成物内に微分散された1種又は2種類以上の無機粒子の電子顕微鏡画像解析平均粒子径が、2倍以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の製造方法は、上記本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することができる方法であり、無機粒子を熱可塑性樹脂に、該樹脂の融点以上の温度で、三本ロールにより解砕しながら微分散させて熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であり、(1)式から計算される粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]を粒子の解砕微分散に必要な剪断力τ[dyne/cm2]とし、(2)式で計算した粒子分散系の粘度η[Pa・s]を用い、(3)式から計算されたロール間隙h[μm]と、これらの数値により(4)式から計算された所要動力P[kW]が常時維持されるように各ロール間隙(第1ロールと第2ロールの間隙及び第2ロールと第3ロールの間隙)を随時調整し、1回又は2回以上樹脂と無機粒子と混練物を三本ロールに循環させることにより、無機粒子を解砕し樹脂中に微分散させることを特徴としている。
【0012】
<(1)式:粒子径と粒子間凝集力>
logσ=−1−logDs …(1)
σ;粒子間の凝集力 [kgf/cm2]
Ds;BET比表面積換算径 [μm]
<(2)式:粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度>
ηr=η/η0=(1−φ/φm)−2 [−] …(2)
ηr;粒子分散系の相対粘度(分散系粘度と熱可塑性樹脂融液粘度の比)
η;粒子分散系の粘度 [Pa・s]
η0;熱可塑性樹脂融液粘度 [Pa・s]
φ;分散粒子の体積分率 [−]
φm;粒子の最密充填体積分率=0.75 [−]とする
<(3)式:三本ロールにおける粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度ファクター>
η=τ/γ=6τh×10−4/(n−1)πDRN [Pa・s] …(3)
τ;剪断応力=粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]=9.8×105[dyne/cm2]
γ;剪断速度=(n−1)πDRN/60h [sec−1]
h;第2ロールと第3ロール間隙 [μm]
n;第1ロールと第2ロール及び第2ロールと第3ロールの回転比
一般的には1:3:9であり、n=3 [−]とする
DR;ロール直径 [cm](三本ロールとも同径)
N;第3ロール回転数 [r・p・m]
<(4)式:三本ロールの所要動力>
P=2.69×10−9DR 8/3Ln3N5/3ρ1/3η2/3/h1/3 [kW] …(4)
L;ロール有効長 [cm]
ρ;粒子分散填系の密度 [g/ml]
【0013】
【作用】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、重量平均分子量3×104以下の熱可塑性樹脂内に、これら無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕されて微分散されていることを特徴としている。
【0014】
従って、この熱可塑性樹脂組成物は所謂マスターバッチとして用いることにより、各種汎用熱可塑性樹脂のコンパウンド作製時及び直接成形時において、無機粒子を一次粒子で分散された状態で含有させることができる。即ち各種汎用熱可塑性樹脂を分散媒体とし、各種超微細無機粒子を分散相とするポリマー系ナノコンポジットを容易に作製することができる。又これらポリマー系ナノコンポジットは、機械的性質、熱的性質、及び機能的性質に優れている。例えば本発明の方法により作製された熱可塑性組成物をマスターバッチとして超高分子量ポリエチレンフィルム成形した場合、分散相の無機粒子が酸又はアルカリに溶解するものであれば、電池セパレーター用超微多孔フィルムが製造できる。更に層状構造の超微細無機粒子を分散相とする本発明による熱可塑性組成物(マスターバッチ)は、インターカレーション法が採用できない汎用熱可塑性樹脂においても、ポリマー系ナノコンポジットフィルムを作製することができ、高度なガスバリヤー性を示すのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を以下詳細に説明する。
〔無機粒子〕
本発明で使用される無機粒子はBET比表面積換算径20〜300nm、好ましくは20〜100nmの1種又は2種類以上の無機粒子である。粒子径が大きければ汎用熱可塑性樹脂内における分散は容易であるが、ナノコンポジットとしての機能性はない。又粒子径は20nm以上であることが好ましく、粒子径が小さすぎると上式(4)から計算される所要動力が大きくなり過ぎて実用上適さない。
【0016】
尚本発明においてBET比表面積とは、窒素ガス分子の一点吸着法により測定した値をいい、さらに換算径とは次式により計算されたD値をいう。
D=(6ρsS)×107 [nm] …(5)
ここでρs;無機粒子密度 [g/cm3]
S;BET比表面積 [cm2/g]
本発明で使用される無機粒子としては、一般にフィラーと呼ばれる合成又は天然の無機粒子が用いられる。具体的には、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化亜鉛コバルト、酸化アルミニウムコバルト、酸化タングステン、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化鉛、酸化クロム、酸化アンチモン、フェライト、バリウムフェライト、ジルコニア、スピネル等の酸化物;更に水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸タングステン、ドーソナイト、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ウォラストナイト、ゾノトライト、ゼオライト、タルク、カオリンクレー、焼成クレー、ハロイサイト、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ジークライト、ジルコン、長石粉、ガラス粉、シリカバルーン、炭化ケイ素、フライアッシュ等のケイ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルーン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フッ化カーボン等の炭素類;その他各種金属粉、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、クロム酸鉛、黄鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコン酸カルシウム、硫化モリブデン、硫化カドミウム、硫化亜鉛、リトポン、硫セレン化カドミウム、モリブデン酸鉛、炭化ケイ素、ホウ酸亜鉛、ソーダライト、フェロシアン化鉄アンモニウム、リン酸コバルトアンモニウム、アロフェン、フッ化カルシウム、各種磁性粉等が挙げられる。
【0017】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明において使用される熱可塑性樹脂は重量平均分子量3×104以下、好ましくは2×104以下の熱可塑性樹脂が用いられる。重量平均分子量が3×104を超えると、軟化点が110℃以上で、且つ溶融粘度が1000mPa・s以上となる熱可塑性樹脂が多く、上式(4)から計算される所要動力が大きくなり過ぎて実用上適さない。本発明において無機粒子を熱可塑性樹脂内に解砕し微分散させるためには、好ましくは重量平均分子量2×104以下で軟化点が110℃以下、溶融粘度500mPa・s以下の熱可塑性樹脂が使用される。本発明において使用される熱可塑性樹脂の重量平均分子量の下限値は特に限定されるものではないが、一般には5,000以上の重量平均分子量を有するものが使用される。
【0018】
具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリスチレン、クマロン樹脂、ポリブテン、石油樹脂、ポリヒドロキシポリオレフィン、リン含有スチレン−α−メチルスチレンオリゴマー、各種パラフィンワックス等の低分子量熱可塑性樹脂の他、アイオノマー、イソブチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン(ACS)、アクリロニトリル−EPDM−スチレン(AES)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合樹脂(ASA)、ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂(MBS)、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂(E−PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル、ノルボルネン樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリパラビニルフェノール、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;更にスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ビニル−スチレン・イソプレン−スチレンブロック共重合体等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー(SDC)やポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPEA)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー(TPVB)、ポリ塩ビ系熱可塑性エラストマー(TPVC)、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー(T−CM)、フッ素系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0019】
上記無機粒子は、上記熱可塑性樹脂内に、これら無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕され微分散されるが、熱可塑性樹脂との分散性向上のために、予め無機粒子は湿式又は乾式法により表面処理されていることが好ましい。更に解砕微分散時に、解砕微分散の促進と解砕微粒子の再凝集を防ぐために分散助剤を添加しても良い。
【0020】
〔表面処理剤及び分散助剤〕
本発明に使用される表面処理剤及び分散助剤は、一般的に使用される有機物であれば特に限定されることなく用いられる。具体的にはオレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、等の脂肪酸;ダイマー酸等の二塩基酸;ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油、牛脂等の油脂;プロセスオイル等の石油系オイル;脂肪酸塩としてC12〜C18の飽和又は不飽和脂肪酸のNa又はK塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;樹脂酸及びスルフォン酸及びその塩としてアルキルスルフォン酸及びその塩、ロジン及びその塩、リグニンスルフォン酸及びその塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルフォン酸及びその塩、ナフタレンスルフォン酸塩−ホルマリン重縮合物、スルフォコハク酸及びその塩、α−オレフィンスルフォン酸及びその塩、N−アシルスルフォン酸及びその塩;硫酸エステル及びその塩として硫酸化油、アルキル硫酸及びその塩、アルキルエーテル硫酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸及びその塩、アルキルアミド硫酸及びその塩;リン酸エステルおよびその塩としてアルキルリン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸及びその塩;脂肪族アミン及びその塩、脂肪族4級アンモニウム及びその塩;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸及びその塩、イミダゾリニウムベタイン、アルキルアミンオキサイド;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油および硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ロジンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン;フッ素系界面活性剤;更にはグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール及びそれらのエーテル;アクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸I−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、マレイン酸、マレイン酸ジエチルエステル、マレイン酸ジメチルエステル等のカルボン酸及びそれらのエステル;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、アクリル酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミン及び脂肪酸アミド;n−パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス等の脂肪族炭化水素系滑剤;プロセスオイル等の芳香族炭化水素;シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等のカップリング剤、以上の内1種又は2種以上が表面処理剤及び分散助剤として使用される。又ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石けん系滑剤の内からも1種又は2種以上を分散助剤として使用することができる。
表面処理量としては、無機粒子100重量部に対し、0.5〜10.0重量部程度であることが好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0重量部である。
【0021】
〔解砕微分散方法〕
本発明において、無機粒子を熱可塑性樹脂に、無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕し微分散する方法としては、樹脂の融点以上の温度において、三本ロールにより行う方法が挙げられる。この場合、一般に使用されている三本ロールと同じく第1ロールから第2、第3ロールへと回転数は1:3:9と大きくなるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物は形状及び粒度分布の異なった各種の無機粒子を対象にしているため、ダイラタント流動を示す場合があり、従って最も回転数の大きい第3ロールにおいて、各ファクターを決める必要がある。まず粒子分散系の相対粘度ηr[−]を分散粒子の体積分率φ[−]と粒子の細密充填体積分率φm[−]から下式(2)により計算し、粒子分散系の粘度η[Pa・s]を得る。次に1種又は2種類以上の無機粒子の総合したBET比表面積換算径Ds[μm]から(1)式により粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]を計算する。
【0022】
本発明において最も重要な点は、三本ロールにおいてこの粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]に相当する剪断応力τ[dyne/cm2]を確保することにより、1種又は2種類以上の無機粒子を重量平均分子量3×104以下である1種又は2種以上の熱可塑性樹脂内に解砕微分散させることにある。基本的にこの無機粒子分散系は上記剪断応力τ[dyne/cm2]が確保されない限り、三本ロールにおいて循環回数を増やしても目的の一次粒子近くまで分散されることはない。つまりこの凝集力σ[kgf/cm2]を必要剪断応力τ[dyne/cm2]とすれば、ロール直径DR[cm]やロール回転比n[−]、ロール回転数N[r・p・m]を決めることにより(3)式からロール間隙h[μm]が計算される。更にロール有効長L[cm]と粒子分散系の密度ρ[g/ml]を決めれば(4)式から所要動力P[kW]が計算できる。上述した剪断応力τ[dyne/cm2]を確保するとは、正にこの所要動力P[kW]が常時負荷されていることに他ならない。しかしながらこの所要動力P[kW]は粒子分散系の解砕微分散が最終局面に達した状態の各ファクターから計算しており、従って循環回数毎にロール間隙h[μm]を微調整し、所要動力P[kW]を確保しなければならない。総循環回数については無機粒子の種類及び粒度、更に熱可塑性樹脂の種類及び分子量により異なる。
【0023】
又この時の熱可塑性樹脂組成物の供給量は(6)式により計算された数値を目安とする。
1.粒子径と粒子間凝集力
logσ=−1−logDs …(1)
σ;粒子間の凝集力 [kgf/cm2]
Ds;BET比表面積換算径 [μm]
2.粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度
ηr=η/η0=(1−φ/φm)−2 [−] …(2)
ηr;粒子分散系の相対粘度(分散系粘度と熱可塑性樹脂融液粘度の比)
η;粒子分散系の粘度 [Pa・s]
η0;熱可塑性樹脂融液粘度 [Pa・s]
φ;分散粒子の体積分率 [−]
φm;粒子の最密充填体積分率=0.75 [−]をとる
3.三本ロールにおける粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度ファクター
η=τ/γ=6τh×10−4/(n−1)πDRN [Pa・s] …(3)
τ;剪断応力=粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]=9.8×105[dyne/cm2]
γ;剪断速度=(n−1)πDRN/60h [sec−1]
h;第2ロールと第3ロール間隙 [μm]
n;第1ロールと第2ロール及び第2ロールと第3ロールの回転比
一般的には1:3:9でn=3 [−]をとる
DR;ロール直径 [cm](三本ロールとも同径)
N;第3ロール回転数 [r・p・m]
4.三本ロールの所要動力
P=2.69×10−9DR 8/3Ln3N5/3ρ1/3η2/3/h1/3 [kW] …(4)
L;ロール有効長 [cm]
ρ;粒子分散系の密度 [g/ml]
5.熱可塑性樹脂組成物供給量
Q=60πDRLNh×10−7 [l/hr] …(6)
【0024】
〔分散度の評価〕
熱可塑性樹脂組成物をその溶融温度に応じた温度で、電熱プレス機により厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化する。このフィルム中の分散粒子について電子顕微鏡SEM画像(×30,000)上で画像解析を行なう。画像解析ソフトはImage−Pro PLUSを使用して、測定対象粒子はランダムに300個以上選択する。必要以上に粒子の修飾を行わないで、自動カウント機能による粒度測定を行う。この粒度分布に基づく50%径を電子顕微鏡画像解析平均粒子径とする。
【0025】
【実施例】
以下実施例と応用実施例及び比較例と応用比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
BET比表面積180,000[cm2/g]のオレイン酸3%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.65[g/cm3])を、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)内に140℃で、特殊仕様加熱三本ロール(ロール直径;DR=20[cm]、ロール有効長;L=50[cm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=200[r・p・m]、電動機動力55[kW] )を使用して、50容量%の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を作製する。まずこの無機粒子の解砕分散に必要な動力を計算した。
【0027】
次にジャケット付ヘンシェルミキサー(容量10リットル、動力1.5kW:三井三池製作所製)に膠質炭酸カルシウム1,484gとポリエチレン系ワックス516gを投入し、140℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この時の粒子分散系の粘度はη=1.1[Pa・s]であった。
【0028】
ロールへの粒子分散系の供給量は
(5)式よりQ=60×π×20×50×200×24.9×10−7=93.8 [l/hr]
上記第2・第3ロール間隔h=24.9[μm]と供給量Q=93.8 [l/hr]を目安に所要動力P=32.4[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら1回目の解砕分散を行なった。続いてh=140.5[μm]に調整し、Q=60×π×20×50×200×140.5×10−7=529.4[l/hr]を目安に同じく所要動力P=32.4[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら2回目の解砕分散を行なった。
【0029】
この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は210nmであった。
【0030】
〔実施例2〕
BET比表面積450,000[cm2/g]のロジンソープ3.5%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.63[g/cm3])を、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)内に140℃で、特殊仕様加熱三本ロール(ロール直径;DR=20[cm]、ロール有効長;L=50[cm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=200[r・p・m]、電動機動力55[kW] )を使用して、50容量%の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を作製する。まずこの無機粒子の解砕分散に必要な動力を計算した。
【0031】
次にジャケット付ヘンシェルミキサー(容量10リットル、動力1.5kW:三井三池製作所製)に膠質炭酸カルシウム1,482gとポリエチレン系ワックス518gとリン酸エステル(フォスファノール RS−710:東邦化学(株)製)15gを投入し、140℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この時の粒子分散系の粘度はη=1.8[Pa・s]であった。
【0032】
ロールへの粒子分散系の供給量は
上記第2・第3ロール間隔h=27[μm]と供給量Q=101.7 [l/hr]を目安に所要動力P=43.7[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら1回目の解砕分散を行なった。続いてh=56.9[μm]に調整し、Q=60×π×20×50×200×56.9×10−7=214.4[l/hr]を目安に同じく所要動力P=43.7[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら2回目の解砕分散を行なった。
【0033】
この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は75nmであった。
【0034】
〔実施例3〕
BET比表面積100,000[cm2/g]の有機ベントナイト(NEW D ORBEN、密度;ρs=2.1[g/cm3]:白石工業(株)製)を、重量平均分子量16,000のエチレン酢酸ビニルコポリマー(ウルトラセン684、密度;ρ0=0.93[g/cm3]:東ソー(株)製)内に80℃で、特殊仕様加熱三本ロール(ロール直径;DR=20[cm]、ロール有効長;L=50[cm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=200[r・p・m]、電動機動力55[kW] )を使用して、30容量%の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を作製する。まずこの無機粒子の解砕分散に必要な動力を計算した。
【0035】
次にジャケット付ヘンシェルミキサー(容量10リットル、動力1.5kW:三井三池製作所製)に有機ベントナイト984gとエチレン酢ビコポリマー1,016gと更に分散助剤としてプロセスオイル(PW90:出光興産(株)製)を20g投入し、80℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この時の粒子分散系の粘度はη=7.8[Pa・s]であった。
【0036】
ロールへの粒子分散系の供給量は
上記第2・第3ロール間隔h=557[μm]と供給量Q=2,099 [l/hr]を目安に所要動力P=38[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら1回目の解砕分散を行なった。続いてh=1,623[μm]に調整し、Q=60×π×20×50×200×1623×10−7=6115[l/hr]を目安に同じく所要動力P=38[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら2回目の解砕分散を行なった。
【0037】
この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は305nmであった。
【0038】
〔比較例1〕
実施例1で使用したBET比表面積180,000[cm2/g]のオレイン酸3%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.65[g/cm3])1,484gと、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)516gとをジャケット付ヘンシェルミキサー(容量10リットル、動力1.5kW:三井三池製作所製)に投入し、140℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この粒子分散系を市販の加熱三本ロール(ロール直径;DR=229[mm]、ロール有効長;L=510[mm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=180[r・p・m]、電動機動力11[kW] 、(株)井上製作所製)を使用して、常に負荷動力を限界の11kWに維持するように第1・第2ロール間隙と第2・第3ロール間隙を調整しながら、2回通しの解砕分散を行った。この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の50容量%粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は420nmであった。
【0039】
〔比較例2〕
実施例2で使用したBET比表面積450,000[cm2/g]のロジンソープ3.5%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.63[g/cm3])1,482gと、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)518gとリン酸エステル(フォスファノール RS−710:東邦化学(株)製)15gを投入し、140℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この粒子分散系を市販の加熱三本ロール(ロール直径;DR=229[mm]、ロール有効長;L=510[mm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=180[r・p・m]、電動機動力11[kW] 、(株)井上製作所製)を使用して、常に負荷動力を限界の11kWに維持するように第1・第2ロール間隙と第2・第3ロール間隙を調整しながら、2回通しの解砕分散を行った。この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の50容量%粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は570nmであった。
【0040】
〔比較例3〕
実施例3で使用したBET比表面積100,000[cm2/g]の有機ベントナイト(NEW D ORBEN、密度;ρs=2.1[g/cm3]:白石工業(株)製)984gと、重量平均分子量16,000のエチレン酢酸ビニルコポリマー(ウルトラセン684、密度;ρ0=0.93[g/cm3]:東ソー(株)製)1,016gと更に分散助剤としてプロセスオイル(PW90:出光興産(株)製)を20g投入し、80℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この粒子分散系を市販の加熱三本ロール(ロール直径;DR=229[mm]、ロール有効長;L=510[mm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=180[r・p・m]、電動機動力11[kW] 、(株)井上製作所製)を使用して、常に負荷動力を限界の11kWに維持するように第1・第2ロール間隙と第2・第3ロール間隙を調整しながら、2回通しの解砕分散を行った。この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の50容量%粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は360nmであった。
【0041】
〔応用実施例1〕
<多孔質フィルムの製造>ニーダー(TD3−5、容量3リットル:東進機械製)を用いて、超高分子量ポリエチレン32.6重量部(ホスタレンGUR 4130、密度;0.93[g/cm3]:ティコナジャパン(株)製)と実施例1の熱可塑性樹脂組成物67.4重量部(炭カル;50重量部、ワックス;17.4重量部)とを、200℃で5分間混練した。得られた混練物を200℃に設定した電熱プレスで厚さ50〜60μmのフィルム状に成形した後、冷却プレスで固化させた。更に得られたフィルムを100×50mmに切断し、オートグラフ(SD−500C:島津製作所製)により、100℃、延伸速度50mm/minで一軸延伸を行ない延伸フィルムとした。この延伸フィルムの電子顕微鏡SEM写真を図1に示す。続いて更にこの延伸フィルムを塩酸/エタノール=50/50溶液に浸し炭酸カルシウムを溶解させた。溶解後多孔質フィルムをエタノールで洗い、50℃で減圧乾燥した。こうして得られた多孔質フィルムの物性を表1に示す。但し多孔質フィルムの物性は以下の方法で測定した。
【0042】
(1)膜厚;JIS K7130に準拠。
(2)透気度;JIS P8117に準拠。
(3)平均孔径;ASTM F316−86に準拠。
【0043】
〔応用比較例1−1〕
<多孔質フィルムの製造>応用実施例1の中で実施例1の熱可塑性樹脂組成物を比較例1の熱可塑性樹脂組成物と置き換えた以外は全く同様にして多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムの物性を表1に示す。
【0044】
〔応用比較例1−2〕
<多孔質フィルムの製造>ニーダー(TD3−5、容量3リットル:東進機械製)を用いて、超高分子量ポリエチレン32.6重量部(ホスタレンGUR 4130、密度;0.93[g/cm3]:ティコナジャパン(株)製)とBET比表面積180,000[cm2/g]のオレイン酸3%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.65[g/cm3])50重量部と重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)17.4重量部とを、200℃で5分間混練した。得られた混練物は応用実施例1と同様の操作を行ない、延伸フィルムを作製した。この延伸フィルムの電子顕微鏡SEM写真を図2に示す。続いて更にこの延伸フィルムを塩酸/エタノール=50/50溶液に浸し炭酸カルシウムを溶解させた。溶解後多孔質フィルムをエタノールで洗い、50℃で減圧乾燥した。こうして得られた多孔質フィルムの物性を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
〔応用実施例2〕
<ポリプロピレン成形物の製造>二軸押出機(TEM−35B、37mmφ同方向、L/D=31.8:東芝(株)製)を用い、温度200℃、スクリュー回転数300rpm、供給量10kg/hでPP樹脂(K5360、MFR=60g/min:チッソ(株)製)52.4重量部と実施例2の熱可塑性樹脂組成物47.6重量部(炭カル;35重量部、ワックス;12.2重量部、分散助剤;0.4重量部)とをプレミキシングの後に混練押出しし、ペレット状コンパウンドを作製した。更にこのペレットを射出成形機(TS30EPN、スクリュー径18mmφ:東芝(株)製)により、温度220℃、射出圧118Mpaで物性試験用試験片に成形した。この試験片を用い以下の方法で物性試験を行なった。
【0047】
(1)アイゾット衝撃試験;JIS K7110に準拠。
(2)曲げ弾性率試験;JIS K7171に準拠。
(3)曲げ強度試験;JIS K7171に準拠。
試験結果を表2に示す。
【0048】
〔応用比較例2−1〕
<ポリプロピレン成形物の製造>応用実施例2の中で実施例2の熱可塑性樹脂組成物を比較例2の熱可塑性樹脂組成物と置き換えた以外は全く同様にして、ペレット状コンパウンドを作成した。このコンパウンドを同様に射出成形した試験片による物性試験結果を表2に示す。
【0049】
〔応用比較例2−2〕
<ポリプロピレン成形物の製造>二軸押出機(TEM−35B、37mmφ同方向、L/D=31.8:東芝(株)製)を用い、温度200℃、スクリュー回転数300rpm、供給量10kg/hでポリプロピレン(PP)樹脂(K5360、MFR=60g/min:チッソ(株)製)52.4重量部とBET比表面積450,000[cm2/g]のロジンソープ3.5%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.63[g/cm3])35重量部と、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)12.2重量部とリン酸エステル(フォスファノール RS−710:東邦化学(株)製)0.4重量部とをプレミキシングした後に混練押出しし、ペレット状コンパウンドを作製した。更にこのペレットを射出成形機(TS30EPN、スクリュー径18mmφ:東芝(株)製)により、温度220℃、射出圧118Mpaで物性試験用試験片に成形した。物性試験結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
〔応用実施例3〕
<低分子量ポリエチレンフィルムの製造>二軸押出機(TEM−35B、37mmφ同方向、L/D=31.8:東芝(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数300rpm、供給量10kg/hでLDPE樹脂(176、MFR=1g/min:東ソー(株)製)38.4重量部と実施例3の熱可塑性樹脂組成物61.6重量部(ベントナイト;30重量部、EVA;31重量部、分散助剤;0.6重量部)とをプレミキシングの後に混練押出しし、ペレット状コンパウンドを作製した。更にこのペレットをインフレーションフィルム成形機(40mm単軸押出し機、ダイ開口部100mmφ:吉井鉄工所製)により、温度220℃、押出量8kg/hで幅350mm厚さ30μmのフィルムに成形した。次にこのフィルムの酸素透過度をJIS K7126気体透過度試験方法に準拠して測定した。この試験結果を表3に示す。
【0052】
〔応用比較例3−1〕
<低分子量ポリエチレンフィルムの製造>応用実施例3の中で実施例3の熱可塑性樹脂組成物を比較例3の熱可塑性樹脂組成物と置き換えた以外は全く同様にして、ペレット状コンパウンドを作成した。更に上記応用実施例3と同様の方法でフィルムに成形し、得られたフィルムの酸素透過度試験結果を表3に示す。
【0053】
〔応用比較例3−2〕
<低分子量ポリエチレンフィルムの製造>二軸押出機(TEM−35B、37mmφ同方向、L/D=31.8:東芝(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数300rpm、供給量10kg/hで低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂(176、MFR=1g/min:東ソー(株)製)38.4重量部と有機ベントナイト(NEW D ORBEN:白石工業(株)製)30重量部と、重量平均分子量16,000のエチレン酢酸ビニルコポリマー(ウルトラセン684、密度;ρ0=0.93[g/cm3]:東ソー(株)製)31重量部とプロセスオイル(PW90:出光興産(株)製)0.6重量部とをプレミキシングの後に混練押出しし、ペレット状コンパウンドを作製した。更にこのペレットを上記応用実施例3と同様の方法でフィルムに成形し、このフィルムの酸素透過度試験結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物をマスターバッチとすることにより、各種汎用熱可塑性樹脂組成物を分散媒体とする、機械的性質、熱的性質、機能的性質に優れたポリマー系ナノコンポジットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う熱可塑性樹脂組成物をマスターバッチとして用いた超高分子量ポリエチレンフィルム中の炭酸カルシウムの分散状態を示す図。
【図2】応用比較例の超高分子量ポリエチレンフィルム中の炭酸カルシウムの分散状態を示す図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、微分散された熱可塑性樹脂組成物とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的にポリマー系ナノコンポジットと言われるものは、一次粒子径が1〜 100nmの無機又は有機の超微粒子が分散相として、合成樹脂(マトリックス)内に一次粒子に近い状態で微分散されている複合材料である。このようなナノコンポジットでは、全表面積は膨大となり、粒子間距離は極端に短くなっているため、粒子間相互作用は著しく増大し、分散相の間にあるマトリックスポリマー分子の運動が大きく拘束され、これにより特殊で優れた性能を発現することになる。
【0003】
例えば弾性、耐摩擦性、耐摩耗性、耐衝撃性等の機械的性質が著しく向上、又耐熱性の向上、熱膨張係数の半減等の熱的性質も向上し、更にガスバリアー性の向上、燃焼性の低減、各種の電気的・磁気的性質の向上、顔料の着色性が向上、透明性が優れる等、機能的性質も向上する。従来この様なポリマー系ナノコンポジットは、特許文献1〜3等にみられる、粘土鉱物を中心とする層状構造物の層の間を各種の方法で有機化し、層の表面とポリマーとの親和性を上げてから、層間にモノマー又はポリマーを挿入させつつ一層づつほぐしていくという、所謂インターカレーション法により製造される。しかしながらこの様な方法では、層状構造をもつ板状粒子に限られ、球状、立方状、柱状、針状、不定形の無機超微粒子を分散層とするポリマー系ナノコンポジットを形成させることは甚だ難しいのが現状である。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−47644号公報
【特許文献2】
特開平11−310643号公報
【特許文献3】
特開2000−239397号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
即ちBET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子は、マトリックス(以下分散媒体と言う)が合成及び天然ゴム等の高粘弾性樹脂の場合は、二本ロール等により強大な剪断応力で混練分散させることができ、一次粒子に近い粒度まで分散させることが可能である。
【0006】
一方ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン等の汎用熱可塑性樹脂内にこれら微細無機粒子を充填する方法としては、一軸又は二軸押出し機、ニーダー、バンバリーミキサー、二本ロール等の混練機による混合分散が行なわれてきた。しかしながらこの様な混練機では、分散媒体がゴム系ほど高粘度ではないために、微細無機粒子を一次粒子にまで分散させるに必要な剪断応力を掛けることはできない。これまでは低剪断応力でも樹脂内で無機粒子が微分散されるように、無機粒子は各種脂肪酸、樹脂酸、界面活性剤やカップリング剤等による表面処理が行なわれてきた。この様な従来の方法で製造される熱可塑性樹脂複合物は、およそポリマー系ナノコンポジットとはほど遠いもので、BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子は粒子径の小さい粒子ほど、分散媒体内分散相の平均粒度は大きくなり、数μmから数10μmで分散しているのが実情である。
【0007】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂にマスターバッチとして配合することにより、機械的特性、熱的特性、及び機能的特性に優れたポリマー系ナノコンポジットとすることができる熱可塑性樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、超微細無機粒子をポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン等の汎用熱可塑性樹脂内に充填する方法として、マスターバッチ法を採用した。しかしながら従来のマスターバッチは、上記汎用熱可塑性樹脂内に無機粒子を二軸押出し機やニーダーを使用して、高濃度の混練を行なうだけである。通常、熱可塑性樹脂の混練に使用される混練機は、ゴムほど高粘度の樹脂を対象にしておらず、ゴムロールほどの動力性能を必要としない。従って通常これらの混練機では無機粒子の粒子径に起因する、粒子間の凝集力に相当する剪断応力での混練分散は行なわれない。
【0009】
そこで本発明者等は鋭意検討の結果、ポリマー系ナノコンポジットを形成させるに必要なマスターバッチ(以下熱可塑性組成物と言う)を、低分子量熱可塑性樹脂を分散媒体として、加熱三本ロールを使用することにより作製した。これにより比較的低動力において高剪断速度と高剪断応力を求めることができ、低融点で超微細無機粒子の分散が可能になるのである。この熱可塑性組成物の製造に際しては、まず分散相である無機粒子の粒子径と粒子間凝集力の相間を明らかにし、次に分散媒体と粒子分散系の粘度比を理論解析した。更に本発明者等は鋭意検討の結果、この粒子間凝集力を粒子の分散に必要な剪断応力として、これと粒子分散系の理論的な粘度値をファクターとした三本ロールの動力理論から、必要動力を計算上で求めることにより、各種粒子分散系の分散相である無機粒子の粒度に相応した剪断応力の下で、混練分散が可能となる熱可塑性樹脂組成物の製造方法を見出し本発明に到達した。
【0010】
即ち、本発明は、BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、重量平均分子量3×104以下である熱可塑性樹脂内に、これら無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕されて微分散されていることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。この熱可塑性樹脂組成物には1種類又は2種類以上の無機粒子が1〜75容量%添加微分散されることが好ましく、また1種又は2種類以上の無機粒子のBET比表面積換算径に対して、該熱可塑性樹脂組成物内に微分散された1種又は2種類以上の無機粒子の電子顕微鏡画像解析平均粒子径が、2倍以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の製造方法は、上記本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造することができる方法であり、無機粒子を熱可塑性樹脂に、該樹脂の融点以上の温度で、三本ロールにより解砕しながら微分散させて熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であり、(1)式から計算される粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]を粒子の解砕微分散に必要な剪断力τ[dyne/cm2]とし、(2)式で計算した粒子分散系の粘度η[Pa・s]を用い、(3)式から計算されたロール間隙h[μm]と、これらの数値により(4)式から計算された所要動力P[kW]が常時維持されるように各ロール間隙(第1ロールと第2ロールの間隙及び第2ロールと第3ロールの間隙)を随時調整し、1回又は2回以上樹脂と無機粒子と混練物を三本ロールに循環させることにより、無機粒子を解砕し樹脂中に微分散させることを特徴としている。
【0012】
<(1)式:粒子径と粒子間凝集力>
logσ=−1−logDs …(1)
σ;粒子間の凝集力 [kgf/cm2]
Ds;BET比表面積換算径 [μm]
<(2)式:粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度>
ηr=η/η0=(1−φ/φm)−2 [−] …(2)
ηr;粒子分散系の相対粘度(分散系粘度と熱可塑性樹脂融液粘度の比)
η;粒子分散系の粘度 [Pa・s]
η0;熱可塑性樹脂融液粘度 [Pa・s]
φ;分散粒子の体積分率 [−]
φm;粒子の最密充填体積分率=0.75 [−]とする
<(3)式:三本ロールにおける粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度ファクター>
η=τ/γ=6τh×10−4/(n−1)πDRN [Pa・s] …(3)
τ;剪断応力=粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]=9.8×105[dyne/cm2]
γ;剪断速度=(n−1)πDRN/60h [sec−1]
h;第2ロールと第3ロール間隙 [μm]
n;第1ロールと第2ロール及び第2ロールと第3ロールの回転比
一般的には1:3:9であり、n=3 [−]とする
DR;ロール直径 [cm](三本ロールとも同径)
N;第3ロール回転数 [r・p・m]
<(4)式:三本ロールの所要動力>
P=2.69×10−9DR 8/3Ln3N5/3ρ1/3η2/3/h1/3 [kW] …(4)
L;ロール有効長 [cm]
ρ;粒子分散填系の密度 [g/ml]
【0013】
【作用】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、重量平均分子量3×104以下の熱可塑性樹脂内に、これら無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕されて微分散されていることを特徴としている。
【0014】
従って、この熱可塑性樹脂組成物は所謂マスターバッチとして用いることにより、各種汎用熱可塑性樹脂のコンパウンド作製時及び直接成形時において、無機粒子を一次粒子で分散された状態で含有させることができる。即ち各種汎用熱可塑性樹脂を分散媒体とし、各種超微細無機粒子を分散相とするポリマー系ナノコンポジットを容易に作製することができる。又これらポリマー系ナノコンポジットは、機械的性質、熱的性質、及び機能的性質に優れている。例えば本発明の方法により作製された熱可塑性組成物をマスターバッチとして超高分子量ポリエチレンフィルム成形した場合、分散相の無機粒子が酸又はアルカリに溶解するものであれば、電池セパレーター用超微多孔フィルムが製造できる。更に層状構造の超微細無機粒子を分散相とする本発明による熱可塑性組成物(マスターバッチ)は、インターカレーション法が採用できない汎用熱可塑性樹脂においても、ポリマー系ナノコンポジットフィルムを作製することができ、高度なガスバリヤー性を示すのである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を以下詳細に説明する。
〔無機粒子〕
本発明で使用される無機粒子はBET比表面積換算径20〜300nm、好ましくは20〜100nmの1種又は2種類以上の無機粒子である。粒子径が大きければ汎用熱可塑性樹脂内における分散は容易であるが、ナノコンポジットとしての機能性はない。又粒子径は20nm以上であることが好ましく、粒子径が小さすぎると上式(4)から計算される所要動力が大きくなり過ぎて実用上適さない。
【0016】
尚本発明においてBET比表面積とは、窒素ガス分子の一点吸着法により測定した値をいい、さらに換算径とは次式により計算されたD値をいう。
D=(6ρsS)×107 [nm] …(5)
ここでρs;無機粒子密度 [g/cm3]
S;BET比表面積 [cm2/g]
本発明で使用される無機粒子としては、一般にフィラーと呼ばれる合成又は天然の無機粒子が用いられる。具体的には、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化亜鉛コバルト、酸化アルミニウムコバルト、酸化タングステン、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化鉛、酸化クロム、酸化アンチモン、フェライト、バリウムフェライト、ジルコニア、スピネル等の酸化物;更に水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸タングステン、ドーソナイト、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ウォラストナイト、ゾノトライト、ゼオライト、タルク、カオリンクレー、焼成クレー、ハロイサイト、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ジークライト、ジルコン、長石粉、ガラス粉、シリカバルーン、炭化ケイ素、フライアッシュ等のケイ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物、カーボンブラック、グラファイト、炭素バルーン、カーボンナノチューブ、フラーレン、フッ化カーボン等の炭素類;その他各種金属粉、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、クロム酸鉛、黄鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、ジルコン酸カルシウム、硫化モリブデン、硫化カドミウム、硫化亜鉛、リトポン、硫セレン化カドミウム、モリブデン酸鉛、炭化ケイ素、ホウ酸亜鉛、ソーダライト、フェロシアン化鉄アンモニウム、リン酸コバルトアンモニウム、アロフェン、フッ化カルシウム、各種磁性粉等が挙げられる。
【0017】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明において使用される熱可塑性樹脂は重量平均分子量3×104以下、好ましくは2×104以下の熱可塑性樹脂が用いられる。重量平均分子量が3×104を超えると、軟化点が110℃以上で、且つ溶融粘度が1000mPa・s以上となる熱可塑性樹脂が多く、上式(4)から計算される所要動力が大きくなり過ぎて実用上適さない。本発明において無機粒子を熱可塑性樹脂内に解砕し微分散させるためには、好ましくは重量平均分子量2×104以下で軟化点が110℃以下、溶融粘度500mPa・s以下の熱可塑性樹脂が使用される。本発明において使用される熱可塑性樹脂の重量平均分子量の下限値は特に限定されるものではないが、一般には5,000以上の重量平均分子量を有するものが使用される。
【0018】
具体的には低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリスチレン、クマロン樹脂、ポリブテン、石油樹脂、ポリヒドロキシポリオレフィン、リン含有スチレン−α−メチルスチレンオリゴマー、各種パラフィンワックス等の低分子量熱可塑性樹脂の他、アイオノマー、イソブチレン−無水マレイン酸共重合樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン(ACS)、アクリロニトリル−EPDM−スチレン(AES)、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合樹脂(ASA)、ブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート共重合樹脂(MBS)、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂(E−PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニルグラフト樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、非晶性コポリエステル、ノルボルネン樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリパラビニルフェノール、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルホルマール(PVF)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;更にスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ビニル−スチレン・イソプレン−スチレンブロック共重合体等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー(SDC)やポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPEA)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー(TPVB)、ポリ塩ビ系熱可塑性エラストマー(TPVC)、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー(T−CM)、フッ素系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0019】
上記無機粒子は、上記熱可塑性樹脂内に、これら無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕され微分散されるが、熱可塑性樹脂との分散性向上のために、予め無機粒子は湿式又は乾式法により表面処理されていることが好ましい。更に解砕微分散時に、解砕微分散の促進と解砕微粒子の再凝集を防ぐために分散助剤を添加しても良い。
【0020】
〔表面処理剤及び分散助剤〕
本発明に使用される表面処理剤及び分散助剤は、一般的に使用される有機物であれば特に限定されることなく用いられる。具体的にはオレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、等の脂肪酸;ダイマー酸等の二塩基酸;ヤシ油、パーム油、パーム核油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油、牛脂等の油脂;プロセスオイル等の石油系オイル;脂肪酸塩としてC12〜C18の飽和又は不飽和脂肪酸のNa又はK塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;樹脂酸及びスルフォン酸及びその塩としてアルキルスルフォン酸及びその塩、ロジン及びその塩、リグニンスルフォン酸及びその塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルフォン酸及びその塩、ナフタレンスルフォン酸塩−ホルマリン重縮合物、スルフォコハク酸及びその塩、α−オレフィンスルフォン酸及びその塩、N−アシルスルフォン酸及びその塩;硫酸エステル及びその塩として硫酸化油、アルキル硫酸及びその塩、アルキルエーテル硫酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸及びその塩、アルキルアミド硫酸及びその塩;リン酸エステルおよびその塩としてアルキルリン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸及びその塩;脂肪族アミン及びその塩、脂肪族4級アンモニウム及びその塩;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸及びその塩、イミダゾリニウムベタイン、アルキルアミンオキサイド;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油および硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ロジンエステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン;フッ素系界面活性剤;更にはグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノt−ブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール及びそれらのエーテル;アクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸I−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、マレイン酸、マレイン酸ジエチルエステル、マレイン酸ジメチルエステル等のカルボン酸及びそれらのエステル;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、アクリル酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等のアミン及び脂肪酸アミド;n−パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックス等の脂肪族炭化水素系滑剤;プロセスオイル等の芳香族炭化水素;シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等のカップリング剤、以上の内1種又は2種以上が表面処理剤及び分散助剤として使用される。又ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石けん系滑剤の内からも1種又は2種以上を分散助剤として使用することができる。
表面処理量としては、無機粒子100重量部に対し、0.5〜10.0重量部程度であることが好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0重量部である。
【0021】
〔解砕微分散方法〕
本発明において、無機粒子を熱可塑性樹脂に、無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕し微分散する方法としては、樹脂の融点以上の温度において、三本ロールにより行う方法が挙げられる。この場合、一般に使用されている三本ロールと同じく第1ロールから第2、第3ロールへと回転数は1:3:9と大きくなるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物は形状及び粒度分布の異なった各種の無機粒子を対象にしているため、ダイラタント流動を示す場合があり、従って最も回転数の大きい第3ロールにおいて、各ファクターを決める必要がある。まず粒子分散系の相対粘度ηr[−]を分散粒子の体積分率φ[−]と粒子の細密充填体積分率φm[−]から下式(2)により計算し、粒子分散系の粘度η[Pa・s]を得る。次に1種又は2種類以上の無機粒子の総合したBET比表面積換算径Ds[μm]から(1)式により粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]を計算する。
【0022】
本発明において最も重要な点は、三本ロールにおいてこの粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]に相当する剪断応力τ[dyne/cm2]を確保することにより、1種又は2種類以上の無機粒子を重量平均分子量3×104以下である1種又は2種以上の熱可塑性樹脂内に解砕微分散させることにある。基本的にこの無機粒子分散系は上記剪断応力τ[dyne/cm2]が確保されない限り、三本ロールにおいて循環回数を増やしても目的の一次粒子近くまで分散されることはない。つまりこの凝集力σ[kgf/cm2]を必要剪断応力τ[dyne/cm2]とすれば、ロール直径DR[cm]やロール回転比n[−]、ロール回転数N[r・p・m]を決めることにより(3)式からロール間隙h[μm]が計算される。更にロール有効長L[cm]と粒子分散系の密度ρ[g/ml]を決めれば(4)式から所要動力P[kW]が計算できる。上述した剪断応力τ[dyne/cm2]を確保するとは、正にこの所要動力P[kW]が常時負荷されていることに他ならない。しかしながらこの所要動力P[kW]は粒子分散系の解砕微分散が最終局面に達した状態の各ファクターから計算しており、従って循環回数毎にロール間隙h[μm]を微調整し、所要動力P[kW]を確保しなければならない。総循環回数については無機粒子の種類及び粒度、更に熱可塑性樹脂の種類及び分子量により異なる。
【0023】
又この時の熱可塑性樹脂組成物の供給量は(6)式により計算された数値を目安とする。
1.粒子径と粒子間凝集力
logσ=−1−logDs …(1)
σ;粒子間の凝集力 [kgf/cm2]
Ds;BET比表面積換算径 [μm]
2.粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度
ηr=η/η0=(1−φ/φm)−2 [−] …(2)
ηr;粒子分散系の相対粘度(分散系粘度と熱可塑性樹脂融液粘度の比)
η;粒子分散系の粘度 [Pa・s]
η0;熱可塑性樹脂融液粘度 [Pa・s]
φ;分散粒子の体積分率 [−]
φm;粒子の最密充填体積分率=0.75 [−]をとる
3.三本ロールにおける粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度ファクター
η=τ/γ=6τh×10−4/(n−1)πDRN [Pa・s] …(3)
τ;剪断応力=粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]=9.8×105[dyne/cm2]
γ;剪断速度=(n−1)πDRN/60h [sec−1]
h;第2ロールと第3ロール間隙 [μm]
n;第1ロールと第2ロール及び第2ロールと第3ロールの回転比
一般的には1:3:9でn=3 [−]をとる
DR;ロール直径 [cm](三本ロールとも同径)
N;第3ロール回転数 [r・p・m]
4.三本ロールの所要動力
P=2.69×10−9DR 8/3Ln3N5/3ρ1/3η2/3/h1/3 [kW] …(4)
L;ロール有効長 [cm]
ρ;粒子分散系の密度 [g/ml]
5.熱可塑性樹脂組成物供給量
Q=60πDRLNh×10−7 [l/hr] …(6)
【0024】
〔分散度の評価〕
熱可塑性樹脂組成物をその溶融温度に応じた温度で、電熱プレス機により厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化する。このフィルム中の分散粒子について電子顕微鏡SEM画像(×30,000)上で画像解析を行なう。画像解析ソフトはImage−Pro PLUSを使用して、測定対象粒子はランダムに300個以上選択する。必要以上に粒子の修飾を行わないで、自動カウント機能による粒度測定を行う。この粒度分布に基づく50%径を電子顕微鏡画像解析平均粒子径とする。
【0025】
【実施例】
以下実施例と応用実施例及び比較例と応用比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
BET比表面積180,000[cm2/g]のオレイン酸3%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.65[g/cm3])を、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)内に140℃で、特殊仕様加熱三本ロール(ロール直径;DR=20[cm]、ロール有効長;L=50[cm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=200[r・p・m]、電動機動力55[kW] )を使用して、50容量%の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を作製する。まずこの無機粒子の解砕分散に必要な動力を計算した。
【0027】
次にジャケット付ヘンシェルミキサー(容量10リットル、動力1.5kW:三井三池製作所製)に膠質炭酸カルシウム1,484gとポリエチレン系ワックス516gを投入し、140℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この時の粒子分散系の粘度はη=1.1[Pa・s]であった。
【0028】
ロールへの粒子分散系の供給量は
(5)式よりQ=60×π×20×50×200×24.9×10−7=93.8 [l/hr]
上記第2・第3ロール間隔h=24.9[μm]と供給量Q=93.8 [l/hr]を目安に所要動力P=32.4[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら1回目の解砕分散を行なった。続いてh=140.5[μm]に調整し、Q=60×π×20×50×200×140.5×10−7=529.4[l/hr]を目安に同じく所要動力P=32.4[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら2回目の解砕分散を行なった。
【0029】
この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は210nmであった。
【0030】
〔実施例2〕
BET比表面積450,000[cm2/g]のロジンソープ3.5%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.63[g/cm3])を、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)内に140℃で、特殊仕様加熱三本ロール(ロール直径;DR=20[cm]、ロール有効長;L=50[cm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=200[r・p・m]、電動機動力55[kW] )を使用して、50容量%の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を作製する。まずこの無機粒子の解砕分散に必要な動力を計算した。
【0031】
次にジャケット付ヘンシェルミキサー(容量10リットル、動力1.5kW:三井三池製作所製)に膠質炭酸カルシウム1,482gとポリエチレン系ワックス518gとリン酸エステル(フォスファノール RS−710:東邦化学(株)製)15gを投入し、140℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この時の粒子分散系の粘度はη=1.8[Pa・s]であった。
【0032】
ロールへの粒子分散系の供給量は
上記第2・第3ロール間隔h=27[μm]と供給量Q=101.7 [l/hr]を目安に所要動力P=43.7[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら1回目の解砕分散を行なった。続いてh=56.9[μm]に調整し、Q=60×π×20×50×200×56.9×10−7=214.4[l/hr]を目安に同じく所要動力P=43.7[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら2回目の解砕分散を行なった。
【0033】
この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は75nmであった。
【0034】
〔実施例3〕
BET比表面積100,000[cm2/g]の有機ベントナイト(NEW D ORBEN、密度;ρs=2.1[g/cm3]:白石工業(株)製)を、重量平均分子量16,000のエチレン酢酸ビニルコポリマー(ウルトラセン684、密度;ρ0=0.93[g/cm3]:東ソー(株)製)内に80℃で、特殊仕様加熱三本ロール(ロール直径;DR=20[cm]、ロール有効長;L=50[cm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=200[r・p・m]、電動機動力55[kW] )を使用して、30容量%の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を作製する。まずこの無機粒子の解砕分散に必要な動力を計算した。
【0035】
次にジャケット付ヘンシェルミキサー(容量10リットル、動力1.5kW:三井三池製作所製)に有機ベントナイト984gとエチレン酢ビコポリマー1,016gと更に分散助剤としてプロセスオイル(PW90:出光興産(株)製)を20g投入し、80℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この時の粒子分散系の粘度はη=7.8[Pa・s]であった。
【0036】
ロールへの粒子分散系の供給量は
上記第2・第3ロール間隔h=557[μm]と供給量Q=2,099 [l/hr]を目安に所要動力P=38[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら1回目の解砕分散を行なった。続いてh=1,623[μm]に調整し、Q=60×π×20×50×200×1623×10−7=6115[l/hr]を目安に同じく所要動力P=38[kW]を維持するように、第1・第2ロール間隔と第2・第3ロール間隔hを微調整しながら2回目の解砕分散を行なった。
【0037】
この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は305nmであった。
【0038】
〔比較例1〕
実施例1で使用したBET比表面積180,000[cm2/g]のオレイン酸3%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.65[g/cm3])1,484gと、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)516gとをジャケット付ヘンシェルミキサー(容量10リットル、動力1.5kW:三井三池製作所製)に投入し、140℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この粒子分散系を市販の加熱三本ロール(ロール直径;DR=229[mm]、ロール有効長;L=510[mm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=180[r・p・m]、電動機動力11[kW] 、(株)井上製作所製)を使用して、常に負荷動力を限界の11kWに維持するように第1・第2ロール間隙と第2・第3ロール間隙を調整しながら、2回通しの解砕分散を行った。この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の50容量%粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は420nmであった。
【0039】
〔比較例2〕
実施例2で使用したBET比表面積450,000[cm2/g]のロジンソープ3.5%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.63[g/cm3])1,482gと、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)518gとリン酸エステル(フォスファノール RS−710:東邦化学(株)製)15gを投入し、140℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この粒子分散系を市販の加熱三本ロール(ロール直径;DR=229[mm]、ロール有効長;L=510[mm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=180[r・p・m]、電動機動力11[kW] 、(株)井上製作所製)を使用して、常に負荷動力を限界の11kWに維持するように第1・第2ロール間隙と第2・第3ロール間隙を調整しながら、2回通しの解砕分散を行った。この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の50容量%粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は570nmであった。
【0040】
〔比較例3〕
実施例3で使用したBET比表面積100,000[cm2/g]の有機ベントナイト(NEW D ORBEN、密度;ρs=2.1[g/cm3]:白石工業(株)製)984gと、重量平均分子量16,000のエチレン酢酸ビニルコポリマー(ウルトラセン684、密度;ρ0=0.93[g/cm3]:東ソー(株)製)1,016gと更に分散助剤としてプロセスオイル(PW90:出光興産(株)製)を20g投入し、80℃、1,100r・p・mの条件で5分間プレミキシングした。この粒子分散系を市販の加熱三本ロール(ロール直径;DR=229[mm]、ロール有効長;L=510[mm]、回転比;n=3[1:3:9]、第3ロール回転数;N=180[r・p・m]、電動機動力11[kW] 、(株)井上製作所製)を使用して、常に負荷動力を限界の11kWに維持するように第1・第2ロール間隙と第2・第3ロール間隙を調整しながら、2回通しの解砕分散を行った。この粒子分散系ペーストを常温まで放冷後、サンプルミルにより解砕して顆粒状の50容量%粒子分散系熱可塑性樹脂組成物を得た。この熱可塑性樹脂組成物を電熱プレス機により、100℃下で厚さ30μmのフィルムに成形した後、冷却プレスで固化させた。このフィルムを上記分散評価方法により解析した分散系の平均粒子径は360nmであった。
【0041】
〔応用実施例1〕
<多孔質フィルムの製造>ニーダー(TD3−5、容量3リットル:東進機械製)を用いて、超高分子量ポリエチレン32.6重量部(ホスタレンGUR 4130、密度;0.93[g/cm3]:ティコナジャパン(株)製)と実施例1の熱可塑性樹脂組成物67.4重量部(炭カル;50重量部、ワックス;17.4重量部)とを、200℃で5分間混練した。得られた混練物を200℃に設定した電熱プレスで厚さ50〜60μmのフィルム状に成形した後、冷却プレスで固化させた。更に得られたフィルムを100×50mmに切断し、オートグラフ(SD−500C:島津製作所製)により、100℃、延伸速度50mm/minで一軸延伸を行ない延伸フィルムとした。この延伸フィルムの電子顕微鏡SEM写真を図1に示す。続いて更にこの延伸フィルムを塩酸/エタノール=50/50溶液に浸し炭酸カルシウムを溶解させた。溶解後多孔質フィルムをエタノールで洗い、50℃で減圧乾燥した。こうして得られた多孔質フィルムの物性を表1に示す。但し多孔質フィルムの物性は以下の方法で測定した。
【0042】
(1)膜厚;JIS K7130に準拠。
(2)透気度;JIS P8117に準拠。
(3)平均孔径;ASTM F316−86に準拠。
【0043】
〔応用比較例1−1〕
<多孔質フィルムの製造>応用実施例1の中で実施例1の熱可塑性樹脂組成物を比較例1の熱可塑性樹脂組成物と置き換えた以外は全く同様にして多孔質フィルムを得た。得られた多孔質フィルムの物性を表1に示す。
【0044】
〔応用比較例1−2〕
<多孔質フィルムの製造>ニーダー(TD3−5、容量3リットル:東進機械製)を用いて、超高分子量ポリエチレン32.6重量部(ホスタレンGUR 4130、密度;0.93[g/cm3]:ティコナジャパン(株)製)とBET比表面積180,000[cm2/g]のオレイン酸3%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.65[g/cm3])50重量部と重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)17.4重量部とを、200℃で5分間混練した。得られた混練物は応用実施例1と同様の操作を行ない、延伸フィルムを作製した。この延伸フィルムの電子顕微鏡SEM写真を図2に示す。続いて更にこの延伸フィルムを塩酸/エタノール=50/50溶液に浸し炭酸カルシウムを溶解させた。溶解後多孔質フィルムをエタノールで洗い、50℃で減圧乾燥した。こうして得られた多孔質フィルムの物性を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
〔応用実施例2〕
<ポリプロピレン成形物の製造>二軸押出機(TEM−35B、37mmφ同方向、L/D=31.8:東芝(株)製)を用い、温度200℃、スクリュー回転数300rpm、供給量10kg/hでPP樹脂(K5360、MFR=60g/min:チッソ(株)製)52.4重量部と実施例2の熱可塑性樹脂組成物47.6重量部(炭カル;35重量部、ワックス;12.2重量部、分散助剤;0.4重量部)とをプレミキシングの後に混練押出しし、ペレット状コンパウンドを作製した。更にこのペレットを射出成形機(TS30EPN、スクリュー径18mmφ:東芝(株)製)により、温度220℃、射出圧118Mpaで物性試験用試験片に成形した。この試験片を用い以下の方法で物性試験を行なった。
【0047】
(1)アイゾット衝撃試験;JIS K7110に準拠。
(2)曲げ弾性率試験;JIS K7171に準拠。
(3)曲げ強度試験;JIS K7171に準拠。
試験結果を表2に示す。
【0048】
〔応用比較例2−1〕
<ポリプロピレン成形物の製造>応用実施例2の中で実施例2の熱可塑性樹脂組成物を比較例2の熱可塑性樹脂組成物と置き換えた以外は全く同様にして、ペレット状コンパウンドを作成した。このコンパウンドを同様に射出成形した試験片による物性試験結果を表2に示す。
【0049】
〔応用比較例2−2〕
<ポリプロピレン成形物の製造>二軸押出機(TEM−35B、37mmφ同方向、L/D=31.8:東芝(株)製)を用い、温度200℃、スクリュー回転数300rpm、供給量10kg/hでポリプロピレン(PP)樹脂(K5360、MFR=60g/min:チッソ(株)製)52.4重量部とBET比表面積450,000[cm2/g]のロジンソープ3.5%処理膠質炭酸カルシウム(密度;ρs=2.63[g/cm3])35重量部と、重量平均分子量13,000のポリエチレン系ワックス(サンワックス151−P、密度;ρ0=0.92[g/cm3]:三洋化成工業(株)製)12.2重量部とリン酸エステル(フォスファノール RS−710:東邦化学(株)製)0.4重量部とをプレミキシングした後に混練押出しし、ペレット状コンパウンドを作製した。更にこのペレットを射出成形機(TS30EPN、スクリュー径18mmφ:東芝(株)製)により、温度220℃、射出圧118Mpaで物性試験用試験片に成形した。物性試験結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
〔応用実施例3〕
<低分子量ポリエチレンフィルムの製造>二軸押出機(TEM−35B、37mmφ同方向、L/D=31.8:東芝(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数300rpm、供給量10kg/hでLDPE樹脂(176、MFR=1g/min:東ソー(株)製)38.4重量部と実施例3の熱可塑性樹脂組成物61.6重量部(ベントナイト;30重量部、EVA;31重量部、分散助剤;0.6重量部)とをプレミキシングの後に混練押出しし、ペレット状コンパウンドを作製した。更にこのペレットをインフレーションフィルム成形機(40mm単軸押出し機、ダイ開口部100mmφ:吉井鉄工所製)により、温度220℃、押出量8kg/hで幅350mm厚さ30μmのフィルムに成形した。次にこのフィルムの酸素透過度をJIS K7126気体透過度試験方法に準拠して測定した。この試験結果を表3に示す。
【0052】
〔応用比較例3−1〕
<低分子量ポリエチレンフィルムの製造>応用実施例3の中で実施例3の熱可塑性樹脂組成物を比較例3の熱可塑性樹脂組成物と置き換えた以外は全く同様にして、ペレット状コンパウンドを作成した。更に上記応用実施例3と同様の方法でフィルムに成形し、得られたフィルムの酸素透過度試験結果を表3に示す。
【0053】
〔応用比較例3−2〕
<低分子量ポリエチレンフィルムの製造>二軸押出機(TEM−35B、37mmφ同方向、L/D=31.8:東芝(株)製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数300rpm、供給量10kg/hで低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂(176、MFR=1g/min:東ソー(株)製)38.4重量部と有機ベントナイト(NEW D ORBEN:白石工業(株)製)30重量部と、重量平均分子量16,000のエチレン酢酸ビニルコポリマー(ウルトラセン684、密度;ρ0=0.93[g/cm3]:東ソー(株)製)31重量部とプロセスオイル(PW90:出光興産(株)製)0.6重量部とをプレミキシングの後に混練押出しし、ペレット状コンパウンドを作製した。更にこのペレットを上記応用実施例3と同様の方法でフィルムに成形し、このフィルムの酸素透過度試験結果を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物をマスターバッチとすることにより、各種汎用熱可塑性樹脂組成物を分散媒体とする、機械的性質、熱的性質、機能的性質に優れたポリマー系ナノコンポジットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う熱可塑性樹脂組成物をマスターバッチとして用いた超高分子量ポリエチレンフィルム中の炭酸カルシウムの分散状態を示す図。
【図2】応用比較例の超高分子量ポリエチレンフィルム中の炭酸カルシウムの分散状態を示す図。
Claims (4)
- BET比表面積換算径が20〜300nmである無機粒子が、重量平均分子量3×104以下である熱可塑性樹脂内に、無機粒子の粒子間凝集力相当以上の剪断応力で解砕されて微分散していることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- 無機粒子が1〜75容量%含有されていることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物内に微分散された無機粒子の電子顕微鏡画像解析平均粒子径が、BET比表面積換算径の2倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 無機粒子を熱可塑性樹脂に、該樹脂の融点以上の温度で、三本ロールにより解砕しながら微分散させて熱可塑性樹脂組成物を製造する方法であって、
(1)式から計算される粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]を粒子の解砕微分散に必要な剪断応力τ[dyne/cm2]とし、(2)式で計算した粒子分散系の粘度η[Pa・s] を用い、(3)式から計算されたロール間隙h[μm]と、これらの数値により(4)式から計算された所要動力P[kW]が常時維持される様に各ロール間隙を随時調整し、1回又は2回以上樹脂と無機粒子の混練物を三本ロールに循環させることにより解砕し微分散させることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
<(1)式:粒子径と粒子間凝集力>
logσ=−1−logDs …(1)
σ;粒子間の凝集力 [kgf/cm2]
Ds;BET比表面積換算径 [μm]
<(2)式:粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度>
ηr=η/η0=(1−φ/φm)−2 [−] …(2)
ηr;粒子分散系の相対粘度(分散系粘度と熱可塑性樹脂融液粘度の比)
η;粒子分散系の粘度 [Pa・s]
η0;熱可塑性樹脂融液粘度 [Pa・s]
φ;分散粒子の体積分率 [−]
φm;粒子の最密充填体積分率=0.75 [−]とする
<(3)式:三本ロールにおける粒子分散系熱可塑性樹脂組成物の粘度ファクター>
η=τ/γ=6τh×10−4/(n−1)πDRN [Pa・s] …(3)
τ;剪断応力=粒子間の凝集力σ[kgf/cm2]=9.8×105[dyne/cm2]
γ;剪断速度=(n−1)πDRN/60h [sec−1]
h;第2ロールと第3ロール間隙 [μm]
n;第1ロールと第2ロール及び第2ロールと第3ロールの回転比
一般的には1:3:9であり、n=3 [−]とする
DR;ロール直径 [cm](三本ロールとも同径)
N;第3ロール回転数 [r・p・m]
<(4)式:三本ロールの所要動力>
P=2.69×10−9DR 8/3Ln3N5/3ρ1/3η2/3/h1/3 [kW] …(4)
L;ロール有効長 [cm]
ρ;粒子分散系の密度 [g/ml]
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2002
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