JP2004189782A - ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも1種の酸化防止剤を含有するポリエステル層を少なくとも1層有することを特徴とするポリエステルフィルムであり、用いる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤が好適であり、用いるポリエステル原料の重合時に添加することが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム中のポリマーの熱劣化物が少なく、耐熱性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムは、機械的性質、耐熱性、電気的特性、耐薬品性等、各種の特性を高度にバランス良く有し、コストパフォーマンスの点で優れるため、磁気テープ用、包装用、製版用等の産業用資材として広く用いられている。これらの用途に限らず、電気機器、情報機材関連の小型化に伴い、これまでよりもさらに薄膜化されたポリエステルフィルムの要求が急増している。特に感熱転写リボン用としては、この傾向は顕著である。
【0003】
しかしながら、従来の処方では、フィルム中に含まれるポリマーの劣化物が引き金となり、感熱転写のサーマルヘッドとの接触時にカスが生じ、この傾向はフィルム厚みが薄くなるに従い、実質フィルム温度が高くなり、益々悪影響を与える結果となる。
すなわち、ポリマーの劣化物を減少させるためには、従来の処方として、▲1▼ポリマー溶融の時間を減少させる、▲2▼ポリマー溶融の温度を低くする等の方法があるが、▲1▼の処方は、薄膜化による単位時間当たりのポリマーの押出量が低くなる場合には、溶融時間が長くなるため、これと逆行し適用しにくく、▲2▼の処方は、ポリマーの溶融粘度が高くなり、押出そのものが困難となり、十分な効果が発揮できない。
このように、フィルムを薄膜化すると熱接触によってカスが増加するという二律背反性を持ち、両者を同時に満足する方法は、極めて困難である。
【0004】
【特許文献1】特開2002−225430号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、生産時の低コストを維持しながら、熱接触による発生カスを低くすることのでき、特に感熱転写リボン用として好適である薄膜ポリエステルフィルムを提供することを解決課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、酸化防止剤を有することにより、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも1種の酸化防止剤を含有するポリエステル層を少なくとも1層有することを特徴とするポリエステルフィルムに存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、繰り返し単位の80%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位を有するポリエステルを指す。
かかるポリエステルは、通常、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを主な出発原料としてエステル交換反応を経由して、重縮合反応を行う、あるいは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとを主な出発原料として、エステル化反応を経由して、重縮合反応を行うことにより得られる。これらの反応を行うため、通常、触媒として金属化合物を添加する方法が用いられる。例えば、エステル交換反応触媒として、Ca、Mg、Mn、Li等の化合物、重縮合反応触媒としてSb、Ti、Ge、Sn、Co等の化合物が一般的に用いられている。
【0009】
また、上記の範囲を逸脱しない条件下であれば、本発明で用いるポリエステルが他の第三成分を含有していてもよい。
本発明で用いるポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等を用いることができる。グリコール成分としては、エチレングリコール以外に、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上を用いることができる。
【0010】
本発明で用いるポリエステルの極限粘度は、通常0.45以上、好ましくは0.50〜1.0、さらに好ましくは0.52〜0.80の範囲である。極限粘度が0.45未満では、フィルム製造時の生産性が低下したり、フィルムの機械的強度が低下したりすることがある。一方、ポリマーの溶融押出安定性の点から、極限粘度は1.0を超えないことが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、後述する方法により測定したトータルの重量法厚みが、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1〜5μmである。10μmを超えると、種々の用途における最終製品の大きさが大きくなり、特に感熱転写リボン用途の場合はリボンのリール径が大きくなる。
【0011】
本発明の最大の特徴は、ポリマーの溶融時に生じる劣化物を低減させるため、少なくとも1種の酸化防止剤を含有することにある。
本発明で用いる酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤でもフェノール系酸化防止剤でもよいが、フェノール系酸化防止剤が好適に使用される。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、以下に例示する酸化防止剤が挙げられる。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
本発明において、酸化防止剤の添加は、通常、押出機をポリマーが通過し終わるまでの任意の段階で行われる。例えば、原料ポリエステルの重合時に添加してもよいし、ポリエステルフィルムの製膜時に、押出機をポリマーが通過し終わるまでの任意の段階で添加してもよく、例えば、押出機に添加口を設けておき、溶融または部分的に溶融状態のポリエステルに酸化防止剤を添加する方法も採用できる。高温下でのポリマー内での酸化防止剤のマイグレーションを防止するため、また単離した状態での酸化防止剤を発生させない観点から、原料ポリエステルの重合時に添加して共重合させる方法が好ましく採用される。
【0022】
酸化防止剤の添加量は、当該酸化防止剤含有層を構成するポリエステルに対し、通常10〜3000ppm、好ましくは50〜1500ppm、さらに好ましくは100〜1000ppmの範囲である。添加量が10ppm以下では、酸化防止の効果が十分に発揮されない場合があり、添加量3000ppm以上では、未反応の酸化防止剤がフィルム中に残存し、フィルムの品質が低下するおそれがある。
また、本発明において、酸化防止剤を複数種、添加させることはむろん可能である。
【0023】
また、本発明において、酸化防止剤を押出工程にて添加する場合は、酸化防止剤は粉末として添加してもよく、適当な溶媒中に分散させたスラリーとして添加してもよい。溶媒中に分散させて添加する場合、溶媒として水あるいは沸点200℃以下の有機溶媒が好ましく、有機溶媒としてはエチレングリコールが特に好ましい。また、この場合、押出機は二軸押出機が好ましく、二軸押出機はベント口を1箇所以上有し、その中の少なくとも1箇所を減圧とすることが好ましい。つまり、押出工程内で溶媒を除去することが好ましい。
【0024】
本発明において、ポリエステルフィルムは、本発明の要旨を越えない限りにおいて、積層構造を採用することが可能である。ここで言う積層構造とは、すべての層が押出機の口金から共溶融押し出しされる、いわゆる共押出法により押し出された未延伸フィルムを、延伸および熱処理したものである。
【0025】
本発明において、特に感熱転写用フィルムとして適した表面性を得るために用いる粒子の例としては、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、およびポリエステル重合時に生成させる析出粒子を挙げることができる。
【0026】
炭酸カルシウムについては、粒径分布をシャープ化し、粗大粒子(平均粒径より著しく大きい粒子)をカットしやすいこと、フィルム化後、滑り性、耐摩耗性が得やすいこと等が好ましい理由である。また、シリカについては、他の粒子より比較的安価に入手できること等が好ましい理由である。また、析出粒子については、あらためて粒子を添加する必要がなく安価であること、フィルム化時の延伸時の粒子の変形が小さく、突起高さを維持でき、良好な巻き特性を発揮する等が好ましい理由である。
また、本発明の効果を発現させるために、上記で代表される粒子を複数種、採用させることはむろん可能である。
【0027】
添加粒子を含むポリエステルの製造に際して、粒子はポリエステルの合成反応中に添加してもポリエステルに直接添加してもよい。合成反応中に添加する場合は、粒子をエチレングリコール等に分散させたスラリーとして、ポリエステル合成の任意の段階で添加する方法が好ましい。一方、ポリエステルに直接添加する場合は、乾燥した粒子として、または、水あるいは沸点が200℃以下の有機溶媒中に分散したスラリーとして、2軸混練押出機を用いてポリエステルに添加混合する方法が好ましい。なお、添加する粒子は、必要に応じ、事前に解砕、分散、分級、濾過等の処理を施しておいてもよい。
【0028】
粒子の含有量を調節する方法としては、上記した方法で高濃度に粒子を含有するマスター原料を作っておき、それを製膜時に、実質的に粒子を含有しない原料で希釈して粒子含有量を調節する方法が有効である。
また、上記の突起形成剤以外の添加剤として、必要に応じて、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、着色剤、光線遮断剤、紫外線吸収剤などを、各用途の特性を悪化させない範囲内で含有していてもよい。
【0029】
本発明のフィルムは、種々の最終用途に応じ、各種の塗布層を設けることができる。例えば、感熱転写リボン用として、走行面(インクの反対面)に耐熱性を付与した層(背面層)を設けたり、各種用途に応じ、フィルムと接する層との接着性を高める層(易接着層)を設けたりすることができる。
また、塗布層の耐固着性(耐ブロッキング性)、耐水性、耐溶剤性、機械的強度の改良のために架橋性ポリマーとしてメチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系等の化合物、エポキシ系化合物、アジリジン化合物、ブロックポリイソシアネート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコーアルミネート系カップリング剤、過酸化物、熱および光反応性のビニル化合物や感光性樹脂などを含有してもよい。
【0030】
また、固着性や滑り性改良のために、塗布層中に無機系微粒子として、シリカ、シリカゾル、アルミナ、アルミナゾル、ジルコニウムゾル、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモンゾルなどを、有機系微粒子として、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などを含有していてもよい。さらに必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0031】
上述の塗布液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターあるいはこれら以外の塗布装置を用いることができる。塗布層は、フィルム製造工程内で設けてもよいし、フィルム製造後に塗布してもよい。特に塗布厚みの均一性や、生産効率の点で、フィルム製造工程内で塗布する方法が好ましい。
【0032】
フィルム製造工程内で塗布する方法としては、ポリエステル未延伸フィルムに塗布液を塗布し、逐次あるいは同時に二軸延伸する方法、一軸延伸されたポリエステルフィルムに塗布し、さらに先の一軸延伸方向と直角の方向に延伸する方法、あるいは二軸延伸ポリエステルフィルムに塗布し、さらに横および/または縦方向に延伸する方法などがある。
塗布層の厚さは、通常0.005〜1.0μmの範囲であり、好ましくは0.01〜0.5μmの範囲である。塗布層厚みが1.0μmを超えると、電気的特性を悪化させることがある。一方、塗布層の厚みが0.005μm未満の場合には、塗布ムラや塗布ヌケが生じやすくなる傾向がある。
【0033】
次に、本発明のフィルムの製造法を具体的に説明する。
まず、ポリエステル原料を、押出装置に供給し、ポリエステルの融点以上の温度で溶融押し出しして、スリット状のダイから溶融シートとして押し出す。この際、前述したように酸化防止剤を溶融押出時に添加する場合は、例えば、押出機に添加口を設けておき、溶融または部分的に溶融状態のポリエステルに酸化防止剤を添加する。また、前述したような積層構造を採用する場合は、それぞれの層を構成するポリエステル原料を、共押出積層用押出装置に供給する。すなわち、マルチマニホールドまたはフィードブロックを用いて積層化する。
【0034】
次に、溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0035】
本発明においては、このようにして得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化する。二軸延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを第一軸方向に延伸する。延伸温度範囲は通常70〜150℃、延伸倍率は通常2.5〜6倍の範囲とし、延伸は一段階または二段階以上で行うことができる。次に第二軸方向、すなわち第一軸方向と直交する方向に一軸配向フィルムを一旦ガラス転移点以下に冷却するか、または冷却することなく、例えば80〜150℃の温度範囲に予熱して、さらにほぼ同温度の下で2.5〜5倍、好ましくは3.0〜4.5倍に延伸を行い、二軸に配向したフィルムを得る。
【0036】
なお、第一軸方向の延伸を2段階以上で行えば、良好な厚さ均一性を達成できるので好ましい。また、横延伸した後、さらに長手方向に再延伸する方法も可能であるが、いずれにしても長手方向の総合延伸倍率を3.5倍以上とすることが好適である。
かくして得られたフィルムを、30%以内の伸長、制限収縮、または定長下で1秒〜5分間熱処理する。この際、熱処理工程内または熱処理後に長手方向または横方向、あるいは両方向に再延伸を行ってもよい。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げてさらに本発明を詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の評価方法は下記のとおりである。実施例および比較例中、「部」とあるのは「重量部」を示し、「%」とあるのは「重量%」を示し、「ppm」とあるのは「重量ppm」を示す。
【0038】
(1)ポリマーの極限粘度 [η] (dl/g)
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlに溶解し、30℃で測定した。
【0039】
(2)添加粒子の平均粒径(d50)(μm)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)で測定した等価球形分布において大粒子側から積算した積算体積分率50%の粒径を平均粒径(d50)とした。
【0040】
(3)トータルの重量法厚み(総重量法厚み)(μm)
まず、フィルム試験片の密度(ρ;(g/cm3))をJIS K7112に規定するD法(密度勾配管法)により測定し、次に、100±0.5cm2に切り取った試験片を天秤に乗せ、フィルム質量(m;(g))を0.0001gまで正しく測定した後、以下の式により算出した。かかる測定を5回繰り返し、得られたtの値の中央値を総重量法厚み d(μm)とした。
t=100m/ρ
【0041】
(4)感熱転写リボンの作成およびその評価
(感熱転写リボンの製造)
一軸延伸後に塗布した面(背面)の反対面に、下記の組成を有する溶融インクを、ホットメルト法により4μmの厚みになるように塗布し、適当な幅に裁断して巻き取り、インクリボンとした。
・溶融インクの組成
カルナウバワックス 80重量部、マイクロクリスタリンワックス 30重量部、酢酸ビニル・エチレン共重合体 30重量部、カーボンブラック 20重量部
【0042】
(ヘッドカスの評価)
上記に従って製造した溶融インクリボンを用いて、テック社製バーコードラベルプリンター(B−30)を用いて、印字エネルギーは通常として、印字スピードを4インチ/秒を選択して、専用ラベル紙(ラベルサイズ:長さ73mm、幅78mm)に同じバーコードテストパターンを200枚および20000枚印刷した。この後、サーマルヘッドを取りはずし、10〜100倍の顕微鏡で観察して、サーマルヘッド発熱体下流側での白粉の発生量を、次の基準で判別した。なお、サーマルヘッドは1回毎に洗浄してからテストに用いた。
A:白粉の発生がほとんどない
B:白粉の発生が見られ、少し堆積している
C:白粉の発生が著しく、多量に堆積している
【0043】
実施例1
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸カルシウム1水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去してエステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃まで昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、市販のシリカ粒子を入手後、粉砕することによって得られた平均粒径1.80μmのシリカ粒子0.5部および平均粒径0.35μmの架橋高分子粒子1.0部をエチレングリコールスラリーとして添加した。スラリー添加後、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を添加した。さらにリン酸0.06部、三酸化アンチモン0.04部を加え、徐々に反応系を減圧とし、温度を高めて重縮合反応を4時間行い、極限粘度0.66のポリエステル(a)を得た。粒子を添加しないことと酸化防止剤を添加しないこと以外は(a)と同様にして、極限粘度0.67の希釈用ポリエステル(b)を得た。ポリエステル(a)とポリエステル(b)を混合し、ポリエステル(c)を得た。このポリエステル(c)には、ポリマーに対し、シリカ粒子0.10重量%、架橋高分子粒子0.20重量%、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が500重量ppm含有されていた。
【0044】
(ポリオルガノシロキサン−ポリビニル共重合体Aの合成)
片末端にメタクリルジメチルシリル基を有する分子量約1000のジメチルシロキサンマクロモノマー30重量部、メチルメタクリレート200重量部、エチルアクリレート200重量部、およびメタクリル酸10重量部の混合物を、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部、メチルエチルケトン200重量部、およびトルエン1000重量部が封入されて80℃に加熱された反応器に、攪拌しながらゆっくり滴下した。滴下終了後、還流しながら約5時間反応させた後、反応液を冷却してから、n−ヘキサン中で再沈精製を行い、ポリオルガノシロキサン−ポリビニル共重合体Aを得た。次いでこのポリマーに、エチレングリコールモノエチルエーテルおよびポリオキシエチレンノニフェニルエーテルを含有する、アンモニアで弱アルカリ性とした水を加え、70℃に加温してホモミキサーで5時間激しく攪拌し、固形分濃度20重量%の水分散体とした。
【0045】
(ワックスA水分散体の合成)
パラフィンワックス35重量部、ソルビタンモノステアラート2重量部、ポリオキシエチレンノニフェニルエーテル3重量部、および水60重量部を全量容器に入れて加熱攪拌し、W/O系エマジョンとなるまで加温した後、冷却し、一旦可溶化状態を通過した後、O/W系で固形分濃度約40%の水分散体とした。
【0046】
(フィルムの製造)
ポリエステル(c)を常法により乾燥して押出機に供給し、290℃で溶融してシート状に押出し、静電印加密着法を用いて冷却ロール上で急冷し、無定形シートとした。得られたシートを、ロール延伸法を用いて縦方向に84℃で2.9倍延伸した後、さらに70℃で1.3倍延伸した。得られた一軸延伸フィルムの片面に空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にグラビアコート方式で、次に示す組成となるように各々の水分散液を混合して塗布した。
【0047】
・塗布液組成
ポリシロキサン−ポリビニル共重合体A 45部(固形分比)、ワックスA 15部(固形分比)、メラミン系架橋剤(商品名 ベッカミンJ101 大日本インキ化学工業社製) 40部(固形分比)
【0048】
次いで、フィルムをテンターに導いて、塗布液の水分を蒸発させた後、横方向に110℃で4.0倍延伸し、230℃で熱処理を行い、背面層を有した、トータルの重量法厚みが2.50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このマスターロールから500mm幅にトリミングしながら、内径6インチの巻き芯にトータル長35000m、ロール状に巻き取り、ロール状フィルムとした。このロール状フィルムを巻きだして、溶融インクをコートし、インクリボンを得た。
【0049】
比較例1
実施例1のポリエステル(a)において、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を添加しない以外は、まったく同様の方法で極限粘度0.66のポリエステル(d)を得た。ポリエステル(d)とポリエステル(b)を混合し、ポリエステル(e)を得た。このポリエステル(e)には、ポリマーに対し、シリカ粒子0.10重量%、架橋高分子粒子0.20重量%が含有されていた。以下、実施例1とまったく同様の方法で、背面層を有した、トータルの重量法厚みが2.50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得、引き続き、実施例1と同様にして、感熱転写リボン製造を行った。
以上、実施例1および比較例1について得られた結果をまとめて表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【発明の効果】
本発明のフィルムは、熱劣化物の極めて少ないフィルムであるため、薄膜であるにも関わらず、耐熱性の良好なフィルムを与えることができ、その工業的価値は高い。
Claims (1)
- 少なくとも1種の酸化防止剤を含有するポリエステル層を少なくとも1層有することを特徴とするポリエステルフィルム。
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