JP2004189643A - 光学活性なジヒドロキャラノンの製造方法 - Google Patents

光学活性なジヒドロキャラノンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【構成】(+)−ジヒドロキャラノンおよび/または(−)−ジヒドロキャラノンを含む混合物と,光学活性な酒石酸誘導体とを混合して,ジヒドロキャラノンの光学活性体と光学活性な酒石酸誘導体との包接化合物を形成させ,この包接化合物からジヒドロキャラノンの光学活性体を分離して得ることを特徴とする,光学活性なジヒドロキャラノンの製造方法。
【効果】従来入手が困難であった光学活性なジヒドロキャラノンの両鏡像体を,簡単な操作で高収率,しかも高化学および光学純度で得られる。また,本発明に用いる光学活性な酒石酸誘導体は,入手が容易であると同時にほぼ定量的に回収して繰り返し使用できるので,製造コストを抑えることもできる。また、得られるジヒドロキャラノンの両鏡像体は,それぞれ異なった優れた香料化学的な性質を有する化合物であるので、今後、香粧品や飲食品等への賦香用に有望な香料物質として提供できる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、沈香,伽羅などの香木,ゴボウ,フキやキク科セネシオ属などの植物に含まれ,香粧品や飲食品等の賦香用組成物の香料原料として有用なジヒドロキャラノンの両鏡像体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】ジヒドロキャラノン(Dihydrokaranone)は,デヒドロフキノン(Dehydrofukinone)とも呼ばれ,K. Naya等によってゴボウの葉の精油成分として単離・同定された既知化合物で,(+)の旋光度を有していると報告された(非特許文献1)。その絶対構造は,(4aR,5S)−(+)−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−4a,5−ジメチル−3−(1−メチルエチリデン)−2(3H)−ナフタレノンである。その鏡像異性体である(4aS,5R)−(−)−体{(−)−ジヒドロキャラノン},トランスジメチル基を有する(4aR,5R)−(+)−体(4−エピジヒドロキャラノン)と(4aS,5S)−(−)−体(5−エピジヒドロキャラノン)は天然からまだ見つかっていない。
【0003】(+)−ジヒドロキャラノンの合成については,(a)天然から単離した(+)−フキノンをDDQで脱水素して合成した例があるのみで(非特許文献2),(−)−ジヒドロキャラノンの合成についても,(b)(−)−アリストロチェン(Aristolochene)の光酸化生成物を,さらに酸化,異性化反応して合成している例(非特許文献3)と,(c)光学活性なエナミンを使った不斉Michael反応を経由して合成している例(非特許文献4)の2つがあるのみである。
【0004】上記方法の内,(a)と(b)は天然単離品の構造決定を目的にした合成で,出発原料に入手困難な天然物を使用しており,実用的ではない。(c)は,光学活性な(3R)−2,3−ジメチルシクロヘキサノンを出発原料にし,さらに不斉を誘起するために高価な試薬が必要となる。また,この方法で鏡像異性体である(+)−ジヒドロキャラノンを合成するためには,新たな出発原料として(3S)−2,3−ジメチルシクロヘキサノンが必要になり,この化合物は入手が非常に困難である。
また,(±)−ジヒドロキャラノン(ラセミ体)の合成については,例えば2,3−ジメチルシクロヘキサノンとメチルビニルケトンとのMichael反応を用いる例(非特許文献5)がある。しかし、前記のMichael反応では,トランス−ジメチル体が少なからず副生し,このものを分離することが困難なため,最終目的物である(±)−ジヒドロキャラノン中に4−および5−エピジヒドロキャラノン(トランス−ジメチル体)が混在してくる欠点があった。すなわち,ジヒドロキャラノンとエピジヒドロキャラノンはTLCで同じRf値を示し,キャピラリーGCでも両者の保持時間が接近してきて,カラムクロマトや蒸留操作で両者を分離することが困難である。さらに,光学活性なキャピラリーカラムを使っても,ジヒドロキャラノンの光学異性体は分離しなかったことから,ラセミ体から光学活性なジヒドロキャラノンを得ることは,これまで不可能であった。
【0005】本出願の発明に関する先行技術文献情報としては次のものがある。
【非特許文献1】K. Naya, et al.,「Chem. Letters」, p.235−236 (1972)
【非特許文献2】K. Naya, et al.,「Tetrahedron」, 24, p.5871−5879 (1968)
【非特許文献3】M.Ishihara, et al.,「Phytochemistry」33(5), p.1147−1155(1993)
【非特許文献4】R. A. Schenato, et al.,「Tetrahedron: Asymmetry」,12(4),p.579−584 (2001)
【非特許文献5】P. Duhamel, et al., 「J. Chem. Soc. Perkin Trans.」 1, p.387−396 (1992)
【0006】ところで,(+)−ジヒドロキャラノンとその鏡像体である(−)−ジヒドロキャラノンの香料化学的な性質は異なっており,(+)−体が強い華やかなウッディーノートであるのに対して,(−)−体は柑橘的な雰囲気を持った弱いウッディーノートを有している。ラセミ体は強いウッディーノートを有するが,(−)−体が影響してシャープさと華やかさに欠けて調合原料としての魅力に乏しい。すなわち,(+)−体は燻煙的で華やかなウッディー感を,(−)−体は柑橘の底味的なウッディー調を有していることから,調合香料の原料として用いる場合,両者の使用目的は全く異なってくる。
【0007】従って、本発明の目的は、華やかで強いウッディーノートを有する(+)−ジヒドロキャラノンと柑橘的でマイルドなウッディーノートを有する(−)−ジヒドロキャラノンを,高い化学および光学純度で工業的に製造し,有用な香料原料として提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、両光学異性体を簡単な操作で高収率,しかも高化学および光学純度で得られる下記発明を完成した。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、式(1)
【化3】
Figure 2004189643
で表される(+)−ジヒドロキャラノンおよび/または式(2)
【化4】
Figure 2004189643
で表される(−)−ジヒドロキャラノンを含む混合物と,光学活性な酒石酸誘導体とを混合して,式(1)または式(2)で表されるジヒドロキャラノンの光学活性体と光学活性な酒石酸誘導体との包接化合物を形成させ,この包接化合物から式(1)または式(2)で表されるジヒドロキャラノンの光学活性体を分離して得ることを特徴とする,光学活性なジヒドロキャラノンの製造方法である。
【0009】また本発明は、式(1)
【化5】
Figure 2004189643
で表される(+)−ジヒドロキャラノン、式(2)
【化6】
Figure 2004189643
で表される(−)−ジヒドロキャラノン,式(3)
【化7】
Figure 2004189643
で表される(+)−4−エピジヒドロキャラノン,および式(4)
【化8】
Figure 2004189643
で表される(−)−5−エピジヒドロキャラノンの混合物と,光学活性な酒石酸誘導体とを混合して,式(1)または式(2)で表されるジヒドロキャラノンの光学活性体と光学活性な酒石酸誘導体との包接化合物を形成させ,この包接化合物から式(1)または式(2)で表されるジヒドロキャラノンの光学活性体を分離して得ることを特徴とする,光学活性なジヒドロキャラノンの製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明において,前記の(+)−ジヒドロキャラノンおよび/または(−)−ジヒドロキャラノンを含む混合物とは、(+)−ジヒドロキャラノンまたは(−)−ジヒドロキャラノン、更には(+)−ジヒドロキャラノンおよび(−)−ジヒドロキャラノンを含む混合物であれば、特に制限はない。
(+)−ジヒドロキャラノンおよび(−)−ジヒドロキャラノンを含む混合物の一例としては、前記非特許文献5記載の下記反応工程図Aで示される、2,3−ジメチルシクロヘキサノン(7)を出発原料として合成される,式(1),式(2),式(3)および式(4)で表される化合物のラセミ体を主とする混合物がある。
【0011】
【化9】
反応工程図A
Figure 2004189643
【0012】上記反応で得られるジヒドロキャラノンのラセミ体{(1):(2)=1:1}とエピジヒドロキャラノンのラセミ体{(3):(4)=1:1}の比率は,反応条件等によって、例えば{(1)+(2)}:{(3)+(4)}=75:25から95:5であるが,式(3)と式(4)で表されるエピジヒドロキャラノンは本発明で用いられる光学活性な酒石酸誘導体(ホスト化合物)と包接化合物を形成し難いので,光学活性な酒石酸誘導体と光学活性なジヒドロキャラノン(ゲスト化合物)との包接化合物を形成・単離するためには、エピジヒドロキャラノンが共存していても問題にはならない、即ちジヒドロキャラノンの化学純度は,特に限定されない。
さらに,エピジヒドロキャラノン以外の不純物が混在しても,本発明におけるゲスト化合物であるジヒドロキャラノンとホスト化合物の包接化が優先するので問題にならず,ゲスト化合物の化学的な精製も同時に行うことが可能である。
【0013】また,本発明におけるゲスト化合物であるジヒドロキャラノンの光学純度は,上記のようなラセミ体から片方の鏡像異性体を過剰に含むものまでいかなる純度のものを用いてもよい。例えば,片方の鏡像異性体が過剰な場合には,まず過剰に存在する異性体と包接化合物を形成する光学活性なホスト化合物を用いて包接化合物を形成させれば,過剰に存在する鏡像異性体の光学純度を上げて製造することができる。
【0014】(+)−ジヒドロキャラノンまたは(−)−ジヒドロキャラノンを含む混合物の他の例としては、前記非特許文献2、3、4記載の(+)−フキノンをDDQで脱水素して合成する例、(−)−アリストロチェン(Aristolochene)の光酸化生成物を,さらに酸化,異性化反応して合成する例、光学活性なエナミンを使った不斉Michael反応を経由して合成する例がある。これらの場合も、本発明を問題なく適用する事ができる。
【0015】
次に、本発明で用いられるホスト化合物である光学活性な酒石酸誘導体としては、(+)−ジヒドロキャラノンまたは(−)−ジヒドロキャラノンと包接化合物を形成するものであれば特に限定されないが、なかでも、分離能,入手のしやすさ,取扱いのしやすさなどから,下記の式(5a),(5b),(6a)または(6b)で表される光学活性な酒石酸誘導体が好ましい。
【化10】
Figure 2004189643
(式中,R及びRは同一または異なった水素原子、炭素数1〜6の低級アルキル基またはフェニル基を示す。Arはフェニル基,低級アルキル化フェニル基、ハロゲン化フェニル基、またはナフチル基を示す。n=2〜7である。)
なかでも、前記式中,R及びRは同一または異なったメチル基またはエチル基を示し、Arはフェニル基,トリル基、またはナフチル基を示し、n=4または5である酒石酸誘導体が好ましい。
より具体的には、前記(5a)または(5b)では、R及びRがメチル基の場合,Arはフェニル基,トリル基,またはナフチル基を,R及びRがエチル基の場合,Arはフェニル基,トリル基,またはナフチル基を,Rがメチル基でRがエチル基の場合,Arはフェニル基,トリル基,またはナフチル基を示す。同様に,前記(6a)または(6b)では、n=4の場合,Arはフェニル基,トリル基,またはナフチル基,n=5の場合,Arはフェニル基,トリル基,またはナフチル基である。
更には、前記(5a)または(5b)では、R及びRがメチル基またはエチル基で,Arはフェニル基またはトリル基、およびRがメチル基、Rがエチル基で,Arはフェニル基またはトリル基である酒石酸誘導体が好ましい。同様に,前記(6a)または(6b)では、n=4または5で,Arはフェニル基またはトリル基である酒石酸誘導体が好ましい。
上記の式(5a)〜(6b)で表される光学活性な酒石酸誘導体は,光学活性な酒石酸から容易に合成でき,光学分割した後に回収して再利用することができる。
【0016】本発明において,混合物中に存在する式(1)あるいは式(2)であらわされる光学活性なジヒドロキャラノンと光学活性な酒石酸誘導体との包接化合物を形成させるためには,公知のいかなる方法を用いてもよい。例えば,上記混合物中に存在する(+)−あるいは(−)−ジヒドロキャラノンと光学活性な酒石酸誘導体を,適当な溶媒を用いて溶解し,冷却または溶解度の低い溶媒を徐々に加えることにより包接化合物の結晶を得ることができる。また,適当な溶媒を用いて溶解させた後,減圧下溶媒を留去して結晶化させることも可能である。
本発明において使用する,混合物中に存在する(+)または(−)−ジヒドロキャラノンと、光学活性な酒石酸誘導体との比率は、モル比で 3:1〜1:2が好ましい。
析出した包接化合物の結晶を混合物中から単離する方法は,例えば該混合物を減圧もしくは常圧下でフィルター濾過して結晶と濾液を分離して取得することができる。
【0017】包接化合物から光学活性なジヒドロキャラノンを取得する方法は,加熱により分離する方法、その他いかなる方法であってもよい。例えば,包接化合物を直接減圧蒸留して光学活性なジヒドロキャラノンと光学活性な酒石酸誘導体とを分離する方法,包接化合物にメタノールを加えてメタノールと光学活性な酒石酸誘導体との包接化合物を形成させて光学活性なジヒドロキャラノンを分離する方法,包接化合物をカラムクロマトグラフィー処理することにより,光学活性なジヒドロキャラノンと光学活性な酒石酸誘導体とを分離する方法などがある。
【0018】また,上述の反応工程図Aで得た、式(1),式(2),式(3)および式(4)で表される化合物のようにラセミ体を主とする混合物に本発明を適用した場合,(+)−あるいは(−)−ジヒドロキャラノンを取得した後の回収母液には,主としてジヒドロキャラノンの残ったどちらかの鏡像体と4−および5−エピジヒドロキャラノンが含まれる。このものから残ったジヒドロキャラノンの鏡像体を取得するためには,先に用いた光学活性な酒石酸誘導体の鏡像体を用いて包接化合物を形成させ,上記と同様の操作をすればよい。
尚、包接化合物は、(+)−ジヒドロキャラノンと(+)体の酒石酸誘導体とで形成され、また同様に(−)−ジヒドロキャラノンと(−)体の酒石酸誘導体とで形成される。
【0019】
【実施例】以下,実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。なお,実施例中での生成物の純度測定は,ガスクロマトグラフィー(GC)と旋光度計で行った。条件は以下の通りである。
GC:HP5890ガスクロマトグラフ(ヒューレット・パッカード社製)
カラム:DB−1(0.25mm×60m)(J&W社製)
検出器:FID
旋光度:JASCO DIP−370旋光度計(日本分光社製)
【0020】実施例1 (+)−ジヒドロキャラノンの調製
下記の式(12)で表される酒石酸誘導体の(S,S)−(+)−体(75 g, 0.16 mol)と,前記反応工程図Aに示した文献記載の方法に準じて合成した式(1),式(2),式(3)および式(4)で表される化合物の混合物{70 g, 0.32mol,(1)+(2)の化学純度:78.8%;(3)+(4)の化学純度:13.6%}を200 gの酢酸エチルに溶解した後,減圧下酢酸エチルを留去した。氷−水浴中で撹拌しながら,残留物にn−ヘキサン(200 g)を加えていくと包接結晶が析出してきた。混合物を吸引濾過して白色の包接結晶69.8 gを得た。母液を濃縮し,n−ヘキサン(100 g)を用いて再度結晶化を行い,18 gの包接結晶と54.2 gの回収母液を得た。得られた包接結晶を合わせてシリカゲルカラム(SiO: 700 g)に通して,5%酢酸エチル/n−ヘキサン留出部から21.8 gの(+)−ジヒドロキャラノン,20%酢酸エチル/n−ヘキサン留出部から64.5 gの酒石酸誘導体(12)を取得した。(+)−ジヒドロキャラノンの収率:79%
【0021】
【化11】
Figure 2004189643
【0022】得られた(+)−ジヒドロキャラノンのキャピラリーGC分析による純度は99.3%で,旋光度 [α] 23 +168.7°(c 1.1, CHCl)を示した。この旋光度値は,香木伽羅から単離された(+)−ジヒドロキャラノンの文献値[α] 29 +143.4°(C 1.33, CHCl)と比較すると,ほぼ100%の光学純度といえる{前記【非特許文献3】参照:M. Ishihara, et al., Phytochemistry, 33(5), 1147−1155 (1993)}。
【0023】上記で回収した母液 (54.2 g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し,44.5 gのオイルと8.6 gの(+)−酒石酸誘導体(12)を回収した。回収された酒石酸誘導体の量は合計で73.1 gになり,97.5%の回収率であった。
【0024】実施例2 (−)−ジヒドロキャラノンの調製
実施例1で回収したオイル部(44 g)と下記の式(13)で表される酒石酸誘導体の(R,R)−(−)−体(41 g, 0.088 mol)を用いて,実施例1と同様の操作を行って,22.2 gの(−)−ジヒドロキャラノンを得,40 gの酒石酸誘導体と母液から20.1 gのオイルを回収した。(−)−ジヒドロキャラノンの収率:80%;(−)−酒石酸誘導体(13)の回収率:97.6%
【0025】
【化12】
Figure 2004189643
【0026】得られた(−)−ジヒドロキャラノンのキャピラリーGC分析による純度は97.7%で,旋光度 [α] 26 −175.2°(c 1.1, CHCl)を示した。また,母液から回収したオイルには,上記の式(1)および式(2)で表されるジヒドロキャラノンと式(3)および式(4)で表される4−および5−エピジヒドロキャラノンが,それぞれ30.5%と36.8%含まれていた。
【0027】
【実施例3】実施例2の回収母液から(+)−ジヒドロキャラノンの調製
実施例2で回収したオイル部(10 g, ジヒドロキャラノンのGC純度:30.5%)と実施例1で回収した式(12)で表される酒石酸誘導体の(S,S)−(+)−体(4.3 g, 9.2 mmol)を用いて,実施例1と同様の操作を行って,1.7 gの(+)−ジヒドロキャラノンを得,4.2 gの(+)−酒石酸誘導体(12)と母液から7.9 gのオイルを回収した。
【0028】得られた(+)−ジヒドロキャラノンのキャピラリーGC分析による純度は86.5%で,旋光度 [α] 26 161.0°(c 0.94, CHCl)を示した。
【0029】
【実施例4】実施例2の回収母液から(+)−ジヒドロキャラノンの調製
実施例2で回収したオイル部(10 g, ジヒドロキャラノンのGC純度:30.5%)と下記の式(14)で表される酒石酸誘導体の(S,S)−(+)−体(4.7 g,9.2 mmol)を用いて,実施例1と同様の操作を行って,1.8 gの(+)−ジヒドロキャラノンを得,4.5 gの(+)−酒石酸誘導体(14)と母液から7.9 gのオイルを回収した。
【0030】得られた(+)−ジヒドロキャラノンのキャピラリーGC分析による純度は87.3%で,旋光度 [α] 26 164.3°(c 1.00, CHCl)を示した。
【0031】
【化13】
Figure 2004189643
【発明の効果】本発明により,従来入手が困難であった光学活性なジヒドロキャラノンの両鏡像体を,簡単な操作で高収率,しかも高化学および光学純度で得られるようになった。また,本発明に用いる光学活性な酒石酸誘導体は,入手が容易であると同時にほぼ定量的に回収して繰り返し使用できるので,製造コストを抑えることもできる。また、得られるジヒドロキャラノンの両鏡像体は,それぞれ異なった優れた香料化学的な性質を有する化合物であるので、今後、香粧品や飲食品等への賦香用に有望な香料物質として提供できる。

Claims (1)

  1. 式(1)
    Figure 2004189643
    で表される(+)−ジヒドロキャラノンおよび/または式(2)
    Figure 2004189643
    で表される(−)−ジヒドロキャラノンを含む混合物と,光学活性な酒石酸誘導体とを混合して,式(1)または式(2)で表されるジヒドロキャラノンの光学活性体と光学活性な酒石酸誘導体との包接化合物を形成させ,この包接化合物から式(1)または式(2)で表されるジヒドロキャラノンの光学活性体を分離して得ることを特徴とする,光学活性なジヒドロキャラノンの製造方法。
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