JP2004186829A - 中継装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】SFNを構成する同一周波数再送信を行う放送波中継局の送受アンテナ間での信号の回り込みによって発生するループ発振を常用対数で表記されるD/U(dB値)が負の場合においても、誤検知することなく正確に検知することのできるループ発振検知装置を提供すること。
【解決手段】回り込みキャンセラによって回り込み波が除去された信号の品質に基づいて、ループ発振状態を検知することにより、本来回り込み波が除去されて所望の信号波形となっているはずの信号の品質が劣化している場合に、これを発振状態として検出することができ、一段と確実な発振検知を行うことが可能となる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回り込みキャンセラを有する中継装置に関し、例えば、デジタル放送波中継局の送受アンテナ間での信号の回り込みによって発生するループ発振を検知する中継装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種類のループ発振は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を用いたデジタル放送またはデジタル伝送において、SFN(Single Frequency Network:単一周波数ネットワーク)を構成する中継局で同一周波数再送信による放送波中継を行う場合、特に問題となる。従来、この種類のループ発振を検知するループ発振検知回路が組み込まれた回り込みキヤンセラとして、受信したOFDM信号の周波数振幅特性における最大値と最小値の比が所定の値を超えた場合に発振したとして中継装置からの出力を停止したり、出力レベルを減力したりするものが公知である(例えば特許文献1参照)。また他に、ループ発振を起こした場合は連続して大きな自己相関が得られることに着眼し、入力信号とこれを遅延させたものとの相関演算を行い、所定の値を超えた場合に発振検知する方式も公知である(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−160794号公報(第3頁)
【特許文献2】
特開2002−185427号公報(第2−3頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1の方法では、親局波の受信電力(D)に比べ、回り込み波の受信電力(U)が大きい場合(すなわち常用対数で表記されるD/U(dB値)が負の場合)、実際に発振していないにも関わらず発振したものと誤検知してしまうことを防ぐために、実質的に回り込み波をキャンセルした後の信号から発振検知しなくてはならない。ここで、回り込み波をキャンセルする手段としては、時間変動などに適切に対処するためにもデジタル信号処理で実施されることが望ましく、そのためにはアナログ/デジタル変換手段によって信号が飽和してしまうことのないように自動利得制御することが必要である。この自動利得制御は親局波と回り込み波の和が一定となるように制御するため、D/U(dB値)が負の場合などには回り込み波をキャンセルした後の信号レベルが小さくなってしまう。信号レベルの小さい信号の周波数振幅特性における最大値と最小値の比を求める際、最小値が小さくなり過ぎてしまうこと等により、誤検知が頻繁に発生してしまっていた。
【0005】
また、特許文献2の方法では、相関演算を行う場合の遅延時間の調整が必須となるが、発振する周波数によって遅延時間が異なるため、この遅延時間の調整を一意に設定しても発振が適切に検知されないことがあった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、SFNを構成する同一周波数再送信を行う放送波中継局の送受アンテナ間での信号の回り込みによって発生するループ発振をD/U(dB値)が負の場合においても、誤検知することなく正確に検知することのできるループ発振検知装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を除去する回り込みキャンセラと、前記回り込みキャンセラによって回り込み波が除去された信号の品質に基づいて、ループ発振状態を検知する発振検知手段と、前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を具備する構成を採る。
【0008】
また、本発明の中継装置は、上記構成において、前記受信信号の信号レベルを一定に保つ自動利得制御手段と、前記自動利得制御手段の出力をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換手段と、をさらに具備し、前記アナログ/デジタル変換手段の出力が前記回り込みキャンセラに供給される構成を採る。
【0009】
これらの構成によれば、回り込み波が除去された信号の品質に基づいて発振検知を行うことにより、本来回り込み波が除去されて所望の信号波形となっているはずであるものが、発振によって乱れていることを検出することで、確実な発振検知を行うことが可能となる。
【0010】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタの係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、前記回り込みキャンセラの出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、所定の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して発振検知信号を出力する比較手段と、前記比較手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を有する発振検知手段と、を具備する構成を採る。
【0011】
この構成によれば、親局波の受信電力の方が回り込み波の受信電力よりも小さい場合にも、誤検知することなく正確な発振検知が簡易な構成となり、安価な放送波中継装置の実現が可能となるという作用を有する。
【0012】
本発明の中継装置は、上記構成において、前記絶対値出力手段の前段に前記回り込みキャンセラの出力信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換手段をさらに具備する構成を採る。
【0013】
この構成によれば、OFDM信号特有の稀に発生するピーク振幅が閾値を超えることで誤検知してしまうことがなく、信頼性の高い発振検知が可能となるという作用を有する。
【0014】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタの係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、前記回り込みキャンセラの出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、第一の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合に、その結果を出力する第一の比較手段と、前記第一の比較手段の比較結果に基づいて、前記絶対値出力手段の出力信号が前記第一の閾値を超えた回数を計上するスライディング積分手段と、このスライディング積分手段の出力値と所定の第二の閾値とのレベル比較を行い、前記スライディング積分手段の出力値の方が前記第二の閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する第二の比較手段とを有する発振検知手段と、前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を具備する構成を採る。
【0015】
この構成によれば、OFDM信号の振幅確率密度分布を考慮した閾値を設定することで、OFDM信号の特性を利用した精度の高い発振検知が可能となるという作用を有する。
【0016】
本発明の中継装置は、上記構成において、前記閾値は固定値として設定されている構成を採る。また、本発明の中継装置は、上記構成において、前記第一及び第二の閾値は固定値として設定されている構成を採る。
【0017】
これらの構成によれば、運用上想定される最悪D/U比を考慮した最適な閾値を予め求めておくことで、放送波中継の信頼性が高まるという作用を有する。
【0018】
本発明の中継装置は、上記構成において、前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出手段をさらに具備し、前記閾値は、前記平均電力値によって制御される構成を採る。
【0019】
この構成によれば、フェーディングなどにより変動する親局受信波の信号レベルに適切に対処することができ、様々な置局条件でもSFN放送波中継を実現できるという作用を有する。
【0020】
本発明の中継装置は、上記構成において、前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出手段と、前記平均電力値とこの平均電力値に対応した適切な閾値との関係を記憶する記憶手段と、をさらに具備し、前記平均電力値に対応して前記記憶手段から読み出された閾値を前記所定の閾値として設定する構成を採る。
【0021】
この構成によれば、親局受信波の信号レベルに対応して最適な閾値を設定することができ、発振検知精度が向上し運用上の限界D/U(dB値)を小さく回線設計することができるという作用を有する。
【0022】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタの係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出手段と、所定の閾値及び前記平均電力検出手段の出力値のレベル比較を行い、前記電力検出手段の出力値の方が前記閾値よりも小さい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する比較手段とを有する発振検知手段と、前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を具備する構成を採る。
【0023】
この構成によれば、D/U(dB値)比が所定値以下になった場合には発振したと検知することで、誤検知のないD/U(dB値)に応じた一意的な発振検知が可能となるという作用を有する。
【0024】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタの係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、前記回り込みキャンセラの出力信号の短時間平均電力値を検出する第一の電力検出手段と、前記出力信号の長時間平均電力値を検出する第二の電力検出手段と、前記第二の電力検出手段によって検出された平均電力値に基づいて設定される閾値と前記第一の電力検出手段の出力値とのレベル比較を行い、前記第一の電力検出手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する比較手段とを有する発振検知手段と、前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を具備する構成を採る。
【0025】
この構成によれば、長期平均電力に比べて短期平均電力が著しく大きくなった場合に発振したと検知することで、回り込み波が十分にキャンセルされなかった瞬間に適切に発振検知できるという作用を有する。
【0026】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、前記FIRフィルタに供給される前記フィルタ係数をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段の出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、所定の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して発振検知信号を出力する比較手段とを有する発振検知手段と、前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を具備する構成を採る。
【0027】
この構成によれば、回り込み伝搬路の特性を模擬したFIRフィルタの周波数特性から発振検知を行うことで、精度の良い発振検知が可能となるという作用を有する。
【0028】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、前記フィルタ係数制御手段における更新前のフィルタ係数と更新後のフィルタ係数との差分を求めるフィルタ係数更新差分検出手段と、前記フィルタ係数更新差分検出手段の出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、所定の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して発振検知信号を出力する比較手段とを有する発振検知手段と、前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を具備する構成を採る。
【0029】
この構成によれば、フィルタ係数の更新値が以前の値から大きく異なっている場合には発振による急激な伝搬路変動が生じたためであるとして発振検知することで、瞬時に発振検知できるという作用を有する。
【0030】
本発明の中継装置は、上記構成において、前記フィルタ係数制御手段は、前記回り込み波の複製を減じた信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段から伝搬路の周波数特性を推定する伝搬路周波数特性推定手段と、前記伝搬路周波数特性推定手段の結果を基に理想的な伝搬路周波数特性からの誤差分を求める理想伝搬路誤差演算手段と、前記理想伝搬路誤差演算手段からの出力を時間領域の信号に変換する逆フーリエ変換手段と、前記逆フーリエ変換手段の出力を前記FIRフィルタの各々のタップ毎に累積する誤差分累積手段とを有し、前記絶対値出力手段への入力が、前記理想伝搬路誤差演算手段からの出力である構成を採る。
【0031】
この構成によれば、逆フーリエ変換前の周波数領域信号から発振検知しているため、演算遅延が少なく、より高速に発振検知できるという作用を有する。
【0032】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、前記FIRフィルタに供給される前記フィルタ係数をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段の出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、第一の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合に、その結果を出力する第一の比較手段と、前記第一の比較手段の比較結果に基づいて、前記絶対値出力手段の出力信号が前記第一の閾値を超えた回数を計上するスライディング積分手段と、このスライディング積分手段の出力値と所定の第二の閾値とのレベル比較を行い、前記スライディング積分手段の出力値の方が前記第二の閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する第二の比較手段とを有する発振検知手段と、前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を具備する構成を採る。
【0033】
この構成によれば、発振検知を判定するまでに所定の時間の間の信号を観測するため、より高精度な発振検知が可能となるという作用を有する。
【0034】
本発明の中継装置は、単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、前記フィルタ係数制御手段における更新前のフィルタ係数と更新後のフィルタ係数との差分を求めるフィルタ係数更新差分検出手段と、前記フィルタ係数更新差分検出手段の出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、第一の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合に、その結果を出力する第一の比較手段と、前記第一の比較手段の比較結果に基づいて、前記絶対値出力手段の出力信号が前記第一の閾値を超えた回数を計上するスライディング積分手段と、このスライディング積分手段の出力値と所定の第二の閾値とのレベル比較を行い、前記スライディング積分手段の出力値の方が前記第二の閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する第二の比較手段とを有する発振検知手段と、前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、を具備する構成を採る。
【0035】
この構成によれば、発振検知を判定するまでに所定の時間の間の信号を観測するため、より高精度な発振検知が可能となるという作用を有する。
【0036】
本発明の中継装置は、上記構成において、前記閾値は固定値として設定されている構成を採る。
【0037】
この構成によれば、発振検知を判定するまでに所定の時間の間信号を観測するため、発振する直前の限界D/U(dB値)比において最適な閾値を実験などによって予め求めておくことで、信頼性の高い発振検知を瞬時に行うことができるという作用を有する。
【0038】
本発明の中継装置は、上記構成において、前記閾値は、前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値によって制御される構成を採る。
【0039】
この構成によれば、フェーディングなどにより変動する親局受信波の信号レベルに適切に対処することができ、様々な運用条件下においても安定して瞬時に発振検知できるという作用を有する。
【0040】
本発明の中継装置は、上記構成において、前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出手段と、前記平均電力値とこの平均電力値に対応した適切な閾値との関係を記憶する記憶手段と、をさらに具備し、前記平均電力値に対応して前記記憶手段から読み出された閾値を前記所定の閾値として設定する構成を採る。
【0041】
この構成によれば、親局受信波の信号レベルに対応して最適な閾値を設定することができ、瞬時に検知可能である上、検知の精度が向上するという作用を有する。
【0042】
【発明の実施の形態】
本発明の骨子は、回り込みキャンセラによって回り込み波が除去された信号の品質に基づいて、ループ発振状態を検知することにより、本来回り込み波が除去されて所望の信号波形となっているはずの信号の品質が劣化している場合に、これを発振状態として検出することができ、一段と確実な発振検知を行うことが可能となる。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
(実施の形態1)
図1は本発明によるSFN放送波の中継装置100の実施の形態1の構成を示すブロック図であり、受信アンテナ101において受信した親局波を送信アンテナ111から中継信号として送信するようになされている。この受信アンテナ101では、親局波に自局からの中継信号が回り込み波として重畳した信号が受信される。
【0045】
中継装置100は、受信アンテナ出力を低雑音増幅やチャネルフィルタリングや周波数変換等を行う受信変換部102、アナログ/デジタル(A/D)変換部104により信号が飽和することのないよう信号レベルを制御する自動利得制御部103、アナログ/デジタル変換された信号から回り込み波の複製信号をキャンセルする回り込みキャンセラ120、回り込み波の複製が減じられたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ(D/A)変換部108、親局と同じ周波数チャネルに周波数変換等を行う送信変換部109、放送波中継局の送受アンテナ(送信アンテナ111及び受信アンテナ101)間での信号の回り込みによって発生するループ発振を検知する発振検知部112、発振検知部112からの出力信号に基づいて送信電力を制御する自動利得制御部110等から構成されている。
【0046】
回り込みキャンセラ120は、放送波中継局(中継装置100)の送受アンテナ(送信アンテナ111及び受信アンテナ101)間での信号の回り込みによって発生するループ発振を検知するものであり、アナログ/デジタル変換された信号から回り込み波の複製信号を減ずる減算器105、回り込み波の複製を出力するFIRフィルタ106、FIRフィルタ106のフィルタ係数を決定する係数制御部130を有する。
【0047】
また、発振検知部112は、入力信号の絶対値を出力する絶対値出力部113、入力と閾値の大きさを比較して比較結果を出力する比較部114と、比較部114の閾値を設定する閾値設定部115などから構成される。
【0048】
なお、図1には示していないが、減算器105とデジタル/アナログ変換部108との間に帯域通過フィルタを介在させてOFDM信号帯域外の周波数成分による発振を防止することも好適である。
【0049】
ここで、回り込みキャンセラ120による回り込みキャンセルの原理について説明する。図1との対応部分に同一符号を付して示す図2は、回り込みキャンセラ120を用いたSFN中継システムのモデルを示すブロック図である。図中の記号「*」は畳み込み演算を表す。また以降、特に断らない限り、信号や応答は複素数として扱うものとする。「(t)」は時間領域での信号、「(ω)」は周波数領域での信号を表すものとし、信号の定義は片方の領域の定義でもう片方の領域での定義も同時に行う。
【0050】
なお、図2中の受信部100aは、図1に示した受信変換部102、自動利得制御部103及びアナログ/デジタル変換部104を含むものであり、ここでRF(Radio Frequency:無線周波数)帯域の信号が基底帯域(以下、ベースバンド)の信号に変換される。これに対して、送信部100bは、図1に示したデジタル/アナログ変換部108、送信変換部109を含むものであり、ベースバンドの信号をRF帯域に変換する。但し、これらの周波数変換は、本発明に対して本質的な影響を与えるものではないので、以下では特に断らない限り、これら周波数変換に関しては言及しない。
【0051】
図2において、x(t)は親局信号、r(t)は受信部100aの入力信号、s(t)は送信部100bの入力信号、w_in(ω)は受信部100aの伝達関数、w_out(ω)は送信部100bの伝達関数、w_loop(ω)は回り込み伝送路100cの伝達関数、w_fir(t)は回り込みキャンセラ120内部のFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタ106のインパルス応答をそれぞれ表す。
【0052】
図2において、受信アンテナ101は、親局信号x(t)と回り込み伝送路100cからの回り込み信号w_loop(t)*w_out(t)*s(t)との合成信号を受信し、その出力r(t)は受信部100aに供給される。受信部100aは、受信信号r(t)に対して周波数変換、ゲイン調整等の処理を行うもので、その出力w_in(t)*r(t)は回り込みキャンセラ120内部の減算器105の第一の入力に供給される。
【0053】
回り込みキャンセラ120の内部において、減算器105は、受信部100aの出力w_in(t)*r(t)からFIRフィルタ106の出力w_fir(t)*s(t)を減じるもので、その出力s(t)はFIRフィルタ106の第一の入力及び係数制御部130に供給されるとともに、回り込みキャンセラ120の出力として、送信部100bに供給される。
【0054】
係数制御部130は、減算器105の出力s(t)から伝送路の特性を推定し、フィルタ係数を生成するもので、その出力w_fir(t)はFIRフィルタ106の第二の入力に供給される。
【0055】
FIRフィルタ106は、減算器105の出力s(t)に対して係数制御部130の出力w_fir(t)による畳み込み演算を行い、回り込み信号の複製w_fir(t)*s(t)を生成するもので、その出力は減算器105の第二の入力に供給される。
【0056】
送信部100bは、減算器105の出力s(t)に対して、周波数変換、ゲイン調整等の処理を行い中継信号w_out(t)*s(t)を生成するもので、その出力は送信アンテナ111に供給される。
【0057】
送信アンテナ111は送信部100bの出力w_out(t)*s(t)を放射するもので、その出力の一部が回り込み伝送路100cを経由した後、回り込み信号w_loop(t)*w_out(t)*s(t)となって受信アンテナ101に回り込む。
【0058】
ここで、回り込みキャンセラ120が回り込みを打ち消す条件について、図3に示す回り込みキャンセラ120の構成と共に説明する。回り込みキャンセラ120の係数制御部130は、時間領域の信号である減算器105の出力s(t)を、フーリエ変換部(FFT:First Fourier Transform)121において周波数領域の信号に変換し、これを周波数特性推定部122に供給する。
【0059】
周波数特性推定部122は、フーリエ変換部121の変換結果から伝搬路の周波数特性を推定するものであり、その出力F(ω)は式(1)で表される。
【0060】
【数1】
Figure 2004186829
従って、減算器105によって回り込み信号が打ち消される条件は式(2)で表される。
【0061】
【数2】
Figure 2004186829
ここで、理想的な伝搬路周波数特性からの誤差分であるキャンセル残差E(ω)を式(3)のように定義し、
【数3】
Figure 2004186829
式(1)を変形すると式(4)が得られる。
【0062】
【数4】
Figure 2004186829
ここでモデルを簡略化し、受信部100bの周波数特性が信号帯域内において平坦であると仮定すると、その伝達関数w_in(ω)は定数Dとなり、これは誤差分検出部123において式(5)に基づいて算出される。
【0063】
【数5】
Figure 2004186829
このとき、キャンセル残差E(ω)は式(6)で表される。
【0064】
【数6】
Figure 2004186829
誤差分検出部123において算出されたキャンセル残差E(ω)は、逆フーリエ変換部(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)124において時間領域の信号に変換された後、誤差分累積部125に供給される。誤差分累積部125は、式(7)に示す係数更新式によって係数の更新を行う。
【0065】
【数7】
Figure 2004186829
ただし、式(7)中のw_old(t)は更新前の係数、μは1以下の非負定数である。以上の条件によって、回り込みの伝達関数w_loop(ω)w_out(ω)とFIRフィルタ106の伝達関数w_fir(ω)との差分であるキャンセル残差E(ω)が、0に収束するようにフィードバック制御が動作し、回り込みキャンセラ120(減算器105)の出力s(t)には、主波成分のみが出力される。
【0066】
なお、以上説明した回り込みキャンセルの一般的原理は特許文献1に詳細に述べられており、以下では本発明に関わる部分についてのみ触れる。デジタル信号処理によって回り込み波の複製を発生させ、回り込み波信号成分を含む入力信号からこの複製を減じる手段としては、図1に示したようにアナログ/デジタル変換部104の後段で実施すると伝搬路の変動等に追従した高精度でかつ安定した回り込みキャンセルが実現できる。
【0067】
図1のような構成ではアナログ/デジタル変換部104への入力信号は親局波と回り込み波が重畳された信号であり、この入力信号がアナログ/デジタル変換部104によって飽和してしまうと所望の回り込みキャンセル特性が得られない。そこで、自動利得制御部103によって適正な信号レベルでアナログ/デジタル変換されるように制御している。
【0068】
この時、受信アンテナ1において結合される回り込み波の信号電力(U)が親局波からの受信電力(D)よりも大きい、すなわち、常用対数で表記されるD/U(dB値)が負の場合には主として回り込み波信号電力(U)に応じた利得制御が行われる。例えば、親局から中継装置100への伝搬路が海上や海岸線等の場合、特に高温の日にはフェーディング等により、親局受信電力が想定している通常受信電力よりも数十dB以上減衰することがあり、このときD/U(dB値)は−10dB以下という厳しい条件となる。このような場合、親局受信波よりも回り込み波の方が十分大きな電力となり、自動利得制御部103は回り込み波の信号レベルに追従した制御が行われる。なお、D/Uを常用対数で表記されるD/U(dB値)として説明する。
【0069】
このような条件において回り込みキャンセラ120では、アナログ/デジタル変換後に回り込み波の複製が減ぜられると、親局信号レベルが著しく小さくなる。従来技術を用いた場合にも本発明おいても、発振検知は回り込み波成分が除去された信号を基に実施する必要があり、上述のような過酷な条件の場合、小さいレベルの信号から発振検知しなくてはならない。このため、実際には発振していないにも関わらず、発振したものとしてしまう誤検知が発生してしまい、送信出力レベルを停止または減力してしまうため、SFN放送波中継することの可能な限界D/U(dB値)を制限することとなっていた。
【0070】
そこで、本実施の形態では、発振した場合には最大振幅が大きくなるということに着目し、発振検知部112への入力信号を絶対値出力部113によって絶対値に変換し、比較部114において閾値設定部115からの閾値と絶対値出力部113からの絶対値とを比較し、この閾値よりも大きな絶対値が得られた場合には発振したものとして、発振検知信号を自動利得制御部110に出力する。自動利得制御部110は、発振検知信号によって、送信する中継信号を停波または減力させるように制御する。
【0071】
このように、本実施の形態の中継装置100によれば、発振検知部112において回り込みキャンセラ120の出力信号の絶対値が所定の閾値を超えた場合に、発振したものと判断するようにしたことにより、回り込み波の受信電力が大きくなって自動利得制御部103及び回り込みキャンセラ120を介して得られる回り込み波をキャンセルした後の所望信号(親局波)の信号レベルが小さくなった場合であっても、発振検知部112に入力される所望信号の最大値振幅によって確実に発振検知を行うことができる。
【0072】
なお、閾値を複数設けておき、超えた閾値レベルに応じて減力させ、最大閾値を超えた場合には停波させるように制御することも好適である。
【0073】
また、送信を減力または停波させるための自動利得制御部110は、デジタル/アナログ変換部108の前段に設けるようにしてもよい。
【0074】
また、比較部114に入力する信号としては複素信号の場合には、同相成分および直交成分についてそれぞれの絶対値を絶対値出力部113から出力し、それぞれの出力結果の和を比較部114において比較するような構成としても好適である。
【0075】
また、絶対値出力部113の代わりに2乗手段を用いて入力信号の瞬時電力を比較部114に入力することも好適であり、複素信号の場合には同相成分および直交成分の2乗和を比較部114に入力することもまた好適である。
【0076】
ここで、設定する閾値としては実験などによって得られる最適値を予め設定しておくことも、また、D/U(dB値)などに応じて変更するようにすることも好適である。
【0077】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2に係る中継装置200の構成を示すブロック図である。但し、図1と同一の部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0078】
図4においてループ発振を検知する発振検知部116は図1に示した実施の形態1の構成に加え、入力信号を周波数領域に変換するフーリエ変換部(FFT)117を有する。
【0079】
本実施の形態2の発振検知部116においては、フーリエ変換部117において周波数領域上に変換された信号を、絶対値出力部113によって絶対値に変換した後に、比較部114において閾値設定部115からの閾値と比較して発振検知するものである。
【0080】
ここで、発振検知部116に入力される入力信号はOFDM信号であり、周波数領域への変換開始タイミングは通常の受信装置と同じようにシンボル毎に設けられているガードインターバル区間とすることが望ましい。また、実施の形態1の場合と同様に、閾値を複数設けておき、超えた閾値レベルに応じて減力させ、最大閾値を超えた場合には停波させるように制御することも好適であり、比較部114に入力する信号が複素信号の場合には、同相成分および直交成分について、それぞれの絶対値を絶対値出力部113において出力し、それぞれの出力結果の和を比較部114に入力するような構成としてもまた好適であり、また、絶対値出力部113の代わりに2乗手段を用いて入力信号の瞬時電力を比較手段に入力することもまた好適であり、さらに、複素信号の場合には同相成分および直交成分の2乗和を比較部114に入力することもまた好適である。
【0081】
このように、本実施の形態の中継装置200によれば、発振検知部116において、回り込みキャンセラ120の出力を時間領域の信号から周波数領域の信号に変換することで、時間軸上のOFDM信号に特有の稀に発生するピーク振幅によって誤検知する可能性がなくなり、好適である。
【0082】
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3に係る発振検知部118の構成を示すブロック図である。但し、図1に示した発振検知部112と同一の部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0083】
図5においてループ発振を検知する発振検知部118は、図1に示した実施の形態1の構成に加え、スライディング積分器119と第二の比較部132と第二の閾値設定部131を有する。
【0084】
本実施の形態の発振検知部118は、回り込みキャンセラ120から出力される回り込み波がキャンセルされた後の信号について、ある所定の時間内で閾値を超える振幅の数が一定数以上となった場合には発振したものとして発振検知するものである。
【0085】
すなわち、OFDM信号の振幅―確率密度関数は正規分布に従うため、ある所定の時間内で閾値を超える振幅の確率はほぼ一定となる。しかし、発振した場合には正規分布と異なり、正弦波の振幅―確率密度関数に近くなるため、所定の時間内で閾値を超える振幅の数が多くなる。発振検知部118では、この性質を利用するべく、スライディング積分器119によって所定の時間内で閾値を越える振幅の数を計上するようにしている。
【0086】
スライディング積分器119の構成としては図6に示すようなものがあり、複数の遅延手段からなる所定時間分の遅延部133、加算器134、遅延手段135及び減算器136などから構成され、所定時間分のスライディング積分結果を第二の比較部132(図5)に対して出力することができる。因みに、スライディング積分とは、図6に示したように、直列に接続された複数の遅延手段の入力段にデータが入力されると、各遅延手段のデータがシフトすることによって、出力段から最も古いデータが出力されるようになされており、このような構成において複数の遅延手段からなる遅延部133に保持されているデータの積分値を求めるものである。
【0087】
なお、図6の構成に代えて、図7に示すように、所定時間を変更することが可能なように選択部137を構成し、遅延部133の遅延時間を選択できるようにすることも好適である。スライディング積分器119の積分区間は自動利得制御部103、110等の時定数に対応させて最適化しておくと好適である。
【0088】
なお、スライディング積分器119の構成としては図6及び図7の構成以外にも、累積結果に1以下の係数を乗じて入力信号に加算する等の構成としても回路規模が小さくなり好適である。
【0089】
このように、本実施の形態の発振検知部118を有する中継装置によればOFDM信号特有の稀に発生するピーク振幅の発生確率をも考慮した高精度な発振検知が可能となり、SFN放送波中継の限界D/U(dB値)の向上につながる。
【0090】
(実施の形態4)
図8は本発明の実施の形態4に係る中継装置400を示すブロック図である。但し、図1と同一の部分については同一符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0091】
図8において本発明のループ発振検知部141は図1に示した実施の形態1の構成に加え、平均電力検出部142を有する。
【0092】
本実施の形態は回り込みキャンセラ120において回り込み波成分が除去された信号の平均電力を、発振検知部141の平均電力検出部142によって検出し、その検出した平均電力に応じて閾値を設定するようにして発振検知するものである。
【0093】
回り込み波の信号電力の方が親局波の受信電力よりも十分大きい場合、回り込みキャンセラ120によって回り込み波成分が除去された後の信号は、図8のような構成において、アナログ/デジタル変換部104のダイナミックレンジに比べかなり小さな信号レベルとなってしまう。このように信号レベルが小さい場合には比較部114で比較する閾値も小さい方が適切に発振検知できる。そこで、回り込み波成分が除去された信号の平均電力が小さい場合には閾値も小さく設定するように構成した。
【0094】
中継装置400を構成する自動利得制御部110の特性によっては、平均電力検出部142によって検出された平均電力と、閾値設定部115において設定される最適な閾値との関係が正比例でない場合もある。従って、このような場合には、図8に示す構成に代えて、図9に示す中継装置450(発振検知部151)のように、この平均電力と最適閾値との関係を実験的に取得しておき、この実験結果を反映した対応表(ROM:Read Only Memory)149を設けておく構成を採ることも好適である。因みに、図9において、図8と同一の部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0095】
なお、平均電力検出部142としては2乗演算後に積分する手段よりも回路規模の小さい絶対値を求めた後に積分する手段を用いることも好適である。
【0096】
また、図8及び図9に示したように、回り込みキャンセラ120の出力信号の平均電力に基づいて閾値を制御する構成を、図5に示したスライディング積分器119を用いた構成や、図4に示したフーリエ変換部117を用いた構成に適用することも好適である。
【0097】
このように、本実施の形態の中継装置400、450によれば、回り込み波の信号電力の方が親局波の受信電力よりも十分大きい場合、すなわち回り込みキャンセラ120によって回り込み波成分が除去された後の信号レベルが小さい場合であっても、その平均電力に応じた閾値を用いることにより、適切な発振検知を行うことができる。
【0098】
(実施の形態5)
図10は本発明の実施の形態5に係る中継装置500の構成を示すブロック図である。但し、図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0099】
図10において本発明のループ発振を検知する発振検知部161は、図1に示した実施の形態1の中継装置100の発振検知部112における、入力信号の絶対値を出力する絶対値出力部113を平均電力検出部162に変更したものである。
【0100】
本実施の形態は回り込みキャンセラ120によって回り込み波成分が除去された信号の平均電力を平均電力検出部162によって検出し、その検出した平均電力が所定のレベルより小さい場合には運用時のD(親局波)/U(回り込み波)が想定される限界D/U(dB値)を超えて小さくなっているものと判断して、事前に出力レベルを減力あるいは停波させるように制御するものであり、原理的に誤検知することのない発振検知となる。
【0101】
なお、閾値設定部115において閾値を複数設けておき、所定の閾値よりも小さくなった場合には平均電力に比例して出力レベルを自動利得制御部110によって制御し、最小閾値よりも小さくなった場合には発振したとして停波するようにすることも、未然に発振を防止することができ、好適である。
【0102】
このように、本実施の形態の中継装置500によれば、平均電力検出部162を用いて回り込みキャンセラ120の出力信号の平均電力を検出するようにしたことにより、テレビジョン中継を行う中継装置500において、移動体通信に比べて比較的ゆっくりと信号レベルが変化する特性に合致した発振検知を行うことが可能となる。
【0103】
(実施の形態6)
図11は本発明の実施の形態6に係る中継装置600の構成を示すブロック図である。但し、図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0104】
図11において本発明のループ発振を検知する発振検知部171は、回り込みキャンセラ120から得られる入力信号の短期的な平均電力を検出する短期平均電力検出部172と、入力信号の長期的な平均電力を検出する長期平均電力検出部173と、入力と閾値の大きさを比較して比較結果を出力する比較部114と、比較部114の閾値を設定する閾値設定部115などから構成される。
【0105】
本実施の形態の発振検知部171は、回り込み波成分が除去された信号の短期的な平均電力と長期的な平均電力とを比較して、発振していないときの両者の関係に比べて短期的平均電力の方が大きくなっていることが検出された時点で発振検知するものである。
【0106】
回り込みキャンセラ120によって回り込み波がキャンセルされた信号の短期的な平均電力を短期平均電力検出部172で求め、比較部114において長期的な平均電力によって定まる閾値と比較される。閾値は長期的な平均電力を長期平均電力検出部173によって定められる。発振していないときの両者の関係は一意的に求まるため、この関係を満たすように閾値設定部115によって閾値を設定する。
【0107】
なお、電力検出部(短期平均電力検出部172、長期平均電力検出部173)としては2乗後に積分する構成でなくとも小型な回路で実現できる絶対値検出後に積分する構成とすることも好適である。短期的な平均電力と長期的な平均電力を区別するためには積分区間を変えることや、時定数を変えることで区別することができる。また、積分区間や時定数の設定は中継装置を構成するアナログ部の自動利得制御部103、110等の時定数や、中継装置600が運用される場合の中継局における回り込み波の遅延時間等に応じて実験的に定めると好適である。例えば、回り込み波の遅延時間よりも短時間で発振することは原理的にありえないため、この遅延時間以上に平均電力の積分区間を設定すると好適である。
【0108】
このように、本実施の形態の中継装置600によれば、短期平均電力検出部172を用いて回り込みキャンセラ120の出力信号の短期平均電力を検出するとともに、長期平均電力検出部173によって検出された長期平均電力によって設定された閾値と比較するようにしたことにより、テレビジョン放送の中継を行う中継装置600において、移動体通信に比べて比較的ゆっくりと信号レベルが変化する信号の特性に合致した閾値の設定を行うことができる。従って、閾値設定部115において設定される閾値が、不必要に頻繁に切り換わることを回避することが可能となる。
【0109】
(実施の形態7)
図12は本発明の実施の形態7に係る中継装置700の構成を示すブロック図である。図12において本発明の中継装置700は親局波に自局からの中継信号である回り込み波が重畳した信号を受信する受信アンテナ101、受信アンテナ出力を低雑音増幅やチャネルフィルタリングや周波数変換等を行う受信変換部102、アナログ/デジタル変換部104により信号が飽和することのないよう信号レベルを制御する自動利得制御部103、アナログ/デジタル変換された信号から回り込み波の複製信号を減ずる減算器105、回り込み波の複製を出力するFIRフィルタ106、FIRフィルタ106のフィルタ係数を更新する係数制御部130、回り込み波の複製が減じられたデジタル信号をアナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換部108、親局と同じ周波数チャネルに周波数変換等を行う送信変換部109、発振検知部181からの出力信号に基づいて送信電力を制御する自動利得制御部110、中継信号を送信する送信アンテナ111などから構成される。
【0110】
図12には示していないが、減算器105とデジタル/アナログ変換部108との間に帯域通過フィルタ手段を介在させてOFDM信号帯域外の周波数成分による発振を防止することも好適である。
【0111】
発振検知部181は係数制御部130からの出力であるフィルタ係数を周波数領域に変換するフーリエ変換部182、フーリエ変換部182からの出力の絶対値を演算する絶対値出力部113と、入力と閾値の大きさを比較して比較結果を出力する比較部114と、比較部114の閾値を設定する閾値設定部115などから構成される。
【0112】
なお、比較部114に入力する信号としては複素信号の場合には、同相成分および直交成分についてそれぞれの絶対値を絶対値出力部113から出力し、それぞれの出力結果の和を比較部114において比較するような構成としても好適である。
【0113】
また、絶対値手段の代わりに2乗手段を用いて同相成分および直交成分の2乗和を比較部114に入力することもまた好適である。
【0114】
また、図8に示したように、回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出部を設け、これにより検出された平均電力値に基づいて閾値設定部115の閾値を設定し、比較部114はその設定された閾値と絶対値出力部113の出力値とを比較することにより発振検知を行うようにすることも好適である。そして、この場合、さらに、図9に示したように、平均電力検出部において検出された平均電力値と最適な閾値との関係をROM等の記憶手段に記憶しておき、実際に検出された平均電力値に対応する最適な閾値をこの記憶手段から読み出して閾値設定部115の閾値とすることも好適である。
【0115】
本発明では回り込み波の複製を出力するFIRフィルタ106のフィルタ係数をフーリエ変換部182によって周波数領域に変換し、OFDM信号帯域内および帯域外の振幅が閾値を越えていないかどうかをチェックし、閾値を超えている場合には発振しているものとして、発振検知する。ここで、OFDM信号帯域内と帯域外とで閾値を別々に設けておき、帯域外の方を帯域内よりも小さい閾値に設定しておくことで、特にOFDM信号帯域外から生じる発振を瞬時に検知することが可能となる(図13(a)参照)。また、特に発振が発生する確率の高いOFDM信号帯域における端の周波数領域の閾値を低めに設定し、OFDM信号帯域外であるが、OFDM信号が存在する周波数近辺の閾値は他のOFDM信号帯域外の閾値よりも小さめに設定しておくことも好適である(図13(b)参照)。
【0116】
このように、本実施の形態7の中継装置700によれば、FIRフィルタ106のフィルタ係数を周波数領域に変換することで、回り込み伝搬路の特性を模擬したFIRフィルタ106の周波数特性から発振検知行うことで、精度の良い発振検知が可能となる。なお、周波数領域に変換するフーリエ変換手段は入力信号がサンプリングされた離散信号であることが前提であり、フーリエ変換部182として離散フーリエ変換手段を用いることが好適であり、なかでも高速離散フーリエ変換手段を用いれば、高速かつ小型回路により周波数領域に変換することができ、好適である。
【0117】
(実施の形態8)
図14は本発明の実施の形態8に係る中継装置800の構成を示すブロック図である。但し、図12と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0118】
図14において本発明の中継装置800は図12に示した実施の形態7の構成におけるフーリエ変換部182をフィルタ係数の更新差分を検出する更新差分検出部192に置換えた構成の発振検知部191を用いている。
【0119】
本発明では回り込み波の複製を出力するFIRフィルタ106のフィルタ係数を係数更新差分検出部192に入力し、フィルタ係数の更新前後の差分を求め、この差分値が閾値を越えた場合には急激な伝搬路変動が生じたものとして、発振検知する。
【0120】
なお、図14とは別の構成として、図15に示す構成としても好適である。図15において中継装置850は回り込みキャンセラ120におけるフィルタ係数制御部230の構成が、FIRフィルタ106への入力信号を分岐したものを入力とし、理想的な伝搬路(回り込み波がすべて除去された伝搬路)特性を得るために必要なFIRフィルタ係数を生成して出力する誤差分検出部123と誤差分検出部123からの出力を累積する誤差分累積部125とから構成されており、誤差分検出部123からの出力を発振検知部112に入力して閾値と比較して発振検知するものである。
【0121】
誤差分検出部123は実質的にフィルタ係数の更新前後の差分にあたるため、図15のような構成となる。図15の回り込みキャンセラ120の構成では理想的な伝搬路特性となるのに必要なFIRフィルタ係数をフィルタ係数制御部230において生成し、後段の誤差分累積部125で生成されたFIRフィルタ106のそれぞれのタップにおけるフィルタ係数を各々累積していくことで、除々に理想的な伝搬路に収束していくようになっており、伝搬路が変動した場合にも変動分が誤差分として検出され、検出された誤差分が誤差分累積部125で累積され、累積結果が新たなFIRフィルタの係数として制御される。
【0122】
なお、誤差分累積部125では誤差分検出部123からの出力に1以下の一定の係数αを乗じ、加算前の累積結果に(1−α)を乗じてから両者を加算して、加算結果を蓄えるような構成としても、伝搬路変動の速さに応じて安定したキャンセル性能が得られ好適である。
【0123】
また、図8に示したように、回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出部を設け、これにより検出された平均電力値に基づいて閾値設定部115の閾値を設定し、比較部114はその設定された閾値と絶対値出力部113の出力値とを比較することにより発振検知を行うようにすることも好適である。そして、この場合、さらに、図9に示したように、平均電力検出部において検出された平均電力値と最適な閾値との関係をROM等の記憶手段に記憶しておき、実際に検出された平均電力値に対応する最適な閾値をこの記憶手段から読み出して閾値設定部115の閾値とすることも好適である。
【0124】
このように、本実施の形態の中継装置800、850によれば、FIRフィルタ106のフィルタ係数の係数更新差分を検出することにより、このフィルタ係数の更新前後の差分値が閾値を越えた場合には急激な伝搬路変動が生じたものとして、発振検知することができる。
【0125】
(実施の形態9)
図16は本発明の実施の形態9に係る中継装置900を示すブロック図である。但し、図1及び図3と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0126】
図16において本発明の中継装置900は、回り込みキャンセラ120のFIRフィルタ106の係数を制御するフィルタ係数制御部130が、FIRフィルタ入力を分岐した信号を周波数領域に変換するフーリエ変換部121と、フーリエ変換結果から伝搬路の周波数特性を推定する伝搬路周波数特性推定部122と、理想的な伝搬路周波数特性からの誤差分を求める誤差分検出部(理想伝搬路誤差演算手段)123と、誤差分検出部123からの出力を時間領域の信号に変換する逆フーリエ変換部124と、逆フーリエ変換部124をFIRフィルタ106の各々のタップ毎に累積する誤差分累積部125とから構成され、発振検知部112への入力は誤差分検出部123からの出力を分岐したものとする。
【0127】
FIRフィルタ106の入力信号は回り込み波の複製が減じられたものであり、理想的な場合には完全に回り込み波が除去された信号となる。しかし、実際には演算による誤差等によって完全には回り込み波が除去されてはいないため、理想的な伝搬路特性とはなっていない。このため、このFIRフィルタ106の入力信号を周波数領域に変換して伝搬路の周波数特性を推定し、理想的な伝搬路周波数特性からの誤差分を求める。求まった誤差分を発振検知部112に入力して大きな誤差が生じていないかをチェックし、大きな誤差が生じている場合には発振などによって急激に伝搬路特性が変動したとして発振検知信号を出力する。
【0128】
さらに、求まった誤差分の一方は逆フーリエ変換部124によって時間領域の信号に変換され、FIRフィルタ106の各々のタップ毎に累積されて、累積結果がFIRフィルタ106のフィルタ係数として設定される。ここで、誤差分累積部125では逆フーリエ変換部124からの出力に1以下の一定の係数αを乗じ、加算前の累積結果に(1−α)を乗じてから両者を加算して、加算結果を蓄えるような構成としても、伝搬路変動の速さに応じて安定したキャンセル性能が得られ好適である。またなお、一定の係数αをタップ係数毎に変え、累積されたタップ係数の大きさに応じて設定することも好適である。
【0129】
また、図8に示したように、回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出部を設け、これにより検出された平均電力値に基づいて閾値設定部115の閾値を設定し、比較部114はその設定された閾値と絶対値出力部113の出力値とを比較することにより発振検知を行うようにすることも好適である。そして、この場合、さらに、図9に示したように、平均電力検出部において検出された平均電力値と最適な閾値との関係をROM等の記憶手段に記憶しておき、実際に検出された平均電力値に対応する最適な閾値をこの記憶手段から読み出して閾値設定部115の閾値とすることも好適である。
【0130】
このように、本実施の形態の中継装置900によれば、発振状態となった場合に伝搬路特性が急激に変動することに着目し、係数制御部130の誤差分検出部123の出力を発振検知部112に供給するようにしたことにより、伝搬路特性の変動に基づいて発振状態を検知することができる。
【0131】
(実施の形態10)
本発明の実施の形態10は、図12におけるフーリエ変換部182からの出力、または、図14における更新差分検出部192からの出力、または、図15における誤差分検出部123からの出力、または、図16における誤差分検出部123からの出力のうちいずれかを図5における絶対値出力部113に入力する構成であり、実施の形態7〜実施の形態9で示した発振検知部181、191、112、を図5の発振検知部118のような構成に置換えた構成とする。これにより、本実施の形態によればOFDM信号特有の稀に発生するピーク振幅の発生確率や、伝搬路の変動等も考慮した高精度な発振検知が可能となり、SFN放送波中継の限界D/U(dB値)の向上につながる。
【0132】
また、本発明における発振検知部を図8や図9に示した発振検知部141、151の構成のようにすることも可能であり、このようにすれば、D/U(dB値)が負の場合のように、FIRフィルタ106への入力信号レベルが小さい場合にも、比較部114で比較する閾値を小さくすることで適切に発振検知できるようになり、好適である。
【0133】
(実施の形態11)
図17は本発明の実施の形態11に係る中継システムの構成を示すブロック図である。図17において本発明の単一周波数の信号を中継する中継装置358はアクセスポイント(AP)356と端末361との双方向通信を中継するものであり、アクセスポイント356および端末361はそれぞれ送受信アンテナ355および360を有しており、無線通信が行えるようになっている。
【0134】
中継装置358は送信アンテナ357と受信アンテナ359とを有しており、それぞれのアンテナは送信または受信専用のアンテナとなっており、回り込み波の伝搬路状況が変化しにくいように構成している。なお、図のように送信アンテナ357及び受信アンテナ359を物理的に離さなくとも、実質的に送信専用アンテナおよび受信専用アンテナを有していればよい。
【0135】
本発明では、アクセスポイント356から端末361に情報を伝達する場合には端末361側は受信モードとなって待機しておき、アクセスポイント356から中継装置358に情報信号が到達した場合には、中継装置358は受信アンテナ357からの受信信号を増幅させて(一旦蓄積することなく、そのまま)送信アンテナ359から送信し、端末361に情報を伝達する。この時、中継装置358におけるループ発振を防ぐために、中継装置358は、実施の形態1〜実施の形態10において上述した回り込みキャンセラ120および発振検知部112、118、141、151、161、171、181、191のいずれかを有しており、これらを動作させる。逆に、端末361からアクセスポイント356に情報を伝達する場合にはアクセスポイント356側が受信モードとなって待機しておき、中継装置358は前述と同様の動作をする。
【0136】
なお、情報信号の伝達方向の制御用に情報信号とは別の制御信号を用いることも好適である。このような構成とすることで、放送波のような片方向の無線伝送の場合のみならず、双方向の無線通信においても単一周波数中継が実現でき、周波数利用効率が向上する。
【0137】
なお、中継装置358は受信専用または送信専用アンテナとしなくとも、両者を切替えて使用することも好適である。この場合、回り込みキャンセラにおけるFIRフィルタ係数を切替タイミングに同期して切替えるようにすると好適である。
【0138】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、SFNを構成する同一周波数再送信を行う放送波中継局の送受信アンテナ間での信号の回り込みによって発生するループ発振をD(親局波)/U(回り込み波)が真値で1以下(常用対数で負)の場合においても、誤検知することなく正確に検知することのできるループ発振検知装置を提供することが可能となる。かくして、ループ発振を適切に検出することで、親局波よりも回り込み波の信号レベルの方が大きい過酷なSFN放送波中継が可能となり、周波数有効利用が安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る中継装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の回り込みキャンセラの原理の説明に供するブロック図
【図3】本発明のフィルタ係数制御部の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態2に係る中継装置の構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態3に係る中継装置の発振検知部の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態3に係る発振検知部のスライディング積分器の構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態3に係る発振検知部のスライディング積分器の他の構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施の形態4に係る中継装置の構成を示すブロック図
【図9】本発明の実施の形態4に係る中継装置の他の構成を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態5に係る中継装置の構成を示すブロック図
【図11】本発明の実施の形態6に係る中継装置の構成を示すブロック図
【図12】本発明の実施の形態7に係る中継装置の構成を示すブロック図
【図13】本発明の実施の形態7の原理の説明に供する略線図
【図14】本発明の実施の形態8に係る中継装置の構成を示すブロック図
【図15】本発明の実施の形態8に係る中継装置の他の構成を示すブロック図
【図16】本発明の実施の形態9に係る中継装置の他の構成を示すブロック図
【図17】本発明の実施の形態11に係る中継システムの構成を示すブロック図
【符号の説明】
101、360 受信アンテナ
102 受信変換部
103 自動利得制御部
104 アナログ/デジタル変換部
105 減算器
106 FIRフィルタ
108 デジタル/アナログ変換部
109 送信変換部
110 自動利得制御部
111、359 送信アンテナ
112、116、118、141、151、161、171、181、191
発振検知部
113 絶対値出力部
114、132 比較部
115、131 閾値設定部
117、182 フーリエ変換部
119 スライディング積分器
122 周波数特定推定部
123 誤差分検出部
124 逆フーリエ変換部
125 誤差分累積部
130、230 フィルタ係数制御部
133 遅延部
134 加算器
135 遅延手段
136 減算器
137 選択手段
142、162 平均電力検出部
149 平均電力と最適閾値との関係を反映したROM(Read Only Memory)
172 短期平均電力検出部
173 長期平均電力検出部
192 更新差分検出部
356 アクセスポイント
358 単一周波数中継装置
361 端末

Claims (19)

  1. 単一周波数の信号を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を除去する回り込みキャンセラと、
    前記回り込みキャンセラによって回り込み波が除去された信号の品質に基づいて、ループ発振状態を検知する発振検知手段と、
    前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  2. 前記受信信号の信号レベルを一定に保つ自動利得制御手段と、
    前記自動利得制御手段の出力をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換手段と、
    をさらに具備し、前記アナログ/デジタル変換手段の出力が前記回り込みキャンセラに供給されることを特徴とする請求項1記載の中継装置。
  3. 単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタの係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、
    前記回り込みキャンセラの出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、所定の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して発振検知信号を出力する比較手段と、
    前記比較手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を有する発振検知手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  4. 前記絶対値出力手段の前段に前記回り込みキャンセラの出力信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換手段をさらに具備することを特徴とする請求項3記載の中継装置。
  5. 単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタの係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、
    前記回り込みキャンセラの出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、第一の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合に、その結果を出力する第一の比較手段と、前記第一の比較手段の比較結果に基づいて、前記絶対値出力手段の出力信号が前記第一の閾値を超えた回数を計上するスライディング積分手段と、このスライディング積分手段の出力値と所定の第二の閾値とのレベル比較を行い、前記スライディング積分手段の出力値の方が前記第二の閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する第二の比較手段とを有する発振検知手段と、
    前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  6. 前記閾値は固定値として設定されていることを特徴とする請求項3または4記載の中継装置。
  7. 前記第一及び第二の閾値は固定値として設定されていることを特徴とする請求項5記載の中継装置。
  8. 前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出手段をさらに具備し、前記閾値は、前記平均電力値によって制御されることを特徴とする請求項3または4記載の中継装置。
  9. 前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出手段と、
    前記平均電力値とこの平均電力値に対応した適切な閾値との関係を記憶する記憶手段と、
    をさらに具備し、前記平均電力値に対応して前記記憶手段から読み出された閾値を前記所定の閾値として設定することを特徴とする請求項3または4記載の中継装置。
  10. 単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタの係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、
    前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出手段と、所定の閾値及び前記平均電力検出手段の出力値のレベル比較を行い、前記電力検出手段の出力値の方が前記閾値よりも小さい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する比較手段とを有する発振検知手段と、
    前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  11. 単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタの係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、
    前記回り込みキャンセラの出力信号の短時間平均電力値を検出する第一の電力検出手段と、前記出力信号の長時間平均電力値を検出する第二の電力検出手段と、前記第二の電力検出手段によって検出された平均電力値に基づいて設定される閾値と前記第一の電力検出手段の出力値とのレベル比較を行い、前記第一の電力検出手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する比較手段とを有する発振検知手段と、
    前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  12. 単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、
    前記FIRフィルタに供給される前記フィルタ係数をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段の出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、所定の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して発振検知信号を出力する比較手段とを有する発振検知手段と、
    前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  13. 単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、
    前記フィルタ係数制御手段における更新前のフィルタ係数と更新後のフィルタ係数との差分を求めるフィルタ係数更新差分検出手段と、前記フィルタ係数更新差分検出手段の出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、所定の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して発振検知信号を出力する比較手段とを有する発振検知手段と、
    前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  14. 前記フィルタ係数制御手段は、前記回り込み波の複製を減じた信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段から伝搬路の周波数特性を推定する伝搬路周波数特性推定手段と、前記伝搬路周波数特性推定手段の結果を基に理想的な伝搬路周波数特性からの誤差分を求める理想伝搬路誤差演算手段と、前記理想伝搬路誤差演算手段からの出力を時間領域の信号に変換する逆フーリエ変換手段と、前記逆フーリエ変換手段の出力を前記FIRフィルタの各々のタップ毎に累積する誤差分累積手段とを有し、
    前記絶対値出力手段への入力が、前記理想伝搬路誤差演算手段からの出力であることを特徴とする請求項13記載の中継装置。
  15. 単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、
    前記FIRフィルタに供給される前記フィルタ係数をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、前記フーリエ変換手段の出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、第一の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合に、その結果を出力する第一の比較手段と、前記第一の比較手段の比較結果に基づいて、前記絶対値出力手段の出力信号が前記第一の閾値を超えた回数を計上するスライディング積分手段と、このスライディング積分手段の出力値と所定の第二の閾値とのレベル比較を行い、前記スライディング積分手段の出力値の方が前記第二の閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する第二の比較手段とを有する発振検知手段と、
    前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  16. 単一周波数の信号波を中継する中継装置であって、
    受信信号から回り込み波を複製するFIRフィルタと、前記FIRフィルタの出力信号を前記受信信号から減じる減算手段と、前記FIRフィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段とを有し、受信信号から回り込み波を除去して出力する回り込みキャンセラと、
    前記フィルタ係数制御手段における更新前のフィルタ係数と更新後のフィルタ係数との差分を求めるフィルタ係数更新差分検出手段と、前記フィルタ係数更新差分検出手段の出力信号の絶対値を出力する絶対値出力手段と、第一の閾値及び前記絶対値出力手段の出力値のレベル比較を行い、前記絶対値出力手段の出力値の方が前記閾値よりも大きい場合に、その結果を出力する第一の比較手段と、前記第一の比較手段の比較結果に基づいて、前記絶対値出力手段の出力信号が前記第一の閾値を超えた回数を計上するスライディング積分手段と、このスライディング積分手段の出力値と所定の第二の閾値とのレベル比較を行い、前記スライディング積分手段の出力値の方が前記第二の閾値よりも大きい場合には、前記受信信号がループ発振していると判定して、発振検知信号を出力する第二の比較手段とを有する発振検知手段と、
    前記発振検知手段からの発振検知信号で出力電力を制御する利得制御手段と、
    を具備することを特徴とする中継装置。
  17. 前記閾値は固定値として設定されていることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の中継装置。
  18. 前記閾値は、前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値によって制御されることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の中継装置。
  19. 前記回り込みキャンセラの出力信号の平均電力値を検出する平均電力検出手段と、
    前記平均電力値とこの平均電力値に対応した適切な閾値との関係を記憶する記憶手段と、
    をさらに具備し、前記平均電力値に対応して前記記憶手段から読み出された閾値を前記所定の閾値として設定することを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の中継装置。
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