JP2004184605A - 平版印刷版原版 - Google Patents
平版印刷版原版 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004184605A JP2004184605A JP2002349899A JP2002349899A JP2004184605A JP 2004184605 A JP2004184605 A JP 2004184605A JP 2002349899 A JP2002349899 A JP 2002349899A JP 2002349899 A JP2002349899 A JP 2002349899A JP 2004184605 A JP2004184605 A JP 2004184605A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- acid
- lithographic printing
- mass
- recording layer
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Printing Plates And Materials Therefor (AREA)
- Photosensitive Polymer And Photoresist Processing (AREA)
- Materials For Photolithography (AREA)
Abstract
【解決手段】原材料アルミニウム合金の銅含有量が0.005質量%以下であり、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施され、表面のピットの平均径が1.2μm以下であり、ピットの平均密度が1×106〜125×106個/mm2であるアルミニウム支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)赤外線吸収剤、および(C)チオール化合物を含有する記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版原版に関するものであり、特にコンピュータで作成されて出力されたディジタル画像信号を赤外線レーザ光で記録して直接製版できるいわゆるダイレクト製版用の赤外線レーザ用平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンピュータのディジタルデータから直接製版するシステムとしては、▲1▼電子写真法によるもの、▲2▼Arイオンレーザ露光などによる光重合法によるもの、▲3▼感光性樹脂層上に銀塩乳剤層を積層したもの、▲4▼銀塩拡散転写を利用したもの等が知られている。
しかしながら、▲1▼の電子写真法を用いるものは、帯電、露光、現像等処理が煩雑であり、装置が複雑で大がかりなものになる。▲2▼、▲3▼、▲4▼の方法では、可視光感光性を有するため、明室での取り扱いが難しくなる。さらに、▲3▼、▲4▼の方法では銀塩を使用するため処理が煩雑になり、コストが高くなる欠点がある。
一方、近年におけるレーザの発展は目覚ましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザ・半導体レーザは高出力かつ小型の装置が容易に入手できるようになってきている。このような赤外線レーザを光源とするコンピュータ等のディジタルデータから直接製版する平版印刷版原版は、明室での取り扱いが可能であり、製版作業上も非常に好ましい。
【0003】
このような赤外線レーザを用いるダイレクト製版用平版印刷版原版としては、赤外線吸収剤、熱により酸を発生する化合物(酸発生剤)、酸によって架橋反応する架橋剤およびバインダーポリマーを含有するネガ型平版印刷版原版が知られている。しかし、このネガ型平版印刷版原版は、架橋反応を行わせるため露光後に加熱が必要であるため、工程数が増えて煩雑な上、加熱のための高エネルギー消費の問題があった。
【0004】
そのため、露光後の加熱を必要としない赤外線レーザ平版印刷版原版として、(A)クレゾールノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有するアルカリ水溶液可溶性樹脂および(B)赤外線吸収剤を含有する記録層を有するポジ型平版印刷版原版が提案されている。このポジ型平版印刷用原版は、露光部において赤外線吸収剤により発生した熱の作用でクレゾールノボラック樹脂の会合状態が変化して、非露光部と溶解性の差(溶解速度差)が生じ、それを利用して現像を行い画像形成する。しかしながら、その溶解速度差が小さいために、実際の製版作業においては、アルカリ活性の些細な変動の影響を受けやすく安定性に欠けていた。すなわち、現像ラチチュードが狭いという問題があった。
【0005】
ポジ型平版印刷用原版の上記問題の対策として、アルカリ溶解阻止剤(溶解インヒビター)によって現像ラチチュードを拡大させる技術の開発が活発に行なわれている。例えば、特許文献1(国際公開第98/42507号パンフレット)には、水素結合基を有する化合物を現像ラチチュード拡大用溶解インヒビターとして用いることが提案されている。しかし、水素結合で溶解性を抑制するこの方法は、露光で解離した水素結合が、露光後の経時で逆反応を起こすため、感度低下や焼き溜適性の悪化を引き起こしやすかった。更に、露光前においても経時条件により水素結合するサイト数が変動するため、現像可能な現像液のアルカリ活性度が変化するといった致命的な欠陥を有していた。
【0006】
一方、アルミニウム板を支持体として用いる感光性平版印刷版原版は、オフセット印刷に幅広く使用されている。この平版印刷版原版は、一般に、アルミニウム板の表面に粗面化処理を施し、更に陽極酸化処理を施した後、感光液を塗布し乾燥することにより記録層を設けて得られる。電解粗面化処理を含む粗面化処理を行う場合、支持体の表面に微小な凹凸(ピット)が生成する。記録層と支持体との密着性を向上させるために、電解粗面化ピットの形状や均一性を改善する方法が提案されている。
しかしながら、支持体表面のピットは略お椀状の形をしており、その径が均一でかつ大きく、また、その深さが深い場合には、ピットの底の部分に記録層が入り込んで記録層と支持体との密着性が充分となる一方、ピットの縁の部分においては、相対的に記録層が薄くなり、しかもピットの縁の部分はとがっているために、印刷中において、ピットの縁の上にある記録層に強い応力がかかりやすく、その部分の記録層が破壊やはく離を起こしやすい問題があった。
この問題の対策として縁部分のとがりを化学的に溶解する方法が知られているが、本発明者らは、縁部分を溶解した場合、耐刷枚数(平版印刷版の画像部の記録層がはく離し、または摩耗することにより、印刷不能になるまでの印刷枚数)が低下しやすくなることを知見した。
【0007】
また、平版印刷版の耐汚れ性(汚れにくさ)を向上させる目的で、現像液中にアルカリ金属ケイ酸塩を含有させることにより、記録層が除去された非画像部のみにケイ酸塩を付着させ、より一層非画像部の親水性を向上させることが一般に行われている。しかしながら、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いて現像する場合、SiO2に起因する固形物が析出しやすいこと、現像廃液を処理する際の中和処理においてSiO2 に起因するゲルが生成すること等の問題があった。この問題の対策として、平版印刷版の非画像部となる平版印刷版用支持体の表面を、あらかじめアルカリ金属ケイ酸塩溶液で処理したうえで記録層を設け、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液を用いて現像する技術が提案されている(特許文献2(特開平11−109637号公報)参照。)。
【0008】
しかしながら、この技術においては、記録層と支持体との密着性が弱くなるという不具合があった。そこで、平版印刷版用支持体に用いられるアルミニウム板における特定の元素の含有量を制御することで、電解粗面化した支持体表面のピットを均一化することによって記録層と支持体との密着性を向上させ、平版印刷版としたときの耐刷性に優れ、しかも汚れにくさにも優れる平版印刷版原版が得られることが見出された(特許文献3(特公平1−47545号公報)、特許文献4(特開平8−337835号公報)参照。)。
【0009】
【特許文献1】
国際公開第98/42507号パンフレット
【特許文献2】
特開平11−109637号公報
【特許文献3】
特公平1−47545号公報
【特許文献4】
特開平8−337835号公報
【0010】
しかしながら、上記支持体技術を用いても、露光部と未露光部との現像速度差が小さく(すなわち、ディスクリミーションが小さく)、現像ラチチュードが狭い前記の赤外線レーザ用ポジ型記録層を有する平版印刷版原版の場合は、現像条件によっては、支持体のピットの深い部分が現像不良になりやすく、更に平版印刷版原版が高温、多湿条件下に長時間の放置された場合、印刷性能、特に汚れ性を低下させる問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題はこれらの問題を解決することである。すなわち、本発明の目的は、ディジタル信号に基づいた赤外線レーザによる画像記録が可能であり、良好な感度、耐刷性および汚れにくさに優れた平版印刷版原版を提供することである。また、本発明の目的は、アルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液で良好に処理できる平版印刷版原版を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の支持体上に特定の記録層を有する平版印刷版原版によって、上記目的を達成できることを見出した。すなわち、本発明は以下の通りである。
原材料アルミニウム合金の銅含有量が0.005質量%以下であり、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施され、表面のピットの平均径が1.2μm以下であり、ピットの平均密度が1×106〜125×106個/mm2であるアルミニウム支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)赤外線吸収剤、および(C)チオール化合物を含有する記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
【0013】
本発明は、銅含有量を制御したアルミニウム板を電解粗面化し、さらに表面ピットの平均径および平均密度を制御した支持体とチオール化合物を含有する記録層とを用いることによって、上記課題を達成できた。特に、支持体表面ピットの平均径および平均密度の制御によって、優れた耐刷性および汚れにくさが得られ、記録層にチオール化合物を含有させることによって、ディスクリミネーションに優れたポジ型平版印刷版原版を達成している。
チオール化合物によるディスクリミネーションの向上は、画像部における現像液への耐溶解性向上および非画像部における現像液への溶解性向上によると考えられる。すなわち、画像部における耐溶解性向上は、アルカリ可溶性樹脂であるフェノール性水酸基含有化合物等と比較して、チオール化合物は、酸性度が高い反面、S−H結合間の分極が小さく親水性が低いため、形成された塗膜へのアルカリ現像液の浸透を抑制することにより得られると考えられる。一方、非画像部における現像液への溶解性向上は、アルカリ可溶性樹脂の会合などの相互作用が露光により解除され、現像液が浸透してチオール化合物が溶出し、その高い酸性度によりチオール化合物が解離し溶解促進剤として機能するためと考えられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の平版印刷版原版を構成する各成分について順次説明する。
【0015】
[支持体]
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版用支持体には、銅(Cu)含有量が0.005質量%以下のアルミニウム合金が用いられる。その他の含有しても良い合金成分としては、Fe、Si、およびTiが挙げられる。また、NiまたはVの少なくとも1種を含有することが好ましい。さらに、Mgを含有することもできる。
【0016】
Cuは、電解粗面化処理を制御するうえで、非常に重要な元素である。Cu含有量を少ない値で制御することにより、好ましくは、更に後述するようにSi含有量と関連付けて制御することにより、極めて均一で微細なピットを生成することができる。本発明におけるCu含有量は、0.005質量%以下である。より好ましくは0.003質量%以下である。
【0017】
Feは、通常、原材料として使用されるアルミニウム合金(Al地金)に0.04〜0.2質量%程度含有されている。Feは、アルミニウム合金の機械的強度を高める作用があり、支持体の強度に大きく影響を与える。Fe含有量が少なすぎると、機械的強度が低すぎて、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、版切れを起こしやすくなる。また、高速で大部数の印刷を行う際にも、同様に版切れを起こしやすくなる。一方、Fe含有量が多すぎると、必要以上に高強度となり、平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、フィットネス性に劣り、印刷中に版切れを起こしやすくなる。本発明においては、Fe含有量は、0.1質量%以上、かつ、0.5質量%以下が好ましい。印刷時に平版印刷版の版切れが起こらないようにするためには、Fe含有量は0.2質量%以上がより好ましい。
【0018】
Siは、原材料であるAl地金に不可避不純物として含有されており、原材料差によるばらつきを防ぐため、意図的に微量添加されることが多かった。
本発明においては、Si含有量は、0.02質量%以上であり、かつ、0.10質量%以下が好ましい。安定性の面からより好ましくは、0.04質量%以上、かつ、0.08質量%以下である。
【0019】
アルミニウム合金におけるSi含有量(質量%)を[Si]、Cu含有量(質量%)を[Cu]と表した際、下記式
[Si]/10+[Cu]≦0.01
を満たすのが好ましい。上記式を満たすと、より均一でより微細なピットを生成することができる。
【0020】
Tiは、以前より、鋳造時の結晶組織を微細にするために含有されている。Ti含有量が多すぎると、電解粗面化処理において表面酸化皮膜の抵抗が過小となるため、均一なピットが形成されない場合がある。本発明においては、Ti含有量は、0.05質量%以下が好ましく、0.03質量%以下がより好ましい。
また、Ti含有量は、0.005質量%以上であるのが好ましい。Tiは、任意成分であり、原材料のAl地金に不可避不純物として含有される微量のTiを結晶微細化に活用してもよいが、結晶微細化効果を高めるためには、Al−Ti合金またはAl−B−Ti合金として添加されるのが好ましい。なお、Al−B−Ti合金として添加した場合、アルミニウム合金中にBが微量含有されることになるが、本発明の特徴は損なわれない。
【0021】
また、本発明においては、アルミニウム合金が、NiおよびVのうち少なくとも1種をNi:0.002〜0.005質量%、V:0.01〜0.05質量%の範囲で含有するのが好ましい。
Niは、電解粗面化処理の効率を向上させる元素として、0.005質量%以上添加する提案が多数なされている。また、Al地金中に最大0.002質量%程度含有されることが知られている。また、Vは、Al地金中に最大0.01質量%程度含有されることが知られている。
本発明者の知見によれば、アルミニウム合金のSiおよびCuの含有量をそれぞれ上述した範囲に制御した場合において、Niを0.002〜0.005質量%含有させ、もしくは、Vを0.01〜0.05質量%含有させることにより、または、NiおよびVの両方を上記範囲で含有させることにより、電解粗面化処理の均一性の向上およびピットの微細化を促進することができる。
なお、アルミニウム合金にNiおよび/またはVを上記範囲で含有させる場合は、用いるAl地金における含有量を活かして、必要な分だけ添加するのが好ましい。
【0022】
また、本発明のアルミニウム合金はMgを含有することができる。 Mgは、電解粗面化処理を制御する上で重要な元素であるとともに、平版印刷版の強度を向上させる効果もある。特に、印刷時に平版印刷版の版切れが起こらないようにするためには、Mg含有量を0.1質量%以上とすることが好ましい。一方、原材料コストの点から1.0質量%以下であるのが好ましい。
【0023】
アルミニウム板の残部は、Alと不可避不純物からなる。不可避不純物の大部分は、Al地金中に含有される。不可避不純物は、例えば、Al純度99.7%の地金に含有されるものであれば、本発明の効果を損なわない。不可避不純物については、例えば、L.F.Mondolfo著「Aluminum Alloys:Structure and properties」(1976年)等に記載されている量の不純物が含有されていてもよい。
【0024】
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理においては、溶湯中に混入している水素等の不要ガスや、固形の不純物を除去する。不要ガスを除去する清浄化処理としては、例えば、フラックス処理;アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理が挙げられる。また、固形の不純物を除去する清浄化処理としては、例えば、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理が挙げられる。また、脱ガス処理とフィルタリング処理とを組み合わせた清浄化処理を行うこともできる。
【0025】
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐため、実施されるのが好ましい。溶湯のフィルタリング処理としては、例えば、特開平6−57342号公報、特開平3−162530号公報、特開平5−140659号公報、特開平4−231425号公報、特開平4−276031号公報、特開平5−311261号公報および特開平6−136466号公報に記載されている方法を用いることができる。また、溶湯の脱ガス処理としては、例えば、特開平5−51659号公報、特開平5−51660号公報、特開平5−49148号公報および特開平7−40017号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0026】
ついで、アルミニウム合金溶湯を、DC鋳造法に代表される固定鋳型を用いる鋳造法、および、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる鋳造法のいずれかにより鋳造する。
DC鋳造法を用いる場合には、1〜300℃/秒の範囲の冷却速度で凝固することが好ましい。冷却速度を1℃/秒以上とすることは、粗大な金属間化合物の形成を抑制できるので好ましい。
連続鋳造法としては、ハンター法および3C法に代表される冷却ロールを用いる方法と、ハズレー法およびアルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトまたは冷却ブロックを用いる方法とが工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、100〜1000℃/秒の範囲の冷却速度で凝固される。一般的に連続鋳造法は、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミニウムマトリックスに対する合金成分の固溶度を高くできるという特徴がある。連続鋳造法に関しては、例えば、特開平3−79798号公報、特開平5−201166号公報、特開平5−156414号公報、特開平6−262203号公報、特開平6−122949号公報、特開平6−210406号公報および特開平6−262308号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0027】
DC鋳造法の場合、板厚300〜800mmの鋳塊が製造されるので、常法に従い、面削により表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmが切削される。その後、必要に応じて、均熱化処理が行われる。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。1時間以上処理することで、均熱化処理の効果が充分得られることが多い。金属間化合物の安定化の必要がない場合、均熱化処理は省略することができる。
【0028】
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム合金板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。冷間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。その条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10℃/秒以上の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。熱間圧延終了時点で、結晶組織が微細であれば、中間焼鈍は省略してもよい。冷間圧延に関しては、例えば、特開平6−210308号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0029】
所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム合金板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。
平面性の改善(矯正)は、板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うのが好ましい。テンションレベラを用いる場合は、矯正前後の幅方向の伸び率の差が0.06%以内になるようにするのが好ましい。矯正前後の幅方向の伸び率の差は、例えば、以下の方法により、求めることができる。まず、矯正前に、板圧延方向に対して垂直に平行線を2本引き、平行線の間隔Lを正確に測定する。アルミニウム板を幅方向に、例えば、20mm幅に分割するように線を引いて細い短冊状の板とし、矯正後にそれぞれの短冊状の板のLに対応する部分の実際の長さを測定し、この長さをlとする。各板の伸び率((l−L)/L×100)(%)を計測し、伸び率が最大の板と最小の板とから、矯正前後の幅方向の伸び率の差を求めることができる。
【0030】
このようなテンションレベラ等による矯正により、アルミニウム板を切断して板圧延方向の長さが1.5mである長方形のカットシートとして定盤上に置き、板圧延方向に垂直な辺のそれぞれから0.25mずつ内側に入った位置に、カットシートの全幅以上を覆うおもしを置いてカールを押さえ込み、内側の長さ1mについて、板圧延方向に平行な2辺の浮き上がり部(歪み)の最大高さが2.0mm以下、浮き上がり部(歪み)の数が各辺につき5個以下、浮き上がり部(歪み)の高さの合計が4.0mm以下のアルミニウム板を得ることができる。なお、カットシートの角が浮き上がっている場合には、これも浮き上がり部(歪み)の数に含める。また、アルミニウム板の内側においても、浮き上がり部(歪み)の最大高さが2.0mm以下、浮き上がり部(歪み)の数が5個以下、浮き上がり部(歪み)の高さの合計が4.0mm以下となるのが好ましい。
【0031】
アルミニウム板は、断面形状が以下のものであるのが好ましい。
通常、アルミニウム板は、コイルとして巻かれた状態で所定期間保管される。板断面において、板の端部、即ち、耳部の厚みが厚すぎると、数千mにわたってコイル状に巻かれて保管されている間に、厚い部分が塑性変形を起こし、耳歪みと称される端部の歪みが発生する。同様に、板の内側の厚みが厚すぎると、塑性変形を起こし、腹歪みと称される内側の歪みが発生する。
【0032】
腹歪みの発生は耳歪みに比べて発生しにくい傾向にあるため、本発明においては、耳歪みの発生防止を優先し、板の内側の板厚を板の端部よりやや厚く仕上げるのが好ましい。具体的には、板の平均板厚に対する耳部の板厚を一定以下にするため、以下のように定義されるa値を1.0以下にすることが好ましい。また、板の内側の板厚を平均板厚に対して厚くしすぎないため、以下のように定義されるpc値を2.0%以下にするのが好ましい。上述した冷間圧延工程において、冷間圧延ロールのたわみ形状を調整することで、a値およびpc値を所望の値に調整することができる。
a=h/c
pc= c/tc×100(%)
h:耳部板厚と最小板厚との差
c:中央部最大板厚と最小板厚との差
tc:中央部最大板厚
なお、これらの値は、特開平11−254847号公報の図2を参照することにより、より容易に理解される。
【0033】
また、本発明においては、アルミニウム板の長さ4mあたりの曲がりが0.3mm以下であるのが好ましい。アルミニウム板の曲がりが大きいと、コイルとして巻いた場合に、巻いていくに従って徐々に巻きズレが大きくなり、巻きズレに起因する板端部の折れや歪みが発生する。冷間圧延ロールの平行度および冷間圧延機でのアルミニウム板の送り出し精度をコントロールすることにより上記曲がりの目標数値は達成できる。
【0034】
また、本発明においては、板端部のバリの高さが10μm以下であるのが好ましい。断面形状の説明で述べたのと同様の理由により、端部のバリが大きいと、コイルとして巻かれて保管される間に、端部での塑性変形が起こりやすい。また、平版印刷版用支持体を得るための表面処理や、平版印刷版原版とするための記録層塗布工程において、バリは、パスロールや塗布装置といった平版印刷版原版製造設備に傷を付けやすいので、好ましくない。したがって、上述したように、バリの高さを10μm以下とするのが好ましい。コイルの耳部を切り落とすスリッタ工程における刃のクリアランスのコントロールにより、バリの高さを10μm以下とすることができる。
【0035】
また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通すことも通常行われる。スリッタによって切られた板の端面には、スリッタ刃に切られるときに、せん断面と破断面の一方または両方が生じる。
【0036】
板の厚みの精度は、コイル全長にわたっての板厚差が、20μm以内であるのが好ましく、12μm以内であるのがより好ましい。また、幅方向の板厚差は、6μm以内であるのが好ましく、3μm以内であるのがより好ましい。また、板幅の精度は、2.0mm以内であるのが好ましく、1.0mm以内であるのがより好ましい。
【0037】
アルミニウム板の表面粗さは、圧延ロールの表面粗さの影響を受けやすいが、最終的に算術平均粗さRa が0.1〜1.0μm程度となるように仕上げるのが好ましい。Raが1.0μm程度以下であれば、得られる平版印刷版原版において、アルミニウム板のもともとの粗さ、即ち、圧延ロールによって転写された粗い圧延条痕が記録層の上から見えないため、外観上好ましい。Raを0.1μm程度以上とすることで、圧延ロールの表面を過度に低粗度に仕上げる必要がなく、工業的に好ましい。
【0038】
また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜としては、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。製造ライン中でスリップ故障を防ぐために、油量は100mg/m2以下であるのが好ましく、50mg/m2 以下であるのがより好ましく、10mg/m2 以下であるのが更に好ましく、また、コイル輸送中に傷が発生することを防ぐために、油量は3mg/m2以上であるのが好ましい。
【0039】
連続鋳造の場合、例えば、ハンター法等の冷却ベルトを用いる方法によれば、板厚1〜10mmの鋳造板を直接連続鋳造圧延することができ、熱間圧延の工程を省略することができるという利点がある。また、ハズレー法等の冷却ロールを用いる方法によれば、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを用いて連続的に圧延することにより、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの方法により得られた連続鋳造圧延板は、DC鋳造の場合において述べたように、冷間圧延、中間焼鈍、平面性改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、板厚0.1〜0.5mmに仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍および冷間圧延の条件については、例えば、特開平6−220593号公報、特開平6−210308号公報、特開平7−54111号公報および特開平8−92709号公報に記載されている方法を用いることができる。
【0040】
<粗面化処理>
上記アルミニウム板は、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施される。本発明においては、上述したように、アルミニウム合金板が特定元素を特定量含有しているので、電気化学的粗面化処理により、均一かつ極めて微細なピットを生成することができる。その結果、記録層と支持体との密着性がより向上し、耐刷性が向上するとともに、汚れにくさも向上する。本発明の平版印刷版用支持体を用いて、レーザ直描型の記録層を設け、レーザ刷版用の平版印刷版原版とした場合においても、記録層と支持体との密着性を改善することができる。また、支持体表面のSi原子付着量を0.1〜8mg/m2とし、これに記録層を設けて平版印刷版原版とした場合においても、記録層と支持体との密着性を改善することができる。
【0041】
電気化学的粗面化処理は、通常、硝酸、塩酸等の酸を電解液として、アルミニウム板とそれに対向する電極との間に直流電流または交流電流を通じることによって行われる。交流電解では、商用交流の正弦波(sin波)電流、特殊交番電流、矩形波電流等を用いることができる。電解液の濃度は、1〜300g/Lであるのが好ましい。硝酸、塩酸等の電解液中に、適宜、電気化学的粗面化処理の安定化に必要な元素をイオンの形で添加することもできる。
【0042】
電気化学的粗面化処理によりクレーター状またはハニカム状のピットをアルミニウム合金板の表面に30〜100%の面積率(分散密度)で生成することができる。電気化学的粗面化処理により生成するピットの平均径は、通常、0.5〜20μm程度であるが、本発明においては、アルミニウム合金中の特定元素の含有量を制御することで、ピットの平均径を1.2μm以下、ピットの平均密度を1×106〜125×106 個/mm2 とすることができる。ピットの平均径および平均密度が上記範囲であると、平版印刷版原版の記録層と支持体との密着性が優れたものとなり、平版印刷版としたときの耐刷性に優れ、かつ、汚れにくさに優れる。
【0043】
電気化学的粗面化処理に用いられる電気量は、アノード反応での総電気量で、5〜500C/dm2 であるのが好ましい。
【0044】
電気化学的粗面化処理で形成されたピット(電解粗面化ピット)には、平版印刷版の非画像部の汚れを軽減する作用と、平版印刷版の耐刷性を向上させる作用がある。電気化学的粗面化処理においては、電解時の電気量、即ち、電解時の電流の大きさと電流を流した時間との積を調整することにより、形成されるピットの形状および大きさ、ピットの面積率等を調整することができる。
【0045】
本発明においては、電気化学的粗面化処理と、他の粗面化処理とを組み合わせて実施してもよい。他の粗面化処理としては、例えば、機械的粗面化処理、化学的粗面化処理が挙げられる。
例えば、ブラシ等を用いて機械的粗面化処理をした後、電気化学的粗面化処理を実施してもよい。機械的粗面化処理としては、例えば、ボールグレイン、ワイヤーグレイン、ブラシグレイン、液体ホーニング法が挙げられる。そのほかにも、例えば、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されている機械的粗面化処理法を採用することもできる。機械的粗面化処理を行うと、通常、アルミニウム板の表面を、平均表面粗さRaが0.35〜1.0μmとなるようにすることができる。機械的粗面化処理を行うことで、平版印刷版の非画像部の保水性を高めることができる。ただし、非画像部の保水量を安定化させ、印刷中の版面の不必要なてかり(光の反射)を防止し、印刷状態の観察作業性のよい平版印刷版とするには、平均表面粗さRaが0.35〜0.8μmであるのが好ましい。
化学的粗面化処理としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ浴に浸せきさせる方法、アルミニウム板にアルカリ液をスプレーする方法、アルミニウム板にアルカリ液を塗布する方法が挙げられる。
【0046】
各粗面化処理の前または後に、アルミニウム板の表面に、カセイソーダ、カセイカリ等のアルカリ剤を用いて、エッチング処理を施してもよい。更に、エッチング処理を施した場合は、エッチング処理後に、アルミニウム板の表面に残存するアルカリに不溶な物質(スマット)を除去するために、酸によるデスマット処理を行ってもよい。特に、電気化学的粗面化処理の前後に、エッチング処理およびデスマット処理を行うのが好ましい。
【0047】
<陽極酸化処理>
粗面化処理に引き続いて、アルミニウム板の表面の耐磨耗性を高めるために、陽極酸化処理が行われるのが好ましい。陽極酸化処理に使用される電解質は、多孔質酸化皮膜を形成することができるものであれば、いかなるものでもよい。一般には、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはこれらの混合物が用いられる。電解質の濃度は、電解質の種類等によって適宜決められる。陽極酸化処理の条件は、電解質によってかなり変動するので、特定しにくいが、一般的には電解質の濃度が1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10〜300秒であればよい。
【0048】
<親水化処理>
上述したように、粗面化処理を施され、好ましくは、更に陽極酸化処理を施されたアルミニウム板は、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を用いて親水化処理を施される。アルカリ金属ケイ酸塩による親水化処理としては、従来公知の種々の方法を用いることができるが、アルカリ金属ケイ酸塩の支持体表面への付着量を所定の範囲になるように行うのが好ましい。
本発明においては、平版印刷版用支持体の表面へのアルカリ金属ケイ酸塩のSi原子換算の付着量(Si原子付着量)は、0.1mg/m2 以上であることが耐汚れ性に優れるため好ましく、0.3mg/m2以上であるのがより好ましい。また、平版印刷版の非画像部の親水性を増すために、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いて現像すると、SiO2に起因する固形物が析出し、現像時の非画像部の白色化や、現像時のカスやヘドロの発生が起こる場合がある。
一方、耐刷性の面から、Si原子付着量は、8mg/m2 以下であるのが好ましく、6mg/m2 以下であるのがより好ましく、4mg/m2以下であるのが更に好ましい。
【0049】
本発明において、平版印刷版用支持体の表面へのアルカリ金属ケイ酸塩の付着量は、蛍光X線分析装置(XRF:X−ray Fluorescence Spectrometer)を用いて、検量線法によりSi原子付着量(Simg/m2)として測定された値を用いる。検量線を作成するための標準試料としては、既知量のSi原子を含有するケイ酸ナトリウム水溶液を、アルミニウム板上の30mmφの面積内に均一に滴下した後、乾燥させたものが用いられる。蛍光X線分析装置の機種その他の条件は、特に限定されない。Siの蛍光X線分析条件の一例を以下に示す。
【0050】
蛍光X線分析装置:理学電機工業社製RIX3000、X線管球:Rh、測定スペクトル:Si−Kα、管電圧:50kV、管電流:50mA、スリット:COARSE、分光結晶:RX4、検出器:F−PC、分析面積:30mmφ、ピーク位置(2θ):144.75deg.、バックグランド(2θ):140.70deg.および146.85deg.、積算時間:80秒/sample
【0051】
親水化処理は、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩の濃度が0.001〜30質量%、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%で、25℃でのpHが10〜13であるアルカリ金属ケイ酸塩水溶液に、好ましくは陽極酸化処理を施されたアルミニウム支持体を4〜40℃で0.5〜120秒間、好ましくは2〜30秒間浸せきさせることにより行うことができる。上記のアルカリ金属ケイ酸塩濃度、pH、温度、処理時間等の処理条件は、Si原子付着量が上記特定量となるように、適宜選択することができる。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHが10より低いと、液はゲル化しやすく、また、pHが13.0より高いと、陽極酸化皮膜が溶解されるおそれがあるので、この点に注意を要する。
【0052】
親水化処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。
親水化処理においては、必要に応じ、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高く調整するために、水酸化物を配合することができる。水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。
【0053】
また、必要に応じ、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液にアルカリ土類金属塩および/または4族(第IVA族)金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、アルカリ土類金属の硝酸塩(例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム)、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩等の水溶性の塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。アルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの金属塩の使用量は、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜5.0質量%である。
【0054】
<平版印刷版用支持体の平面性>
このようにして得られる本発明の平版印刷版用支持体は、平版印刷版用支持体を切断して板圧延方向の長さが1.5mである長方形のカットシートとして定盤上に置き、板圧延方向に垂直な辺のそれぞれから0.25mずつ内側に入った位置に、カットシートの全幅以上を覆うおもしを置いてカールを押さえ込み、内側の長さ1mについて、板圧延方向に平行な2辺の浮き上がり部(歪み)の最大高さが2.0mm以下、浮き上がり部(歪み)の数が各辺につき5個以下、浮き上がり部(歪み)の高さの合計が4.0mm以下であるのが好ましい。この場合、平版印刷版用支持体の記録層の塗布性および通板性が優れたものとなる。なお、カットシートの角が浮き上がっている場合には、これも浮き上がり部(歪み)の数に含める。また、平版印刷版用支持体の内側においても、浮き上がり部(歪み)の最大高さが2.0mm以下、浮き上がり部(歪み)の数が5個以下、浮き上がり部(歪み)の高さの合計が4.0mm以下となるのが好ましい。
【0055】
[記録層(感光層)]
本発明の記録層は、(A)アルカリ可溶性樹脂、赤外光などの光エネルギーを吸収し熱を発生させる(B)赤外線吸収剤、および(C)チオール化合物を含有することを特徴とする。以下に本発明を構成する各成分について順次説明する。
【0056】
<(C)チオール化合物>
本発明に用いられるチオール化合物とは、その構造中に少なくとも1つのメルカプト基(−SH)を有する化合物であれば特に制限はないが、メルカプト化合物特有の臭気を抑制する観点から、分子量が高く、揮発性の低い化合物であることが好ましい。そのようなチオール化合物の分子量は、90以上であることが好ましく、110以上であることがより好ましい。また、複数のメルカプト基を有するチオール化合物および芳香族チオール化合物も同様の観点から好ましい。
【0057】
さらに、本発明においては、下記一般式(1)で表されるような、互変異性可能なチオール化合物が好ましく用いられる。このようなチオール化合物は、現像時、アルカリ水溶液が記録層中に浸透することで、該チオール化合物が溶出し、溶出したチオール化合物の互変異性の平衡が、SH側(▲1▼側)に偏るために、記録層の溶解性をさらに加速させる効果があるものと思われる。
【0058】
【化1】
【0059】
式(1)中、Xは3価の原子または原子団を表し、中でも、窒素原子またはメチン基(CH)が好ましく、互変異性を容易に起こす観点から窒素原子であることが特に好ましい。
【0060】
本発明のチオール化合物としては、有機化合物のいずれかに−SH基を有するものが挙げられ、炭化水素系化合物に−SH基を有するものが一般的である。−SH基は分子内に少なくとも1つ有すればよいが、複数の−SH基を有するものであってもよいことは言うまでもない。
鎖状の化合物としては、脂肪族炭化水素の側鎖或いは末端に−SHを有するものが挙げられる。これらの炭化水素化合物は、直鎖状であっても分岐鎖を有するものであってもよく、さらに水酸基、ハロゲン原子、アミノ基等の置換基を有するものであってもよい。
また、炭化水素系化合物内のメチレン基は、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、ウレア、チオウレア等の2価の有機基で置換されていてもよい。
このような化合物としては、例えば、エタン、ブタン、ヘキサン、ノナン、デカン、ドデカン、オクタデカンなど炭素原子数2〜18程度の直鎖状炭化水素の片末端、或いは両末端に−SH基を導入した化合物、炭素原子数2〜18程度の炭化水素鎖内の炭素上に−SH基を導入した化合物、およびそれらの炭化水素鎖内のメチン基をエーテル結合、エステル結合で置換した化合物などが挙げられる。
環状の化合物としては、脂環炭化水素、芳香族炭化水素、縮合多環系炭化水素、さらには、ヘテロ環化合物などが挙げられる。また、分子内に互いに独立した2以上の環構造を有するものであってもよい。環状炭化水素系化合物においても、環構造に−SH基の他、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基などの置換基を有するものであってもよい。
このような化合物としては、シクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、などの環状炭化水素に−SH基を置換した化合物、環状炭化水素上のアルキル基などの置換基上に−SH基を置換した化合物、ヘテロ環に−SH基を置換した化合物などが挙げられる。
【0061】
前述したように、チオール化合物として、分子量が比較的大きいものが好ましいが、直鎖状炭化水素化合物においては、分子量を大きくすると溶解性が低下する傾向があり、塗布液調製上の観点からは、分岐鎖を有するものや環構造を有するものが好ましい。
なかでも、前記したように互変異性を有するものが好ましいという観点から、分子内に共役二重結合を有する芳香族チオール化合物やヘテロ環含有チオール化合物が挙げられ、芳香族チオール化合物が特に好ましい。
さらに、通常は−SH基を有する形態で記述される、−C=Sを有するいわゆるチオン化合物(前記一般式(1)の▲2▼で表される構造を有する如き化合物)も、本発明のチオール化合物として好適に用いられ、そのような化合物としては、例えば、チオウレア系化合物、チオアミド化合物等が挙げられる。
以下に、本発明に好適に用いられるチオール化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
【化2】
【0063】
【化3】
【0064】
【化4】
【0065】
【化5】
【0066】
【化6】
【0067】
【化7】
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
【化10】
【0071】
本発明に係るチオール化合物は、記録層の全固形分中、0.2〜20質量%添加されることが好ましく、0.5〜10質量%添加されることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると、優れた現像ラチチュードおよび画像コントラストが得難く、添加量が多すぎると塗膜の皮膜特性が低下する傾向にある。
【0072】
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
本発明の記録層に使用する(A)アルカリ可溶性樹脂としては、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。
中でも、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、耐現像性の点、アルカリ水溶液に対する溶解性の点で好ましい。
【0073】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)活性イミド基
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
【0074】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0075】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ性現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を充分に確保する点から最も好ましい。
【0076】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、またはm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂、およびピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を挙げることもできる。或いは、フェノール基を側鎖に有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
【0077】
フェノール基を有する化合物としては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0078】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
【0079】
【化11】
【0080】
〔式中、X1、X2は、それぞれ独立に−O−または−NR7を表す。R1、R4は、それぞれ独立に水素原子またはCH3を表す。R2、R5、R9、R12、および、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。R3、R7、および、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子またはCH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合または置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアラルキレン基を表す。Y1、Y2は、それぞれ独立に単結合またはCOを表す。〕
【0081】
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明の記録層では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0082】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0083】
【化12】
【0084】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0085】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0086】
本発明の記録層に用いるアルカリ可溶性樹脂を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0087】
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが現像ラチチュードを充分に向上させるために好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。
【0088】
本発明では、化合物を共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、前記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m12)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、およびメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0089】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0090】
アルカリ可溶性樹脂としては、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性水酸基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,またはm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
【0091】
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。
【0092】
アルカリ可溶性樹脂は、その重量平均分子量が500以上であることが画像形成性の点で好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
【0093】
また、これらのアルカリ可溶性樹脂は単独で用いるのみならず、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。組み合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、本発明者らが先に提出した特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂などを併用してもよい。
【0094】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、その合計の含有量が、記録層の全固形分中、30〜98質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましい。含有量が30質量%以上であることで、耐久性を充分に確保でき、また、98質量%以下とすることで、感度、画像形成性を充分に確保できるので好ましい。
【0095】
<(B)赤外線吸収剤>
本発明に用いられる赤外線吸収剤としては、赤外線を吸収し、熱を発生する物質であれば特に制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザへの適合性の観点から、波長760nm〜1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収性染料または顔料が好ましく挙げられる。
【0096】
染料としては、市販の染料、例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0097】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号、米国特許第4973572号明細書等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0098】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0099】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0100】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の記録層で使用した場合に、アルカリ溶解性樹脂との高い相互作用を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0101】
【化13】
【0102】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0103】
【化14】
【0104】
R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
【0105】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0106】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特開2001−133969明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0107】
【化15】
【0108】
【化16】
【0109】
【化17】
【0110】
【化18】
【0111】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14およびR15〜R20は互いに独立に水素原子またはハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、またはアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組み合わせた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、および、R9〜R14およびR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0112】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0113】
【化19】
【0114】
【化20】
【0115】
前記一般式(c)中、Y3およびY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、またはテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24およびR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、またはアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0116】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0117】
【化21】
【0118】
【化22】
【0119】
前記一般式(d)中、R29〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。R33およびR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、またはハロゲン原子を示す。nおよびmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、またはR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29および/またはR30はR33と、またR31および/またはR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X2およびX3は各々独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基であり、X2およびX3の少なくとも一方は水素原子またはアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基またはペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0120】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0121】
【化23】
【0122】
【化24】
【0123】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。R36とR37、R40とR41、R44とR45およびR48とR49は、連結して脂肪族環、芳香族環または複素環を形成してもよく、その環は縮合環を有してもよい。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0124】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0125】
【化25】
【0126】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0127】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0128】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0129】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点から顔料の粒径は0.01μm以上であることが好ましく、また、記録層の均一性の点から10μm以下であることが好ましい。
【0130】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0131】
これらの顔料もしくは染料は、記録層の全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01質量%以上とすることで感度を充分に確保することができ、また50質量%以下の範囲とすることで、記録層の均一性や、記録層の膜強度を維持できる。
【0132】
[ポジ型の記録層]
上記の本発明の記録層は、赤外線レーザ露光によりアルカリ水溶液に対する溶解性が向上するポジ型記録層として平版印刷版原版に適用される。ポジ型記録層としては、相互作用解除系の記録層および酸触媒分解系の記録層が挙げられる。これらの記録層は多層構成で用いることができる。例えば、相互作用解除系2層からなる記録層、相互作用系と酸触媒分解系とからなる2層構成などが挙げられる。酸触媒分解系が、多層構造内の一層として複数の層中に設けられる場合には、特に、露光面の最上層として形成されることが好ましい。
【0133】
<相互作用解除系>
相互作用解除系の記録層は、(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)赤外線吸収剤とを含む層であり、光照射や加熱により発生する熱エネルギーにより、記録層を形成しているアルカリ可溶性樹脂の会合などの相互作用が解除されてアルカリ水溶液に可溶となり、現像により除去されて非画像部を形成するものである。その際、本発明の(C)チオール化合物を共存させることによって、良好なディスクリミネーションが付与される。
本発明の相互作用解除系の記録層には、所望により上記(A)、(B)および(C)成分以外の公知の化合物を併用することができる。
【0134】
<酸触媒分解系>
酸触媒分解系の記録層は、上記(A)、(B)および(C)成分の他に、光または熱の作用により酸を発生する化合物(酸発生剤)、および、発生した酸を触媒として化学結合を開裂しアルカリ現像液に対する溶解性が増大する化合物(酸分解性化合物)とを必須成分として含有する層である。この系では、(A)アルカリ可溶性樹脂は主としてバインダーポリマーとして機能する。
かかる酸触媒分解のメカニズムにより、酸触媒分解系画像形成材料は、化学増幅系画像形成材料とも称される。
【0135】
<酸分解性化合物>
本発明において、酸を触媒として化学結合を開裂しアルカリ現像液に対する溶解性が増大する化合物とは、分子内に酸で分解し得る結合基を有する化合物と言い代えることができる。このような化合物は、特開平9−171254号公報に「酸で分解し得る結合を少なくとも1つ有する化合物」として記載されたものを用いることができる。酸で分解し得る結合としては、例えば、アセタール結合またはケタール結合等を好ましいものとして挙げることができる。
このような化合物中、感度および現像性の観点から、下記一般式(I)で表される化合物を用いることがより好ましい。
【0136】
【化26】
【0137】
一般式(I)中、R1、R2およびR3は、各々水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、スルホ基、カルボキシル基またはヒドロキシル基を表し、p、qおよびrは、各々1〜3の整数を表し、mおよびnは、各々1〜5の整数を表す。
【0138】
一般式(I)において、R1、R2およびR3が表すアルキル基は直鎖でも分岐でもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基等が挙げられ、スルホ基およびカルボキシル基はその塩を包含する。一般式(I)で表される化合物のうち、mおよびnが1または2である化合物が特に好ましい。一般式(I)で表される化合物は公知の方法で合成することができる。
【0139】
その他、本発明に適用し得る酸分解性化合物としては、特開昭48−89603号、同51−120714号、同53−133429号、同55−12995号、同55−126236号、同56−17345号に記載のC−O−C結合を有する化合物、特開昭60−37549号、同60−121446号に記載のSi−O−C結合を有する化合物、特開昭60−3625号、同60−10247号に記載されているその他の酸分解化合物を挙げることができ、更に特開昭62−222246号に記載されているSi−N結合を有する化合物、特開昭62−251743号に記載されている炭酸エステル、特開昭62−209451号に記載されているオルト炭酸エステル、特開昭62−280841号に記載されているオルトチタン酸エステル、特開昭62−280842号に記載されているオルトケイ酸エステル、特開昭63−010153号、特開平10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、同10−282670号、EP−0884547Alに記載されているアセタール、ケタールおよびオルトカルボン酸エステル、特開昭62−244038号に記載されているC−S結合を有する化合物を用いることが出来る。
【0140】
上記酸分解性化合物の中でも特に、特開昭53−133429号、同56−17345号、同60−121446号、同60−37549号、同62−209451号、同63−010153号、特開平10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、同10−282670号、EP0884647Alの各公報に記載されているC−O−C結合を有する化合物、Si−O−C結合を有する化合物、オルト炭酸エステル、アセタール類、ケタール類およびシリルエーテル類が好ましい。
この酸分解性化合物の中でも、主鎖中に繰り返しアセタールまたはケタール部分を有し、アルカリ現像液中でその溶解度が発生した酸により上昇する高分子化合物が好ましく用いられる。
【0141】
これらの酸分解性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、添加量としては、化学増幅層全固形分に対し5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜35質量%の割合で層中に添加される。添加量が5質量%以上とすることで、非画像部の汚れが発生せず、また添加量が70質量%以下とすることで、画像部の膜強度を保つことができるために好ましい。
【0142】
<酸発生剤>
光または熱により酸を発生する化合物(酸発生剤)とは、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。
【0143】
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、米国特許第4,708,925号明細書や特開平7−20629号公報に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号公報および特開平1−102457号公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号明細書や米国特許第5,200,544号明細書に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。更に、特開平2−100054号公報、特開平2−100055号公報および特開平9−197671号公報に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号公報に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
【0144】
本発明における光酸発生剤の含有量は、その化学的性質および本発明の記録層の組成あるいは物性によって広範囲に変えることができるが、記録層固形分に対して約0.1〜約20質量%の範囲が適当であり、好ましくは0.2〜10質量%の範囲である。
【0145】
<その他の成分>
上述された本発明の記録層には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。
例えば、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等、添加するとアルカリ水可溶性高分子(アルカリ可溶性樹脂)の現像液への溶解阻止機能を向上させるいわゆる溶解抑止剤を添加することが好ましく、中でも、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、スルホン酸アルキルエステル等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点で好ましい。分解性溶解抑止剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩および、o−キノンジアジド化合物が好ましく、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のオニウム塩がより好ましい。
【0146】
本発明において用いられるオニウム塩として、好適なものとしては、例えばS.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivelloet al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同第4,491,628号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,PolymerBull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等があげられる。
これらのオニウム塩の中でも、溶解阻止能や熱分解性の観点から、ジアゾニウム塩が特に好ましい。特に、特開平5−158230号公報に記載の一般式(I)で示されるジアゾニウム塩や特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が好ましく、可視光領域の吸収波長が小さい特開平11−143064号公報に記載の一般式(1)で示されるジアゾニウム塩が最も好ましい。
【0147】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、およびパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0148】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物あるいは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステルまたはスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号および同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライドまたはナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0149】
さらにナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものをあげることができる。
【0150】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、および/または、o−キノンジアジド化合物の添加量は好ましくは記録層の全固形分に対し、1〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0151】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量は、好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。本発明に係る添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0152】
また、分解性を有さない溶解抑止剤を併用してもよく、好ましい溶解抑止剤としては、特開平10−268512号公報に詳細に記載されているスルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、同じく特開平11−190903号公報に詳細に記載されているラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有し着色剤を兼ねた酸発色性色素、同じく特開2000−105454号公報に詳細に記載されている非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0153】
また別の添加剤としては、感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することができる。また、後述する界面活性剤、画像着色剤、および、可塑剤も使用可能な添加剤である。
【0154】
環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4’’−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3’’,4’’−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などが挙げられる。
【0155】
上記の環状酸無水物、フェノール類および有機酸類の記録層中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0156】
また、これら以外にも、本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物等を目的に応じて適宜添加することができる。
【0157】
また、本発明に係る記録層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤および両性界面活性剤の感光性組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0158】
また、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を発生する化合物(光酸発生剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号および同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0159】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、記録層全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で記録層中に添加することができる。
【0160】
更に、記録層中には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等が用いられる。
【0161】
[平版印刷版原版の形成]
本発明の記録層を、平版印刷版原版に適用する際は、上記記録層成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。
また、目的に応じて、後述する樹脂中間層、下塗り層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独あるいは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、記録層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0162】
本発明の記録層には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0163】
本発明に係る平版印刷版原版には、必要に応じて、支持体と記録層との間に樹脂中間層を設けることができる。
この樹脂中間層を設けることで、支持体と記録層との間の高分子からなる樹脂中間層が断熱層として機能し、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、本発明に係る記録層は、この樹脂中間層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、赤外線レーザに対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である記録層自体が樹脂中間層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、露光部においては、溶解抑制能が解除された記録層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの樹脂中間層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この樹脂中間層は有用であると考えられる。
【0164】
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に記録層を設けたものであるが、必要に応じてその間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0165】
また、本発明における好適な下塗層成分として、特開2000−241962号公報に記載の酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を挙げることができる。具体的には、酸基を有するモノマーとオニウム基を有するモノマーの共重合体が挙げられる。酸基として好ましいのは酸解離指数(pKa)が7以下の酸基であり、より好ましくは−COOH、−SO3H、−OSO3 H、−PO3 H2 、−OPO3 H2、−CONHSO2 −、または−SO2 NHSO2 −であり、特に好ましくは−COOHである。酸基を有するモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、上記酸基を有するスチレンなどが挙げられる。オニウム基として好ましいのは、周期律表第V族あるいは第VI族の原子からなるオニウム基であり、より好ましくは窒素原子、リン原子あるいはイオウ原子からなるオニウム基であり、特に好ましくは窒素原子からなるオニウム基である。オニウム基を有するモノマーの具体例としては、側鎖に第4級アンモニウム基を有するメタクリレート、メタクリルアミド、第4級アンモニウム基などのオニウム基を含む置換基を有するスチレン等が挙げられる。
【0166】
この有機下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水またはメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記有機化合物の濃度0.005〜10質量%の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。被覆量を2〜200mg/m2とすることで充分な耐刷性能が得られる。
【0167】
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には必要に応じてバックコートを設けることができる。かかるバックコートとしては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物、および特開平6−35174号公報記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物などの被覆層が挙げられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手しやすく、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており、特に好ましい。
【0168】
[製版および印刷]
本発明の平版印刷版原版は熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
【0169】
露光された本発明の平版印刷版原版は、現像処理およびフィニッシャーや保護ガムなどによる後処理を施されて印刷版となる。これらの処理には、公知の自動現像機などの処理機器を用いることができる。
本発明の平版印刷版原版の現像処理および後処理に用いられる処理剤としては、公知の処理剤の中から適宜選択して用いることができる。
【0170】
好適な現像液としては、pHが9.0〜14.0の範囲、好ましくは12.0〜13.5の範囲にある現像液である。現像液には、従来から知られているアルカリ水溶液が使用できる。上記のアルカリ水溶液のうち、特に好適な現像液として、塩基としてケイ酸アルカリを含有した、または塩基にケイ素化合物を混ぜてケイ酸アルカリとしたものを含有した、従来から良く知られている所謂「シリケート現像液」と呼ばれるpH12以上の水溶液、および、特開平8−305039号、特開平11−109637号公報等に記載の、ケイ酸アルカリを含有せず、非還元糖(緩衝作用を有する有機化合物)と塩基とを含有した所謂「ノンシリケート現像液」が挙げられる。
【0171】
本発明の平版印刷版をバーニング処理する場合は、バーニング整面液を用い、バーニングプロセサなどを用いて行う従来から知られている方法で行うことが好ましい。
【0172】
このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0173】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本願実施例においては、本発明の樹脂組成物を記録層として用いた平版印刷版原版についての評価を行い、その評価を本発明の樹脂組成物の評価とする。
・平版印刷版原版の製造
第1表に示す組成の各アルミニウム板に、各表面処理を施し、各平版印刷版用支持体を得た。
【表1】
【0174】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は一本目が250rpm、二本目および三本目が200rpmであった。
【0175】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0176】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0177】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で175C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0178】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.5g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0179】
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度25質量%水溶液で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0180】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0181】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をNaOH濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0182】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0183】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度150g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.5g/m2であった。
【0184】
(k)シリケート処理
温度は35℃の3号珪酸ソーダ水溶液で、ディップによるシリケート処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0185】
<支持体X>
上記(a)〜(k)の各工程を順に行い支持体を作製した。(e)工程におけるエッチング量は0.5g/m2となるように設定した。
<支持体Y>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
<支持体Z>
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。なお、(e)工程におけるエッチング量は3.5g/m2に変更した。
【0186】
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0187】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0188】
【化27】
【0189】
〔実施例1〜7、比較例1〜9〕
得られた支持体X〜Zに、前記下塗り液を塗布した後、下記組成の下層用塗布液えを、ウエット塗布量が18.75ml/m2のワイヤーバーで塗布後、130℃の乾燥オーブンで50秒間乾燥した。乾燥後の下層被覆量は0.85g/m2であった。
得られた下層付き支持体に、下記組成の画像記録層(上層)用塗布液2を、ウエット塗布量が18.75ml/m2のワイヤーバーで塗布を行い総塗布量を1.10g/m2とした。塗布後、乾燥オーブンで140℃で60秒間の乾燥を行いポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0190】
<下層用塗布液>
・下記チオール化合物(C−1〜C−3) 0gまたは0.082g
・N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドと、
メタクリル酸メチル、アクリロニトリルの共重合体 2.133g
(モル比37:33:30、重量平均分子量6.4万)
・シアニン染料A(下記構造) 0.082g
・テトラハイドロ無水フタル酸 0.190g
・ビスフェノールスルフォネート 0.126g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・エチルバイオレットの対アニオンを 0.078g
6−ヒドロキシナフタレンスルホン酸に変えたもの
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン 0.032g
ヘキサフルオロホスフェート
・フッ素系界面活性剤 0.035g
(メガファックF−780、大日本インキ工業(株)社製30%溶液)
・メチルエチルケトン 25.41g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.97g
・γブチロラクトン 13.18 g
【0191】
<画像記録層(上層)用塗布液>
・下記構造の高分子(化合物X) 0.042g
・メチルエチルケトン 10.17g
・1−メトキシ−2−プロパノール 21.00g
・クレゾールノボラック樹脂 0.35g
(PR−54046、住友ベークライト(株)製)
・シアニン染料A(前記構造) 0.019g
・下記構造の化合物(化合物Y) 0.0043g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製30%溶液)
・フッ素系界面活性剤 0.0033g
(メガファックF−781、大日本インキ化学工業(株)製)
【0192】
【化28】
【0193】
【化29】
【0194】
【化30】
【0195】
下層にチオール化合物を添加しない感光層を用いて得たものを平版印刷用原版aとし、下層にC−1を添加した感光層を用いて得たものを平版印刷用原版b、下層にC−2を添加した感光層を用いて得たものを平版印刷用原版c、下層にC−3を添加した感光層を用いて得たものを平版印刷用原版dとした。
【0196】
〔感度の評価〕
得られた平版印刷用原版をCreo社製Trendsetter3244にて書き込み回転数を150rpmに固定し、レーザー出力を3〜8Wで0.25W刻みで露光エネルギーを変えて描き込みを行った。その後、LP−940H(富士写真フイルム(株)製自動現像機)の現像処理浴に、サーマルポジ用現像液(富士写真フィルム(株)製DT−2)1部に対して水8部で希釈した液を20リットル仕込み、30℃に保温し、第二浴目には水道水を8リットル、第三浴目にはフィニッシングガム(富士写真フィルム(株)製FG−1)1部を水1部で希釈した液を8リットル仕込んだ。現像スピードは現像時間12秒になるように設定した。現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
【0197】
得られた平版印刷版について印刷試験を行い、以下のようにして耐刷性及び汚れにくさを評価した。
〔耐刷性の評価〕
印刷機として、三菱ダイヤマチック印刷機を用い、インキとして、ジオスG(S)墨色を用い、湿し水として、富士写真フイルム(株)製のEU−3(1:100)に、イソプロパノールを全体の7質量%となるように添加した液を用いて、印刷を行った。
ベタ画像部が薄くかすれ始めたことが目視で認められるまでの印刷枚数により評価した。なお、耐刷性は、実施例1の耐刷性を100とした相対値で示した。
【0198】
〔汚れにくさ〕
印刷機として、三菱ダイヤマチック印刷機を用い、インキとして、ジオスG(S)紅色を用い、湿し水として、富士写真フイルム(株)製のEU−3(1:100)に、イソプロパノールを全体の7質量%となるように添加した液を用いて、印刷を行った。印刷時に、版に相対するブランケット上に発生した非画像部の汚れを、セロハンテープに転写させて採取し、インキの付着した程度によって、4段階評価した。インキ付着のないものから多いものの順に、◎、○、△、×とした。
これらの結果を表2に示す。
【0199】
【表2】
【0200】
表2から、銅含有量が0.005質量%以下であり、表面のピットの平均径が1.2μm以下、ピットの平均密度が1×106〜125×106個/mm2であるアルミニウム支持体上に、チオール化合物が添加されている記録層をもつ例のみが、耐刷と汚れのバランスを維持しつつ高感度化を達成しえることがわかる。記録層にチオール化合物が添加されていない場合、感度が低い。また、前記支持体よりピット径が大きく、ピット平均密度が低いものは、印刷性能(耐刷、汚れ)が低いことが明らかである。
【0201】
〔実施例8、比較例10〜11〕
実施例1〜7、比較例1〜9と同様にして得られた支持体上に、下記の画像記録層用塗布液1を塗布した後、150℃の乾燥オーブンで1分間乾燥して乾燥膜厚が1.8g/m2のポジ型画像記録層を有する平版印刷版原版を作製した。
【0202】
<画像記録層用塗布液1>
・チオール化合物C−1 0gまたは0.02g
・m,p−クレゾールノボラック 0.94g
(m/p比=6/4、重量平均分子量7700、未反応クレゾール0.5質量%含有)
・メタクリル酸n−ブチル・メタクリル酸共重合物 0.06g
(モル比73:27、重量平均分子量51,000)
・赤外線吸収剤(上記シアニン染料A) 0.03g
・赤外線吸収剤(下記シアニン染料B) 0.01g
・2,4,6−トリス(ヘキシルオキシ)ベンゼンジアゾニウム
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−
5−スルホネート 0.01g
・p−トルエンスルホン酸 0.002g
・エチルバイオレット 0.015g
・フッ素系界面活性剤 0.02g
(メガファックF−780、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 17g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5g
【0203】
【化31】
【0204】
チオール化合物を添加しない感光層を用いて得たものを平版印刷用原版eとし、チオール化合物C−1を添加した感光層を用いて得たものを平版印刷用原版fとした。
【0205】
〔感度の評価〕
得られた平版印刷用原板をCreo社製Trendsetter3244にて書き込み回転数を150rpmに固定し、レーザー出力を3〜8Wで0.25W刻みで露光エネルギーを変えて描き込みを行った。その後、FLH−85N(富士写真フイルム(株)製自動現像機)の現像処理浴に、サーマルポジ用現像液(富士写真フィルム(株)製LH−DS)を仕込み、28℃に保温し、第二浴目には水道水を、第三浴目にはフィニッシングガム(富士写真フィルム(株)製FN−6)1部を水1部で希釈した液を8リットル仕込んだ。現像スピードは現像時間26秒になるように設定した。現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
【0206】
〔耐刷性および汚れの評価〕
実施例1〜7及び比較例1〜9と同様にして耐刷性および汚れを評価した。
これらの結果を表3に示す。
【0207】
【表3】
【0208】
表3から、本発明に係わる支持体とチオール化合物を含有する記録層とを有する実施例8が、耐刷と汚れのバランスを維持しつつ高感度化を達成しえることがわかる。
【0209】
〔実施例9〜10〕
実施例5及び実施例8で用いた平版印刷用原版をCreo社製Trendsetter3244にてドラム回転数を150rpmで露光した。その後、下記アルカリ現像液A組成を仕込んだ900H(富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー)を用い、液温を28℃に保温し、実施例5のもの(実施例9)を10秒、実施例8のもの(実施例10)を20秒で現像した。これらについて、実施例1〜7、比較例1〜9と同様にして感度、耐刷性および汚れを評価した。結果を表4に示す。
【0210】
<アルカリ現像液A組成>
・SiO2、K2O(K2O/SiO2=1/1(モル比)) 4.0質量%
・クエン酸 0.5質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 92.0質量%
【0211】
【表4】
【0212】
表4に示された結果から、本発明の平版印刷版原版は、非シリケート系のみならず、A組成のようなシリケート系現像液を使用した場合においても、感度および印刷性能に優れていることが確認された。
【0213】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な感度、耐刷性および汚れにくさに優れた平版印刷版原版を提供できる。また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液でも良好に処理できる平版印刷版原版を提供できる。
Claims (1)
- 原材料アルミニウム合金の銅含有量が0.005質量%以下であり、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施され、表面のピットの平均径が1.2μm以下であり、ピットの平均密度が1×106〜125×106個/mm2であるアルミニウム支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)赤外線吸収剤、および(C)チオール化合物を含有する記録層を有することを特徴とする平版印刷版原版。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002349899A JP4070587B2 (ja) | 2002-12-02 | 2002-12-02 | 平版印刷版原版 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002349899A JP4070587B2 (ja) | 2002-12-02 | 2002-12-02 | 平版印刷版原版 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004184605A true JP2004184605A (ja) | 2004-07-02 |
JP4070587B2 JP4070587B2 (ja) | 2008-04-02 |
Family
ID=32752302
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002349899A Expired - Fee Related JP4070587B2 (ja) | 2002-12-02 | 2002-12-02 | 平版印刷版原版 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4070587B2 (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007115167A3 (en) * | 2006-03-31 | 2008-11-13 | Alcoa Inc | Manufacturing process to produce litho sheet |
JP2009237380A (ja) * | 2008-03-27 | 2009-10-15 | Fujifilm Corp | 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法及び平版印刷方法 |
CN116970934A (zh) * | 2023-08-03 | 2023-10-31 | 广东盈华电子科技有限公司 | 一种电解铜箔双面黑化表面处理工艺 |
-
2002
- 2002-12-02 JP JP2002349899A patent/JP4070587B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007115167A3 (en) * | 2006-03-31 | 2008-11-13 | Alcoa Inc | Manufacturing process to produce litho sheet |
JP2009237380A (ja) * | 2008-03-27 | 2009-10-15 | Fujifilm Corp | 平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法及び平版印刷方法 |
CN116970934A (zh) * | 2023-08-03 | 2023-10-31 | 广东盈华电子科技有限公司 | 一种电解铜箔双面黑化表面处理工艺 |
CN116970934B (zh) * | 2023-08-03 | 2024-02-06 | 广东盈华电子科技有限公司 | 一种电解铜箔双面黑化表面处理工艺 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP4070587B2 (ja) | 2008-04-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3842471B2 (ja) | 赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物 | |
JP4137345B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP5164640B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP4085006B2 (ja) | 平版印刷版用原版 | |
JP4171254B2 (ja) | 樹脂組成物 | |
JP4070587B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP4268345B2 (ja) | 平版印刷版用支持体 | |
JP2003149799A (ja) | 赤外線レーザ用平版印刷版 | |
JP4401103B2 (ja) | 画像記録材料 | |
JP3842446B2 (ja) | 赤外線レーザ用ポジ型感光性組成物 | |
JP2006292957A (ja) | 画像形成材料 | |
JP4359446B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP4307928B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP2004061947A (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP4275873B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP2004117546A (ja) | 画像形成材料 | |
JP4373823B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP3825178B2 (ja) | ポジ型平版印刷用原版 | |
JP2005049756A (ja) | 画像記録材料 | |
JP4056889B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP5266177B2 (ja) | 平版印刷版原版 | |
JP2004126048A (ja) | 画像形成材料 | |
JP2004325661A (ja) | 赤外線感光性ポジ型平版印刷版 | |
JP2005181734A (ja) | 画像記録材料 | |
JP3773176B2 (ja) | 平版印刷用原板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050215 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20060325 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20061124 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070904 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070912 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20071112 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20071112 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20071115 |
|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20071122 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20071219 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080115 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110125 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110125 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120125 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120125 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130125 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130125 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140125 Year of fee payment: 6 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |