本明細書中、一般式で表される化合物における基の表記に関して、置換あるいは無置換を記していない場合、当該基が更に置換基を有することが可能な場合には、他に特に規定がない限り、無置換の基のみならず置換基を有する基も包含する。例えば、一般式において、「Rはアルキル基、アリール基または複素環基を表す」との記載があれば、「Rは無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、無置換複素環基または置換複素環基を表す」ことを意味する。
〔平版印刷版原版〕
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に下塗り層及び画像形成層をこの順に有し、該下塗り層が、酸基を有する高分子化合物と、(i)−SH基及び−N(Ra)C(Rb)(Rc)COOM基(Ra、Rb及びRcは、独立に1価の置換基を表し、Mはプロトン、金属カチオンまたは有機カチオンを表す)から選ばれる官能基、並びに、(ii)前記酸基を中和可能な官能基、を有する化合物(以下中和化合物と略す)を含有することを特徴としている。前記高分子化合物は、酸基の少なくとも1部は、中和化合物により中和されている高分子化合物(以下中和高分子化合物と略す)である。
以下これらの構成要素について詳細に説明する。
〔中和化合物〕
本発明においては、分子内に−SH基及び−N(Ra)C(Rb)(Rc)COOM基(Ra、Rb及びRcは、独立に1価の置換基を表し、Mはプロトン、金属カチオンまたは有機カチオンを表す)から選ばれる官能基を有し、さらに酸基を有する高分子化合物における酸基を中和可能な官能基を有する化合物であれば何れも好適に使用することができる。
Ra、Rb、Rcで表される1価の置換基としては、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基、シアノ基、ニトロ基、-OR21、-OCOR21、-OCOOR21、-OCONR21R22、-OSO2R21、-OSO3R21、-OSO2NR21R22、-OPO(OR21)(OR22)、-OPO(OR21)(R22)、-OSiR21R22R23、-SR21、-SOR21、-SO2R21、-SO3R21、-SO2NR21R22、-NR21R22、-NR21COR22、-NR21COOR22、-NR21CONR22R23、-N(COR21)COR22、-NR21SO2R22、-N(SO2R21)(SO2R22)、-COR21、-COOR21、-CONR21R22または-PO(OR21)(OR22)〔R21〜R23は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、またはアルケニル基を表す〕が挙げられる。Raとしては、水素、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基が好ましく、水素、アルキル基、アリール基が特に好ましい。Rb、Rcとしては、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基、-OR21、-OCOR21が好ましく、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基が特に好ましく、Rb、Rcのいずれか一方が水素であることが更に好ましい。
Mで表される金属カチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオン、金属錯体カチオン等が挙げられ、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンが好ましく、アルカリ金属カチオンがより好ましい。
Mで表される有機カチオンとしては、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ジアゾニウムカチオン等が挙げられ、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンがより好ましい。
Mで表されるプロトン、金属カチオン、有機カチオンのうち、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンが好ましく、プロトン、アンモニウムカチオンがより好ましく、プロトンが特に好ましい。
中和化合物は、−SH基、−N(Ra)C(Rb)(Rc)COOM基の合計で2つ以上有することがより好ましい。
酸基を中和可能な官能基としては、公知の官能基を用いることができるが、1〜3級アミノ基、塩基性窒素原子を有する複素環基、アンモニウム基、ホスホニウム基が好ましく、3級アミノ基、塩基性窒素原子を有する複素環基、アンモニウム基、ホスホニウム基が特に好ましい。中和化合物は、これらの官能基を単独で有していても良いし複数有していても良いが、塗布性の点では、単独で1個有することがより好ましい。
本発明に用いられる中和化合物としては、以下の一般式(1)〜(4)で表される化合物が特に好ましい。
式中、式中、R1、R2、R10、R11は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基、シアノ基、ニトロ基、-OR21、-OCOR21、-OCOOR21、-OCONR21R22、-OSO2R21、-OSO3R21、-OSO2NR21R22、-OPO(OR21)(OR22)、-OPO(OR21)(R22)、-OSiR21R22R23、-SR21、-SOR21、-SO2R21、-SO3R21、-SO2NR21R22、-NR21R22、-NR21COR22、-NR21COOR22、-NR21CONR22R23、-N(COR21)COR22、-NR21SO2R22、-N(SO2R21)(SO2R22)、-COR21、-COOR21、-CONR21R22または-PO(OR21)(OR22)を表し、R21〜R23は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基またはアルケニル基を表し、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R12、R13、R14、R15は各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基またはアルケニル基を表し、L1〜L3は2価の有機残基を表し、M1、M2はプロトン、金属カチオンまたは有機カチオンを表し、X1 -、X2 -はOH-、F-、Cl-、Br-、I-、R24COO-、R25SO3 -、R26OPO(OH)O-、R27PO(OH)O-またはR28OSO3 -を表し、R24〜R28は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基またはアルケニル基を表し、Y1、Y2は窒素原子またはリン原子を表し、R1〜R4の任意の2つで環を形成しても良く、R5、R6、L1の任意の2つで環を形成しても良く、R7〜R12、L2の任意の2つで環を形成しても良く、R13〜R15、L3の任意の2つで環を形成しても良い。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、クロロメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、N-(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、、p-メチルベンジル基等が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-クロロ-1-エテニル基等が挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
L1〜L3で表される2価の有機残基としては、−H、−F、−Cl、−Br、−I、>C<、=C<、≡C−、−O−、O=、−N<、−N=、≡N、−S−、S=、>S<、≡S≡、−P<、≡P<、>Si<、=Si<、≡Siを組み合わせて形成される2価の有機基であれば何れも好適に使用することが出来るが、−H、−F、−Cl、−Br、−I、>C<、=C<、≡C−、−O−、O=、−N<、−N=、≡N、−S−、S=、>S<、≡S≡を組み合わせて形成される2価の有機基であることが好ましく、−H、−F、−Cl、−Br、−I、>C<、=C<、≡C−、−O−、O=、−N<、−N=、≡Nを組み合わせて形成される2価の有機基であることが特に好ましい。
L1〜L3で表される2価の有機残基としては、例えば、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CHCl−、−CH2CH2O−、−CH2N(CH3)CH2−、−C6H4−、−C6H10−、−CH2COCH2−、−CH2COOCH2−等が挙げられる。
L1〜L3で表される2価の有機残基は、炭素数または原子数が1以上20以下が好ましい。
M1、M2で表される金属カチオン、有機カチオンとしては、前述の金属カチオン、有機カチオンが挙げられる。M1、M2で表されるプロトン、金属カチオン、有機カチオンとし
て好ましいのは、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンであり、より好ましいのはプロトン、アンモニウムカチオンであり、特に好ましいのはプロトンである。
X1 -、X2 -で表されるアニオンの具体例としては、OH-、F-、Cl-、Br-、I-、R24COO-、R25SO3 -、R26OPO(OH)O-、R27PO(OH)O-、R28OSO3 -〔R24〜R28は各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、アルキニル基またはアルケニル基を表す〕が挙げられ、OH-、Cl-、Br-、I-、R24COO-、R25SO3 -、R28OSO3 -が好ましく、OH-、Cl-、Br-、I-、R24COO-がより好ましく、OH-、R24COO-が特に好ましい。
アルキル基、アリール基、アルキニル基、アルケニル基としては、上述のものが挙げられる。
以下に本発明に用いられる中和化合物の具体例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
〔酸基を有する高分子化合物〕
酸基を有する高分子化合物の骨格となる高分子化合物としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、アミド樹脂、エステル樹脂、カーボネート樹脂、エポキシ樹脂から選ばれる高分子化合物が好ましく、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる高分子化合物がより好ましい。
高分子化合物の質量平均分子量としては、5千以上100万以下が好ましく、1万以上50万以下がより好ましく、2万以上25万以下が特に好ましい。
〔(A1)酸基〕
本発明に用いられる酸基は、通常酸性官能基として知られる官能基であれば何れも好適に使用することができるが、pKaが5以下の酸性官能基であることが好ましい。かかる酸性官能基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、燐酸基、ホスホン酸基、硫酸基が好ましく、スルホン酸基、燐酸基、ホスホン酸基、硫酸基がより好ましく、スルホン酸基が特に好ましい。これら官能基は併用することができる。
本発明に用いられる高分子化合物における、酸基(中和化合物により中和されている酸基を含む)の導入量としては、0.01mmol/g以上10mmol/g以下が好ましく、0.05mmol/g以上5mmol/g以下がより好ましく、0.1mmol/g以上3mmol/g以下が特に好ましい。
本発明に用いられる酸基を有する高分子化合物は、(A1)酸基とともに、(A2)支持体吸着性基を有することが好ましい。
〔(A2)支持体吸着性基〕
支持体吸着性基は、用いられる支持体によって種々選択することができる。例えば、平版印刷版原版に従来から好適に使用されているアルミニウム支持体の場合、その表面処理によって具体的な官能基は異なるが、リン酸基及びその塩基、ホスホン酸基及びその塩基、アンモニウム基、シロキサン基、β−ジカルボニル基、カルボン酸基及びその塩基等の官能基が挙げられる。好ましくは、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、アンモニウム基、シロキサン基、β−ジカルボニル基、カルボン酸塩基である。これら官能基は併用することができる。
酸基を有する高分子化合物における、支持体吸着性基の導入量としては、0.01mmol/g以上10mmol/g以下が好ましく、0.05mmol/g以上5mmol/g以下がより好ましく、0.1mmol/g以上3mmol/g以下が特に好ましい。
好ましくは(A2)支持体吸着性基を有する、酸基を有する高分子化合物は、あらかじめ、中和化合物の存在により中和され、中和高分子化合物として存在することも好ましい。
例えば、酸基を有する高分子化合物を含む溶液に、所望の中和度を得るために必要な量の中和化合物を加えることにより、或いは、酸基を有する高分子化合物を含む下塗り層塗布液に、所望の中和度を得るために必要な量の中和化合物を加えることにより、下塗り層塗布液中において中和することにより、中和高分子化合物とすることが出来る。
塗布液は通常希薄溶液であり酸基を有する高分子化合物以外の成分を含む可能性があるため、中和を効率良く実施できる前者の方法が特に好ましい。また、中和に用いる中和化合物は、酸基の中和を効率良く実施するために、中和前に塩交換等の前処理を実施しても良い。
中和化合物による中和度は、高分子化合物中に存在する酸基の20mol%以上100mol%以下が好ましく、30mol%以上90mol%以下がより好ましく、40mol%以上80mol%以下が特に好ましい。
以下に、本発明に用いられる酸基を有する高分子化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお繰り返し単位の数値は組成比(モル比)である。
以下の表1に本発明に用いられる中和高分子化合物の具体例(1−T−1)〜(9−T−30)を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に中和高分子化合物の合成例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。<酸基を有する未中和高分子化合物(1)の合成例>
300mLの三口フラスコに、ホスマーPE(ユニケミカル社製):11.93g、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP):112.77gを秤量し、50℃にて攪拌した。ここに2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸:28.19gを少量づつ加えて完全に溶解させた。その後、反応混合物を74℃まで昇温した後、窒素ガスを流しながら30分間攪拌を続けた。この反応混合物に2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル:0.137gとNMP:5.05gの混合溶液を加え、窒素ガスを流しながら74℃にて2時間攪拌した。2時間後、更に2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル:0.039gとNMP:2.53gの混合溶液を加えてそのまま2時間攪拌を行った。反応混合物を室温まで冷却し高分子化合物(1)のNMP溶液を得た。高分子化合物(1)(未中和高分子化合物(1))のNMP溶液の酸価は、1.28mmol/gであった。
<中和高分子化合物(1−T−1)の合成例>
未中和高分子化合物(1)のNMP溶液:50gを100mL三口フラスコに秤量し、室温にて攪拌した。ここに、中和化合物(T−1):5.27gを加え、室温にて30分間攪拌し中和高分子化合物(1−T−1)のNMP溶液を得た。
<中和高分子化合物(1−T−8)の合成例>
未中和高分子化合物(1)のNMP溶液:50gを100mL三口フラスコに秤量し、室温にて攪拌した。ここに、中和化合物(T−8):4.32gを加え、室温にて30分間攪拌し中和高分子化合物(1−T−8)のNMP溶液を得た。
<中和高分子化合物(1−T−14)の合成例>
中和化合物(T−14):8.33gをメタノール:100mLに溶解し、酸化銀(I
):5.84gを加えて25℃にて2時間攪拌した。反応溶液をセライトろ過し、塩交換した中和化合物(T−14)のメタノール溶液を得た。
未中和高分子化合物(1)のNMP溶液:50gを100mL三口フラスコに秤量し、室温にて攪拌した。ここに、上述の塩交換した中和化合物(T−14)のメタノール溶液全量を加え、室温にて30分間攪拌し中和高分子化合物(1−T−14)のNMP−メタノール溶液を得た。
<中和高分子化合物(1−T−15)の合成例>
未中和高分子化合物(1)のNMP溶液:50gを100mL三口フラスコに秤量し、室温にて攪拌した。ここに、中和化合物(T−15):8.45gを加え、室温にて30分間攪拌した。30分後、減圧下(5Torr)室温にて1時間攪拌して生成する酢酸を除去し、中和高分子化合物(1−T−15)のNMP溶液を得た。
<中和高分子化合物(1−T−20)の合成例>
中和化合物(T−20):5.71gをメタノール:50mL、イオン交換水:50mLに溶解し、イオン交換樹脂アンバーライトIRA−402(ローム アンド ハース社製):20gを加えて25℃にて2時間攪拌した。反応溶液をろ過し、塩交換した中和化合物(T−20)のメタノール−水溶液を得た。
未中和高分子化合物(1)のNMP溶液:50gを100mL三口フラスコに秤量し、室温にて攪拌した。ここに、上述の塩交換した中和化合物(T−20)のメタノール−水溶液全量を加え、室温にて30分間攪拌し中和高分子化合物(1−T−20)のNMP−メタノールー水溶液を得た。
本発明の平版印刷版原版の下塗り層には、中和高分子化合物以外の成分として、界面活性剤、増感色素、ラジカル重合開始剤、共増感剤、ラジカル重合性化合物等を含有することもできる。これらの化合物については、以下の画像形成層の説明において記載したものを使用することが好ましい。
本発明に用いられる中和高分子化合物の下塗り層中の含有量は、下塗り層を構成する全固形分に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。中和高分子化合物の下塗り層中の含有量の上限としては100質量%以下が好ましい。
下塗り層は、酸基を有する高分子化合物(未中和高分子化合物)または中和高分子化合物とその他成分を適当な溶剤に溶解し、この溶液を支持体上に塗設する、この溶液に支持体を浸漬するなど、常法により支持体上に設けることができる。下塗り層構成成分を溶解するために適当な溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、アニソール、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、エチレンジクロリド、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、水等が挙げられる。塗布液や浸漬液の調製方法、塗布方法、浸漬方法、乾燥方法等は当業者が適宜選択することができる。
本発明において下塗り層の支持体上での量は、耐刷性及び耐汚れ性の観点から、1〜100mg/m2が好ましく、2〜80mg/m2がより好ましく、3〜50mg/m2が更に好ましい。
〔画像形成層〕
次に本発明の平版印刷版原版の画像形成層(感光層とも云う)について説明する。
本発明に用いられる画像形成層は、ラジカル重合性の画像形成層であれば何れも好適に使用することができる。中でもpH2〜10の水溶液により現像することが可能な画像形成層や印刷機上において印刷インクと湿し水により現像することが可能な画像形成層を使用する場合において本発明の効果が顕著に現れる。本発明に用いられる画像形成層は、ラジカル重合性化合物、バインダー、増感色素、ラジカル重合開始剤を含有する。更に、必要により各種の成分を含有してもよい。以下、画像形成層の構成成分について説明する。
(ラジカル重合性化合物)
本発明における感光層に用いるラジカル重合性化合物(以下単に、重合性化合物とも云う)は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの共重合体ならびにそれらの混合物などの化学的形態をもつ。重合性化合物の例としては、以下の一般式(1)〜(5)で表される化合物が挙げられる。
式(1)中、Rl〜R3はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。R1としては、好ましくは、水素原子またはアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、メチル基の水素原子の一つを水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、チオール基、アルキルチオ基、アシルチオ基、スルホ基、スルホン酸基、カルボキシル基で置換した基がラジカル反応性の高いことからより好ましい。また、R2またはR3としては、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基がラジカル反応性の高いことから好ましい。
Xは酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−または−C(R12R13)−を表し、R12またはR13は1価の有機基を表す。ここで、R12またはR13で表される1価の有機基としては、アルキル基などが挙げられる。R12またはR13としては、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。R12またはR13はLを構成する原子と結合して環を形成してもよい。
ここで、有機基に導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
Lは、水素、フッ素、塩素、臭素、沃素、炭素、窒素、酸素、硼素、硫黄、リン、珪素、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、銀、パラジウム、鉛、ジルコニウム、ロジウム、錫、白金、タングステンから構成されるn価の有機残基であり、水素、フッ素、塩素、臭素、沃素、炭素、窒素、酸素、硼素、硫黄、リン、珪素、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムから構成されるn価の有機残基であることが好ましく、水素、フッ素、塩素、臭素、沃素、炭素、窒素、酸素、硼素、硫黄、リン、珪素から構成されるn価の有機残基であることがより好ましい。
nは、自然数を表し、1以上100以下が好ましく、2以上80以下がより好ましく、3以上60以下が更に好ましい。
一般式(1)で表される重合性化合物の具体例としては、a.不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、2−ヒドロキシメチルアクリル酸、α−ブロモアクリル酸、フマル酸、メサコン酸、マレイン酸など)や、b.そのエステル類、c.そのアミド類が挙げられ、好ましくは、d.不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、e.不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、f.ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、および単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、g.イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にh.ハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類或いはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、上記不飽和カルボン酸を、不飽和ケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンなど)に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例として、アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号に記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (A)
(ただし、R4およびR5は、HまたはCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた感光層を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号に記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に記載の光硬化性モノマーおよびオリゴマーも使用することができる。
式(2)中、R1〜R5はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。R1〜R5としては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基がより好ましい。R1〜R5は任意の2つで環を形成しても良く、Lを構成する原子に連結して環を形成しても良い。
有機基に導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。また、Yは酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−または−C(R12R13)−を表す。R12、R13は一般式(1)のR12、R13と同義であり、好ましい例も同様である。
L、nは一般式(1)のL、nと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(2)で表される重合性化合物の具体例としては、不飽和二重結合を有するアルコール(例えば、アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、3-ブテン-1-オール、2-シクロヘキセン-1-オール、レチノール等)と単官能或いは多官能カルボン酸(例えば、酢酸、安息香酸、マレイン酸、トリカルバリン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸等)とのエステル化合物、単官能或いは多官能イソ(チオ)シアネート(例えば、ブチルイソシアネート、1,3-ビス(シソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、アリルイソチオシアネート、フェニルイソチオシアネート、フェニルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)等)とのウレタン化合物、単官能或いは多官能アルコール(例えば、エタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジオール、イノシトール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、デキストリン、フェノール、ビスフェノールA等)とのエーテル化合物、単官能或いは多官能エポキシ化合物(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート等)との付加反応物、単官能或いは多官能ハロゲン化アルキル(例えば、1,4-ジブロモブタン、マレイン酸 ビス(2-ブロモエチル)エステル等)又は単官能或いは多官能アルコールのスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸、トルエンスルホン酸等)とのエステルの置換反応物、不飽和二重結合を有するハロゲン化アルキル(例えば、アリルブロミド、4-ブロモ-1-ブテン、3-クロロ-2-メチルプロペンなど)や不飽和二重結合を有するアルコールのスルホン酸エステルと単官能或いは多官能アルコール、単官能或いは多官能アミン(例えば、ブチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ペンタエチレンヘキサミン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、モルホリン、ピペラジン、ピリジン、プロリン、4,4’-メチレンジアニリンなど)、単官能或いは多官能ホスフィン、単官能或いは多官能チオール、単官能或いは多官能カルボニル化合物、単官能或いは多官能カルボン酸塩等の求核性化合物との置換反応物、不飽和二重結合を有するアミン(例えば、アリルアミン、トリアリルアミン、ゲラニルアミン、N-エチル-2-メチルアリルアミンなど)と単官能或いは多官能カルボン酸のアミド、単官能或いは多官能イソシアネートのウレア、単官能或いは多官能ハロゲン化アルキルや単官能或いは多官能アルコールのスルホン酸エステルとの置換反応物、単官能或いは多官能カルボニル化合物のイミン、単官能或いは多官能スルホン酸のスルホンアミド、不飽和二重結合を有するイソ(チオ)シアネート(例えば、アリルイソシアネート、アリルイソチオシアネートなど)と単官能或いは多官能アルコールとのウレタン、単官能或いは多官能アミンとのウレア、単官能或いは多官能カルボン酸とのアミド、単官能或いは多官能チオールとの付加反応物、単官能或いは多官能イソ(チオ)シアネートとの付加反応物が挙げられる。
式(3)中、R1〜R3はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。R1〜R3としては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基がより好ましい。R1〜R3は任意の2つで環を形成しても良く、Lを構成する原子に連結して環を形成しても良い。
有機基に導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。また、Zは酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−または−C(R12R13)−を表す。R12、R13は一般式(1)のR12、R13と同義であり、好ましい例も同様である。
L、nは一般式(1)のL、nと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(3)で表される重合性化合物の具体例としては、酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリビニルなどの単官能或いは多官能カルボン酸ビニルエステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルなどのビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどのビニルエーテルアルコールと単官能或いは多官能カルボン酸とのエステル、単官能或いは多官能イソ(チオ)シアネートとのウレタン、単官能或いは多官能ハロゲン化アルキルや単官能或いは多官能アルコールのスルホン酸エステルとの置換生成物、単官能或いは多官能エポキシとの付加生成物、2-クロロエチルビニルエーテルなどのビニルエーテルハロゲン化アルキルやp-トルエンスルホン酸ビニルオキシエチルエステルなどのビニルエーテルスルホン酸エステルと単官能或いは多官能アルコール、単官能或いは多官能アミン、単官能或いは多官能ホスフィン、単官能或いは多官能チオール、単官能或いは多官能カルボニル化合物、単官能或いは多官能カルボン酸塩等の求核性化合物との置換反応物、3-アミノ-1-プロパノールビニルエーテル、2-(ジエチルアミノ)エタノールビニルエーテルなどのビニルエーテルアミンと単官能或いは多官能カルボン酸とのアミド、単官能或いは多官能イソ(チオ)シアネートとのウレア、単官能或いは多官能ハロゲン化アルキルとの置換生成物、単官能或いは多官能スルホン酸とのスルホンアミド、N-ビニルルバゾール、N-ビニルピロリジノン、N-ビニルフタルイミド等の単官能或いは多官能ビニルアミド、が挙げられる。
式(4)中、R1〜R3はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。R1〜R3としては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基がより好ましい。R4〜R8はそれぞれ独立に1価の有機基か、Lに連結する2価の有機基を表し、1価の有機基としては、前述の1価の有機基が好ましく、2価の有機基としては、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン、珪素、燐から構成される2価の有機基であることが好ましい。またR4〜R8の任意の2つで環を形成しても良く、Lを構成する原子に連結して環を形成しても良い。
有機基に導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。
L、nは一般式(1)のL、nと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(4)で表される重合性化合物の具体例としては、p-スチレンカルボン酸などのカルボン酸基含有スチレンやp-スチレンスルホン酸などのスルホン酸基含有スチレンと単官能或いは多官能アルコールとのエステル、単官能或いは多官能アミンとのアミド、p-ヒドロキシメチルスチレンやp-スチレンカルボン酸2-ヒドロキシエチルエステルやp-スチレンスルホン酸2-ヒドロキシエチルエステルなどの水酸基含有スチレンと単官能或いは多官能カルボン酸とのエステル、単官能或いは多官能イソ(チオ)シアネートとのウレタン、単官能或いは多官能ハロゲン化アルキルや単官能或いは多官能アルコールのスルホン酸エステルとの置換生成物、単官能或いは多官能エポキシとの付加生成物、p-クロロメチルスチレンやp-スチレンカルボン酸2-クロロエチルエステルなどのハロゲン化アルキル基含有スチレンやp-トシルオキシメチルスチレンなどのスルホン酸エステル基含有スチレンと単官能或いは多官能アルコール、単官能或いは多官能アミン、単官能或いは多官能ホスフィン、単官能或いは多官能チオール、単官能或いは多官能カルボニル化合物、単官能或いは多官能カルボン酸塩等の求核性化合物との置換反応物、p-アミノメチルスチレンなどのアミノ基含有スチレンと単官能或いは多官能カルボン酸とのアミド、単官能或いは多官能イソ(チオ)シアネートとのウレア、単官能或いは多官能ハロゲン化アルキルとの置換生成物、単官能或いは多官能スルホン酸とのスルホンアミドが挙げられる。
式(5)中、R1〜R3はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。R1〜R3としては、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキル基、アリール基がより好ましい。R5はそれぞれ独立に1価の有機基を表し、1価の有機基としては、前述の1価の有機基が好ましい。またR5はLと共に環を形成しても良い。
有機基に導入し得る置換基としては、一般式(1)と同様のものが例示される。また、Wは酸素原子、硫黄原子、−N(R12)−または−C(R12R13)−を表す。R12、R13は一般式(1)のR12、R13と同義であり、好ましい例も同様である。
L、nは一般式(1)のL、nと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(5)で表される重合性化合物の具体例としては、ビニルホスホン酸、メチル2-ホスホノアクリレートなどビニルホスホン酸と単官能或いは多官能アルコールとのエステル、単官能或いは多官能アミンとのアミド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ビニルホスホン酸などの水酸基含有ビニルホスホン酸と単官能或いは多官能カルボン酸とのエステル、単官能或いは多官能イソ(チオ)シアネートとのウレタン、単官能或いは多官能ハロゲン化アルキルや単官能或いは多官能アルコールのスルホン酸エステルとの置換生成物、単官能或いは多官能エポキシとの付加生成物、ビス(2-ブロモエチル)ビニルホスホン酸等のハロゲン化アルキル基含有ビニルホスホン酸やp-トシルオキシエチルビニルホスホン酸などのスルホン酸エステル基含有ビニルホスホン酸と単官能或いは多官能アルコール、単官能或いは多官能アミン、単官能或いは多官能ホスフィン、単官能或いは多官能チオール、単官能或いは多官能カルボニル化合物、単官能或いは多官能カルボン酸塩等の求核性化合物との置換反応物が挙げられる。
重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等使用方法の詳細は、平版印刷版原版の性能設計にあわせて適宜設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、後述の支持体や保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
重合性化合物は、感光層の全固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、重合性化合物は単独で用いても、2種以上併用してもよい。そのほか、重合性化合物は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、耐かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な使用法を任意に選択できる。
(バインダー)
本発明の感光層に用いられるバインダー(以下バインダーポリマーとも云う)としては、pHが2〜10の現像液に対する現像性の観点から、親水性基を有するバインダーポリマーが好ましい。
親水性基としては、一価又は二価以上の親水性基から選ばれ、例えば、ヒドロキシ基、スルホン酸基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、これらアミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基、アミド基、エーテル基、またはカルボン酸、スルホン酸、リン酸などの酸基を中和した塩、正に帯電した窒素原子を含有する複素環基が好ましく、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、これらアミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基、アミド基、ヒドロキシ基、−CH2CH2O−繰り返し単位、−CH2CH2NH−繰り返し単位、スルホン酸基、スルホン酸塩基、ピリジニウム基がより好ましく、第三級アミノ基、第三級アミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸塩基が特に好ましく、第三級アミノ基、第三級アミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基が最も好ましい。
本発明の親水性基を有するバインダーポリマー(以下、適宜、親水性基含有バインダーポリマーと称する)は、ポリマー鎖の主鎖および/または側鎖部分に上記親水性基を有するポリマーであれば任意の化合物でよい。好ましくは、側鎖に上記親水性基を有するポリマーであり、より好ましくは側鎖に第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、これらアミノ基を酸で中和した塩、第四級アンモニウム基、アミド基、ヒドロキシ基、−CH2CH2O−繰り返し単位、−CH2CH2NH−繰り返し単位、スルホン酸基、スルホン酸塩基、ピリジニウム基を有するポリマーであり、特に好ましくは側鎖に下記一般式<1>または<2>で表されるアミノ基および/またはアンモニウム基を有するポリマーである。側鎖に下記一般式<1>または<2>で表される基を有するバインダーポリマーとしては、一般式<1>または<2>で表される構造を含む繰返し単位を含む高分子化合物であれば、任意の化合物でよい。
一般式<1>〜<2>中、R1、R2およびR4〜R6は、各々独立して1価の有機基を表す。R3およびR7は、各々単結合または2価の有機基を表す。また、R1〜R3のうち任意の2つあるいはR4〜R7のうち任意の2つは、互いに結合して環を形成してもよい。さらに、R1〜R3のうち任意の1つあるいはR4〜R7のうちの任意の1つが窒素原子と二重結合を形成してもよい。この場合、一般式<1>ではR1またはR2が、一般式<2>ではR4〜R6のうちの1つが存在しない構造となる。X−はアニオンを表す。*はバインダーポリマーに連結する位置を示す。
一般式<1>および<2>において、1価の有機基とは、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン及びシリコンから選ばれる原子の少なくとも1種からなる1価の置換基である。また、2価の有機基とは、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン及びシリコンから選ばれる原子の少なくとも1種からなる2価の連結基である。水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン、ケイ素から選ばれる原子の少なくとも1種からなる1価の置換基とは、−H、−F、−Cl、−Br、−I、>C<、=C<、≡C−、−O−、O=、−N<、−N=、≡N、−S−、S=、>S<、≡S≡、−P<、≡P<、>Si<、=Si<、≡Si−およびこれらを組み合わせて形成される置換基である。1価の置換基としては、水素原子、アルキル基〔例えば、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、クロロメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、N-(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、、p-メチルベンジル基等〕、アリール基〔例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、等〕、ヘテロアリール基〔例えば、チオフェン、フラン、ピラン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、カルバゾール、アクリジン、フラザン、フェノキサジン等のへテロ環から誘導される基〕、アルケニル基〔例えばビニル基、1-プロペニル基、2-クロロ-1-エテニル基等〕、アルキニル基〔例えば、エチニル基、1-プロピニル基、トリメチルシリルエチニル基等〕、ハロゲン原子〔-F、-Br、-Cl、-I〕、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アシル基、スルホ基(-SO3H)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、ホスフォノ基(-PO3H2)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(-OPO3H2)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、シアノ基、ニトロ基、等が挙げられ、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基が好ましい。2価の連結基は、特に限定されないが、アルキレン基、アリーレン基およびエステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含む連結基並びにこれらの組み合わせが好ましい。
一般式<1>中、pH2.0〜10.0の現像液での現像性の観点から、R1、R2がそれぞれ独立して水素原子、アルキル基またはアリール基であることが好ましい。R1、R2の炭素数の合計は0〜24がより好ましく、0〜12が更に好ましい。ただし、炭素数の合計が0の場合、R1、R2の両方が水素原子である。
また、一般式<2>中、pH2.0〜10.0の現像液での現像性の観点から、R4、R5、R6がそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、または、アリール基であることが好ましい。R4、R5、R6の炭素数の合計は0〜36がより好ましく、0〜18が更に好ましい。ただし、炭素数の合計が0の場合、R4、R5、R6の全てが水素原子である。
一般式<1>〜<2>中、X−で表されるアニオンの具体例としては、ハロゲンアニオン、ハロゲンオキソ酸アニオン(ClO4 -, IO3 -, BrO3 -など)、ハロゲノ錯イオン(BF4 -,
PF6 -, AlCl4 -など)、硫酸アニオン、硝酸アニオン、リン酸アニオン、ボレートアニオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、ホスホン酸アニオン、金属錯体アニオン([Fe(CN)6]-など)等が挙げられる。pH2.0〜8.0の現像液での現像性の観点から、中でも、ハロゲンアニオン、ハロゲノ錯イオン、ボレートアニオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオンが好ましく、ハロゲノ錯イオン、ボレートアニオン、スルホン酸アニオンが更に好ましい。
本発明に用いられる親水性基含有バインダーポリマーは共重合体であることが好ましく、共重合体の全共重合成分に占める前記親水性基を有する共重合成分の割合は、現像性の観点から、1〜70%が好ましい。現像性と耐刷性の両立を考慮すると、1〜50%がより好ましく、1〜30%が更に好ましい。
さらに、本発明に用いられる親水性基含有バインダーポリマーは、現像性・耐汚れ性の観点から、カルボン酸基、リン酸基を実質的に含有しないものが好ましい。
親水性基含有バインダーポリマーの酸価(ポリマー1gあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)は、0.3meq/g以下が好ましく、より好ましくは、0.1meq/g以下である。
また、本発明に用いられる親水性基含有バインダーポリマーは、水およびpH10以上の水溶液に対し不溶であることが好ましい。適切なバインダーポリマーの水に対する溶解度(飽和溶解時のバインダーポリマー濃度)は10質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。なお、上記溶解度の測定温度は、製版時の通常の温度である25℃である。
このようなバインダーポリマーの骨格としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子が好ましい。なかでも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂等のビニル共重合体、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。
本発明に用いられるバインダーポリマーは架橋性基を有することが好ましい。ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程でバインダーポリマーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましい。
架橋性基を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。架橋性基としてはラジカル重合性の不飽和二重結合を側鎖に有するものであれば特に限定されないが、(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基が好ましく用いられ、(メタ)アクリロイル基が耐刷性等の観点から特に好ましい。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.01〜10.0mmol、より好ましくは0.05〜5.0mmol、更に好ましくは0.1〜2.0mmolである。
耐刷性向上という観点から、親水性基含有バインダーポリマーにおいては、架橋性基は親水性基の近傍にあることが望ましく、親水性基と架橋性基が同一の重合単位上にあってもよい。
バインダーポリマーがアクリル樹脂である場合は、上記親水性基を有するユニット、架橋性基を有するユニット、又は親水性基および架橋性基を有するユニットの他に、(メタ)アクリル酸アルキルまたはアラルキルエステルのユニットを有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、メチル基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
バインダーポリマーがウレタン樹脂である場合には、上記親水性基を有するユニット、架橋性基を有するユニット、又は親水性基及び架橋性基を有するユニットの他に疎水性ユニットを有することが好ましい。疎水性ユニットとしては、炭素数5以上のアルキル基、炭素数5以上のアルキレン基、アリール基、アリーレン基が挙げられ、特に炭素数5以上
のアルキレン基、アリーレン基を主鎖骨格に有することが耐刷性の観点から特に好ましい。
バインダーポリマーは、質量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよい。
バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。バインダーポリマーの含有量は、良好な画像部の強度と画像形成性の観点から、感光層の全固形分に対して、5〜75質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、10〜60質量%が更に好ましい。
また、重合性化合物及びバインダーポリマーの合計含有量は、感光層の全固形分に対して、80質量%以下であることが好ましい。80質量%を超えると、感度の低下、現像性の低下を引き起こす場合がある。より好ましくは35〜75質量%である。
以下に本発明に用いるバインダーポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。表中の分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した質量平均分子量(Mw)である。
一般式<1>または<2>で表される構造を繰返し単位中に含むバインダーポリマーの具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
表中の分子量はポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した質量平均分子量である。
また、PB−1〜PB−50bにおいて、化合物と共に記載される数値は各構成成分の反応比(モル%)であり、PPGはポリプロピレングリコールを、PEGはポリエチレングリコールを表し、これに続く数字は平均分子量を表す。例えば「PPG1000」とは平均分子量1000のポリプロピレングリコールを表す。
(増感色素)
本発明の感光層に用いられる増感色素としては、画像露光に使用する光源の波長、用途等に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されるものではない。例えば、赤外線吸収剤や、350nm〜450nmの光を吸収する増感色素等が好ましく挙げられる。
<赤外線吸収剤>
赤外線吸収剤は、赤外線レーザーに対する感度を高めるために用いられる成分である。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料であるのが好ましい。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワ
リリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号に記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に記載のピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、上記赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(I)で示されるシアニン色素が挙げられる。
一般式(I)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は下記構造式(Ia)で示される基を表す。X2は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環基又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa-は後述するZa-と同義である。Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、アミノ基又はハロゲン原子を表す。
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合して5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環基、ナフタレン環基が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(I)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(I)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号の段落番号[0017]〜[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、ロソ顔料、ニトロ顔料、天然料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の感光層中での良好な安定性と均一性が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。赤外線吸収剤はマイクロカプセルに内包させて添加することもできる。
添加量としては、感光層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.1〜1.5の範囲にあるように添加することが好ましく、より好ましくは、0.2〜1.2の範囲、更に好ましくは、0.3〜1.0の範囲である。この範囲で、感光層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。
感光層の吸光度は、感光層に添加する赤外線吸収剤の量と感光層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの感光層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
<350nm〜450nmの光を吸収する増感色素>
350nm〜450nmの光を吸収する増感色素としては、350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素が好ましい。この様な増感色素としては、例えば、下記一般式(I)に示されるメロシアニン色素類、下記一般式(II)で示されるベンゾピラン類、クマリン類、下記一般式(III)で示される芳香族ケトン類、下記一般式(IV)で示されるアントラセン類等を挙げることができる。
式(I)中、AはS原子もしくはNR6を表し、R6は一価の非金属原子団を表し、Yは隣接するAおよび隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、X1、X2はそれぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、あるいはX1、X2は互いに結合して色素の酸性核を形成してもよい。
式(II)中、=Zはオキソ基、チオキソ基、イミノ基または上記部分構造式(I’)で表されるアルキリデン基を表し、X1、X2は一般式(I)と同義であり、R7〜R12はそれぞれ独立に一価の非金属原子団を表す。
式(III)中、Ar3は芳香族基またはヘテロ芳香族基を表し、R13は一価の非金属原子団を表す。好ましいR13は芳香族基またはヘテロ芳香族基である。また、Ar3とR13が互いに結合して環を形成してもよい。
式(IV)中、X3、X4、R14〜R21はそれぞれ独立に、1価の非金属原子団を表す。好ましいX3、X4はハメットの置換基定数が負の電子供与性基である。
一般式(I)から(IV)における、X1からX4、R6からR21で表される一価の非金属原子団の好ましい例としては、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ビフェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、チオフェン、ピロール、フラン等)、アルケニル基(例えばビニル基、1−プロペニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、1−プロピニル基等)、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基などの窒素原子含有基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アルキルスルフィニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(スルホナト基)、アルコキシスルホニル基などの硫黄原子含有基、ホスフォノ基(−PO3H2)およびその共役塩基基(ホスフォナト基)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)などの燐原子含有基等が挙げられ、一価の非金属原子団のうち、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基が特に好ましい。
一般式(I)に於けるYが隣接するAおよび隣接炭素原子と共同して形成する色素の塩基性核としては、5、6、7員の含窒素あるいは含硫黄複素環が挙げられ、5、6員の複素環好ましい。
含窒素複素環の例としては、例えば、L.G.Brooker et al.,J.Am.Chem.Soc.,73,5326−5358(1951)および参考文献に記載されるメロシアニン色素類における塩基性核を構成するものとして知られるものをいずれも好適に用いることができる。具体例としては、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、ナフトチアゾール類、チアナフテノ−7’,6’,4,5−チアゾール類、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、ナフトオキサゾール類、セレナゾール類、ベンゾセレナゾール類、ナフトセレナゾール類、チアゾリン類、2−キノリン類、4−キノリン類、1−イソキノリン類、3−イソキノリン類、ベンズイミダゾール類、3,3−ジアルキルインドレニン類、2−ピリジン類、4−ピリジン類等を挙げることができる。
また、含硫黄複素環の例としては、例えば、特開平3−296759号公報記載の色素類におけるジチオール部分構造をあげることができる。具体例としては、ベンゾジチオール類、ナフトジチオール類、ジチオール類等を挙げることができる。
以上述べた複素環に関する説明に用いた記述は、便宜上、慣例上、複素環母骨格の名称を用いたが、増感色素の塩基性骨格部分構造をなす場合は例えばベンゾチアゾール骨格の場合は3−置換−2(3H)−ベンゾチアゾリリデン基のように、不飽和度を一つ下げたアルキリデン型の置換基の形で導入される。
さらに、下記一般式(V)〜(XII)で示される増感色素も用いることができる。
式(V)中、R1〜R14は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R1〜R10の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
式(VI)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
式(VII)中、R1、R2およびR3は各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、−NR4R5基または−OR6基を表し、R4、R5およびR6は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、k、mおよびnは各々0〜5の整数を表す。
式(VIII)中、X1、X2はそれぞれ独立に酸素原子、硫黄原子、-CR11R12-又は-NR13-を表す。但し、少なくともいずれか一方は酸素原子、硫黄原子又は-NR13-である。Yは酸素原子、硫黄原子又は=NR14を表す。R1〜R14はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表す。あるいはR1〜R14はそれぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成していてもよい。
式(IX)中、A1 およびA2は各々炭素原子またはヘテロ原子を表す。Q1 はA1 、A2 およびこれらに隣接する炭素原子とともに複素環を形成するのに必要な非金属原子団を表す。X1およびX2は各々シアノ基または置換カルボニル基を表すか、あるいはX1とX2とが互いに結合して環を形成していてもよい。
式(X)中、Xはそれぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表す。
式(XI)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、Aは炭素数20以下のアリール基またはヘテロアリール基を表す。
350nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(XII)で表される色素である。
式(XII)中、Aは芳香族環基またはヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子またはN−R3を表す。R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、あるいはAとR1またはR2とR3が互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。)
一般式(XII)について更に詳しく説明する。R1、R2およびR3は、それぞれ独立
に、一価の非金属原子団を表し、好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、芳香族複素環残基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。
R1、R2およびR3の好ましい例について具体的に述べる。
R1、R2およびR3として好ましいアルキル基としては、炭素原子数20までの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が好ましく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、イソペンチル基等を挙げることができる。これらの中では、炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状、ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキル基がより好ましい。
R1、R2およびR3として好ましい置換アルキル基の置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基などの窒素原子含有基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アルキルスルフィニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(スルホナト基)、アルコキシスルホニル基などの硫黄原子含有基、ホスフォノ基(−PO3H2)およびその共役塩基基(ホスフォナト基)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)などの燐原子含有基、アリール基、ヘテロアリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
これらの置換基におけるアルキル基の例としては、前述のアルキル基と同様のものが挙げられる。これら置換基におけるアリール基の具体例としては、フェニル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基等を挙げることができる。
これら置換基におけるヘテロアリール基の例としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環もしくは多環芳香族環基が挙げられ、好ましいヘテロアリール基の例としては、例えば、チエニル基、フリル基、ピリル基、カルバゾリル基、アクリジル基等があげられ、これらは、さらにベンゾ縮環してもよく、また置換基を有していてもよい。
これら置換基におけるアルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素ならびに上記アルキル基、下記アリール基を挙げることができる。
これら置換アルキル基の置換基の内、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、アルケニル基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基などの窒素原子含有基、アルキルスルフィニル基、スルホ基(−SO3H)およびその共役塩基基(スルホナト基)、アルコキシスルホニル基などの硫黄原子含有基、ホスフォノ基(−PO3H2)およびその共役塩基基(ホスフォナト基)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)などの燐原子含有基等が挙げられる。
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。
上記置換基とアルキレン基を組み合わせることにより得られるR1、R2およびR3で表
される置換アルキル基の好ましい具体例としては、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、2−オキソエチル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、ホスフォノブチル基、ベンジル基等を挙げることができる。
R1、R2およびR3として好ましいアルケニル基としては、炭素数20までの直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基が好ましく、その具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基等が挙げられる。
R1、R2およびR3として好ましい置換アルケニル基としては、上記アルケニル基の炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが挙げられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基ならびに置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。置換アルケニル基の好ましい具体例としては、スチリル基、シンナミル基等が挙げられる。
R1、R2およびR3として好ましいアリール基としては、1個から3個のベンゼン環が縮合環を形成したもの、ベンゼン環と5員不飽和環が縮合環を形成したもの等を挙げることができる。具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基を挙げることができ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R1、R2およびR3として好ましい置換アリール基としては、上記アリール基の環形成炭素原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが挙げられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基ならびに置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。置換アリール基の好ましい具体例としては、ビフェニル基、トリル基、クロロフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、メチルチオフェニル基、エチルアミノフェニル基、ベンゾイルオキシフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。
R1、R2およびR3として好ましい芳香族複素環残基としては、窒素、酸素、硫黄原子の少なくとも一つを含有する単環もしくは多環芳香族複素環基が挙げられる。芳香族複素環基の例としては、チオフェン、チアスレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサジン、ピロール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドリジン、インドイール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キナゾリン、シノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナンスリン、アクリジン、ペリミジン、フェナンスロリン、フタラジン、フェナルザジン、フェノキサジン、フラザン、フェノキサジンや等のヘテロ環から誘導される基等を挙げれ、これらは、さらにベンゾ縮環してもよい。
R1、R2およびR3として好ましい置換芳香族複素環残基としては、上記芳香族複素環残基の環形成原子上に置換基として、水素を除く一価の非金属原子団を有するものが挙げられる。好ましい置換基の例としては前述のアルキル基、置換アルキル基ならびに置換アルキル基における置換基として示したものを挙げることができる。
R1、R2およびR3として好ましいアルコキシ基およびアルキルチオ基におけるアルキル基は、前記R1、R2およびR3として好ましいアルキル基に関して記載したものと同様である。
R1、R2およびR3として好ましい置換アルコキシ基および置換アルキルチオ基における置換アルキル基は、前記R1、R2およびR3として好ましい置換アルキル基に関して記載したものと同様である。
一般式(XII)におけるAで表される芳香族環基およびヘテロ環基は、各々前記R1、R2およびR3に関して記載したアリール基および芳香族複素環残基に関して記載したものと同様のものを包含する。
一般式(XII)で表される増感色素は、上述の酸性核や活性メチレン基を有する酸性核と、芳香族環またはヘテロ環との縮合反応によって得られる。具体的には、特公昭59−28329号の記載を参照して合成することができる。
以下に、一般式(XII)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、酸性核と塩基性核を結ぶ2重結合による異性体については、どちらか一方の異性体に限定されるものではない。
増感色素について、その構造、単独使用か併用か、添加量等使用法の詳細は、平版印刷版原版の性能設計にあわせて適宜設定できる。
例えば、増感色素を2種以上併用することで、感光層を構成する組成物中での相溶性を高めることができる。増感色素の選択においては、感光性の他、使用する光源の発光波長でのモル吸光係数が重要な因子である。モル吸光係数の大きな色素を使用することにより、色素の添加量を比較的少なくできるので、経済的であり、かつ感光層の膜物性の点からも有利である。感光層の感光性、解像度、露光膜の物性は光源波長での吸光度に大きな影響を受けるので、これらを考慮して増感色素の添加量が適宜選択される。
但し、例えば5μm以上の厚い膜を硬化せしめる目的に対しては、低い吸光度の方がかえって硬化度をあげられる場合もある。比較的薄い膜厚の平版印刷版原版の場合には、増感色素の添加量は、感光層の極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で、好ましくは0.1から1.5の範囲、より好ましくは0.2から1.2の範囲、更に好ましくは0.3〜1.0の範囲となるように設定する。通常、感光層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜20質量部、更に好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
(ラジカル重合開始剤)
本発明の感光層に用いられるラジカル重合開始剤(以下単に、重合開始剤とも云う)は、光または熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物である。重合開始剤は、公知のラジカル重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などから適宜選択して用いることができる。
重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化合物、カルボニル化合物、有機過酸化物、アゾ化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物が挙げられる。
上記有機ハロゲン化合物としては、具体的には、若林等、"Bull.Chem.So
c.Japan"、42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開53−133428号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、M.P.Hutt、"Journal of Heterocyclic Chemistry"、1(No.3)(1970)に記載の化合物が挙げられる。中でも、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物およびS−トリアジン化合物が好適である。
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、またはトリハロゲン置換メチル基が、s−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール環に結合したオキサジアゾール誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジンや下記化合物等が挙げられる。
上記カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチル−(4'−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
上記アゾ化合物としては例えば、特開平8−108621号に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
上記有機過酸化物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号、特開平5−83588号記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)フェニル)チタニウム、並びに特開平1−304453号、特開平1−152109号記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等に記載の種々の化合物、具体的には、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ブロモフェニル))4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2'−ビス(o,o'−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−メチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
上記有機ホウ素化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号、特許第2764769号、特開2002−116539号、Martin Kunz、Rad Tech'98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago等に記載の有機ホウ酸塩、特開平6−157623号、特開平6−175564号、特開平6−175561号に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号、特開平6−175553号に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号、特開平7−128785号、特開平7−140589号、特開平7−306527号、特開平7−292014号に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が挙げられる。
上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特開2003−328465号等に記載の化合物が挙げられる。
上記オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II、1653-1660 (1979)、J.C.S.Perkin II、 156-162(1979)、Journal of Photopolymer Science and Technology、202-232(1995)、特開2000−66385号、特開2000−80068号記載の化合物が挙げられる。具体例としては、下記の構造式で示される化合物が挙げられる。
上記オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger、Photogr.Sci.Eng.、18、387(1974)、T.S.Bal et al.、Polymer、21、423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同第4,069,056号に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号,580号、同第3,604,581号に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al.、Macromolecules、10(6)、1307(1977)、J.V.Crivello et al.、J.Polymer Sci.、Polymer Chem.Ed.、17、1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al.、Teh.Proc.Conf.Rad.Curing ASIA、p478
Tokyo、Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等が挙げられる。
本発明において、これらのオニウム塩化合物は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
好適に用いられるオニウム塩化合物は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。好ましい置換基としては炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルケニル基、炭素数12以下のアルキニル基、炭素数12以下のアリール基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルキルアミノ基、炭素数12以下のジアルキルアミノ基、炭素数12以下のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数12以下のチオアルキル基、炭素数12以下のチオアリール基が挙げられる。Z11 -は1価の陰イオンを表し、具体的には、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンが挙げられる。中でも安定性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオンおよびスルフィン酸イオンが好ましい。
式(RI−II)中、Ar21およびAr22は、各々独立に置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表す。好ましい置換基としては炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルケニル基、炭素数12以下のアルキニル基、炭素数12以下のアリール基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数12以下のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルキルアミノ基、炭素数12以下のジアルキルアミノ基、炭素数12以下のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数12以下のチオアルキル基、炭素数12以下のチオアリール基が挙げられる。Z21 -は1価の陰イオンを表す。具体的には、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも、安定性、反応性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
式(RI−III)中、R31、R32およびR33は、各々独立に置換基を1〜6個有していてもよい炭素数20以下のアリール基、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。中でも反応性、安定性の面から好ましいのは、アリール基である。置換基としては、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルケニル基、炭素数12以下のアルキニル基、炭素数12以下のアリール基、炭素数12以下のアルコキシ基、炭素数以下12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数12以下のアルキルアミノ基、炭素数12以下のジアルキルアミノ基、炭素数12以下のアルキルアミド基またはアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数12以下のチオアルキル基、炭素数12以下のチオアリール基が挙げられる。Z31 -は1価の陰イオンを表す。具体例としては、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオンが挙げられる。中でも安定性、反応性の面から、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。より好ましいものとして特開2001−343742号記載のカルボン酸イオン、特に好ましいものとして特開2002−148790号記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
以下に、一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
重合開始剤としては、特に反応性、安定性の面から、有機ハロゲン化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物が好ましく、より好ましくは有機ハロゲン化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、オニウム塩化合物である。
重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の含有量は、感光層全固形分に対し好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは0.8〜20質量%である。
(共増感剤)
感光層には、共増感剤を用いることができる。共増感剤とは、感光層に添加したときに、感光層の感度をさらに向上させることができる添加剤である。その作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。すなわち、先述の重合開始剤の光吸収により開始される光反応と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、過酸化物、酸化剤、還元剤等)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。共増感剤は、大きくは、(a)還元
されて活性ラジカルを生成しうるもの、(b)酸化されて活性ラジカルを生成しうるもの、(c)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用するもの、に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
(a)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
酸素−酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
(b)酸化されて活性ラジカルを生成する化合物
アルキルアート錯体:酸化的に炭素−ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、例えば、トリアリールアルキルボレート類が好適に使用される。
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等が挙げられる。
含硫黄、含錫化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化によりカルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1類、並びに、これらとヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類、およびN−OHをエステル化したオキシムエステル類をあげることができる。
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等を挙げることができる。
(c)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換もしくは連鎖移動剤として作用する化合物
ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換もしくは連鎖移動剤として作用する化合物としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンする事によりラジカルを生成しうる。連鎖移動剤は感度および保存安定性向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等)を好ましく用いることができる。なかでも、下記一般式(T)で表されるチオール化合物が特に好適に使用される。連鎖移動剤としてこのチオール化合物を用いることによって、臭気の問題、および感光層からの蒸発や他の層への拡散による感度減少を回避し、保
存安定性に優れ、さらには高感度で高耐刷の平版印刷版原版が得られる。
一般式(T)中、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員または6員のヘテロ環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有してもよい。
さらに好ましくは下記一般式(TA)または一般式(TB)で表されるものが使用される。
一般式(TA)および式(TB)中、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Xは水素原子、ハロゲン原子、アルコキシル基、アルキル基またはアリール基を表す。
以下に、一般式(T)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
連鎖移動剤の使用量は感光層の全固形分に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
共増感剤の他の具体的な例としては、特開平9−236913号中に感度向上を目的とした添加剤として記載されている化合物を挙げることができる。以下に、その一部を例示するが、本発明はこれらに限定されるものはない。
共増感剤は、単独でまたは2種以上併用して用いることができる。使用量は重合性化合物100質量部に対し、通常は0.05〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、より好ましくは3〜50質量部である。
(重合禁止剤)
感光層には、感光層の製造中または保存中において、重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の重合禁止剤を添加するのが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、感光層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%が好ましい。
(界面活性剤)
感光層には、現像性の促進および塗布面状を向上させるために界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
上記界面活性剤に関して、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号に記載のフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤の含有量は、感光層の全固形分に対して、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜7質量%がより好ましい。
(親水性ポリマー)
感光層には、現像性の向上、マイクロカプセルの分散安定性向上などのため、親水性ポリマーを含有させることができる。
親水性ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カ
ルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性基を有するものが好適に挙げられる。
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60モル%以上、好ましくは80モル%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
親水性ポリマーの質量平均分子量は、5000以上が好ましく、1万〜30万がより好ましい。親水性ポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよい。親水性ポリマーの含有量は、感光層全固形分の20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
(着色剤)
感光層には、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI45170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。添加量は、感光層全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましい。
(焼き出し剤)
感光層には、焼き出し画像生成のため、酸またはラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学(株)製)、オイルブルー#603、オイルピンク#312、オイルレッド5B、オイルスカーレット#308、オイルレッドOG、オイルレッドRR、オイルグリーン#502(以上オリエント化学工業(株)製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学工業(株)製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p',p"−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
酸またはラジカルによって変色する化合物の好適な添加量は、感光層固形分に対して0.01〜15質量%である。
(高級脂肪酸誘導体)
感光層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体を添加し、塗布後の乾燥過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%が好ましい。
(可塑剤)
感光層は可塑剤を含有してもよい。可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジ
エチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。可塑剤の含有量は、感光層の全固形分に対して、約30質量%以下が好ましい。
(無機微粒子)
感光層は、画像部の硬化皮膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。無機微粒子は光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面密着性の強化等のために用いられる。無機微粒子の平均粒径は、感光層中での分散安定性、十分な膜強度の保持、印刷時に汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部の形成等の観点から、5nm〜10μmが好ましく、0.5〜3μmがより好ましい。無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。無機微粒子の含有量は、感光層の全固形分に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
(親水性低分子化合物)
感光層は、現像性向上のため、親水性低分子化合物を含有することができる。親水性低分子化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類およびそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類およびその塩、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類およびその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類およびその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類およびその塩や、テトラエチルアミン塩酸塩等の有機4級アンモニウム塩等が挙げられる。
(感光層の形成)
感光層の形成には、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号に記載のごとく、感光層構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する態様でる。使用する溶剤としては、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができる。溶剤は単独でまたは混合して使用される。もう一つは、例えば、特開2001−277740号、特開2001−277742号に記載のごとく、感光層構成成分をマイクロカプセルに内包させて感光層に含有させる態様(マイクロカプセル型感光層)である。マイクロカプセル型感光層においては、構成成分をマイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセル型感光層においては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包させ、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有させることがより好ましい態様である。
上記の感光層構成成分をマイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えばマイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2800457号、同第2800458号に記載のコアセルベーションを利用した方法、米国特許第3287154号、特公昭38−19574号、同42−446号に記載の界面重合法による方法、米国特許第3418250号、同第3660304号に記載のポリマーの析出による方法、米国特許第3796669号に記載のイソシアナートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3914511号に記載のイソシアナート壁材料を用いる方法、米国特許第4001140号、同第4087376号、同第4089802号に記載の尿素―ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4025445号に記載のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号、同51−9079号に記載のモノマー重合によるin situ法、英国特許第930422号、米国特許第3111407号に記載のスプレードライング法、英国特許第952807号、同第967074号に記載の電解分散冷却法などが挙げられる。
本発明に用いられる好ましいマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレア及びポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を有する化合物を導入してもよい。
マイクロカプセルの平均粒径は、良好な解像度と経時安定性の観点から、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmがより好ましく、0.10〜1.0μmが更に好ましい。
また、本発明においては、上述した感光層構成成分、特に好ましくは赤外線吸収剤を樹脂微粒子に内包されている態様とすることもできる。
このような態様は、構成成分を溶媒に溶解した後、高分子溶液(好ましくは高分子水溶液)とホモジナイザー等を用いて混合して得られる樹脂微粒子分散液を調製し、これを用いることにより達成できる。
この際用いることができる溶媒としては、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、ジイソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ジクロロエタン、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。溶剤は、単独でまたは混合して使用される。
高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、アクリル酸−アクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウムコポリマー等が挙げられる。
感光層塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
感光層は、同一または異なる成分を同一または異なる溶剤に分散または溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することもできる。
感光層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度、良好な皮膜特性等を考慮して、一般的に0.3〜3.0g/m2が好ましい。
感光層の塗布には、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状の親水性支持体であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板及び、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものを含む。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下が好ましい。完全に純粋なアルミニウム板は精錬技術上製造が困難であるので、微量の異元素を含有する合金板が好適に用いられる。アルミニウム板は、その組成が限定されるものではなく、公知公用のものを適宜利用することができる。アルミニウム板の厚さは0.1〜0.6mmが好ましく、0.15〜0.4mmがより好ましく、0.2〜0.3mmが更に好ましい。
アルミニウム板には、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上および感光層との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板の粗面化処理に先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するために界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
アルミニウム板表面の粗面化処理は種々の方法により行われ、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等が挙げられる。電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流または直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理され、更に、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
アルミニウム板の陽極酸化処理には、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質が用いられる。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸またはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温度5〜70℃、電流密度5〜60A/d m2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、良好な耐刷性と非画像部の良好な耐傷性等の観点から、1.0〜5.0g/m2が好ましく、1.5〜4.0g/m2がより好ましい。
支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との蜜着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などの一層の改良のため、必要に応
じて、公知の処理方法、例えば、特開2001−253181号や特開2001−322365号に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理、マイクロポアの封孔処理、親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。
封孔処理としては、水蒸気による封孔処理、フッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理など無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔処理、熱水による封孔処理などが挙げられる。なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理および熱水による封孔処理が好ましい。
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号および同第3,902,734号に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理または電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号および同第4,689,272号に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。
支持体としてポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモンおよび遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネートまたはアルミネートの加水分解、縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。中でも、珪素の酸化物または水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
また、支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側または反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号に記載の金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
支持体の中心線平均粗さは、感光層との良好な密着性、良好な耐刷性、良好な汚れ難さ等の観点から、0.10〜1.2μmが好ましい。また、支持体の色濃度は、画像露光時のハレーション防止による良好な画像形成性、現像後の良好な検版性等の観点から、反射濃度値として0.15〜0.65が好ましい。
(バックコート層)
支持体に表面処理を施した後または下塗り層を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコートを設けることができる。
バックコートとしては、例えば、特開平5−45885号に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号に記載されている有機金属化合物または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。中でも、Si(OCH3 )4 、Si(OC2 H5 )4 、Si(OC3 H7 )4 、Si(O
C4 H9 )4 等のケイ素のアルコキシ化合物を用いることが原料を安価で入手しやすい点で好ましい。
(保護層)
本発明の平版印刷版原版には、露光時の重合反応を妨害する酸素の拡散侵入を遮断するため、感光層上に保護層(酸素遮断層)を設けることが好ましい。本発明に用いられる保護層は25℃、1気圧下における酸素透過性Aが1.0≦A≦20(mL/m2・day)であることが好ましい。酸素透過性Aが1.0(mL/m2・day)未満で極端に低い場合は、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。逆に、酸素透過性Aが20(mL/m2・day)を超えて高すぎる場合は感度の低下を招く。酸素透過性Aは、より好ましくは1.5≦A≦12(mL/m2・day)、更に好ましくは2.0≦A≦10.0(mL/m2・day)の範囲である。また、保護層に望まれる特性としては、上記酸素透過性以外に、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることである。この様な保護層に関する工夫が従来なされており、米国特許第3,458,311号、特公昭55−49729号に詳しく記載されている。
保護層の材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。ポリビニルアルコールの具体例としては加水分解度が71〜100モル%、重合繰り返し単位数が300から2400の範囲のものをあげることができる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられ、これらは単独または混合して使用できる。好ましい態様としては、ポリビニルアルコールの保護層中の含有率が20〜95質量%、より好ましくは30〜90質量%である。
また、公知の変性ポリビニルアルコールも好ましく用いることができる。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、更にはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等が挙げられる。
ポリビニルアルコールと混合して使用する成分としてはポリビニルピロリドンまたはその変性物が酸素遮断性、現像除去性といった観点から好ましく、保護層中の含有量は3.5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜30質量%である。
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ防止性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。上記ポリビニルアルコール(PVA)等の高分子化合物の分子量は、2000〜1000万の範囲のものが使用でき、好ましくは2万〜300万範囲のものである。
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を高分子化合物に対して数質量%添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を高分子化合物に対して数質量%添加することができる。
また、感光層との密着性や、耐傷性も平版印刷版原版の取り扱い上極めて重要である。すなわち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の感光層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改良すべく種々の提案がなされている。例えば米国特許出願番号第292,501号、同第44,563号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョンまたは水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,311号、特公昭55−49729号に詳しく記載されている。
さらに、本発明の平版印刷版原版における保護層には、酸素遮断性や感光層表面保護性を向上させる目的で、無機質層状化合物を含有させることも好ましい。
ここで無機質層状化合物とは、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、式:A(B,C)2-5 D4 O10(OH,F,O)2〔ただし、AはK,Na,Caの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、りん酸ジルコニウムなどが挙げられる。
上記雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母および鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg3 (AlSi3O10)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si4 O10)F2等の非膨潤性雲母、およびNaテトラシリリックマイカNaMg2.5 (Si4O10)F2、NaまたはLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si4O10)F2、モンモリロナイト系のNaまたはLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2 /5Li1/8 (Si4O10)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
本発明においては、上記の無機質層状化合物の中でも、合成の無機質層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、この膨潤性合成雲母や、モンモリロ
ナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘度鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に層間の陽イオンがLi+ 、Na+ の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイトおよび膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明において有用であり、特に膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
本発明で使用する無機質層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
本発明で使用する無機質層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
このようにアスペクト比が大きい無機質層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質層状化合物を併用した場合でも、これら無機質層状化合物の合計の量が上記の質量比であることが好ましい。
次に、保護層に用いる無機質層状化合物の一般的な分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に無機質層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
この保護層塗布液には、上記無機質層状化合物の他に、塗布性を向上させるための界面活性剤や皮膜の物性を改良するための水溶性可塑剤など公知の添加剤を加えることができる。水溶性可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。さらに、この塗布液には、感光層との密着性、塗布液の経時安定性を
向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
このように調製された保護層塗布液を、感光層の上に塗布し、乾燥して保護層を形成する。塗布溶剤はバインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号または特公昭55−49729号に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば、保護層は、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が挙げられる。
保護層の塗布量は、乾燥後の塗布量で、0.05〜10g/m2の範囲であることが好ましく、無機質層状化合物を含有する場合には、0.1〜0.5g/m2の範囲であることがより好ましく、無機質層状化合物を含有しない場合には、0.5〜5g/m2の範囲であることがより好ましい。
(画像露光)
本発明の平版印刷版原版は、350〜1200nmに発振波長を有するレーザーで画像露光を行なうことが好ましい。
350nm〜450nmの入手可能なレーザー光源としては以下のものを利用することができる。
ガスレーザとして、Arイオンレーザ(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザ(356nm、351nm、10mW〜1W)、He−Cdレーザー(441nm、325nm、1mW〜100mW)、固体レーザーとして、Nd:YAG(YVO4)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm、10mW)、半導体レーザー系として、KNbO3リング共振器(430nm、30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)、その他、パルスレーザとしてN2レーザ(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)。特にこの中でAlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
走査露光方式の平版印刷版原版露光装置としては、露光機構として内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式があり、光源としては上記光源の中で連続発振可能なものが好ましく利用することができる。現実的には平版印刷版原版(以下感材ともいう)の感度と製版時間の関係で、以下の露光装置が特に好ましい。
・内面ドラム方式で総出力20mW以上の半導体レーザーとなる様に、ガスレーザあるいは固体レーザー光源を1個以上使用するシングルビーム〜トリプルビームの露光装置。
・フラットベッド方式で総出力20mW以上となる様に、半導体レーザー、ガスレーザあるいは固体レーザーを1個以上使用したマルチビーム(1〜10本)の露光装置。
・外面ドラム方式で総出力20mW以上となる様に、半導体レーザー、ガスレーザあるいは固体レーザーを1個以上使用したマルチビーム(1〜9本)の露光装置。
・外面ドラム方式で総出力20mW以上となる様に、半導体レーザーあるいは固体レーザーを1個以上使用したマルチビーム(10本以上)の露光装置。
以上のようなレーザー直描型の平版印刷版原版においては、一般に感材感度X(J/cm2)、感材の露光面積S(cm2)、レーザー光源1個のパワーq(W)、レーザー本数
n、全露光時間t(s)との間に式(eq 1)が成立する。
X・S=n・q・t (eq 1)
i)内面ドラム(シングルビーム)方式の場合:
レーザー回転数f(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)の間には一般的に式(eq 2)が成立する。
f・Z・t=Lx (eq 2)
ii)外面ドラム(マルチビーム)方式の場合:
ドラム回転数F(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に式(eq 3)が成立する。
F・Z・n・t=Lx (eq 3)
iii)フラットヘッド(マルチビーム)方式の場合:
ポリゴンミラーの回転数H(ラジアン/s)、感材の副走査長Lx(cm)、解像度Z(ドット/cm)、全露光時間t(s)、ビーム数(n)の間には一般的に式(eq 4)が成立する。
H・Z・n・t=Lx (eq 4)
実際の印刷版原版に要求される解像度(2560dpi)、版サイズ(A1/B1、副走査長42inch)、20枚/1時間程度の露光条件と本発明に係る平版印刷版原版の感光特性(感光波長、感度:約0.1mJ/cm2)を上記式に代入することで、本発明に係る平版印刷版原版においては総出力20mW以上のレーザーを用いたマルチビーム露光方式との組み合わせが特に好ましいことが理解できる。さらに操作性、コスト等を掛け合わせることにより外面ドラム方式の半導体レーザーマルチビーム(10本以上)露光装置との組み合わせが最も好ましいことになる。
平版印刷版原版の画像露光は、赤外線レーザーで行なうこともできる。本発明に用いられる赤外線レーザーは、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーが好適に挙げられる。赤外線レーザーの出力は、100mW以上であるのが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。1画素あたりの露光時間は、20μ秒以内であるのが好ましい。また、照射エネルギー量は、10〜300mJ/cm2 であるのが好ましい。
本発明に使用可能な他の露光光線としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、可視および紫外の各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等がある。
(加熱)
本発明の平版印刷版原版は、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。この様な加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や感度の安定化といった利点が得られる。さらに、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは全面露光を行う事も有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行う事が好ましい。温度が高すぎる
と、非画像部迄がかぶってしまう等の問題を生じることがある。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は200〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じることがある。
本発明においては、上記の通り、露光工程の後、直ちに現像処理を行ってもよいが、露光工程と現像工程との間に加熱処理工程を設けることもできる。この加熱処理は、耐刷性を向上させ、さらに画像硬化度の版面内での均一性を高める効果があり、その条件はそれら効果のある範囲で適宜設定することができる。加熱手段としては、慣用の対流オーブン、IR照射装置、IRレーザー、マイクロ波装置、ウィスコンシンオーブン等を挙げることができる。具体的には、版面到達温度が70〜150℃の範囲で、1秒〜5分間の間で保持することにより行なうことができる。好ましくは80℃〜140℃で5〜1分間、より好ましくは90℃〜130℃で10〜30秒間である。この範囲で、上記の効果を効率よく得られ、また熱による印刷版の変形などの悪影響が無い点で好ましい。
本発明においては上述の露光工程、好ましくは加熱処理工程の後に、現像処理工程が施され平版印刷版を得る。露光工程に用いられるプレートセッタ、加熱処理に用いられる加熱処理手段および現像処理工程に使用される現像装置はお互いに接続されて、自動的に連続処理されることが好ましい。具体的にはプレートセッタと、現像装置がコンベアなどの運搬手段によって結合されている製版ラインである。プレートセッタと現像装置の間に加熱処理手段が入っていても良く、加熱手段と現像装置は一体の装置となっていても良い。
使用する平版印刷版原版が作業環境における周囲の光の影響を受け易い場合は、上記の製版ラインがフィルターまたはカバーなどで遮光されていることが好ましい。
画像形成した後、紫外線光などの活性光線で全面露光を行い、画像部の硬化促進を行っても良い。全面露光時の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀灯、ガリウム灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、各種レーザー光などが挙げられる。さらに、十分な耐刷性を得るためには全面露光量としては少なくとも10mJ/cm2以上が好ましく、より好ましくは100mJ/cm2以上である。
上記全面露光時に同時に加熱を行ってもよく、加熱を行うことによりさらに耐刷性の向上が認められる。加熱装置としては、慣用の対流オーブン、IR照射装置、IRレーザー、マイクロ波装置、ウィスコンシンオーブン等を挙げることができる。このとき版面温度は好ましく30℃〜150℃、より好ましくは35〜130℃、更に好ましくは40〜120℃である。
(製版)
本発明の平版印刷版原版は、上述のように半導体レーザーや固体レーザーにより画像様に露光し、必要により前述のように全面加熱した後、なんらの現像処理工程を経ることなく油性インキと水性成分とを供給して印刷することができる。具体的には、平版印刷版原版をレーザーで露光し、任意に版全面をオーブンにて加熱した後、現像処理工程を経ることなく印刷機に装着して印刷する方法、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上においてレーザーで露光し、任意に印刷機上において版全面を加熱した後、現像処理工程を経ることなく印刷する方法等が挙げられる。
例えば、ネガ型の機上現像型平版印刷版原版の製版方法の一態様では、平版印刷版原版をレーザーで画像様に露光した後、湿式現像処理工程等の現像処理工程を経ることなく水性成分と油性インキとを供給して印刷すると、感光層の露光部においては、露光により硬化した感光層が、親油性表面を有する油性インキ受容部を形成する。一方、未露光部においては、供給された水性成分および/または油性インキによって、未硬化の感光層が溶解しまたは分散して除去され、その部分に支持体表面が露出する。その結果、水性成分は露出した支持体表面に付着し、油性インキは露光領域の感光層に着肉し、印刷が開始される。ここで、最初に版面に供給されるのは、水性成分でもよく、油性インキでもよいが、水性成分が未露光部の感光層により汚染されることを防止する点で、最初に油性インキを供給することが好ましい。水性成分および油性インキとしては、通常の平版印刷用の湿し水と印刷インキが用いられる。
このようにして、平版印刷版原版は印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
また、本発明の平版印刷版原版の製版方法における別の態様では、上述のようにレーザーで画像様に露光し必要に応じて版全面を加熱した後に、擦り部材を備えた自動処理機により、pHが2〜10の現像液の存在下、擦り部材で版面を擦ることにより、非露光部の感光層を除去して平版印刷版を得ることもできる。
本発明において用いられる現像液は、例えば、水単独または水を主成分(水を60質量%以上含有)とする水溶液が好ましく、特に、一般的に公知の湿し水と同様な組成の水溶液、界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性)を含有する水溶液や、水溶性高分子化合物を含有する水溶液が好ましい。特に、界面活性剤と水溶性高分子化合物の両方を含有する水溶液が好ましい。現像液のpHは、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは4〜7である。
本発明に用いられるアニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類およびアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
本発明に用いられるカチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられるノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
本発明においては、ソルビトールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロ
キサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステルがより好ましい。
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、本発明の現像液に使用するノニオン系界面活性剤としては、HLB(Hydorophile−Lipophile
Balance)値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
またアセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコン系等の界面活性剤も同様に使用することができる。
本発明に用いられる両性界面活性剤としては、2-アルキルイミダゾリン誘導体、アルキルアミノ酢酸塩、アルキルイミノジ酢酸塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノシプロピオン酸塩、アルキルジメチルアンモニオ酢酸塩、アルキルアミドプロピルジメチルアンモニオ酢酸塩、アルキルスルホベタイン、アルキルジアミノエチルグリシン塩、アルキルホスホベタイン等が挙げられる。本発明においては、アルキルアミノ酢酸塩、アルキルイミノジ酢酸塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩、アルキルジメチルアンモニオ酢酸塩、アルキルアミドプロピルジメチルアンモニオ酢酸塩が好ましく、アルキルジメチルアンモニオ酢酸塩、アルキルアミドプロピルジメチルアンモニオ酢酸塩がより好ましい。
本発明の現像液に使用する界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が好適であり、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が特に好適である。
界面活性剤は、単独でも、2種以上を混合して用いても良い。界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%である。
また、本発明の現像液に用いられる水溶性高分子化合物としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)およびその変性体、プルラン、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミドおよびアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
上記大豆多糖類は、公知ものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。上記変性澱粉も、公知のものが使用でき、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等の澱粉を酸または酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
水溶性高分子化合物は2種以上を併用することもできる。水溶性高分子化合物の現像液中における含有量は、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%である。
また、本発明の現像液は、有機溶剤を含有しても良い。含有可能な有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、アイソパーE、H、G(エッソ化学(株)製)、ガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、あるいはハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキ
シルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルホスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が望ましい。
本発明の現像液には上記の他に、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有することができる。
防腐剤としては、フェノールまたはその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系界面活性剤のHLBが5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型および可溶化等がいずれも使用できる。
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形で用いることもできる。
無機酸および無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。
上記の現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液および現像補充液として用いるこ
とができ、後述の自動処理機に適用することが好ましい。自動処理機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。本発明の平版印刷版原版の製版方法においてもこの補充方式が好ましく適用される。
本発明におけるpH2〜10の水溶液による現像処理は、現像液の供給手段および擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号、特開昭60−59351号に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。なかでも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
本発明に好ましく使用できる回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体の腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチックまたは金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号や特開平3−100554号に記載のものや、実公昭62−167253号に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属またはプラスチックの溝型材を芯となるプラスチックまたは金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、および、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することがで、例えば、繊維の毛の直径は、20〜400μm、毛の長さは、5〜30mmのものが好適に使用できる。回転ブラシロールの外径は、30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は、0.1〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、2本以上の複数本用いることが好ましい。
本発明に用いる回転ブラシロールの回転方向は、本発明の平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、図1に例示した自動処理機のように、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが、同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが、逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去が、さらに確実となる。さらに、回転ブラシロールを、ブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
上記現像液は、任意の温度で使用できるが、好ましくは10℃〜50℃である。
本発明において用いられる親水化水溶液は、例えば、水を主成分(水を60質量%以上含有)とした親水化化合物含有水溶液が好ましい。親水化化合物の含有量は、親水化水溶液中に1質量%以上40質量%以下が好ましく、2質量%以上30質量%以下がより好ましく、3質量%以上20質量%以下が特に好ましい。親水化化合物以外の成分としては、pH調整剤の他に前述の界面活性剤、有機溶剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、無機酸、無機塩などを含有することができる。これら成分は含有量を適宜調整して使用することができる。親水化水溶液のpHは、2〜10が好ましく、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは4〜7である。
なお、本発明においては、上記のように処理した平版印刷版を、引き続いて、水洗、乾燥処理、不感脂化処理することも任意に可能である。不感脂化処理では、公知の不感脂化液を用いることができる。
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〜6、比較例1〜2〕
(アルミニウム支持体1の作製)
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。この板を15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥し、アルミニウム支持体1を作製した。
このようにして得られた支持体の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
<平版印刷版原版1〜8の作製>
上記のようにして得られたアルミニウム支持体1上に、以下の組成を有する下塗り層塗布液1を塗布し、100℃にて3分間乾燥した。得られた表面処理層の塗布量は、10mg/m2であった。
(下塗り層塗布液1)
・表2記載の高分子化合物(20wt%NMP溶液) 2.5g
・N−メチルピロリドン 49.0g
・メタノール 450.0g
・水 1.5g
上記のようにして得られた下塗り層上に、以下の組成を有する画像形成層塗布液1を塗布し、80℃にて1分間乾燥した。得られた感光層の塗布量は、1.2g/m2であった。
(画像形成層塗布液1)
・下記バインダーポリマー(1) 0.54g
・重合性化合物(1) 0.48g
イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート
(アロニックスM−315、東亜合成(株)製)
・下記増感色素(1) 0.06g
・下記重合開始剤(1) 0.10g
・下記共増感剤(1) 0.07g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
〔顔料:15質量部、分散剤としてアリルメタクリレート/メタクリル酸(80/20)共重合体:10質量部、溶剤としてシクロヘキサノン/メトキシプロピルアセテート/1−メトキシ−2−プロパノール=15質量部/20質量部/40質量部〕
・メチルエチルケトン 4.80g
・ジメチルスルホキシド 4.80g
感光層上に、以下の組成を有する保護層塗布液1を乾燥塗布量が0.50g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版1〜8を作製した。
(保護層塗布液1)
・ポリビニルアルコール(ケン化度:98モル%、重合度:500) 40g
・ポリビニルピロリドン(分子量:5万) 5g
・ポリ〔ビニルピロリドン/酢酸ビニル(1/1)〕(分子量:7万) 0.5g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.5g
・水 950g
<露光、現像および印刷>
上記平版印刷版原版1〜8各々について、「90μJ/cm2の露光量で、解像度2438dpi(dpiとは2.54cm当たりのドット数を表す)で、露光を行った。
露光パターンは50%のスクエアドットを使用し、露光装置にはFUJIFILM Electronic Imaging Ltd製Violet半導体レーザーVx9600(InGaN系半導体レーザー405nm±10nm発光/出力30mW)を使用した。
網点面積は、SDG(株)製CCdotを用いて測定し、感度の指標とした。
その後、下記水溶液Aを用い、図1に示す構造の自動現像処理機にて、現像処理を実施し平版印刷版(加熱なし)を作成した。自動現像処理機は、回転ブラシロールを2本有し、1本目の回転ブラシロールは、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径90mmのブラシロールで、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.94m/sec)させ、2本目の回転ブラシロールは、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径60mmのブラシロールで、搬送方向と反対方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.63m/sec)させた。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度100cm/minにて実施した。
水溶液Aは、循環ポンプによりスプレーパイプからシャワーリングして、版面に供給した。水溶液Aのタンク容量は、10リットルであった。水溶液AのpHは、7.0であった。
(水溶液A)
・水 100.00g
・ベンジルアルコール 1.00g
・ポリオキシエチレンナフチルエーテル 1.00g
(オキシエチレン平均数n=13)
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 0.50g
・エチレングリコール 0.50g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
一方、レーザー画像様露光後、30秒以内に平版印刷版原版をオーブンに入れ、熱風を吹き付けて平版印刷版原版の全面を加熱し、110℃で15秒間保持した。その後、30秒以内に、上記と同様の現像処理を実施し平版印刷版(加熱あり)を作成した。
次いで、平版印刷版(加熱なし)、平版印刷版(加熱あり)を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、湿し水(EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
<評価>
耐刷性及び耐汚れ性を下記のように評価した。結果を表2に示す。
<耐刷性>
上記の印刷を行い、印刷枚数が増加すると、徐々に感光層が磨耗しインキ受容性が低下するため、印刷物におけるインキ濃度が低下した。同一露光量(エネルギー密度)で露光した印刷版において、インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により耐刷性を相対評価した。即ち、表2中「評価基準」と表記した比較例を基準(100)とし、以下の式に従い計算した。数字が大きいことは耐刷性が高いことを表している。なお、評価基準については実際の評価結果を記載した。
耐刷性=(対象平版印刷版の耐刷枚数)/(基準平版印刷版の耐刷枚数)×100
<耐汚れ性>
印刷開始後500枚目の印刷物を抜き取り、非画像部に付着しているインキを目視で確認することにより耐汚れ性評価を行った。
高分子化合物(1−T−1)=未中和高分子化合物(1)(質量平均分子量:10万):10gのNMP溶液(濃度:25wt%)に中和化合物(1−T−1):3.55gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
高分子化合物(1−T−8)=未中和高分子化合物(1)(質量平均分子量:10万):10gのNMP溶液(濃度:25wt%)に中和化合物(T−8):2.90gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
高分子化合物(1−T−19)=未中和高分子化合物(1)(質量平均分子量:10万):10gのNMP溶液(濃度:25wt%)に中和化合物(T−19):2.80gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
高分子化合物(2−T−2)=未中和高分子化合物(2)(質量平均分子量:15万):10gのNMP溶液(濃度:20wt%)に中和化合物(T−2):4.08gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
高分子化合物(2−T−13)=未中和高分子化合物(2)(質量平均分子量:15万):10gのNMP溶液(濃度:20wt%)に中和化合物(T−13):4.66gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
高分子化合物(2−T−26)=未中和高分子化合物(2)(質量平均分子量:15万):10gのNMP溶液(濃度:20wt%)に中和化合物(T−26):5.73gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
表2から明らかなように、中和化合物で中和した高分子化合物を用いた場合、中和していない高分子化合物を用いた場合(比較例1、2)と比べて汚れ性を維持したまま耐刷性を向上させることができる。
〔実施例7〜10、比較例3〕
<平版印刷版原版9〜13の作製>
上記のようにして得られたアルミニウム支持体1上に、以下の組成を有する下塗り層塗布液2を塗布し、100℃にて3分間乾燥した。得られた表面処理層の塗布量は、10mg/m2であった。
(下塗り層塗布液2)
・表3記載の高分子化合物(20wt%NMP溶液) 2.5g
・N−メチルピロリドン 49.0g
・メタノール 450.0g
・水 1.5g
上記のようにして得られた下塗り層上に、以下の組成を有する画像形成層塗布液2を塗布し、80℃にて1分間乾燥した。得られた感光層の塗布量は、1.2g/m2であった。
(画像形成層塗布液2)
・下記バインダーポリマー(2)(質量平均分子量:7万) 0.54g
・下記重合性化合物(2) 0.48g
・上記増感色素(1) 0.06g
・上記重合開始剤(1) 0.18g
・上記共増感剤(1) 0.07g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
〔顔料:15質量部、分散剤としてアリルメタクリレート/メタクリル酸
(80/20)共重合体:10質量部、溶剤としてシクロヘキサノン/
メトキシプロピルアセテート/1−メトキシ−2−プロパノール=15
質量部/20質量部/40質量部〕
・熱重合禁止剤 0.01gN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・下記フッ素系界面活性剤(1) 0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.04g(旭電化工業(株)製、プルロニックL44)
・テトラエチルアミン塩酸塩 0.01g
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
(質量平均分子量:7万)
感光層上に、以下の組成を有する保護層塗布液2を乾燥塗布量が0.50g/m2となるようにバーを用いて塗布した後、125℃で70秒間乾燥して保護層を形成し、平版印刷版原版9〜13を作製した。
(保護層塗布液2)
・下記雲母分散液(1) 13.00g
・ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500) 1.30g
・2−エチルヘキシルスルホコハク酸ソーダ 0.20g
・ポリ(ビニルピロリドン/酢酸ビニル=1/1)(分子量7万) 0.05g
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン(株)製) 0.05g
・水 133.00g
(雲母分散液(1)の調製)
水368gに合成雲母(「ソマシフME−100」:コープケミカル社製、アスペクト比:1000以上)32gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)0.5μmになるまで分散し、雲母分散液(1)を得た。
得られた平版印刷版原版9〜13を、実施例1と同様にして露光、現像及び印刷を行い、同様に評価した。結果を表3に示す。但し、相対評価の基準(100)としては、比較例3を用いた。
高分子化合物(1−T−25−25)=未中和高分子化合物(1)(質量平均分子量:10万):10gのNMP溶液(濃度:25wt%)に中和化合物(T−25):1.67gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
高分子化合物(1−T−25−50)=未中和高分子化合物(1)(質量平均分子量:10万):10gのNMP溶液(濃度:25wt%)に中和化合物(T−25):3.34gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
高分子化合物(1−T−25−75)=未中和高分子化合物(1)(質量平均分子量:10万):10gのNMP溶液(濃度:25wt%)に中和化合物(T−25):5.02gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
高分子化合物(1−T−25−100)=未中和高分子化合物(1)(質量平均分子量:10万):10gのNMP溶液(濃度:25wt%)に中和化合物(T−25):6.69gを添加し、NMPにより濃度20wt%に調整。
表3から明らかなように、中和化合物で中和した高分子化合物を用いた場合、中和していない高分子化合物を用いた場合(比較例3)と比べて汚れ性を維持したまま耐刷性を向上させることができる。
〔実施例11〜12、比較例4〕
(アルミニウム支持体2の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A1050)を、下記に示す工程(a)〜(k)をこの順序で実施して表面処理した。
(a)機械的粗面化処理
研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはΦ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(Φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
得られたアルミニウム板に温度70℃のカセイソーダ水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、下記工程(d)における電解液の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8ms、DUTY比1:1、台形の矩形波を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%水溶液でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、工程(d)において生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。エッチング量は、3.5g/m2であった。
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、工程(d)における電解液の廃液を用いた。
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%水溶液でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2 溶解し、工程(g)において生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
電解液として硫酸濃度170g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)を用い、温度43℃で陽極酸化処理を行った。電流密度は約30A/dm2であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
アルミニウム板を温度30℃の3号ケイ酸ソーダ1質量%水溶液中へ、10秒間浸漬することでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行うことにより、アルミニウム支持体2を作製した。シリケート付着量は3.6mg/m2 であった。
<平版印刷版原版14〜16の作製>
上記アルミニウム支持体2上に、以下の組成を有する下塗り層塗布液2を塗布し、100℃にて3分間乾燥した。得られた表面処理層の塗布量は、7mg/m2であった。
(下塗り層塗布液2)
・表4記載の高分子化合物(20wt%NMP溶液) 2.5g
・N−メチルピロリドン 50.0g
・メタノール 450.0g
こうして得られた下塗り層上に、下記組成の画像形成層塗布液3をバー塗布し、70℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.1g/m2の画像形成層を形成した。
画像形成層塗布液3は、下記感光液(1)及びマイクロカプセル液(1)を塗布直前に混合、攪拌して調製した。
<感光液(1)>
・下記バインダーポリマー(3) 0.162g
・下記重合開始剤(2) 0.160g
・下記重合開始剤(3) 0.180g
・下記赤外線吸収剤(1) 0.020g
・重合性化合物 0.385g
アロニックスM−215(東亜合成(株)製)
・上記フッ素系界面活性剤(1) 0.044g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.210g
<マイクロカプセル液(1)>
・下記の通り作成したマイクロカプセル(1) 2.640g
・水 2.425g
マイクロカプセル(1)の作成
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N、75質量%酢酸エチル溶液)10g、アロニックスSR−399(東亞合成(株)製)6.00g、パイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.12gを酢酸エチル16.67gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液37.5gを調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で2時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。マイクロカプセルの平均粒径は0.2μmであった。
画像形成層上に下記保護層塗布液3をバー塗布し、125℃75秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成して平版印刷版原版14〜16を作製した。
(保護層塗布液3)
・ポリビニルアルコール(6質量%水溶液) 2.24g
((株)クラレ製PVA105、ケン化度:98.5モル%、重合度:500)
・ポリビニルピロリドン(K30)(Mw=5万) 0.0053g
・界面活性剤(1質量%水溶液)(花王(株)製エマレックス710) 2.15g
・鱗状合成雲母(3.4質量%水分散物) 3.75g
(UNICOO(株)製MEB3L、平均粒径1〜5μmΦ)
・蒸留水 10.60g
(1)露光、現像および印刷
上記平版印刷版原版14〜16の各々について、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。
その後、下記水溶液B(pH=6.5)を用い、実施例1と同様にして現像処理を実施し平版印刷版(加熱なし)を作成した。
(水溶液B)
・水 100.00g
・ポリオキシエチレンナフチルエーテル 0.50g
(オキシエチレン平均数n=13)
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 0.50g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
一方、レーザー露光後、30秒以内に平版印刷版原版をオーブンに入れ、熱風を吹き付けて平版印刷版原版の全面を加熱し、110℃で15秒間保持した。その後、30秒以内に、上記と同様の現像処理を実施し平版印刷版(加熱あり)を作成した。
次いで、平版印刷版(加熱なし)及び平版印刷版(加熱あり)を用いて、実施例1と同様にして耐刷性及び耐汚れ性を評価した。結果を表4に示す。但し、相対評価の基準(100)としては、表4中に「評価基準」と表記した比較例を用いた。
〔実施例13〜14、比較例5〕
平版印刷版原版14〜16の各々について、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光済み平版印刷版原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。以下に示す組成を有する湿し水(1)とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)を供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行い、実施例1と同様にして耐刷性及び耐汚れ性を評価した。結果を表5に示す。但し、相対評価の基準(100)としては、表5中に「評価基準」と表記した比較例を用いた。
<湿し水(1)>
・EU−3(富士フイルム(株)製エッチ液) 1質量部
・水 89質量部
・イソプロピルアルコール 7質量部
〔実施例15、比較例6〕
<平版印刷版原版17、18の作製>
上記画像形成層塗布液2を下記画像形成層塗布液4に変更した以外は平版印刷版原版10、13と同様にして平版印刷版原版17、18を作製した。
(画像形成層塗布液4)
・下記バインダーポリマー(4)(質量平均分子量:7万) 0.54g
・上記重合性化合物(2) 0.48g
・上記増感色素(1) 0.06g
・上記重合開始剤(1) 0.18g
・上記共増感剤(1) 0.07g
・ε―フタロシアニン顔料の分散物 0.40g
〔顔料:15質量部、分散剤としてアリルメタクリレート/メタクリル酸
(80/20)共重合体:10質量部、溶剤としてシクロヘキサノン/
メトキシプロピルアセテート/1−メトキシ−2−プロパノール=15
質量部/20質量部/40質量部〕
・熱重合禁止剤 0.01g
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩
・上記フッ素系界面活性剤(1) 0.001g
・ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物 0.04g
(旭電化工業(株)製、プルロニックL44)
・テトラエチルアミン塩酸塩 0.01g
・1−メトキシ−2−プロパノール 3.5g
・メチルエチルケトン 8.0g
得られた平版印刷版原版17、18を、水溶液Aを下記水溶液Cに変更する以外は実施例8と同様にして露光、現像及び印刷を行い、同様に評価した。結果を表6に示す。但し、相対評価の基準(100)としては、比較例6を用いた。
(水溶液C)
・水 100.00g
・N−ラウリルジメチルベタイン 10.00g
(竹本油脂(株)製;パイオニンC157K)
・ポリスチレンスルホン酸(Mw=2万) 1.00g
・第1リン酸アンモニウム 0.05g
・クエン酸 0.05g
・エチレンジアミンテトラアセテート4ナトリウム塩 0.05g
リン酸を用いて現像液のpHが5.0となるように調整
表2〜6の結果から分かるように、本発明の平版印刷版原版は、耐刷と汚れ性のバランスに優れる。
〔実施例16〕
<平版印刷版原版19の作製>
下塗り層塗布液1を下記下塗り層塗布液3に変更した以外は、平版印刷版原版1と同様にして平版印刷版原版19を作製した。
(下塗り層塗布液3)
・高分子化合物(1) 50g
・N−メチルピロリドン 980g
・メタノール 9000g
・水 30g
・中和化合物(T−1) 3.55g
得られた平版印刷版原版19を、実施例1と同様にして露光、現像及び印刷を行い、同様に評価した。結果を表7に示す。但し、相対評価の基準(100)としては、比較例1を用いた。
表7から明らかなように、下塗り層塗布液中において中和を実施しても耐刷と汚れ性のバランスに優れた印刷版を得ることができる。