JP2004182951A - グラビア印刷用導電性インク、及び積層セラミック電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間に亙って低粘度を維持することができ、しかも低温・短時間での塗膜乾燥条件下で所望の乾燥処理を行なうことができるようにする。
【解決手段】グラビア印刷用導電性インクが、NiやCu等の粉末状卑金属材料、有機ビヒクル(例えば、溶剤:樹脂=9:1)及び高分子系分散剤等の分散剤に加え、沸点200℃以下の少なくとも1つ以上の3級アミンを含むアミンを0.5〜5.0wt%含有している。そして、該グラビア印刷用導電性インクを使用してベースフィルム上のセラミックシートにグラビア印刷を施し、乾燥温度100℃未満又は乾燥時間15秒以下の乾燥条件下で印刷塗膜を乾燥させ、該印刷塗膜が内部電極2を形成するようにする。
【選択図】 図1
【解決手段】グラビア印刷用導電性インクが、NiやCu等の粉末状卑金属材料、有機ビヒクル(例えば、溶剤:樹脂=9:1)及び高分子系分散剤等の分散剤に加え、沸点200℃以下の少なくとも1つ以上の3級アミンを含むアミンを0.5〜5.0wt%含有している。そして、該グラビア印刷用導電性インクを使用してベースフィルム上のセラミックシートにグラビア印刷を施し、乾燥温度100℃未満又は乾燥時間15秒以下の乾燥条件下で印刷塗膜を乾燥させ、該印刷塗膜が内部電極2を形成するようにする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はグラビア印刷用導電性インク、及び積層セラミック電子部品に関し、より詳しくは積層セラミック電子部品の内部導体形成に使用されるグラビア印刷用導電性インク、及び該グラビア印刷用導電性インクを使用して製造された積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、以下の方法で製造されている。
【0003】
すなわち、所定寸法に成形されたセラミックグリーンシート(以下、「セラミックシート」という)の表面に導電性ペーストをスクリーン印刷し、その後、該導電性ペーストが印刷されたセラミックシートと前記導電性ペーストの印刷されていないセラミックシートとを適宜積層してセラミック積層体を形成し、次いで、該セラミック積層体に焼成処理を施してセラミック焼結体を形成し、その後、該セラミック焼結体の表面に外部電極を形成し、これにより積層セラミック電子部品が製造される。
【0004】
しかしながら、近年、この種の積層セラミック電子部品では、セラミック層の薄層化、多層化が進んでおり、スクリーン印刷法で内部導体を形成した場合は、原理的に印刷精度や印刷厚みの精度を向上させるには限界があることから、より高精度で生産性にも優れたグラビア印刷法により、内部導体を形成する方法が研究・開発されている。
【0005】
すなわち、グラビア印刷用導電性インク(以下、単に「導電性インク」という)としては、例えば、金属粉末100重量部に対して、樹脂が1〜15重量部、有機溶剤が20〜150重量部、粘度は1Pa・s(10ポアズ)以下で10μm以上の凝集体が除去されたものが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、グラビア印刷を利用した積層電子部品の製造方法としては、導電性塗料をセラミックシート上にグラビア印刷した後、該導電性塗料が未乾燥状態である間に磁界を印加し、その後導電性塗料を乾燥させ複数枚積層した後、加圧、圧着して所定形状に切断し、焼成する方法が提案されている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−335167号公報
【特許文献2】
特開平8−316090号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、グラビア印刷で良好な塗膜を得るためには、導電性インクの粘度を低くする必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1では、導電性インクに含有される金属粉末として粒径1μm以下の微細な導電性粉末を使用した場合、該導電性インクに含有される分散剤や樹脂成分が、複数の導電性粉末粒子と三次元的な架橋を形成し易くなる。そして、このような架橋の形成が経時的に進行すると導電性インクの粘度が上昇したり導電性インクがゲル化し、その結果、所謂印刷カスレ等が発生して印刷塗膜の品質低下を招来するという問題が生じる。
【0010】
また、特許文献2は、未乾燥状態である間に磁界を印加することにより、磁界方向を変え、これによりムラのない印刷厚みを有する積層電子部品を得ようとしたものであるが、グラビア印刷の塗膜品質に最も大きな影響を及ぼす導電性インクの特性には何ら触れられていない。
【0011】
一方、グラビア印刷では、一般に、印刷部で被印刷物にグラビア印刷を施した後、該被印刷物をロール状の巻取部に巻回収容するため、印刷部と巻取部との搬送路中に乾燥炉を介装し、印刷塗膜を乾燥させる必要がある。
【0012】
そして、生産性を向上させるべく印刷速度を高速化させた場合、被印刷物が乾燥炉中を通過する時間、すなわち乾燥時間が必然的に短くなるため、導電性インクには短時間で乾燥可能な速乾性が要求される。
【0013】
すなわち、印刷塗膜の乾燥が不十分な場合、巻取部では完全に乾燥していない未乾燥の印刷塗膜がベースフィルムの裏面側と接着してしまうため、その後ベースフィルムを巻取部から取り出すときにセラミックシートがベースフィルムから部分的に剥離し、後工程で行う積層加工に支障を来たす虞がある。このため、導電性インクには、短時間の乾燥処理で印刷塗膜が完全に乾燥するような速乾性が要求される。
【0014】
印刷塗膜を短時間で乾燥させる方策としては、乾燥炉の乾燥温度を高くすることが考えられる。
【0015】
しかしながら、乾燥炉の乾燥温度を高くすると、印刷部でベースフィルムに高テンションが負荷されることもあってベースフィルムが伸び易くなり、このため内部電極の形状精度が低下し、静電容量等の電気特性にバラツキが生じる虞がある。
【0016】
また、従来のスクリーン印刷で使用される導電性ペーストでは、経時的な粘度上昇やゲル化を防止するために、各種界面活性剤が添加されているが、グラビア印刷に使用される導電性インクに界面活性剤を添加すると、乾燥性が悪化し、このため上述と同様、印刷塗膜とベースフィルムの裏面とが接着してしまい、積層工程に支障を来たす虞がある。
【0017】
すなわち、この種の導電性インクでは、形状精度を損なうことなく生産性向上を図るために、低温・短時間で印刷塗膜を乾燥させることが必要となる。
【0018】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、長期間に亙って低粘度を維持することができ、しかも低温・短時間での塗膜乾燥条件下で所望の乾燥処理を行なうことのできる導電性インク、及び該導電性インクを使用して製造された積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究した結果、卑金属材料、有機ビヒクル、及び分散剤に加え、沸点200℃以下のアミンを0.5〜5.0重量%(以下、「wt%」という)含有した導電性インクを使用してグラビア印刷を行うことにより、インク粘度が経時的に上昇することなく導電性インクを低粘度で安定させることができ、また、乾燥温度100℃未満の低温や乾燥時間15秒以下の短時間での乾燥条件で前記導電性インクを使用してもセラミックシートがベースフィルムから剥離したりベースフィルムが伸びてしまうのを回避するのことができるという知見を得た。
【0020】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る導電性インクは、乾燥温度100℃未満及び乾燥時間15秒以下の少なくとも一方の印刷塗膜乾燥条件で使用されるグラビア印刷用導電性インクであって、少なくとも卑金属材料と、有機ビヒクルと、分散剤と、沸点200℃以下のアミンとを含有し、前記アミンの含有量が、重量%で0.5〜5.0%であることを特徴としている。
【0021】
また、初期粘度を低くし、導電性インクを低粘度で長期間安定させるためには、アミンとして3級アミンを使用するのが好ましい。
【0022】
そこで、本発明の導電性インクは、前記アミンが、少なくとも1種以上の3級アミンを含んでいることを特徴としている。
【0023】
また、前記卑金属材料としては、導電成分として優れた機能を発揮するNi、Cu、又はこれらの合金の中から選択された少なくとも1種以上を使用するのが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、セラミック焼結体に内部導体が埋設された積層セラミック電子部品であって、前記内部導体が、上記導電性インクを使用して形成されていることを特徴としている。
【0025】
上記積層セラミック電子部品によれば、上記導電性インクを使用して内部導体が形成されているので、内部導体の形状パターン精度や印刷厚み精度が良好な積層セラミック電子部品を容易に得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0027】
本発明の一実施の形態としての導電性インクは、粉末状の卑金属材料、有機ビヒクル、及び分散剤に加え、沸点200℃以下のアミンが0.5〜5.0wt%含有されている。そして、これによりインク粘度が長期的に安定した導電性インクを得ることができる。しかも、グラビア印刷後に乾燥温度100℃未満の低温や乾燥時間15秒以下の短時間で印刷塗膜の乾燥処理を行い、その後ベースフィルムをロール状に巻き取っても、ベースフィルムが伸びることもなく印刷塗膜とベースフィルムの裏面とが接着してしまうのを回避することができる。
【0028】
以下、沸点200℃以下のアミンを導電性インクに0.5〜5.0重量%含有させた理由について具体的に詳述する。
【0029】
(1)アミンを添加する理由
導電性粉末として用いられるNiやCu等の卑金属材料は、AgやPd等の貴金属材料よりも酸化しやすく、これら卑金属材料の表面は酸化物層で被覆されている。そして、前記酸化物層は、大気中の水分等と反応して一部は水酸化物となり、したがって卑金属材料の表面は水酸基(−OH)を有している。
【0030】
また、導電性インクに含有される分散剤や、有機ビヒクル中の樹脂成分は、その分子鎖中に多数の吸着サイト、例えば水酸基(−OH)やカルボキシル基(−COOH)を有している。そして、これら多数の吸着サイトのうち、一部の吸着サイトは、酸−塩基相互作用や水素結合力により、卑金属材料表面の水酸基に吸着し、該卑金属材料の分散安定性に寄与する。
【0031】
しかしながら、前記多数の吸着サイトのうち、卑金属材料への吸着に寄与しなかったその余の吸着サイト(以下、この吸着サイトを「過剰吸着サイト」という)は、単一粒子のみならず、経時的に複数の粒子と三次元的な架橋を形成し易く、このような架橋の形成が進行するとインク粘度の上昇やゲル化が生じる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、導電性インクにアミンを添加することにより、分散剤や樹脂成分の過剰吸着サイトをマスクさせ、導電性粉末としての卑金属材料の三次元的な架橋を防止して長期間に亙って粘度を安定化させ、これにより導電性インクの粘度上昇やゲル化を防いでいる。
【0033】
(2)アミンの沸点
沸点が200℃を超えるアミンを導電性インクに添加しても粘度自体は経時的に安定する。
【0034】
しかしながら、乾燥温度100℃未満の低温、或いは乾燥時間15秒以下の短時間で印刷塗膜の乾燥処理を行ない、その後ベースフィルムをロール状の巻取部に巻き取った場合、沸点が200℃を超えるアミンを含有した導電性インクでは、上記乾燥条件で印刷塗膜を十分に乾燥することができない。このため印刷塗膜とベースフィルム裏面側とが接着し、その後ベースフィルムを巻取部から取り出したときにセラミックシートがベースフィルムから部分的に剥離してしまう虞がある。
【0035】
そこで、本実施の形態では、沸点が200℃以下のアミンを導電性インクに添加している。
【0036】
(3)アミンの含有量
上述したようにアミンは、導電性インクの粘度上昇やゲル化を防止し、長期間に亙ってグラビア印刷に好適な所望の低粘度を維持する作用を奏する。
【0037】
しかしながら、アミンの含有量が0.5wt%未満の場合は、上述した所期の作用を発揮することができない。一方、アミンの含有量が5.0wt%を超えると、セラミックシートに含有されている有機バインダが溶解し、印刷後にセラミックシートが変形する虞がある。
【0038】
そこで、本実施の形態では、アミンの含有量を0.5〜5.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%としている。
【0039】
そして、上記アミンは、少なくとも1つ以上の3級アミン(R3N)を含んでいるのが好ましい。すなわち、アミンの塩基性は、溶媒和の影響のない状態ではN基と結合しているアルキル基(R)の嵩高さによる立体効果は影響せず、アルキル基の電子供与性による誘起効果により決定される。したがって、アミンの塩基性は3級アミン、2級アミン(R2NH)、1級アミン(RNH2)の順で低下する。
【0040】
このため、3級アミンよりも弱塩基性である1級アミンや2級アミンのみを導電性インクに添加した場合は、分散剤や樹脂成分の過剰吸着サイトを完全にはマスクしきれず、このため過剰吸着サイトが三次元的な架橋を形成し易くなって初期粘度が上昇し、架橋が形成された後に斯かる上昇した粘度でもって粘度が安定してしまう。すなわち、アミンが1級アミンや2級アミンのみを含んでいる場合は、導電性インクは比較的高粘度で安定することになる。
【0041】
これに対し3級アミンは塩基性が強いため、分散剤や樹脂成分の過剰吸着サイトを十分にマスクし、導電性インクを低粘度で安定化させることができる。
【0042】
すなわち、グラビア印刷では導電性インクのインク粘度を低くする必要があることから、アミンは少なくとも1つ以上の3級アミンを含んでいるのが好ましい。
【0043】
そして、このような3級アミンとしては、例えば、トリアリルアミン((CH2CHCH2)3N)、トリプロピルアミン((C3H7)3N)、ジエチルアミノエチルアミン((C2H5)2NCH2CH2NH2)、N,N−ジイソプロピルアミノエチルアミン(((CH3)2CH)2NC2H5NH2)、テトラメチルエチレンジアミン(((CH3)2NCH2)2)、ジメチルアミノプロピルアミン((CH3)2NC3H7NH2)、ジエチルアミノプロピルアミン((C2H5)2NC3H7NH2)、3−テトラメチルアミノプロピルアミン((CH3)4N(CH2)3NH2)、ペンタメチルジエチレントリアミン((CH2)5N(CH2CH2NH2)2)等を使用することができる。
【0044】
また、卑金属材料としては、特に限定されないが、グラビア印刷における導電成分として好適に機能するものとして、Ni、Cu、又はこれらの合金の中から選択された少なくとも1種以上を含むのが好ましい。
【0045】
さらに、有機ビヒクル中の溶剤成分についても、特に限定されることはなく、トルエン、キシレン等の低沸点溶剤や、イソプロピルアルコール等の低炭素数のアルコール類、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、ターピネオール等のテルペン系溶剤を適宜使用することができる。
【0046】
また、分散剤についても、特に限定されることはなく、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の高分子分散剤等を適宜使用することができる。
【0047】
次に、上記導電性インクを使用して製造された積層セラミック電子部品について説明する。
【0048】
図1は上記積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。
【0049】
該積層セラミックコンデンサは、BaTiO3を主成分とする誘電体材料からなるセラミック焼結体1に内部電極(内部導体)2(2a〜2f)が埋設されると共に、該セラミック焼結体の両端部には外部電極3a、3bが形成され、さらに該外部電極3a、3bの表面にはめっき皮膜4a、4bが形成されている。
【0050】
各内部電極2a〜2fは積層方向に並設されると共に、内部電極2a、2c、2eは外部電極3aと電気的に接続され、内部電極2b、2d、2fは外部電極3bと電気的に接続されている。そして、内部電極2a、2c、2eと内部電極2b、2d、2fとの対向面間で静電容量を形成している。
【0051】
次に、上記積層型セラミックコンデンサの製造方法を説明する。
【0052】
まず、導電性インクを以下の手順で作製する。
【0053】
すなわち、エチルセルロース等の樹脂成分とトルエンやキシレン等の溶剤の配合比率が、例えば1:9となるように調製して混合し、有機ビヒクルを作製する。次いで、該有機ビヒクル、Ni、Cu等の導電性粒子及び分散剤が所定配合比(例えば、有機ビヒクル:導電性粒子:分散剤=40:55:5)となるように秤量し、該秤量物をボールミルに投入して混合し、均一に分散させ、分散ペーストを作製する。
【0054】
次いで、沸点が200℃以下の少なくと1種以上の3級アミンを含むアミンを前記分散性ペーストに添加して混合し、アミンの含有量が0.5〜5wt%の導電性インクを作製する。
【0055】
次に、BaとTiとのモル比Ba/Tiが所定比となるように調製されたセラミックスラリーに対し、ドクターブレード法等で成形加工を施し、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のベースフィルム上にBaTiO3を主成分とするセラミックシートを作製する。
【0056】
次いで、前記導電性インクを使用して前記セラミックシートにグラビア印刷を施し、所定パターンの印刷塗膜を有するセラミックシートを作製する。
【0057】
尚、グラビア印刷工程では、導電性インクが塗布されたセラミックシートは乾燥炉に搬送されて乾燥処理が施されるが、本実施の形態では乾燥炉の温度が100℃未満、乾燥時間が15秒以下となるように印刷速度等が設定されている。
【0058】
次に、印刷塗膜の形成されたセラミックシートと印刷塗膜の形成されていないセラミックシートとを適宜積層して積層体を形成し、該積層体に対し所定温度で焼成処理を施し、内部電極(内部導体)2が埋設されたセラミック焼結体1を作製する。
【0059】
そしてこの後、Cu等の導電性粒子を含有した導電性ペーストを使用し、セラミック焼結体の両端部に前記導電性ペーストを塗布した後、焼付処理を施して外部電極3a、3bを作製し、次いで、無電解めっき或いは電解めっきを適宜施し、該外部電極3a、3bの表面にSn、やNi、はんだ等からなるめっき皮膜4a、4bを作製し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0060】
このように本実施の形態では、導電性インクが、少なくとも1つ以上の3級アミンを含むアミンを0.5〜5.0wt%含有しているので、該導電性インクは長期間に亙って低粘度を維持することができる。
【0061】
しかも、アミンの沸点が200℃以下であるので、乾燥温度が100℃未満の低温かつ乾燥時間も15秒以下の短時間で乾燥処理を行なっても、ベースフィルムの伸びもなくセラミックシート上に印刷塗膜が形成され、また、グラビア印刷工程でロール状に巻き取られたベースフィルムの裏面と印刷塗膜とが接着するのを回避することができ、所望の高精度で高品質な印刷処理を迅速に行うことができる。
【0062】
そしてこれにより、内部電極の形状パターン精度や印刷厚み精度が良好な多層化・薄層化された積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0063】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることはない。上記実施の形態では、セラミック材料としてBaTiO3を使用しているが、PbZrO3等その他の誘電体材料や、絶縁体材料、磁性体材料、或いは半導体材料を使用した場合も同様であり、まためっき膜4a、4bについても1層に限定されることはなく2層以上の多層皮膜であっても本発明の目的達成に何ら影響を及ぼすものでないことはいうまでもない。
【0064】
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0065】
(第1の実施例)
まず、キシレン(溶剤)90重量部にエチルセルロース樹脂粉末(有機バインダ)10重量部を添加し、攪拌機により均一混合して有機ビヒクルを作製した。
【0066】
次いで、該有機ビヒクル40重量部、ポリアクリル酸−ポリアクリル酸エステル系の高分子分散剤5重量部、及び平均粒径0.5μmのNi粉末55重量部を混合し、ボールミルを用いて均一に分散させ、分散ペーストを作製した。
【0067】
次いで、沸点170℃のN,N−ジイソプロピルアミノエチルアミン(以下、「DIPAEA」という)の含有量が0.5、3.0、5.0wt%となるように、該DIPAEAを分散ペーストに添加し、実施例1〜3の導電性インクを作製した。
【0068】
また、上記Ni粉末に代えて平均粒径0.8μmのCu粉末を使用した分散ペーストを作製し、上記DIPAEAの含有量が3.0wt%となるように、該DIPAEAを分散ペーストに添加した実施例4の導電性インクを作製した。
【0069】
さらに、本発明者らは、比較例1の導電性インクとしてDIPAEAが含まれていない分散ペーストを用意し、また、DIPAEAを0.1wt%含有した比較例2の導電性インクを作製した。
【0070】
次に、各実施例及び比較例の初期粘度ηoと30日経過後粘度ηとを測定し、数式(1)に基づいて粘度変化率Δηを算出した。
【0071】
Δη={(η−ηo)/ηo}×100 …(1)
尚、初期粘度ηo及び30日経過後粘度ηは、株式会社トキメック社製のE型粘度計を使用し、温度25℃、回転数0.833s−1(50rpm)で測定した。
【0072】
平滑な印刷塗膜を得るためには粘度が1000mPa・s未満である必要があり、安定した低粘度を維持する観点からは粘度変化率Δηが±30%以下が要求されることから、30日経過後粘度ηが1000mPa・s未満で、かつ粘度粘度変化率Δηが±30%を評価基準として判定した。
【0073】
表1はその測定結果を示している。
【0074】
【表1】
この表1から明らかなように、比較例1は初期粘度ηoが320mPa・sと低いものの、アミンが全く添加されていないため、30日経過後粘度ηが1000mPa・sを超え、低粘度を維持することができないことが分かった。
【0075】
また、比較例2も初期粘度ηoは310mPa・sと低いが、DIPAEAの含有量が0.1wt%と少ないため、30日経過後粘度ηが950mPa・sと高く、粘度変化率Δηが206%となり、粘度が経時的に大幅に上昇し、低粘度を維持することができないことが分かった。
【0076】
これに対し実施例1〜4は、初期粘度ηoが200〜300mPa・sと低く、かつ粘度変化率Δηも−10〜30%と小さく、良好なインク特性を有することが確認された。
【0077】
(第2の実施例)
まず、第1の実施例の実施例3と同一の導電性インクを用意した(実施例11)。
【0078】
次いで、沸点145℃のジエチルアミノエチルアミン(以下、「DEAEA」という)の含有量が5.0wt%となるように、第1の実施例と同様の分散ペーストにDEAEAを添加し、実施例12の導電性インクを作製した。
【0079】
さらに、沸点210℃のN、N、N’、N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン((CH3)2N(CH2)6N(CH3)2;以下、「TMHMDA」という)の含有量が5.0wt%となるように、第1の実施例と同様の分散ペーストにTMHMDAを添加し、比較例11の導電性インクを作製した。
【0080】
次に、第1の実施例と同様の方法・手順で、各実施例及び比較例の初期粘度ηoと30日経過後粘度ηを測定し、インク特性を評価した。
【0081】
表2はその測定結果である。
【0082】
【表2】
この表2から明らかなように、実施例11、12及び比較例11のいずれも3級アミンが添加されているため、初期粘度ηoが180〜220mPa・sであり、また30日経過後粘度ηが160〜210はmPa・sであり、粘度変化率Δηも−11〜15%と小さく、長期間に亙って低粘度を維持できることが分かる。
【0083】
次に、PETからなるベースフィルム(PETフィルム)上で厚み10μmに成形されたBaTiO3系セラミックシートを用意した。
【0084】
次いで、実施例11、12の導電性インクを使用し、印刷速度を5m/分、15m/分、25m/分に設定してセラミックシート上でグラビア印刷を施し、その後乾燥温度を90℃に設定し、乾燥時間16秒、5.3秒、3.2秒でそれぞれ乾燥処理を行なった。
【0085】
また、比較例11の導電性インクについても、実施例11、12と略同様、印刷速度を5m/分、15m/分、25m/分でセラミックシートにグラビア印刷を施し、その後乾燥温度90〜150℃に設定し、乾燥時間16秒、5.3秒、3.2秒でそれぞれ乾燥処理を行なった。
【0086】
尚、グラビア版は、約1mm×4mmのパターンが長方形上に多数配置されたものを用意し、該グラビア版のセルの深さを調整して印刷塗膜の膜厚が金属換算で0.8μmになるように設定し、グラビア印刷を行った。
【0087】
次に、印刷塗膜が形成されたセラミックシートを、PETフィルムと共にロール状に巻き取り、その後、取り出し処理を行い、セラミックシートのPETフィルムからの剥離(シート剥離)の有無を確認した。
【0088】
また、印刷塗膜の形状寸法を測定し、PETフィルムに伸びが生じているか否かを確認した。そして、印刷塗膜の形状が所望形状よりも100μm以上のずれている場合にPETフィルムの伸びが生じていると判断した。
【0089】
表3はその測定結果を示している。
【0090】
【表3】
この表3から明らかなように、沸点が210℃のTMHMDAを導電性インクに添加した比較例11は、乾燥温度を90℃にした場合、乾燥時間を16秒と長くするとシート剥離の発生を回避することが可能となるが、印刷速度が5m/分と遅く、グラビア印刷の長所である高速印刷による高い生産性を確保することができない。
【0091】
さらに、この比較例11では、印刷速度を15m/分、及び20m/分に上昇させて乾燥時間を5.3秒又は3.2秒と短くした場合、乾燥温度が90〜100℃の低温では乾燥不良となってシート剥離が生じ、乾燥温度を150℃に上昇させたときは乾燥温度が高すぎるため、PETフィルムに伸びが生じることが分かった。
【0092】
これに対し実施例11は沸点170℃のDIPAEA、実施例12は沸点145℃のDEAEAを含有した導電性インクを使用しているので、乾燥時間が3.2秒程度の短時間であっても90℃の低い乾燥温度で印刷塗膜を乾燥させることができ、その結果シート剥離やPETフィルムの伸び等の不具合が生じるのを回避できることが確認された。
【0093】
すなわち、表2及び表3から明らかなように、実施例11、12及び比較例11のいずれにおいても、導電性インクに5wt%の3級アミンが含有されているため、長期間に亙って低粘度を維持することはできるが、比較例11は3級アミン(TMHMDA)の沸点が210℃と高いため、低温かつ短時間での乾燥処理ではシート剥離が生じ、乾燥温度を150℃の高温にすると乾燥時間を3.2秒程度に短くしてもPETフィルムに伸びが生じることが分かる。
【0094】
これに対し実施例11、12は、沸点がそれぞれ170℃、145℃の3級アミン(DIPAEA、DEAEA)を使用して印刷塗膜を形成しているので、乾燥温度100℃以下の低温かつ乾燥時間15秒以下の短時間で乾燥処理を行ってもシート剥離やPETフィルムに伸びが生じないことが確認された。
【0095】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る導電性インクは、乾燥温度100℃未満及び乾燥時間15秒以下の少なくとも一方を充足する印刷塗膜乾燥条件下で使用されるグラビア印刷用導電性インクであって、少なくとも卑金属材料と、有機ビヒクルと、分散剤と、沸点200℃以下のアミンとを含有し、前記アミンの含有量が、重量%で0.5〜5.0%であるので、長期間に亙って低粘度を維持することができると共に、グラビア印刷後に乾燥温度100℃未満の低温や乾燥時間15秒以下の乾燥条件で乾燥を行なっても、ベースフィルムの伸びが生じることもなくベースフィルムがセラミックシートから剥離するのを回避することができ、所望の高精度で高品質な印刷処理を迅速に行なうことができる。
【0096】
また、前記アミンとして、少なくとも1つ以上の3級アミンを含むことにより、分散剤や有機ビヒクル中の樹脂成分の過剰吸着サイトを効果的にマスクして、より低粘度で性状の安定した導電性インクを得ることができる。
【0097】
また、Ni、Cu、又はこれらの合金の中から選択された少なくとも1種以上の卑金属材料を導電性粉末材料として使用することにより、AgやPd等の貴金属材料を使用する必要もなく、低コストで生産性に優れたグラビア印刷が可能な導電性インクを得ることができる。
【0098】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、セラミック焼結体に内部導体が埋設された積層セラミック電子部品であって、前記内部導体が、上記導電性インクを使用して形成されているので、多層化、薄層化されても内部導体の形状パターン精度や印刷厚み精度の良好な積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性インクを使用して製造された積層セラミック電子部品の一実施の形態としての積層セラミックコンデンサの断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック焼結体
2 内部電極(内部導体)
【発明の属する技術分野】
本発明はグラビア印刷用導電性インク、及び積層セラミック電子部品に関し、より詳しくは積層セラミック電子部品の内部導体形成に使用されるグラビア印刷用導電性インク、及び該グラビア印刷用導電性インクを使用して製造された積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品は、以下の方法で製造されている。
【0003】
すなわち、所定寸法に成形されたセラミックグリーンシート(以下、「セラミックシート」という)の表面に導電性ペーストをスクリーン印刷し、その後、該導電性ペーストが印刷されたセラミックシートと前記導電性ペーストの印刷されていないセラミックシートとを適宜積層してセラミック積層体を形成し、次いで、該セラミック積層体に焼成処理を施してセラミック焼結体を形成し、その後、該セラミック焼結体の表面に外部電極を形成し、これにより積層セラミック電子部品が製造される。
【0004】
しかしながら、近年、この種の積層セラミック電子部品では、セラミック層の薄層化、多層化が進んでおり、スクリーン印刷法で内部導体を形成した場合は、原理的に印刷精度や印刷厚みの精度を向上させるには限界があることから、より高精度で生産性にも優れたグラビア印刷法により、内部導体を形成する方法が研究・開発されている。
【0005】
すなわち、グラビア印刷用導電性インク(以下、単に「導電性インク」という)としては、例えば、金属粉末100重量部に対して、樹脂が1〜15重量部、有機溶剤が20〜150重量部、粘度は1Pa・s(10ポアズ)以下で10μm以上の凝集体が除去されたものが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、グラビア印刷を利用した積層電子部品の製造方法としては、導電性塗料をセラミックシート上にグラビア印刷した後、該導電性塗料が未乾燥状態である間に磁界を印加し、その後導電性塗料を乾燥させ複数枚積層した後、加圧、圧着して所定形状に切断し、焼成する方法が提案されている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−335167号公報
【特許文献2】
特開平8−316090号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、グラビア印刷で良好な塗膜を得るためには、導電性インクの粘度を低くする必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1では、導電性インクに含有される金属粉末として粒径1μm以下の微細な導電性粉末を使用した場合、該導電性インクに含有される分散剤や樹脂成分が、複数の導電性粉末粒子と三次元的な架橋を形成し易くなる。そして、このような架橋の形成が経時的に進行すると導電性インクの粘度が上昇したり導電性インクがゲル化し、その結果、所謂印刷カスレ等が発生して印刷塗膜の品質低下を招来するという問題が生じる。
【0010】
また、特許文献2は、未乾燥状態である間に磁界を印加することにより、磁界方向を変え、これによりムラのない印刷厚みを有する積層電子部品を得ようとしたものであるが、グラビア印刷の塗膜品質に最も大きな影響を及ぼす導電性インクの特性には何ら触れられていない。
【0011】
一方、グラビア印刷では、一般に、印刷部で被印刷物にグラビア印刷を施した後、該被印刷物をロール状の巻取部に巻回収容するため、印刷部と巻取部との搬送路中に乾燥炉を介装し、印刷塗膜を乾燥させる必要がある。
【0012】
そして、生産性を向上させるべく印刷速度を高速化させた場合、被印刷物が乾燥炉中を通過する時間、すなわち乾燥時間が必然的に短くなるため、導電性インクには短時間で乾燥可能な速乾性が要求される。
【0013】
すなわち、印刷塗膜の乾燥が不十分な場合、巻取部では完全に乾燥していない未乾燥の印刷塗膜がベースフィルムの裏面側と接着してしまうため、その後ベースフィルムを巻取部から取り出すときにセラミックシートがベースフィルムから部分的に剥離し、後工程で行う積層加工に支障を来たす虞がある。このため、導電性インクには、短時間の乾燥処理で印刷塗膜が完全に乾燥するような速乾性が要求される。
【0014】
印刷塗膜を短時間で乾燥させる方策としては、乾燥炉の乾燥温度を高くすることが考えられる。
【0015】
しかしながら、乾燥炉の乾燥温度を高くすると、印刷部でベースフィルムに高テンションが負荷されることもあってベースフィルムが伸び易くなり、このため内部電極の形状精度が低下し、静電容量等の電気特性にバラツキが生じる虞がある。
【0016】
また、従来のスクリーン印刷で使用される導電性ペーストでは、経時的な粘度上昇やゲル化を防止するために、各種界面活性剤が添加されているが、グラビア印刷に使用される導電性インクに界面活性剤を添加すると、乾燥性が悪化し、このため上述と同様、印刷塗膜とベースフィルムの裏面とが接着してしまい、積層工程に支障を来たす虞がある。
【0017】
すなわち、この種の導電性インクでは、形状精度を損なうことなく生産性向上を図るために、低温・短時間で印刷塗膜を乾燥させることが必要となる。
【0018】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、長期間に亙って低粘度を維持することができ、しかも低温・短時間での塗膜乾燥条件下で所望の乾燥処理を行なうことのできる導電性インク、及び該導電性インクを使用して製造された積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究した結果、卑金属材料、有機ビヒクル、及び分散剤に加え、沸点200℃以下のアミンを0.5〜5.0重量%(以下、「wt%」という)含有した導電性インクを使用してグラビア印刷を行うことにより、インク粘度が経時的に上昇することなく導電性インクを低粘度で安定させることができ、また、乾燥温度100℃未満の低温や乾燥時間15秒以下の短時間での乾燥条件で前記導電性インクを使用してもセラミックシートがベースフィルムから剥離したりベースフィルムが伸びてしまうのを回避するのことができるという知見を得た。
【0020】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る導電性インクは、乾燥温度100℃未満及び乾燥時間15秒以下の少なくとも一方の印刷塗膜乾燥条件で使用されるグラビア印刷用導電性インクであって、少なくとも卑金属材料と、有機ビヒクルと、分散剤と、沸点200℃以下のアミンとを含有し、前記アミンの含有量が、重量%で0.5〜5.0%であることを特徴としている。
【0021】
また、初期粘度を低くし、導電性インクを低粘度で長期間安定させるためには、アミンとして3級アミンを使用するのが好ましい。
【0022】
そこで、本発明の導電性インクは、前記アミンが、少なくとも1種以上の3級アミンを含んでいることを特徴としている。
【0023】
また、前記卑金属材料としては、導電成分として優れた機能を発揮するNi、Cu、又はこれらの合金の中から選択された少なくとも1種以上を使用するのが好ましい。
【0024】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、セラミック焼結体に内部導体が埋設された積層セラミック電子部品であって、前記内部導体が、上記導電性インクを使用して形成されていることを特徴としている。
【0025】
上記積層セラミック電子部品によれば、上記導電性インクを使用して内部導体が形成されているので、内部導体の形状パターン精度や印刷厚み精度が良好な積層セラミック電子部品を容易に得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
【0027】
本発明の一実施の形態としての導電性インクは、粉末状の卑金属材料、有機ビヒクル、及び分散剤に加え、沸点200℃以下のアミンが0.5〜5.0wt%含有されている。そして、これによりインク粘度が長期的に安定した導電性インクを得ることができる。しかも、グラビア印刷後に乾燥温度100℃未満の低温や乾燥時間15秒以下の短時間で印刷塗膜の乾燥処理を行い、その後ベースフィルムをロール状に巻き取っても、ベースフィルムが伸びることもなく印刷塗膜とベースフィルムの裏面とが接着してしまうのを回避することができる。
【0028】
以下、沸点200℃以下のアミンを導電性インクに0.5〜5.0重量%含有させた理由について具体的に詳述する。
【0029】
(1)アミンを添加する理由
導電性粉末として用いられるNiやCu等の卑金属材料は、AgやPd等の貴金属材料よりも酸化しやすく、これら卑金属材料の表面は酸化物層で被覆されている。そして、前記酸化物層は、大気中の水分等と反応して一部は水酸化物となり、したがって卑金属材料の表面は水酸基(−OH)を有している。
【0030】
また、導電性インクに含有される分散剤や、有機ビヒクル中の樹脂成分は、その分子鎖中に多数の吸着サイト、例えば水酸基(−OH)やカルボキシル基(−COOH)を有している。そして、これら多数の吸着サイトのうち、一部の吸着サイトは、酸−塩基相互作用や水素結合力により、卑金属材料表面の水酸基に吸着し、該卑金属材料の分散安定性に寄与する。
【0031】
しかしながら、前記多数の吸着サイトのうち、卑金属材料への吸着に寄与しなかったその余の吸着サイト(以下、この吸着サイトを「過剰吸着サイト」という)は、単一粒子のみならず、経時的に複数の粒子と三次元的な架橋を形成し易く、このような架橋の形成が進行するとインク粘度の上昇やゲル化が生じる。
【0032】
そこで、本実施の形態では、導電性インクにアミンを添加することにより、分散剤や樹脂成分の過剰吸着サイトをマスクさせ、導電性粉末としての卑金属材料の三次元的な架橋を防止して長期間に亙って粘度を安定化させ、これにより導電性インクの粘度上昇やゲル化を防いでいる。
【0033】
(2)アミンの沸点
沸点が200℃を超えるアミンを導電性インクに添加しても粘度自体は経時的に安定する。
【0034】
しかしながら、乾燥温度100℃未満の低温、或いは乾燥時間15秒以下の短時間で印刷塗膜の乾燥処理を行ない、その後ベースフィルムをロール状の巻取部に巻き取った場合、沸点が200℃を超えるアミンを含有した導電性インクでは、上記乾燥条件で印刷塗膜を十分に乾燥することができない。このため印刷塗膜とベースフィルム裏面側とが接着し、その後ベースフィルムを巻取部から取り出したときにセラミックシートがベースフィルムから部分的に剥離してしまう虞がある。
【0035】
そこで、本実施の形態では、沸点が200℃以下のアミンを導電性インクに添加している。
【0036】
(3)アミンの含有量
上述したようにアミンは、導電性インクの粘度上昇やゲル化を防止し、長期間に亙ってグラビア印刷に好適な所望の低粘度を維持する作用を奏する。
【0037】
しかしながら、アミンの含有量が0.5wt%未満の場合は、上述した所期の作用を発揮することができない。一方、アミンの含有量が5.0wt%を超えると、セラミックシートに含有されている有機バインダが溶解し、印刷後にセラミックシートが変形する虞がある。
【0038】
そこで、本実施の形態では、アミンの含有量を0.5〜5.0wt%、好ましくは1.0〜5.0wt%としている。
【0039】
そして、上記アミンは、少なくとも1つ以上の3級アミン(R3N)を含んでいるのが好ましい。すなわち、アミンの塩基性は、溶媒和の影響のない状態ではN基と結合しているアルキル基(R)の嵩高さによる立体効果は影響せず、アルキル基の電子供与性による誘起効果により決定される。したがって、アミンの塩基性は3級アミン、2級アミン(R2NH)、1級アミン(RNH2)の順で低下する。
【0040】
このため、3級アミンよりも弱塩基性である1級アミンや2級アミンのみを導電性インクに添加した場合は、分散剤や樹脂成分の過剰吸着サイトを完全にはマスクしきれず、このため過剰吸着サイトが三次元的な架橋を形成し易くなって初期粘度が上昇し、架橋が形成された後に斯かる上昇した粘度でもって粘度が安定してしまう。すなわち、アミンが1級アミンや2級アミンのみを含んでいる場合は、導電性インクは比較的高粘度で安定することになる。
【0041】
これに対し3級アミンは塩基性が強いため、分散剤や樹脂成分の過剰吸着サイトを十分にマスクし、導電性インクを低粘度で安定化させることができる。
【0042】
すなわち、グラビア印刷では導電性インクのインク粘度を低くする必要があることから、アミンは少なくとも1つ以上の3級アミンを含んでいるのが好ましい。
【0043】
そして、このような3級アミンとしては、例えば、トリアリルアミン((CH2CHCH2)3N)、トリプロピルアミン((C3H7)3N)、ジエチルアミノエチルアミン((C2H5)2NCH2CH2NH2)、N,N−ジイソプロピルアミノエチルアミン(((CH3)2CH)2NC2H5NH2)、テトラメチルエチレンジアミン(((CH3)2NCH2)2)、ジメチルアミノプロピルアミン((CH3)2NC3H7NH2)、ジエチルアミノプロピルアミン((C2H5)2NC3H7NH2)、3−テトラメチルアミノプロピルアミン((CH3)4N(CH2)3NH2)、ペンタメチルジエチレントリアミン((CH2)5N(CH2CH2NH2)2)等を使用することができる。
【0044】
また、卑金属材料としては、特に限定されないが、グラビア印刷における導電成分として好適に機能するものとして、Ni、Cu、又はこれらの合金の中から選択された少なくとも1種以上を含むのが好ましい。
【0045】
さらに、有機ビヒクル中の溶剤成分についても、特に限定されることはなく、トルエン、キシレン等の低沸点溶剤や、イソプロピルアルコール等の低炭素数のアルコール類、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、ターピネオール等のテルペン系溶剤を適宜使用することができる。
【0046】
また、分散剤についても、特に限定されることはなく、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸、ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の高分子分散剤等を適宜使用することができる。
【0047】
次に、上記導電性インクを使用して製造された積層セラミック電子部品について説明する。
【0048】
図1は上記積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサの一実施の形態を模式的に示した断面図である。
【0049】
該積層セラミックコンデンサは、BaTiO3を主成分とする誘電体材料からなるセラミック焼結体1に内部電極(内部導体)2(2a〜2f)が埋設されると共に、該セラミック焼結体の両端部には外部電極3a、3bが形成され、さらに該外部電極3a、3bの表面にはめっき皮膜4a、4bが形成されている。
【0050】
各内部電極2a〜2fは積層方向に並設されると共に、内部電極2a、2c、2eは外部電極3aと電気的に接続され、内部電極2b、2d、2fは外部電極3bと電気的に接続されている。そして、内部電極2a、2c、2eと内部電極2b、2d、2fとの対向面間で静電容量を形成している。
【0051】
次に、上記積層型セラミックコンデンサの製造方法を説明する。
【0052】
まず、導電性インクを以下の手順で作製する。
【0053】
すなわち、エチルセルロース等の樹脂成分とトルエンやキシレン等の溶剤の配合比率が、例えば1:9となるように調製して混合し、有機ビヒクルを作製する。次いで、該有機ビヒクル、Ni、Cu等の導電性粒子及び分散剤が所定配合比(例えば、有機ビヒクル:導電性粒子:分散剤=40:55:5)となるように秤量し、該秤量物をボールミルに投入して混合し、均一に分散させ、分散ペーストを作製する。
【0054】
次いで、沸点が200℃以下の少なくと1種以上の3級アミンを含むアミンを前記分散性ペーストに添加して混合し、アミンの含有量が0.5〜5wt%の導電性インクを作製する。
【0055】
次に、BaとTiとのモル比Ba/Tiが所定比となるように調製されたセラミックスラリーに対し、ドクターブレード法等で成形加工を施し、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のベースフィルム上にBaTiO3を主成分とするセラミックシートを作製する。
【0056】
次いで、前記導電性インクを使用して前記セラミックシートにグラビア印刷を施し、所定パターンの印刷塗膜を有するセラミックシートを作製する。
【0057】
尚、グラビア印刷工程では、導電性インクが塗布されたセラミックシートは乾燥炉に搬送されて乾燥処理が施されるが、本実施の形態では乾燥炉の温度が100℃未満、乾燥時間が15秒以下となるように印刷速度等が設定されている。
【0058】
次に、印刷塗膜の形成されたセラミックシートと印刷塗膜の形成されていないセラミックシートとを適宜積層して積層体を形成し、該積層体に対し所定温度で焼成処理を施し、内部電極(内部導体)2が埋設されたセラミック焼結体1を作製する。
【0059】
そしてこの後、Cu等の導電性粒子を含有した導電性ペーストを使用し、セラミック焼結体の両端部に前記導電性ペーストを塗布した後、焼付処理を施して外部電極3a、3bを作製し、次いで、無電解めっき或いは電解めっきを適宜施し、該外部電極3a、3bの表面にSn、やNi、はんだ等からなるめっき皮膜4a、4bを作製し、これにより積層セラミックコンデンサが製造される。
【0060】
このように本実施の形態では、導電性インクが、少なくとも1つ以上の3級アミンを含むアミンを0.5〜5.0wt%含有しているので、該導電性インクは長期間に亙って低粘度を維持することができる。
【0061】
しかも、アミンの沸点が200℃以下であるので、乾燥温度が100℃未満の低温かつ乾燥時間も15秒以下の短時間で乾燥処理を行なっても、ベースフィルムの伸びもなくセラミックシート上に印刷塗膜が形成され、また、グラビア印刷工程でロール状に巻き取られたベースフィルムの裏面と印刷塗膜とが接着するのを回避することができ、所望の高精度で高品質な印刷処理を迅速に行うことができる。
【0062】
そしてこれにより、内部電極の形状パターン精度や印刷厚み精度が良好な多層化・薄層化された積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0063】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されることはない。上記実施の形態では、セラミック材料としてBaTiO3を使用しているが、PbZrO3等その他の誘電体材料や、絶縁体材料、磁性体材料、或いは半導体材料を使用した場合も同様であり、まためっき膜4a、4bについても1層に限定されることはなく2層以上の多層皮膜であっても本発明の目的達成に何ら影響を及ぼすものでないことはいうまでもない。
【0064】
【実施例】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0065】
(第1の実施例)
まず、キシレン(溶剤)90重量部にエチルセルロース樹脂粉末(有機バインダ)10重量部を添加し、攪拌機により均一混合して有機ビヒクルを作製した。
【0066】
次いで、該有機ビヒクル40重量部、ポリアクリル酸−ポリアクリル酸エステル系の高分子分散剤5重量部、及び平均粒径0.5μmのNi粉末55重量部を混合し、ボールミルを用いて均一に分散させ、分散ペーストを作製した。
【0067】
次いで、沸点170℃のN,N−ジイソプロピルアミノエチルアミン(以下、「DIPAEA」という)の含有量が0.5、3.0、5.0wt%となるように、該DIPAEAを分散ペーストに添加し、実施例1〜3の導電性インクを作製した。
【0068】
また、上記Ni粉末に代えて平均粒径0.8μmのCu粉末を使用した分散ペーストを作製し、上記DIPAEAの含有量が3.0wt%となるように、該DIPAEAを分散ペーストに添加した実施例4の導電性インクを作製した。
【0069】
さらに、本発明者らは、比較例1の導電性インクとしてDIPAEAが含まれていない分散ペーストを用意し、また、DIPAEAを0.1wt%含有した比較例2の導電性インクを作製した。
【0070】
次に、各実施例及び比較例の初期粘度ηoと30日経過後粘度ηとを測定し、数式(1)に基づいて粘度変化率Δηを算出した。
【0071】
Δη={(η−ηo)/ηo}×100 …(1)
尚、初期粘度ηo及び30日経過後粘度ηは、株式会社トキメック社製のE型粘度計を使用し、温度25℃、回転数0.833s−1(50rpm)で測定した。
【0072】
平滑な印刷塗膜を得るためには粘度が1000mPa・s未満である必要があり、安定した低粘度を維持する観点からは粘度変化率Δηが±30%以下が要求されることから、30日経過後粘度ηが1000mPa・s未満で、かつ粘度粘度変化率Δηが±30%を評価基準として判定した。
【0073】
表1はその測定結果を示している。
【0074】
【表1】
この表1から明らかなように、比較例1は初期粘度ηoが320mPa・sと低いものの、アミンが全く添加されていないため、30日経過後粘度ηが1000mPa・sを超え、低粘度を維持することができないことが分かった。
【0075】
また、比較例2も初期粘度ηoは310mPa・sと低いが、DIPAEAの含有量が0.1wt%と少ないため、30日経過後粘度ηが950mPa・sと高く、粘度変化率Δηが206%となり、粘度が経時的に大幅に上昇し、低粘度を維持することができないことが分かった。
【0076】
これに対し実施例1〜4は、初期粘度ηoが200〜300mPa・sと低く、かつ粘度変化率Δηも−10〜30%と小さく、良好なインク特性を有することが確認された。
【0077】
(第2の実施例)
まず、第1の実施例の実施例3と同一の導電性インクを用意した(実施例11)。
【0078】
次いで、沸点145℃のジエチルアミノエチルアミン(以下、「DEAEA」という)の含有量が5.0wt%となるように、第1の実施例と同様の分散ペーストにDEAEAを添加し、実施例12の導電性インクを作製した。
【0079】
さらに、沸点210℃のN、N、N’、N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン((CH3)2N(CH2)6N(CH3)2;以下、「TMHMDA」という)の含有量が5.0wt%となるように、第1の実施例と同様の分散ペーストにTMHMDAを添加し、比較例11の導電性インクを作製した。
【0080】
次に、第1の実施例と同様の方法・手順で、各実施例及び比較例の初期粘度ηoと30日経過後粘度ηを測定し、インク特性を評価した。
【0081】
表2はその測定結果である。
【0082】
【表2】
この表2から明らかなように、実施例11、12及び比較例11のいずれも3級アミンが添加されているため、初期粘度ηoが180〜220mPa・sであり、また30日経過後粘度ηが160〜210はmPa・sであり、粘度変化率Δηも−11〜15%と小さく、長期間に亙って低粘度を維持できることが分かる。
【0083】
次に、PETからなるベースフィルム(PETフィルム)上で厚み10μmに成形されたBaTiO3系セラミックシートを用意した。
【0084】
次いで、実施例11、12の導電性インクを使用し、印刷速度を5m/分、15m/分、25m/分に設定してセラミックシート上でグラビア印刷を施し、その後乾燥温度を90℃に設定し、乾燥時間16秒、5.3秒、3.2秒でそれぞれ乾燥処理を行なった。
【0085】
また、比較例11の導電性インクについても、実施例11、12と略同様、印刷速度を5m/分、15m/分、25m/分でセラミックシートにグラビア印刷を施し、その後乾燥温度90〜150℃に設定し、乾燥時間16秒、5.3秒、3.2秒でそれぞれ乾燥処理を行なった。
【0086】
尚、グラビア版は、約1mm×4mmのパターンが長方形上に多数配置されたものを用意し、該グラビア版のセルの深さを調整して印刷塗膜の膜厚が金属換算で0.8μmになるように設定し、グラビア印刷を行った。
【0087】
次に、印刷塗膜が形成されたセラミックシートを、PETフィルムと共にロール状に巻き取り、その後、取り出し処理を行い、セラミックシートのPETフィルムからの剥離(シート剥離)の有無を確認した。
【0088】
また、印刷塗膜の形状寸法を測定し、PETフィルムに伸びが生じているか否かを確認した。そして、印刷塗膜の形状が所望形状よりも100μm以上のずれている場合にPETフィルムの伸びが生じていると判断した。
【0089】
表3はその測定結果を示している。
【0090】
【表3】
この表3から明らかなように、沸点が210℃のTMHMDAを導電性インクに添加した比較例11は、乾燥温度を90℃にした場合、乾燥時間を16秒と長くするとシート剥離の発生を回避することが可能となるが、印刷速度が5m/分と遅く、グラビア印刷の長所である高速印刷による高い生産性を確保することができない。
【0091】
さらに、この比較例11では、印刷速度を15m/分、及び20m/分に上昇させて乾燥時間を5.3秒又は3.2秒と短くした場合、乾燥温度が90〜100℃の低温では乾燥不良となってシート剥離が生じ、乾燥温度を150℃に上昇させたときは乾燥温度が高すぎるため、PETフィルムに伸びが生じることが分かった。
【0092】
これに対し実施例11は沸点170℃のDIPAEA、実施例12は沸点145℃のDEAEAを含有した導電性インクを使用しているので、乾燥時間が3.2秒程度の短時間であっても90℃の低い乾燥温度で印刷塗膜を乾燥させることができ、その結果シート剥離やPETフィルムの伸び等の不具合が生じるのを回避できることが確認された。
【0093】
すなわち、表2及び表3から明らかなように、実施例11、12及び比較例11のいずれにおいても、導電性インクに5wt%の3級アミンが含有されているため、長期間に亙って低粘度を維持することはできるが、比較例11は3級アミン(TMHMDA)の沸点が210℃と高いため、低温かつ短時間での乾燥処理ではシート剥離が生じ、乾燥温度を150℃の高温にすると乾燥時間を3.2秒程度に短くしてもPETフィルムに伸びが生じることが分かる。
【0094】
これに対し実施例11、12は、沸点がそれぞれ170℃、145℃の3級アミン(DIPAEA、DEAEA)を使用して印刷塗膜を形成しているので、乾燥温度100℃以下の低温かつ乾燥時間15秒以下の短時間で乾燥処理を行ってもシート剥離やPETフィルムに伸びが生じないことが確認された。
【0095】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明に係る導電性インクは、乾燥温度100℃未満及び乾燥時間15秒以下の少なくとも一方を充足する印刷塗膜乾燥条件下で使用されるグラビア印刷用導電性インクであって、少なくとも卑金属材料と、有機ビヒクルと、分散剤と、沸点200℃以下のアミンとを含有し、前記アミンの含有量が、重量%で0.5〜5.0%であるので、長期間に亙って低粘度を維持することができると共に、グラビア印刷後に乾燥温度100℃未満の低温や乾燥時間15秒以下の乾燥条件で乾燥を行なっても、ベースフィルムの伸びが生じることもなくベースフィルムがセラミックシートから剥離するのを回避することができ、所望の高精度で高品質な印刷処理を迅速に行なうことができる。
【0096】
また、前記アミンとして、少なくとも1つ以上の3級アミンを含むことにより、分散剤や有機ビヒクル中の樹脂成分の過剰吸着サイトを効果的にマスクして、より低粘度で性状の安定した導電性インクを得ることができる。
【0097】
また、Ni、Cu、又はこれらの合金の中から選択された少なくとも1種以上の卑金属材料を導電性粉末材料として使用することにより、AgやPd等の貴金属材料を使用する必要もなく、低コストで生産性に優れたグラビア印刷が可能な導電性インクを得ることができる。
【0098】
また、本発明に係る積層セラミック電子部品は、セラミック焼結体に内部導体が埋設された積層セラミック電子部品であって、前記内部導体が、上記導電性インクを使用して形成されているので、多層化、薄層化されても内部導体の形状パターン精度や印刷厚み精度の良好な積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の導電性インクを使用して製造された積層セラミック電子部品の一実施の形態としての積層セラミックコンデンサの断面図である。
【符号の説明】
1 セラミック焼結体
2 内部電極(内部導体)
Claims (4)
- 乾燥温度100℃未満及び乾燥時間15秒以下の少なくとも一方を充足する印刷塗膜乾燥条件下で使用されるグラビア印刷用導電性インクであって、
少なくとも卑金属材料と、有機ビヒクルと、分散剤と、沸点200℃以下のアミンとを含有し、
前記アミンの含有量が、重量%で0.5〜5.0%であることを特徴とするグラビア印刷用導電性インク。 - 前記アミンは、少なくとも1種以上の3級アミンを含んでいることを特徴とする請求項1記載のグラビア印刷用導電性インク。
- 前記卑金属材料は、Ni、Cu、又はこれらの合金の中から選択された少なくとも1種以上を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のグラビア印刷用導電性インク。
- セラミック焼結体に内部導体が埋設された積層セラミック電子部品であって、
前記内部導体が、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のグラビア印刷用導電性インクを使用して形成されていることを特徴とする積層セラミック電子部品。
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2002
- 2002-12-06 JP JP2002355072A patent/JP2004182951A/ja active Pending
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