JP2004182672A - 多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】排出ガスがなく効率のよい多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法、及び、そのための閉鎖系の装置を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、多塩素化芳香族化合物及び水素化触媒を含む液相中に水素を導入する反応工程と、該反応工程から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素を回収し、水素を残すためのガス洗浄工程と、該水素中に含まれる水分を除去する脱水工程と、脱水後の水素に、反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで液相中に戻す工程とを順に繰り返し、反応完結後に反応物を蒸留して脱塩素化合物を分離回収する蒸留工程を実施するか、又は、反応工程後の反応物を蒸留して、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素を含む塔頂留分と少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含む塔底油とを得、該塔底油を反応工程に戻すことを特徴とする。また、そのための装置は閉鎖系である。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の方法は、多塩素化芳香族化合物及び水素化触媒を含む液相中に水素を導入する反応工程と、該反応工程から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素を回収し、水素を残すためのガス洗浄工程と、該水素中に含まれる水分を除去する脱水工程と、脱水後の水素に、反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで液相中に戻す工程とを順に繰り返し、反応完結後に反応物を蒸留して脱塩素化合物を分離回収する蒸留工程を実施するか、又は、反応工程後の反応物を蒸留して、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素を含む塔頂留分と少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含む塔底油とを得、該塔底油を反応工程に戻すことを特徴とする。また、そのための装置は閉鎖系である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多塩素化ビフェニル(PCB)に代表される多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理を行うための処理方法及び装置に関し、特に脱塩素化処理を行う際に装置から排気を極力抑え、また処理を安全におこなうために装置内の汚染あるいは腐食を防止することのできる処理方法及びそのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCBはかつて電気部品等に頻繁に使用されていたが、近年特に環境や生物に対して有害であることが指摘され、その回収や無害な物質への分解は急務となっている。PCBを処理する方法には高温焼却法があるが、この方法では燃焼に伴う大量のガスの放出を伴い、これらのガスもまた環境汚染や装置の腐食等の危険性を指摘されている。そのため、燃焼法に変わる処理方式として化学的な分解処理方式が提案されている。しかしながら、これらの化学処理方式の多くは反応器内に窒素ガスをパージすることで安全性を確保する方式のため、燃焼に比べて排出ガス量が少ないとは言え、分解処理中での有害な排気ガスの放出が避けられない。分解処理の過程で、水素ガス等の可燃性ガスが発生し、これらの発生ガスを反応器の外に放出しなければならないためである。
【0003】
一方、パラジウム・カーボン等の水素化触媒を用いた水素ガスによる脱塩素化反応では、生成物はビフェニル及び塩化水素ガスであり、可燃性のガス等の発生はない(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9―194401号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では、可燃性ではないものの、なおビフェニル及び塩化水素ガスが有害な排出ガスとして発生する。さらには、これらの塩化水素ガスや未反応の水素ガスの排出に伴って、反応溶媒や未反応の塩素化芳香族化合物が反応系外に漏れ出るという問題が生じていた。したがって、本発明では、このような排出ガスのない効率的な多塩素化芳香族化合物の処理方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の実情に鑑み、本発明者らは、排出ガスのない多塩素化芳香族化合物の処理方法及びそのための装置を完成させた。
すなわち、本発明の第一の態様によれば、多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相中に水素を導入する反応工程と、該反応工程から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素を回収し、水素を残すためのガス洗浄工程と、水素中に含まれる水分を除去する脱水工程と、脱水後の水素に、反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで液相中に戻す工程とを順に繰り返し、反応完結後に反応物を蒸留して脱塩素化合物を分離回収する蒸留工程を実施することを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法が提供される。
【0007】
また、本発明の第二の態様によれば、多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相中に水素を導入する反応工程と、該反応工程後の反応物を蒸留して、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素を含む塔頂留分並びに少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含む塔底油を得、該塔底油を反応工程に戻す蒸留工程と、該塔頂留分中の脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素を回収し、水素を残すためのガス洗浄工程と、水素中に含まれる水分を除去する脱水工程と、脱水後の水素に、反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで液相中に戻す工程とを順に繰り返し実施することを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法が提供される。
【0008】
また、本発明の第三の態様によれば、多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相を内部に有し、水素を導入して反応させるための反応器と、該反応器から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素から実質的に水素のみを残すための複数の塔と、水素中に含まれる水分を除去する吸湿塔と、脱水後の水素に反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで該液相中に戻す循環経路を備え、かつ、全体が閉鎖系であることを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理装置が提供される。
【0009】
また、本発明の第四の態様によれば、多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相を内部に有し、水素を導入して反応させるための反応器と、該反応器に直結して、反応物を蒸留し、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素を含む塔頂留分並びに少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含む塔底油を得、該塔底油を反応器に戻すための蒸留塔と、該塔頂留分から実質的に水素のみを残すための複数の塔と、水素中に含まれる水分を除去する吸湿塔と、脱水後の水素に反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで該液相中に戻す循環経路を備え、かつ、全体が閉鎖系であることを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理装置が提供される。
【0010】
上記従来技術の欄で述べたように、多塩素化芳香族化合物を処理する際には、多種の排出ガスが発生し、それらの有害性が問題となっている。そこで、反応により生成する塩化水素ガス及び未反応の水素ガスに同伴する反応溶媒や未反応塩素化芳香族化合物等を分離回収し、反応器から排出されるガスを実質的に水素ガスのみとすることが出来れば、このガスを反応器に戻すことにより脱塩素化処理システム中での放出ガスを一切伴わずに多塩素化芳香族化合物の処理が可能になる。
【0011】
そのため本発明では、反応器中で発生し排出されるガス、脱塩素化生成物、未反応多塩素化芳香族化合物、塩化水素ガス、未反応水素ガス等の混合ガス中から、ガス洗浄工程によって、未反応の水素ガスのみを取り出す。本発明の第一及び第三の態様では反応工程は回分式又は半回分式で行われ、この場合は排出されるガスには主に未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素が含まれる。第二及び第四の態様では反応工程は連続式で行われるため、排出されるガスは蒸留工程の塔頂留分として得られ、主に脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素が含まれる。ガス洗浄工程はさらにいくつかの段階に分けることができ、具体的には後述する発明の実施の形態で説明するが、反応器又は蒸留塔から排出されるガスから、未反応物、脱塩素化生成物及び溶媒を回収する溶剤回収工程と、それらを回収した後のガスからさらに塩化水素ガスを回収する塩化水素回収工程と、さらに残りの未反応水素ガスに含まれる水分を除く工程とに分けられる。
【0012】
特にガス洗浄工程の各段階においては、次のような手段を用いる。溶剤回収工程で、未反応の水素ガスに伴われて反応器から飛散するか又は蒸留塔から塔頂留分として得られる、未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、希釈用の溶媒等を回収するには、反応工程に用いる希釈用の溶媒と同一の溶媒を洗浄吸収液である溶剤として用いる。さらに、塩化水素回収工程では、溶剤回収工程及び反応工程で発生する塩化水素を、水及び/又はアルカリ水溶液からなる吸収液により回収する。その後、塩化水素回収工程にて水分が飽和状態となった未反応水素ガスから水分を除去するために、例えば吸着剤による水分除去工程を設ける。これらの工程を設けることにより、反応器から排出されるガスを実質的に水素ガスのみとしたうえで、反応工程に戻すことができ、閉鎖系の処理装置を実現させた。
【0013】
反応工程で用いる希釈用の溶媒は、脱塩素化生成物より揮発性が低いものを用いることが好ましい。希釈用の溶媒は、沸点が250〜400℃の間にある飽和炭化水素油を用いる。例えば、ヘキサデカン(炭素数16、沸点270℃)等の単一の炭化水素を用いてもよいが、流動パラフィンがより好適である。流動パラフィンは単一成分ではなく複数の成分が混合された油であり、入手しやすくコストの面からも好適である。また、希釈用溶媒の使用量は、分解する多塩素化芳香族化合物の重量の5倍量以上が好ましい。希釈用溶媒には、特にPCB等高粘度の多塩素化芳香族化合物を扱う場合に、その粘度を低下させ、水素化触媒の分散性を向上させる役割がある。さらに、PCBの場合には、脱塩素化反応生成物ビフェニルが融点80℃程度で室温では固体であるため、これを溶解させて扱いやすくする役割もある。蒸留工程を実施する際には、蒸留塔のボトムに常に溶媒が残った状態にしておくことが好ましいため、このような溶媒を用いて後述する反応工程の終了後に脱塩素化生成物を分離回収でき、さらに残された希釈用の溶媒は次回の反応工程での溶媒として使用することができる。
【0014】
また本発明では、反応工程が反応器中にて連続式で実施されてもよく、このときには蒸留工程を反応器の出口に接続された蒸留塔を用いて連続式で実施する。この場合には、少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含んで得られる塔底油を反応器に戻し、塔頂留分として得られる脱塩素化生成物、塩化水素、溶媒及び水素を次の溶剤回収工程へ送り出す。
【0015】
本発明で用いる水素化触媒としては、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属を、活性炭又はアルミナからなる単体に担持させたものを好ましく用いることができる。
【0016】
また、本発明において塩化水素の回収に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウム等の水溶液を用いることができる。このうち、入手しやすさや経済性の点から、水酸化ナトリウムが特に好ましい。これらアルカリの濃度は、回収する塩化水素の量に応じて適宜変化させる。例えば、塩化水素を前段で水により吸収させ、後段でアルカリ水溶液により吸収する場合には、ある程度が水によって既に回収されているため、6%程度の濃度のアルカリ水溶液を用いればよい。塩化水素をアルカリ水溶液のみで回収する場合には、装置のコンパクト化ができる、アルカリ水溶液の交換頻度が少なくて済むなどの点から濃度は高い方が好ましい。この場合には、最大50%程度までの濃度のアルカリ水溶液を選択することができる。
【0017】
上述のように、従来PCB等の多塩素化芳香族化合物は、変圧器に代表される種々の電気部品に用いられてきた。本発明の処理方法及び装置は、単なる多塩素化芳香族化合物を処理するだけでなく、それらの部品に実際に添加された多塩素化芳香族化合物を脱塩素化し分解する際にも好適である。すなわち、通常はそれらの電気部品からまず多塩素化芳香族化合物を部品に含まれる絶縁油等の他の物質と共に、多塩素化化合物がそれらの物質に含まれた状態で取り出すが、そのような他の物質ごと本発明の処理システムに投入することができる。また、電気部品等に使用されている多塩素化芳香族化合物を取り出すには、適当な油、回収油を用いるのが一般的であるが、本発明の処理方法及び装置はこのような回収油分ごと反応材料を投入して処理することもできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の典型的な実施の形態を図1及び図2を用いて説明する。
図1は反応工程が回分式又は半回分式の場合であり、PCBなどの多塩素化芳香族化合物からなる所定量の反応原料1は、比較的沸点の高い炭化水素(ヘキサデカン)などの溶媒と水素化触媒を張り込んだ攪拌槽型の反応器2に投入される。このとき、反応原料の全てを予め反応器2に投入した上で反応を開始する方式を回分式と呼び、反応原料を連続的に反応器2に所定時間内で投入する方式を半回分式と呼ぶ。常圧昇温攪拌下に循環水素13が導入される。このとき槽内では水素化触媒の存在下に多塩素化芳香族化合物の水素化脱塩素反応が進行し、脱塩素化生成物(原料化合物がPCBの場合にはビフェニル、フェニルシクロヘキサン及びビシクロヘキシル)と副生成物である塩化水素が発生する。
【0019】
次いで、脱塩素化生成物の一部、未反応多塩素化芳香族化合物の一部、希釈溶媒の一部ならびに塩化水素の大部分は未反応水素ガスに伴われて反応器から移行し、冷却器3を通過する際に脱塩素化生成物、未反応多塩素化芳香族化合物及び溶剤は回収され、液状となり冷却器3の底部から反応器2に戻る。このため、反応器2から飛散した未反応多塩素化芳香族化合物は反応器2に戻され反応器2内で再び水素化脱塩素反応を受け、未反応化合物は基本的に反応器外に排出されることなく、ほぼ完全に脱塩素化生成物に転化する。万一、冷却器3にて回収されない未反応多塩素化芳香物化合物及び脱塩素化生成物は次の溶剤回収塔4内の溶剤中を通過する際に回収される。未反応水素ガス中に残る塩化水素ガスは水あるいはアルカリ水を吸収剤とする塩化水素回収塔6にて確実に分離回収される。吸収剤に水を用いた場合には塩化水素は塩酸として回収され、アルカリ水を用いた場合は、塩として回収される。いずれの吸収剤を用いてもよいし、両者を組み合わせてもよい。
【0020】
塩化水素が分離回収された未反応水素ガスには、水分が飽和しており、冷却塔7を経由した後、これを通常の水分除去工程、例えば吸着剤を充填した吸湿塔8を通過させ水分を除去する。そのうえで、水素ガスホルダ9を経由し、水素ガスタンク10にて反応工程で消費した水素ガスとほぼ等量の補給水素14を補給し、吸湿塔11及びガスフィルタ12を通した後、循環水素13として反応器2に戻す。反応が完結した後、反応器内の液層を蒸留することにより、液層中の脱塩素化生成物を分離回収するが、この蒸留器は反応器2に直接配管にて繋がっていても良いし、あるいは反応器2から液層を抜き出した上で、個別の蒸留器にて蒸留しても良い。
【0021】
図2は、反応工程が連続式の場合であり、反応原料16である多塩素化芳香族化合物は垂直管型連続反応器17に連続的に供給され、ここで水素、溶媒及び触媒の存在下に水素化脱塩素反応を受けて脱塩素化生成物となる。反応器は図2に示されるような垂直管型反応器でなくともよいが、逆混合をできるだけ小さくして滞留時間分布を狭くするためには、槽型の反応器より管型の反応器が好ましい。反応により生成した塩化水素、脱塩素化生成物、未反応化合物、溶媒及び未反応水素は反応器内では分離されず、反応器出口から連続的に蒸留塔18の底部に供給される。蒸留塔内では、沸点の差に基づく成分の分離が行われ、塔頂部からは水素、塩化水素及び脱塩素化生成物からなる塔頂留分が取り出され、塔底部からは脱塩素化生成物、未反応化合物及び溶媒からなる塔底油が取り出される。塔頂留分は凝縮器で冷却されて、その中の脱塩素化生成物は大部分が液化し、脱塩素化物回収塔19に貯留される。
【0022】
蒸留塔において、脱塩素化生成物を分離する一方、蒸留塔の塔底油を反応器に戻すことで、未反応化合物を繰り返して水素化脱塩素反応にかけ、脱塩素化効率を上げている。溶媒には未反応化合物よりも沸点の高いものを用いるので、実質的には全量が反応器と蒸留塔底部の間を循環し、反応生成物である脱塩素化生成物すなわち反応原料がPCBの場合にはビフェニルが蒸留塔の頂部から分留される。蒸留工程から排出される塔頂留分の内、凝縮されなかったガス(塔頂ガス)は、基本的に水素及び塩化水素からなるが、若干の脱塩素化生成物も含まれる。このため、水素を反応器に戻すには、基本的に図1の場合と同様に、溶剤回収塔20、冷却塔21、塩化水素回収塔22、冷却塔23及び吸湿塔24を通過させる。さらに、図1の場合と同様に、水素ガスホルダ25を経由し、反応工程で消費した水素ガスとほぼ等量の補給水素30を水素ガスタンク26にて補給し、吸湿塔27及びガスフィルタ28を通した後、循環水素29として連続反応器17に戻す。
【0023】
【発明の効果】
以上に示されるように、本発明によれば、反応器から排出されるガス中に万一、未反応多塩素化芳香族化合物が含まれている場合でも、そのほとんどが反応器内に戻ることにより未反応多塩素化芳香族化合物は繰り返し水素化脱塩素反応を受けるため、ほぼ完全に脱塩素化生成物となるまで反応を進行させることができる。また、反応工程あるいは蒸留工程から排出されるガス中に含まれる未反応化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素が確実に分離回収される。そのため、最終的にほぼ純粋な水素ガスが回収され、これは循環し反応ガスとして再使用ができる。したがって、装置は閉鎖系とすることが可能となり、脱塩素化工程中に装置から排出されるガスはなく、環境の保全性の高い、安全な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法を実施する処理システムの一例を示す。
【図2】本発明の多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法を実施する処理システムの別の例を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、多塩素化ビフェニル(PCB)に代表される多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理を行うための処理方法及び装置に関し、特に脱塩素化処理を行う際に装置から排気を極力抑え、また処理を安全におこなうために装置内の汚染あるいは腐食を防止することのできる処理方法及びそのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
PCBはかつて電気部品等に頻繁に使用されていたが、近年特に環境や生物に対して有害であることが指摘され、その回収や無害な物質への分解は急務となっている。PCBを処理する方法には高温焼却法があるが、この方法では燃焼に伴う大量のガスの放出を伴い、これらのガスもまた環境汚染や装置の腐食等の危険性を指摘されている。そのため、燃焼法に変わる処理方式として化学的な分解処理方式が提案されている。しかしながら、これらの化学処理方式の多くは反応器内に窒素ガスをパージすることで安全性を確保する方式のため、燃焼に比べて排出ガス量が少ないとは言え、分解処理中での有害な排気ガスの放出が避けられない。分解処理の過程で、水素ガス等の可燃性ガスが発生し、これらの発生ガスを反応器の外に放出しなければならないためである。
【0003】
一方、パラジウム・カーボン等の水素化触媒を用いた水素ガスによる脱塩素化反応では、生成物はビフェニル及び塩化水素ガスであり、可燃性のガス等の発生はない(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9―194401号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では、可燃性ではないものの、なおビフェニル及び塩化水素ガスが有害な排出ガスとして発生する。さらには、これらの塩化水素ガスや未反応の水素ガスの排出に伴って、反応溶媒や未反応の塩素化芳香族化合物が反応系外に漏れ出るという問題が生じていた。したがって、本発明では、このような排出ガスのない効率的な多塩素化芳香族化合物の処理方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の実情に鑑み、本発明者らは、排出ガスのない多塩素化芳香族化合物の処理方法及びそのための装置を完成させた。
すなわち、本発明の第一の態様によれば、多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相中に水素を導入する反応工程と、該反応工程から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素を回収し、水素を残すためのガス洗浄工程と、水素中に含まれる水分を除去する脱水工程と、脱水後の水素に、反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで液相中に戻す工程とを順に繰り返し、反応完結後に反応物を蒸留して脱塩素化合物を分離回収する蒸留工程を実施することを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法が提供される。
【0007】
また、本発明の第二の態様によれば、多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相中に水素を導入する反応工程と、該反応工程後の反応物を蒸留して、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素を含む塔頂留分並びに少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含む塔底油を得、該塔底油を反応工程に戻す蒸留工程と、該塔頂留分中の脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素を回収し、水素を残すためのガス洗浄工程と、水素中に含まれる水分を除去する脱水工程と、脱水後の水素に、反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで液相中に戻す工程とを順に繰り返し実施することを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法が提供される。
【0008】
また、本発明の第三の態様によれば、多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相を内部に有し、水素を導入して反応させるための反応器と、該反応器から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素から実質的に水素のみを残すための複数の塔と、水素中に含まれる水分を除去する吸湿塔と、脱水後の水素に反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで該液相中に戻す循環経路を備え、かつ、全体が閉鎖系であることを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理装置が提供される。
【0009】
また、本発明の第四の態様によれば、多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相を内部に有し、水素を導入して反応させるための反応器と、該反応器に直結して、反応物を蒸留し、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素を含む塔頂留分並びに少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含む塔底油を得、該塔底油を反応器に戻すための蒸留塔と、該塔頂留分から実質的に水素のみを残すための複数の塔と、水素中に含まれる水分を除去する吸湿塔と、脱水後の水素に反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで該液相中に戻す循環経路を備え、かつ、全体が閉鎖系であることを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理装置が提供される。
【0010】
上記従来技術の欄で述べたように、多塩素化芳香族化合物を処理する際には、多種の排出ガスが発生し、それらの有害性が問題となっている。そこで、反応により生成する塩化水素ガス及び未反応の水素ガスに同伴する反応溶媒や未反応塩素化芳香族化合物等を分離回収し、反応器から排出されるガスを実質的に水素ガスのみとすることが出来れば、このガスを反応器に戻すことにより脱塩素化処理システム中での放出ガスを一切伴わずに多塩素化芳香族化合物の処理が可能になる。
【0011】
そのため本発明では、反応器中で発生し排出されるガス、脱塩素化生成物、未反応多塩素化芳香族化合物、塩化水素ガス、未反応水素ガス等の混合ガス中から、ガス洗浄工程によって、未反応の水素ガスのみを取り出す。本発明の第一及び第三の態様では反応工程は回分式又は半回分式で行われ、この場合は排出されるガスには主に未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素が含まれる。第二及び第四の態様では反応工程は連続式で行われるため、排出されるガスは蒸留工程の塔頂留分として得られ、主に脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素が含まれる。ガス洗浄工程はさらにいくつかの段階に分けることができ、具体的には後述する発明の実施の形態で説明するが、反応器又は蒸留塔から排出されるガスから、未反応物、脱塩素化生成物及び溶媒を回収する溶剤回収工程と、それらを回収した後のガスからさらに塩化水素ガスを回収する塩化水素回収工程と、さらに残りの未反応水素ガスに含まれる水分を除く工程とに分けられる。
【0012】
特にガス洗浄工程の各段階においては、次のような手段を用いる。溶剤回収工程で、未反応の水素ガスに伴われて反応器から飛散するか又は蒸留塔から塔頂留分として得られる、未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、希釈用の溶媒等を回収するには、反応工程に用いる希釈用の溶媒と同一の溶媒を洗浄吸収液である溶剤として用いる。さらに、塩化水素回収工程では、溶剤回収工程及び反応工程で発生する塩化水素を、水及び/又はアルカリ水溶液からなる吸収液により回収する。その後、塩化水素回収工程にて水分が飽和状態となった未反応水素ガスから水分を除去するために、例えば吸着剤による水分除去工程を設ける。これらの工程を設けることにより、反応器から排出されるガスを実質的に水素ガスのみとしたうえで、反応工程に戻すことができ、閉鎖系の処理装置を実現させた。
【0013】
反応工程で用いる希釈用の溶媒は、脱塩素化生成物より揮発性が低いものを用いることが好ましい。希釈用の溶媒は、沸点が250〜400℃の間にある飽和炭化水素油を用いる。例えば、ヘキサデカン(炭素数16、沸点270℃)等の単一の炭化水素を用いてもよいが、流動パラフィンがより好適である。流動パラフィンは単一成分ではなく複数の成分が混合された油であり、入手しやすくコストの面からも好適である。また、希釈用溶媒の使用量は、分解する多塩素化芳香族化合物の重量の5倍量以上が好ましい。希釈用溶媒には、特にPCB等高粘度の多塩素化芳香族化合物を扱う場合に、その粘度を低下させ、水素化触媒の分散性を向上させる役割がある。さらに、PCBの場合には、脱塩素化反応生成物ビフェニルが融点80℃程度で室温では固体であるため、これを溶解させて扱いやすくする役割もある。蒸留工程を実施する際には、蒸留塔のボトムに常に溶媒が残った状態にしておくことが好ましいため、このような溶媒を用いて後述する反応工程の終了後に脱塩素化生成物を分離回収でき、さらに残された希釈用の溶媒は次回の反応工程での溶媒として使用することができる。
【0014】
また本発明では、反応工程が反応器中にて連続式で実施されてもよく、このときには蒸留工程を反応器の出口に接続された蒸留塔を用いて連続式で実施する。この場合には、少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含んで得られる塔底油を反応器に戻し、塔頂留分として得られる脱塩素化生成物、塩化水素、溶媒及び水素を次の溶剤回収工程へ送り出す。
【0015】
本発明で用いる水素化触媒としては、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属を、活性炭又はアルミナからなる単体に担持させたものを好ましく用いることができる。
【0016】
また、本発明において塩化水素の回収に用いるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウム等の水溶液を用いることができる。このうち、入手しやすさや経済性の点から、水酸化ナトリウムが特に好ましい。これらアルカリの濃度は、回収する塩化水素の量に応じて適宜変化させる。例えば、塩化水素を前段で水により吸収させ、後段でアルカリ水溶液により吸収する場合には、ある程度が水によって既に回収されているため、6%程度の濃度のアルカリ水溶液を用いればよい。塩化水素をアルカリ水溶液のみで回収する場合には、装置のコンパクト化ができる、アルカリ水溶液の交換頻度が少なくて済むなどの点から濃度は高い方が好ましい。この場合には、最大50%程度までの濃度のアルカリ水溶液を選択することができる。
【0017】
上述のように、従来PCB等の多塩素化芳香族化合物は、変圧器に代表される種々の電気部品に用いられてきた。本発明の処理方法及び装置は、単なる多塩素化芳香族化合物を処理するだけでなく、それらの部品に実際に添加された多塩素化芳香族化合物を脱塩素化し分解する際にも好適である。すなわち、通常はそれらの電気部品からまず多塩素化芳香族化合物を部品に含まれる絶縁油等の他の物質と共に、多塩素化化合物がそれらの物質に含まれた状態で取り出すが、そのような他の物質ごと本発明の処理システムに投入することができる。また、電気部品等に使用されている多塩素化芳香族化合物を取り出すには、適当な油、回収油を用いるのが一般的であるが、本発明の処理方法及び装置はこのような回収油分ごと反応材料を投入して処理することもできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の典型的な実施の形態を図1及び図2を用いて説明する。
図1は反応工程が回分式又は半回分式の場合であり、PCBなどの多塩素化芳香族化合物からなる所定量の反応原料1は、比較的沸点の高い炭化水素(ヘキサデカン)などの溶媒と水素化触媒を張り込んだ攪拌槽型の反応器2に投入される。このとき、反応原料の全てを予め反応器2に投入した上で反応を開始する方式を回分式と呼び、反応原料を連続的に反応器2に所定時間内で投入する方式を半回分式と呼ぶ。常圧昇温攪拌下に循環水素13が導入される。このとき槽内では水素化触媒の存在下に多塩素化芳香族化合物の水素化脱塩素反応が進行し、脱塩素化生成物(原料化合物がPCBの場合にはビフェニル、フェニルシクロヘキサン及びビシクロヘキシル)と副生成物である塩化水素が発生する。
【0019】
次いで、脱塩素化生成物の一部、未反応多塩素化芳香族化合物の一部、希釈溶媒の一部ならびに塩化水素の大部分は未反応水素ガスに伴われて反応器から移行し、冷却器3を通過する際に脱塩素化生成物、未反応多塩素化芳香族化合物及び溶剤は回収され、液状となり冷却器3の底部から反応器2に戻る。このため、反応器2から飛散した未反応多塩素化芳香族化合物は反応器2に戻され反応器2内で再び水素化脱塩素反応を受け、未反応化合物は基本的に反応器外に排出されることなく、ほぼ完全に脱塩素化生成物に転化する。万一、冷却器3にて回収されない未反応多塩素化芳香物化合物及び脱塩素化生成物は次の溶剤回収塔4内の溶剤中を通過する際に回収される。未反応水素ガス中に残る塩化水素ガスは水あるいはアルカリ水を吸収剤とする塩化水素回収塔6にて確実に分離回収される。吸収剤に水を用いた場合には塩化水素は塩酸として回収され、アルカリ水を用いた場合は、塩として回収される。いずれの吸収剤を用いてもよいし、両者を組み合わせてもよい。
【0020】
塩化水素が分離回収された未反応水素ガスには、水分が飽和しており、冷却塔7を経由した後、これを通常の水分除去工程、例えば吸着剤を充填した吸湿塔8を通過させ水分を除去する。そのうえで、水素ガスホルダ9を経由し、水素ガスタンク10にて反応工程で消費した水素ガスとほぼ等量の補給水素14を補給し、吸湿塔11及びガスフィルタ12を通した後、循環水素13として反応器2に戻す。反応が完結した後、反応器内の液層を蒸留することにより、液層中の脱塩素化生成物を分離回収するが、この蒸留器は反応器2に直接配管にて繋がっていても良いし、あるいは反応器2から液層を抜き出した上で、個別の蒸留器にて蒸留しても良い。
【0021】
図2は、反応工程が連続式の場合であり、反応原料16である多塩素化芳香族化合物は垂直管型連続反応器17に連続的に供給され、ここで水素、溶媒及び触媒の存在下に水素化脱塩素反応を受けて脱塩素化生成物となる。反応器は図2に示されるような垂直管型反応器でなくともよいが、逆混合をできるだけ小さくして滞留時間分布を狭くするためには、槽型の反応器より管型の反応器が好ましい。反応により生成した塩化水素、脱塩素化生成物、未反応化合物、溶媒及び未反応水素は反応器内では分離されず、反応器出口から連続的に蒸留塔18の底部に供給される。蒸留塔内では、沸点の差に基づく成分の分離が行われ、塔頂部からは水素、塩化水素及び脱塩素化生成物からなる塔頂留分が取り出され、塔底部からは脱塩素化生成物、未反応化合物及び溶媒からなる塔底油が取り出される。塔頂留分は凝縮器で冷却されて、その中の脱塩素化生成物は大部分が液化し、脱塩素化物回収塔19に貯留される。
【0022】
蒸留塔において、脱塩素化生成物を分離する一方、蒸留塔の塔底油を反応器に戻すことで、未反応化合物を繰り返して水素化脱塩素反応にかけ、脱塩素化効率を上げている。溶媒には未反応化合物よりも沸点の高いものを用いるので、実質的には全量が反応器と蒸留塔底部の間を循環し、反応生成物である脱塩素化生成物すなわち反応原料がPCBの場合にはビフェニルが蒸留塔の頂部から分留される。蒸留工程から排出される塔頂留分の内、凝縮されなかったガス(塔頂ガス)は、基本的に水素及び塩化水素からなるが、若干の脱塩素化生成物も含まれる。このため、水素を反応器に戻すには、基本的に図1の場合と同様に、溶剤回収塔20、冷却塔21、塩化水素回収塔22、冷却塔23及び吸湿塔24を通過させる。さらに、図1の場合と同様に、水素ガスホルダ25を経由し、反応工程で消費した水素ガスとほぼ等量の補給水素30を水素ガスタンク26にて補給し、吸湿塔27及びガスフィルタ28を通した後、循環水素29として連続反応器17に戻す。
【0023】
【発明の効果】
以上に示されるように、本発明によれば、反応器から排出されるガス中に万一、未反応多塩素化芳香族化合物が含まれている場合でも、そのほとんどが反応器内に戻ることにより未反応多塩素化芳香族化合物は繰り返し水素化脱塩素反応を受けるため、ほぼ完全に脱塩素化生成物となるまで反応を進行させることができる。また、反応工程あるいは蒸留工程から排出されるガス中に含まれる未反応化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素が確実に分離回収される。そのため、最終的にほぼ純粋な水素ガスが回収され、これは循環し反応ガスとして再使用ができる。したがって、装置は閉鎖系とすることが可能となり、脱塩素化工程中に装置から排出されるガスはなく、環境の保全性の高い、安全な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法を実施する処理システムの一例を示す。
【図2】本発明の多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法を実施する処理システムの別の例を示す。
Claims (15)
- 多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相中に水素を導入する反応工程と、該反応工程から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素を回収し、水素を残すためのガス洗浄工程と、水素中に含まれる水分を除去する脱水工程と、脱水後の水素に、反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで液相中に戻す工程とを順に繰り返し、反応完結後に反応物を蒸留して脱塩素化合物を分離回収する蒸留工程を実施することを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法。
- 多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相中に水素を導入する反応工程と、該反応工程後の反応物を蒸留して、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素を含む塔頂留分並びに少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含む塔底油を得、該塔底油を反応工程に戻す蒸留工程と、該塔頂留分中の脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素を回収し、水素を残すためのガス洗浄工程と、水素中に含まれる水分を除去する脱水工程と、脱水後の水素に、反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで液相中に戻す工程とを順に繰り返し実施することを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法。
- 上記反応工程から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物及び溶媒、又は、上記蒸留工程の塔頂留分中の脱塩素化生成物及び溶媒を、該溶媒と同一の溶媒にて吸収し除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の処理方法。
- 上記反応工程から排出されるガス中又は上記蒸留工程の塔頂留分中の塩化水素を水及び/又はアルカリ水溶液にて回収することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の処理方法。
- 上記多塩素化芳香族化合物が他の物質に添加された状態で処理されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の処理方法。
- 上記多塩素化芳香族化合物が回収油に含まれた状態で処理されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の処理方法。
- 上記水素化触媒として、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属を、活性炭又はアルミナからなる担体に担持させた触媒を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の処理方法。
- 多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相を内部に有し、水素を導入して反応させるための反応器と、該反応器から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物、溶媒及び塩化水素から実質的に水素のみを残すための複数の塔と、水素中に含まれる水分を除去する吸湿塔と、脱水後の水素に反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで該液相中に戻す循環経路を備え、かつ、全体が閉鎖系であることを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理装置。
- 上記処理装置がさらに、反応完結後に脱塩素化生成物を分離回収するための蒸留塔を備えることを特徴とする請求項8に記載の処理装置。
- 多塩素化芳香族化合物、水素化触媒及び溶媒を含む液相を内部に有し、水素を導入して反応させるための反応器と、該反応器に直結して、反応物を蒸留し、脱塩素化生成物、溶媒、塩化水素及び水素を含む塔頂留分並びに少なくとも未反応多塩素化芳香族化合物を含む塔底油を得、該塔底油を反応器に戻すための蒸留塔と、該塔頂留分から実質的に水素のみを残すための複数の塔と、水素中に含まれる水分を除去する吸湿塔と、脱水後の水素に反応による消費量と同等量の水素を追加補給したうえで該液相中に戻す循環経路を備え、かつ、全体が閉鎖系であることを特徴とする多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理装置。
- 上記複数の塔が、上記反応器から排出されるガス中の未反応多塩素化芳香族化合物、脱塩素化生成物及び溶媒、又は、上記蒸留塔の塔頂留分中の脱塩素化生成物及び溶媒を、該溶媒と同一の溶媒にて吸収し除去するための装置を含むことを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の処理装置。
- 上記複数の塔が、上記反応器から排出されるガス中又は上記蒸留塔の塔頂留分中の塩化水素を水及び/又はアルカリ水溶液にて回収するための装置を含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の処理装置。
- 上記多塩素化芳香族化合物が他の物質に添加された状態であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の処理装置。
- 上記多塩素化芳香族化合物が回収油に含まれた状態であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか一項に記載の処理装置。
- 上記水素化触媒として、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、コバルト及びニッケルから選択される少なくとも1種の金属を、活性炭又はアルミナからなる担体に担持させた触媒を用いることを特徴とする請求項8〜14のいずれか一項に記載の処理装置。
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JP2002353477A JP2004182672A (ja) | 2002-12-05 | 2002-12-05 | 多塩素化芳香族化合物の脱塩素化処理方法及び装置 |
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CN104741117A (zh) * | 2015-03-16 | 2015-07-01 | 中国科学院宁波材料技术与工程研究所 | 氯代芳烃液相催化加氢制备苯和环己烷的方法及催化剂 |
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2002
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