JP3933484B2 - 有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法及び無害化処理システム - Google Patents

有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法及び無害化処理システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ハロゲン化合物に汚染された有機ハロゲン化合物汚染油を無害化する無害化処理方法及びその処理システムに関し、例えば、トランス、コンデンサー等の有機ハロゲン化合物汚染物を溶剤油で洗浄することなどにより生成する有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法及び処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリ塩化ビフェニル(以下、「PCB」という場合がある。)類、ダイオキシン類等の有機ハロゲン化合物は、環境汚染物質として知られており、近年、これらの有機ハロゲン化合物に汚染されたコンデンサー、トランス等の有機ハロゲン化合物汚染物を如何に安全に処理するかが大きな問題となっている。
例えば、PCBは、非常に化学的に安定しており分解され難く、しかも、絶縁性(電気抵抗)が高いことから、従前においてはトランスやコンデンサー等の絶縁材料や熱媒体等に用いられていたが、現在では環境上の理由から製造・使用が禁止されおり、従前から使用されていたものに対してその処理方法が問題となっている。
【0003】
従来、この種の有機ハロゲン化合物汚染物の処理方法としては、汚染物から真空加熱等により有機ハロゲン化合物を抜き出して溶剤油(絶縁油)で希釈したり、汚染物を解体等して溶剤油(パークロロエチレン等のハロゲン系溶剤や沸点350℃程度の絶縁油)で洗浄したり、更には、これらの操作により生成する有機ハロゲン汚染油から所定の溶剤油(例えば、1,3−ジメチル−2イミダゾリジノン等)に有機ハロゲン化合物を抽出させたりすること等により、有機ハロゲン化合物を溶剤油に溶け込まして汚染油とし、該汚染油を無害化処理する方法が知られている。
そして、この種の汚染油を無害化処理する方法としては、以下の方法が採用されている。
即ち、汚染油(溶剤油及び有機ハロゲン化合物)を反応槽に貯留した後、反応槽内にアルカリ金属を加えて被処理液を脱ハロゲン化(除染)し、次いで、反応槽内に水を混合して除染された被処理液中に存在するハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させ、次いで、水と除染された処理済油に油水分離し、それぞれ別々にして、廃棄又は回収等の処理を行う方法である。
【0004】
ところで、有機ハロゲン化合物を十分に脱ハロゲン化するためには、化学当量よりも過剰(通常、溶剤油として絶縁油を使用する場合には、化学当量よりも3倍程度)のアルカリ金属が必要とされており、しかも、絶縁油等の溶剤油自体がアルカリ金属を消費する場合もあることから、上記従来の方法に於いては、処理されるべき有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化に必要とされる化学当量よりも過剰のアルカリ金属が使用され、それによって十分な無害化が図られている。
特に、溶剤油としてパークロロエチレン等のハロゲン系有機溶剤を使用する場合には、溶剤油自体が多量のアルカリ金属を消費することから、より過剰のアルカリ金属が使用され、それによって十分な無害化が図られている。
尚、この方法に於いて、未反応のアルカリ金属は、水和時にハロゲン化アルカリ金属塩と共に水に抽出され、場合によっては、油水分離前に、炭酸ガス、塩酸、硫酸等の酸性物質を添加することにより中和処理され、油水分離によって水と処理済油として回収又は廃棄等されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の方法は、有機ハロゲン化合物汚染油を十分に無害化できるものの、本来処理されるべき有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化に必要な化学当量よりも過剰のアルカリ金属を使用することから、多量のアルカリ金属を無駄にしていると言う問題点を有している。
【0006】
そこで、上記従来の問題点に鑑み、本発明の課題は、十分に無害化しつつも、アルカリ金属の使用量を低減しうる有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法及び無害化処理システムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の問題点に鑑み鋭意検討した結果、下記手段によって上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明に係る有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法は、有機ハロゲン化合物が溶剤油に溶け込んだ被処理液たる汚染油と化学当量よりも過剰のアルカリ金属とを反応させる反応工程と、該反応工程を経た被処理液に水を添加し、反応により生成したハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和工程とを備える有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法であって、
前記溶剤油が、炭化水素系溶剤であり、
前記反応工程は、前記アルカリ金属により前記有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化を行う脱ハロゲン化工程と、該脱ハロゲン化工程を経た被処理液から前記溶剤油を分離除去する分離工程とを備え、該分離工程後の残存液に含まれた状態の未反応のアルカリ金属を、前記脱ハロゲン化工程におけるアルカリ金属として再利用することを特徴とする。
【0008】
上記構成からなる有機ハロゲン化合物汚染油の処理方法によれば、溶剤油が炭化水素系溶剤であることから、従来の如く、溶剤油自体がアルカリ金属を消費する虞が低減されると共に、有機ハロゲン化合物を十分に無害化すべく、化学当量よりも過剰のアルカリ金属を使用しても、脱ハロゲン化後に被処理液中に存在することになる未反応のアルカリ金属を、水和工程にてアルカリ金属が水に抽出される前に、脱ハロゲン化工程において再利用することから、アルカリ金属の使用量を低減することができる。
従って、有機ハロゲン化合物汚染油を十分に無害化しつつも、アルカリ金属の使用量を低減しうるという利点を有する。
【0009】
また、水和工程において、水和される被処理油の絶対量が減少することから、水和に用いる水量を減少させることができると共に、水和処理後の水を排水として排出する場合に於いては、排水量を減少させることもできる。
尚、脱ハロゲン化を反応槽で行う場合に於いては、分離工程にて溶剤油が除去されることにより、濃縮された残存液に含まれた状態のアルカリ金属を利用できることから、単に、脱ハロゲン化工程を経た被処理液に含まれた状態のアルカリ金属をそのまま利用する場合の如く、反応槽から被処理液が溢れる虞も少なく、新たに有機ハロゲン化合物汚染油及び化学当量よりも過剰となるように不足する分のアルカリ金属を反応槽に加えて、順次、無害化処理を進めることができる。ここで、本発明に於いて、化学当量よりも過剰とは、有機ハロゲン化合物との脱ハロゲン化反応に寄与する量よりも過剰であることを意味する。また、溶剤油とは、有機ハロゲン化合物汚染物を洗浄する洗浄油、有機ハロゲン化合物(その汚染油を含む)を希釈する希釈油、更には、汚染油から有機ハロゲン化合物を抽出する抽出油等、有機ハロゲン化合物を溶け込ましうる油を意味する。
尚、本発明において、分離工程としては、物性の違い等を利用して、溶剤油を分離除去する方法を採用することができ、具体的には、蒸留や静置分離(溶剤油とアルカリ金属との比重差を利用)等により分離除去する方法を採用することができる。
【0010】
本発明における有機ハロゲン化合物としては、例えば、PCB、ダイオキシン類、ハロゲンを有するジベンゾフラン類、ポリ塩化ベンゼン、塩化メチレン或いはこれらに含まれる塩素原子が臭素原子に置換された臭素化物等の有害な有機ハロゲン化合物を挙げることができる。
また、アルカリ金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム等を挙げることができ、中でも反応速度、取扱いの容易さからナトリウムが好ましい。
【0011】
本発明に於いては、前記汚染油が、前記溶剤油を有機ハロゲン化合物汚染物を洗浄する洗浄油として又は有機ハロゲン化合物を希釈する希釈油として使用することにより生成してなるものであり、前記分離工程により分離除去された前記溶剤油を前記洗浄油又は前記希釈油として再利用することが好ましい。
斯かる方法によれば、溶剤油を有効に再利用でき、溶剤油の使用量をも低減することができると共に、再利用される分だけ最終的な処理済油の排出量を低減することもできる。
【0012】
また、本発明に於いては、前記溶剤油が、前記脱ハロゲン化物よりも沸点の低い炭化水素系溶剤であり、前記分離工程が、蒸留により留出液として前記溶剤油を分離除去する蒸留工程である方法を採用することもできる。
斯かる方法によれば、脱ハロゲン化後に蒸留すると共に、溶剤油が、脱ハロゲン化物よりも沸点が低いことから、有機ハロゲン化合物濃度及びその脱ハロゲン化物濃度の極めて低い溶剤油を、分離除去することができる。
尚、蒸留工程における蒸留操作は、脱ハロゲン化後に蒸留することから、単蒸留で十分であり、単蒸留とした場合には、蒸留工程における蒸留操作が簡便となり、しかも、消費エネルギー量を低減しうる。
【0013】
ここで、前記有機ハロゲン化合物がポリ塩化ビフェニルである場合には、前記溶剤油は、沸点が254℃未満の炭化水素系溶剤であることが好ましい。PCBの脱塩素化物たるビフェニルの沸点が254〜255℃であるため、斯かる炭化水素系溶剤であれば、蒸留により溶剤油を留出させることができると共に、炭化水素系溶剤はポリ塩化ビフェニルを容易に溶解することから、十分な洗浄等を行うこともできる。
尚、脱ハロゲン化の反応温度が、通常、90〜120℃であることから、前記炭化水素系溶剤としては、反応時における沸騰防止の観点から、沸点が121℃以上のものが好ましい。
具体的には、炭素数8〜15、特に、10〜12の炭化水素系溶剤が好ましい。
【0014】
本発明に於いて、前記炭化水素溶剤としては、アルカリ金属と反応する−OH基、−O−基を有しないパラフィン系、ナフテン系、イソパラフィン系等のものを採用できるが、特に、低価格で且つ有機ハロゲン化合物を充分に溶け込ませやすいという観点から、ノルマルパラフィンが好ましい。また、ノルマルパラフィンを用いると、反応工程に於ける有機ハロゲン化合物とアルカリ金属との反応性が良好となり、従来の絶縁油を用いた場合に、反応に化学当量よりも3倍程度必要とされていたアルカリ金属量を、例えば、2.4〜2.8倍程度に低減することもできる。
【0015】
また、本発明に於いて、前記アルカリ金属を、分散媒に分散されたアルカリ金属分散体の状態で使用するのが好ましい。
分散体の状態で使用することにより、脱ハロゲン化を円滑に進めることができる。
尚、分散媒としては、分離工程に於いて溶剤油と共に分離除去されるものであっても、残存液の一部として残存するものであっても良い。
但し、溶剤油と同種のものが好ましい。
斯かる分散媒であれば、分離工程において、溶剤油として分離除去されることから、残存液がより濃縮されるという利点を有する。特に、除去された溶剤油を希釈油や洗浄油として再利用する場合には、分散媒をも同様に再利用することができる。
【0016】
本発明に係る有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理システムは、有機ハロゲン化合物汚染物が溶剤油に溶け込んだ被処理液たる有機ハロゲン化合物汚染油と化学当量よりも過剰のアルカリ金属とを反応させる反応部と、該反応部を経た被処理液に水を添加し、ハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和部とを備えた有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理システムであって、
前記洗浄油が、炭化水素系溶剤であり、
前記反応部は、前記アルカリ金属により前記有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化を行う脱ハロゲン化部と、脱ハロゲン化部を経た被処理液から前記溶剤油を分離除去する分離部とを備え、該分離部を経た残存液に含まれた状態の未反応のアルカリ金属を、前記脱ハロゲン化部におけるアルカリ金属として再利用するよう構成されてなることを特徴とする。
斯かる構成からなる有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理システムによれば、請求項1記載の方法を好適に実施することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態として、トランス及びコンデンサーを解体し、洗浄油で洗浄したPCB汚染油の無害化処理システム及び無害化処理方法について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、トランス及びコンデンサーの洗浄システムについて、一例を挙げて簡単に説明する。
図1は、トランス及びコンデンサーの洗浄システム、更に、該洗浄により排出されたPCB汚染油の無害化処理システムを示す概略フロー図である。
図1に示すように、コンデンサーは、充填されたPCB油が抜き取られた後に解体され、解体後に溶剤油で洗浄される。また、トランスは、充填されたPCB油が抜き取られた後、粗洗浄され、解体後に洗浄される。洗浄後の各解体物は、乾燥後に廃棄又は再利用される。
【0019】
次に、PCB汚染油の無害化処理システムについて説明する。
本実施形態に於いて、溶剤油としては、脱塩素化物及びアルカリ金属よりも沸点の低い溶剤油、具体的には、沸点が150〜230℃、粘度が0.9〜2.5cst(at20℃)のノルマルパラフィン、好ましくは、171〜207℃、粘度が1.42cst(at20℃)のノルマルパラフィンが使用される。
ここで、粘度は、JIS K 2283により測定される値である。
図1に示すように、本実施形態のPCB汚染油の無害化システムは、被処理液たるPCB汚染油とナトリウムとを反応槽5に存在させて反応させる反応部1と、該反応部1を経て除染された被処理液に水を添加し、塩化ナトリウム塩を水に抽出させる水和部2と、水和部2を経て塩化ナトリウムが水に抽出された被処理液を水と処理済油に分離する油水分離部3とを備えて構成されている。
前記反応部1は、PCB汚染油と化学当量よりも過剰のナトリウムとを反応させてPCBの脱塩素化を行う脱塩素化部1aと、脱塩素化部1aを経た被処理液を蒸留し、前記洗浄油を留出除去する蒸留部1bとを備えている。
【0020】
前記反応部1は、脱塩素化部1a、蒸留部1bの他に、脱塩素化部1aの流れ方向上流側に備えられ且つ該脱塩素化部1aに被処理油としてのPCB汚染油を供給する汚染油貯留部1cと、ナトリウム分散体を供給するためのナトリウム供給部1dとを備えてなる。
前記脱塩素化部1aは、PCB汚染油と化学当量よりも過剰のナトリウムとを共存させる反応槽5を有し、前記汚染油貯留部1c及びナトリウム供給部1dから供給された被処理油たるPCB汚染油とナトリウムとを反応させて被処理油を脱塩素化しうるように構成されている。
【0021】
前記汚染油貯留部1cは、トランス等から抜き取られたPCB油等(高濃度PCB汚染油)と、溶剤油に洗浄されて排出されたPCB油及び洗浄油の混合油(低濃度PCB汚染油)とを貯留槽内にて適宜混合し、被処理油たるPCB汚染油のPCB濃度を調整し、反応槽5に被処理油を供給しうる構成である。
また、この貯留部1cには、反応促進剤を該貯留部1cの被処理油に供給する促進剤供給部1c1が備えられている。尚、この促進剤供給部1c1は、反応促進剤を反応槽5内の被処理油に供給するように脱塩素化部1aに備えられていても良い。
この反応促進剤は、脱塩素化されたビフェニルに水素を供与してPCBの分解を促進すると共にビフェニルの高分子化を防止するためのものであり、本実施形態においては、反応促進剤としてイソプロピルアルコールが使用されている。
尚、イソプロピルアルコールに替えて、反応促進剤として水が使用されても良い。
【0022】
前記蒸留部1bは、蒸留により留出液と缶出液とを分離し、溶剤油を留出液として分離除去しうるように構成されている。具体的には、図2に示すように、蒸留槽5と、蒸留槽5内の被処理液を加熱する加熱手段(図示せず)と、蒸留槽5内を減圧する減圧手段1dとを備え、加熱手段及び減圧手段1dにて蒸留槽5内を加熱・減圧することにより、脱塩素化された被処理油を蒸留し、留出蒸気を冷却装置1eにより冷却して留出液とし、該留出液を液受タンク1fに回収しうるように構成されている。
尚、前記脱塩素化部1a及び前記蒸留部1bは、反応槽5及び蒸留槽5として、互いに同一の槽5を共有するように構成されており、この槽5には、図2に示すように、反応槽5として、反応を促進するための攪拌手段5aが備えられて構成されている。
【0023】
本実施形態に於いては、図1に示すように、除去された留出液の内、初期留出分が反応促進剤として配管を介して汚染油貯留部1cに供給されると共に、後期留出分が洗浄用及び希釈用の溶剤油として再利用されるように構成されている。更に、本実施形態に於いて、蒸留部1bは、缶出液を蒸留槽5(即ち反応槽5)内に維持させることができるように構成されており、これによって、未反応のナトリウムが含まれた缶出液を、脱塩素化部1aにおけるナトリウムとして再利用しうる構成とされている。
また、前記反応部1は、開閉可能な配管を介することにより、脱ハロゲン化され蒸留されていない被処理油又は缶出液の何れをも、槽5(反応槽5、蒸留槽5)から被処理液として水和部2に供給しうるように構成されている。
【0024】
前記水和部2は、反応槽5(蒸留槽5)から供給された被処理液に水を供給して水和処理を施す水和槽2bと該水和槽2bに水を供給する水供給部2aとを備え、水和された被処理油を配管を介して油水分離部3に供給しうるように構成されている。
【0025】
前記油水分離部3は、水和部2から供給された被処理油を、水と処理済油に分離する油水分離槽3aを備えて構成されている。
尚、本実施形態に於いて、水和部2と油水分離部3とは、それぞれ別々の水和槽2b及び油水分離槽3aを備えて構成されたが、本発明に於いては、同一の槽を共有しても良い。
油水分離部3によって分離された水は、例えば、適宜生物処理や活性炭処理が施され(図示せず)、廃水として廃棄されてもよく、又、中和した後、脱塩処理し、水和部に供給する水として再利用しても良い(図示せず)。
油水分離により分離された処理済油は、蒸留され、初期留出分としての水が水和部2に供給され、後期留出分が蒸留再生槽に供給され、缶出液が廃油として廃棄される。
蒸留再生槽6では、精留等によって、留出分が洗浄油として利用され、缶出分が汚染油貯留部1cに供給される。
【0026】
次に、この無害化処理システムを使用したPCB汚染油の処理方法について説明する。
先ず、沸点が150〜230℃、粘度が0.9〜2.5cst(at20℃)のノルマルパラフィン、好ましくは、171〜207℃、粘度が1.42cst(at20℃)のノルマルパラフィンを溶剤油として使用し、該溶剤油で洗浄、希釈することにより排出される被処理油たるPCB汚染油を汚染油貯留部1cに貯留する。
【0027】
〈反応工程〉
貯留されたPCB汚染油を、PCBのCl1モルに対して1.0〜1.2モルの割合で促進剤供給部1c1から供給されたイソプロピルアルコールと共に反応槽5に供給し、ナトリウム供給部1dから化学当量の約2.4〜2.8倍のナトリウム分散体を反応槽5に供給する。
ナトリウム分散体の分散媒としては、前記溶剤油と同種のもの又は絶縁油(JIS C 2320の鉱油)等を使用する。
次いで、反応槽5にて、90〜120℃の温度範囲でPCB汚染油とナトリウムとを反応させ、PCBの脱塩素化処理を行う(脱塩素化工程)。
このとき、脱塩素化されたビフェニルに、イソプロピルアルコールから水素が供与され、ビフェニルの重合が抑制され、被処理油の粘度増加が抑制される。
脱塩素化後、反応槽5(蒸留槽5)を減圧下100〜140℃に加熱して蒸留し、イソプロピルアルコール及び洗浄油を留出分として分離除去する(蒸留工程)。
このとき、沸点の差によって、イソプロピルアルコールは初期留出するため、初期留出分を汚染油貯留部1cに供給すると共に、後期留出分たる溶剤油を回収し、コンデンサー等の洗浄油、PCBの希釈油に再利用する。
更に、缶出液を反応槽5(蒸留槽5)内に維持させる。
このとき、缶出液には、未反応のナトリウム、ビフェニル及び少量のナトリウムイソプロポキシド等が存在している。
尚、ナトリウム分散体の分散媒として、前記溶剤油と同種のものを使用する場合には、分散媒も留出分として回収され、洗浄油又は希釈油として再利用される。一方、絶縁油を使用する場合には、缶出液として反応槽5(蒸留槽5)内に維持される。
【0028】
次いで、留出分を除去した分だけ、反応槽5の液量が減少しているため、更に、PCB汚染油とナトリウム分散体とを反応槽5に供給する。このとき、反応槽5内において、PCBに対するナトリウムの量が化学当量の約2.4〜2.8倍となる様に供給量を調整する。
具体的には、反応によって、分解されたPCBに相当する量だけPCB汚染油をイソプロピルアルコールと共に供給し、反応により減少したナトリウムに相当する量(ほぼ化学当量相当量)だけナトリウム分散体を供給する。
【0029】
そして、これらの操作を数回繰り返す。
これらの操作によって、PCB汚染油を供給する度に、供給するPCB汚染油に対して、常に、化学当量の約2.4〜2.8倍のナトリウム分散体を供給する必要が無く、供給するナトリウム分散体の量を低減することができる。
【0030】
次いで、反応槽5内のビフェニルの濃度が所定以上になると(通常脱塩素化工程を2〜4回を経ると)、蒸留によって缶出した缶出液を、フロー線10に示されるように、反応槽5(蒸留槽5)から水和部2に供給する。
【0031】
<水和工程>
水和部2においては、水供給部2aから被処理油に水を供給し、被処理油中に含まれる塩化ナトリウムを水に抽出させる。
次いで、水和した被処理油を油水分離部3に供給する。
【0032】
〈油水分離工程〉
油水分離部3においては、被処理油を水と処理済油に分離する。
そして、分離した水に適宜生物処理及び活性炭処理を施し、廃水として廃棄する。更に、分離した処理済油を蒸留し、初期留出分として留出する水を水和部2に供給し、後期留出分を蒸留再生槽6に供給し、該蒸留再生槽6で精留を行い、精留による缶出分を汚染油貯留部1cに供給し、留出分を洗浄油として再利用する。
【0033】
尚、本実施形態におけるPCB汚染油の無害化処理システムに於いては、脱塩素化部1a及び蒸留部1bが、反応槽5及び蒸留槽5として、同一の槽5を共有して構成されたが、それぞれ別の槽を備えると共に、蒸留部1bにおける蒸留槽から缶出液を脱塩素化部1aの反応槽5に配管を介して供給することにより、缶出液中の未反応のナトリウムを脱塩素化部1aにおけるナトリウムとして再利用しうる構成であっても本発明の意図する範囲内である。
【0034】
更に、本実施形態におけるPCB汚染油の無害化処理方法に於いては、蒸留による缶出液を反応部1(槽5)から水和部2に被処理油として供給したが、本発明に於いては、ナトリウム供給部1dから新たに供給されたナトリウム分散体及び蒸留による缶出液中のナトリウムとを用いて脱塩素化を行った後の被処理油を、フロー線11に示されるように、蒸留を行わずに反応部1(槽5)から水和部2に供給してもよい。
【0035】
また、本実施形態におけるPCB汚染油の無害化処理方法に於いては、分離工程として、蒸留工程1bを採用したが、図3に示すように、脱塩素化工程1aを経た被処理液から静置分離により上澄液として前記溶剤油Aを分離除去する静置分離工程1bを採用する場合であっても本発明の意図する範囲内である。
この場合、通常、溶剤油としては、ビフェニルよりも比重の軽いノルマルパラフィン等を使用する。
斯かるノルマルパラフィンを使用することにより、ビフェニル、未反応のナトリウム、塩化ナトリウムは下層側に沈降することから、溶剤油を上澄液として容易に分離除去することができると共に、残存液(残存油)中のナトリウムを脱塩素工程のナトリウムとして再利用することができる。
尚、この方法に於いては、上澄液としての溶剤油Aには、未反応のナトリウムが僅かに乳遊しており、そのまま回収して洗浄等に使用した場合には、発火の虞があることから、図3に示すように、未反応のナトリウムを不活性化すべく、僅かな水Cを溶剤油Aに添加し、この溶剤油Aを再度静置分離15し、該静置分離15後の上澄液として、未反応のナトリウムの殆どない溶剤油Bを回収するのが好ましい。
尚、この方法に於いては、通常、脱塩素化工程を2〜4回経た後、静置分離による下層残存液を水和工程2の被処理液とする。
斯かる方法によれば、蒸留に要するエネルギーを必要とすること無く、溶剤油を分離除去することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法及び無害化処理システムによれば、有機ハロゲン化合物汚染油を十分に無害化しつつも、アルカリ金属の使用量の低減しうるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態の有機ハロゲン化合物処理システムを示す概略フロー図。
【図2】同実施形態の脱塩素化部及び蒸留部を示す概略図。
【図3】他の実施形態の有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法を示す概略フロー図。
【符号の説明】
1・・・反応部(反応工程)、1a・・・脱ハロゲン化部(脱ハロゲン化工程)、1b・・・分離部(分離工程)、2・・・水和部(水和工程)

Claims (7)

  1. 有機ハロゲン化合物が溶剤油に溶け込んだ被処理液たる汚染油と化学当量よりも過剰のアルカリ金属とを反応させる反応工程(1)と、該反応工程(1)を経た被処理液に水を添加し、反応により生成したハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和工程(2)とを備える有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法であって、
    前記溶剤油が、炭化水素系溶剤であり、
    前記反応工程(1)は、前記アルカリ金属により前記有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化を行う脱ハロゲン化工程(1a)と、該脱ハロゲン化工程(1a)を経た被処理液から前記溶剤油を分離除去する分離工程(1b)とを備え、該分離工程(1b)後の残存液に含まれた状態の未反応のアルカリ金属を、前記脱ハロゲン化工程(1a)におけるアルカリ金属として再利用することを特徴とする有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法。
  2. 前記汚染油は、前記溶剤油を有機ハロゲン化合物汚染物を洗浄する洗浄油として又は有機ハロゲン化合物を希釈する希釈油として使用することにより生成してなるものであり、前記分離工程(1b)により分離除去された前記溶剤油を前記洗浄油又は前記希釈油として再利用する請求項1記載の有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法。
  3. 前記溶剤油が、前記脱ハロゲン化物よりも沸点の低い炭化水素系溶剤であり、前記分離工程が、蒸留により留出液として前記溶剤油を分離除去する蒸留工程(1b)である請求項1又は2記載の有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法。
  4. 前記有機ハロゲン化合物がポリ塩化ビフェニルであり、前記炭化水素系溶剤の沸点が254℃未満である請求項3記載の有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法。
  5. 前記炭化水素系溶剤がノルマルパラフィンである請求項1乃至4の何れかに記載の有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法。
  6. 前記反応工程(1)に於いて、前記アルカリ金属を、分散媒に分散されたアルカリ金属分散体の状態で使用する請求項1乃至5の何れかに記載の有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理方法。
  7. 有機ハロゲン化合物汚染物が溶剤油に溶け込んだ被処理液たる有機ハロゲン化合物汚染油と化学当量よりも過剰のアルカリ金属とを反応させる反応部(1)と、該反応部(1)を経た被処理液に水を添加し、ハロゲン化アルカリ金属塩を水に抽出させる水和部(2)とを備えた有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理システムであって、
    前記洗浄油が、炭化水素系溶剤であり、
    前記反応部(1)は、前記アルカリ金属により前記有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化を行う脱ハロゲン化部(1a)と、脱ハロゲン化部(1a)を経た被処理液から前記溶剤油を分離除去する分離部(1b)とを備え、該分離部(1b)を経た残存液に含まれた状態の未反応のアルカリ金属を、前記脱ハロゲン化部(1a)におけるアルカリ金属として再利用するよう構成されてなることを特徴とする有機ハロゲン化合物汚染油の無害化処理システム。
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