JP2004180680A - アポトーシス関連蛋白質およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】アポトーシスまたは炎症関連疾患の新規予防・治療剤の提供。
【解決手段】ヒト由来の特定なアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質の機能的ドメインを含む部分ペプチド;該蛋白質もしくは該部分ペプチドまたはそれを産生する細胞、および必要に応じてASK1もしくはその部分ペプチドまたはそれを産生する細胞を用いることによる、ASK1活性化調節物質、アポトーシスまたは炎症関連疾患予防・治療物質のスクリーニング方法およびそのためのキット;並びにヒト由来の特定なアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質の活性を調節する物質を含有する、アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生調節剤、アポトーシスまたは炎症関連疾患の予防・治療剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、ASK1と結合してこれを活性化する蛋白質の機能的フラグメント、並びに該蛋白質および該フラグメントの種々の用途、特に医薬用途に関する。
アポトーシスは、発生過程で不要となった細胞や異常細胞の除去、ホメオスターシス、傷害を受けた細胞を除去する生体防御反応の機能を担っており、その分子レベルでのメカニズムも次第に明らかになってきている。それら分子の異常や制御メカニズムの破綻はアポトーシスの生理的機能を障害し、様々な疾患の発症原因や増悪因子となる。例えば、アポトーシスが過度に抑制されれば、本来除去されるべき細胞が異常に増殖して腫瘍性疾患や自己免疫疾患などを誘発し、逆にアポトーシスが異常に亢進すると本来なくてはならない細胞が死に至って神経変性疾患などの原因となる。
Mitogen-activated protein(MAP)キナーゼカスケードは物理化学的ストレスや腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−1(IL−1)などの炎症性サイトカインによって活性化されたMAPキナーゼキナーゼキナーゼ(MAPKKK)が、MAPキナーゼキナーゼ(MAPKK)、MAPキナーゼ(MAPK)を逐次活性化するシグナル伝達機構であり、細胞はこれらの刺激に応じて生存、増殖、分化、死(アポトーシス)などの表現型を示す。c-Jun N-terminal kinase(JNK)およびp38 MAP kinase(p38)は、アポトーシスを誘導するシグナル伝達経路の一部を担うMAPKとして知られている(例えば、腓腹筋特許文献1参照)。さらには炎症性サイトカインの産生を誘導することにより炎症反応の惹起にも関与している。
JNKおよびp38はMAPKKであるMKK4/7およびMKK3/6によってそれぞれ活性化される。これらのMAPKKはApoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)と呼ばれる1つのMAPKKKによって活性化される(特許文献1、非特許文献2)。MAPKKKはASK1以外にも多数報告されているが、ASK1は、JNKおよび/またはp38の活性化を介したシグナル伝達を通じて、細胞にアポトーシスを誘導する能力を有することにより特徴づけられる。最近、ASK1の活性化がケラチノサイトの分化やPC12細胞の神経突起伸張などの細胞分化にも関与することが示唆されており、ASK1はアポトーシスに限らず細胞の運命のコントロールに重要な役割を果たしていることが明らかになってきている。さらには炎症性サイトカインの産生を誘導することによって、炎症反応の惹起にも関与することも明らかとなってきている。
このように、ASK1は細胞の以後の運命を左右する重要な分子であるが故に、その活性化には様々な因子が関与し、複雑な制御を受けていると考えられる。これまでに、ASK1の活性化にはASK1同士のホモオリゴマー形成とそれに続く活性化ループ内にあるスレオニンのリン酸化が必須であることが報告されており、また該リン酸化は主にASK1による自己リン酸化によっているが、別のキナーゼの存在も示唆されている(非特許文献3)。一方、protein phosphatase 5(PP5)はH刺激下でASK1に直接結合し、スレオニンを脱リン酸化することで活性化されたASK1を不活性状態に戻すと考えられている(非特許文献4)。さらに、レドックス制御因子であるチオレドキシンは、酸化ストレスのないときにはASK1のN末端側ドメインと恒常的に結合してASK1の活性化インヒビターとして働いており、酸化ストレスを与えるとASK1から離れ、それによりASK1の活性化が起こること(非特許文献5)、TNF−αによるASK1活性化の際には、TNF receptor-associated factor 2(TRAF2)がASK1のC末端側ドメインに結合することでASK1の活性化が起こること(非特許文献6)、14−3−3タンパク質はC末端側ドメインに結合することによりASK1の活性化を阻害すること(非特許文献7)なども報告されている。
ASK1ノックアウトマウスの細胞を小胞体ストレス誘発剤で処理すると、野生型マウスの細胞に比べてアポトーシスが有意に抑制されることから、ASK1は小胞体ストレスによるアポトーシス誘導に密接に関連しており、従って、上記のチオレドキシンや14−3−3蛋白質等のASK1阻害物質や、ASK1ドミナントネガティブ変異体、ASK1アンチセンスオリゴヌクレオチドなどは、神経変性疾患(例、ポリグルタミン病等)などの小胞体ストレス関連疾患の予防・治療に有効であることが示唆されている(特許文献2)。西頭らは、ポリグルタミン病における異常蛋白質の蓄積が小胞体ストレスを誘発し、その結果ストレスセンサー分子であるIRE1とTRAF2、ASK1が三者複合体を形成してASK1が活性化され、JNKの活性化を介してアポトーシス(=神経細胞死)が誘導されることを示した(非特許文献8)。
特開平10−93号公報 国際公開第02/38179号パンフレット 「サイエンス(Science)」,(米国),第270巻,p.1326,1995年 「サイエンス(Science)」,(米国),第275巻,p.90−94,1997年 「ジャーナル・オブ・セルーラー・フィジオロジー(Journal of Cellular Physiology)」,(米国),第191巻,p.95−104,2002年 「エンボ・ジャーナル(EMBO Journal)」,(英国),第20巻,p.6028−6036,2001年 「エンボ・ジャーナル(EMBO Journal)」,(英国),第17巻,p.2596−2606,1998年 「モレキュラー・セル(Molecular Cell)」,(米国),第2巻,p.389−395,1998年 「プロシーディングズ・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ,ユーエスエー(Proceedings of National Academy of Sciencies, USA)」,(米国),第96巻,p.8511−8515,1999年 「ジーンズ・デベロップメント(Genes Development)」,第16巻,p.1345−1355,2002年
上述のように、ASK1の生理的重要性や疾患との関わりが次第に明らかになってきてはいるが、ASK1の活性化制御とASK1を介するアポトーシス誘導/炎症反応惹起のメカニズムについては、その複雑さもあって未だに不明な点が多く、さらなる研究の進展が望まれるところである。
したがって、本発明は、ASK1の活性化機構とそれを介したアポトーシス誘導/炎症反応惹起のメカニズムに関する新規な知見を提供することを目的とする。即ち、本発明の第一の目的は、これまで知られていない新規なASK1結合蛋白質を同定するとともに、該蛋白質によるASK1活性化制御のしくみを明らかにすることである。また、本発明の別の目的は、該蛋白質とASK1との相互作用に基づいて、ASK1が関与する各種疾患に対する新規な予防・治療手段を提供することである。
本発明者等は、上記の目的を達成すべく、ヒトASK1全長cDNAをbaitとして、ヒト胎児脳由来の発現ライブラリーを酵母two-hybrid法によりスクリーニングした結果、PGR1と命名された既知遺伝子にコードされる127アミノ酸からなる機能未知の蛋白質を、新たにASK1結合蛋白質としてクローニングすることに成功し、ASK1 Binding Protein 1(以下、「ABP1」と略記する)と命名した。さらに、本発明者等は、該蛋白質がASK1と結合するのみでなく、ASK1とその下流のJNKおよびp38を活性化するとともに、カスパーゼ依存性のアポトーシスを誘導することを見出した。本発明者等は、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、且つASK1を活性化し得るペプチドまたはその塩、
[2] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列中約60アミノ酸以上からなる部分アミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する上記[1]記載のペプチドまたはその塩、
[3] 部分アミノ酸配列がN末端側の配列である上記[2]記載のペプチドまたはその塩、
[4] 上記[1]記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド、
[5] 配列番号1または配列番号3に示される塩基配列の一部と同一もしくは実質的に同一の塩基配列を含有する上記[4]記載のポリヌクレオチド、
[6] 上記[4]記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
[7] 上記[6]記載の組換えベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体、
[8] 上記[7]記載の形質転換体を培養し、得られる培養物から上記[1]記載のペプチドまたはその塩を採取することを特徴とする該ペプチドまたはその塩の製造方法、
[9] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、且つASK1を活性化しないか、もしくは不活性化し得るペプチドまたはその塩、
[10] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列中約35アミノ酸以下からなる部分アミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する上記[9]記載のペプチドまたはその塩、
[11] 部分アミノ酸配列がN末端側の配列である上記[10]記載のペプチドまたはその塩、
[12] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチド、またはその塩を含有してなるASK1活性化促進剤、
[13] アポトーシス誘発剤である上記[12]記載の剤、
[14] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチド、またはその塩を含有してなる医薬、
[15] アポトーシスを誘発することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である上記[14]記載の医薬、
[16] 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器過形成、血管形成術後再狭窄および癌切除術後の再発からなる群より選択される上記[15]記載の医薬、
[17] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含有してなるASK1活性化促進剤、
[18] アポトーシス誘発剤である上記[17]記載の剤、
[19] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[20] アポトーシスを誘発することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である上記[19]記載の医薬、
[21] 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器過形成、血管形成術後再狭窄および癌切除術後の再発からなる群より選択される上記[20]記載の医薬、
[22] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチドを含有してなるアポトーシスまたは炎症関連疾患の診断薬、
[23] 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成異常、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される上記[22]記載の診断薬、
[24] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列と相補的な塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチドを含有してなるASK1活性化阻害剤、
[25] アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤である上記[24]記載の剤、
[26] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列と相補的な塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[27] アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である上記[26]記載の医薬、
[28] 疾患が、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される上記[27]記載の医薬、
[29] 配列番号5または配列番号6に示されるアミノ酸配列を特異的に認識し得ることを特徴とする、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体、
[30] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を含有してなるアポトーシスまたは炎症関連疾患の診断薬、
[31] 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成異常、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される上記[30]記載の診断薬、
[32] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を含有してなるASK1活性化阻害剤、
[33] アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤である上記[32]記載の剤、
[34] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を含有してなる医薬、
[35] アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である上記[34]記載の医薬、
[36] 疾患が、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される上記[35]記載の医薬、
[37] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞を用いることを特徴とする、ASK1活性化調節物質のスクリーニング方法、
[38] ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞をさらに用いることを特徴とする、上記[37]記載の方法、
[39] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドまたはその塩と、ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩との結合性を測定することを特徴とする、上記[38]記載の方法、
[40] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞を含んでなる、ASK1活性化調節物質のスクリーニング用キット、
[41] さらに、ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞を含んでなる、上記[40]記載のキット、
[42] ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインおよびキナーゼドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩を産生する細胞におけるASK1もしくは該部分ペプチドまたはその塩の活性化を、(1)配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドまたはその塩の存在下と、(2)配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドまたはその塩および被験物質の存在下で比較することを特徴とする、上記[38]記載の方法、
[43] (1)配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドまたはその塩、および(2)ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインおよびキナーゼドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩を産生する細胞におけるASK1もしくは該部分ペプチドまたはその塩の活性化を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする上記[38]記載の方法、
[44] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは上記[1]記載のペプチドまたはその塩を産生する細胞における該蛋白質もしくは該ペプチドまたはその塩の発現を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、ASK1活性化調節物質のスクリーニング方法、
[45] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチド、あるいは配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を用いることを特徴とする、上記[44]記載の方法、
[46] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチド、あるいは配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を含んでなるASK1活性化調節物質のスクリーニング用キット、
[47] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の発現または活性を増大させる物質を含有してなるアポトーシス誘発剤、
[48] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の発現または活性を増大させる物質を含有してなる医薬、
[49] アポトーシスを誘発することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である上記[48]記載の医薬、
[50] 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器過形成、血管形成術後再狭窄および癌切除術後の再発からなる群より選択される上記[49]記載の医薬、
[51] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の発現または活性を減少させる物質を含有してなるアポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤、
[52] 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の発現または活性を減少させる物質を含有してなる医薬、
[53] アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である上記[52]記載の医薬、および
[54] 疾患が、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される上記[53]記載の医薬を提供する。
さらに、本発明は、
[55] ASK1のN末端活性化制御ドメインを含み、且つキナーゼドメインを含まないASK1部分ペプチドまたはその塩を含有してなる、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の阻害剤、
[56] アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤である上記[55]記載の剤、
[57] ASK1のN末端活性化制御ドメインを含み、且つキナーゼドメインを含まないASK1部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬、
[58] アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である上記[57]記載の医薬、
[59] 疾患が、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される上記[58]記載の医薬、
[60] 上記[9]記載のペプチドまたはその塩を含有してなるASK1活性化阻害剤、
[61] アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤である上記[60]記載の剤、
[62] 上記[9]記載のペプチドまたはその塩を含有してなる医薬、
[63] アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である上記[62]記載の医薬、および
[64] 疾患が、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される上記[63]記載の医薬を提供する。
本発明のABP1、それをコードするポリヌクレオチド等は、ASK1カスケードを活性化することにより、細胞にアポトーシスを誘導したり、炎症性サイトカインの産生を誘導するなどの効果を奏する。一方、本発明のABP1抑制薬(例えば、抗ABP1抗体、ABP1アンチセンスポリヌクレオチド等)は、ABP1の発現もしくは活性を阻害することにより、ASK1の活性化を阻害し、アポトーシスや炎症性サイトカインの産生を抑制するなどの効果を奏する。
本発明において用いられる蛋白質(以下、「本発明のABP1」もしくは単に「ABP1」という)は、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質である。
本発明のABP1は、温血動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来する蛋白質であってよく、また、化学合成もしくは無細胞翻訳系で合成された蛋白質であってもよい。あるいは上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを導入された形質転換体から産生された組換え蛋白質であってもよい。
配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と「実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質」としては、例えば、前記の配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。
「実質的に同質の活性」としては、例えば、ASK1またはその下流に位置するキナーゼ群(例、MKK4/7、MKK3/6、JNK、p38など)の活性化促進活性、細胞のアポトーシス誘導活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、ASK1カスケード活性化促進等の活性が同等であることが好ましいが、これらの活性の程度、蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい(例えば、活性については、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍の範囲内が挙げられる)。
ASK1カスケード活性化促進活性の測定は、公知の方法、例えば、標識したリン酸基供与体を用いてASK1またはその下流に位置するキナーゼ群(例、MKK4/7、MKK3/6、JNK、p38など)のリン酸化を検出すること等によって、また、アポトーシス誘導活性の測定は、細胞死誘導率の測定、細胞の形態学的観察、DNA断片化の検出等によって行うことができる。
また、本発明のABP1には、例えば、1) 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、2) 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、3) 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、4) 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または5) それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、蛋白質の活性が保持される限り特に限定されない。
本発明のABP1は、好ましくは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するヒトABP1(hABP1)または配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するマウスABP1(mABP1)、あるいは他の温血動物(例えば、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)におけるそのホモログである。hABP1はPGR1と命名されたヒトT細胞由来の既知遺伝子(GenBank登録番号:AF116272)にコードされる127アミノ酸からなる蛋白質であるが、その機能に関する報告はこれまでになされていない。また、マウスABP1はclone MNCb-1039と命名されたマウス脳由来のcDNA(GenBank登録番号:AB041651)にコードされる125アミノ酸からなる蛋白質であるが、やはりその機能に関する報告はない。
本明細書に記載される蛋白質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をはじめとする、本発明のABP1は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基;α−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
ABP1がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のABP1に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のABP1には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
本発明は、上記したABP1の部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、且つABP1と実質的に同質の活性を有するペプチドを提供する。ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同意義を示す。また、「実質的に同質の活性」の測定は上記と同様にして行うことができる。本明細書においては、当該部分ペプチドを、以下「本発明の活性化ペプチド」と称することとする。
本発明の活性化ペプチドは、上記の性質を有する限り特に制限されないが、例えば、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列中約60アミノ酸以上、好ましくは約60〜約100アミノ酸、より好ましくは約60〜約80アミノ酸からなる部分アミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなどが挙げられる。該部分アミノ酸配列はABP1のN末端側配列であっても、C末端側配列であってもよいし、内部配列であってもよい。あるいは、それらの部分配列同士の組み合わせであってもよい。
好ましくは、本発明の活性化ペプチドは、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列のN末端側の約60アミノ酸以上、より好ましくは約60〜約100アミノ酸、特に好ましくは約60〜約80アミノ酸の部分アミノ酸配列を含有する。
特に好ましい範囲においては、本発明の活性化ペプチドは、全長蛋白質よりもさらに高い活性(例、ASK1カスケード活性化促進活性、アポトーシス誘導活性等)を示す場合がある。
一方、ABP1の部分ペプチドの中には、ABP1もしくは「本発明の活性化ペプチド」の(拮抗)阻害物質として機能し得るものが含まれる。かかる部分ペプチドとしては、ASK1に対する結合活性を有するが、該キナーゼを活性化し得ないものが挙げられる。本明細書においては、当該部分ペプチドを以下「本発明の阻害ペプチド」と称することとする。
すなわち、本発明の阻害ペプチドは、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、且つASK1を活性しないか、もしくは不活性化し得るペプチドである。該阻害ペプチドとしては、例えば、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列中約35アミノ酸以下からなる部分アミノ酸配列、好ましくはN末端側の部分アミノ酸配列を含有するものが挙げられる。
本発明のABP1の部分ペプチド(本発明の活性化ペプチドおよび本発明の阻害ペプチドの両者を包含する;以下、単に「本発明の部分ペプチド」と略記する場合がある)は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。ここでエステルにおけるRとしては、ABP1について前記したと同様のものが挙げられる。これらのペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の部分ペプチドには、上記したABP1と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明のABP1またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のABP1またはその塩は、前述した温血動物の細胞または組織から自体公知の蛋白質の精製方法によって調製することができる。具体的には、温血動物の組織または細胞をホモジナイズし、可溶性画分を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー等で分離精製することによって、ABP1またはその塩を製造することができる。
本発明のABP1もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、「本発明のABP1類」と包括的にいう場合がある)は、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。ABP1を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とする蛋白質を製造することができる。
ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の1) 〜5) に記載された方法に従って行われる。
1) M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
2) SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
3) 泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
4) 矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
5) 矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
このようにして得られたABP1類は、公知の精製法により単離・精製することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られる蛋白質(ペプチド)が遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に蛋白質(ペプチド)が塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明のABP1類の合成には、通常市販の蛋白質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とする蛋白質もしくはペプチド(以下、「蛋白質等」と総称する場合もある)の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂から蛋白質等を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的の蛋白質等またはそのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、蛋白質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒は、蛋白質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどのアミン類,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度は蛋白質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
蛋白質等のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(蛋白質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いた蛋白質等とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去した蛋白質等とを製造し、この両蛋白質等を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護蛋白質等を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗蛋白質等を得ることができる。この粗蛋白質等は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望の蛋白質等のアミド体を得ることができる。
蛋白質等のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、蛋白質等のアミド体と同様にして、所望の蛋白質等のエステル体を得ることができる。
本発明の部分ペプチドまたはその塩は、ABP1またはその塩を適当なペプチダーゼで切断することによっても製造することができる。
さらに、本発明のABP1類は、ABP1またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養し、得られる培養物からABP1類を分離精製することによって製造することもできる。
本発明のABP1またはその部分ペプチドをコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、ヒトまたは他の温血動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など(特に、脳や脳の各部位)由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、「RT-PCR法」と略称する)によって増幅することもできる。
本発明のABP1をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1または配列番号3に示される塩基配列を含有するDNA、あるいは配列番号1または配列番号3に示される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性(例、ASK1カスケード活性化促進活性、アポトーシス誘導活性など)を有する蛋白質をコードするDNAなどが挙げられる。
配列番号1または配列番号3に示される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1または配列番号3に示される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、特に好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。
本発明のABP1をコードするDNAは、好ましくは配列番号1に示される塩基配列を含有するhABP1 DNAまたは配列番号3に示される塩基配列を含有するmABP1 DNA、あるいは他の温血動物(例えば、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)におけるそのホモログなどである。
本発明の部分ペプチドをコードするDNAは、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞・組織由来のcDNA、上記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接RT-PCR法によって増幅することもできる。
具体的には、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、
(1)配列番号1または配列番号3に示される塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または
(2)配列番号1または配列番号3に示される塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、且つ
(2a)該DNAにコードされるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同質の活性(例、ASK1カスケード活性化促進活性、アポトーシス誘導活性など)、または
(2b)該DNAにコードされるアミノ酸配列を含む蛋白質の活性を阻害する活性(例、ASK1カスケード活性化阻害活性、アポトーシス抑制活性など)
を有するペプチドをコードするDNAなどが用いられる。
配列番号1または配列番号3に示される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、該塩基配列中の対応する部分と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドなどが用いられる。
本発明のABP1またはその部分ペプチドをコードするDNAは、該蛋白質またはペプチドをコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当な発現ベクターに組み込んだDNAを、本発明の蛋白質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとハイブリダイゼーションすることによってクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することができる。
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
本発明のABP1またはその部分ペプチドをコードするDNA発現ベクターは、例えば、ABP1をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194);酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15);λファージなどのバクテリオファージ;レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルス;pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。
宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。
宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によって選択することもできる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明の蛋白質のN端末側に付加してもよい。宿主がエシェリヒア属菌である場合、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが;宿主がバチルス属菌である場合、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが;宿主が酵母である場合、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列などが;宿主が動物細胞である場合、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ用いられる。
上記のようにして得られる「本発明のABP1またはその部分ペプチドをコードするDNA」を含有する形質転換体は、公知の方法に従い、該DNAを含有する発現ベクターで、宿主を形質転換することによって製造することができる。
ここで、発現ベクターとしては、前記したものが挙げられる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞、Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合、昆虫細胞としては、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
形質転換は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
エシェリヒア属菌は、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
バチルス属菌は、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
酵母は、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
昆虫細胞および昆虫は、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って形質転換することができる。
形質転換体の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
例えば、宿主がエシェリヒア属菌またはバチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地としては液体培地が好ましい。また、培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有することが好ましい。ここで、炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖などが;窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質が;無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。また、培地には、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは、好ましくは約5〜8である。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。必要により、プロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を培地に添加してもよい。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が酵母である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕などが挙げられる。培地のpHは、好ましくは約5〜8である。培養は、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。必要に応じて、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えばGrace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6.2〜6.4である。培養は、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外に本発明のABP1もしくはその部分ペプチドまたはその塩(ABP1類)を生成させることができる。
前記形質転換体を培養して得られる培養物から、本発明のABP1類を自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、本発明のABP1類を培養菌体あるいは細胞から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。
このようにして得られた可溶性画分中に含まれる本発明のABP1類の単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
かくして得られるABP1類が遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって、該遊離体を塩に変換することができ、ABP1類が塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、形質転換体が産生するABP1類を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。該蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして得られる本発明のABP1類の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより確認することができる。
さらに、本発明のABP1類は、上記のABP1またはその部分ペプチドをコードするDNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞蛋白質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。あるいは、さらにRNAポリメラーゼを含む無細胞転写/翻訳系を用いて、ABP1またはその部分ペプチドをコードするDNAを鋳型としても合成することができる。
本発明のABP1またはその塩に対する抗体(以下、「本発明の抗体」と略記する場合がある)は、ABP1またはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。ABP1またはその塩に対する抗体は、本発明のABP1類を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。抗原として用いられる本発明のABP1類としては、上記のABP1もしくはその部分ペプチドまたはその塩であればいずれのものを用いてもよい。
ABP1またはその塩に対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、例えば以下のようにして製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のABP1類を、哺乳動物に対して、投与により抗体産生が可能な部位に、それ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与する。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
例えば、抗原で免疫された哺乳動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化蛋白質と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行うことができる。融合操作は、既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの哺乳動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は、1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、例えば、抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法;抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した蛋白質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法;などによりスクリーニングすることができる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。モノクローナル抗体の選別は、通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行うことができる。モノクローナル抗体の選別および育種用培地は、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。このような培地としては、例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行うことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
このようにして得られたモノクローナル抗体は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って分離精製することができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
ABP1またはその塩に対するポリクローナル抗体は、自体公知の方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(ABP1類)自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体を作製し、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行い、該免疫動物から本発明の抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。また、哺乳動物以外にニワトリなども用いることができる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプリングさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤、例えばグルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、哺乳動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行われる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行うことができる。
ABP1の部分ペプチドを抗原として用いる場合、そのABP1上の位置は特に限定されないが、例えば、各種温血動物間でよく保存された領域の部分アミノ酸配列を有するオリゴペプチドが挙げられる。具体的には、ヒトおよびマウス間で完全に保存されている配列番号5または配列番号6に示されるアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましく例示される。
本発明のABP1をコードする塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含有するポリヌクレオチド(以下、「本発明のアンチセンスポリヌクレオチド」と略記する場合がある)としては、ABP1をコードする塩基配列と完全に相補的な塩基配列もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を有し、ABP1をコードするRNAからの該蛋白質の翻訳を抑制する作用を有するものであればよい。「実質的に相補的な塩基配列」としては、ABP1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と、該蛋白質を発現する細胞の生理学的条件下でハイブリダイズし得る塩基配列、より具体的には、ABP1またはその部分ペプチドをコードする塩基配列の相補鎖との間で、オーバーラップする部分に関して約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、クローン化した、あるいは決定された本発明のポリヌクレオチドの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたポリヌクレオチドは、ABP1をコードする遺伝子の複製または発現を阻害することができる。即ち、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、ABP1をコードする遺伝子から転写されるRNAとハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害することができる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの標的領域は、アンチセンスポリヌクレオチドがハイブリダイズすることにより、結果としてABP1の翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、ABP1をコードするRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約15塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性の問題を考慮すれば、約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいがそれに限定されない。具体的には、例えば、ABP1をコードする遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループが標的領域として選択しうるが、該遺伝子内部の如何なる領域も標的として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもまた好ましい。
さらに、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、ABP1をコードするmRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAであるABP1をコードする遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。
アンチセンスポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているデオキシリボヌクレオチド、D−リボースを含有しているリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいてもよい。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンや脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてもよい。
アンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンスポリヌクレオチドをより安定なものにする、アンチセンスポリヌクレオチドの細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンスポリヌクレオチドの毒性をより小さなものにする。こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al., Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
アンチセンスポリヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していてよく、リポソーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
ABP1をコードするmRNAもしくは遺伝子初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムもまた、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドに包含され得る。「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。ABP1をコードするmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
ABP1をコードするmRNAもしくは遺伝子初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的な二本鎖オリゴRNA(small interfering RNA;siRNA)もまた、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドに包含され得る。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、最近、この現象が哺乳動物細胞でも起こることが確認されたことから[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リボザイムの代替技術として注目されている。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびリボザイムは、本発明の蛋白質をコードするcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列情報に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的領域を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。siRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中で、例えば、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
ABP1または本発明の活性化ペプチドは、ASK1と結合してこれを活性化することから、ASK1キナーゼカスケードを介したアポトーシス誘導を促進し得る。従って、1) ABP1または本発明の活性化ペプチド、2) ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチド、3) ABP1をコードする塩基配列またはその一部を含有するポリヌクレオチド、4) 本発明の抗体、5) 本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、6) 本発明の阻害ペプチドは以下の用途を有する。
(1)ASK1活性化促進剤・アポトーシス誘発剤
ABP1はASK1と結合してこれを活性化することにより、ASK1キナーゼカスケードを介したアポトーシス誘導を促進する機能を有する。従って、細胞にABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を添加したり、ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入して発現させ、細胞内のABP1量を増加させることにより、該細胞内ASK1の活性化を促進したり、該細胞にアポトーシスを誘導したりすることができ、例えば、アポトーシス研究用試薬として用いることができる。
ABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を上記のASK1活性化促進剤、アポトーシス誘発剤として使用する場合、水もしくは適当な緩衝液(例、リン酸緩衝液、PBS、トリス塩酸緩衝液など)中に適当な濃度となるように溶解することにより調製することができる。また、必要に応じて、通常使用される保存剤、安定剤、還元剤、等張化剤等を配合させてもよい。
一方、ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチドを上記のASK1活性化促進剤、アポトーシス誘発剤として使用する場合は、該ポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、上記の形質転換法(例、リポソーム法、エレクトロポレーション法など)を用いて細胞に導入することができる。
(2)アポトーシス抑制が関連する疾患の予防・治療剤
上記のように、ABP1はASK1を活性化して細胞にアポトーシスを誘導する機能を有するので、生体内においてABP1またはそれをコードする核酸(例、遺伝子、mRNA等)に異常があったり、これを欠損している場合、あるいはその発現量が異常に減少している場合、さらには、他の何らかの要因で細胞のアポトーシス誘導が過度に抑制されている場合、例えば、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器過形成などの種々の疾病を発症する。
したがって、ABP1の減少もしくは他の要因により不要な細胞や異常細胞のアポトーシスによる除去が期待できない患者がいる場合に、a)ABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を該患者に投与してABP1の量を補充したり、b)(i)ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするDNAを該患者に投与して標的細胞内で発現させることによって、あるいは(ii)単離した標的細胞にABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするDNAを導入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるABP1の量を増加させ、異常細胞や不要となった細胞にASK1カスケードを介するアポトーシスを誘導することができる。
したがって、a)ABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩、あるいはb)ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチドを、アポトーシスを誘発することが予防・治療上有効な疾患、例えば、癌(例、白血病、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、メラノーマ、骨髄腫、骨肉腫、脳腫瘍等)、自己免疫疾患(例、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、乾癬、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、糸球体腎炎等)、ウイルス感染症(例、出血熱、T細胞白血病、カポジ肉腫、伝染性単核症、リンパ腫、上咽頭癌、子宮頚癌、皮膚癌、肝炎、肝癌等)、内分泌疾患(例、ホルモン過剰症、サイトカイン過剰症等)、血液疾患(例、血球増加症、B細胞リンパ腫、多血症等)、臓器過形成(例、半陰陽、停留睾丸、奇形腫、腎芽細胞癌、多発性嚢胞腎、心・大動脈奇形、合指症等)、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発などの予防・治療剤として使用することができる。
ABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
一方、ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチドを上記予防・治療剤として使用する場合は、該ポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って製剤化することができる。該ポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。
例えば、a)ABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩、あるいはb)ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、a)ABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩、あるいはb)ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチドを、生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
ABP1または本発明の活性化ペプチドの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
ABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(3)遺伝子診断剤
ABP1をコードする塩基配列またはその一部を含有するポリヌクレオチド(以下、「本発明のセンスポリヌクレオチド」という)および本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、プローブとして使用することにより、ヒトまたは他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)におけるABP1をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAの損傷もしくは突然変異やmRNAのスプライシング異常あるいは発現低下、あるいは該DNAの増幅やmRNAの発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。ABP1をコードする塩基配列の一部を含有するポリヌクレオチドは、プローブとして必要な長さ(例えば、約15塩基以上)を有する限り特に制限されず、また、ABP1の部分ペプチドをコードしている(即ち、in frameである)必要もない。
本発明のセンスまたはアンチセンスポリヌクレオチドを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーション、定量的RT−PCR、PCR−SSCP法、アレル特異的PCR、PCR−SSOP法、DGGE法、RNaseプロテクション法、PCR−RFLP法などにより実施することができる。
例えば、被検温血動物の細胞から抽出したRNA画分についてのノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT−PCRの結果、ABP1の発現低下が検出された場合や、RNA画分もしくはゲノミックDNA画分についてPCR−SSCP法を実施した結果、ABP1遺伝子の突然変異が検出された場合は、アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制が関連する疾患、例えば、癌(例、白血病、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、メラノーマ、骨髄腫、骨肉腫、脳腫瘍等)、自己免疫疾患(例、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、乾癬、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、糸球体腎炎等)、ウイルス感染症(例、出血熱、T細胞白血病、カポジ肉腫、伝染性単核症、リンパ腫、上咽頭癌、子宮頚癌、皮膚癌、肝炎、肝癌等)、内分泌疾患(例、ホルモン過剰症、サイトカイン過剰症等)、血液疾患(例、血球増加症、B細胞リンパ腫、多血症等)、臓器過形成(例、半陰陽、停留睾丸、奇形腫、腎芽細胞癌、多発性嚢胞腎、心・大動脈奇形、合指症等)、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発などの疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
一方、ノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT−PCRによりABP1の発現過多が検出された場合は、アポトーシス亢進または炎症が関連する疾患、例えば、ウイルス感染症(例、AIDS、インフルエンザ、不明熱等)、内分泌疾患(例、ホルモン欠乏症、サイトカイン欠乏症等)、血液疾患(例、血球減少症、腎性貧血等)、臓器形成不全(例、甲状腺萎縮、口蓋裂等)、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患(例、ポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、小脳変性症等)、虚血性心疾患(例、狭心症、心筋梗塞等)、放射線障害、紫外線障害(例、日焼け等)、中毒性疾患(例、重金属による腎尿細管細胞傷害、アルコールによる肝細胞傷害等)、栄養障害(例、ビタミン、微量元素欠乏による胸腺の萎縮等)、炎症性疾患(例、急性膵炎、関節炎、歯周病、大腸炎等)、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患(例、動脈硬化等)、呼吸器系疾患(例、間質性肺炎、肺繊維症等)、軟骨疾患(例、変形性関節炎等)などの疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
(4)本発明の抗体を用いる診断方法
本発明の抗体は、ABP1を特異的に認識することができるので、被検液中のABP1の検出に使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化されたABP1とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたABP1の割合を測定することを特徴とする被検液中のABP1またはその塩の定量法、および
(ii)被検液と、担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された別の本発明の抗体とを、同時あるいは連続的に反応させた後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することを特徴とする被検液中のABP1またはその塩の定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、2種の抗体はABP1の異なる部分を認識するものであることが望ましい。例えば、一方の抗体がABP1のN端部(例、配列番号5に示されるアミノ酸配列を有する部分など)を認識する抗体であれば、他方の抗体としてABP1のC端部(例、配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する部分など)と反応するものを用いることができる。
また、ABP1に対するモノクローナル抗体を用いてABP1の定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行うこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いるABP1またはその塩の定量法は、特に制限されるべきものではなく、被検液中の抗原量(例えば、ABP1量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常蛋白質あるいは酵素等を不溶化・固定化するのに用いられる化学結合を用いてもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明の抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明の抗体を反応させ(2次反応)た後、不溶化担体上の標識剤の量(活性)を測定することにより被検液中のABP1量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序で行っても、また、同時に行ってもよいし、時間をずらして行ってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相化抗体あるいは標識化抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
サンドイッチ法によるABP1の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明の抗体は、ABP1の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。例えば、上述のように、2次反応で用いられる抗体が、ABP1のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体としては、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明の抗体は、サンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどにも用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、ポリエチレングリコールや前記抗体(1次抗体)に対する2次抗体などを用いてB/F分離を行う液相法、および、1次抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは1次抗体は可溶性のものを用い、2次抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてABP1の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、ABP1またはその塩を感度よく定量することができる。
したがって、被検温血動物由来の生体試料(例、血液、血漿、尿、生検等)を被検体とし、本発明の抗体を用いて該検体中のABP1またはその塩の濃度を定量することによって、ABP1濃度の減少が検出された場合、アポトーシス抑制が関連する疾患、例えば、癌(例、白血病、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、メラノーマ、骨髄腫、骨肉腫、脳腫瘍等)、自己免疫疾患(例、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、乾癬、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、糸球体腎炎等)、ウイルス感染症(例、出血熱、T細胞白血病、カポジ肉腫、伝染性単核症、リンパ腫、上咽頭癌、子宮頚癌、皮膚癌、肝炎、肝癌等)、内分泌疾患(例、ホルモン過剰症、サイトカイン過剰症等)、血液疾患(例、血球増加症、B細胞リンパ腫、多血症等)、臓器過形成(例、半陰陽、停留睾丸、奇形腫、腎芽細胞癌、多発性嚢胞腎、心・大動脈奇形、合指症等)、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発などの疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
一方、ABP1濃度の増加が検出された場合には、アポトーシス亢進または炎症が関連する疾患、例えば、ウイルス感染症(例、AIDS、インフルエンザ、不明熱等)、内分泌疾患(例、ホルモン欠乏症、サイトカイン欠乏症等)、血液疾患(例、血球減少症、腎性貧血等)、臓器形成不全(例、甲状腺萎縮、口蓋裂等)、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患(例、ポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、小脳変性症等)、虚血性心疾患(例、狭心症、心筋梗塞等)、放射線障害、紫外線障害(例、日焼け等)中毒性疾患(例、重金属による腎尿細管細胞傷害、アルコールによる肝細胞傷害等)、栄養障害(例、ビタミン、微量元素欠乏による胸腺の萎縮等)、炎症性疾患(例、急性膵炎、関節炎、歯周病、大腸炎等)、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患(例、動脈硬化等)、呼吸器系疾患(例、間質性肺炎、肺繊維症等)、軟骨疾患(例、変形性関節炎等)などの疾患に罹患しているか、あるいは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
(5)ASK1活性化阻害剤・アポトーシス抑制剤
本発明の抗体は、ABP1と特異的に結合することにより、ABP1のASK1への結合を阻害し、ASK1活性化およびアポトーシス/炎症性サイトカイン産生誘導促進作用を不活性化(すなわち、中和)することができる。一方、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドはABP1の発現を阻害して、該蛋白質の産生量を減少させるので、結果的にABP1によるASK1活性化およびアポトーシス/炎症性サイトカイン産生誘導促進作用を低減させることができる。
したがって、細胞に本発明の抗体を添加してABP1を不活性化したり、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを細胞に導入して細胞内のABP1量を減少させることにより、該細胞内におけるASK1の活性化を阻害したり、該細胞のアポトーシス/炎症性サイトカイン産生を抑制したりすることができ、例えば、アポトーシス、炎症反応研究用の試薬として用いることができる。
本発明の抗体を上記のASK1活性化阻害剤、アポトーシス/炎症性サイトカイン産生抑制剤として使用する場合、水もしくは適当な緩衝液(例、リン酸緩衝液、PBS、トリス塩酸緩衝液など)中に適当な濃度となるように溶解することにより調製することができる。また、必要に応じて、通常使用される保存剤、安定剤、還元剤、等張化剤等を配合させてもよい。
一方、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを上記のASK1活性化阻害剤、アポトーシス抑制剤として使用する場合は、該ポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、上記の形質転換法(例、リポソーム法、エレクトロポレーション法など)を用いて細胞に導入することができる。
(6)アポトーシス亢進または炎症が関連する疾患の予防・治療剤
上記のように、ABP1はASK1を活性化して細胞にアポトーシスを誘導したり、炎症を惹起する機能を有するので、生体内においてABP1またはそれをコードする核酸(例、遺伝子、mRNA等)に異常がある(高活性変異体の出現)場合、あるいはその発現量が異常に増加している場合、さらには、他の何らかの要因で細胞のアポトーシス誘導または炎症性サイトカイン産生が異常亢進している場合、例えば、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症、虚血性神経障害(脳虚血)、糖尿病性末梢神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患、軟骨疾患などの種々の疾病を発症する。
したがって、ABP1の増加等により生体にとって必要な細胞までがアポトーシスによって失われている、あるいは炎症性疾患を発病している患者がいる場合に、a)本発明の抗体を該患者に投与してABP1を不活性化したり、b)(i)本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを該患者に投与して標的細胞内に導入する(および発現させる)ことによって、あるいは(ii)単離した標的細胞に本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを導入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるABP1の量を減少させ、本来必要な細胞のアポトーシス死や炎症反応を抑制することができる。
したがって、a)本発明の抗体またはb)本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを、アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患、例えばABP1の過剰発現などに起因する疾患、具体的には、ウイルス感染症(例、AIDS、インフルエンザ、不明熱等)、内分泌疾患(例、ホルモン欠乏症、サイトカイン欠乏症等)、血液疾患(例、血球減少症、腎性貧血等)、臓器形成不全(例、甲状腺萎縮、口蓋裂等)、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患(例、ポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、小脳変性症等)、虚血性心疾患(例、狭心症、心筋梗塞等)、放射線障害、紫外線障害(例、日焼け等)中毒性疾患(例、重金属による腎尿細管細胞傷害、アルコールによる肝細胞傷害等)、栄養障害(例、ビタミン、微量元素欠乏による胸腺の萎縮等)、炎症性疾患(例、急性膵炎、関節炎、歯周病、大腸炎等)、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患(例、動脈硬化等)、呼吸器系疾患(例、間質性肺炎、肺繊維症等)、軟骨疾患(例、変形性関節炎等)などの疾患の予防・治療剤として用いることができる。
本発明の抗体を上記予防・治療剤として使用する場合、前記したABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を含有する医薬と同様にして製剤化することができる。また、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを上記予防・治療剤として使用する場合、前記したABP1または本発明の活性化ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する医薬と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
本発明の抗体の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(7)本発明の阻害ペプチドの用途
上記のように、本発明の阻害ペプチドはABP1の(拮抗)阻害物質として機能し得る、すなわち、ASK1に結合し得るがそれを活性しないか、もしくは不活性化し得るので、本発明の抗体と同様に、ASK1活性化阻害剤、アポトーシス/炎症性サイトカイン産生抑制剤、あるいはアポトーシス亢進または炎症が関連する疾患の予防・治療剤に用いることができる。
本発明の阻害ペプチドをASK1活性化阻害・アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤として使用する場合、前記したABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を含有するASK1活性化促進・アポトーシス誘発剤と同様にして試薬調製することができる。また、本発明の阻害ペプチドを上記予防・治療剤として使用する場合、前記したABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を含有する医薬と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
本発明の阻害ペプチドの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(8)リン酸化活性を有しないASK1部分ペプチドまたはその塩の用途
後記実施例において実証される通り、ASK1のABP1との結合に関与する部位はN末端側の活性化制御ドメインであることから、該活性化制御ドメインを有するが、カスケードの下流に位置するMAPKKの活性化を担うキナーゼドメインを欠失したASK1の部分ペプチドは、ASK1の(拮抗)阻害物質として機能し得る。すなわち、該ペプチドはABP1に結合し得るがそれによって活性化され得ないので、細胞に内在するASK1とABP1との結合およびそれによるASK1の活性化を競合的に阻害し得る。したがって、該部分ペプチドは、ABP1阻害剤、アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤、あるいはアポトーシス亢進または炎症が関連する疾患の予防・治療剤に用いることができる。
ASK1のキナーゼドメインとしては、例えばヒトASK1の場合、前記特許文献1(特開平10−93)の配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号678〜936で示されるアミノ酸配列が挙げられる。従って、N末端側の活性化制御ドメインを有し、且つキナーゼドメインを欠失したASK1の部分ペプチド(以下、「本発明のASK1部分ペプチド」と略記する場合がある)としては、上記ヒトASK1のアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜677で示されるアミノ酸配列の全部もしくは一部(以下、包括的に「ASK1−N配列」と称する)と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、且つABP1との結合能を有するペプチドが挙げられる。ここで「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、上記ヒトASK1のアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜677で示されるアミノ酸配列の全部もしくは一部と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
また、本発明のASK1部分ペプチドには、例えば、1) ASK1−N配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、2) ASK1−N配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、3) ASK1−N配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、4) ASK1−N配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または5) それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する変異ペプチドも含まれる。
本発明のASK1部分ペプチドは、上記のABP1の部分ペプチドと同様の方法により調製することができる。
本発明のASK1部分ペプチドをABP1阻害剤、特にアポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤として使用する場合、前記したABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を含有するASK1活性化促進・アポトーシス誘発剤と同様にして試薬調製することができる。また、本発明のASK1部分ペプチドを上記予防・治療剤として使用する場合、前記したABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を含有する医薬と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
本発明のASK1部分ペプチドの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(9)ASK1活性化調節物質のスクリーニング
本発明はまた、ABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞を用いることによる、ASK1活性化調節物質のスクリーニング方法を提供する。該スクリーニング方法は、(A)ABP1とASK1の結合性を利用する方法、(B)ASK1の活性化を指標とする方法および(C)ABP1の発現量を指標とする方法に大別される。(A)および(B)の方法においては、ASK1もしくはABP1との結合性を保持するその部分ペプチド(即ち、少なくともN末端活性化制御ドメインを含む部分ペプチド)またはその塩あるいはそれを産生する細胞がさらに用いられる。
(A)ABP1とASK1の結合性を利用するスクリーニング方法
ABP1はASK1と結合してこれを活性化することができるので、ABP1または本発明の活性化ペプチドとASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドを用いたバインディングアッセイ系を構築することによって、ABP1または本発明の活性化ペプチドと同様の作用を有する化合物のスクリーニングや、ABP1または本発明の活性化ペプチドの作用を阻害する化合物のスクリーニングを行うことができる。すなわち、本発明は、ABP1または本発明の活性化ペプチドとASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドを用いるASK1活性化調節物質のスクリーニング方法を提供する。
より具体的には、本発明は、
(a)(1)ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドに、ABP1または本発明の活性化ペプチドを接触させた場合と(2)ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドに、ABP1または本発明の活性化ペプチドおよび被検物質を接触させた場合との、ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドとABP1または本発明の活性化ペプチドとの結合量の比較を行うことを特徴とするASK1活性化調節物質のスクリーニング方法、
(b)(1)ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドを産生する細胞に、ABP1または本発明の活性化ペプチドを接触させた場合と(2)ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドを産生する細胞に、ABP1または本発明の活性化ペプチドおよび被検物質を接触させた場合との、ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドとABP1または本発明の活性化ペプチドとの結合量の比較を行うことを特徴とするASK1活性化調節物質のスクリーニング方法、および
(c)ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドおよびABP1または本発明の活性化ペプチドを産生し、且つ両者が結合した場合にレポーター遺伝子の転写が活性化される細胞における該レポーター遺伝子の発現量を、被検物質の存在下と非存在下とで比較することを特徴とするASK1活性化調節物質のスクリーニング方法を提供する。
上記(a)または(b)のスクリーニング方法において用いられるASK1は、ヒトまたは他の温血動物の細胞から自体公知の方法(例えば、ABP1について上記したと同様の方法)を用いて単離精製することができる。N末端側活性化制御ドメインを含むASK1の部分ペプチドは、上記したN末端側活性化制御ドメインのアミノ酸配列を有する限り特に制限されず、キナーゼドメインやC末端側アミノ酸配列の一部を含んでいてもよい。該部分ペプチドはASK1を適当な蛋白質分解酵素を用いて消化することにより得ることができる。また、ASK1およびN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドは、自体公知の遺伝子工学的手法に従ってそれをコードするDNAをクローニングした後、前記したABP1の発現方法に従って組換え生産することもできる。
ABP1および本発明の活性化ペプチド(以下、単にABP1という場合がある)は、上記の方法に従って調製することができる。
ASK1を産生する細胞としては、それを発現するヒトまたは他の温血動物細胞であれば特に制限はないが、例えば、HeLa細胞、HEK293細胞等が挙げられる。また、ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチド(以下、単にASK1という場合がある)を産生する細胞としては、上記の遺伝子工学的手法により作製された形質転換体が例示される。
被検物質としては、例えば蛋白質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。
結合量の測定は、例えば、標識した抗ABP1抗体および抗ASK1抗体を用いたウェスタンブロット解析、ABP1またはASK1のいずれかを標識(例えば、〔H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで)しての結合アッセイやゲルシフトアッセイ、あるいは表面プラズモン共鳴(SPR)などにより行うことができる。
上記のスクリーニング方法において、ASK1と結合してABP1とASK1との結合を阻害する化合物をASK1活性化調節物質として選択することができる。
本スクリーニング方法において、ABP1とASK1との反応は、通常約37℃で数時間程度行うことができる。
例えば、標識ABP1を用いた結合アッセイにより上記のスクリーニング方法を実施するには、まず、ASK1またはそれを産生する細胞をスクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりASK1標品を調製する。バッファーは、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどの、ABP1とASK1との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるABP1やASK1の分解を抑える目的で、PMSF、ロイペプチン、バシトラシン、アプロチニン、E−64(タンパク質研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。
一方、細胞が固定化細胞の場合、培養器に固定化させたまま、つまり細胞を生育させた状態で、あるいはグルタルアルデヒドやパラホルムアルデヒドで固定した細胞を用いて、ABP1とASK1を結合させることができる。この場合、該緩衝液は培地やハンクス液などが用いられる。
そして、0.01ml〜10mlの該ASK1標品に、一定量(例えば、2000Ci/mmolの場合、約10000cpm〜1000000cpm)の標識したABP1(例えば、〔125I〕で標識したABP1)を添加し、同時に10−4M〜10−10Mの被検物質を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のABP1を加えた反応チューブも用意する。反応は0℃〜50℃、望ましくは4℃〜37℃で20分〜24時間、望ましくは30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過(ASK1産生細胞を用いる場合)またはB/F分離(精製ASK1を用いる場合)し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙または固相に残存する放射活性(例えば、〔125I〕の量)を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで測定する。拮抗する物質がない場合のカウント(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が、例えばカウント(B−NSB)の50%以下になる被検物質をASK1活性化調節物質として選択することができる。
本発明のスクリーニング用キットは、ABP1、好ましくはさらにASK1またはそれを産生する細胞を含有するものである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては次のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
〔スクリーニング用試薬〕
1) 測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
2) ASK1標品
HeLa細胞またはHEK293細胞を12穴プレートに5×10個/穴で継代し、37℃、5%CO、95%airで2日間培養したもの。
3) 標識したABP1標品
ABP1を〔H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したもの。
4) ABP1標準液
ABP1を0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで0.1mMとなるように溶解し、−20℃で保存したもの。
〔測定法〕
1) 12穴組織培養用プレートにて培養したASK1産生細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
2) 10−3〜10−10Mの被検物質溶液を5μl加えた後、5nMの標識したABP1を5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには被検物質のかわりに10−4MのABP1を5μl加えておく。
3) 反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識ABP1を0.5mlの0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
4) 液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次式(数1)で求める。なお、〔125I〕で標識されている場合は、液体シンチレーターと混合することなしに直接ガンマーカウンターで測定できる。
〔数1〕
PMB=100×(B−NSB)/(B−NSB)
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の結合量
NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
:最大結合量
上記(c)のスクリーニング法において用いられる細胞としては、(1)ASK1またはN末端側活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドと転写因子(例えば、GAL4、VP16等)のDNA結合ドメインもしくは転写活性化ドメインのいずれか一方との融合蛋白質をコードするDNA、(2)ABP1または本発明の活性化ペプチドと転写因子の他方のドメインとの融合蛋白質をコードするDNA、および(3)該転写因子により活性化されるプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子を含有する細胞、好ましくは酵母細胞、哺乳動物細胞等が挙げられる。レポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子、ペルオキシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、グリーンフルオレセントプロテイン(GFP)遺伝子などが挙げられる。
本スクリーニング方法において、上記の細胞を、使用する宿主細胞に適合した培養条件下で数時間〜1日程度培養した後、細胞抽出液または上清液を得て、常法によりレポーター遺伝子の検出を行う。
上記のスクリーニング方法において、レポーター遺伝子の発現を阻害する化合物をASK1活性化調節物質として選択することができる。
(B)ASK1の活性化を指標とするスクリーニング方法
ABP1とASK1との相互作用に及ぼす被検物質の効果をASK1の活性化を測定することにより調べれば、該物質がASK1の活性化を阻害するか、あるいは促進するかを直接評価することができる。すなわち、本発明は、ASK1またはN末端側活性化制御ドメインおよびキナーゼドメインを含むその部分ペプチドを産生する細胞における該蛋白質もしくは該ペプチドの活性化を、(1)ABP1または本発明の活性化ペプチドの存在下と、(2)ABP1または本発明の活性化ペプチドおよび被検物質の存在下とで、測定・比較することによるASK1活性化調節物質のスクリーニング方法を提供する。
本スクリーニング法において、ASK1またはN末端側活性化制御ドメインおよびキナーゼドメインを含むその部分ペプチドを産生する細胞(以下、単にASK1産生細胞という場合がある)としては、ASK1を内因的に産生する細胞(例、HeLa細胞、HEK293細胞等)や、ASK1またはN末端側活性化制御ドメインおよびキナーゼドメインを含むその部分ペプチドをコードするDNAを導入された動物細胞などが挙げられる。N末端側活性化制御ドメインおよびキナーゼドメインを含むASK1の部分ペプチドとしては、前記特許文献1(特開平10−93)の配列表配列番号1に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号1〜936で示されるアミノ酸配列の全部もしくは一部(以下、包括的に「ASK1−NK配列」と称する)と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、且つABP1と結合することにより活性化され得るペプチドが挙げられる。ここで「実質的に同一のアミノ酸配列」としては、上記ヒトASK1−NK配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
また、上記部分ペプチドには、例えば、1) ASK1−NK配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、2) ASK1−NK配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、3) ASK1−NK配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、4) ASK1−NK配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または5) それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する変異ペプチドも含まれる。
ABP1または本発明の活性化ペプチド(以下、単にABP1という場合がある)は外部から細胞に添加してもよいし、あるいはASK1産生細胞自体が産生するものであってもよい。後者の場合、ABP1は内因的に産生されてもよいし、ASK1産生細胞を宿主として上記ABP1の発現方法に従って遺伝子工学的に作製された形質転換体であってもよい。
被検物質としては、例えば蛋白質、ペプチド、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これらの物質は新規なものであってもよいし、公知のものであってもよい。
ASK1の活性化は、ASK1の自己リン酸化、ASK1カスケードの下流に位置するキナーゼ(例えば、MKK4/7、MKK3/6、JNK、p38等)やASK1の基質となり得る他の蛋白質もしくは合成ペプチドのリン酸化、細胞死誘導率などを測定することにより評価することができる。
具体的には、まずASK1産生細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行うにあたっては、前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、被検物質(細胞がABP1を産生しない場合はさらにABP1)などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物や現象をそれぞれの方法に従って定量する。
ASK1や他の蛋白質もしくはペプチドのリン酸化の検出は、リン酸化蛋白質(ペプチド)特異的抗体を用いたウェスタンブロット解析や、基質蛋白質(ペプチド)における[32P]標識ATPの取込みをゲル電気泳動およびオートラジオグラフィーにより検出する等の方法により行うことができる。
細胞死アッセイは、ABP1の発現を確認できる系(例えば、ABP1と蛍光蛋白質との融合蛋白質をコードするDNAを導入した細胞、あるいは選択マーカー遺伝子をさらに含むABP1発現ベクターを導入した細胞)において、プレートからの剥離や形態学的観察(例、膜のブレッビング、断片化等)などを指標として、全ABP1発現細胞中の死細胞の割合を算出することにより行うことができる。
上記のスクリーニング方法において、ASK1産生細胞に被検物質を添加した際にASK1が活性化された場合、該物質をASK1活性化促進物質として選択することができる。一方、被検物質を添加した際にASK1が不活性化された場合、該物質をASK1活性化阻害物質として選択することができる。
(C)ABP1の発現量を変化させる物質のスクリーニング方法
本発明のセンスおよびアンチセンスポリヌクレオチドをプローブとして用いることにより、あるいは本発明の抗体を用いることにより、ABP1の発現量を変化させる物質をスクリーニングすることができる。
すなわち、本発明は、例えば、(i)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞、または(ii)形質転換体等に含まれるABP1のmRNA量またはABP1蛋白質量を測定することによる、ABP1の発現量を変化させる物質、従ってASK1活性化調節物質のスクリーニング方法を提供する。
例えば、ABP1のmRNA量または蛋白質量の測定は具体的には以下のようにして行う。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して、薬剤(例えば、TNF−α、IL−1、Fas、抗癌剤など)あるいは物理化学的ストレス(例えば、UV、活性酸素、虚血など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。
得られた細胞に含まれるABP1のmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えば、RT−PCRなどの手法を用いることにより定量することができ、あるいは自体公知のノザンブロット解析により定量することもできる。一方、ABP1蛋白質量は、通常の方法により細胞等から蛋白質を抽出し、例えば、標識した抗ABP1抗体を用いたウェスタンブロット解析により定量することができる。
(ii)ABP1または本発明の活性化ペプチドを発現する形質転換体を上記の方法に従って作製し、該形質転換体に含まれるABP1または本発明の活性化ペプチド、あるいはそのmRNAを同様にして定量、解析することができる。
ABP1の発現量を変化させる化合物のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理化学的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理化学的ストレスと同時に被検物質を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞に含まれるABP1のmRNA量、または蛋白質量を定量、解析することにより行うことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に被検物質を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、該形質転換体に含まれるABP1または本発明の活性化ペプチドのmRNA量または蛋白質量を定量、解析することにより行うことができる。
被検物質としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら物質は新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。
上記のスクリーニング法において、ABP1の発現量を増加させる物質をASK1活性化促進物質、ABP1の発現量を減少させる物質をASK1活性化阻害物質として選択することができる。
上記(A)〜(C)のスクリーニング方法を用いて得られるABP1またはその塩の発現または活性を増大させる物質(=ASK1活性化促進物質(以下、本明細書においては同義で用いる))は、ASK1カスケードによるシグナル伝達を活性化して細胞にアポトーシスを誘導し得る。従って、細胞にASK1活性化促進物質を添加することにより、該細胞にアポトーシスを誘導することができ、例えば、アポトーシス研究用の試薬として用いることができる。
ASK1活性化促進物質をアポトーシス誘発剤として使用する場合、水もしくは適当な緩衝液(例、リン酸緩衝液、PBS、トリス塩酸緩衝液など)中に適当な濃度となるように溶解することにより調製することができる。また、必要に応じて、通常使用される保存剤、安定剤、還元剤、等張化剤等を配合させてもよい。
上記のように、ASK1活性化促進物質は細胞にアポトーシスを誘導する機能を有するので、ABP1の減少もしくは他の要因により不要な細胞や異常細胞のアポトーシスによる除去が期待できない患者がいる場合に、ASK1活性化促進物質を該患者に投与してASK1を活性化することによって、患者の体内における異常細胞や不要となった細胞にASK1カスケードを介するアポトーシスを誘導することができる。
したがって、ASK1活性化促進物質を、アポトーシスを誘発することが予防・治療上有効な疾患、例えば、癌(例、白血病、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、メラノーマ、骨髄腫、骨肉腫、脳腫瘍等)、自己免疫疾患(例、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、乾癬、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、糸球体腎炎等)、ウイルス感染症(例、出血熱、T細胞白血病、カポジ肉腫、伝染性単核症、リンパ腫、上咽頭癌、子宮頚癌、皮膚癌、肝炎、肝癌等)、内分泌疾患(例、ホルモン過剰症、サイトカイン過剰症等)、血液疾患(例、血球増加症、B細胞リンパ腫、多血症等)、臓器過形成(例、半陰陽、停留睾丸、奇形腫、腎芽細胞癌、多発性嚢胞腎、心・大動脈奇形、合指症等)、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発などの予防・治療剤として使用することができる。
ASK1活性化阻害物質を上記予防・治療剤として使用する場合、前記したABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を含有する医薬と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
ASK1活性化促進物質の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
一方、上記(A)〜(C)のスクリーニング方法を用いて得られるABP1またはその塩の発現または活性を減少させる物質(=ASK1活性化阻害物質(以下、本明細書においては同義で用いる))は、ASK1カスケードによるシグナル伝達を阻害して細胞のアポトーシスや炎症性サイトカインの産生を抑制し得る。従って、細胞にASK1活性化阻害物質を添加することにより、該細胞のアポトーシス/炎症性サイトカイン産生を抑制することができ、例えば、アポトーシス、炎症反応などの研究用試薬として用いることができる。
ASK1活性化阻害物質をアポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤として使用する場合、水もしくは適当な緩衝液(例、リン酸緩衝液、PBS、トリス塩酸緩衝液など)中に適当な濃度となるように溶解することにより調製することができる。また、必要に応じて、通常使用される保存剤、安定剤、還元剤、等張化剤等を配合させてもよい。
上記のように、ASK1活性化阻害物質は細胞のアポトーシスや炎症性サイトカインの産生を抑制する機能を有するので、ABP1の増加等により生体にとって必要な細胞までがアポトーシスによって失われている、あるいは炎症性疾患を発病している患者がいる場合に、ASK1活性化阻害物質を該患者に投与してASK1の活性化を阻害することにより、本来必要な細胞のアポトーシス死や炎症反応を抑制することができる。
したがって、ASK1活性化阻害物質を、アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患、例えば、ウイルス感染症(例、AIDS、インフルエンザ、不明熱等)、内分泌疾患(例、ホルモン欠乏症、サイトカイン欠乏症等)、血液疾患(例、血球減少症、腎性貧血等)、臓器形成不全(例、甲状腺萎縮、口蓋裂等)、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患(例、ポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、小脳変性症等)、虚血性心疾患(例、狭心症、心筋梗塞等)、放射線障害、紫外線障害(例、日焼け等)中毒性疾患(例、重金属による腎尿細管細胞傷害、アルコールによる肝細胞傷害等)、栄養障害(例、ビタミン、微量元素欠乏による胸腺の萎縮等)、炎症性疾患(例、急性膵炎、関節炎、歯周病、大腸炎等)、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患(例、動脈硬化等)、呼吸器系疾患(例、間質性肺炎、肺繊維症等)、軟骨疾患(例、変形性関節炎等)などの疾患の予防・治療剤として用いることができる。
ASK1活性化阻害物質を上記予防・治療剤として使用する場合、前記したABP1もしくは本発明の活性化ペプチドまたはその塩を含有する医薬と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の温血動物(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー、トリなど)に対して投与することができる。
ASK1活性化阻害物質の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、ポリグルタミン病患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(10)ABP1をコードするDNAを導入した動物およびその用途
本発明は、ABP1をコードする外来性のDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物の新規用途を提供する。
本発明で使用される非ヒト哺乳動物は、
〔1〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
〔2〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕記載の動物、
〔3〕ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第〔2〕記載の動物である。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病態動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F系統,BDF系統,B6D2F系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有しているABP1をコードするDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出されたABP1をコードするDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元のABP1をコードするDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常なABP1を発現させるDNAを意味し、例えば、正常なABP1の機能を抑制する異常ABP1を発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明の外来性DNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、ヒトABP1をコードするDNAを転移させる場合、これと相同性が高いABP1のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、ヒトABP1をコードするDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによってABP1をコードするDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
ABP1の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行うプロモーターとしては、例えば、1) ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、2) 各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするmRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5'上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3'下流 に連結することも目的により可能である。
正常なABP1の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞等由来のRNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なABP1の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
本発明の外来性正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的にABP1の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、ABP1の機能亢進症や、ABP1が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行うことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、ABP1の増加症状を有することから、ABP1の機能亢進に関連する疾患、例えば、ウイルス感染症(例、AIDS、インフルエンザ、不明熱等)、内分泌疾患(例、ホルモン欠乏症、サイトカイン欠乏症等)、血液疾患(例、血球減少症、腎性貧血等)、臓器形成不全(例、甲状腺萎縮、口蓋裂等)、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患(例、ポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、小脳変性症等)、虚血性心疾患(例、狭心症、心筋梗塞等)、放射線障害、紫外線障害(例、日焼け等)中毒性疾患(例、重金属による腎尿細管細胞傷害、アルコールによる肝細胞傷害等)、栄養障害(例、ビタミン、微量元素欠乏による胸腺の萎縮等)、炎症性疾患(例、急性膵炎、関節炎、歯周病、大腸炎等)、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患(例、動脈硬化等)、呼吸器系疾患(例、間質性肺炎、肺繊維症等)、軟骨疾患(例、変形性関節炎等)などの疾患に対する予防・治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原料として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性異常DNAを有することを意味する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的にABP1の機能不活性型不応症(例えば、癌(例、白血病、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、メラノーマ、骨髄腫、骨肉腫、脳腫瘍等)、自己免疫疾患(例、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、乾癬、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、糸球体腎炎等)、ウイルス感染症(例、出血熱、T細胞白血病、カポジ肉腫、伝染性単核症、リンパ腫、上咽頭癌、子宮頚癌、皮膚癌、肝炎、肝癌等)、内分泌疾患(例、ホルモン過剰症、サイトカイン過剰症等)、血液疾患(例、血球増加症、B細胞リンパ腫、多血症等)、臓器過形成(例、半陰陽、停留睾丸、奇形腫、腎芽細胞癌、多発性嚢胞腎、心・大動脈奇形、合指症等)など)となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、ABP1の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、ABP1の機能不活性型不応症における異常ABP1による正常ABP1の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、異常ABP1の増加症状を有することから、ABP1の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、ABP1の機能不活性型不応症を含む、ABP1に関連する疾患の予防・治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患予防・治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、ABP1が関連する疾患の遺伝子治療法を検討、開発することが可能である。
(11)ノックアウト動物
本発明で用いられるABP1 DNA発現不全非ヒト哺乳動物胚幹細胞およびABP1 DNA発現不全非ヒト哺乳動物は、
〔1〕ABP1をコードするDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
〔2〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔3〕ネオマイシン耐性である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔4〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔5〕ゲッ歯動物がマウスである第〔4〕項記載の胚幹細胞、
〔6〕ABP1をコードするDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
〔7〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子がABP1をコードするDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔8〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔9〕ゲッ歯動物がマウスである第〔8〕項記載の非ヒト哺乳動物である。
ABP1をコードするDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有するABP1 DNAに人為的に変異を加えることにより、該DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしているABP1の活性を実質的に喪失させることにより、該DNAが実質的にABP1の発現能を有しない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
ABP1をコードするDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
ABP1をコードするDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有するABP1 DNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なmRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞についてABP1 DNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用したABP1 DNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等によりABP1をコードするDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDFマウス(C57BL/6とDBA/2とのF)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDFマウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行うことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約10個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行うが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおけるABP1の細胞生物学的検討において有用である。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターのABP1 DNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上のABP1 DNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、ABP1をコードするDNAをノックアウトさせることができる。
ABP1をコードするDNAがノックアウトされた細胞は、ABP1 DNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来のABP1 DNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、ABP1をコードするDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常なABP1遺伝子座をもつ細胞と人為的に変異したABP1 DNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異したABP1 DNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えたABP1 DNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、ABP1のヘテロ発現不全個体であり、ABP1のヘテロ発現不全個体同士を交配し、それらの産仔からABP1のホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えによりABP1 DNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにしてABP1 DNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行うことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
ABP1 DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、ABP1により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、ABP1の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
(11a)ABP1 DNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、ABP1 DNAの欠損や損傷などに起因する疾病、例えば、癌(例、白血病、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、メラノーマ、骨髄腫、骨肉腫、脳腫瘍等)、自己免疫疾患(例、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、乾癬、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、糸球体腎炎等)、炎症(例、関節炎、腎炎等)、ウイルス感染症(例、出血熱、T細胞白血病、カポジ肉腫、伝染性単核症、リンパ腫、上咽頭癌、子宮頚癌、皮膚癌、肝炎、肝癌等)、内分泌疾患(例、ホルモン過剰症、サイトカイン過剰症等)、血液疾患(例、血球増加症、B細胞リンパ腫、多血症等)、臓器過形成(例、半陰陽、停留睾丸、奇形腫、腎芽細胞癌、多発性嚢胞腎、心・大動脈奇形、合指症等)などに対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、ABP1 DNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
該スクリーニング方法において、試験動物(例えば、担癌動物など)に試験化合物を投与した場合、例えば、該試験動物の症状が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善した場合、該試験化合物を上記の疾患に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、ABP1の欠損や損傷などによって引き起こされる上記疾患に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したABP1または本発明の活性化ペプチドを含有する医薬と同様にして製造し、使用することができる。
(11b)ABP1 DNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とするABP1 DNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、ABP1 DNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子がABP1 DNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
ABP1 DNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子がABP1 DNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、ABP1をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、ABP1の発現する組織で、ABP1の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便にABP1の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、ABP1欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、ABP1 DNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
ABP1 DNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、ABP1の発現を促進し、ABP1の機能を促進することができるので、例えば、ABP1の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。具体的には、該化合物は、例えば、癌(例、白血病、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、肺癌、肝臓癌、腎臓癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、メラノーマ、骨髄腫、骨肉腫、脳腫瘍等)、自己免疫疾患(例、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、乾癬、潰瘍性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病、クローン病、糸球体腎炎等)、ウイルス感染症(例、出血熱、T細胞白血病、カポジ肉腫、伝染性単核症、リンパ腫、上咽頭癌、子宮頚癌、皮膚癌、肝炎、肝癌等)、内分泌疾患(例、ホルモン過剰症、サイトカイン過剰症等)、血液疾患(例、血球増加症、B細胞リンパ腫、多血症等)、臓器過形成(例、半陰陽、停留睾丸、奇形腫、腎芽細胞癌、多発性嚢胞腎、心・大動脈奇形、合指症等)、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発などの予防・治療剤などの低毒性で安全な医薬として使用することができる。
一方、ABP1 DNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、ABP1の発現を阻害し、ABP1の機能を阻害することができるので、例えば、ABP1の発現過多に関連する疾患などの予防・治療剤などの医薬として有用である。具体的には、該化合物は、例えば、ウイルス感染症(例、AIDS、インフルエンザ、不明熱等)、内分泌疾患(例、ホルモン欠乏症、サイトカイン欠乏症等)、血液疾患(例、血球減少症、腎性貧血等)、臓器形成不全(例、甲状腺萎縮、口蓋裂等)、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患(例、ポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、プリオン病、小脳変性症等)、虚血性心疾患(例、狭心症、心筋梗塞等)、放射線障害、紫外線障害(例、日焼け等)中毒性疾患(例、重金属による腎尿細管細胞傷害、アルコールによる肝細胞傷害等)、栄養障害(例、ビタミン、微量元素欠乏による胸腺の萎縮等)、炎症性疾患(例、急性膵炎、関節炎、歯周病、大腸炎等)、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患(例、動脈硬化等)、呼吸器系疾患(例、間質性肺炎、肺繊維症等)、軟骨疾患(例、変形性関節炎等)などの疾患の予防・治療剤などの低毒性で安全な医薬として使用することができる。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したABP1または本発明の活性化ペプチドを含有する医薬と同様にして製造し、使用することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、ABP1 DNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、ABP1 DNAの発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、ABP1遺伝子のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々の蛋白質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作製すれば、組織および/または時期特異的に該蛋白質を合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、ABP1そのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
* :終止コドンに対応する
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記
する。
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェノール
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−
1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド
DCC :N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
[配列番号1]
ヒトABP1 cDNAのアミノ酸コード領域の塩基配列を示す。
[配列番号2]
ヒトABP1のアミノ酸配列を示す。
[配列番号3]
マウスABP1 cDNAのアミノ酸コード領域の塩基配列を示す。
[配列番号4]
マウスABP1のアミノ酸配列を示す。
[配列番号5]
抗ABP1抗体(ELA抗体)作製用の抗原として用いたペプチドのアミノ酸配列を示す。
[配列番号6]
抗ABP1抗体(LVR抗体)作製用の抗原として用いたペプチドのアミノ酸配列を示す。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はそれらによって何ら限定されるものではない。
ABP1 cDNAのクローニング
ASK1結合タンパク質を同定するために、baitとしてヒトASK1のキナーゼドメイン内のATP結合部位(709位)のリシン(K)をアルギニン(R)に置換したASK1-KRを用い、ヒト胎児脳由来の発現ライブラリーをpreyとして、Brentのシステム[Zervosら,セル(Cell),第72巻,p.223-232,1993;Gyurisら,セル(Cell),第75巻,p.791-803,1993]を用いた酵母two-hybrid法にてスクリーニングした。その結果、約1200個の陽性クローンが得られた。そのうちの1つは、得られた塩基配列に基づいてデータベース検索を行うと、“PGR1”と命名された遺伝子の蛋白質コード領域の一部(アミノ酸にすると35〜127位に相当する部分)であった。この遺伝子がコードしている蛋白質は127アミノ酸からなるが、データベース上の情報は遺伝子の構造に関するもののみで、機能に関する報告はなかった。そこでこの遺伝子の蛋白質をコードしているcDNA全長をPCR法によりクローニングした。この蛋白質はASK1結合蛋白質として同定されたことから、ASK1 binding protein 1(ABP1)と命名した。ホモロジー検索により、ABP1にはマウスなどの哺乳類に類似分子が存在することが判明したが、ハエや線虫などには高い相同性を持つ分子は見いだせなかった。また、モチーフ検索やドメイン検索を行っても、既存のモチーフ、機能ドメインなどは存在しなかった。図1にヒトとマウスのABP1アミノ酸配列のアラインメントを示す。
ABP1 mRNAの発現分布
Multiple Tissue Northern Blot(CLONTECH)のMouse(#7762-1)およびMouse Embryo(#7763-1)を使用し、ヒトABP1 cDNAの全長をプローブとして、上記製品の使用書に従ってノザンブロットを行った。その結果、ABP1のmRNAの長さは約1.7kbであり、組織全体にユビキタスに発現していた(図2A)。また、マウス胎児ブロットでもABP1のmRNAは胎生7日という比較的早期から発現が認められ、胎生経過中に大きな変化は見られなかった(図2B)。
種々の動物細胞におけるABP1蛋白質の産生
次に、ABP1に対するウサギのポリクローナル抗体を作製した。ABP1 cDNAの塩基配列から得られたアミノ酸配列情報をもとに、ABP1特異的ペプチド(配列番号5および配列番号6)を抗原とするペプチド抗体を2種類作り、それぞれをELA抗体、LVR抗体と命名した。抗体はどちらも抗原ペプチドによるアフィニティーを利用して精製したものを使用した。
HeLa細胞とHEK293細胞は、高濃度グルコース(4.5mg/ml)を含むダルベッコの改変イーグル培地(DMEM;SIGMA)を培養液とし、5%CO存在下に培養した。培養液には10%ウシ胎仔血清(FBS)と100単位/mlペニシリンを添加した。ブタ大動脈内皮(PAE)細胞培養はF12培養液(Invitrogen)に10%FBS、10mM HEPES、100単位/mlペニシリンを添加して培養した。
各細胞は溶解バッファー[150mM NaCl,20mM Tris−HCl(pH7.5),10mM EDTA,1% Triton X−100,1% デオキシコレート,1.5% アプロチニン,1mM PMSF]を用いて溶解し、溶解液を遠心して上清をとり、SDSサンプルバッファー[100mM Tris−HCl(pH8.8),0.01% ブロモフェノールブルー,36% グリセロール,4% SDS]を添加してSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行った。ゲルから蛋白質をPVDF膜に転写し、5% スキムミルク含有TBS−T[150mM NaCl,50mM Tris−HCl,(pH8.0),0.05% Tween 20]で室温、3時間のブロッキングを行った後に、各抗体と反応させた。検出はECL system(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて行った。
HEK293細胞の培養細胞抽出液をELA抗体およびLVR抗体を用いてイムノブロット解析すると、両抗体で同定されるバンドが約17kDaに認められた。このバンドの検出位置は2つの抗体で完全に一致していた。また、HEK293細胞にタグの付加されていないABP1を発現するプラスミド[PCRにて得たABP1 cDNAをpcDNA3(Invitrogen, Inc.)にサブクローニングして作製]を遺伝子導入して[FuGENE6(Roche Diagnostics K.K)を使用書の通りに用いて行った]ABP1蛋白質を過剰発現させると、プラスミド量依存的に検出強度が増加した(図3)。一次抗体処理の際に抗原ペプチドを添加することによるペプチドブロックを行うとこのバンドは消失した。
このことから、これらの抗体はABP1を認識しており、内在性のABP1蛋白質を検出することができた。HeLa細胞やPAE細胞においても同様の結果が得られた。
ABP1とASK1との細胞内相互作用
Flag−ABP1およびMyc−ASK1の2つの融合蛋白質をHEK293細胞で共発現させた。細胞は溶解バッファー(上述)を用いて溶解し、溶解液を遠心後上清をとり、抗Flag抗体(Clone M2;SIGMA)と反応後、Protein A-sepharose4B(Zymed Laboratories)を加えて30分間インキュベーションし、溶解バッファーで3回洗浄してから、SDSサンプルバッファー(上述)を添加し、以下イムノブロッティング法と同様の手順で、両蛋白質の結合を確認した(図4A)。抗体は、抗Flag抗体(上述)、抗Myc抗体(Clone 9E10, Calbiochem)を用いた。この結合はASK1の活性化因子であるH処理により増強した。次に、CFP−ABP1およびMyc−ASK1プラスミドを同じくHEK293細胞に共発現させ、抗Flag抗体により免疫沈降させた場合にも、両者の結合が確認できた(図4B)。抗体は、抗Flag抗体(上述)、抗GFP抗体(Medical & Biological Laboratories CO.)を用いた。この結合もH処理により増強した。このことから、哺乳類細胞内でもABP1とASK1が結合し、その結合はH処理で増強することが判明した。
ABP1に対するASK1の結合部位の同定
図5Aに示すHAタグ付きの各種ASK1欠損変異体とABP1との結合を、実施例3と同様にFlag−ABP1との共発現後に、抗Flag抗体による免疫沈降法にて検索した。抗体は、抗HA抗体(Clone 3F10, Roche Diagnostics K.K)、抗Flag抗体(Clone M2, SIGMA)を用いた。ASK1の発現ベクターはSaitohら(上述)に記載されたものを使用した。その結果、ABP1は、ASK1−NT、ASK1−ΔCとは共沈したが、ASK1−ΔN、ASK1−Kとは共沈を示さなかった(図5B)。これにより、ABP1はASK1のN末端ドメインに結合することが判明した。
ABP1による細胞死誘導
(1)ABP1の細胞内局在や機能を調べるため、HeLa細胞に免疫沈降実験でも使用したABP1のN末端にCFPを融合させたタンパク質を発現するCFP−ABP1プラスミド[PCRにて得たABP1 cDNAを、pECFP-C1(Clontech)にサブクローニングして作製]を遺伝子導入[FuGENE6(Roche Diagnostics K.K)を使用書の通りに用いて行った]により一過性に発現させて、CFPの蛍光を蛍光顕微鏡で経時的に観察した。蛍光顕微鏡下にCFPの蛍光を示す細胞(500個)のうち、細胞がプレートから剥がれたり、膜のブレッビング(blebbing)や断片化などの細胞死の形態を示すものの割合を計算した。CFP陽性細胞につき計算した。
その結果、CFP−ABP1融合蛋白質による蛍光は、CFP蛋白質のみを発現させた場合と同様に、細胞質と核の両方を含む細胞全体に存在していた。さらに観察を続けると、遺伝子導入後24時間頃からCFP−ABP1融合蛋白質を発現している細胞は、培養プレートから剥がれたり、膜のブレッビングを認めるなど細胞死の所見を次々と示すようになった(図6A)。この細胞死を定量化すると、遺伝子導入後36時間には、CFP−ABP1融合蛋白質を発現している細胞の約70%にまで達した(図6B)。CFP蛋白質を単独で発現させてもこのような現象はみられなかった。また、細胞内局在や細胞死誘導は、ABP1のC末端にCFPを融合させた蛋白質を発現させても同様であった。
このことから、ABP1は細胞死誘導能を有する蛋白質であると考えられた。
(2)ABP1による細胞死のメカニズムを明らかにする目的で、PAE細胞にテトラサイクリン依存的にABP1を発現誘導できる細胞系(PAE-ABP1細胞)を確立した。PAE-ABP1細胞の作製は、Takedaらの方法(J. Biol. Chem., 275, 9805-9813, 2000)を一部改変して行った。Mycタグを付加したABP1 cDNA全長をpTet-Splice-neoベクターにサブクローニングし、これとpTet-tTAk-hygプラスミドを、Takedaらの方法とは異なりPAE細胞に同時に遺伝子導入し、500ng/ml テトラサイクリン(Sigma)、400単位/ml ハイグロマイシンB(Wako)、240mg/ml ネオマイシン(Geneticin, Life Technologies, Inc.)を添加した培養液中で培養して選択をかけ、生き残ってコロニー形成した細胞をPAE-ABP1細胞とした。細胞の維持培養は前述のPAE細胞維持用の培養液に、500ng/ml テトラサイクリン、200単位/ml ハイグロマイシンB、30mg/ml ネオマイシンを添加して行った。
このPAE-ABP1細胞はテトラサイクリン存在下で培養するとABP1を発現しないが、テトラサイクリン非存在下におくことで約6時間後にはイムノブロット解析でMycタグ付きのABP1蛋白質の発現を確認できるようになり、以後安定してABP1の発現が認められる。抗Myc抗体(Clone 9E10, Calbiochem)による免疫染色を行うと、ほとんどの細胞に安定してMyc−ABP1の発現を認めた。この細胞をテトラサイクリン除去下で培養すると、HeLa細胞にABP1蛋白質を一過性に発現させたときと同様に、ABP1蛋白質の発現に伴って細胞死が誘導された(図7A)。全細胞中の死細胞の割合(顕微鏡下に全細胞のうち細胞死の形態を示す細胞の割合を計算した。結果は3視野の平均値で示した)を定量すると、テトラサイクリン除去後48時間で約55%に達した(図7B)。この実験系においてもABP1は細胞死を誘導することが確認できた。
(3)上記(1)および(2)のABP1による細胞死の形態学的特徴である膜のブレッビングや細胞断片化などはアポトーシスの際にみられることが多い。そこで、PAE-ABP1細胞における細胞死がアポトーシスかどうかを、DNA断片化の有無で検討した。
PAE-ABP1細胞(2×10個)を200mlの溶解バッファー[20mM Tris−HCl(pH7.5),10mM EDTA,0.5% Triton X−100]で溶解した。溶解液を遠心して上清をとり、0.2mg/mlのプロテインKで42℃,1時間処理した。次に、DNAをフェノール−クロロフォルム抽出法とエタノール沈殿法で精製し、これを0.2mg/ml リボヌクレアーゼAを含むTEバッファー(10mM Tris−HCl,1mM EDTA)に再度溶解して、2%アガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイドで染色して泳動パターンを撮影した。
その結果、PAE-ABP1細胞は、顕微鏡で観察した際の細胞死出現の時期と一致して、ABP1蛋白質発現に伴ってDNAラダーを形成した(図8)。このことから、ABP1による細胞死は、DNA断片化を伴ういわゆるアポトーシスであることがわかった。このことは、PAE-ABP1細胞のTUNEL染色でも確認できた。
(4)アポトーシスの際のDNA断片化は、通常はカスパーゼの活性化に引き続いて起こる。そこで、PAE-ABP1細胞を用いてABP1蛋白質発現誘導時におけるカスパーゼ−3活性測定を行った。測定は、CPP32/caspase-3 fluorometric protease assay kit(MBL)を用いて、合成蛍光ペプチドDEVD-7-amino-4-trifluoromethyl coumarine(AFC)を基質として行った。遊離したAFCは蛍光分光光度計を用いて、励起波長360nm、蛍光波長530nmにて蛍光強度を測定した。各サンプルについて2回測定した。結果はテトラサイクリンを除去していない時の値を1とする相対値で示した。
その結果、細胞死と前後してカスパーゼ−3活性は上昇していた(図9A)。ABP1による細胞死がカスパーゼ依存性であるかを検討するために、同じPAE-ABP1細胞を用いて、テトラサイクリン除去と同時にカスパーゼ阻害剤であるzVAD-fmk(Peptide Institute, Inc.)で処理すると、テトラサイクリン除去後18時間という早い時間帯では細胞死がほとんど抑えられた(図9B)。これにより、ABP1による細胞死はカスパーゼ依存性アポトーシスであると結論した。
ABP1の細胞死誘導領域の同定
前述の通り、ABP1は既存のアポトーシス関連因子の機能ドメインを持たない。そこで、ABP1によるアポトーシスに必要なドメインを調べるため、図10Aに示す各種ABP1欠損変異体とCFPとの融合蛋白質を発現するプラスミドを作り、実施例6(1)と同様にHeLa細胞に発現させて細胞死の有無を検討した。ABP1の発現ベクターは、PCRにて得たABP1 cDNAあるいはABP1欠損変異体cDNAAを、pECFP-C1(Clontech)にサブクローニングして作製した。各プラスミドの細胞への遺伝子導入は、FuGENE6(Roche Diagnostics K.K)を使用書の通りに用いて行った。
その結果、ΔC(1-72)は野生型よりむしろ強い細胞死誘導能を示すが、N末端を欠損させて行くにつれて、ΔN(34-127)、ΔN(65-127)と細胞死誘導能は低下していた(図10B)。このことから、細胞死誘導能に関してはABP1のN末端側が重要であると考えられた。
ABP1のASK1シグナル伝達系への影響
PAE-ABP1細胞を用いてABP1発現誘導時のJNKとp38の活性化をそれぞれの抗リン酸化蛋白質抗体を用いて検討した。抗体は、抗リン酸化JNK抗体(Cell Signaling)、抗リン酸化p38抗体(Cell Signaling)、抗リン酸化ASK1抗体(Tobiumeら,EMBO Rep., 2, 222−228, 2001)を使用した。細胞は、実施例4と同様に溶解バッファー(上述)を用いて溶解し、溶解液を遠心後上清をとり、抗Myc抗体(Clone 9E10, Calbiochem)と反応後、Protein A-sepharose4B(Zymed Laboratories)を加えて30分間インキュベーションし、溶解バッファーで3回洗浄してから、SDSサンプルバッファー(上述)を添加し、以下イムノブロッティング法と同様の手順で行った。
テトラサイクリン除去により、ABP1蛋白質の発現に伴う細胞死が著明になるのに先んじて、12時間後にはJNKとp38の活性化が認められ、これが以後も持続していた(図11A)。そこで、ASK1の活性化を同じくPAE-ABP1細胞を用いて検討したところ、JNKとp38と同様に、テトラサイクリン除去後12時間でASK1の活性化も認められた(図11B)。このことから、ABP1の過剰発現によりASK1シグナル伝達系が活性化されると考えられた。
本発明のABP1は、ASK1カスケードを活性化して細胞にアポトーシスを誘導したり、炎症性サイトカインの産生を誘導する作用を有する。従って、本発明のABP1、それをコードするポリヌクレオチド等は、細胞にアポトーシスを誘導することにより予防・治療効果が期待できる疾患の予防・治療剤として有用である。一方、本発明のABP1抑制薬(例えば、抗ABP1抗体、ABP1アンチセンスポリヌクレオチド等)は、アポトーシスや炎症性サイトカインの産生を抑制するので、アポトーシスを抑制することにより予防・治療効果が期待できる疾患、あるいは炎症性疾患の予防・治療剤として有用である。さらに、本発明のABP1およびASK1を用いることにより、アポトーシスまたは炎症関連疾患の新規予防・治療薬のスクリーニング手段が提供される。
ヒト(上列)およびマウス(下列)のABP1アミノ酸配列のアラインメントを示す図である。本発明の2種の抗体(ELA抗体およびLVR抗体)作製のための抗原ペプチドとして用いた部分配列をボックスで示している。 マウス組織におけるABP1 mRNA発現の組織分布(A)およびマウス胎仔組織におけるABP1 mRNA発現の経日変化(B)を示す図である。 HEK293細胞にタグの付加されていないABP1を発現するプラスミドを遺伝子導入してABP1蛋白質を過剰発現させた場合の、プラスミド量依存的な検出強度の増加を示す図である。遺伝子導入24時間後に細胞を回収し、各細胞抽出液を2つに分けてSDS−PAGEを行い、ELA抗体およびLVR抗体でイムノブロット(IB)を行った。ABP1-pcDNA3(−)は非形質転換HEK293細胞を示し、また、勾配は左から右へプラスミド量が増加していることを示す。 ABP1とASK1の結合試験の結果を示す図である。(A)HEK293細胞にFlag−ABP1、Myc−ASK1プラスミドを遺伝子導入し、24時間後に細胞を回収して、抗Flag抗体で免疫沈降後、抗Myc抗体でイムノブロット解析を行った。(B)HEK293細胞にFlag−ASK1、CFP−ABP1プラスミドを遺伝子導入し、24時間後に細胞を回収して、抗Flag抗体で免疫沈降後、抗GFP抗体でイムノブロット解析を行った。尚、CFPはGFPの変異体で、抗GFP抗体により認識可能である。(A)、(B)とも右側の2レーンでは、H処理(0.5mM,1時間)も行った。下段は免疫沈降する前の各細胞溶解液の一部を別に泳動したものである。IPは免疫沈降、IBはイムノブロットを表す。 ASK1欠損変異体の模式図(A)およびABP1とASK1欠損変異体との結合試験の結果を示す図(B)である。(A)ASK1欠損変異体を含む各プラスミドには、それぞれN末端側にHAタグを付加してある。アミノ酸番号678〜936(斜線部)はキナーゼドメインを示す。(B)下段は免疫沈降する前の各細胞溶解液の一部を別に泳動したものである。IPは免疫沈降、IBはイムノブロットを表す。 HeLa細胞におけるABP1による細胞死誘導を示す図である。(A)HeLa細胞にCFPまたはCFP−ABP1プラスミドを遺伝子導入後36時間の蛍光顕微鏡像(上段)および同じ視野の微分干渉像(下段)を示す。(B)遺伝子導入36時間後における細胞死の割合(%)を示す。 PAE-ABP1細胞におけるABP1による細胞死誘導を示す図である。(A)PAE-ABP1細胞をテトラサイクリン(Tet)存在下(+)、非存在下(−)に培養後36時間の位相差顕微鏡像を示す。(B)テトラサイクリン存在下での培養(0h)、テトラサイクリン除去24時間および48後における細胞死の割合(%)を示す。 PAE-ABP1細胞におけるABP1による細胞死誘導(DNA断片化)を示す図である。PAE-ABP1細胞をテトラサイクリン除去後、それぞれの時間でのDNA断片化をアガロースゲル電気泳動により調べた(上段)。両端は分子量マーカーを示し(M)、右端にはサイズを示してある。下段は各細胞におけるMyc−ABP1蛋白質発現を抗Myc抗体によるイムノブロット解析で確認したものである。 ABP1による細胞死のカスパーゼ依存性を示す図である。(A)PAE-ABP1細胞をテトラサイクリン除去下に培養し、0,12,24,36時間後にカスパーゼ−3活性を測定した。結果はテトラサイクリンを除去していない時の値を1とする相対値で示した。(B)PAE-ABP1細胞をテトラサイクリン除去するのと同時にzVAD−fmk(50μM)で処理し、死細胞の割合(%)を定量化した。ただし細胞死のアッセイはテトラサイクリン除去後18時間で行った。Tetはテトラサイクリンを表す。 ABP1欠損変異体による細胞死誘導を示す図である。(A)ABP1欠損変異体の模式図を示す。それぞれ野生型と同様にN末端側にCFPタグを付加した。(B)ABP1欠損変異体を導入した細胞における遺伝子導入36時間後における細胞死の割合(%)を示す。 ABP1によるASK1、JNK、p38の活性化を示す図である。(A)PAE-ABP1細胞をテトラサイクリン除去して培養し、内在性JNKおよびp38の活性化を各抗リン酸化蛋白質抗体によるイムノブロット解析にて行った。(B)PAE-ABP1細胞をテトラサイクリン除去下で培養し、内在性ASK1の活性化を抗リン酸化蛋白質抗体によるイムノブロット解析にて検討した。IBはイムノブロットを表す。
[配列番号5]
抗ABP1抗体を作製するための抗原として機能すべく設計されたオリゴペプチド。
[配列番号6]
抗ABP1抗体を作製するための抗原として機能すべく設計されたオリゴペプチド。

Claims (54)

  1. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、且つASK1を活性化し得るペプチドまたはその塩。
  2. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列中約60アミノ酸以上からなる部分アミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する請求項1記載のペプチドまたはその塩。
  3. 部分アミノ酸配列がN末端側の配列である請求項2記載のペプチドまたはその塩。
  4. 請求項1記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド。
  5. 配列番号1または配列番号3に示される塩基配列の一部と同一もしくは実質的に同一の塩基配列を含有する請求項4記載のポリヌクレオチド。
  6. 請求項4記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  7. 請求項6記載の組換えベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体。
  8. 請求項7記載の形質転換体を培養し、得られる培養物から請求項1記載のペプチドまたはその塩を採取することを特徴とする該ペプチドまたはその塩の製造方法。
  9. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、且つASK1を活性化しないか、もしくは不活性化し得るペプチドまたはその塩。
  10. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列中約35アミノ酸以下からなる部分アミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する請求項9記載のペプチドまたはその塩。
  11. 部分アミノ酸配列がN末端側の配列である請求項10記載のペプチドまたはその塩。
  12. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチド、またはその塩を含有してなるASK1活性化促進剤。
  13. アポトーシス誘発剤である請求項12記載の剤。
  14. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチド、またはその塩を含有してなる医薬。
  15. アポトーシスを誘発することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である請求項14記載の医薬。
  16. 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器過形成、血管形成術後再狭窄および癌切除術後の再発からなる群より選択される請求項15記載の医薬。
  17. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含有してなるASK1活性化促進剤。
  18. アポトーシス誘発剤である請求項17記載の剤。
  19. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含有してなる医薬。
  20. アポトーシスを誘発することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である請求項19記載の医薬。
  21. 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器過形成、血管形成術後再狭窄および癌切除術後の再発からなる群より選択される請求項20記載の医薬。
  22. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチドを含有してなるアポトーシスまたは炎症関連疾患の診断薬。
  23. 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成異常、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される請求項22記載の診断薬。
  24. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列と相補的な塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチドを含有してなるASK1活性化阻害剤。
  25. アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤である請求項24記載の剤。
  26. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列と相補的な塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチドを含有してなる医薬。
  27. アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である請求項26記載の医薬。
  28. 疾患が、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される請求項27記載の医薬。
  29. 配列番号5または配列番号6に示されるアミノ酸配列を特異的に認識し得ることを特徴とする、配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体。
  30. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を含有してなるアポトーシスまたは炎症関連疾患の診断薬。
  31. 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成異常、血管形成術後再狭窄、癌切除術後の再発、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される請求項30記載の診断薬。
  32. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を含有してなるASK1活性化阻害剤。
  33. アポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤である請求項32記載の剤。
  34. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を含有してなる医薬。
  35. アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である請求項34記載の医薬。
  36. 疾患が、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される請求項35記載の医薬。
  37. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞を用いることを特徴とする、ASK1活性化調節物質のスクリーニング方法。
  38. ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞をさらに用いることを特徴とする、請求項37記載の方法。
  39. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドまたはその塩と、ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩との結合性を測定することを特徴とする、請求項38記載の方法。
  40. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞を含んでなる、ASK1活性化調節物質のスクリーニング用キット。
  41. さらに、ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩あるいはそれを産生する細胞を含んでなる、請求項40記載のキット。
  42. ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインおよびキナーゼドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩を産生する細胞におけるASK1もしくは該部分ペプチドまたはその塩の活性化を、(1)配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドまたはその塩の存在下と、(2)配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドまたはその塩および被験物質の存在下で比較することを特徴とする、請求項38記載の方法。
  43. (1)配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドまたはその塩、および(2)ASK1もしくはN末端活性化制御ドメインおよびキナーゼドメインを含むその部分ペプチドまたはその塩を産生する細胞におけるASK1もしくは該部分ペプチドまたはその塩の活性化を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする請求項38記載の方法。
  44. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくは請求項1記載のペプチドまたはその塩を産生する細胞における該蛋白質もしくは該ペプチドまたはその塩の発現を、被験物質の存在下と非存在下で比較することを特徴とする、ASK1活性化調節物質のスクリーニング方法。
  45. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチド、あるいは配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を用いることを特徴とする、請求項44記載の方法。
  46. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質をコードする塩基配列もしくはその一部を含有するポリヌクレオチド、あるいは配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩に対する抗体を含んでなるASK1活性化調節物質のスクリーニング用キット。
  47. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の発現または活性を増大させる物質を含有してなるアポトーシス誘発剤。
  48. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の発現または活性を増大させる物質を含有してなる医薬。
  49. アポトーシスを誘発することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である請求項48記載の医薬。
  50. 疾患が、癌、自己免疫疾患、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器過形成、血管形成術後再狭窄および癌切除術後の再発からなる群より選択される請求項49記載の医薬。
  51. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の発現または活性を減少させる物質を含有してなるアポトーシスまたは炎症性サイトカイン産生抑制剤。
  52. 配列番号2または配列番号4に示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその塩の発現または活性を減少させる物質を含有してなる医薬。
  53. アポトーシスまたは炎症を抑制することが予防・治療上有効な疾患の予防・治療剤である請求項52記載の医薬。
  54. 疾患が、ウイルス感染症、内分泌疾患、血液疾患、臓器形成不全、移植臓器拒絶、移植片対宿主病、免疫不全、神経変性疾患、虚血性心疾患、放射線障害、紫外線障害、中毒性疾患、栄養障害、炎症性疾患、虚血性神経障害、糖尿病性神経障害、血管系疾患、呼吸器系疾患および軟骨疾患からなる群より選択される請求項53記載の医薬。
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