JP2004177554A - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生分解性樹脂を用いた小粒径トナーを高収率で生産するのに適したトナーの製造方法を提供する。さらに、流動性が良好であり、高品質且つ高解像度の印刷を行うことが可能な、生分解性樹脂を用いたトナーの製造方法を提供する。
【解決手段】生分解性樹脂と着色剤を有機溶媒に溶解あるいは分散させて着色液を製造する工程、乳化剤および/または分散安定剤の存在下で、前記着色液と水性媒体を混合することにより前記着色液の微粒子が前記水性媒体中に分散した水性分散液を製造する工程、前記微粒子中の有機溶媒を除去することにより着色樹脂微粒子を生成させる工程、前記着色樹脂微粒子を前記水性媒体から分離し、乾燥する工程を順次行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法を用いる。
【選択図】なし
【解決手段】生分解性樹脂と着色剤を有機溶媒に溶解あるいは分散させて着色液を製造する工程、乳化剤および/または分散安定剤の存在下で、前記着色液と水性媒体を混合することにより前記着色液の微粒子が前記水性媒体中に分散した水性分散液を製造する工程、前記微粒子中の有機溶媒を除去することにより着色樹脂微粒子を生成させる工程、前記着色樹脂微粒子を前記水性媒体から分離し、乾燥する工程を順次行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法を用いる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファックス等に好適に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックは膨大な量が使用されているが、その廃棄物は、景観の阻害、海洋生物への脅威、環境汚染等の深刻な地球的環境問題を引き起こしている。電子写真方式や静電記録方式のプリンターに用いられる静電荷像現像用トナー(以下、トナーと記載する)においても同様であり、トナーを廃棄処分する場合、あるいはトナーで印刷された印刷物を廃棄する場合の環境に対する影響が問題となっている。トナー用に使用される汎用樹脂としては、ポリスチレン、スチレンアクリル、ポリエステル、エポキシ、スチレンブタジエン等の樹脂が使用され、これらの樹脂を用いたトナーを処分する場合は、焼却や埋立が行われている。
【0003】
しかしながら、これらの汎用樹脂を使用したトナーを焼却や埋立により処分する場合には問題がある。例えば、焼却する場合には、上記の汎用樹脂は、燃焼カロリーが高いため、炉を痛め易く、炉の寿命を短くしてしまう。また、埋立処分をする場合においても、上記の汎用樹脂は、化学的安定性が高いため、原形をとどめたまま半永久的に残留する事が知られており、環境への影響が懸念される。
自然環境中に廃棄された場合には、その安定性のために長期にわたって土中に存在し、海洋生物、鳥類等が誤って補食する可能性が高く、生態系破壊の一因となる。これらの問題を解決するために、近年、トナーに使用する樹脂においても生分解性樹脂を使用することが盛んに検討されている。
【0004】
例えば、特開平9−274335号公報、特開平8−262796号公報、及び特開平4−179967号公報においては生分解性樹脂として、脂肪族ポリエステル、酪酸系、乳酸系の樹脂を用いたトナーが開示されている。
【0005】
ところで、粉体トナーを製造する方法としては、樹脂と着色剤等を加熱溶融状態で混練し、冷却後に粉砕・分級する工程により製造するのが一般的である。前記公報における実施例でもそのような方法でトナーを製造している。しかしながら、生分解性樹脂は従来のトナーで使用されているスチレンアクリル樹脂や芳香族系のポリエステル樹脂と異なり、粉砕性の劣るものである。そのため、10ミクロン前後のトナーを製造するためには、従来のトナーと比較して、多大な粉砕エネルギーを必要とし、また、単位時間あたりの生産量が低下する等、生産性に問題があった。特に、高品質且つ高解像度の印刷を行うための7ミクロン前後の小粒径トナーを製造することが困難であった。
【0006】
これを改善するため、特許第2597452号公報では、生分解性樹脂とライスワックス、カルナバワックス等の植物ワックスを使用する技術が提示されている。同公報では、通常使用する量の数倍〜数十倍の多量のワックスを使用することにより生分解性樹脂を用いたトナーの粉砕性を向上させている。しかしながら、このような方法では、トナーの流動性が悪化して、製造装置の配管を閉塞させたり、現像装置へのトナーの補給が円滑の行われない等の問題が発生してしまう。
【0007】
【特許文献1】特開平9−274335号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平8−262796号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平4−179967号公報(第2頁、左欄第2行目〜左下欄第5行目)
【特許文献4】特許第2597452号公報(特許請求の範囲)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、生分解性樹脂を用いた小粒径トナーを高収率で生産するのに適したトナーの製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、流動性が良好であり、高品質且つ高解像度の印刷を行うことが可能な、生分解性樹脂を用いたトナーの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の方法により前記課題が解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、生分解性樹脂と着色剤を有機溶媒に溶解あるいは分散させて着色液を製造する工程、乳化剤および/または分散安定剤の存在下で、前記着色液と水性媒体を混合することにより前記着色液の微粒子が前記水性媒体中に分散した水性分散液を製造する工程、前記微粒子中の有機溶媒を除去することにより着色樹脂微粒子を生成させる工程、前記着色樹脂微粒子を前記水性媒体から分離し、乾燥する工程を順次行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明の方法では、トナーを微粒子化する方法として粉砕方法を用いていないので、粉砕性の悪い生分解性樹脂であっても容易に微粒子化することができる。
また、粉砕方法によって製造されたトナーの表面には、着色剤や必要により添加される離型剤等が露出しているため、トナーの流動性が損なわれるが、本発明の方で製造したトナーの形状は球形であり、しかも着色剤や離型剤等はトナーの中に包含されるので、トナーの流動性が優れている。特に、離型剤を多量に添加して粉砕性を向上させて製造したトナーとの差は顕著である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、「生分解性」とは、細菌、真菌などの微生物、酵素などにより分子の結合が切断されることを言い、「生分解性樹脂」とは、生分解性を有し、生分解することにより環境を汚染することなく、生態系のサイクルに組み込まれる樹脂を言う。本発明で使用する生分解性樹脂としては、ポリ酪酸類、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルの共重合物、脂肪族ポリエステルとポリアミドの共重合物、ポリ乳酸、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体等がある。
【0013】
具体的な例としては、次のようなものが挙げられる。ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体、3−ヒドロキシ酪酸と4−ヒドロキシ酪酸の共重合体、等のポリ酪酸類。ラクチド、グリコリド、β−プロピオラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の開環重合体や、共重合体、等の脂肪族ポリエステル化合物。アジピン酸と1.4−ブタンジオ−ルよりなるポリエステル、琥珀酸と1.4−ブタンジオ−ルよりなるポリエステル、琥珀酸と1.6−ヘキサンジオ−ルよりなるポリエステル、等の脂肪族2塩基酸と脂肪族ジオ−ルよりなるポリエステルを挙げる事が出来る。
【0014】
また、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合物としては、上記した脂肪族ポリエステル化合物、または、これらを合成する際に1〜50質量%、好ましくは5〜30%の、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸やP−ヒドロキシ安息香酸、P−ヒドロキシエチル安息香酸、P−ヒドロキシフェニル酢酸等の芳香族ジカルボン酸や芳香族オキシカルボン酸を反応させた樹脂が挙げられる。
【0015】
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体としては、ポリ乳酸とエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール類とコハク酸、メチルグルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸から得られる脂肪族ポリエステルの共重合体が挙げられる。乳酸系ポリエステルの製造で用いられる重合触媒としては、例えば、エステル交換触媒として知られる、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、コバルト等の金属及びその化合物、特に金属有機化合物、炭酸塩、ハロゲン化物、なかでもオクタン酸錫、塩化亜鉛、アルコキシチタン等が挙げられる。
【0016】
上記の樹脂の中でもポリ酪酸類、あるいはポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体を用いることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる生分解性樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上のものが好ましいが、中でも、そのTgが55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。
【0018】
また、樹脂の軟化点としては、90℃以上、中でも、90℃〜180℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜160℃の範囲である。軟化点が90℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすく、保存時や印字の際にトラブルになりやすく、180℃を越える場合には定着性が悪くなることが多い。
【0019】
樹脂の軟化点は定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスターでの測定条件は、ピストン断面積1cm2 、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50゜C、昇温速度6゜C/min、試料質量1.5gの条件で行った。
【0020】
また、生分解性樹脂の酸価としては、1〜30mgKOH/g以下であることが好ましい。本発明の製造方法によりトナーを製造する上で、酸価は前記の範囲であることが好ましく、また、トナーとして使用する場合に環境安定性良好となる。
【0021】
本発明で使用できる着色剤としては、例えば、黒の着色剤としては製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11等の鉄酸化物系顔料、フタロシアニン系のシアニンブラックBX等があげられる。また、以下に例示する有彩色の顔料を使用して有彩色のトナーとして、あるいは2種類以上の顔料を使用して黒色に調色して使用することもできる。
【0022】
本発明のトナーに使用できる青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63等が挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3(一般名フタロシアニンブルーG),15(フタロシアニンブルーR),16(無金属フタロシアニンブルー),60(インダンスロンブルー)が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
【0023】
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 12(一般名ジスアゾイエロー AAA),13(ジスアゾイエロー AAMX),17(ジスアゾイエロー AAOA),97(ファストイエロー FGL),110(イソインドリノンイエロー 3RLT),および155(サンドリンイエロー 4G),180(ベンズイミダゾロン)が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Yellow 17,155,180が挙げられる。
【0024】
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1(一般名バリウムレッド),48:2(カルシウムレッド),48:3(ストロンチウムレッド),48:4(マンガンレッド),53:1(レーキレッド),57:1(ブリリアントカーミン6B),122(キナクリドンマゼンタ 122)および209(ジクロロキナクリドンレッド)が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Red 57:1,122および209が挙げられる。
【0025】
本発明で使用する黒色の着色剤としてより好ましいものは、チタン−鉄の複合酸化物である。中でも、FeTiO2、Fe2TiO4及びFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3の混合組成を有する複合酸化物から選択される1種以上の複合酸化物を用いることが特に好ましい。更に、FeTiO2若しくはFe2TiO4はスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)であることが好ましい。このような着色剤を含有するトナーは、長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、更に、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーとなる。これらの着色剤は、黒色あるいは茶色の着色剤であり、カーボンブラックの代わりに黒色着色剤として用いた場合、有害物質を含有しないため安全衛生面でも優れたトナーとなる。
【0026】
FeTiO2で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)は、C.I.Pigment Black 12に分類される着色剤である。市販品としては、例えば、Battleship Gray No.6、Chestnut Brown No.180、Chocolate BrownNo.20、Russet Brown No.8(以上、ShepherdColor Company製)、イルガカラー10358(チバガイギー製)等がある。以上は黒色、あるいは暗色の着色剤である。本発明により製造されるトナーを黒色のトナーとする場合は、特にBattleship Gray No.6、あるいはChocolate Brown No.20を用いることが好ましい。また、茶色、あるいは薄茶色のC.I.Pigment Black 12に分類される着色剤としては、Autumn Brown No.156、Golden Brown No.19(以上、Shepherd Color Company製)等がある。本発明により製造されるトナーを茶系のトナーとする場合はこれらの着色剤を使用すると良い。
【0027】
また、Fe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)を用いる場合の例としては、酸化チタン(TiO2:Titanium Dioxide)粒子の表面をFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物を含有する層で被覆した黒色微粒子がある。このような構成を採ると、黒色度の高い着色剤となる。市販品としては、ETB−100(チタン工業製)がある。
【0028】
Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する着色剤は、例えば、▲1▼粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末、▲2▼マグネタイト粒子粉末とチタン化合物との混合粉末、又は▲3▼粒子表面をチタン化合物で被覆したヘマタイト粒子粉末を還元して得られる還元粉末、等を非酸化性雰囲気下700℃以上の温度で加熱焼成する方法によって得ることができる。粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末を原料として用いる場合(▲1▼の場合)には、磁化値が小さい粒子が得られやすく、着色剤を非磁性粒子とする目的において、好ましい方法である。
【0029】
マグネタイト粒子粉末、ヘマタイト粒子粉末としては、粒状、球状、針状等、いかなる形態の粒子でもよく、また、大きさは0.03〜1.5μm程度の粒子を使用することが好ましい。使用するチタン化合物としては、チタンの含水酸化物、水酸化物、酸化物のいずれをも使用することができるが、マグネタイト粒子粉末と混合する場合には水溶性のチタン化合物を用いるのが好ましい。チタン化合物の量は、マグネタイト粒子中のFe(II)及びFe(III)に対し、Ti換算で15.0〜50.0原子%である。この範囲であると得られる黒色顔料の磁化値が適度な値となり好ましい。
【0030】
本発明で使用する青色系の着色剤としてより好ましいものは、紺青(Fe(NH4)Fe(CN)6・nH2O、C.I.Pigment Blue 27)、群青(Na6−8Al6O24S2−4、C.I.Pigment Blue29)、コバルトブルー(CoO・Al2O3、C.I.Pigment Blue 28)、セルリアンブルー(CoO・nSnO2・mMgO:n=1.5〜3.5、m=2〜6、C.I.Pigment Blue 35)、呉須(Co3O4+SiO2+Al2O3+Fe2O3+NiO+MnO)、及びターコイズブルー(C.I.Pigment Blue 36)から選択される1種以上である。中でも、紺青、群青、コバルトブルー、セルリアンブルーを使用することが好ましく、紺青を使用することが特に好ましい。
【0031】
これら着色剤の使用量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜15質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0032】
本発明では必要に応じ公知の帯電制御剤を使用することができる。例えば正帯電制御剤としてはニグロシン系染料、変成ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が使用でき、また、負帯電制御剤としてはトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属塩又は錯体、ベンジル酸の金属塩又は錯体、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ化合物の金属塩又は錯体、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等が使用できる。
【0033】
本発明で使用する負帯電性の帯電制御剤としては、特に、有機ベントナイトを含有する物質を帯電制御剤として用いることが好ましい。有機ベントナイトとは、有機カチオン形成性化合物とベントナイトを主成分として製造される物質であり、ベントナイトとはSiO2とAl2O3を主とし、モンモリロン石を主成分とした層状構造を有する粘度鉱物である。このような天然の層状化合物であるベントナイトは、イオン交換などによって有機分子を層間に取り込むことができる。ベントナイトの層間には、本来、ナトリウムやカリウムなどの無機の金属カチオンが存在するが、これをイオン交換することによってアルキルアンモニウムイオンなど、有機カチオンをインターカレート(包接)し、有機物と無機物が交互に積層した複合体(層間化合物)が生じる。本発明で帯電制御剤として使用する有機ベントナイトは、ベントナイト中の無機カチオンを有機カチオン形成性化合物から生じる有機カチオンで交換したものである。
【0034】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物としては、公知の化合物を使用できる。例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムフルオロフォスフェート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、トリエチルメチルアンモニウムアイオダイド、等の4級アンモニウム塩がある。
【0035】
また、イソプロピルピリジニウムクロライド、ブチルピリジニウムクロライド、ヘプチルピリジニウムクロライド、デシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド、等のピリジウム塩がある。
【0036】
更に、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリ−(4−ビニルピリジン)、ポリアリルアミン、アミノアセチル化されたポリビニルアルコール、ポリ−(L)−リジン、キトサン、ポリピロール、あるいはジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリレートを含有するビニルモノマーとの共重合体、等から得られるポリマ−性アンモニウム塩がある。
【0037】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物のアニオン成分としては特に限定されるものではないが、安全性あるいは環境保護という観点からは、クロム、コバルト、銅、ニッケル、モリブデン、鉛、水銀、等の金属を含まないアニオンであることが好ましい。
【0038】
本発明で使用する有機ベントナイトを調製するための方法としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているイオン交換操作により製造することができる。例えば、水、水と有機溶媒の混合物、あるいは有機溶媒中にベントナイトを浸漬し、これに有機カチオン形成性化合物を添加して、一定時間放置後、これを濾過洗浄し、乾燥することにより得ることができる。
【0039】
上記の有機ベントナイトを含有する帯電制御剤は、本発明で使用する樹脂中に均一に分散することができるので、少量で所望の帯電量を得ることができる。また、天然の粘土鉱物を原料としているので、土壌中に廃棄された場合も環境を汚染することがない。
【0040】
本発明で使用する正帯電性の帯電制御剤としては、特に、下記一般式(I)、
【化1】
(式中、R1〜R8は、各々独立的に、炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素を表わし、nは0又は1を表わし、nが0の場合、R9は、炭素原子数1〜4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選ばれる置換基を有していても良い炭素原子数が4〜15のアルキレン基を表わし、nが1の場合、Aは炭素原子数1〜4のアルキル基で環上の水素原子が置換されていても良いフェニレン基を表わし、R9及びR10は、各々独立的に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表わすが、R9及びR10のアルキレン基の炭素原子数の和は2〜9の範囲にある。
)で表わされる繰り返し構造を有するポリアミンを用いることが好ましい。なお、一般式(I)で表される構造の帯電制御剤を製造する方法の詳細は、特願2001−301173号公報に記載されている。
【0041】
帯電制御剤の使用量としてはトナー全体に対して、0.1〜10質量部の範囲であり、この範囲であると、トナー抵抗の低下もなく十分な帯電性能が得られる。より好ましくは0.3〜5質量部であり、特に、0.5〜3質量部であることが好ましい。
【0042】
また、本発明の製造方法においては、これまで公知の種々の離型剤、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックスを用いることができるが、本発明では、特に、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、カイガラムシワックス、モンタン系エステルワックス等の天然物に由来するワックスを使用することが好ましい。
このようなワックスは本発明で使用する樹脂中における分散性が良く、また、離型性、摺動性が良好であり好ましい。また、天然のワックスを原料としているので、土壌中に廃棄された場合も環境を汚染することがない。
【0043】
離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、トナー全体に対して0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、15質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
【0044】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は以下の工程を含む。
第1工程;生分解性樹脂と着色剤を有機溶媒中に溶解、あるいは分散させて着色液を製造する工程
第2工程;乳化剤および/または分散安定剤の存在下で、前記着色液と水性媒体を混合させることにより、前記着色液の微粒子が水性媒体中に分散した水性分散液を形成させる工程
第3工程;その後、前記微粒子中の有機溶媒を除去することにより着色樹脂微粒子を生成させる工程
第4工程;前記着色樹脂微粒子を水性媒体から分離し、乾燥することにより静電荷現像用トナーを製造する工程
【0045】
第1工程では、例えば、有機溶媒に生分解性樹脂を溶解あるいは分散し、それに着色剤、必要に応じ帯電制御剤や離型剤等を加え、デスパ(分散攪拌機)、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等の一般的な混合機・分散機を使用して分散させ、有機溶媒中に着色剤等が微分散した着色液を製造する。
【0046】
生分解性樹脂と着色剤と必要に応じて添加する離型剤等を溶解あるいは分散させるための有機溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶媒は、単独で用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。また、有機溶媒は、生分解性樹脂を溶解するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶媒し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶媒としては、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0047】
第2工程は、前記着色液を水性媒体中に乳化する工程である。その際、非水溶性樹脂と着色剤と、必要に応じて添加される帯電制御剤等と有機溶剤からなる着色液を水性媒体と混合して乳化する。この工程においては、生分解性樹脂と着色剤等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を徐々に添加する方法が好ましい。その際には、前記混合物の有機連続相に水を徐々に添加することで、Water in Oilの不連続相が生成し、さらに水を追加して添加することで、Oil in Waterの不連続相に転相して、水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁・乳化液が形成される(以下、この方法を転相乳化という)。
【0048】
生分解性樹脂としては、カルボキシル基等の親水性の基を有する自己水分散性樹脂であることが好ましく、そのような樹脂を用いて転相乳化を行うには、乳化剤および/または分散安定剤を添加して行うことが好ましい。分散安定剤としては、水溶性高分子化合物が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また、乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエテールなどのノニオン系、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系、あるいはカチオン系の各種界面活性剤が挙げられる。勿論、乳化剤の2種以上を併用しても良いし、分散安定剤の2種以上を併用しても良い。
【0049】
乳化剤や分散安定剤を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5〜3質量%になるようにするのが好ましい。
【0050】
生分解性樹脂に乳化剤および/または分散安定剤を組み合わせて本発明を実施するのに比べて、中和により水に分散しうる樹脂を中和することにより、それ自体で水に分散しうるようにした樹脂を用いる方が、最終的に乳化剤や分散安定剤による吸湿やブリードなどの不都合がより少なく、また、洗浄工程も簡略にすることができ、生産性もより良好になるのでより好ましい。
【0051】
生分解性樹脂の官能基を中和するための塩基性の中和剤としては、特に限定はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリや、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0052】
また、酸性の中和剤としては、特に限定はないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸や蟻酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸が挙げられる。
【0053】
第3工程では、前記着色液による微粒子中の有機溶媒を蒸留装置等により除去し、着色樹脂微粒子を生成させる工程である。
【0054】
転相乳化後の前記着色液による微粒子中の有機溶媒を除去する際の温度については、生成した微粒子が溶液中で凝集・融着することを防止するために、通常、生分解性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上低くすることが適当である。
【0055】
トナーの耐熱保存性や定着温度などの制約から、一般的にトナーのTgは60℃前後であることから、本発明による有機溶媒を除去する際の温度としては50℃以下とすることが実用上好ましい。
【0056】
第3工程で得られた着色樹脂微粒子の分散液は、第4工程において、例えば、湿式振動ふるいを通すことで樹脂片等のゴミ、粗大粒子を除去し、遠心分離器、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルター等の公知慣用の手段で固液分離する。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて製造されたトナー粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
【0057】
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。
【0058】
上記製造方法により製造されるトナー粒子は、着色剤が非水溶性樹脂のマトリックスに内包されているか、均一に分散している形状を有したものである。
【0059】
静電荷像現像用トナーとしては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜15μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度がより好ましい。特に3〜8μmの範囲であることが好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現され好ましい。
【0060】
本発明の製造法で製造されるトナー粒子の形状は、表面が曲面で覆われている球形の形状となるが、転相乳化時の条件を変えることにより様々な形状の球形トナーを製造することができる。例えば、単一の曲面で覆われた、真球状又はラグビーボール状のトナー粒子、あるいは複数の曲面で覆われた葡萄状のトナー粒子等がある。葡萄状のトナー粒子は、例えば、転相乳化時に目的の粒子径よりも小さい粒子径の前記着色液の微粒子、あるいは前記着色樹脂微粒子を生成させ、その後、無機塩等の添加により、微粒子の分散状態のバランスを微妙に崩し、複数の微粒子を凝集させ合体させる方法により製造することができる。
【0061】
本発明の方法では、種々の形状の球形トナーを製造することができるが、本発明においては、下記式、
平均円形度=(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(トナー粒子投影像の周長)で定義される平均円形度が、0.94以上の球形〜略球形のトナー粒子を製造することが好ましい。より好ましくは、平均円形度が0.97以上、特に好ましくは0.98以上である。
【0062】
平均円形度は、トナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することによっても求めることができるが、本発明においては、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000により求める。
フロー式粒子像分析装置FPIP−1000とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、粒子の撮像は以下の通りに行われる。
【0063】
まず、微量の界面活性剤を含む水の中にトナー粒子を懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置FPIP−1000中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。FPIP−1000のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
【0064】
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。上記の平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
【0065】
上記装置で測定する際の条件は以下の通り。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製))0.1gを添加し、更に試料であるトナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
【0066】
上記のような平均円形度を有することによって本発明の製造方法により製造された静電荷像現像用トナーは、小粒径化しても良好な粉体流動性を確保することができ、また良好な転写効率を確保することもでき、これにより優れた画像品質(解像性、階調性)を得るものとなる。平均円形度が0.94よりも小さいと、すなわち形状が球形から不定型に近づくと粉体流動性、転写効率が低下するため好ましくない。
【0067】
ところで、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、着色剤等がトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち着色剤等がトナー粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する着色剤や、その他の添加物(通常ワックスなど)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、着色剤等の含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス等の比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
【0068】
本発明の製造方法により製造される静電荷像現像用トナーは、着色剤やワックス等が生分解性樹脂に内包された構造となる。トナー粒子表面に着色剤やワックス等が露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、着色剤やワックス等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
【0069】
乾燥工程を終えたトナーには、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナー母体の表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。
外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコン、フェノール、フッ化ビニリデン等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0070】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやヘキサメチレンジシラザンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0071】
AEROSIL R972,R974,R202,R805,R812,RX200,RY200、 R809,RX50,RA200HS,RA200H〔日本アエロジル(株)〕
WACKER HDK H2000、H1018、H2050EP、HDKH3050EP、HVK2150〔ワッカーケミカルズイーストアジア(株)〕
Nipsil SS−10、SS−15,SS−20,SS−50,SS−60,SS−100、SS−50B,SS−50F,SS−10F、SS−40、SS−70,SS−72F、〔日本シリカ工業(株)〕
CABOSIL TG820F、TS−530、TS−720〔キャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク〕
外添剤の粒子径は母体トナーである乾燥後のトナーの直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。
【0072】
外添剤の使用割合は母体トナー100質量部に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0073】
前記シリカを、トナー粒子に外添させる方法としては、例えば通常の粉体用混合機であるヘンシェルミキサーなどや、ハイブリダイザー等のいわゆる表面改質機を用いて行うことができる。尚、この外添処理は、トナー粒子の表面にシリカが付着させるようにしても良いし、シリカの一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしても良い。
【0074】
本発明の製造方法により製造された静電荷像現像用トナーは、電子写真法による静電潜像の現像用として、一成分現像剤、非磁性一成分現像剤あるいはキャリアーと混合した二成分現像剤として使用できる。キャリアーの種類には特に制限はなく、公知慣用の鉄粉、フェライト、マグネタイト等やそれらに樹脂コートしたキャリアーが用いられる。
【0075】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
(樹脂1)
3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体(3−ヒドロキシ吉草酸成分を22モル%含有)
(樹脂2)
ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体(エチレングリコールと1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とからなるポリエステル樹脂とポリ乳酸が質量比で25:75)
【0077】
(着色剤1)
酸化チタン(TiO2:Titanium Dioxide)粒子の表面にFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)を形成した黒色微粉末。
物理的性質
一次粒子径:0.25μm、比表面積:5.1m2/g、pH:6.6、吸油量:31g/100g
水分:0.1wt%、嵩密度:0.40g/ml、比抵抗:9440Ω・cm
磁気特性(VSM 397.9kA/m)
Hc:23.2kA/m、σs:9.8Am2/kg、σr:2.7Am2/kg
(着色剤2)
黒色着色剤;Battleship Gray No.6
(Shepherd Color Company製)
(着色剤3)
平均径0.2μmであって磁化値85.0emu/gである粒状マグネタイト粒子粉末100gを0.26molのTiOSO4を含有する水溶液中に分散混合し、次いで、該混合液中にNaOHを添加して中和し、pH8において粒子表面にTiの水酸化物を沈着させた後、濾別、乾燥した。更に、N2ガス流下750℃で120分間加熱焼成した後、粉砕して黒色の「着色剤3」の粉末を得た。
この「着色剤3」の粒子径は、0.25μmであった。また、X線回折により該粒子はFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成物であることを確認した。
(着色剤4)
カーボンブラック:モーガルL キャボット製
(着色剤5)
紺青(Fe(NH4)Fe(CN)6・nH2O、C.I.Pigment Blue 27)
【0078】
(離型剤1)
カルナウバワックス:精製カルナバワックスNo.1
(酸価5、セラリカNODA(株)製)
(離型剤2)
ポリプロピレンワックス:ビスコール550P(三洋化成製)
【0079】
(帯電制御剤1)
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド15部をメタノール135部に溶解した。これに平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し負帯電性の「帯電制御剤1」を得た。
(帯電制御剤2)
還流冷却管、温度計、デカンター及び撹拌装置を取り付けた容量1リットルの四ツ口フラスコに、ピペラジン100g、エタノール150gを仕込んだ後、攪拌しながら内容物を80℃まで加熱し、同温度を維持しつつ、1,6−ジクロロへキサン175gを滴下した。滴下終了後、更に4時間攪拌をしながら反応を続けた。次に、エタノール90gを留去した後、98%苛性ソーダ92gを脱イオン水200gに溶解した溶液を加えて、さらに90℃で1時間中和反応を行った。次いで、内容物をろ過し、更に水洗し、最後に110℃で3時間乾燥させてポリアミン169gを得た。このポリアミン「帯電制御剤2」は淡色で、融点148〜150℃、数平均分子量(以下、Mnと略す)は、22,000(ポリメチルメタクリレート換算)であった。
(帯電制御剤3)
ニグロシン染料:N−01(オリエント化学製)
【0080】
(離型剤及び離型剤分散体の調製例)
上記離型剤105部と上記樹脂45部とメチルエチルケトン280部とをボールミルに仕込み、18時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20質量%に調整し、離型剤の微分散体(W1、W2)を得た。製造した離型剤分散体を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
(着色液の調製例)
着色剤、樹脂及びメチルエチルケトンを固形分含有量が35〜50%となるようにボールミルに仕込み、18〜36時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20質量%に調整し、着色液(P1〜P5)を得た。得られた着色液の性状等を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
(湿式混練ミルベースの調製)
上記着色液、希釈樹脂、メチルエチルケトンをデスパーで混合し、固形分含有量を50%に調整してミルベース(MB1〜MB7)を作製した。作製したミルベースの配合を表3に示す。
【0085】
【表3】
(帯電制御剤分散液の調製例)
表4の組成にて帯電制御剤とメチルエチルケトンを30/70の質量比率で配合し、モーターミル(米国アイガー社製)で分散を行い、固形分含有量を30質量%に調整し、各帯電制御剤分散液を得た。
【0086】
【表4】
【0087】
(実施例1)
表3に示したMB1を600部、表1に示したW1を100部、表4に示したE2を40部、メチルエチルケトンを57.5部、転相促進剤としてイソプロピルアルコールを29.0部、1規定のアンモニア水溶液を25.8部、円筒型容器に仕込み、よく攪拌した。続いて、水230部を加え、液温を30℃として、攪拌下に水を44部滴下し、転相乳化を行った。この時の周速は1.05m/sであった。30分間攪拌を続けた後、回転を落とし、水400部を添加した。
【0088】
ここで、粒子の水スラリーを光学顕微鏡で観察したところ、離型剤の凝集物は観察されず、流出している離型剤も見られなかった。また、粗大粒子の発生は見られなかった。
【0089】
次いで、減圧蒸留で溶剤を除去し、濾過水洗を行った。続いて、得られたウエットケーキを水に再分散させ、分散液のPHが約4になるまで1規定塩酸水溶液を加えた後、濾過水洗を繰り返した。このようにして得られたウエットケーキを凍結乾燥した後、粒子径を測定すると体積平均粒子径が8.0μmであった。このトナーから超微粉を除去するため気流式分級機を用いて分級したところ体積平均粒径が8.2μm、平均円形度が0.981のトナー粒子を得た。最終的な収率は95%であった。
【0090】
得られたトナー粒子を樹脂包埋し、ミクロトームで切断し、さらにルテニウム酸四酸化物で染色した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、顔料とワックスが生分解性樹脂に内包され、かつ、粒子内にほぼ均一に分散している状態が観察された。その後、ヘンシェルミキサーを用いて、得られたトナー粒子100部に疎水性シリカ「日本アエロジル製シリカ:RY200」2部を外添し、粉体トナー(静電荷像現像用トナー)を得た。
【0091】
(比較例1−1〜比較例1−3)
「樹脂1」83.2部、「離型剤1」4.2部、「着色剤1」9.0部、「帯電制御剤1」3.6部を二軸混練押し出し機で混練し、さらにこれを下記の条件にて粉砕したところ、実施例1で得られたような分級前の体積平均粒径(8.0μm)のトナーを得ることができなかった。最も粉砕エネルギーの大きな吐出エアー圧力の条件下でも13.3μmであった。体積平均粒子径を実施例1と同様に8μm付近にするため、分級機により大きな粒子径のトナーを除去したところ体積平均粒子径が8.5μmとなったが、最終的な収率は25%であった。
*微粉砕の条件、及び分級時の条件
▲1▼微粉砕の条件
ジェットミル;AFG−200(ホソカワミクロン社製)
・吐出エア圧力:5.0〜9.0kg/cm2
・ジェットエアが吐出するノズルの径及びノズルの数:5mm×3本
▲2▼分級条件
分級機の機種;風力分級機ミクロプレックス
(132MP、アルピネ社製)
【0092】
【表5】
【0093】
(比較例2)
「樹脂1」75.4部、「離型剤1」12.0部、「着色剤1」9.0部、「帯電制御剤1」3.6部を二軸混練押し出し機で混練し、これを上記の微粉砕機にて吐出エア圧力9.0kg/cm2にて粉砕したところ、分級前の体積平均粒径が9.0μmのトナーを得た。更に、大粒子側を分級して8.4μmのトナーとした。最終的な収率は75%であった。
【0094】
比較例のトナーを、上記実施例1のものと同様にしてTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、これらはいずれも着色剤とワックスの一部がトナー粒子表面に露出しているのが観察された。特に、比較例2のトナーはワックスの露出が顕著であった。
【0095】
(その他の実施例)
その他の実施例について実施例1と同様の方法で製造した。実施例5は実施例2と同様の方法で製造した。各実施例、比較例の粉体トナーの、使用MB(ミルベース)および使用離型剤、さらには平均円形度等の測定値について表6に示す。
【0096】
【表6】
【0097】
(定着性試験)
定着温度幅について、以下に示す定着性試験によって定着温度を求め、その上限値と下限値との範囲を定着温度幅とした。実施例および比較例の各粉体トナーを用い、市販の有機光半導体を感光体として使用したプリンターの改造機を用いて未定着画像が紙上に形成されたテストサンプルを作製し、それを90mm/秒のスピードで、リコーイマジオDA−250のヒートロール(オイルレス型)に通して定着を行い、定着後の画像に粘着テープを貼り、剥離後のID(画像濃度)が元のIDの90%以上であって、かつオフセットの発生が見られないときのヒートロールの表面温度を「定着温度」とした。結果を表7にまとめた。
【0098】
(印刷試験)
実施例1〜7、比較例1−1,比較例2の粉体トナーを用いて二成分現像剤を作製し、市販の二成分現像方式のプリンターにより印刷を行い、カブリ、解像性、階調性をそれぞれ評価した。得られた評価結果を表7に示す。なお、カブリ、解像性、階調性については、テストパターンを用いて画像を目視で評価した。評価結果は、「○」は標準よりやや良、「◎」はさらに良、として表した。なお、現像剤を作製する際のキャリアとトナーの混合比は以下の通りである。
・トナー 5部
・キャリア(シリコン樹脂被覆フェライトキャリア) 95部
【0099】
【表7】
【0100】
実施例8のトナーについて、市販の非磁性一成分現像方式で印刷試験を行った。その結果、カブリ、解像性、階調性いずれも優れた印刷画像が得られた。
【0101】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、生分解性樹脂のような粉砕法では生産効率が劣る樹脂を用いた場合であっても、小粒径トナーを高収率で生産することができる。さらに、本発明の製造方法で製造した生分解性を有するトナーは、流動性が良好であり、高品質且つ高解像度の印刷を行うことが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンター、ファックス等に好適に用いられる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックは膨大な量が使用されているが、その廃棄物は、景観の阻害、海洋生物への脅威、環境汚染等の深刻な地球的環境問題を引き起こしている。電子写真方式や静電記録方式のプリンターに用いられる静電荷像現像用トナー(以下、トナーと記載する)においても同様であり、トナーを廃棄処分する場合、あるいはトナーで印刷された印刷物を廃棄する場合の環境に対する影響が問題となっている。トナー用に使用される汎用樹脂としては、ポリスチレン、スチレンアクリル、ポリエステル、エポキシ、スチレンブタジエン等の樹脂が使用され、これらの樹脂を用いたトナーを処分する場合は、焼却や埋立が行われている。
【0003】
しかしながら、これらの汎用樹脂を使用したトナーを焼却や埋立により処分する場合には問題がある。例えば、焼却する場合には、上記の汎用樹脂は、燃焼カロリーが高いため、炉を痛め易く、炉の寿命を短くしてしまう。また、埋立処分をする場合においても、上記の汎用樹脂は、化学的安定性が高いため、原形をとどめたまま半永久的に残留する事が知られており、環境への影響が懸念される。
自然環境中に廃棄された場合には、その安定性のために長期にわたって土中に存在し、海洋生物、鳥類等が誤って補食する可能性が高く、生態系破壊の一因となる。これらの問題を解決するために、近年、トナーに使用する樹脂においても生分解性樹脂を使用することが盛んに検討されている。
【0004】
例えば、特開平9−274335号公報、特開平8−262796号公報、及び特開平4−179967号公報においては生分解性樹脂として、脂肪族ポリエステル、酪酸系、乳酸系の樹脂を用いたトナーが開示されている。
【0005】
ところで、粉体トナーを製造する方法としては、樹脂と着色剤等を加熱溶融状態で混練し、冷却後に粉砕・分級する工程により製造するのが一般的である。前記公報における実施例でもそのような方法でトナーを製造している。しかしながら、生分解性樹脂は従来のトナーで使用されているスチレンアクリル樹脂や芳香族系のポリエステル樹脂と異なり、粉砕性の劣るものである。そのため、10ミクロン前後のトナーを製造するためには、従来のトナーと比較して、多大な粉砕エネルギーを必要とし、また、単位時間あたりの生産量が低下する等、生産性に問題があった。特に、高品質且つ高解像度の印刷を行うための7ミクロン前後の小粒径トナーを製造することが困難であった。
【0006】
これを改善するため、特許第2597452号公報では、生分解性樹脂とライスワックス、カルナバワックス等の植物ワックスを使用する技術が提示されている。同公報では、通常使用する量の数倍〜数十倍の多量のワックスを使用することにより生分解性樹脂を用いたトナーの粉砕性を向上させている。しかしながら、このような方法では、トナーの流動性が悪化して、製造装置の配管を閉塞させたり、現像装置へのトナーの補給が円滑の行われない等の問題が発生してしまう。
【0007】
【特許文献1】特開平9−274335号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平8−262796号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平4−179967号公報(第2頁、左欄第2行目〜左下欄第5行目)
【特許文献4】特許第2597452号公報(特許請求の範囲)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、生分解性樹脂を用いた小粒径トナーを高収率で生産するのに適したトナーの製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、流動性が良好であり、高品質且つ高解像度の印刷を行うことが可能な、生分解性樹脂を用いたトナーの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の方法により前記課題が解決できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、生分解性樹脂と着色剤を有機溶媒に溶解あるいは分散させて着色液を製造する工程、乳化剤および/または分散安定剤の存在下で、前記着色液と水性媒体を混合することにより前記着色液の微粒子が前記水性媒体中に分散した水性分散液を製造する工程、前記微粒子中の有機溶媒を除去することにより着色樹脂微粒子を生成させる工程、前記着色樹脂微粒子を前記水性媒体から分離し、乾燥する工程を順次行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法を提供するものである。
【0011】
本発明の方法では、トナーを微粒子化する方法として粉砕方法を用いていないので、粉砕性の悪い生分解性樹脂であっても容易に微粒子化することができる。
また、粉砕方法によって製造されたトナーの表面には、着色剤や必要により添加される離型剤等が露出しているため、トナーの流動性が損なわれるが、本発明の方で製造したトナーの形状は球形であり、しかも着色剤や離型剤等はトナーの中に包含されるので、トナーの流動性が優れている。特に、離型剤を多量に添加して粉砕性を向上させて製造したトナーとの差は顕著である。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、「生分解性」とは、細菌、真菌などの微生物、酵素などにより分子の結合が切断されることを言い、「生分解性樹脂」とは、生分解性を有し、生分解することにより環境を汚染することなく、生態系のサイクルに組み込まれる樹脂を言う。本発明で使用する生分解性樹脂としては、ポリ酪酸類、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルの共重合物、脂肪族ポリエステルとポリアミドの共重合物、ポリ乳酸、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体等がある。
【0013】
具体的な例としては、次のようなものが挙げられる。ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体、3−ヒドロキシ酪酸と4−ヒドロキシ酪酸の共重合体、等のポリ酪酸類。ラクチド、グリコリド、β−プロピオラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の開環重合体や、共重合体、等の脂肪族ポリエステル化合物。アジピン酸と1.4−ブタンジオ−ルよりなるポリエステル、琥珀酸と1.4−ブタンジオ−ルよりなるポリエステル、琥珀酸と1.6−ヘキサンジオ−ルよりなるポリエステル、等の脂肪族2塩基酸と脂肪族ジオ−ルよりなるポリエステルを挙げる事が出来る。
【0014】
また、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合物としては、上記した脂肪族ポリエステル化合物、または、これらを合成する際に1〜50質量%、好ましくは5〜30%の、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸やP−ヒドロキシ安息香酸、P−ヒドロキシエチル安息香酸、P−ヒドロキシフェニル酢酸等の芳香族ジカルボン酸や芳香族オキシカルボン酸を反応させた樹脂が挙げられる。
【0015】
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体としては、ポリ乳酸とエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール類とコハク酸、メチルグルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸から得られる脂肪族ポリエステルの共重合体が挙げられる。乳酸系ポリエステルの製造で用いられる重合触媒としては、例えば、エステル交換触媒として知られる、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、コバルト等の金属及びその化合物、特に金属有機化合物、炭酸塩、ハロゲン化物、なかでもオクタン酸錫、塩化亜鉛、アルコキシチタン等が挙げられる。
【0016】
上記の樹脂の中でもポリ酪酸類、あるいはポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体を用いることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられる生分解性樹脂のガラス転移温度(Tg)は50℃以上のものが好ましいが、中でも、そのTgが55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、あるいはマシンの現像装置内部で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)を生じやすい。
【0018】
また、樹脂の軟化点としては、90℃以上、中でも、90℃〜180℃の範囲のものが好ましい、より好ましくは、95℃〜160℃の範囲である。軟化点が90℃未満の場合は、トナーが凝集現象を生じやすく、保存時や印字の際にトラブルになりやすく、180℃を越える場合には定着性が悪くなることが多い。
【0019】
樹脂の軟化点は定荷重押出し形細管式レオメータである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスターでの測定条件は、ピストン断面積1cm2 、シリンダ圧力0.98MPa、ダイ長さ1mm、ダイ穴径1mm、測定開始温度50゜C、昇温速度6゜C/min、試料質量1.5gの条件で行った。
【0020】
また、生分解性樹脂の酸価としては、1〜30mgKOH/g以下であることが好ましい。本発明の製造方法によりトナーを製造する上で、酸価は前記の範囲であることが好ましく、また、トナーとして使用する場合に環境安定性良好となる。
【0021】
本発明で使用できる着色剤としては、例えば、黒の着色剤としては製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11等の鉄酸化物系顔料、フタロシアニン系のシアニンブラックBX等があげられる。また、以下に例示する有彩色の顔料を使用して有彩色のトナーとして、あるいは2種類以上の顔料を使用して黒色に調色して使用することもできる。
【0022】
本発明のトナーに使用できる青系の着色剤としては、フタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,15,16,17:1,27,28,29,56,60,63等が挙げられる。青系の着色剤として、好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3(一般名フタロシアニンブルーG),15(フタロシアニンブルーR),16(無金属フタロシアニンブルー),60(インダンスロンブルー)が挙げられ、最も好ましくは、C.I.Pigment Blue 15:3,60が挙げられる。
【0023】
また、黄色系の着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1,3,4,5,6,12,13,14,15,16,17,18,24,55,65,73,74,81,83,87,93,94,95,97,98,100,101,104,108,109,110,113,116,117,120,123,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,156,168,169,170,171,172,173,180,185等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Yellow 12(一般名ジスアゾイエロー AAA),13(ジスアゾイエロー AAMX),17(ジスアゾイエロー AAOA),97(ファストイエロー FGL),110(イソインドリノンイエロー 3RLT),および155(サンドリンイエロー 4G),180(ベンズイミダゾロン)が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Yellow 17,155,180が挙げられる。
【0024】
さらに、赤色系着色剤としては、例えば、C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,12,14,15,17,18,22,23,31,37,38,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,54,57:1,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,65,66,67,68,81,83,88,90,90:1,112,114,115,122,123,133,144,146,147,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,185,187,188,189,190,193,194,202,208,209,214,216,220,221,224,242,243,243:1,245,246,247等が挙げられる。好ましくは、C.I.Pigment Red 48:1(一般名バリウムレッド),48:2(カルシウムレッド),48:3(ストロンチウムレッド),48:4(マンガンレッド),53:1(レーキレッド),57:1(ブリリアントカーミン6B),122(キナクリドンマゼンタ 122)および209(ジクロロキナクリドンレッド)が挙げられ、最も好ましくはC.I.Pigment Red 57:1,122および209が挙げられる。
【0025】
本発明で使用する黒色の着色剤としてより好ましいものは、チタン−鉄の複合酸化物である。中でも、FeTiO2、Fe2TiO4及びFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3の混合組成を有する複合酸化物から選択される1種以上の複合酸化物を用いることが特に好ましい。更に、FeTiO2若しくはFe2TiO4はスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)であることが好ましい。このような着色剤を含有するトナーは、長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、更に、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーとなる。これらの着色剤は、黒色あるいは茶色の着色剤であり、カーボンブラックの代わりに黒色着色剤として用いた場合、有害物質を含有しないため安全衛生面でも優れたトナーとなる。
【0026】
FeTiO2で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)は、C.I.Pigment Black 12に分類される着色剤である。市販品としては、例えば、Battleship Gray No.6、Chestnut Brown No.180、Chocolate BrownNo.20、Russet Brown No.8(以上、ShepherdColor Company製)、イルガカラー10358(チバガイギー製)等がある。以上は黒色、あるいは暗色の着色剤である。本発明により製造されるトナーを黒色のトナーとする場合は、特にBattleship Gray No.6、あるいはChocolate Brown No.20を用いることが好ましい。また、茶色、あるいは薄茶色のC.I.Pigment Black 12に分類される着色剤としては、Autumn Brown No.156、Golden Brown No.19(以上、Shepherd Color Company製)等がある。本発明により製造されるトナーを茶系のトナーとする場合はこれらの着色剤を使用すると良い。
【0027】
また、Fe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)を用いる場合の例としては、酸化チタン(TiO2:Titanium Dioxide)粒子の表面をFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物を含有する層で被覆した黒色微粒子がある。このような構成を採ると、黒色度の高い着色剤となる。市販品としては、ETB−100(チタン工業製)がある。
【0028】
Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する着色剤は、例えば、▲1▼粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末、▲2▼マグネタイト粒子粉末とチタン化合物との混合粉末、又は▲3▼粒子表面をチタン化合物で被覆したヘマタイト粒子粉末を還元して得られる還元粉末、等を非酸化性雰囲気下700℃以上の温度で加熱焼成する方法によって得ることができる。粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末を原料として用いる場合(▲1▼の場合)には、磁化値が小さい粒子が得られやすく、着色剤を非磁性粒子とする目的において、好ましい方法である。
【0029】
マグネタイト粒子粉末、ヘマタイト粒子粉末としては、粒状、球状、針状等、いかなる形態の粒子でもよく、また、大きさは0.03〜1.5μm程度の粒子を使用することが好ましい。使用するチタン化合物としては、チタンの含水酸化物、水酸化物、酸化物のいずれをも使用することができるが、マグネタイト粒子粉末と混合する場合には水溶性のチタン化合物を用いるのが好ましい。チタン化合物の量は、マグネタイト粒子中のFe(II)及びFe(III)に対し、Ti換算で15.0〜50.0原子%である。この範囲であると得られる黒色顔料の磁化値が適度な値となり好ましい。
【0030】
本発明で使用する青色系の着色剤としてより好ましいものは、紺青(Fe(NH4)Fe(CN)6・nH2O、C.I.Pigment Blue 27)、群青(Na6−8Al6O24S2−4、C.I.Pigment Blue29)、コバルトブルー(CoO・Al2O3、C.I.Pigment Blue 28)、セルリアンブルー(CoO・nSnO2・mMgO:n=1.5〜3.5、m=2〜6、C.I.Pigment Blue 35)、呉須(Co3O4+SiO2+Al2O3+Fe2O3+NiO+MnO)、及びターコイズブルー(C.I.Pigment Blue 36)から選択される1種以上である。中でも、紺青、群青、コバルトブルー、セルリアンブルーを使用することが好ましく、紺青を使用することが特に好ましい。
【0031】
これら着色剤の使用量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜15質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0032】
本発明では必要に応じ公知の帯電制御剤を使用することができる。例えば正帯電制御剤としてはニグロシン系染料、変成ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が使用でき、また、負帯電制御剤としてはトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属塩又は錯体、ベンジル酸の金属塩又は錯体、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ化合物の金属塩又は錯体、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等が使用できる。
【0033】
本発明で使用する負帯電性の帯電制御剤としては、特に、有機ベントナイトを含有する物質を帯電制御剤として用いることが好ましい。有機ベントナイトとは、有機カチオン形成性化合物とベントナイトを主成分として製造される物質であり、ベントナイトとはSiO2とAl2O3を主とし、モンモリロン石を主成分とした層状構造を有する粘度鉱物である。このような天然の層状化合物であるベントナイトは、イオン交換などによって有機分子を層間に取り込むことができる。ベントナイトの層間には、本来、ナトリウムやカリウムなどの無機の金属カチオンが存在するが、これをイオン交換することによってアルキルアンモニウムイオンなど、有機カチオンをインターカレート(包接)し、有機物と無機物が交互に積層した複合体(層間化合物)が生じる。本発明で帯電制御剤として使用する有機ベントナイトは、ベントナイト中の無機カチオンを有機カチオン形成性化合物から生じる有機カチオンで交換したものである。
【0034】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物としては、公知の化合物を使用できる。例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムフルオロフォスフェート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、トリエチルメチルアンモニウムアイオダイド、等の4級アンモニウム塩がある。
【0035】
また、イソプロピルピリジニウムクロライド、ブチルピリジニウムクロライド、ヘプチルピリジニウムクロライド、デシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド、等のピリジウム塩がある。
【0036】
更に、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリ−(4−ビニルピリジン)、ポリアリルアミン、アミノアセチル化されたポリビニルアルコール、ポリ−(L)−リジン、キトサン、ポリピロール、あるいはジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリレートを含有するビニルモノマーとの共重合体、等から得られるポリマ−性アンモニウム塩がある。
【0037】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物のアニオン成分としては特に限定されるものではないが、安全性あるいは環境保護という観点からは、クロム、コバルト、銅、ニッケル、モリブデン、鉛、水銀、等の金属を含まないアニオンであることが好ましい。
【0038】
本発明で使用する有機ベントナイトを調製するための方法としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているイオン交換操作により製造することができる。例えば、水、水と有機溶媒の混合物、あるいは有機溶媒中にベントナイトを浸漬し、これに有機カチオン形成性化合物を添加して、一定時間放置後、これを濾過洗浄し、乾燥することにより得ることができる。
【0039】
上記の有機ベントナイトを含有する帯電制御剤は、本発明で使用する樹脂中に均一に分散することができるので、少量で所望の帯電量を得ることができる。また、天然の粘土鉱物を原料としているので、土壌中に廃棄された場合も環境を汚染することがない。
【0040】
本発明で使用する正帯電性の帯電制御剤としては、特に、下記一般式(I)、
【化1】
(式中、R1〜R8は、各々独立的に、炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素を表わし、nは0又は1を表わし、nが0の場合、R9は、炭素原子数1〜4のアルキル基及びフェニル基からなる群から選ばれる置換基を有していても良い炭素原子数が4〜15のアルキレン基を表わし、nが1の場合、Aは炭素原子数1〜4のアルキル基で環上の水素原子が置換されていても良いフェニレン基を表わし、R9及びR10は、各々独立的に、炭素原子数1〜8のアルキレン基を表わすが、R9及びR10のアルキレン基の炭素原子数の和は2〜9の範囲にある。
)で表わされる繰り返し構造を有するポリアミンを用いることが好ましい。なお、一般式(I)で表される構造の帯電制御剤を製造する方法の詳細は、特願2001−301173号公報に記載されている。
【0041】
帯電制御剤の使用量としてはトナー全体に対して、0.1〜10質量部の範囲であり、この範囲であると、トナー抵抗の低下もなく十分な帯電性能が得られる。より好ましくは0.3〜5質量部であり、特に、0.5〜3質量部であることが好ましい。
【0042】
また、本発明の製造方法においては、これまで公知の種々の離型剤、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックスを用いることができるが、本発明では、特に、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、カイガラムシワックス、モンタン系エステルワックス等の天然物に由来するワックスを使用することが好ましい。
このようなワックスは本発明で使用する樹脂中における分散性が良く、また、離型性、摺動性が良好であり好ましい。また、天然のワックスを原料としているので、土壌中に廃棄された場合も環境を汚染することがない。
【0043】
離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、トナー全体に対して0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、15質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
【0044】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は以下の工程を含む。
第1工程;生分解性樹脂と着色剤を有機溶媒中に溶解、あるいは分散させて着色液を製造する工程
第2工程;乳化剤および/または分散安定剤の存在下で、前記着色液と水性媒体を混合させることにより、前記着色液の微粒子が水性媒体中に分散した水性分散液を形成させる工程
第3工程;その後、前記微粒子中の有機溶媒を除去することにより着色樹脂微粒子を生成させる工程
第4工程;前記着色樹脂微粒子を水性媒体から分離し、乾燥することにより静電荷現像用トナーを製造する工程
【0045】
第1工程では、例えば、有機溶媒に生分解性樹脂を溶解あるいは分散し、それに着色剤、必要に応じ帯電制御剤や離型剤等を加え、デスパ(分散攪拌機)、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等の一般的な混合機・分散機を使用して分散させ、有機溶媒中に着色剤等が微分散した着色液を製造する。
【0046】
生分解性樹脂と着色剤と必要に応じて添加する離型剤等を溶解あるいは分散させるための有機溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶媒は、単独で用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。また、有機溶媒は、生分解性樹脂を溶解するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶媒し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶媒としては、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0047】
第2工程は、前記着色液を水性媒体中に乳化する工程である。その際、非水溶性樹脂と着色剤と、必要に応じて添加される帯電制御剤等と有機溶剤からなる着色液を水性媒体と混合して乳化する。この工程においては、生分解性樹脂と着色剤等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を徐々に添加する方法が好ましい。その際には、前記混合物の有機連続相に水を徐々に添加することで、Water in Oilの不連続相が生成し、さらに水を追加して添加することで、Oil in Waterの不連続相に転相して、水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁・乳化液が形成される(以下、この方法を転相乳化という)。
【0048】
生分解性樹脂としては、カルボキシル基等の親水性の基を有する自己水分散性樹脂であることが好ましく、そのような樹脂を用いて転相乳化を行うには、乳化剤および/または分散安定剤を添加して行うことが好ましい。分散安定剤としては、水溶性高分子化合物が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。また、乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエテールなどのノニオン系、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系、あるいはカチオン系の各種界面活性剤が挙げられる。勿論、乳化剤の2種以上を併用しても良いし、分散安定剤の2種以上を併用しても良い。
【0049】
乳化剤や分散安定剤を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5〜3質量%になるようにするのが好ましい。
【0050】
生分解性樹脂に乳化剤および/または分散安定剤を組み合わせて本発明を実施するのに比べて、中和により水に分散しうる樹脂を中和することにより、それ自体で水に分散しうるようにした樹脂を用いる方が、最終的に乳化剤や分散安定剤による吸湿やブリードなどの不都合がより少なく、また、洗浄工程も簡略にすることができ、生産性もより良好になるのでより好ましい。
【0051】
生分解性樹脂の官能基を中和するための塩基性の中和剤としては、特に限定はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの無機アルカリや、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0052】
また、酸性の中和剤としては、特に限定はないが、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸や蟻酸、酢酸、プロピオン酸などの有機酸が挙げられる。
【0053】
第3工程では、前記着色液による微粒子中の有機溶媒を蒸留装置等により除去し、着色樹脂微粒子を生成させる工程である。
【0054】
転相乳化後の前記着色液による微粒子中の有機溶媒を除去する際の温度については、生成した微粒子が溶液中で凝集・融着することを防止するために、通常、生分解性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも10℃以上低くすることが適当である。
【0055】
トナーの耐熱保存性や定着温度などの制約から、一般的にトナーのTgは60℃前後であることから、本発明による有機溶媒を除去する際の温度としては50℃以下とすることが実用上好ましい。
【0056】
第3工程で得られた着色樹脂微粒子の分散液は、第4工程において、例えば、湿式振動ふるいを通すことで樹脂片等のゴミ、粗大粒子を除去し、遠心分離器、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルター等の公知慣用の手段で固液分離する。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて製造されたトナー粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
【0057】
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。
【0058】
上記製造方法により製造されるトナー粒子は、着色剤が非水溶性樹脂のマトリックスに内包されているか、均一に分散している形状を有したものである。
【0059】
静電荷像現像用トナーとしては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜15μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度がより好ましい。特に3〜8μmの範囲であることが好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現され好ましい。
【0060】
本発明の製造法で製造されるトナー粒子の形状は、表面が曲面で覆われている球形の形状となるが、転相乳化時の条件を変えることにより様々な形状の球形トナーを製造することができる。例えば、単一の曲面で覆われた、真球状又はラグビーボール状のトナー粒子、あるいは複数の曲面で覆われた葡萄状のトナー粒子等がある。葡萄状のトナー粒子は、例えば、転相乳化時に目的の粒子径よりも小さい粒子径の前記着色液の微粒子、あるいは前記着色樹脂微粒子を生成させ、その後、無機塩等の添加により、微粒子の分散状態のバランスを微妙に崩し、複数の微粒子を凝集させ合体させる方法により製造することができる。
【0061】
本発明の方法では、種々の形状の球形トナーを製造することができるが、本発明においては、下記式、
平均円形度=(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(トナー粒子投影像の周長)で定義される平均円形度が、0.94以上の球形〜略球形のトナー粒子を製造することが好ましい。より好ましくは、平均円形度が0.97以上、特に好ましくは0.98以上である。
【0062】
平均円形度は、トナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することによっても求めることができるが、本発明においては、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000により求める。
フロー式粒子像分析装置FPIP−1000とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、粒子の撮像は以下の通りに行われる。
【0063】
まず、微量の界面活性剤を含む水の中にトナー粒子を懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置FPIP−1000中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。FPIP−1000のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
【0064】
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。上記の平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
【0065】
上記装置で測定する際の条件は以下の通り。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製))0.1gを添加し、更に試料であるトナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
【0066】
上記のような平均円形度を有することによって本発明の製造方法により製造された静電荷像現像用トナーは、小粒径化しても良好な粉体流動性を確保することができ、また良好な転写効率を確保することもでき、これにより優れた画像品質(解像性、階調性)を得るものとなる。平均円形度が0.94よりも小さいと、すなわち形状が球形から不定型に近づくと粉体流動性、転写効率が低下するため好ましくない。
【0067】
ところで、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、着色剤等がトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち着色剤等がトナー粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する着色剤や、その他の添加物(通常ワックスなど)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、着色剤等の含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス等の比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
【0068】
本発明の製造方法により製造される静電荷像現像用トナーは、着色剤やワックス等が生分解性樹脂に内包された構造となる。トナー粒子表面に着色剤やワックス等が露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、着色剤やワックス等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
【0069】
乾燥工程を終えたトナーには、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナー母体の表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。
外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコン、フェノール、フッ化ビニリデン等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0070】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやヘキサメチレンジシラザンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0071】
AEROSIL R972,R974,R202,R805,R812,RX200,RY200、 R809,RX50,RA200HS,RA200H〔日本アエロジル(株)〕
WACKER HDK H2000、H1018、H2050EP、HDKH3050EP、HVK2150〔ワッカーケミカルズイーストアジア(株)〕
Nipsil SS−10、SS−15,SS−20,SS−50,SS−60,SS−100、SS−50B,SS−50F,SS−10F、SS−40、SS−70,SS−72F、〔日本シリカ工業(株)〕
CABOSIL TG820F、TS−530、TS−720〔キャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク〕
外添剤の粒子径は母体トナーである乾燥後のトナーの直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。
【0072】
外添剤の使用割合は母体トナー100質量部に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0073】
前記シリカを、トナー粒子に外添させる方法としては、例えば通常の粉体用混合機であるヘンシェルミキサーなどや、ハイブリダイザー等のいわゆる表面改質機を用いて行うことができる。尚、この外添処理は、トナー粒子の表面にシリカが付着させるようにしても良いし、シリカの一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしても良い。
【0074】
本発明の製造方法により製造された静電荷像現像用トナーは、電子写真法による静電潜像の現像用として、一成分現像剤、非磁性一成分現像剤あるいはキャリアーと混合した二成分現像剤として使用できる。キャリアーの種類には特に制限はなく、公知慣用の鉄粉、フェライト、マグネタイト等やそれらに樹脂コートしたキャリアーが用いられる。
【0075】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0076】
(樹脂1)
3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体(3−ヒドロキシ吉草酸成分を22モル%含有)
(樹脂2)
ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体(エチレングリコールと1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とからなるポリエステル樹脂とポリ乳酸が質量比で25:75)
【0077】
(着色剤1)
酸化チタン(TiO2:Titanium Dioxide)粒子の表面にFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)を形成した黒色微粉末。
物理的性質
一次粒子径:0.25μm、比表面積:5.1m2/g、pH:6.6、吸油量:31g/100g
水分:0.1wt%、嵩密度:0.40g/ml、比抵抗:9440Ω・cm
磁気特性(VSM 397.9kA/m)
Hc:23.2kA/m、σs:9.8Am2/kg、σr:2.7Am2/kg
(着色剤2)
黒色着色剤;Battleship Gray No.6
(Shepherd Color Company製)
(着色剤3)
平均径0.2μmであって磁化値85.0emu/gである粒状マグネタイト粒子粉末100gを0.26molのTiOSO4を含有する水溶液中に分散混合し、次いで、該混合液中にNaOHを添加して中和し、pH8において粒子表面にTiの水酸化物を沈着させた後、濾別、乾燥した。更に、N2ガス流下750℃で120分間加熱焼成した後、粉砕して黒色の「着色剤3」の粉末を得た。
この「着色剤3」の粒子径は、0.25μmであった。また、X線回折により該粒子はFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成物であることを確認した。
(着色剤4)
カーボンブラック:モーガルL キャボット製
(着色剤5)
紺青(Fe(NH4)Fe(CN)6・nH2O、C.I.Pigment Blue 27)
【0078】
(離型剤1)
カルナウバワックス:精製カルナバワックスNo.1
(酸価5、セラリカNODA(株)製)
(離型剤2)
ポリプロピレンワックス:ビスコール550P(三洋化成製)
【0079】
(帯電制御剤1)
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド15部をメタノール135部に溶解した。これに平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し負帯電性の「帯電制御剤1」を得た。
(帯電制御剤2)
還流冷却管、温度計、デカンター及び撹拌装置を取り付けた容量1リットルの四ツ口フラスコに、ピペラジン100g、エタノール150gを仕込んだ後、攪拌しながら内容物を80℃まで加熱し、同温度を維持しつつ、1,6−ジクロロへキサン175gを滴下した。滴下終了後、更に4時間攪拌をしながら反応を続けた。次に、エタノール90gを留去した後、98%苛性ソーダ92gを脱イオン水200gに溶解した溶液を加えて、さらに90℃で1時間中和反応を行った。次いで、内容物をろ過し、更に水洗し、最後に110℃で3時間乾燥させてポリアミン169gを得た。このポリアミン「帯電制御剤2」は淡色で、融点148〜150℃、数平均分子量(以下、Mnと略す)は、22,000(ポリメチルメタクリレート換算)であった。
(帯電制御剤3)
ニグロシン染料:N−01(オリエント化学製)
【0080】
(離型剤及び離型剤分散体の調製例)
上記離型剤105部と上記樹脂45部とメチルエチルケトン280部とをボールミルに仕込み、18時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20質量%に調整し、離型剤の微分散体(W1、W2)を得た。製造した離型剤分散体を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
(着色液の調製例)
着色剤、樹脂及びメチルエチルケトンを固形分含有量が35〜50%となるようにボールミルに仕込み、18〜36時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を20質量%に調整し、着色液(P1〜P5)を得た。得られた着色液の性状等を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
(湿式混練ミルベースの調製)
上記着色液、希釈樹脂、メチルエチルケトンをデスパーで混合し、固形分含有量を50%に調整してミルベース(MB1〜MB7)を作製した。作製したミルベースの配合を表3に示す。
【0085】
【表3】
(帯電制御剤分散液の調製例)
表4の組成にて帯電制御剤とメチルエチルケトンを30/70の質量比率で配合し、モーターミル(米国アイガー社製)で分散を行い、固形分含有量を30質量%に調整し、各帯電制御剤分散液を得た。
【0086】
【表4】
【0087】
(実施例1)
表3に示したMB1を600部、表1に示したW1を100部、表4に示したE2を40部、メチルエチルケトンを57.5部、転相促進剤としてイソプロピルアルコールを29.0部、1規定のアンモニア水溶液を25.8部、円筒型容器に仕込み、よく攪拌した。続いて、水230部を加え、液温を30℃として、攪拌下に水を44部滴下し、転相乳化を行った。この時の周速は1.05m/sであった。30分間攪拌を続けた後、回転を落とし、水400部を添加した。
【0088】
ここで、粒子の水スラリーを光学顕微鏡で観察したところ、離型剤の凝集物は観察されず、流出している離型剤も見られなかった。また、粗大粒子の発生は見られなかった。
【0089】
次いで、減圧蒸留で溶剤を除去し、濾過水洗を行った。続いて、得られたウエットケーキを水に再分散させ、分散液のPHが約4になるまで1規定塩酸水溶液を加えた後、濾過水洗を繰り返した。このようにして得られたウエットケーキを凍結乾燥した後、粒子径を測定すると体積平均粒子径が8.0μmであった。このトナーから超微粉を除去するため気流式分級機を用いて分級したところ体積平均粒径が8.2μm、平均円形度が0.981のトナー粒子を得た。最終的な収率は95%であった。
【0090】
得られたトナー粒子を樹脂包埋し、ミクロトームで切断し、さらにルテニウム酸四酸化物で染色した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、顔料とワックスが生分解性樹脂に内包され、かつ、粒子内にほぼ均一に分散している状態が観察された。その後、ヘンシェルミキサーを用いて、得られたトナー粒子100部に疎水性シリカ「日本アエロジル製シリカ:RY200」2部を外添し、粉体トナー(静電荷像現像用トナー)を得た。
【0091】
(比較例1−1〜比較例1−3)
「樹脂1」83.2部、「離型剤1」4.2部、「着色剤1」9.0部、「帯電制御剤1」3.6部を二軸混練押し出し機で混練し、さらにこれを下記の条件にて粉砕したところ、実施例1で得られたような分級前の体積平均粒径(8.0μm)のトナーを得ることができなかった。最も粉砕エネルギーの大きな吐出エアー圧力の条件下でも13.3μmであった。体積平均粒子径を実施例1と同様に8μm付近にするため、分級機により大きな粒子径のトナーを除去したところ体積平均粒子径が8.5μmとなったが、最終的な収率は25%であった。
*微粉砕の条件、及び分級時の条件
▲1▼微粉砕の条件
ジェットミル;AFG−200(ホソカワミクロン社製)
・吐出エア圧力:5.0〜9.0kg/cm2
・ジェットエアが吐出するノズルの径及びノズルの数:5mm×3本
▲2▼分級条件
分級機の機種;風力分級機ミクロプレックス
(132MP、アルピネ社製)
【0092】
【表5】
【0093】
(比較例2)
「樹脂1」75.4部、「離型剤1」12.0部、「着色剤1」9.0部、「帯電制御剤1」3.6部を二軸混練押し出し機で混練し、これを上記の微粉砕機にて吐出エア圧力9.0kg/cm2にて粉砕したところ、分級前の体積平均粒径が9.0μmのトナーを得た。更に、大粒子側を分級して8.4μmのトナーとした。最終的な収率は75%であった。
【0094】
比較例のトナーを、上記実施例1のものと同様にしてTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、これらはいずれも着色剤とワックスの一部がトナー粒子表面に露出しているのが観察された。特に、比較例2のトナーはワックスの露出が顕著であった。
【0095】
(その他の実施例)
その他の実施例について実施例1と同様の方法で製造した。実施例5は実施例2と同様の方法で製造した。各実施例、比較例の粉体トナーの、使用MB(ミルベース)および使用離型剤、さらには平均円形度等の測定値について表6に示す。
【0096】
【表6】
【0097】
(定着性試験)
定着温度幅について、以下に示す定着性試験によって定着温度を求め、その上限値と下限値との範囲を定着温度幅とした。実施例および比較例の各粉体トナーを用い、市販の有機光半導体を感光体として使用したプリンターの改造機を用いて未定着画像が紙上に形成されたテストサンプルを作製し、それを90mm/秒のスピードで、リコーイマジオDA−250のヒートロール(オイルレス型)に通して定着を行い、定着後の画像に粘着テープを貼り、剥離後のID(画像濃度)が元のIDの90%以上であって、かつオフセットの発生が見られないときのヒートロールの表面温度を「定着温度」とした。結果を表7にまとめた。
【0098】
(印刷試験)
実施例1〜7、比較例1−1,比較例2の粉体トナーを用いて二成分現像剤を作製し、市販の二成分現像方式のプリンターにより印刷を行い、カブリ、解像性、階調性をそれぞれ評価した。得られた評価結果を表7に示す。なお、カブリ、解像性、階調性については、テストパターンを用いて画像を目視で評価した。評価結果は、「○」は標準よりやや良、「◎」はさらに良、として表した。なお、現像剤を作製する際のキャリアとトナーの混合比は以下の通りである。
・トナー 5部
・キャリア(シリコン樹脂被覆フェライトキャリア) 95部
【0099】
【表7】
【0100】
実施例8のトナーについて、市販の非磁性一成分現像方式で印刷試験を行った。その結果、カブリ、解像性、階調性いずれも優れた印刷画像が得られた。
【0101】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、生分解性樹脂のような粉砕法では生産効率が劣る樹脂を用いた場合であっても、小粒径トナーを高収率で生産することができる。さらに、本発明の製造方法で製造した生分解性を有するトナーは、流動性が良好であり、高品質且つ高解像度の印刷を行うことが可能となる。
Claims (6)
- 生分解性樹脂と着色剤を有機溶媒に溶解あるいは分散させて着色液を製造する工程、乳化剤および/または分散安定剤の存在下で、前記着色液と水性媒体を混合することにより前記着色液の微粒子が前記水性媒体中に分散した水性分散液を製造する工程、前記微粒子中の有機溶媒を除去することにより着色樹脂微粒子を生成させる工程、前記着色樹脂微粒子を前記水性媒体から分離し、乾燥する工程を順次行うことによりトナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記生分解性樹脂が、ポリ酪酸類、ポリ乳酸、及びポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体樹脂から選択される1種以上の樹脂である請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記着色剤がチタン−鉄の複合酸化物を含有する請求項1又は2のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記着色剤が、FeTiO2、Fe2TiO4及びFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3の混合組成を有する複合酸化物から選択される1種以上を含有する請求項1又は2のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記着色剤が、紺青、群青、コバルトブルー、セルリアンブルー、呉須、及びターコイズブルーから選択される1種以上を含有する請求項1又は2のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 更に、離型剤として天然ワックスを有機溶媒に溶解あるいは分散させて前記着色液を製造する請求項1、2、3、4又は5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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