JP2004054094A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
【課題】有害性物質を含有しない黒色の着色剤を使用し、トナーの流動性及び転写性に優れ且つ長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、その結果として、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーを提供する。
【解決手段】バインダー樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記着色剤が三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料であり、且つ前記トナーの形状が球形であることを特徴とする静電荷像現像用トナーを用いる。
【選択図】なし
【解決手段】バインダー樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記着色剤が三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料であり、且つ前記トナーの形状が球形であることを特徴とする静電荷像現像用トナーを用いる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は低速から高速に至る広範囲な静電荷像現像装置において、地汚れが少なく、高品位な画像を提供することができ、更に有害性物質を含有しない黒色、且つ球形の静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、静電荷像現像用トナーに用いる黒色顔料としては、カーボンブラック及び黒色酸化鉄(マグネタイト)が主に使用されてきた。カーボンブラックは一般に安価であり、粉末の粒径が微細で着色性に優れた顔料である。しかし、嵩密度が0.1g/cm3と嵩高い粉末である為、取り扱いが困難であり、作業性が悪いものであった。また、カーボンブラックは国際癌研究機構にて、グループ2B(人体に対して発癌の可能性がある)に分類されており安全衛生面からの問題も指摘されている。
【0003】
一方、黒色酸化鉄(マグネタイト)の粉末はFe3O4が磁性を有するため、凝集性があり、他のトナー原料と混合して使用する場合、均一に混合することが難しい。また、150℃程度で茶色のFe2O3に変化してしまい耐熱性が劣る等の欠点がある。
【0004】
ところで、静電荷像現像用トナーに用いられる黒色着色剤に要求される特性としては、着色性、安全性、製造時の取り扱い性、耐熱性の他に、現像性能に大きく影響する電気的特性がある。電気的特性は着色剤に求められる特性の中でも重要な特性のひとつである。この電気的特性を更に細かく分けると、帯電の立ち上がり特性、帯電を長期間保持する特性、帯電の均一性(帯電量分布)、帯電の環境安定性等が挙げられる。これらの電気的特性に影響するものとしては種々の要因が挙げられるが、例えば、着色剤の分散性、電気抵抗値及び着色剤の表面物性等がある。着色剤の電気的特性が不良であると、トナー粒子個々の帯電量が不均一となり、帯電量分布が広くなる。また、逆帯電粒子や弱帯電粒子の割合が増加して、現像時において機械内部へのトナーの飛散や、印刷物の非画像部にトナーが付着するカブリ現象が発生することになる。更に、長期間あるいは多部数の印刷において画像濃度や解像度等が変動する耐久性の劣るトナーとなり易い。
【0005】
これまでカーボンブラックあるいは黒色酸化鉄(マグネタイト)の欠点を解決し、これらに置き換わるものとして様々な材料の検討がされている。その中で、特開平3−2276号公報においては、マグネタイト粒子の表面をチタン化合物で被覆した粒子、あるいはマグネタイト粒子粉末とチタン化合物との混合粉末を700℃以上の温度で加熱焼成することにより得られる黒色粒子粉末が提案され、これを用いたトナーに関する技術が開示されている。しかしながら、当該公報の目的は、安全、無害であり、且つ作業性と耐熱性に優れた黒色着色剤を提供することであり、前記の電気的特性の改善については成されていない。また、特開2000−319021号公報においてもマグネタイト粒子にチタン成分を一定量含有させた黒色粒子粉末、及びそれを用いたトナーが提案されているが、当該公報においても、前記公報と同様に、電気的特性の改善については何ら提案されていない。
【0006】
一方、これまでトナーを製造する方法としては、主として粉砕法が用いられてきた。この粉砕法には、バインダー樹脂と着色剤等を溶融混練して、得られた混練物を機械的に粉砕することでトナーとする方法や、該混練物の粗砕物同士を圧搾空気等の気流中で衝突させ、粉砕することによりトナーを製造する方法等がある。この粉砕法により製造されたトナーの形状は不定型であり、表面に突起や凹部を有する形である。そのため、粉砕法で製造したトナーは粉体としての流動性が劣り、例えば、二成分現像剤用のトナーとして用いた場合、トナーの補給時にキャリアと瞬時に混合されず、帯電の立ち上がり特性が不良となることが多かった。また、トナーの形状が不定型であるが故に、プリンター等の現像装置において、感光体から紙等へ転写する際の転写効率が劣ると言った欠陥があった。
【0007】
このように、従来の技術においてはカーボンブラックあるいは黒色酸化鉄(マグネタイト)の欠点を解決し、更にトナーの電気的特性を十分満足しうる新規な黒色着色剤を用いたトナーに関して十分な検討が成されていない。また、そのような新規黒色着色剤を用い、更に、トナーの流動性及び転写性を改善したトナーに関する技術は未だ開示されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、有害性物質を含有しない黒色の着色剤を使用し、トナーの流動性及び転写性に優れ且つ長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、その結果として、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の黒色顔料を用いた球形のトナーを使用することにより前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、バインダー樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記着色剤が三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料であり、且つ前記トナーの形状が球形であることを特徴とする静電荷像現像用トナーを提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明で使用する着色剤は、着色剤中に三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料である。そのような黒色顔料であれば、特に限定されるものではないが、具体的な顔料としては、例えば、Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する黒色顔料を用いることが好ましい。Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する黒色顔料は、例えば、▲1▼粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末、▲2▼マグネタイト粒子粉末とチタン化合物との混合粉末、又は▲3▼粒子表面をチタン化合物で被覆したヘマタイト粒子粉末を還元して得られる還元粉末、等を非酸化性雰囲気下700℃以上の温度で加熱焼成する方法によって得ることができる。粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末を原料として用いる場合(▲1▼の場合)には、磁化値が小さい粒子が得られやすく、着色剤を非磁性粒子とする目的において、好ましい方法である。
【0012】
マグネタイト粒子粉末、ヘマタイト粒子粉末としては、粒状、球状、針状等いかなる形態の粒子でもよく、また、大きさは0.03〜1.5μm程度の粒子を使用することが好ましい。本発明で使用する着色剤を製造するために用いるチタン化合物としては、チタンの含水酸化物、水酸化物、酸化物のいずれをも使用することができるが、マグネタイト粒子粉末と混合する場合には水溶性のチタン化合物を用いるのが好ましい。チタン化合物の量は、マグネタイト粒子中のFe(II)及びFe(III)に対し、Ti換算で15.0〜50.0原子%である。この範囲であると得られる黒色顔料の磁化値が適度な値となり好ましい。
【0013】
上記から得られる着色剤を使用したトナーは、長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、更に、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーとなる。また、カーボンブラックと異なり、有害物質を含有しないため安全衛生面でも優れている。
【0014】
本発明で使用する黒色着色剤の使用量は、トナー100質量部当たり、3〜30質量部の範囲が好ましく、5〜20質量部の範囲が特に好ましい。30質量部以下であるとトナーの真比重を小さくすることができ、現像時におけるトナーの飛散等が起きにくくなり好ましい。
【0015】
また、本発明では、色相を調整する目的において公知公用の着色剤を併用する事ができる。例えば、黒の着色剤としては製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11の鉄酸化物系顔料、アニリンブラック、フタロシアニン系のシアニンブラックBX等があげられる。なお、本発明で使用する黒色着色剤は有害物質を含まないことを特徴とし、本発明の目的も有害物質を含有しない静電荷像現像用トナーを提供することにあるので、カーボンブラックを併用する場合は、有害物質の含有量及び本発明で使用する黒色着色剤と併用する量について十分に留意する必要がある。
【0016】
青系の着色剤としてはフタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 15−3、インダンスロン系のC.I.Pigment Blue 60等、赤系の着色剤としてはキナクリドン系のC.I.Pigment Red 122、アゾ系のC.I.Pigment Red 22、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:3、C.I.PigmentRed 57:1等、黄系の着色剤としてはアゾ系のC.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 155、イソインドリノン系のC.I.Pigment Yellow110、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 180等が挙げられる。
【0017】
また、本発明の静電荷像現像用トナーにおけるトナー粒子の形状は、表面が曲面で覆われている球形の形状であれば特に限定されるものではない。例えば、単一の曲面で覆われた、真球状又はラグビーボール状のトナー粒子、あるいは複数の曲面で覆われた葡萄状のトナー粒子等がある。それらの中でも、本発明においては、下記式、
平均円形度=(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(トナー粒子投影像の周長)で定義される平均円形度が、0.94以上の球形〜略球形のトナー粒子であることが好ましい。より好ましくは、平均円形度が0.97以上、特に好ましくは0.98以上である。
【0018】
平均円形度は、トナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することによっても求めることができるが、本発明においては、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000により求める。フロー式粒子像分析装置FPIP−1000とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、粒子の撮像は以下の通りに行われる。
【0019】
まず、微量の界面活性剤を含む水の中にトナー粒子を懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置FPIP−1000中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。FPIP−1000のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
【0020】
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。上記の平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
【0021】
上記装置で測定する際の条件は以下の通り。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製))0.1gを添加し、更に試料であるトナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
【0022】
上記のような平均円形度を有することによって本発明の静電荷像現像用トナーは、小粒径化しても良好な粉体流動性を確保することができ、また良好な転写効率を確保することもでき、これにより優れた画像品質(解像性、階調性)を得るものとなる。平均円形度が0.94よりも小さいと、すなわち形状が球形から不定型に近づくと粉体流動性、転写効率が低下するため好ましくない。
【0023】
本発明では必要に応じ公知の帯電制御剤を使用することができる。例えば正帯電制御剤としてはニグロシン系染料、変成ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が使用でき、また、負帯電制御剤としてはトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属塩又は錯体、ベンジル酸の金属塩又は錯体、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ化合物の金属塩又は錯体、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等が使用できる。
【0024】
本発明で使用できる好適な正帯電性帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料として、「NIGROSINE BASE EX」、「OIL BLACKBS」、「BONTRON N−01」、「BONTRON N−07」 (以上 オリエント化学(株))等が、変成ニグロシン染料としては、「BONTRON N−04」、「BONTRON N−21」 (以上 オリエント化学(株))、「CHUO−3」(中央合成化学(株))等が挙げられる。また、トリフェニルメタンとしては、「OIL BLUE」 (オリエント化学(株))、「COPY BLUE PR」 (クラリアント(株))等が挙げられる。
【0025】
更に、本発明の静電荷像現像用トナーには4級アンモニウム塩化合物も好適に使用することができる。4級アンモニウム塩化合物としては、下記式1〜式3で表される化合物がある。
【0026】
【化1】
(式1)
[式中、R1〜R3はCnH2n+1基を表す。但し、nは1〜10の整数を示す。また、R1〜R3は同じであっても異なっていてもよい。]
【0027】
【化2】
(式2)
[式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22個のアルキル基あるいはアルケニル基、炭素数1〜20個の未置換あるいは置換芳香族基、炭素数7〜20個のアラルキル基を表し、A−はモリブデン酸アニオンあるいはタングステン酸アニオン、モリブデンあるいはタングステン原子を含むヘテロポリ酸アニオンを表す。]
【0028】
【化3】
(式3)
[式中、mは1、2または3を示し、そしてnは0、1または2を示し、Mは水素原子、または1価の金属イオンである。X及びZは1または2を示し、Yは0または1を示す。さらに、X=1の時、Y=1、Z=1となりX=2の時、Y=0、Z=2となる。R5〜R12は水素、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシレン基、一般式(−C2〜5のアルキレン−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)で表されるポリアルキルオキシレン基を表し、R1、R2、R3、R4は水素、または、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、または一般式(−CH2−CH2−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)で表されるオキシエチル基、更に炭素数5〜12の単核−または多核脂環式残基、単核−または多核芳香族残基または芳香脂肪族残基を表す。]
【0029】
より具体的には以下の各化合物がある。
【0030】
【化4】
化合物(1−1)
【0031】
【化5】
化合物(2−1)
【0032】
【化6】
化合物(2−2)
【0033】
【化7】
化合物(2−3)
【0034】
【化8】
化合物(2−4)
【0035】
【化9】
化合物(2−5)
【0036】
【化10】
化合物(2−6)
【0037】
【化11】
化合物(2−7)
【0038】
【化12】
化合物(2−8)
【0039】
【化13】
化合物(2−9)
【0040】
【化14】
化合物(2−10)
【0041】
【化15】
化合物(2−11)
【0042】
【化16】
化合物(3−1)
【0043】
【化17】
化合物(3−2)
【0044】
本発明で使用できる好適な負帯電性帯電制御剤としては、アゾ化合物の金属塩又は錯体、サリチル酸の金属塩又は錯体、ベンジル酸の金属塩又は錯体、又は下記式4で表される化合物がある。
【0045】
【化18】
(式4)
(式中、R1は4級炭素、メチン、メチレンであり、N、S、O、Pのヘテロ原子を含んでいてもよく、Yは飽和結合又は不飽和結合で結ばれた環状構造を表し、R2、R3は相互に独立してアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、置換基を有しても良いアリール基又はアリールオキシ基又はアラルキル基又はアラルキルオキシ基、ハロゲン基、水素、水酸基、置換基を有しても良いアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基、シアノ基を表し、R4は水素又はアルキル基を表し、tは0ないし1から12の整数、mは1から20の整数、nは0ないし1から20の整数、kは0ないし1から4の整数、pは0ないし1から4の整数、qは0ないし1から3の整数、rは1から20の整数、sは0又は1ないし20の整数である。)
【0046】
式4で表される化合物の具体的な例としては、以下の化合物(4−1)〜化合物(4−3)がある。
【0047】
【化19】
化合物(4−1)
【0048】
【化20】
化合物(4−2)
【0049】
【化21】
化合物(4−3)
【0050】
また、本発明で好適に使用できるベンジル酸の金属塩又は錯体は、下記式5で表される化合物である。
【0051】
【化22】
(式5)
(式中、R1およびR4は水素原子、アルキル基、置換又は非置換の芳香環(縮合環も含む)を示し、R2およびR3は置換又は非置換の芳香環(縮合環も含む)を示し、MはB、Al、Fe、Ti、Co、Crから選ばれる1種の3価の金属を示し、X+はカチオンを示す)
【0052】
式5の化合物の具体的な例としては、以下の化合物(5−1)及び化合物(5−2)がある。
【0053】
【化23】
化合物(5−1)
【0054】
【化24】
化合物(5−2)
【0055】
更に、本発明で好適に使用できるアゾ化合物の金属塩又は錯体としては、例えば、下記化合物(6−1)〜化合物(6−5)がある。
【0056】
【化25】
化合物(6−1)
【0057】
【化26】
化合物(6−2)
【0058】
【化27】
化合物(6−3)
カチオンはNH4 +及びH+、Na+、K+又はこれらの混合イオンである。
【0059】
【化28】
化合物(6−4)
カチオンはNH4 +及びH+、Na+、K+又はこれらの混合イオンである。
【0060】
【化29】
化合物(6−5)
カチオンはNH4 +及びH+、Na+、K+又はこれらの混合イオンである。
【0061】
本発明においては上記の帯電制御剤の1種以上を使用することが好ましい。また、特に、上記の帯電制御剤の中でも黒色の帯電制御剤を用いることが好ましい。黒色の正帯電性帯電制御剤としては、上記のニグロシン系染料、変成ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料がある。中でも、樹脂に対する分散性を向上させるため、ロジン或いはマレイン酸等で変成した変性ニグロシン染料を使用すると、逆帯電あるいは弱帯電のトナー粒子が減少し、地汚れ、トナー飛散等が少なくなり、画質が良好となるため特に好ましい。黒色の負帯電性帯電制御剤としては、上記アゾ化合物の金属塩又は錯体がある。これらの黒色の帯電制御剤を本発明で使用する黒色着色剤と共に使用することにより、本発明の静電荷像現像用トナーをより黒色度の強いトナーとすることができる。黒色の帯電制御剤を用いることにより、本発明で用いる黒色着色剤の使用量を減じることができる。その結果としてトナーの真比重を低くすることができ、トナー飛散等を防止することができる。黒色の帯電制御剤を使用する場合は、本発明で使用する黒色着色剤の使用量は、トナー100質量部当たり、3〜20質量部の範囲が好ましく、5〜15質量部の範囲が特に好ましい。なお、本発明の静電荷像現像用トナーの真比重としては、1.70以下が好ましく、0.70〜1.60であることがより好ましい。
【0062】
上記の帯電制御剤は単独で用いても組み合わせて用いても良く、バインダー樹脂に対して0.3〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部含有させることにより良好な帯電性能が得られる。
【0063】
本発明の静電荷像現像用トナーに用いるバインダー樹脂としては、本発明の目的を損なわないものであれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ポリスチレン系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、またはスチレン−共役ジエン共重合体樹脂のようなビニル系の共重合体樹脂、さらに、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、前述の樹脂を組み合わせたハイブリッド樹脂等を挙げることができるが、これらの中でもビニル系の共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、定着性、耐オフセット性、透明性等のバランスが良いことから、ポリエステル樹脂が特に好適に使用することができる。
【0064】
本発明で好適に用いられるポリエステル樹脂は、
(A)2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物
(B)2価以上の多価アルコール
を通常の方法で脱水縮合して得る。
【0065】
2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸若しくはその酸無水物、又はそれらの誘導体が挙げられる。また、3価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。更に、それらの低級アルキルエステルとしては、アルキル残基が、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4のものが挙げられる。かかる低級アルキルエステルは、上記2価以上の多塩基酸又はその酸無水物と低級アルコールとをエステル化反応させることにより得られる。上記の多塩基酸の中では、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等が特に好ましい。
【0066】
また、2価以上の多価アルコールとしては以下の化合物が挙げられる。例えば、2価の脂肪族系アルコールとしては、
(a)エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール等が挙げられる。
【0067】
また、2価の芳香族系ジオールとしては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である以下の化合物(b)が挙げられる。
(b)ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びこれらの誘導体等。
【0068】
更に、3価以上の多価アルコールとしては、
(c)ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリメチロールベンゼン等の3価以上のアルコール、あるいは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物等がある。
【0069】
本発明で使用するポリエステル樹脂としては、2価の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物と2価の脂肪族多価アルコールを主構成成分として、更に、必要に応じて前記3価以上の多塩基酸化合物、あるいは、例えば前記(c)成分に記載した3価以上の多価アルコールにより架橋又は分岐させたポリエステル樹脂を用いることがより好ましい。その場合、多価アルコールとして、前記(b)の化合物を使用する場合は、全アルコール成分中0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。中でも化合物(b)を全く使用しないことが特に好ましい。
【0070】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、例えば触媒の存在下、上記の原料成分を用いて脱水縮合反応或いはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。上記反応を行う際の触媒としては、例えば酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート等を適宜使用する事が出来る。上記多塩基酸化合物とジオール成分の配合比(モル比)は、8/10〜10/8、特に9/10〜10/9が好ましい。なお、2価の多塩基酸化合物とジオール成分とを反応させると、直鎖状のポリエステル樹脂が得られる。また、2価及び3価以上の多塩基酸化合物と多価アルコール等とを反応させると、分岐状或いは網目状のポリエステル樹脂が得られる。このようにして得られたポリエステル樹脂は単独で使用しても良く、所望の性能となるよう、複数のポリエステル樹脂をブレンドして使用してもよい。
【0071】
本発明の静電荷像現像用トナーのバインダー樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合、最も好ましい実施形態は、多価アルコール成分として(b)化合物を使用せず、2価の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物と2価の脂肪族系アルコールを反応させた直鎖状のポリエステル樹脂と、多価アルコール成分として(b)化合物を使用せず、2価の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物、2価の脂肪族系アルコール及びエポキシ樹脂を反応させた架橋ポリエステル樹脂を併用した場合である。このような樹脂をバインダー樹脂として用いたトナーは低温での定着性能が良好であり、且つ高温でのオフセット性能も優れており良好である。
【0072】
本発明で使用するバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂も好適に使用することができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂等がある。中でも、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。具体的には、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂として、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「エピクロン2055」(軟化点80〜90℃)、「エピクロン3050」(軟化点94〜102℃)、「エピクロン4050」(軟化点96〜104℃)、「エピクロン7050」(軟化点122〜131℃)、油化シェルエポキシ(株)製の「エピコート1002」(軟化点83℃)、「エピコート1003」(軟化点89℃)、「エピコート1004」(軟化点98℃)、「エピコート1007」(軟化点128℃)、「エピコート1009」(軟化点148℃)等が挙げられる。また、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「エピクロンN−690」(軟化点85〜95℃)、「エピクロンN−695」(軟化点90〜100℃)等が挙げられる。
【0073】
また、本発明で好適に用いることのできるビニル系共重合体樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましい。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂は、例えば以下に掲げるモノマーを共重合することにより得ることができる。
【0074】
(d)スチレン及びその誘導体;例えばスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレンの如きアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン、更にニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等がある。
【0075】
(e)(メタ)アクリル酸エステルモノマー;例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートの如きアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの如き脂環族(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの如き芳香族(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの如き水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシエチルホスフェートの如きリン酸基含有(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレートの如きハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートの如きエポキシ基含有(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートの如きエーテル基含有(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き塩基性窒素原子又はアミド基含有(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0076】
(f)また、これらと共に共重合可能な不飽和化合物も必要に応じて用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、ウンゲリカ酸の如き付加重合性不飽和脂肪族モノカルボン酸、又はマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、ジヒドロムコン酸の如き付加重合性不飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0077】
(g)更にその他の共重合可能な不飽和化合物として、スルホエチルアクリルアミドの如きスルホ基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリルの如きニトリル基含有ビニルモノマー、ビニルメチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンの如きケトン基含有ビニルモノマー、N−ビニルイミダゾール、1−ビニルピロール、2−ビニルキノリン、4−ビニルピリジン、N−ビニル2−ピロリドン、N−ビニルピペリドンの如き塩基性窒素原子又はアミド基含有ビニルモノマー等を使用することができる。
【0078】
(h)また、架橋剤を上記ビニルモノマーと共に使用してもよい。架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の製造方法としては、通常の重合方法を採ることが可能で、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等、重合触媒の存在下に重合反応を行う方法が挙げられる。
【0080】
重合触媒としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、その使用量はビニルモノマー成分の0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0081】
また、カルボキシル基含有ビニルモノマーを必須成分として加えたスチレン−(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を金属塩により架橋した樹脂(アイオノマー)も使用できる。
【0082】
さらに、本発明においては、スチレン−共役ジエン共重合体を好適に用いることができる。スチレン−共役ジエン共重合体は、公知慣用の手法で得ることが出来るが、単量体を一括仕込みあるいは多段仕込みを行う様なin−situ法、例えば乳化重合により容易に得ることが出来る。
【0083】
スチレン−共役ジエン共重合体に用いられるモノマーとしては、前記(d)に例示したスチレンあるいはその誘導体が、また、共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン等が挙げられる。共役ジエンの中ではブタジエンが好ましい。
【0084】
スチレン−共役ジエン系共重合体は、スチレンと共役ジエンとの共重合体の性質を損なわない限り、それ以外の共重合可能な単量体との多元共重合体であってもよい。そのような共重合可能な単量体としては、例えば塩化ビニル、酢酸ビニルの他、前記(e)〜(h)に例示したモノマーが挙げられる。
【0085】
スチレンと共役ジエンとの共重合体の重量平均分子量(Mw)は、40,000〜200,000のものが好ましい。40,000未満の場合は画像部のトナー層の強度が充分得られ難く、耐オフセット性能(ヒートロールに対するトナーの付着汚れ防止効果)も極端に低下し易くなる。また、200,000を越える場合は、軟化点の上昇により定着可能温度が高まり、一般の定着条件下では定着性能が大きく低下し易くなる。
【0086】
スチレン−ブタジエン系共重合体を構成するモノマー成分の比率としては、ブタジエンモノマーの比率として5〜20質量%となるものが好ましい。5質量%未満ではゴム弾性が必ずしも十分ではない。また、20質量%以上では耐熱性能が悪化し易くなり、一般的なトナー使用環境及び保存環境で障害を招きやすい。
【0087】
本発明で用いられるバインダー樹脂の軟化点は90〜180℃の範囲であることが好ましく、95〜160℃の範囲であることがより好ましく、100〜135℃の範囲がさらに好ましい。90℃未満であると高温でのオフセットが発生し易くなり、180℃超では低温での定着性が悪くなり易い。
【0088】
本発明における樹脂の軟化点は定荷重押出型細管式レオメーターである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスタでの測定は、ピストン断面積1cm2、シリンダ圧力0.98MPa,ダイ穴径1mm、ダイ長さ1mm、測定開始温度50℃、昇温速度6℃/min、試料質量1.5gで行った。
【0089】
さらにバインダー樹脂のガラス転移温度は50℃以上であることが好ましいが、中でも55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、或いはマシンの現像装置内で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)がおこりやすい。ここでいう、ガラス転移温度はJIS K7121に準じた測定で得られた補外ガラス転移開始温度で定義する。測定には島津製作所製DSC−60を使用した。
【0090】
バインダー樹脂における酸価は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。球形トナーを製造する上で、酸価は前記の範囲であることが好ましく、また、トナーとして使用する場合に環境安定性が良好となる。また、水酸基価は、10〜100であることが好ましく、10〜60であることがより好ましい。酸価、水酸基価が上記範囲であれば、トナーの耐湿性が良好となる点で好ましい。
【0091】
また、本発明の静電画像現像用トナーには、これまで公知の種々の離型剤、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックス、あるいは、高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックス等を離型剤として適宜用いることができる。
【0092】
高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスの中でも、カルナウバワックス、ライスワックス、カイガラムシワックス、モンタン系エステルワックス等の天然物に由来するワックス、合成エステル系ワックスとしてはペンタエリスリトールのテトラベヘン酸エステル、アルコール系ワックスとしてはフィッシャートロプシュワックス等を酸化して得られる高級アルコール系ワックスが特に好ましい。
【0093】
離型剤は、組み合わせて使用するバインダー樹脂に応じて選択することが望ましい。バインダー樹脂に対する分散性が悪い離型剤を選択した場合、トナー粒子表面への離型剤の露出が多くなり易くなり、トナーの流動性が低下し易くなる。さらに、トナーを現像する過程において、脱離した離型剤が地汚れ、飛散の原因となり易く、画質が低下し易くなる。バインダー樹脂に対する分散が過度に進んだ場合或いは離型剤が樹脂に相溶する場合も定着・オフセット性能が低下し易くなる。これらの理由により、バインダー樹脂中に適度に分散する離型剤を選択することが好ましく、バインダー樹脂中に分散する離型剤の粒径は0.01〜5μmの範囲が好ましく、0.1〜3μmの範囲であることがより好ましい。
【0094】
本発明で使用するバインダー樹脂と離型剤の好ましい組み合わせは、ポリエステル樹脂あるいはエポキシ樹脂を使用する場合には、高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスを離型剤として使用し、ビニル系共重合体を用いた場合には、ポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックスを用いる組み合わせである。
【0095】
離型剤の融点(滴点、軟化温度)は、60〜150℃であることが好ましく、65〜130℃であることがより好ましい。融点が低すぎる場合、保存中に凝集しやすく、トナーの流動性も低下し易くなる。融点が高すぎる場合、画像の定着工程において溶融しにくく、十分な離型効果を発揮し難い。
【0096】
また、離型剤は、ブレード、キャリア等の帯電部材に固着し、帯電性能の不安定化、画質の劣化の原因となる場合があるので、固着の抑制の観点から、その硬度は高い方が良く、25℃における針入度が5以下のものが好ましく、2以下のものが特に好ましい。
【0097】
天然ワックス、合成エステルワックス、アルコール系ワックスは、構造あるいは遊離酸に起因して、カタログ値で2〜40程度の酸価を有するが、樹脂の場合と同様の理由によりこれらの値は低い方が望ましい。
【0098】
離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、バインダー樹脂に対して0.1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、20質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
【0099】
本発明の静電荷像現像用トナーは、バインダー樹脂、離型剤、帯電制御剤、着色剤以外の添加剤を含めることができる。例えば金属石鹸、ステアリン酸亜鉛等の滑剤、研磨剤として、例えば酸化セリウム、炭化ケイ素等が使用できる。
【0100】
本発明の静電荷像現像用トナーは、以下に記載した方法により製造することが好ましい。
【0101】
即ち、バインダー樹脂と本発明で使用する黒色着色剤等を有機溶媒に混合し、これを湿式で混練することで、有機溶媒中にバインダー樹脂及び黒色着色剤が溶解、あるいは分散した混合溶液を製造し、次いで該混合溶液を水性媒体中に乳化させることで該混合溶液の微粒子を製造し、更に、有機溶媒を除去することでバインダー樹脂中に黒色着色剤が分散した黒色樹脂微粒子を製造し、その後、黒色樹脂微粒子を水性媒体から分離して、乾燥することによりトナーを製造する方法である。この場合、バインダー樹脂と黒色着色剤に加えて、必要に応じて離型剤や帯電制御剤等を添加して前記分散工程を行っても良い。また、各原料は各々別々に分散処理を行っても良い。
【0102】
また、上記製造方法の中でも、水性媒体中でバインダー樹脂と黒色着色剤等と有機溶剤とを含有する混合溶液の微粒子を形成した後で、該微粒子を合一させることにより該微粒子の凝集体を形成する工程(合一工程)を行い、次いで該凝集体を水性媒体から分離することでトナーを製造することが、特に好ましい。そのような製造方法により、乳化ロスが無く、しかも粒度分布がシャープであり、表面が曲面で覆われている球形のトナーを簡便かつ短時間で、しかも高収率で得ることができる。
【0103】
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂を例にとり、以下に、合一工程を経て行われるトナーの製造方法を説明する。
【0104】
本発明の静電荷像現像用トナーを製造するための好適な製造方法は以下の工程からなる。
第一工程:ポリエステル樹脂と黒色着色剤等と有機溶剤とを含む樹脂溶液を水性媒体中に乳化させ微粒子を形成させる工程、
第二工程:前記微粒子を合一させ該微粒子の凝集体を製造する工程、
第三工程:前記凝集体中に含有される有機溶剤を脱溶剤した後、水性媒体から前記微粒子の凝集体を分離・洗浄し、乾燥させ、トナーを製造する工程(本発明におけるトナーとは第三工程で製造される凝集体を乾燥したものを指す)、
の上記3工程からなる。
【0105】
第一工程では、有機溶剤中にポリエステル樹脂を投入して、樹脂を溶解分散することにより(必要に応じ加熱して)ポリエステル樹脂と有機溶剤とを含む混合物を調整する。この場合、トナー用原料として本発明で用いる黒色着色剤、離型剤または帯電制御剤、あるいはその他の添加物から選択される1種以上をポリエステル樹脂と共に用いることができる。この際、黒色着色剤をポリエステル樹脂と共に有機溶剤中に分散させることが好ましく、更に離型剤、帯電制御剤等の各種添加剤も同様に溶解あるいは分散させるのが特に好ましい。
【0106】
有機溶剤中にポリエステル樹脂と黒色着色剤、及び必要に応じて加えられる離型剤、帯電制御剤等の各種添加剤を、溶解あるいは分散させる手段としては、以下の方法を用いることが好ましい。
【0107】
▲1▼ポリエステル樹脂、黒色着色剤等を含む混合物を加圧ニーダー、加熱2本ロール、2軸押し出し混練機などを用いて、使用するポリエステル樹脂を軟化点以上、且つ熱分解温度以下の温度に加熱して混練する。この時、黒色着色剤等はマスターバッチとして溶融混練してもよい。その後、得られた混練チップをデスパー等の攪拌機により有機溶剤中に溶解、ないし分散して調製する。
あるいは、
▲2▼ポリエステル樹脂と黒色着色剤等を有機溶剤と混合し、これをボールミル等により湿式混練する。この場合、黒色着色剤及び必要に応じて加えられる各種添加剤はあらかじめ別々に予備分散を行ってから混合しても良い。
【0108】
上記▲2▼の方法の、より具体的な手段は、有機溶媒にポリエステル樹脂を溶解し、それに黒色着色剤や離型剤を加え、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等の一般的なメディアを用いた混合機・分散機を使用して分散させることによりマスターバッチとし、更に希釈用のポリエステル樹脂、追加の有機溶剤を混合し、デスパー等の攪拌機で、有機溶媒中に黒色着色剤や離型剤等が微分散した樹脂溶液を製造する方法である。このとき、黒色着色剤や離型剤等は、未処理のまま直接ボールミル等の混合・分散機で分散するよりも、あらかじめ、低粘度のポリエステル樹脂と黒色着色剤、あるいは離型剤等を加圧ニーダー、加熱2本ロールで混練・分散してマスターバッチとしたものを用いるのが好ましい。以上のような▲2▼の製法によれば、ポリエステル樹脂の高分子成分(ゲル成分)が切断されないため、溶融混練により分散する▲1▼の方法よりも好ましい。
【0109】
次に、ポリエステル樹脂と黒色着色剤および有機溶剤を含む混合物を水性媒体中に乳化する方法としては、該混合物を、塩基性中和剤の存在下に、水性媒体と混合して乳化するのが好ましい。この工程においては、該混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を徐々に添加する方法が好ましい。その際には、該混合物の有機連続相に水を徐々に添加することで、Water in Oilの不連続相が生成し、さらに水を追加して添加することで、Oil in Waterの不連続相に転相して、水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁・乳化液が形成される(以下、この方法を転相乳化という)。
【0110】
ポリエステル樹脂は、酸性基含有ポリエステル樹脂であることが好ましく、該酸性基を中和することにより自己水分散性となるポリエステル樹脂(以下自己水分散性樹脂と表現する)であることが好ましい。自己水分散性を有する樹脂は、酸性基がアニオン型となることにより親水性を増し、水性媒体中に、分散安定剤や界面活性剤を使用しなくとも安定に分散することができる。酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基が挙げられるが、中でもカルボキシル基がトナーの帯電特性の面から好ましい。また、中和用の塩基性物質としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのごとき無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンのごとき有機塩基が用いられる。中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのごとき無機塩基が好ましい。上記混合物を水性媒体中に安定に分散するには、懸濁安定剤や、界面活性剤等の分散安定剤を添加する方法によっても可能である。しかしながら、懸濁安定剤や、界面活性剤を添加することで乳化する方法では高剪断力が必要となり、その結果、粗大粒子の発生、粒度分布がブロードになるため好ましくない。
【0111】
なお、上記混合物を微粒子化する際に用いる水性媒体は水であることが好ましく、さらに好ましくは、脱イオン水である。
【0112】
ポリエステル樹脂と黒色着色剤等を溶解あるいは分散させるための有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、結着樹脂を溶解するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶剤としては、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0113】
上記混合物を微粒子化する際には、高シェア乳化分散機機や連続式乳化分散機等が使用できるが、例えば、特開平9−114135で開示されているような攪拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を使用することが好ましい。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼がより好ましい。
【0114】
水性媒体中に前記混合物の微粒子を形成させるための乳化工程(転相乳化工程)における攪拌翼の先端の周速は、0.2〜10m/sが好ましく、0.2〜8m/sの低シェアで攪拌しながら水を滴下する方法がより好ましい。特に好ましくは0.2〜6m/sである。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、転相乳化時の分散径が大きくなり好ましくない。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり、転相が均一に起こらず、粗大粒子が発生する傾向となり好ましくない。また、転相乳化時の温度は、特に制限はないが、温度が高いほど粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。また、低温すぎるとポリエステル樹脂および有機溶剤を含む混合物の粘度が上昇し、やはり粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。転相乳化時の温度範囲としては10〜40℃が好ましい。さらに好ましくは20〜30℃の範囲である。
【0115】
以上の如く、自己水分散性樹脂を用いて、低シェア下において転相乳化を行うことにより、微粉や粗大粒子の発生を抑えることができ、その結果、次の合一工程において均一な粒度分布の微粒子の凝集体を製造することが容易になる。
【0116】
第一工程で製造する微粒子の50%体積平均粒径は、例えば、7μmの凝集体を得ようとした場合には、1μmを越えて6μm以下、より好ましくは1μmを越えて4μmの範囲である。1μm以下であると着色剤や、離型剤を用いた場合、ポリエステル樹脂により十分カプセル化されないため、帯電特性、現像特性に悪影響を及ぼし好ましくない。また、粒径が大きいと、得られるトナーの粒径が限定されるため、目的とするトナーの粒径よりも小粒径にする必要があるが、6μmよりも大きいと粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。また、第一工程で製造する微粒子の粒度分布は、10μm以上の体積粒径の比率が2%以下、より好ましくは1%以下であり、5μm以上の体積粒径の比率が10%以下、より好ましくは6%以下である。
【0117】
第二工程では、第一工程で得られた微粒子を合一させることにより該微粒子の凝集体を生成させ、所望の粒径のトナー粒子を形成させる。第二工程では、溶剤量、温度、分散安定剤及び電解質の種類あるいは添加量、濃度、攪拌条件等を適宜制御することで、所望の凝集体を得ることができる。
【0118】
第二工程では、第一工程で得られた微粒子の分散液を水で希釈し溶剤量を調整する。その後、分散安定剤を添加し、あるいは水希釈と同時に分散安定剤を添加し、分散安定剤の存在下に電解質の水溶液を滴下することで合一を進め、所定粒径の凝集体を得る。この製法では、第一工程で得られた微粒子は溶剤により膨潤しており、かつ電解質により粒子の電気二重層が収縮した不安定な状態のため、低シェアー(低剪断力)の攪拌による粒子同士の衝突でも容易に合一が進行する。また、電解質により不安定化された粒子は、分散安定剤により分散安定性が付与され、不均一な合一が抑制される。
【0119】
第一工程までで得られる、自己水分散性樹脂から形成された微粒子は、カルボン酸塩による電気二重層の作用により水性媒体中で安定に分散している。微粒子が分散している水性媒体中に電気二重層を破壊、あるいは縮小させる電解質を添加することで、粒子を不安定化させる。その際に用いることのできる電解質としては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等も電解質として有効に用いることができる。合一させるために添加するこれらの電解質は、単独でも、あるいは2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニュウムのごとき1価のカチオンの硫酸塩が均一な合一を進める上で好ましい。
【0120】
また、電解質等の添加だけでは、系内の微粒子の分散安定性が不安定になっているため、合一が不均一となり、粗大粒子や凝集物が発生しやすい。電解質や酸性物質により生成した微粒子の凝集体が、再合一を繰り返して、目的とする粒子径以上の凝集体を形成するのを防止するためには、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤やイオン性、あるいはノニオン性の界面活性剤を分散安定剤として添加することが好ましい。ここで使用する分散安定剤は、後から添加する電解質によって分散安定性を損なわない性能を有する物質であることが好ましい。そのような特性を有する分散安定剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等、あるいは各種プルロニック系等のノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤等がある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があり、好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。以上に記載した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。合一工程においては、分散安定剤(乳化剤)の存在下に電解質を添加することで、不均一な合一を防止することが可能となり、その結果、シャープな粒度分布を得ることができ、更に収率の向上が達成できる。
【0121】
なお、合一工程における攪拌条件は、前記の第一工程(転相乳化工程)における条件と同様な装置で、同様な低シェアの攪拌条件下で行うことが好ましい。
ホモミキサーのようなステーターとローターからなる高剪断装置や、タービン翼のような局所的に高剪断がかかり、全体を均一に攪拌する能力の弱い攪拌翼では合一が不均一となり、粗大粒子の発生につながりやすい。
【0122】
本発明の第二工程においては、必要に応じて第一工程で転相乳化により得られた微粒子の分散液を水でさらに希釈する。その後、分散安定剤を添加し、次いで電解質を順次添加して合一を行う。分散安定剤及び電解質は水溶液、あるいは水中に分散した状態で加えることが好ましい。電解質を添加する前の系に含まれる溶剤量としては、5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。また、10〜25質量%の範囲内がより好ましく、特に、15〜25質量%の範囲内が好ましい。溶剤量が5質量%よりも少ないと、合一に要する電解質量が多くなり好ましくない。また、溶剤量が30質量%よりも多いと不均一な合一による凝集物の発生が多くなり、また、乳化剤の添加量が多くなるため好ましくない。
【0123】
使用する分散安定剤の量は、例えば微粒子の固形分含有量に対し、0.2〜3.0質量%の範囲内が好ましい。0.5〜2.5質量%の範囲内がより好ましく、0.8〜2.5質量%の範囲内が特に好ましい。0.2質量%よりも少ないと、目的とする粗大粒子発生に対する防止効果が得ることが困難となる。一方、3.0質量%よりも多いと、電解質の量を増加しても合一が十分に進行せず、所定粒径の粒子が得られなくなり、結果として、微粒子が残存してしまい収率を低下させるため好ましくない。
【0124】
また、使用する電解質の量は、微粒子の固形分含有量に対し、1〜15質量%の範囲内であることが好ましい。2〜12質量%の範囲内であることがより好ましく、2〜10質量%の範囲内であることが特に好ましい。電解質の量が1質量%よりも少ないと、合一が十分に進行しないため好ましくない。また、電解質の量が15質量%よりも多いと、合一が不均一となり、凝集物の発生や、粗大粒子が発生し収率を低下させるため好ましくない。電解質をあらかじめ水に溶かして加える場合は、電解質溶液の濃度は1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0125】
また、合一時の温度は10〜50℃の範囲内が好ましい。より好ましくは20〜40℃の範囲内であり、20〜35℃であることが特に好ましい。温度が10℃よりも低いと、合一が進行しにくくなるため好ましくない。また、温度が50℃よりも高いと、合一速度が速くなり、凝集物や、粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。
【0126】
第二工程においては、例えば、ポリエステル樹脂のみからなる微粒子を上記工程により製造した場合、黒色着色剤分散液、帯電制御剤分散液、離型剤分散液等を別途製造して、それらの分散液の1種以上を前記ポリエステル樹脂のみからなる微粒子が懸濁しているスラリーに添加して、その後に合一操作を行うことができる。
【0127】
あるいは、ポリエステル樹脂と黒色着色剤の組み合わせ等、ポリエステル樹脂と他の1種以上のトナー用原料からなる微粒子を上記工程により製造した場合においても、上記の各種分散液を添加して第二工程を行うことができる。そうすることにより第二工程で製造される凝集体の表面に帯電制御剤等の各種添加剤を露出させながらトナーを製造することも可能となり、種々の用途に応じてトナーの表面物性をコントロールすることができる。
【0128】
ここで用いる黒色着色剤分散液、帯電制御剤分散液、離型剤分散液等の各種分散液は、下記のようにして得ることができる。たとえば、それぞれの物質をポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等で代表されるノニオン系の界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩等で代表されるアニオン系の界面活性剤、あるいは4級アンモニュウム塩で代表されるカチオン系の界面活性剤等と水中に添加して、メディアによる機械的粉砕法により調製できる。あるいは、界面活性剤の代わりに、自己水分散性のポリエステル樹脂を用いて、塩基性中和剤の存在下に同様の分散手段で分散液を調製できる。また、ここで使用する黒色着色顔料、離型剤、帯電制御剤は、あらかじめポリエステル樹脂と溶融混練したものを用いてもよい。この場合、樹脂が吸着することで、各種材料が粒子表面に露出する程度が緩和され、帯電特性、現像特性において好ましい特性を与える。
【0129】
以上をまとめると、本発明の静電荷像現像用トナーを製造する方法として、好ましい実施形態としては以下の(1)〜(4)がある。勿論、それ以外でも発明の趣旨を損なわない範囲で種々の実施形態をとることが可能である。
(1)ポリエステル樹脂と黒色着色剤、更に必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の分散液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、第二工程により合一を行う方法、
(2)ポリエステル樹脂と黒色着色剤、更に必要に応じて離型剤の分散液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、その後、帯電制御剤の分散液を混合して、第二工程により合一を行う方法、
(3)ポリエステル樹脂の樹脂溶液からなる微粒子を上記の第一工程により製造し、黒色着色顔料の分散液、及び、必要に応じて離型剤、あるいは帯電制御剤の各分散液をそれぞれ別々に用意し、それらを混合した後に第二工程により合一を行う方法、
(4)ポリエステル樹脂と離型剤からなる樹脂溶液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、黒色着色剤の分散液と必要に応じて帯電制御剤の分散液を混合して、第二工程により合一を行う方法。
【0130】
ところで、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、黒色着色剤等がトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち黒色着色剤等がトナー粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する黒色着色剤や、その他の添加物(通常ワックスなど)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、黒色着色剤等の含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス等の比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
【0131】
前記製造方法により製造される静電荷像現像用トナーは、着色剤やワックス等がバインダー樹脂に内包された構造となる。積極的に着色剤や離型剤の内包を行うためには、前記の(1)の方法が好ましい。また、帯電制御剤をトナー粒子表面に局在化させて、その機能を発現させるためには、(2)の方法が好ましい。トナー粒子表面に着色剤やワックス等が露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、着色剤やワックス等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
【0132】
第二工程で得られる微粒子の凝集体の形状は、表面が曲面で覆われている球形の形状であり、合一の程度により粒子の平均円形度は不定形から球形まで変化させることができる。例えば、平均円形度で表現すれば、0.94〜0.99まで変化させることが可能である。
【0133】
トナー粒子の形状は、平均円形度が0.97以上の略球形あるいは球形の形状とすることで粉体流動性の向上、転写効率の向上がみられ、トナーとして用いる場合には上記範囲とすることが好ましい。
【0134】
第二工程で得られた微粒子の凝集体の分散液は、引き続き脱溶剤を行い、スラリー中から有機溶剤を除去する。次いで、湿式振動ふるいを通すことで樹脂片等のゴミ、粗大粒子を除去し、遠心分離器、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルター等の公知慣用の手段で固液分離を行うことができる。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて製造されたトナー粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
【0135】
前記の製造方法により製造される静電荷像現像用トナーは、黒色着色剤や必要に応じて添加する離型剤等がバインダー樹脂に内包された構造となる。このように内包された構造となることにより、また、表面が曲面で覆われている球形の形状を有することにより、本発明における課題の解決が可能となり、良好な印刷画像が得られる。
【0136】
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。さらに、粒子内に内包された溶剤等の揮発成分は、さらにリボコーン、あるいはナウターミキサーのごとき真空混合乾燥機で除去することが好ましい。
【0137】
形成されたトナー粒子の粒度分布を整えるため、粗大粒子や微細粒子を除去するための分級が必要な場合には、乾燥終了後に、気流式分級機を用いて公知慣用の方法で行うことができる。また、着色樹脂粒子が水性媒体中に分散している状態で遠心分離機により分級する方法を用いても良い。また、粗大粒子の除去については、着色樹脂粒子の水スラリーをフィルターや湿式振動篩いなどで濾過することにより行うことができる。なお、本発明のトナーの粒度分布については、コールターマルチサイザーによる測定で、50%体積粒径(Dv)/50%個数粒径(Dn)が1.35以下、より好ましくは1.25以下が良好な画像を得られるので好ましい。
【0138】
本発明の静電荷像現像用トナーとしては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜15μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度がより好ましい。特に3〜7μmの範囲であることが好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現され好ましい。
【0139】
本発明では、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナー母体の表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。本発明で用いることのできる外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコン、フェノール、フッ化ビニリデン等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0140】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやヘキサメチレンジシラザンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0141】
AEROSIL R972,R974,R202,R805,R812,RX200,RY200、 R809,RX50,RA200HS,RA200H〔日本アエロジル(株)〕
WACKER HDK H05TD、H13TD、H20TD、H30TD、H05TM、H13TM、H30TM、H05TX、H13TX、H30TX、H05TA、H13TA、H30TA〔ワッカーケミカルズ(株)〕
Nipsil SS−10、SS−15,SS−20,SS−50,SS−60,SS−100、SS−50B,SS−50F,SS−10F、SS−40、SS−70,SS−72F、〔日本シリカ工業(株)〕
CABOSIL TG820F、TS−530、TS−720〔キャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク〕
また、酸化チタンとしては親水性グレードであってもよく、オクチルシラン等で表面処理した疎水性グレードのものであってもよい。帯電特性を付与する目的で、フッ素シラン処理・アミノシラン処理等を施すことも効果的である。
例えば、下記のような商品で市販されているものがある。
酸化チタン T805〔デグサ(株)〕、酸化チタン P25〔日本アエロジル(株)〕、酸化チタンJMT−150ANO〔テイカ(株)〕などがある。
また、アルミナとしては、酸化アルミニウムC〔デグサ(株)〕等が挙げられる。
外添剤の粒子径は母体トナーである黒色樹脂微粒子の直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。
【0142】
特に非磁性一成分現像用トナーにおいては、粒子径大のものと粒子径小のものとを併用することにより、トナー流動性及び現像耐久性を向上させ、現像機のブレードへの固着及びカブリの防止、ランニング時における帯電の長期安定性等が得られ、好ましい。
【0143】
外添剤の使用割合は母体トナー100質量部に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0144】
前記シリカを、トナー粒子に外添させる方法としては、例えば通常の粉体用混合機であるヘンシェルミキサーなどや、ハイブリダイザー等のいわゆる表面改質機を用いて行うことができる。尚、この外添処理は、トナー粒子の表面にシリカが付着させるようにしても良いし、シリカの一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしても良い。
【0145】
本発明の静電荷像現像用トナーは、電子写真法による静電潜像の現像用として、一成分現像剤、非磁性一成分現像剤あるいはキャリアと混合した二成分現像剤として使用できる。キャリアの種類には特に制限はなく、公知慣用の鉄粉、フェライト、マグネタイト等やそれらに樹脂コートしたキャリアが用いられる。
【0146】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置等を用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量等を調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方法である、いわゆるトナージェット方式のプリンター等にも好適に使用できる。本発明の静電荷像現像用乾式カラートナーは、定着性やカラー特性に優れることに加え、球形であることから、不定形トナーに比べて、トナージェット方式におけるトナー飛翔の制御が容易になる。
【0147】
【実施例】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例・比較例では、特に表示がない限り部は質量部、水は脱イオン水の意である。
【0148】
(黒色着色剤1の製造)
平均径0.2μmであって磁化値85.0emu/gである粒状マグネタイト粒子粉末100gを0.26molのTiOSO4を含有する水溶液中に分散混合し、次いで、該混合液中にNaOHを添加して中和し、pH8において粒子表面にTiの水酸化物を沈着させた後、濾別、乾燥した。更に、N2ガス流下750℃で120分間加熱焼成した後、粉砕して「黒色着色剤1」の粉末を得た。この「黒色着色剤1」の粒子径は、0.25μmであった。また、X線回折により該粒子はFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成物であることを確認した。
【0149】
トナーを調製するにあたって用いたバインダー樹脂の合成例を下記に示す。なお、各合成例で得られた樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に入れ12時間放置した溶液を濾過して得られたTHF可溶性成分の分子量を測定した。分析には、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ(GPC)法を用い、標準ポリスチレンにより作成した検量線から分子量を算出した。
GPC装置:東ソー(株)製 HLC−8120GPC
カラム:東ソー(株)製 TSK Guardcolumn SuperH−H TSK−GEL SuperHM−M 3連結
濃度 :0.5質量%
流速 :1.0ml/min
【0150】
結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分については、樹脂1gを精秤し、テトラヒドロフラン40ml中に加えて完全に溶解し、桐山濾紙(No.3)を置いたロート(直径40mm)の上にラヂオライト(昭和化学社製 #700)2gを均一に敷いて濾過し、ケーキをアルミシャーレ上にあけて、その後140℃で1時間乾燥し、乾燥質量を測定する。そして、最初の樹脂サンプル量で乾燥質量中の残存樹脂量を割った値を百分率で算出し、この値を上記不溶分とする。
酸価はJIS K6901に、TgはJIS K7121に準じ測定した。
【0151】
(ポリエステル樹脂合成例)
多価カルボン酸として無水トリメリット酸(TMA)、2価カルボン酸としてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、芳香族ジオールとしてポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−PO)、ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−EO)、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール(EG)を、表1に示す各モル組成比で用い、重合触媒としてテトラブチルチタネートを全モノマー量に対し0.3質量%でセパラブルフレスコに仕込み、該フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付け電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて220℃で15時間反応させた後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応は、ASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が所定の温度となったところで真空を停止して反応を終了した。合成した樹脂の組成および物性値(特性値)を表1に示す。
【0152】
【表1】
>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万 ;分子量1万以下の成分の面積比率
TPA;テレフタル酸
IPA;イソフタル酸
BPA−PO;ポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BPA−EO;ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
EG;エチレングリコール
BA:安息香酸
TMP;トリメチロールプロパン
FT値;フローテスタ値
【0153】
表1において、ガラス転移温度である「Tg」(℃)は 、島津製作所製示差走査熱量計(DSC−50)を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定した値である。
【0154】
(離型剤分散液の調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス 1号」(加藤洋行輸入品)50部とポリエステル樹脂(表1中R1)50部とを加圧ニーダーで混練後、該混練物とメチルエチルケトン185部とをボールミルに仕込み、6時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を25質量%に調整し、離型剤の微分散液(W1)を得た。同様の方法でポリエステル樹脂R2を用いて離型剤の分散液(W2)を得た。
【0155】
(着色剤マスターチップの調製例)
表2の配合にて着色顔料を樹脂と50/50の質量比率で混練し、着色剤マスターチップP1〜P3を作製した。着色顔料と樹脂は加圧ニーダーを用いて混練した。
【0156】
【表2】
表2に示したカーボンは以下の通りである。
カーボン:「ELFTEX−8」(キャボット社製)
【0157】
(帯電制御剤分散液の調製例)
表3の組成にて帯電制御剤とメチルエチルケトンを30/70の質量比率で配合し、モーターミル(米国アイガー社製)で分散を行い、固形分含有量を30質量%に調整し、各種帯電制御剤分散液を得た。
【0158】
【表3】
・N−04;ボントロンN−04(オリエント化学製、ニグロシン染料)
・N−01;ボントロンN−01(オリエント化学製、ニグロシン染料)
【0159】
(ミルベースの調製)
上記離型剤分散液、着色剤、希釈樹脂(追加樹脂)、メチルエチルケトンをデスパーで混合し、固形分含有量を60%に調整してミルベース(MB1〜MB4)を作製した。作製したミルベースの配合を表4に示す。
【0160】
【表4】
【0161】
表4で使用したブレンド樹脂の特性を表5に示した。樹脂のブレンドは200メッシュを通過した樹脂粒子を上記質量比でブレンドして各物性値を測定した。
【0162】
【表5】
>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万 ;分子量1万以下の成分の面積比率
【0163】
(実施例1)
<トナーの製造>
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB1を480部、帯電制御剤分散液E−2を40部、メチルエチルケトン25.5部及び1規定アンモニア水40部を加えて、スリーワンモーターにより210rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水133部を加え、さらに攪拌を行い、温度を30℃に調製した。ついで、同条件下で133部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。微粒子の体積平均粒子径は3μmであった。この時の攪拌翼の周速は0.71m/sであった。次に、脱イオン水303部を加えて溶剤量を調整した。なお、微粒子の体積平均粒子径は、米国コールター社製のマルチサイザーTAIIにより、アパーチャーチューブ径15μmを用いて測定した。
【0164】
次いで、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製)2.8部を水30部に希釈して添加した。この時の分散液中の溶剤量は20.7質量%であった。その後、温度を30℃に、また回転数を158rpmに調整し、4.5%の硫酸アンモニュウムの水溶液を体積平均粒子径が6μmに成長するまで滴下し、その後、同条件で体積平均粒子径が7μmに成長するまで攪拌を続け合一操作を終了した。合一後の微粒子の体積平均粒子径は、米国コールター社製のマルチサイザーTAIIにより、アパーチャーチューブ径100μmを用いて測定した。この時の硫酸アンモニュウムの添加量は350部であった。また、攪拌翼の周速は0.54m/sであった。得られたスラリーは、遠心分離機で固液分離、洗浄を行い、その後、真空乾燥機で乾燥を行い、トナー原体粒子を得た。得られたトナー原体粒子100質量部に対し、疎水性シリカH30TAの0.8部をヘンシェルミキサーにより混合した後、篩いがけをして、実施例1のトナー粒子を得た。同様の操作で得られた実施例2〜5、及び比較例1のトナー粒子の配合組成及び特性を表6に示す。また、実施例6〜7及び比較例2のトナー原体粒子については、100質量部に対し、日本アエロジル製シリカ「NAX50」1質量部、「RY−200」1質量部を外添することによりトナー粒子を得た。トナー粒子の特性を表6に示す。
なお、実施例2〜7、及び比較例1〜2では体積平均粒子径が約7μmのトナー母体粒子が得られるよう、適宜硫酸アンモニュウムの水溶液濃度、及び添加量を調整した。
【0165】
【表6】
なお、得られたトナー粒子の形状は、いずれも曲面を有する球形であった。
【0166】
(比較例3)
<トナーの製造>
・樹脂R−1 50.4質量部
・樹脂R−3 33.6質量部
・着色剤1 12質量部
・N−04 1質量部
・カルナバワックス 3質量部
ヘンシェルミキサーを用いて上記原料からなる混合物を作製し、その混合物をホッパー内に一時貯留した。その後、2軸の溶融混練機にて混練した。このようにして得られた混練物を機械式粉砕機にて粉砕、その後分級して体積平均粒子径7.4μmのトナー原体粒子を得た。得られたトナー原体粒子100質量部に対し、疎水性シリカH30TAの0.8部をヘンシェルミキサーにより混合した後、篩いがけをして比較例3のトナー粒子を得た。
なお、本トナーの見かけ密度は0.42、形状は曲面のない不定形であった。また、トナーの平均円形度は0.92であった。
【0167】
<P型トナー粒子の各実施例及び比較例のトナー試験>
シリコーンコートフェライトキャリア(粒径100μm)と実施例及び比較例のトナーを用いて、トナー濃度が4.7質量%になるように現像剤を調製し、各現像剤を用いて以下の試験を行った。
【0168】
(印刷耐久テスト)
市販の高速プリンター(A4紙220枚/分)を用いて10万枚の連続プリントを行い、画像部の濃度及び地汚れ濃度を測定すると共に、現像剤の帯電量を測定した。画像濃度及び地汚れはマクベス濃度計RD−918で測定した。なお、地汚れは印刷濃度の白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。その差が0.01未満の時を○、0.01〜0.03未満の時を△、0.03以上の時を×とした。なお、テストは25℃、60%の環境下で行った。
結果を表8に示す。
【0169】
また、現像機内部のトナー飛散状況を目視観察した。飛散が全く観察されない状態を◎、飛散がほとんど見えないが、装置内部をウエスで拭くとトナー汚れが観察される状態を○、機内飛散が目視で確認される状態を△、ひどい機内飛散が確認できる状態を×とした。結果を表8に示す。
【0170】
帯電量については、トナーを現像装置内から採取して、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定した。結果を表8に示す。
【0171】
(転写効率の測定)
市販の複写機を用いて、ベタ画像(縦100mm×横20mm)を現像し、感光体上のベタ画像が転写部を50%通過したところで停止させた。その後、感光体上の未転写画像(ベタ)・転写後の未定着画像をそれぞれテープ(30mm×20mm)にて完全に剥離し、未転写画像のトナー量と転写後のトナー量とを測定し、下記の式より転写効率(%)を算出した。結果を表7に示す。
転写効率(%)={1−(転写後のトナー量/未転写画像のトナー量)}×100
【0172】
(帯電の立ち上がり比較)
前記現像剤50gが入った100ccのポリエチレン容器を115rpmのボールミルで3分撹拌した後、現像剤を採取し、ブローオフ帯電量測定機で帯電量を測定した。さらに7分撹拌(計10分)し、同様に帯電量を測定した。試験結果を表7に示す。
【0173】
(定着性能試験)
定着温度幅について、以下に示す試験によって定着温度を求め、その上限値と下限値との範囲を定着温度幅とした。
実施例及び比較例のトナーを用い、市販の有機光半導体を感光体として使用したプリンターで、帯状の未定着画像が紙上に形成されたテストサンプルを作製した。それを、リコーイマジオDA−250のヒートロール(オイルレス型)を使用し、90mm/秒の定着速度で、表面温度を変えながら定着を行った。定着後の画像にメンディングテープ(3M製)を貼り、剥離後の画像濃度(ID)が元のIDの90%以上であって、かつオフセットの発生がみられないヒートロールの温度範囲を定着温度幅とした。結果を表7に示す。
【0174】
【表7】
【0175】
【表8】
【0176】
(N型トナー粒子の実施例及び比較例のトナー試験)
(印刷耐久テスト)
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(セイコーエプソン(株)製「LP−1800」)のカートリッジから専用トナーを抜き、洗浄したカートリッジに、表9に示した実施例及び比較例のトナーを充填し、画像濃度5%で10000枚の連続印字を行った。テストは25℃、60%の環境下で行った。
【0177】
(画像濃度・地汚れ・帯電量)
印刷物の画像濃度及び地汚れをマクベス濃度計RD−918で測定した。なお、地汚れは印刷後の白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。その差が0.01未満の時を○、0.01〜0.03未満の時を△、0.03以上の時を×とした。また、印字トナーの帯電量を、吸引式小型帯電量測定装置Mode210HS(トレック社製)を用いて測定した。結果を表9に示す。
【0178】
(トナー落ち・トナー飛散)
10000枚印字後、カートリッジに装着された現像スリーブからトナーがこぼれ落ちたり(トナー落ち)、現像装置の周辺に飛び散って(トナー飛散)マシン内部を汚したりしない状態を○、少量のトナー落ち、あるいはトナー飛散が認められる状態を△、多量のトナー落ち、あるいはトナー飛散が認められる状態を×と判定した。結果を表9に示す。
【0179】
【表9】
【0180】
【発明の効果】
三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料を着色剤として使用した本発明の球形の静電荷像現像用トナーは、長期間の使用或いは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、地汚れが無く、画像濃度の変動が無い印刷を行うことができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は低速から高速に至る広範囲な静電荷像現像装置において、地汚れが少なく、高品位な画像を提供することができ、更に有害性物質を含有しない黒色、且つ球形の静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、静電荷像現像用トナーに用いる黒色顔料としては、カーボンブラック及び黒色酸化鉄(マグネタイト)が主に使用されてきた。カーボンブラックは一般に安価であり、粉末の粒径が微細で着色性に優れた顔料である。しかし、嵩密度が0.1g/cm3と嵩高い粉末である為、取り扱いが困難であり、作業性が悪いものであった。また、カーボンブラックは国際癌研究機構にて、グループ2B(人体に対して発癌の可能性がある)に分類されており安全衛生面からの問題も指摘されている。
【0003】
一方、黒色酸化鉄(マグネタイト)の粉末はFe3O4が磁性を有するため、凝集性があり、他のトナー原料と混合して使用する場合、均一に混合することが難しい。また、150℃程度で茶色のFe2O3に変化してしまい耐熱性が劣る等の欠点がある。
【0004】
ところで、静電荷像現像用トナーに用いられる黒色着色剤に要求される特性としては、着色性、安全性、製造時の取り扱い性、耐熱性の他に、現像性能に大きく影響する電気的特性がある。電気的特性は着色剤に求められる特性の中でも重要な特性のひとつである。この電気的特性を更に細かく分けると、帯電の立ち上がり特性、帯電を長期間保持する特性、帯電の均一性(帯電量分布)、帯電の環境安定性等が挙げられる。これらの電気的特性に影響するものとしては種々の要因が挙げられるが、例えば、着色剤の分散性、電気抵抗値及び着色剤の表面物性等がある。着色剤の電気的特性が不良であると、トナー粒子個々の帯電量が不均一となり、帯電量分布が広くなる。また、逆帯電粒子や弱帯電粒子の割合が増加して、現像時において機械内部へのトナーの飛散や、印刷物の非画像部にトナーが付着するカブリ現象が発生することになる。更に、長期間あるいは多部数の印刷において画像濃度や解像度等が変動する耐久性の劣るトナーとなり易い。
【0005】
これまでカーボンブラックあるいは黒色酸化鉄(マグネタイト)の欠点を解決し、これらに置き換わるものとして様々な材料の検討がされている。その中で、特開平3−2276号公報においては、マグネタイト粒子の表面をチタン化合物で被覆した粒子、あるいはマグネタイト粒子粉末とチタン化合物との混合粉末を700℃以上の温度で加熱焼成することにより得られる黒色粒子粉末が提案され、これを用いたトナーに関する技術が開示されている。しかしながら、当該公報の目的は、安全、無害であり、且つ作業性と耐熱性に優れた黒色着色剤を提供することであり、前記の電気的特性の改善については成されていない。また、特開2000−319021号公報においてもマグネタイト粒子にチタン成分を一定量含有させた黒色粒子粉末、及びそれを用いたトナーが提案されているが、当該公報においても、前記公報と同様に、電気的特性の改善については何ら提案されていない。
【0006】
一方、これまでトナーを製造する方法としては、主として粉砕法が用いられてきた。この粉砕法には、バインダー樹脂と着色剤等を溶融混練して、得られた混練物を機械的に粉砕することでトナーとする方法や、該混練物の粗砕物同士を圧搾空気等の気流中で衝突させ、粉砕することによりトナーを製造する方法等がある。この粉砕法により製造されたトナーの形状は不定型であり、表面に突起や凹部を有する形である。そのため、粉砕法で製造したトナーは粉体としての流動性が劣り、例えば、二成分現像剤用のトナーとして用いた場合、トナーの補給時にキャリアと瞬時に混合されず、帯電の立ち上がり特性が不良となることが多かった。また、トナーの形状が不定型であるが故に、プリンター等の現像装置において、感光体から紙等へ転写する際の転写効率が劣ると言った欠陥があった。
【0007】
このように、従来の技術においてはカーボンブラックあるいは黒色酸化鉄(マグネタイト)の欠点を解決し、更にトナーの電気的特性を十分満足しうる新規な黒色着色剤を用いたトナーに関して十分な検討が成されていない。また、そのような新規黒色着色剤を用い、更に、トナーの流動性及び転写性を改善したトナーに関する技術は未だ開示されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、有害性物質を含有しない黒色の着色剤を使用し、トナーの流動性及び転写性に優れ且つ長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、その結果として、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の黒色顔料を用いた球形のトナーを使用することにより前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、バインダー樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記着色剤が三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料であり、且つ前記トナーの形状が球形であることを特徴とする静電荷像現像用トナーを提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明で使用する着色剤は、着色剤中に三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料である。そのような黒色顔料であれば、特に限定されるものではないが、具体的な顔料としては、例えば、Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する黒色顔料を用いることが好ましい。Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する黒色顔料は、例えば、▲1▼粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末、▲2▼マグネタイト粒子粉末とチタン化合物との混合粉末、又は▲3▼粒子表面をチタン化合物で被覆したヘマタイト粒子粉末を還元して得られる還元粉末、等を非酸化性雰囲気下700℃以上の温度で加熱焼成する方法によって得ることができる。粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末を原料として用いる場合(▲1▼の場合)には、磁化値が小さい粒子が得られやすく、着色剤を非磁性粒子とする目的において、好ましい方法である。
【0012】
マグネタイト粒子粉末、ヘマタイト粒子粉末としては、粒状、球状、針状等いかなる形態の粒子でもよく、また、大きさは0.03〜1.5μm程度の粒子を使用することが好ましい。本発明で使用する着色剤を製造するために用いるチタン化合物としては、チタンの含水酸化物、水酸化物、酸化物のいずれをも使用することができるが、マグネタイト粒子粉末と混合する場合には水溶性のチタン化合物を用いるのが好ましい。チタン化合物の量は、マグネタイト粒子中のFe(II)及びFe(III)に対し、Ti換算で15.0〜50.0原子%である。この範囲であると得られる黒色顔料の磁化値が適度な値となり好ましい。
【0013】
上記から得られる着色剤を使用したトナーは、長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、更に、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーとなる。また、カーボンブラックと異なり、有害物質を含有しないため安全衛生面でも優れている。
【0014】
本発明で使用する黒色着色剤の使用量は、トナー100質量部当たり、3〜30質量部の範囲が好ましく、5〜20質量部の範囲が特に好ましい。30質量部以下であるとトナーの真比重を小さくすることができ、現像時におけるトナーの飛散等が起きにくくなり好ましい。
【0015】
また、本発明では、色相を調整する目的において公知公用の着色剤を併用する事ができる。例えば、黒の着色剤としては製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11の鉄酸化物系顔料、アニリンブラック、フタロシアニン系のシアニンブラックBX等があげられる。なお、本発明で使用する黒色着色剤は有害物質を含まないことを特徴とし、本発明の目的も有害物質を含有しない静電荷像現像用トナーを提供することにあるので、カーボンブラックを併用する場合は、有害物質の含有量及び本発明で使用する黒色着色剤と併用する量について十分に留意する必要がある。
【0016】
青系の着色剤としてはフタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 15−3、インダンスロン系のC.I.Pigment Blue 60等、赤系の着色剤としてはキナクリドン系のC.I.Pigment Red 122、アゾ系のC.I.Pigment Red 22、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:3、C.I.PigmentRed 57:1等、黄系の着色剤としてはアゾ系のC.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 155、イソインドリノン系のC.I.Pigment Yellow110、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 180等が挙げられる。
【0017】
また、本発明の静電荷像現像用トナーにおけるトナー粒子の形状は、表面が曲面で覆われている球形の形状であれば特に限定されるものではない。例えば、単一の曲面で覆われた、真球状又はラグビーボール状のトナー粒子、あるいは複数の曲面で覆われた葡萄状のトナー粒子等がある。それらの中でも、本発明においては、下記式、
平均円形度=(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)/(トナー粒子投影像の周長)で定義される平均円形度が、0.94以上の球形〜略球形のトナー粒子であることが好ましい。より好ましくは、平均円形度が0.97以上、特に好ましくは0.98以上である。
【0018】
平均円形度は、トナー粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を撮影し、それを測定し計算することによっても求めることができるが、本発明においては、東亜医用電子(株)製フロー式粒子像分析装置FPIP−1000により求める。フロー式粒子像分析装置FPIP−1000とは、トナー粒子等の微粒子の大きさや形状を撮像する装置であり、粒子の撮像は以下の通りに行われる。
【0019】
まず、微量の界面活性剤を含む水の中にトナー粒子を懸濁させることにより試料を作製する。次いで、この試料をフロー式粒子像分析装置FPIP−1000中に設けられた、透明且つ扁平なセル中に流下させる。このセルの片側にはパルス光を発する光源が設置されており、更に、セルを挟んで反対側にはその光源に正対するように撮像用カメラが設けられている。FPIP−1000のセル中を流下する試料中のトナー粒子は、パルス光が照射されることにより、セルを夾んで光源と正対するカメラにより静止画像として捉えられる。
【0020】
このようにして撮像されたトナー粒子の像を基にして、画像解析装置により各トナー粒子の輪郭が抽出され、トナー粒子像の投影面積や周囲長(トナー粒子投影像の周長)が算出される。更に、算出されたトナー粒子像の投影面積から、それと同等の面積を有する円の円周の長さ(トナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長)が算出される。上記の平均円形度は、このように算出されたトナー粒子投影面積と同じ面積の円の周長をトナー粒子投影像の周長で除したものである。
【0021】
上記装置で測定する際の条件は以下の通り。
(1)トナー粒子の懸濁液の作製
水20gに対し界面活性剤(エルクリヤー(中外写真薬品(株)製))0.1gを添加し、更に試料であるトナー0.04gを添加し、超音波分散機でトナー粒子を水中に懸濁させる。
(2)測定条件
測定温度;25℃
測定湿度;60%
測定トナー粒子数;5000±2000個
【0022】
上記のような平均円形度を有することによって本発明の静電荷像現像用トナーは、小粒径化しても良好な粉体流動性を確保することができ、また良好な転写効率を確保することもでき、これにより優れた画像品質(解像性、階調性)を得るものとなる。平均円形度が0.94よりも小さいと、すなわち形状が球形から不定型に近づくと粉体流動性、転写効率が低下するため好ましくない。
【0023】
本発明では必要に応じ公知の帯電制御剤を使用することができる。例えば正帯電制御剤としてはニグロシン系染料、変成ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が使用でき、また、負帯電制御剤としてはトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属塩又は錯体、ベンジル酸の金属塩又は錯体、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ化合物の金属塩又は錯体、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等が使用できる。
【0024】
本発明で使用できる好適な正帯電性帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料として、「NIGROSINE BASE EX」、「OIL BLACKBS」、「BONTRON N−01」、「BONTRON N−07」 (以上 オリエント化学(株))等が、変成ニグロシン染料としては、「BONTRON N−04」、「BONTRON N−21」 (以上 オリエント化学(株))、「CHUO−3」(中央合成化学(株))等が挙げられる。また、トリフェニルメタンとしては、「OIL BLUE」 (オリエント化学(株))、「COPY BLUE PR」 (クラリアント(株))等が挙げられる。
【0025】
更に、本発明の静電荷像現像用トナーには4級アンモニウム塩化合物も好適に使用することができる。4級アンモニウム塩化合物としては、下記式1〜式3で表される化合物がある。
【0026】
【化1】
(式1)
[式中、R1〜R3はCnH2n+1基を表す。但し、nは1〜10の整数を示す。また、R1〜R3は同じであっても異なっていてもよい。]
【0027】
【化2】
(式2)
[式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22個のアルキル基あるいはアルケニル基、炭素数1〜20個の未置換あるいは置換芳香族基、炭素数7〜20個のアラルキル基を表し、A−はモリブデン酸アニオンあるいはタングステン酸アニオン、モリブデンあるいはタングステン原子を含むヘテロポリ酸アニオンを表す。]
【0028】
【化3】
(式3)
[式中、mは1、2または3を示し、そしてnは0、1または2を示し、Mは水素原子、または1価の金属イオンである。X及びZは1または2を示し、Yは0または1を示す。さらに、X=1の時、Y=1、Z=1となりX=2の時、Y=0、Z=2となる。R5〜R12は水素、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシレン基、一般式(−C2〜5のアルキレン−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)で表されるポリアルキルオキシレン基を表し、R1、R2、R3、R4は水素、または、炭素数1〜30の直鎖状、あるいは枝分かれした飽和または不飽和のアルキル基、または一般式(−CH2−CH2−O)n−R(但し、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基またはアシル基であり、nは1〜10の整数である)で表されるオキシエチル基、更に炭素数5〜12の単核−または多核脂環式残基、単核−または多核芳香族残基または芳香脂肪族残基を表す。]
【0029】
より具体的には以下の各化合物がある。
【0030】
【化4】
化合物(1−1)
【0031】
【化5】
化合物(2−1)
【0032】
【化6】
化合物(2−2)
【0033】
【化7】
化合物(2−3)
【0034】
【化8】
化合物(2−4)
【0035】
【化9】
化合物(2−5)
【0036】
【化10】
化合物(2−6)
【0037】
【化11】
化合物(2−7)
【0038】
【化12】
化合物(2−8)
【0039】
【化13】
化合物(2−9)
【0040】
【化14】
化合物(2−10)
【0041】
【化15】
化合物(2−11)
【0042】
【化16】
化合物(3−1)
【0043】
【化17】
化合物(3−2)
【0044】
本発明で使用できる好適な負帯電性帯電制御剤としては、アゾ化合物の金属塩又は錯体、サリチル酸の金属塩又は錯体、ベンジル酸の金属塩又は錯体、又は下記式4で表される化合物がある。
【0045】
【化18】
(式4)
(式中、R1は4級炭素、メチン、メチレンであり、N、S、O、Pのヘテロ原子を含んでいてもよく、Yは飽和結合又は不飽和結合で結ばれた環状構造を表し、R2、R3は相互に独立してアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、置換基を有しても良いアリール基又はアリールオキシ基又はアラルキル基又はアラルキルオキシ基、ハロゲン基、水素、水酸基、置換基を有しても良いアミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホニル基、シアノ基を表し、R4は水素又はアルキル基を表し、tは0ないし1から12の整数、mは1から20の整数、nは0ないし1から20の整数、kは0ないし1から4の整数、pは0ないし1から4の整数、qは0ないし1から3の整数、rは1から20の整数、sは0又は1ないし20の整数である。)
【0046】
式4で表される化合物の具体的な例としては、以下の化合物(4−1)〜化合物(4−3)がある。
【0047】
【化19】
化合物(4−1)
【0048】
【化20】
化合物(4−2)
【0049】
【化21】
化合物(4−3)
【0050】
また、本発明で好適に使用できるベンジル酸の金属塩又は錯体は、下記式5で表される化合物である。
【0051】
【化22】
(式5)
(式中、R1およびR4は水素原子、アルキル基、置換又は非置換の芳香環(縮合環も含む)を示し、R2およびR3は置換又は非置換の芳香環(縮合環も含む)を示し、MはB、Al、Fe、Ti、Co、Crから選ばれる1種の3価の金属を示し、X+はカチオンを示す)
【0052】
式5の化合物の具体的な例としては、以下の化合物(5−1)及び化合物(5−2)がある。
【0053】
【化23】
化合物(5−1)
【0054】
【化24】
化合物(5−2)
【0055】
更に、本発明で好適に使用できるアゾ化合物の金属塩又は錯体としては、例えば、下記化合物(6−1)〜化合物(6−5)がある。
【0056】
【化25】
化合物(6−1)
【0057】
【化26】
化合物(6−2)
【0058】
【化27】
化合物(6−3)
カチオンはNH4 +及びH+、Na+、K+又はこれらの混合イオンである。
【0059】
【化28】
化合物(6−4)
カチオンはNH4 +及びH+、Na+、K+又はこれらの混合イオンである。
【0060】
【化29】
化合物(6−5)
カチオンはNH4 +及びH+、Na+、K+又はこれらの混合イオンである。
【0061】
本発明においては上記の帯電制御剤の1種以上を使用することが好ましい。また、特に、上記の帯電制御剤の中でも黒色の帯電制御剤を用いることが好ましい。黒色の正帯電性帯電制御剤としては、上記のニグロシン系染料、変成ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料がある。中でも、樹脂に対する分散性を向上させるため、ロジン或いはマレイン酸等で変成した変性ニグロシン染料を使用すると、逆帯電あるいは弱帯電のトナー粒子が減少し、地汚れ、トナー飛散等が少なくなり、画質が良好となるため特に好ましい。黒色の負帯電性帯電制御剤としては、上記アゾ化合物の金属塩又は錯体がある。これらの黒色の帯電制御剤を本発明で使用する黒色着色剤と共に使用することにより、本発明の静電荷像現像用トナーをより黒色度の強いトナーとすることができる。黒色の帯電制御剤を用いることにより、本発明で用いる黒色着色剤の使用量を減じることができる。その結果としてトナーの真比重を低くすることができ、トナー飛散等を防止することができる。黒色の帯電制御剤を使用する場合は、本発明で使用する黒色着色剤の使用量は、トナー100質量部当たり、3〜20質量部の範囲が好ましく、5〜15質量部の範囲が特に好ましい。なお、本発明の静電荷像現像用トナーの真比重としては、1.70以下が好ましく、0.70〜1.60であることがより好ましい。
【0062】
上記の帯電制御剤は単独で用いても組み合わせて用いても良く、バインダー樹脂に対して0.3〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部含有させることにより良好な帯電性能が得られる。
【0063】
本発明の静電荷像現像用トナーに用いるバインダー樹脂としては、本発明の目的を損なわないものであれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ポリスチレン系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、またはスチレン−共役ジエン共重合体樹脂のようなビニル系の共重合体樹脂、さらに、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、前述の樹脂を組み合わせたハイブリッド樹脂等を挙げることができるが、これらの中でもビニル系の共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、定着性、耐オフセット性、透明性等のバランスが良いことから、ポリエステル樹脂が特に好適に使用することができる。
【0064】
本発明で好適に用いられるポリエステル樹脂は、
(A)2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物
(B)2価以上の多価アルコール
を通常の方法で脱水縮合して得る。
【0065】
2価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸若しくはその酸無水物、又はそれらの誘導体が挙げられる。また、3価以上の多塩基酸及び/又は酸無水物としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。更に、それらの低級アルキルエステルとしては、アルキル残基が、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4のものが挙げられる。かかる低級アルキルエステルは、上記2価以上の多塩基酸又はその酸無水物と低級アルコールとをエステル化反応させることにより得られる。上記の多塩基酸の中では、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等が特に好ましい。
【0066】
また、2価以上の多価アルコールとしては以下の化合物が挙げられる。例えば、2価の脂肪族系アルコールとしては、
(a)エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドランダム共重合体ジオール、エチレンオキサイド−テトラハイドロフラン共重合体ジオール等が挙げられる。
【0067】
また、2価の芳香族系ジオールとしては、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である以下の化合物(b)が挙げられる。
(b)ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン及びこれらの誘導体等。
【0068】
更に、3価以上の多価アルコールとしては、
(c)ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリメチロールベンゼン等の3価以上のアルコール、あるいは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ基を有するビニル化合物の重合体、あるいは共重合体、エポキシ化レゾルシノール−アセトン縮合物、部分エポキシ化ポリブタジエン、半乾性もしくは乾性脂肪酸エステルエポキシ化合物等がある。
【0069】
本発明で使用するポリエステル樹脂としては、2価の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物と2価の脂肪族多価アルコールを主構成成分として、更に、必要に応じて前記3価以上の多塩基酸化合物、あるいは、例えば前記(c)成分に記載した3価以上の多価アルコールにより架橋又は分岐させたポリエステル樹脂を用いることがより好ましい。その場合、多価アルコールとして、前記(b)の化合物を使用する場合は、全アルコール成分中0〜30モル%であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。中でも化合物(b)を全く使用しないことが特に好ましい。
【0070】
本発明で使用するポリエステル樹脂は、例えば触媒の存在下、上記の原料成分を用いて脱水縮合反応或いはエステル交換反応を行うことにより得ることができる。この際の反応温度及び反応時間は、特に限定されるものではないが、通常150〜300℃で2〜24時間である。上記反応を行う際の触媒としては、例えば酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート等を適宜使用する事が出来る。上記多塩基酸化合物とジオール成分の配合比(モル比)は、8/10〜10/8、特に9/10〜10/9が好ましい。なお、2価の多塩基酸化合物とジオール成分とを反応させると、直鎖状のポリエステル樹脂が得られる。また、2価及び3価以上の多塩基酸化合物と多価アルコール等とを反応させると、分岐状或いは網目状のポリエステル樹脂が得られる。このようにして得られたポリエステル樹脂は単独で使用しても良く、所望の性能となるよう、複数のポリエステル樹脂をブレンドして使用してもよい。
【0071】
本発明の静電荷像現像用トナーのバインダー樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合、最も好ましい実施形態は、多価アルコール成分として(b)化合物を使用せず、2価の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物と2価の脂肪族系アルコールを反応させた直鎖状のポリエステル樹脂と、多価アルコール成分として(b)化合物を使用せず、2価の多塩基酸及び/又は酸無水物及び/又はこれらの低級アルキルエステルから選ばれる多塩基酸化合物、2価の脂肪族系アルコール及びエポキシ樹脂を反応させた架橋ポリエステル樹脂を併用した場合である。このような樹脂をバインダー樹脂として用いたトナーは低温での定着性能が良好であり、且つ高温でのオフセット性能も優れており良好である。
【0072】
本発明で使用するバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂も好適に使用することができる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂、ビフェニル型のエポキシ樹脂等がある。中でも、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂を用いることが特に好ましい。具体的には、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂として、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「エピクロン2055」(軟化点80〜90℃)、「エピクロン3050」(軟化点94〜102℃)、「エピクロン4050」(軟化点96〜104℃)、「エピクロン7050」(軟化点122〜131℃)、油化シェルエポキシ(株)製の「エピコート1002」(軟化点83℃)、「エピコート1003」(軟化点89℃)、「エピコート1004」(軟化点98℃)、「エピコート1007」(軟化点128℃)、「エピコート1009」(軟化点148℃)等が挙げられる。また、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製の「エピクロンN−690」(軟化点85〜95℃)、「エピクロンN−695」(軟化点90〜100℃)等が挙げられる。
【0073】
また、本発明で好適に用いることのできるビニル系共重合体樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂が好ましい。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂は、例えば以下に掲げるモノマーを共重合することにより得ることができる。
【0074】
(d)スチレン及びその誘導体;例えばスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレンの如きアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン、更にニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等がある。
【0075】
(e)(メタ)アクリル酸エステルモノマー;例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートの如きアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートの如き脂環族(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートの如き芳香族(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの如き水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシエチルホスフェートの如きリン酸基含有(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレートの如きハロゲン原子含有(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートの如きエポキシ基含有(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートの如きエーテル基含有(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートの如き塩基性窒素原子又はアミド基含有(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0076】
(f)また、これらと共に共重合可能な不飽和化合物も必要に応じて用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、ウンゲリカ酸の如き付加重合性不飽和脂肪族モノカルボン酸、又はマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、ジヒドロムコン酸の如き付加重合性不飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0077】
(g)更にその他の共重合可能な不飽和化合物として、スルホエチルアクリルアミドの如きスルホ基含有ビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリルの如きニトリル基含有ビニルモノマー、ビニルメチルケトン、ビニルイソプロペニルケトンの如きケトン基含有ビニルモノマー、N−ビニルイミダゾール、1−ビニルピロール、2−ビニルキノリン、4−ビニルピリジン、N−ビニル2−ピロリドン、N−ビニルピペリドンの如き塩基性窒素原子又はアミド基含有ビニルモノマー等を使用することができる。
【0078】
(h)また、架橋剤を上記ビニルモノマーと共に使用してもよい。架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
スチレン−(メタ)アクリル酸エステルの共重合体の製造方法としては、通常の重合方法を採ることが可能で、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等、重合触媒の存在下に重合反応を行う方法が挙げられる。
【0080】
重合触媒としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、その使用量はビニルモノマー成分の0.1〜10.0質量%が好ましい。
【0081】
また、カルボキシル基含有ビニルモノマーを必須成分として加えたスチレン−(メタ)アクリル酸エステルの共重合体を金属塩により架橋した樹脂(アイオノマー)も使用できる。
【0082】
さらに、本発明においては、スチレン−共役ジエン共重合体を好適に用いることができる。スチレン−共役ジエン共重合体は、公知慣用の手法で得ることが出来るが、単量体を一括仕込みあるいは多段仕込みを行う様なin−situ法、例えば乳化重合により容易に得ることが出来る。
【0083】
スチレン−共役ジエン共重合体に用いられるモノマーとしては、前記(d)に例示したスチレンあるいはその誘導体が、また、共役ジエンとしては、例えばブタジエン、イソプレン等が挙げられる。共役ジエンの中ではブタジエンが好ましい。
【0084】
スチレン−共役ジエン系共重合体は、スチレンと共役ジエンとの共重合体の性質を損なわない限り、それ以外の共重合可能な単量体との多元共重合体であってもよい。そのような共重合可能な単量体としては、例えば塩化ビニル、酢酸ビニルの他、前記(e)〜(h)に例示したモノマーが挙げられる。
【0085】
スチレンと共役ジエンとの共重合体の重量平均分子量(Mw)は、40,000〜200,000のものが好ましい。40,000未満の場合は画像部のトナー層の強度が充分得られ難く、耐オフセット性能(ヒートロールに対するトナーの付着汚れ防止効果)も極端に低下し易くなる。また、200,000を越える場合は、軟化点の上昇により定着可能温度が高まり、一般の定着条件下では定着性能が大きく低下し易くなる。
【0086】
スチレン−ブタジエン系共重合体を構成するモノマー成分の比率としては、ブタジエンモノマーの比率として5〜20質量%となるものが好ましい。5質量%未満ではゴム弾性が必ずしも十分ではない。また、20質量%以上では耐熱性能が悪化し易くなり、一般的なトナー使用環境及び保存環境で障害を招きやすい。
【0087】
本発明で用いられるバインダー樹脂の軟化点は90〜180℃の範囲であることが好ましく、95〜160℃の範囲であることがより好ましく、100〜135℃の範囲がさらに好ましい。90℃未満であると高温でのオフセットが発生し易くなり、180℃超では低温での定着性が悪くなり易い。
【0088】
本発明における樹脂の軟化点は定荷重押出型細管式レオメーターである島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて測定されるT1/2温度で定義する。フローテスタでの測定は、ピストン断面積1cm2、シリンダ圧力0.98MPa,ダイ穴径1mm、ダイ長さ1mm、測定開始温度50℃、昇温速度6℃/min、試料質量1.5gで行った。
【0089】
さらにバインダー樹脂のガラス転移温度は50℃以上であることが好ましいが、中でも55℃以上のものが特に好ましい。Tgが50℃以下ではトナーが保存、運搬、或いはマシンの現像装置内で高温下に晒された場合にブロッキング現象(熱凝集)がおこりやすい。ここでいう、ガラス転移温度はJIS K7121に準じた測定で得られた補外ガラス転移開始温度で定義する。測定には島津製作所製DSC−60を使用した。
【0090】
バインダー樹脂における酸価は1〜30であることが好ましく、1〜20であることがより好ましい。球形トナーを製造する上で、酸価は前記の範囲であることが好ましく、また、トナーとして使用する場合に環境安定性が良好となる。また、水酸基価は、10〜100であることが好ましく、10〜60であることがより好ましい。酸価、水酸基価が上記範囲であれば、トナーの耐湿性が良好となる点で好ましい。
【0091】
また、本発明の静電画像現像用トナーには、これまで公知の種々の離型剤、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックス、あるいは、高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックス等を離型剤として適宜用いることができる。
【0092】
高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスの中でも、カルナウバワックス、ライスワックス、カイガラムシワックス、モンタン系エステルワックス等の天然物に由来するワックス、合成エステル系ワックスとしてはペンタエリスリトールのテトラベヘン酸エステル、アルコール系ワックスとしてはフィッシャートロプシュワックス等を酸化して得られる高級アルコール系ワックスが特に好ましい。
【0093】
離型剤は、組み合わせて使用するバインダー樹脂に応じて選択することが望ましい。バインダー樹脂に対する分散性が悪い離型剤を選択した場合、トナー粒子表面への離型剤の露出が多くなり易くなり、トナーの流動性が低下し易くなる。さらに、トナーを現像する過程において、脱離した離型剤が地汚れ、飛散の原因となり易く、画質が低下し易くなる。バインダー樹脂に対する分散が過度に進んだ場合或いは離型剤が樹脂に相溶する場合も定着・オフセット性能が低下し易くなる。これらの理由により、バインダー樹脂中に適度に分散する離型剤を選択することが好ましく、バインダー樹脂中に分散する離型剤の粒径は0.01〜5μmの範囲が好ましく、0.1〜3μmの範囲であることがより好ましい。
【0094】
本発明で使用するバインダー樹脂と離型剤の好ましい組み合わせは、ポリエステル樹脂あるいはエポキシ樹脂を使用する場合には、高級脂肪酸エステル化合物及び/又は脂肪族アルコール化合物を含有するワックスを離型剤として使用し、ビニル系共重合体を用いた場合には、ポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックスを用いる組み合わせである。
【0095】
離型剤の融点(滴点、軟化温度)は、60〜150℃であることが好ましく、65〜130℃であることがより好ましい。融点が低すぎる場合、保存中に凝集しやすく、トナーの流動性も低下し易くなる。融点が高すぎる場合、画像の定着工程において溶融しにくく、十分な離型効果を発揮し難い。
【0096】
また、離型剤は、ブレード、キャリア等の帯電部材に固着し、帯電性能の不安定化、画質の劣化の原因となる場合があるので、固着の抑制の観点から、その硬度は高い方が良く、25℃における針入度が5以下のものが好ましく、2以下のものが特に好ましい。
【0097】
天然ワックス、合成エステルワックス、アルコール系ワックスは、構造あるいは遊離酸に起因して、カタログ値で2〜40程度の酸価を有するが、樹脂の場合と同様の理由によりこれらの値は低い方が望ましい。
【0098】
離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、バインダー樹脂に対して0.1〜20質量部、好ましくは2〜15質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、20質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
【0099】
本発明の静電荷像現像用トナーは、バインダー樹脂、離型剤、帯電制御剤、着色剤以外の添加剤を含めることができる。例えば金属石鹸、ステアリン酸亜鉛等の滑剤、研磨剤として、例えば酸化セリウム、炭化ケイ素等が使用できる。
【0100】
本発明の静電荷像現像用トナーは、以下に記載した方法により製造することが好ましい。
【0101】
即ち、バインダー樹脂と本発明で使用する黒色着色剤等を有機溶媒に混合し、これを湿式で混練することで、有機溶媒中にバインダー樹脂及び黒色着色剤が溶解、あるいは分散した混合溶液を製造し、次いで該混合溶液を水性媒体中に乳化させることで該混合溶液の微粒子を製造し、更に、有機溶媒を除去することでバインダー樹脂中に黒色着色剤が分散した黒色樹脂微粒子を製造し、その後、黒色樹脂微粒子を水性媒体から分離して、乾燥することによりトナーを製造する方法である。この場合、バインダー樹脂と黒色着色剤に加えて、必要に応じて離型剤や帯電制御剤等を添加して前記分散工程を行っても良い。また、各原料は各々別々に分散処理を行っても良い。
【0102】
また、上記製造方法の中でも、水性媒体中でバインダー樹脂と黒色着色剤等と有機溶剤とを含有する混合溶液の微粒子を形成した後で、該微粒子を合一させることにより該微粒子の凝集体を形成する工程(合一工程)を行い、次いで該凝集体を水性媒体から分離することでトナーを製造することが、特に好ましい。そのような製造方法により、乳化ロスが無く、しかも粒度分布がシャープであり、表面が曲面で覆われている球形のトナーを簡便かつ短時間で、しかも高収率で得ることができる。
【0103】
バインダー樹脂としてポリエステル樹脂を例にとり、以下に、合一工程を経て行われるトナーの製造方法を説明する。
【0104】
本発明の静電荷像現像用トナーを製造するための好適な製造方法は以下の工程からなる。
第一工程:ポリエステル樹脂と黒色着色剤等と有機溶剤とを含む樹脂溶液を水性媒体中に乳化させ微粒子を形成させる工程、
第二工程:前記微粒子を合一させ該微粒子の凝集体を製造する工程、
第三工程:前記凝集体中に含有される有機溶剤を脱溶剤した後、水性媒体から前記微粒子の凝集体を分離・洗浄し、乾燥させ、トナーを製造する工程(本発明におけるトナーとは第三工程で製造される凝集体を乾燥したものを指す)、
の上記3工程からなる。
【0105】
第一工程では、有機溶剤中にポリエステル樹脂を投入して、樹脂を溶解分散することにより(必要に応じ加熱して)ポリエステル樹脂と有機溶剤とを含む混合物を調整する。この場合、トナー用原料として本発明で用いる黒色着色剤、離型剤または帯電制御剤、あるいはその他の添加物から選択される1種以上をポリエステル樹脂と共に用いることができる。この際、黒色着色剤をポリエステル樹脂と共に有機溶剤中に分散させることが好ましく、更に離型剤、帯電制御剤等の各種添加剤も同様に溶解あるいは分散させるのが特に好ましい。
【0106】
有機溶剤中にポリエステル樹脂と黒色着色剤、及び必要に応じて加えられる離型剤、帯電制御剤等の各種添加剤を、溶解あるいは分散させる手段としては、以下の方法を用いることが好ましい。
【0107】
▲1▼ポリエステル樹脂、黒色着色剤等を含む混合物を加圧ニーダー、加熱2本ロール、2軸押し出し混練機などを用いて、使用するポリエステル樹脂を軟化点以上、且つ熱分解温度以下の温度に加熱して混練する。この時、黒色着色剤等はマスターバッチとして溶融混練してもよい。その後、得られた混練チップをデスパー等の攪拌機により有機溶剤中に溶解、ないし分散して調製する。
あるいは、
▲2▼ポリエステル樹脂と黒色着色剤等を有機溶剤と混合し、これをボールミル等により湿式混練する。この場合、黒色着色剤及び必要に応じて加えられる各種添加剤はあらかじめ別々に予備分散を行ってから混合しても良い。
【0108】
上記▲2▼の方法の、より具体的な手段は、有機溶媒にポリエステル樹脂を溶解し、それに黒色着色剤や離型剤を加え、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、連続式ビーズミル等の一般的なメディアを用いた混合機・分散機を使用して分散させることによりマスターバッチとし、更に希釈用のポリエステル樹脂、追加の有機溶剤を混合し、デスパー等の攪拌機で、有機溶媒中に黒色着色剤や離型剤等が微分散した樹脂溶液を製造する方法である。このとき、黒色着色剤や離型剤等は、未処理のまま直接ボールミル等の混合・分散機で分散するよりも、あらかじめ、低粘度のポリエステル樹脂と黒色着色剤、あるいは離型剤等を加圧ニーダー、加熱2本ロールで混練・分散してマスターバッチとしたものを用いるのが好ましい。以上のような▲2▼の製法によれば、ポリエステル樹脂の高分子成分(ゲル成分)が切断されないため、溶融混練により分散する▲1▼の方法よりも好ましい。
【0109】
次に、ポリエステル樹脂と黒色着色剤および有機溶剤を含む混合物を水性媒体中に乳化する方法としては、該混合物を、塩基性中和剤の存在下に、水性媒体と混合して乳化するのが好ましい。この工程においては、該混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を徐々に添加する方法が好ましい。その際には、該混合物の有機連続相に水を徐々に添加することで、Water in Oilの不連続相が生成し、さらに水を追加して添加することで、Oil in Waterの不連続相に転相して、水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁・乳化液が形成される(以下、この方法を転相乳化という)。
【0110】
ポリエステル樹脂は、酸性基含有ポリエステル樹脂であることが好ましく、該酸性基を中和することにより自己水分散性となるポリエステル樹脂(以下自己水分散性樹脂と表現する)であることが好ましい。自己水分散性を有する樹脂は、酸性基がアニオン型となることにより親水性を増し、水性媒体中に、分散安定剤や界面活性剤を使用しなくとも安定に分散することができる。酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基が挙げられるが、中でもカルボキシル基がトナーの帯電特性の面から好ましい。また、中和用の塩基性物質としては、特に制限はなく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアのごとき無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンのごとき有機塩基が用いられる。中でも、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのごとき無機塩基が好ましい。上記混合物を水性媒体中に安定に分散するには、懸濁安定剤や、界面活性剤等の分散安定剤を添加する方法によっても可能である。しかしながら、懸濁安定剤や、界面活性剤を添加することで乳化する方法では高剪断力が必要となり、その結果、粗大粒子の発生、粒度分布がブロードになるため好ましくない。
【0111】
なお、上記混合物を微粒子化する際に用いる水性媒体は水であることが好ましく、さらに好ましくは、脱イオン水である。
【0112】
ポリエステル樹脂と黒色着色剤等を溶解あるいは分散させるための有機溶剤としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、石油エーテルのごとき炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素のごときハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのごときケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルのごときエステル類、などが用いられる。これらの溶剤は、2種以上を混合して用いることもできるが、溶剤回収の点から、同一種類の溶剤を単独で使用することが好ましい。また、有機溶剤は、結着樹脂を溶解するものであり、毒性が比較的低く、かつ後工程で脱溶剤し易い低沸点のものが好ましく、そのような溶剤としては、メチルエチルケトンが最も好ましい。
【0113】
上記混合物を微粒子化する際には、高シェア乳化分散機機や連続式乳化分散機等が使用できるが、例えば、特開平9−114135で開示されているような攪拌装置、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼、半月翼等を使用することが好ましい。中でも、マックスブレンド翼やフルゾーン翼のような均一混合性に優れた大型翼がより好ましい。
【0114】
水性媒体中に前記混合物の微粒子を形成させるための乳化工程(転相乳化工程)における攪拌翼の先端の周速は、0.2〜10m/sが好ましく、0.2〜8m/sの低シェアで攪拌しながら水を滴下する方法がより好ましい。特に好ましくは0.2〜6m/sである。攪拌翼の周速が10m/sよりも早いと、転相乳化時の分散径が大きくなり好ましくない。一方、周速が0.2m/sよりも遅いと、攪拌が不均一となり、転相が均一に起こらず、粗大粒子が発生する傾向となり好ましくない。また、転相乳化時の温度は、特に制限はないが、温度が高いほど粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。また、低温すぎるとポリエステル樹脂および有機溶剤を含む混合物の粘度が上昇し、やはり粗大粒子の発生が多くなるため好ましくない。転相乳化時の温度範囲としては10〜40℃が好ましい。さらに好ましくは20〜30℃の範囲である。
【0115】
以上の如く、自己水分散性樹脂を用いて、低シェア下において転相乳化を行うことにより、微粉や粗大粒子の発生を抑えることができ、その結果、次の合一工程において均一な粒度分布の微粒子の凝集体を製造することが容易になる。
【0116】
第一工程で製造する微粒子の50%体積平均粒径は、例えば、7μmの凝集体を得ようとした場合には、1μmを越えて6μm以下、より好ましくは1μmを越えて4μmの範囲である。1μm以下であると着色剤や、離型剤を用いた場合、ポリエステル樹脂により十分カプセル化されないため、帯電特性、現像特性に悪影響を及ぼし好ましくない。また、粒径が大きいと、得られるトナーの粒径が限定されるため、目的とするトナーの粒径よりも小粒径にする必要があるが、6μmよりも大きいと粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。また、第一工程で製造する微粒子の粒度分布は、10μm以上の体積粒径の比率が2%以下、より好ましくは1%以下であり、5μm以上の体積粒径の比率が10%以下、より好ましくは6%以下である。
【0117】
第二工程では、第一工程で得られた微粒子を合一させることにより該微粒子の凝集体を生成させ、所望の粒径のトナー粒子を形成させる。第二工程では、溶剤量、温度、分散安定剤及び電解質の種類あるいは添加量、濃度、攪拌条件等を適宜制御することで、所望の凝集体を得ることができる。
【0118】
第二工程では、第一工程で得られた微粒子の分散液を水で希釈し溶剤量を調整する。その後、分散安定剤を添加し、あるいは水希釈と同時に分散安定剤を添加し、分散安定剤の存在下に電解質の水溶液を滴下することで合一を進め、所定粒径の凝集体を得る。この製法では、第一工程で得られた微粒子は溶剤により膨潤しており、かつ電解質により粒子の電気二重層が収縮した不安定な状態のため、低シェアー(低剪断力)の攪拌による粒子同士の衝突でも容易に合一が進行する。また、電解質により不安定化された粒子は、分散安定剤により分散安定性が付与され、不均一な合一が抑制される。
【0119】
第一工程までで得られる、自己水分散性樹脂から形成された微粒子は、カルボン酸塩による電気二重層の作用により水性媒体中で安定に分散している。微粒子が分散している水性媒体中に電気二重層を破壊、あるいは縮小させる電解質を添加することで、粒子を不安定化させる。その際に用いることのできる電解質としては、たとえば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質がある。また、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等も電解質として有効に用いることができる。合一させるために添加するこれらの電解質は、単独でも、あるいは2種類以上の物質を混合してもよい。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニュウムのごとき1価のカチオンの硫酸塩が均一な合一を進める上で好ましい。
【0120】
また、電解質等の添加だけでは、系内の微粒子の分散安定性が不安定になっているため、合一が不均一となり、粗大粒子や凝集物が発生しやすい。電解質や酸性物質により生成した微粒子の凝集体が、再合一を繰り返して、目的とする粒子径以上の凝集体を形成するのを防止するためには、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤やイオン性、あるいはノニオン性の界面活性剤を分散安定剤として添加することが好ましい。ここで使用する分散安定剤は、後から添加する電解質によって分散安定性を損なわない性能を有する物質であることが好ましい。そのような特性を有する分散安定剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等、あるいは各種プルロニック系等のノニオン型の乳化剤、あるいはアルキル硫酸エステル塩型のアニオン性乳化剤、また、第四級アンモニウム塩型のカチオン型の分散安定剤等がある。中でも、アニオン型、ノニオン型の分散安定剤が少量の添加量であっても系の分散安定性に効果があり、好ましい。ノニオン型の界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。以上に記載した界面活性剤は単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。合一工程においては、分散安定剤(乳化剤)の存在下に電解質を添加することで、不均一な合一を防止することが可能となり、その結果、シャープな粒度分布を得ることができ、更に収率の向上が達成できる。
【0121】
なお、合一工程における攪拌条件は、前記の第一工程(転相乳化工程)における条件と同様な装置で、同様な低シェアの攪拌条件下で行うことが好ましい。
ホモミキサーのようなステーターとローターからなる高剪断装置や、タービン翼のような局所的に高剪断がかかり、全体を均一に攪拌する能力の弱い攪拌翼では合一が不均一となり、粗大粒子の発生につながりやすい。
【0122】
本発明の第二工程においては、必要に応じて第一工程で転相乳化により得られた微粒子の分散液を水でさらに希釈する。その後、分散安定剤を添加し、次いで電解質を順次添加して合一を行う。分散安定剤及び電解質は水溶液、あるいは水中に分散した状態で加えることが好ましい。電解質を添加する前の系に含まれる溶剤量としては、5〜30質量%の範囲内であることが好ましい。また、10〜25質量%の範囲内がより好ましく、特に、15〜25質量%の範囲内が好ましい。溶剤量が5質量%よりも少ないと、合一に要する電解質量が多くなり好ましくない。また、溶剤量が30質量%よりも多いと不均一な合一による凝集物の発生が多くなり、また、乳化剤の添加量が多くなるため好ましくない。
【0123】
使用する分散安定剤の量は、例えば微粒子の固形分含有量に対し、0.2〜3.0質量%の範囲内が好ましい。0.5〜2.5質量%の範囲内がより好ましく、0.8〜2.5質量%の範囲内が特に好ましい。0.2質量%よりも少ないと、目的とする粗大粒子発生に対する防止効果が得ることが困難となる。一方、3.0質量%よりも多いと、電解質の量を増加しても合一が十分に進行せず、所定粒径の粒子が得られなくなり、結果として、微粒子が残存してしまい収率を低下させるため好ましくない。
【0124】
また、使用する電解質の量は、微粒子の固形分含有量に対し、1〜15質量%の範囲内であることが好ましい。2〜12質量%の範囲内であることがより好ましく、2〜10質量%の範囲内であることが特に好ましい。電解質の量が1質量%よりも少ないと、合一が十分に進行しないため好ましくない。また、電解質の量が15質量%よりも多いと、合一が不均一となり、凝集物の発生や、粗大粒子が発生し収率を低下させるため好ましくない。電解質をあらかじめ水に溶かして加える場合は、電解質溶液の濃度は1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0125】
また、合一時の温度は10〜50℃の範囲内が好ましい。より好ましくは20〜40℃の範囲内であり、20〜35℃であることが特に好ましい。温度が10℃よりも低いと、合一が進行しにくくなるため好ましくない。また、温度が50℃よりも高いと、合一速度が速くなり、凝集物や、粗大粒子が発生しやすくなるため好ましくない。
【0126】
第二工程においては、例えば、ポリエステル樹脂のみからなる微粒子を上記工程により製造した場合、黒色着色剤分散液、帯電制御剤分散液、離型剤分散液等を別途製造して、それらの分散液の1種以上を前記ポリエステル樹脂のみからなる微粒子が懸濁しているスラリーに添加して、その後に合一操作を行うことができる。
【0127】
あるいは、ポリエステル樹脂と黒色着色剤の組み合わせ等、ポリエステル樹脂と他の1種以上のトナー用原料からなる微粒子を上記工程により製造した場合においても、上記の各種分散液を添加して第二工程を行うことができる。そうすることにより第二工程で製造される凝集体の表面に帯電制御剤等の各種添加剤を露出させながらトナーを製造することも可能となり、種々の用途に応じてトナーの表面物性をコントロールすることができる。
【0128】
ここで用いる黒色着色剤分散液、帯電制御剤分散液、離型剤分散液等の各種分散液は、下記のようにして得ることができる。たとえば、それぞれの物質をポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等で代表されるノニオン系の界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩等で代表されるアニオン系の界面活性剤、あるいは4級アンモニュウム塩で代表されるカチオン系の界面活性剤等と水中に添加して、メディアによる機械的粉砕法により調製できる。あるいは、界面活性剤の代わりに、自己水分散性のポリエステル樹脂を用いて、塩基性中和剤の存在下に同様の分散手段で分散液を調製できる。また、ここで使用する黒色着色顔料、離型剤、帯電制御剤は、あらかじめポリエステル樹脂と溶融混練したものを用いてもよい。この場合、樹脂が吸着することで、各種材料が粒子表面に露出する程度が緩和され、帯電特性、現像特性において好ましい特性を与える。
【0129】
以上をまとめると、本発明の静電荷像現像用トナーを製造する方法として、好ましい実施形態としては以下の(1)〜(4)がある。勿論、それ以外でも発明の趣旨を損なわない範囲で種々の実施形態をとることが可能である。
(1)ポリエステル樹脂と黒色着色剤、更に必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の分散液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、第二工程により合一を行う方法、
(2)ポリエステル樹脂と黒色着色剤、更に必要に応じて離型剤の分散液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、その後、帯電制御剤の分散液を混合して、第二工程により合一を行う方法、
(3)ポリエステル樹脂の樹脂溶液からなる微粒子を上記の第一工程により製造し、黒色着色顔料の分散液、及び、必要に応じて離型剤、あるいは帯電制御剤の各分散液をそれぞれ別々に用意し、それらを混合した後に第二工程により合一を行う方法、
(4)ポリエステル樹脂と離型剤からなる樹脂溶液を用いて、上記の第一工程により微粒子を製造し、黒色着色剤の分散液と必要に応じて帯電制御剤の分散液を混合して、第二工程により合一を行う方法。
【0130】
ところで、摩擦帯電性能を良好に保持するためには、黒色着色剤等がトナー粒子表面に露出しないようにすること、すなわち黒色着色剤等がトナー粒子に内包されたトナー構造とするのが有効である。トナーの小粒径化に伴う帯電性の悪化は、含有する黒色着色剤や、その他の添加物(通常ワックスなど)の一部がトナー粒子表面に露出することも原因になっている。すなわち、黒色着色剤等の含有率(質量%)が同じであっても、小粒径化によりトナー粒子の表面積が増大し、トナー粒子表面に露出する着色剤やワックス等の比率が増大し、その結果トナー粒子表面の組成が大きく変化し、トナー粒子の摩擦帯電性能が大きく変わり適正な帯電性が得られにくくなる。
【0131】
前記製造方法により製造される静電荷像現像用トナーは、着色剤やワックス等がバインダー樹脂に内包された構造となる。積極的に着色剤や離型剤の内包を行うためには、前記の(1)の方法が好ましい。また、帯電制御剤をトナー粒子表面に局在化させて、その機能を発現させるためには、(2)の方法が好ましい。トナー粒子表面に着色剤やワックス等が露出していないことは、例えば、粒子の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察することにより容易に判定できる。より具体的には、トナー粒子を樹脂包埋してミクロトームで切断した断面を、必要ならば酸化ルテニウム等で染色し、TEMで観察すると、着色剤やワックス等が粒子内に内包されてほぼ均一に分散していることが確認できる。
【0132】
第二工程で得られる微粒子の凝集体の形状は、表面が曲面で覆われている球形の形状であり、合一の程度により粒子の平均円形度は不定形から球形まで変化させることができる。例えば、平均円形度で表現すれば、0.94〜0.99まで変化させることが可能である。
【0133】
トナー粒子の形状は、平均円形度が0.97以上の略球形あるいは球形の形状とすることで粉体流動性の向上、転写効率の向上がみられ、トナーとして用いる場合には上記範囲とすることが好ましい。
【0134】
第二工程で得られた微粒子の凝集体の分散液は、引き続き脱溶剤を行い、スラリー中から有機溶剤を除去する。次いで、湿式振動ふるいを通すことで樹脂片等のゴミ、粗大粒子を除去し、遠心分離器、あるいはフィルタープレス、ベルトフィルター等の公知慣用の手段で固液分離を行うことができる。ついで粒子を乾燥させることによりトナー粒子を得ることができる。乳化剤や分散安定剤を用いて製造されたトナー粒子は、より十分に洗浄することが好ましい。
【0135】
前記の製造方法により製造される静電荷像現像用トナーは、黒色着色剤や必要に応じて添加する離型剤等がバインダー樹脂に内包された構造となる。このように内包された構造となることにより、また、表面が曲面で覆われている球形の形状を有することにより、本発明における課題の解決が可能となり、良好な印刷画像が得られる。
【0136】
乾燥方法としては、公知慣用の方法がいずれも採用可能であるが、例えば、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下または減圧下で乾燥させる方法、凍結乾燥させる方法、などが挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行う方法も挙げられる。特に、トナー粒子が熱融着や凝集しない温度で加熱しながら、減圧下で、粉体を攪拌して乾燥させる方法や、加熱乾燥空気流を用いて瞬時に乾燥させるというフラッシュジェットドライヤー(セイシン企業株式会社)などを使用する方法が、効率的であり好ましい。さらに、粒子内に内包された溶剤等の揮発成分は、さらにリボコーン、あるいはナウターミキサーのごとき真空混合乾燥機で除去することが好ましい。
【0137】
形成されたトナー粒子の粒度分布を整えるため、粗大粒子や微細粒子を除去するための分級が必要な場合には、乾燥終了後に、気流式分級機を用いて公知慣用の方法で行うことができる。また、着色樹脂粒子が水性媒体中に分散している状態で遠心分離機により分級する方法を用いても良い。また、粗大粒子の除去については、着色樹脂粒子の水スラリーをフィルターや湿式振動篩いなどで濾過することにより行うことができる。なお、本発明のトナーの粒度分布については、コールターマルチサイザーによる測定で、50%体積粒径(Dv)/50%個数粒径(Dn)が1.35以下、より好ましくは1.25以下が良好な画像を得られるので好ましい。
【0138】
本発明の静電荷像現像用トナーとしては、その体積平均粒径として、得られる画像品質などの点から1〜15μmの範囲にあるものが好ましく、3〜10μm程度がより好ましい。特に3〜7μmの範囲であることが好適である。体積平均粒径が小さくなると解像性や階調性が向上するだけでなく、印刷画像を形成するトナー層の厚みが薄くなり、ページあたりのトナー消費量が減少するという効果も発現され好ましい。
【0139】
本発明では、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナー母体の表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。本発明で用いることのできる外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコン、フェノール、フッ化ビニリデン等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0140】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやヘキサメチレンジシラザンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0141】
AEROSIL R972,R974,R202,R805,R812,RX200,RY200、 R809,RX50,RA200HS,RA200H〔日本アエロジル(株)〕
WACKER HDK H05TD、H13TD、H20TD、H30TD、H05TM、H13TM、H30TM、H05TX、H13TX、H30TX、H05TA、H13TA、H30TA〔ワッカーケミカルズ(株)〕
Nipsil SS−10、SS−15,SS−20,SS−50,SS−60,SS−100、SS−50B,SS−50F,SS−10F、SS−40、SS−70,SS−72F、〔日本シリカ工業(株)〕
CABOSIL TG820F、TS−530、TS−720〔キャボット・スペシャルティー・ケミカルズ・インク〕
また、酸化チタンとしては親水性グレードであってもよく、オクチルシラン等で表面処理した疎水性グレードのものであってもよい。帯電特性を付与する目的で、フッ素シラン処理・アミノシラン処理等を施すことも効果的である。
例えば、下記のような商品で市販されているものがある。
酸化チタン T805〔デグサ(株)〕、酸化チタン P25〔日本アエロジル(株)〕、酸化チタンJMT−150ANO〔テイカ(株)〕などがある。
また、アルミナとしては、酸化アルミニウムC〔デグサ(株)〕等が挙げられる。
外添剤の粒子径は母体トナーである黒色樹脂微粒子の直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。
【0142】
特に非磁性一成分現像用トナーにおいては、粒子径大のものと粒子径小のものとを併用することにより、トナー流動性及び現像耐久性を向上させ、現像機のブレードへの固着及びカブリの防止、ランニング時における帯電の長期安定性等が得られ、好ましい。
【0143】
外添剤の使用割合は母体トナー100質量部に対して、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0144】
前記シリカを、トナー粒子に外添させる方法としては、例えば通常の粉体用混合機であるヘンシェルミキサーなどや、ハイブリダイザー等のいわゆる表面改質機を用いて行うことができる。尚、この外添処理は、トナー粒子の表面にシリカが付着させるようにしても良いし、シリカの一部がトナー粒子に埋め込まれるようにしても良い。
【0145】
本発明の静電荷像現像用トナーは、電子写真法による静電潜像の現像用として、一成分現像剤、非磁性一成分現像剤あるいはキャリアと混合した二成分現像剤として使用できる。キャリアの種類には特に制限はなく、公知慣用の鉄粉、フェライト、マグネタイト等やそれらに樹脂コートしたキャリアが用いられる。
【0146】
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、現像剤担持ロールと層規制部材とを有する非磁性一成分現像装置等を用いて摩擦帯電された粉体トナーを、トナー通過量等を調節する機能の電極を周囲に有するフレキシブルプリント基板上の穴を通して、背面電極上の紙に直接吹き付けて画像を形成する方法である、いわゆるトナージェット方式のプリンター等にも好適に使用できる。本発明の静電荷像現像用乾式カラートナーは、定着性やカラー特性に優れることに加え、球形であることから、不定形トナーに比べて、トナージェット方式におけるトナー飛翔の制御が容易になる。
【0147】
【実施例】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例・比較例では、特に表示がない限り部は質量部、水は脱イオン水の意である。
【0148】
(黒色着色剤1の製造)
平均径0.2μmであって磁化値85.0emu/gである粒状マグネタイト粒子粉末100gを0.26molのTiOSO4を含有する水溶液中に分散混合し、次いで、該混合液中にNaOHを添加して中和し、pH8において粒子表面にTiの水酸化物を沈着させた後、濾別、乾燥した。更に、N2ガス流下750℃で120分間加熱焼成した後、粉砕して「黒色着色剤1」の粉末を得た。この「黒色着色剤1」の粒子径は、0.25μmであった。また、X線回折により該粒子はFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成物であることを確認した。
【0149】
トナーを調製するにあたって用いたバインダー樹脂の合成例を下記に示す。なお、各合成例で得られた樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に入れ12時間放置した溶液を濾過して得られたTHF可溶性成分の分子量を測定した。分析には、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィ(GPC)法を用い、標準ポリスチレンにより作成した検量線から分子量を算出した。
GPC装置:東ソー(株)製 HLC−8120GPC
カラム:東ソー(株)製 TSK Guardcolumn SuperH−H TSK−GEL SuperHM−M 3連結
濃度 :0.5質量%
流速 :1.0ml/min
【0150】
結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分については、樹脂1gを精秤し、テトラヒドロフラン40ml中に加えて完全に溶解し、桐山濾紙(No.3)を置いたロート(直径40mm)の上にラヂオライト(昭和化学社製 #700)2gを均一に敷いて濾過し、ケーキをアルミシャーレ上にあけて、その後140℃で1時間乾燥し、乾燥質量を測定する。そして、最初の樹脂サンプル量で乾燥質量中の残存樹脂量を割った値を百分率で算出し、この値を上記不溶分とする。
酸価はJIS K6901に、TgはJIS K7121に準じ測定した。
【0151】
(ポリエステル樹脂合成例)
多価カルボン酸として無水トリメリット酸(TMA)、2価カルボン酸としてテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、芳香族ジオールとしてポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−PO)、ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA−EO)、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール(EG)を、表1に示す各モル組成比で用い、重合触媒としてテトラブチルチタネートを全モノマー量に対し0.3質量%でセパラブルフレスコに仕込み、該フラスコ上部に温度計、攪拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付け電熱マントルヒーター中で、常圧窒素気流下にて220℃で15時間反応させた後、順次減圧し、10mmHgで反応を続行した。反応は、ASTM・E28−517に準じる軟化点により追跡し、軟化点が所定の温度となったところで真空を停止して反応を終了した。合成した樹脂の組成および物性値(特性値)を表1に示す。
【0152】
【表1】
>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万 ;分子量1万以下の成分の面積比率
TPA;テレフタル酸
IPA;イソフタル酸
BPA−PO;ポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
BPA−EO;ポリオキシエチレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
EG;エチレングリコール
BA:安息香酸
TMP;トリメチロールプロパン
FT値;フローテスタ値
【0153】
表1において、ガラス転移温度である「Tg」(℃)は 、島津製作所製示差走査熱量計(DSC−50)を用い、セカンドラン法により毎分10℃の昇温速度で測定した値である。
【0154】
(離型剤分散液の調製例)
カルナバワックス「カルナバワックス 1号」(加藤洋行輸入品)50部とポリエステル樹脂(表1中R1)50部とを加圧ニーダーで混練後、該混練物とメチルエチルケトン185部とをボールミルに仕込み、6時間攪拌した後取り出し、固形分含有量を25質量%に調整し、離型剤の微分散液(W1)を得た。同様の方法でポリエステル樹脂R2を用いて離型剤の分散液(W2)を得た。
【0155】
(着色剤マスターチップの調製例)
表2の配合にて着色顔料を樹脂と50/50の質量比率で混練し、着色剤マスターチップP1〜P3を作製した。着色顔料と樹脂は加圧ニーダーを用いて混練した。
【0156】
【表2】
表2に示したカーボンは以下の通りである。
カーボン:「ELFTEX−8」(キャボット社製)
【0157】
(帯電制御剤分散液の調製例)
表3の組成にて帯電制御剤とメチルエチルケトンを30/70の質量比率で配合し、モーターミル(米国アイガー社製)で分散を行い、固形分含有量を30質量%に調整し、各種帯電制御剤分散液を得た。
【0158】
【表3】
・N−04;ボントロンN−04(オリエント化学製、ニグロシン染料)
・N−01;ボントロンN−01(オリエント化学製、ニグロシン染料)
【0159】
(ミルベースの調製)
上記離型剤分散液、着色剤、希釈樹脂(追加樹脂)、メチルエチルケトンをデスパーで混合し、固形分含有量を60%に調整してミルベース(MB1〜MB4)を作製した。作製したミルベースの配合を表4に示す。
【0160】
【表4】
【0161】
表4で使用したブレンド樹脂の特性を表5に示した。樹脂のブレンドは200メッシュを通過した樹脂粒子を上記質量比でブレンドして各物性値を測定した。
【0162】
【表5】
>60万;分子量60万以上の成分の面積比率
<1万 ;分子量1万以下の成分の面積比率
【0163】
(実施例1)
<トナーの製造>
攪拌翼としてマックスブレンド翼を有する円筒型の2LセパラブルフラスコにミルベースMB1を480部、帯電制御剤分散液E−2を40部、メチルエチルケトン25.5部及び1規定アンモニア水40部を加えて、スリーワンモーターにより210rpmにて十分に攪拌した後、脱イオン水133部を加え、さらに攪拌を行い、温度を30℃に調製した。ついで、同条件下で133部の脱イオン水を滴下して転相乳化により微粒子分散体を作製した。微粒子の体積平均粒子径は3μmであった。この時の攪拌翼の周速は0.71m/sであった。次に、脱イオン水303部を加えて溶剤量を調整した。なお、微粒子の体積平均粒子径は、米国コールター社製のマルチサイザーTAIIにより、アパーチャーチューブ径15μmを用いて測定した。
【0164】
次いで、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製)2.8部を水30部に希釈して添加した。この時の分散液中の溶剤量は20.7質量%であった。その後、温度を30℃に、また回転数を158rpmに調整し、4.5%の硫酸アンモニュウムの水溶液を体積平均粒子径が6μmに成長するまで滴下し、その後、同条件で体積平均粒子径が7μmに成長するまで攪拌を続け合一操作を終了した。合一後の微粒子の体積平均粒子径は、米国コールター社製のマルチサイザーTAIIにより、アパーチャーチューブ径100μmを用いて測定した。この時の硫酸アンモニュウムの添加量は350部であった。また、攪拌翼の周速は0.54m/sであった。得られたスラリーは、遠心分離機で固液分離、洗浄を行い、その後、真空乾燥機で乾燥を行い、トナー原体粒子を得た。得られたトナー原体粒子100質量部に対し、疎水性シリカH30TAの0.8部をヘンシェルミキサーにより混合した後、篩いがけをして、実施例1のトナー粒子を得た。同様の操作で得られた実施例2〜5、及び比較例1のトナー粒子の配合組成及び特性を表6に示す。また、実施例6〜7及び比較例2のトナー原体粒子については、100質量部に対し、日本アエロジル製シリカ「NAX50」1質量部、「RY−200」1質量部を外添することによりトナー粒子を得た。トナー粒子の特性を表6に示す。
なお、実施例2〜7、及び比較例1〜2では体積平均粒子径が約7μmのトナー母体粒子が得られるよう、適宜硫酸アンモニュウムの水溶液濃度、及び添加量を調整した。
【0165】
【表6】
なお、得られたトナー粒子の形状は、いずれも曲面を有する球形であった。
【0166】
(比較例3)
<トナーの製造>
・樹脂R−1 50.4質量部
・樹脂R−3 33.6質量部
・着色剤1 12質量部
・N−04 1質量部
・カルナバワックス 3質量部
ヘンシェルミキサーを用いて上記原料からなる混合物を作製し、その混合物をホッパー内に一時貯留した。その後、2軸の溶融混練機にて混練した。このようにして得られた混練物を機械式粉砕機にて粉砕、その後分級して体積平均粒子径7.4μmのトナー原体粒子を得た。得られたトナー原体粒子100質量部に対し、疎水性シリカH30TAの0.8部をヘンシェルミキサーにより混合した後、篩いがけをして比較例3のトナー粒子を得た。
なお、本トナーの見かけ密度は0.42、形状は曲面のない不定形であった。また、トナーの平均円形度は0.92であった。
【0167】
<P型トナー粒子の各実施例及び比較例のトナー試験>
シリコーンコートフェライトキャリア(粒径100μm)と実施例及び比較例のトナーを用いて、トナー濃度が4.7質量%になるように現像剤を調製し、各現像剤を用いて以下の試験を行った。
【0168】
(印刷耐久テスト)
市販の高速プリンター(A4紙220枚/分)を用いて10万枚の連続プリントを行い、画像部の濃度及び地汚れ濃度を測定すると共に、現像剤の帯電量を測定した。画像濃度及び地汚れはマクベス濃度計RD−918で測定した。なお、地汚れは印刷濃度の白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。その差が0.01未満の時を○、0.01〜0.03未満の時を△、0.03以上の時を×とした。なお、テストは25℃、60%の環境下で行った。
結果を表8に示す。
【0169】
また、現像機内部のトナー飛散状況を目視観察した。飛散が全く観察されない状態を◎、飛散がほとんど見えないが、装置内部をウエスで拭くとトナー汚れが観察される状態を○、機内飛散が目視で確認される状態を△、ひどい機内飛散が確認できる状態を×とした。結果を表8に示す。
【0170】
帯電量については、トナーを現像装置内から採取して、ブローオフ帯電量測定機(東芝ケミカル製)で測定した。結果を表8に示す。
【0171】
(転写効率の測定)
市販の複写機を用いて、ベタ画像(縦100mm×横20mm)を現像し、感光体上のベタ画像が転写部を50%通過したところで停止させた。その後、感光体上の未転写画像(ベタ)・転写後の未定着画像をそれぞれテープ(30mm×20mm)にて完全に剥離し、未転写画像のトナー量と転写後のトナー量とを測定し、下記の式より転写効率(%)を算出した。結果を表7に示す。
転写効率(%)={1−(転写後のトナー量/未転写画像のトナー量)}×100
【0172】
(帯電の立ち上がり比較)
前記現像剤50gが入った100ccのポリエチレン容器を115rpmのボールミルで3分撹拌した後、現像剤を採取し、ブローオフ帯電量測定機で帯電量を測定した。さらに7分撹拌(計10分)し、同様に帯電量を測定した。試験結果を表7に示す。
【0173】
(定着性能試験)
定着温度幅について、以下に示す試験によって定着温度を求め、その上限値と下限値との範囲を定着温度幅とした。
実施例及び比較例のトナーを用い、市販の有機光半導体を感光体として使用したプリンターで、帯状の未定着画像が紙上に形成されたテストサンプルを作製した。それを、リコーイマジオDA−250のヒートロール(オイルレス型)を使用し、90mm/秒の定着速度で、表面温度を変えながら定着を行った。定着後の画像にメンディングテープ(3M製)を貼り、剥離後の画像濃度(ID)が元のIDの90%以上であって、かつオフセットの発生がみられないヒートロールの温度範囲を定着温度幅とした。結果を表7に示す。
【0174】
【表7】
【0175】
【表8】
【0176】
(N型トナー粒子の実施例及び比較例のトナー試験)
(印刷耐久テスト)
市販の非磁性一成分現像方式のプリンター(セイコーエプソン(株)製「LP−1800」)のカートリッジから専用トナーを抜き、洗浄したカートリッジに、表9に示した実施例及び比較例のトナーを充填し、画像濃度5%で10000枚の連続印字を行った。テストは25℃、60%の環境下で行った。
【0177】
(画像濃度・地汚れ・帯電量)
印刷物の画像濃度及び地汚れをマクベス濃度計RD−918で測定した。なお、地汚れは印刷後の白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。その差が0.01未満の時を○、0.01〜0.03未満の時を△、0.03以上の時を×とした。また、印字トナーの帯電量を、吸引式小型帯電量測定装置Mode210HS(トレック社製)を用いて測定した。結果を表9に示す。
【0178】
(トナー落ち・トナー飛散)
10000枚印字後、カートリッジに装着された現像スリーブからトナーがこぼれ落ちたり(トナー落ち)、現像装置の周辺に飛び散って(トナー飛散)マシン内部を汚したりしない状態を○、少量のトナー落ち、あるいはトナー飛散が認められる状態を△、多量のトナー落ち、あるいはトナー飛散が認められる状態を×と判定した。結果を表9に示す。
【0179】
【表9】
【0180】
【発明の効果】
三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料を着色剤として使用した本発明の球形の静電荷像現像用トナーは、長期間の使用或いは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、地汚れが無く、画像濃度の変動が無い印刷を行うことができる。
Claims (6)
- バインダー樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、前記着色剤が三酸化チタン鉄(FeTiO3)を含有する黒色顔料であり、且つ前記トナーの形状が球形であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 前記着色剤がFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する黒色顔料である請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記着色剤がFe(II)及びFe(III)に対してTi換算で15.0〜50.0原子%のチタンを含有する黒色顔料である請求項2記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記トナーの平均円形度が、0.94以上である請求項1記載の球形の静電荷像現像用乾式トナー
- 前記トナーの平均円形度が、0.97以上である請求項1記載の球形の静電荷像現像用乾式トナー
- 前記バインダー樹脂がポリエステル樹脂及び/またはビニル系共重合体樹脂である請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
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JP2006291151A (ja) * | 2005-04-15 | 2006-10-26 | Toda Kogyo Corp | トナー用鉄系黒色粒子粉末 |
US7943281B2 (en) | 2005-04-15 | 2011-05-17 | Canon Kabushiki Kaisha | Black toner |
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2002
- 2002-07-23 JP JP2002213848A patent/JP2004054094A/ja active Pending
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