JP2004151457A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
【課題】生分解性を有し、自然環境中に廃棄された場合にも生態系や地球環境に対する安全性が高く、更に、適度な帯電量を有し、帯電の立ち上がり性及び帯電の経時安定性が良好であり、高品位な印刷画像を得ることができる静電荷像現像用トナーを提供する。
【解決手段】バインダー樹脂と着色剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂を含有し、前記着色剤がチタン−鉄の複合酸化物を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーを用いる。
【選択図】なし
【解決手段】バインダー樹脂と着色剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂を含有し、前記着色剤がチタン−鉄の複合酸化物を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーを用いる。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、あるいは静電印刷法に用いる静電荷像現像用トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックは膨大な量が使用されているが、その廃棄物は、景観の阻害、海洋生物への脅威、環境汚染等の深刻な地球的環境問題を引き起こしている。電子写真方式や静電記録方式のプリンターに用いられる静電荷像現像用トナー(以下、トナーと記載する)においても同様であり、トナーを廃棄処分する場合の、あるいはトナーで印刷された印刷物を廃棄する場合の環境に対する影響が問題となっている。トナー用に使用される汎用樹脂としては、ポリスチレン、スチレンアクリル、ポリエステル、エポキシ、スチレンブタジエン等の樹脂が使用され、これらの樹脂を用いたトナーを処分する場合は、焼却や埋立が行われている。
【0003】
しかしながら、これらの汎用樹脂を使用したトナーを焼却や埋立により処分する場合には問題がある。例えば、焼却する場合には、上記の汎用樹脂は、燃焼カロリーが高いため、炉を痛め易く、炉の寿命を短くしてしまう。また、埋立処分をする場合においても、上記の汎用樹脂は、化学的安定性が高いため、原形をとどめたまま半永久的に残留する事が知られており、環境への影響が懸念される。自然環境中に廃棄された場合には、その安定性のために長期にわたって土中に存在し、海洋生物、鳥類等が誤って補食する可能性が高く、生態系破壊の一因となる。これらの問題を解決するために、近年、トナーに使用する樹脂においても生分解性樹脂を使用することが盛んに検討されている。
【0004】
また、トナーにはバインダー樹脂の他に着色剤や帯電制御剤が使用されるが、これらの大半は人工の安定な化合物であるため、自然環境に流出した場合には汚染源となる可能性が高い。特に、黒色の着色剤として通常使用されているカーボンブラックは一般に安価であり、粉末の粒径が微細で着色性に優れた顔料であるが、国際癌研究機構にてグループ2B(人体に対して発癌の可能性がある)に分類されている等、安全衛生面からの問題が指摘されている。カーボンブラックに変わる黒色の着色剤としては、黒色酸化鉄(マグネタイト)が従来から使用されているが、黒色酸化鉄の粉末はFe3O4が磁性を有することに起因して凝集性があり、他のトナー原料と混合して使用する場合、均一な混合が難しい。また、150℃程度で茶色のFe2O3に変化する等、耐熱性が劣る欠点がある。
【0005】
一方、青色の着色剤として一般的に使用される銅フタロシアニンは、顔料中に重金属を含んでおり、大量に廃棄する場合に問題がある。また、銅フタロシアニンは結晶性が強く、トナー用のバインダー樹脂に対する分散性が不十分なため、長時間使用した場合、帯電量の上昇を起こして画像濃度が低下したり、帯電不良のトナー粒子が発生することにより、非画像部の地汚れや現像装置周辺の飛散トナーによる汚れが発生したりしやすいといった問題がある。
【0006】
ところで、静電荷像現像用トナーに用いられる着色剤に要求される特性としては、着色性、安全性、製造時の取り扱い性、耐熱性の他に、現像特性に影響する電気的特性がある。電気的特性は着色剤に求められる特性の中でも重要な特性のひとつである。
【0007】
環境汚染に対する対策を施したトナーとしては、これまで種々の技術が開示されている。例えば、特許第2597452号公報では、ライスワックス、カルナバワックス等の植物ワックスを使用する技術が提示されている。同公報には、植物ワックスを使用することによりトナーの定着特性を良好にし、また、トナーを製造する際の粉砕性を向上させることが出来る技術が開示され、また、植物ワックス自体が生分解性であるためトナー成分の大半が生分解性材料であることがメリットとして記載されている。また、特開平8−262796号公報においては生分解性樹脂と非水溶性食用色素を着色剤として用いたトナーが開示されている。しかしながら、上記公報に記載された技術においては、自然環境を汚染しないための着色剤として、生分解性樹脂に対して良好な分散性を示し、優れた電気的特性を有する着色剤に関しては何ら開示されていない。
【0008】
【特許文献1】特許第2597452号公報(第6頁;第24段落、実施例及び比較例)
【特許文献2】特開平8−262796号公報(第4頁;第33段落、及び第34段落、実施例及び比較例)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、電気的特性に優れ、生分解性を有し、環境汚染性の少ない静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。即ち、本発明は上記課題を解決するために、バインダー樹脂と着色剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂を含有し、前記着色剤が チタン−鉄の複合酸化物を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーを提供するものである。
【0011】
また、本発明はバインダー樹脂と着色剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂を含有し、前記着色剤が紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、呉須、及びターコイズブルーから選択される1種以上を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーを提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、「生分解性」とは、細菌、真菌などの微生物、酵素などにより分子の結合が切断されることを言い、「生分解性樹脂」とは、生分解性を有し、生分解することにより環境を汚染することなく、生態系のサイクルに組み込まれる樹脂を言う。本発明で使用する生分解性樹脂としては、ポリ酪酸類、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルの共重合物、脂肪族ポリエステルとポリアミドの共重合物、ポリ乳酸、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体等がある。
【0013】
具体的な例としては、次のようなものが挙げられる。ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体、3−ヒドロキシ酪酸と4−ヒドロキシ酪酸の共重合体、等のポリ酪酸類。ラクチド、グリコリド、β−プロピオラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の開環重合体や、共重合体、等の脂肪族ポリエステル化合物。アジピン酸と1.4−ブタンジオ−ルよりなるポリエステル、琥珀酸と1.4−ブタンジオ−ルよりなるポリエステル、琥珀酸と1.6−ヘキサンジオ−ルよりなるポリエステル、等の脂肪族2塩基酸と脂肪族ジオ−ルよりなるポリエステルを挙げる事が出来る。
【0014】
また、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合物としては、上記した脂肪族ポリエステル化合物、または、これらを合成する際に1〜50質量%、好ましくは5〜30%の、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸やP−ヒドロキシ安息香酸、P−ヒドロキシエチル安息香酸、P−ヒドロキシフェニル酢酸等の芳香族ジカルボン酸や芳香族オキシカルボン酸を反応させた樹脂が挙げられる。
【0015】
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体としては、ポリ乳酸とエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール類とコハク酸、メチルグルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸から得られる脂肪族ポリエステルの共重合体が挙げられる。乳酸系ポリエステルの製造で用いられる重合触媒としては、例えば、エステル交換触媒として知られる、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、コバルト等の金属及びその化合物、特に金属有機化合物、炭酸塩、ハロゲン化物、なかでもオクタン酸錫、塩化亜鉛、アルコキシチタン等が挙げられる。
【0016】
上記の樹脂の中でもポリ酪酸類、あるいはポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体を用いることが好ましい。
【0017】
本発明で使用する着色剤は、チタン−鉄の複合酸化物を含有する着色剤である。チタン−鉄の複合酸化物であれば公地の材料を使用することができるが、FeTiO2若しくはFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)、又はFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3の固溶体との混合組成を有する チタン−鉄の複合酸化物であることが好ましい。このような着色剤を使用したトナーは、長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、更に、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーとなる。これらの着色剤は、黒色あるいは茶色の着色剤であり、カーボンブラックの代わりに黒色着色剤として用いた場合、有害物質を含有しないため安全衛生面でも優れたトナーとなる。
【0018】
FeTiO2で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)は、C.I.Pigment Black 12に分類される着色剤である。市販品としては、例えば、Battleship Gray No.6、Chestnut Brown No.180、Chocolate BrownNo.20、Russet Brown No.8(以上、ShepherdColor Company製)、イルガカラー10358(チバガイギー製)等がある。以上は黒色、あるいは暗色の着色剤である。本発明のトナーを黒色のトナーとして使用する場合は、特にBattleship Gray No.6、あるいはChocolate Brown No.20を用いることが好ましい。また、茶色、あるいは薄茶色のC.I.Pigment Black 12に分類される着色剤としては、Autumn Brown No.156、Golden Brown No.19(以上、Shepherd Color Company製)等がある。本発明のトナーを茶系のトナーとする場合はこれらの着色剤を使用すると良い。
【0019】
また、Fe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)を用いる場合の例としては、酸化チタン(TiO2:Titanium Dioxide)粒子の表面をFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物を含有する層で被覆した黒色微粒子がある。このような構成を採ると、黒色度の高い着色剤となる。市販品としては、ETB−100(チタン工業製)がある。
【0020】
Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する着色剤は、例えば、▲1▼粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末、▲2▼マグネタイト粒子粉末とチタン化合物との混合粉末、又は▲3▼粒子表面をチタン化合物で被覆したヘマタイト粒子粉末を還元して得られる還元粉末、等を非酸化性雰囲気下700℃以上の温度で加熱焼成する方法によって得ることができる。粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末を原料として用いる場合(▲1▼の場合)には、磁化値が小さい粒子が得られやすく、着色剤を非磁性粒子とする目的において、好ましい方法である。
【0021】
マグネタイト粒子粉末、ヘマタイト粒子粉末としては、粒状、球状、針状等、いかなる形態の粒子でもよく、また、大きさは0.03〜1.5μm程度の粒子を使用することが好ましい。使用するチタン化合物としては、チタンの含水酸化物、水酸化物、酸化物のいずれをも使用することができるが、マグネタイト粒子粉末と混合する場合には水溶性のチタン化合物を用いるのが好ましい。チタン化合物の量は、マグネタイト粒子中のFe(II)及びFe(III)に対し、Ti換算で15.0〜50.0原子%である。この範囲であると得られる黒色顔料の磁化値が適度な値となり好ましい。
【0022】
本発明で使用する青色の着色剤としては、紺青(Fe(NH4)Fe(CN)6・nH2O、C.I.Pigment Blue 27)、コバルトブルー(CoO・Al2O3、C.I.Pigment Blue 28)、セルリアンブルー(CoO・nSnO2・mMgO:n=1.5〜3.5、m=2〜6、C.I.Pigment Blue 35)、呉須(Co3O4+SiO2+Al2O3+Fe2O3+NiO+MnO)、及びターコイズブルー(C.I.Pigment Blue 36)から選択される1種以上である。中でも、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルーを使用することが好ましく、紺青を使用することが特に好ましい。
【0023】
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜15質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0024】
本発明では上記着色剤以外に色相を調整する目的において、下記の公知の着色剤を使用する事ができるが、本発明の目的のひとつは有害物質を含有しない静電荷像現像用トナーを提供することにあるので、公知の着色剤を併用する場合は、有害物質の有無及びその含有量について十分に留意する必要がある。公知の着色剤としては、例えば、黒の着色剤として、製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11の鉄酸化物系顔料、アニリンブラック、フタロシアニン系のシアニンブラックBX等があげられる。
【0025】
青系の着色剤としてはフタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 15−3、インダンスロン系のC.I.Pigment Blue 60等、赤系の着色剤としてはキナクリドン系のC.I.Pigment Red 122、アゾ系のC.I.Pigment Red 22、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:3、C.I.PigmentRed 57:1等、黄系の着色剤としてはアゾ系のC.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 155、イソインドリノン系のC.I.Pigment Yellow110、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 180等が挙げられる。
【0026】
本発明では必要に応じ公知の帯電制御剤を使用することができる。例えば正帯電制御剤としてはニグロシン系染料、変成ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が使用でき、また、負帯電制御剤としてはトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属塩又は錯体、ベンジル酸の金属塩又は錯体、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ化合物の金属塩又は錯体、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等が使用できる。
【0027】
本発明では、特に、有機ベントナイトを含有する物質を帯電制御剤として用いることが好ましい。有機ベントナイトとは、有機カチオン形成性化合物とベントナイトを主成分として製造される物質であり、ベントナイトとはSiO2とAl2O3を主とし、モンモリロン石を主成分とした層状構造を有する粘度鉱物である。このような天然の層状化合物であるベントナイトは、イオン交換などによって有機分子を層間に取り込むことができる。ベントナイトの層間には、本来、ナトリウムやカリウムなどの無機の金属カチオンが存在するが、これをイオン交換することによってアルキルアンモニウムイオンなど、有機カチオンをインターカレート(包接)し、有機物と無機物が交互に積層した複合体(層間化合物)が生じる。本発明で帯電制御剤として使用する有機ベントナイトは、ベントナイト中の無機カチオンを有機カチオン形成性化合物から生じる有機カチオンで交換したものである。
【0028】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物としては、公知の化合物を使用できる。例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムフルオロフォスフェート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、トリエチルメチルアンモニウムアイオダイド、等の4級アンモニウム塩がある。
【0029】
また、イソプロピルピリジニウムクロライド、ブチルピリジニウムクロライド、ヘプチルピリジニウムクロライド、デシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド、等のピリジウム塩がある。
【0030】
更に、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリ−(4−ビニルピリジン)、ポリアリルアミン、アミノアセチル化されたポリビニルアルコール、ポリ−(L)−リジン、キトサン、ポリピロール、あるいはジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリレートを含有するビニルモノマーとの共重合体、等から得られるポリマ−性アンモニウム塩がある。
【0031】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物のアニオン成分としては特に限定されるものではないが、安全性あるいは環境保護という観点からは、クロム、コバルト、銅、ニッケル、モリブデン、鉛、水銀、等の金属を含まないアニオンであることが好ましい。
【0032】
本発明で使用する有機ベントナイトを調製するための方法としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているイオン交換操作により製造することができる。例えば、水、水と有機溶媒の混合物、あるいは有機溶媒中にベントナイトを浸漬し、これに有機カチオン形成性化合物を添加して、一定時間放置後、これを濾過洗浄し、乾燥することにより得ることができる。
【0033】
上記の有機ベントナイトを含有する帯電制御剤は、本発明で使用する樹脂中に均一に分散することができるので、少量で所望の帯電量を得ることができる。また、天然の粘土鉱物を原料としているので、土壌中に廃棄された場合も環境を汚染することがない。
【0034】
帯電制御剤の使用量としてはトナー全体に対して、0.1〜10質量部の範囲であり、この範囲であると、トナー抵抗の低下もなく十分な帯電性能が得られる。より好ましくは0.3〜5質量部であり、特に、0.5〜3質量部であることが好ましい。
【0035】
また、本発明のトナーには、これまで公知の種々の離型剤、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックスを用いることができるが、本発明では、特に、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、カイガラムシワックス、モンタン系エステルワックス等の天然物に由来するワックスを使用することが好ましい。このようなワックスは本発明で使用する樹脂中における分散性が良く、また、離型性、摺動性が良好であり好ましい。これらのワックスをトナー中に添加する場合、同量のポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等ポリオレフィン系ワックスと比較して、より良好な耐ホットオフセット性、定着強度が得られる。
【0036】
離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、トナー全体に対して0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、15質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
【0037】
本発明のトナーには、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナーの表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。本発明で用いることのできる外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコン、フェノール、フッ化ビニリデン、等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0038】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0039】
【0040】
外添剤の粒子径はトナーの直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。外添剤の使用割合はトナー100質量部中、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0041】
本発明のトナーは、その他の添加剤をトナー粒子内部に含める様にしても良い。一例として、例えば金属石鹸、ステアリン酸亜鉛等の滑剤が、研磨剤として、例えば酸化セリウム、炭化ケイ素等が使用できる。
【0042】
本発明のトナーは、特定の製造方法によらず極めて一般的な製造方法に依って得る事ができるが、例えば樹脂と着色剤と帯電制御剤とを、樹脂の融点(軟化点)以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることが出来る。
【0043】
具体的には例えば、上記の樹脂と着色剤を2本ロール、3本ロール、加圧ニーダー、又は2軸押し出し機等の混練手段により混合する。この際、樹脂中に、着色剤等が均一に分散すればよく、その溶融混練の条件は特に限定されるものではないが、通常80〜180゜Cで30秒〜2時間である。着色剤は樹脂中に均一に分散するようにあらかじめフラッシング処理、あるいは樹脂と高濃度で溶融混練したマスターバッチを用いても良い。
【0044】
次いで、それを冷却後、ジェットミル等の粉砕機で微粉砕し、風力分級機等により分級するという方法が挙げられる。トナーを構成する粒子の平均粒径は、特に制限されないが、通常5〜15μmとなる様に調整される。通常、この様にして得られたトナー母体に対しては、トナー母体よりも小さい粒径の微粒子(以下、外添剤と呼ぶ)が、例えばヘンシェルミキサー等の混合機を用いて混合される。
【0045】
本発明のトナーを製造する他の方法としては、特開平5−66600号公報、特開平8−62891号公報等により開示されている転相乳化法等がある。転相乳化法とは、バインダー樹脂とその他の原料等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を添加することによりWater in Oilの不連続相を生成させ、さらに水を追加することで、Oil in Waterの不連続相に転相し、そして、更に水性媒体を追加することで水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁液を形成させ、その後、有機溶剤を除去することによりトナー粒子を製造する方法である。
【0046】
本発明のトナーは磁性キャリアと混合することにより二成分現像剤として用いることができる。この場合、磁性キャリアの表面は樹脂により被覆されたものであることが望ましい。表面を樹脂で被覆することにより現像剤の帯電が安定する。
【0047】
本発明のトナーを用いて二成分現像剤を作製するキャリアとしては、通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉キャリア、マグネタイトキャリア、フェライトキャリアが使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトキャリアが好適に用いられる。キャリアの形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜500μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜80μmが好ましい。
【0048】
また、これらのキャリアを樹脂で被覆したコーティングキャリアも好適に使用でき、被覆樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。これらの中でも、特にシリコン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。つまり本発明では、磁性キャリアが、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであることが好ましい。
【0049】
本発明のトナーと、磁性キャリアとの質量割合は特に制限されるものではないが、通常キャリア100質量部に対して、トナー0.5〜10質量部である。
【0050】
こうして得られた本発明の静電荷像現像用トナーは、公知慣用の方法で被記録媒体上に現像され定着されるが、定着方式としては、ヒートロール定着方式を採用するのが好ましい。ヒートロールとしては、トナーを溶融定着しうる温度に加熱できる円筒体の表面を、例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の離型性と耐熱性を兼備するコーティング樹脂で被覆したものが用いられる。ヒートロール定着方式では、上記した様なヒートロールを少なくとも一つ有する適当な圧力にて押圧された二つのロール間を被印刷媒体が通過することによりトナーの定着が行われる。
【0051】
本発明のトナーの格別顕著な技術的効果は、より高速で現像され、ヒートロール定着が行われる現像定着装置において発揮される。本発明における被記録媒体としては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば、普通紙、樹脂コート紙等の紙類、PETフィルム、OHPシート等の合成樹脂フィルムやシート等が挙げられる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下において、組成表内の数値は『質量部』を表わす。最初にトナーを調製するにあたって用いたトナー用原料、あるいはその合成例を下記に示す。
【0053】
(樹脂1)
3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体(3−ヒドロキシ吉草酸成分を22モル%含有)
(樹脂2)
ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体(エチレングリコールと1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とからなるポリエステル樹脂とポリ乳酸が質量比で25:75)
【0054】
(着色剤1)
酸化チタン(TiO2:Titanium Dioxide)粒子の表面にFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)を形成した黒色微粉末。
物理的性質
一次粒子径:0.25μm、比表面積:5.1m2/g、pH:6.6、吸油量:31g/100g
水分:0.1wt%、嵩密度:0.40g/ml、比抵抗:9440Ω・cm
磁気特性(VSM 397.9kA/m)
Hc:23.2kA/m、σs:9.8Am2/kg、σr:2.7Am2/kg
(着色剤2)
黒色着色剤;Battleship Gray No.6(Shepherd Color Company製)
(着色剤3)
平均径0.2μmであって磁化値85.0emu/gである粒状マグネタイト粒子粉末100gを0.26molのTiOSO4を含有する水溶液中に分散混合し、次いで、該混合液中にNaOHを添加して中和し、pH8において粒子表面にTiの水酸化物を沈着させた後、濾別、乾燥した。更に、N2ガス流下750℃で120分間加熱焼成した後、粉砕して黒色の「着色剤3」の粉末を得た。この「着色剤3」の粒子径は、0.25μmであった。また、X線回折により該粒子はFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成物であることを確認した。
【0055】
(帯電制御剤1)
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド15部をメタノール135部に溶解した。これに平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し「帯電制御剤1」を得た。
(帯電制御剤2)
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の40%水溶液16部に平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し「帯電制御剤2」を得た。
【0056】
(実施例1)
・樹脂1 94質量部
・着色剤1 3質量部
・帯電制御剤1 1質量部
・カルナバワックス(セラリカNODA製) 2質量部
をヘンシェルミキサーで混合し、2軸混練機で混練した。得られた混練物を粉砕、分級して体積平均粒子径7.5μmの「トナー原体A」を得た。
【0057】
・上記「トナー原体A」 100質量部
・シリカ 1質量部
(日本アエロジル製シリカ「R−812」)
をヘンシェルミキサーで混合の後、篩いかけをして、「トナーA」を得た。
【0058】
<現像剤の調整>
トナーAを4部とパウダーテック社製キャリア「フェライトキャリアF−150」96部を摩擦混合させて現像剤Aを調整した。
【0059】
以下同様に表1の配合にてトナーを製造し現像剤A(実施例1)〜現像剤I(実施例9)、及び現像剤J(比較例1)、現像剤K(比較例2)を製造した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1中、
カイガラ;カイガラムシワックス(セラリカNODA製)
550P;ポリプロピレンワックス(三洋化成製)
モンタン;モンタンワックス(クラリアントジャパン製)
S−34;ボントロンS−34(アゾ染料のクロム錯体、オリエント化学製)
K.B.111;KET BLUE 111(銅フタロシアニン、大日本インキ化学工業製)
酸化鉄粉;Fe3O4
【0062】
実施例1〜9及び比較例1、2の現像剤を用いて以下のテストを行った。
<ヒートロール定着による定着オフセットテスト>
市販の二成分現像方式の複写機を改造したテスト機にてA−4紙サイズの未定着画像サンプルを作製し、下記仕様のヒートロール定着ユニットを用いて、下記のテスト条件にて定着状態、およびオフセット現象の有無を確認した。
【0063】
定着状態は、定着画像をこすっても画像が薄くならない状態を○、やや薄くなる場合を△、定着画像がかなり薄くなる場合を×とした。オフセット現象の有無は目視にて定着画像サンプルを観察し、明確にオフセット現象が認められる場合を×、わずかに認められる場合を△、オフセット現象が認められない場合を○とした。結果を表2に示した。
【0064】
【表2】
【0065】
<印刷耐久テスト>
市販のプリンターを用いて1万枚の連続プリントによる印字品質を評価すると共に、現像剤の帯電量を測定した。連続プリント時のトナーの補給はシリカ添加後のトナーをマシンの補給トナー用ホッパーに充填することにより、連続プリント時に自動で行われるようにした。なお、帯電量はブローオフ帯電量測定機で測定した。画像濃度はマクベス濃度計RD−918で測定、地汚れは白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。なお、地汚れは印刷後の白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。その差が0.01未満の時を○、0.01〜0.03未満の時を△、0.03以上の時を×とした。
【0066】
(トナー飛散量)
10KP(1万枚)印刷後のマシン内部を観察し感光体、現像装置周辺部等に飛散トナーによる汚れがほとんどない場合を○、やや汚れが発生した場合を△、激しい汚れが発生した場合を×とした。結果を表3に示した。
【0067】
【表3】
【0068】
表中の表示は次の通り。
「帯電量」; μC/g
「地汚れ評価」○:0.01未満、△:0.01〜0.03未満,×:0.03以上
【0069】
(帯電の立ち上がり比較)
前記現像剤50gが入った100ccのポリエチレン容器を115rpmのボールミルで3分撹拌した後、現像剤を採取し、ブローオフ帯電量測定機で帯電量を測定した。さらに7分撹拌(計10分)し、同様に帯電量を測定した。試験結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
また、実施例1〜実施例9のトナーを25℃の土壌中に50日間放置したところ、ほぼ完全に分解した。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、連続印刷した際も安定な帯電挙動を示し、画像濃度の変動がない良好な画像が得られる生分解性の静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、あるいは静電印刷法に用いる静電荷像現像用トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プラスチックは膨大な量が使用されているが、その廃棄物は、景観の阻害、海洋生物への脅威、環境汚染等の深刻な地球的環境問題を引き起こしている。電子写真方式や静電記録方式のプリンターに用いられる静電荷像現像用トナー(以下、トナーと記載する)においても同様であり、トナーを廃棄処分する場合の、あるいはトナーで印刷された印刷物を廃棄する場合の環境に対する影響が問題となっている。トナー用に使用される汎用樹脂としては、ポリスチレン、スチレンアクリル、ポリエステル、エポキシ、スチレンブタジエン等の樹脂が使用され、これらの樹脂を用いたトナーを処分する場合は、焼却や埋立が行われている。
【0003】
しかしながら、これらの汎用樹脂を使用したトナーを焼却や埋立により処分する場合には問題がある。例えば、焼却する場合には、上記の汎用樹脂は、燃焼カロリーが高いため、炉を痛め易く、炉の寿命を短くしてしまう。また、埋立処分をする場合においても、上記の汎用樹脂は、化学的安定性が高いため、原形をとどめたまま半永久的に残留する事が知られており、環境への影響が懸念される。自然環境中に廃棄された場合には、その安定性のために長期にわたって土中に存在し、海洋生物、鳥類等が誤って補食する可能性が高く、生態系破壊の一因となる。これらの問題を解決するために、近年、トナーに使用する樹脂においても生分解性樹脂を使用することが盛んに検討されている。
【0004】
また、トナーにはバインダー樹脂の他に着色剤や帯電制御剤が使用されるが、これらの大半は人工の安定な化合物であるため、自然環境に流出した場合には汚染源となる可能性が高い。特に、黒色の着色剤として通常使用されているカーボンブラックは一般に安価であり、粉末の粒径が微細で着色性に優れた顔料であるが、国際癌研究機構にてグループ2B(人体に対して発癌の可能性がある)に分類されている等、安全衛生面からの問題が指摘されている。カーボンブラックに変わる黒色の着色剤としては、黒色酸化鉄(マグネタイト)が従来から使用されているが、黒色酸化鉄の粉末はFe3O4が磁性を有することに起因して凝集性があり、他のトナー原料と混合して使用する場合、均一な混合が難しい。また、150℃程度で茶色のFe2O3に変化する等、耐熱性が劣る欠点がある。
【0005】
一方、青色の着色剤として一般的に使用される銅フタロシアニンは、顔料中に重金属を含んでおり、大量に廃棄する場合に問題がある。また、銅フタロシアニンは結晶性が強く、トナー用のバインダー樹脂に対する分散性が不十分なため、長時間使用した場合、帯電量の上昇を起こして画像濃度が低下したり、帯電不良のトナー粒子が発生することにより、非画像部の地汚れや現像装置周辺の飛散トナーによる汚れが発生したりしやすいといった問題がある。
【0006】
ところで、静電荷像現像用トナーに用いられる着色剤に要求される特性としては、着色性、安全性、製造時の取り扱い性、耐熱性の他に、現像特性に影響する電気的特性がある。電気的特性は着色剤に求められる特性の中でも重要な特性のひとつである。
【0007】
環境汚染に対する対策を施したトナーとしては、これまで種々の技術が開示されている。例えば、特許第2597452号公報では、ライスワックス、カルナバワックス等の植物ワックスを使用する技術が提示されている。同公報には、植物ワックスを使用することによりトナーの定着特性を良好にし、また、トナーを製造する際の粉砕性を向上させることが出来る技術が開示され、また、植物ワックス自体が生分解性であるためトナー成分の大半が生分解性材料であることがメリットとして記載されている。また、特開平8−262796号公報においては生分解性樹脂と非水溶性食用色素を着色剤として用いたトナーが開示されている。しかしながら、上記公報に記載された技術においては、自然環境を汚染しないための着色剤として、生分解性樹脂に対して良好な分散性を示し、優れた電気的特性を有する着色剤に関しては何ら開示されていない。
【0008】
【特許文献1】特許第2597452号公報(第6頁;第24段落、実施例及び比較例)
【特許文献2】特開平8−262796号公報(第4頁;第33段落、及び第34段落、実施例及び比較例)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、電気的特性に優れ、生分解性を有し、環境汚染性の少ない静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。即ち、本発明は上記課題を解決するために、バインダー樹脂と着色剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂を含有し、前記着色剤が チタン−鉄の複合酸化物を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーを提供するものである。
【0011】
また、本発明はバインダー樹脂と着色剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂を含有し、前記着色剤が紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、呉須、及びターコイズブルーから選択される1種以上を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーを提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、「生分解性」とは、細菌、真菌などの微生物、酵素などにより分子の結合が切断されることを言い、「生分解性樹脂」とは、生分解性を有し、生分解することにより環境を汚染することなく、生態系のサイクルに組み込まれる樹脂を言う。本発明で使用する生分解性樹脂としては、ポリ酪酸類、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルと脂肪族ポリエステルの共重合物、脂肪族ポリエステルとポリアミドの共重合物、ポリ乳酸、ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体等がある。
【0013】
具体的な例としては、次のようなものが挙げられる。ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体、3−ヒドロキシ酪酸と4−ヒドロキシ酪酸の共重合体、等のポリ酪酸類。ラクチド、グリコリド、β−プロピオラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の開環重合体や、共重合体、等の脂肪族ポリエステル化合物。アジピン酸と1.4−ブタンジオ−ルよりなるポリエステル、琥珀酸と1.4−ブタンジオ−ルよりなるポリエステル、琥珀酸と1.6−ヘキサンジオ−ルよりなるポリエステル、等の脂肪族2塩基酸と脂肪族ジオ−ルよりなるポリエステルを挙げる事が出来る。
【0014】
また、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルの共重合物としては、上記した脂肪族ポリエステル化合物、または、これらを合成する際に1〜50質量%、好ましくは5〜30%の、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸やP−ヒドロキシ安息香酸、P−ヒドロキシエチル安息香酸、P−ヒドロキシフェニル酢酸等の芳香族ジカルボン酸や芳香族オキシカルボン酸を反応させた樹脂が挙げられる。
【0015】
ポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体としては、ポリ乳酸とエチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール類とコハク酸、メチルグルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸から得られる脂肪族ポリエステルの共重合体が挙げられる。乳酸系ポリエステルの製造で用いられる重合触媒としては、例えば、エステル交換触媒として知られる、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、コバルト等の金属及びその化合物、特に金属有機化合物、炭酸塩、ハロゲン化物、なかでもオクタン酸錫、塩化亜鉛、アルコキシチタン等が挙げられる。
【0016】
上記の樹脂の中でもポリ酪酸類、あるいはポリ乳酸と脂肪族ポリエステル共重合体を用いることが好ましい。
【0017】
本発明で使用する着色剤は、チタン−鉄の複合酸化物を含有する着色剤である。チタン−鉄の複合酸化物であれば公地の材料を使用することができるが、FeTiO2若しくはFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)、又はFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3の固溶体との混合組成を有する チタン−鉄の複合酸化物であることが好ましい。このような着色剤を使用したトナーは、長期間の使用あるいは多部数の印刷においても安定した帯電挙動を示し、更に、トナー飛散やカブリが無く、十分な画像濃度を有し、更に画像濃度の変動が無い印刷画像を得ることのできる静電荷像現像用トナーとなる。これらの着色剤は、黒色あるいは茶色の着色剤であり、カーボンブラックの代わりに黒色着色剤として用いた場合、有害物質を含有しないため安全衛生面でも優れたトナーとなる。
【0018】
FeTiO2で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)は、C.I.Pigment Black 12に分類される着色剤である。市販品としては、例えば、Battleship Gray No.6、Chestnut Brown No.180、Chocolate BrownNo.20、Russet Brown No.8(以上、ShepherdColor Company製)、イルガカラー10358(チバガイギー製)等がある。以上は黒色、あるいは暗色の着色剤である。本発明のトナーを黒色のトナーとして使用する場合は、特にBattleship Gray No.6、あるいはChocolate Brown No.20を用いることが好ましい。また、茶色、あるいは薄茶色のC.I.Pigment Black 12に分類される着色剤としては、Autumn Brown No.156、Golden Brown No.19(以上、Shepherd Color Company製)等がある。本発明のトナーを茶系のトナーとする場合はこれらの着色剤を使用すると良い。
【0019】
また、Fe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)を用いる場合の例としては、酸化チタン(TiO2:Titanium Dioxide)粒子の表面をFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物を含有する層で被覆した黒色微粒子がある。このような構成を採ると、黒色度の高い着色剤となる。市販品としては、ETB−100(チタン工業製)がある。
【0020】
Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成を有する着色剤は、例えば、▲1▼粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末、▲2▼マグネタイト粒子粉末とチタン化合物との混合粉末、又は▲3▼粒子表面をチタン化合物で被覆したヘマタイト粒子粉末を還元して得られる還元粉末、等を非酸化性雰囲気下700℃以上の温度で加熱焼成する方法によって得ることができる。粒子表面をチタン化合物で被覆したマグネタイト粒子粉末を原料として用いる場合(▲1▼の場合)には、磁化値が小さい粒子が得られやすく、着色剤を非磁性粒子とする目的において、好ましい方法である。
【0021】
マグネタイト粒子粉末、ヘマタイト粒子粉末としては、粒状、球状、針状等、いかなる形態の粒子でもよく、また、大きさは0.03〜1.5μm程度の粒子を使用することが好ましい。使用するチタン化合物としては、チタンの含水酸化物、水酸化物、酸化物のいずれをも使用することができるが、マグネタイト粒子粉末と混合する場合には水溶性のチタン化合物を用いるのが好ましい。チタン化合物の量は、マグネタイト粒子中のFe(II)及びFe(III)に対し、Ti換算で15.0〜50.0原子%である。この範囲であると得られる黒色顔料の磁化値が適度な値となり好ましい。
【0022】
本発明で使用する青色の着色剤としては、紺青(Fe(NH4)Fe(CN)6・nH2O、C.I.Pigment Blue 27)、コバルトブルー(CoO・Al2O3、C.I.Pigment Blue 28)、セルリアンブルー(CoO・nSnO2・mMgO:n=1.5〜3.5、m=2〜6、C.I.Pigment Blue 35)、呉須(Co3O4+SiO2+Al2O3+Fe2O3+NiO+MnO)、及びターコイズブルー(C.I.Pigment Blue 36)から選択される1種以上である。中でも、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルーを使用することが好ましく、紺青を使用することが特に好ましい。
【0023】
これら着色剤の含有量は、トナー全体に対して、1〜20質量%であることが好ましい。中でも2〜15質量%であることが更に好ましく、2〜10質量%であることが特に好ましい。これらの着色剤は1種又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0024】
本発明では上記着色剤以外に色相を調整する目的において、下記の公知の着色剤を使用する事ができるが、本発明の目的のひとつは有害物質を含有しない静電荷像現像用トナーを提供することにあるので、公知の着色剤を併用する場合は、有害物質の有無及びその含有量について十分に留意する必要がある。公知の着色剤としては、例えば、黒の着色剤として、製法により分類されるファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、或いは、C.I.Pigment Black 11の鉄酸化物系顔料、アニリンブラック、フタロシアニン系のシアニンブラックBX等があげられる。
【0025】
青系の着色剤としてはフタロシアニン系のC.I.Pigment Blue 15−3、インダンスロン系のC.I.Pigment Blue 60等、赤系の着色剤としてはキナクリドン系のC.I.Pigment Red 122、アゾ系のC.I.Pigment Red 22、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:3、C.I.PigmentRed 57:1等、黄系の着色剤としてはアゾ系のC.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 14、C.I.Pigment Yellow 17、C.I.Pigment Yellow 97、C.I.Pigment Yellow 155、イソインドリノン系のC.I.Pigment Yellow110、ベンズイミダゾロン系のC.I.Pigment Yellow 151、C.I.Pigment Yellow 154、C.I.Pigment Yellow 180等が挙げられる。
【0026】
本発明では必要に応じ公知の帯電制御剤を使用することができる。例えば正帯電制御剤としてはニグロシン系染料、変成ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、4級アンモニウム基及び/又はアミノ基を含有する樹脂等が使用でき、また、負帯電制御剤としてはトリメチルエタン系染料、サリチル酸の金属塩又は錯体、ベンジル酸の金属塩又は錯体、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ化合物の金属塩又は錯体、カリックスアレン型のフェノール系縮合物、環状ポリサッカライド、カルボキシル基及び/又はスルホニル基を含有する樹脂、等が使用できる。
【0027】
本発明では、特に、有機ベントナイトを含有する物質を帯電制御剤として用いることが好ましい。有機ベントナイトとは、有機カチオン形成性化合物とベントナイトを主成分として製造される物質であり、ベントナイトとはSiO2とAl2O3を主とし、モンモリロン石を主成分とした層状構造を有する粘度鉱物である。このような天然の層状化合物であるベントナイトは、イオン交換などによって有機分子を層間に取り込むことができる。ベントナイトの層間には、本来、ナトリウムやカリウムなどの無機の金属カチオンが存在するが、これをイオン交換することによってアルキルアンモニウムイオンなど、有機カチオンをインターカレート(包接)し、有機物と無機物が交互に積層した複合体(層間化合物)が生じる。本発明で帯電制御剤として使用する有機ベントナイトは、ベントナイト中の無機カチオンを有機カチオン形成性化合物から生じる有機カチオンで交換したものである。
【0028】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物としては、公知の化合物を使用できる。例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムフルオロフォスフェート、テトラエチルアンモニウムベンゾエート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、トリエチルメチルアンモニウムアイオダイド、等の4級アンモニウム塩がある。
【0029】
また、イソプロピルピリジニウムクロライド、ブチルピリジニウムクロライド、ヘプチルピリジニウムクロライド、デシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド、等のピリジウム塩がある。
【0030】
更に、ポリエチレンイミン等のポリアルキレンイミン、ポリ−(4−ビニルピリジン)、ポリアリルアミン、アミノアセチル化されたポリビニルアルコール、ポリ−(L)−リジン、キトサン、ポリピロール、あるいはジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリレートを含有するビニルモノマーとの共重合体、等から得られるポリマ−性アンモニウム塩がある。
【0031】
有機ベントナイトを製造するための有機カチオン形成性化合物のアニオン成分としては特に限定されるものではないが、安全性あるいは環境保護という観点からは、クロム、コバルト、銅、ニッケル、モリブデン、鉛、水銀、等の金属を含まないアニオンであることが好ましい。
【0032】
本発明で使用する有機ベントナイトを調製するための方法としては、特に限定されるものではなく、従来用いられているイオン交換操作により製造することができる。例えば、水、水と有機溶媒の混合物、あるいは有機溶媒中にベントナイトを浸漬し、これに有機カチオン形成性化合物を添加して、一定時間放置後、これを濾過洗浄し、乾燥することにより得ることができる。
【0033】
上記の有機ベントナイトを含有する帯電制御剤は、本発明で使用する樹脂中に均一に分散することができるので、少量で所望の帯電量を得ることができる。また、天然の粘土鉱物を原料としているので、土壌中に廃棄された場合も環境を汚染することがない。
【0034】
帯電制御剤の使用量としてはトナー全体に対して、0.1〜10質量部の範囲であり、この範囲であると、トナー抵抗の低下もなく十分な帯電性能が得られる。より好ましくは0.3〜5質量部であり、特に、0.5〜3質量部であることが好ましい。
【0035】
また、本発明のトナーには、これまで公知の種々の離型剤、例えばポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリアミド系ワックス、フィッシャートロプシュワックス等のポリオレフィンワックス及び/又は変性ポリオレフィンワックスを用いることができるが、本発明では、特に、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、カイガラムシワックス、モンタン系エステルワックス等の天然物に由来するワックスを使用することが好ましい。このようなワックスは本発明で使用する樹脂中における分散性が良く、また、離型性、摺動性が良好であり好ましい。これらのワックスをトナー中に添加する場合、同量のポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等ポリオレフィン系ワックスと比較して、より良好な耐ホットオフセット性、定着強度が得られる。
【0036】
離型剤は、単独で用いても組み合わせて用いても良く、トナー全体に対して0.1〜15質量部、好ましくは1〜5質量部含有させることにより良好な定着オフセット性能が得られる。0.1質量部より少ないと耐オフセット性が損なわれ易く、15質量部より多いとトナーの流動性が悪くなり易く、また、帯電部材への固着により、トナーの帯電特性に悪影響を与え易くなる。
【0037】
本発明のトナーには、トナーの流動性向上、帯電特性改良などトナーの表面改質のために種々の添加剤(外添剤と呼ぶ)を用いることができる。本発明で用いることのできる外添剤としては、例えば二酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム等の無機微粉体及びそれらをシリコーンオイル、シランカップリング剤などの疎水化処理剤で表面処理したもの、ポリスチレン、アクリル、スチレンアクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、セルロース、ポリウレタン、ベンゾグアナミン、メラミン、ナイロン、シリコン、フェノール、フッ化ビニリデン、等の樹脂微粉体等が用いられる。
【0038】
これらの中でも各種のポリオルガノシロキサンやシランカップリング剤等で表面を疎水化処理した二酸化珪素(シリカ)が特に好適に用いることができる。そのようなものとして、例えば、次のような商品名で市販されているものがある。
【0039】
【0040】
外添剤の粒子径はトナーの直径の1/3以下であることが望ましく、特に好適には1/10以下である。また、これらの外添剤は、異なる平均粒子径の2種以上を併用してもよい。外添剤の使用割合はトナー100質量部中、0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
【0041】
本発明のトナーは、その他の添加剤をトナー粒子内部に含める様にしても良い。一例として、例えば金属石鹸、ステアリン酸亜鉛等の滑剤が、研磨剤として、例えば酸化セリウム、炭化ケイ素等が使用できる。
【0042】
本発明のトナーは、特定の製造方法によらず極めて一般的な製造方法に依って得る事ができるが、例えば樹脂と着色剤と帯電制御剤とを、樹脂の融点(軟化点)以上で溶融混練した後、粉砕し、分級することにより得ることが出来る。
【0043】
具体的には例えば、上記の樹脂と着色剤を2本ロール、3本ロール、加圧ニーダー、又は2軸押し出し機等の混練手段により混合する。この際、樹脂中に、着色剤等が均一に分散すればよく、その溶融混練の条件は特に限定されるものではないが、通常80〜180゜Cで30秒〜2時間である。着色剤は樹脂中に均一に分散するようにあらかじめフラッシング処理、あるいは樹脂と高濃度で溶融混練したマスターバッチを用いても良い。
【0044】
次いで、それを冷却後、ジェットミル等の粉砕機で微粉砕し、風力分級機等により分級するという方法が挙げられる。トナーを構成する粒子の平均粒径は、特に制限されないが、通常5〜15μmとなる様に調整される。通常、この様にして得られたトナー母体に対しては、トナー母体よりも小さい粒径の微粒子(以下、外添剤と呼ぶ)が、例えばヘンシェルミキサー等の混合機を用いて混合される。
【0045】
本発明のトナーを製造する他の方法としては、特開平5−66600号公報、特開平8−62891号公報等により開示されている転相乳化法等がある。転相乳化法とは、バインダー樹脂とその他の原料等と有機溶剤からなる混合物に水性媒体(水または水を主成分とする液媒体)を添加することによりWater in Oilの不連続相を生成させ、さらに水を追加することで、Oil in Waterの不連続相に転相し、そして、更に水性媒体を追加することで水性媒体中に前記混合物が粒子(液滴)として浮遊する懸濁液を形成させ、その後、有機溶剤を除去することによりトナー粒子を製造する方法である。
【0046】
本発明のトナーは磁性キャリアと混合することにより二成分現像剤として用いることができる。この場合、磁性キャリアの表面は樹脂により被覆されたものであることが望ましい。表面を樹脂で被覆することにより現像剤の帯電が安定する。
【0047】
本発明のトナーを用いて二成分現像剤を作製するキャリアとしては、通常の二成分現像方式に用いられる鉄粉キャリア、マグネタイトキャリア、フェライトキャリアが使用できるが、中でも真比重が低く、高抵抗であり、環境安定性に優れ、球形にし易いため流動性が良好なフェライト、またはマグネタイトキャリアが好適に用いられる。キャリアの形状は球形、不定形等、特に差し支えなく使用できる。平均粒径は一般的には10〜500μmであるが、高解像度画像を印刷するためには30〜80μmが好ましい。
【0048】
また、これらのキャリアを樹脂で被覆したコーティングキャリアも好適に使用でき、被覆樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルポリビニルケトン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、スチレン/アクリル共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂あるいはその変性品、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。これらの中でも、特にシリコン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂が帯電安定性、被覆強度等に優れ、より好適に使用し得る。つまり本発明では、磁性キャリアが、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂で被覆された樹脂被覆磁性キャリアであることが好ましい。
【0049】
本発明のトナーと、磁性キャリアとの質量割合は特に制限されるものではないが、通常キャリア100質量部に対して、トナー0.5〜10質量部である。
【0050】
こうして得られた本発明の静電荷像現像用トナーは、公知慣用の方法で被記録媒体上に現像され定着されるが、定着方式としては、ヒートロール定着方式を採用するのが好ましい。ヒートロールとしては、トナーを溶融定着しうる温度に加熱できる円筒体の表面を、例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の離型性と耐熱性を兼備するコーティング樹脂で被覆したものが用いられる。ヒートロール定着方式では、上記した様なヒートロールを少なくとも一つ有する適当な圧力にて押圧された二つのロール間を被印刷媒体が通過することによりトナーの定着が行われる。
【0051】
本発明のトナーの格別顕著な技術的効果は、より高速で現像され、ヒートロール定着が行われる現像定着装置において発揮される。本発明における被記録媒体としては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば、普通紙、樹脂コート紙等の紙類、PETフィルム、OHPシート等の合成樹脂フィルムやシート等が挙げられる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下において、組成表内の数値は『質量部』を表わす。最初にトナーを調製するにあたって用いたトナー用原料、あるいはその合成例を下記に示す。
【0053】
(樹脂1)
3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体(3−ヒドロキシ吉草酸成分を22モル%含有)
(樹脂2)
ポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体(エチレングリコールと1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とからなるポリエステル樹脂とポリ乳酸が質量比で25:75)
【0054】
(着色剤1)
酸化チタン(TiO2:Titanium Dioxide)粒子の表面にFe2TiO4で表されるスピネル構造の複合酸化物(Iron Titanium brown spinel)を形成した黒色微粉末。
物理的性質
一次粒子径:0.25μm、比表面積:5.1m2/g、pH:6.6、吸油量:31g/100g
水分:0.1wt%、嵩密度:0.40g/ml、比抵抗:9440Ω・cm
磁気特性(VSM 397.9kA/m)
Hc:23.2kA/m、σs:9.8Am2/kg、σr:2.7Am2/kg
(着色剤2)
黒色着色剤;Battleship Gray No.6(Shepherd Color Company製)
(着色剤3)
平均径0.2μmであって磁化値85.0emu/gである粒状マグネタイト粒子粉末100gを0.26molのTiOSO4を含有する水溶液中に分散混合し、次いで、該混合液中にNaOHを添加して中和し、pH8において粒子表面にTiの水酸化物を沈着させた後、濾別、乾燥した。更に、N2ガス流下750℃で120分間加熱焼成した後、粉砕して黒色の「着色剤3」の粉末を得た。この「着色剤3」の粒子径は、0.25μmであった。また、X線回折により該粒子はFe2TiO5とFe2O3−FeTiO3固溶体との混合組成物であることを確認した。
【0055】
(帯電制御剤1)
ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド15部をメタノール135部に溶解した。これに平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し「帯電制御剤1」を得た。
(帯電制御剤2)
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)の40%水溶液16部に平均粒径が0.5ミクロンのベントナイト25部を加えて1時間撹拌し、濾別した。脱イオン水で繰り返し洗浄した後、60℃に保った乾燥機により減圧下で24時間乾燥し「帯電制御剤2」を得た。
【0056】
(実施例1)
・樹脂1 94質量部
・着色剤1 3質量部
・帯電制御剤1 1質量部
・カルナバワックス(セラリカNODA製) 2質量部
をヘンシェルミキサーで混合し、2軸混練機で混練した。得られた混練物を粉砕、分級して体積平均粒子径7.5μmの「トナー原体A」を得た。
【0057】
・上記「トナー原体A」 100質量部
・シリカ 1質量部
(日本アエロジル製シリカ「R−812」)
をヘンシェルミキサーで混合の後、篩いかけをして、「トナーA」を得た。
【0058】
<現像剤の調整>
トナーAを4部とパウダーテック社製キャリア「フェライトキャリアF−150」96部を摩擦混合させて現像剤Aを調整した。
【0059】
以下同様に表1の配合にてトナーを製造し現像剤A(実施例1)〜現像剤I(実施例9)、及び現像剤J(比較例1)、現像剤K(比較例2)を製造した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1中、
カイガラ;カイガラムシワックス(セラリカNODA製)
550P;ポリプロピレンワックス(三洋化成製)
モンタン;モンタンワックス(クラリアントジャパン製)
S−34;ボントロンS−34(アゾ染料のクロム錯体、オリエント化学製)
K.B.111;KET BLUE 111(銅フタロシアニン、大日本インキ化学工業製)
酸化鉄粉;Fe3O4
【0062】
実施例1〜9及び比較例1、2の現像剤を用いて以下のテストを行った。
<ヒートロール定着による定着オフセットテスト>
市販の二成分現像方式の複写機を改造したテスト機にてA−4紙サイズの未定着画像サンプルを作製し、下記仕様のヒートロール定着ユニットを用いて、下記のテスト条件にて定着状態、およびオフセット現象の有無を確認した。
【0063】
定着状態は、定着画像をこすっても画像が薄くならない状態を○、やや薄くなる場合を△、定着画像がかなり薄くなる場合を×とした。オフセット現象の有無は目視にて定着画像サンプルを観察し、明確にオフセット現象が認められる場合を×、わずかに認められる場合を△、オフセット現象が認められない場合を○とした。結果を表2に示した。
【0064】
【表2】
【0065】
<印刷耐久テスト>
市販のプリンターを用いて1万枚の連続プリントによる印字品質を評価すると共に、現像剤の帯電量を測定した。連続プリント時のトナーの補給はシリカ添加後のトナーをマシンの補給トナー用ホッパーに充填することにより、連続プリント時に自動で行われるようにした。なお、帯電量はブローオフ帯電量測定機で測定した。画像濃度はマクベス濃度計RD−918で測定、地汚れは白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。なお、地汚れは印刷後の白地部濃度からプリント前白紙濃度を差し引いて求めた。その差が0.01未満の時を○、0.01〜0.03未満の時を△、0.03以上の時を×とした。
【0066】
(トナー飛散量)
10KP(1万枚)印刷後のマシン内部を観察し感光体、現像装置周辺部等に飛散トナーによる汚れがほとんどない場合を○、やや汚れが発生した場合を△、激しい汚れが発生した場合を×とした。結果を表3に示した。
【0067】
【表3】
【0068】
表中の表示は次の通り。
「帯電量」; μC/g
「地汚れ評価」○:0.01未満、△:0.01〜0.03未満,×:0.03以上
【0069】
(帯電の立ち上がり比較)
前記現像剤50gが入った100ccのポリエチレン容器を115rpmのボールミルで3分撹拌した後、現像剤を採取し、ブローオフ帯電量測定機で帯電量を測定した。さらに7分撹拌(計10分)し、同様に帯電量を測定した。試験結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
また、実施例1〜実施例9のトナーを25℃の土壌中に50日間放置したところ、ほぼ完全に分解した。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、連続印刷した際も安定な帯電挙動を示し、画像濃度の変動がない良好な画像が得られる生分解性の静電荷像現像用トナーを得ることができる。
Claims (8)
- バインダー樹脂と着色剤を含有してなるトナーであって、前記バインダー樹脂が生分解性樹脂を含有し、前記着色剤がチタン−鉄の複合酸化物を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 前記生分解性樹脂が、ポリ酪酸類、ポリ乳酸、及びポリ乳酸−脂肪族ポリエステル共重合体樹脂から選択される1種以上の樹脂である請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記チタン−鉄の複合酸化物が、FeTiO2で表される複合酸化物である請求項1又は2のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記チタン−鉄の複合酸化物が、Fe2TiO4で表される複合酸化物である請求項1又は2のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 前記チタン−鉄の複合酸化物が、Fe2TiO5とFe2O3−FeTiO3の混合組成を有する複合酸化物である請求項1又は2のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 請求項1記載の着色剤に代えて紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、呉須、及びターコイズブルーから選択される1種以上を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
- 更に、帯電制御剤として有機ベントナイトを含有する化合物を用いる請求項1、2、3、4、5又は6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
- 更に、離型剤としてカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、カイガラムシワックス、及びモンタンワックスから選択される1種以上を含有するワックスを用いる請求項1、2、3、4、5、6又は7のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
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