JP2004176880A - トルク変動吸収ダンパ及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】カップリング部3における第二弾性体32の両側の無駄な空間をなくし、優れた性能を発揮するトルク変動吸収ダンパを提供する。
【解決手段】カップリング部3における第二弾性体32が、ハブ1又は環状質量体21に形成された外周径方向部21bとプーリ31に形成された内周径方向部31cの軸方向対向面間に加硫接着され、その内周面及び外周面が、プーリ31の被支持筒部31d及びプーリ本体31aに形成された低摩擦摺動材層7に密接されているので、第二弾性体32の内周側及び外周側に無駄なスペースが存在しない。このため、径方向サイズの小型化、環状質量体21の肉厚確保による動的吸振効果の向上あるいは第二弾性体32の肉厚確保による耐久性向上を図ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】カップリング部3における第二弾性体32が、ハブ1又は環状質量体21に形成された外周径方向部21bとプーリ31に形成された内周径方向部31cの軸方向対向面間に加硫接着され、その内周面及び外周面が、プーリ31の被支持筒部31d及びプーリ本体31aに形成された低摩擦摺動材層7に密接されているので、第二弾性体32の内周側及び外周側に無駄なスペースが存在しない。このため、径方向サイズの小型化、環状質量体21の肉厚確保による動的吸振効果の向上あるいは第二弾性体32の肉厚確保による耐久性向上を図ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等における駆動軸から他の回転機器へトルクを伝達すると共にそのトルクの変動を吸収するトルク変動吸収ダンパ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の内燃機関からの駆動力の一部は、クランクシャフトの先端に設けられたプーリから無端ベルトを介して例えばオルタネータやウォーターポンプ等の補機に与えられるが、クランクシャフトは内燃機関の各行程によるトルク変動を伴って回転されるので、前記プーリにはトルク変動を吸収して伝達トルクの平滑化を図るためのトルク変動吸収ダンパが用いられる。
【0003】
図7は、従来の技術によるトルク変動吸収ダンパの一例を、その軸心を通る平面で切断して示す断面図、図8は、その製造過程を軸心を通る平面で切断して示す断面図である。すなわち、このトルク変動吸収ダンパは、ハブ101の外周にゴム状弾性材料からなる第一弾性体102を介して環状質量体103が弾性的に連結され、環状質量体103の外周にベアリング104を介してプーリ105が同心的かつ円周方向相対変位可能に配置されると共に、このプーリ105が、前記環状質量体103に、ゴム状弾性材料からなる第二弾性体106を介して弾性的に連結された構成を備える。第二弾性体106は、環状質量体103に形成された外周径方向部103aと、プーリ105に形成されて前記外周径方向部103aと軸方向に対向する内周径方向部105aとの間に加硫接着されている。
【0004】
このトルク変動吸収ダンパは、第一弾性体102と環状質量体103で構成される動的吸振部100Aが、所定の振動数域において捩り方向へ共振することによる動的吸振効果によって、クランクシャフトの捩り振動を低減すると共に、クランクシャフトからハブ101へ入力された駆動トルクを、カップリング部100Bを構成する第二弾性体106の捩り方向剪断変形作用によってトルク変動を吸収しながら、プーリ105へ伝達するものである。なお、図示のものと近似した構成は、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第3155280号(第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図示の例のように、第二弾性体106の接着面がその軸方向両端に存在するものにおいては、図8に示されるように、第二弾性体106の加硫成形(加硫接着)に際して、その成形用金型を挿入するためのスペースを、成形空間の内周側及び外周側に設ける必要があり、したがって、金型から離型した後は、第二弾性体106の内周側及び外周側に、無駄な環状空間Si,Soが出来てしまっていた。しかも、プーリ105の外径寸法は制約されるため、環状空間Si,Soの存在によって、環状質量体103も大きくすることが困難になるといった問題があった。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、カップリング部における第二弾性体の両側の無駄な空間をなくし、優れた性能を発揮するトルク変動吸収ダンパを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るトルク変動吸収ダンパは、ハブに第一弾性体を介して環状質量体を弾性的に連結した動的吸振部と、前記ハブ又は環状質量体にベアリングを介して円周方向相対変位可能に支持したプーリを前記ハブ又は環状質量体に第二弾性体を介して弾性的に連結したカップリング部とを備え、前記第二弾性体が、前記ハブ又は環状質量体に形成された外周径方向部と前記プーリに形成された内周径方向部の軸方向対向面間に加硫接着され、前記第二弾性体の外周面と対向する部材の内周面、及び前記第二弾性体の内周面と対向する部材の外周面に、それぞれ前記第二弾性体と密接した低摩擦摺動材層が形成されたものである。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載されたトルク変動吸収ダンパを製造する方法であって、外周径方向部を有するハブ又は環状質量体と、前記外周径方向部と軸方向に対向する内周径方向部を有するプーリとを互いに同心的に組み合わせ、前記両径方向部間の環状空間の内周及び外周を画成する周面に、それぞれ円筒状の低摩擦摺動材層を形成し、前記両径方向部と前記両低摩擦摺動材層とで画成される環状空間に、未加硫のゴム状弾性材料を充填して加硫成形及び加硫接着を行うものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るトルク変動吸収ダンパの好ましい実施の形態を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図、図2は、図1におけるII方向の矢視図である。なお、この形態の説明において用いられる「正面側」とは、図1における左側、すなわち車両のフロント側のことであり、「背面側」とは、図1における右側、すなわち図示されていない内燃機関が存在する側のことである。
【0011】
図1及び図2に示されるように、この形態のトルク変動吸収ダンパは、内燃機関のクランクシャフト(不図示)の軸端に取り付けられるハブ1と、このハブ1の外周側に設けられた動的吸振部2及びカップリング部3とを備える。
【0012】
ハブ1は、内周に図示されていない内燃機関のクランクシャフトが挿通される軸孔1aが開設された円盤部11と、その外周に沿って正面側へ突出した円筒状のリム部12からなり、FCあるいはアルミなどの金属材料で製作されたものである。
【0013】
動的吸振部2は、ハブ1におけるリム部12の外周側に配置された環状質量体21と、互いに径方向に対向する環状質量体21の内周面と前記リム部12の外周面との間に圧入嵌合された環状の第一弾性体22とで構成される。すなわち動的吸振部2は、環状質量体21が、第一弾性体22を介して、ハブ1のリム部12に弾性的に連結されたものであり、この動的吸振部2の捩り方向固有振動数は、環状質量体21の円周方向慣性質量と、第一弾性体22の捩り方向剪断ばね定数によって、例えばクランクシャフトの捩れ角が最大となる所定の振動数域、言い換えればクランクシャフトの捩り方向固有振動数と合致するように同調されている。
【0014】
動的吸振部2における環状質量体21は、FCなど比重の大きい金属材料で製作されたものであって、円筒状本体部21aと、その正面側の端部から外周側へ円盤状に展開した外周径方向部21bとを有する。外周径方向部21bの外周面には、円周方向に連続したベアリング保持溝21cが、正面側が小径となる段差状に形成されている。
【0015】
動的吸振部2における第一弾性体22は、耐熱性、耐寒性及び機械的強度に優れたゴム状弾性材料によって環状(円筒状)に加硫成形され、ハブ1のリム部12と、その外周に配置した環状質量体21の対向周面間に圧入されることによって、所要の径方向締め代をもって嵌着されたものである。
【0016】
カップリング部3は、環状質量体21の外周に第一ベアリング4及び第二ベアリング5を介して円周方向相対変位可能に支持されたプーリ31と、このプーリ31を環状質量体21に弾性的に連結している第二弾性体32とからなる。
【0017】
カップリング部3におけるプーリ31は、FCあるいはアルミなどの金属材料で製作されたものであって、外周面にポリV溝31bが形成されたプーリ本体31aと、その背面側の端部から内周側へ延びる内周径方向部31cと、その内周端部から正面側へ円筒状に延在された被支持筒部31dとを有する。また、プーリ本体31aにおける正面側の端部外周面には、環状のストッパ33が固定されている。
【0018】
カップリング部3における第二弾性体32は、耐熱性、耐寒性及び機械的強度に優れたゴム状弾性材料で加硫成形されたものであって、その正面側の端部が環状質量体21の外周径方向部21bに一体的に加硫接着されており、背面側の端部が、前記外周径方向部21bと軸方向に対向したプーリ31の内周径方向部31cに一体的に加硫接着されている。すなわちカップリング部3は、プーリ31を、第二弾性体32を介して、環状質量体21に軸方向に連結した構造となっている。そして、前記第二弾性体32は、所要の径方向肉厚を有することによって、トルクを伝達するのに必要な強度が確保されると共に、環状質量体21の外周径方向部21bとプーリ31の内周径方向部31cとの連結方向(軸方向)に所要の肉厚を有することによって、動的吸振部2における第一弾性体22に比較して捩り方向ばね定数を十分に低くしてある。
【0019】
プーリ31における外周径方向部21bには、円周方向所定間隔で複数の小孔21dが開設されており、第二弾性体32を形成しているゴム状弾性材料の一部は、この小孔21d内にも存在し、孔内面に加硫接着されている。
【0020】
第一ベアリング4は、PTFE等の耐摩耗性に優れた低摩擦係数の合成樹脂材料で成形されたものであって、ハブ1におけるリム部12の外周面とプーリ31における被支持筒部31dの内周面との間に介在された単純な円筒状を呈し、前記被支持筒部31dを相対回転可能に支持するものである。
【0021】
また、第二ベアリング5も、同様にPTFE等の耐摩耗性に優れた低摩擦係数の合成樹脂材料で成形されたものであって、環状質量体21に形成されたベアリング保持溝21cと、プーリ31に嵌着されたストッパ33の内周フランジ部33aとの間に介在された断面略L字形の環状を呈する。この第二ベアリング5は、プーリ31の軸方向挙動を規制するストッパ33と、前記ベアリング保持溝21cとの軸方向対向面間に介在する部分が、スラストベアリングとして機能し、ストッパ33とベアリング保持溝21cとの径方向対向面間に介在する部分が、ストッパ33を介して環状質量体21に対するプーリ31の正面側の端部を相対回転可能に支持するものである。
【0022】
プーリ31における被支持筒部31dの外周面及び正面側の端面と、プーリ本体31aの内周面には、それぞれPTFE等の耐摩耗性に優れた低摩擦係数の合成樹脂材料からなる低摩擦摺動材層6,7がコーティングされており、この低摩擦摺動材層6,7は、第二弾性体32の内周面及び外周面に対して、非接着状態で密接されている。また、内周側の低摩擦摺動材層6のうち、プーリ31における被支持筒部31dの端面に被着された正面端部6aは、環状質量体21における外周径方向部21bの背面と摺動可能に密接されており、外周側の低摩擦摺動材層7のうち、プーリ本体31aの正面側の端部内周面に被着された正面端部7aは、前記外周径方向部21bの外周面と摺動可能に密接されている。
【0023】
このトルク変動吸収ダンパは、ハブ1の円盤部11が、図示されていない内燃機関のクランクシャフトの軸端に軸孔1aを差し込んで装着されることによって、このクランクシャフトと共に回転される。クランクシャフトのトルクは、カップリング部3によって、ハブ1から第一弾性体22、環状質量体21及び第二弾性体32を介してプーリ31へ伝達され、更に、そのプーリ本体31aのポリV溝31bに巻き掛けられたベルト(不図示)を介して、冷却ファンや、オルタネータ等の補機の回転軸に伝達される。
【0024】
内燃機関の駆動は、吸気、圧縮、爆発(膨張)及び排気の各行程を繰り返しながら行われ、ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換しているため、クランクシャフトには、回転に伴って周期的なトルク変動を生じるが、このトルク変動は、カップリング部3における第二弾性体32が低ばねで捩り方向へ剪断変形されることによって、熱エネルギに変換されるので、ベルトへの伝達トルクが平滑化される。また、動的吸振部2は、クランクシャフトの捩り振動による捩れ角が最大となる振動数域で円周方向に共振し、その共振によるトルクは入力振動のトルクと方向が逆になるため、クランクシャフトの捩れ角のピークを有効に低減することができる。
【0025】
ここで、プーリ31における被支持筒部31dにコーティングされた低摩擦摺動材層6及びプーリ本体31aの内周面にコーティングされた低摩擦摺動材層7は、第二弾性体32の内周面及び外周面に対して非接着であるため、トルク変動入力による第二弾性体32の変形動作が阻害されることはない。また、内周側の低摩擦摺動材層6の正面端部6aは、環状質量体21における外周径方向部21bの背面と摺動可能に密接されていることによって、環状質量体21との間のスラスト軸受として機能し、外周側の低摩擦摺動材層7の正面端部7aは、前記外周径方向部21bの外周面と摺動可能に密接されていることによって、第一及び第二ベアリング4,5と共にプーリ31を径方向に対して支持するベアリングとして機能する。
【0026】
また、環状質量体21とプーリ31との捩れ角が同じである場合に受ける第二弾性体32の歪は、環状質量体21とプーリ31との連結方向の肉厚、すなわち外周径方向部21bと内周径方向部31cとの間の軸方向肉厚が大きいほど小さくなるから、第二弾性体32の耐久性を確保するために、その径方向寸法を大きく取る必要がない。しかも、本形態によれば、後述する第二弾性体32の成形工程において、第二弾性体32の成形空間の内周側及び外周側に、金型を挿入するスペースが不要であるため、その分、プーリ31の径方向寸法を小さくすることができ、あるいは、プーリ31の径方向寸法が制約されていても第二弾性体32の十分な径方向肉厚を確保することができ、あるいは環状質量体21の径方向肉厚を大きくして十分な慣性質量を与え、動的吸振部2による動的吸振効果を向上させることができる。
【0027】
図3〜図6は、上述の形態によるトルク変動吸収ダンパの製造方法を、その工程順に示すものである。詳しくは、図3は、環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4の分離状態を示す断面図であり、図4は、環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4を互いに組み立てた状態を示す断面図であり、図5は、環状質量体21とプーリ31の間に第二弾性体32を加硫接着した状態を示す断面図であり、図6は、ハブ1と環状質量体21の間に第二弾性体22を圧入する工程を示す断面図である。
【0028】
すなわち、まず図3に示される分離状態から、環状質量体21とプーリ31を同心的に互いに挿入すると共に、環状質量体21の円筒状本体部21aと、プーリ31の被支持筒部31dとの間に、第一ベアリング4を挿入することによって、図4に示される組み立て状態とする。なお、予め、プーリ31には、その被支持筒部31dの外周面及び正面側の端面と、プーリ本体31aの内周面には、それぞれPTFE等の耐摩耗性に優れた低摩擦係数の合成樹脂材料からなる低摩擦摺動材層6,7がコーティングされており、また、環状質量体21の外周径方向部21bと、プーリ31の内周径方向部31cとの対向端面には、ゴム加硫接着用の接着剤が塗布されている。
【0029】
図4に示される組み立て状態では、内周側の低摩擦摺動材層6における正面端部6aは、環状質量体21における外周径方向部21bの背面と密接され、外周側の低摩擦摺動材層7の正面端部7aは、前記外周径方向部21bの外周面と摺動可能に密接される。そして、環状質量体21の外周径方向部21bに開設された各小孔21dは、この外周径方向部21bと、プーリ31のプーリ本体31a(低摩擦摺動材層7)、内周径方向部31c及び被支持筒部31d(低摩擦摺動材層6)とで画成された環状空間Sと連通している。
【0030】
次に、図4の組み立て状態とした環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4を、所定のゴム加硫成形装置にセットして、環状空間S内に、環状質量体21の外周径方向部21bに開設された小孔21dから、成形用未加硫ゴム材料を充填して加硫する。これによって、前記環状空間S内には、図5に示されるように、第二弾性体32が加硫成形される。そして、この第二弾性体32は、正面側の端部及び背面側の端部が、それぞれ環状質量体21の外周径方向部21b及びプーリ31の内周径方向部31cに加硫接着されるが、低摩擦摺動材層6,7と接触された内周面及び外周面は、この低摩擦摺動材層6,7に対しては非接着となる。
【0031】
すなわち、上記成形工程においては、プーリ31における被支持筒部31dの外周面にコーティングされた低摩擦摺動材層6が、第二弾性体32の内周面と対応する成形面として機能し、プーリ31におけるプーリ本体31aの内周面にコーティングされた低摩擦摺動材層7が、第二弾性体32の外周面と対応する成形面として機能する。このため、第二弾性体32の内周面及び外周面を成形するための金型は不要であり、その分、製造コストを引き下げることができる。
【0032】
上述の成形工程が完了したら、プーリ31におけるプーリ本体31aの正面側の端部に、ストッパ33を固定すると共に、このストッパ33と、環状質量体21におけるベアリング保持溝21cとの間に第二ベアリング5を装着する。第二ベアリング5は、図5のように、予めストッパ33の内周に保持した後で、プーリ本体31aへのストッパ33の嵌合と同時に組み込むか、あるいはストッパ33の嵌合前に、ベアリング保持溝21cに組み込むことができる。
【0033】
また、図6に示されるように、環状質量体21の内周にハブ1を同心的に配置し、このハブ1におけるリム部12と、環状質量体21の円筒状本体部21aとの間に、ゴム状弾性材料によって環状(円筒状)に加硫成形された第一弾性体22を圧入嵌合する。これによって、図1に示される形態のトルク変動吸収ダンパが得られる。
【0034】
なお、図示の形態においては、カップリング部3が、動的吸振部2と直列に連結されたもの、すなわちプーリ31の内周径方向部31cが、環状質量体21の外周径方向部21bに第二弾性体32を介して連結されたものについて、本発明を適用したものであるが、動的吸振部2とカップリング部3が、ハブ1に対して並列に連結されたもの、すなわちプーリ31の内周径方向部31cが、ハブ1に:形成した外周径方向部に第二弾性体を介して連結されたものについても、同様に本発明を適用することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明に係るトルク変動吸収ダンパによれば、カップリング部における第二弾性体が、ハブ又は環状質量体に形成された外周径方向部とプーリに形成された内周径方向部の軸方向対向面間に加硫接着され、その内周面及び外周面が低摩擦摺動材層に密接され、無駄なスペースが存在しないので、径方向サイズの小型化、環状質量体の質量確保による動的吸振効果の向上あるいは第二弾性体の肉厚確保による耐久性向上を図ることができる。
【0036】
請求項2の発明に係るトルク変動吸収ダンパの製造方法によれば、請求項1の発明に係るトルク変動吸収ダンパを製造することができ、第二弾性体を成形するための金型が不要であるため、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトルク変動吸収ダンパの好ましい実施の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】図1におけるII方向の矢視図である。
【図3】図1に示されるトルク変動吸収ダンパの製造において、環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4の分離状態を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図4】図1に示されるトルク変動吸収ダンパの製造において、環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4を互いに組み立てた状態を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図5】図1に示されるトルク変動吸収ダンパの製造において、環状質量体21とプーリ31の間に第二弾性体32を加硫接着した状態を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図6】ハブ1と環状質量体21の間に第二弾性体22を圧入する工程を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図7】従来の技術によるトルク変動吸収ダンパの一例を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図8】図7のトルク変動吸収ダンパの製造過程を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【符号の説明】
1 ハブ
1a 軸孔
11 円盤部
12 リム部
2 動的吸振部
21 環状質量体
21a 円筒状本体部
21b 外周径方向部
21c ベアリング保持溝
21d 小孔
22 第一弾性体
3 カップリング部
31 プーリ
31a プーリ本体
31b ポリV溝
31c 内周径方向部
31d 被支持筒部
32 第二弾性体
33 ストッパ
4 第一ベアリング
5 第二ベアリング
6,7 低摩擦摺動材層
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関等における駆動軸から他の回転機器へトルクを伝達すると共にそのトルクの変動を吸収するトルク変動吸収ダンパ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の内燃機関からの駆動力の一部は、クランクシャフトの先端に設けられたプーリから無端ベルトを介して例えばオルタネータやウォーターポンプ等の補機に与えられるが、クランクシャフトは内燃機関の各行程によるトルク変動を伴って回転されるので、前記プーリにはトルク変動を吸収して伝達トルクの平滑化を図るためのトルク変動吸収ダンパが用いられる。
【0003】
図7は、従来の技術によるトルク変動吸収ダンパの一例を、その軸心を通る平面で切断して示す断面図、図8は、その製造過程を軸心を通る平面で切断して示す断面図である。すなわち、このトルク変動吸収ダンパは、ハブ101の外周にゴム状弾性材料からなる第一弾性体102を介して環状質量体103が弾性的に連結され、環状質量体103の外周にベアリング104を介してプーリ105が同心的かつ円周方向相対変位可能に配置されると共に、このプーリ105が、前記環状質量体103に、ゴム状弾性材料からなる第二弾性体106を介して弾性的に連結された構成を備える。第二弾性体106は、環状質量体103に形成された外周径方向部103aと、プーリ105に形成されて前記外周径方向部103aと軸方向に対向する内周径方向部105aとの間に加硫接着されている。
【0004】
このトルク変動吸収ダンパは、第一弾性体102と環状質量体103で構成される動的吸振部100Aが、所定の振動数域において捩り方向へ共振することによる動的吸振効果によって、クランクシャフトの捩り振動を低減すると共に、クランクシャフトからハブ101へ入力された駆動トルクを、カップリング部100Bを構成する第二弾性体106の捩り方向剪断変形作用によってトルク変動を吸収しながら、プーリ105へ伝達するものである。なお、図示のものと近似した構成は、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】
特許第3155280号(第1図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図示の例のように、第二弾性体106の接着面がその軸方向両端に存在するものにおいては、図8に示されるように、第二弾性体106の加硫成形(加硫接着)に際して、その成形用金型を挿入するためのスペースを、成形空間の内周側及び外周側に設ける必要があり、したがって、金型から離型した後は、第二弾性体106の内周側及び外周側に、無駄な環状空間Si,Soが出来てしまっていた。しかも、プーリ105の外径寸法は制約されるため、環状空間Si,Soの存在によって、環状質量体103も大きくすることが困難になるといった問題があった。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、カップリング部における第二弾性体の両側の無駄な空間をなくし、優れた性能を発揮するトルク変動吸収ダンパを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るトルク変動吸収ダンパは、ハブに第一弾性体を介して環状質量体を弾性的に連結した動的吸振部と、前記ハブ又は環状質量体にベアリングを介して円周方向相対変位可能に支持したプーリを前記ハブ又は環状質量体に第二弾性体を介して弾性的に連結したカップリング部とを備え、前記第二弾性体が、前記ハブ又は環状質量体に形成された外周径方向部と前記プーリに形成された内周径方向部の軸方向対向面間に加硫接着され、前記第二弾性体の外周面と対向する部材の内周面、及び前記第二弾性体の内周面と対向する部材の外周面に、それぞれ前記第二弾性体と密接した低摩擦摺動材層が形成されたものである。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載されたトルク変動吸収ダンパを製造する方法であって、外周径方向部を有するハブ又は環状質量体と、前記外周径方向部と軸方向に対向する内周径方向部を有するプーリとを互いに同心的に組み合わせ、前記両径方向部間の環状空間の内周及び外周を画成する周面に、それぞれ円筒状の低摩擦摺動材層を形成し、前記両径方向部と前記両低摩擦摺動材層とで画成される環状空間に、未加硫のゴム状弾性材料を充填して加硫成形及び加硫接着を行うものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るトルク変動吸収ダンパの好ましい実施の形態を、その軸心Oを通る平面で切断して示す断面図、図2は、図1におけるII方向の矢視図である。なお、この形態の説明において用いられる「正面側」とは、図1における左側、すなわち車両のフロント側のことであり、「背面側」とは、図1における右側、すなわち図示されていない内燃機関が存在する側のことである。
【0011】
図1及び図2に示されるように、この形態のトルク変動吸収ダンパは、内燃機関のクランクシャフト(不図示)の軸端に取り付けられるハブ1と、このハブ1の外周側に設けられた動的吸振部2及びカップリング部3とを備える。
【0012】
ハブ1は、内周に図示されていない内燃機関のクランクシャフトが挿通される軸孔1aが開設された円盤部11と、その外周に沿って正面側へ突出した円筒状のリム部12からなり、FCあるいはアルミなどの金属材料で製作されたものである。
【0013】
動的吸振部2は、ハブ1におけるリム部12の外周側に配置された環状質量体21と、互いに径方向に対向する環状質量体21の内周面と前記リム部12の外周面との間に圧入嵌合された環状の第一弾性体22とで構成される。すなわち動的吸振部2は、環状質量体21が、第一弾性体22を介して、ハブ1のリム部12に弾性的に連結されたものであり、この動的吸振部2の捩り方向固有振動数は、環状質量体21の円周方向慣性質量と、第一弾性体22の捩り方向剪断ばね定数によって、例えばクランクシャフトの捩れ角が最大となる所定の振動数域、言い換えればクランクシャフトの捩り方向固有振動数と合致するように同調されている。
【0014】
動的吸振部2における環状質量体21は、FCなど比重の大きい金属材料で製作されたものであって、円筒状本体部21aと、その正面側の端部から外周側へ円盤状に展開した外周径方向部21bとを有する。外周径方向部21bの外周面には、円周方向に連続したベアリング保持溝21cが、正面側が小径となる段差状に形成されている。
【0015】
動的吸振部2における第一弾性体22は、耐熱性、耐寒性及び機械的強度に優れたゴム状弾性材料によって環状(円筒状)に加硫成形され、ハブ1のリム部12と、その外周に配置した環状質量体21の対向周面間に圧入されることによって、所要の径方向締め代をもって嵌着されたものである。
【0016】
カップリング部3は、環状質量体21の外周に第一ベアリング4及び第二ベアリング5を介して円周方向相対変位可能に支持されたプーリ31と、このプーリ31を環状質量体21に弾性的に連結している第二弾性体32とからなる。
【0017】
カップリング部3におけるプーリ31は、FCあるいはアルミなどの金属材料で製作されたものであって、外周面にポリV溝31bが形成されたプーリ本体31aと、その背面側の端部から内周側へ延びる内周径方向部31cと、その内周端部から正面側へ円筒状に延在された被支持筒部31dとを有する。また、プーリ本体31aにおける正面側の端部外周面には、環状のストッパ33が固定されている。
【0018】
カップリング部3における第二弾性体32は、耐熱性、耐寒性及び機械的強度に優れたゴム状弾性材料で加硫成形されたものであって、その正面側の端部が環状質量体21の外周径方向部21bに一体的に加硫接着されており、背面側の端部が、前記外周径方向部21bと軸方向に対向したプーリ31の内周径方向部31cに一体的に加硫接着されている。すなわちカップリング部3は、プーリ31を、第二弾性体32を介して、環状質量体21に軸方向に連結した構造となっている。そして、前記第二弾性体32は、所要の径方向肉厚を有することによって、トルクを伝達するのに必要な強度が確保されると共に、環状質量体21の外周径方向部21bとプーリ31の内周径方向部31cとの連結方向(軸方向)に所要の肉厚を有することによって、動的吸振部2における第一弾性体22に比較して捩り方向ばね定数を十分に低くしてある。
【0019】
プーリ31における外周径方向部21bには、円周方向所定間隔で複数の小孔21dが開設されており、第二弾性体32を形成しているゴム状弾性材料の一部は、この小孔21d内にも存在し、孔内面に加硫接着されている。
【0020】
第一ベアリング4は、PTFE等の耐摩耗性に優れた低摩擦係数の合成樹脂材料で成形されたものであって、ハブ1におけるリム部12の外周面とプーリ31における被支持筒部31dの内周面との間に介在された単純な円筒状を呈し、前記被支持筒部31dを相対回転可能に支持するものである。
【0021】
また、第二ベアリング5も、同様にPTFE等の耐摩耗性に優れた低摩擦係数の合成樹脂材料で成形されたものであって、環状質量体21に形成されたベアリング保持溝21cと、プーリ31に嵌着されたストッパ33の内周フランジ部33aとの間に介在された断面略L字形の環状を呈する。この第二ベアリング5は、プーリ31の軸方向挙動を規制するストッパ33と、前記ベアリング保持溝21cとの軸方向対向面間に介在する部分が、スラストベアリングとして機能し、ストッパ33とベアリング保持溝21cとの径方向対向面間に介在する部分が、ストッパ33を介して環状質量体21に対するプーリ31の正面側の端部を相対回転可能に支持するものである。
【0022】
プーリ31における被支持筒部31dの外周面及び正面側の端面と、プーリ本体31aの内周面には、それぞれPTFE等の耐摩耗性に優れた低摩擦係数の合成樹脂材料からなる低摩擦摺動材層6,7がコーティングされており、この低摩擦摺動材層6,7は、第二弾性体32の内周面及び外周面に対して、非接着状態で密接されている。また、内周側の低摩擦摺動材層6のうち、プーリ31における被支持筒部31dの端面に被着された正面端部6aは、環状質量体21における外周径方向部21bの背面と摺動可能に密接されており、外周側の低摩擦摺動材層7のうち、プーリ本体31aの正面側の端部内周面に被着された正面端部7aは、前記外周径方向部21bの外周面と摺動可能に密接されている。
【0023】
このトルク変動吸収ダンパは、ハブ1の円盤部11が、図示されていない内燃機関のクランクシャフトの軸端に軸孔1aを差し込んで装着されることによって、このクランクシャフトと共に回転される。クランクシャフトのトルクは、カップリング部3によって、ハブ1から第一弾性体22、環状質量体21及び第二弾性体32を介してプーリ31へ伝達され、更に、そのプーリ本体31aのポリV溝31bに巻き掛けられたベルト(不図示)を介して、冷却ファンや、オルタネータ等の補機の回転軸に伝達される。
【0024】
内燃機関の駆動は、吸気、圧縮、爆発(膨張)及び排気の各行程を繰り返しながら行われ、ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換しているため、クランクシャフトには、回転に伴って周期的なトルク変動を生じるが、このトルク変動は、カップリング部3における第二弾性体32が低ばねで捩り方向へ剪断変形されることによって、熱エネルギに変換されるので、ベルトへの伝達トルクが平滑化される。また、動的吸振部2は、クランクシャフトの捩り振動による捩れ角が最大となる振動数域で円周方向に共振し、その共振によるトルクは入力振動のトルクと方向が逆になるため、クランクシャフトの捩れ角のピークを有効に低減することができる。
【0025】
ここで、プーリ31における被支持筒部31dにコーティングされた低摩擦摺動材層6及びプーリ本体31aの内周面にコーティングされた低摩擦摺動材層7は、第二弾性体32の内周面及び外周面に対して非接着であるため、トルク変動入力による第二弾性体32の変形動作が阻害されることはない。また、内周側の低摩擦摺動材層6の正面端部6aは、環状質量体21における外周径方向部21bの背面と摺動可能に密接されていることによって、環状質量体21との間のスラスト軸受として機能し、外周側の低摩擦摺動材層7の正面端部7aは、前記外周径方向部21bの外周面と摺動可能に密接されていることによって、第一及び第二ベアリング4,5と共にプーリ31を径方向に対して支持するベアリングとして機能する。
【0026】
また、環状質量体21とプーリ31との捩れ角が同じである場合に受ける第二弾性体32の歪は、環状質量体21とプーリ31との連結方向の肉厚、すなわち外周径方向部21bと内周径方向部31cとの間の軸方向肉厚が大きいほど小さくなるから、第二弾性体32の耐久性を確保するために、その径方向寸法を大きく取る必要がない。しかも、本形態によれば、後述する第二弾性体32の成形工程において、第二弾性体32の成形空間の内周側及び外周側に、金型を挿入するスペースが不要であるため、その分、プーリ31の径方向寸法を小さくすることができ、あるいは、プーリ31の径方向寸法が制約されていても第二弾性体32の十分な径方向肉厚を確保することができ、あるいは環状質量体21の径方向肉厚を大きくして十分な慣性質量を与え、動的吸振部2による動的吸振効果を向上させることができる。
【0027】
図3〜図6は、上述の形態によるトルク変動吸収ダンパの製造方法を、その工程順に示すものである。詳しくは、図3は、環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4の分離状態を示す断面図であり、図4は、環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4を互いに組み立てた状態を示す断面図であり、図5は、環状質量体21とプーリ31の間に第二弾性体32を加硫接着した状態を示す断面図であり、図6は、ハブ1と環状質量体21の間に第二弾性体22を圧入する工程を示す断面図である。
【0028】
すなわち、まず図3に示される分離状態から、環状質量体21とプーリ31を同心的に互いに挿入すると共に、環状質量体21の円筒状本体部21aと、プーリ31の被支持筒部31dとの間に、第一ベアリング4を挿入することによって、図4に示される組み立て状態とする。なお、予め、プーリ31には、その被支持筒部31dの外周面及び正面側の端面と、プーリ本体31aの内周面には、それぞれPTFE等の耐摩耗性に優れた低摩擦係数の合成樹脂材料からなる低摩擦摺動材層6,7がコーティングされており、また、環状質量体21の外周径方向部21bと、プーリ31の内周径方向部31cとの対向端面には、ゴム加硫接着用の接着剤が塗布されている。
【0029】
図4に示される組み立て状態では、内周側の低摩擦摺動材層6における正面端部6aは、環状質量体21における外周径方向部21bの背面と密接され、外周側の低摩擦摺動材層7の正面端部7aは、前記外周径方向部21bの外周面と摺動可能に密接される。そして、環状質量体21の外周径方向部21bに開設された各小孔21dは、この外周径方向部21bと、プーリ31のプーリ本体31a(低摩擦摺動材層7)、内周径方向部31c及び被支持筒部31d(低摩擦摺動材層6)とで画成された環状空間Sと連通している。
【0030】
次に、図4の組み立て状態とした環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4を、所定のゴム加硫成形装置にセットして、環状空間S内に、環状質量体21の外周径方向部21bに開設された小孔21dから、成形用未加硫ゴム材料を充填して加硫する。これによって、前記環状空間S内には、図5に示されるように、第二弾性体32が加硫成形される。そして、この第二弾性体32は、正面側の端部及び背面側の端部が、それぞれ環状質量体21の外周径方向部21b及びプーリ31の内周径方向部31cに加硫接着されるが、低摩擦摺動材層6,7と接触された内周面及び外周面は、この低摩擦摺動材層6,7に対しては非接着となる。
【0031】
すなわち、上記成形工程においては、プーリ31における被支持筒部31dの外周面にコーティングされた低摩擦摺動材層6が、第二弾性体32の内周面と対応する成形面として機能し、プーリ31におけるプーリ本体31aの内周面にコーティングされた低摩擦摺動材層7が、第二弾性体32の外周面と対応する成形面として機能する。このため、第二弾性体32の内周面及び外周面を成形するための金型は不要であり、その分、製造コストを引き下げることができる。
【0032】
上述の成形工程が完了したら、プーリ31におけるプーリ本体31aの正面側の端部に、ストッパ33を固定すると共に、このストッパ33と、環状質量体21におけるベアリング保持溝21cとの間に第二ベアリング5を装着する。第二ベアリング5は、図5のように、予めストッパ33の内周に保持した後で、プーリ本体31aへのストッパ33の嵌合と同時に組み込むか、あるいはストッパ33の嵌合前に、ベアリング保持溝21cに組み込むことができる。
【0033】
また、図6に示されるように、環状質量体21の内周にハブ1を同心的に配置し、このハブ1におけるリム部12と、環状質量体21の円筒状本体部21aとの間に、ゴム状弾性材料によって環状(円筒状)に加硫成形された第一弾性体22を圧入嵌合する。これによって、図1に示される形態のトルク変動吸収ダンパが得られる。
【0034】
なお、図示の形態においては、カップリング部3が、動的吸振部2と直列に連結されたもの、すなわちプーリ31の内周径方向部31cが、環状質量体21の外周径方向部21bに第二弾性体32を介して連結されたものについて、本発明を適用したものであるが、動的吸振部2とカップリング部3が、ハブ1に対して並列に連結されたもの、すなわちプーリ31の内周径方向部31cが、ハブ1に:形成した外周径方向部に第二弾性体を介して連結されたものについても、同様に本発明を適用することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明に係るトルク変動吸収ダンパによれば、カップリング部における第二弾性体が、ハブ又は環状質量体に形成された外周径方向部とプーリに形成された内周径方向部の軸方向対向面間に加硫接着され、その内周面及び外周面が低摩擦摺動材層に密接され、無駄なスペースが存在しないので、径方向サイズの小型化、環状質量体の質量確保による動的吸振効果の向上あるいは第二弾性体の肉厚確保による耐久性向上を図ることができる。
【0036】
請求項2の発明に係るトルク変動吸収ダンパの製造方法によれば、請求項1の発明に係るトルク変動吸収ダンパを製造することができ、第二弾性体を成形するための金型が不要であるため、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るトルク変動吸収ダンパの好ましい実施の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図2】図1におけるII方向の矢視図である。
【図3】図1に示されるトルク変動吸収ダンパの製造において、環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4の分離状態を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図4】図1に示されるトルク変動吸収ダンパの製造において、環状質量体21、プーリ31及び第一ベアリング4を互いに組み立てた状態を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図5】図1に示されるトルク変動吸収ダンパの製造において、環状質量体21とプーリ31の間に第二弾性体32を加硫接着した状態を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図6】ハブ1と環状質量体21の間に第二弾性体22を圧入する工程を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図7】従来の技術によるトルク変動吸収ダンパの一例を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図8】図7のトルク変動吸収ダンパの製造過程を、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【符号の説明】
1 ハブ
1a 軸孔
11 円盤部
12 リム部
2 動的吸振部
21 環状質量体
21a 円筒状本体部
21b 外周径方向部
21c ベアリング保持溝
21d 小孔
22 第一弾性体
3 カップリング部
31 プーリ
31a プーリ本体
31b ポリV溝
31c 内周径方向部
31d 被支持筒部
32 第二弾性体
33 ストッパ
4 第一ベアリング
5 第二ベアリング
6,7 低摩擦摺動材層
Claims (2)
- ハブ(1)に第一弾性体(22)を介して環状質量体(21)を弾性的に連結した動的吸振部(2)と、前記ハブ(1)又は環状質量体(21)にベアリング(4,5)を介して円周方向相対変位可能に支持したプーリ(31)を前記ハブ(1)又は環状質量体(21)に第二弾性体(32)を介して弾性的に連結したカップリング部(3)とを備え、前記第二弾性体(32)が、前記ハブ(1)又は環状質量体(21)に形成された外周径方向部(21b)と前記プーリ(31)に形成された内周径方向部(31c)の軸方向対向面間に加硫接着され、前記第二弾性体(32)の外周面と対向する部材の内周面、及び前記第二弾性体(32)の内周面と対向する部材の外周面に、それぞれ前記第二弾性体(32)と密接した低摩擦摺動材層(6,7)が形成されたことを特徴とするトルク変動吸収ダンパ。
- 外周径方向部(21b)を有するハブ(1)又は環状質量体(21)と、前記外周径方向部(21b)と軸方向に対向する内周径方向部(31c)を有するプーリ(31)とを互いに同心的に組み合わせ、前記両径方向部(21b,31c)間の環状空間の内周及び外周を画成する周面に、それぞれ低摩擦摺動材層(6,7)を形成し、前記両径方向部(21b,31c)と前記両低摩擦摺動材層(6,7)とで画成される環状空間(S)に、未加硫のゴム状弾性材料を充填して加硫成形及び加硫接着を行うことを特徴とするトルク変動吸収ダンパの製造方法。
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