JP2004176107A - 端子およびそれを有する部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の端子は、導電性基体上にルテニウム層が形成されており、該ルテニウム層上にAu、Ag、Pd、Rhからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金からなる表面金属層が形成されていることを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気、電子製品や半導体製品あるいは自動車部品等において広く接続(たとえばリレー接点、スライドスイッチ、はんだ付端子等)を目的として用いられている端子に関するものであり、より詳細には耐熱性、耐食性および高硬度等が各要求される非挿抜性の用途に特に適する端子およびそれを有する部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電気、電子製品や半導体製品あるいは自動車部品等の用途において各種の端子が用いられてきた。そして、特に接触信頼度が要求される用途においては、そのような端子として導電性基体上にNi層を形成し、その上に薄く金層を形成した構造の端子が用いられることが多かった。しかし、この構造においてはNi層および金層の両者の硬度が比較的低いことから、金層が容易に削れたり剥離するという問題があり、特に高温使用時において問題となっていた。この問題は、単に外観が害されるというだけでなく、金層が剥離しNi層が表面に現れると該Ni層は容易に酸化されてしまい接触電気抵抗(以下、単に接触抵抗と記す)が非常に高くなるという致命的な問題が生じるものであった。この問題を解決するために金層を厚く形成させることが考えられるが、金層を厚くするとコストが高くなるだけでなく金層自体が一層削れやすくなり却って融着性を帯びてしまうという新たな問題が発生するため、この方法により問題を解決することはできなかった。
【0003】
一方さらに、導電性基体上にNi層と金層を形成した上記構造の端子においては、該Ni層において容易にピンホールが発生し、このピンホールにおいて導電性基体と金層が直接接触することから両者のイオン化傾向の差に基づいて電気腐食が生じるという問題もあった。この問題は、特に導電性基体が銅または銅合金の場合に顕著であった。
【0004】
なお、以上本発明についての従来の技術を、出願人の知得した一般的技術情報に基づいて説明したが、出願人の記憶する範囲において、出願前までに先行技術文献情報として開示すべき情報を出願人は有していない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであってその目的とするところは、表面層が剥離することがなく接触抵抗に優れるとともに耐熱性、耐食性、高硬度等を兼ね備え、特に非挿抜性の用途に適する端子およびそれを有する部品を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねたところ、金属層の優れた接触抵抗を保持したまま耐熱性、耐食性を向上させるためには、表面金属層だけではなくその下層として存在する層の作用が重要であるとの知見を得、かかる知見に基づきさらに研究を続けることによりついに本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の端子は、導電性基体上にルテニウム層が形成されており、該ルテニウム層上にAu、Ag、Pd、Rhからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金からなる表面金属層が形成されていることを特徴としている。このようにルテニウム層を表面金属層の下層に位置させることにより、該ルテニウム層と該表面金属層とが相互作用することによって、表面金属層が摩耗したり剥離したりすることを有効に防止するとともに、表面金属層が有する優れた接触抵抗を保持したままピンホールの発生を有効に防止し、以って高硬度、耐熱性、耐食性等の品質を飛躍的に向上させることに成功したものである。
【0008】
また、本発明の端子は、導電性基体とルテニウム層との間に、Ni、Cu、Au、Agからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金からなる下地層が少なくとも一層形成されていることを特徴としている。該ルテニウム層はそれ自体高い硬度を有する反面、応力も大きいものとなるため導電性基体の種類によっては該ルテニウム層自体が剥離することがあり、このためこの剥離現象を緩和するために特定の下地層を形成させたものである。
【0009】
一方、本発明においては、上記下地層、ルテニウム層および表面金属層が、それぞれバレルめっき装置、引掛けめっき装置または連続めっき装置のいずれかを用いてめっき法により形成されることを特徴としている。これにより、これらの層を極めて効率良く形成させることが可能となる。
【0010】
また、本発明の部品は、上記のいずれかに記載の端子を有するものとしている。これにより、接触抵抗、耐熱性、耐食性に優れた極めて信頼性の高い部品とすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
<導電性基体>
本発明に用いられる導電性基体は、電気、電子製品や半導体製品あるいは自動車部品等の用途に用いられる従来公知の導電性基体であればいずれのものであっても用いることができる。たとえば、銅(Cu)、リン青銅、黄銅、ベリリウム銅、チタン銅、洋白(Cu、Ni、Zn)等の銅合金系素材、鉄(Fe)、Fe−Ni合金、ステンレス鋼等の鉄合金系素材、その他ニッケル系素材や各種基板上の銅パターン等を挙げることができる。なお、導電性基体の形状は、たとえばテープ状のものなど平面的なものに限らず、プレス成型品のような立体的なものも含まれ、その他いずれのような形状のものであっても差し支えない。
【0012】
<ルテニウム層>
本発明のルテニウム層は、上記導電性基体上に形成されるものであって、金属ルテニウム(Ru)により構成されるものである。通常、ルテニウム層は0.05〜1.5μm、好ましくは0.2〜1.0μmの厚さとして、金属ルテニウムを導電性基体上にめっきすることにより形成される。0.05μm未満の場合は、後述の表面金属層との相互作用を十分に発揮することができず、1.5μmを超えるとルテニウム層自体の応力が大きくなり過ぎて導電性基体から剥離したりルテニウム層自体に亀裂が生じたりすることがあるため好ましくない。なお、該ルテニウム層は、高い硬度を有するとともに耐酸化性にも優れており、しかも仮に酸化されたとしてもその酸化物は10−6S/mという高い導電性を示す(因みにNiの酸化物の導電性は1011S/mである)ため、これらが相乗的に作用することにより後述の表面金属層との間で高度に相互作用するものと考えられる。
【0013】
<表面金属層>
本発明の表面金属層は、端子に導電性を付与する中心的な作用を示すものであって、上記ルテニウム層上に形成されるものであり、Au、Ag、Pd、Rhからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金により構成されるものである。ここでいう合金とは、上記の金属を少なくとも一種含む限りその組成は特に限定されるものではない。たとえば、上記の金属の少なくとも一種を原子数にして50%以上含むものを挙げることができる。通常、該表面金属層は0.001〜2μm、好ましくは0.1〜0.5μmの厚さとして前記金属または合金をルテニウム層上にめっきすることにより形成される。0.001μm未満の場合は、優れた接触抵抗が得られなくなる場合がある一方、2μmを超えるとコスト面で高価となるばかりかルテニウム層との相互作用が示されなくなるため好ましくない。
【0014】
<下地層>
本発明の下地層は、導電性基体の種類により上記ルテニウム層が剥離し易くなる場合に必要に応じ形成されるものである。通常、該ルテニウム層は導電性基体がニッケル系の素材で構成されている場合には自己の応力により剥離することはほとんどないが、導電性基体がニッケル系素材以外の素材で構成されている場合には容易に剥離することがあり、このような場合に該下地層を形成させる必要がある。すなわち、該下地層は、ルテニウム層の剥離を防止する作用を有するものである。したがって、該下地層は、導電性基体とルテニウム層の間に(すなわち、ルテニウム層の下層として)形成され、Ni、Cu、Au、Agからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金からなる層であって、少なくとも一層(すなわち、単層もしくは複数層として)形成される。ここでいう合金とは、上記の金属を少なくとも一種含む限りその組成は特に限定されるものではない。たとえば、上記の金属の少なくとも一種を原子数にして50%以上含むものを挙げることができる。また、このような下地層を複数層として形成する場合は、ルテニウム層の厚さや導電性基体の種類を考慮してそれぞれの層を構成する金属または合金の種類や厚さを決定することが好ましい。たとえば、導電性基体が銅合金系素材の場合には、導電性基体上に厚さ0.05〜5μmのNiからなる第1の下地層を形成し、その上に厚さ0.05〜1μmのAuまたはAgからなる第2の下地層を形成することが好ましい。また、導電性基体が鉄系素材や黄銅の場合には、導電性基体上に厚さ0.05〜5μmのCuからなる第1の下地層を形成し、その上に厚さ0.05〜2μmのNiからなる第2の下地層を形成することが好ましい。このように該下地層は、通常単層もしくは複数層としてその厚さが0.05〜7μm、好ましくは0.8〜4.0μmとなるようにそれぞれの金属または合金を導電性基体上にめっきすることにより形成することができる。該下地層の厚さが0.05μm未満の場合は、ルテニウム層の剥離を防止することができなくなる場合がある一方、7μmを超えるとコストアップにつながり経済的に不利となるばかりか、経時的に厚みが変化し寸法安定性に欠けるとともに導電性基体自体のバネ性が喪失するため好ましくない。
【0015】
<端子>
本発明の端子は、導電性基体上に上記の各層を形成させた構造を有している。かかる構造を有する限り、端子自体の形状や構成は特に限定されることはない。
【0016】
<部品>
本発明の部品は、上記端子を有するものである。たとえば、リレー、スライドスイッチ、抵抗、コンデンサ、コイル、基板等として用いられる電気部品、電子部品、半導体部品、自動車部品等を挙げることができるが、これらのみに限られるものではなく、またその形状の別を問うものでもない。
【0017】
<製造装置>
本発明の上記下地層、ルテニウム層および表面金属層は、上述の通り、通常めっき法により形成されるが、特にそのめっき装置としてはバレルめっき装置、引掛けめっき装置または連続めっき装置のいずれかを用いることにより実行することが好ましい。これらの装置を用いることにより上記端子を極めて効率良く製造することができる。ここで、バレルめっき装置とは、端子を一個づつ個別にめっきする装置であり、連続めっき装置とは、一度に複数個の端子を連続的にメッキする装置であり、また引掛けめっき装置とは、前二者の中間に位置するものであり中規模の製造効率を持った装置である。これらの装置は、めっき業界において良く知られた装置であり、構造自体も公知のものである限るいずれのものも使用することができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
<実施例1>
本実施例は、導電性基体上にルテニウム層および表面金属層をそれぞれこの順で形成させた端子に関するものである。以下、図1を参照して説明する。
【0020】
まず、導電性基体101として厚さ0.1mmのテープ状のニッケルをリレー端子の形状にプレス加工し、連続状のリレー端子状としたものを70mmの長さに切断した。該切断後、55g/lの活性剤(商品名:エスクリーン30、奥野製薬工業(株)社製)を用いて53℃で3分間洗浄することにより脱脂処理を行なった。その後数回の水洗浄を行なった後さらに、120g/lの活性剤(商品名:NCラストール、奥野製薬工業(株)社製)を用いて50℃で2分間、電流密度6.0A/dm2の条件下で洗浄することにより電解脱脂処理を行なった。続いて、数回の水洗浄を行なった後6%の硫酸を用いて30℃で1分間処理することにより酸活性処理を行ない、その後数回の水洗浄を行なった。
【0021】
次に、上記の処理を経た導電性基体101に対して、ルテニウム濃度8.5g/lのルテニウムめっき液(商品名:Ru−33、エヌ・イーケムキャット(株)社製)を用いて62℃、pH2.1、電流密度1.6A/dm2の条件下で5分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより、厚さ0.42μmの金属Ruからなるルテニウム層102を形成した。
【0022】
その後数回の水洗浄を行なった後、さらに10%のアンモニア水でリンス洗浄(50℃、5分間)した後、9%の塩酸を用いて30℃で0.5分間処理することにより酸活性処理を行なった。
【0023】
次いで、数回の水洗浄を行なった後、上記の処理を経たルテニウム層102上に、金濃度9.5g/lの金めっき液(商品名:N77、エヌ・イーケムキャット(株)社製)を用いて37℃、pH4.1、電流密度1.3A/dm2の条件下で1分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより、厚さ0.11μmの金属Auからなる表面金属層103を形成することにより図1に示した本発明のリレー端子を得た。
【0024】
このようにして得られたリレー端子は、優れた接触抵抗、耐熱性、耐食性を有しており、したがってこのリレー端子を有してなるリレー(部品)は極めて信頼性の高いものであった。
【0025】
<実施例2>
本実施例は、導電性基体上に下地層、ルテニウム層、表面金属層をそれぞれこの順で形成させたスライドスイッチ端子に関するものである。以下、図2を参照して説明する。
【0026】
まず、導電性基体201として厚さ0.1mmのテープ状のリン青銅をスライドスイッチ端子の形状にプレス加工し、連続状のスライドスイッチ端子状としたものを70mmの長さに切断した。該切断後、55g/lの活性剤(商品名:エスクリーン30、奥野製薬工業(株)社製)を用いて53℃で3分間洗浄することにより脱脂処理を行なった。その後数回の水洗浄を行なった後さらに、120g/lの活性剤(商品名:NCラストール、奥野製薬工業(株)社製)を用いて50℃で2分間、電流密度6A/dm2の条件下で洗浄することにより電解脱脂処理を行なった。続いて、数回の水洗浄を行なった後6%の硫酸を用いて30℃で1分間処理することにより酸活性処理を行ない、その後数回の水洗浄を行なった。
【0027】
次に、上記の処理を経た導電性基体201に対して、ニッケルめっき液(245g/lの硫酸ニッケル、45g/lの塩化ニッケル、38g/lの硼酸からなるもの)を用いて54℃、pH3.8、電流密度4.2A/dm2の条件下で1分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより厚さ0.98μmのNiからなる下地層204を形成した。
【0028】
続いて、数回の水洗浄を行なった後、上記下地層204上に、ルテニウム濃度8.5g/lのルテニウムめっき液(商品名:Ru−33、エヌ・イーケムキャット(株)社製)を用いて62℃、pH2.1、電流密度1.6A/dm2の条件下で5分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより、厚さ0.42μmの金属Ruからなるルテニウム層202を形成した。
【0029】
その後数回の水洗浄を行なった後、さらに10%のアンモニア水でリンス洗浄(50℃、5分間)した後、9%の塩酸を用いて30℃で0.5分間処理することにより酸活性処理を行なった。
【0030】
次いで、数回の水洗浄を行なった後、上記の処理を経たルテニウム層202上に、金濃度9.5g/lの金めっき液(商品名:N77、エヌ・イーケムキャット(株)社製)を用いて37℃、pH4.1、電流密度1.3A/dm2の条件下で1分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより、厚さ0.11μmの金属Auからなる表面金属層203を形成することにより図2に示した本発明のスライドスイッチ端子を得た。
【0031】
このようにして得られたスライドスイッチ端子は、優れた接触抵抗、耐熱性、耐食性を有しており、したがってこのスライドスイッチ端子を有してなるスライドスイッチ(部品)は極めて信頼性の高いものであった。
【0032】
<実施例3>
本実施例は、導電性基体上に複数の下地層、ルテニウム層、表面金属層をそれぞれこの順で形成させた端子に関するものである。以下、図3を参照して説明する。
【0033】
まず、導電性基体301として厚さ0.1mmのテープ状の黄銅をリレーの形状にプレス加工し、連続状のリレー端子状としたものを70mmの長さに切断した。該切断後、55g/lの活性剤(商品名:エスクリーン30、奥野製薬工業(株)社製)を用いて53℃で3分間洗浄することにより脱脂処理を行なった。その後数回の水洗浄を行なった後さらに、120g/lの活性剤(商品名:NCラストール、奥野製薬工業(株)社製)を用いて50℃で2分間、電流密度6A/dm2の条件下で洗浄することにより電解脱脂処理を行なった。続いて、数回の水洗浄を行なった後5%の硫酸を用いて30℃で1分間処理することにより酸活性処理を行ない、その後数回の水洗浄を行なった。
【0034】
次に、上記の処理を経た導電性基体301に対して、硫酸銅めっき液(硫酸銅100g/l、硫酸140g/l、塩素61ppmその他添加剤からなるもの)を用いて28℃、電流密度2.5A/dm2、空気攪拌の条件下で引掛けめっき装置により電気めっき処理を施すことによって厚さ1.6μmのCuからなる第1の下地層304aを形成した。次いで、数回の水洗浄を行なった後、この第1の下地層304a上にニッケルめっき液(245g/lの硫酸ニッケル、45g/lの塩化ニッケル、38g/lの硼酸からなるもの)を用いて54℃、pH3.8、電流密度4.2A/dm2の条件下で2分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより厚さ1.9μmのNiからなる第2の下地層304bを形成した。
【0035】
続いて、数回の水洗浄を行なった後、上記第2の下地層304b上に、ルテニウム濃度8.5g/lのルテニウムめっき液(商品名:Ru−33、エヌ・イーケムキャット(株)社製)を用いて62℃、pH2.1、電流密度1.6A/dm2の条件下で5分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより、厚さ0.42μmの金属Ruからなるルテニウム層302を形成した。
【0036】
その後数回の水洗浄を行なった後、さらに10%のアンモニア水でリンス洗浄(50℃、5分間)した後、9%の塩酸を用いて30℃で0.5分間処理することにより酸活性処理を行なった。
【0037】
次いで、数回の水洗浄を行なった後、上記の処理を経たルテニウム層302上に、ロジウム濃度5.5g/lのロジウムめっき液(商品名:Rh225、エヌ・イーケムキャット(株)社製)を用いて55℃、電流密度1.1A/dm2の条件下で1分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより、厚さ0.13μmのロジウムRhからなる表面金属層303を形成することにより図3に示した本発明のリレー端子を得た。
【0038】
このようにして得られたリレー端子は、優れた接触抵抗、耐熱性、耐食性を有しており、したがってこのリレー端子を有してなるリレー(部品)は極めて信頼性の高いものであった。
【0039】
<実施例4>
本実施例は、実施例3と同様、導電性基体上に複数の下地層、ルテニウム層、表面金属層をそれぞれこの順で形成させたスライドスイッチ端子に関するものである。以下、図3を参照して説明する。
【0040】
まず、導電性基体301として厚さ0.1mmのテープ状のリン青銅をスライドスイッチの形状にプレス加工し、連続状のスライドスイッチ端子状としたものを70mmの長さに切断した。該切断後、55g/lの活性剤(商品名:エスクリーン30、奥野製薬工業(株)社製)を用いて53℃で3分間洗浄することにより脱脂処理を行なった。その後数回の水洗浄を行なった後さらに、120g/lの活性剤(商品名:NCラストール、奥野製薬工業(株)社製)を用いて50℃で2分間、電流密度6A/dm2の条件下で洗浄することにより電解脱脂処理を行なった。続いて、数回の水洗浄を行なった後6%の硫酸を用いて30℃で1分間処理することにより酸活性処理を行ない、その後数回の水洗浄を行なった。
【0041】
次に、上記の処理を経た導電性基体301に対して、ニッケルめっき液(245g/lの硫酸ニッケル、55g/lの塩化ニッケル、38g/lの硼酸からなるもの)を用いて54℃、pH3.8、電流密度4.2A/dm2の条件下で2分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより厚さ1.9μmのNiからなる第1の下地層304aを形成した。次いで、数回の水洗浄を行なった後、この第1の下地層304a上に銀めっき液(35g/lの銀および105g/lのシアン化カリウムからなるもの)を用いて48℃、pH12.9、電流密度1.0A/dm2の条件下で1分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより厚さ0.7μmのAgからなる第2の下地層304bを形成した。
【0042】
続いて、数回の水洗浄を行なった後、上記第2の下地層304b上に、ルテニウム濃度8.5g/lのルテニウムめっき液(商品名:Ru−33、エヌ・イーケムキャット(株)社製)を用いて62℃、pH2.1、電流密度1.6A/dm2の条件下で5分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより、厚さ0.42μmの金属Ruからなるルテニウム層302を形成した。
【0043】
その後数回の水洗浄を行なった後、さらに10%のアンモニア水でリンス洗浄(50℃、5分間)した後、9%の塩酸を用いて30℃で0.5分間処理することにより酸活性処理を行なった。
【0044】
次いで、数回の水洗浄を行なった後、上記の処理を経たルテニウム層302上に、金濃度9.5g/lの金めっき液(商品名:N77、エヌ・イーケムキャット(株)社製)を用いて37℃、pH4.1、電流密度1.3A/dm2の条件下で1分間引掛けめっき装置により電気めっきすることにより、厚さ0.11μmの金属Auからなる表面金属層303を形成することにより図3に示した本発明のスライドスイッチ端子を得た。
【0045】
このようにして得られたスライドスイッチ端子は、優れた接触抵抗、耐熱性、耐食性を有しており、したがってこのスライドスイッチ端子を有してなるスライドスイッチ(部品)は極めて信頼性の高いものであった。
【0046】
<比較例1>
実施例2において、端子をリレー端子とすることおよびルテニウム層を形成させないことを除き、他は全て実施例2と同様にしてリレー端子を製造した。かかるリレー端子は、導電性基体上にNi層および表面金属層としての金層がこの順で形成された構造となっており、従来の端子に相当するものである。
【0047】
<比較例2>
実施例2において、ルテニウム層を形成させないことを除き、他は全て実施例2と同様にしてスライドスイッチ端子を製造した。かかるスライドスイッチ端子は、導電性基体上にNi層および表面金属層としての金層がこの順で形成された構造となっており、従来の端子に相当するものである。
【0048】
<硬度試験>
実施例1〜4で得られた各端子と比較例1〜2で得られた各端子とを用いて、表面硬度計(装置名:ビッカス型表面硬度計、(株)アカシ製作所社製)を使用して、測定荷重10gの下それぞれの表面金属層の表面より表面硬度を測定した。その結果を以下の表1に示す。
【0049】
<耐食性試験>
実施例1〜4で得られた各端子と比較例1〜2で得られた各端子とを用いて、それぞれの耐食性を測定した。測定条件は、5%の食塩水を噴霧し、35℃で8時間経過後の腐食の度合いを観察することにより行なった。そして、腐食が起こらなかったものは「○」、少し腐食したものは「△」、かなり腐食したものは「×」として評価した。その評価結果を以下の表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1より明らかなように、比較例1〜2の各端子に比し各実施例の端子は、いずれも優れた表面硬度を有することにより表面金属層の剥離が一切発生することがなかったとともに、耐食性試験においても優れた耐食性が示された。なお、各実施例の表面硬度において数値のばらつきが見られるのは、ルテニウム層単独では700〜850HVの表面硬度が示されるものの、ルテニウム層は比較的薄いため該層の下層として存在する導電性基体や下地層の影響が現れたものと考えられる。
【0052】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0053】
【発明の効果】
本発明の端子は、表面金属層の下層としてルテニウム層を形成したことにより、該ルテニウム層と該表面金属層とが相互作用することによって優れた表面硬度を有したものとなり、表面金属層が摩耗したり剥離したりすることを有効に防止するとともに、表面金属層が有する優れた接触抵抗を保持したままピンホールの発生を有効に防止し、以って高硬度、耐熱性、耐食性等の品質を飛躍的に向上させたものである。また、ルテニウム層の下層として下地層を形成すれば、導電性基体の種類にかかわらず、ルテニウム層が剥離することを有効に防止することができる。また、これらの下地層、ルテニウム層および表面金属層をバレルめっき装置、引掛けめっき装置または連続めっき装置のいずれかを用いてめっき法により形成すれば、これらの層を極めて効率良く形成させることが可能となる。したがって、本発明の端子を有する部品は、このような端子が有する固有の利点をそのまま踏襲したものであり、優れた接触抵抗、耐熱性、耐食性を有しており、極めて信頼性の高いものとなる。このため、本発明の部品は、電気、電子製品や半導体製品あるいは自動車部品等の用途に広範囲に利用することができ、とりわけ非挿抜性の用途に好適に用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】導電性基体上にルテニウム層および表面金属層をそれぞれこの順で形成させた端子の概略断面図である。
【図2】導電性基体上に下地層、ルテニウム層、表面金属層をそれぞれこの順で形成させた端子の概略断面図である。
【図3】導電性基体上に複数の下地層、ルテニウム層、表面金属層をそれぞれこの順で形成させた端子の概略断面図である。
【符号の説明】
101,201,301 導電性基体、102,202,302 ルテニウム層、103,203,303 表面金属層、204 下地層、304a 第1の下地層、304b 第2の下地層。
Claims (4)
- 導電性基体上にルテニウム層が形成されており、該ルテニウム層上にAu、Ag、Pd、Rhからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金からなる表面金属層が形成されていることを特徴とする端子。
- 導電性基体とルテニウム層との間に、Ni、Cu、Au、Agからなる群から選ばれた少なくとも一種の金属またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金からなる下地層が少なくとも一層形成されていることを特徴とする請求項1記載の端子。
- 下地層、ルテニウム層および表面金属層が、それぞれバレルめっき装置、引掛けめっき装置または連続めっき装置のいずれかを用いてめっき法により形成されることを特徴とする請求項1または2記載の端子。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の端子を有する部品。
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