JP2004175879A - インクジェット記録用インク、記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動条件の変動や長時間の使用に際しても常に安定した吐出性能が得られ、特に高速記録に対して優れた周波数応答性を発揮する水性顔料インクを提供する。
【解決手段】少なくとも着色剤、水性液媒体中に分散してなる熱伝導性微粒子(平均粒子径100nm以下)及び水性樹脂を含有する。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくとも着色剤、水性液媒体中に分散してなる熱伝導性微粒子(平均粒子径100nm以下)及び水性樹脂を含有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクを用いたインクジェット記録用インク、とりわけバブルジェット(R)方式に好適なインクジェット記録用インク及びそれを用いた記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット用インクの色材としては、主として染料が使われてきたが、染料インクで形成される画像は耐水性、耐光性に劣るため、近年、顔料を色材とするインクの検討が精力的に行われるようになってきた。特にポスター、パネル、サイン、ポップ広告等の産業用途を目的とするワイドフォーマットプリンタ用のインクとして、カラー顔料インクの搭載は必須の条件となってきている。そして、この分野への参入を狙った顔料インクの開発が牽引となって、インクジェット適性を有する様々な顔料の分散方法、製造方法等が提案されるようになった。
【0003】
その結果、インクジェット用顔料インクの当面の課題であったヘッド部分のノズル目詰まり、及び長期間にわたる保存安定性の問題は、当初に比べるとかなり改善されてきている。
【0004】
また、画像の発色性に関しては、カラー顔料インクの発色性向上を目的に、最適化されたインク受容層の開発も並行して進められた結果、専用記録メディアとのセットではあるが着実に改良されつつある。
【0005】
しかしながら、バブルジェット(R)方式のように瞬間的に高い熱を直接インクに与え、インク自身を沸騰させて液滴形成を吐出エネルギーとすることを原理とする方式では、従来技術によってなされた様々な顔料分散体を容易に適用できないというのが現状である。すなわち、記録ヘッドのヒーター上でインク自体を発泡させるので、顔料分散体が熱的に分散破壊を起こしたり、変質したりするため、ヒーター上にその分解物や変成物が可逆的に発生、消失する、あるいは不可逆的に堆積するということが起こりやすい。その結果連続的に起こる発泡に対して、エネルギー効率を著しく低下させてしまうので、吐出するインク液滴量や吐出するインク液滴の速度が初期と比べて減少したり、インク液滴の吐出が不能な状態に陥る等の不具合が発生することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術に鑑みて到達したものである。すなわち本発明は、様々な顔料分散体を含有するインクに対して、駆動条件の変動や長時間の使用に際しても常に安定した吐出性能が得られ、特に高速記録に対して優れた周波数応答性を発揮する水性顔料インクを提供することを目的とするものである。
【0007】
さらに、記録媒体上の画像に透明な薄膜を形成して、顔料層に光沢性を付与することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することのできるインクジェット記録用の水性顔料インクは、少なくとも水を主成分とする液媒体と、着色剤及び該液媒体中に分散してなる熱伝導性微粒子と水性樹脂を含有し、該熱伝導性微粒子が平均粒子径100nm以下の粒子で、該水性樹脂との併用により記録媒体上の画像に透明な薄膜を形成することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明について、更に詳細に説明する。バブルジェット(R)方式のインクジェット記録方法では、記録ヘッドに設けられたヒーター上のインクに直接熱エネルギーを付与して発泡を生じさせ、急激な体積の増大を引き起こすその力によって、ノズルよりインク液滴を吐出させようとするものである。このとき、ヒーターの熱エネルギーがインクに伝わる速度が遅いと、ヒーターの熱エネルギーがインクに付与されて発泡するまでの時間も遅くなり、そのため発泡後、ヒーターの温度が下がり切らない状態のところへ、次のパルスがヒーターを加熱するということが起こるようになる。このようなことが連続的に繰り返されると、ヒーターの到達する温度は初期の温度よりもかなり高くなる。このようなことから顔料分散体が熱的に過度の影響を受けて分散破壊を起こしたり、変質したりしやすくなることがあり、これが原因となってヒーター上にその分解物や変成物が可逆的に発生、消失する、あるいは不可逆的にヒーター上に堆積するといった現象が生じることになる。その結果ヒーターの熱エネルギーがインクに有効につたわらなくなり、吐出するインク液滴量や吐出するインク液滴の速度が初期と比べて現象したり、インク液滴の吐出が不能な状態に陥る等の不具合が発生することになる。
【0010】
すなわち、本発明はインク中に熱伝導性の高い物質を微粒子という形態で分散させることにより、インクへの熱エネルギー付与を迅速に行い上記課題を解決するものである。
【0011】
本発明で使用する熱伝導性微粒子の平均粒子径は100nm以下に微粒子化されたものである。平均粒子径が100nm以上になると記録した画像を覆う薄膜の透明性が失われてくるために着色剤の発色性が悪くなる。
【0012】
次に、本発明で使用する熱伝導性微粒子の選定について述べる。一般的に水性インクで使用される水や有機液媒体の熱伝導率は常温で1W/m・k以下であり、この値に対して10倍以上の熱伝導率を有する物質がある一定量含まれていると非常に効果的であることを見出した。そこで、例えば金属酸化物という形態で微粒子化すると、得られる金属酸化物の熱伝導率は金属単体の場合の約1/2〜1/10になるため、金属酸化物に含まれる金属の熱伝導率は常温で100W/m・k以上であれば、本発明の効果として十分満足され得ることになる。このような条件を満たす金属は、アルミニウム(約240W/m・k)、マグネシウム(約160W/m・k)、亜鉛(約120W/m・k)、珪素(約150W/m・k)等があり、これらの金属を含んで平均粒子径が100nm以下に微粒子化、かつ安定に分散化できる化合物であれば、本発明の熱伝導性微粒子として特に限定されないが、二酸化珪素は例外で熱伝導率が常温で10W/m・k以下になるため、効果としては不十分であり好ましくない。本発明で使用するに好ましい化合物としては、炭化珪素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を挙げることができる。また、これらの熱伝導性微粒子の含有量は、インク中に0.5〜15重量%の範囲である。0.5重量%以下になると熱伝導性の効果が不十分であり、15重量%以上になるとインク粘度の上昇や記録ヘッドの目詰まりの原因となる可能性が高くなるため好ましくない。好ましくは、1〜10重量%の範囲である。
【0013】
また、本発明においては熱伝導性微粒子のバインダーとして水性樹脂を併用する。この水性樹脂は、熱伝導性微粒子を記録した画像上で固定し、透明な薄膜を形成するのに必要な成分である。インク中に含まれる熱伝導性微粒子と水性樹脂の割合は重量比で10:1〜1:10の範囲である。この割合に対して熱伝導性微粒子が多くなると画像における耐摩擦性が悪くなり、あるいは水性樹脂が多くなるとインクの粘度が高くなり吐出性が悪くなるために好ましくない。
【0014】
本発明で使用する水性樹脂は、親水性モノマーからなるホモポリマーや天然樹脂等も使用可能であるが、カルボキシル基を塩基性物質で中和した水溶性タイプ、コロイダルディスパージョンタイプ、エマルジョンタイプの中から選ばれたものが好ましい。中でもアルカリ可溶型の水溶性タイプの樹脂が特に好ましい。アルカリ可溶型樹脂を溶解させる塩基性物質としては、有機塩類の使用も可能であるが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機塩基類を使用したほうが、樹脂の再溶解性がよくなるので、記録ヘッドの吐出性や目詰まり回復性等に対して特に好ましい。
【0015】
次に本発明で使用される顔料は、一般的な無機顔料、有機顔料であり、例えば無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄に加え、チャネル法、ファーネス法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えばフタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。これらの顔料種のなかでも本発明を実施するうえで特に好ましいカラー顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー74、93、128、138、147、151、155、180等の黄色顔料、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレッット19等の赤色顔料、C.I.ピグメントブルー15:1、15:2、15:3、15:4等の青色顔料を挙げることができる。
【0016】
次に、これらの顔料を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。水溶性樹脂の具体例としては、アルカリ可溶性のスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。
【0017】
また、本発明で分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリル及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。又、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。更に両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。又、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0018】
本発明の顔料インクは、上記した顔料及び分散剤と、これらを分散させるための水系媒体とを少なくとも有するが、この際に使用する好適な水性媒体としては、水又は、水と水性有機溶剤の混合溶媒を使用することが好ましい。本発明において使用するインクの、インク中における水の含有量は、通常20〜90重量%、好ましくは、30〜70重量%の範囲である。
【0019】
又、本発明において水と混合して使用し得る水溶性有機溶剤としては、下記のごとき3群に分けることができる。即ち、保湿性が高く、蒸発しにくく、親水性に優れる第1群の溶剤、有機性があり疎水性の表面への濡れ性がよく、蒸発乾燥性もある第2群の溶剤、適度の濡れ性を有し低粘度の第3群の溶剤である。本発明においてはこれらの溶剤の中から目的に応じて適宜に選択して使用すればよい。
【0020】
第1群に属する溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジメチルスルホキシド、ダイアセトンアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール300、チオジグリコール、N―メチルー2―ピロリドン、2―ピロリドン、γ―ブチロラクトン、1,3−ジメチルー2―イミダゾリジノン、スルホラン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイシプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0021】
第2群に属する溶媒としては、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1−ブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0022】
第3群に属する溶媒としては、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。
【0023】
以上のごとき水溶性有機溶媒の総量は、概ねインク全体に対して5〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0024】
本発明の顔料インクには、以上の成分の他、必要に応じて界面活性剤、pH調製剤、防腐剤等を添加することが可能である。
【0025】
本発明の顔料インクは、上記した材料を分散機によって分散して作製されるが、この際の分散機としては、一般に使用される分散機なら如何なるものも使用し得る。具体的には、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル等の分散機が挙げられるが、これらの中でも高速度のサンドミルが好ましく、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル、コボルミル(いずれも商品名)等を好ましく使用できる。
【0026】
また、所望の粒径分布を有する顔料の分散液あるいはインクを得る方法としては、下記の方法を用いることができる。例えば、分散機に用いる粉砕メディアのサイズを小さくする、粉砕メディアの充填率を大きくする、あるいは、粉砕処理時間を長くする、粉砕速度を遅くする等の方法や粉砕後、フィルターや遠心分離機等で分級する等の手法を用いることができる。もちろん、これらの手法を適宜組合わせてもよい。
【0027】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
<実施例1>
まず、スチレン−メタクリル酸共重合体とこれを中和するに必要な所定量の水酸化カリウム、及び水を混合して、約60℃に保温した状態でこれらを攪拌混合し、20%のスチレン−メタクリル酸共重合体の水溶液を作製した。このようにして作製したスチレン−メタクリル酸共重合体を分散剤として用い、以下のようなシアン顔料分散体を作製した。
・20%スチレン−メタクリル酸共重合体水溶液 10重量%
・C.I.Pigment Blue 15:3 5重量%
・グリセリン 20重量%
・ジエチレングリコール 20重量%
・トリエチレングリコール 10重量%
・水 35重量%
これらの材料をバッチ式縦型サンドミルに仕込み、500μm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間、分散処理を行った。このシアン顔料分散体を遠心分離処理(10000rpm、30分間)することによって、粗大粒子を除去した後、水にて全体を2倍に希釈してインク化した。次にアルカリ可溶型樹脂ジョンクリル62(ジョンソンポリマー社製、重量平均分子量8500、酸価200、アンモニア中和品)を純分で5重量%、更に住友大阪セメント(株)社製の超微粒子酸化亜鉛(商品名:ZW−143、平均粒子径35nm)を純分で6重量%それぞれインクに添加した。その後このインクを遠心分離処理(10000rpm、15分間)をして、実施例1のシアンインク得た。
【0030】
<実施例2>
実施例1でインクの成分として使用した酸化亜鉛の代わりに、シーアイ化成(株)社製の酸化マグネシウム(商品名:ナノテック、平均粒子径52nm)を純分で5重量%インクに添加し、その他の条件は実施例1と同様にして得られたものを実施例2のシアンインクとした。
【0031】
<比較例1>
実施例1でインクの成分として使用した酸化亜鉛を用いずに、その他の条件は実施例1と同様にして得られたものを比較例1のシアンインクとした。
【0032】
<比較例2>
実施例1でインクの成分として使用した酸化亜鉛の代わりに、シーアイ化成(株)社製の酸化チタン(商品名:ナノテック、平均粒子径42nm)を純分で6重量%インクに添加し、その他の条件は実施例1と同様にして得られたものを比較例2のシアンインクとした。
【0033】
チタンの常温における熱伝導率は約22W/m・kである。
【0034】
<比較例3>
実施例1でインクの成分として使用した酸化亜鉛の代わりに、チタン工業(株)社製の酸化チタン(商品名:クロノス、平均粒子径230nm)を純分で6重量%インクに添加し、その他の条件は実施例1と同様にして得られたものを比較例3のシアンインクとした。
【0035】
(評価方法及び結果)
上記実施例及び比較例のインクをBJF870プリンタ(キヤノン社製)専用のインクカートリッジに充填して下記の評価を行った。
【0036】
(1)周波数応答性
プリンタの電圧は一定にして、周波数を3〜15KHzの間で変化させたときの、印字のみだれや不吐出等の有無を観察した。
○…10KHz以上の条件でも、印字のみだれや不吐出がない。
△…6KHzの条件で、印字のみだれや不吐出が発生する。
×…3KHzの条件で、印字のみだれや不吐出が発生する。
【0037】
(2)連続印字耐久性
A4サイズのコート紙に7.5%デユーティのカラー画像を連続して1000枚印字した。カラー画像内のべた部分の画像濃度、罫線部分のよれ等について、1枚目と1000枚目とで目視による比較評価を行った。
○…べた部分が均一で鮮やかさを維持し、罫線のよれもない。
×…べた部分の濃度低下が見られ、罫線のよれが多少目立つ。
【0038】
(3)印字物の画質
インクジェット記録専用の光沢紙プロフェッショナルフォトペーパー(キヤノン社製)に印字して、画質の評価を目視にておこなった。
○…シアンの色彩性が良好に再現され、光沢感もあり鮮やかである。
×…発色性が悪く、光沢感、鮮明さに欠ける。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、様々な顔料分散体を含有するインクに対して、駆動条件の変動や長時間の使用に際しても常に安定した吐出性能が得られ、特に高速記録にも対応できる優れた周波数応答性を発揮する水性顔料インクを提供することができる。本発明は、とりわけバブルジェット(R)方式のように薄膜ヒーターの膜沸騰を吐出エネルギー発生源として用いた記録ヘッド用の水性顔料インクのバリュエーションに幅広い自由度を与えるものである。また、超微粒子の金属化合物と樹脂の併用効果により、画像表面に光沢性のある薄膜を形成することができるので、より鮮やかな画質が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクを用いたインクジェット記録用インク、とりわけバブルジェット(R)方式に好適なインクジェット記録用インク及びそれを用いた記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット用インクの色材としては、主として染料が使われてきたが、染料インクで形成される画像は耐水性、耐光性に劣るため、近年、顔料を色材とするインクの検討が精力的に行われるようになってきた。特にポスター、パネル、サイン、ポップ広告等の産業用途を目的とするワイドフォーマットプリンタ用のインクとして、カラー顔料インクの搭載は必須の条件となってきている。そして、この分野への参入を狙った顔料インクの開発が牽引となって、インクジェット適性を有する様々な顔料の分散方法、製造方法等が提案されるようになった。
【0003】
その結果、インクジェット用顔料インクの当面の課題であったヘッド部分のノズル目詰まり、及び長期間にわたる保存安定性の問題は、当初に比べるとかなり改善されてきている。
【0004】
また、画像の発色性に関しては、カラー顔料インクの発色性向上を目的に、最適化されたインク受容層の開発も並行して進められた結果、専用記録メディアとのセットではあるが着実に改良されつつある。
【0005】
しかしながら、バブルジェット(R)方式のように瞬間的に高い熱を直接インクに与え、インク自身を沸騰させて液滴形成を吐出エネルギーとすることを原理とする方式では、従来技術によってなされた様々な顔料分散体を容易に適用できないというのが現状である。すなわち、記録ヘッドのヒーター上でインク自体を発泡させるので、顔料分散体が熱的に分散破壊を起こしたり、変質したりするため、ヒーター上にその分解物や変成物が可逆的に発生、消失する、あるいは不可逆的に堆積するということが起こりやすい。その結果連続的に起こる発泡に対して、エネルギー効率を著しく低下させてしまうので、吐出するインク液滴量や吐出するインク液滴の速度が初期と比べて減少したり、インク液滴の吐出が不能な状態に陥る等の不具合が発生することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術に鑑みて到達したものである。すなわち本発明は、様々な顔料分散体を含有するインクに対して、駆動条件の変動や長時間の使用に際しても常に安定した吐出性能が得られ、特に高速記録に対して優れた周波数応答性を発揮する水性顔料インクを提供することを目的とするものである。
【0007】
さらに、記録媒体上の画像に透明な薄膜を形成して、顔料層に光沢性を付与することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成することのできるインクジェット記録用の水性顔料インクは、少なくとも水を主成分とする液媒体と、着色剤及び該液媒体中に分散してなる熱伝導性微粒子と水性樹脂を含有し、該熱伝導性微粒子が平均粒子径100nm以下の粒子で、該水性樹脂との併用により記録媒体上の画像に透明な薄膜を形成することを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明について、更に詳細に説明する。バブルジェット(R)方式のインクジェット記録方法では、記録ヘッドに設けられたヒーター上のインクに直接熱エネルギーを付与して発泡を生じさせ、急激な体積の増大を引き起こすその力によって、ノズルよりインク液滴を吐出させようとするものである。このとき、ヒーターの熱エネルギーがインクに伝わる速度が遅いと、ヒーターの熱エネルギーがインクに付与されて発泡するまでの時間も遅くなり、そのため発泡後、ヒーターの温度が下がり切らない状態のところへ、次のパルスがヒーターを加熱するということが起こるようになる。このようなことが連続的に繰り返されると、ヒーターの到達する温度は初期の温度よりもかなり高くなる。このようなことから顔料分散体が熱的に過度の影響を受けて分散破壊を起こしたり、変質したりしやすくなることがあり、これが原因となってヒーター上にその分解物や変成物が可逆的に発生、消失する、あるいは不可逆的にヒーター上に堆積するといった現象が生じることになる。その結果ヒーターの熱エネルギーがインクに有効につたわらなくなり、吐出するインク液滴量や吐出するインク液滴の速度が初期と比べて現象したり、インク液滴の吐出が不能な状態に陥る等の不具合が発生することになる。
【0010】
すなわち、本発明はインク中に熱伝導性の高い物質を微粒子という形態で分散させることにより、インクへの熱エネルギー付与を迅速に行い上記課題を解決するものである。
【0011】
本発明で使用する熱伝導性微粒子の平均粒子径は100nm以下に微粒子化されたものである。平均粒子径が100nm以上になると記録した画像を覆う薄膜の透明性が失われてくるために着色剤の発色性が悪くなる。
【0012】
次に、本発明で使用する熱伝導性微粒子の選定について述べる。一般的に水性インクで使用される水や有機液媒体の熱伝導率は常温で1W/m・k以下であり、この値に対して10倍以上の熱伝導率を有する物質がある一定量含まれていると非常に効果的であることを見出した。そこで、例えば金属酸化物という形態で微粒子化すると、得られる金属酸化物の熱伝導率は金属単体の場合の約1/2〜1/10になるため、金属酸化物に含まれる金属の熱伝導率は常温で100W/m・k以上であれば、本発明の効果として十分満足され得ることになる。このような条件を満たす金属は、アルミニウム(約240W/m・k)、マグネシウム(約160W/m・k)、亜鉛(約120W/m・k)、珪素(約150W/m・k)等があり、これらの金属を含んで平均粒子径が100nm以下に微粒子化、かつ安定に分散化できる化合物であれば、本発明の熱伝導性微粒子として特に限定されないが、二酸化珪素は例外で熱伝導率が常温で10W/m・k以下になるため、効果としては不十分であり好ましくない。本発明で使用するに好ましい化合物としては、炭化珪素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を挙げることができる。また、これらの熱伝導性微粒子の含有量は、インク中に0.5〜15重量%の範囲である。0.5重量%以下になると熱伝導性の効果が不十分であり、15重量%以上になるとインク粘度の上昇や記録ヘッドの目詰まりの原因となる可能性が高くなるため好ましくない。好ましくは、1〜10重量%の範囲である。
【0013】
また、本発明においては熱伝導性微粒子のバインダーとして水性樹脂を併用する。この水性樹脂は、熱伝導性微粒子を記録した画像上で固定し、透明な薄膜を形成するのに必要な成分である。インク中に含まれる熱伝導性微粒子と水性樹脂の割合は重量比で10:1〜1:10の範囲である。この割合に対して熱伝導性微粒子が多くなると画像における耐摩擦性が悪くなり、あるいは水性樹脂が多くなるとインクの粘度が高くなり吐出性が悪くなるために好ましくない。
【0014】
本発明で使用する水性樹脂は、親水性モノマーからなるホモポリマーや天然樹脂等も使用可能であるが、カルボキシル基を塩基性物質で中和した水溶性タイプ、コロイダルディスパージョンタイプ、エマルジョンタイプの中から選ばれたものが好ましい。中でもアルカリ可溶型の水溶性タイプの樹脂が特に好ましい。アルカリ可溶型樹脂を溶解させる塩基性物質としては、有機塩類の使用も可能であるが、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機塩基類を使用したほうが、樹脂の再溶解性がよくなるので、記録ヘッドの吐出性や目詰まり回復性等に対して特に好ましい。
【0015】
次に本発明で使用される顔料は、一般的な無機顔料、有機顔料であり、例えば無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄に加え、チャネル法、ファーネス法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えばフタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。これらの顔料種のなかでも本発明を実施するうえで特に好ましいカラー顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー74、93、128、138、147、151、155、180等の黄色顔料、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレッット19等の赤色顔料、C.I.ピグメントブルー15:1、15:2、15:3、15:4等の青色顔料を挙げることができる。
【0016】
次に、これらの顔料を分散させるための分散剤としては、通常の水溶性樹脂や水溶性界面活性剤を用いることができる。水溶性樹脂の具体例としては、アルカリ可溶性のスチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等が挙げられる。
【0017】
また、本発明で分散剤として使用できる水溶性界面活性剤の具体例としては、下記のものが挙げられる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルアリールエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、アルキルアリル及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩等が挙げられる。又、カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。更に両性界面活性剤としては、ジメチルアルキルラウリルベタイン、アルキルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。又、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0018】
本発明の顔料インクは、上記した顔料及び分散剤と、これらを分散させるための水系媒体とを少なくとも有するが、この際に使用する好適な水性媒体としては、水又は、水と水性有機溶剤の混合溶媒を使用することが好ましい。本発明において使用するインクの、インク中における水の含有量は、通常20〜90重量%、好ましくは、30〜70重量%の範囲である。
【0019】
又、本発明において水と混合して使用し得る水溶性有機溶剤としては、下記のごとき3群に分けることができる。即ち、保湿性が高く、蒸発しにくく、親水性に優れる第1群の溶剤、有機性があり疎水性の表面への濡れ性がよく、蒸発乾燥性もある第2群の溶剤、適度の濡れ性を有し低粘度の第3群の溶剤である。本発明においてはこれらの溶剤の中から目的に応じて適宜に選択して使用すればよい。
【0020】
第1群に属する溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジメチルスルホキシド、ダイアセトンアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール300、チオジグリコール、N―メチルー2―ピロリドン、2―ピロリドン、γ―ブチロラクトン、1,3−ジメチルー2―イミダゾリジノン、スルホラン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイシプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0021】
第2群に属する溶媒としては、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1−ブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0022】
第3群に属する溶媒としては、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。
【0023】
以上のごとき水溶性有機溶媒の総量は、概ねインク全体に対して5〜40重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0024】
本発明の顔料インクには、以上の成分の他、必要に応じて界面活性剤、pH調製剤、防腐剤等を添加することが可能である。
【0025】
本発明の顔料インクは、上記した材料を分散機によって分散して作製されるが、この際の分散機としては、一般に使用される分散機なら如何なるものも使用し得る。具体的には、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル等の分散機が挙げられるが、これらの中でも高速度のサンドミルが好ましく、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル、コボルミル(いずれも商品名)等を好ましく使用できる。
【0026】
また、所望の粒径分布を有する顔料の分散液あるいはインクを得る方法としては、下記の方法を用いることができる。例えば、分散機に用いる粉砕メディアのサイズを小さくする、粉砕メディアの充填率を大きくする、あるいは、粉砕処理時間を長くする、粉砕速度を遅くする等の方法や粉砕後、フィルターや遠心分離機等で分級する等の手法を用いることができる。もちろん、これらの手法を適宜組合わせてもよい。
【0027】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
<実施例1>
まず、スチレン−メタクリル酸共重合体とこれを中和するに必要な所定量の水酸化カリウム、及び水を混合して、約60℃に保温した状態でこれらを攪拌混合し、20%のスチレン−メタクリル酸共重合体の水溶液を作製した。このようにして作製したスチレン−メタクリル酸共重合体を分散剤として用い、以下のようなシアン顔料分散体を作製した。
・20%スチレン−メタクリル酸共重合体水溶液 10重量%
・C.I.Pigment Blue 15:3 5重量%
・グリセリン 20重量%
・ジエチレングリコール 20重量%
・トリエチレングリコール 10重量%
・水 35重量%
これらの材料をバッチ式縦型サンドミルに仕込み、500μm径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷しつつ3時間、分散処理を行った。このシアン顔料分散体を遠心分離処理(10000rpm、30分間)することによって、粗大粒子を除去した後、水にて全体を2倍に希釈してインク化した。次にアルカリ可溶型樹脂ジョンクリル62(ジョンソンポリマー社製、重量平均分子量8500、酸価200、アンモニア中和品)を純分で5重量%、更に住友大阪セメント(株)社製の超微粒子酸化亜鉛(商品名:ZW−143、平均粒子径35nm)を純分で6重量%それぞれインクに添加した。その後このインクを遠心分離処理(10000rpm、15分間)をして、実施例1のシアンインク得た。
【0030】
<実施例2>
実施例1でインクの成分として使用した酸化亜鉛の代わりに、シーアイ化成(株)社製の酸化マグネシウム(商品名:ナノテック、平均粒子径52nm)を純分で5重量%インクに添加し、その他の条件は実施例1と同様にして得られたものを実施例2のシアンインクとした。
【0031】
<比較例1>
実施例1でインクの成分として使用した酸化亜鉛を用いずに、その他の条件は実施例1と同様にして得られたものを比較例1のシアンインクとした。
【0032】
<比較例2>
実施例1でインクの成分として使用した酸化亜鉛の代わりに、シーアイ化成(株)社製の酸化チタン(商品名:ナノテック、平均粒子径42nm)を純分で6重量%インクに添加し、その他の条件は実施例1と同様にして得られたものを比較例2のシアンインクとした。
【0033】
チタンの常温における熱伝導率は約22W/m・kである。
【0034】
<比較例3>
実施例1でインクの成分として使用した酸化亜鉛の代わりに、チタン工業(株)社製の酸化チタン(商品名:クロノス、平均粒子径230nm)を純分で6重量%インクに添加し、その他の条件は実施例1と同様にして得られたものを比較例3のシアンインクとした。
【0035】
(評価方法及び結果)
上記実施例及び比較例のインクをBJF870プリンタ(キヤノン社製)専用のインクカートリッジに充填して下記の評価を行った。
【0036】
(1)周波数応答性
プリンタの電圧は一定にして、周波数を3〜15KHzの間で変化させたときの、印字のみだれや不吐出等の有無を観察した。
○…10KHz以上の条件でも、印字のみだれや不吐出がない。
△…6KHzの条件で、印字のみだれや不吐出が発生する。
×…3KHzの条件で、印字のみだれや不吐出が発生する。
【0037】
(2)連続印字耐久性
A4サイズのコート紙に7.5%デユーティのカラー画像を連続して1000枚印字した。カラー画像内のべた部分の画像濃度、罫線部分のよれ等について、1枚目と1000枚目とで目視による比較評価を行った。
○…べた部分が均一で鮮やかさを維持し、罫線のよれもない。
×…べた部分の濃度低下が見られ、罫線のよれが多少目立つ。
【0038】
(3)印字物の画質
インクジェット記録専用の光沢紙プロフェッショナルフォトペーパー(キヤノン社製)に印字して、画質の評価を目視にておこなった。
○…シアンの色彩性が良好に再現され、光沢感もあり鮮やかである。
×…発色性が悪く、光沢感、鮮明さに欠ける。
【0039】
【表1】
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、様々な顔料分散体を含有するインクに対して、駆動条件の変動や長時間の使用に際しても常に安定した吐出性能が得られ、特に高速記録にも対応できる優れた周波数応答性を発揮する水性顔料インクを提供することができる。本発明は、とりわけバブルジェット(R)方式のように薄膜ヒーターの膜沸騰を吐出エネルギー発生源として用いた記録ヘッド用の水性顔料インクのバリュエーションに幅広い自由度を与えるものである。また、超微粒子の金属化合物と樹脂の併用効果により、画像表面に光沢性のある薄膜を形成することができるので、より鮮やかな画質が得られる。
Claims (8)
- 少なくとも水を主成分とする液媒体と、着色剤及び該液媒体中に分散してなる熱伝導性微粒子と水性樹脂を含有するインクジェット記録用インクにおいて、該熱伝導性微粒子が平均粒子径100nm以下の粒子で、該水性樹脂との併用により記録媒体上の画像に透明な薄膜を形成することを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 前記熱伝導性微粒子に含まれる金属の熱伝導率が、常温で100W/m・k以上である請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記熱伝導性微粒子が炭化珪素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムの中から選択される請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記熱伝導性微粒子がインク中に、0.5〜15重量%含まれる請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記熱伝導性微粒子と水性樹脂が重量比で10:1〜1:10の割合で含まれる請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記水性樹脂がアルカリ可溶型の水溶性樹脂である請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 前記着色剤が顔料である請求項1に記載のインクジェット記録用インク。
- 薄膜ヒーターの膜沸騰を吐出エネルギー発生源として用いた記録ヘッドから、請求項1〜7のいずれかの項に記載のインクを吐出させるインクジェット記録方法。
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2002
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