JP2004174796A - 二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents
二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】下記工程(1)〜(4)
(1)芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分とを有機極性溶媒中にて反応せしめ、ポリアミド酸溶液を調製する、
(2)得られたポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、支持体と一緒に、脱水剤を有機溶媒に溶解してなるイソイミド化溶液中に浸漬して、ポリアミド酸の少なくとも一部がポリイソイミドに変換されたゲルフィルムを形成する、
(3)得られたゲルフィルムを支持体から分離し、必要に応じ洗浄した後、二軸延伸する、
(4)得られた二軸延伸ゲルフィルムを、必要に応じ洗浄した後、熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する、
の工程から成るポリイミドフィルムの製造方法であって、上記工程(2)において用いられる脱水剤がジイソプロピルカルボジイミドであることを特徴とする二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミドフィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
全芳香族ポリイミドはその優れた耐熱性や機械物性から広く工業的に利用され、とくにそのフィルムは電子実装用途を始めとする薄層電子部品用基材として重要な位置をしめるに至っている。近年電子部品の小型化への強い要請から、より厚さの薄いポリイミドフィルムが要求されているが、厚みの減少に伴い高い剛性を有することがフィルムの実用上、またはハンドリング上必要不可欠な条件となる。全芳香族ポリイミドフィルムは剛直な構造を有するものの、例えば全芳香族ポリアミドフィルムとして比較して必ずしも高ヤング率が実現されているとは言えず、市販される最高のヤング率を有するポリイミドフィルムでさえ高々9GPaのレベルに留まるのが現状である。
【0003】
全芳香族ポリイミドフィルムで高ヤング率を実現する方法として、(1)ポリイミドを構成する分子骨格を剛直且つ直線性の高い化学構造とする方法、(2)ポリイミドを物理的な方法で分子配向させる方法とが考えられる。方法(1)の化学構造としては酸成分としてピロメリット酸あるいは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、アミン成分としてp−フェニレンジアミン、ベンジジンあるいはそれらの核置換体の様々な組合せで素材検討がなされてきた。このなかでポリ−p−フェニレンピロメリットイミドは理論弾性率がもっとも高く(非特許文献1参照)、かつ原料が安価であることから、高ヤング率フィルム素材として最も期待される素材である。しかしそのポテンシャルにも関わらず、これまでポリーp−フェニレンピロメリットイミドフィルムとしてはきわめて脆いものしか得られておらず、またバランスのとれた高ヤング率フィルムとしても実現に至っていないのが現状である。
【0004】
これを克服する方法として、p−フェニレンジアミンとピロメリット酸無水物の反応で得られたポリアミド酸溶液を化学環化することによる方法が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法で得たポリ−p−フェニレンピロメリットイミドフィルムのヤング率は高々8.5GPaにすぎない。
【0005】
また、他の方法として、置換基を有するp−フェニレンジアミンとピロメリット酸無水物の反応で得られたポリアミック酸溶液に無水酢酸を大量に添加したドープを流延し、低音で減圧下にて乾燥した後熱処理することにより、ヤング率20.1GPaのフィルムが得られることが記載されている(特許文献2参照)。しかしこの方法は低温で数時間の乾燥処理を必要とすることから工業的には非現実的な技術であり、またこの技術をポリ−p−フェニレンピロメリットイミドに適用した場合には機械特性すら不可能な脆弱なフィルムしか得られないことが記載されている。従って、剛直な芳香族ポリイミドに広く適用可能な高ヤング率フィルムの実現技術は未完成であり、特に高ヤング率か実用的な靭性を有する全芳香族ポリイミドフィルムは知られていない。
【0006】
一方、ポリイミドを延伸配向させる方法として、ポリ−p−フェニレンピロメリットイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を製膜後乾燥し、得られたポリアミド酸フィルムを溶剤中で1軸延伸した後、イミド化する方法が提案され(非特許文献2参照)、また長鎖(炭素数10〜18)のエステル基をポリマー鎖中に導入した前駆体ポリアミドエステルを湿式防止したものを延伸配向したのち過熱によりイミド化する方法が提案されている(非特許文献3参照)。しかしながら、いずれの方法も、面内にバランスの取れた二軸延伸については記載されていない。
【0007】
一方、ポリイミドを面内に二軸延伸配向させる方法として、ポリアミド酸をジシクロヘキシルジカルボジイミドと反応せしめ、脱水イミド化反応により得られたゲルフィルムを二軸延伸し二軸配向ポイリミドフィルムを製造する方法が提案されている(特許文献3及び4)。しかしながら、ジシクロヘキシルカルボジイミドと反応せしめて得られたゲルフィルムは、二軸延伸する際に、延伸安定性が悪く所望の延伸倍率を得ようとしても、頻繁に低延伸倍率で直ぐに破断が起きるといった工程安定性に劣るという課題があった。
【0008】
【非特許文献1】
繊維学会誌43巻、78頁(1987)
【0009】
【非特許文献2】
高分子論文集Vol.56,No.5,PP282〜290
【0010】
【非特許文献3】
Polymer Preprint Japan,Vol.141,No.9(1992)3752頁
【0011】
【特許文献1】
特開平1−282219号公報 1頁
【0012】
【特許文献2】
特開平6−172529号公報 1頁
【0013】
【特許文献3】
特開2001−302821号公報 1頁
【0014】
【特許文献4】
特開2002−030519号公報 1頁
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、二軸方向にバランスのとれた高ヤング率の二軸配向ポリイミドフィルムを製造するに際し、ゲル延伸工程において延伸安定性に優れた二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について詳細を説明する。
【0017】
本発明の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法は、下記の工程(1)〜(4)から成る。
(1)芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分とを有機極性溶媒中にて反応せしめ、ポリアミド酸溶液を調製する。
(2)得られたポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、脱水剤を有機溶媒に溶解してなるイソイミド化溶液中に流延して得られたフィルムを支持体と一緒に浸漬して、ポリアミド酸の少なくとも一部がポリイソイミドに変換されたゲルフィルムを形成する。
(3)得られたゲルフィルムを支持体から分離し、必要に応じ洗浄した後、二軸延伸する。
(4)得られた二軸延伸ゲルフィルムを、必要に応じ洗浄した後、熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する。
【0018】
まず、工程(1)について説明する。工程(1)において、芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分とを有機極性溶媒中にて反応せしめ、ポリアミド酸溶液を調製する。
【0019】
工程(1)における芳香族ジアミン成分としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラセン、2,7−ジアミノアントラセン、1,8−ジアミノアントラセン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノ(m−キシレン)、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノトルエンベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルチオエーテル)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)アミンビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミンビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミンビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、1,1−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−クロロ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジメチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3,5−ジブロモ−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[3−メチル−4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等およびそれらのハロゲン原子あるいはアルキル基による芳香核置換体が挙げられる。
【0020】
上記の芳香族ジアミン成分は二種以上を同時に併用することもできる。また、好ましい芳香族ジアミン成分としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが例示される。更に好ましい芳香族ジアミン成分としては、全ジアミン成分に基づき、p−フェニレンジアミンが40〜100モル%であることが、二軸配向ポリイミドフィルムの弾性率として、例えば5GPa以上といった高弾性率特性を発現する為に好ましい。p−フェニレンジアミン40モル%以上とすることで、二軸配向ポリイミドフィルムの弾性率として、例えば5GPa以上といった高弾性率特性が発現されるといった良好な機械物性が得られる。更に好ましくは50〜100モル%以上である。この場合、p−フェニレンジアミン以外の他の芳香族ジアミン成分としては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが好ましい。これらの中でも、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。また、芳香族ジアミン成分の実質的な形態としては、芳香族ジアミンの他、芳香族ジアミンのアミド酸形成性誘導体でもよい。例えば芳香族ジアミン成分のアミノ基の一部又は全てがトリアルキルシリル化されていてもよく、酢酸の如く脂肪族酸によりアミド化されていても良い。この中でも、実質的に芳香族ジアミンを用いることが好ましい。
【0021】
芳香族テトラカルボン酸成分としては、例えばピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,6,7−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,9,10−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ピリジン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物等が挙げられる。
【0022】
この中でも、好ましい芳香族テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸単独からなるかあるいはピロメリット酸および上記の如きそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組合せからなるものが例示される。より具体的には、全テトラカルボン酸成分に基づき、ピロメリット酸二無水物が50〜100モル%であることが好ましい。ピロメリット酸二無水物50モル%以上とすることで、二軸配向ポリイミドフィルムの弾性率として、例えば5GPa以上といった高弾性率特性が発現されるといった良好な機械物性が得られる。好ましくはピロメリット酸二無水物が70〜100モル%であり、更に好ましくは90〜100モル%であり、ピロメリット酸二無水物単独で用いることが特に好ましい。また、芳香族テトラカルボン酸成分は二無水物以外でも構わない。例えば、芳香族テトラカルボン酸成分の一部又は全部がジカルボン酸ハロゲン化物ジカルボン酸アルキルエステル誘導体であっても構わない。芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。
【0023】
以上のことから、芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分との組み合わせとしては、例えば、芳香族ジアミン成分がp−フェニレンジアミン単独から成るあるいはp−フェニレンジアミン40モル%以上100モル%未満とそれ以外の他の芳香族ジアミン50モル%以下から成り、かつ芳香族テトラカルボン酸成分がピロメリット酸二無水物単独から成る組み合わせの場合が、例えば弾性率が10GPa以上といった特に優れた機械物性が得られる点から、特に好ましい例として挙げることができる。その他の芳香族ジアミンの好ましい例としては、前述の通り、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが挙げられ、このうち3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。
【0024】
工程(1)において用いられる有機極性溶媒としては、原料及びポリアミド酸の溶解性、化学脱水反応後のゲルフィルムの膨潤性及び取扱性の点から、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンが好ましい例として挙げられる。また、これらの有機極性溶媒二種以上を併用して用いることもできる。好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドとN−メチル−2−ピロリドンである。
【0025】
芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分との仕込み比は、下記式(I)
0.90≦ B/A ≦ 1.10・・・(I)
を満たすことが好ましい。ここで、上記式(I)中、Aは芳香族ジアミン成分全仕込み量のモル数、Bは芳香族テトラカルボン酸成分全仕込み量のモル数を表わす。B/Aの値が上記式(I)の範囲外となると、充分な重合度が得られなくなり好ましくない。より好ましくはB/Aの値が0.95〜1.05であり、更に好ましくは0.97〜1.03である。
【0026】
各原料の仕込み方法については特に限定はなく、添加順序や添加方法は従来公知のいずれの方法でもよい。好ましくは、芳香族ジアミン成分を先ず有機極性溶媒に溶解し、次いで所望の反応温度にて芳香族テトラカルボン酸成分を添加し、重合させる。芳香族テトラカルボン酸成分の添加は1段で規定量添加しても、複数回に分割して、添加してもよい。特に反応熱による反応温度制御が困難な場合は、複数回に分割することが好ましい。
【0027】
工程(1)において得られるポリアミド酸溶液の濃度が1〜40wt%であることが好ましい。濃度が1wt%未満の場合、ポリアミド酸の粘度が低すぎて、工程(2)において支持体上に流延することが困難となり、40wt%より高濃度になると、反対に粘度が高すぎて、流動性が低くなり、支持体上に流延することが困難となったり、均一の厚みに流延することが困難となることがある。好ましい濃度は1〜35wt%であり、更に好ましくは2〜30wt%である。
【0028】
該ポリアミド酸の重合時の反応温度は、特に限定されるものではない。従来公知の範囲でよいが、−30℃以上、80℃以下が好ましい。−30℃未満の場合、充分な反応速度が得られず、好ましくない。また、80℃より高いと、部分的にイミド化が起きたり、副反応が発生したりする為、安定してポリアミド酸が得られなくなる場合がある。このましくは−10℃以上、70℃以下であり、更に好ましくは、0℃以上50℃以下である。
【0029】
本発明の工程(1)は低湿度条件で行われることが好ましい。例えば、窒素、アルゴンといった低湿度不活性ガス雰囲気下や、乾燥空気雰囲気下が好ましい。また、工程1において用いられる原料や溶媒も出来るだけ乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0030】
該ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の末端は封止されることが好ましい。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては、従来公知のものを用いることができる。例えば、酸無水物成分としては、無水フタル酸およびその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびその置換体、無水コハク酸およびその置換体、アミン成分としてはアニリン及びその置換体が好ましい例として挙げられる。この中でも、無水フタル酸およびその置換体及び/又はアニリン及びその置換体が特に好ましい例として挙げることが出来る。また末端封止剤の添加タイミングは特に限定されず、ポリアミド酸の重合原料仕込み時、重合途中、重合終了時のいずれに添加しても良い。添加量は実質的重合が停止し且つポリアミド酸溶液の粘度が安定する為に必要な量でよく、簡単な実験をすることで、好適な添加量を判断することができる。
【0031】
工程(2)について説明する。工程(2)では、上記工程(1)にて得られたポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、脱水剤を有機溶媒に溶解してなるイソイミド化溶液中に流延して得られたフィルムを支持体と一緒に浸漬して、ポリアミド酸の少なくとも一部がポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを形成する。
【0032】
上記工程(1)で得られた溶液を支持体上に流延するには、一般に知られている湿式ならびに乾式成形方法等のいかなる製膜方法を用いてもよい。この製膜方法としてはダイ押し出しによる工法、アプリケーターを用いたキャスティング、コーターを用いる方法などが例示される。ポリアミド酸の流延に際して支持体として金属性のベルト、キャステイングドラムなどを用いることができる。またポリエステルやポリプロピレンのような有機高分子フィルム上に流延しそのままイソイミド化溶液に導入することもできる。これらの工程は低湿度雰囲気下で行うことが好ましい。
【0033】
工程(2)において用いられるイソイミド化溶液は脱水剤であるジイソプロピルカルボジイミドを有機極性溶媒に溶解して調整された溶液であることが必須である。ここで脱水剤としてジイソプロピルカルボジイミドを用いることで、驚くべきことに得られるゲルフィルムの延伸性が優れ、二軸配向ポリイミドフィルムを製造するに際し、ゲル延伸工程の安定性が非常に優れるという効果が得られる。このため、脱水剤としてジイソプロピルカルボジイミドを用いることは非常に重要かつ必須の条件である。この原因は明らかではないが、従来技術で用いられてきたジシクロヘキシルカルボジイミドの場合、脱水反応が進行する際に副生成物としてジシクロヘキシルウレアが生成する。ジシクロヘキシルウレアは溶媒への溶解性が著しく低い為、有機極性溶媒にて高度に膨潤したゲルフィルム中においても微量ながら、微小結晶として析出し、ゲルフィルムの欠陥構造となると考えられる。これが原因となり、延伸工程において、低延伸倍率で破断が起きてしまうものと考えられる。これに対し、ジイソプロピルカルボジイミドを脱水剤として用いた場合、副生成するジイソプロピルウレアは有機極性溶媒に良好な溶解性を有する為、ゲルフィルム中に析出することなく、結果としてゲルフィルムの欠陥構造発生を抑制できるものと考えられる。
【0034】
イソイミド化溶液に用いられる溶媒としては、工程(1)と同じものが例示される。また、濃度は、特に限定されるものでは無く、用いられる支持体上に流延されたポリアミド酸との量比、ポリアミド酸の脱水剤との反応性、ポリアミド酸の粘度等を勘案し、適宜好適な濃度を設定することができる。例えば、反応を十分に進行させるためには、0.5重量%以上99重量%以下であることが好ましい。実質的には、イソイミド化溶液中に存在するジイソプロピルカルボジイミドのモル数が、イソイミド化溶液中に浸漬されるポリアミド酸繰り返し単位のモル数の1/4倍以上であることが好ましい。これより少ないとイソイミド化反応が不十分となり、実質的に自己支持性のないゲルフィルムとなり、後の肯定でのハンドリングが困難となる場合がある。
【0035】
また、イソイミド化反応温度は、特に規定するものではないが、イソイミド化溶液の凝固点以上、沸点以下の温度を用いることができる。実質的には−20℃以上200℃以下である。イソイミド化反応時間は、反応温度、イソイミドか溶液の濃度などにより、好適な条件が異なる為、適宜好適な条件を用いることができるが、実質的には1秒以上、8時間以下である。1秒未満ではイソイミド化反応が十分進行しない場合があり、8時間より長いと生産効率が低下し、好ましくない。
【0036】
この工程(2)において、ポリアミック酸の少なくとも1部がポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムが形成される。ゲルフィルムのイソイミド基分率が10%以上であるとき高い延伸倍率が得られ好ましい。より好ましくはイソイミド基分率が15%以上であり、更に好ましくは、20%以上である。このようにして工程(2)において、均質かつ高度に膨潤した延伸安定性に富む未延伸ゲルフィルムを得るところに最大の特徴の1つを有すると言える。このゲルフィルムのイソイミド基分率とイミド基分率との詳細な算出方法は後述するが、赤外吸収スペクトルから容易に算出することが出来る。
【0037】
次いで工程(3)について説明する。工程(3)では、工程(2)にて得られたゲルフィルムを支持体から分離し、必要に応じ洗浄した後、二軸延伸する。支持体から分離されたゲルフィルムは、必要に応じて、脱水剤、脱水剤反応生成物などの除去を目的として、洗浄を行うことができる。また、ゲルフィルムの洗浄を行うことが好ましい。洗浄を必要とする場合には、例えば工程(1)で用いられた溶媒と同様の溶媒が用いられる。
【0038】
延伸は、縦横それぞれの方向に1.05〜10.0倍の倍率で延伸することができる。延伸温度は、特に限定するものではないが、溶剤が揮発し延伸性が低下しない程度であればよく、例えば−20〜180℃が好ましく、−10〜160℃がより好ましく、0〜140℃が特に好ましい。なお、延伸は逐次あるいは同時二軸延伸のいずれの方式で行ってもよい。延伸は溶剤中、空気中、不活性雰囲気中、また低温加熱した状態でもよい。
【0039】
工程(3)で二軸延伸に供されるゲルフィルムの膨潤度は特に限定されるものではないが、150〜5000%であることが好ましい。これにより良好な延伸性が得られる。50%以下では延伸性が不十分であり、5000%以上ではゲルフィルムの強度が低下しハンドリングが困難となる。
【0040】
最後に工程(4)について説明する。工程(4)では、工程(3)にて得られた二軸延伸ゲルフィルムを、必要に応じ洗浄した後、熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する。
【0041】
二軸延伸ゲルフィルムは熱処理前に、例えば、有機極性溶媒、脱水剤、脱水剤反応生成物などを除去することなどを目的として、必要に応じて、洗浄することができる。従って、洗浄には、有機極性溶媒を溶解し得る例えばイソプロパノールの如き低級アルコール、オクチルアルコールの如き高級アルコール、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素、ジオキシサンの如きエーテル系溶媒およびアセトン、メチルエチルケトンの如きケトン系溶媒、酢酸エチルの如きエステル系有機溶剤等を挙げることができる。
【0042】
二軸延伸ゲルフィルムの熱処理方法としては熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱の他、熱板、ホットロールを用いた接触による加熱などが例示できる。この際、段階的に温度をあげることでイミド化を進行させることが好ましい。
【0043】
この熱処理は定長ないし緊張下にて行うことが、得られる二軸配向ポリイミドフィルムの例えば5GPa以上といった高弾性率などの機械物性を発現させる上で、好ましい。更に、熱処理の最終温度又は最高温度が300〜550℃の温度で実施することが好ましい。これより低いと充分なイミド化が進行しなかったり、充分なイミド化をする為に長時間を要する為、好ましくない。550℃より高いと二軸配向ポリイミドフィルムの分解が起こり、物性や品質の低下が起こることがあり、好ましくない。熱処理温度の時間は特に限定されるものではないが、実質的に、1秒以上5時間以内である。
【0044】
【発明の効果】
上記の如くして、ジイソプロピルカルボジイミドを脱水剤として用いることにより、ポリアミド酸溶液からイソイミド構造を含有するゲルフィルムを形成し、二軸配向ポリイミドフィルムを製造するに際して、ゲル延伸工程が非常に安定し、効率的に二軸配向ポリイミドフィルムを製造することが可能となる。また、このようにして得られた二軸配向ポリイミドフィルムは分子鎖がフィルム面内に効果的な配向構造を形成し、面内物性バランスの優れた高弾性ポリイミドフィルムとなる。更に該ポリイミドは高弾性率であるばかりでなく、本発明の方法によれば、耐熱性、機械的特性に優れ、さらに低吸湿率である剛直ポリイミドフィルムを得ることができる。また、上記の如くして得られた本発明のポリイミドフィルムは厚みが10μm程度といった極薄いフィルムであっても、充分な剛性を有することから、電子用途、例えば銅箔が積層された電気配線板の支持体といった電子実装用途を始め、フレキシブル回路基板、TAB(テープオートメイテッドボンディング)用テープ、LOC(リードオンチップ)用テープの支持体として用いることもできる。また、電気記録テープのベースとして用いることができる。以上のように、本発明のポリイミドフィルムは各種工業用用途に好適に用いることが出来る。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細且つ具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0046】
尚、ポリアミック酸の還元粘度は1wt%塩化リチウム/NMP溶液を溶解液として用いて、ポリマー濃度0.05wt%にて、温度0℃にて測定したものである。
【0047】
また、膨潤度(wt/wt%)は膨潤した状態の重量(WS)と乾燥した状態の重量(Wd)とから下記式(II)
【0048】
【数1】
膨潤度(wt/wt%)=(WS/Wd−1)×100 ・・・(II)
により算出した。
【0049】
また、強伸度およびヤング率は50mm×10mmのサンプル用い、引張り速度5mm/分にて、オリエンテックUCT−1Tにより測定を行ったものである。
イソイミド基分率およびイミド基分率は、フーリエ変換赤外分光計(Nicolet Magna 750)を用いて、透過法により測定した結果から、下記(III)、(IV)
【0050】
【数2】
イソイミド基分率(%)=(A920/A1024)/11.3×100・・・(III)
A920 :サンプルのイソイミド結合由来ピーク(920cm−1)の吸収強度
A1024:サンプルのベンゼン環由来ピーク(1024cm−1)の吸収強度
【0051】
【数3】
イミド基分率(%)=(A720/A1024)/5.1×100 ・・・(IV)
A720 :サンプルのイミド結合由来ピーク(720cm−1)の吸収強度
A1024:サンプルのベンゼン環由来ピーク(1024cm−1)の吸収強度
から算出した。
【0052】
[比較例1]
温度計・攪拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下モレキュラーシーブスで脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)910mlを入れ、さらにp−フェニレンジアミン19.9gを加えた後に完全に溶解し、その後、氷浴下冷却した。この冷却したジアミン溶液に無水ピロメリット酸二無水物40.1gを添加し一時間反応させ、さらに室温下2時間反応後、アニリン0.011gを添加しさらに30分反応させた。得られたポリアミド酸溶液の対数粘度は4.12であった。
【0053】
このアミド酸溶液をガラス板上に厚み1.5mmのドクターブレードを用いてキャストし、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)濃度28wt%のN−メチル−2−ピロリドン溶液からなるDCC浴に導入し8分反応固化させたのちガラス板から剥離し、さらに12分反応させ、ゲルフィルムを得た。このゲルフィルムのイソイミド基分率は43%であった。
【0054】
該ゲルフィルムを膨潤溶媒であるNMPに室温下15分浸漬により、洗浄した後、チャックで固定し直交する二方向にそれぞれ2.3倍の倍率で室温にて、同時二軸延伸した。該ゲルフィルム二軸延伸工程を20回実施した。この際、20回の二軸延伸のうち、13回はゲルフィルムの二軸延伸途中で破断が起こり、2.3×2.3倍の二軸延伸ゲルフィルムを得ることが出来なかった。この際、二軸延伸に供したゲルフィルムの膨潤度は1817%であった。
【0055】
一部の2.3×2.3倍に二軸延伸できた二軸延伸ゲルフィルムをチャックで延伸されたままの状態で、金枠で挟み、定長に固定し、トルエンで洗浄しゲルフィルムから膨潤溶媒などを除去した。
【0056】
二軸延伸ゲルフィルムは金枠固定したまま、200℃で乾燥した。さらに段階的に熱処理イミド化を行い最終的には450℃まで昇温させ、二軸配向ポリパラフェニレンピロメリットイミドフィルムを得た。得られたポリパラフェニレンピロメリットイミドフィルムの厚みは7.1μm、引張り弾性率は直交する延伸方向について18.3GPaおよび17.8GPa、引張り強度はそれぞれ378MPaおよび381MPa、伸度はそれぞれ2.4%および2.1%であった。
【0057】
[実施例1]
イソイミド化溶液として、ジシクロヘキシルカルボジイミド濃度28wt%のN−メチル−2−ピロリドン溶液をジイソプロピルカルボジイミドの濃度15wt%N−メチル−2−ピロリドン溶液に変更した以外は比較例1と同様にしてゲルフィルムを作成した。
【0058】
該ゲルフィルムを膨潤溶媒であるNMPに室温下15分浸漬により、洗浄した後、チャックで固定し直交する二方向にそれぞれ2.3倍の倍率で室温にて、同時二軸延伸した。該ゲルフィルム二軸延伸工程を20回実施した。この際、20回の二軸延伸のうち、1回だけ、ゲルフィルムの二軸延伸途中で破断が起こり、2.3×2.3倍の二軸延伸ゲルフィルムを得ることが出来なかった。その他の19回の二軸延伸は、安定して所定延伸倍率である2.3×2.3倍の二軸延伸ゲルフィルムを得ることが出来た。この際、二軸延伸に供したゲルフィルムの膨潤度は1715%であった。
【0059】
2.3×2.3倍に二軸延伸できた二軸延伸ゲルフィルムの一部をチャックで延伸されたままの状態で、金枠で挟み、定長に固定し、トルエンで洗浄しゲルフィルムから膨潤溶媒などを除去した。
【0060】
二軸延伸ゲルフィルムは金枠固定したまま、200℃で乾燥した。さらに段階的に熱処理イミド化を行い最終的には450℃まで昇温させ、二軸配向ポリパラフェニレンピロメリットイミドフィルムを得た。得られたポリパラフェニレンピロメリットイミドフィルムの厚みは7.6μm、引張り弾性率は直交する延伸方向について19.1GPaおよび17.1GPa、引張り強度はそれぞれ386MPaおよび383MPa、伸度はそれぞれ3.1%および2.5%であった。
【0061】
[実施例2]
温度計・攪拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下モレキュラーシーブスで脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)2010mlを入れ、さらにp−フェニレンジアミン45.1g及び3,4’−ジアミノジフェニルエーテル83.4gを加えた後に完全に溶解し、その後、氷浴下冷却した。この冷却したジアミン溶液に3回に分けて、総量が181.9gとなるように無水ピロメリット酸二無水物を添加し一時間反応させ、さらに室温下2時間反応後、アニリン0.049gを添加しさらに30分反応させた。得られた15wt%ポリアミド酸溶液の対数粘度は5.81であった。
【0062】
このアミド酸溶液をガラス板上に厚み1.0mmのドクターブレードを用いてキャストし、ジイソプロピルカルボジイミド濃度15wt%のN−メチル−2−ピロリドン溶液からなるイソイミド化溶液浴に導入し8分反応固化させたのちガラス板から剥離し、さらに12分反応させ、ゲルフィルムを得た。このゲルフィルムのイソイミド基分率は38%であった。
【0063】
該ゲルフィルムを膨潤溶媒であるNMPに室温下15分浸漬により、洗浄した後、チャックで固定し直交する二方向にそれぞれ3.0倍の倍率で室温にて、同時二軸延伸した。該ゲルフィルム二軸延伸工程を20回実施した。この際、20回の二軸延伸のうち、二軸延伸途中で破断が発生することは1回もなかった。この際、二軸延伸に供したゲルフィルムの膨潤度は317%であった。
【0064】
一部の3.0×3.0倍に二軸延伸できた二軸延伸ゲルフィルムをチャックで延伸されたままの状態で、金枠で挟み、定長に固定し、トルエンで洗浄しゲルフィルムから膨潤溶媒などを除去した。
【0065】
二軸延伸ゲルフィルムは金枠固定したまま、200℃で乾燥した。さらに段階的に熱処理イミド化を行い最終的には450℃まで昇温させ、二軸配向共重合ポリイミドフィルムを得た。得られた共重合ポリイミドフィルムの厚みは9.6μm、引張り弾性率は直交する延伸方向について8.6GPaおよび8.8GPa、引張り強度はそれぞれ254MPaおよび241MPa、伸度はそれぞれ28%および24%であった。
【0066】
以上の実施例1及び2から明らかなように、脱水剤としてジイソプロピルカルボジイミドを用いることにより、ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いる比較例1に較べ、著しく、延伸工程における破断などの工程異常が少なく、安定して高品質の二軸配向ポリイミドフィルムを製造することができる。
Claims (11)
- 下記工程(1)〜(4)
(1)芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分とを有機極性溶媒中にて反応せしめ、ポリアミド酸溶液を調製する、
(2)得られたポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、脱水剤を有機溶媒に溶解してなるイソイミド化溶液中に流延して得られたフィルムを支持体と一緒に浸漬して、ポリアミド酸の少なくとも一部がポリイソイミドに変換されたゲルフィルムを形成する、
(3)得られたゲルフィルムを支持体から分離し、必要に応じ洗浄した後、二軸延伸する、
(4)得られた二軸延伸ゲルフィルムを、必要に応じ洗浄した後、熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する、
の工程から成るポリイミドフィルムの製造方法であって、上記工程(2)において用いられる脱水剤がジイソプロピルカルボジイミドであることを特徴とする二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。 - 工程(1)において用いられる芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸成分が実質的に、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物であることを特徴とする請求項1記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
- 工程(1)において用いられる芳香族テトラカルボン酸成分の50〜100モル%がピロメリット酸成分であることを特徴とする請求項1又は2記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
- 工程(1)において用いられる芳香族ジアミン成分の40〜100モル%がp−フェニレンジアミン成分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
- 工程(1)において用いられる有機極性溶媒がN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンよりなる群から選ばれる少なくとも一種から成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
- 工程(1)において得られるポリアミド酸溶液の濃度が1〜40wt%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
- 工程(2)に於けるイソイミド化溶液に用いられる有機極性溶媒がN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンよりなる群から選ばれる少なくとも一種から成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
- 工程(2)において得られるゲルフィルムのイソイミド基分率が20%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の二軸配向ポイリミドフィルムの製造方法。
- 工程(3)において行なわれるゲルフィルムの二軸延伸における延伸倍率が、縦、横それぞれ方向に付き1.05〜10倍であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
- 工程(4)における熱処理を定長ないし緊張下にて熱処理を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
- 工程(4)における熱処理の最高温度が300〜550℃であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の二軸配向ポリイミドフィルムの製造方法。
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