JP2004174616A - 高送り条件での切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製エンドミルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高送り条件での切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製エンドミルの製造方法を提供する。
【解決手段】表面被覆超硬合金製エンドミルを製造する方法において、 エンドミル本体の研削加工前の焼結素材を、(a)原料粉末である炭化タングステン粉末、炭化クロム粉末、炭化バナジウム粉末、およびCo粉末の混合時に、混合粉末に対する割合で2〜8質量%の加熱気化粉末を配合して、分散分布せしめ、(b)上記の加熱気化粉末配合の混合粉末より押出しプレス成形された長尺状成形体を加熱乾燥して、前記加熱気化粉末の気化による空孔を前記長尺状成形体中に形成し、(c)ついで、上記空孔形成後の長尺状成形体を焼結して、焼結時に毛細管現象により前記空孔内に結合相形成成分であるCoが凝集した焼結体を形成し、(d)さらに、上記焼結体にHIP処理を施して、上記Co凝集組織を微細化する、以上(a)〜(d)により製造する。
【選択図】 なし
【解決手段】表面被覆超硬合金製エンドミルを製造する方法において、 エンドミル本体の研削加工前の焼結素材を、(a)原料粉末である炭化タングステン粉末、炭化クロム粉末、炭化バナジウム粉末、およびCo粉末の混合時に、混合粉末に対する割合で2〜8質量%の加熱気化粉末を配合して、分散分布せしめ、(b)上記の加熱気化粉末配合の混合粉末より押出しプレス成形された長尺状成形体を加熱乾燥して、前記加熱気化粉末の気化による空孔を前記長尺状成形体中に形成し、(c)ついで、上記空孔形成後の長尺状成形体を焼結して、焼結時に毛細管現象により前記空孔内に結合相形成成分であるCoが凝集した焼結体を形成し、(d)さらに、上記焼結体にHIP処理を施して、上記Co凝集組織を微細化する、以上(a)〜(d)により製造する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に超硬合金で構成されたエンドミル本体(以下、超硬エンドミル本体という)がすぐれた強靭性を有し、したがって高送り条件での切削加工で切刃がすぐれた耐チッピング性を示し、この結果長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、被覆超硬エンドミルと云う)を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に、各種材料の面加工や溝加工、さらに肩加工などの切削加工に、超硬エンドミル本体の表面に、0.5〜7μmの平均層厚で硬質被覆層を形成してなる被覆超硬エンドミルが用いられ、この被覆超硬エンドミルが切刃部とシャンク部からなり、前記切刃部がスクエア形状のものや、切刃部の先端部がボール形状を有するもの、また切刃部がルーター形状を有するものなどが知られている。
また、被覆超硬エンドミルを構成する超硬エンドミル本体の少なくとも前記切刃部が、実質的に結合相と硬質分散相で構成され、結合相形成成分として質量%(以下、%は質量%を示す)で、5〜10%の割合で含有するCo中に0.1〜2%の割合で固溶含有したCrおよび/またはV成分による粒成長抑制作用で、硬質分散相を構成する炭化タングステン(以下、WCで示す)の粒径を、平均粒径で、望ましくは0.7μm以下とした微粒組織の超硬合金で構成された被覆超硬エンドミルが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
さらに、上記の被覆超硬エンドミルの超硬エンドミル本体が、例えば原料粉末として、いずれも0.1〜3μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、炭化クロム(以下、Cr3C2で示す)粉末、炭化バナジウム(以下、VCで示す)粉末、およびCo粉末を用い、これら原料粉末を所定の配合組成に配合し、湿式混合し、乾燥した後、押出しプレスにて所定の直径の長尺状成形体とし、この長尺状成形体を、1.3〜13.3Paの真空雰囲気中、1350〜1480℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この昇温温度に1〜2時間保持後、雰囲気を、例えばArを導入して4.9〜14.7MPaの加圧雰囲気とし、前記昇温温度および加圧雰囲気の条件下に15〜60分間保持した後、少なくとも1200℃までを50〜100℃/minの冷却速度で冷却することにより、Cr(Cr3C2)および/またはV(VC)がCo中に固溶してなる結合相とWCの硬質分散相で構成された超硬合金からなる所定の直径の焼結素材を形成し、この焼結素材から所定の形状に研削加工することにより製造されることもよく知られるところである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記硬質被覆層を、
組成式:(Ti1−XAlX)N、
組成式:[Ti1−(X+Y)AlXSiY]N、
で表わした場合、厚さ方向中央部のオージェ分光分析装置による測定で、原子比で、X:0.35〜0.70、Y:0.01〜0.10を満足するTiとAlの複合窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]層およびTiとAlとSiの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Si)Nで示す]層のうちのいずれか、または両方で構成された被覆超硬エンドミルも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特公昭62−56224号公報
【特許文献2】
特開平05−179310号公報
【特許文献3】
特開平07−310174号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年の切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要求は強く、これに伴い、切削装置の高性能化と相俟って、高送り条件での切削加工が行われる傾向にあるが、上記の従来被覆超硬エンドミルにおいては、これをきわめて高い機械的衝撃の加わる高送り条件での切削加工に用いると、特に超硬エンドミル本体の強靭性不足が原因で切刃にチッピング(微少欠け)が発生し易く、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述のような観点から、高送り条件での切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬エンドミルを開発すべく、特にこれを構成する超硬エンドミル本体について、製造面から研究を行った結果、
上記超硬エンドミル本体の研削加工前の焼結素材の製造に際して、原料粉末であるWC粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、およびCo粉末の混合時に、混合粉末に対する割合で2〜8%の加熱気化粉末、望ましくはパラフィンを配合して、分散分布せしめておくと、この加熱気化粉末配合の混合粉末より押出しプレス成形された長尺状成形体の加熱乾燥時に、前記加熱気化粉末の気化による空孔が前記長尺状成形体中に形成されることになるが、これの焼結時に毛細管現象により前記空孔内に結合相形成成分であるCoが凝集して、前記空孔がCoで充填された組織の焼結体が形成されるようになり、これにHIP処理を施して、前記Co凝集組織を微細化してやると、この結果の焼結素材は、微細なCo粒が分散分布した組織によってすぐれた強靭性をもつようになることから、かかる焼結素材を用いて製造された被覆超硬エンドミルは、高い機械的衝撃の加わる高送り条件での切削加工でもすぐれた耐チッピング性を発揮するようになる、という研究結果を得たのである。
【0007】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、切刃部とシャンク部からなり、少なくとも前記切刃部が、結合相形成成分として、焼結時にWC粒の成長抑制作用を発揮するCrおよび/またはVを0.1〜2%%含有し、さらに結合相形成成分として、Coを5〜10%含有し、残りが硬質分散相形成成分としてのWCと不可避不純物からなる組成を有する超硬エンドミル本体の表面に、0.5〜7μmの平均層厚で硬質被覆層、望ましくは、
組成式:(Ti1−XAlX)N、
組成式:[Ti1−(X+Y)AlXSiY]N、
で表わした場合、厚さ方向中央部のオージェ分光分析装置による測定で、原子比で、X:0.35〜0.70、Y:0.01〜0.10を満足する(Ti,Al)N層および(Ti,Al,Si)N層のうちのいずれか、または両方で構成された硬質被覆層を形成することにより被覆超硬エンドミルを製造する方法ににおいて、
(a)上記超硬エンドミル本体の研削加工前の焼結素材の製造に際して、原料粉末であるWC粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、およびCo粉末の混合時に、混合粉末に対する割合で2〜8%の加熱気化粉末、望ましくはパラフィンを配合して、分散分布せしめ、
(b)上記の加熱気化粉末配合の混合粉末より押出しプレス成形された長尺状成形体を加熱乾燥して、前記加熱気化粉末の気化による空孔を前記長尺状成形体中に形成し、
(c)ついで、上記空孔形成後の長尺状成形体を焼結して、焼結時に毛細管現象により前記空孔内に結合相形成成分であるCoが凝集した焼結体を形成し、
(d)さらに、上記焼結体にHIP処理を施して、上記Co凝集組織が微細化された焼結素材を形成する、
ことにより、高送り条件での切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬エンドミルを製造する方法に特徴を有するものである。
【0008】
以下に、この発明の被覆超硬エンドミルの製造方法において、これを構成する超硬エンドミル本体の組成、および硬質被覆層の組成および平均層厚、さらにを上記の通りに限定した理由を説明する。
(1) ()超硬エンドミル本体の組成
(a)Co含有量
Co成分には、焼結性を向上させ、結合相を形成して強度を向上させ、さらに微細なCo粒として分散分布して強靭性を向上させ、もって高送り条件での切削加工で発生する高い機械的衝撃を吸収して、切刃にチッピングが発生するのを防止する作用があるが、その含有量が5%未満では前記作用に所望の向上効果を確保することができず、一方その含有量が10%を超えると高送り加工条件下では切刃に塑性変形が発生し易くなり、これが原因で切刃に摩耗促進の原因となる偏摩耗が発生するようになることから、その含有量を5〜10%と定めた。
【0009】
(b)Crおよび/またはVの含有量
これらの成分には、結合相を形成するCo中に固溶した状態で硬質分散相であるWC粒の成長を著しく抑制して、これの粒径を平均粒径で、望ましくは0.7μm以下とした微粒組織とする作用があるが、この作用はCrおよびV成分の含有量が0.1%未満では不充分となり、一方その含有量が2%を超えると、これらの成分が炭化物として析出し、強度および靭性を低下させるようになることから、その含有量を0.1〜2%と定めた。
【0010】
(2) 硬質被覆層の組成および平均層厚
(Ti,Al)N層および(Ti,Al,Si)N層におけるAlは、層の高温硬さおよび耐熱性を高め、もって耐摩耗性を向上させるために固溶するものであり、したがって組成式:(Ti1−XAlX)N、および同[Ti1−(X+Y)AlXSiY]NのX値が0.35未満では前記高温硬さおよび耐熱性に所望の向上効果が得られず、一方その値が0.70を越えると、硬質被覆層にチッピングが発生し易くなると云う理由によりX値を原子比で0.35〜0.70と定めたものである。
また、((Ti,Al,Si)N層におけるSiには、層の耐熱性を一段と向上させる作用があるが、上記組成式のY値が0.01未満では所望の耐熱性向上効果が得られず、一方その値が0.10を越えると、硬質被覆層にチッピングが発生し易くなると云う理由によりY値を0.01〜0.10(原子比)と定めた。
さらに、その平均層厚が0.5μm未満では、硬質被覆層形成による所望の耐摩耗性向上効果が得られず、一方その平均層厚が7μmを越えると、硬質被覆層自体にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜7μmと定めた。
【0011】
(3) 加熱気化粉末の配合割合
上記の通り加熱気化粉末には、加熱乾燥時に気化して、微細なCo粒が分散分布し、これによって機械的衝撃が吸収されるようになる組織を焼結素材中に形成するのに不可欠な空孔を長尺状成形体中に形成する作用があるが、その割合が、原料粉末の混合粉末に対する割合で2%未満では前記空孔の形成が少な過ぎ、この結果微細なCo粒の分散割合が不十分となり、所望の耐チッピング性を切刃に確保することができず、一方その割合が8%を越えると、加熱乾燥時に形成された空孔を焼結時にCoで充填することができなくなり、Coの未充填部分が高い機械的衝撃を伴なう高送り切削加工では破壊の起点となり、折損し易くなることから、その配合割合を2〜8%と定めた。
【0012】
【発明の実施の態様】
つぎに、この発明の被覆超硬エンドミルの製造方法を実施例により具体的に説明する。
(a)原料粉末として、0.3μmの平均粒径を有するWC粉末、同2.3μmのCr3 C2 粉末、同1.8μmのVC粉末、および同1.5μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、潤滑材として前記原料粉末に対する割合で1%のステアリン酸亜鉛を添加して、ボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、加熱気化粉末として、目の開きが250μmの篩を通過したパラフィン粉末を、それぞれ表1に示される割合(前記混合粉末全体に対する割合)で配合し、ブレンダーにて30分間乾式混合して、前記混合粉末中に分散分布せしめ、
(b)これらの混合粉末から、それぞれ75MPaの圧力で所定の寸法(直径および長さ)をもった長尺状成形体(いずれも丸棒形状)を押出プレス成形し、これら長尺状成形体を1.3Paの真空中、7℃/分の昇温速度で、600℃に昇温し、この温度に1時間保持の条件で脱脂して、前記加熱気化粉末の気化による空孔を前記長尺状成形体内に形成し、
(c)上記長尺状成形体に、同じ真空雰囲気中、同じ昇温速度で、温度:1380〜1480℃の範囲内の所定の焼結温度に昇温し、この焼結温度に1時間保持の条件で焼結を施して、前記空孔がCoで充填された焼結体を形成し、
(d)上記焼結体に、1.3Paの真空中、7℃/分の昇温速度で昇温し、昇温途中1300〜1500℃の範囲内の所定の温度からArを導入して雰囲気圧力を6MPaの加圧雰囲気とし、この状態で1380〜1500℃の範囲内の所定の温度まで昇温し、この昇温温度に1時間保持の条件でHIP処理を施して、上記Co凝集組織を微細化してなる焼結素材を形成し、
(e)上記焼結素材に研削加工を施して、それぞれ同じく表2に示される寸法および形状をもった超硬エンドミル本体A−1〜A−7(以下、本発明超硬エンドミル本体A−1〜A−7という)を形成し、
(f)上記本発明超硬エンドミル本体A−1〜A−7を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それぞれ図2に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、一方カソード電極(蒸発源)として、種々の成分組成をもったTi−Al合金およびTi−Al−Si合金をそれぞれ装着し、装置内を排気して0.5Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを装置内に導入して10PaのAr雰囲気とし、この状態で超硬エンドミル本体に−800Vのバイアス電圧を印加して超硬エンドミル本体表面をArガスボンバート洗浄し、
ついで装置内を1.3×10−3Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を600℃に加熱した状態で、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して6Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬エンドミル本体に印加するバイアス電圧を−200Vに下げて、前記カソード電極(Ti−Al合金またはTi−Al−Si合金)とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬エンドミル本体のそれぞれの表面に、表2に示される目標組成および目標層厚の硬質被覆層を形成することにより、本発明被覆超硬エンドミル1〜7をそれぞれ製造した。
【0013】
また、比較の目的で、超硬エンドミル本体の製造において、表1に示される通り混合粉末への加熱気化粉末であるパラフィン粉末の配合を行わない以外は同一の条件で超硬エンドミル本体a−1〜a−7を製造し、さらに表2に示される通り同一の条件で硬質被覆層を形成することにより従来被覆超硬エンドミル1〜7をそれぞれ製造した。
【0014】
なお、この結果得られた本発明被覆エンドミル1〜7および従来被覆超硬エンドミル1〜7の硬質被覆層について、その構成層のそれぞれの厚さ方向中央部の組成をオージェ分光分析装置を用いて測定すると共に、前記硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標組成および目標層厚と実質的に同じ値を示した。
【0015】
つぎに、上記の本発明被覆超硬エンドミル1〜7および従来被覆超硬エンドミル1〜7のうち、本発明被覆超硬エンドミル1,2および従来被覆超硬エンドミル1,2については、被削材として厚さ:1.6mmのガラス繊維強化エポキシ樹脂多層板を用い、これを表3に示される枚数積み重ね、同じく表3に示される切削加工条件で乾式高送り側面加工を行ない、加工材に標準寸法に対して20μmの寸法誤差が生じるまでの切削長を測定し、また本発明被覆被覆超硬エンドミル3〜5および従来被覆被覆超硬エンドミル3〜5については、被削材として幅:300mmを有する純銅板材を用い、表3に示される切削加工条件で乾式高送り溝加工を行ない、外周刃の逃げ面摩耗幅が0.1mmに達するまでの切削長を測定し、さらに本発明被覆被覆超硬エンドミル6,7および従来被覆被覆超硬エンドミル6,7については、被削材として幅:400mmを有するSi:13質量%含有のAl−Si合金板材を用い、同じく表3に示される切削加工条件で乾式高送り加工を行ない、外周刃の逃げ面摩耗幅が0.1mmに達するまでの切削長を測定した。これらの測定結果を表3にそれぞれ5本の平均値で示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【発明の効果】
表1〜3に示される結果から、本発明被覆超硬エンドミル1〜7は、いずれもこれを構成する超硬エンドミル本体が微細Co粒分散組織によって強靭性を具備するようになることから、高送り切削条件で発生する強い機械的衝撃にも切刃にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、前記微細Co粒分散組織の形成のない従来被覆超硬エンドミル1〜7においては、いずれも切刃に超硬エンドミル本体の強度および靭性不足が原因で切刃にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の方法によれば、通常の条件での切削加工は勿論のこと、切削加工を高い機械的衝撃を伴なう高送り条件で行なった場合でも、切刃にチッピングの発生のない被覆超硬エンドミルを製造することができ、したがって各種エンドミル加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】アークイオンプレーティング装置の概略説明図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、特に超硬合金で構成されたエンドミル本体(以下、超硬エンドミル本体という)がすぐれた強靭性を有し、したがって高送り条件での切削加工で切刃がすぐれた耐チッピング性を示し、この結果長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆超硬合金製エンドミル(以下、被覆超硬エンドミルと云う)を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に、各種材料の面加工や溝加工、さらに肩加工などの切削加工に、超硬エンドミル本体の表面に、0.5〜7μmの平均層厚で硬質被覆層を形成してなる被覆超硬エンドミルが用いられ、この被覆超硬エンドミルが切刃部とシャンク部からなり、前記切刃部がスクエア形状のものや、切刃部の先端部がボール形状を有するもの、また切刃部がルーター形状を有するものなどが知られている。
また、被覆超硬エンドミルを構成する超硬エンドミル本体の少なくとも前記切刃部が、実質的に結合相と硬質分散相で構成され、結合相形成成分として質量%(以下、%は質量%を示す)で、5〜10%の割合で含有するCo中に0.1〜2%の割合で固溶含有したCrおよび/またはV成分による粒成長抑制作用で、硬質分散相を構成する炭化タングステン(以下、WCで示す)の粒径を、平均粒径で、望ましくは0.7μm以下とした微粒組織の超硬合金で構成された被覆超硬エンドミルが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
さらに、上記の被覆超硬エンドミルの超硬エンドミル本体が、例えば原料粉末として、いずれも0.1〜3μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、炭化クロム(以下、Cr3C2で示す)粉末、炭化バナジウム(以下、VCで示す)粉末、およびCo粉末を用い、これら原料粉末を所定の配合組成に配合し、湿式混合し、乾燥した後、押出しプレスにて所定の直径の長尺状成形体とし、この長尺状成形体を、1.3〜13.3Paの真空雰囲気中、1350〜1480℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この昇温温度に1〜2時間保持後、雰囲気を、例えばArを導入して4.9〜14.7MPaの加圧雰囲気とし、前記昇温温度および加圧雰囲気の条件下に15〜60分間保持した後、少なくとも1200℃までを50〜100℃/minの冷却速度で冷却することにより、Cr(Cr3C2)および/またはV(VC)がCo中に固溶してなる結合相とWCの硬質分散相で構成された超硬合金からなる所定の直径の焼結素材を形成し、この焼結素材から所定の形状に研削加工することにより製造されることもよく知られるところである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記硬質被覆層を、
組成式:(Ti1−XAlX)N、
組成式:[Ti1−(X+Y)AlXSiY]N、
で表わした場合、厚さ方向中央部のオージェ分光分析装置による測定で、原子比で、X:0.35〜0.70、Y:0.01〜0.10を満足するTiとAlの複合窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]層およびTiとAlとSiの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Si)Nで示す]層のうちのいずれか、または両方で構成された被覆超硬エンドミルも知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特公昭62−56224号公報
【特許文献2】
特開平05−179310号公報
【特許文献3】
特開平07−310174号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、近年の切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に対する要求は強く、これに伴い、切削装置の高性能化と相俟って、高送り条件での切削加工が行われる傾向にあるが、上記の従来被覆超硬エンドミルにおいては、これをきわめて高い機械的衝撃の加わる高送り条件での切削加工に用いると、特に超硬エンドミル本体の強靭性不足が原因で切刃にチッピング(微少欠け)が発生し易く、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述のような観点から、高送り条件での切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬エンドミルを開発すべく、特にこれを構成する超硬エンドミル本体について、製造面から研究を行った結果、
上記超硬エンドミル本体の研削加工前の焼結素材の製造に際して、原料粉末であるWC粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、およびCo粉末の混合時に、混合粉末に対する割合で2〜8%の加熱気化粉末、望ましくはパラフィンを配合して、分散分布せしめておくと、この加熱気化粉末配合の混合粉末より押出しプレス成形された長尺状成形体の加熱乾燥時に、前記加熱気化粉末の気化による空孔が前記長尺状成形体中に形成されることになるが、これの焼結時に毛細管現象により前記空孔内に結合相形成成分であるCoが凝集して、前記空孔がCoで充填された組織の焼結体が形成されるようになり、これにHIP処理を施して、前記Co凝集組織を微細化してやると、この結果の焼結素材は、微細なCo粒が分散分布した組織によってすぐれた強靭性をもつようになることから、かかる焼結素材を用いて製造された被覆超硬エンドミルは、高い機械的衝撃の加わる高送り条件での切削加工でもすぐれた耐チッピング性を発揮するようになる、という研究結果を得たのである。
【0007】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、切刃部とシャンク部からなり、少なくとも前記切刃部が、結合相形成成分として、焼結時にWC粒の成長抑制作用を発揮するCrおよび/またはVを0.1〜2%%含有し、さらに結合相形成成分として、Coを5〜10%含有し、残りが硬質分散相形成成分としてのWCと不可避不純物からなる組成を有する超硬エンドミル本体の表面に、0.5〜7μmの平均層厚で硬質被覆層、望ましくは、
組成式:(Ti1−XAlX)N、
組成式:[Ti1−(X+Y)AlXSiY]N、
で表わした場合、厚さ方向中央部のオージェ分光分析装置による測定で、原子比で、X:0.35〜0.70、Y:0.01〜0.10を満足する(Ti,Al)N層および(Ti,Al,Si)N層のうちのいずれか、または両方で構成された硬質被覆層を形成することにより被覆超硬エンドミルを製造する方法ににおいて、
(a)上記超硬エンドミル本体の研削加工前の焼結素材の製造に際して、原料粉末であるWC粉末、Cr3C2粉末、VC粉末、およびCo粉末の混合時に、混合粉末に対する割合で2〜8%の加熱気化粉末、望ましくはパラフィンを配合して、分散分布せしめ、
(b)上記の加熱気化粉末配合の混合粉末より押出しプレス成形された長尺状成形体を加熱乾燥して、前記加熱気化粉末の気化による空孔を前記長尺状成形体中に形成し、
(c)ついで、上記空孔形成後の長尺状成形体を焼結して、焼結時に毛細管現象により前記空孔内に結合相形成成分であるCoが凝集した焼結体を形成し、
(d)さらに、上記焼結体にHIP処理を施して、上記Co凝集組織が微細化された焼結素材を形成する、
ことにより、高送り条件での切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する被覆超硬エンドミルを製造する方法に特徴を有するものである。
【0008】
以下に、この発明の被覆超硬エンドミルの製造方法において、これを構成する超硬エンドミル本体の組成、および硬質被覆層の組成および平均層厚、さらにを上記の通りに限定した理由を説明する。
(1) ()超硬エンドミル本体の組成
(a)Co含有量
Co成分には、焼結性を向上させ、結合相を形成して強度を向上させ、さらに微細なCo粒として分散分布して強靭性を向上させ、もって高送り条件での切削加工で発生する高い機械的衝撃を吸収して、切刃にチッピングが発生するのを防止する作用があるが、その含有量が5%未満では前記作用に所望の向上効果を確保することができず、一方その含有量が10%を超えると高送り加工条件下では切刃に塑性変形が発生し易くなり、これが原因で切刃に摩耗促進の原因となる偏摩耗が発生するようになることから、その含有量を5〜10%と定めた。
【0009】
(b)Crおよび/またはVの含有量
これらの成分には、結合相を形成するCo中に固溶した状態で硬質分散相であるWC粒の成長を著しく抑制して、これの粒径を平均粒径で、望ましくは0.7μm以下とした微粒組織とする作用があるが、この作用はCrおよびV成分の含有量が0.1%未満では不充分となり、一方その含有量が2%を超えると、これらの成分が炭化物として析出し、強度および靭性を低下させるようになることから、その含有量を0.1〜2%と定めた。
【0010】
(2) 硬質被覆層の組成および平均層厚
(Ti,Al)N層および(Ti,Al,Si)N層におけるAlは、層の高温硬さおよび耐熱性を高め、もって耐摩耗性を向上させるために固溶するものであり、したがって組成式:(Ti1−XAlX)N、および同[Ti1−(X+Y)AlXSiY]NのX値が0.35未満では前記高温硬さおよび耐熱性に所望の向上効果が得られず、一方その値が0.70を越えると、硬質被覆層にチッピングが発生し易くなると云う理由によりX値を原子比で0.35〜0.70と定めたものである。
また、((Ti,Al,Si)N層におけるSiには、層の耐熱性を一段と向上させる作用があるが、上記組成式のY値が0.01未満では所望の耐熱性向上効果が得られず、一方その値が0.10を越えると、硬質被覆層にチッピングが発生し易くなると云う理由によりY値を0.01〜0.10(原子比)と定めた。
さらに、その平均層厚が0.5μm未満では、硬質被覆層形成による所望の耐摩耗性向上効果が得られず、一方その平均層厚が7μmを越えると、硬質被覆層自体にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜7μmと定めた。
【0011】
(3) 加熱気化粉末の配合割合
上記の通り加熱気化粉末には、加熱乾燥時に気化して、微細なCo粒が分散分布し、これによって機械的衝撃が吸収されるようになる組織を焼結素材中に形成するのに不可欠な空孔を長尺状成形体中に形成する作用があるが、その割合が、原料粉末の混合粉末に対する割合で2%未満では前記空孔の形成が少な過ぎ、この結果微細なCo粒の分散割合が不十分となり、所望の耐チッピング性を切刃に確保することができず、一方その割合が8%を越えると、加熱乾燥時に形成された空孔を焼結時にCoで充填することができなくなり、Coの未充填部分が高い機械的衝撃を伴なう高送り切削加工では破壊の起点となり、折損し易くなることから、その配合割合を2〜8%と定めた。
【0012】
【発明の実施の態様】
つぎに、この発明の被覆超硬エンドミルの製造方法を実施例により具体的に説明する。
(a)原料粉末として、0.3μmの平均粒径を有するWC粉末、同2.3μmのCr3 C2 粉末、同1.8μmのVC粉末、および同1.5μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、潤滑材として前記原料粉末に対する割合で1%のステアリン酸亜鉛を添加して、ボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、加熱気化粉末として、目の開きが250μmの篩を通過したパラフィン粉末を、それぞれ表1に示される割合(前記混合粉末全体に対する割合)で配合し、ブレンダーにて30分間乾式混合して、前記混合粉末中に分散分布せしめ、
(b)これらの混合粉末から、それぞれ75MPaの圧力で所定の寸法(直径および長さ)をもった長尺状成形体(いずれも丸棒形状)を押出プレス成形し、これら長尺状成形体を1.3Paの真空中、7℃/分の昇温速度で、600℃に昇温し、この温度に1時間保持の条件で脱脂して、前記加熱気化粉末の気化による空孔を前記長尺状成形体内に形成し、
(c)上記長尺状成形体に、同じ真空雰囲気中、同じ昇温速度で、温度:1380〜1480℃の範囲内の所定の焼結温度に昇温し、この焼結温度に1時間保持の条件で焼結を施して、前記空孔がCoで充填された焼結体を形成し、
(d)上記焼結体に、1.3Paの真空中、7℃/分の昇温速度で昇温し、昇温途中1300〜1500℃の範囲内の所定の温度からArを導入して雰囲気圧力を6MPaの加圧雰囲気とし、この状態で1380〜1500℃の範囲内の所定の温度まで昇温し、この昇温温度に1時間保持の条件でHIP処理を施して、上記Co凝集組織を微細化してなる焼結素材を形成し、
(e)上記焼結素材に研削加工を施して、それぞれ同じく表2に示される寸法および形状をもった超硬エンドミル本体A−1〜A−7(以下、本発明超硬エンドミル本体A−1〜A−7という)を形成し、
(f)上記本発明超硬エンドミル本体A−1〜A−7を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それぞれ図2に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、一方カソード電極(蒸発源)として、種々の成分組成をもったTi−Al合金およびTi−Al−Si合金をそれぞれ装着し、装置内を排気して0.5Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを装置内に導入して10PaのAr雰囲気とし、この状態で超硬エンドミル本体に−800Vのバイアス電圧を印加して超硬エンドミル本体表面をArガスボンバート洗浄し、
ついで装置内を1.3×10−3Paの真空に保持しながら、ヒーターで装置内を600℃に加熱した状態で、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して6Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬エンドミル本体に印加するバイアス電圧を−200Vに下げて、前記カソード電極(Ti−Al合金またはTi−Al−Si合金)とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬エンドミル本体のそれぞれの表面に、表2に示される目標組成および目標層厚の硬質被覆層を形成することにより、本発明被覆超硬エンドミル1〜7をそれぞれ製造した。
【0013】
また、比較の目的で、超硬エンドミル本体の製造において、表1に示される通り混合粉末への加熱気化粉末であるパラフィン粉末の配合を行わない以外は同一の条件で超硬エンドミル本体a−1〜a−7を製造し、さらに表2に示される通り同一の条件で硬質被覆層を形成することにより従来被覆超硬エンドミル1〜7をそれぞれ製造した。
【0014】
なお、この結果得られた本発明被覆エンドミル1〜7および従来被覆超硬エンドミル1〜7の硬質被覆層について、その構成層のそれぞれの厚さ方向中央部の組成をオージェ分光分析装置を用いて測定すると共に、前記硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標組成および目標層厚と実質的に同じ値を示した。
【0015】
つぎに、上記の本発明被覆超硬エンドミル1〜7および従来被覆超硬エンドミル1〜7のうち、本発明被覆超硬エンドミル1,2および従来被覆超硬エンドミル1,2については、被削材として厚さ:1.6mmのガラス繊維強化エポキシ樹脂多層板を用い、これを表3に示される枚数積み重ね、同じく表3に示される切削加工条件で乾式高送り側面加工を行ない、加工材に標準寸法に対して20μmの寸法誤差が生じるまでの切削長を測定し、また本発明被覆被覆超硬エンドミル3〜5および従来被覆被覆超硬エンドミル3〜5については、被削材として幅:300mmを有する純銅板材を用い、表3に示される切削加工条件で乾式高送り溝加工を行ない、外周刃の逃げ面摩耗幅が0.1mmに達するまでの切削長を測定し、さらに本発明被覆被覆超硬エンドミル6,7および従来被覆被覆超硬エンドミル6,7については、被削材として幅:400mmを有するSi:13質量%含有のAl−Si合金板材を用い、同じく表3に示される切削加工条件で乾式高送り加工を行ない、外周刃の逃げ面摩耗幅が0.1mmに達するまでの切削長を測定した。これらの測定結果を表3にそれぞれ5本の平均値で示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【発明の効果】
表1〜3に示される結果から、本発明被覆超硬エンドミル1〜7は、いずれもこれを構成する超硬エンドミル本体が微細Co粒分散組織によって強靭性を具備するようになることから、高送り切削条件で発生する強い機械的衝撃にも切刃にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、前記微細Co粒分散組織の形成のない従来被覆超硬エンドミル1〜7においては、いずれも切刃に超硬エンドミル本体の強度および靭性不足が原因で切刃にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の方法によれば、通常の条件での切削加工は勿論のこと、切削加工を高い機械的衝撃を伴なう高送り条件で行なった場合でも、切刃にチッピングの発生のない被覆超硬エンドミルを製造することができ、したがって各種エンドミル加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】アークイオンプレーティング装置の概略説明図である。
Claims (2)
- 切刃部とシャンク部からなり、少なくとも前記切刃部が、結合相形成成分として、焼結時に炭化タングステン粒の成長抑制作用を発揮するCrおよび/またはVを0.1〜2%質量%含有し、さらに結合相形成成分として、Coを5〜10質量%含有し、残りが硬質分散相形成成分としての炭化タングステンと不可避不純物からなる組成を有する超硬合金で構成されたエンドミル本体の表面に、0.5〜7μmの平均層厚を有する硬質被覆層を形成することにより表面被覆超硬合金製エンドミルを製造する方法において、
(a)上記エンドミル本体の研削加工前の焼結素材の製造に際して、原料粉末である炭化タングステン粉末、炭化クロム粉末、炭化バナジウム粉末、およびCo粉末の混合時に、混合粉末に対する割合で2〜8質量%の加熱気化粉末を配合して、分散分布せしめ、
(b)上記の加熱気化粉末配合の混合粉末より押出しプレス成形された長尺状成形体を加熱乾燥して、前記加熱気化粉末の気化による空孔を前記長尺状成形体中に形成し、
(c)ついで、上記空孔形成後の長尺状成形体を焼結して、焼結時に毛細管現象により前記空孔内に結合相形成成分であるCoが凝集した焼結体を形成し、
(d)さらに、上記焼結体にHIP処理を施して、上記Co凝集組織が微細化された焼結素材を形成する、
ことを特徴とする高送り条件での切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製エンドミルを製造する方法。 - 上記硬質被覆層を、
組成式:(Ti1−XAlX)N、
組成式:[Ti1−(X+Y)AlXSiY]N、
で表わした場合、厚さ方向中央部のオージェ分光分析装置による測定で、原子比で、X:0.35〜0.70、Y:0.01〜0.10を満足するTiとAlの複合窒化物層およびTiとAlとSiの複合窒化物層のうちのいずれか、または両方で構成したことを特徴とする、上記請求項1に記載の表面被覆超硬合金製エンドミルを製造する方法。
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