JP2004169557A - 圧縮着火式内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】スワールを生起しない形状の吸気ポートと中央突起を有しないキャビティの採用により、大幅なNO低減と燃費良化が図れる圧縮着火式内燃機関を提供する。
【解決手段】圧縮着火式内燃機関において、燃焼室5内に流入される空気にスワールを生起しないタンジェンシャル吸気ポート7と、前記燃焼室5を形成するピストン頂面に凹設されその底面が略平坦な面からなるキャビティ6とを備え、筒内空気流動を抑制すると共に燃焼室中央に残存した空気の有効利用が図れるようにした。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼル機関等の圧縮着火式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境浄化の要求に伴い、自動車の排ガス規制は強化される傾向にあり、特に、ディーゼル機関においては、排ガス中のNO(窒素酸化物)や煤(Smoke)の規制が強化されている。
【0003】
そこで、従来では、ヘリカル吸気ポートを採用してシリンダ軸(ピストン中心軸)を中心とするスワール(空気旋回)を生起すると共に、このスワールを減衰させないような、かつ燃料噴霧時に燃焼に有効利用されない空気を除くため、ピストン頂面に凹設されるキャビティの底面に中央突起を有すると共に入口にリップ部(絞り部)を有したリエントラント型燃焼室が採用されるのが一般的になっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この場合、軽負荷及び高負荷運転時の燃料噴霧周辺の空気量を考慮した上面が平坦な円錐台状の凸部をキャビティ内に設けて、NOや煙の増加を抑制している。また、このような燃焼室形状の場合、スワールにより燃料と空気をミキシングするスワール燃焼を行うのが一般的である。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−338249号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述したような特許文献1に開示されたディーゼル機関にあっては、スワールによる筒内空気流動の隆盛により燃焼が活発化すると共にピストン下降時に空気がキャビティ外に流出して取り込んだ空気をキャビティ内で最大限に利用することができないため、大幅なNO及び煙の低減が図れないという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、スワールを生起しない形状の吸気ポートと中央突起を有しないキャビティの採用により、大幅なNO低減と燃費良化が図れる圧縮着火式内燃機関を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための、本発明の請求項1に係る圧縮着火式内燃機関は、圧縮着火式内燃機関において、燃焼室内に流入される空気にスワールを生起しない形状の吸気ポートと、前記燃焼室を形成するピストン頂面に凹設されその底面が略平坦な面からなるキャビティと、を備えたことを特徴とし、筒内空気流動を抑制すると共に燃焼室中央に残存した空気の有効利用が図れるようにした。尚、スワール比が0.5を下回るようにすると好適である。
【0009】
請求項2に係る圧縮着火式内燃機関は、圧縮着火式内燃機関において、燃焼室内に流入される空気にスワールを生起しない形状の吸気ポートと、前記燃焼室を形成するピストン頂面に凹設されその底面が下方に凹んだ球面からなるキャビティと、を備えたことを特徴とし、筒内空気流動を抑制すると共に燃焼室中央に残存した空気の有効利用が図れるようにした。
【0010】
請求項3に係る圧縮着火式内燃機関は、前記キャビティの形状を内径が開口部に向かって縮径するリエントラント型に形成すると共に、燃料噴霧の中心軸と噴霧が衝突する壁面とが成す噴霧中心軸下側の衝突角度がピストンの軸線に沿った断面において90度よりも大きくなるように形成したことを特徴とし、燃料噴霧のキャビティ外への流出を抑制すると共に、燃焼室中央に向かう燃料噴霧量を十分確保できるようにした。
【0011】
請求項4に係る圧縮着火式内燃機関は、前記吸気ポートは、タンジェンシャル吸気ポート又は直立吸気ポート又はこれらの組み合わせであることを特徴とし、スワールを生起しないと共に高い吸入空気量が得られるようにした。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る圧縮着火式内燃機関を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
[実施例]
図1は本発明の一実施例を示すディーゼル機関の縦断面図、図2は同じくキャビティ部の半断面図、図3は同じく各種吸気ポートの説明図、図4は熱発生率とクランク角との関係を示すグラフ、図5はNO−スモーク,NO−燃費カーブを示すグラフである。
【0014】
図1に示すように、機関本体1はシリンダヘッド2とシリンダブロック3とからなり、シリンダブロック3のシリンダ3A内にはピストン4が往復動可能に収装されている。また、この機関本体1のシリンダヘッド2は、各気筒とも吸気2弁、排気2弁を備えた4弁式機関として構成されている。
【0015】
前記ピストン4の上面(頂面)とシリンダヘッド2の下面との間には、燃焼室5が形成されるとともに、ピストン4の上面(頂面)には前記燃焼室5の一部を構成する後述のキャビティ6が形成される。
【0016】
前記シリンダヘッド2には、スワールを生起しない(スワール無し又はスワール比が0.5を下回るような低スワール)形状の吸気ポートとしてのタンジェンシャル吸気ポート7(図3の(a)参照)と排気ポート8とがそれぞれ形成されて前記燃焼室5に連通され、同シリンダヘッド2に支持された吸気弁9と排気弁10とでそれぞれ開閉されるようになっている。また、シリンダヘッド2の下面には前記燃焼室5の中央に位置して多孔型ノズル11が設けられる。
【0017】
そして、前記キャビティ6は、図2にも示すように、その底面に中央突起が無くフラットに形成されると共に、その入口にリップ部(絞り部)6Aを有したリエントラント型に形成され、かつ燃料噴霧の中心軸と噴霧が衝突する壁面とが成す噴霧中心軸下側の衝突角度(α)がピストンの軸線に沿った断面において90度よりも大きくしている。
【0018】
尚、上記実施例で、スワールを生起しない形状の吸気ポートとして、二つともタンジェンシャル吸気ポート7(図3の(a)の場合)又は二つとも直立吸気ポート12(図3の(d)の場合)又はこれらの組み合わせ(図3の(b)及び(c)の場合)でも良い。
【0019】
このように構成されるため、タンジェンシャル吸気ポート7により燃焼室5内に流入される空気にはスワールが生起されず、図1の矢印で示すようにタンブル(縦渦)が生起される。また、スワールが生起されないことに加えて、キャビティ6の入口にリップ部6Aを有しているので、膨張行程時にキャビティ6(燃焼室)内の空気がキャビティ6(燃焼室)内から出ていくことが可及的に防止される。
【0020】
これにより、筒内流動抑制により、図4に示すように、拡散燃焼前半では燃料と空気の混合が弱くなり、即ち燃焼速度が低下すると共に、同一圧縮比では中央突起の無い分、底が浅く噴霧が当たる燃焼室壁ぎわの空間が小さくリッチ燃焼が行われるので、図5に示すように、従来例やスワールは無いが中央突起を有する燃焼室構造のものより特に高負荷域でNOを大幅に低減することができる。
【0021】
また、キャビティ6の底面に中央突起が無くフラットに形成されるので、キャビティ6(燃焼室)中央に燃料噴霧と室底に囲まれる円錐状の空間(図2中に多数のドットで示したエンクロージャーゾーン)が形成され、この空間内の多量の空気,未燃燃料が、図4に示すように、燃焼後半で利用され、拡散燃焼後半の良化及び燃焼期間の短縮等で、図5に示すように、従来例やスワールは無いが中央突起を有する燃焼室構造のものより特に高負荷域で燃費や煤を低減することができる。
【0022】
尚、図5では、NO−燃費,NO−スモークのトレードオフ改善領域が存在し、この領域での燃費低減率は1000rpmで7%,1760rpmで3%低減できることが判る。
【0023】
また、前記空間内の多量の空気,未燃燃料とキャビティ6の壁に衝突してキャビティ6(燃焼室)中央に戻される既燃ガスが燃焼を起こすと、内部EGR(排気環流)的なおとなしい燃焼を行い、その結果NOの発生も抑制されることになる。
【0024】
また、キャビティ6の燃料噴霧が衝突する壁に角度α(α>90°)を持たせているので、キャビティ6(燃焼室)中央に向かう燃料噴霧量も十分確保でき、前述した作用・効果をより一層助長することになる。
【0025】
尚、本発明は上記実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、各種変更が可能であることはいうまでもない。例えば、キャビティ6の底面はフラットでなく、下方に半球状に凹んでも良い(図1中二点鎖線参照)。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1の発明によれば、圧縮着火式内燃機関において、燃焼室内に流入される空気にスワールを生起しない形状の吸気ポートと、前記燃焼室を形成するピストン頂面に凹設されその底面が略平坦な面からなるキャビティと、を備えたので、筒内空気流動を抑制すると共に燃焼室中央に残存した空気の有効利用が図れ、大幅なNO低減と燃費良化が図れる。
【0027】
請求項2の発明によれば、圧縮着火式内燃機関において、燃焼室内に流入される空気にスワールを生起しない形状の吸気ポートと、前記燃焼室を形成するピストン頂面に凹設されその底面が下方に凹んだ球面からなるキャビティと、を備えたので、筒内空気流動を抑制すると共に燃焼室中央に残存した空気の有効利用が図れ、大幅なNO低減と燃費良化が図れる。
【0028】
請求項3の発明によれば、前記キャビティの形状を内径が開口部に向かって縮径するリエントラント型に形成すると共に、燃料噴霧の中心軸と噴霧が衝突する壁面とが成す噴霧中心軸下側の衝突角度がピストンの軸線に沿った断面において90度よりも大きくなるように形成したので、燃料噴霧のキャビティ外への流出を抑制すると共に、燃焼室中央に向かう燃料噴霧量を十分確保できる。
【0029】
請求項4の発明によれば、前記吸気ポートは、タンジェンシャル吸気ポート又は直立吸気ポート又はこれらの組み合わせであるので、スワールを生起しないと共に高い吸入空気量が得られ、出力及び燃費の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すディーゼル機関の縦断面図である。
【図2】同じくキャビティ部の半断面図である。
【図3】同じく各種吸気ポートの説明図である。
【図4】熱発生率とクランク角との関係を示すグラフである。
【図5】NO−スモーク,NO−燃費カーブを示すグラフである。
【符号の説明】
1 機関本体
2 シリンダヘッド
3 シリンダブロック
3A シリンダ
4 ピストン
5 燃焼室
6 キャビティ
6A リップ部
7 タンジェンシャル吸気ポート
8 排気ポート
9 吸気弁
10 排気弁
11 多孔型ノズル
12 直立吸気ポート

Claims (4)

  1. 圧縮着火式内燃機関において、燃焼室内に流入される空気にスワールを生起しない形状の吸気ポートと、前記燃焼室を形成するピストン頂面に凹設されその底面が略平坦な面からなるキャビティと、を備えたことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
  2. 圧縮着火式内燃機関において、燃焼室内に流入される空気にスワールを生起しない形状の吸気ポートと、前記燃焼室を形成するピストン頂面に凹設されその底面が下方に凹んだ球面からなるキャビティと、を備えたことを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
  3. 前記キャビティの形状を内径が開口部に向かって縮径するリエントラント型に形成すると共に、燃料噴霧の中心軸と噴霧が衝突する壁面とが成す噴霧中心軸下側の衝突角度がピストンの軸線に沿った断面において90度よりも大きくなるように形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮着火式内燃機関。
  4. 前記吸気ポートは、タンジェンシャル吸気ポート又は直立吸気ポート又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮着火式内燃機関。
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