JP2004168944A - 透明複合体組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】線膨張係数が小さく、透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、液晶表示素子や有機EL表示素子用の光学シートなどとしてガラスに代替可能な透明複合体組成物を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が150℃以上である透明樹脂(a)及び球相当直径が0.1〜2mmである無機フィラー(b)よりなる透明複合体組成物であって、透明樹脂(a)は、架橋後の屈折率が無機フィラー(b)よりも低い1種以上の反応性モノマーと、無機フィラー(b)よりも高い1種以上の反応性モノマーから得られる共重合体である透明複合体組成物を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が150℃以上である透明樹脂(a)及び球相当直径が0.1〜2mmである無機フィラー(b)よりなる透明複合体組成物であって、透明樹脂(a)は、架橋後の屈折率が無機フィラー(b)よりも低い1種以上の反応性モノマーと、無機フィラー(b)よりも高い1種以上の反応性モノマーから得られる共重合体である透明複合体組成物を提供する。
Description
【0001】
【発明の技術分野】
本発明は線膨張係数が小さく、透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、ガラスに代替可能な透明複合体組成物に関する。この透明複合体組成物は、例えば、液晶表示用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池基板などの光学シート、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】一般に、液晶表示素子用基板、有機EL表示素子用基板、太陽電池基板等には、ガラス板が多く用いられている。しかし、割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向き等の問題から、近年、ガラス板の代わりにプラスチックを用いる試みが数多く行われるようになってきた。例えば、脂環式構造、芳香族等を持つ特定のビス(メタ)アクリレートを含む組成物を活性エネルギー線等により硬化させ成形した透明基板を用いてなる液晶表示素子が検討されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
しかしながら、プラスチックは、ガラス板に比べ線膨張係数が大きいため、表示素子用基板の中でも、特にアクティブマトリックス表示素子用基板に用いた場合、その製造時の加熱工程おいて、金属やシリコン及びそれらの酸化物などの無機薄膜にクラックが発生したり、剥離する等の不具合が生じる場合があり問題となっている。したがって、軽く、曲げることができ、軽いと同時に線膨張係数の小さいシートが望まれている。線膨張係数が低い樹脂フィルムとしては、ポリイミドやポリエチレンナフタレート(PEN)が知られているが、前者は一般に可視光でも短波長域に吸収を持ち黄色〜褐色であり光学用途には好ましくなく、後者は大きな位相差を持つために光学等方性が必要な用途には好ましくない。
【0004】
一方、ガラス基板を出来る限り薄くすることで、軽く、曲げることができるようにすることも検討されている。このような場合、割れやすさを回避するために樹脂を塗布することなどが提案されている。(例えば、非特許文献1参照。)しかし、ガラス基板を薄くすることは50μm程度が下限であり、プラスチックほどの軽量化は困難であるとともに、このような薄いガラスは、より厚いガラスを研磨やエッチングすることで得るために高コストになってしまう。また、ガスバリア層として樹脂フィルムに透明無機薄膜を成膜することが行われている。(例えば、特許文献2,3参照。)しかし、これらは線膨張係数を下げる目的で発明されたものではなく、片面に樹脂層が無い場合にも割れない厚さである0.01〜0.1μmという薄い厚さで用いられるため線膨張係数を下げるには有効ではない。
【0005】
このような問題を解決するための方法として、メチルメタクリレートを主体としたアクリル樹脂とスチレン−アクリロニトリル共重合体をブレンドすることにより屈折率を調整する方法などが検討されている。(例えば、特許文献4参照。)
しかしながら、これら公報に記載されている材料をアクティブマトリックス表示素子基板等のガラス基板代替用に用いようとすると、ガラス転移温度が低く耐熱性が不十分であったり、耐溶剤性が不十分であった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−90667号公報(第2−3頁)
【非特許文献1】
A.Weber, Thin Glass−Polymer System as Flexible Substrate for Displays, SID INTERNATIONAL SYMPOSIUM DIGEST OFTECHNICAL PAPERS 2002 Vol.XXXIII, No.1 P.53−55
【特許文献2】
特開平9−39151号公報(第1−3頁)
【特許文献3】
特開平10−329254号公報(第2−3頁)
【特許文献4】
特開平5−331335公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は線膨張係数が小さく、透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、ガラスに代替可能な透明複合体組成物を提供することにある。本発明の透明複合体組成物は、アクティブマトリックスタイプを含む液晶表示素子用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池基板などの光学シート、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路、LED封止材などの用途に適する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、ガラス転移温度が150℃以上である透明樹脂(a)と球相当直径が0.1μm〜2mmである無機フィラー(b)からなり、透明樹脂(a)は、架橋後の屈折率が無機フィラー(b)よりも低い1種以上の反応性モノマーと、無機フィラー(b)よりも高い1種以上の反応性モノマーとを架橋して得られる共重合体であって、(a)と(b)との屈折率差が0.01以下である透明複合体組成物は、波長550nmにおける光線透過率が80%以上と透明性が高く、しかも低線膨張係数であって、耐熱性、耐溶剤性にも優れるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は透明樹脂(a)及び無機フィラー(b)からなり、波長550nmにおける光線透過率が80%以上である透明複合体組成物を提供するものである。
【0010】
本発明の好ましい透明複合体組成物は、脂環式構造を有するアクリレート(a1)と、含イオウアクリレート及びフルオレン骨格を有するアクリレートから選ばれた少なくとも1種のアクリレート(a2)との架橋により得られる透明樹脂(a)とガラスフィラー(b)からなる樹脂組成物である。
【0011】
【発明の詳述】
以下に、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明の透明複合体組成物に用いる透明樹脂(a)は可視光線に対し高い透過性を有し、厚さ200μmのシートにしたとき、波長550nmの光線の透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。特に、表示素子用基板とする場合には85%以上であるのが好ましい。
【0012】
前記透明樹脂(a)のガラス転移温度は150℃以上であり、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。樹脂のガラス転移温度がこれより低いと、特に、アクティブマトリックス型の表示素子基板に用いた場合、TFT素子形成工程で変形やうねりが生じる恐れがある。
【0013】
このような透明樹脂(a)の例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂、アクリレートなどの反応性モノマーを活性エネルギー線で架橋させた樹脂などが挙げられる。これらのうち、耐溶剤性に優れていることからアクリレートなどの反応性モノマーを活性エネルギー線および/または熱によって架橋した樹脂が好ましい。
【0014】
かかる反応性モノマーは、熱や活性エネルギー線による架橋が可能であればよい。透明性や耐熱性の面から2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。これら樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
また、本発明の透明複合体組成物を表示基板用プラスチック基板として用いる場合、波長550nmにおける光線透過率80%以上が必要であり、さらに好ましくは85%以上であり、最も好ましくは88%以上である。波長550nmにおける光線透過率が80%より低いと表示性能が充分でない。
【0016】
かかる複合体において、波長550nmにおける光線透過率を80%以上にするには、(1)透明樹脂と無機フィラーの屈折率を一致させるか、あるいは(2)光の波長以下の微細なガラスフィラーを用いる方法などが採用し得るが、材料の入手の容易さから屈折率を調整する方法が好ましい。
【0017】
前記透明樹脂(a)と無機フィラー(b)との屈折率差は、優れた透明性を得るため0.01以下である必要があり、0.005以下であるのがより好ましい。かかる屈折率差が0.01より大きいと得られる複合体組成物の透明性が劣る。
【0018】
透明樹脂(a)と無機フィラー(b)との屈折率差を0.01以下にするには、▲1▼透明樹脂(a)の屈折率に合った無機フィラー(b)を選択する、▲2▼無機フィラー(b)の屈折率に合った透明樹脂(a)を選択する、▲3▼無機フィラー(b)よりも屈折率の高い樹脂と無機フィラー(b)よりも屈折率の低い樹脂とを組み合わせて樹脂の屈折率を無機フィラー(b)に一致させる方法などが採用し得る。
【0019】
しかしながら、単独の樹脂により無機フィラーとの屈折率が合う組み合わせは限られていることから、屈折率の異なる2種以上の樹脂を組み合わせるか、架橋後の屈折率の異なる2種以上の反応性モノマーを用いて屈折率を調整するのが好ましい。また、屈折率の異なるポリマーで相容可能なものは限定されるため、屈折率の異なる2種以上の反応性モノマーの量比を調整して重合を行い屈折率を制御するのがより好ましい。かかる方法によれば、たとえば、樹脂の屈折率をEガラスなどの汎用的なガラスフィラーの屈折率に調整することできる。
【0020】
樹脂と無機フィラーとの屈折率差を0.01以下に調整するには、無機フィラーよりも屈折率の高い少なくとも1種の反応性モノマーと、無機フィラーよりも屈折率の低い少なくとも1種の反応性モノマーとを用いるのが好ましい。
【0021】
(a1:低屈折率モノマー)
無機フィラーよりも屈折率の低い反応性モノマーとしては、脂環式構造や脂肪族鎖を含む各種の(メタ)アクリレートを用いることができ、特に透明性や耐熱性の面から脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが好ましい。本発明の複合組成物に用いられる脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、脂環式構造を含み2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであればよく、反応性、耐熱性や透明性の点から下式(1)及び(2)から選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
【化7】
(式中、R1及びR2は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。aは1又は2を示し、bは0又は1を示す。)
【0023】
【化8】
(式中、Xは水素原子、−CH3、−CH2OH、NH2、
【0024】
【化9】
を示し、R3及びR4は、Hまたは−CH3、Pは0または1である。)
【0025】
式(1)においては、特に、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を持つジシクロペンタジエニルジアクリレートが粘度などの物性から好ましい。
また、式(2)において、特に、Xが−CH2OCOCH=CH2、R3、R4が水素で、pが1である構造を持つパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、 X、R3、R4がすべて水素で、pが0または1である構造を持つアクリレートより選ばれた少なくとも1種以上のアクリレートが好ましい。特に、粘度等の点を考慮すると、X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレートが最も好ましい。式(2)の(メタ)アクリレートは、特開平5−70523に開示の方法にて得られる。
【0026】
(a2:高屈折率モノマー)
ガラスフィラー等の無機フィラーよりも屈折率の高い反応性モノマーとしては、イオウや芳香族環を含む各種の(メタ)アクリレートを用いることができ、特に屈折率が高いことから含イオウ(メタ)アクリレートやフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
含イオウ ( メタ ) アクリレート
本発明で用いられる含イオウ(メタ)アクリレートとしては、イオウを含む2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであればよく、耐熱性や透明性の点から下式(3)に示す(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
【化10】
(式中、Xはイオウ又はSO2を示し、Yは酸素又はイオウを示す。R5〜R10は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。nおよびmは0〜2である。)
【0029】
式(3)で示される(メタ)アクリレートの中でも、反応性、耐熱性や取り扱い安さからXがイオウ、Yが酸素、R5〜R10がすべて水素、n及びmがともに1であるビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィドが最も好ましい。
【0030】
フルオレン骨格を有する ( メタ ) アクリレート
本発明で用いられるフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、フルオレン骨格を含み2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、耐熱性や透明性の点から下記の式(4)および(5)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
【化11】
(式中、R11〜R14は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。rおよびsは0〜2である。)
【0032】
【化12】
(式中、R15〜R17は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。)
これらの中でも式(4)においてR11〜R14がすべて水素で、r及びsが1であるビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが最も好ましい。
【0033】
これら低屈折率モノマーと高屈折率モノマーは、目的とする屈折率に応じて適宜の配合割合で混合して架橋を行うことができ、透明樹脂の屈折率を、これと組み合わせる無機フィラーの屈折率に合わせることができる。
本発明で用いられる2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートには柔軟性付与などのため、所望の特性を損なうことのない範囲で、単官能(メタ)アクリレートを併用してもよい。この場合、樹脂成分全体の屈折率が無機フィラーの屈折率に適合するよう配合量を調整する。
【0034】
(b:無機フィラー)
本発明の無機フィラー(b)の球相当直径は0.1μm〜2mmである。球相当直径が0.1μm未満であると、線膨張係数の低減への効果が小さく、2mmを超えると均一に分散することが困難である。
【0035】
本発明の無機フィラー(b)の形状は、面内方向の線膨張係数を下げる効果が大きいことから、平板状,棒状または棒状の集合体であることが好ましい。平板状のものである場合、その厚みは0.1μm〜100μm程度であることが好ましく、棒状または棒状の集合体である場合、1本の棒状の直径は0.1μm〜100μmであることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0036】
本発明の無機フィラー(b)の材質の例を挙げるとシリカ,アルミナ,酸化チタン等の金属酸化物,マイカ等の鉱物,ガラス等であるがこれらに限定されるものではない。これらのうちで透明性が良好で種々の形状のものが安価に入手しやすいガラスが好ましい。ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、低誘導率ガラス、高誘導率ガラスなどがあげられ、中でもアルカリ金属などのイオン性不純物が少なく、入手が容易なEガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラスが好ましい。
【0037】
本発明の透明複合体組成物に配合する無機フィラー(b)の屈折率は特に限定されるものではないが、組み合わせる樹脂の屈折率の調整が容易なように1.50〜1.57の範囲にあるのが好ましい。特に無機フィラーがガラスフィラーでありその屈折率が1.50〜1.54である場合は、ガラスのアッベ数に近い樹脂が選択でき好ましい。樹脂とガラスとのアッベ数が近いと広い波長領域において両者の屈折率が一致し、広い波長領域で高い光線透過率が得られる。
【0038】
(透明複合体組成物)
透明複合体組成物における無機フィラー(b)の含有率は10重量%以上95重量%以下であることが好ましい。含有率が10重量%より少ないと線膨張係数を低減する効果が得られにくく、95重量%以上であると均一に分散することが難しい。
【0039】
透明複合体組成物は、ガラスフィラーなどの無機フィラーと樹脂とが密着しているほど、プラスチック基板などにした場合の透明性が向上するため、無機フィラー表面をシランカップリング剤などの公知の表面処理剤で処理することが好
ましい。具体的には、反応性モノマーとして2つ以上の官能基を持つ(メタ)アクリレートを用いた場合にはアクリルシランで処理することが好ましい。
【0040】
(他の配合成分)
本発明の複合体組成物中には、必要に応じ、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用してよい。この場合、吸水率を低減させるなどの目的で、脂環式構造やカルド骨格を有するオリゴマーやポリマーを使用することが好ましい。これら熱可塑性または熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用する場合は、全体の屈折率が無機フィラーの屈折率に合うように組成比を調整すればよい。
【0041】
また、本発明のプラスチック基板など複合体組成物中には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を配合してもよい。
【0042】
(成形方法)
複合体組成物の成形方法には制限がなく、例えば、透明樹脂として反応性モノマーを用いる場合には流延法や注型法が、熱可塑性樹脂を用いる場合には溶融押出法などがあり、連続生産が可能であることから流延法および溶融押出法が好ましい。
【0043】
前記の反応性モノマーを架橋させるには、活性エネルギー線により硬化させる方法、熱をかけて熱重合させる方法等があり、これらを併用してもよい。反応性モノマー、好ましくは屈折率の異なる2種以上の反応性モノマーとして2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートを用いる場合には、活性エネルギー線により硬化させる方法が好ましく、反応の完結、リターデーション値を低くする、線膨張係数を低減する等の目的で、活性エネルギー線による硬化及び/又は熱をかけて熱重合させる工程の後に、さらに高温での熱処理を併用することが好ましい。使用する活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、メタルハライドタイプ、高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
【0044】
(重合開始剤)
反応性モノマーを紫外線等の活性エネルギー線により架橋、硬化させるには、樹脂組成物中にラジカルを発生する光重合開始剤を加えるのが好ましい。かかる光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。これらの光重合開始剤は2種以上を併用しても良い。
【0045】
光重合開始剤の複合体組成物中における含有量は、適度に硬化させる量であればよく、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートの合計100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、さらに好ましくは、0.02〜1重量部であり、最も好ましくは、0.1〜0.5重量部である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、複屈折の増大、着色、硬化時の割れ等の問題が発生する。また、少なすぎると組成物を充分に硬化させることができず、架橋後に型に付着して取り外せないなどの問題が発生する恐れがある。
【0046】
活性エネルギー線による硬化及び/又は熱重合による架橋後に高温で熱処理する場合は、その熱処理工程の中に、線膨張係数を低減する等の目的で、窒素雰囲気下又は真空状態で、250〜300℃、1〜24時間の熱処理工程を加えるのが好ましい。
【0047】
本発明の透明複合体組成物を、光学用途、すなわち透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等として用いる場合は、30〜150℃の平均線膨張係数が50ppm以下であることが好ましく、より好ましくは40ppm以下である。特にシート状の透明複合体組成物として、アクティブマトリックス表示素子基板に用いる場合は、前記平均線膨張係数が30ppm以下であることが好ましい。前記値を越えると、製造工程において反りやアルミ配線の断線などの問題が生じる恐れがあるが、線膨張係数が前記の値以下であると従来のガラス基板を用いた場合の設備を大きく変更せずにTFT形成工程を実施できる。
【0048】
本発明の複合体組成物を、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル等として用いる場合、基板の厚さは50〜2000μmであることが好ましく、50〜1000μmであるのがより好ましい。基板の厚さがこの範囲内にあれば、平坦性に優れ、ガラス基板と比較して、基板の軽量化を図ることができる。
【0049】
本発明の複合体組成物を光学シートとして用いる場合、平滑性向上のために両面に樹脂のコート層を設けてもよい。コートする樹脂としては、優れた透明性、耐熱性、耐薬品性を有していることが好ましく、具体的には多官能アクリレートやエポキシ樹脂などをあげることができる。コート層の厚みは0.1〜50μmが好ましく、0.5〜30μmであるのがより好ましい。
本発明の光学シートを特に表示素子用プラスチック基板として用いる場合には、必要に応じて水蒸気や酸素に対するガスバリア層や透明電極層を設けてもよい。
【0050】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
(実施例1)
平均投影円相当直径約5μm,平均厚さ約0.1μmであるEガラス(屈折率1.560)の平板状フィラー90重量部を、ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)58重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィド(架橋後の屈折率1.606)42重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.560)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、さらに250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は47重量%であった。
【0052】
(実施例2)
平均直径約13μm,平均長さ約3mmであるEガラス(屈折率1.560)の棒状フィラー80重量部を、ノルボルナンジメチロールジアクリレート(架橋後の屈折率1.520)53重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィド(架橋後の屈折率1.606)47重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.560)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで、両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、さらに250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は44重量%であった。
【0053】
(実施例3)
平均投影円相当直径約10μm,平均厚さ約0.1μmであるSガラス(屈折率1.530)の平板状フィラー90重量部を、ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)92重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィド(架橋後の屈折率1.606)8重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.533)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで、両面から約10J/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は47重量%であった。
【0054】
(実施例4)
平均直径約18μm,平均長さ約1cmであるSガラス(屈折率1.530)の棒状フィラー80重量部をジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)96重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(架橋後の屈折率1.624)4重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.531)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで、両面から約10J/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は44重量%であった。
【0055】
(実施例5)
平均直径約8μm,平均長さ約5mmであるTガラス(屈折率1.530)の棒状フィラー80重量部を、ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)96重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(架橋後の屈折率1.624)4重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.531)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで、両面から約10J/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は44重量%であった。
【0056】(比較例1)
ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)100重量部に光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部添加し、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、さらに250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明シートを得た。
【0057】(比較例2)
平均直径約13μm,平均長さ約3mmであるEガラス(屈折率1.560)の棒状フィラー80重量部を、ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)100重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.527)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、さらに250℃で3時間加熱し、0.1mmの複合体のシートを得た。
【0058】
(評価方法)
以上のようにして作製した光学シートについて、下記に示す評価方法により、各種特性を測定した。
【0059】
a) 面内方向の平均線膨張係数
セイコー電子(株)製TMA/SS120C型熱応力歪測定装置を用いて、窒素の雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から250℃まで上昇させた後、一旦0℃まで冷却し、再び1分間に5℃の割合で温度を上昇させて30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。
【0060】
測定は、独自に設計した石英引張チャック(材質:石英,線膨張係数0.5ppm)を用いた。一般に使われているインコネル製のチャックは、それ自体の線膨張が高いことやサンプルの支持形態に不具合があり、100μmを超える厚いシートに適用すると線膨張係数が圧縮モードで測定した結果よりも大きめに出たり、測定ばらつきが大きくなる問題があった。したがって、石英引張チャックを独自に設計し、それを用いて線膨張係数を測定することにした。この引張チャックを用いることにより、圧縮モードで測定した場合とほぼ同様の値で測定できることを確認している。
【0061】
b)耐熱性(Tg)
セイコー電子(株)製DMS−210型粘弾性測定装置で測定し、1Hzでのtanδの最大値をガラス転移温度(Tg)とした。
【0062】
c)耐溶剤性
60℃のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に試料を浸漬して60分間放置。試料を取り出した後、目視にて外観を観察した。完全に変形、変色を伴わず、侵食されないもののみ○、他は×とした。
【0063】
d) 光線透過率
分光光度計U3200(日立製作所製)で400nm及び550nmの光線透過率を測定した。
【0064】
e))屈折率
アタゴ社製アッベ屈折率計DR−M2を用いて、25℃で波長589nmの屈折率を測定した。
【0065】
これら評価方法により、前記実施例、比較例にて得られた試料を評価した結果をつぎの表1〜2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】
本発明の透明複合体組成物は、低線膨張係数で透明性、耐熱性、耐溶剤性等に優れるため、例えば、透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に利用でき、特にアクティブマトリックスタイプの液晶表示素子基板や有機EL素子基板用の光学シートとして好ましい。
【発明の技術分野】
本発明は線膨張係数が小さく、透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、ガラスに代替可能な透明複合体組成物に関する。この透明複合体組成物は、例えば、液晶表示用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池基板などの光学シート、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】一般に、液晶表示素子用基板、有機EL表示素子用基板、太陽電池基板等には、ガラス板が多く用いられている。しかし、割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向き等の問題から、近年、ガラス板の代わりにプラスチックを用いる試みが数多く行われるようになってきた。例えば、脂環式構造、芳香族等を持つ特定のビス(メタ)アクリレートを含む組成物を活性エネルギー線等により硬化させ成形した透明基板を用いてなる液晶表示素子が検討されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
しかしながら、プラスチックは、ガラス板に比べ線膨張係数が大きいため、表示素子用基板の中でも、特にアクティブマトリックス表示素子用基板に用いた場合、その製造時の加熱工程おいて、金属やシリコン及びそれらの酸化物などの無機薄膜にクラックが発生したり、剥離する等の不具合が生じる場合があり問題となっている。したがって、軽く、曲げることができ、軽いと同時に線膨張係数の小さいシートが望まれている。線膨張係数が低い樹脂フィルムとしては、ポリイミドやポリエチレンナフタレート(PEN)が知られているが、前者は一般に可視光でも短波長域に吸収を持ち黄色〜褐色であり光学用途には好ましくなく、後者は大きな位相差を持つために光学等方性が必要な用途には好ましくない。
【0004】
一方、ガラス基板を出来る限り薄くすることで、軽く、曲げることができるようにすることも検討されている。このような場合、割れやすさを回避するために樹脂を塗布することなどが提案されている。(例えば、非特許文献1参照。)しかし、ガラス基板を薄くすることは50μm程度が下限であり、プラスチックほどの軽量化は困難であるとともに、このような薄いガラスは、より厚いガラスを研磨やエッチングすることで得るために高コストになってしまう。また、ガスバリア層として樹脂フィルムに透明無機薄膜を成膜することが行われている。(例えば、特許文献2,3参照。)しかし、これらは線膨張係数を下げる目的で発明されたものではなく、片面に樹脂層が無い場合にも割れない厚さである0.01〜0.1μmという薄い厚さで用いられるため線膨張係数を下げるには有効ではない。
【0005】
このような問題を解決するための方法として、メチルメタクリレートを主体としたアクリル樹脂とスチレン−アクリロニトリル共重合体をブレンドすることにより屈折率を調整する方法などが検討されている。(例えば、特許文献4参照。)
しかしながら、これら公報に記載されている材料をアクティブマトリックス表示素子基板等のガラス基板代替用に用いようとすると、ガラス転移温度が低く耐熱性が不十分であったり、耐溶剤性が不十分であった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−90667号公報(第2−3頁)
【非特許文献1】
A.Weber, Thin Glass−Polymer System as Flexible Substrate for Displays, SID INTERNATIONAL SYMPOSIUM DIGEST OFTECHNICAL PAPERS 2002 Vol.XXXIII, No.1 P.53−55
【特許文献2】
特開平9−39151号公報(第1−3頁)
【特許文献3】
特開平10−329254号公報(第2−3頁)
【特許文献4】
特開平5−331335公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は線膨張係数が小さく、透明性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、ガラスに代替可能な透明複合体組成物を提供することにある。本発明の透明複合体組成物は、アクティブマトリックスタイプを含む液晶表示素子用基板、有機EL表示素子基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池基板などの光学シート、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路、LED封止材などの用途に適する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、ガラス転移温度が150℃以上である透明樹脂(a)と球相当直径が0.1μm〜2mmである無機フィラー(b)からなり、透明樹脂(a)は、架橋後の屈折率が無機フィラー(b)よりも低い1種以上の反応性モノマーと、無機フィラー(b)よりも高い1種以上の反応性モノマーとを架橋して得られる共重合体であって、(a)と(b)との屈折率差が0.01以下である透明複合体組成物は、波長550nmにおける光線透過率が80%以上と透明性が高く、しかも低線膨張係数であって、耐熱性、耐溶剤性にも優れるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は透明樹脂(a)及び無機フィラー(b)からなり、波長550nmにおける光線透過率が80%以上である透明複合体組成物を提供するものである。
【0010】
本発明の好ましい透明複合体組成物は、脂環式構造を有するアクリレート(a1)と、含イオウアクリレート及びフルオレン骨格を有するアクリレートから選ばれた少なくとも1種のアクリレート(a2)との架橋により得られる透明樹脂(a)とガラスフィラー(b)からなる樹脂組成物である。
【0011】
【発明の詳述】
以下に、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明の透明複合体組成物に用いる透明樹脂(a)は可視光線に対し高い透過性を有し、厚さ200μmのシートにしたとき、波長550nmの光線の透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上である。特に、表示素子用基板とする場合には85%以上であるのが好ましい。
【0012】
前記透明樹脂(a)のガラス転移温度は150℃以上であり、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上である。樹脂のガラス転移温度がこれより低いと、特に、アクティブマトリックス型の表示素子基板に用いた場合、TFT素子形成工程で変形やうねりが生じる恐れがある。
【0013】
このような透明樹脂(a)の例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィンポリマーなどの熱可塑性樹脂、アクリレートなどの反応性モノマーを活性エネルギー線で架橋させた樹脂などが挙げられる。これらのうち、耐溶剤性に優れていることからアクリレートなどの反応性モノマーを活性エネルギー線および/または熱によって架橋した樹脂が好ましい。
【0014】
かかる反応性モノマーは、熱や活性エネルギー線による架橋が可能であればよい。透明性や耐熱性の面から2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。これら樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
また、本発明の透明複合体組成物を表示基板用プラスチック基板として用いる場合、波長550nmにおける光線透過率80%以上が必要であり、さらに好ましくは85%以上であり、最も好ましくは88%以上である。波長550nmにおける光線透過率が80%より低いと表示性能が充分でない。
【0016】
かかる複合体において、波長550nmにおける光線透過率を80%以上にするには、(1)透明樹脂と無機フィラーの屈折率を一致させるか、あるいは(2)光の波長以下の微細なガラスフィラーを用いる方法などが採用し得るが、材料の入手の容易さから屈折率を調整する方法が好ましい。
【0017】
前記透明樹脂(a)と無機フィラー(b)との屈折率差は、優れた透明性を得るため0.01以下である必要があり、0.005以下であるのがより好ましい。かかる屈折率差が0.01より大きいと得られる複合体組成物の透明性が劣る。
【0018】
透明樹脂(a)と無機フィラー(b)との屈折率差を0.01以下にするには、▲1▼透明樹脂(a)の屈折率に合った無機フィラー(b)を選択する、▲2▼無機フィラー(b)の屈折率に合った透明樹脂(a)を選択する、▲3▼無機フィラー(b)よりも屈折率の高い樹脂と無機フィラー(b)よりも屈折率の低い樹脂とを組み合わせて樹脂の屈折率を無機フィラー(b)に一致させる方法などが採用し得る。
【0019】
しかしながら、単独の樹脂により無機フィラーとの屈折率が合う組み合わせは限られていることから、屈折率の異なる2種以上の樹脂を組み合わせるか、架橋後の屈折率の異なる2種以上の反応性モノマーを用いて屈折率を調整するのが好ましい。また、屈折率の異なるポリマーで相容可能なものは限定されるため、屈折率の異なる2種以上の反応性モノマーの量比を調整して重合を行い屈折率を制御するのがより好ましい。かかる方法によれば、たとえば、樹脂の屈折率をEガラスなどの汎用的なガラスフィラーの屈折率に調整することできる。
【0020】
樹脂と無機フィラーとの屈折率差を0.01以下に調整するには、無機フィラーよりも屈折率の高い少なくとも1種の反応性モノマーと、無機フィラーよりも屈折率の低い少なくとも1種の反応性モノマーとを用いるのが好ましい。
【0021】
(a1:低屈折率モノマー)
無機フィラーよりも屈折率の低い反応性モノマーとしては、脂環式構造や脂肪族鎖を含む各種の(メタ)アクリレートを用いることができ、特に透明性や耐熱性の面から脂環式構造を有する(メタ)アクリレートが好ましい。本発明の複合組成物に用いられる脂環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、脂環式構造を含み2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであればよく、反応性、耐熱性や透明性の点から下式(1)及び(2)から選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
【化7】
(式中、R1及びR2は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。aは1又は2を示し、bは0又は1を示す。)
【0023】
【化8】
(式中、Xは水素原子、−CH3、−CH2OH、NH2、
【0024】
【化9】
を示し、R3及びR4は、Hまたは−CH3、Pは0または1である。)
【0025】
式(1)においては、特に、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を持つジシクロペンタジエニルジアクリレートが粘度などの物性から好ましい。
また、式(2)において、特に、Xが−CH2OCOCH=CH2、R3、R4が水素で、pが1である構造を持つパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、 X、R3、R4がすべて水素で、pが0または1である構造を持つアクリレートより選ばれた少なくとも1種以上のアクリレートが好ましい。特に、粘度等の点を考慮すると、X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレートが最も好ましい。式(2)の(メタ)アクリレートは、特開平5−70523に開示の方法にて得られる。
【0026】
(a2:高屈折率モノマー)
ガラスフィラー等の無機フィラーよりも屈折率の高い反応性モノマーとしては、イオウや芳香族環を含む各種の(メタ)アクリレートを用いることができ、特に屈折率が高いことから含イオウ(メタ)アクリレートやフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0027】
含イオウ ( メタ ) アクリレート
本発明で用いられる含イオウ(メタ)アクリレートとしては、イオウを含む2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであればよく、耐熱性や透明性の点から下式(3)に示す(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
【化10】
(式中、Xはイオウ又はSO2を示し、Yは酸素又はイオウを示す。R5〜R10は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。nおよびmは0〜2である。)
【0029】
式(3)で示される(メタ)アクリレートの中でも、反応性、耐熱性や取り扱い安さからXがイオウ、Yが酸素、R5〜R10がすべて水素、n及びmがともに1であるビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィドが最も好ましい。
【0030】
フルオレン骨格を有する ( メタ ) アクリレート
本発明で用いられるフルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、フルオレン骨格を含み2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば特に限定されないが、耐熱性や透明性の点から下記の式(4)および(5)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
【化11】
(式中、R11〜R14は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。rおよびsは0〜2である。)
【0032】
【化12】
(式中、R15〜R17は各々独立に水素原子又はメチル基を示す。)
これらの中でも式(4)においてR11〜R14がすべて水素で、r及びsが1であるビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが最も好ましい。
【0033】
これら低屈折率モノマーと高屈折率モノマーは、目的とする屈折率に応じて適宜の配合割合で混合して架橋を行うことができ、透明樹脂の屈折率を、これと組み合わせる無機フィラーの屈折率に合わせることができる。
本発明で用いられる2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートには柔軟性付与などのため、所望の特性を損なうことのない範囲で、単官能(メタ)アクリレートを併用してもよい。この場合、樹脂成分全体の屈折率が無機フィラーの屈折率に適合するよう配合量を調整する。
【0034】
(b:無機フィラー)
本発明の無機フィラー(b)の球相当直径は0.1μm〜2mmである。球相当直径が0.1μm未満であると、線膨張係数の低減への効果が小さく、2mmを超えると均一に分散することが困難である。
【0035】
本発明の無機フィラー(b)の形状は、面内方向の線膨張係数を下げる効果が大きいことから、平板状,棒状または棒状の集合体であることが好ましい。平板状のものである場合、その厚みは0.1μm〜100μm程度であることが好ましく、棒状または棒状の集合体である場合、1本の棒状の直径は0.1μm〜100μmであることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0036】
本発明の無機フィラー(b)の材質の例を挙げるとシリカ,アルミナ,酸化チタン等の金属酸化物,マイカ等の鉱物,ガラス等であるがこれらに限定されるものではない。これらのうちで透明性が良好で種々の形状のものが安価に入手しやすいガラスが好ましい。ガラスの種類としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、低誘導率ガラス、高誘導率ガラスなどがあげられ、中でもアルカリ金属などのイオン性不純物が少なく、入手が容易なEガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラスが好ましい。
【0037】
本発明の透明複合体組成物に配合する無機フィラー(b)の屈折率は特に限定されるものではないが、組み合わせる樹脂の屈折率の調整が容易なように1.50〜1.57の範囲にあるのが好ましい。特に無機フィラーがガラスフィラーでありその屈折率が1.50〜1.54である場合は、ガラスのアッベ数に近い樹脂が選択でき好ましい。樹脂とガラスとのアッベ数が近いと広い波長領域において両者の屈折率が一致し、広い波長領域で高い光線透過率が得られる。
【0038】
(透明複合体組成物)
透明複合体組成物における無機フィラー(b)の含有率は10重量%以上95重量%以下であることが好ましい。含有率が10重量%より少ないと線膨張係数を低減する効果が得られにくく、95重量%以上であると均一に分散することが難しい。
【0039】
透明複合体組成物は、ガラスフィラーなどの無機フィラーと樹脂とが密着しているほど、プラスチック基板などにした場合の透明性が向上するため、無機フィラー表面をシランカップリング剤などの公知の表面処理剤で処理することが好
ましい。具体的には、反応性モノマーとして2つ以上の官能基を持つ(メタ)アクリレートを用いた場合にはアクリルシランで処理することが好ましい。
【0040】
(他の配合成分)
本発明の複合体組成物中には、必要に応じ、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用してよい。この場合、吸水率を低減させるなどの目的で、脂環式構造やカルド骨格を有するオリゴマーやポリマーを使用することが好ましい。これら熱可塑性または熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用する場合は、全体の屈折率が無機フィラーの屈折率に合うように組成比を調整すればよい。
【0041】
また、本発明のプラスチック基板など複合体組成物中には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を配合してもよい。
【0042】
(成形方法)
複合体組成物の成形方法には制限がなく、例えば、透明樹脂として反応性モノマーを用いる場合には流延法や注型法が、熱可塑性樹脂を用いる場合には溶融押出法などがあり、連続生産が可能であることから流延法および溶融押出法が好ましい。
【0043】
前記の反応性モノマーを架橋させるには、活性エネルギー線により硬化させる方法、熱をかけて熱重合させる方法等があり、これらを併用してもよい。反応性モノマー、好ましくは屈折率の異なる2種以上の反応性モノマーとして2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートを用いる場合には、活性エネルギー線により硬化させる方法が好ましく、反応の完結、リターデーション値を低くする、線膨張係数を低減する等の目的で、活性エネルギー線による硬化及び/又は熱をかけて熱重合させる工程の後に、さらに高温での熱処理を併用することが好ましい。使用する活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、メタルハライドタイプ、高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
【0044】
(重合開始剤)
反応性モノマーを紫外線等の活性エネルギー線により架橋、硬化させるには、樹脂組成物中にラジカルを発生する光重合開始剤を加えるのが好ましい。かかる光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。これらの光重合開始剤は2種以上を併用しても良い。
【0045】
光重合開始剤の複合体組成物中における含有量は、適度に硬化させる量であればよく、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートの合計100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、さらに好ましくは、0.02〜1重量部であり、最も好ましくは、0.1〜0.5重量部である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、複屈折の増大、着色、硬化時の割れ等の問題が発生する。また、少なすぎると組成物を充分に硬化させることができず、架橋後に型に付着して取り外せないなどの問題が発生する恐れがある。
【0046】
活性エネルギー線による硬化及び/又は熱重合による架橋後に高温で熱処理する場合は、その熱処理工程の中に、線膨張係数を低減する等の目的で、窒素雰囲気下又は真空状態で、250〜300℃、1〜24時間の熱処理工程を加えるのが好ましい。
【0047】
本発明の透明複合体組成物を、光学用途、すなわち透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等として用いる場合は、30〜150℃の平均線膨張係数が50ppm以下であることが好ましく、より好ましくは40ppm以下である。特にシート状の透明複合体組成物として、アクティブマトリックス表示素子基板に用いる場合は、前記平均線膨張係数が30ppm以下であることが好ましい。前記値を越えると、製造工程において反りやアルミ配線の断線などの問題が生じる恐れがあるが、線膨張係数が前記の値以下であると従来のガラス基板を用いた場合の設備を大きく変更せずにTFT形成工程を実施できる。
【0048】
本発明の複合体組成物を、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル等として用いる場合、基板の厚さは50〜2000μmであることが好ましく、50〜1000μmであるのがより好ましい。基板の厚さがこの範囲内にあれば、平坦性に優れ、ガラス基板と比較して、基板の軽量化を図ることができる。
【0049】
本発明の複合体組成物を光学シートとして用いる場合、平滑性向上のために両面に樹脂のコート層を設けてもよい。コートする樹脂としては、優れた透明性、耐熱性、耐薬品性を有していることが好ましく、具体的には多官能アクリレートやエポキシ樹脂などをあげることができる。コート層の厚みは0.1〜50μmが好ましく、0.5〜30μmであるのがより好ましい。
本発明の光学シートを特に表示素子用プラスチック基板として用いる場合には、必要に応じて水蒸気や酸素に対するガスバリア層や透明電極層を設けてもよい。
【0050】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
(実施例1)
平均投影円相当直径約5μm,平均厚さ約0.1μmであるEガラス(屈折率1.560)の平板状フィラー90重量部を、ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)58重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィド(架橋後の屈折率1.606)42重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.560)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、さらに250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は47重量%であった。
【0052】
(実施例2)
平均直径約13μm,平均長さ約3mmであるEガラス(屈折率1.560)の棒状フィラー80重量部を、ノルボルナンジメチロールジアクリレート(架橋後の屈折率1.520)53重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィド(架橋後の屈折率1.606)47重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.560)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで、両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、さらに250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は44重量%であった。
【0053】
(実施例3)
平均投影円相当直径約10μm,平均厚さ約0.1μmであるSガラス(屈折率1.530)の平板状フィラー90重量部を、ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)92重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]スルフィド(架橋後の屈折率1.606)8重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.533)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで、両面から約10J/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は47重量%であった。
【0054】
(実施例4)
平均直径約18μm,平均長さ約1cmであるSガラス(屈折率1.530)の棒状フィラー80重量部をジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)96重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(架橋後の屈折率1.624)4重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.531)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで、両面から約10J/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は44重量%であった。
【0055】
(実施例5)
平均直径約8μm,平均長さ約5mmであるTガラス(屈折率1.530)の棒状フィラー80重量部を、ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)96重量部,ビス[4−(アクリロイロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(架橋後の屈折率1.624)4重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.531)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで、両面から約10J/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明複合体のシートを得た。該シートの無機フィラー含有率は44重量%であった。
【0056】(比較例1)
ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)100重量部に光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部添加し、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、さらに250℃で3時間加熱し、0.1mmの透明シートを得た。
【0057】(比較例2)
平均直径約13μm,平均長さ約3mmであるEガラス(屈折率1.560)の棒状フィラー80重量部を、ジシクロペンタジエニルジアクリレート(架橋後の屈折率1.527)100重量部,光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5重量部とからなる樹脂(架橋後の屈折率1.527)に分散し、脱泡した。これを、厚さ100μmのポリエステルフィルムをスペーサーとしてガラス板に挟み込んで両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させた。さらに、ガラス板から取り出し、真空オーブン中100℃で3時間加熱後、さらに250℃で3時間加熱し、0.1mmの複合体のシートを得た。
【0058】
(評価方法)
以上のようにして作製した光学シートについて、下記に示す評価方法により、各種特性を測定した。
【0059】
a) 面内方向の平均線膨張係数
セイコー電子(株)製TMA/SS120C型熱応力歪測定装置を用いて、窒素の雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から250℃まで上昇させた後、一旦0℃まで冷却し、再び1分間に5℃の割合で温度を上昇させて30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。
【0060】
測定は、独自に設計した石英引張チャック(材質:石英,線膨張係数0.5ppm)を用いた。一般に使われているインコネル製のチャックは、それ自体の線膨張が高いことやサンプルの支持形態に不具合があり、100μmを超える厚いシートに適用すると線膨張係数が圧縮モードで測定した結果よりも大きめに出たり、測定ばらつきが大きくなる問題があった。したがって、石英引張チャックを独自に設計し、それを用いて線膨張係数を測定することにした。この引張チャックを用いることにより、圧縮モードで測定した場合とほぼ同様の値で測定できることを確認している。
【0061】
b)耐熱性(Tg)
セイコー電子(株)製DMS−210型粘弾性測定装置で測定し、1Hzでのtanδの最大値をガラス転移温度(Tg)とした。
【0062】
c)耐溶剤性
60℃のジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に試料を浸漬して60分間放置。試料を取り出した後、目視にて外観を観察した。完全に変形、変色を伴わず、侵食されないもののみ○、他は×とした。
【0063】
d) 光線透過率
分光光度計U3200(日立製作所製)で400nm及び550nmの光線透過率を測定した。
【0064】
e))屈折率
アタゴ社製アッベ屈折率計DR−M2を用いて、25℃で波長589nmの屈折率を測定した。
【0065】
これら評価方法により、前記実施例、比較例にて得られた試料を評価した結果をつぎの表1〜2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】
本発明の透明複合体組成物は、低線膨張係数で透明性、耐熱性、耐溶剤性等に優れるため、例えば、透明板、光学レンズ、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路、LED封止材等に好適に利用でき、特にアクティブマトリックスタイプの液晶表示素子基板や有機EL素子基板用の光学シートとして好ましい。
Claims (16)
- ガラス転移温度が150℃以上である透明樹脂(a)及び球相当直径が0.1μm〜2mmである無機フィラー(b) よりなり、波長550nmにおける光線透過率が80%以上である透明複合体組成物。
- ガラス転移温度が150℃以上である透明樹脂(a)及び大きさが1μm以上5cm以下である無機フィラー(b)よりなる透明複合体組成物であって、透明樹脂(a)は、架橋後の屈折率が無機フィラー(b)よりも低い1種以上の反応性モノマーと、ガラスフィラー(b)よりも高い1種以上の反応性モノマーとから得られる共重合体である透明複合体組成物。
- 反応性モノマーの少なくとも1種が2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートである請求項2の透明複合体。
- 透明樹脂(a)とガラスフィラーとの屈折率差が0.01以下である請求項1〜3の透明複合体組成物。
- 透明樹脂(a)が、脂環式構造を有するアクリレート(a1)と、含イオウアクリレート及びフルオレン骨格を有するアクリレートから選ばれた少なくとも1種のアクリレート(a2)とを架橋して得られる共重合体である請求項1〜4いずれかの透明複合体組成物。
- 透明樹脂(a)が、活性エネルギー線および/または熱による、屈折率の異なる2種以上の反応性モノマーの架橋にて得られたものである請求項1〜8いずれかの透明複合体組成物。
- 無機フィラー(b)の形状が平板状である請求項1〜9いずれかの透明複合体組成物。
- 無機フィラー(b)の形状が棒状または棒状の集合体である請求項1〜9いずれかの透明複合体組成物。
- 無機フィラー(b)がガラスである請求項1〜11いずれかの透明複合体組成物。
- 無機フィラー(b)の屈折率が1.50〜1.57である請求項1〜12の透明複合体組成物。
- 30〜150℃における平均線膨張係数が50ppm以下である請求項1〜13いずれかの透明複合体組成物。
- 厚さ50〜2000μmのシートである請求項1〜15いずれかの透明複合体組成物。
- 透明複合体組成物が、光学シート、表示素子用プラスチック基板又はアクティブマトリックス表示素子用基板である請求項1〜15いずれかの透明複合体組成物。
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