JP2004168104A - タイヤホイール組立体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】空気入りタイヤ2をホイールのリム1に嵌合すると共に、空気入りタイヤ2の空洞部に、支持面4aを外周側に張り出しつつ該支持面4aの両側に沿って脚部4b,4bを持つ環状シェル4と、該環状シェル4の脚部4b,4bをリム1上に支持する左右一対の弾性リング5,5とからなるランフラット用支持体3を挿入したタイヤホイール組立体において、リム1に空気入りタイヤ2及びランフラット用支持体3を装着した状態で左右一対の弾性リング5,5がタイヤ内面に当接する当接箇所5a,5aの間隔をW1とし、ランフラット用支持体3の未装着の単体での当接箇所5a,5aの間隔をW2としたとき、(W2−W1)/W1=0.015〜0.100の関係を満足する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランフラット走行を可能にするタイヤホイール組立体に関し、さらに詳しくは、ランフラット走行時の耐久性を向上するようにしたタイヤホイール組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行中に空気入りタイヤがパンクした場合でも、ある程度の緊急走行を可能にするための技術が市場の要請から多数提案されている。これら多数の提案のうち、リム組みされた空気入りタイヤの空洞部においてリム上に中子を装着し、パンクしたタイヤを中子によって支持することによりランフラット走行を可能にしたものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0003】
上記ランフラット用中子は、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ開脚構造の環状シェルを有し、これら両脚部に弾性リングを取り付けた構成からなり、その弾性リングを介してリム上に支持されるようになっている。このランフラット用中子によれば、既存のホイールやリムに何ら特別の改造を加えることなく、そのまま使用できるため、市場に混乱をもたらすことなく受入れ可能であるという利点を有している。
【0004】
しかしながら、上述したランフラット用中子を備えたタイヤホイール組立体では、環状シェルを支える弾性リングがリム組み時にタイヤ内面に当接する位置にしっかりと着座しないと、ランフラット走行時の耐久性が十分に得られないという問題がある。特に、リム組み作業は空気入りタイヤの空洞部に中子を挿入した状態で行われるため、その中子の弾性リングを確実に着座させることは困難であり、しかも着座状態を確認することすら難しいのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−297226号公報
【特許文献2】
特表2001−519279号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ランフラット走行時の耐久性を向上することを可能にしたタイヤホイール組立体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のタイヤホイール組立体は、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する左右一対の弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記リムに前記空気入りタイヤ及び前記ランフラット用支持体を装着した状態で前記左右一対の弾性リングがタイヤ内面に当接する当接箇所の間隔をW1とし、前記ランフラット用支持体の未装着の単体での前記当接箇所の間隔をW2としたとき、(W2−W1)/W1=0.015〜0.100の関係を満足するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、ランフラット用支持体は空気入りタイヤとの間に一定距離を保つように外径が空気入りタイヤのトレッド部の内径よりも小さく形成され、かつ内径が空気入りタイヤのビード部の内径と略同一寸法に形成される。このランフラット用支持体は、空気入りタイヤの空洞部に挿入された状態で空気入りタイヤと共にホイールのリムに組み付けられ、タイヤホイール組立体を構成する。タイヤホイール組立体が車両に装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクすると、そのパンクして潰れたタイヤがランフラット用支持体の環状シェルの支持面によって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0009】
本発明によれば、リム組み状態の弾性リングの当接箇所の間隔W1に対して、リム組み前の弾性リングの当接箇所の間隔W2を所定の比率で大きく設定したので、環状シェルを支える弾性リングがリム組み時にタイヤ内面に当接する位置にしっかりと着座するようになる。これにより、ランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0010】
本発明では、弾性リングのJIS−A硬さが50〜65であることが好ましい。また、環状シェルは降伏強さ400MPa以上の金属から構成することが好ましい。これにより、リム組み前の弾性リングの当接箇所の間隔W2を大きく設定した場合であっても、リム組み時に環状シェルが塑性変形するのを防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図であり、1はホイールのリム、2は空気入りタイヤ、3はランフラット用支持体である。これらリム1、空気入りタイヤ2、ランフラット用支持体3は、図示しないホイール回転軸を中心として環状に形成されている。
【0013】
ランフラット用支持体3は、環状シェル4と弾性リング5とを主要部として構成されている。このランフラット用支持体3は、通常走行時には空気入りタイヤ2の内壁面から離間しているが、パンク時には潰れた空気入りタイヤ2を内側から支持するものである。
【0014】
環状シェル4は、パンクしたタイヤを支えるための連続した支持面4aを外周側(径方向外側)に張り出すと共に、該支持面4aの両側に沿って脚部4b,4bを備えた開脚構造になっている。環状シェル4の支持面4aは、その周方向に直交する断面での形状が外周側に凸曲面になるように形成されている。この凸曲面は少なくとも1つ存在すれば良いが、タイヤ軸方向に2つ以上が並ぶようにすることが好ましい。このように環状シェル4の支持面4aを2つ以上の凸曲面が並ぶように形成することにより、タイヤ内壁面に対する支持面4aの接触箇所を2つ以上に分散させ、タイヤ内壁面に与える局部摩耗を低減するため、ランフラット走行の持続距離を延長することができる。
【0015】
上記環状シェル4は、パンクした空気入りタイヤ2を介して車両重量を支える必要があるため剛体材料から構成されている。その構成材料としては、スチールやアルミニウムなどの金属を使用することが好ましい。特に、降伏強さ(耐力)が400MPa以上、より好ましくは500MPa以上の金属から環状シェル4を構成した場合、リム組み時に環状シェル4が塑性変形し難くなる。降伏強さの上限は特に限定されるものではないが、経済的理由から、その上限は1500MPaとする。例えば、環状シェル4をバネ鋼から成形する場合、熱間絞り加工が最適である。
【0016】
上記環状シェル4の構成材料としては、樹脂などを用いることも可能である。この樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでも良い。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ABSなどを挙げることができ、また熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は単独で使用しても良いが、補強繊維を配合して繊維強化樹脂として使用しても良い。
【0017】
弾性リング5は、環状シェル4の脚部4b,4bにそれぞれ取り付けられ、左右のリムシート上に当接しつつ環状シェル4を支持するようになっている。この弾性リング5は、パンクした空気入りタイヤ2から環状シェル4が受ける衝撃や振動を緩和するほか、リムシートに対する滑りを防止して環状シェル4を安定的に支持するものである。
【0018】
弾性リング5の構成材料としては、ゴム又は樹脂を使用することができ、特にゴムが好ましい。ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、水素化NBR、水素化SBR、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。勿論、これらゴムには、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤などの添加剤を適宜配合することができる。そして、ゴム組成物の配合に基づいて所望の弾性率を得ることができる。
【0019】
このように構成されるタイヤホイール組立体では、走行中に空気入りタイヤ2がパンクすると、潰れた空気入りタイヤ2がランフラット用支持体3の環状シェル4の支持面4aによって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0020】
ここで、リム1に空気入りタイヤ2及びランフラット用支持体3を装着した状態で左右一対の弾性リング5,5がタイヤ内面に当接する当接箇所5a,5aの間隔をW1とする。一方、図2に示すように、ランフラット用支持体3をリム1に装着する前の単体において、左右一対の弾性リング5,5の当接箇所5a,5aの間隔をW2とする。このとき、(W2−W1)/W1=0.015〜0.100の関係を満足するようになっている。更に、W2−W1=3〜15mmであると良い。
【0021】
このようにリム組み状態の弾性リング5,5の当接箇所5a,5aの間隔W1に対して、リム組み前の弾性リング5,5の当接箇所5a,5aの間隔W2を所定の比率で大きく設定することにより、リム組み時に弾性リング5,5が自らの復元力に基づいてタイヤ内面に当接する位置にしっかりと着座するようになり、ランフラット走行時の耐久性が向上する。但し、(W2−W1)/W1<0.015であると嵌合性が不十分になり、(W2−W1)/W1>0.100であると嵌合状態において弾性リング5が座屈し、ランフラット走行性能が低下する恐れがある。
【0022】
なお、弾性リング5,5の当接箇所5a,5aの間隔W1,W2を上記のように設定するに際して、その具体的な構造は特に限定されるものではない。例えば、弾性リング5をシェル軸方向外側に傾斜させたり、湾曲させることで、その一部をシェル軸方向外側へ突出させるようにしても良い。また、環状シェル4の端部4bをシェル軸方向外側に傾斜させることで、弾性リング5をシェル軸方向外側へ突出させるようにしても良い。
【0023】
上記タイヤホイール組立体において、弾性リング5の室温(25℃)でのJIS−A硬さは50〜65であると良い。つまり、リム組み前の弾性リング5,5の当接箇所5a,5aの相互間隔W2を大きく設定した場合、弾性リング5が硬過ぎると、空気入りタイヤ2をリム1に押し込む際に弾性リング5がシェル軸方向内側に圧縮変形し、それに伴って環状シェル4が塑性変形する恐れがある。しかしながら、弾性リング5のJIS−A硬さを上記範囲に設定することにより、リム組み時に環状シェル4が塑性変形するのを防止することができる。また、弾性リング5が軟らか過ぎるとランフラット走行が不安定になる。
【0024】
【実施例】
タイヤサイズが205/55R16 89Vの空気入りタイヤと、リムサイズが16×6 1/2JJのホイールとのタイヤホイール組立体において、厚さ1.0mmのスチール板から環状シェルを加工し、その環状シェルの脚部に硬質ゴムからなる弾性リングを取り付けたランフラット用支持体を製作し、そのランフラット用支持体を空気入りタイヤの空洞部に挿入することにより、実施例1〜2、従来例及び比較例のタイヤホイール組立体を得た。
【0025】
これら実施例1〜2、従来例及び比較例において、リム組み状態でランフラット用支持体の左右一対の弾性リングがタイヤ内面に当接する当接箇所の間隔をW1とし、ランフラット用支持体の未装着の単体での当接箇所の間隔をW2とし、(W2−W1)/W1の値を種々異ならせた。
【0026】
上記4種類のタイヤホイール組立体について、下記の測定方法により、ランフラット走行時の耐久性を評価し、その結果を表1に示した。
【0027】
〔ランフラット走行時の耐久性〕
試験すべきタイヤホイール組立体を排気量2.5リットルのFR車の前右輪に装着し、そのタイヤ内圧を0kPa(前右輪以外は200kPa)とし、時速90km/hで周回路を左廻りに走行し、走行不能になるまでの走行距離を測定した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどランフラット走行時の耐久性が優れていることを意味する。
【0028】
【表1】
【0029】
この表1に示すように、実施例1〜2のタイヤホイール組立体はランフラット走行時の耐久性が従来例に比べて向上していた。一方、比較例のタイヤホイール組立体では耐久性の改善効果が得られなかった。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、空気入りタイヤの空洞部に環状シェルと左右一対の弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、リムに空気入りタイヤ及びランフラット用支持体を装着した状態で左右一対の弾性リングがタイヤ内面に当接する当接箇所の間隔をW1とし、ランフラット用支持体の未装着の単体での前記当接箇所の間隔をW2としたとき、(W2−W1)/W1=0.015〜0.100の関係を満足するようにしたから、リム組み時に弾性リングがタイヤ内面に当接する位置にしっかりと着座するようになり、ランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図2】本発明のランフラット用支持体の未装着の単体を示す子午線断面図である。
【符号の説明】
1(ホイールの)リム
2 空気入りタイヤ
3 ランフラット用支持体
4 環状シェル
4a 支持面
4b 脚部
5 弾性リング
5a 当接箇所
Claims (3)
- 空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する左右一対の弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記リムに前記空気入りタイヤ及び前記ランフラット用支持体を装着した状態で前記左右一対の弾性リングがタイヤ内面に当接する当接箇所の間隔をW1とし、前記ランフラット用支持体の未装着の単体での前記当接箇所の間隔をW2としたとき、(W2−W1)/W1=0.015〜0.100の関係を満足するようにしたタイヤホイール組立体。
- 前記弾性リングのJIS−A硬さが50〜65である請求項1に記載のタイヤホイール組立体。
- 前記環状シェルを降伏強さ400MPa以上の金属から構成した請求項1又は請求項2に記載のタイヤホイール組立体。
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