JP3952179B2 - タイヤホイール組立体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランフラット走行を可能にするタイヤホイール組立体に関し、さらに詳しくは、重量増加を抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上するようにしたタイヤホイール組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行中に空気入りタイヤがパンクした場合でも、ある程度の緊急走行を可能にするための技術が市場の要請から多数提案されている。これら多数の提案のうち、特開平10−297226号公報や特表2001−519279号公報で提案された技術は、リム組みされた空気入りタイヤの空洞部においてリム上に中子を装着し、パンクしたタイヤを中子によって支持することによりランフラット走行を可能にしたものである。
【0003】
上記ランフラット用中子は、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ開脚構造の環状シェルを有し、これら両脚部に弾性リングを取り付けた構成からなり、その弾性リングを介してリム上に支持されるようになっている。このランフラット用中子によれば、既存のホイールやリムに何ら特別の改造を加えることなく、そのまま使用できるため、市場に混乱をもたらすことなく受入れ可能であるという利点を有している。
【0004】
しかしながら、ランフラット走行時には中子に対して大きな荷重が負荷されるので、ランフラット走行時の耐久性を向上するには環状シェルの強度を十分に確保する必要があるが、この環状シェルの肉厚を大きくすると重量増加が顕著になるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、重量増加を抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上することを可能にしたタイヤホイール組立体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のタイヤホイール組立体は、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記ランフラット用支持体と前記空気入りタイヤとの間に形成される空間、及び、前記ランフラット用支持体と前記リムとの間に形成される空間の少なくとも一方に、弾性薄膜によって形成された複数の中空バルーン、或いは、独立気泡を有する少なくとも1つのスポンジを配置したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明において、ランフラット用支持体は空気入りタイヤとの間に一定距離を保つように外径が空気入りタイヤのトレッド部の内径よりも小さく形成され、かつ内径が空気入りタイヤのビード部の内径と略同一寸法に形成される。このランフラット用支持体は、空気入りタイヤの空洞部に挿入された状態で空気入りタイヤと共にホイールのリムに組み付けられ、タイヤホイール組立体を構成する。タイヤホイール組立体が車両に装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクすると、そのパンクして潰れたタイヤがランフラット用支持体の環状シェルの支持面によって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0008】
本発明によれば、ランフラット用支持体と空気入りタイヤとの間に形成される空間、及び、ランフラット用支持体とリムとの間に形成される空間の少なくとも一方に、弾性薄膜によって形成された複数の中空バルーン、或いは、独立気泡を有する少なくとも1つのスポンジを配置するので、ランフラット走行時に上記空間が変形し、中空バルーンやスポンジに閉じ込められた気体が圧縮されたとき、これら中空バルーンやスポンジが気体の圧力を利用して荷重を支えるように機能する。しかも、中空バルーンやスポンジは嵩比重を小さくすることで軽量化が可能である。従って、重量増加を抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上することができる。また、中空バルーンやスポンジによる荷重支持機能を付加する替わりに環状シェルの肉厚を低減すれば、タイヤホイール組立体の軽量化も可能である。
【0009】
本発明において、中空バルーンの弾性薄膜はゴム又は合成樹脂から構成することが好ましい。また、中空バルーンの肉厚は0.005〜0.5mmであることが好ましい。これにより、重量増加を効果的に抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0010】
中空バルーン及びスポンジの空間占有率はそれぞれ40〜95%であることが好ましい。上記空間占有率を設定することにより、中空バルーンやスポンジに十分な荷重支持機能を持たせることができる。なお、空間占有率とは各空間の体積に対する各空間に内蔵された中空バルーン又はスポンジの総体積の比率であり、この空間占有率は無内圧状態での値である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図であり、1はホイールのリム、2は空気入りタイヤ、3はランフラット用支持体である。これらリム1、空気入りタイヤ2、ランフラット用支持体3は、図示しないホイール回転軸を中心として環状に形成されている。
【0013】
ランフラット用支持体3は、環状シェル4と弾性リング5とを主要部として構成されている。このランフラット用支持体3は、通常走行時には空気入りタイヤ2の内壁面から離間しているが、パンク時には潰れた空気入りタイヤ2を内側から支持するものである。
【0014】
環状シェル4は、パンクしたタイヤを支えるための連続した支持面4aを外周側(径方向外側)に張り出すと共に、該支持面4aの両側に沿って脚部4b,4bを備えた開脚構造になっている。環状シェル4の支持面4aは、その周方向に直交する断面での形状が外周側に凸曲面になるように形成されている。この凸曲面は少なくとも1つ存在すれば良いが、タイヤ軸方向に2つ以上が並ぶようにすることが好ましい。このように環状シェル4の支持面4aを2つ以上の凸曲面が並ぶように形成することにより、タイヤ内壁面に対する支持面4aの接触箇所を2つ以上に分散させ、タイヤ内壁面に与える局部摩耗を低減するため、ランフラット走行の持続距離を延長することができる。
【0015】
上記環状シェル4は、パンクした空気入りタイヤ2を介して車両重量を支える必要があるため剛体材料から構成されている。その構成材料には、金属や樹脂などが使用される。このうち金属としては、スチール、アルミニウムなどを例示することができる。また、樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでも良い。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ABSなどを挙げることができ、また熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は単独で使用しても良いが、補強繊維を配合して繊維強化樹脂として使用しても良い。
【0016】
弾性リング5は、環状シェル4の脚部4b,4bにそれぞれ取り付けられ、左右のリムシート上に当接しつつ環状シェル4を支持するようになっている。この弾性リング5は、パンクした空気入りタイヤ2から環状シェル4が受ける衝撃や振動を緩和するほか、リムシートに対する滑りを防止して環状シェル4を安定的に支持するものである。
【0017】
弾性リング5の構成材料としては、ゴム又は樹脂を使用することができ、特にゴムが好ましい。ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、水素化NBR、水素化SBR、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。勿論、これらゴムには、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤などの添加剤を適宜配合することができる。そして、ゴム組成物の配合に基づいて所望の弾性率を得ることができる。
【0018】
このように構成されるタイヤホイール組立体では、走行中に空気入りタイヤ2がパンクすると、潰れた空気入りタイヤ2がランフラット用支持体3の環状シェル4の支持面4aによって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0019】
上記タイヤホイール組立体において、ランフラット用支持体3とリム1との間には空間6が存在し、ランフラット用支持体3と空気入りタイヤ2との間には空間7が存在する。そして、ランフラット用支持体3とリム1との間の空間6には、弾性薄膜によって球状に形成された複数の中空バルーン8が内蔵されている。空間6に内蔵された中空バルーン8は、軽量でありながら、ランフラット用支持体3が変形したときに荷重支持を分担する。そのため、大幅な重量増加を伴うことなくランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0020】
図2は本発明の他の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図である。本実施形態において、ランフラット用支持体3と空気入りタイヤ2との間の空間7には、弾性薄膜によって球状に形成された複数の中空バルーン8が内蔵されている。空間7に内蔵された中空バルーン8は、軽量でありながら、空気入りタイヤ2が変形したときに荷重支持を分担する。そのため、大幅な重量増加を伴うことなくランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0021】
中空バルーン8の構成材料は特に限定されるものではないが、ゴム又は樹脂を用いると良い。ゴムとしては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、水素化NBR、水素化SBR、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。合成樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0022】
また、中空バルーン8の肉厚は0.005〜0.5mmであると良い。中空バルーン8の肉厚が0.005mm未満であると耐久性の向上効果が不十分になり、逆に0.5mmを超えると重量増加に繋がる恐れがある。
【0023】
中空バルーン8の空間占有率は40〜95%であることが好ましい。この空間占有率が40%未満であると中空バルーン8に十分な荷重支持機能を持たせることが困難になり、逆に95%を超えるとリム組み作業が困難になる。
【0024】
図3は本発明の更に他の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図である。本実施形態において、ランフラット用支持体3とリム1との間の空間6には、独立気泡を有する複数のスポンジ9が内蔵されている。空間6に内蔵されたスポンジ9は、軽量でありながら、ランフラット用支持体3が変形したときに荷重支持を分担する。そのため、大幅な重量増加を伴うことなくランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0025】
図4は本発明の更に他の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図である。本実施形態において、ランフラット用支持体3と空気入りタイヤ2との間の空間7には、独立気泡を有する複数のスポンジ9が内蔵されている。空間7に内蔵されたスポンジ9は、軽量でありながら、空気入りタイヤ2が変形したときに荷重支持を分担する。そのため、大幅な重量増加を伴うことなくランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0026】
スポンジ9の空間占有率は40〜95%であることが好ましい。この空間占有率が40%未満であるとスポンジ9に十分な荷重支持機能を持たせることが困難になり、逆に95%を超えるとリム組み作業が困難になる。なお、上記空間占有率を満足するように一体化された1つのスポンジを空間6,7に配置することも可能である。
【0027】
上述した実施形態では、ランフラット用支持体3とリム1との間の空間6、及び、ランフラット用支持体3と空気入りタイヤ2との間の空間7のいずれか一方に、中空バルーン8及びスポンジ9のいずれか一方を配置した場合について説明したが、本発明では空間6,7の両方に中空バルーン8やスポンジ9を配置することも可能である。
【0028】
【実施例】
タイヤサイズが205/55R16 89Vの空気入りタイヤと、リムサイズが16×6 1/2JJのホイールとのタイヤホイール組立体において、厚さ1.0mmのスチール板から環状シェルを加工し、その脚部に弾性リングを接合したランフラット用支持体を製作し、図1に示すように、ランフラット用支持体とリムとの間の空間に多数の中空バルーンを配置しつつタイヤホイール組立体(実施例1)とした。同様に、図2に示すように、ランフラット用支持体と空気入りタイヤとの間の空間に多数の中空バルーンを配置しつつタイヤホイール組立体(実施例2)とした。これら実施例1,2において、中空バルーンの総重量はそれぞれ60g,140gであった。
【0029】
また、比較のため、中空バルーンを内蔵しないこと以外は、実施例1,2と同一構造のタイヤホイール組立体(従来例)を得た。
【0030】
上記3種類のタイヤホイール組立体について、下記の測定方法により、ランフラット走行時の耐久性を評価し、その結果を表1に示した。
【0031】
〔ランフラット走行時の耐久性〕
試験すべきタイヤホイール組立体を排気量2.5リットルのFR車の前右輪に装着し、そのタイヤ内圧を0kPa(前右輪以外は200kPa)とし、時速90km/hで周回路を左廻りに走行し、走行不能になるまでの走行距離を測定した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどランフラット走行時の耐久性が優れていることを意味する。
【0032】
【表1】
この表1に示すように、実施例1,2のタイヤホイール組立体は僅かな重量増加を伴うだけでランフラット走行時の耐久性を従来例に比べて向上することができた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、ランフラット用支持体と空気入りタイヤとの間に形成される空間、及び、ランフラット用支持体とリムとの間に形成される空間の少なくとも一方に、弾性薄膜によって形成された複数の中空バルーン、或いは、独立気泡を有する少なくとも1つのスポンジを配置したから、重量増加を抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【符号の説明】
1(ホイールの)リム
2 空気入りタイヤ
3 ランフラット用支持体
4 環状シェル
4a 支持面
4b 脚部
5 弾性リング
6 支持体とリムとの間の空間
7 支持体と空気入りタイヤとの間の空間
8 中空バルーン
9 スポンジ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランフラット走行を可能にするタイヤホイール組立体に関し、さらに詳しくは、重量増加を抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上するようにしたタイヤホイール組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行中に空気入りタイヤがパンクした場合でも、ある程度の緊急走行を可能にするための技術が市場の要請から多数提案されている。これら多数の提案のうち、特開平10−297226号公報や特表2001−519279号公報で提案された技術は、リム組みされた空気入りタイヤの空洞部においてリム上に中子を装着し、パンクしたタイヤを中子によって支持することによりランフラット走行を可能にしたものである。
【0003】
上記ランフラット用中子は、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ開脚構造の環状シェルを有し、これら両脚部に弾性リングを取り付けた構成からなり、その弾性リングを介してリム上に支持されるようになっている。このランフラット用中子によれば、既存のホイールやリムに何ら特別の改造を加えることなく、そのまま使用できるため、市場に混乱をもたらすことなく受入れ可能であるという利点を有している。
【0004】
しかしながら、ランフラット走行時には中子に対して大きな荷重が負荷されるので、ランフラット走行時の耐久性を向上するには環状シェルの強度を十分に確保する必要があるが、この環状シェルの肉厚を大きくすると重量増加が顕著になるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、重量増加を抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上することを可能にしたタイヤホイール組立体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のタイヤホイール組立体は、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記ランフラット用支持体と前記空気入りタイヤとの間に形成される空間、及び、前記ランフラット用支持体と前記リムとの間に形成される空間の少なくとも一方に、弾性薄膜によって形成された複数の中空バルーン、或いは、独立気泡を有する少なくとも1つのスポンジを配置したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明において、ランフラット用支持体は空気入りタイヤとの間に一定距離を保つように外径が空気入りタイヤのトレッド部の内径よりも小さく形成され、かつ内径が空気入りタイヤのビード部の内径と略同一寸法に形成される。このランフラット用支持体は、空気入りタイヤの空洞部に挿入された状態で空気入りタイヤと共にホイールのリムに組み付けられ、タイヤホイール組立体を構成する。タイヤホイール組立体が車両に装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクすると、そのパンクして潰れたタイヤがランフラット用支持体の環状シェルの支持面によって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0008】
本発明によれば、ランフラット用支持体と空気入りタイヤとの間に形成される空間、及び、ランフラット用支持体とリムとの間に形成される空間の少なくとも一方に、弾性薄膜によって形成された複数の中空バルーン、或いは、独立気泡を有する少なくとも1つのスポンジを配置するので、ランフラット走行時に上記空間が変形し、中空バルーンやスポンジに閉じ込められた気体が圧縮されたとき、これら中空バルーンやスポンジが気体の圧力を利用して荷重を支えるように機能する。しかも、中空バルーンやスポンジは嵩比重を小さくすることで軽量化が可能である。従って、重量増加を抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上することができる。また、中空バルーンやスポンジによる荷重支持機能を付加する替わりに環状シェルの肉厚を低減すれば、タイヤホイール組立体の軽量化も可能である。
【0009】
本発明において、中空バルーンの弾性薄膜はゴム又は合成樹脂から構成することが好ましい。また、中空バルーンの肉厚は0.005〜0.5mmであることが好ましい。これにより、重量増加を効果的に抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0010】
中空バルーン及びスポンジの空間占有率はそれぞれ40〜95%であることが好ましい。上記空間占有率を設定することにより、中空バルーンやスポンジに十分な荷重支持機能を持たせることができる。なお、空間占有率とは各空間の体積に対する各空間に内蔵された中空バルーン又はスポンジの総体積の比率であり、この空間占有率は無内圧状態での値である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図であり、1はホイールのリム、2は空気入りタイヤ、3はランフラット用支持体である。これらリム1、空気入りタイヤ2、ランフラット用支持体3は、図示しないホイール回転軸を中心として環状に形成されている。
【0013】
ランフラット用支持体3は、環状シェル4と弾性リング5とを主要部として構成されている。このランフラット用支持体3は、通常走行時には空気入りタイヤ2の内壁面から離間しているが、パンク時には潰れた空気入りタイヤ2を内側から支持するものである。
【0014】
環状シェル4は、パンクしたタイヤを支えるための連続した支持面4aを外周側(径方向外側)に張り出すと共に、該支持面4aの両側に沿って脚部4b,4bを備えた開脚構造になっている。環状シェル4の支持面4aは、その周方向に直交する断面での形状が外周側に凸曲面になるように形成されている。この凸曲面は少なくとも1つ存在すれば良いが、タイヤ軸方向に2つ以上が並ぶようにすることが好ましい。このように環状シェル4の支持面4aを2つ以上の凸曲面が並ぶように形成することにより、タイヤ内壁面に対する支持面4aの接触箇所を2つ以上に分散させ、タイヤ内壁面に与える局部摩耗を低減するため、ランフラット走行の持続距離を延長することができる。
【0015】
上記環状シェル4は、パンクした空気入りタイヤ2を介して車両重量を支える必要があるため剛体材料から構成されている。その構成材料には、金属や樹脂などが使用される。このうち金属としては、スチール、アルミニウムなどを例示することができる。また、樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでも良い。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ABSなどを挙げることができ、また熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は単独で使用しても良いが、補強繊維を配合して繊維強化樹脂として使用しても良い。
【0016】
弾性リング5は、環状シェル4の脚部4b,4bにそれぞれ取り付けられ、左右のリムシート上に当接しつつ環状シェル4を支持するようになっている。この弾性リング5は、パンクした空気入りタイヤ2から環状シェル4が受ける衝撃や振動を緩和するほか、リムシートに対する滑りを防止して環状シェル4を安定的に支持するものである。
【0017】
弾性リング5の構成材料としては、ゴム又は樹脂を使用することができ、特にゴムが好ましい。ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、水素化NBR、水素化SBR、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。勿論、これらゴムには、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤などの添加剤を適宜配合することができる。そして、ゴム組成物の配合に基づいて所望の弾性率を得ることができる。
【0018】
このように構成されるタイヤホイール組立体では、走行中に空気入りタイヤ2がパンクすると、潰れた空気入りタイヤ2がランフラット用支持体3の環状シェル4の支持面4aによって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0019】
上記タイヤホイール組立体において、ランフラット用支持体3とリム1との間には空間6が存在し、ランフラット用支持体3と空気入りタイヤ2との間には空間7が存在する。そして、ランフラット用支持体3とリム1との間の空間6には、弾性薄膜によって球状に形成された複数の中空バルーン8が内蔵されている。空間6に内蔵された中空バルーン8は、軽量でありながら、ランフラット用支持体3が変形したときに荷重支持を分担する。そのため、大幅な重量増加を伴うことなくランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0020】
図2は本発明の他の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図である。本実施形態において、ランフラット用支持体3と空気入りタイヤ2との間の空間7には、弾性薄膜によって球状に形成された複数の中空バルーン8が内蔵されている。空間7に内蔵された中空バルーン8は、軽量でありながら、空気入りタイヤ2が変形したときに荷重支持を分担する。そのため、大幅な重量増加を伴うことなくランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0021】
中空バルーン8の構成材料は特に限定されるものではないが、ゴム又は樹脂を用いると良い。ゴムとしては、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、水素化NBR、水素化SBR、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。合成樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0022】
また、中空バルーン8の肉厚は0.005〜0.5mmであると良い。中空バルーン8の肉厚が0.005mm未満であると耐久性の向上効果が不十分になり、逆に0.5mmを超えると重量増加に繋がる恐れがある。
【0023】
中空バルーン8の空間占有率は40〜95%であることが好ましい。この空間占有率が40%未満であると中空バルーン8に十分な荷重支持機能を持たせることが困難になり、逆に95%を超えるとリム組み作業が困難になる。
【0024】
図3は本発明の更に他の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図である。本実施形態において、ランフラット用支持体3とリム1との間の空間6には、独立気泡を有する複数のスポンジ9が内蔵されている。空間6に内蔵されたスポンジ9は、軽量でありながら、ランフラット用支持体3が変形したときに荷重支持を分担する。そのため、大幅な重量増加を伴うことなくランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0025】
図4は本発明の更に他の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図である。本実施形態において、ランフラット用支持体3と空気入りタイヤ2との間の空間7には、独立気泡を有する複数のスポンジ9が内蔵されている。空間7に内蔵されたスポンジ9は、軽量でありながら、空気入りタイヤ2が変形したときに荷重支持を分担する。そのため、大幅な重量増加を伴うことなくランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0026】
スポンジ9の空間占有率は40〜95%であることが好ましい。この空間占有率が40%未満であるとスポンジ9に十分な荷重支持機能を持たせることが困難になり、逆に95%を超えるとリム組み作業が困難になる。なお、上記空間占有率を満足するように一体化された1つのスポンジを空間6,7に配置することも可能である。
【0027】
上述した実施形態では、ランフラット用支持体3とリム1との間の空間6、及び、ランフラット用支持体3と空気入りタイヤ2との間の空間7のいずれか一方に、中空バルーン8及びスポンジ9のいずれか一方を配置した場合について説明したが、本発明では空間6,7の両方に中空バルーン8やスポンジ9を配置することも可能である。
【0028】
【実施例】
タイヤサイズが205/55R16 89Vの空気入りタイヤと、リムサイズが16×6 1/2JJのホイールとのタイヤホイール組立体において、厚さ1.0mmのスチール板から環状シェルを加工し、その脚部に弾性リングを接合したランフラット用支持体を製作し、図1に示すように、ランフラット用支持体とリムとの間の空間に多数の中空バルーンを配置しつつタイヤホイール組立体(実施例1)とした。同様に、図2に示すように、ランフラット用支持体と空気入りタイヤとの間の空間に多数の中空バルーンを配置しつつタイヤホイール組立体(実施例2)とした。これら実施例1,2において、中空バルーンの総重量はそれぞれ60g,140gであった。
【0029】
また、比較のため、中空バルーンを内蔵しないこと以外は、実施例1,2と同一構造のタイヤホイール組立体(従来例)を得た。
【0030】
上記3種類のタイヤホイール組立体について、下記の測定方法により、ランフラット走行時の耐久性を評価し、その結果を表1に示した。
【0031】
〔ランフラット走行時の耐久性〕
試験すべきタイヤホイール組立体を排気量2.5リットルのFR車の前右輪に装着し、そのタイヤ内圧を0kPa(前右輪以外は200kPa)とし、時速90km/hで周回路を左廻りに走行し、走行不能になるまでの走行距離を測定した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどランフラット走行時の耐久性が優れていることを意味する。
【0032】
【表1】
この表1に示すように、実施例1,2のタイヤホイール組立体は僅かな重量増加を伴うだけでランフラット走行時の耐久性を従来例に比べて向上することができた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、ランフラット用支持体と空気入りタイヤとの間に形成される空間、及び、ランフラット用支持体とリムとの間に形成される空間の少なくとも一方に、弾性薄膜によって形成された複数の中空バルーン、或いは、独立気泡を有する少なくとも1つのスポンジを配置したから、重量増加を抑えながらランフラット走行時の耐久性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【符号の説明】
1(ホイールの)リム
2 空気入りタイヤ
3 ランフラット用支持体
4 環状シェル
4a 支持面
4b 脚部
5 弾性リング
6 支持体とリムとの間の空間
7 支持体と空気入りタイヤとの間の空間
8 中空バルーン
9 スポンジ
Claims (6)
- 空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記ランフラット用支持体と前記空気入りタイヤとの間に形成される空間、及び、前記ランフラット用支持体と前記リムとの間に形成される空間の少なくとも一方に、弾性薄膜によって形成された複数の中空バルーンを配置したタイヤホイール組立体。
- 前記中空バルーンの弾性薄膜がゴム又は合成樹脂からなる請求項1に記載のタイヤホイール組立体。
- 前記中空バルーンの肉厚が0.005〜0.5mmである請求項1又は請求項2に記載のタイヤホイール組立体。
- 前記中空バルーンの空間占有率が40〜95%である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤホイール組立体。
- 空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記ランフラット用支持体と前記空気入りタイヤとの間に形成される空間、及び、前記ランフラット用支持体と前記リムとの間に形成される空間の少なくとも一方に、独立気泡を有する少なくとも1つのスポンジを配置したタイヤホイール組立体。
- 前記スポンジの空間占有率が40〜95%である請求項5に記載のタイヤホイール組立体。
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