JP4145105B2 - タイヤホイール組立体及びランフラット用支持体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランフラット走行を可能にするタイヤホイール組立体及びそれに用いるランフラット用支持体に関し、さらに詳しくは、ランフラット走行時の耐久性を向上するようにしたタイヤホイール組立体及びランフラット用支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行中に空気入りタイヤがパンクした場合でも、ある程度の緊急走行を可能にするための技術が市場の要請から多数提案されている。これら多数の提案のうち、リム組みされた空気入りタイヤの空洞部においてリム上に中子を装着し、パンクしたタイヤを中子によって支持することによりランフラット走行を可能にしたものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0003】
上記ランフラット用中子は、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ開脚構造の環状シェルを有し、これら両脚部に弾性リングを取り付けた構成からなり、その弾性リングを介してリム上に支持されるようになっている。このランフラット用中子によれば、既存のホイールやリムに何ら特別の改造を加えることなく、そのまま使用できるため、市場に混乱をもたらすことなく受入れ可能であるという利点を有している。
【0004】
しかしながら、上記中子の弾性リングはランフラット走行時に大きな荷重が負荷されるため損傷し易く、これがランフラット走行時の耐久性を低下させる要因になっている。また、弾性リングのボリュームを大きくすれば耐久性を向上することが可能であるが、この場合、重量増加を招くことになる。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−297226号公報
【特許文献2】
特表2001−519279号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ランフラット走行時の耐久性を向上することを可能にしたタイヤホイール組立体及びランフラット用支持体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明のタイヤホイール組立体は、空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記弾性リングを繊維補強層で被覆したことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明のランフラット用支持体は、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなり、前記弾性リングを繊維補強層で被覆したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、ランフラット用支持体は空気入りタイヤとの間に一定距離を保つように外径が空気入りタイヤのトレッド部の内径よりも小さく形成され、かつ内径が空気入りタイヤのビード部の内径と略同一寸法に形成される。このランフラット用支持体は、空気入りタイヤの空洞部に挿入された状態で空気入りタイヤと共にホイールのリムに組み付けられ、タイヤホイール組立体を構成する。タイヤホイール組立体が車両に装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクすると、そのパンクして潰れたタイヤがランフラット用支持体の環状シェルの支持面によって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0010】
本発明によれば、弾性リングを繊維補強層で被覆することにより、ランフラット走行時に弾性リングに対して荷重が負荷されたとき、繊維補強層がゴム等の材料からなる弾性リングの体積変化を抑制するので、弾性リングの剛性が増大する。これにより、ランフラット走行時の耐久性を向上することができる。また、弾性リングに繊維補強層を付加するだけであるので、実質的な重量増加を伴うことはない。なお、弾性リングを繊維補強層で被覆しつつ弾性リングの厚さを減じるようにすれば、タイヤホイール組立体の軽量化を図ることも可能である。
【0011】
本発明では、繊維補強層の被覆面積が弾性リングの表面積の80%以上であることが好ましい。これにより、弾性リングの体積変化をより確実に抑制し、耐久性の改善効果を高めることができる。
【0012】
弾性リングのシェル軸方向外側の側面には窪みを設けることが好ましい。即ち、リム組み作業時において、弾性リングはシェル軸方向内側に変形し易いことが望まれるが、弾性リングに繊維補強層を付加すると、弾性リングの変形に対する抵抗が大きくなり、リム組み作業性が低下する恐れがある。これに対して、弾性リングのシェル軸方向外側の側面に窪みを設けた場合、その窪みに沿って配置された繊維補強層が伸長可能であるため、リム組み作業性を低下させることはない。同様の理由から、弾性リングのシェル軸方向外側の側面において繊維補強層をシェル径方向に不連続としても良い。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体(車輪)の要部を示す子午線断面図であり、1はホイールのリム、2は空気入りタイヤ、3はランフラット用支持体である。これらリム1、空気入りタイヤ2、ランフラット用支持体3は、図示しないホイール回転軸を中心として環状に形成されている。
【0015】
ランフラット用支持体3は、環状シェル4と弾性リング5とを主要部として構成されている。このランフラット用支持体3は、通常走行時には空気入りタイヤ2の内壁面から離間しているが、パンク時には潰れた空気入りタイヤ2を内側から支持するものである。
【0016】
環状シェル4は、パンクしたタイヤを支えるための連続した支持面4aを外周側(径方向外側)に張り出すと共に、該支持面4aの両側に沿って脚部4b,4bを備えた開脚構造になっている。環状シェル4の支持面4aは、その周方向に直交する断面での形状が外周側に凸曲面になるように形成されている。この凸曲面は少なくとも1つ存在すれば良いが、タイヤ軸方向に2つ以上が並ぶようにすることが好ましい。このように環状シェル4の支持面4aを2つ以上の凸曲面が並ぶように形成することにより、タイヤ内壁面に対する支持面4aの接触箇所を2つ以上に分散させ、タイヤ内壁面に与える局部摩耗を低減するため、ランフラット走行の持続距離を延長することができる。
【0017】
上記環状シェル4は、パンクした空気入りタイヤ2を介して車両重量を支える必要があるため剛体材料から構成されている。その構成材料には、金属や樹脂などが使用される。このうち金属としては、スチール、アルミニウムなどを例示することができる。また、樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれでも良い。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ABSなどを挙げることができ、また熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などを挙げることができる。樹脂は単独で使用しても良いが、補強繊維を配合して繊維強化樹脂として使用しても良い。
【0018】
弾性リング5は、環状シェル4の脚部4b,4bにそれぞれ取り付けられ、左右のリムシート上に当接しつつ環状シェル4を支持するようになっている。この弾性リング5は、パンクした空気入りタイヤ2から環状シェル4が受ける衝撃や振動を緩和するほか、リムシートに対する滑りを防止して環状シェル4を安定的に支持するものである。
【0019】
弾性リング5の構成材料としては、ゴム又は樹脂を使用することができ、特にゴムが好ましい。ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、水素化NBR、水素化SBR、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。勿論、これらゴムには、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、老化防止剤などの添加剤を適宜配合することができる。そして、ゴム組成物の配合に基づいて所望の弾性率を得ることができる。
【0020】
このように構成されるタイヤホイール組立体では、走行中に空気入りタイヤ2がパンクすると、潰れた空気入りタイヤ2がランフラット用支持体3の環状シェル4の支持面4aによって支持された状態になるので、ランフラット走行が可能になる。
【0021】
図2は上記ランフラット用支持体の要部を示すものである。図2に示すように、弾性リング5は繊維補強層6によって覆われている。繊維補強層6は、簾織りのコード層でも、平織りのコード層であっても良い。そのコードとしては、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ナイロン、アラミド等の有機繊維のほか、金属コード等を任意に選択することができる。弾性リング5を構成するゴムや樹脂は繊維補強層6に含浸しており、両者は一体的に成形されている。
【0022】
このように弾性リング5を繊維補強層6で被覆することにより、ランフラット走行時に弾性リング5に対して荷重が負荷されたとき、繊維補強層6が弾性リング5の体積変化を抑制するので、弾性リング5の剛性が増大する。これにより、繊維補強層6を付加しない場合に比べて、ランフラット走行時の耐久性を向上することができる。
【0023】
ここで、繊維補強層6の被覆面積は弾性リング5の表面積の80%以上であると良い。この繊維補強層6の被覆面積が小さ過ぎると、耐久性の改善効果が不十分になる。
【0024】
図3は上記ランフラット用支持体の変形例を示すものである。図3に示すように、弾性リング5のシェル軸方向外側の側面にはシェル周方向に延びる窪み5aが形成されており、その窪み5aを備えた弾性リング5が繊維補強層6によって被覆されている。
【0025】
このように弾性リング5のシェル軸方向外側の側面に窪み5aを設けた場合、リム組み作業時に弾性リング5が図中の矢印の方向に変形しようとする際に、繊維補強層6が窪み5aの部分で伸長可能であるため、その変形抵抗の増大を回避することができる。従って、弾性リング5に繊維補強層6を付加した場合のリム組み作業性を改善することができる。
【0026】
図4は上記ランフラット用支持体の他の変形例を示すものである。図4に示すように、弾性リング5のシェル軸方向外側の側面には繊維補強層6をシェル径方向に不連続にする開口部6aが設けられている。
【0027】
このように弾性リング5のシェル軸方向外側の側面において繊維補強層6をシェル径方向に不連続にした場合、リム組み作業時に弾性リング5が図中の矢印の方向に変形しようとする際に、弾性リング5が開口部6aの部分で繊維補強層6による拘束を受けることなく伸長可能であるため、その変形抵抗の増大を回避することができる。従って、弾性リング5に繊維補強層6を付加した場合のリム組み作業性を改善することができる。
【0028】
図5は上記ランフラット用支持体の更に他の変形例を示すものである。図5に示すように、弾性リング5のシェル軸方向外側の側面には窪み5aが形成され、更に弾性リング5のシェル軸方向外側の側面には繊維補強層6をシェル径方向に不連続にする開口部6aが設けられている。この場合も、上記実施形態と同様に、弾性リング5に繊維補強層6を付加した場合のリム組み作業性を改善することができる。
【0029】
【実施例】
タイヤサイズが205/55R16 89Vの空気入りタイヤと、リムサイズが16×6 1/2JJのホイールとのタイヤホイール組立体において、厚さ1.0mmのスチール板から環状シェルを加工し、その環状シェルの脚部に硬質ゴムからなる弾性リングを取り付け、かつ弾性リングを簾織りナイロンコードからなる繊維補強層で被覆したランフラット用支持体を製作し、そのランフラット用支持体を空気入りタイヤの空洞部に挿入してタイヤホイール組立体(実施例)とした。
【0030】
また、比較のため、弾性リングに繊維補強層を付加していないランフラット用支持体を製作し、そのランフラット用支持体を用いたこと以外は、実施例と同一構造のタイヤホイール組立体(従来例)を得た。
【0031】
上記2種類のタイヤホイール組立体について、下記の測定方法により、ランフラット走行時の耐久性を評価し、その結果を表1に示した。
【0032】
〔ランフラット走行時の耐久性〕
試験すべきタイヤホイール組立体を排気量2.5リットルのFR車の前右輪に装着し、そのタイヤ内圧を0kPa(前右輪以外は200kPa)とし、時速90km/hで周回路を左廻りに走行し、走行不能になるまでの走行距離を測定した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどランフラット走行時の耐久性が優れていることを意味する。
【0033】
【表1】
【0034】
この表1に示すように、実施例のタイヤホイール組立体はランフラット走行時の耐久性を従来例に比べて向上していた。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体において、弾性リングを繊維補強層で被覆したから、重量増加を招くことなく、ランフラット走行時の耐久性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなるタイヤホイール組立体の要部を示す子午線断面図である。
【図2】本発明のランフラット用支持体の弾性リングを示す断面図である。
【図3】本発明のランフラット用支持体の弾性リングの変形例を示す断面図である。
【図4】本発明のランフラット用支持体の弾性リングの他の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明のランフラット用支持体の弾性リングの更に他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
1(ホイールの)リム
2 空気入りタイヤ
3 ランフラット用支持体
4 環状シェル
4a 支持面
4b 脚部
5 弾性リング
5a 窪み
6 繊維補強層
6a 開口部
Claims (8)
- 空気入りタイヤをホイールのリムに嵌合すると共に、前記空気入りタイヤの空洞部に、支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなるランフラット用支持体を挿入したタイヤホイール組立体において、前記弾性リングを繊維補強層で被覆したタイヤホイール組立体。
- 前記繊維補強層の被覆面積が前記弾性リングの表面積の80%以上である請求項1に記載のタイヤホイール組立体。
- 前記弾性リングのシェル軸方向外側の側面に窪みを設けた請求項1又は請求項2に記載のタイヤホイール組立体。
- 前記弾性リングのシェル軸方向外側の側面において前記繊維補強層をシェル径方向に不連続とした請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤホイール組立体。
- 支持面を外周側に張り出しつつ該支持面の両側に沿って脚部を持つ環状シェルと、該環状シェルの脚部をリム上に支持する弾性リングとからなり、前記弾性リングを繊維補強層で被覆したランフラット用支持体。
- 前記繊維補強層の被覆面積が前記弾性リングの表面積の80%以上である請求項5に記載のランフラット用支持体。
- 前記弾性リングのシェル軸方向外側の側面に窪みを設けた請求項5又は請求項6に記載のランフラット用支持体。
- 前記弾性リングのシェル軸方向外側の側面において前記繊維補強層をシェル径方向に不連続とした請求項5〜7のいずれかに記載のランフラット用支持体。
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