JP2004167586A - 表面性状の優れた鋼板の製造方法及び鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】デスケーリング条件を大幅に緩和することができ、場合によっては加熱条件も緩和し得る鋼板の製造方法を提供すること、及び、最終的には表面欠陥の無い優れた表面性状を有する鋼板を得ること。
【解決手段】加熱・圧延によりSiを0.6質量%以上含有する鋼板を製造するに際し、加熱―圧延工程を通して鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えるとともに、熱間仕上げ圧延に先立ち、130m/s以上に加速した高速液滴を鋼板表面単位面積当り2.0cm3/cm2以上の液密度で衝突させてスケールを除去すること。
【選択図】 図1
【解決手段】加熱・圧延によりSiを0.6質量%以上含有する鋼板を製造するに際し、加熱―圧延工程を通して鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えるとともに、熱間仕上げ圧延に先立ち、130m/s以上に加速した高速液滴を鋼板表面単位面積当り2.0cm3/cm2以上の液密度で衝突させてスケールを除去すること。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面性状の優れた鋼板の製造方法及び鋼板、特に、高Si鋼を素材にしたスケール性欠陥等の表面欠陥の発生を極力抑制し得る外観の優れた鋼板の製造方法とそれによって製造された鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋼板の製造においては、熱間圧延に先立って鋼材(鋼片)を加熱炉に装入して1100〜1400℃の高温に加熱する。加熱炉内は酸化性雰囲気であるため、加熱中に鋼材表面にはスケールと呼ばれる高温酸化物が生成付着する。このスケールが鋼材表面に付着したまま圧延工程に送ると、圧延材表面に噛み込み、スケール疵として残存するため、加熱炉抽出後10〜15MPa程度の高圧水を鋼材表面に噴射してこのスケール層を除去している。
しかし、スケールの剥離のしやすさは鋼成分によって異なり、特に本発明で対象とするような高Si含有鋼では、圧延前加熱時にFe2SiO4(ファイアライト)を多く含むスケールが生成し、これがスケール層に接する地鉄中に複雑に入り込んだ形態をつくりだして簡単には剥離することできないことから、上記のような高圧水噴射手段では十分にスケールを除去することができず、表面欠陥の発生を防止できなかった。
【0003】
このような問題を解決するため従来においても、Si含有鋼のスラブを表面温度1000〜1173℃に加熱して粗圧延した後、1050×(板厚)−0.1〜1173℃に加熱してから、吐出圧100kg/cm2(10MPa)以上の高圧水によるデスケーリングを行い、しかる後、仕上げ熱間圧延を行うことにより、表面欠陥のない優れた品質の熱延鋼板を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、特許文献2においては、Si含有量が0.5質量%以上の高Si鋼の熱間圧延に際し、鋼片をまず加熱炉で表面温度が1173℃未満になるように加熱してから、鋼片表面への衝突流速垂線成分、衝突エネルギー及び衝突時の噴流液相化率をそれぞれ所定範囲に規定して、デスケーリングを行うことにより、Siスケールを除去して表面疵のない良好な品質の鋼板を得る技術も提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−249914号公報
【特許文献2】
特開2000−254724号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1にて開示した技術においては、Siを含有する鋼板といっても、実質的にSi含有量はせいぜい0.23質量%のものを対象としているに過ぎず、これでは0.6質量%以上のSiを含有する鋼板では対策が不十分であり、Siスケールを満足する程度に除去することはできない問題があった。
一方、特許文献2に示す熱間圧延方法では、確かにSiスケール除去には有効であることが認められたが、そこで規定するようなデスケーリング条件をつくりだすための費用負荷が大きい(例えば、高速液滴速度を得るための設備コストがかさむ)ことから、必ずしも実用性の面で満足できるものではないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、デスケーリング条件を大幅に緩和することができ、場合によっては加熱条件も緩和し得る鋼板の製造方法を提供することと、しかも、最終的には表面欠陥の無い優れた表面性状を有する鋼板を得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨は次の通りである。
(1) 加熱・圧延により、Siを0.6質量%以上含有する鋼板を製造するに際し、加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が、1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えるとともに、熱間仕上げ圧延に先立ち、130m/s以上に加速した高速液滴を鋼板表面単位面積当り2.0cm3/cm2以上の液密度で衝突させてスケールを除去することを特徴とする表面性状の優れた鋼板の製造方法。
(2) 加熱・圧延により、Siを0.6質量%以上含有する鋼板を製造するに際し、加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が、1080℃以上となる時間を1分未満に抑えるとともに、熱間仕上げ圧延に先立ち、200m/s以上に加速した高速液滴を鋼板表面単位面積当り2.0cm3/cm2以上の液密度で衝突させてスケールを除去することを特徴とする表面性状の優れた鋼板の製造方法。
(3) 酸洗後の表面平均粗度(Ra)が0.8μm以下でRmaxが10μm以下となる前記(1)又は(2)記載の製造方法によって製造された表面性状の優れた鋼板。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の製造方法を実施するための鋼板加熱・圧延ラインの一例を示すもので、1は鋼材(スラブ)を所要温度(1000〜1300℃)に加熱するための加熱炉、2は加熱後の鋼材を粗圧延するための粗圧延スタンド、3は粗圧延された鋼材(粗バー)を目標板厚まで熱間圧延する仕上げ圧延スタンド、4は仕上げ圧延後の鋼板を搬送しながら冷却(水冷)するランアウトテーブル、5は熱延鋼板を巻き取るためのコイラーである。なお、粗圧延スタンド2の入側には鋼材が高温に加熱された際に、その表面に生成したスケール層を除去するための高圧水噴射方式(ノズルから水を鋼板表面へ吐出・衝突させてスケールを除去する)のデスケーリング装置6が設置され、また、仕上げ圧延スタンド3の入側にも、高圧水噴射方式のデスケーリング装置7が設置されるが、本発明では後述するように後者側のデスケーリング装置7の条件設定が重要となる。
【0009】
まず、本発明が対象とする鋼板は、鋼中にSiを0.6質量%以上含有するものであることが前提となる。Siが0.6質量%未満であると、本発明において有害とされるFe2SiO4を主体とするSiスケール生成量がそれほど多くなく、従来において採用されているデスケ−リング条件であってもスケール除去が容易であることから、Si含有量を0.6質量%以上とした。
【0010】
次に、本発明の鋼板は、その鋼板表面のスケール層と地鉄との界面近傍に、Fe2SiO4を多く含む、帯状の酸化物層が仕上げ圧延前に形成していないことを必須の条件としている。この点は本発明者らが数多くの研究を重ねた結果知見した下記の事実に基づくものである。
すなわち、図1のような製造ラインにて高Si含有熱延鋼板を製造する際に、加熱工程から圧延工程にわたる鋼材の表面温度と鋼材表面に付着するスケールの剥離性との間には密接な関連があることが判明した。つまり、通常の加熱・圧延工程においては、鋼材表面は1100〜1300℃程度に維持されるが、この表面温度であると、その表面に付いたスケールの密着性が高く、たとえ仕上げ圧延前に高位のデスケーリング条件で高圧水を噴射しても、その剥離は容易でない。しかし、加熱・圧延工程を通して表面温度が1080℃未満になると、表面のスケール層の密着性は弱く、仕上げ圧延前にてその剥離は容易である。
【0011】
図2は、例えば、通常の鋼材表面温度である1150℃で粗圧延工程から抽出された鋼材の表面部をSEMで拡大して見た組織写真のスケッチ図(模式図)である。図2において、8が地鉄、9がスケール層、10が帯状(すじ状)のSi濃化部分であり、このSi濃化部分10はFe2SiO4(ファイアライト)を多く含む酸化物層から形成されている。この帯状の酸化物層は、これと結び付くスケール層の地鉄への密着性を高める効果を有している。
【0012】
これに対し図3は、鋼材表面温度1080℃未満の温度で粗圧延工程から抽出された鋼材の表面部をSEMで拡大して見た組織写真のスケッチ図である。図3においては図2で見られた帯状の酸化物層はほとんど見当たらない。帯状の酸化物層が界面に存在しない表面温度で抽出された鋼材表面のスケール層は、地鉄への密着性が弱く、剥離し易い状態となっており、通常のデスケ−リング条件であっても簡単に除去し得る。しかし、1080℃以上の温度になると、徐々にFe2SiO4が地鉄−スケール界面に拡散し始め、帯状酸化物生成の起点となる可能性が生じるおそれがあることから、加熱から仕上げ圧延前の鋼材表面温度は1080℃未満に維持することが必要である。
【0013】
以上の知見により、本発明の熱延鋼板においては、加熱・圧延により製造したSiを0.6質量%以上含有する鋼板であって、鋼板表面のスケール層と地鉄との界面近傍に、Fe2SiO4をSi/Fe>1/5となる帯状の酸化物層が仕上げ圧延前に形成していないこと、換言すれば、界面にFe2SiO4を大量に含む帯状の酸化物層が生成することを可及的に抑える(生成を極小にする)こと、できればそれを零にすることが、スケール剥離にとって最も望ましいものといえる。
【0014】
また、本発明に係る鋼板は、表面平均粗度(Ra)を0.8μm以下で凹凸の最大高さ(Rmax)を10μm以下としているが、これは上述した加熱−圧延−冷却工程で特定した条件の下で得た熱延鋼帯を、通常の酸洗ラインに供給して表面を清浄化した後の鋼板の表面粗度であり、緻密で均一であってむらの無い優れた外観をもつ鋼板が得られるものである。本発明の製造工程を経ることによって、仕上げ圧延前に鋼材表面に生成したスケール層はデスケーリング作業によって地鉄表面からきれいに剥離され、その後の圧延過程において表面性状に有害な疵を残さず、良好な状態で酸洗ラインに供給し得る。
この範囲の表面粗度鋼板は、鋼板表面に塗装(10数μmの厚み)した場合、目視観察にて全く斑が見られなかった。従来研磨しなければ得られなかった表面品質が確保できた。
【0015】
次に、本発明の鋼板の製造方法において、加熱−圧延工程を通して、鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えるとしたのは、鋼材表面温度が1080℃以上となると、スケール層と地鉄の界面近傍に介在するFe2SiO4が溶融しはじめ、1080℃以上となる時間が5秒以上になると、地鉄とスケールとの界面近傍出には、Fe2SiO4を大量に含む酸化物層の形態が帯状となって、これがスケール層の地鉄に対する密着性を増大させるからである。1080℃未満であれば、Fe2SiO4は溶融状態に移行することはなく、その形態を変化させず、また、たとえ1080℃以上となっても、その時間が合計5秒未満であれば、帯状の酸化物層を形成することはない。
【0016】
このように仕上げ圧延前に、加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えることにより、帯状の酸化物層を形成させないようにしながら、この鋼材をデスケ−リングするが、その手段として高圧水噴射手段を採用する。スケール層が剥離し易いことから、高圧水の噴射条件は通常のそれより大幅に緩和したもので十分である。即ち、秒速130m/s以上に加速した平均換算径0.1mmφ以上の高速液滴を鋼板表面に2.0cm3/cm2以上の流量密度で衝突させてスケールを除去すればよい。
【0017】
加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えることは、デスケ−リング条件は上述の如く緩和することになるが、加熱条件の面でみるとそれだけ厳しい条件を課することになる。本発明ではこの加熱条件をある程度緩和するために、デスケーリング条件を上記のそれよりも、より高く設定して実施することも可能である。すなわち、加熱条件として鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を1分未満とすることで緩和するとともに、デスケーリング条件として秒速200m/s以上に加速した平均換算径0.1mmφ以上の高速液滴を鋼板表面に2.0cm3/cm2以上の流量密度で衝突させてスケールを除去することした。
【0018】
なお、本発明においては加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度をできるだけ1080℃未満に保持することを主眼としているが、この温度は通常の鋼板の熱延工程においては比較的低温側に位置することとなるため、そのまま仕上げ圧延工程に鋼板を導入した場合、圧延及び材質確保が困難となることが考えられる。このため仕上げ圧延前、特に、デスケーリング前に、鋼材を再加熱することが好ましい。加熱手段としては急速加熱が可能な誘導加熱方式が最適である。図1において11で示す加熱装置がこれに相当する。この再加熱についてもできれば1173℃以下に抑えることが望ましい(ファイアライト生成抑制のため)。
【0019】
【実施例】
表1に示す成分の高Si含有鋼の熱間圧延に本発明を適用した場合を実施例として示す。
表2に実施結果を示すが、本発明の条件を満たすものは、いずれもデスケーリング効果は良好であり、得られた鋼板の表面粗度もRaが0.8μm以下、Rmaxが10μm以下であった。これに対し本発明の条件を外れた比較例は、いずれもデスケーリング時に僅かに斑が残るか或いは明瞭に斑が認められ、かつ、鋼板表面粗度も0.8μm以上で、Rmaxも10μmを超えていた。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によれば、高Si含有鋼を素材とするが、緻密で均一な表面をもった十分良好な品質の表面性状の優れた熱延鋼板を得ることができるとともに、これを製造する方法によっても、デスケーリング条件を大幅に緩和することができ、場合によっては加熱条件をも緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を実施するための熱延鋼板製造ラインの一例を示す概略図。
【図2】通常の加熱−圧延工程で製造される高Si含有鋼であって、表面温度1150℃で粗圧延工程から抽出された鋼材の表層部断面組織写真のスケッチ図。
【図3】加熱−圧延工程で製造される高Si含有鋼であって、表面温度1080℃未満で粗圧延工程から抽出された鋼材の表層部断面組織写真のスケッチ図。
【符号の説明】
1 加熱炉
2 粗圧延スタンド
3 仕上げ圧延スタンド
4 ランアウトテーブル
5 コイラー
6 デスケ−リング装置(粗圧延スタンド入側)
7 デスケ−リング装置(仕上げ圧延スタンド入側)
8 地鉄
9 スケール層
10 帯状の酸化物層
11 加熱装置(誘導加熱装置)
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面性状の優れた鋼板の製造方法及び鋼板、特に、高Si鋼を素材にしたスケール性欠陥等の表面欠陥の発生を極力抑制し得る外観の優れた鋼板の製造方法とそれによって製造された鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、鋼板の製造においては、熱間圧延に先立って鋼材(鋼片)を加熱炉に装入して1100〜1400℃の高温に加熱する。加熱炉内は酸化性雰囲気であるため、加熱中に鋼材表面にはスケールと呼ばれる高温酸化物が生成付着する。このスケールが鋼材表面に付着したまま圧延工程に送ると、圧延材表面に噛み込み、スケール疵として残存するため、加熱炉抽出後10〜15MPa程度の高圧水を鋼材表面に噴射してこのスケール層を除去している。
しかし、スケールの剥離のしやすさは鋼成分によって異なり、特に本発明で対象とするような高Si含有鋼では、圧延前加熱時にFe2SiO4(ファイアライト)を多く含むスケールが生成し、これがスケール層に接する地鉄中に複雑に入り込んだ形態をつくりだして簡単には剥離することできないことから、上記のような高圧水噴射手段では十分にスケールを除去することができず、表面欠陥の発生を防止できなかった。
【0003】
このような問題を解決するため従来においても、Si含有鋼のスラブを表面温度1000〜1173℃に加熱して粗圧延した後、1050×(板厚)−0.1〜1173℃に加熱してから、吐出圧100kg/cm2(10MPa)以上の高圧水によるデスケーリングを行い、しかる後、仕上げ熱間圧延を行うことにより、表面欠陥のない優れた品質の熱延鋼板を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、特許文献2においては、Si含有量が0.5質量%以上の高Si鋼の熱間圧延に際し、鋼片をまず加熱炉で表面温度が1173℃未満になるように加熱してから、鋼片表面への衝突流速垂線成分、衝突エネルギー及び衝突時の噴流液相化率をそれぞれ所定範囲に規定して、デスケーリングを行うことにより、Siスケールを除去して表面疵のない良好な品質の鋼板を得る技術も提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−249914号公報
【特許文献2】
特開2000−254724号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1にて開示した技術においては、Siを含有する鋼板といっても、実質的にSi含有量はせいぜい0.23質量%のものを対象としているに過ぎず、これでは0.6質量%以上のSiを含有する鋼板では対策が不十分であり、Siスケールを満足する程度に除去することはできない問題があった。
一方、特許文献2に示す熱間圧延方法では、確かにSiスケール除去には有効であることが認められたが、そこで規定するようなデスケーリング条件をつくりだすための費用負荷が大きい(例えば、高速液滴速度を得るための設備コストがかさむ)ことから、必ずしも実用性の面で満足できるものではないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、デスケーリング条件を大幅に緩和することができ、場合によっては加熱条件も緩和し得る鋼板の製造方法を提供することと、しかも、最終的には表面欠陥の無い優れた表面性状を有する鋼板を得ることを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の要旨は次の通りである。
(1) 加熱・圧延により、Siを0.6質量%以上含有する鋼板を製造するに際し、加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が、1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えるとともに、熱間仕上げ圧延に先立ち、130m/s以上に加速した高速液滴を鋼板表面単位面積当り2.0cm3/cm2以上の液密度で衝突させてスケールを除去することを特徴とする表面性状の優れた鋼板の製造方法。
(2) 加熱・圧延により、Siを0.6質量%以上含有する鋼板を製造するに際し、加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が、1080℃以上となる時間を1分未満に抑えるとともに、熱間仕上げ圧延に先立ち、200m/s以上に加速した高速液滴を鋼板表面単位面積当り2.0cm3/cm2以上の液密度で衝突させてスケールを除去することを特徴とする表面性状の優れた鋼板の製造方法。
(3) 酸洗後の表面平均粗度(Ra)が0.8μm以下でRmaxが10μm以下となる前記(1)又は(2)記載の製造方法によって製造された表面性状の優れた鋼板。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の製造方法を実施するための鋼板加熱・圧延ラインの一例を示すもので、1は鋼材(スラブ)を所要温度(1000〜1300℃)に加熱するための加熱炉、2は加熱後の鋼材を粗圧延するための粗圧延スタンド、3は粗圧延された鋼材(粗バー)を目標板厚まで熱間圧延する仕上げ圧延スタンド、4は仕上げ圧延後の鋼板を搬送しながら冷却(水冷)するランアウトテーブル、5は熱延鋼板を巻き取るためのコイラーである。なお、粗圧延スタンド2の入側には鋼材が高温に加熱された際に、その表面に生成したスケール層を除去するための高圧水噴射方式(ノズルから水を鋼板表面へ吐出・衝突させてスケールを除去する)のデスケーリング装置6が設置され、また、仕上げ圧延スタンド3の入側にも、高圧水噴射方式のデスケーリング装置7が設置されるが、本発明では後述するように後者側のデスケーリング装置7の条件設定が重要となる。
【0009】
まず、本発明が対象とする鋼板は、鋼中にSiを0.6質量%以上含有するものであることが前提となる。Siが0.6質量%未満であると、本発明において有害とされるFe2SiO4を主体とするSiスケール生成量がそれほど多くなく、従来において採用されているデスケ−リング条件であってもスケール除去が容易であることから、Si含有量を0.6質量%以上とした。
【0010】
次に、本発明の鋼板は、その鋼板表面のスケール層と地鉄との界面近傍に、Fe2SiO4を多く含む、帯状の酸化物層が仕上げ圧延前に形成していないことを必須の条件としている。この点は本発明者らが数多くの研究を重ねた結果知見した下記の事実に基づくものである。
すなわち、図1のような製造ラインにて高Si含有熱延鋼板を製造する際に、加熱工程から圧延工程にわたる鋼材の表面温度と鋼材表面に付着するスケールの剥離性との間には密接な関連があることが判明した。つまり、通常の加熱・圧延工程においては、鋼材表面は1100〜1300℃程度に維持されるが、この表面温度であると、その表面に付いたスケールの密着性が高く、たとえ仕上げ圧延前に高位のデスケーリング条件で高圧水を噴射しても、その剥離は容易でない。しかし、加熱・圧延工程を通して表面温度が1080℃未満になると、表面のスケール層の密着性は弱く、仕上げ圧延前にてその剥離は容易である。
【0011】
図2は、例えば、通常の鋼材表面温度である1150℃で粗圧延工程から抽出された鋼材の表面部をSEMで拡大して見た組織写真のスケッチ図(模式図)である。図2において、8が地鉄、9がスケール層、10が帯状(すじ状)のSi濃化部分であり、このSi濃化部分10はFe2SiO4(ファイアライト)を多く含む酸化物層から形成されている。この帯状の酸化物層は、これと結び付くスケール層の地鉄への密着性を高める効果を有している。
【0012】
これに対し図3は、鋼材表面温度1080℃未満の温度で粗圧延工程から抽出された鋼材の表面部をSEMで拡大して見た組織写真のスケッチ図である。図3においては図2で見られた帯状の酸化物層はほとんど見当たらない。帯状の酸化物層が界面に存在しない表面温度で抽出された鋼材表面のスケール層は、地鉄への密着性が弱く、剥離し易い状態となっており、通常のデスケ−リング条件であっても簡単に除去し得る。しかし、1080℃以上の温度になると、徐々にFe2SiO4が地鉄−スケール界面に拡散し始め、帯状酸化物生成の起点となる可能性が生じるおそれがあることから、加熱から仕上げ圧延前の鋼材表面温度は1080℃未満に維持することが必要である。
【0013】
以上の知見により、本発明の熱延鋼板においては、加熱・圧延により製造したSiを0.6質量%以上含有する鋼板であって、鋼板表面のスケール層と地鉄との界面近傍に、Fe2SiO4をSi/Fe>1/5となる帯状の酸化物層が仕上げ圧延前に形成していないこと、換言すれば、界面にFe2SiO4を大量に含む帯状の酸化物層が生成することを可及的に抑える(生成を極小にする)こと、できればそれを零にすることが、スケール剥離にとって最も望ましいものといえる。
【0014】
また、本発明に係る鋼板は、表面平均粗度(Ra)を0.8μm以下で凹凸の最大高さ(Rmax)を10μm以下としているが、これは上述した加熱−圧延−冷却工程で特定した条件の下で得た熱延鋼帯を、通常の酸洗ラインに供給して表面を清浄化した後の鋼板の表面粗度であり、緻密で均一であってむらの無い優れた外観をもつ鋼板が得られるものである。本発明の製造工程を経ることによって、仕上げ圧延前に鋼材表面に生成したスケール層はデスケーリング作業によって地鉄表面からきれいに剥離され、その後の圧延過程において表面性状に有害な疵を残さず、良好な状態で酸洗ラインに供給し得る。
この範囲の表面粗度鋼板は、鋼板表面に塗装(10数μmの厚み)した場合、目視観察にて全く斑が見られなかった。従来研磨しなければ得られなかった表面品質が確保できた。
【0015】
次に、本発明の鋼板の製造方法において、加熱−圧延工程を通して、鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えるとしたのは、鋼材表面温度が1080℃以上となると、スケール層と地鉄の界面近傍に介在するFe2SiO4が溶融しはじめ、1080℃以上となる時間が5秒以上になると、地鉄とスケールとの界面近傍出には、Fe2SiO4を大量に含む酸化物層の形態が帯状となって、これがスケール層の地鉄に対する密着性を増大させるからである。1080℃未満であれば、Fe2SiO4は溶融状態に移行することはなく、その形態を変化させず、また、たとえ1080℃以上となっても、その時間が合計5秒未満であれば、帯状の酸化物層を形成することはない。
【0016】
このように仕上げ圧延前に、加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えることにより、帯状の酸化物層を形成させないようにしながら、この鋼材をデスケ−リングするが、その手段として高圧水噴射手段を採用する。スケール層が剥離し易いことから、高圧水の噴射条件は通常のそれより大幅に緩和したもので十分である。即ち、秒速130m/s以上に加速した平均換算径0.1mmφ以上の高速液滴を鋼板表面に2.0cm3/cm2以上の流量密度で衝突させてスケールを除去すればよい。
【0017】
加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えることは、デスケ−リング条件は上述の如く緩和することになるが、加熱条件の面でみるとそれだけ厳しい条件を課することになる。本発明ではこの加熱条件をある程度緩和するために、デスケーリング条件を上記のそれよりも、より高く設定して実施することも可能である。すなわち、加熱条件として鋼材表面温度が1080℃以上となる時間を1分未満とすることで緩和するとともに、デスケーリング条件として秒速200m/s以上に加速した平均換算径0.1mmφ以上の高速液滴を鋼板表面に2.0cm3/cm2以上の流量密度で衝突させてスケールを除去することした。
【0018】
なお、本発明においては加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度をできるだけ1080℃未満に保持することを主眼としているが、この温度は通常の鋼板の熱延工程においては比較的低温側に位置することとなるため、そのまま仕上げ圧延工程に鋼板を導入した場合、圧延及び材質確保が困難となることが考えられる。このため仕上げ圧延前、特に、デスケーリング前に、鋼材を再加熱することが好ましい。加熱手段としては急速加熱が可能な誘導加熱方式が最適である。図1において11で示す加熱装置がこれに相当する。この再加熱についてもできれば1173℃以下に抑えることが望ましい(ファイアライト生成抑制のため)。
【0019】
【実施例】
表1に示す成分の高Si含有鋼の熱間圧延に本発明を適用した場合を実施例として示す。
表2に実施結果を示すが、本発明の条件を満たすものは、いずれもデスケーリング効果は良好であり、得られた鋼板の表面粗度もRaが0.8μm以下、Rmaxが10μm以下であった。これに対し本発明の条件を外れた比較例は、いずれもデスケーリング時に僅かに斑が残るか或いは明瞭に斑が認められ、かつ、鋼板表面粗度も0.8μm以上で、Rmaxも10μmを超えていた。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明によれば、高Si含有鋼を素材とするが、緻密で均一な表面をもった十分良好な品質の表面性状の優れた熱延鋼板を得ることができるとともに、これを製造する方法によっても、デスケーリング条件を大幅に緩和することができ、場合によっては加熱条件をも緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を実施するための熱延鋼板製造ラインの一例を示す概略図。
【図2】通常の加熱−圧延工程で製造される高Si含有鋼であって、表面温度1150℃で粗圧延工程から抽出された鋼材の表層部断面組織写真のスケッチ図。
【図3】加熱−圧延工程で製造される高Si含有鋼であって、表面温度1080℃未満で粗圧延工程から抽出された鋼材の表層部断面組織写真のスケッチ図。
【符号の説明】
1 加熱炉
2 粗圧延スタンド
3 仕上げ圧延スタンド
4 ランアウトテーブル
5 コイラー
6 デスケ−リング装置(粗圧延スタンド入側)
7 デスケ−リング装置(仕上げ圧延スタンド入側)
8 地鉄
9 スケール層
10 帯状の酸化物層
11 加熱装置(誘導加熱装置)
Claims (3)
- 加熱・圧延により、Siを0.6質量%以上含有する鋼板を製造するに際し、加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が、1080℃以上となる時間を5秒未満に抑えるとともに、熱間仕上げ圧延に先立ち、130m/s以上に加速した高速液滴を鋼板表面単位面積当り2.0cm3/cm2以上の液密度で衝突させてスケールを除去することを特徴とする表面性状の優れた鋼板の製造方法。
- 加熱・圧延により、Siを0.6質量%以上含有する鋼板を製造するに際し、加熱−圧延工程を通して鋼材表面温度が、1080℃以上となる時間を1分未満に抑えるとともに、熱間仕上げ圧延に先立ち、200m/s以上に加速した高速液滴を鋼板表面単位面積当り2.0cm3/cm2以上の液密度で衝突させてスケールを除去することを特徴とする表面性状の優れた鋼板の製造方法。
- 酸洗後の表面平均粗度(Ra)が0.8μm以下でRmaxが10μm以下となる請求項1又は2記載の製造方法によって製造された表面性状の優れた鋼板。
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-
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- 2002-11-22 JP JP2002338851A patent/JP2004167586A/ja active Pending
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