JP2011051000A - 高強度熱延鋼帯の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高Si鋼の高強度熱延鋼帯を製造するに際して、仕上圧延前の高圧水デスケーリング装置を活用し、Si添加量が変化しても、500℃を下回る低温巻き取り材を温度偏差無く均一に冷却することができる高強度熱延鋼帯の製造方法を提供する。
【解決手段】Si:0.2〜2.0Mass%を含有するスラブを粗圧延機と仕上げ圧延機とを備えた熱延鋼帯製造設備で熱延圧延して、高強度熱延鋼帯を製造するに際して、前記仕上げ圧延機での圧延前に衝突圧力P(MPa)≧5.0×Si(Mass%)の高圧水デスケーリングを実施すると共に、前記仕上げ圧延機での圧延後にランアウトテーブルで500℃以下まで冷却して、巻き取ることを特徴とする高強度熱延鋼帯の製造方法。
【選択図】図9

Description

本発明は、高Si鋼の高強度熱延鋼帯の製造方法に関するものであり、特に、高Si鋼の高強度熱延鋼帯の製造ラインにおいて、圧延材をランアウトテーブルで500℃以下の低温に冷却してから巻き取るに際して、巻き取り温度を安定化させるために圧延材表面のスケールを除去する高圧水デスケーリング(高圧水ジェットによるデスケーリング)に関するものである。
図1に一般的な熱延鋼帯の製造ラインを示すが、圧延に先立ち鋼片(スラブ)を加熱炉1にて1100℃〜1300℃まで加熱し、その後、高圧水デスケーリング装置2(粗圧延デスケーリング装置)で一度表面に生成したスケール排除した後、粗圧延機3にて高圧水デスケーリングをしながら粗圧延を実施し、更に高圧水デスケーリング装置4(仕上圧延デスケーリング装置)にてスケール排除した後に仕上圧延機5にて仕上圧延を実施する。
このように、熱延鋼帯8の表面品質を確保するために、高圧水デスケーリング装置11が製造ラインの各位置に配置されており、製造中に可能な限りスケール排除を実施している。さらに、熱延鋼帯8の材質調整するために、仕上圧延後に設置されているランアウトテーブル(ランアウト冷却装置)6で冷却され、コイラー7で巻き取られる。巻き取り時の温度は、巻き取り温度計15により鋼帯8の幅中央部を全長に渡って計測することができる。
近年、引張り強度が400MPaを超える鋼帯、特に自動車の軽量化の観点から、引張り強度が600MPaを超える高張力鋼のニーズが高い。強度、延び、穴広げ等の機械特性を得るために、熱延/冷延製造条件や添加元素の調整を行っているが、合金コストが安価なSiを0.5%以上添加し、且つ熱延組織もフェライト+ベーナイトの二層組織若しくはフルベーナイト等で強度確保する方法がある。
ただし、従来、熱延鋼帯では、ベーナイト組織を得るために、500℃を下回る巻き取り温度が必要であるが、この温度域ではランアウト冷却中に冷却が膜沸騰から遷移沸騰に遷移する領域であり、遷移すると冷却速度が急激に増大することから巻き取り温度が安定しない問題がある。
さらに、この遷移温度はSi添加量により変化する。Siが素材(スラブ)に添加されると、加熱炉1内でスラブを加熱中に地鉄とスケール層の間にSiが濃化し、且つ濃化したSiはファイアライト(2FeO+SiO2)を形成する。ファイアライトは1172℃で溶融するために、地鉄とスケールの密着性を高め、スケールの剥離性が悪い。そのため、粗圧延/仕上圧延中にスケールが密着したまま圧延され、スケールの表面が粉砕され、見かけ上表面粗さが増大する。表面粗さが高いほど、ランアウト冷却中に鋼帯8と冷却水の接触が起こりやすいため、高い温度で遷移沸騰に遷移する。
従来から、500℃を下回る低温巻き取りの温度安定化をする技術としては、冷却装置の改善といったアプローチが多く、以下のような先行技術文献がある。
例えば、特許文献1には、冷却水が膜沸騰となる高温域では熱延鋼帯の上下両面に冷却水を注入し、遷移沸騰温度領域では、下面に冷却水を注入する方法が開示されている。この冷却方法は、遷移沸騰温度域を下面冷却することによって、鋼帯上面に形成される水膜とそれに伴う冷却能の不安定性を排除し、安定冷却を実現するものである。
また、特許文献2には、まず低温の冷却水で冷却しておき、遷移沸騰温度域より80℃以上の高温の冷却水で冷却する方法が開示されている。この冷却方法は、冷却水に温水を使用することによって遷移沸騰開始温度を低温側にずらすことにより、膜沸騰持続時間を長くして安定冷却を実現しようとするものである。
また、特許文献3には、熱間仕上圧延後の鋼帯を連続的に注水冷却する冷却ゾ−ンにおいて、前記冷却ゾ−ンを前半ゾ−ンと後半ゾ−ンに2区分し、前半ゾ−ンに高冷却能力の冷却設備(水量密度1.0〜5.0m3/m2・min)を配設すると共に、後半ゾ−ンに低冷却能力の冷却設備(水量密度0.05〜0.3m3/m2・min未満)を配設し、さらに、冷却ゾ−ンの全長に亙り中冷却能力の冷却設備(水量密度0.3〜1.0m3/m2・min未満)を配設した熱延鋼帯の冷却設備が開示されている。この冷却設備は、低温度域で冷却水量を少なくして遷移沸騰開始温度を低温側にずらすことにより、膜沸騰持続時間を長くして安定冷却を実現しようとするものである。
しかしながら、前述の特許文献1〜3に開示された従来技術では、表面性状について考慮していない。遷移温度は表面性状に左右されるため、Si添加量が高い鋼種では、各熱延ミルのデスケーリング能力の違いから、遷移温度にバラツキが発生する。従来知見では遷移温度が正確にわからなければ、それを改善する冷却装置の設備仕様が決定できず、すべての品種に対して適用できなかった。
そこで、本発明の主眼は、仕上圧延前のデスケーリングにより、スケールを完全に剥離させて、ランアウトテーブルにおける冷却(ランナウト冷却)中の表面性状を一定化して、ランアウト冷却における温度を安定化させようとするものである。
ちなみに、仕上圧延前のスケール剥離については、古くからSi添加量と高圧デスケーリング条件に相関があることが言われており、以下のような先行技術文献がある。
例えば、特許文献4には、Si添加量が0.15%以上において、スラブを1230℃〜1300℃に加熱し、仕上圧延までに2000kPa以上の衝突圧力でデスケーリングしてスケール傷を防止する技術が開示されている。
また、特許文献5には、Si添加量0.2〜2.0mass%、Ni添加量0.2〜2.0mass%を含有する熱延鋼帯を製造するに際して、Si添加量、Ni添加量、デスケールする温度までの累積圧下率、デスケール温度との関係式から求められた衝突圧力でデスケーリングする技術が開示されている。
また、特許文献6には、流量/噴射圧力/鋼帯速度から求められる衝突エネルギーが所定の値以上となるようにデスケーリング条件を決定することが開示されている。
しかしながら、特許文献4〜6では、表面欠陥防止の観点から、デスケーリング能力を決定しており、冷却中の遷移温度安定化の観点からは検討されていない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、高Si鋼の高強度熱延鋼帯を製造するに際して、仕上圧延前の高圧水デスケーリング装置を活用し、Si添加量が変化しても、500℃を下回る低温巻き取り材を温度偏差無く均一に冷却することができる高強度熱延鋼帯の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
[1]Si:0.2〜2.0Mass%を含有する素材を粗圧延機と仕上げ圧延機とを備えた熱延鋼帯製造設備で熱間圧延して、熱延鋼帯を製造するに際して、前記仕上げ圧延機での圧延前に以下に示す衝突圧力Pの高圧水ジェットによるデスケーリングを実施すると共に、前記仕上げ圧延機での圧延後にランアウトテーブルで500℃以下まで冷却して、巻き取ることを特徴とする高強度熱延鋼帯の製造方法。
P≧5.0×Si
ここで、P:衝突圧力(MPa)、Si:Si添加量(Mass%)
[2]ランアウトテーブルで冷却する際に、冷却水の水量密度は、300L/min・m2以上1200L/min・m2以下とすることを特徴とする前記[1]に記載の高強度熱延鋼帯の製造方法。
[3]前記素材の加熱温度を1200〜1300℃とするとともに、前記仕上げ圧延機での圧延前に行う高圧水ジェットによるデスケーリングの噴射圧力を10MPa以上とすることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の高強度熱延鋼帯の製造方法。
本発明においては、高Si鋼の高強度熱延鋼帯を製造するに際して、仕上げ圧延前の高圧水デスケーリング装置を活用し、Si添加量に応じて高圧水デスケーリング装置の噴射圧力を適切に設定するようにしているので、一般的なランアウト冷却装置によって、500℃を下回る低温巻き取り材を温度偏差無く均一に冷却することができる。その結果、高Si添加鋼の高強度熱延鋼帯を、材質のバラツキが少なく、安定して製造することが可能になる。
熱延鋼帯製造ラインを説明する図である。 高Si鋼の熱延工程におけるスケール部の状態についての模式図である。 低Si鋼の熱延工程におけるスケール部の状態についての模式図である。 鋼帯表面温度と熱流束の関係において、冷却水量、鋼帯表面性状の影響を説明した図である。 表面粗さの違いによる水冷中の伝熱形態の違いを説明した図である。 Si=1.5%鋼の表面スケール有無による冷却履歴である。 高圧水デスケーリングの一般的なノズル配置を説明した図である。 デスケーリングノズルの幾何学的な関係を説明した図である。 鋼帯表面を平滑にするためのSi量毎の必要な衝突圧力を示した図である。 本発明例1における巻き取り時の全長温度を示したものである。 比較例1における巻き取り時の全長温度を示したものである。
本発明の原理について、以下に説明する。
まず、Si添加量とランアウト冷却の関係について説明する。
図2は、高Si鋼の熱延鋼帯を製造したときの、スケール形態についての模式図を示す。加熱炉でスラブを加熱中にスラブ表面は酸化してスケールになるが、スラブに固溶していたSiはスケールから吐き出されて地鉄とスケールの界面に集まり、ファイアライト(2FeO+SiO2)を形成する。さらに、加熱温度がファイアライト融点(1172℃)を超えると、溶融したファイアライトがスラブの粒界に差込み粒界酸化を発生させる。このため、スラブとスケールの間にクサビ状にファイアライトが進入し、いわゆるアンカー効果によりスケールの剥離性が低下する。このため、一般的な熱延ミルの高圧水デスケーリングによりスケールが厚いままスラブに密着して、圧延される。厚いスケールを密着したまま圧延すると、スケールは粉砕されるため、表面粗さが増大する。
一方、低Si鋼では図3に示すように、加熱中の酸化でも、元々スラブ中にSiが少ないため、地鉄/スケール間にSiの濃化は生じないので、スケールの密着性は低く、その後のデスケーリングでスケールが剥離する。スラブ温度が高いためデスケーリング後に二次スケールが生成するものの、その量はわずかであり、圧延してもスケールの粉砕はなく、平坦な表面が形成させる。
そして、鋼帯表面温度と冷却能力(熱流束)の関係において、冷却水量、鋼帯表面性状が及ぼす影響についての模式図を図4に示す。前記特許文献1〜3では、冷却水量などをコントロールして遷移沸騰温度を変化させる手法であるが、表面性状を変えることにより遷移沸騰温度を変化させることも可能である。
このメカニズムについて図5を用いて説明する。
図5(a)は、表面粗度が粗い場合であるが、一般的なランアウト冷却では冷却水量が少なく、高温側で安定した膜沸騰が発生する。膜沸騰では、冷却水による液膜と鋼帯の間に蒸気層があり、この断熱効果により比較的熱流束が小さくなるが、鋼帯温度が低くなると蒸気膜が薄くなってくる。蒸気膜界面の揺らぎのため液膜は波状になるが、地鉄側に粗度があると、その突起と液膜が接触しやすくなる。局所的に接触すると一挙に表面温度が低くなり周囲の温度も低くなって、鋼帯全体が液膜と鋼帯が接触して遷移沸騰状態となり熱流束が一挙に増大する。
一方、図5(b)に示すように、鋼帯表面が平坦な場合、液膜と鋼帯の局所的な接触がしにくくなるため、表面粗度が粗い場合と比較して、低温域まで安定して膜沸騰を維持することができる。
このことを検証するために、オフラインにて、高Si鋼(Si=1.5%鋼)について、熱延鋼帯で生成したスケールが表面についたままのものと、表面のスケールを機械研削で除去したものとを、それぞれ、ランアウト冷却と同等の熱流束で冷却可能な実験装置で冷却し、温度履歴を調査した。実験用サンプルは、実機の熱延ミルにおいて、厚さ250mmのスラブを1200℃で加熱し、板厚3.2mmとしたものから採取した。なお、オフラインでの冷却水量(水量密度)はランアウト冷却の一般的な値である700L/min・m2で実施した。
その結果を図6に示すが、スケールが付着したままのものは、約500℃で遷移沸騰に移行して急速に冷却速度が高くなっているのに対して、スケールを機械研削で除去したものでは、350℃程度まで膜沸騰を維持することが判明した。
なお、スケールが付着したままのものは表面粗さRaが2.0μm有り、スケールを機械研削で除去したものは表面粗さRaが1.0μmとなっていたことから、表面粗度Raは1.0μmよりも小さければ、膜沸騰が低温域まで安定すると言える。
次に、鋼帯の表面を平滑化する方法であるが、本発明においては、仕上圧延前の高圧水デスケーリングによって実施する。
先に、高Si鋼はアンカー効果によりスケールの密着性が高まることを示したが、Siの添加量が多いほど、スケールと地鉄の界面に生成するファイアライト量が多くなり、スケールの密着性が高くなる。
そこで、高圧水デスケーリングによりファイアライトが削り取れて、表面が平滑になる条件を、実機で実験・調査した結果を述べる。
実機での実験は、図1に示した熱延ミル(熱延鋼帯製造ライン)において、仕上圧延機5前の高圧水デスケーリング装置(仕上圧延デスケーリング装置)4での水量・噴射圧力を変化させて、Si量の異なる鋼帯を通板させ、鋼帯表面のスケールの外観(表面状態)を調査したものである。なお、パラメーターは、高圧水デスケーリング装置4の水量と噴射圧力、デスケーリングノズルの高さなど複数あるため、単位面積当たりの押し付け力である衝突圧力として標準化して評価する。
ここで、高圧水デスケーリング装置4の概要を図7に示すが、デスケーリングノズルとして、冷却水が扇型に噴射されるいわゆるフラットスプレーノズル12を幅方向に複数配置したものを用いる。フラットスプレーノズル12での衝突圧力に利くパラメーターは図8に示すが、その幾何学的な関係から、衝突圧力P(MPa)は以下のように記述することができる。
衝突圧力P=ρw×(Q/A)×V
ここで、ρw:高圧水密度(kg/m3)、Q:高圧水流量(m3/s)、A:衝突面の面積(m2)=スプレー厚みt(m)×スプレー幅W(m)、V:高圧水衝突速度(m/s)
なお、高圧水衝突速度Vは以下のように定義する。
高圧水衝突速度V=(2×Po/ρw)0.5
ここで、Po:高圧水噴射圧力(Pa)
なお、スプレー厚みtは実験により求め、スプレー幅Wはスプレーの広がり角度θとスプレー高さHとから三角関数を使って求められる。
そして、この実験の結果を図9に示す。図9では、鋼帯のSi添加量と、高圧水デスケーリング装置4での衝突圧力Pとを変化させた時の、鋼帯表面のスケールの外観(表面状態)を評価している。その際、表面状態の判断基準として、前述したように、表面粗度Raが1.0μmよりも小さければ、膜沸騰が低温域まで安定するということから、表面粗度Raが1.0μm以下の場合は表面状態が良好(○)と判断し、表面粗度Raが1.0μm超えの場合は表面状態が不良(×)と判断した。
ちなみに、図9において、○と判断したものは、表面粗度Raが0.5〜1.0μmであり、×と判断したものは、表面粗度Raが1.5μmよりも大きな値となっていた。
この図9の結果から、Si添加量が多いほど、スケールを剥離して表面を平滑にするために必要な衝突圧力が高くなることが分かる。すなわち、スケールを剥離して表面を平滑にするために必要な衝突圧力Pc(MPa)は、Pc(MPa)=5.0×Si(mass%)であることが分かる。
したがって、製造する熱延鋼帯のSi添加量に応じて、仕上圧延機5入側のデスケーリング装置(仕上圧延デスケーリング装置)4での衝突圧力PをP≧Pcとなるように設定すればよい。そして、そのような衝突圧力Pが得られるように、仕上圧延デスケーリング装置4のポンプ仕様を決定すればよい。
以上で述べたように、高Si鋼の熱延鋼帯の製造時に、仕上圧延機入側で、Si添加量に応じた所定の高圧デスケーリングをすることにより、表面粗度が平滑な鋼帯が得られ、ランアウトテーブル(ランアウト冷却)において巻き取り温度350℃まで安定した膜沸騰での冷却が可能となる。その結果、高Si鋼の高強度熱延鋼帯を、材質のバラツキが少なく、安定して製造することが可能になる。
なお、本手法は一般的なランアウト冷却を対象としており、ランアウト冷却装置は上面がヘアピンラミナー/パイプラミナーなど、下面が円管ジェットやスプレーにより、冷却水量密度が300〜1200L/min・m2程度の冷却をするものに特に効果がある。よって、特許文献1〜3のように、遷移温度が不安定な中、冷却水量や水温など調整することなく、低温度まで安定した冷却が可能となる。
また、仕上圧延前のデスケーリング装置により、表面性状を決定することが可能となるため、従来知見のように加熱温度や粗圧延条件などは特に調整する必要が無く、一般的な条件でよい。そのため、一般的な熱延ミルの条件(加熱温度1200〜1300℃)でも特に問題はない。
また、デスケーリング装置の噴射圧力については、少なくとも一般的な高圧水ポンプの噴射圧力である10MPa以上が良い。衝突圧力は、デスケーリングノズルの流量と噴射速度に比例する。このうち、噴射圧力は噴射速度を決定する因子になるが、噴射速度が低い場合、衝突圧力を高くするためには、流量を増やす必要があるが、流量が多くなりすぎると仕上圧延前の熱延鋼帯の温度が低くなるため、なるべく流量を絞り、噴射圧力を高くして衝突圧力を確保するのが好ましい。その観点から、最低限の噴射速度を確保するために、噴射圧力は10MPa以上が好ましい。
また、仕上圧延前のデスケーリング装置によりスケールを剥離した後、仕上圧延中の大気酸化で若干スケールが生成する。先に述べたように、仕上圧延前にスケールが残存したまま圧延すると、スケールが厚い状態で圧下されるためスケールが粉砕するが、スケールが薄い状態で圧延すると、スケールは圧下率なりに延びてゆき、その表面は圧延ロールの表面肌の粗さを転写した粗度となる。そのため、なるべく低粗度の圧延ロールを使うことが好ましい。したがって、仕上圧延ロールの粗度はRaで0.8〜1.5μm程度、好ましくは1.0μm以下で管理すれば、圧延された鋼帯の表面粗度もほぼ同等の粗さを確保できる。
よって、上記の仕上圧延前のデスケーリングを実施するとともに、それに加えて、仕上圧延ロールの表面粗さを管理することで、さらに低温域まで安定した膜沸騰を形成することが可能となる。
また、品種により350℃よりも低い巻き取り温度が必要となると、先に述べたように、低温度域で膜沸騰から遷移沸騰への遷移現象が発生することから、巻き取り温度が不安定になる。温度偏差は、膜沸騰から遷移沸騰への遷移温度が鋼帯内で若干ばらつきがあることに起因して大きな温度偏差が発生するが、鋼帯の全長全幅に亘り遷移沸騰状態にすれば、鋼帯内で大きな温度偏差が発生することなく、巻き取り温度は不安定にはならない。先行文献1〜3を組み合わせて、実施することも可能であり、例えば、ランアウトテーブルでの熱履歴が350℃よりも低くなるランアウトテーブルの後段側冷却装置の冷却水量を多めにして、その後段側冷却装置で確実に遷移沸騰へ遷移させればよい。冷却水量は1500L/min・m2以上とすると、350℃よりも高めの400〜500℃くらいから遷移沸騰に遷移するため、この程度の流量を持つ冷却装置を設置するのが好適である。
また、逆に冷却水量を極端に少なくしたり、ミスト冷却化したりすることによって、遷移温度を350℃よりも低くすることも好適である。冷却水量を少なくする場合は、おおよそ200L/min・m2以下とし、さらにミスト化して気水比を10:1より空気が多くなるように設定すると一層好適である。
また、加熱条件や圧延条件を最適化することで、更に遷移温度の低温度化も可能である。今回は、一般的な製造条件である加熱温度1200℃で実施しているが、熱延鋼帯のミルのパワーに余力があれば、加熱温度を1170℃以下してファイアライトの溶融が無くスケールの密着性が低い状態にできれば、高圧水デスケーリングに必要な衝突圧力は低くなる。
また、衝突圧力の低い粗圧延中のデスケーリングパス数を多くした場合、スケールを剥ぎ取る能力は低いものの、わずかながら剥離させたり、スケールやファイアライトに亀裂を入れたりすることは可能で、仕上圧延前のデスケーリング衝突圧力を低くする作用もある。
ただし、確実にスケール除去するためには、仕上圧延前のデスケーリング装置によって、P(MPa)≧5.0×Si(mass%)の条件で一回だけデスケーリングすればよい。
本発明の実施例を説明する。
この実施例では、図1に示した熱延鋼帯製造ラインにおいて、Si量を0.5〜1.6%の範囲で変更した、厚み250mmのスラブを加熱炉1で1200℃まで加熱し、粗圧延機3前のデスケーリング装置2でスケールを除去した後、粗圧延機3で7パス圧延して板厚32mmまで圧延し、その後、仕上圧延機5前のデスケーリング装置4で様々な条件でデスケーリングを行った後、仕上圧延を実施して板厚3.2mmまで圧延し、ランアウト冷却装置6で冷却した後、コイラー7で巻き取った。
その際に、目標仕上温度は860℃、目標巻き取り温度は450℃とし、コイラー7前に設置された温度計15により、巻き取り時の熱延鋼帯全長の温度を計測した。
なお、ランアウト冷却装置6は上面がヘアピンラミナー/下面がスプレーであり、それぞれの水量密度は1000L/min・m2、450L/min・m2であった。
また、仕上圧延機5前に設置された高圧水デスケーリング装置(仕上圧延デスケーリング装置)4は、図7に示したように、フラットスプレーノズル12を幅方向に90mmピッチで複数個並べたものである。
表1に、スラブのSi量と、仕上圧延デスケーリング装置4のデスケーリング条件を示すが、フラットスプレーノズル12のスプレー角度θは30゜、スプレー高さHは150mmに固定し、ノズル1本当たりの流量Qと噴射圧力Poを変更している。
そして、表1中の必要衝突圧力Pcは、先に説明したPc=5.0×Siから算出したものであり、必要衝突圧力Pcよりも衝突圧力Pが高いものが本発明例(本発明例1〜本発明例6)、低いものは比較例(比較例1〜比較例8)となっている。
上記の各条件のもとで得られた、鋼帯の表面外観と、コイラー前温度計15による鋼帯全長の温度計測値の最大値と最小値の差を巻き取り時の温度偏差として評価した。
その結果、表1に示すように、表面外観については、本発明例(本発明例1〜本発明例6)では、黒色のスケールであり鋼帯表面も平滑であって良好(○)であったのに対して、比較例(比較例1〜比較例8)では、鋼帯表面に微細な凹凸があると共に赤色化していわゆる赤スケールの形態を示していて不良(×)であった。
それを受けて、本発明例(本発明例1〜本発明例6)では、巻き取り時の温度偏差が25〜30℃であったのに対して、比較例(比較例1〜比較例8)では、巻き取り時の温度偏差が150℃以上になっている。
ここで、本発明例1と比較例1の鋼帯全長の温度チャートをそれぞれ図10と図11に示す。図10に示すように、本発明例1では、鋼帯全長に渡ってほぼ温度変動も無く冷却できているのに対して、比較例1では、特に鋼帯の先端100m、尾端50mの位置に大きな温度変動があり、また鋼帯長手中央部にも数箇所大きな温度ハンチングがみられる。この鋼帯先尾端に発生する温度変動は、熱延鋼帯の形状が悪い領域であり、ランアウトテーブル上で鋼帯の凹部に乗った水が、遷移沸騰域まで達して急速に冷えたものと推定される。これに対して、本発明例1では、表面が平滑化され低温度域まで遷移沸騰にならないため温度ムラが発生しなかったと推定される。
また、本発明例1と比較例1で、それぞれ鋼帯先端部の材質を長手方向で複数箇所採取して、引張り試験を実施したところ、本発明例1では、強度バラツキが20MPa程度であったのに対して、比較例1では、強度バラツキが120MPa程度も発生していた。
Figure 2011051000
1 加熱炉
2 粗圧延デスケーリング装置
3 粗圧延機
4 仕上圧延デスケーリング装置
5 仕上圧延機
6 ランアウトテーブル(ランアウト冷却装置)
7 コイラー
8 熱延鋼帯
11 デスケーリング装置
12 デスケーリングノズル(フラットスプレーノズル)
15 巻き取り温度計
特開平02−197312号公報 特開平06−071339号公報 特開2003−025009号公報 特開平07−144213号公報 特開平09−253732号公報 特開2001−009520号公報

Claims (3)

  1. Si:0.2〜2.0Mass%を含有する素材を粗圧延機と仕上げ圧延機とを備えた熱延鋼帯製造設備で熱間圧延して、熱延鋼帯を製造するに際して、前記仕上げ圧延機での圧延前に以下に示す衝突圧力Pの高圧水ジェットによるデスケーリングを実施すると共に、前記仕上げ圧延機での圧延後にランアウトテーブルで500℃以下まで冷却して、巻き取ることを特徴とする高強度熱延鋼帯の製造方法。
    P≧5.0×Si
    ここで、P:衝突圧力(MPa)、Si:Si添加量(Mass%)
  2. ランアウトテーブルで冷却する際に、冷却水の水量密度は、300L/min・m2以上1200L/min・m2以下とすることを特徴とする請求項1に記載の高強度熱延鋼帯の製造方法。
  3. 前記素材の加熱温度を1200〜1300℃とするとともに、前記仕上げ圧延機での圧延前に行う高圧水ジェットによるデスケーリングの噴射圧力を10MPa以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度熱延鋼帯の製造方法。
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