JP5609407B2 - 熱延鋼板の製造方法および製造設備 - Google Patents

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Description

本発明は、熱延鋼板の製造方法および製造設備に関するものである。
熱間圧延によって鋼板(鋼帯)を製造するプロセスでは、図1に示すような製造設備において、加熱炉1でスラブを加熱した後、粗圧延機2で粗圧延を行う。粗圧延の途中および粗圧延終了後には、デスケーリング装置3でスケールを除去し、仕上圧延機4で仕上圧延を行う。その後、ランアウトテーブルに設置された冷却設備(ランアウト冷却設備)5において水冷または空冷を行って、鋼板10の組織を制御している。
このうち製品厚が12mm以上の厚物材には、電縫管やスパイラル鋼管の素材として使われるものがあるが、ランアウト冷却設備5での水冷によって熱延鋼板としては比較的低い温度、例えば450〜550℃まで急速冷却すると、細かなフェライト組織やベイナイト組織が得られ、高強度で高靭性の材質が得られる。
しかし、コイラー8での巻き取り温度が550℃以下となるような比較的低い温度域でランアウト冷却設備5での冷却を行う場合は冷却が不安定になるという問題がある。
一般に、ランアウトテーブルにおける鋼板の冷却(ランアウト冷却)では、鋼板表面温度が高温の場合(例えば550℃超えの時)は膜沸騰が起こり、安定な冷却が行われる。これに対して、冷却が進行し、鋼板表面温度が下がると(例えば550℃以下)、膜沸騰と核沸騰が混在する遷移沸騰が起こる。遷移沸騰の状態は表面温度が下がるにつれて冷却能力が増大するため、冷却が不安定となって、温度ばらつきが大きくなり、さらには材質のばらつきが大きくなる。また、鋼板を冷やしすぎると極度に硬くなってしまい、鋼板尾端部(鋼帯尾端部)のスプリングバックが大きくなって、鋼板(鋼帯)10がコイラー8から抜けなくなったり、鋼板先端部(鋼帯先端部)を曲げることができず、コイラー8で巻き取れなくなったりする等の問題が起こる。
そこで、ランアウトテーブルにおいて安定な冷却を行う技術として、特許文献1の技術が提案されている。これは、ランアウト冷却ゾーンを前半ゾーンと後半ゾーンに2区分し、前半ゾーンにスリットラミナー方式の高冷却能力設備を配設するとともに、後半ゾーンにスプレー方式の低冷却能力設備を配設し、更に、ランアウト冷却ゾーンの全長に亘りパイプラミナー方式の中冷却能力設備を配設するようにしたものである。この技術によって、前半ゾーンは水量密度を大きくして冷却することで材質を確保し、後半ゾーンは水量密度を小さくして高精度の温度制御を行うことで安定冷却を実現するとされている。
なお、粗圧延の途中および粗圧延終了後に設置されるデスケーリング装置3では、従来、デスケーリング水の噴射圧を150kgf/cm(14.7MPa)にして行うのが一般的であった。これに対して、特に美観表面が求められる製品には、デスケーリング水の噴射圧を250kgf/cm(24.5MPa)以上にした高圧デスケーリングが用いられていた。厚物材では、通常の噴射圧150kgf/cm(14.7MPa)でのデスケーリングを使用していたが、表面外観の問題はなかった。
特開2003−025009号公報
しかしながら、従来の技術では、製品厚12〜26mmのような厚物材は550℃以下の低温域で冷却が不安定になるという問題がある。
遷移沸騰が始まる温度(遷移沸騰開始温度と呼ぶ)は、鋼板表面に生成するスケールが厚いほど高い。デスケーリングが不完全な鋼板を550℃以下まで冷やすと、鋼板内でスケール厚がばらついているため、遷移沸騰もばらつき、温度むらが発生する。巻き取り温度が低いほど、遷移沸騰温度で冷却される時間が長くなり、温度むらも大きくなるので、材質にばらつきが生じたり、鋼板を冷やしすぎて操業が不安定になるという問題がある。
また、図2に示すように、ラミナー方式の冷却設備による上面冷却では、上ヘッダー21に取り付けられた上ノズル22からのラミナー水23が鋼板10の上面に衝突するラミナー衝突部24での冷却能力は非常に高く、このラミナー衝突部24を通過する際の温度降下が非常に大きい。一方、鋼板10の上面に滞留水25が乗った水乗り部26では冷却能力がそれほど高くないので、表面温度は復熱によっていくらか上昇する。ここで、冷却中に鋼板10の表面温度が遷移沸騰開始温度を下回ると、遷移沸騰が起こり、冷却が不安定になる。デスケーリングが不完全だと、スケールが残っている部分は遷移沸騰開始温度が比較的高いので、ランアウト冷却設備5での冷却中に鋼板10の表面温度が遷移沸騰温度域に入り、温度むらが発生する。
この点について、前記特許文献1の技術では、鋼板のスケール厚が均一ではない場合、巻き取り温度が450〜550℃の比較的低い温度域まで鋼板を均一に冷却することは困難であり、大きな温度むらを発生させてしまい問題となっていた。また、この技術はランアウト冷却ゾーンの後半にスプレー冷却設備を配設し、その水量密度を0.3m/mmin以下として冷却するものであるが、水量が少ないので、限られた冷却ゾーン長さ(例えば120m)のランアウト冷却設備で厚物材を450〜550℃の巻き取り温度まで冷却することができない。さらに、この技術は、ランアウト冷却ゾーン全長に亘るパイプラミナー方式の中冷却能力設備(通常冷却する設備)に加えて、前半ゾーンのスリットラミナー方式の冷却設備と後半ゾーンのスプレー方式の冷却設備を設置するものであるから、設備コストが膨大になってしまうという問題がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、巻き取り温度が450〜550℃と比較的低い温度域であっても、ランアウト冷却において高精度で安定な冷却を実現し、高強度で高靭性の材質を確保することができる熱延鋼板の製造方法および製造設備を提供することを目的としている。
前記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
[1]製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、鋼板に対するデスケーリング水の衝突圧力が2.0MPa以上となるデスケーリングを行った後に、仕上圧延を行い、その後、ランアウト冷却において、鋼板の上面冷却をラミナー方式で行い、その際に、上流側と下流側に分割して、上流側では冷却水を水量密度1.0〜2.4m/mminで供給し、下流側では冷却水を水量密度0.5〜1.0m/mminで供給して、巻き取り温度を450℃〜550℃として巻き取ることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
[2]前記デスケーリング水の噴射圧を250kgf/cm以上とすることを特徴とする前記[1]に記載の熱延鋼板の製造方法。
[3]熱延鋼板の製造設備において、鋼板に対するデスケーリング水の衝突圧力が2.0MPa以上となるデスケーリング装置と、仕上圧延機と、鋼板の上面冷却をラミナー方式で行うランアウト冷却設備とが順次配置されていて、前記ランアウト冷却設備は、上流側冷却ゾーンと下流側冷却ゾーンに分割されており、鋼板の上面冷却を行うための冷却水の水量密度が、上流側冷却ゾーンでは1.0〜2.4m/mmin、下流側冷却ゾーンでは0.5〜1.0m/mminであることを特徴とする熱延鋼板の製造設備。
[4]前記デスケーリング装置は、デスケーリング水の噴射圧力が250kgf/cm以上であることを特徴とする前記[3]に記載の熱延鋼板の製造設備。
本発明では、鋼板への衝突圧力が2.0MPa以上のデスケーリングを行い、ランアウトテーブルにおいて、上流で強冷却、下流で通常の冷却を行うようにしているので、遷移沸騰を回避することができ、厚物材の安定な冷却を実現するとともに、材質ばらつきの小さい鋼板を製造することが可能である。
すなわち、本発明においては、製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、巻き取り温度が450〜550℃と比較的低い温度域であっても、ランアウト冷却において高精度で安定な冷却を実現し、高強度で高靭性の材質を確保することができる。
本発明の一実施形態における熱延鋼板の製造設備を示す図である。 ラミナー方式の冷却設備における冷却状態を示す図である。 デスケーリングとランアウト冷却の関係を示す図である。 デスケーリングと鋼板の温度むらの関係を示す図である。
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態における熱延鋼板の製造設備は図1に示すものである。図1に示すように、この実施形態における熱延鋼板の製造設備は、スラブを加熱する加熱炉1と、加熱されたスラブの粗圧延を行う粗圧延機2と、粗圧延の途中および粗圧延終了後にスケールの除去を行うデスケーリング装置3と、粗圧延された鋼板(粗バー)の仕上圧延を行う仕上圧延機4と、仕上圧延された鋼板の冷却(ランアウト冷却)を行うランアウト冷却設備5と、ランアウト冷却された鋼板の巻き取りを行うコイラー8とを備えている。
そして、この実施形態においては、デスケーリング装置3におけるデスケーリング水の鋼板10への衝突圧力が2.0MPa以上になっているとともに、ランアウト冷却設備5は鋼板10の上面冷却をラミナー方式で行う冷却設備であって、上流側冷却ゾーン(上流側冷却設備)6と下流側冷却ゾーン(下流側冷却設備)7に分割されており、鋼板10の上面冷却を行うための冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が、上流側冷却設備6(上ヘッダー11、上ノズル12)では1.0〜2.4m/mmin、下流側冷却設備7(上ヘッダー15、上ノズル16)では0.5〜1.0m/mminとなっている。
なお、上流側冷却ゾーン6と下流側冷却ゾーン7の分割割合は、仕上寸法(特に板厚)、鋼種、巻き取り温度等に応じて設定され、上流側冷却ゾーン6は、ランナウト冷却設備5全体の30〜60%であることが適切である。具体的には、上流側冷却ゾーン6の上ノズル16の個数が、ランナウト冷却設備5全体の上ノズルの個数(上流側冷却ゾーン6の上ノズル12と下流側冷却ゾーン7の上ノズル16の合計個数)の30〜60%であることが適切である。
ただし、上記の範囲に限定されるものでなく、例えば、板厚が厚くなるにしたがって、鋼板中心付近の保有熱が高くなり、冷却水量を多くしても、鋼板中心付近の保有熱の影響で表面温度は大きく復熱するので、表面温度が遷移沸騰温度域に入らない範囲で、上流側冷却ゾーン6の割合を60%より多くしてもよい。
なお、ランアウト冷却設備5では、鋼板10の下面冷却については、上流側冷却設備6(下ヘッダー13、下ノズル14)および下流側冷却設備7(下ヘッダー17、下ノズル18)ともにスプレー方式で行うようになっている。
そして、この熱延鋼板の製造設備を用いて、製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造することにし、その際に、コイラー8での巻き取り温度を450℃〜550℃として巻き取るようにしている。なお、製品厚みの上限は、コイラー8で巻き取り可能な最大板厚(コイラーの仕様上限値:例えば26mm)となる。
このようにして、ランアウト冷却設備5において、上流側(上流側冷却設備6)で、鋼板上面に冷却水を水量密度1.0〜2.4m/mminでラミナー方式によって供給することで、板厚の厚い鋼板においても高い冷却速度が得られ、高強度・高靭性の材質を確保することができる。一旦遷移沸騰が起きたら、その後の水冷は遷移沸騰域で行われる可能性が高く、温度制御が困難となるが、ラミナー方式による冷却の前半(上流側冷却設備6での冷却)では鋼板表面温度が比較的高いので、水量をある程度多くしても遷移沸騰温度域に入りにくい。
ちなみに、上流側冷却設備6における鋼板上面への冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が1.0m/mmin未満であると、鋼板の板厚が厚いときに十分な冷却速度が得られず、高強度・高靭性の材質を確保することができない。また、上流側冷却設備6における鋼板上面への冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が2.4m/mminを超えると、設備コストが高くなる上、遷移沸騰が起こりやすくなり、冷却が不安定となる。
また、ランアウト冷却設備5において、下流側(下流側冷却設備7)で、鋼板上面に冷却水を水量密度0.5〜1.0m/mminでラミナー方式によって供給するので、スプレー方式による冷却設備よりも供給水量を多くすることができ、厚物材を目標の巻き取り温度としては比較的低い450℃〜550℃まで精度良く冷やすことができる。また、水量密度が適度に小さいため遷移沸騰は起こりにくく、大きな温度むらは発生しない。
ちなみに、下流側冷却設備7における鋼板上面への冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が0.5m/mmin未満であると、鋼板の板厚が厚いときは冷却能力が足りず、巻き取り温度の目標である450℃〜550℃まで冷やすことができない。また、下流側冷却設備7における鋼板上面への冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が1.0m/mminを超えると、遷移沸騰が起こりやすくなるため、冷却が不安定となり、温度制御が困難となる。
そして、仕上圧延前に鋼板10への衝突圧力が2.0MPa以上となるデスケーリングを行うことで、スケール厚を均一にし、安定した冷却を実現することができる。
衝突圧力が1.4MPa程度である通常デスケーリングを使用する場合は、スケールの除去が不完全になり、スケールが残っている部分は遷移沸騰開始温度が比較的高いので、図3(a)示すように、ランアウト冷却の途中で遷移沸騰温度域に入り、冷却が不安定となる。
一方、衝突圧力が2.0MPa以上である高圧デスケーリングを使用すると、通常デスケーリングを使用する場合よりも良好にスケールを除去することができ、遷移沸騰開始温度が低くなるので、図3(b)示すように、遷移沸騰を回避しやすくなり、安定した冷却を実現することができる。
さらに、ランアウト冷却設備5の下流側(下流側冷却設備7)で、鋼板上面に冷却水を水量密度0.5〜1.0m/mminで供給して、ランアウト冷却設備5の上流側(上流側冷却設備6)よりも冷却能力を適度に下げれば、図3(c)に示すように、ラミナー衝突部を通過する際の温度降下が小さくなるので、遷移沸騰はさらに回避しやすくなり、より安定した冷却を実現することができる。
通常デスケーリングを使用した時の巻き取り前の幅方向温度分布は、図4(a)のようになり、温度ばらつきが大きい。これに対して、高圧デスケーリングを使用すると鋼板面内の全てでスケールを完全に除去できるので、遷移沸騰が起こりにくくなり、温度ばらつきは図4(b)のように小さくなる。
このように、衝突圧力が2.0MPa以上となるように高圧デスケーリングを行えば、仕上圧延前の粗バーのスケールを完全に除去することができ、デスケーリング以降に生成するスケールの厚さを均一にすることができる。
仕上圧延機4の入側に設置されたデスケーリング装置3において、2.0MPa以上の衝突圧力を得るためには、デスケーリング水の噴射圧を250kgf/cm(24.5MPa)以上とすればよい。噴射圧が250kgf/cm(24.5MPa)未満だと2.0MPaの衝突圧力は得にくく、部分的にスケールが残り、冷却が不安定になってしまうので良くない。
このようにして、この実施形態においては、製品厚み12mm以上の熱延鋼板を高い冷却速度で安定して冷却できるため、高強度・高靭性で材質ばらつきの小さい高品質の鋼板を製造することができる。また、巻き取り温度が異常に低くなりすぎることはないので、鋼板尾端部(鋼帯尾端部)のスプリングバックが大きくなって、鋼帯10がコイラー8から抜けなくなったり、鋼板先端部(鋼帯先端部)を曲げることができず、コイラー8で巻き取れない等の操業トラブルを回避でき、操業の安定性を確保することができる。
また、この実施形態においては、ラミナー方式の冷却設備において遷移沸騰を回避するものであり、特許文献1の技術とは違って、新たな冷却設備を設置するわけではないので、設備コストがかかるという問題はない。
本発明の実施例を説明する。
図1に示した熱延鋼板の製造設備において、加熱炉1でスラブを加熱した後、粗圧延機2で粗圧延を行い、粗圧延の途中および粗圧延終了後にはデスケーリング装置3でスケールを除去し、仕上圧延機4で仕上圧延を行った。仕上圧延機4出側での鋼板温度は780℃であった。この後、ランアウトテーブル上で鋼板10を搬送する間、ランアウト冷却設備5(上流側冷却設備6、下流側冷却設備7)において、鋼板上面にラミナー冷却水を供給するとともに、鋼板下面にスプレー冷却水を供給して、500℃まで冷却した。目標とする材質を確保し、そのばらつきが小さい鋼板を製造するためには、幅方向温度むらを50℃以内に抑える必要があった。
本発明例と比較例の製造条件(粗バー厚、製品厚、デスケーリングの噴射圧、デスケーリングの衝突圧力、上流側冷却設備の水量密度、下流側冷却設備の水量密度、鋼板の搬送速度)と、製造結果(幅方向の温度むら)を表1にまとめた。
Figure 0005609407
まず、比較例1では、粗バー厚60mm、製品厚22.2mm、仕上圧延前デスケーリングの噴射圧力150kgf/cm(14.7MPa)、搬送速度180mpm、ランアウト冷却前半(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却後半(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして、熱延鋼板を製造した。その結果、仕上圧延前デスケーリングの衝突圧力は1.4MPaであったので、鋼板表面にスケールむらが残り、幅方向の温度むらは100℃と大きく、材質ばらつきや操業の安定性に問題があった。
これに対して、本発明例1では、粗バー厚60mm、製品厚22.2mm、仕上圧延前デスケーリングの噴射圧力300kgf/cm(29.4MPa)、搬送速度180mpm、ランアウト冷却前半(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却後半(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして、熱延鋼板を製造した。その結果、仕上圧延前デスケーリングの衝突圧力は2.8MPaであったので、鋼板表面のスケールむらがなくなった。高速搬送によって遷移沸騰領域を回避することで、幅方向の温度むらを40℃に低減した。これにより、高強度・高靭性で材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られた。また、温度制御精度が向上して鋼板を異常に冷やしすぎることがなくなり、操業の安定性が確保できた。
次に、比較例2では、粗バー厚40mm、製品厚12mm、仕上圧延前デスケーリングの噴射圧力150kgf/cm(14.7MPa)、搬送速度220mpm、ランアウト冷却前半(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却後半(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして、熱延鋼板を製造した。その結果、仕上圧延前デスケーリングの衝突圧力は1.4MPaであったので、鋼板表面にスケールむらが残り、幅方向の温度むらは80℃となり、材質ばらつきの問題があった。
また、比較例3では、粗バー厚40mm、製品厚12mm、仕上圧延前デスケーリングの噴射圧力300kgf/cm(29.4MPa)、搬送速度220mpm、ランアウト冷却前半(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却後半(下流側冷却設備)の水量密度を1.4m/mminとして、熱延鋼板を製造した。その結果、仕上圧延前デスケーリングの衝突圧力は2.8MPaであったので、鋼板表面のスケールむらがなくなった。しかし、ランアウト冷却後半で遷移沸騰が起こり、幅方向の温度むらは55℃となり、材質ばらつきの問題があった。
これに対して、本発明例2では、粗バー厚40mm、製品厚12mm、仕上圧延前デスケーリングの噴射圧力300kgf/cm(29.4MPa)、搬送速度220mpm、ランアウト冷却前半(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却後半(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして、熱延鋼板を製造した。その結果、仕上圧延前デスケーリングの衝突圧力は2.8MPaであったので、鋼板表面のスケールむらがなくなった。そして、幅方向の温度むらが25℃に低減し、高強度・高靭性で材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られた。また、温度制御精度が向上して鋼板を異常に冷やしすぎることがなくなり、操業の安定性が確保できた。
1 加熱炉
2 粗圧延機
3 デスケーリング装置
4 仕上圧延機
5 ランアウト冷却設備
6 上流側冷却設備(上流側冷却ゾーン)
7 下流側冷却設備(下流側冷却ゾーン)
8 コイラー
10 鋼板(鋼帯)
11 上流側冷却設備の上ヘッダー
12 上流側冷却設備の上ノズル
13 上流側冷却設備の下ヘッダー
14 上流側冷却設備の下ノズル
15 下流側冷却設備の上ヘッダー
16 下流側冷却設備の上ノズル
17 下流側冷却設備の下ヘッダー
18 下流側冷却設備の下ノズル
21 上ヘッダー
22 上ノズル
23 ラミナー水(ラミナー冷却水)
24 ラミナー衝突部
25 滞留水
26 水乗り部

Claims (8)

  1. 製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、鋼板に対するデスケーリング水の衝突圧力が2.0MPa以上となるデスケーリングを行った後に、仕上圧延を行い、その後、ランアウト冷却において、鋼板の上面冷却をラミナー方式で行い、その際に、上流側と下流側に分割して、上流側では冷却水を水量密度1.0〜2.4m/mminで供給し、下流側では冷却水を水量密度0.5〜1.0m/mminで供給して、巻き取り温度を450℃〜550℃として巻き取ることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
  2. 前記デスケーリング水の噴射圧を250kgf/cm以上とすることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
  3. ランアウト冷却後、巻き取る前の鋼帯の幅方向温度むらを50℃以内にすることを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板の製造方法。
  4. ランアウト冷却において、上流側の上面冷却ノズルの個数が、ランナウト冷却全体の上面冷却ノズルの個数の30〜60%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱延鋼板の製造方法。
  5. 熱延鋼板の製造設備において、鋼板に対するデスケーリング水の衝突圧力が2.0MPa以上となるデスケーリング装置と、仕上圧延機と、鋼板の上面冷却をラミナー方式で行うランアウト冷却設備とが順次配置されていて、前記ランアウト冷却設備は、上流側冷却ゾーンと下流側冷却ゾーンに分割されており、鋼板の上面冷却を行うための冷却水の水量密度が、上流側冷却ゾーンでは1.0〜2.4m/mmin、下流側冷却ゾーンでは0.5〜1.0m/mminであることを特徴とする熱延鋼板の製造設備。
  6. 前記デスケーリング装置は、デスケーリング水の噴射圧が250kgf/cm以上であることを特徴とする請求項に記載の熱延鋼板の製造設備。
  7. ランアウト冷却設備による冷却後、巻き取る前の鋼帯の幅方向温度むらが50℃以内であることを特徴とする請求項5または6に記載の熱延鋼板の製造設備。
  8. ランアウト冷却設備において、上流側冷却ゾーンの上面冷却ノズルの個数が、ランナウト冷却設備全体の上面冷却ノズルの個数の30〜60%であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の熱延鋼板の製造設備。
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