JP5609703B2 - 熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、熱延鋼板の製造方法に関するものである。
熱間圧延によって鋼板(鋼帯)を製造するプロセスでは、図1に示すような製造設備において、加熱炉1でスラブを加熱した後、粗圧延機2で粗圧延を行う。粗圧延の途中および粗圧延終了後には、デスケーリング装置3でスケールを除去し、仕上圧延機4で仕上圧延を行う。その後、ランアウトテーブルに設置された冷却設備(ランアウト冷却設備)5において水冷または空冷を行って、鋼板10の組織を制御し、コイラー8で巻き取る。
このうち製品厚みが12mm以上の厚物材には、電縫管やスパイラル鋼管の素材として使われるものがあるが、ランアウト冷却設備5での水冷によって熱延鋼板としては比較的低い温度、例えば450〜550℃まで急速冷却すると、細かなフェライト組織やベイナイト組織が得られ、高強度で高靭性の材質が得られる。
しかし、コイラー8での巻き取り温度が550℃以下となるような比較的低い温度域でランアウト冷却設備5での冷却を行う場合は冷却が不安定になるという問題がある。
一般に、ランアウトテーブルにおける鋼板の冷却(ランアウト冷却)では、鋼板表面温度が高温の場合(例えば550℃超えの時)は膜沸騰が起こり、安定な冷却が行われる。これに対して、冷却が進行し、鋼板表面温度が下がると(例えば550℃以下)、膜沸騰と核沸騰が混在する遷移沸騰が起こる。遷移沸騰の状態は表面温度が下がるにつれて冷却能力が増大するため、冷却が不安定となって、温度ばらつきが大きくなり、さらには材質のばらつきが大きくなる。また、鋼板を冷やしすぎると極度に硬くなってしまい、鋼板尾端部(鋼帯尾端部)のスプリングバックが大きくなって、鋼板(鋼帯)10がコイラー8から抜けなくなったり、鋼板先端部(鋼帯先端部)を曲げることができず、コイラー8で巻き取れなくなったりする等の問題が起こる。
そこで、ランアウトテーブルにおいて安定な冷却を行う技術として、特許文献1の技術が提案されている。これは、ランアウト冷却ゾーンを前半ゾーンと後半ゾーンに2区分し、前半ゾーンにスリットラミナー方式の高冷却能力設備を配設するとともに、後半ゾーンにスプレー方式の低冷却能力設備を配設し、更に、ランアウト冷却ゾーンの全長に亘りパイプラミナー方式の中冷却能力設備を配設するようにしたものである。この技術によって、前半ゾーンは水量密度を大きくして冷却することで材質を確保し、後半ゾーンは水量密度を小さくして高精度の温度制御を行うことで安定冷却を実現するとされている。
なお、鋼板10がオーステナイト未再結晶温度域である状態で圧延、いわゆる制御圧延を行うことでも組織が微細化し、高強度で高靭性の材質が得られる。
一般的に、製品厚みが12mm以上の厚物材の圧延では、仕上出側温度の目標を低く設定している。これは、圧延温度が低いほど、制御圧延の効果が大きく、高強度・高靭性の材質が得られるからである。したがって、仕上圧延中の温度降下を大きくとる必要があり、比較的低速(例えば、製品厚み20mmの場合、100mpm)で圧延を行っていた。
特開2003−025009号公報
しかしながら、前述の通り、従来の技術では、製品厚み12〜26mmのような厚物材は550℃以下の低温域で冷却が不安定になるという問題がある。
図2に示すように、ラミナー方式の冷却設備による上面冷却では、上ヘッダー21に取り付けられた上ノズル22からのラミナー水23が鋼板10の上面に衝突するラミナー衝突部24での冷却能力は非常に高く、このラミナー衝突部24を通過する際の温度降下が非常に大きい。一方、鋼板10の上面に滞留水25が乗った水乗り部26では冷却能力がそれほど高くないので、表面温度は復熱によっていくらか上昇する。ここで、冷却中に鋼板10の表面温度が遷移沸騰開始温度を下回ると、遷移沸騰が起こり、冷却が不安定になる。
この点について、前記特許文献1の技術では、製品厚12〜26mmのような厚物材の仕上圧延を比較的低速で行う場合、巻き取り温度が450〜550℃の比較的低い温度域まで鋼板10を均一に冷却することは困難であり、大きな温度むらを発生させてしまい、問題となっていた。また、この技術は、ランアウト冷却ゾーンの後半にスプレー冷却設備を配設し、その水量密度を0.3m/mmin以下として冷却するものであるが、水量が少ないので、限られた冷却ゾーン長さ(例えば120m)のランアウト冷却設備で厚物材を450〜550℃の巻き取り温度まで冷却することができない。さらに、この技術は、ランアウト冷却ゾーン全長に亘るパイプラミナー方式の中冷却能力設備(通常冷却する設備)に加えて、前半ゾーンのスリットラミナー方式の冷却設備と後半ゾーンのスプレー方式の冷却設備を設置するものであるから、設備コストが膨大になってしまうという問題がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、巻き取り温度が450〜550℃と比較的低い温度域であっても、ランアウト冷却において高精度で安定な冷却を実現し、高強度で高靭性の材質を確保することができる熱延鋼板の製造方法を提供することを目的としている。
前記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
[1]製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、粗圧延終了後の鋼板の板厚を製品厚みの2.0〜3.3倍とし、板厚方向中心がオーステナイト未再結晶温度域である状態で仕上圧延を行い、その後、ランアウト冷却において、ランアウト冷却中の鋼板の搬送速度を180mpm以上に設定し、鋼板の上面冷却をラミナー方式で行い、その際に、上流側と下流側に分割して、上流側では冷却水を水量密度1.0〜2.4m/mminで供給し、下流側では冷却水を水量密度0.5〜1.0m/mminで供給して、巻き取り温度を450℃〜550℃として巻き取ることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
[2]前記ランアウト冷却中の鋼板搬送速度の最低搬送速度を最高搬送速度の75%以上とすることを特徴とする前記[1]に記載の熱延鋼板の製造方法。
[3]ランアウト冷却設備の長さの70〜100%にわたって冷却水を供給するとともに、ランアウト冷却における鋼板の板厚Hと搬送速度Vの積HVを、HV=2500〜5500(mm・mpm)とすることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の熱延鋼板の製造方法。
本発明においては、厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、巻き取り温度が450〜550℃と比較的低い温度域であっても、ランアウト冷却において高精度で安定な冷却を実現し、高強度で高靭性の材質を確保することができる。
本発明の一実施形態における熱延鋼板の製造設備を示す図である。 ラミナー方式の冷却設備における冷却状態を示す図である。 ラミナー方式の冷却設備における搬送速度の影響を示す図である。
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態における熱延鋼板の製造設備は図1に示すものである。図1に示すように、この実施形態における熱延鋼板の製造設備は、スラブを加熱する加熱炉1と、加熱されたスラブの粗圧延を行う粗圧延機2と、粗圧延の途中および粗圧延終了後にスケールの除去を行うデスケーリング装置3と、粗圧延された鋼板(シートバー)の仕上圧延を行う仕上圧延機4と、仕上圧延された鋼板の冷却(ランアウト冷却)を行うランアウト冷却設備5と、ランアウト冷却された鋼板の巻き取りを行うコイラー8とを備えている。
そして、この実施形態においては、製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、シートバー厚を製品厚みの2.0〜3.3倍とし、仕上圧延機4の全スタンドで未再結晶温度域での圧延を行う。具体的にはシートバー厚は30〜60mmであるのがよく、40〜50mm程度が最もよい。シートバー厚が製品厚の2.0倍より薄いと十分な制御圧延効果が得られず組織微細化が行われない。3.3倍より厚いとクロップシャーを増強するなどの設備投資が必要となって良くない。
次に、ランアウト冷却設備5は鋼板10の上面冷却をラミナー方式で行う冷却設備であって、上流側冷却ゾーン(上流側冷却設備)6と下流側冷却ゾーン(下流側冷却設備)7に分割されており、鋼板10の上面冷却を行うための冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が、上流側冷却設備6(上ヘッダー11、上ノズル12)では1.0〜2.4m/mmin、下流側冷却設備7(上ヘッダー15、上ノズル16)では0.5〜1.0m/mminとなっている。
なお、上流側冷却ゾーン6と下流側冷却ゾーン7の分割割合は、仕上寸法(特に板厚)、鋼種、巻き取り温度等に応じて設定され、上流側冷却ゾーン6は、ランアウト冷却設備5全体の30〜60%であることが適切である。具体的には、上流側冷却ゾーン6の上ノズル16の個数が、ランアウト冷却設備5全体の上ノズルの個数(上流側冷却ゾーン6の上ノズル12と下流側冷却ゾーン7の上ノズル16の合計個数)の30〜60%であることが適切である。
ただし、上記の範囲に限定されるものでなく、例えば、板厚が厚くなるにしたがって、鋼板中心付近の保有熱が高くなり、冷却水量を多くしても、鋼板中心付近の保有熱の影響で表面温度は大きく復熱するので、表面温度が遷移沸騰温度域に入らない範囲で、上流側冷却ゾーン6の割合を60%より多くしてもよい。
なお、ランアウト冷却設備5では、鋼板10の下面冷却については、上流側冷却設備6(下ヘッダー13、下ノズル14)および下流側冷却設備7(下ヘッダー17、下ノズル18)ともにスプレー方式で行うようになっている。
このようにして、ランアウト冷却設備5において、上流側(上流側冷却設備6)で、鋼板上面に冷却水を水量密度1.0〜2.4m/mminでラミナー方式によって供給することで、板厚の厚い鋼板においても高い冷却速度が得られ、高強度・高靭性の材質を確保することができる。一旦遷移沸騰が起きたら、その後の水冷は遷移沸騰温度域で行われる可能性が高く、温度制御が困難となるが、ラミナー方式による冷却の前半(上流側冷却設備6での冷却)では鋼板表面温度が比較的高いので、水量をある程度多くしても遷移沸騰温度域に入りにくい。
ちなみに、上流側冷却設備6における鋼板上面への冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が1.0m/mmin未満であると、鋼板の板厚が厚いときに十分な冷却速度が得られず、高強度・高靭性の材質を確保することができない。また、上流側冷却設備6における鋼板上面への冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が2.4m/mminを超えると、遷移沸騰が起こりやすくなり、冷却が不安定となる上に、使用水量の増加によりランニングコストが高くなる。
また、ランアウト冷却設備5において、下流側(下流側冷却設備7)で、鋼板上面に冷却水を水量密度0.5〜1.0m/mminでラミナー方式によって供給するので、スプレー方式による冷却設備よりも供給水量を多くすることができ、厚物材を目標の巻き取り温度としては比較的低い450℃〜550℃まで精度良く冷やすことができる。また、水量密度が適度に小さいため遷移沸騰は起こりにくく、大きな温度むらは発生しない。
ちなみに、下流側冷却設備7における鋼板上面への冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が0.5m/mmin未満であると、鋼板の板厚が厚いときは冷却能力が足りず、巻き取り温度の目標である450℃〜550℃まで冷やすことができない。また、下流側冷却設備7における鋼板上面への冷却水(ラミナー冷却水)の水量密度が1.0m/mminを超えると、遷移沸騰が起こりやすくなるため、冷却が不安定となり、温度制御が困難となる。
さらに、ランアウト冷却中の搬送速度を180mpm以上に設定することによって、遷移沸騰温度域を回避して安定冷却を実現する。
図3(a)、(b)に示すように、搬送速度が速いと、ラミナー水が鋼板に直接当たる時間が短く(t>t)、ラミナー衝突部の温度降下が小さい(ΔT>ΔT)。よって、搬送速度が速いと、遷移沸騰を回避しやすくなり、安定冷却が実現する。
ランアウト冷却設備5において、下流側(下流側冷却設備7)で、冷却水を水量密度0.5〜1.0m/mminで供給して、上流側(上流側冷却設備6)よりも冷却能力を適度に下げれば、図3(c)に示すように、ラミナー衝突部を通過する際の温度降下(ΔT)が小さくなるので、遷移沸騰はさらに回避しやすくなり、より安定な冷却を実現できる。
一方、搬送速度が180mpm未満であると、ラミナー衝突部の温度降下が大きく、遷移沸騰が起こるため温度制御が難しくなる。
なお、搬送速度は速い程良いが、360mpmを超えると、ランアウトの全ての冷却ゾーンを使用しても十分な冷却時間が確保できなくなる場合がある。そうなると、巻き取り温度が高くなってしまって、高強度・高靭性の材質を確保することができない。また、360mpmを超えると、仕上圧延機内での温度降下が小さくなるため、目標の仕上出側温度を得るには、仕上入側温度を下げなければならない場合がでてくる。そうなると、粗圧延終了後に仕上入側で、長時間待機させなくてはならず、生産能率が低下するので良くない。
そして、厚物材のランアウト冷却中の搬送は途中で加速することが一般的であるが、最低搬送速度は最高搬送速度の75%以上とした方がよい。最低搬送速度が最高搬送速度の75%以上とすると、搬送速度が遅い時(例えば最高搬送速度の80%の時)に冷却される部分であっても、ラミナー衝突部の温度降下が小さくなり、遷移沸騰温度域をより確実に回避することができる。
また、ランアウト冷却設備5の長さの70〜100%にわたって冷却水を供給する(注水する)ことによって、180mpm以上のような搬送速度が速い場合でも、450〜550℃の巻き取り温度まで冷却することができる。しかも、注水ゾーンが長くなると、低温域(例えば550℃以下)での冷却をラミナー衝突部の温度降下が小さい低流量ゾーンで行うことになるため、遷移沸騰を回避しやすくなる。
なお、上述したように、注水ゾーンの長さはランアウト冷却設備5の長さの70〜100%でよいが、通常より冷却水温が高い時に注水ゾーンを延ばすことができるように、注水ゾーンの長さは若干の余裕を持たせて、ランアウト冷却設備5の長さの80〜90%にするのが好適である。このようにすれば、たとえモデルや学習の精度が悪く、注水ゾーンを間違って延ばして全ゾーンで注水を行ってしまったとしても、コイラー8で巻き取れない程冷やしすぎることはなくなる。
これに対して、注水ゾーンをランアウト冷却設備5の長さの70%未満にすると、板厚が厚く、搬送速度が速い場合には、450〜550℃まで冷却できないので良くない。
さらに、注水ゾーンの長さをランアウト冷却設備5の長さの70〜100%にした上で、ランアウト冷却中の鋼板の板厚Hと搬送速度Vの積HVを、HV=2500〜5500(mm・mpm)とすればよく、望ましくは3500(mm・mpm)以上とすれば、より高精度で、安定した冷却を実現できる。
そして、このような熱延鋼板の製造設備を用いて、製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造する際に、製品厚みの上限は、コイラー8において450℃〜550℃で巻き取りが可能な最大板厚(コイラーの仕様上限値:例えば26mm)となる。
このようにして、この実施形態においては、製品厚み12mm以上の熱延鋼板を高い冷却速度で安定して冷却できるため、高強度・高靭性で材質ばらつきの小さい高品質の鋼板を製造することができる。また、巻き取り温度が異常に低くなりすぎることはないので、鋼板尾端部(鋼帯尾端部)のスプリングバックが大きくなって、鋼帯10がコイラー8から抜けなくなったり、鋼板先端部(鋼帯先端部)を曲げることができず、コイラー8で巻き取れない等の操業トラブルを回避でき、操業の安定性を確保することができる。
また、この実施形態においては、ラミナー方式の冷却設備において遷移沸騰を回避するものであり、特許文献1の技術とは違って、新たな冷却設備を設置するわけではないので、設備コストがかかるという問題はない。
本発明の実施例を説明する。
図1に示した熱延鋼板の製造設備において、加熱炉1でスラブを加熱した後、粗圧延機2で粗圧延を行い、粗圧延の途中および粗圧延終了後にはデスケーリング装置3でスケールを除去し、仕上圧延機4で仕上圧延を行った。仕上圧延機4出側での鋼板温度は780℃であった。この後、ランアウトテーブル上で鋼板10を搬送する間、ランアウト冷却設備5(上流側冷却設備6、下流側冷却設備7)において、鋼板上面にラミナー冷却水を供給するとともに、鋼板下面にスプレー冷却水を供給して、500℃まで冷却した。目標とする材質を確保し、そのばらつきが小さい鋼板を製造するためには、幅方向温度むらを50℃以内に抑える必要があった。
本発明例と比較例の製造条件(シートバー厚、製品厚、ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度、ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度、鋼板の搬送速度)と、製造結果(結晶粒径、幅方向の温度むら)を表1、表2にまとめた。
Figure 0005609703
Figure 0005609703
まず、比較例1では、シートバー厚40mm、製品厚22.2mm、ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mmin、搬送速度を200mpmとして製造した。幅方向の温度むらは目標の50℃以内である45℃に抑えられたものの、シートバー厚が製品厚の2.0倍より薄く、十分な制御圧延効果が得られなかったため、後述する本発明例1の結晶組織と比較して、結晶粒が粗大化、或は粗大な結晶粒が混在する混粒組織となり、高強度・高靭性の材質を確保できなかった。
これに対して、本発明例1では、シートバー厚52mm、製品厚22.2mm、ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして製造した。十分に制御圧延が行われたため、結晶粒が微細化し、高強度・高靭性の材質が得られた。
次に、比較例2では、シートバー厚60mm、製品厚22.2mm、搬送速度150mpm、ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして製造した。搬送速度が180mpmより遅いため、幅方向の温度むらは120℃と大きく、材質ばらつきや操業の安定性に問題があった。
これに対して、本発明例2では、シートバー厚52mm、製品厚22.2mm、搬送速度240mpm、ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして製造した。搬送速度が180mpmより高い高速搬送によって遷移沸騰領域を確実に回避することで幅方向温度むらを40℃に低減し、高強度・高靭性で材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られた。また、温度制御精度が向上して、鋼板を異常に冷やしすぎることがなくなり、操業の安定性が確保できた。
また、比較例3では、シートバー厚36mm、製品厚12mm、搬送速度200mpm、ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度を3.0m/mmin、ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして製造した。ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度が2.4m/mminを超えていたので、幅方向温度むらは90℃となり、材質ばらつきの問題があった。
さらに、比較例4では、シートバー厚36mm、製品厚12mm、搬送速度280mpm、ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度を1.4m/mminとして製造した。ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度が1.0m/mminを超えていたので、ランアウト冷却下流で遷移沸騰が起こり、幅方向温度むらは65℃となり、材質ばらつきの問題があった。
これに対して、本発明例3では、シートバー厚36mm、製品厚12mm、搬送速度280mpm、ランアウト冷却上流(上流側冷却設備)の水量密度を1.6m/mmin、ランアウト冷却下流(下流側冷却設備)の水量密度を0.8m/mminとして製造した。幅方向温度むらを30℃に低減し、高強度・高靭性で材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られ、また、温度制御精度が向上して、鋼板を異常に冷やしすぎることがなくなり、操業の安定性が確保できた。
なお、特に実施例として示さなかったが、ランアウト冷却中の鋼板の最低搬送速度を最高搬送速度の75%以上、および/またはランアウト冷却設備の長さの70〜100%にわたって冷却水を供給するとともに、ランアウト冷却における鋼板の板厚と搬送速度の積を2500〜5500(mm・mpm)の範囲内で製造することによって、さらに高精度な温度制御で安定した冷却(幅方向温度むら:30℃以下)が行われたことを多くの操業実績により確認している。
1 加熱炉
2 粗圧延機
3 デスケーリング装置
4 仕上圧延機
5 ランアウト冷却設備
6 上流側冷却設備(上流側冷却ゾーン)
7 下流側冷却設備(下流側冷却ゾーン)
8 コイラー
10 鋼板(鋼帯)
11 上流側冷却設備の上ヘッダー
12 上流側冷却設備の上ノズル
13 上流側冷却設備の下ヘッダー
14 上流側冷却設備の下ノズル
15 下流側冷却設備の上ヘッダー
16 下流側冷却設備の上ノズル
17 下流側冷却設備の下ヘッダー
18 下流側冷却設備の下ノズル
21 上ヘッダー
22 上ノズル
23 ラミナー水(ラミナー冷却水)
24 ラミナー衝突部
25 滞留水
26 水乗り部

Claims (3)

  1. 製品厚み12mm以上の熱延鋼板を製造するに際して、粗圧延終了後の鋼板の板厚を製品厚みの2.0〜3.3倍とし、板厚方向中心がオーステナイト未再結晶温度域である状態で仕上圧延を行い、その後、ランアウト冷却において、ランアウト冷却中の鋼板の搬送速度を180mpm以上に設定し、鋼板の上面冷却をラミナー方式で行い、その際に、上流側と下流側に分割して、上流側では冷却水を水量密度1.0〜2.4m/mminで供給し、下流側では冷却水を水量密度0.5〜1.0m/mminで供給して、巻き取り温度を450℃〜550℃として巻き取ることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
  2. 前記ランアウト冷却中の鋼板搬送速度の最低搬送速度を最高搬送速度の75%以上とすることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
  3. ランアウト冷却設備の長さの70〜100%にわたって冷却水を供給するとともに、ランアウト冷却における鋼板の板厚Hと搬送速度Vの積HVを、HV=2500〜5500(mm・mpm)とすることを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板の製造方法。
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