JP3774686B2 - 熱間圧延におけるデスケーリング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延におけるデスケーリング方法に関する。
具体的には、加熱炉から抽出した鋼片を粗圧延した後の鋼板表面に生成したスケールを除去するデスケーリング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱延鋼板の製造ラインにおいては、加熱炉にて1000〜1300℃に加熱した鋼片を、粗圧延にて30〜60mmの厚さに熱間圧延した後、仕上げ圧延を行って厚さ数mmの熱延鋼板が製造される。
この熱延鋼板の成分中に、例えば0.1mass%以上のSiが含まれている場合に、Fe0−Fe2SiO4などのファイアライトを含むスケールが生成し、このスケールが地鉄中にくさび上状に食い込んだ状態となって、容易に除去されず、圧延後もFeOとともに残存してこれが酸化することにより、所謂赤スケールと呼ばれるスケール性欠陥となっていた。
【0003】
このように、Siを含むスケールを除去する方法として、例えば、特開2001−150018号公報には、サイジングプレスにて、鋼片表面に生成しているスケールに亀裂を生じさせ鋼片表面から浮かせた後、超高圧水でデスケーリングすることにより赤スケールの成因となるスケールを除去する方法が開示されている。
しかし、この従来技術は、サイジングプレスを用いて幅方向に圧下した後、粗圧延を行う前に30Mpa以上の高圧水を用いてデスケーリングを行うものであり、地鉄にくさび状に食い込んだスケールを十分に除去することができないうえ、粗圧延後に生成するFe23などのスケールが残存して所謂赤スケールを防止することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、地鉄にくさび状に食い込んだSiを含むスケールを粗圧延後に生成するFe23などのスケールとともに除去することにより、所謂赤スケールと呼ばれるスケール性欠陥を防止することができる熱間圧延におけるデスケーリング方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果、サイジングプレスを用いた幅圧下によりスケールに圧延方向の亀裂を与え、粗圧延後の特定の時間に噴射圧力が30Mpa以上高圧水を用いてデスケーリングを行うことにより、地鉄にくさび状に食い込んだSi等を含むスケールを粗圧延中に生成するFe23などのスケールとともに除去し、所謂赤スケールと呼ばれるスケール性欠陥を防止することができる熱間圧延におけるデスケーリング方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
【0006】
(1)加熱炉から抽出した鋼片を熱間圧延する際のデスケーリング方法において、0.1 質量%以上の Si が含まれている鋼片を加熱炉から抽出し、サイジングプレスにて幅方向に50mm以上圧下して前記鋼片の表面に圧延方向に波状のしわを生成させ、該しわに沿って縦方向の亀裂を生じさせ一部のスケールを剥離させて除去し、前記サイジングプレスにて幅圧下した鋼片を粗圧延して残存したスケールを扁平化し、前記粗圧延後に、一部残存した、地鉄にくさび状に食い込んだファイアライト(FeO−Fe 2 SiO 4 )の周りにFe 2 3 からなるスケールを取り囲んで成長させ、前記地鉄にくさび状に食い込んだファイアライト(FeO−Fe 2 SiO 4 )と該ファイアライトの周囲を取り囲んだFe 2 3 からなるスケールを、前記粗圧延終了後20秒以上400秒以内に噴射圧力が30Mpa以上の高圧水を用いて除去することを特徴とする熱間圧延におけるデスケーリング方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図1乃至図3を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明が対象とする熱間圧延ラインを示す図である。
図1において、左側から、加熱炉、サイジングプレス、粗圧延機、仕上圧延機の順に配列して熱間圧延ラインが構成されている。
鋼片は加熱炉にて1000〜1300℃の範囲に加熱された後、サイジングプレスにて50mm以上、好ましくは150〜300mm、幅圧下される。
このサイジングプレスによる幅圧下によって、鋼片の圧延方向(縦方向)に亀裂が生じてスケールが除去し易くなり、粗圧延機の入り側に設置された粗デスケ(噴出圧力10〜15Mpa)によりデスケーリングが行われる。
粗圧延機は、鋼片を30〜60mmの厚さまで圧延する。
【0008】
従来は、例えばSi添加鋼(Si≧0.1mass%)では、粗圧延の終了温度を1000℃以下とすることによって、Siを含むスケールの生成を抑制する必要があったが、本発明においてはスケールが除去し易いため、操業上の制約を緩和するという観点から、粗圧延の終了温度は1000℃以上としてもよい。
本発明においては、粗圧延を終了後20秒以上400秒以内に、噴射圧力が30Mpa以上の高圧水を用いてデスケーリングを行う。
図1の仕上圧延機の入り側に設置されている仕上デスケが、本発明に用いる高圧デスケ(噴射圧力30Mpa以上)であり、この仕上デスケによって、地鉄にくさび状に食い込んだファイアライト(FeO−Fe2SiO4)からなるスケールを、粗圧延後に生成したFe23とともに除去することができる。
その後、仕上圧延によって板厚数mmの熱延鋼板が製造される。
なお、図1の▲1▼〜▲5▼は、後述の説明のために付した符号であり、それぞれ、▲1▼加熱炉後、▲2▼サイジングプレス後、▲3▼粗圧延後、▲4▼高圧デスケ前、▲5▼高圧デスケ後を示す。
【0009】
図2は、サイジングプレスを用いた幅圧下によって、鋼片に圧延方向(縦方向)に亀裂が入る様子を示す図である。
このサイジングプレスは、従来から使用されている縦ロール式圧延機ではなく、金型によって幅圧下を行うので、鋼片の端部だけでなく、鋼片の幅方向に均一に幅圧下を行うことができるため、鋼片の全表面にわたって亀裂が生じ、スケールが除去し易くなる。
【0010】
図3は、本発明におけるデスケーリング方法の模式図である。
図3において、▲1▼〜▲5▼の符号は、図1の▲1▼〜▲5▼の場所を示している。
図3▲1▼は、Si添加鋼(Si≧0.1mass%)の場合での加熱炉の出側におけるスケールを示す模式図である。
地鉄の上にFeO−Fe2SiO4、FeO,Fe34,Fe23の順にスケールが積層している。
本発明においては、加熱炉における鋼片の加熱温度は問わないが、通常、鋼片は1000〜1300℃に加熱される。
図3▲2▼は、サイジングプレスを用いて100mm以上幅圧下を行った後のスケールを示す模式図である。
サイジングプレスによる幅方向の圧延により圧縮歪が固体状のスケールと鋼片に加わると鋼片の表面には圧延方向に波状のしわが生成し、このしわに沿って縦方向の亀裂が生じ、一部のスケールは剥がれ落ちる。
剥がれたスケールはサイジングプレス後の通常のスプレー水で除かれる。
なお、スケールが剥がれ易いサイジングプレスによる幅圧下の条件としては、150〜300mmが好ましい。
【0011】
図3▲3▼は、粗圧延機出側のスケールを示す模式図である。
サイジングプレスを用いた幅圧下により亀裂が生じ、さらに粗圧延によって横方向の亀裂が生じて除去し易くなったスケールの大半は、図1に示す粗圧延機の入り側や粗圧延機中に設置されている通常圧力(噴射圧力10〜15Mpa)の粗デスケによって除去されているが、地鉄にくさび状に食い込んだスケールは一部残存している。
なお、図3▲3▼に示すように、くさびの深さは、粗圧延により扁平化されることによって浅くなっている。
図3▲4▼は、仕上圧延機の入り側に設置された高圧デスケ(噴射圧力30Mpa以上)の手前のスケールを示す模式図である。
【0012】
粗圧延の終了から20秒以上保定することによって、くさび状のスケールの周りに粒界酸化物としてFe23からなるスケールが20〜30μmの厚さに成長することによって、地鉄に食い込んでいたくさび状のスケールを取り囲んで均一化させることができるので、スケール全体が除去し易くなる。
そこで、粗圧延の終了から20秒以上400秒以内で噴射圧力30Mp以上の高圧水によってデスケーリングを行うことにより、粗圧延後に生成したFe23とともに、くさび状のファイアライト(FeO−Fe2SiO4)のほとんどを除去することができる。
【0013】
ここに、粗圧延の終了から20秒以上400秒以内とするのは、20秒未満だと、粗圧延後に生成するFe23が厚さ20μm以上まで成長しないからであり、400秒を超えると鋼板の温度が下がり過ぎて仕上圧延ができなくなるからである。
また、高圧水によるデスケーリングの開始時間は、粗圧延終了から50秒超では、粗圧延後に生成するFe23が厚さ50μmに達し、スケール除去に時間がかかるので、粗圧延終了から50以内がさらに好ましい範囲である。
図3▲5▼は、高圧デスケ後のスケールを示す模式図である。
地鉄に食い込んでいたくさび状のスケールのほとんどが除去されており、従来問題となっていた所謂赤スケールと呼ばれるスケール性欠陥を防止することができる。
尚、Si以外の元素(P,Al,Cu,Cr、Mo等)含有鋼で、図3のSi含有スケールのように、P,Al,Cu,Cr、Mo等の含有した地鉄にくさび状に食い込み、はがれにくいスケールが生成するものについても、本発明の効果が得られる。
【0014】
【実施例】
表1は、本発明の熱間圧延におけるデスケーリング方法を実際の熱延鋼板の製造ラインに適用した例を示す。
【表1】
Figure 0003774686
表1において、No.1〜No.3は比較例であって、サイジングプレスを用いた幅圧下は行ったが、No.1とNo.2は粗圧延から仕上デスケまでの時間が20秒未満のため、スケール残存率がN0.1が80%、NO.2が40%と高かった。
【0015】
また、No.3は仕上デスケの噴出圧力が17Mpaと低いため、スケール残存率が50%と高かった。
No.4〜No.7は、本発明例であり、サイジングプレスを用いた幅圧下を行った後、粗圧延終了から仕上デスケまでの時間および仕上デスケの噴出圧力が本発明の範囲であるので、スケール残存率は5%未満となった。
No.8〜No.11は、比較例であり、サイジングプレスを用いた幅圧下を行わなかったので、スケール残存率が30〜90%と高かった。
なお、表1のスケール残存率は、酸洗後の鋼板表面での板幅方向のスケールの線積率を目視にて評価した値である。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、サイジングプレスを用いた幅圧下によりスケールに圧延方向の亀裂を与え、粗圧延後特定の時間に噴射圧力が30Mpa以上高圧水を用いてデスケーリングを行うことにより、地鉄にくさび状に食い込んだSi等を含むスケールを粗圧延中に生成するFe23などのスケールとともに除去し、所謂赤スケールと呼ばれるスケール性欠陥を防止することができる熱間圧延におけるデスケーリング方法を提供することができ、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が対象とする熱間圧延ラインを示す図である。
【図2】サイジングプレスを用いた幅圧下によって、鋼片に圧延方向(縦方向)に亀裂が入る様子を示す図である。
【図3】本発明におけるデスケーリング方法の模式図である。

Claims (1)

  1. 加熱炉から抽出した鋼片を熱間圧延する際のデスケーリング方法において、0.1 質量%以上の Si が含まれている鋼片を加熱炉から抽出し、サイジングプレスにて幅方向に50mm以上圧下して前記鋼片の表面に圧延方向に波状のしわを生成させ、該しわに沿って縦方向の亀裂を生じさせ一部のスケールを剥離させて除去し
    前記サイジングプレスにて幅圧下した鋼片を粗圧延して残存したスケールを扁平化し、
    前記粗圧延後に、一部残存した、地鉄にくさび状に食い込んだファイアライト(FeO−Fe 2 SiO 4 )の周りにFe 2 3 からなるスケールを取り囲んで成長させ、
    前記地鉄にくさび状に食い込んだファイアライト(FeO−Fe 2 SiO 4 )と該ファイアライトの周囲を取り囲んだFe 2 3 からなるスケールを、前記粗圧延終了後20秒以上400秒以内に噴射圧力が30Mpa以上の高圧水を用いて除去することを特徴とする熱間圧延におけるデスケーリング方法。
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