JP2004165255A - 樹脂との密着性に優れた耐熱フィルム基材入りbステージ樹脂組成物シート。 - Google Patents
樹脂との密着性に優れた耐熱フィルム基材入りbステージ樹脂組成物シート。 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】成形後の絶縁層厚みが30μm以下で、ソリ・ネジレが小さく、厚み精度に優れ、且つ吸湿後の耐熱性、弾性率、信頼性に優れた高密度プリント配線板を製造するための接着シートを得る。
【解決手段】耐熱フィルム基材面にBステージ樹脂組成物層を付着させる前にプラズマ処理を行い、耐熱フィルム表面の水接触角を50度以下にしたものを使用する。
【効果】樹脂組成物との密着力が向上し、特に吸湿後の耐熱性が優れ、機械的強度等が高く、ソリ、ネジレ、厚み精度に優れ、且つZ方向の耐マイグレーション性等にも優れた多層プリント配線板を製造することができた。
【解決手段】耐熱フィルム基材面にBステージ樹脂組成物層を付着させる前にプラズマ処理を行い、耐熱フィルム表面の水接触角を50度以下にしたものを使用する。
【効果】樹脂組成物との密着力が向上し、特に吸湿後の耐熱性が優れ、機械的強度等が高く、ソリ、ネジレ、厚み精度に優れ、且つZ方向の耐マイグレーション性等にも優れた多層プリント配線板を製造することができた。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、多層プリント配線板用耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートに関するものであり、このシートを用いることにより、銅接着力、耐熱性、信頼性等に優れた高密度多層プリント配線板を作製可能であり、得られた多層プリント配線板は、高密度の小型プリント配線板として、半導体チップを搭載し、小型、軽量の新規な半導体プラスチックパッケージ用等に主に使用される。
【0002】
【従来の技術】
近年、ますます小型、薄型、軽量化する電子機器において、高密度の多層プリント配線板が使用されるようになってきている。この多層プリント配線板に使用されるBステージ樹脂組成物シートは、ポリエステルフィルム等の離型フィルム或いは金属箔に積層用又はエポキシ樹脂内に多量にゴムを添加した(セミ)アディティブ用Bステージ樹脂組成物層を付着させた接着シート等が知られている( 例えば、特許文献1、2参照。)が、これらは、絶縁層間が薄い場合、Z方向の耐マイグレーション性等の信頼性に劣り、更に電気的特性、耐熱性等にも劣り、高密度プリント配線板として使用するのに限度があった。
【0003】
又、内層板が薄い場合、この両側に基材補強の無い(セミ)アディティブ用接着シートを使用すると、ビルドアップして多層にしたプリント配線板は曲げ強度、引張り強度等の機械的強度、弾性率(剛性)が劣り、反りも発生し易く、アッセンブリ等の工程で不良の原因となっていた(例えば、特許文献3、4参照。)。又、耐熱フィルム基材の無処理の表面に樹脂層を付着させたBステージ樹脂組成物シートは、多層板とした場合に少しでも吸湿した後に加熱処理を行うと膨れを生じていた。
【0004】
【特許文献1】特開平8−231940号公報
【特許文献2】特開2000−17148号公報
【特許文献3】特開平5−267840号公報
【特許文献4】特開平5−86204号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の問題点を解決した、多層プリント配線板の弾性率等の機械的強度が高く、積層成形後の厚み精度、吸湿後の耐熱性等に優れ、信頼性にも優れた高密度多層プリント配線板を製造するための耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートを提供するものである。
【0006】
【発明が解決するための手段】
本発明は、基板上に導体回路と層間樹脂絶縁層とを順次積層し、サブトラクティブ法、(セミ)アディティブ法によって多層プリント配線板を製造するための接着シート、或いは内層板の間及び表層に配置して一体積層成形する一般のガラス布基材のプリプレグと同様に使用して多層板を製造するための接着シートとして使用するものであり、まず耐熱フィルムの表面をプラズマにて処理を行い、その後この基材の少なくとも片面にBステージ樹脂組成物層を形成して得られる耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートを多層プリント配線板用接着シートとして使用する。
【0007】
該耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートの片面には金属箔が付着したものも使用でき、これはビルドアップ用等の接着シートとして好適に使用できる。耐熱フィルムの両面に付着する樹脂組成物は特に限定はないが、目的により適宜選択して使用する。例えば、片面が(セミ)アディティブ用絶縁層で反対面が積層用の一般に公知の樹脂組成物層としたもの、両面が積層用樹脂組成物層のもの等が挙げられる。
【0008】
この耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートは、耐熱フィルム基材が入っているために、特に薄い内層板を使用してビルドアップして得られたプリント配線板は、基材が入っていない従来のBステージ樹脂組成物シート使用のプリント配線板に比べて機械的強度が高く、ソリ・ネジレが小さく、積層時の成形厚みに優れたものが得られ、薄型のサブトラクティブ法或いは(セミ)アディティブ法高密度プリント配線板に適したものが得られる。又、Z方向が耐熱フィルムで遮断されているためにZ方向の絶縁信頼性が高く、耐マイグレーション性に非常に優れたプリント配線板が得られた。
【0009】
耐熱フィルムを使用することで大幅な特性改善が出来るが、耐熱フィルムと樹脂の接着力の更なる改善のため、耐熱フィルムの表面処理の研究を進めた結果、耐熱フィルムの表面をプラズマにて処理を行うことにより、フィルムの表面に微細な凹凸が生じ、耐熱フィルムと樹脂がより強固に接着し、その結果、吸湿耐熱性が大幅に向上することを見い出した。
【0010】
この処理は、通常のプラズマ処理方法が適用でき、生産性も高い。また、プラズマ処理条件により、耐熱フィルムの凹凸の度合いを目的に応じて自由にコントロールできる。さらに、プラズマによる処理は、化学薬液処理よりも微細な凹凸が得られ、接着力が強い。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の耐熱フィルム基材は樹脂組成物を付着する前にプラズマ処理を行う。この耐熱フィルム基材は、種類、厚さには特に制限はなく公知のものが使用できる。具体的には、ポリイミドフィルム、ポリパラバン酸フィルム、液晶ポリエステルフィルム、全芳香族ポリアミドフィルム等が使用されるが、熱膨張率の小さい全芳香族ポリアミドフィルムが好適に使用される。厚さは目的により適宜選択する。ラミネート成形後の絶縁層間の厚みを15〜30μm位に薄くするためには、好適には厚さ4〜12μmの耐熱フィルムを使用する。
【0012】
耐熱フィルムの表面に接着剤樹脂層を形成する前に耐熱フィルム表面をプラズマ処理し、表面を処理すると同時に微細な凹凸を付ける。プラズマ処理は公知のものが使用できるが、好適には減圧プラズマが使用され、処理は高圧プラズマにおいては100W以上、好適には500W以上で、処理時間は特に限定はないが、1分以上、好適には5分以上行う。この条件は使用Wにより適宜選択する。プラズマ処理のガスは一般に酸素を使う。ガスの流す速度でも違うが、処理の判断手段として、フィルム表面の水の接触角が挙げられ、処理後に水接触角が一般には50度以下、好適には25度以下とする。又、プラズマ処理を行って空気中に放置しておくと水接触角が大きくなるが、50度以下、更には25度以下で使用するのが好ましい。
【0013】
空気、光に接触しないように処理後にアルミニウム蒸着フィルムで真空パックしておくか、袋の中に入れて中に酸素吸収剤を入れて保存するのが好ましい。この耐熱フィルム基材の少なくとも片面に公知の熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥してBステージとするか、予め離型フィルムの片面にBステージの樹脂層を形成したシートを樹脂組成物面が耐熱フィルム側を向くように配置して加熱、加圧下にラミネートして一体化し、耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートとする。このシートには、この片面に金属箔を付着したものでも良い。製造方法は必ずしもこの方法に限定されるものではない。
【0014】
本発明で、プラズマ処理された耐熱フィルム基材面に付着させる樹脂組成物は公知のものが使用され得る。この樹脂組成物は、耐熱フィルム基材片面に(セミ)アディティブ用樹脂組成物、その反対面に積層用の樹脂組成物を付着させたもの、両面に(セミ)アディティブ用樹脂組成物を付着させたもの、両面に積層用樹脂組成物を付着させたもの、いずれでも良い。樹脂層の厚さは特に限定はなく、使用に合わせて適宜選択する。積層成形後の絶縁層の厚さを30μm以下とする場合には、例えば耐熱フィルムの厚さが5μmの場合、表側の樹脂層の厚さを5μm、積層側の樹脂層厚さを25μm程度とし、内層板の銅箔厚さ、銅箔残存率にもよるが、積層した後に絶縁層間厚みを30μm以下となるように設定する。
【0015】
本発明の耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートの樹脂組成物層で(セミ)アディティブ法にて回路が形成できる樹脂組成物としては、熱硬化型、光硬化と熱硬化併用型等一般に公知のものが挙げられる。この耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートの樹脂組成物層は、特に限定はなく、一般に公知のものが使用される。この樹脂層には、硬化処理した場合に粗化溶液に可溶性の成分、粗化溶液に難溶性となる樹脂成分が含まれており、可溶性成分が難溶性となる樹脂成分中に均一に分散したものである。ここで、本発明で使用する「可溶性」、「難溶性」の意味は、硬化処理後に同一の粗化溶液で同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の速いものを「可溶性」、遅いものを「難溶性」と表現している。
【0016】
本発明の可溶性樹脂は、一般に公知のものが挙げられる。この樹脂は溶剤に可溶性のもの、液状のものであり、難溶性樹脂中に配合される。これらは特に限定はないが、具体的にはポリブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム、これらのエポキシ化物、マレイン化物、イミド化物、カルボキシル基含有物、イミド化物、(メタ)アクリル化物等、スチレンーブタジエンゴム等公知のものが挙げられる。特に分子内にブタジエン骨格が入ったものが、粗化液への溶解性、電気的特性等の点から好適に使用される。又、無官能のものより官能基を含むものが、後硬化処理で他の未反応の樹脂の官能基と反応して架橋し、特性が向上するので好ましい。
【0017】
本発明の可溶性有機物粉体としては、公知のものが挙げられるが、具体例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、アクリルゴム、ポリスチレン、MBSゴム、ABS等の粉体、これらの多重構造(コアーシェル)ゴム粉体等が挙げられる。これらは1種或いは2種以上が適宜選択して配合される。
【0018】
本発明の可溶性無機粉体としては、特に限定はないが、例えばアルミナ、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物;炭酸カルシウム等のカルシウム化合物類;マグネシア等のマグネシウム化合物類;シリカ、ゼオライト等のシリカ化合物類等が挙げられ、1種或いは2種以上が組み合わせて使用される。
【0019】
本発明の難溶性樹脂としては、熱硬化性樹脂、感光性樹脂等公知のものが1種或いは2種以上組み合わせて使用され、特に限定はないが、具体的には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂、2重結合付加ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシアクリレート、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。更にこれらの公知の臭素化物、リン含有化合物も使用される。この中で、耐マイグレーション性、耐熱性等、吸湿後の耐熱性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂が好ましい。
【0020】
本発明で好適に使用される多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3−又は1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、ビス(4−ジシアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモー4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類等である。
【0021】
これらのほかに特公昭41−1928、同43−18468、同44−4791、同45−11712、同46−41112、同47−26853及び特開昭51−63149等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いられ得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量400〜6,000 のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。これらの臭素付加化合物、液状の樹脂等も使用できる。
【0022】
エポキシ樹脂は室温で液状のもの、固形のものが使用できるが、室温で液状のエポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用可能である。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオールのジグリシジル化物、酸無水物のエポキシ化物、脂環式エポキシ樹脂等が単独或いは2種以上組み合わせて使用される。使用量は、多官能性シアン酸エステル化合物、該シアン酸エステルプレポリマー 100重量部に対し、20〜10,000重量部、好ましくは30〜5,000重量部である。室温で液状とは、室温(25℃)で破砕できないものを言う。これらの液状エポキシ化合物以外に、公知の室温で破砕できる固形の上記エポキシ樹脂、更にはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が難溶性樹脂として単独或いは2種以上組み合わせて使用される。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて上記以外の種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、各種樹脂類、この樹脂類の公知の臭素、燐化合物、公知の無機、有機の充填剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は公知の硬化剤、触媒が適宜配合される。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため、使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用いる。使用量は、熱硬化性樹脂100重量部に対し、0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0025】
本発明の樹脂組成物中に均一分散している可溶性樹脂、有機粉体、無機粉体の配合量は、特に限定はないが、好適には全体の3〜50重量%、更に好適には5〜35重量%を使用する。これらの成分は3成分のうち2成分以上を使用する。又、同一粒径よりは異なる粒径のものを用いることにより、凹凸の形状がより複雑となってアンカー効果が増し、銅メッキ接着力に優れたものが得られる。
【0026】
本発明の各成分を均一に混練する方法は、一般に公知の方法が使用され得る。例えば、各成分を配合後、三本ロールにて、室温或いは加熱下に混練するか、ボールミル、ライカイ機、ビーズミル、ホモミキサー等、一般に公知のものが使用される。また、溶剤を添加して加工法に合う粘度として使用する。
【0027】
本発明の積層用樹脂組成物は特に限定はなく、一般に公知のものが使用できる。具体的には、上記の難溶性樹脂が使用される。耐マイグレーション性、耐熱性、電気特性等の点からは多官能性シアン酸エステル樹脂組成物が好適に使用される。難溶性樹脂は1種或いは2種以上が適宜組み合わせて使用される。又、上記の可溶性の有機、無機粉体も特性に大きく影響しない範囲で添加可能である。更には、上記の各種添加物も目的に応じて添加可能である。
【0028】
耐熱フィルムにBステージ樹脂組成物層を付着させる方法は特に限定はなく、公知の方法が使用できる。例えば、耐熱フィルム上に直接ロールで塗布、乾燥してBステージ化するか、離型フィルム或いは金属箔に塗布、乾燥してBステージ化した後にこれを耐熱フィルムの片面或いは両面に配置し、加熱、加圧下にラミネートして一体化する方法等使用できる。この場合樹脂組成物中には少量の溶剤が残存しても良い。樹脂組成物の厚みは特に限定はないが、一般的には耐熱フィルム上に3〜100μm、好ましくは4〜50μm、更に好適には5〜30μmとする。この厚みは目的とする絶縁層の厚みにより、適宜選択する。耐熱フィルムを使用することによりZ方向の絶縁性に優れ、耐マイグレーション性等の信頼性に優れた多層プリント配線板が作製できる。
【0029】
本発明でサブトラクティブ法で使用する銅箔は特に限定はないが、好適には厚さ2〜18μmの電解銅箔を使用する。(セミ)アディティブ用Bステージ樹脂組成物に付着して使用する表面に凹凸のある金属箔は特に限定はなく、具体的にはアルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。樹脂を付着させる面の凹凸は特に限定はないが、好適には平均粗度Rzが1〜10μm、更に好ましくは2〜7μmである。これは粗化前に凹凸が大きいと、粗化時間が短く、且つ水分の浸透も少ないために、メッキした銅層の加熱による膨れ軽減等が図れる。金属箔の厚みは特に限定はないが、その後にエッチング等して除去するために薄い方が良く、好ましくは9〜20μmを使用する。
【0030】
本発明の多層化の場合、銅張積層板や耐熱フィルム基材補強銅張シート等を用いて導体回路を形成した内層板を使用して、導体に公知の表面処理を施した後、又は両面粗化箔を使用した内層用回路板の表裏に上記耐熱フィルム基材入り離型フィルム或いは金属箔付きBステージ樹脂組成物シートを配置し、公知の方法にて加熱、加圧、好適には真空下に積層成形或いはラミネートして硬化処理を行い、(セミ)アディティブ用樹脂組成物では粗化溶液で粗化できる硬化度とする。金属箔付きの場合は積層又はラミネート後にエッチング等で金属箔を除去する。
【0031】
本発明の多層化する際の硬化処理積層成形条件は、特に限定はないが、酸或いは酸化剤での粗化が適正にできる条件を、使用した樹脂組成によって適宜選択する。一般には温度60〜250℃、圧力2〜50kgf/cm2 、時間は0.5〜3時間である。又、真空下に積層成形するのが好ましい。装置は真空ラミネータプレス、一般の多段真空プレス等、公知のものが使用できる。
【0032】
本発明で得られた金属箔張板の表層の金属或いは離型フィルムを除去後、公知の方法にて樹脂の粗化を酸或いは酸化剤等で行う。使用する酸としては硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、蟻酸等が挙げられ、酸化剤としては過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸、クロム硫酸等が挙げられるが、これに限定されるものではない。この処理前は必要により公知の膨潤液を使用し、処理後は中和液で中和する。この粗化処理で形成する粗化面の平均粗度は、金属箔の凹凸とは別に平均粗度Rz 0.1〜10μm、好適には0.2〜5μmとする。金属箔の凹凸と粗化による凹凸を合わせた粗度は、一般には平均粗度Rzが2〜15 μm、好適にはRz 3〜12 μmとする。
【0033】
その後は、公知のセミアディティブ法、フルアディティブ法等にて無電解メッキ、厚付け無電解メッキ、蒸着、スパッタリング等を行い、必要により電気メッキを行って導体を厚付けする。樹脂組成によっても異なるが、一般には薬液で粗化できる硬化度では、このままプリント配線板にすると耐熱性、信頼性等が劣り、高密度プリント配線板としては使用できない。従って、一般には回路形成前に後硬化する。樹脂組成によって異なるが、一般には温度100〜250℃で30分〜5時間後硬化する。次に公知の方法で回路を形成し、プリント配線板とする。この同一工程を順次繰り返してビルドアップにて多層化する。
【0034】
この耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートは一般の銅張積層板、多層板用のプリプレグとしても使用でき、銅箔を使って積層し、サブトラクティブ法でプリント配線板を製造することも可能であり、公知の方法で使用される。
【0035】
【実施例】
以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、『部』は重量部を表す。
(実施例1)
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンモノマーを400部150℃に溶融させ、撹拌しながら4時間反応させ、平均分子量1,900のプレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンに溶解し、ワニスAとした。これに室温で液状のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名::エピコート828、ジャパンエポキシレジン<株>製)100部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:EXA830LVP、大日本インキ化学工業<株>製)50部、ノボラック型エポキシ樹脂(商品名:DEN438、ダウケミカル<株>製)50部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、ジャパンエポキシレジン<株>製)400部を配合し、熱硬化触媒としてオクチル酸亜鉛0.3部をメチルエチルケトンに溶解して加えた。これに液状のエポキシ化ポリブタジエン樹脂(商品名:E−1000−8.0、日本石油化学<株>製)100部、エポキシ基変性アクリル多層構造粉体(商品名:スタフィロイドIM−203、平均粒子径0.2μm)30部、を加え、良く攪拌混合して均一なワニスBにした。
【0036】
このワニスBを連続して厚さ18μmの銅箔マット面(凹凸3.0〜5.9μm、平均粗度Rz:4.6μm)に塗布、乾燥して銅箔のMax.凸部の先端から5.5μmの高さのBステージ樹脂組成物層(170℃でのゲル化時間48秒)を形成し、乾燥ゾーンから出てきた時点で樹脂側に厚さ20μmの保護ポリプロピレンフィルムを配置し、100℃、4kgf/cmの線圧でラミネートして銅箔付きBステージ樹脂組成物シートCを作製した。
【0037】
又、上記ワニスBにおいて、液状のエポキシ化ポリブタジエン樹脂、エポキシ基変性アクリル多層構造粉体を使用しないワニスDを作製し、このワニスDを厚さ25μmの離型PETフィルムの片面に連続的に塗布、乾燥してゲル化時間67秒、厚さ20μmのBステージ樹脂層を形成し、乾燥ゾーンを出てきた時に樹脂面に厚さ20μmのポリプロピレン保護フィルムを当て、100℃、線圧4kgf/cmでラミネートし、離型フィルム付きBステージ樹脂組成物シートEを作製した。これを厚さ4.5μmの全芳香族ポリアミドフィルムの両面を500Wで7分プラズマ処理して水の接触角を1度としたものの片面に保護フィルムを剥離しながら配置し、もう一方の面には上記銅箔付きBステージ樹脂組成物シートCを、保護フィルムを剥離しながら配置し、90℃、7kgf/cmの線圧で連続的にラミネートして一体化し、耐熱フィルム基材入り銅箔付きBステージ樹脂組成物シートFを作製した。この絶縁層厚さは銅箔凸部先端から30μmであった。
【0038】
一方、内層板として絶縁層厚さ0.2mm、12μm両面銅箔のBTレジン銅張積層板(商品名:CCL−HL830、三菱ガス化学<株>製 )に回路を形成し、黒色酸化銅処理を銅箔に施した板の両面に、上記耐熱フィルム基材入り銅箔付きBステージ樹脂組成物シートFを、離型PETフィルムを剥離して樹脂層が内層板側を向くように配置し、プレス装置に仕込んだ後、室温から170℃まで25分で温度を上げ、圧力は最初から15kgf/cm2とし、真空度は3mmHg以下で170℃にて30分保持した後、冷却して取り出し、4層の多層板Gを得た。この表面の銅箔をエッチング除去後、炭酸ガスレーザー出力10mJで1ショット照射して孔径95μmのブラインドビア孔をあけた。過マンガン酸カリウム系デスミア溶液(日本マクダーミッド<株>)で膨潤、デスミア(溶解)、中和して、表層からの凹凸合計で3.8〜6.0μm(平均粗度Rz:5.1μm)、とした。同時にブラインドビア孔底部に残存している樹脂層を溶解除去した。次に、この粗化表面に無電解銅メッキ層を0.5μm、電解銅メッキを20μm付着させ、加熱炉に入れて100℃から徐々に温度を30分で150℃まで上げ、更に徐々に温度を上げて190℃で60分加熱硬化した。クロスセクションで絶縁層間の厚みを測定したところ、ほぼ25μmであった。これを用いてセミアディティブ法にて銅導体回路を形成し、更に導体回路表面黒色酸化銅処理して同一工程を繰り返し、6層の多層プリント配線板を作製した。この特性を測定した結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)エーテルモノマーを400部を150℃に溶融させ、撹拌しながら4時間反応させ、平均分子量1,900のプレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンに溶解し、ワニスHとした。これに室温で液状のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート828)100部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:EXA830LVP)150部、ノボラック型エポキシ樹脂(商品名:DEN438)150部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ESCN220F、住友化学工業<株>製)200部を配合し、熱硬化触媒としてアセチルアセトン鉄0.3部をメチルエチルケトンに溶解して加えた。これにタルク(平均粒径1.8μm、Max.粒径4.2μm)400部を加え、良く攪拌混合して均一なワニス I にした。
【0040】
このワニス I を連続的に厚さ25μmの表面平滑な離型PETフィルムの片面に塗布、乾燥してゲル化時間60秒、厚さ18μmのBステージ樹脂層を形成し、シートJとした。又ゲル化時間64秒、厚さ5μmのBステージ樹脂層を形成し、シートKとした。それぞれ乾燥ゾーンを出てきた時点で厚さ20μmの保護ポリエチレンフィルムを樹脂面に付着させ、一体化した。厚さ12μmのポリイミドフィルムを500Wで10秒プラズマ処理し、水接触角21度としたものの両面に上記シートJ,Kの保護ポリエチレンフィルムを剥離して配置し、100℃、線圧4kgf/cmでラミネートし、総厚さ35μmの耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートLを作製した。一方、内層板として絶縁層厚さ0.2mm、18μm両面銅箔のBTレジン銅張積層板(商品名:CCL−HL830、三菱ガス化学<株>製 )に銅残率30%の回路を形成し、黒色酸化銅処理を銅箔に施した内層板の両面に、上記耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートLの片面の離型PETフィルムを剥離して樹脂層が内層板側を向くように両面に配置し、100℃、5kgf/cmの線圧で内層板にラミネート接着させた後、表層の離型PETフィルムを剥離し、この上に厚さ3μmの一般の電解銅箔を厚さ35μmの銅キャリアシートに付着させた銅箔(商品名:Super Thin箔、三井金属<株>製)を配置し、110℃・30分+200℃・90分、5kgf/cm2・20分+20kgf/cm2・最後まで、真空度30mmHg以下で2時間積層成形した。この絶縁層間の厚みはほぼ23μmであった。この表面の銅キャリアシートを剥離後、この上から炭酸ガスレーザー出力13mJで1ショット直接照射して孔径100μmのブラインドビア孔をあけた。デスミア処理後、無電解銅メッキを0.5μm、電解銅メッキを10μm付着させ、定法にて回路を形成し、黒色酸化銅処理後に同様に上記耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートLの離型フィルムを剥離して配置し、同様に加工して6層プリント配線板を作製した。評価結果を表2に示す。
【0041】
(実施例3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコ−ト1001)500部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:DEN438)450部、イミダゾール系硬化剤(商品名:2E4MZ、四国化成<株>製)30部、タルク(平均粒径1.8μm、Max.粒径4.2μm)400部を加え、3本ロールにて良く均一分散し、ワニス M とした。このワニス M を連続的に厚さ25μmの表面平滑な離型PETフィルムに塗布、乾燥して樹脂組成物厚さ20μm、ゲル化時間が68秒のBステージ樹脂組成物層シートNを作製した。これを厚さ4.5μmの全芳香族ポリアミドフィルムの両面を900Wで10分プラズマ処理し、水接触角0度とした両面に配置し、連続的に温度100℃、線圧5kgf/cmの加熱ロールにてラミネートし、耐熱フィルム基材入り離型フィルム付きBステージ樹脂組成物シート O を作製した。この絶縁層厚みはほぼ45μmであった。
【0042】
一方、厚さ0.2mm、18μm両面銅箔のエポキシ系銅張積層板(商品名:CCL−EL170、三菱ガス化学<株>製)に銅残率30%の回路を形成し、導体に黒色酸化銅処理した内層板Pを作製後、この両面に上記耐熱フィルム基材入り離型フィルム付きBステージ樹脂組成物シート O の樹脂面が向くように配置し、100℃、5kgf/cmの線圧でラミネートして基板Qを作製した。又内層板Pの片面に同様に付着させ、基板Rとした。この基板Q,Rの離型PETフィルムを剥離し、基板RのシートOが付着していない面に基板Qを配置し、基板Q,Rを組み合わせた両外側に厚さ12μmの一般の電解銅箔を配置し、110℃・30分+180℃・90分、5kgf/cm2・15分+20kgf/cm2・最後まで、真空度30mmHg以下で2時間積層成形して6層板を作製し、その後、定法にてプリント配線板とした。内層間絶縁層厚さは約20μmであった。評価結果を表2に示す。
【0043】
(比較例1)
実施例1で銅箔の凹凸部に付着するBステージの樹脂層の厚さを、凸部先端から30μm付着させて金属箔付きBステージ樹脂組成物シートSを作製し、実施例1において耐熱フィルム基材を使用せず、この金属箔付きBステージ樹脂組成物シートSのみを使用して同様に積層硬化処理成形し、粗化処理を同様に行って、実施例1と同様に表層からの凹凸合計をほぼ同じとし、同様に6層の多層プリント配線板とした。この評価結果を表1に示す。
【0044】
(比較例2)
実施例1において、全芳香族ポリアミドフィルムの表面を無処理で同様に耐熱基材入りBステージ樹脂組成物シートを作製し、同様に6層プリント配線板とした。この場合の水接触各は60度であった。評価結果を表1に示す。
【0045】
(比較例3,4)
実施例2,3でそれぞれ厚さ20μmのガラス織布にそれぞれワニス I、ワニス M を使用して含浸、乾燥してそれぞれゲル化時間76、100秒、プリプレグ厚さ35,45μmのプリプレグT、Uを得た。これを用いて同様に積層成形し、同様に6層プリント配線板とした。この評価結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
<測定方法>
1)耐熱フィルム上の水接触角測定 :耐熱フィルム上に25℃、65%RH下にて水をスポイドで直径1.5mmになるよう垂らし、その接触角を図1のように測定した。
2)銅接着力 :JIS C6481に準じて測定した。
3)吸湿後の半田耐熱性 :6層のプリント配線板をプレッシャクッカー試験処理(PCT:121℃・203kPa・4hrs.)後に260℃の半田中に30sec.浸漬してから異常の有無を観察した。
4)ガラス転移温度 :各ワニスを銅箔上に塗布、乾燥を重ねて厚さ0.8mmとし、その後、この樹脂組成物面に銅箔を置いて各積層硬化条件で硬化させてから、表層の銅箔をエッチングし、DMA法にて測定した。尚、比較例3、4はプリプレグを複数枚使用して積層成形し、厚さをほぼ0.8mmとしたものを使用した。
5)弾性率 :2)で測定したDMAのチャートの25℃での弾性率を示した。
6)ソリ、ネジレ :250x250mmで作製した6層のプリント配線板を用い、定盤上に置き、ソリ、ネジレの最大値を測定した。
7)厚みバラツキ :5)の250x250mmの6層のプリント配線板の積層した1層の厚みのバラツキを厚み測定器で測定し、(最大値−最小値)で表した。
8)Z方向耐マイグレーション性 :各実施例、比較例の6層板の2層目と3層目に10mm角の銅箔を同じ位置に残して100個つなぎ、Z方向の絶縁層間の絶縁抵抗値を85℃・85%RHにて70VDC印加して測定した。
9)X方向耐マイグレーション性 :各実施例、比較例の6層板の2層目と3層目にライン/スペース=50/50μmの櫛形パターンを作製し、これを100個つなぎ、X方向の絶縁層間の絶縁抵抗値を85℃・85%RHにて50VDC印加して測定した。
【0049】
【発明の効果】
耐熱性フィルム基材の表面をプラズマ処理してからBステージ樹脂層を付着して得られるプリント配線板用接着シートは、特に吸湿後の耐熱性に優れ、更に絶縁層間の成形後の厚みを30μm以下に薄くでき、Z方向の電気絶縁性などの信頼性に優れた高密度プリント配線板を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】接触角測定法
【産業上の利用分野】
本発明は、多層プリント配線板用耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートに関するものであり、このシートを用いることにより、銅接着力、耐熱性、信頼性等に優れた高密度多層プリント配線板を作製可能であり、得られた多層プリント配線板は、高密度の小型プリント配線板として、半導体チップを搭載し、小型、軽量の新規な半導体プラスチックパッケージ用等に主に使用される。
【0002】
【従来の技術】
近年、ますます小型、薄型、軽量化する電子機器において、高密度の多層プリント配線板が使用されるようになってきている。この多層プリント配線板に使用されるBステージ樹脂組成物シートは、ポリエステルフィルム等の離型フィルム或いは金属箔に積層用又はエポキシ樹脂内に多量にゴムを添加した(セミ)アディティブ用Bステージ樹脂組成物層を付着させた接着シート等が知られている( 例えば、特許文献1、2参照。)が、これらは、絶縁層間が薄い場合、Z方向の耐マイグレーション性等の信頼性に劣り、更に電気的特性、耐熱性等にも劣り、高密度プリント配線板として使用するのに限度があった。
【0003】
又、内層板が薄い場合、この両側に基材補強の無い(セミ)アディティブ用接着シートを使用すると、ビルドアップして多層にしたプリント配線板は曲げ強度、引張り強度等の機械的強度、弾性率(剛性)が劣り、反りも発生し易く、アッセンブリ等の工程で不良の原因となっていた(例えば、特許文献3、4参照。)。又、耐熱フィルム基材の無処理の表面に樹脂層を付着させたBステージ樹脂組成物シートは、多層板とした場合に少しでも吸湿した後に加熱処理を行うと膨れを生じていた。
【0004】
【特許文献1】特開平8−231940号公報
【特許文献2】特開2000−17148号公報
【特許文献3】特開平5−267840号公報
【特許文献4】特開平5−86204号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の問題点を解決した、多層プリント配線板の弾性率等の機械的強度が高く、積層成形後の厚み精度、吸湿後の耐熱性等に優れ、信頼性にも優れた高密度多層プリント配線板を製造するための耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートを提供するものである。
【0006】
【発明が解決するための手段】
本発明は、基板上に導体回路と層間樹脂絶縁層とを順次積層し、サブトラクティブ法、(セミ)アディティブ法によって多層プリント配線板を製造するための接着シート、或いは内層板の間及び表層に配置して一体積層成形する一般のガラス布基材のプリプレグと同様に使用して多層板を製造するための接着シートとして使用するものであり、まず耐熱フィルムの表面をプラズマにて処理を行い、その後この基材の少なくとも片面にBステージ樹脂組成物層を形成して得られる耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートを多層プリント配線板用接着シートとして使用する。
【0007】
該耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートの片面には金属箔が付着したものも使用でき、これはビルドアップ用等の接着シートとして好適に使用できる。耐熱フィルムの両面に付着する樹脂組成物は特に限定はないが、目的により適宜選択して使用する。例えば、片面が(セミ)アディティブ用絶縁層で反対面が積層用の一般に公知の樹脂組成物層としたもの、両面が積層用樹脂組成物層のもの等が挙げられる。
【0008】
この耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートは、耐熱フィルム基材が入っているために、特に薄い内層板を使用してビルドアップして得られたプリント配線板は、基材が入っていない従来のBステージ樹脂組成物シート使用のプリント配線板に比べて機械的強度が高く、ソリ・ネジレが小さく、積層時の成形厚みに優れたものが得られ、薄型のサブトラクティブ法或いは(セミ)アディティブ法高密度プリント配線板に適したものが得られる。又、Z方向が耐熱フィルムで遮断されているためにZ方向の絶縁信頼性が高く、耐マイグレーション性に非常に優れたプリント配線板が得られた。
【0009】
耐熱フィルムを使用することで大幅な特性改善が出来るが、耐熱フィルムと樹脂の接着力の更なる改善のため、耐熱フィルムの表面処理の研究を進めた結果、耐熱フィルムの表面をプラズマにて処理を行うことにより、フィルムの表面に微細な凹凸が生じ、耐熱フィルムと樹脂がより強固に接着し、その結果、吸湿耐熱性が大幅に向上することを見い出した。
【0010】
この処理は、通常のプラズマ処理方法が適用でき、生産性も高い。また、プラズマ処理条件により、耐熱フィルムの凹凸の度合いを目的に応じて自由にコントロールできる。さらに、プラズマによる処理は、化学薬液処理よりも微細な凹凸が得られ、接着力が強い。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の耐熱フィルム基材は樹脂組成物を付着する前にプラズマ処理を行う。この耐熱フィルム基材は、種類、厚さには特に制限はなく公知のものが使用できる。具体的には、ポリイミドフィルム、ポリパラバン酸フィルム、液晶ポリエステルフィルム、全芳香族ポリアミドフィルム等が使用されるが、熱膨張率の小さい全芳香族ポリアミドフィルムが好適に使用される。厚さは目的により適宜選択する。ラミネート成形後の絶縁層間の厚みを15〜30μm位に薄くするためには、好適には厚さ4〜12μmの耐熱フィルムを使用する。
【0012】
耐熱フィルムの表面に接着剤樹脂層を形成する前に耐熱フィルム表面をプラズマ処理し、表面を処理すると同時に微細な凹凸を付ける。プラズマ処理は公知のものが使用できるが、好適には減圧プラズマが使用され、処理は高圧プラズマにおいては100W以上、好適には500W以上で、処理時間は特に限定はないが、1分以上、好適には5分以上行う。この条件は使用Wにより適宜選択する。プラズマ処理のガスは一般に酸素を使う。ガスの流す速度でも違うが、処理の判断手段として、フィルム表面の水の接触角が挙げられ、処理後に水接触角が一般には50度以下、好適には25度以下とする。又、プラズマ処理を行って空気中に放置しておくと水接触角が大きくなるが、50度以下、更には25度以下で使用するのが好ましい。
【0013】
空気、光に接触しないように処理後にアルミニウム蒸着フィルムで真空パックしておくか、袋の中に入れて中に酸素吸収剤を入れて保存するのが好ましい。この耐熱フィルム基材の少なくとも片面に公知の熱硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥してBステージとするか、予め離型フィルムの片面にBステージの樹脂層を形成したシートを樹脂組成物面が耐熱フィルム側を向くように配置して加熱、加圧下にラミネートして一体化し、耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートとする。このシートには、この片面に金属箔を付着したものでも良い。製造方法は必ずしもこの方法に限定されるものではない。
【0014】
本発明で、プラズマ処理された耐熱フィルム基材面に付着させる樹脂組成物は公知のものが使用され得る。この樹脂組成物は、耐熱フィルム基材片面に(セミ)アディティブ用樹脂組成物、その反対面に積層用の樹脂組成物を付着させたもの、両面に(セミ)アディティブ用樹脂組成物を付着させたもの、両面に積層用樹脂組成物を付着させたもの、いずれでも良い。樹脂層の厚さは特に限定はなく、使用に合わせて適宜選択する。積層成形後の絶縁層の厚さを30μm以下とする場合には、例えば耐熱フィルムの厚さが5μmの場合、表側の樹脂層の厚さを5μm、積層側の樹脂層厚さを25μm程度とし、内層板の銅箔厚さ、銅箔残存率にもよるが、積層した後に絶縁層間厚みを30μm以下となるように設定する。
【0015】
本発明の耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートの樹脂組成物層で(セミ)アディティブ法にて回路が形成できる樹脂組成物としては、熱硬化型、光硬化と熱硬化併用型等一般に公知のものが挙げられる。この耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートの樹脂組成物層は、特に限定はなく、一般に公知のものが使用される。この樹脂層には、硬化処理した場合に粗化溶液に可溶性の成分、粗化溶液に難溶性となる樹脂成分が含まれており、可溶性成分が難溶性となる樹脂成分中に均一に分散したものである。ここで、本発明で使用する「可溶性」、「難溶性」の意味は、硬化処理後に同一の粗化溶液で同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の速いものを「可溶性」、遅いものを「難溶性」と表現している。
【0016】
本発明の可溶性樹脂は、一般に公知のものが挙げられる。この樹脂は溶剤に可溶性のもの、液状のものであり、難溶性樹脂中に配合される。これらは特に限定はないが、具体的にはポリブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム、これらのエポキシ化物、マレイン化物、イミド化物、カルボキシル基含有物、イミド化物、(メタ)アクリル化物等、スチレンーブタジエンゴム等公知のものが挙げられる。特に分子内にブタジエン骨格が入ったものが、粗化液への溶解性、電気的特性等の点から好適に使用される。又、無官能のものより官能基を含むものが、後硬化処理で他の未反応の樹脂の官能基と反応して架橋し、特性が向上するので好ましい。
【0017】
本発明の可溶性有機物粉体としては、公知のものが挙げられるが、具体例としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、アクリルゴム、ポリスチレン、MBSゴム、ABS等の粉体、これらの多重構造(コアーシェル)ゴム粉体等が挙げられる。これらは1種或いは2種以上が適宜選択して配合される。
【0018】
本発明の可溶性無機粉体としては、特に限定はないが、例えばアルミナ、水酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物;炭酸カルシウム等のカルシウム化合物類;マグネシア等のマグネシウム化合物類;シリカ、ゼオライト等のシリカ化合物類等が挙げられ、1種或いは2種以上が組み合わせて使用される。
【0019】
本発明の難溶性樹脂としては、熱硬化性樹脂、感光性樹脂等公知のものが1種或いは2種以上組み合わせて使用され、特に限定はないが、具体的には、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂、2重結合付加ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシアクリレート、不飽和基含有ポリカルボン酸樹脂、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。更にこれらの公知の臭素化物、リン含有化合物も使用される。この中で、耐マイグレーション性、耐熱性等、吸湿後の耐熱性等の点から多官能性シアン酸エステル樹脂が好ましい。
【0020】
本発明で好適に使用される多官能性シアン酸エステル化合物とは、分子内に2個以上のシアナト基を有する化合物である。具体的に例示すると、1,3−又は1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、ビス(4−ジシアナトフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモー4−シアナトフェニル)プロパン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、およびノボラックとハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類等である。
【0021】
これらのほかに特公昭41−1928、同43−18468、同44−4791、同45−11712、同46−41112、同47−26853及び特開昭51−63149等に記載の多官能性シアン酸エステル化合物類も用いられ得る。また、これら多官能性シアン酸エステル化合物のシアナト基の三量化によって形成されるトリアジン環を有する分子量400〜6,000 のプレポリマーが使用される。このプレポリマーは、上記の多官能性シアン酸エステルモノマーを、例えば鉱酸、ルイス酸等の酸類;ナトリウムアルコラート等、第三級アミン類等の塩基;炭酸ナトリウム等の塩類等を触媒として重合させることにより得られる。このプレポリマー中には一部未反応のモノマーも含まれており、モノマーとプレポリマーとの混合物の形態をしており、このような原料は本発明の用途に好適に使用される。一般には可溶な有機溶剤に溶解させて使用する。これらの臭素付加化合物、液状の樹脂等も使用できる。
【0022】
エポキシ樹脂は室温で液状のもの、固形のものが使用できるが、室温で液状のエポキシ樹脂としては、一般に公知のものが使用可能である。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオールのジグリシジル化物、酸無水物のエポキシ化物、脂環式エポキシ樹脂等が単独或いは2種以上組み合わせて使用される。使用量は、多官能性シアン酸エステル化合物、該シアン酸エステルプレポリマー 100重量部に対し、20〜10,000重量部、好ましくは30〜5,000重量部である。室温で液状とは、室温(25℃)で破砕できないものを言う。これらの液状エポキシ化合物以外に、公知の室温で破砕できる固形の上記エポキシ樹脂、更にはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等が難溶性樹脂として単独或いは2種以上組み合わせて使用される。
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、組成物本来の特性が損なわれない範囲で、所望に応じて上記以外の種々の添加物を配合することができる。これらの添加物としては、各種樹脂類、この樹脂類の公知の臭素、燐化合物、公知の無機、有機の充填剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光増感剤、難燃剤、光沢剤、重合禁止剤、チキソ性付与剤等の各種添加剤が、所望に応じて適宜組み合わせて用いられる。必要により、反応基を有する化合物は公知の硬化剤、触媒が適宜配合される。
【0024】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、それ自体は加熱により硬化するが硬化速度が遅く、作業性、経済性等に劣るため、使用した熱硬化性樹脂に対して公知の熱硬化触媒を用いる。使用量は、熱硬化性樹脂100重量部に対し、0.005〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0025】
本発明の樹脂組成物中に均一分散している可溶性樹脂、有機粉体、無機粉体の配合量は、特に限定はないが、好適には全体の3〜50重量%、更に好適には5〜35重量%を使用する。これらの成分は3成分のうち2成分以上を使用する。又、同一粒径よりは異なる粒径のものを用いることにより、凹凸の形状がより複雑となってアンカー効果が増し、銅メッキ接着力に優れたものが得られる。
【0026】
本発明の各成分を均一に混練する方法は、一般に公知の方法が使用され得る。例えば、各成分を配合後、三本ロールにて、室温或いは加熱下に混練するか、ボールミル、ライカイ機、ビーズミル、ホモミキサー等、一般に公知のものが使用される。また、溶剤を添加して加工法に合う粘度として使用する。
【0027】
本発明の積層用樹脂組成物は特に限定はなく、一般に公知のものが使用できる。具体的には、上記の難溶性樹脂が使用される。耐マイグレーション性、耐熱性、電気特性等の点からは多官能性シアン酸エステル樹脂組成物が好適に使用される。難溶性樹脂は1種或いは2種以上が適宜組み合わせて使用される。又、上記の可溶性の有機、無機粉体も特性に大きく影響しない範囲で添加可能である。更には、上記の各種添加物も目的に応じて添加可能である。
【0028】
耐熱フィルムにBステージ樹脂組成物層を付着させる方法は特に限定はなく、公知の方法が使用できる。例えば、耐熱フィルム上に直接ロールで塗布、乾燥してBステージ化するか、離型フィルム或いは金属箔に塗布、乾燥してBステージ化した後にこれを耐熱フィルムの片面或いは両面に配置し、加熱、加圧下にラミネートして一体化する方法等使用できる。この場合樹脂組成物中には少量の溶剤が残存しても良い。樹脂組成物の厚みは特に限定はないが、一般的には耐熱フィルム上に3〜100μm、好ましくは4〜50μm、更に好適には5〜30μmとする。この厚みは目的とする絶縁層の厚みにより、適宜選択する。耐熱フィルムを使用することによりZ方向の絶縁性に優れ、耐マイグレーション性等の信頼性に優れた多層プリント配線板が作製できる。
【0029】
本発明でサブトラクティブ法で使用する銅箔は特に限定はないが、好適には厚さ2〜18μmの電解銅箔を使用する。(セミ)アディティブ用Bステージ樹脂組成物に付着して使用する表面に凹凸のある金属箔は特に限定はなく、具体的にはアルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。樹脂を付着させる面の凹凸は特に限定はないが、好適には平均粗度Rzが1〜10μm、更に好ましくは2〜7μmである。これは粗化前に凹凸が大きいと、粗化時間が短く、且つ水分の浸透も少ないために、メッキした銅層の加熱による膨れ軽減等が図れる。金属箔の厚みは特に限定はないが、その後にエッチング等して除去するために薄い方が良く、好ましくは9〜20μmを使用する。
【0030】
本発明の多層化の場合、銅張積層板や耐熱フィルム基材補強銅張シート等を用いて導体回路を形成した内層板を使用して、導体に公知の表面処理を施した後、又は両面粗化箔を使用した内層用回路板の表裏に上記耐熱フィルム基材入り離型フィルム或いは金属箔付きBステージ樹脂組成物シートを配置し、公知の方法にて加熱、加圧、好適には真空下に積層成形或いはラミネートして硬化処理を行い、(セミ)アディティブ用樹脂組成物では粗化溶液で粗化できる硬化度とする。金属箔付きの場合は積層又はラミネート後にエッチング等で金属箔を除去する。
【0031】
本発明の多層化する際の硬化処理積層成形条件は、特に限定はないが、酸或いは酸化剤での粗化が適正にできる条件を、使用した樹脂組成によって適宜選択する。一般には温度60〜250℃、圧力2〜50kgf/cm2 、時間は0.5〜3時間である。又、真空下に積層成形するのが好ましい。装置は真空ラミネータプレス、一般の多段真空プレス等、公知のものが使用できる。
【0032】
本発明で得られた金属箔張板の表層の金属或いは離型フィルムを除去後、公知の方法にて樹脂の粗化を酸或いは酸化剤等で行う。使用する酸としては硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、蟻酸等が挙げられ、酸化剤としては過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸、クロム硫酸等が挙げられるが、これに限定されるものではない。この処理前は必要により公知の膨潤液を使用し、処理後は中和液で中和する。この粗化処理で形成する粗化面の平均粗度は、金属箔の凹凸とは別に平均粗度Rz 0.1〜10μm、好適には0.2〜5μmとする。金属箔の凹凸と粗化による凹凸を合わせた粗度は、一般には平均粗度Rzが2〜15 μm、好適にはRz 3〜12 μmとする。
【0033】
その後は、公知のセミアディティブ法、フルアディティブ法等にて無電解メッキ、厚付け無電解メッキ、蒸着、スパッタリング等を行い、必要により電気メッキを行って導体を厚付けする。樹脂組成によっても異なるが、一般には薬液で粗化できる硬化度では、このままプリント配線板にすると耐熱性、信頼性等が劣り、高密度プリント配線板としては使用できない。従って、一般には回路形成前に後硬化する。樹脂組成によって異なるが、一般には温度100〜250℃で30分〜5時間後硬化する。次に公知の方法で回路を形成し、プリント配線板とする。この同一工程を順次繰り返してビルドアップにて多層化する。
【0034】
この耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートは一般の銅張積層板、多層板用のプリプレグとしても使用でき、銅箔を使って積層し、サブトラクティブ法でプリント配線板を製造することも可能であり、公知の方法で使用される。
【0035】
【実施例】
以下に実施例、比較例で本発明を具体的に説明する。尚、特に断らない限り、『部』は重量部を表す。
(実施例1)
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンモノマーを400部150℃に溶融させ、撹拌しながら4時間反応させ、平均分子量1,900のプレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンに溶解し、ワニスAとした。これに室温で液状のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名::エピコート828、ジャパンエポキシレジン<株>製)100部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:EXA830LVP、大日本インキ化学工業<株>製)50部、ノボラック型エポキシ樹脂(商品名:DEN438、ダウケミカル<株>製)50部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート1001、ジャパンエポキシレジン<株>製)400部を配合し、熱硬化触媒としてオクチル酸亜鉛0.3部をメチルエチルケトンに溶解して加えた。これに液状のエポキシ化ポリブタジエン樹脂(商品名:E−1000−8.0、日本石油化学<株>製)100部、エポキシ基変性アクリル多層構造粉体(商品名:スタフィロイドIM−203、平均粒子径0.2μm)30部、を加え、良く攪拌混合して均一なワニスBにした。
【0036】
このワニスBを連続して厚さ18μmの銅箔マット面(凹凸3.0〜5.9μm、平均粗度Rz:4.6μm)に塗布、乾燥して銅箔のMax.凸部の先端から5.5μmの高さのBステージ樹脂組成物層(170℃でのゲル化時間48秒)を形成し、乾燥ゾーンから出てきた時点で樹脂側に厚さ20μmの保護ポリプロピレンフィルムを配置し、100℃、4kgf/cmの線圧でラミネートして銅箔付きBステージ樹脂組成物シートCを作製した。
【0037】
又、上記ワニスBにおいて、液状のエポキシ化ポリブタジエン樹脂、エポキシ基変性アクリル多層構造粉体を使用しないワニスDを作製し、このワニスDを厚さ25μmの離型PETフィルムの片面に連続的に塗布、乾燥してゲル化時間67秒、厚さ20μmのBステージ樹脂層を形成し、乾燥ゾーンを出てきた時に樹脂面に厚さ20μmのポリプロピレン保護フィルムを当て、100℃、線圧4kgf/cmでラミネートし、離型フィルム付きBステージ樹脂組成物シートEを作製した。これを厚さ4.5μmの全芳香族ポリアミドフィルムの両面を500Wで7分プラズマ処理して水の接触角を1度としたものの片面に保護フィルムを剥離しながら配置し、もう一方の面には上記銅箔付きBステージ樹脂組成物シートCを、保護フィルムを剥離しながら配置し、90℃、7kgf/cmの線圧で連続的にラミネートして一体化し、耐熱フィルム基材入り銅箔付きBステージ樹脂組成物シートFを作製した。この絶縁層厚さは銅箔凸部先端から30μmであった。
【0038】
一方、内層板として絶縁層厚さ0.2mm、12μm両面銅箔のBTレジン銅張積層板(商品名:CCL−HL830、三菱ガス化学<株>製 )に回路を形成し、黒色酸化銅処理を銅箔に施した板の両面に、上記耐熱フィルム基材入り銅箔付きBステージ樹脂組成物シートFを、離型PETフィルムを剥離して樹脂層が内層板側を向くように配置し、プレス装置に仕込んだ後、室温から170℃まで25分で温度を上げ、圧力は最初から15kgf/cm2とし、真空度は3mmHg以下で170℃にて30分保持した後、冷却して取り出し、4層の多層板Gを得た。この表面の銅箔をエッチング除去後、炭酸ガスレーザー出力10mJで1ショット照射して孔径95μmのブラインドビア孔をあけた。過マンガン酸カリウム系デスミア溶液(日本マクダーミッド<株>)で膨潤、デスミア(溶解)、中和して、表層からの凹凸合計で3.8〜6.0μm(平均粗度Rz:5.1μm)、とした。同時にブラインドビア孔底部に残存している樹脂層を溶解除去した。次に、この粗化表面に無電解銅メッキ層を0.5μm、電解銅メッキを20μm付着させ、加熱炉に入れて100℃から徐々に温度を30分で150℃まで上げ、更に徐々に温度を上げて190℃で60分加熱硬化した。クロスセクションで絶縁層間の厚みを測定したところ、ほぼ25μmであった。これを用いてセミアディティブ法にて銅導体回路を形成し、更に導体回路表面黒色酸化銅処理して同一工程を繰り返し、6層の多層プリント配線板を作製した。この特性を測定した結果を表1に示す。
【0039】
(実施例2)
2,2−ビス(4−シアナトフェニル)エーテルモノマーを400部を150℃に溶融させ、撹拌しながら4時間反応させ、平均分子量1,900のプレポリマーを得た。これをメチルエチルケトンに溶解し、ワニスHとした。これに室温で液状のエポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコート828)100部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(商品名:EXA830LVP)150部、ノボラック型エポキシ樹脂(商品名:DEN438)150部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:ESCN220F、住友化学工業<株>製)200部を配合し、熱硬化触媒としてアセチルアセトン鉄0.3部をメチルエチルケトンに溶解して加えた。これにタルク(平均粒径1.8μm、Max.粒径4.2μm)400部を加え、良く攪拌混合して均一なワニス I にした。
【0040】
このワニス I を連続的に厚さ25μmの表面平滑な離型PETフィルムの片面に塗布、乾燥してゲル化時間60秒、厚さ18μmのBステージ樹脂層を形成し、シートJとした。又ゲル化時間64秒、厚さ5μmのBステージ樹脂層を形成し、シートKとした。それぞれ乾燥ゾーンを出てきた時点で厚さ20μmの保護ポリエチレンフィルムを樹脂面に付着させ、一体化した。厚さ12μmのポリイミドフィルムを500Wで10秒プラズマ処理し、水接触角21度としたものの両面に上記シートJ,Kの保護ポリエチレンフィルムを剥離して配置し、100℃、線圧4kgf/cmでラミネートし、総厚さ35μmの耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートLを作製した。一方、内層板として絶縁層厚さ0.2mm、18μm両面銅箔のBTレジン銅張積層板(商品名:CCL−HL830、三菱ガス化学<株>製 )に銅残率30%の回路を形成し、黒色酸化銅処理を銅箔に施した内層板の両面に、上記耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートLの片面の離型PETフィルムを剥離して樹脂層が内層板側を向くように両面に配置し、100℃、5kgf/cmの線圧で内層板にラミネート接着させた後、表層の離型PETフィルムを剥離し、この上に厚さ3μmの一般の電解銅箔を厚さ35μmの銅キャリアシートに付着させた銅箔(商品名:Super Thin箔、三井金属<株>製)を配置し、110℃・30分+200℃・90分、5kgf/cm2・20分+20kgf/cm2・最後まで、真空度30mmHg以下で2時間積層成形した。この絶縁層間の厚みはほぼ23μmであった。この表面の銅キャリアシートを剥離後、この上から炭酸ガスレーザー出力13mJで1ショット直接照射して孔径100μmのブラインドビア孔をあけた。デスミア処理後、無電解銅メッキを0.5μm、電解銅メッキを10μm付着させ、定法にて回路を形成し、黒色酸化銅処理後に同様に上記耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートLの離型フィルムを剥離して配置し、同様に加工して6層プリント配線板を作製した。評価結果を表2に示す。
【0041】
(実施例3)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:エピコ−ト1001)500部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(商品名:DEN438)450部、イミダゾール系硬化剤(商品名:2E4MZ、四国化成<株>製)30部、タルク(平均粒径1.8μm、Max.粒径4.2μm)400部を加え、3本ロールにて良く均一分散し、ワニス M とした。このワニス M を連続的に厚さ25μmの表面平滑な離型PETフィルムに塗布、乾燥して樹脂組成物厚さ20μm、ゲル化時間が68秒のBステージ樹脂組成物層シートNを作製した。これを厚さ4.5μmの全芳香族ポリアミドフィルムの両面を900Wで10分プラズマ処理し、水接触角0度とした両面に配置し、連続的に温度100℃、線圧5kgf/cmの加熱ロールにてラミネートし、耐熱フィルム基材入り離型フィルム付きBステージ樹脂組成物シート O を作製した。この絶縁層厚みはほぼ45μmであった。
【0042】
一方、厚さ0.2mm、18μm両面銅箔のエポキシ系銅張積層板(商品名:CCL−EL170、三菱ガス化学<株>製)に銅残率30%の回路を形成し、導体に黒色酸化銅処理した内層板Pを作製後、この両面に上記耐熱フィルム基材入り離型フィルム付きBステージ樹脂組成物シート O の樹脂面が向くように配置し、100℃、5kgf/cmの線圧でラミネートして基板Qを作製した。又内層板Pの片面に同様に付着させ、基板Rとした。この基板Q,Rの離型PETフィルムを剥離し、基板RのシートOが付着していない面に基板Qを配置し、基板Q,Rを組み合わせた両外側に厚さ12μmの一般の電解銅箔を配置し、110℃・30分+180℃・90分、5kgf/cm2・15分+20kgf/cm2・最後まで、真空度30mmHg以下で2時間積層成形して6層板を作製し、その後、定法にてプリント配線板とした。内層間絶縁層厚さは約20μmであった。評価結果を表2に示す。
【0043】
(比較例1)
実施例1で銅箔の凹凸部に付着するBステージの樹脂層の厚さを、凸部先端から30μm付着させて金属箔付きBステージ樹脂組成物シートSを作製し、実施例1において耐熱フィルム基材を使用せず、この金属箔付きBステージ樹脂組成物シートSのみを使用して同様に積層硬化処理成形し、粗化処理を同様に行って、実施例1と同様に表層からの凹凸合計をほぼ同じとし、同様に6層の多層プリント配線板とした。この評価結果を表1に示す。
【0044】
(比較例2)
実施例1において、全芳香族ポリアミドフィルムの表面を無処理で同様に耐熱基材入りBステージ樹脂組成物シートを作製し、同様に6層プリント配線板とした。この場合の水接触各は60度であった。評価結果を表1に示す。
【0045】
(比較例3,4)
実施例2,3でそれぞれ厚さ20μmのガラス織布にそれぞれワニス I、ワニス M を使用して含浸、乾燥してそれぞれゲル化時間76、100秒、プリプレグ厚さ35,45μmのプリプレグT、Uを得た。これを用いて同様に積層成形し、同様に6層プリント配線板とした。この評価結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
<測定方法>
1)耐熱フィルム上の水接触角測定 :耐熱フィルム上に25℃、65%RH下にて水をスポイドで直径1.5mmになるよう垂らし、その接触角を図1のように測定した。
2)銅接着力 :JIS C6481に準じて測定した。
3)吸湿後の半田耐熱性 :6層のプリント配線板をプレッシャクッカー試験処理(PCT:121℃・203kPa・4hrs.)後に260℃の半田中に30sec.浸漬してから異常の有無を観察した。
4)ガラス転移温度 :各ワニスを銅箔上に塗布、乾燥を重ねて厚さ0.8mmとし、その後、この樹脂組成物面に銅箔を置いて各積層硬化条件で硬化させてから、表層の銅箔をエッチングし、DMA法にて測定した。尚、比較例3、4はプリプレグを複数枚使用して積層成形し、厚さをほぼ0.8mmとしたものを使用した。
5)弾性率 :2)で測定したDMAのチャートの25℃での弾性率を示した。
6)ソリ、ネジレ :250x250mmで作製した6層のプリント配線板を用い、定盤上に置き、ソリ、ネジレの最大値を測定した。
7)厚みバラツキ :5)の250x250mmの6層のプリント配線板の積層した1層の厚みのバラツキを厚み測定器で測定し、(最大値−最小値)で表した。
8)Z方向耐マイグレーション性 :各実施例、比較例の6層板の2層目と3層目に10mm角の銅箔を同じ位置に残して100個つなぎ、Z方向の絶縁層間の絶縁抵抗値を85℃・85%RHにて70VDC印加して測定した。
9)X方向耐マイグレーション性 :各実施例、比較例の6層板の2層目と3層目にライン/スペース=50/50μmの櫛形パターンを作製し、これを100個つなぎ、X方向の絶縁層間の絶縁抵抗値を85℃・85%RHにて50VDC印加して測定した。
【0049】
【発明の効果】
耐熱性フィルム基材の表面をプラズマ処理してからBステージ樹脂層を付着して得られるプリント配線板用接着シートは、特に吸湿後の耐熱性に優れ、更に絶縁層間の成形後の厚みを30μm以下に薄くでき、Z方向の電気絶縁性などの信頼性に優れた高密度プリント配線板を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】接触角測定法
Claims (5)
- 耐熱フィルム基材に樹脂組成物層を付着して得られる耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シートにおいて、Bステージ樹脂組成物層を付着する前にプラズマ処理を耐熱フィルムに施すことを特徴とする耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シート。
- 該耐熱フイルム基材入りBステージ樹脂組成物シートの片面に金属箔を付着させた請求項1記載の耐熱フィルム基材入り金属箔付きBステージ樹脂組成物シート。
- 該耐熱フィルム基材が全芳香族ポリアミドフィルムであることを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シート。
- 該プラズマ処理が減圧プラズマ処理である請求項1、2又は3記載の耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シート。
- 減圧プラズマ処理における耐熱フィルム表面の水の接触角が50度以下である請求項1、2、3又は4記載の耐熱フィルム基材入りBステージ樹脂組成物シート。
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