JP2004162765A - 揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体 - Google Patents
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Abstract
【課題】低剛性ゴムばね支承体が強風時に揺動することを、防止する機器及び揺動防止機能停止機器並びに揺動防止機器の機能回復機器を外部に併設する必要のない、自己完結型の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を安価に提供する。
【解決手段】低剛性積層ゴム体11内に揺動防止柱内蔵筒孔6を設け、内部に揺動防止柱2を無固定で直立内蔵させ、揺動防止柱2の両端を円盤面端3又は球面端4に形成し、取付鋼板bと取付鋼板a又は柱支持板7に衝合させて上部構造物等を支持することで揺動を自己固定する。
【選択図】 図1
【解決手段】低剛性積層ゴム体11内に揺動防止柱内蔵筒孔6を設け、内部に揺動防止柱2を無固定で直立内蔵させ、揺動防止柱2の両端を円盤面端3又は球面端4に形成し、取付鋼板bと取付鋼板a又は柱支持板7に衝合させて上部構造物等を支持することで揺動を自己固定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、軽荷重構造物等に用いる免震用の低剛性ゴムばね支承体に関し、具体的には低剛性ゴムばね体1内に揺動防止柱内蔵筒孔6を設け揺動防止柱2を無固定で直立内蔵させて上部構造物等を支持することにより揺動することを自己固定し、低剛性ゴムばね体1を用いることで生じる、強風時等に上部構造物等が揺動することを防止する、揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体に関する。
【0002】
【従来の技術】
低剛性ゴムばね支承体としては、同面積の低剛性ゴム板と硬剛板を交互に、或るいは低剛性ゴム板の容積を多くし、また硬剛板を外周や中央部に偏在させて積層してなる低剛性積層ゴムばね支承や、更に剛性の異なるゴムを非積層として単体や複合体でなる低剛性ゴムばね支承があり、なお更に低剛性ゴム内に鋼製コイルバネを埋設または併設したりしてなる低剛性ゴムばね支承等が周知の低剛性ゴムばね支承体として知られている。
【0003】
軽荷重構造物等に用いる低剛性ゴムばね支承体は、ゴム剛性を低剛性にすることで軽荷重構造物等の免震用として利用可能としたものである。しかし、低剛性にしたことで免震性は得られた反面に、強風時等に上部構造物等が揺動する問題点が浮上した。揺動する原因としては上部構造物の荷重の軽重と低剛性ゴムばね体の剛性とが関係するとされている。
【0004】
軽荷重構造物と一括りに言つても、軽荷重構造物の重量は千差万別であり、軽いとされる軽荷重構造物に高剛性設計の低剛性ゴムばね支承体を用いると大地震時に免震効果が充分に得られない恐れがあつたり、重いとされる軽荷重構造物に、低剛性設計の低剛性ゴムばね支承体を用いると強風時に構造物が揺動する恐れがある。
【0005】
荷重量が千差万別の軽荷重構造物の個々に、免震性能が低下せず強風時に構造物が揺動しない最適の水平剛性の低剛性ゴムばね支承体を選定して用いることは至難である。免震性能確保を目的とし、揺動防止の考慮のない低剛性ゴムばね体を用いるに際しては免震不良の懸念もさることながら、上部構造物が揺動する懸念の解決が急がれている。
【0006】
前記の揺動する懸念を解決するために、低剛性ゴムばね支承体に揺動防止機構を組込んだ提案例として、特開平8−42632がある。本例では積層構造体の外側の上下取付鋼板間に支持脚を均等に配設し、支持脚の一端を一方の取付鋼板に固着し、他端はコイルバネで支持した鋼球付自在脚とし、平常時は支持脚が直立して構造物を支持して揺動を防止させ、大地震動時は支持脚が自在となり揺動防止機能を解除する構成である。
【0007】
上述例は、支持脚の取付位置が積層構造体の外側に限定されるため、上下取付鋼板を含む免震構造体全体の平面積が大となると共に、支持脚の他端に設けた鋼球支持コイルバネ力の選定を誤ると揺動する恐れがあり、また精密を要する支持脚費の防錆を含む保守管理が容易でなく、更に高額になると考えられる。
【0008】
他例として、特開2001−123703が提案されている。本例では低剛性ゴムばね支承体含む転がり支承体及び滑り支承体の何れかに、風圧感知手段と油圧シリンダー及び前記で動作するロック機構を併設し、強風時はロック機構が揺動を防止させ、大地震動時にロック機構を解除する構成である。
【0009】
多くの精密装置の併設を要し高価格となり、電気的連係制御構成のため確実動作性の不安と保守管理が容易でないと考えられる。
【0010】
更に他例として、特開2001−107598が提案されている。本例も前記同様の免震支承の何れかに、風圧感知手段と空気圧作動のアンカー及び粒状体入りチャンバーを併設し、強風時は粒状体入りチャンバー内にアンカーを突入させて揺動を防止させ、大地震動時にアンカーを引抜いてロックを解除する構成である。前記同様の不安性等がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低剛性ゴムばね支承体の低剛性が惹起する、強風時等に上部構造物等が揺動することを、防止する機器及び揺動防止機能停止機器並びに揺動防止機能回復機器を外部に併設することを必要とせず、低剛性ゴムばね体1内に揺動防止柱2を無固定で直立内蔵させる単純な機構を構成することで、免震性能を低下させることなく上部構造物等を強固に支持することで揺動を自己固定することが出来き、更に自動的に揺動防止機能停止と揺動防止機能の回復の動作が得られる、動作確実性の高い、所謂自己完結型の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を安価に提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1は、取付鋼板aと取付鋼板bとの間に低剛性ゴムばね体1を接着してなる低剛性ゴムばね支承体に於いて、所定の長さと直径を持たせた強剛性で円柱状体でなる揺動防止柱2の両端を球面端4として設け、揺動防止柱2を単数又は複数の柱保持弾性環5に挿着し、取付鋼板aに定めた所定の位置から単数又は複数の柱保持弾性環5を装着した揺動防止柱2が、滑動容易な間隙を持たせた揺動防止柱内蔵筒孔6を、取付鋼板aと低剛性ゴムばね支承1とを貫通させて開孔し、取付鋼板bの球面端受穴8に一方端の球面端4を衝合するよう揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6内へ挿入し、取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口を所定の皿状に開削して皿状口9とし、揺動防止柱2の他方端の球面端4を取付鋼板aの外面側に突出させ、球面端4に柱支持板7の球面端受穴8を衝合させ、柱支持板7を取付鋼板aの外面に螺子10で螺着してなる構成の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体である。
【0013】
請求項2は、取付鋼板aと取付鋼板bとの間に低剛性ゴムばね体1を接着してなる低剛性ゴムばね支承体に於いて、所定の長さと直径を持たせた強剛性で円柱状体でなる揺動防止柱2の両端を円盤面端3として設け、揺動防止柱2を単数又は複数の柱保持弾性環5に挿着し、取付鋼板aに定めた所定の位置から単数又は複数の柱保持弾性環5を装着した揺動防止柱2が、滑動容易な間隙を持たせた揺動防止柱内蔵筒孔6を、低剛性ゴムばね支承1を貫通させて開孔し、取付鋼板bの内面側に一方端の円盤面端3が衝合するよう揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6内へ挿入し、他方端の円盤面端3を取付鋼板aの内面側に衝合させてなる構成の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体である。
【0014】
請求項1及び2のように構成した揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体が構造物の土台と基礎間に複数個設置された状態に於いて、平常時及び強風時における揺動防止柱2は、間隙少なく設けた揺動防止柱内蔵筒孔6内壁と、挿着された単数又は複数の柱保持弾性環5により揺動防止柱内蔵筒孔6内の中央部位に無固定で保持されて直立し、請求項1においては揺動防止柱2の双方の球面端4を介して取付鋼板bから柱支持板7に、請求項2においては揺動防止柱2の双方の円盤面端3を介して取付鋼板bから取付鋼板aへ上部構造物荷重を伝達する。
【0015】
よつて、低剛性ゴムばね体1は上部荷重を支持せず、低剛性ゴムばね体1の剛性が、上部構造物の荷重に対して不適当な剛性か或るいは適正な剛性かに係わらず、構造物の土台と基礎間に設置された複数個の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の揺動防止柱2が相互に補完して上部構造物を支持することで、上部荷重を用いて揺動防止柱2が揺動を自己固定し、強風時において上部構造物は揺動しない。
【0016】
上下地震動中の揺動防止柱内蔵筒孔6内の無固定の揺動防止柱2は、前記同様に中央部位に保持されて直立し、揺動防止柱内蔵筒孔6の内壁に保護されながら上部構造物の支持を続行し、強靱な揺動防止柱内蔵筒孔6に保護され揺動防止柱内蔵筒孔6外に脱落する恐れはない。
【0017】
相対変位を伴なわない水平地震動時に際しては、低剛性ゴムばね体1は取付鋼板a又は柱支持板7の水平変位に追従して全方向に伸縮変形して免震動作を開始し、揺動防止柱内蔵筒孔6内の無固定の揺動防止柱2は、取付鋼板a又は柱支持板7の球面端受穴8を支点として全方向に追従して尻振り状を呈しつつ上部構造物の支持を続行する。強靱な揺動防止柱内蔵筒孔6に保護され揺動防止柱内蔵筒孔6外に脱落する恐れはない。
【0018】
相対水平変位を伴う大水平地震動時に際しては、揺動防止柱内蔵筒孔6内の無固定の揺動防止柱2は、取付鋼板a又は柱支持板7の球面端受穴8を支点として全方向に追従して尻振り状を呈しつつ、揺動防止柱2の重心が支点外に移動するまでは上部構造物の支持を続行し、重心が支点外に移動すると揺動防止柱2は上部構造物の支持から解放され無負荷状となると同時に、低剛性ゴムばね体1が代つて上部構造物の支持を開始し、重心が支点外にある限り低剛性ゴムばね体1のみが上部構造物を支持しながら伸縮変形して水平変位し免震動作を行う。
【0019】
尚この大相対水平変位中の揺動防止柱2は、取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口を皿状に開削して皿状口9としたため取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口周辺に衝突する恐れはない。
【0020】
大相対水平変位中における揺動防止柱内蔵筒孔6内の無固定の揺動防止柱2の動作は、揺動防止柱内蔵筒孔6が縮状態となる瞬間時は、揺動防止柱2は直立し上部構造物を支持し、伸状態となると不支持状となり、この動作を水平変位中は交互に繰返す。揺動防止柱2は揺動防止柱内蔵筒孔6の激しい伸縮変形に追従して揺動防止柱内蔵筒孔6内を滑動するが、強靱な揺動防止柱内蔵筒孔6に保護され、揺動防止柱内蔵筒孔6外に脱落する恐れはない。
【0021】
大水平地震動終了時の揺動防止柱2は、低剛性ゴムばね体1の原位置復元機能により揺動防止柱内蔵筒孔6で容易に直立し、再び上部構造物を支持する状態に戻り、低剛性ゴムばね体1は上部構造物の支持から解放され、揺動防止柱2は上部構造物の支持を開始し、上部荷重で揺動防止柱2は自己固定し、よつて上部構造物は強風時の揺動を防止される。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1の図aは低剛性ゴムばね支承1が低剛性積層ゴム体11でなり、複数本を用いた揺動防止柱2の両端を球面端4とした揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の縦断面図であり、図1の図bは図aのA−A部の切断面図、図1の図cは図aの水平変位時の縦断面図である。図2の図aは低剛性ゴムばね支承1が低剛性積層ゴム体11でなり、複数本を用いた揺動防止柱2の両端を円盤面端3とした揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の縦断面図であり、図2の図bは図aのB−B部の切断面図、図2の図cは図aの水平変位時の縦断面図である。図中の小黒丸点は低剛性積層ゴム体11のゴム体を示す。
【0023】
図1から図2に於いて、低剛性ゴムばね支承1としての低剛性積層ゴム体11の高さは、座屈をおこさない面積を有した上で、設計水平変位を変位することが出来る高さを有するものとする。
【0024】
揺動防止柱2の所定の長さとは、請求項1では低剛性積層ゴム体11の高さに取付鋼板aの外面に突出させる球面端4の突出長さを加えた長さが揺動防止柱2の長さであり、請求項2では、低剛性積層ゴム体11の高さが両端を円盤面端3とした揺動防止柱2の長さである。
【0025】
上部構造物の荷重を揺動防止柱2に支持させるとき、低剛性積層ゴム体11は無負荷状であるが、必要があれば低剛性積層ゴム体11に圧縮軸力を加えて用いることも出来る。圧縮軸力を加えて用いるときには取付鋼板a、b間に圧縮軸力保持具(図示せず。)を付設して圧縮軸力を固定し、構造物の土台と基礎間に揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を設置した状態のときに固定を解除する。
【0026】
強剛性円柱状体でなる揺動防止柱2の材質は、鋼、鋳物、鋼材と合成樹脂の複合体、その他強剛性金属等、各種の材料で得られる。円柱状体が最適の柱状体であるが、多角形体を用いることも出来る。円柱状体に凸状縦筋や凹状縦筋を入れ支持力を増加してもよい。
【0027】
揺動防止柱2は揺動防止柱内蔵筒孔6内に密封状に収納されるため防錆管理は容易であり、塗装又はメツキ等をした鋼材でなる揺動防止柱2が経済的に適している。
【0028】
揺動防止柱2の所定の直径は、使用本数も関係し、更に構造物の土台と基礎間に設置される揺動防止柱機構付のばね免震支承体の用いる個数も関係する。経済性からも、上部構造物を安定支持できる直径を使用本数から算定して用いる直径を所定の直径とする。
【0029】
取付鋼板aに定めた所定の位置から単数又は複数の揺動防止柱内蔵筒孔6を開孔する、定めた所定の位置からとは、上述の用いる直径と本数の揺動防止柱2が上部構造物を安定支持できる最適の位置が、揺動防止柱内蔵筒孔6を開孔する、定めた所定の位置となる。
【0030】
請求項1における揺動防止柱2の両端の形状の球面端4と請求項2における両端の円盤面端3は、何れも上部構造物を安定支持できる形状である。強いて両端を説明すれば、円盤面端3は強風時の安定支持性がより高く、反面に円盤直径が大き過ぎると相対水平変位時の揺動防止柱2の重心が支点外に移動する直前の支持時に不安定性がある。球面端4は強風時の安定支持性がやや低く、反面に相対水平変位時の揺動防止柱2の重心が支点外に移動する直前の支持に安定性がある。
【0031】
従つて、円盤面端3は直径を細くして使用本数を多くさせて用い、球面端4は直径を太くして使用本数を少なくして用いることにより、それぞれの短所がカバーできる。用いる上部構造物の荷重の軽重等を勘案して適宜に選定して用いる。
【0032】
なお、揺動防止柱2の両端をそれぞれ円盤面端3と球面端4として用いているが、一方端を円盤面端3で他方端を球面端4として相互に組替えて用いることが出来る。
【0033】
揺動防止柱内蔵筒孔6の内径は、揺動防止柱2の直径から定まり、柱保持弾性環5に挿着した揺動防止柱2が容易に滑動出来る内径を用いる。揺動防止柱2と揺動防止柱内蔵筒孔6との間隙の幅が広過ぎるとその分低剛性積層ゴム体11の容積が減少することになる。間隙の幅が即ち柱保持弾性環5の外径となるため、柱保持弾性環5の太さと揺動防止柱2の直径から揺動防止柱内蔵筒孔6の内径を決める。
【0034】
柱保持弾性環5は、ゴム体等の弾性環でなり、環内径を揺動防止柱2よりやや小さくし、単数又は複数を揺動防止柱2の適宜な位置に、弾力で揺動防止柱2に密接させて用いる。柱保持弾性環5は滑動時に揺動防止柱2上を移動するであろうが移動距離は短いと考えられる。不安の場合は揺動防止柱2の適宜な位置に離脱防止の凹状溝を設け柱保持弾性環5を嵌めて用いることも出来る。
【0035】
揺動防止柱2を挿着された柱保持弾性環5の役目は、揺動防止柱内蔵筒孔6内壁に滑動容易に接触して、揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6の中央部に直立させることである。しかし、あまり細すぎると長年月間の滑動に耐えられず、耐えられる太さも必要である。
【0036】
柱保持弾性環5の必要機能は上述の、揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6内の中心部に保持させ、且つ滑動容易とさせることである。揺動防止柱内蔵筒孔6を形成する低剛性積層ゴム体11のゴム体を、柱保持弾性環5と同様の機能が得られるようにに形成させて用い、代用させるることで柱保持弾性環5を設けることを省略することが出来る。但し製作の難易性、経済性の観点から検討して適宜に選定して用いる。
【0037】
揺動防止柱2の両端の球面端4を衝合させて用いる取付鋼板b及び柱支持板7に設ける球面端受穴8の形状は、球面端4と同半径の円形穴又は同半径を僅かに上回る程度の範囲の半径の円形穴が適する。尚、球面端受穴8の下部側に、取付鋼板b及び柱支持板7が揺動防止柱2を介して上部構造物を支持することが出来る強度を有させる板厚を備える必要があり、深い球面端受穴8を設ける必要はあまりないが、深く設けるときは取付鋼板b及び柱支持板7の板厚を増加させる必要が生じる。
【0038】
揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6に挿入し、取付鋼板aの外表面に突出させた球面端4に、柱支持板7に設けた球面端受穴8を衝合させ、柱支持板7を取付鋼板aの外面に螺子10で螺着して揺動防止柱2を内蔵させる。
【0039】
円盤面端3の場合では、取付鋼板b及び取付鋼板aに直接に衝合させて用いる。
【0040】
取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口を皿状に開削して皿状口9とするとき、皿状口9の皿角度を45度以上の適宜な皿角度を用いれば大相対水平変位中の揺動防止柱2は取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口周辺に衝突する恐れはすくない。
【0041】
低剛性積層ゴム体11を貫通させて開孔して揺動防止柱内蔵筒孔6を設けるとき、硬剛板12も貫通させて開孔する場合は、揺動防止柱内蔵筒孔6の内壁に硬剛板12の開孔切口が露出する。露出しても差しつかえはないが、水平変位時に硬剛板12の開孔切口と揺動防止柱2が接触し双方に傷がつく恐れがある。よつて揺動防止柱内蔵筒孔6の内壁面はゴム体面とした方が無難であり、硬剛板12の開孔切口の直径を若干拡げて内壁面をゴム体面として用いてもよい。
【0042】
揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を用いて最終的な免震装置を完成させるには他にダンパー装置(図示せず。)を併設して用いる必要がある。
【0043】
【発明の効果】
以上説明した揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体は、強風時に揺動することを、外部に揺動防止機構を必要とせずに、低剛性積層ゴム体11でなる揺動防止柱内蔵筒孔6内に揺動防止柱2を無固定で直立内蔵させて上部構造物を支持させる単純な構成により、低剛性ゴムばね支承体に上部構造物を支持させず、上部構造物の荷重を用いて自己固定し、よつて強風時に揺動することを防止できる。
【0044】
大水平変位地震時における低剛性ゴムばね支承体の免震動作開始は、低剛性ゴムばね支承体でなる揺動防止柱内蔵筒孔6自身の伸縮変位の挙動により揺動防止柱2の支持解除動作を自動的に行い、更に大水平地震終了時の揺動防止柱2の原位置復帰動作も揺動防止柱内蔵筒孔6自身の伸縮変位の挙動により自動的に得られた。
【0045】
よつて、低剛性ゴムばね支承体は、外部に揺動防止機構や揺動防止機構の解除装置及び原位置復帰装置並びにこれ等の制御機構を別途に併設して用いる必要はない。
【0046】
低剛性積層ゴム体11でなる揺動防止柱内蔵筒孔6内に揺動防止柱2を内蔵させる構成により、保守管理が容易で耐久性のある、コンパクトで動作確実性の高い所謂自己完結型の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体が得られた。
【0047】
強剛性体でなる揺動防止柱2の耐荷重の範囲内であれば、揺動防止柱2は上部構造物の荷重の軽重を問わず用いられ、自己固定して強風に対抗できる。よつて、少機種の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を用いて、荷重量が千差万別の軽荷重構造物の個々に対応できる経済性のある揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を安価に提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1の図aは低剛性ゴムばね支承1が低剛性積層ゴム体11でなり、複数本を用いた揺動防止柱2の両端を球面端4とした揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の縦断面図であり、図1の図bは図aのA−A部の切断面図であり、図1の図cは図aの水平変位時の縦断面図である。
【図2】図2の図aは低剛性ゴムばね支承1が低剛性積層ゴム体11でなり、複数本を用いた揺動防止柱2の両端を円盤面端3とした揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の縦断面図であり、図2の図bは図aのB−B部の切断面図であり、図2の図cは図aの水平変位時の縦断面図である。図中の小黒丸点は低剛性積層ゴム体11のゴム体を示す。
【符号の説明】
a 取付鋼板
b 取付鋼板
1 低剛性ゴムばね体
2 揺動防止柱
3 円盤面端
4 球面端
5 柱保持弾性環
6 揺動防止柱内蔵筒孔
7 柱支持板
8 球面端受穴
9 皿状口
10 螺子
11 低剛性積層ゴム体
12 硬剛板
【発明の属する技術分野】
この発明は、軽荷重構造物等に用いる免震用の低剛性ゴムばね支承体に関し、具体的には低剛性ゴムばね体1内に揺動防止柱内蔵筒孔6を設け揺動防止柱2を無固定で直立内蔵させて上部構造物等を支持することにより揺動することを自己固定し、低剛性ゴムばね体1を用いることで生じる、強風時等に上部構造物等が揺動することを防止する、揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体に関する。
【0002】
【従来の技術】
低剛性ゴムばね支承体としては、同面積の低剛性ゴム板と硬剛板を交互に、或るいは低剛性ゴム板の容積を多くし、また硬剛板を外周や中央部に偏在させて積層してなる低剛性積層ゴムばね支承や、更に剛性の異なるゴムを非積層として単体や複合体でなる低剛性ゴムばね支承があり、なお更に低剛性ゴム内に鋼製コイルバネを埋設または併設したりしてなる低剛性ゴムばね支承等が周知の低剛性ゴムばね支承体として知られている。
【0003】
軽荷重構造物等に用いる低剛性ゴムばね支承体は、ゴム剛性を低剛性にすることで軽荷重構造物等の免震用として利用可能としたものである。しかし、低剛性にしたことで免震性は得られた反面に、強風時等に上部構造物等が揺動する問題点が浮上した。揺動する原因としては上部構造物の荷重の軽重と低剛性ゴムばね体の剛性とが関係するとされている。
【0004】
軽荷重構造物と一括りに言つても、軽荷重構造物の重量は千差万別であり、軽いとされる軽荷重構造物に高剛性設計の低剛性ゴムばね支承体を用いると大地震時に免震効果が充分に得られない恐れがあつたり、重いとされる軽荷重構造物に、低剛性設計の低剛性ゴムばね支承体を用いると強風時に構造物が揺動する恐れがある。
【0005】
荷重量が千差万別の軽荷重構造物の個々に、免震性能が低下せず強風時に構造物が揺動しない最適の水平剛性の低剛性ゴムばね支承体を選定して用いることは至難である。免震性能確保を目的とし、揺動防止の考慮のない低剛性ゴムばね体を用いるに際しては免震不良の懸念もさることながら、上部構造物が揺動する懸念の解決が急がれている。
【0006】
前記の揺動する懸念を解決するために、低剛性ゴムばね支承体に揺動防止機構を組込んだ提案例として、特開平8−42632がある。本例では積層構造体の外側の上下取付鋼板間に支持脚を均等に配設し、支持脚の一端を一方の取付鋼板に固着し、他端はコイルバネで支持した鋼球付自在脚とし、平常時は支持脚が直立して構造物を支持して揺動を防止させ、大地震動時は支持脚が自在となり揺動防止機能を解除する構成である。
【0007】
上述例は、支持脚の取付位置が積層構造体の外側に限定されるため、上下取付鋼板を含む免震構造体全体の平面積が大となると共に、支持脚の他端に設けた鋼球支持コイルバネ力の選定を誤ると揺動する恐れがあり、また精密を要する支持脚費の防錆を含む保守管理が容易でなく、更に高額になると考えられる。
【0008】
他例として、特開2001−123703が提案されている。本例では低剛性ゴムばね支承体含む転がり支承体及び滑り支承体の何れかに、風圧感知手段と油圧シリンダー及び前記で動作するロック機構を併設し、強風時はロック機構が揺動を防止させ、大地震動時にロック機構を解除する構成である。
【0009】
多くの精密装置の併設を要し高価格となり、電気的連係制御構成のため確実動作性の不安と保守管理が容易でないと考えられる。
【0010】
更に他例として、特開2001−107598が提案されている。本例も前記同様の免震支承の何れかに、風圧感知手段と空気圧作動のアンカー及び粒状体入りチャンバーを併設し、強風時は粒状体入りチャンバー内にアンカーを突入させて揺動を防止させ、大地震動時にアンカーを引抜いてロックを解除する構成である。前記同様の不安性等がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低剛性ゴムばね支承体の低剛性が惹起する、強風時等に上部構造物等が揺動することを、防止する機器及び揺動防止機能停止機器並びに揺動防止機能回復機器を外部に併設することを必要とせず、低剛性ゴムばね体1内に揺動防止柱2を無固定で直立内蔵させる単純な機構を構成することで、免震性能を低下させることなく上部構造物等を強固に支持することで揺動を自己固定することが出来き、更に自動的に揺動防止機能停止と揺動防止機能の回復の動作が得られる、動作確実性の高い、所謂自己完結型の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を安価に提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1は、取付鋼板aと取付鋼板bとの間に低剛性ゴムばね体1を接着してなる低剛性ゴムばね支承体に於いて、所定の長さと直径を持たせた強剛性で円柱状体でなる揺動防止柱2の両端を球面端4として設け、揺動防止柱2を単数又は複数の柱保持弾性環5に挿着し、取付鋼板aに定めた所定の位置から単数又は複数の柱保持弾性環5を装着した揺動防止柱2が、滑動容易な間隙を持たせた揺動防止柱内蔵筒孔6を、取付鋼板aと低剛性ゴムばね支承1とを貫通させて開孔し、取付鋼板bの球面端受穴8に一方端の球面端4を衝合するよう揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6内へ挿入し、取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口を所定の皿状に開削して皿状口9とし、揺動防止柱2の他方端の球面端4を取付鋼板aの外面側に突出させ、球面端4に柱支持板7の球面端受穴8を衝合させ、柱支持板7を取付鋼板aの外面に螺子10で螺着してなる構成の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体である。
【0013】
請求項2は、取付鋼板aと取付鋼板bとの間に低剛性ゴムばね体1を接着してなる低剛性ゴムばね支承体に於いて、所定の長さと直径を持たせた強剛性で円柱状体でなる揺動防止柱2の両端を円盤面端3として設け、揺動防止柱2を単数又は複数の柱保持弾性環5に挿着し、取付鋼板aに定めた所定の位置から単数又は複数の柱保持弾性環5を装着した揺動防止柱2が、滑動容易な間隙を持たせた揺動防止柱内蔵筒孔6を、低剛性ゴムばね支承1を貫通させて開孔し、取付鋼板bの内面側に一方端の円盤面端3が衝合するよう揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6内へ挿入し、他方端の円盤面端3を取付鋼板aの内面側に衝合させてなる構成の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体である。
【0014】
請求項1及び2のように構成した揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体が構造物の土台と基礎間に複数個設置された状態に於いて、平常時及び強風時における揺動防止柱2は、間隙少なく設けた揺動防止柱内蔵筒孔6内壁と、挿着された単数又は複数の柱保持弾性環5により揺動防止柱内蔵筒孔6内の中央部位に無固定で保持されて直立し、請求項1においては揺動防止柱2の双方の球面端4を介して取付鋼板bから柱支持板7に、請求項2においては揺動防止柱2の双方の円盤面端3を介して取付鋼板bから取付鋼板aへ上部構造物荷重を伝達する。
【0015】
よつて、低剛性ゴムばね体1は上部荷重を支持せず、低剛性ゴムばね体1の剛性が、上部構造物の荷重に対して不適当な剛性か或るいは適正な剛性かに係わらず、構造物の土台と基礎間に設置された複数個の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の揺動防止柱2が相互に補完して上部構造物を支持することで、上部荷重を用いて揺動防止柱2が揺動を自己固定し、強風時において上部構造物は揺動しない。
【0016】
上下地震動中の揺動防止柱内蔵筒孔6内の無固定の揺動防止柱2は、前記同様に中央部位に保持されて直立し、揺動防止柱内蔵筒孔6の内壁に保護されながら上部構造物の支持を続行し、強靱な揺動防止柱内蔵筒孔6に保護され揺動防止柱内蔵筒孔6外に脱落する恐れはない。
【0017】
相対変位を伴なわない水平地震動時に際しては、低剛性ゴムばね体1は取付鋼板a又は柱支持板7の水平変位に追従して全方向に伸縮変形して免震動作を開始し、揺動防止柱内蔵筒孔6内の無固定の揺動防止柱2は、取付鋼板a又は柱支持板7の球面端受穴8を支点として全方向に追従して尻振り状を呈しつつ上部構造物の支持を続行する。強靱な揺動防止柱内蔵筒孔6に保護され揺動防止柱内蔵筒孔6外に脱落する恐れはない。
【0018】
相対水平変位を伴う大水平地震動時に際しては、揺動防止柱内蔵筒孔6内の無固定の揺動防止柱2は、取付鋼板a又は柱支持板7の球面端受穴8を支点として全方向に追従して尻振り状を呈しつつ、揺動防止柱2の重心が支点外に移動するまでは上部構造物の支持を続行し、重心が支点外に移動すると揺動防止柱2は上部構造物の支持から解放され無負荷状となると同時に、低剛性ゴムばね体1が代つて上部構造物の支持を開始し、重心が支点外にある限り低剛性ゴムばね体1のみが上部構造物を支持しながら伸縮変形して水平変位し免震動作を行う。
【0019】
尚この大相対水平変位中の揺動防止柱2は、取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口を皿状に開削して皿状口9としたため取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口周辺に衝突する恐れはない。
【0020】
大相対水平変位中における揺動防止柱内蔵筒孔6内の無固定の揺動防止柱2の動作は、揺動防止柱内蔵筒孔6が縮状態となる瞬間時は、揺動防止柱2は直立し上部構造物を支持し、伸状態となると不支持状となり、この動作を水平変位中は交互に繰返す。揺動防止柱2は揺動防止柱内蔵筒孔6の激しい伸縮変形に追従して揺動防止柱内蔵筒孔6内を滑動するが、強靱な揺動防止柱内蔵筒孔6に保護され、揺動防止柱内蔵筒孔6外に脱落する恐れはない。
【0021】
大水平地震動終了時の揺動防止柱2は、低剛性ゴムばね体1の原位置復元機能により揺動防止柱内蔵筒孔6で容易に直立し、再び上部構造物を支持する状態に戻り、低剛性ゴムばね体1は上部構造物の支持から解放され、揺動防止柱2は上部構造物の支持を開始し、上部荷重で揺動防止柱2は自己固定し、よつて上部構造物は強風時の揺動を防止される。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1の図aは低剛性ゴムばね支承1が低剛性積層ゴム体11でなり、複数本を用いた揺動防止柱2の両端を球面端4とした揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の縦断面図であり、図1の図bは図aのA−A部の切断面図、図1の図cは図aの水平変位時の縦断面図である。図2の図aは低剛性ゴムばね支承1が低剛性積層ゴム体11でなり、複数本を用いた揺動防止柱2の両端を円盤面端3とした揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の縦断面図であり、図2の図bは図aのB−B部の切断面図、図2の図cは図aの水平変位時の縦断面図である。図中の小黒丸点は低剛性積層ゴム体11のゴム体を示す。
【0023】
図1から図2に於いて、低剛性ゴムばね支承1としての低剛性積層ゴム体11の高さは、座屈をおこさない面積を有した上で、設計水平変位を変位することが出来る高さを有するものとする。
【0024】
揺動防止柱2の所定の長さとは、請求項1では低剛性積層ゴム体11の高さに取付鋼板aの外面に突出させる球面端4の突出長さを加えた長さが揺動防止柱2の長さであり、請求項2では、低剛性積層ゴム体11の高さが両端を円盤面端3とした揺動防止柱2の長さである。
【0025】
上部構造物の荷重を揺動防止柱2に支持させるとき、低剛性積層ゴム体11は無負荷状であるが、必要があれば低剛性積層ゴム体11に圧縮軸力を加えて用いることも出来る。圧縮軸力を加えて用いるときには取付鋼板a、b間に圧縮軸力保持具(図示せず。)を付設して圧縮軸力を固定し、構造物の土台と基礎間に揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を設置した状態のときに固定を解除する。
【0026】
強剛性円柱状体でなる揺動防止柱2の材質は、鋼、鋳物、鋼材と合成樹脂の複合体、その他強剛性金属等、各種の材料で得られる。円柱状体が最適の柱状体であるが、多角形体を用いることも出来る。円柱状体に凸状縦筋や凹状縦筋を入れ支持力を増加してもよい。
【0027】
揺動防止柱2は揺動防止柱内蔵筒孔6内に密封状に収納されるため防錆管理は容易であり、塗装又はメツキ等をした鋼材でなる揺動防止柱2が経済的に適している。
【0028】
揺動防止柱2の所定の直径は、使用本数も関係し、更に構造物の土台と基礎間に設置される揺動防止柱機構付のばね免震支承体の用いる個数も関係する。経済性からも、上部構造物を安定支持できる直径を使用本数から算定して用いる直径を所定の直径とする。
【0029】
取付鋼板aに定めた所定の位置から単数又は複数の揺動防止柱内蔵筒孔6を開孔する、定めた所定の位置からとは、上述の用いる直径と本数の揺動防止柱2が上部構造物を安定支持できる最適の位置が、揺動防止柱内蔵筒孔6を開孔する、定めた所定の位置となる。
【0030】
請求項1における揺動防止柱2の両端の形状の球面端4と請求項2における両端の円盤面端3は、何れも上部構造物を安定支持できる形状である。強いて両端を説明すれば、円盤面端3は強風時の安定支持性がより高く、反面に円盤直径が大き過ぎると相対水平変位時の揺動防止柱2の重心が支点外に移動する直前の支持時に不安定性がある。球面端4は強風時の安定支持性がやや低く、反面に相対水平変位時の揺動防止柱2の重心が支点外に移動する直前の支持に安定性がある。
【0031】
従つて、円盤面端3は直径を細くして使用本数を多くさせて用い、球面端4は直径を太くして使用本数を少なくして用いることにより、それぞれの短所がカバーできる。用いる上部構造物の荷重の軽重等を勘案して適宜に選定して用いる。
【0032】
なお、揺動防止柱2の両端をそれぞれ円盤面端3と球面端4として用いているが、一方端を円盤面端3で他方端を球面端4として相互に組替えて用いることが出来る。
【0033】
揺動防止柱内蔵筒孔6の内径は、揺動防止柱2の直径から定まり、柱保持弾性環5に挿着した揺動防止柱2が容易に滑動出来る内径を用いる。揺動防止柱2と揺動防止柱内蔵筒孔6との間隙の幅が広過ぎるとその分低剛性積層ゴム体11の容積が減少することになる。間隙の幅が即ち柱保持弾性環5の外径となるため、柱保持弾性環5の太さと揺動防止柱2の直径から揺動防止柱内蔵筒孔6の内径を決める。
【0034】
柱保持弾性環5は、ゴム体等の弾性環でなり、環内径を揺動防止柱2よりやや小さくし、単数又は複数を揺動防止柱2の適宜な位置に、弾力で揺動防止柱2に密接させて用いる。柱保持弾性環5は滑動時に揺動防止柱2上を移動するであろうが移動距離は短いと考えられる。不安の場合は揺動防止柱2の適宜な位置に離脱防止の凹状溝を設け柱保持弾性環5を嵌めて用いることも出来る。
【0035】
揺動防止柱2を挿着された柱保持弾性環5の役目は、揺動防止柱内蔵筒孔6内壁に滑動容易に接触して、揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6の中央部に直立させることである。しかし、あまり細すぎると長年月間の滑動に耐えられず、耐えられる太さも必要である。
【0036】
柱保持弾性環5の必要機能は上述の、揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6内の中心部に保持させ、且つ滑動容易とさせることである。揺動防止柱内蔵筒孔6を形成する低剛性積層ゴム体11のゴム体を、柱保持弾性環5と同様の機能が得られるようにに形成させて用い、代用させるることで柱保持弾性環5を設けることを省略することが出来る。但し製作の難易性、経済性の観点から検討して適宜に選定して用いる。
【0037】
揺動防止柱2の両端の球面端4を衝合させて用いる取付鋼板b及び柱支持板7に設ける球面端受穴8の形状は、球面端4と同半径の円形穴又は同半径を僅かに上回る程度の範囲の半径の円形穴が適する。尚、球面端受穴8の下部側に、取付鋼板b及び柱支持板7が揺動防止柱2を介して上部構造物を支持することが出来る強度を有させる板厚を備える必要があり、深い球面端受穴8を設ける必要はあまりないが、深く設けるときは取付鋼板b及び柱支持板7の板厚を増加させる必要が生じる。
【0038】
揺動防止柱2を揺動防止柱内蔵筒孔6に挿入し、取付鋼板aの外表面に突出させた球面端4に、柱支持板7に設けた球面端受穴8を衝合させ、柱支持板7を取付鋼板aの外面に螺子10で螺着して揺動防止柱2を内蔵させる。
【0039】
円盤面端3の場合では、取付鋼板b及び取付鋼板aに直接に衝合させて用いる。
【0040】
取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口を皿状に開削して皿状口9とするとき、皿状口9の皿角度を45度以上の適宜な皿角度を用いれば大相対水平変位中の揺動防止柱2は取付鋼板aの内面側の揺動防止柱内蔵筒孔6口周辺に衝突する恐れはすくない。
【0041】
低剛性積層ゴム体11を貫通させて開孔して揺動防止柱内蔵筒孔6を設けるとき、硬剛板12も貫通させて開孔する場合は、揺動防止柱内蔵筒孔6の内壁に硬剛板12の開孔切口が露出する。露出しても差しつかえはないが、水平変位時に硬剛板12の開孔切口と揺動防止柱2が接触し双方に傷がつく恐れがある。よつて揺動防止柱内蔵筒孔6の内壁面はゴム体面とした方が無難であり、硬剛板12の開孔切口の直径を若干拡げて内壁面をゴム体面として用いてもよい。
【0042】
揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を用いて最終的な免震装置を完成させるには他にダンパー装置(図示せず。)を併設して用いる必要がある。
【0043】
【発明の効果】
以上説明した揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体は、強風時に揺動することを、外部に揺動防止機構を必要とせずに、低剛性積層ゴム体11でなる揺動防止柱内蔵筒孔6内に揺動防止柱2を無固定で直立内蔵させて上部構造物を支持させる単純な構成により、低剛性ゴムばね支承体に上部構造物を支持させず、上部構造物の荷重を用いて自己固定し、よつて強風時に揺動することを防止できる。
【0044】
大水平変位地震時における低剛性ゴムばね支承体の免震動作開始は、低剛性ゴムばね支承体でなる揺動防止柱内蔵筒孔6自身の伸縮変位の挙動により揺動防止柱2の支持解除動作を自動的に行い、更に大水平地震終了時の揺動防止柱2の原位置復帰動作も揺動防止柱内蔵筒孔6自身の伸縮変位の挙動により自動的に得られた。
【0045】
よつて、低剛性ゴムばね支承体は、外部に揺動防止機構や揺動防止機構の解除装置及び原位置復帰装置並びにこれ等の制御機構を別途に併設して用いる必要はない。
【0046】
低剛性積層ゴム体11でなる揺動防止柱内蔵筒孔6内に揺動防止柱2を内蔵させる構成により、保守管理が容易で耐久性のある、コンパクトで動作確実性の高い所謂自己完結型の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体が得られた。
【0047】
強剛性体でなる揺動防止柱2の耐荷重の範囲内であれば、揺動防止柱2は上部構造物の荷重の軽重を問わず用いられ、自己固定して強風に対抗できる。よつて、少機種の揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を用いて、荷重量が千差万別の軽荷重構造物の個々に対応できる経済性のある揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体を安価に提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1の図aは低剛性ゴムばね支承1が低剛性積層ゴム体11でなり、複数本を用いた揺動防止柱2の両端を球面端4とした揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の縦断面図であり、図1の図bは図aのA−A部の切断面図であり、図1の図cは図aの水平変位時の縦断面図である。
【図2】図2の図aは低剛性ゴムばね支承1が低剛性積層ゴム体11でなり、複数本を用いた揺動防止柱2の両端を円盤面端3とした揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体の縦断面図であり、図2の図bは図aのB−B部の切断面図であり、図2の図cは図aの水平変位時の縦断面図である。図中の小黒丸点は低剛性積層ゴム体11のゴム体を示す。
【符号の説明】
a 取付鋼板
b 取付鋼板
1 低剛性ゴムばね体
2 揺動防止柱
3 円盤面端
4 球面端
5 柱保持弾性環
6 揺動防止柱内蔵筒孔
7 柱支持板
8 球面端受穴
9 皿状口
10 螺子
11 低剛性積層ゴム体
12 硬剛板
Claims (2)
- 取付鋼板(a)と取付鋼板(b)との間に低剛性ゴムばね体(1)を接着してなる低剛性ゴムばね支承体に於いて、強剛性で円柱状体でなる揺動防止柱(2)の両端を球面端(4)として設け、揺動防止柱(2)を柱保持弾性環(5)に挿着し、取付鋼板(a)と低剛性ゴムばね支承(1)とを貫通させて揺動防止柱内蔵筒孔(6)を開孔し、取付鋼板(b)の球面端受穴(8)に一方端の球面端(4)を衝合するよう揺動防止柱(2)を揺動防止柱内蔵筒孔(6)内へ挿入し、揺動防止柱(2)の他方端の球面端(4)を取付鋼板(a)の外面側に突出させ、球面端(4)に柱支持板(7)の球面端受穴(8)を衝合させ、柱支持板(7)を取付鋼板(a)の外面に螺着してなることを特徴とする揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体。
- 取付鋼板(a)と取付鋼板(b)との間に低剛性ゴムばね体(1)を接着してなる低剛性ゴムばね支承体に於いて、強剛性で円柱状体でなる揺動防止柱(2)の両端を円盤面端(3)として設け、揺動防止柱(2)を柱保持弾性環(5)に挿着し、低剛性ゴムばね支承(1)を貫通させて揺動防止柱内蔵筒孔(6)を開孔し、取付鋼板(b)の内面側に一方端の円盤面端(3)が衝合するよう揺動防止柱(2)を揺動防止柱内蔵筒孔(6)内へ挿入し、他方端の円盤面端(3)を取付鋼板(a)の内面側に衝合させてなることを特徴とする揺動防止柱機構内蔵の低剛性ゴムばね支承体。
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