JP2004162218A - 生分解性不織布 - Google Patents
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Abstract
【課題】製糸性、開繊性が良好で、スパンボンド法によっても製造することが可能であり、かつ熱接着処理の際の収縮等が少なく、熱処理加工を安定して容易に行うことができ、さらには、ヒートシール性を併せもつ生分解性不織布を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる多葉型複合繊維からなる不織布であり、多葉型複合繊維の繊維横断面は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が複数の葉部を形成しており、ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であり、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点がポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低い生分解性不織布。
【選択図】 図1
【解決手段】ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる多葉型複合繊維からなる不織布であり、多葉型複合繊維の繊維横断面は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が複数の葉部を形成しており、ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であり、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点がポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低い生分解性不織布。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた機械的特性とヒートシール特性とを併せもつ生分解性不織布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、機能性のある不織布の1つに自己接着性繊維からなる不織布がある。この自己接着性繊維からなる不織布は、加熱によって繊維の一部が溶融して繊維相互が接着一体化してなるもので、ヒートシール特性をも有するものである。
【0003】
近年、石油を原料とする合成繊維は、焼却時の発熱量が多いため、自然環境保護の見地から見直しが必要とされ、自然界において生分解する脂肪族ポリエステルからなる繊維が開発されており、環境保護への貢献が期待されている。脂肪族ポリエステルの中でも、ポリ乳酸系重合体は、比較的高い融点を有することから、広い分野に使用されることが期待されている。
【0004】
ポリ乳酸系重合体において、ポリ−L−乳酸もしくはポリ−D−乳酸は、結晶性で融点が180℃程度と高い融点を有しており、また、L−乳酸とD−乳酸とが共重合してなる共重合体は、共重合比を適宜選択することにより融点を変更することができる。例えば、L−乳酸にD−乳酸を1モル%共重合させると融点が170℃、D−乳酸を5モル%共重合させると融点が150℃、D−乳酸を8モル%共重合させると融点が120℃といった具合に、ポリ乳酸の融点のコントロールが可能である。しかし、共重合量を増加させると、それにつれて結晶性が失われて、熱的安定性に劣る傾向となる。
【0005】
ポリ乳酸系重合体を用いて自己接着性不織布を得ようとした際に、芯部にポリ−L−乳酸、鞘部にL−乳酸とD−乳酸との共重合体やポリ乳酸系重合体と他の脂肪族ポリエステルとの共重合体等を配した芯鞘型複合繊維により構成させるものが知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0006】
熱加工安定性を考慮すると、芯部と鞘部の融点差は大きい方が好ましいため、鞘部の共重合体は融点が低いもの(120℃程度の共重合体)を選択することがよいと考える。しかし、D、L−乳酸の共重合体において、融点120℃程度のものは結晶性が低いため、熱接着工程において収縮する、熱ロールに絡みつく等のトラブルが発生しやすく、また、得られる不織布は、耐熱性に劣るものとなる。また、融点が低いと、ガラス転移温度(Tg)もまた低い場合が多く、例えば、このようなものを用いて、スパンボンド法により効率よく不織布を得ようとすると、スパンボンド法はノズル孔より吐出した糸条が牽引細化されるまでの時間が極めて短いため、冷却風による冷却過程で十分に冷え切らずにゴム状の弾性となったり、ブロッキングを起こし、目的とする糸条を得にくいという問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平07−310236号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平07−133511号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製糸性、開繊性が良好で、スパンボンド法によっても製造することが可能であり、かつ熱接着処理の際の収縮等が少なく、熱処理加工を安定して容易に行うことができ、さらには、ヒートシール性を併せもつ生分解性不織布を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討をした結果、特定の重合体を接着成分とすることおよび特定の繊維断面にすることにより、課題を達成することができるという知見を得、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる多葉型複合繊維からなる不織布であり、多葉型複合繊維の繊維横断面は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が複数の葉部を形成しており、ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であり、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点がポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低いことを特徴とする生分解性不織布を要旨とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、ポリ乳酸系重合体と、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる多葉型複合繊維からなる不織布である。
【0013】
本発明に用いるポリ乳酸系重合体としては、ポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体の群から選ばれる重合体、あるいはこれらのブレンド体が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸を共重合体する際のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられるが、これらの中でも特に、ヒドロキシカプロン酸やグリコール酸が分解性能や低コスト化の点から好ましい。
【0014】
本発明においては、上記ポリ乳酸系重合体であって、融点が150℃以上の重合体あるいはこれらのブレンド体を用いる。ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であると、高い結晶性を有しているため、熱的安定性に優れることから、熱処理加工時の収縮が発生しにくく、また、熱処理加工を安定して行うことができ、さらには、得られる不織布は、耐熱性に優れるため実用的である。
【0015】
ポリ乳酸のホモポリマーであるポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸の融点は、約180℃である。ポリ乳酸系重合体として、ホモポリマーでなく、共重合体を用いる場合には、共重合体の融点が150℃以上となるようにモノマー成分の共重合比率を決定する。L−乳酸とD−乳酸との共重合体の場合であると、L−乳酸とD−乳酸との共重合比がモル比で、(L−乳酸)/(D−乳酸)=5/95〜0/100、あるいは(L−乳酸)/(D−乳酸)=95/5〜100/0のものを用いる。共重合比率が、前記範囲を外れると、共重合体の融点が150℃未満となり、結晶性が失われて非晶性が高くなり、本発明の目的を達成し得ないこととなる。
【0016】
本発明に用いる生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとしては、脂肪族ジオールと芳香族カルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られるものが使用できる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸等が挙げられる。これらを1種類以上選択して、重縮合することにより、目的とする生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが得られ、必要に応じて多官能のイソシアネート化合物により架橋することもできる。また、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルには、本発明の目的を達成する範囲で少量のポリ乳酸系重合体をブレンドしてもよい。
【0017】
生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点は、ポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低いことが必要であり、この融点差を満足するように生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルおよびポリ乳酸系重合体を選択する。両者の融点差が50℃未満であると、熱処理加工を安定して容易に行うことができず、また、ヒートシール性に優れた不織布を得ようという本発明の目的を達成することができない。
【0018】
本発明に用いる複合繊維の横断面は、熱接着の際にバインダー成分として機能する生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、高い結晶性を有しており、冷却性、開繊性に優れるポリ乳酸系重合体が複数の葉部を形成してなる多葉型複合断面である。葉部の数は、4〜10個であることが好ましく、4〜6個であることがより好ましい。葉部の数が少ないと、葉の大きさによっては、芯部である生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが繊維表面に露出する割合が大きくなり、溶融紡糸工程における冷却性、開繊性に劣る傾向となる。一方、葉の数が多くなると、葉部と葉部とを個々に独立させることが困難となり、それぞれが接触しすぎてしまい、芯部を完全に覆った、いわゆる芯鞘型の断面形態となり、熱接着工程における圧力によって、芯部の重合体が葉部と葉部の間より溶出しにくく、熱接着性やヒートシール性が劣るものとなる。
【0019】
また、葉部の配設形態は、繊維横断面の外周上に各々等間隔に位置していることが好ましい。葉部が繊維横断面の外周上に各々片寄って位置すると、紡糸工程において紡出糸条がニーリングを発生し、また、接着工程においては、繊維同士の接着点が均一になりにくく、得られる不織布に強力の斑が生じやすくなる。
【0020】
図1〜4に、本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【0021】
図1〜4のいずれも、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部(1)を形成し、ポリ乳酸系重合体が6個の鞘部(2)を形成している多葉型複合繊維(3)である。図1、2は、複合繊維の横断面は、略円形断面であり、図3、4は、葉部が突起状に突出しており、異形度が高い。葉部が突起状に突出していると、異形度が高くなるため、繊維製造工程において、溶融紡糸した繊維は、冷えやすく、また、開繊性が向上するという効果を奏する。さらに、自己接着性が高く冷えにくい生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル同士が接触することを妨げることとなるため、より効果的である。
【0022】
図1、3は、それぞれの葉部が芯部により分割されているが、芯部である生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの繊維表面の露出率は、極めて低い。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの露出度が低いと、繊維製造工程における溶融紡糸した繊維において、自己接着性が高く冷えにくい生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル同士が接触しにくくなり、繊維の冷却性、開繊性が向上する。そして、熱接着工程においては、芯部の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが繊維表面に露出していなくとも、熱接着工程における圧力で、葉部と葉部との間より生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが溶出して、構成繊維同士を接着することができる。これは、ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとが相溶性を有しないため、物理的な力が加えられることにより、葉部と芯部とが分断されやすく、葉部と葉部との間より芯部の重合体が溶出しやすくなるためと考える。また、芯部の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、自己接着性が高いため、相対的に溶出する量が少なくとも、高い接着強力、ヒートシール強力を得ることができると考える。
【0023】
図2、4は、それぞれの葉部が芯部により分割されており、芯部である生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは繊維表面に一部露出している。したがって、図2の形態であれば、接触している繊維同士が生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを介して接着することができ、図4の形態であれば、熱接着工程における圧力で、突出している葉部と葉部との間より生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが溶出して、構成繊維同士を接着することができる。
【0024】
多葉型複合長繊維における生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比は、質量比で、(生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)/(ポリ乳酸系重合体)=3/1〜1/1であることが好ましい。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの複合比が3/1より大きくなると、横断面における露出度が大きくなる傾向にあり、また、横断面形状が不安定となり、繊維製造工程において紡出糸条の冷却性や開繊性に劣るものとなる。一方、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの複合比が1/1より小さくなると、得られた不織布の接着性・ヒートシール性には劣る傾向となる。従って、本発明においては、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比を、質量比で、(生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)/(ポリ乳酸系重合体)=2/1〜1/1の範囲とすることがより好ましい。
【0025】
ポリ乳酸系重合体のメルトフローレート(以下、MFRと略記する。)は、15〜80g/10分であることが好ましく、さらには30〜75g/10分であることが好ましい。MFRが15g/10分未満であると、粘性が高すぎるため、繊維の横断面における葉部の突出度合いが高く異型度の大きいものが得られるが、繊維製造工程において、溶融時のスクリューへの負担が大きくなる。一方、MFRが80g/10分を超えると、粘度が低すぎて、個々の葉部の形状が明確とならず、いわゆる、芯部を覆った芯鞘型形状となりやすく、本発明の目的が達成しにくくなる。
【0026】
生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのMFRは、30〜80g/10分であることが好ましい。MFRが30g/10分未満であると、繊維製造工程において良好に多葉複合断面を得にくくなる。一方、MFRが80g/10分を超えると、粘度が低すぎて、多葉断面形状とすることが困難となり、紡糸工程において糸切れが多発しやすく操業性を損なう傾向となる。
【0027】
なお、開繊性、冷却性を向上させるために、横断面において葉部を突出させたい場合は、ポリ乳酸系重合体のMFRよりも生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのMFRの方が大きいものを採用する。すなわち、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルよりもポリ乳酸系重合体の粘度を高いものを採用することにより、安定した多葉断面形状の繊維を得ることができる。
【0028】
なお、本発明において、ポリ乳酸系重合体および生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのMFRは、ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて、温度210℃で測定した値とする。
【0029】
本発明における多葉型複合繊維の単糸繊度は、1.6〜11デシテックスであることが好ましい。単糸繊度が1.6デシテックス未満となると、紡糸口金が複雑化するため製糸工程における糸切れが増大し、生産量が低下したり、繊維横断面形状が不安定となりやすい。一方、単糸繊度が11デシテックスを超えると、紡出糸条の冷却生に劣る傾向となる。これらの理由により、単糸繊度は、2〜8デシテックスであることがより好ましい。
【0030】
なお、芯部を形成する生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの単糸繊度は1〜4デシテックスであることが好ましい。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの単糸繊度が1デシテックス未満となると、得られる不織布の接着性・ヒートシール性に劣る傾向となり、単糸繊度が4デシテックスを超えると製糸性に劣るものとなる。
【0031】
本発明における多葉型複合繊維の繊維形態は、ショートカットファイバーやステープルファイバー等の繊維端を有する短繊維であっても、エンドレスである長繊維であってもよい。本発明は、繊維の製造とウエブの製造を1工程で行うことができるため、効率がよいことから、多葉型複合繊維が長繊維であって、スパンボンド法により得られるスパンボンド不織布であることが好ましい。
【0032】
本発明の生分解性長繊維からなる不織布の目付は、不織布を使用する用途によって適宜選択すればよく、特に限定しないが、一般に10〜300g/m2の範囲が好ましく、より好ましくは15〜200g/m2である。目付が10g/m2未満では、地合および機械的強力に劣り実用的ではなく、逆に、目付が300g/m2を超えるとコスト面で不利である。
【0033】
本発明の不織布の形態としては、従来公知の方法によって一体化してなるものであればよい。すなわち、構成繊維同士が熱処理(熱風処理、熱ロール装置による圧着処理、熱エンボス装置による圧着処理等)により接着することによって一体化してなるもの、構成繊維同士が機械的に交絡することにより一体化してなるもの等が挙げられる。また、本発明の効果をより奏するためには、部分的熱圧着部を有することにより一体化した不織布であることが好ましい。この不織布によれば、部分的熱圧着部における接着性が向上し、機械的強力が向上するため好ましい。
【0034】
次に、本発明の生分解性不織布の好ましい製造方法について説明する。本発明における生分解性不織布は、スパンボンド法によって効率よく製造することができる。
【0035】
まず、ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを用意する。用意したそれぞれの重合体を個別に溶融計量し、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が葉部を形成する多葉型複合紡糸口金を介して、溶融紡糸し、前記紡糸口金より紡出した紡出糸条を従来公知の横吹付や環状吹付等の冷却装置を用いて冷却せしめた後、吸引装置を用いて牽引細化して引き取る。
【0036】
牽引速度は、3000〜6000m/分と設定することが好ましく、さらには4000〜6000m/分であることが好ましい。牽引速度が3000m/分未満であると、糸条において、十分に分子配向が促進されず、得られる不織布の寸法安定性が劣るものとなる。一方、牽引速度が高すぎると紡糸安定性に劣る。
【0037】
牽引細化した複合長繊維は、公知の開繊器具にて開繊した後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に開繊堆積させて不織ウエブを形成する。その後、この不織ウエブに熱エンボス装置に通して部分的熱圧着部を形成させて長繊維不織布とする。
【0038】
熱エンボス装置におけるロールの設定温度は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが溶融または軟化する温度に設定すればよく、処理時間や線圧等に応じて適宜選択する。具体的には、ロールの表面温度は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点よりも10〜50℃低い温度に設定することが好ましい。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点よりも50℃を超える低い温度に設定すると、分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが十分に溶融または軟化しないため、接着性に劣り、長繊維不織布に十分な機械的性能を付与することができず、また、毛羽立ちやすいものとなる。一方、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点よりも10℃低い温度よりも高い温度に設定すると、ロールに溶融した重合体が固着し、操業性を著しく損なうことになる。
【0039】
本発明の生分解性不織布を構成する多葉型複合繊維において、芯部の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが、葉部であるポリ乳酸系重合体を分断する形で複合しているため、また、両重合体の相溶性が良好でないため、不織布の製造工程において、ロールの巻き取りや、ロールの圧着等による物理的な力が加わった際に、一部の葉部が、分割(割繊)されて、割繊された繊維が生成する場合があるが、このような一部割繊された繊維を含むものも本発明の範囲である。
【0040】
【実施例】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は以下の方法により実施した。
【0041】
(1) 融点(℃):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、DSC−2型)を用いて、試料質量を5mg、昇温速度を10℃/分で測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
【0042】
(2) 冷却性:紡出糸条を目視して下記の3段階にて評価した。
○:密着糸が認められなかった。
△:密着糸がわずかであるが認められた。
×:大部分が密着し、開繊不可能であった。
【0043】
(3) 開繊性:開繊器具より吐出した紡出糸条にて形成された不織ウエッブを目視にて下記の3段階にて評価した。
○:構成繊維の大部分が分繊され、密着糸及び収束糸が認められなかった。
△:密着糸及び収束糸がわずかであるが認められた。
×:構成繊維の大部分が密着し、開繊性が不良であった。
【0044】
(4) 目付(g/m2):標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、平衡水分にした後、各試料片の重量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算し、目付(g/m2)とした。
【0045】
(5) ヒートシール強力(N):試料幅10cm、試料長5cmを用意し、ヒートシール機のシール幅を1cmとし、ヒートシール圧力9.8N/cm2、ヒートシール時間1秒、ヒートシール温度120℃でヒートシール加工する。この加工されたシートを幅3cmに裁断し、これを10点作製する。各試料毎に、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、つかみ間隔5cm、引張速度20cm/分で伸張し、T字剥離強力を測定する。得られたT字剥離時の荷重の最大値と最小値をそれぞれ読みとり、その平均値を求め、試料10点測定した平均値をヒートシール強力とした。
【0046】
(6) 引張強力(N/5cm幅):試料長20cm、試料幅5cmの試料片各10点を作成し、各試料片につき不織布の経(MD)および緯(CD)方向について、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分で伸張し、得られた切断時荷重値(N/5cm幅)の平均値を目付で除した。
【0047】
(7) 圧縮剛軟度(N):試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片5点を作成し、各試料をに横方向に曲げて円筒状物とし、各々その端部を接合したものを圧縮剛軟度測定用試料とした。次いで、各測定試料にその軸方向について、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、圧縮速度5cm/分で圧縮し、得られた最大荷重値(N)の平均値を圧縮剛軟度(N)とした。なお、この圧縮剛軟度とは値が小さいほど柔軟性が優れていることを意味するものである。
【0048】
(8) 生分解性:約58℃に維持された熟成コンポスト中に不織布を埋設し、3ヶ月後に取り出し、不織布がその形態を保持していない場合、あるいは、その形態を保持していも引張強力が埋設前の強力初期値に対して50%以下に低下している場合に、生分解性が良好であると評価し○で示した。これに対し、強力が埋設前の強力初期値に対して50%を超える場合に生分解性能が不良であると評価し×で示した。
【0049】
実施例1
ポリ乳酸系重合体として、融点168℃、MFR70g/分、L−乳酸/D−乳酸(共重合比)=98.6/1.4モル%のL−乳酸/D−乳酸共重合体を用意した。一方、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとして、融点110℃、MFR50g/10分のポリブチレンサクシネートテレフタレート重合体(イーストマンケミカル社製 商品名:イースターバイオGP)を用意した。
【0050】
次いで、それぞれの重合体にタルクを重合体中に0.5質量%となるように含有させ、次いで、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比が、質量比で(生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)/(ポリ乳酸系重合体)=1/1となるように、個別に計量した後、それぞれを個別のエクストルーダ型溶融押し出し機を用いて温度210℃で溶融し、芯部と6つの葉部を有する繊維横断面となる紡糸口金を用いて、生分解性芳香族−脂肪族ポリエステルを芯部に、ポリ乳酸系重合体を葉部となるように単孔吐出量1.38g/分の条件下で溶融紡糸した。
【0051】
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度4500m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。なお、堆積させた複合長繊維の単糸繊度は、3.0デシテックスであった。
【0052】
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付50g/m2の生分解性不織布を得た。得られた不織布を構成する複合繊維の断面形状は、図1に示すようなものであり、繊維断面は略円形であった。なお、熱処理条件としては、両ロールの表面温度を90℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mm2の円形の彫刻模様で、圧接点密度が20点/cm2、圧接面積率が15%のものを用いた。
【0053】
実施例2
実施例1において、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比(質量比)を2/1としたこと以外は、実施例1と同様にして生分解性不織布を得た。得られた不織布を構成する複合繊維の断面形状は、図2に示すようなものであり、繊維断面は略円形であり、芯部が一部露出しているものであった。
【0054】
実施例3
ポリ乳酸系重合体として、融点168℃、MFR20g/分のL−乳酸/D−乳酸(共重合比)=98.6/1.4モル%のL−乳酸/D−乳酸共重合体を用意したこと、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比(質量比)を1/1としたこと以外は、実施例1と同様にして生分解性不織布を得た。得られた不織布を構成する複合繊維の断面形状は、図3に示すように、葉部は突起状に突出していた。
【0055】
実施例1〜3で得られた不織布の物性等を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜3は、いずれも製糸性、開繊性は良好で、熱圧着において、収縮が発生したり、エンボスロールに融着することがなく、良好に繊維同士を接着し、機械的強力に優れたものであった。また、優れたヒートシール性を示した。また、コンポスト中では3ヶ月後には、不織布の形態が保持していない程度に分解し、環境に対して優しく、環境汚染の恐れはないものであった。
【0058】
【作用および発明の効果】
本発明の不織布は、多葉型複合繊維からなる不織布であり、複合繊維の繊維横断面において、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを芯部に配し、ポリ乳酸系重合体を複数の葉部として配してなる。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、ガラス転移温度が低く、冷却性に劣るが、自己接着性、粘着性に優れる。したがって、それ単独では、溶融紡糸しにくく、繊維同士が密着しやすい。一方、本発明で用いるポリ乳酸系重合体は、結晶性が高く、溶融紡糸の際に糸条の冷却性や開繊性などの製糸性に優れる。このような性質を有する2種の重合体を、本発明のごとき多葉型複合断面形状となるように配することにより、すなわち、冷却性に劣るが自己接着性に優れた生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを繊維の中心部(芯部)に配して、その周りを、冷却性、開繊性に優れるポリ乳酸系重合体からなる複数の葉部により囲わせた形態とすることにより、溶融紡糸に際しては、上記の性能を有するポリ乳酸系重合体が、繊維表面を占めているため、繊維同士が密着することなく、良好に冷却され、製糸性、開繊性に優れ、一方、熱圧着工程、ヒートシール工程においては、芯部の優れた接着性を有する生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを葉部と葉部の間より溶出させて、優れた接着性、ヒートシール性を奏することができ、優れた機械的強力、ヒートシール強力を有する不織布を得ることができる。
【0059】
さらに、ポリ乳酸系重合体の融点は、150℃以上の結晶性が高いものを採用しているため、熱的安定性を有し、製糸性、開繊性がより良好で、また、ヒートシール加工時に熱の影響により収縮等が発生することがなく、加工性に優れた不織布を得ることができる。
【0060】
また、バインダー成分となる生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、ポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低い融点を有するものを採用しているため、両者の融点差が大きいこと、およびこの生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが有する自己接着性という性質をも併せて、熱加工条件に細心の注意を払わずとも、ヒートシール加工を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1:芯部
2:葉部
3:多葉型複合繊維
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた機械的特性とヒートシール特性とを併せもつ生分解性不織布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、機能性のある不織布の1つに自己接着性繊維からなる不織布がある。この自己接着性繊維からなる不織布は、加熱によって繊維の一部が溶融して繊維相互が接着一体化してなるもので、ヒートシール特性をも有するものである。
【0003】
近年、石油を原料とする合成繊維は、焼却時の発熱量が多いため、自然環境保護の見地から見直しが必要とされ、自然界において生分解する脂肪族ポリエステルからなる繊維が開発されており、環境保護への貢献が期待されている。脂肪族ポリエステルの中でも、ポリ乳酸系重合体は、比較的高い融点を有することから、広い分野に使用されることが期待されている。
【0004】
ポリ乳酸系重合体において、ポリ−L−乳酸もしくはポリ−D−乳酸は、結晶性で融点が180℃程度と高い融点を有しており、また、L−乳酸とD−乳酸とが共重合してなる共重合体は、共重合比を適宜選択することにより融点を変更することができる。例えば、L−乳酸にD−乳酸を1モル%共重合させると融点が170℃、D−乳酸を5モル%共重合させると融点が150℃、D−乳酸を8モル%共重合させると融点が120℃といった具合に、ポリ乳酸の融点のコントロールが可能である。しかし、共重合量を増加させると、それにつれて結晶性が失われて、熱的安定性に劣る傾向となる。
【0005】
ポリ乳酸系重合体を用いて自己接着性不織布を得ようとした際に、芯部にポリ−L−乳酸、鞘部にL−乳酸とD−乳酸との共重合体やポリ乳酸系重合体と他の脂肪族ポリエステルとの共重合体等を配した芯鞘型複合繊維により構成させるものが知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0006】
熱加工安定性を考慮すると、芯部と鞘部の融点差は大きい方が好ましいため、鞘部の共重合体は融点が低いもの(120℃程度の共重合体)を選択することがよいと考える。しかし、D、L−乳酸の共重合体において、融点120℃程度のものは結晶性が低いため、熱接着工程において収縮する、熱ロールに絡みつく等のトラブルが発生しやすく、また、得られる不織布は、耐熱性に劣るものとなる。また、融点が低いと、ガラス転移温度(Tg)もまた低い場合が多く、例えば、このようなものを用いて、スパンボンド法により効率よく不織布を得ようとすると、スパンボンド法はノズル孔より吐出した糸条が牽引細化されるまでの時間が極めて短いため、冷却風による冷却過程で十分に冷え切らずにゴム状の弾性となったり、ブロッキングを起こし、目的とする糸条を得にくいという問題がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平07−310236号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平07−133511号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製糸性、開繊性が良好で、スパンボンド法によっても製造することが可能であり、かつ熱接着処理の際の収縮等が少なく、熱処理加工を安定して容易に行うことができ、さらには、ヒートシール性を併せもつ生分解性不織布を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討をした結果、特定の重合体を接着成分とすることおよび特定の繊維断面にすることにより、課題を達成することができるという知見を得、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる多葉型複合繊維からなる不織布であり、多葉型複合繊維の繊維横断面は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が複数の葉部を形成しており、ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であり、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点がポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低いことを特徴とする生分解性不織布を要旨とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、ポリ乳酸系重合体と、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる多葉型複合繊維からなる不織布である。
【0013】
本発明に用いるポリ乳酸系重合体としては、ポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸、D−乳酸とL−乳酸との共重合体、D−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D−乳酸とL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体の群から選ばれる重合体、あるいはこれらのブレンド体が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸を共重合体する際のヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸、ヒドロキシオクタン酸等が挙げられるが、これらの中でも特に、ヒドロキシカプロン酸やグリコール酸が分解性能や低コスト化の点から好ましい。
【0014】
本発明においては、上記ポリ乳酸系重合体であって、融点が150℃以上の重合体あるいはこれらのブレンド体を用いる。ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であると、高い結晶性を有しているため、熱的安定性に優れることから、熱処理加工時の収縮が発生しにくく、また、熱処理加工を安定して行うことができ、さらには、得られる不織布は、耐熱性に優れるため実用的である。
【0015】
ポリ乳酸のホモポリマーであるポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸の融点は、約180℃である。ポリ乳酸系重合体として、ホモポリマーでなく、共重合体を用いる場合には、共重合体の融点が150℃以上となるようにモノマー成分の共重合比率を決定する。L−乳酸とD−乳酸との共重合体の場合であると、L−乳酸とD−乳酸との共重合比がモル比で、(L−乳酸)/(D−乳酸)=5/95〜0/100、あるいは(L−乳酸)/(D−乳酸)=95/5〜100/0のものを用いる。共重合比率が、前記範囲を外れると、共重合体の融点が150℃未満となり、結晶性が失われて非晶性が高くなり、本発明の目的を達成し得ないこととなる。
【0016】
本発明に用いる生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとしては、脂肪族ジオールと芳香族カルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られるものが使用できる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸等が挙げられる。これらを1種類以上選択して、重縮合することにより、目的とする生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが得られ、必要に応じて多官能のイソシアネート化合物により架橋することもできる。また、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルには、本発明の目的を達成する範囲で少量のポリ乳酸系重合体をブレンドしてもよい。
【0017】
生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点は、ポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低いことが必要であり、この融点差を満足するように生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルおよびポリ乳酸系重合体を選択する。両者の融点差が50℃未満であると、熱処理加工を安定して容易に行うことができず、また、ヒートシール性に優れた不織布を得ようという本発明の目的を達成することができない。
【0018】
本発明に用いる複合繊維の横断面は、熱接着の際にバインダー成分として機能する生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、高い結晶性を有しており、冷却性、開繊性に優れるポリ乳酸系重合体が複数の葉部を形成してなる多葉型複合断面である。葉部の数は、4〜10個であることが好ましく、4〜6個であることがより好ましい。葉部の数が少ないと、葉の大きさによっては、芯部である生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが繊維表面に露出する割合が大きくなり、溶融紡糸工程における冷却性、開繊性に劣る傾向となる。一方、葉の数が多くなると、葉部と葉部とを個々に独立させることが困難となり、それぞれが接触しすぎてしまい、芯部を完全に覆った、いわゆる芯鞘型の断面形態となり、熱接着工程における圧力によって、芯部の重合体が葉部と葉部の間より溶出しにくく、熱接着性やヒートシール性が劣るものとなる。
【0019】
また、葉部の配設形態は、繊維横断面の外周上に各々等間隔に位置していることが好ましい。葉部が繊維横断面の外周上に各々片寄って位置すると、紡糸工程において紡出糸条がニーリングを発生し、また、接着工程においては、繊維同士の接着点が均一になりにくく、得られる不織布に強力の斑が生じやすくなる。
【0020】
図1〜4に、本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【0021】
図1〜4のいずれも、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部(1)を形成し、ポリ乳酸系重合体が6個の鞘部(2)を形成している多葉型複合繊維(3)である。図1、2は、複合繊維の横断面は、略円形断面であり、図3、4は、葉部が突起状に突出しており、異形度が高い。葉部が突起状に突出していると、異形度が高くなるため、繊維製造工程において、溶融紡糸した繊維は、冷えやすく、また、開繊性が向上するという効果を奏する。さらに、自己接着性が高く冷えにくい生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル同士が接触することを妨げることとなるため、より効果的である。
【0022】
図1、3は、それぞれの葉部が芯部により分割されているが、芯部である生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの繊維表面の露出率は、極めて低い。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの露出度が低いと、繊維製造工程における溶融紡糸した繊維において、自己接着性が高く冷えにくい生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル同士が接触しにくくなり、繊維の冷却性、開繊性が向上する。そして、熱接着工程においては、芯部の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが繊維表面に露出していなくとも、熱接着工程における圧力で、葉部と葉部との間より生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが溶出して、構成繊維同士を接着することができる。これは、ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとが相溶性を有しないため、物理的な力が加えられることにより、葉部と芯部とが分断されやすく、葉部と葉部との間より芯部の重合体が溶出しやすくなるためと考える。また、芯部の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、自己接着性が高いため、相対的に溶出する量が少なくとも、高い接着強力、ヒートシール強力を得ることができると考える。
【0023】
図2、4は、それぞれの葉部が芯部により分割されており、芯部である生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは繊維表面に一部露出している。したがって、図2の形態であれば、接触している繊維同士が生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを介して接着することができ、図4の形態であれば、熱接着工程における圧力で、突出している葉部と葉部との間より生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが溶出して、構成繊維同士を接着することができる。
【0024】
多葉型複合長繊維における生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比は、質量比で、(生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)/(ポリ乳酸系重合体)=3/1〜1/1であることが好ましい。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの複合比が3/1より大きくなると、横断面における露出度が大きくなる傾向にあり、また、横断面形状が不安定となり、繊維製造工程において紡出糸条の冷却性や開繊性に劣るものとなる。一方、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの複合比が1/1より小さくなると、得られた不織布の接着性・ヒートシール性には劣る傾向となる。従って、本発明においては、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比を、質量比で、(生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)/(ポリ乳酸系重合体)=2/1〜1/1の範囲とすることがより好ましい。
【0025】
ポリ乳酸系重合体のメルトフローレート(以下、MFRと略記する。)は、15〜80g/10分であることが好ましく、さらには30〜75g/10分であることが好ましい。MFRが15g/10分未満であると、粘性が高すぎるため、繊維の横断面における葉部の突出度合いが高く異型度の大きいものが得られるが、繊維製造工程において、溶融時のスクリューへの負担が大きくなる。一方、MFRが80g/10分を超えると、粘度が低すぎて、個々の葉部の形状が明確とならず、いわゆる、芯部を覆った芯鞘型形状となりやすく、本発明の目的が達成しにくくなる。
【0026】
生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのMFRは、30〜80g/10分であることが好ましい。MFRが30g/10分未満であると、繊維製造工程において良好に多葉複合断面を得にくくなる。一方、MFRが80g/10分を超えると、粘度が低すぎて、多葉断面形状とすることが困難となり、紡糸工程において糸切れが多発しやすく操業性を損なう傾向となる。
【0027】
なお、開繊性、冷却性を向上させるために、横断面において葉部を突出させたい場合は、ポリ乳酸系重合体のMFRよりも生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのMFRの方が大きいものを採用する。すなわち、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルよりもポリ乳酸系重合体の粘度を高いものを採用することにより、安定した多葉断面形状の繊維を得ることができる。
【0028】
なお、本発明において、ポリ乳酸系重合体および生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのMFRは、ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて、温度210℃で測定した値とする。
【0029】
本発明における多葉型複合繊維の単糸繊度は、1.6〜11デシテックスであることが好ましい。単糸繊度が1.6デシテックス未満となると、紡糸口金が複雑化するため製糸工程における糸切れが増大し、生産量が低下したり、繊維横断面形状が不安定となりやすい。一方、単糸繊度が11デシテックスを超えると、紡出糸条の冷却生に劣る傾向となる。これらの理由により、単糸繊度は、2〜8デシテックスであることがより好ましい。
【0030】
なお、芯部を形成する生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの単糸繊度は1〜4デシテックスであることが好ましい。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの単糸繊度が1デシテックス未満となると、得られる不織布の接着性・ヒートシール性に劣る傾向となり、単糸繊度が4デシテックスを超えると製糸性に劣るものとなる。
【0031】
本発明における多葉型複合繊維の繊維形態は、ショートカットファイバーやステープルファイバー等の繊維端を有する短繊維であっても、エンドレスである長繊維であってもよい。本発明は、繊維の製造とウエブの製造を1工程で行うことができるため、効率がよいことから、多葉型複合繊維が長繊維であって、スパンボンド法により得られるスパンボンド不織布であることが好ましい。
【0032】
本発明の生分解性長繊維からなる不織布の目付は、不織布を使用する用途によって適宜選択すればよく、特に限定しないが、一般に10〜300g/m2の範囲が好ましく、より好ましくは15〜200g/m2である。目付が10g/m2未満では、地合および機械的強力に劣り実用的ではなく、逆に、目付が300g/m2を超えるとコスト面で不利である。
【0033】
本発明の不織布の形態としては、従来公知の方法によって一体化してなるものであればよい。すなわち、構成繊維同士が熱処理(熱風処理、熱ロール装置による圧着処理、熱エンボス装置による圧着処理等)により接着することによって一体化してなるもの、構成繊維同士が機械的に交絡することにより一体化してなるもの等が挙げられる。また、本発明の効果をより奏するためには、部分的熱圧着部を有することにより一体化した不織布であることが好ましい。この不織布によれば、部分的熱圧着部における接着性が向上し、機械的強力が向上するため好ましい。
【0034】
次に、本発明の生分解性不織布の好ましい製造方法について説明する。本発明における生分解性不織布は、スパンボンド法によって効率よく製造することができる。
【0035】
まず、ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを用意する。用意したそれぞれの重合体を個別に溶融計量し、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が葉部を形成する多葉型複合紡糸口金を介して、溶融紡糸し、前記紡糸口金より紡出した紡出糸条を従来公知の横吹付や環状吹付等の冷却装置を用いて冷却せしめた後、吸引装置を用いて牽引細化して引き取る。
【0036】
牽引速度は、3000〜6000m/分と設定することが好ましく、さらには4000〜6000m/分であることが好ましい。牽引速度が3000m/分未満であると、糸条において、十分に分子配向が促進されず、得られる不織布の寸法安定性が劣るものとなる。一方、牽引速度が高すぎると紡糸安定性に劣る。
【0037】
牽引細化した複合長繊維は、公知の開繊器具にて開繊した後、スクリーンコンベアなどの移動式捕集面上に開繊堆積させて不織ウエブを形成する。その後、この不織ウエブに熱エンボス装置に通して部分的熱圧着部を形成させて長繊維不織布とする。
【0038】
熱エンボス装置におけるロールの設定温度は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが溶融または軟化する温度に設定すればよく、処理時間や線圧等に応じて適宜選択する。具体的には、ロールの表面温度は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点よりも10〜50℃低い温度に設定することが好ましい。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点よりも50℃を超える低い温度に設定すると、分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが十分に溶融または軟化しないため、接着性に劣り、長繊維不織布に十分な機械的性能を付与することができず、また、毛羽立ちやすいものとなる。一方、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点よりも10℃低い温度よりも高い温度に設定すると、ロールに溶融した重合体が固着し、操業性を著しく損なうことになる。
【0039】
本発明の生分解性不織布を構成する多葉型複合繊維において、芯部の生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが、葉部であるポリ乳酸系重合体を分断する形で複合しているため、また、両重合体の相溶性が良好でないため、不織布の製造工程において、ロールの巻き取りや、ロールの圧着等による物理的な力が加わった際に、一部の葉部が、分割(割繊)されて、割繊された繊維が生成する場合があるが、このような一部割繊された繊維を含むものも本発明の範囲である。
【0040】
【実施例】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は以下の方法により実施した。
【0041】
(1) 融点(℃):示差走査型熱量計(パーキンエルマ社製、DSC−2型)を用いて、試料質量を5mg、昇温速度を10℃/分で測定し、得られた融解吸熱曲線の最大値を与える温度を融点(℃)とした。
【0042】
(2) 冷却性:紡出糸条を目視して下記の3段階にて評価した。
○:密着糸が認められなかった。
△:密着糸がわずかであるが認められた。
×:大部分が密着し、開繊不可能であった。
【0043】
(3) 開繊性:開繊器具より吐出した紡出糸条にて形成された不織ウエッブを目視にて下記の3段階にて評価した。
○:構成繊維の大部分が分繊され、密着糸及び収束糸が認められなかった。
△:密着糸及び収束糸がわずかであるが認められた。
×:構成繊維の大部分が密着し、開繊性が不良であった。
【0044】
(4) 目付(g/m2):標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、平衡水分にした後、各試料片の重量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算し、目付(g/m2)とした。
【0045】
(5) ヒートシール強力(N):試料幅10cm、試料長5cmを用意し、ヒートシール機のシール幅を1cmとし、ヒートシール圧力9.8N/cm2、ヒートシール時間1秒、ヒートシール温度120℃でヒートシール加工する。この加工されたシートを幅3cmに裁断し、これを10点作製する。各試料毎に、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、つかみ間隔5cm、引張速度20cm/分で伸張し、T字剥離強力を測定する。得られたT字剥離時の荷重の最大値と最小値をそれぞれ読みとり、その平均値を求め、試料10点測定した平均値をヒートシール強力とした。
【0046】
(6) 引張強力(N/5cm幅):試料長20cm、試料幅5cmの試料片各10点を作成し、各試料片につき不織布の経(MD)および緯(CD)方向について、定速伸張型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、つかみ間隔10cm、引張速度20cm/分で伸張し、得られた切断時荷重値(N/5cm幅)の平均値を目付で除した。
【0047】
(7) 圧縮剛軟度(N):試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片5点を作成し、各試料をに横方向に曲げて円筒状物とし、各々その端部を接合したものを圧縮剛軟度測定用試料とした。次いで、各測定試料にその軸方向について、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、圧縮速度5cm/分で圧縮し、得られた最大荷重値(N)の平均値を圧縮剛軟度(N)とした。なお、この圧縮剛軟度とは値が小さいほど柔軟性が優れていることを意味するものである。
【0048】
(8) 生分解性:約58℃に維持された熟成コンポスト中に不織布を埋設し、3ヶ月後に取り出し、不織布がその形態を保持していない場合、あるいは、その形態を保持していも引張強力が埋設前の強力初期値に対して50%以下に低下している場合に、生分解性が良好であると評価し○で示した。これに対し、強力が埋設前の強力初期値に対して50%を超える場合に生分解性能が不良であると評価し×で示した。
【0049】
実施例1
ポリ乳酸系重合体として、融点168℃、MFR70g/分、L−乳酸/D−乳酸(共重合比)=98.6/1.4モル%のL−乳酸/D−乳酸共重合体を用意した。一方、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとして、融点110℃、MFR50g/10分のポリブチレンサクシネートテレフタレート重合体(イーストマンケミカル社製 商品名:イースターバイオGP)を用意した。
【0050】
次いで、それぞれの重合体にタルクを重合体中に0.5質量%となるように含有させ、次いで、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比が、質量比で(生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)/(ポリ乳酸系重合体)=1/1となるように、個別に計量した後、それぞれを個別のエクストルーダ型溶融押し出し機を用いて温度210℃で溶融し、芯部と6つの葉部を有する繊維横断面となる紡糸口金を用いて、生分解性芳香族−脂肪族ポリエステルを芯部に、ポリ乳酸系重合体を葉部となるように単孔吐出量1.38g/分の条件下で溶融紡糸した。
【0051】
紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて牽引速度4500m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウエブとして捕集堆積させた。なお、堆積させた複合長繊維の単糸繊度は、3.0デシテックスであった。
【0052】
次いで、このウエブをエンボスロールと表面平滑な金属ロールとからなる熱エンボス装置に通して熱処理を施し、目付50g/m2の生分解性不織布を得た。得られた不織布を構成する複合繊維の断面形状は、図1に示すようなものであり、繊維断面は略円形であった。なお、熱処理条件としては、両ロールの表面温度を90℃とし、エンボスロールは、個々の面積が0.6mm2の円形の彫刻模様で、圧接点密度が20点/cm2、圧接面積率が15%のものを用いた。
【0053】
実施例2
実施例1において、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比(質量比)を2/1としたこと以外は、実施例1と同様にして生分解性不織布を得た。得られた不織布を構成する複合繊維の断面形状は、図2に示すようなものであり、繊維断面は略円形であり、芯部が一部露出しているものであった。
【0054】
実施例3
ポリ乳酸系重合体として、融点168℃、MFR20g/分のL−乳酸/D−乳酸(共重合比)=98.6/1.4モル%のL−乳酸/D−乳酸共重合体を用意したこと、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比(質量比)を1/1としたこと以外は、実施例1と同様にして生分解性不織布を得た。得られた不織布を構成する複合繊維の断面形状は、図3に示すように、葉部は突起状に突出していた。
【0055】
実施例1〜3で得られた不織布の物性等を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜3は、いずれも製糸性、開繊性は良好で、熱圧着において、収縮が発生したり、エンボスロールに融着することがなく、良好に繊維同士を接着し、機械的強力に優れたものであった。また、優れたヒートシール性を示した。また、コンポスト中では3ヶ月後には、不織布の形態が保持していない程度に分解し、環境に対して優しく、環境汚染の恐れはないものであった。
【0058】
【作用および発明の効果】
本発明の不織布は、多葉型複合繊維からなる不織布であり、複合繊維の繊維横断面において、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを芯部に配し、ポリ乳酸系重合体を複数の葉部として配してなる。生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、ガラス転移温度が低く、冷却性に劣るが、自己接着性、粘着性に優れる。したがって、それ単独では、溶融紡糸しにくく、繊維同士が密着しやすい。一方、本発明で用いるポリ乳酸系重合体は、結晶性が高く、溶融紡糸の際に糸条の冷却性や開繊性などの製糸性に優れる。このような性質を有する2種の重合体を、本発明のごとき多葉型複合断面形状となるように配することにより、すなわち、冷却性に劣るが自己接着性に優れた生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを繊維の中心部(芯部)に配して、その周りを、冷却性、開繊性に優れるポリ乳酸系重合体からなる複数の葉部により囲わせた形態とすることにより、溶融紡糸に際しては、上記の性能を有するポリ乳酸系重合体が、繊維表面を占めているため、繊維同士が密着することなく、良好に冷却され、製糸性、開繊性に優れ、一方、熱圧着工程、ヒートシール工程においては、芯部の優れた接着性を有する生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを葉部と葉部の間より溶出させて、優れた接着性、ヒートシール性を奏することができ、優れた機械的強力、ヒートシール強力を有する不織布を得ることができる。
【0059】
さらに、ポリ乳酸系重合体の融点は、150℃以上の結晶性が高いものを採用しているため、熱的安定性を有し、製糸性、開繊性がより良好で、また、ヒートシール加工時に熱の影響により収縮等が発生することがなく、加工性に優れた不織布を得ることができる。
【0060】
また、バインダー成分となる生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、ポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低い融点を有するものを採用しているため、両者の融点差が大きいこと、およびこの生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが有する自己接着性という性質をも併せて、熱加工条件に細心の注意を払わずとも、ヒートシール加工を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に用いる多葉型複合繊維の横断面の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1:芯部
2:葉部
3:多葉型複合繊維
Claims (6)
- ポリ乳酸系重合体と生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる多葉型複合繊維からなる不織布であり、多葉型複合繊維の繊維横断面は、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが芯部を形成し、ポリ乳酸系重合体が複数の葉部を形成しており、ポリ乳酸系重合体の融点が150℃以上であり、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの融点がポリ乳酸系重合体の融点よりも50℃以上低いことを特徴とする生分解性不織布。
- 多葉型複合繊維が長繊維であって、不織布がスパンボンド法により得られるスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1記載の生分解性不織布。
- 不織布は、部分的熱圧着部を有することにより一体化していることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性不織布。
- 生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとポリ乳酸系重合体との複合比が、質量比で、(生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)/(ポリ乳酸系重合体)=3/1〜1/1の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性不織布。
- ポリ乳酸系重合体のメルトフローレートが15〜80g/10分であり、生分解性脂肪族−芳香族共重合ポリエステルのメルトフローレートが30〜80g/10分であり、かつポリ乳酸系重合体のメルトフローレートよりも生分解性脂肪族−芳香族ポリエステルのメルトフローレートの値が大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の生分解性不織布。
- 生分解性脂肪族−芳香族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネートテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生分解性不織布。
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KR20150082355A (ko) * | 2012-10-26 | 2015-07-15 | 스토라 엔소 오와이제이 | 생분해성 포장 재료의 제조방법, 생분해성 포장 재료 및 이로부터 제조된 패키지 및 용기 |
CN107313179A (zh) * | 2016-04-26 | 2017-11-03 | 现代自动车株式会社 | 用于车辆外部的无纺织物板及其制造方法 |
-
2002
- 2002-11-14 JP JP2002330724A patent/JP2004162218A/ja active Pending
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